JP2009128809A - プラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、プラズマディスプレイパネルに係り、特に、前面フィルタを配置したプラズマディスプレイパネルに関する。
プラズマディスプレイ(plasma display)やCRTディスプレイ(cathode-ray tube display)などの自発光型ディスプレイは、視野角の依存性が無く自然な映像が得られることから広く使用されている。特にプラズマディスプレイは、薄型であり、かつ大画面を構成するのに最適であることから、急速に普及が進んでいる。
ところが、プラズマディスプレイを含む各種ディスプレイ装置では、表示映像の視認性を低下させる映り込みが問題とされることが多い。ディスプレイ装置の映り込みは、室内の蛍光灯の光や観察者などの像が、表示部よりも映像を観察する者が位置する側(以下「観察者側」という)にある複数のフラットな平面に外光として入射し、その平面で正反射することに起因する。
そこで、映り込みの防止作用(防眩作用)を有するフィルタが、従来提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のフィルタは、微粒子の凝集部を点在させて最表面に凹凸形状を形成している。このフィルタをディスプレイ装置の観察者側に配置することにより、外光をフィルタの最表面において拡散反射させることができ、映り込みを改善することができる。以下、防眩作用を有し、ディスプレイ装置の観察者側に配置されるフィルタを、「前面フィルタ」という。
特開2005−316450号公報
しかしながら、特許文献1記載の前面フィルタをプラズマディスプレイパネルに用いた場合、液晶ディスプレイに比べて、本来の映像光が不鮮明になる度合いが強いという問題がある。なぜなら、プラズマディスプレイパネルは、液晶ディスプレイと比較して、映像光を出力する背面板から前面フィルタ最表面までの距離が長く、映像光が前面フィルタの最表面を透過するときの拡散による鮮鋭度の低下の度合いがより大きくなるためである。
また、プラズマディスプレイパネルの内部に進入した外光が前面板表面などで正反射することにより発生する映り込みについては、抑制が難しいという問題がある。なぜなら、前面フィルタの最表面の粗さの度合いに対する屈折光の感度は反射光のそれに比べて弱く、内部反射による映り込みを改善するために最表面を粗くしようとすると、表面拡散が増大して映像光のコントラストが低下するためである。
したがって、特許文献1記載の前面フィルタを用いたプラズマディスプレイパネルでは、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することが難しい。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができるプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
本発明のプラズマディスプレイパネルは、互いに離隔して配置される前面板および背面板と、前記前面板と前記背面板との間に形成される放電空間を区画する隔壁と、前記隔壁により区画された放電セル内に形成される蛍光体層と、前記前面板および前記背面板にそれぞれ配列され、前記放電セル内で放電を発生させる電極と、前記前面板の観察者側に配置される前面フィルタと、を備えるプラズマディスプレイパネルにおいて、前記前面フィルタは、ヘイズ値をHZとし、前記蛍光体層から前記前面フィルタの観察者側の表面までの区間を構成する物質について各物質が占める長さをそれぞれの物質の屈折率で割った値の積算値である空気換算距離をLとするとき、次の式を満足する構成を採る。
本発明によれば、前面フィルタのヘイズ値HZとプラズマディスプレイパネルの空気換算距離Lとの関係で、映り込みを抑えかつ鮮鋭な映像を得ることができる条件を規定したため、かかる条件に基づいて、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができる。
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るプラズマディスプレイパネルの概略部分断面図である。図1では、本実施の形態に係るプラズマディスプレイパネルの特徴的な構成を示しており、その他の部分については図示および説明を一部省略する。
図1に示すように、プラズマディスプレイパネル10は、互いに離隔して配置された背面板100、前面板200、および前面フィルタ300を、この順に平行に重ねて構成される。背面板100と前面板200との間の空間には、プラズマ放電を発生させる放電空間が形成されている。放電空間には、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)などを混合した所定の放電ガスが封入されている。
背面板100には、絶縁体層で覆われたデータ電極(図示せず)と、データ電極と平行に配置されたストライプ状の複数の隔壁110とが形成されている。上記した放電空間は、隔壁110により複数の区画に仕切られており、単位発光領域となる複数の放電セル120を形成している。3つの隣り合う放電セル120の内壁には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各蛍光体が放電セル毎に色分け塗布され、蛍光体層130が形成されている。
前面板200には、電極、誘電体層、および保護膜などの、プラズマディスプレイパネルとしての機能を実現するための各種構成要素(図示せず)がそれぞれ適切な位置に形成されている。例えば、前面板200には、図示しないが、走査電極と維持電極とで対をなすストライプ状の表示電極が複数形成され、表示電極を覆うように誘電体層が形成され、更に誘電体層上に保護層が形成されている。誘電体層は、例えば、低融点ガラスから成り、保護層は、例えば、酸化マグネシウム(MgO)から成る。
前面フィルタ300は、例えば、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂から成る透明板310を基材とし、透明板310に、電磁波遮断フィルタ、赤外線カットフィルタ、および色調整フィルタ(いずれも図示せず)を積層して構成される。前面フィルタ300は、更に、透明板310の観察者側に、それぞれ樹脂で構成された表面拡散層320および内部拡散層330を一体的に積層して成る防眩層を備えて構成される。防眩層は、接着層340を介して透明板310に接着されている。表面拡散層320は、最も観察者側に配置されている。
前面フィルタ300の表面拡散層320は、観察者側の表面、つまり前面フィルタ300の空気界面として、微細な凹凸を構成している表面凹凸面350を有する。
前面フィルタ300の内部拡散層330は、透過光に対し拡散作用を与える。具体的には、内部拡散層330は、例えば、樹脂で形成された薄い層内に、この屈折率の異なる微粒子を混ぜ込むことにより形成される。内部拡散層330の拡散の特性は、微粒子の屈折率、粒径、形状、粒子層内における粒子の濃度、および分散度合いなどによりコントロールすることが可能である。微粒子としては、例えば、粒径が1μm(マイクロメートル)〜5μmであって、球形状または楕円形状などの、シリカビーズまたは樹脂ビーズを適用することができる。
このように構成されたプラズマディスプレイパネル10において、電極間に電圧が印加されると、放電セル120に放電が発生し、例えば、混合ガス中のヘリウム原子が励起されて紫外線を発生する。そして、この紫外線によって蛍光体層130が励起され、可視光が発生する。
映り込みの原因となる外光(以下単に「外光」という)の一部は、表面凹凸面350で反射する。
図2は、表面凹凸面350における反射光の様子を模式的に示す図である。
図2に示すように、表面凹凸面350は微細な凹凸構造を有しているため、外光400の反射光410は拡散される。これにより、表面凹凸面350での反射は乱反射となり、その結果、映り込みは低減する。すなわち、表面凹凸面350での反射による映り込みの程度は、表面凹凸面350が反射光に対して作用する反射による拡散(以下「反射拡散」という)の程度によって決まる。
一方、表面凹凸面350で反射せずにパネル内部に進入した外光(以下「進入光」という)の大部分は、透明板310の前面板200側の空気界面360で反射する。
図3は、空気界面360で反射する進入光の様子を模式的に示す図である。なお、ここでは、表面拡散層320、内部拡散層330、接着層340、および透明板310の屈折率はほぼ同一であり、これらの各界面における進入光の反射および屈折は無視できるものとする。
図3に示すように、外光400のうちパネル内部に進入した進入光420は、空気界面360で反射する前に、表面凹凸面350で屈折し、内部拡散層330で屈折作用を受けながら拡散作用を受ける。進入光420は、更に、空気界面360で反射し、その反射光430も、内部拡散層330で拡散作用を受け、表面凹凸面350で屈折する。したがって、空気界面360で反射する進入光は、個々の屈折作用や拡散作用が小さくても、その作用が累積することにより、十分に散乱して観察者方向に戻ることになり、観察者側から見たときは、反射光430は拡散して反射しているように見える。すなわち、空気界面360での反射による映り込みの程度は、表面凹凸面350が進入光に対して作用する拡散の程度と、内部拡散層330が進入光に対して作用する拡散の程度とによって決まる。
映り込み像は、表面凹凸面350における反射光と空気界面360における反射光との合成で構成される。映り込みを低減するには、それぞれの反射光が十分に拡散していなければならない。空気界面360での反射による映り込みを低減するためには、表面凹凸面350が進入光に対して作用する拡散の程度と、内部拡散層330が進入光に対して作用する拡散の程度とを大きくしなければならない。ところが、表面凹凸面350が作用する屈折拡散の程度を大きくすると、表面拡散が増大し、映像光のコントラスト低下も大きくなるため好ましくない。
本発明者は、従来のプラズマディスプレイパネルの前面フィルタの表面において、表面拡散は主に映り込みの程度に影響しており、内部拡散は主に映像光の鮮鋭度に影響していることに気が付いた。このことから、本発明者は、前面フィルタの表面における正反射を減らす手段として主に表面拡散を利用し、前面フィルタの裏面における正反射を減らす手段として主に内部拡散を利用することで、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの維持とを両立できることを見出した。
そこで、本実施の形態に係るプラズマディスプレイパネル10では、表面凹凸面350が進入光に対して作用する拡散(以下「屈折拡散」という)の程度を制限し、その代わりに、内部拡散層330の透過拡散を利用する。これにより、前面フィルタ300表面の粗さを抑えて、映り込みの改善を図ることができる。
ただし、映像光の鮮鋭度は、表示部と拡散面との距離、つまり背面板100と表面凹凸面350との距離に影響される。これは、光源と観察者の間に存在する拡散面のうち、光源からの光の透過領域を二次光源として取り扱うことができるが、通常、光源の光は四方八方に出射され二次光源の大きさは拡散面と光源との距離が長いほど大きくなり、また、二次光源の大きさが大きいほど光源の像の鮮鋭度は低下するためである。
したがって、表示部と拡散面との距離に応じて、表面凹凸面350の反射拡散の程度と、表面凹凸面350の屈折拡散の程度と、内部拡散層330の透過拡散の程度とをコントロールする必要がある。ここでは、表面凹凸面350の反射拡散の程度および屈折拡散の程度ならびに内部拡散層330の透過拡散の程度を、「拡散条件」と総称する。
以下、プラズマディスプレイパネル10における拡散条件のコントロールについて説明する。
まず、拡散条件のコントロールの基準となる距離について説明する。
図4は、拡散条件のコントロールの基準となる距離を説明するための図であり、図1に対応するものである。
ここでは、図4に示すように、拡散条件のコントロールの基準となる距離Lを、プラズマディスプレイパネル10の表示部である蛍光体層130から、前面フィルタ300の表面凹凸面350までの距離と定義する。ただし、距離Lは、蛍光体層130から表面凹凸面350までの区間を構成する物質について、各物質が占める長さをそれぞれの物質の屈折率で割った値の積算値である(以下「空気換算距離」という)。例えば、屈折率1.5のガラスの1mmと、屈折率1.0の空気の1mmとを合わせたときの空気換算距離は、1/1.5+1/1=1.67と算出することができる。
蛍光体からの映像光は、拡散しながら観察者側へ進み、観察者に観察される。映像光は、表面凹凸面350および内部拡散層330を透過するときに拡散作用を受けるため、観察者に観察される映像の鮮鋭度は、本来の映像に比べて劣化する。鮮鋭度の劣化は、空気換算距離Lが長いほど大きくなる。
次に、観測者側で観測される映像光の鮮鋭度を維持するための拡散条件について説明する。
ここで、観測者側で観測される映像光の鮮鋭度を表わす指標として、元の映像の鮮鋭度をどの程度再現できるかを示す評価関数であるMTF(modulation transfer function)を採用する。特に、映像光が前面フィルタ300を透過する際のMTFを、「透過MTF」と表記する。
ディスプレイ装置の映像で再現すべき最も高い空間周波数は、表示素子のピッチに依存し、40インチ前後のプラズマディスプレイパネルでは約0.6lp/mm(ラインペア パー ミリメートル)である。また、映像光の鮮鋭度として許容される透過MTFの下限値は、0.7である。したがって、許容される映像光の鮮鋭度の最小値として、空間周波数0.6lp/mmにおいて、透過MTF=0.7を採用する。透過MTFが0.7以上の場合に、映像光の鮮鋭度が維持されているとみなすことができる。
なお、例えば、42インチのプラズマディスプレイパネルの前面に、通常と同じ距離を離して0.6lp/mmにおいて透過MTF=0.7の前面フィルタを配置した場合、正面方向から観察すると問題は無いが、斜め方向から観察すると映像の鮮鋭度の低下が認識される。これは、観察する光路に沿って測ったときの前面フィルタから蛍光体層までの距離が、正面方向から観察する場合よりも、斜め方向から観察する場合のほうが大きくなり、その結果、斜め方向における見かけ上の透過MTFが0.7よりも小さくなるためである。したがって、本実施の形態では、前面フィルタ300の透過MTFを0.7としているが、観察者が映像を観察し得る斜め方向からの角度においても、透過MTF0.7以上を確保できることが望ましい。
また、前面フィルタ300の拡散条件を示す特性値として、可視光を照射したときの全透過光に対する拡散透過光の割合を示すヘイズ値(haze factor)を採用する。前面フィルタ300全体のヘイズ値は、表面凹凸面350および内部拡散層330のそれぞれの屈折拡散の程度で決まる。
図5は、観測者側で観測される映像光の鮮鋭度の許容最小値を定めたときの、空気換算距離Lと前面フィルタ300の拡散条件との関係を示す図である。
図5において、横軸は図4で説明した空気換算距離Lをミリメートル(mm)単位で示し、縦軸は前面フィルタ300のヘイズ値をパーセント(%)単位で示している。また、四角で表されるポイント群510は、実験により得られた、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.7となる空気換算距離Lと前面フィルタのヘイズ値HZとの組み合わせをプロットしたものである。そして、三角で表されるポイント群520は、実験により得られた、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.95となる空気換算距離Lと前面フィルタのヘイズ値HZとの組み合わせをプロットしたものである。透過MTFは、値「1」に近ければ近いほど拡散の度合いが低く、映像光の先鋭度を高く維持できることを示す。
前面フィルタ300のヘイズ値HZは、空気換算距離Lがゼロのときは無限大になる。また、前面フィルタ300の透過MTFは、ヘイズ値HZがゼロのときには空気換算距離Lが無限大でも低下しない。また、回帰曲線は、相関係数の二乗が0.7を超える場合に、十分に高い精度とみなすことができる。これらのことから、ヘイズ値HZを1/Lの多項式で表わすことができると仮定し、ポイント群510の回帰曲線を、相関係数の二乗が0.7を超える最も次数の低い多項式近似で求めると、次の式(1)となる。
式(1)を表したものが、曲線530である。すなわち、曲線530は、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.7となる拡散条件の等高線を表している。曲線530は、空気換算距離Lが短いほど高いヘイズ値を採り、空気換算距離Lの増加に伴って二次曲線的に減少する。したがって、空気換算距離Lが大きくなるような構造をとった場合に、透過MTFを0.7に維持して映像光の鮮鋭度を維持するためには、前面フィルタ300のヘイズ値を小さくする必要がある。
式(2)を表したものが、曲線540である。すなわち、曲線540は、空間周波数0.6lp/mmで透過MTF=0.95となる拡散条件の等高線を表している。
曲線540は、曲線530と交差することなく、曲線530の左下側に位置している。また、例えば、ヘイズ値HZまたは空気換算距離Lの一方の値を固定して他方の値を減少させたときには、当然に、透過MTFは増加する。すなわち、図中において、曲線530よりも左側または下側は、透過MTFが0.7よりも高く、映像光の鮮鋭度が維持されているとみなすことができる領域である。また、曲線530より右側または上側は、透過MTFが0.7よりも低く、映像光の鮮鋭度が維持されていないとみなすことができる領域である。
式(3)を満たすように前面フィルタ300を構成することで、映像光の鮮鋭度の低下を防ぐことができる。すなわち、式(3)は、映像光の鮮鋭度向上の観点から、表示部から表面凹凸面350までの空気換算距離Lに応じて前面フィルタ300のヘイズ値HZの最大値を規定するものである。前面フィルタ300のヘイズ値HZが式(1)により規定される最大値を超えると、映像光の鮮鋭度が低下し、ディスプレイとして好ましくない。
次に、映り込みを低減し、かつ観測者側で観測される映像光のコントラストを維持するための拡散条件について説明する。
ここで、映り込みの程度および観測者側で観測される映像光のコントラストの指標として、MTFを採用し、特に、外光が前面フィルタ300で反射する際のMTFを、「反射MTF」と表記する。
ディスプレイ装置の映り込みにおいて映像の視認性に最も影響を及ぼす空間周波数は、周囲環境に依存し、一般的には約0.06lp/mmである。また、映り込みの程度として許容される反射MTFの上限値は、0.3である。したがって、許容される映り込みの程度の最大値として、空間周波数0.06lp/mmにおいて、反射MTF=0.3を採用する。反射MTFが0.3以下の場合に、映り込みが許容範囲内であるとみなすことができる。
また、反射拡散の程度および屈折拡散の程度は凹凸の微細部分の傾斜角に比例することから、表面凹凸面350の拡散条件を示す特性値として、表面凹凸面350の三次元形状により算出される表面粗さRa(中心点平均粗さ)を凹凸の平均ピッチで除した値を採用する。
図6は、外光の映り込みの許容最大値を定めたときの、表面凹凸面350の表面粗さ(以下「RaS」と表記する)/平均ピッチ(以下「PS」と表記する)と前面フィルタのヘイズ値HZとの関係を示す図である。
図6において、横軸はRaS/PSを示し、縦軸は前面フィルタ300のヘイズ値をパーセント(%)で表わしている。また、四角で表わされるポイント群610は、実験により得られた、空間周波数0.06lp/mmで反射MTF=0.3となるRaS/PSと前面フィルタのヘイズ値HZとの組み合わせをプロットしたものである。反射MTFは、値「1」に近ければ近いほど拡散の度合いが低く、コントラストを高く維持できることを示す。
式(4)を示したものが、直線620である。すなわち、直線620は、空間周波数0.06lp/mmでの反射MTF=0.3の等高線を表わしている。
図中において、直線620よりも右側または上側は、反射MTFが0.3よりも低く、映り込みが許容範囲内であるとみなすことができる領域である。また、直線620よりも左側または下側は、反射MTFが0.3よりも高く、映り込みが許容範囲外であるとみなすことができる領域である。
式(5)を満たすように前面フィルタ300を構成することで、映り込みを許容範囲無いとすることができる。すなわち、式(5)は、映り込みの改善の観点から、前面フィルタ300のヘイズ値の許容範囲を内部拡散の程度との関係を規定するものである。表面凹凸面350のRaS/PSが式(5)で規定される下限を下回ると、映り込みの改善効果が少なくなる。
一方で、表面凹凸面350のRaS/PSの値が高くなると、映像のコントラストの低下を招く。これは、RaS/PSが、いわば表面の凹凸の山の高さを山の底辺の長さで割ったものであって山の傾きに関係する値であり、山の傾きが大きければ大きいほど、大きな入射角で入射した外光が山の傾斜面で反射して正面の観察者に到達し易くなるためである。映像のコントラストとして許容されるRaS/PSの上限値は、0.003である。したがって、RaS/PSの値は、次の式(6)をも満足することが望ましい。
式(6)を満たすように前面フィルタ300を構成することで、外光が入射したときのコントラスト低下を低減することができる。RaS/PSの値が式(6)の上限を超えると、外光に対するコントラストの低下が大きくなる。すなわち、式(6)は、コントラスト向上の観点から、表面凹凸面350のRaS/PSの範囲を規定するものである。
上記の式(3)、式(5)、および式(6)を満たすように、プラズマディスプレイパネル10の拡散条件を決定し、決定した拡散条件に従ってプラズマディスプレイパネル10を構成することにより、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができる。
以上説明したように、本実施の形態に係るプラズマディスプレイパネル10によれば、前面フィルタ300のヘイズ値HZとプラズマディスプレイパネルの空気換算距離Lとの関係で規定される、映り込みを抑え鮮鋭な映像を得ることができる条件に基づいた構成を採る。これにより、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができる。また、前面フィルタ300のヘイズ値HZは調整が比較的容易であるため、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上との両立を、容易に実現することができる。
また、前面フィルタ300は、観察者側に凹凸を有する表面拡散層320に加えて内部拡散層330を有する。これにより、パネル内部に進入した外光に対し、表面拡散のみならず、内部拡散の作用を与えることができるため、前面フィルタ300の表面の粗さを抑えて、映り込みを抑制することができる。しかも、映像光は内部拡散層330を1回のみ透過するのに対し、進入光は内部拡散層330を往復で2回透過するので、内部拡散層330における拡散の作用を、映像光よりもパネル内部に進入した外光に対してより強く与えることができる。すなわち、映像光の鮮鋭度およびコントラストの低下を抑えた状態で映り込みを抑制することができ、明るい場所にプラズマディスプレイパネル10を設置する場合でも、映り込みを気にすることなく鮮鋭度の高い映像を提供することができる。
また、前面フィルタ300のヘイズ値HZと表面拡散層320の観察者側の表面の粗さとの関係で規定される、更にコントラストが向上した映像を得ることができる条件に基づいた構成を採る。これにより、コントラストの更なる向上を図ることができる。
なお、映り込みの程度、映像光の鮮鋭度、および映像光のコントラストの許容範囲として本実施の形態で記述した値は一例であり、上記許容範囲をなんら制限するものではない。プラズマディスプレイパネルのサイズ、解像度、使用場所、使用環境などに応じて、透過および反射のそれぞれにおける空間周波数およびMTFに、様々な値を採用することができる。この場合には、図4〜図6で説明した手法により、プラズマディスプレイパネルの拡散条件をコントロールすればよい。
本発明に係るプラズマディスプレイパネルは、映り込みの改善と、映像光の鮮鋭度およびコントラストの向上とを両立することができるプラズマディスプレイパネルとして有用である。
10 プラズマディスプレイパネル
100 背面板
110 隔壁
120 放電セル
130 蛍光体層
200 前面板
300 前面フィルタ
310 透明板
320 表面拡散層
330 内部拡散層
340 接着層
350 表面凹凸面
360 空気界面
100 背面板
110 隔壁
120 放電セル
130 蛍光体層
200 前面板
300 前面フィルタ
310 透明板
320 表面拡散層
330 内部拡散層
340 接着層
350 表面凹凸面
360 空気界面
Claims (2)
- 互いに離隔して配置される前面板および背面板と、
前記前面板と前記背面板との間に形成される放電空間を区画する隔壁と、
前記隔壁により区画された放電セル内に形成される蛍光体層と、
前記前面板および前記背面板にそれぞれ配列され、前記放電セル内で放電を発生させる電極と、
前記前面板の観察者側に配置される前面フィルタと、
を備えるプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記前面フィルタは、
ヘイズ値をHZとし、前記蛍光体層から前記前面フィルタの観察者側の表面までの区間を構成する物質について各物質が占める長さをそれぞれの物質の屈折率で割った値の積算値である空気換算距離をLとするとき、次の式を満足する、
プラズマディスプレイパネル。
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