JP2009120977A - ポリエステル繊維およびそれを用いた繊維製品 - Google Patents
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Abstract
【課題】
繊維表面において高い導電性と小さな導電性斑という特性を具有し、さらには柔軟性に優れたポリエステル繊維と、その繊維を用いてなる衣料、敷物およびブラシなどのポリエステル繊維製品を提供する。
【解決手段】
繊維表面全てが、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなるポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われてなるポリエステル繊維であって、その平均抵抗率Pが1.0×107[Ω/cm]以下であり、その初期引張弾性率が5〜22cN/dtexであるポリエステル繊維。
【選択図】 図1
繊維表面において高い導電性と小さな導電性斑という特性を具有し、さらには柔軟性に優れたポリエステル繊維と、その繊維を用いてなる衣料、敷物およびブラシなどのポリエステル繊維製品を提供する。
【解決手段】
繊維表面全てが、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなるポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われてなるポリエステル繊維であって、その平均抵抗率Pが1.0×107[Ω/cm]以下であり、その初期引張弾性率が5〜22cN/dtexであるポリエステル繊維。
【選択図】 図1
Description
本発明は、導電性に優れたポリエステル繊維およびそれを用いた繊維製品に関するものである。より詳しくは、本発明は、湿度が変化する際の安定性に優れ、また優れた柔軟性と導電性とを具備したポリエステル繊維と、そのポリエステル繊維を用いてなる織物や編物およびそのポリエステル繊維を用いたブラシなどのポリエステル繊維製品に関するものである。
従来、繊維の高機能化においては様々な機能性付与が検討され、導電性もその1つとして重要視されている。この導電性を有する繊維(以下、導電性繊維ということがある。)は、例えば、クリーンルーム用の衣料用繊維やカーペットへの混繊用繊維として用いられている他、近年では、各種装置内に組み込まれる部品用に使用される繊維として、静電気を除去する目的や装置内で電荷を付与する目的等で使用されている。特にIT分野においては、電子情報機器、特に携帯電話などの無線端末の普及により、日常的な環境においても電磁波の暴露量が増加し、健康への影響が懸念されていることから、導電性繊維は電磁波遮蔽素材としても利用されている。このように導電性繊維は、衣料用途だけでなく各種産業用などの幅広い分野において重要な繊維素材として用途が広がり、また需要が高まると共に、更なる技術革新が進められている。
この導電性繊維の技術開発については多くの繊維形成材料での検討が行われている。例えば、ポリオレフィンやポリアミドあるいはポリエステルについて数多くの検討がなされており、中でも特に耐熱性に優れたポリエステルについて精力的に検討がなされている。しかしながら、比較的容易に入手可能な導電剤であるカーボンブラック(以下、CBと略記することがある。)や白色金属酸化物粒子をポリエステルに適用した導電性繊維については、これら導電剤の多量添加時に、微分散困難性(いわゆる凝集)によるポリエステルの大幅な粘度上昇や生成凝集物による製糸性不良が起こり易い。そのため、減粘剤の適用(特許文献1参照。)や導電剤の修飾(特許文献2参照。)によって、これらの課題を解決する試みが多数なされているが、根本的な解消には至らなかった。
そこで本発明者らは、導電剤を多量に含有しても製糸性が良好で、導電性に優れた技術を提案している(特許文献3参照。)。この提案においては、トリメチレンテレフタレートを主たる繰り返し構造単位とするポリエステル(以下、3GT系ポリマーと略記することがある。)を導電剤を含有するベースポリマーとしたものであり、従来汎用的に用いられてきたエチレンテレフタレートを主たる繰り返し構造単位とするポリエステル(以下、PET系ポリマーと略記することがある。)やブチレンテレフタレートを主たる繰り返し構造単位とするポリエステル(以下、PBT系ポリマーと略記することがある。)と比較して、導電剤を多量に含有させた際の製糸性が格段に優れ、得られた繊維の導電性(導電性が高いことあるいは繊維長手方向の導電性斑が小さいことなど。)が優れている。しかしながら、この提案によっても、導電性繊維の更なる高度化・高付加価値化という観点では、例えば、より柔軟性を付与すべく高度な繊維化技術の適用、すなわち導電剤を含有したポリマーの大変形を伴う繊維製法において細繊度の繊維を得るような場合には、製糸性不良が起こることがあるため、導電性繊維を形成するために更に優れたポリマー設計が望まれていた。
一方で、様々な種類が存在する前記ポリエステルの中で、特にポリエーテルを共重合したポリエステルは、ポリエーテルエステルの呼称で知られ、多くの用途に用いられている。その中で、ポリエーテルエステルに導電剤を含有させた導電性繊維が提案されている(特許文献4参照。)。この提案では、導電剤が含有されたポリエーテルエステルを合成繊維の芯成分として配置することにより、確かに優れた洗濯耐久性が付与された導電性衣料が得られている。しかしながら、この提案において得られる導電性繊維は、衣料用途を目指した設計であって繊維の芯成分が導電性を担うことから、繊維表面での高い導電性あるいは低い導電性斑のような特性はなく、衣料以外の他の用途、例えば、電子機器のブラシ素材などに適した高度な導電性(繊維表面での高い導電性および小さな導電性斑)や、繊維物性(優れた柔軟性や優れた強伸度特性)などの高度な機能は期待されず、またそれらの用途展開に関して繊維物性としての予測や示唆はなかった。
特開2006−316373号公報(特許請求の範囲)
特開2003−138115号公報(特許請求の範囲)
特開2007−191843号公報(特許請求の範囲)
特表2005−290630号公報(特許請求の範囲、段落[0009]、段落[0015])
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解消し、繊維表面での高い導電性および小さな導電性斑という特性と優れた柔軟性を有するポリエステル繊維、およびそのポリエステル繊維を用いてなる様々なポリエステル繊維製品を提供することにある。
本発明は、上記の課題を解決するため、以下の構成を採用するものである。
(1)繊維表面全てが、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなるポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で、覆われてなるポリエステル繊維。
(2)平均抵抗率Pが1.0×107[Ω/cm]以下である前記(1)に記載のポリエステル繊維。
(3)初期引張弾性率が5〜22cN/dtexである前記(1)または(2)に記載のポリエステル繊維。
(4)前記のブロック共重合体が主たる繰り返し構造単位が、ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルとのブロック共重合体である前記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリエステル繊維。
(5)単繊維繊度が0.5〜4.0dtexの範囲にある前記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリエステル繊維。
(6)前記の導電剤がファーネスブラックおよび/またはアセチレンブラックである前記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリエステル繊維。
(7)前記の樹脂組成物が繊維横断面積の30〜80%を占めている前記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリエステル繊維。
(8)前記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維製品。
(9)前記の繊維製品が繊維ブラシである前記(8)に記載のポリエステル繊維製品。
(10)前記の繊維ブラシが電子写真装置用のブラシである、前記(9)に記載のポリエステル繊維製品。
本発明のポリエステル繊維は、繊維の形成に用いられる樹脂組成物である、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなるポリエーテルエステルに導電剤を含有させた樹脂組成物で、繊維表面が全て覆われたものとしたので、従来のポリエステル、例えば、前述のPET系ポリマーやPBT系ポリマーはもとより、3GT系ポリマーなどと比較して大きく異なり、導電剤であるカーボンブラック等との親和性を精密に制御することが可能である。すなわち、高濃度で導電性カーボンブラック等の導電剤を含有するポリエーテルエステル樹脂組成物中においては、ポリエーテルエステルと導電剤との親和性が優れることから、均一な微分散化を達成しつつ、導電剤の構造形成により高導電化に有利な導電パスが生成する。その結果、従来困難であった高い導電性と優れた繊維物性とを具有するポリエステル繊維を得ることが初めて可能となった。加えて、樹脂組成物を構成する樹脂がポリエーテルエステルであることから、吸水性あるいは吸湿性が殆どなく、結果として導電性の湿度依存性も小さいため導電性が非常に安定する。
これらのことから、本発明のポリエステル繊維は、防塵衣などの衣料用途、建造物の壁材、屋内外のカーペットおよび車両内装材等の非衣料用途分野で静電気を逃がす必要のある素材として好適に用いられる。また、本発明のポリエステル繊維は、高い導電性および環境変化に対する導電性の安定性が必要とされる用途、例えば、常時あるいは頻繁に電圧を印加して用いられる配線物に好適に採用できる他、特に電子写真装置等に用いられる各種繊維ブラシなどに好適に採用できる。
また、本発明のポリエステル繊維は、導電剤を含有したポリエーテルエステルが繊維表面を全てを覆う構成であることから、繊維長手方向の導電性の斑が非常に小さく、均一な導電特性を示す。また、導電剤の添加量やブロック共重合における共重合割合などの樹脂組成物の設計により、単繊維繊度や繊維の初期引張弾性率を小さくすることが可能であり、これにより更に柔軟性を高めることが可能になる。
本発明のポリエステル繊維における繊維とは、細く長い形状のものを指し、その長さは一般的に言われる長繊維(フィラメント)であっても短繊維(ステープル)であっても良い。短繊維の場合は、用途に応じて所望の長さにすればよく、紡績工程あるいは後述するような電気植毛加工などに用いられることを考慮すると、長さは0.05〜150mmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜120mmである。また、特に電気植毛加工に用いる場合は、長さは、より好ましくは0.1〜10mmであり、特に好ましくは0.2〜5mmである。
また、本発明において、繊維の太さ、すなわち単繊維繊度に関しては、後述するような様々な用途に採用が可能であるという点で、単繊維繊度は0.5〜4.0dtex(デシテックス)であることが好ましい。この単繊維繊度の範囲では、例えば、後述する電子写真装置に組み込まれて用いる場合には、トナー除去性能やトナー担持性能あるいは帯電性能や除電性能が優れる。また、衣料用途、特に衣服の裏地や防塵衣、あるいは、衣料用途以外の車両内装材、建造物の壁材などの内装材およびカーペットや床材などの敷物のような非衣料用途に用いられる場合にも、単繊異繊度は上記の範囲であることが好ましい。ここで単繊維繊度は、後述の実施例におけるA.項に記載の方法で求める。
また、繊維断面、すなわち繊維軸方向に垂直な繊維横断面の形状については、用途に応じて所望の形状とすることが可能である。繊維の断面形状が丸形の場合には、均一な繊維物性および繊維断面内における等方的な導電性を有するため、後述する繊維ブラシ用に用いられる。そのブラシが電子写真装置に組み込まれる場合に、前述のトナー除去性能やトナー担持性能あるいは帯電性能や除電性能などのような好ましい特性を発揮し得る。また、断面形状は、偏平形、多角形、多葉形、中空形状および不定形などの異形断面とすることも可能である。ブラシに用いる場合には、繊維の曲がる方向に異方性を持たせて剛性を高めることができる。また、電子写真装置においては、トナーとの良好な接触性を得てより優れた清掃性能を発現させることが可能となる。そのため、繊維の断面形状は、偏平形、多角形および多葉形が好ましく、特に、扁平型、3角断面、4角断面、3葉断面、4葉断面、6葉断面および8葉断面がより好ましい態様である。断面形状については、後述の実施例のM項の方法で観察して判断することができる。
本発明のポリエステル繊維においては、導電剤を含有する主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなるポリエーテルエステルの樹脂組成物が、少なくとも繊維表層を全て占めている。ポリエステル繊維自体の導電性は、この樹脂組成物によって決まるため、導電剤の添加量やブロック共重合における共重合割合などの樹脂組成物の設計によって導電性能を自由に制御することができ、大変優れた導電性を有するポリエステル繊維となる。
本発明のポリエステル繊維は、従来の導電性繊維、例えば、繊維表層の一部に導電剤を含有した成分を配置した導電性繊維や、繊維の内部のみに導電剤を含有した成分を配置した導電性繊維と比較して、導電剤を含有するポリエーテルエステル(以下、導電剤含有PEEと略記することがある。)が繊維表層を全て占めることにより、繊維の長手方向はもとより、繊維軸方向に垂直な繊維横断面の繊維外周においても導電性斑が殆どなく、安定した導電性を発現する。そのため、本発明のポリエステル繊維は用途展開の上で非常に優れている。
本発明のポリエステル繊維の特徴ある構成は、導電剤を含有するポリエーテルエステル(導電剤含有PEE)が少なくとも繊維表層を全て占めていることであり、ポリエステル繊維は実質的に導電剤含有PEEのみからなるものであっても良い。ここで、実質的に導電剤含有PEEのみからなるとは、本発明の目的を損ねるものを含有しない、すなわち前述した導電剤含有PEEが繊維表層を全て占める際に高い導電性を持ちかつ斑のない優れた導電性を達成するために、斑のない優れた導電性を損ねるものを含まない、という意味である。斑のない優れた導電性は、後述の実施例のC.項で測定される平均抵抗率Pと抵抗率の標準偏差Qとの比R(R=Q/P)の値で評価され、比Rが0.3以下であることが好ましい。そして後述するような様々な用途で安定した導電性が確保されることが好ましいことから、比Rはより好ましくは0.2以下であり、さらに好ましくは0.1以下である。比Rは小さい値をとるほど、繊維長手方向の導電性の斑が小さいということになり、これは安定かつ優れた導電性を有することを意味する。導電性繊維の平均抵抗率が1.0×107[Ω/cm]以下である場合には、比Rは0.1以下であることが好ましい。また、比Rは前述のとおり小さい値をとるほど好ましく、0.001までの値を通常とり得るし、全く繊維長手方向の導電性の斑が無い場合は、0.001以下の値もとり得る。
また、本発明のポリエステル繊維の構成としては、導電剤を含有するポリエーテルエステル(導電剤含有PEE)が繊維表層を全て占め、かつ導電剤含有PEEと他の1種または他の複数種のポリマーとからなる複合繊維であっても良い。
本発明のポリエステル繊維中の導電剤含有PEE以外の他の1種または複数種のポリマー(以下、他のポリマー成分と略記することがある。)は、繊維軸方向に垂直な繊維横断面中で1箇所配置されていても良く、あるいは2箇所以上の複数箇所に配置されていても良い。以下、1箇所であれば「芯」と称し、2箇所以上の複数箇所であれば「島」と称することがある。他のポリマー成分が2箇所以上の複数箇所に配置されている場合には、高々100箇所配置されていることが好ましい。他のポリマー成分が2箇所以上の複数箇所に配置されている場合には、曲げ剛性や引張強度あるいは引張弾性率などの繊維物性が均質になるという点で、他のポリマー成分は繊維軸方向に垂直な繊維横断面において繊維中心点に対して対称となるよう等しく配置されることが好ましい。本発明においては、製糸性に優れ、かつ導電剤含有PEEの補強成分として機能し得ることから、前述の他のポリマー成分を芯とし、導電剤含有PEEを鞘とする芯鞘型複合繊維の構成が特に好ましい態様である。
ここで他のポリマー成分は、導電剤を含まないかあるいは本発明の目的を損ねない範囲において少量の導電剤を含有してもよい。例えば、他のポリマー成分は、本発明のポリエステル繊維の強度や伸度のような導電性以外の他の繊維物性を担う成分であっても、あるいは、他のポリマー成分自身が別の機能を担っても良く、あるいは機能性成分を含有することで別の機能を担わせたものであっても良い。
また、この複合繊維において、他のポリマー成分の、繊維軸方向に垂直な繊維横断面における芯あるいは島の形状としては、円あるいは楕円であっても、三角形や四角形あるいはそれ以上の多角形など、多種多様な形状であっても良い。三角形以上の多角形においては、通常、ポリマー自身の溶融時の挙動で角が丸みを帯びた形状となることがしばしばある。芯あるいは島が円形状であれば、前述の繊維横断面において、曲げに対して等方的な強度(剛性)を有するが、丸形状以外の形状、例えば、楕円や三角形においては、曲げの剛性が曲げる方向において異なるという挙動を示すことがある。特に後述するような、本発明のポリエステル繊維を、例えば、ブラシなどに用いる場合には、芯あるいは島を丸形状以外の三角形や四角形あるいはそれ以上の多角形の形状とすることにより、繊維自身の剛性を高く制御できるため、特に清掃ブラシとして非常に高性能なものとなり得る。
本発明のポリエステル繊維は、様々な用途に用いられるための繊維物性、特に繊維の引張強度や引張初期弾性率が所望のレベルに設定可能で、また製糸性に優れかつ製造装置が簡便な設計となるという点で、導電剤を含有するポリエーテルエステルが繊維表層を全て占め、かつ他のポリマー成分を芯に配置した芯鞘複合繊維であることが好ましい。ここで、芯を形成する導電剤を含有するポリエーテルエステル以外の他のポリマー成分は、1種であっても複数種のポリマーからなるものであっても良い。
繊維軸方向に垂直な繊維横断面における(換言すると繊維中の)導電剤を含有するポリエーテルエステル(導電剤含有PEE)の割合は、目的とする用途に応じて適宜設定すればよいものの、好ましくは10体積%以上100体積%までの範囲で用いることができる。優れた導電性を保ちつつ狙いの繊維物性(例えば、強度、残留伸度および初期引張弾性率等)を達成し得るという点で、ポリエステル繊維中の導電剤含有PEEの割合は、より好ましくは20体積%以上80体積%以下であり、最も好ましくは20体積%以上70体積%以下である。
上記のポリエステル繊維中の導電剤含有PEEの割合は、単繊維の繊維軸方向に垂直な繊維横断面における導電剤含有PEE部分の、単繊維断面積に対する面積比率から求めることができ、下記の実施例のN.項の方法にて測定したものを採用する。
本発明の繊維表層を全て占める樹脂組成物の構成成分であるポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体は、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体から構成されるポリエステル(ポリエーテルエステル)を指す。主たる繰り返し構造単位とは、ポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体部分が、重合原料として60モル%以上、好ましくは80モル%以上、特に好ましくは95モル%以上の分率でポリエーテルエステルを構成するものである。ポリエーテルエステルには、ポリエステルとポリエーテル以外の他の成分、例えば、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリ尿素、ポリウレタンおよびポリオルガノシロキサンなどの成分を40モル%未満、好ましくは20モル%未満、より好ましくは5モル%未満、共重合したものであっても良く、特に好ましくは他の成分が全く共重合されていないポリエーテルエステル、すなわちポリエーテルエステルのホモポリマーである。
従来、汎用的に用いられてきたポリエステル、例えば、PET系ポリマーやPBT系ポリマーの場合は、通常、特にカーボンブラック等の導電剤を10重量%以上の高濃度で含有させた場合には溶融紡糸中の糸切れが多発して全く引き取りができないことから、これ迄、減粘剤添加やカーボン修飾による製糸性の向上など多くの検討がなされてきたが、大きく改善されるものではなかった。また、本発明者らがこれ迄提案した3GT系ポリマーの適用においては、導電剤を20重量%以上のように多量に含有させた場合でも溶融粘度が過度に大きく変化せず、得られるポリエステル繊維の高導電性と溶融紡糸における製糸性や高次加工における工程通過性の大幅な改善を見出していた。しかしながら、それでも更に25重量%以上の高濃度になると、繊維中の導電剤凝集に由来すると推測される繊維物性の低下や、より細い繊維が得られにくいあるいは工程通過性の悪化などが頻度として高くなりやすいなどという現象が見受けられた。
しかしながら、本発明のポリエステル繊維に適用される主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体から構成されかつ導電剤を含有する樹脂組成物は、ポリエーテルエステルと導電剤との親和性が優れることから、均一な微分散化を達成しつつも、導電剤の緻密な構造形成により高導電化に有利な導電パスが生成する。その結果、従来困難であった高い導電性と優れた繊維物性とを具有するポリエステル繊維が得られることを、本発明者らは初めて見出したのである。これにより、従来ポリアミド系ポリマーのみ達成可能であった高い導電性と優れた繊維物性との両立が、ポリエステルであっても同じように高濃度の導電剤を含有させても、高い導電性と優れた繊維物性とを両立し、更に、柔軟性に優れるという特異的な性能を具備する導電性繊維を形成することが可能となったのである。詳細は分かっていないものの、おそらく、ポリエステル成分は、導電剤の均一な微分散化を達成する導電剤と高親和性の成分であり、一方ポリエーテル成分は導電剤の緻密な構造形成による導電パスの生成を助ける導電剤と低親和性の成分であると推測され、これらポリエステルとポリエーテルの種類あるいは組成比率などによって、導電剤の分散状態や構造形成状態を制御し得るのである。
本発明におけるポリエーテルエステルの具体的な共重合組成としては、まず(A)芳香族ポリエステルとポリエーテル(ポリエーテルは「ポリアルキレンオキシド」と称されることがある)と、(B)脂肪族ポリエステルとポリエーテルの2種に分類することができる。上記(A)の芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(3GT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリペンタメチレンテレフタレート(5GT),ポリヘキサメチレンテレフタレート(6GT)、ポリエチレンナフタレート(PEN),ポリプロピレンナフタレート(3GN),ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリペンタメチレンナフタレート(5GN),ポリヘキサメチレンナフタレート(6GN)およびポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCDMT)などが挙げられる。
また、上記(B)の脂肪族ポリエステルとしては、グリコール酸、乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのようなポリヒドロキシカルボン酸や、グリコリド、ラクチド、ブチロラクトン、カプロラクトンなどのポリラクトン、あるいは脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸など)と脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど)とを用いてなる脂肪族ポリエステルなどが挙げられる。
また、上記(A)と(B)におけるポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)およびポリテトラメチレングリコール(PTMG)などが挙げられる。これらの中で好ましい組み合わせは、PETまたは3GTまたはPBTとポリエーテルとの共重合体からなるポリエーテルエステルであり、溶融紡糸時の高い曳糸性を保持しつつ高濃度の導電剤を保持しうる点でより好ましい組み合わせはPBTとポリエーテルとの共重合体であり、高い導電性を発現するために導電剤の好ましい構造形成が可能であるという点で、特に好ましい組み合わせはPBTとPTMGとの共重合体からなるポリエーテルエステルである。
また、本発明における主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体においては、高濃度の導電剤を含有させても導電剤を含有していない通常のポリエーテルエステルとほとんど変わらず、溶融紡糸が達成できるという利点を損ねない範囲で、他の成分を共重合しても良い。
本発明における、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体において、ポリエステルとポリエーテルとの共重合割合については、まずポリエステルがジカルボン酸とジオールとからなるポリエステルである場合には、ポリエーテルを含む全ジオール成分中において、ポリエーテルが0.5モル%〜70.0モル%であることが好ましく、1.0モル%〜50.0モル%であることがより好ましく、2.0モル%〜45.0モル%であることが特に好ましい。また、ポリエステルがヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルである場合には、ヒドロキシカルボン酸とポリエーテルとの全成分中において、ポリエーテルが0.3モル%〜50.0モル%であることが好ましく、0.5モル%〜45.0モル%であることがより好ましく、1.0モル%〜40.0モル%であることが特に好ましい。
本発明のポリエステル繊維においては、導電剤を含有するポリエーテルエステル(導電剤含有PEE)以外の成分(他のポリマー成分)が配置されて(含まれて)いる場合、他のポリマー成分は、主たる成分として繊維形成能を有するポリマーからなるものである。他のポリマー成分としては、例えば、ポリエステル系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリイミド系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマーやその他ビニル基の付加重合により合成される例えばポリアクリロニトリル系ポリマーなどのビニル系ポリマー、フッ素系ポリマー、セルロース系ポリマー、シリコーン系ポリマー、芳香族あるいは脂肪族ケトン系ポリマー、天然ゴムや合成ゴムなどのエラストマー、およびその他多種多様なエンジニアリングプラスチックなどを挙げることができる。
他のポリマー成分としてはより具体的には、例えば、ビニル基を有したモノマーが、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの付加重合反応によりポリマーが生成する機構により合成されるポリオレフィン系ポリマーやその他のビニル系ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、およびポリアクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、例えば、ポリエチレンのみあるいはポリプロピレンのみのように単独重合によるポリマーであっても良いし、あるいは複数のモノマー共存下に重合反応を行うことで形成される共重合ポリマーであっても良い。他のポリマー成分は、例えば、スチレンとメチルメタクリレート存在下での重合を行うとポリ(スチレン−メタクリレート)という共重合したポリマーが生成するが、本発明の目的を損ねない範囲において、このような共重合体であるポリマーであっても良い。
また、他のポリマー成分としては、例えば、カルボン酸あるいはカルボン酸クロリドと、アミンの反応により形成されるポリアミド系ポリマーを挙げることができる。他のポリマー成分は具体的には、ナイロン6、ナイロン7、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6,6、ナイロン4,6、ナイロン6,9、ナイロン6,12、ナイロン5,7およびナイロン5,6などが挙げられるほか、第3、第4の成分が共重合されているポリアミド系ポリマーであっても良い。
また、他のポリマー成分としては、例えば、カルボン酸とアルコールのエステル化反応により形成されるポリエステル系ポリマーを挙げることができる。具体的には、本発明で用いられるポリエステル系ポリマーとしては、例えば、前述のポリエステル系ポリマーを挙げることができる。かかるポリマーとしては、PET、3GT、PBT、5GT、6GT、PEN、3GN、PBNおよびPCDMT等の芳香族ポリエステルや脂肪族ポリエステル、あるいはポリヒドロキシカルボン酸などが挙げられ、本発明の目的を損ねない範囲で他の成分が共重合されているポリエステルであってもよい。
これら他のポリマー成分は、繊維表層の全てを占めるポリエーテルエステルと同様に吸湿性が低く、導電性能への影響がほとんどないという点で、ポリオレフィン系ポリマーやポリエステル系ポリマーが好ましい。さらに、導電剤含有PEEとの界面接着性が良好で剥離が生じがたいという点で、ポリエステル系ポリマーがより好ましく用いられる。ポリエステル系ポリマーにおいても、耐熱性の点から、PET系ポリマー、3GT系ポリマー、PBT系ポリマー、5GT系ポリマー、6GT系ポリマー、ポリ乳酸系ポリマーおよびポリグリコール酸系ポリマーが特に好ましく、融点を幅広く設計可能でかつ柔軟性に優れることから、3GT系ポリマー、PBT系ポリマーおよび6GT系ポリマーが最も好ましく用いられる。
本発明のポリエステル繊維における他のポリマー成分としては、上記の中から選ばれるポリマー1種類を単独で用いても良く、また本発明の目的を損ねない範囲において複数種のポリマーを併用しても良い。
本発明のポリエステル繊維は、ポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなりかつ導電剤を含有する樹脂組成物(導電剤含有PEE)が繊維表面を全て覆ってなるものである。導電剤含有PEEが本発明のポリエステル繊維において、主たる導電性を担い、繊維自体の導電性は導電剤含有PEEの性状によって制御し得るため、所望の導電性能を付与することができ、結果として優れた導電性を有するポリエステル繊維が得られる。
導電剤含有PEEに含有される導電剤は、多種多様のものを採用することができ、導電性のカーボンブラック(以下、CBと略記することがある。)や金属酸化物など、必要とする用途に応じて適宜採用して用いることができる。具体的には、まず好ましい導電剤として、導電性のカーボンブラックが挙げられる。このようなCBとしては、例えば、ファーネス法により得られる導電性ファーネスブラック、ケッチェン法により得られる導電性ケッチェンブラック、アセチレンガスを原料とする導電性アセチレンブラック、カーボンナノチューブ(以下、CNTと略記することがある。)、および気相成長炭素繊維(以下、VGCFと略記することがある。)などが好適に用いられる。
本発明者らは、これら導電性のカーボンブラックのうち、導電性ファーネスブラック(以下、導電性FBと略記することがある。)と導電性アセチレンブラック(以下、導電性ABと略記することがある。)が、従来汎用的に用いられていたPET系ポリマーやPBT系ポリマーあるいは3GT系ポリマーよりも、本発明で採用する主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルであるブロック共重合体に対し、分散性と導電発現性の観点でバランスの取れた優れた親和性を有していることを見出した。すなわち、この優れた親和性から、ポリエーテルエステル中に導電性FBや導電性ABを高濃度で含有せしめながらも優れた紡糸性を保持しつつもこれ迄にない高い導電性を発現することが可能な点で、これらの導電性FBと導電性ABはより好ましい導電剤として用いられる。また一方で、CNTは、その直径が50nm以下では導電性も高く、少量添加で導電剤含有PEEが高い導電性を有することから、好適な導電剤として用いられる。これら導電性のカーボンブラックの導電性は、比抵抗値として5000[Ω・cm]以下のものが好ましく用いられ、特に好ましい比抵抗値は、1.0×10−6[Ω・cm]〜500[Ω・cm]である。ここで比抵抗値は、下記の実施例のE.項(比抵抗の測定方法)にて測定して求める。
また、本発明で用いられる導電剤として、導電性のカーボンブラックを用いた場合、得られる繊維が黒色になることがあって、用途によっては繊維が適用できないことがある。その場合には、黒色以外の導電剤を用いれば良い。そのような導電剤としては、金属、金属酸化物、金属化合物および金属や金属酸化物をコーティングした粒子などが挙げられる。金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、鉄、アルミニウムおよびこれら金属からを少なくとも1種選ばれて含有する合金が挙げられる。特に鉄は、純度が高い粒径の小さい純鉄粒子が容易に入手可能で、しかも比抵抗値が10−5[Ω・cm]以下と非常に小さく、好適に採用することができる。
また、金属化合物としては、硫化銅、ヨウ化銅、硫化亜鉛、および硫化カドミウムなどが挙げられる。また、金属酸化物としては、錫酸化物、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、ジルコニウム酸化物、タングステン酸化物、アンチモン酸化物およびアルミニウム酸化物などが好適なものとして挙げられる。
より好ましい導電剤として、金属酸化物をコーティングしてなる粒子が用いられる。粒子としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化ケイ素および酸化アルミニウムなどが挙げられる。また、コーティングされる金属酸化物としては、錫酸化物、アルミニウム酸化物、アンチモン酸化物、亜鉛酸化物およびインジウム酸化物などが挙げられる。これらの金属酸化物は、1種単独で用いても良くあるいは元素の異なる複数種を混合して用いても良い。
これら金属酸化物をコーティングしてなる粒子の中でより好ましいものとしては、アンチモン酸化物を含有(ドープ)した錫酸化物をコーティングしてなる酸化チタン粒子、アンチモン酸化物を含有(ドープ)したインジウム酸化物をコーティングしてなる酸化アルミニウム粒子、およびアンチモン酸化物を含有(ドープ)した錫酸化物をコーティングしてなる酸化ケイ素粒子などが挙げられる。粒子としての平均粒径が小さく繊維に添加しても強度や伸度などの物理物性への悪影響が小さく、また粒子自体の比抵抗値が高く、黒くない(明度L*が高い)という点で、錫酸化物、亜鉛酸化物、インジウム酸化物、アンチモン酸化物およびアルミニウム酸化物の中から、異なる元素由来の少なくとも2種選ばれてなる金属酸化物をコーティングしてなる粒子が好ましく用いられる。中でも、アンチモン酸化物を含有(ドープ)した錫酸化物をコーティングしてなる酸化チタン粒子が、特に好ましく用いられる。
これらの導電剤は、単一の導電剤を一種選択して用いてもよいし、必要に応じて、発明の目的を損ねない範囲において、複数種を併用して用いてもよいが、上記の導電剤の中でも、特にカーボンブラックが好ましく用いられる。
本発明で用いられる導電剤は、ポリエーテルエステルに含有せしめて繊維を形成する場合に繊維物性を損ねないことが好ましく、また繊維物性を良好に保つために過度に凝集していないことが好ましい。そのため、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなりかつ導電剤を含有する樹脂組成物中の導電剤の分散径(体積平均粒径)Dvは、5.00μm以下であることが好ましい。体積平均粒径Dvは4.00μm以下であることがより好ましく、3.00μm以下であることが特に好ましい。体積平均粒径Dvの下限については、導電剤が全てバラバラに分かれて分散する大きさ(カーボンブラック粒子そのものの大きさ)で、適用するカーボンブラックの種類にも依存する。また、体積平均粒径Dvは、小さい値ほどポリエステル樹脂組成物中での分散径が微細で、導電剤を高濃度添加可能となり、繊維として高い導電性を発現し得るため好ましいものの、好適には0.05μmが下限である。一層高導電化を発現するために、体積平均粒径Dvはより好ましくは0.10μm以上であり、さらに好ましくは0.5μm以上である。
また、導電剤のポリエステル樹脂組成物中の分散分布(多分散指数)Dv/Dnは5.0以下であることが好ましく、より好ましくは4.5以下であり、さらに好ましくは4.0以下である。多分散指数Dv/Dnの下限値は理論的に1.0である。多分散指数Dv/Dnは、その値が小さいほどポリエステル樹脂組成物中での導電剤の分散径が均一であり、得られる糸の強度も高く、高次工程における工程通過時の糸切れも大幅に抑制されるため、好ましい特性を具備し得る。ここで、上記の導電剤の体積平均粒径Dvおよび多分散指数Dv/Dnは、下記の実施例P.の方法にて測定される。
また、前述のカーボンナノチューブ(CNT)については、前述のDv並びDnが測定できないため、別の指標が必要であるが、まずその直径は平均で0.1〜100nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜50nmの範囲である。CNTの直径Dと長さLの比(アスペクト比)L/Dについては、適度な大きさをもつことにより、導電剤含有PEE中でCNT同士が凝集しにくく、あるいは繊維を形成させた場合には繊維の長手方向に略配向して繊維長手方向の導電性が均質になる好ましい特性を有する。このことから、L/Dは10〜10000であることが好ましく、より好ましくは15〜5000であり、さらに好ましくは20〜3000である。ここで、CNTのL/Dは、下記の実施例J.の方法にて測定される。
本発明のポリエステル繊維に含まれる導電剤含有PEE中の導電剤の含有量は、繊維が高い導電性を有すること、および繊維の強度や伸度などの物性が安定していることなどから、導電性ファーネスブラック、導電性ケッチェンブラックおよび導電性アセチレンブラックの場合には10重量%以上40重量%以下であることが好ましく、より好ましくは15重量%以上35重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以上35重量%以下である。導電剤がCNTまたはVGCFの場合には、含有量は0.1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下であり、さらに好ましくは1.0重量%以上10重量%以下である。
また、導電剤が、金属、金属酸化物や金属化合物および金属や金属酸化物をコーティングした粒子などの場合には含有量は10重量%以上90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上85重量%以下であり、さらに好ましくは40重量%以上80重量%以下である。導電剤含有PEE中の導電剤の含有量は、後述のL.項の方法にて測定される。
本発明において、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなりかつ導電剤を含有する樹脂組成物を製造する方法としては任意の方法が採用できる。具体的には、(A)不活性気体の雰囲気下に主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルであるブロック共重合体(ポリエーテルエステル)を溶融した後、導電剤を添加し、エクストルーダや静置混練子のような混練機により常圧もしくは減圧下で混練する方法、(B)通常のポリエーテルエステルの重合反応において、重合反応が停止する以前の任意の段階で導電剤を含有せしめて混練する方法、および(C)ポリエーテルエステルを溶融する以前の任意の段階で粉体あるいは粒体としたポリエーテルエステルと、粉体あるいは粒体の導電剤とをあらかじめ所定の分量で混合、攪拌したものを溶融せしめて、エクストルーダや静置混練子のような混練機により常圧もしくは減圧下で混練する方法、などが挙げられる。簡便に混練が達成できかつ導電剤とポリエーテルエステルとがより微細に混練されることから、上記の(A)または(C)の方法が好ましく、特に(C)の方法が好ましい。
特に、エクストルーダに関しては、1軸あるいは2軸以上の多軸エクストルーダを好適に用いることができるが、ポリエーテルエステル成分と導電剤とを混練した際に導電剤が微細混練するという点で、2軸以上の多軸エクストルーダを採用することが好ましい。
エクストルーダの軸の長さ(l)および軸の太さ(w)の比l/wについては、混練性向上の点でl/wは10以上であることが好ましく、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは30以上である。ポリマーの装置中の滞留時間を鑑み、l/wは200以下であることが好ましい。
このとき導電剤の添加は前述のとおり、エクストルーダに供給する以前の段階で乾式ブレンドしておいても良く、あるいはエクストルーダに配設したサイドフィーダーを用いて溶融したポリエーテルエステルとエクストルーダ中にて混合しても良い。
また、特に静置混練子に関しては、例えば、溶融したポリエーテルエステルの流路を2つあるいはそれ以上の複数に分割して再度合一するという作業(この分割から合一までの作業1回を1段とする)がなされる静置型の混練素子であればよく、より混練性が優れるという点で、静置混練子の段数は5段以上であることが好ましく、10段以上であることが更により好ましい態様である。また、流路の必要長さにも依るものの、静置混練子の段数は50段以下であることが好ましい。
本発明のポリエステル繊維は、平均抵抗率Pが1.0×107[Ω/cm]以下であることが好ましい。平均抵抗率の範囲ついては、後述するような多様な用途、例えば、衣料、アクチュエーター、ブラシローラー、発熱体およびこれらを組み込んでなる様々な製品などにおいて、所望の導電性が付与される。平均抵抗率Pは、小さければ小さいほど導電性が高い、すなわち電気を流し易いため、用途によっては低い平均抵抗率を持つ必要があるものの、繊維表層を全て占めるポリエーテルエステルに最大限含有せしめることが可能な導電剤の量を鑑み、平均抵抗率Pの下限は1.0×100[Ω/cm]であることが好ましい。平均抵抗率Pは、安定して制御可能であることから、1.0×103[Ω/cm]〜1.0×107[Ω/cm]の範囲であることが好ましい。
特に、電子写真装置に組み込むブラシローラーに本発明のポリエステル繊維を用いる際には、ブラシローラーの用いられる部材や装置の特性に応じて後述するような範囲の平均抵抗率のポリエステル繊維が好適に採用される。また、発熱体などの配線物においても、織物や編物となした後に所望の形状とするが、目的とする、流す電圧あるいは電流値に応じて適宜設定すればよいものの、1.0×103〜1.0×107[Ω/cm]の範囲の平均抵抗率であることが好ましい。ここで、平均抵抗率Pは、後述の実施例におけるC項の方法にて測定したものを採用する。
さらに本発明のポリエステル繊維は、温湿度変化、具体的には例えば梅雨の時期のように湿った気候の場合であっても冬季のように低温で乾燥した気候であっても、繊維の導電性能は何ら変わらないことが好ましい。そのため、中温中湿度(23℃湿度55%)での平均抵抗率X[Ω/cm]と、低温低湿度(10℃湿度15%)での平均抵抗率Y[Ω/cm]との比Z(Z=Y/X)が、1〜5の範囲にあることが好ましく、1〜4の範囲にあることがより好ましく、1〜2の範囲にあることが特に好ましい態様である。比Y/Xは、1に近い値をとるほど中温中湿度と低温低湿度との差が小さい、すなわち温度湿度依存性が小さく優れた繊維であるということになる。ここで、平均抵抗率の比は、後述の実施例におけるD項の方法で測定したものを採用する。
本発明のポリエステル繊維は、使用時の環境によっては高温に曝される場合もあることから、耐熱性に優れるという点で、98℃熱水で15分間保持した際の収縮率(熱水収縮率と称する。)が20%以下であることが好ましい。この熱水収縮率は、より好ましくは15%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。熱水収縮率は、低いほど好ましく、0%までのものが好適に用いられる。ここで、熱水収縮率は、下記の実施例G.項の方法にて測定したものを採用する。
本発明のポリエステル繊維は、様々な用途に応じて適宜繊維としての物性を制御すればよいものの、特に本発明で用いられるポリエステル樹脂組成物を構成するポリエーテルエステルの特性から柔軟な繊維とすることが可能で、かつ該特性を様々な用途に広く適用できる点で、5〜22cN/dtexの初期引張弾性率を持つことが好ましく、また、この範囲で安定して製造可能である。特定の用途によっては、更に好ましいとされる初期引張弾性率がある。例えば、電子写真装置の中に組み込まれている清掃装置の部材としてトナーなどの着色剤を除去するために用いられるような場合や、帯電装置の部材で感光体に電荷を付与する部材として用いられる場合、あるいは現像装置の部材においてトナーなどの着色剤を担持する部材として用いられるような場合には、概して初期引張弾性率と高い相関がある剛性の低い繊維が好まれるため、初期引張弾性率が5〜20cN/dtexであることが好ましい。この場合、初期引張弾性率は低いほど好ましい。
ここで初期引張弾性率を好ましいとする22cN/dtex以下とするには、本発明で用いられる主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなりかつ導電剤を含有する樹脂組成物自体をそのまま用いても設計が可能である。また、前述の3GT系ポリマーやPBT系ポリマー、6GT系ポリマーあるいはポリエーテルエステル、特に好ましいものとしてはPBTとポリエーテルのブロック共重合体からなるPBT系共重合ポリマーなどを用いて繊維となすことも好ましい態様である。ここで、初期引張弾性率は、後述の実施例におけるB項の方法で測定したものを採用する。
本発明のポリエステル繊維は、衣料用途や後述するブラシローラー用など様々な用途で形状あるいは特性を安定して満足するために、破断強度が0.5cN/dtex以上であることが好ましい。破断強度は、より好ましくは0.8cN/dtex以上であり、さらに好ましくは1.0cN/dtex以上である。通常、導電性の高い繊維を作製するため導電剤を高濃度で含有せしめたポリエステルのみからなる繊維については、そもそも従来のPET系ポリマーやPBT系ポリマーを適用した場合には本質的に安定して繊維を得ることは困難であった。また、仮に繊維を形成し得た場合であっても、破断強度が1.0cN/dtex未満のように非常に低く、どのような手段を採っても破断強度を高めることは困難であった。しかしながら、本発明の主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとからなるブロック共重合体を用いた場合には、導電剤が高濃度で含有されていたとしても、導電剤が均一に微分散することから特異的に破断強度の高い繊維が得られるのである。この破断強度は、高いほど工程通過性に優れるため好ましいものの、生産性を考慮すると10.0cN/dtex以下であることが好適である。ここで、破断強度は、後述の実施例におけるB項の方法にて測定したものを採用する。
本発明のポリエステル繊維は、特に短繊維となして電気植毛加工を行う際に、より効率的に加工が行えるという点で、比抵抗値が106〜109[Ω・cm]であることが好ましく、より好ましくは107〜108[Ω・cm]である。これら好ましいとされる比抵抗値の値を有する短繊維とせしめるために、導電調製剤等で短繊維を処理することが好ましい。導電調製剤としては、例えば、シリカ系粒子が混合された水系溶剤あるいは有機系溶剤を挙げることができる。その際のシリカ系粒子の粒径は、通常1nm〜200μmの大きさであり、3nm〜100μmの大きさの粒径が好ましい。ここで、比抵抗値は、下記の実施例E.項の方法にて測定したものを採用する。
本発明のポリエステル繊維は、本発明の目的を損ねない範囲で、艶消剤、難燃剤、滑剤、減粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤および末端基封止剤等の添加剤を少量保持しても良い。また、これら添加剤は、本発明のポリエステル繊維が複合繊維の場合には、導電剤を含有するポリエーテルエステル(導電剤含有PEE)および/または導電剤を含有するポリエーテルエステル以外の成分のいずれに保持されていても良い。
次に、本発明のポリエステル繊維の好ましい製造方法につて例示説明する。
本発明のポリエステル繊維は、溶融紡糸、乾式紡糸、湿式紡糸および乾湿式紡糸などの溶液紡糸など、種々の合成繊維の紡糸方法を採用して製造することができる。ポリエーテルエステル中の導電剤を高濃度で含有せしめることが容易かつ可能であり、また繊維形状を精密に制御可能であることから、溶融紡糸により製造することが好ましい。導電剤を含有するポリエーテルエステルを単独で、あるいは導電剤を含有するポリエーテルエステルが繊維表層を全て占めるように他のポリマー成分と共に複合紡糸することにより、本発明のポリエステル繊維を好適に得ることができる。
溶融吐出された繊維(未延伸糸)は、導電剤含有PEEを単独で紡糸する場合にはポリエーテルエステルのガラス転移温度(Tg;℃)以下の温度に冷却され、また複合繊維として溶融吐出される場合には繊維を形成するポリマー成分(導電剤含有PEEもしくはその他のポリマー成分)のうち低い方のTg(℃)以下の温度に冷却され、処理剤を付着しなくともよいが、好ましくは処理剤を付着せしめた後、通常100〜10000m/分の引取速度で引き取られる。引取速度の上限は好ましくは4000m/分以下であり、より好ましくは3000m/分以下であり、特に好ましくは2500m/分以下である。また、生産性を考慮して、下限としては好ましくは500m/分以上、より好ましくは700m/分以上の引取速度で引き取られる。本発明で用いられる主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとからなるブロック共重合体から構成されるポリエーテルエステルは、過度に高い引取速度で引き取った場合に、工程安定性に劣る場合もあることから、最も好ましい引取速度は700〜2500m/分の範囲である。
ここで口金孔から吐出される繊維一束の本数(糸条の繊維本数)は、目的とする使用方法あるいは用途に応じて適宜選択すればよく、1本のモノフィラメントの状態であっても、3000本以下の複数糸条からなるマルチフィラメントでも良い。諸物性の安定した繊維が得られ、各種用途に好適に採用されるという点で、本数は2〜500本が好ましく、より好ましくは3〜400本である。また、付着せしめる処理剤は、繊維の用途に応じて適宜用いることができ、含水系あるいは非含水系の処理剤がここに採用され得る。本発明のポリエステル繊維を用いてなるブラシが、電子写真装置の感光体に接触して用いられる場合には、感光体が劣化することを防止するために、感光体を劣化せしめるような化合物が含有されていないことが好ましい。
前述のようにして繊維を引き取った後、巻き取ることなくもしくは一旦巻き取った後、繊維を構成するポリマー成分(導電剤含有PEEもしくはその他のポリマー成分)のうち、高い方のガラス転移温度(Tg)+100℃以下の温度に加熱して、好ましくはガラス転移温度が高い方のガラス転移温度Tg−20℃〜ガラス転移温度が高い方のTg+80℃の温度範囲に加熱して、延伸糸の残留伸度が5〜100%となる倍率で、好ましくは延伸糸の残留伸度が10〜50%となる倍率で、すなわち1.1〜4.0倍の範囲の延伸倍率で、1段目の延伸を施す。ここで、一旦延伸した後(すなわち1段目の延伸を終えた後)、さらに1倍以上2倍以下の倍率で2段目の延伸を施してもよい。
延伸した後、繊維は最終延伸温度以上で、かつ導電剤含有PEEもしくはその他のポリマー成分のどちらか低い方の融点(Tm)以下の温度で熱処理することが好ましい。延伸後に高温で熱処理を施すことにより、より耐熱性が高く、かつ、前述の平均抵抗率Pと抵抗率の標準偏差Qとの比R(R=Q/P)が低く、繊維の長手方向の導電性の斑が小さい優れた繊維となすことができる。ここで、TgとTmは、後述の実施例におけるH項の方法にて測定したものを採用する。
さらに、上記の熱処理の前または熱処理の後で、0.9倍以上1.0倍未満の倍率で繊維をごくわずかに収縮させてリラックス処理を施すことが好ましい。これによっても、前述の平均抵抗率Pと抵抗率の標準偏差Qとの比R(R=Q/P)が低く、繊維の長手方向の導電性の斑が小さい優れた繊維となすことができる。
上記の延伸方法あるいは延伸後の熱処理方法としては、加熱されたピン状物、ローラー状物、プレート状物などの接触式ヒーターや加熱した液体を用いた接触式バス、あるいは加熱気体、加熱蒸気および電磁波などを用いた非接触式加熱媒体などを採用することが可能である。これらの方法のうち、装置が簡便で加熱効率が高いことから、加熱されたピン状物、ローラー状物およびプレート状物などの接触式ヒーターや加熱した液体を用いた接触式バスなどが好ましく、加熱されたローラー状物が特に好ましく用いられる。熱処理された繊維は、空気中を走行中に冷却されるものの、熱処理手段の下流に−50℃〜50℃の範囲の冷却媒体にて冷却されることが好ましい。最終的には、冷却媒体を通過した後、巻き取られて繊維を得る。
本発明のポリエステル繊維は、織物あるいは編物、さらには様々な衣料用途に用いる場合には、前述の延伸の後、もしくは延伸に代えて仮撚り加工を施しても良い。仮撚り加工において繊維は、延伸糸あるいは未延伸糸を加熱することなくもしくは加熱されたピン状物、ローラー状物、プレート状物、あるいは非接触型のヒーターなどにより加熱した後、ディスク状物あるいはベルト状物によって仮撚り加工される。延伸仮撚り加工された繊維は、そのままもしくは特に制限されるものではないものの熱セットされた後に巻き取られることが好ましい。また、本発明のポリエステル繊維は、前述仮撚り加工の代わりに撚糸加工を施しても良い。
本発明のポリエステル繊維は、例えば、織物、編物および不織布のような通常の繊維製品とする他、それらを用いた繊維ブラシ、衣料、敷物、短繊維を用いた植毛体、あるいは電気を流すことが可能な配線物などにおいて、それを少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維製品となすことができる。
次に、ポリエステル繊維製品について具体的に詳述する。
本発明のポリエステル繊維は、用いられ得る用途にあるいは形状に即して、少なくとも一部にあるいは全部に用いられた織物となすことができる。ここで、例えば1重織物としては、ブロード、ボイル、ローン、ギンガム、トロピカル、タフタ、シャンタンおよびデシンなどの平織、デニム、サージおよびギャバジンなどの綾織、サテンやドスキンなどの朱子織、バスケット、パナマ、マット、ホップサックおよびオックスフォードなどのななこ織、グログラン、オットマンおよびヘアコードなどの畝織、フランス綾、ヘリンボーンおよびブロークンツイルなどの急斜文、緩斜文、山形斜文、破れ斜文、飛び斜文、曲り斜文および飾斜文、不規則朱子、重ね朱子、拡げ朱子および昼夜朱子、蜂巣織、ハック織、梨地織およびナイアガラなどが挙げられる。
また、2枚の織物を合わせて1枚の織物となした2重織物としては、ピケやフクレ織などの経2重織、ベッドフォードコードなどの緯2重織、風通織や袋織などの経緯2重織などが挙げられる。また、繊維が起毛したパイル織物としては、別珍やコールテンなどの緯パイル織や、タオル、ビロードおよびベルベットなどの経パイル織などが挙げられる。その他に、紗織や絽織などのからみ織物、ドビー織やジャガード織などの紋織物などを挙げることができる。特に、後述の繊維ブラシ用織物に用いられるものとしては、繊維が起毛したパイル織物が好ましい。
織物を作製するために用いられる本発明のポリエステル繊維の形態は、生糸、撚糸および仮撚り加工糸など、また長繊維(フィラメント)および短繊維(ステープル)など、いずれの形態も使用可能である。
また、本発明のポリエステル繊維は、用いられうる用途にあるいは形状に即して、少なくとも一部にあるいは全部に用いられた編物となすことができる。ここで編物としては、天竺やシングルなどの平編、ゴム編やフライスなどのリブ編、リンクスなどのパール編の他、鹿の子、梨地、アコーディオン編、スモールパターン、レース編、裏毛編、片畦編、両畦編、リップル、ミラノリブおよびダブルピケ等の緯編、トリコット、ラッセルおよびミラニーズなどの経編などを挙げることができる。特に、後述の繊維ブラシ用編物に用いられるものとしては、裏毛編やあるいはパイル状繊維を編物表面に突出させるための起毛処理を施した編物が好ましい。編物を作製するために用いられる本発明のポリエステル繊維の形態は、生糸、撚糸および仮撚り加工糸など、また長繊維(フィラメント)および短繊維(ステープル)などいずれの形態も使用可能であり、特に制限はない。
また、本発明のポリエステル繊維は、用いられうる用途にあるいは形状に即して、少なくとも一部にあるいは全部に用いられた不織布となすことができる。
本発明のポリエステル繊維が少なくとも一部に用いられてなる前述の織物あるいは編物は、常法による精練、染色および熱セット等の加工を受けてもよい。また、前述の不織布であれば、精練、染色および熱セット等の他、艶付けプレス、エンボスプレス、コンパクト加工、柔軟加工およびヒートセッティングなどの物理的処理加工や、ボンディング加工、ラミネート加工、コーティング加工、防汚加工、撥水加工、帯電防止加工、防炎加工、防虫加工、衛生加工および泡樹脂加工などの化学的処理加工や、その他にマイクロ波応用や、超音波応用、遠赤外線応用、紫外線応用および低温プラズマ応用などの応用処理がなされていてもよい。
また、本発明のポリエステル繊維が少なくとも一部に用いられてなる前述の織物、編物、あるいは不織布は、本発明のポリエステル繊維と、本発明のポリエステル繊維とは異なる合成繊維、半合成繊維および天然繊維など、例えば、セルロース繊維、ウール、絹、ストレッチ繊維およびアセテート繊維から選ばれた少なくとも1種類の繊維とを用いた(混用した)ものであってもよい。また、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部にあるいは全部に用いた織物、編物あるいは不織布は、上記の混用したものも含め、染色されていてもよい。
本発明のポリエステル繊維は、導電性に優れることから繊維そのものとしても非常に有用で、繊維の一形態としては前述のとおり好ましくは0.05〜150mmの長さの短繊維として用いられる。短繊維は、フィラメントを1つの糸条単独であるいは複数の糸条を束ねたトウになして切断されてなるものであり、特に0.1〜10mmの長さの短繊維としたものは、例えば、電気植毛加工や吹きつけ加工などの多種多様な方法によって、基盤に植設されてなる植毛体とすることができる。電気植毛体において、植毛加工により植設された繊維は、その50%以上が基盤に対し10度から垂直(すなわち90度)の概ね直立状態に植設される。ここで、本発明の目的を損ねない範囲で、植毛体となす場合に用いられる短繊維には、本発明のポリエステル繊維からなる短繊維以外に、本発明のポリエステル繊維ではない他の繊維からなる短繊維を混用して植設してもよい。
また、植毛体は、基盤に短繊維を接着して植設してもよく、接着する場合には、例えば、アクリル系、ウレタン系およびエステル系の接着剤を用いて接着することができる。ここで接着剤の層の厚さは、1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いてもよい。また、植設される基盤は、前記の植毛体を組み込む装置や用いられる接着剤に応じて適宜採用すればよいが、合成樹脂、天然樹脂、合成繊維、天然繊維、木材、鉱物あるいは金属からなるフィルム、シート、紙、板および布帛などが好適に採用でき、あるいは各種用途の部材そのものである金属加工体、合成もしくは天然樹脂加工体もしくは成形体の基盤に直接植毛してもよい。ここで特に、前記の接着剤との親和性を高めるために、親水化処理してなる合成もしくは天然樹脂あるいは金属からなるシートを用いることが好ましい。基盤が前記のフィルム、シート、紙、板および布帛など表裏を形成している素材であれば、用途あるいは目的に応じてその表面および裏面の両面に植設することができる。植毛体は、その使用方法あるいは用途として、別の基盤に貼り付けて用いてもよいし、あるいは例えば次に示す導電性を有するため導電性の繊維ブラシローラーとして用いることができる。
具体的には、本発明のポリエステル繊維からなる前記の短繊維を少なくとも一部に用いてなる植毛体を、少なくとも一部に用いてなる繊維ブラシとして形成し用いることができる。特に、繊維が棒状物体に直接植設された繊維ブラシローラーであることが好ましい。ここで用いられる短繊維は、上記のように、棒状物体に植設される際に、気体により短繊維を吹き付けてもよく、電気植毛加工を行ってもよいが、棒状物体の表面に概ね直立したものが効率よく得られることから、電気植毛加工により得られることが好ましい。このとき短繊維は、その50%以上が棒状物体の表面において10度から垂直(すなわち90度)の概ね直立状態に接着される。ここで、本発明の目的を損ねない範囲で、用いられる短繊維には、本発明のポリエステル繊維からなる短繊維以外に、本発明のポリエステル繊維ではない他の繊維からなる短繊維を混用して植設してもよい。また、接着して植設する際の接着剤としては、例えばアクリル系、ウレタン系およびエステル系の接着剤が用途あるいは目的に応じて種々選択されて用いられる。ここで接着剤の層の厚さは、1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いてもよい。
前述の棒状物体の芯となる主たる材質は、用いられる用途あるいは目的に応じて適切なものを採用すればよく、金属、合成樹脂、天然樹脂、木材および鉱物などから単独で、もしくは複数種を組み合わせて選ばれるが、後述する電子写真装置に組み込む部材として用いる場合には、主として金属からなることが好ましい。さらに、棒状物体が金属である場合には、該金属の少なくとも一部もしくは必要とする部分の全面を中間層が覆い、その上に前記の織物および/または編物および/または不織布が接着されるか、あるいは短繊維が接着して植設されることが好ましい。この中間層として用いられる素材は、主としてクッション性を棒状物体に付与する、あるいはブラシ状の繊維の弾性・剛性のみでは達成し得ない場合に補助的に弾性・剛性を担うものであり、後述する例えば清掃装置におけるトナー除去性能、あるいは現像装置におけるトナー付与性能を格段に向上せしめる。中間層には、例えば、ウレタン系素材、エラストマー素材、ゴム素材およびエチレン−ビニルアルコール系素材などが好適に用いられる。中間層の厚みは、0.05〜10mmであることが好ましく、さらに必要に応じて前述の導電性制御剤あるいは磁性制御剤が添加されていてもよい。
本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる織物、編物あるいは不織布は、基盤と接合して布帛複合体とすることができる。この場合、織物であればパイル織りあるいは処理により織物表面に起毛や糸端があるもの、また編物であればパイル状の繊維起毛があるものもしくは起毛処理してパイルあるいは糸端が編物表面にあるものが、ポリエステル繊維ブラシローラーにおいて、より機能が高められる場合があり好ましく用いられる。接合する際に接着して形成させる場合には、例えば、アクリル系、ウレタン系およびエステル系の接着剤を用いて接着することができる。ここで接着剤の層の厚さは、1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いてもよい。
また、接着される基盤は、布帛複合体を組み込む装置や用いられる接着剤に応じて適宜採用すればよいが、合成樹脂、天然樹脂、合成繊維、天然繊維、木材、鉱物あるいは金属からなるフィルム、シート、紙、板、あるいは他の布帛などが好適に採用でき、あるいは各種用途の部材そのものである金属加工体、合成もしくは天然樹脂加工体もしくは成形体の基盤に直接接着してもよい。ここで特に接着剤との親和性を高めるために、基盤は、親水化処理してなる合成もしくは天然樹脂あるいは金属からなるシートであることが好ましい。そして該基盤が前記フィルム、シート、紙、板、布帛など表裏を形成している素材であれば用途あるいは目的に応じてその表面および裏面の両面に織物、編物あるいは不織布を接着して布帛複合体となすことができる。布帛複合体は、その使用方法あるいは用途として、別の基盤に貼り付けて用いてもよいし、あるいは例えば次に示す導電性を有するため、導電性のポリエステル繊維ブラシとして用いることができる。
本発明のポリエステル繊維からなる織物および/または編物および/または不織布は、少なくとも一部に用いられるかあるいは全部に用いて、ポリエステル繊維ブラシを形成することができる。特に形態が安定している点では、織物を用いることが好ましい。ここで用いられる織物および/または編物および/または不織布は、棒状物体に接合してポリエステル繊維ブラシローラーを形成する際に、棒状物体の機能的に必要とされる長さ(すなわち巻き幅)分だけカットしたものを一周で巻き付け接合してもよく、あるいは棒状物体の長さの数分の一〜数十分の一の長さの幅にスリット状にカットしたものを、棒状物体にスパイラル状に巻き付けて接合してもよい。接合する際にはあらかじめ凹凸を棒状物質に付けるなどして嵌合してもよいが、確実に接合するという点では接着剤を用いて接着することが好ましい。
ここで用いられる接着剤は、用途あるいは目的に応じて適宜採用すれば良く、アクリル系、エステル系およびウレタン系の接着剤など種々のものを採用できる。また、接着剤には、必要に応じてカーボンブラックや金属などの導電性制御剤あるいは鉄、ニッケル、コバルト、モリブデンなどの金属あるいはこれら金属の酸化物あるいはこれらの混合物などの磁性制御剤などが添加されていてもよい。ここで接着剤の層の厚さは、1〜500μmであることが好ましく、単層あるいは必要に応じて、複数種の接着剤を混合してもしくは複数層に分けて用いてもよい。さらに、織物および/または編物および/または不織布は、接着される以前の段階で接着面に102〜1010Ω・cmの比抵抗を有する導電処理剤を施してもよく、もしくは導電性シートあるいは導電性膜などの素材を貼り合わせてもよい。
本発明のポリエステル繊維は、安定した導電性を有しかつ所望の抵抗率に制御することが可能であることから、一定の電圧を印加した際に微弱な電流を流すことが可能であり、様々な配線物を形成させることができる。これを利用して、その一例として、微弱な電流で信号を送られて制御・駆動されるアクチュエーターを形成することができる。このときに繊維の長さについては、長繊維(フィラメント)であっても前述のような短繊維であってもよい。アクチュエーターは、具体的に、例えば人間の筋肉と同じで微弱な電流を信号として伝達し、駆動することができるため、本発明のポリエステル繊維はこのアクチュエーターの電気信号回路に用いることができる。
また、配線物の一例として、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部あるいは全部に用いてなる発熱体として用い、形成することもできる。このときに繊維の長さについては、長繊維(フィラメント)であっても前述のような短繊維であってもよい。発熱体となした場合に、本発明のポリエステル繊維は、導電性に優れ、しかも必要とする平均抵抗率[Ω/cm]に設計することが可能であるため、印加電圧やターゲットとする温度などに応じた発熱体とし得る。一定の電圧をかけることにより、本発明のポリエステル繊維は抵抗体として機能し発熱する。発熱体を設計する際には、例えば、ごく少量の温度上昇でよい場合には本発明のポリエステル繊維を数本ごとに経糸および/または緯糸として用いることが好ましい。または暖めるべき場所が面状である必要が生じるときには、本発明のポリエステル繊維を経糸あるいは緯糸に用いるときに、より本数を増やせば面状で温度が上がり易くなり、極限的には、経糸および緯糸の全てに本発明の繊維を用いて織物を形成すればよい。発熱体は、織物ではなく編物であってもよい。
本発明のポリエステル繊維は、少なくとも一部あるいは全部に用いてなる衣料となすことができる。このときに繊維の長さについては、長繊維(フィラメント)であっても前述のような短繊維であってもよい。衣料となした場合に、例えば、導電性に優れることで冬季あるいは乾燥時の静電気発生を抑制することができるなど、より快適な着心地となるし、あるいは埃を寄せ付けにくいことから、手術衣あるいは半導体製造時の作業衣など防塵衣料を形成し得る。その際には、本発明のポリエステル繊維を、数本ごとに経糸および/または緯糸として用いることが好ましい。また、副次的な効果として、本発明のポリエステル繊維には導電剤が多量に含有されていることから繊維の熱伝導性が向上し、着衣時に瞬時に熱を奪う接触冷感素材やあるいは冬季に寒い外部から暖かい室内に入ったとき直ぐに体が温まる温感素材などとして利用することができる。
本発明のポリエステル繊維は、少なくとも一部あるいは全部に用いてなる敷物となすことができる。敷物としては、例えば、屋内外、車両内に敷くカーペットやマットおよび床材などを挙げることができる。このときに繊維の長さについては、長繊維(フィラメント)であっても前述のような短繊維であってもよい。敷物となした場合に、例えば、導電性に優れることで歩行時の静電気発生を抑制することができるなど、より快適なものとなるし、あるいは埃を寄せ付けにくいことから防塵性も優れ汚れにくいという特性を有する。敷物を形成させる際には、本発明のポリエステル繊維を、数本ごとに経糸および/または緯糸として用いることが好ましい。また、副次的な効果として本発明のポリエステル繊維は、導電性に優れることで、前述の発熱体としての態様も組み合わせて、冬季あるいは寒冷地での暖房素材として利用することができる。
本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる織物および/または編物および/または不織布を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラー、あるいは短繊維を少なくとも一部に用いた植毛体を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラーは、用いている本発明のポリエステル繊維の導電性に由来して、例えば、電子写真装置の中に組み込まれている清掃装置の部材として好適に用いられる。清掃装置の中でブラシローラーは、回転しながら、必要であれば電気を印加されながら、例えば、電子写真装置の中であれば転写されなかった残存着色剤(トナー)などの不要物を捕捉して除去する。本発明のポリエステル繊維を用いた場合には、前述のとおり、温度および湿度変化がある場合にも安定した導電性能を有する繊維であることから、この除去性能が格段に優れるのである。また、ポリエステル繊維ブラシローラーの清掃装置内での使用方法としては、感光体にポリエステル繊維ブラシローラーが直接接触して清掃すること以外に、ポリエステル繊維ブラシローラーあるいは従来技術であればブレード状の部材のような感光体を清掃する部材を清掃するためのブラシローラーとして、すなわち清掃装置自体を清掃するもの、もしくは回収した不要着色剤(トナー)を別の場所に移送するためのポリエステル繊維ブラシローラーとしても用いられる。また、前記の清掃装置には、本発明のポリエステル繊維ブラシローラーを、目的、効果および清掃の機構に応じて、1本用いてもあるいは2本以上の複数本用いてもよい。
本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる織物および/または編物および/または不織布を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラー、あるいは短繊維を少なくとも一部に用いた植毛体を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラーは、用いている本発明のポリエステル繊維の導電性に由来して、電子写真装置に用いられ得る帯電装置に好適に組み込まれて用いられる。
ブラシローラーを用いてなる帯電装置の性能は、ブラシローラーの導電性能、すなわち導電性繊維の性能に依存するが、本来の目的である感光体を均一に帯電できることはもとより、電子写真装置内の環境変化、すなわち電子写真装置が稼働中徐々に変化する温度や湿度の変化、あるいは季節による温度や湿度変化に対してブラシローラーの導電性は全く変化しないことが求められる。それに対して、本発明のポリエステル繊維は、環境変化に対して導電性は全く変化することがないため、感光体の帯電斑が起こりにくく、非常に優れた帯電装置となる。加えて、電子写真装置の感光体表面に、清掃が不十分なために残存したトナーがあった場合にも、ブラシローラーはブラシ状であって、清掃ローラーを兼ねることができるため、現像あるいは印刷時の汚染がない、もしくは殆どないという点でも優れている。さらには、電子写真装置を小型化する場合には、前記の清掃装置および帯電装置を個別に設置することなく、清掃装置兼帯電装置として省スペース化を図ることも可能であるため、その点でも格段に優れている。また、帯電装置中には、目的や機構に応じて前記のブラシローラーを1本あるいは2本以上の複数本用いてもよい。
本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる織物および/または編物および/または不織布を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラー、あるいは前記短繊維を少なくとも一部に用いた植毛体を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラーは、用いている本発明のポリエステル繊維の導電性に由来して、現像装置に好適に組み込まれて用いられる。現像装置は、電子写真装置においては、前記の帯電装置により一様に帯電された感光体表面にレーザーによって描かれた潜像を顕像化するものであるが、電子写真装置内の環境変化に対してもブラシローラーの抵抗率変化がないことから、顕像化するためのトナーが均一に感光体に供給され顕像化し、得られた現像物あるいは印刷物は汚染あるいは印刷斑のない、もしくは殆どない非常に美しいものとなるため、格段に優れている。
本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる織物および/または編物および/または不織布を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラー、あるいは前記短繊維を少なくとも一部に用いた植毛体を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維ブラシローラーは、用いている本発明のポリエステル繊維の導電性に由来して、後述する電子写真装置に用いられ得る除電装置に好適に組み込まれて用いられる。特に、電子写真装置に用いる際には、ブラシローラーの導電性繊維が安定かつ斑のない除電効果を発現し、通常、除電装置のあとに配設される前記清掃装置での清掃効果をより高めることが可能である他、電子写真装置を小型化する場合にはブラシローラーを用いることにより除電装置兼清掃装置として組み込むことができ、格段に優れている。
本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維製品を組み込んだ、清掃装置および/または帯電装置および/または現像装置および/または除電装置を用いてなる電子写真装置として、具体的には、レーザービームモノクロプリンター、レーザービームカラープリンター、発光ダイオードを用いたモノクロあるいはカラープリンターモノクロ複写機、カラー複写機、モノクロまたはカラーファクシミリあるいは多機能型複合機、およびワードプロセッサーなどを挙げることができる。
帯電した感光体にレーザーおよび/または発光ダイオードで潜像を描きトナーを用いて顕像化するメカニズムにより現像あるいは印刷を行う装置は、本発明のポリエステル繊維を用いていることから、電子写真装置内の環境変化、特に温度や湿度変化によらず安定した清掃・帯電・現像・除電性能を有する。また、得られた印刷あるいは現像物は、モノクロの場合はもとより、複数種のトナーをかつ多量に用いるカラーの場合は特に非常に美しいものとなる。さらには、電子写真装置の駆動速度をより高める、すなわち、単位時間あたりの印刷あるいは現像速度(枚数)を高めることが可能となる。また、本発明のポリエステル繊維を用いてなる電子写真装置は、さらなる小型化、省スペース化および省電力化を図ることができる。
以下、実施例により本発明を具体的かつより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに制限されるものではない。実施例中の物性値は、下記の方法によって測定した。
A.繊度[dtex]および単繊維繊度[dtex]の測定
繊維(マルチフィラメント)を長さ100m分カセ取りし、そのカセ取りした繊維の重量(g)を測定して得た値に100を掛ける。同様に測定して得た3回の平均値を、その繊維の繊度とした。単繊維繊度については、上記の繊度をフィラメントを構成する単繊維の本数で割った値を単繊維繊度[dtex]とした。
繊維(マルチフィラメント)を長さ100m分カセ取りし、そのカセ取りした繊維の重量(g)を測定して得た値に100を掛ける。同様に測定して得た3回の平均値を、その繊維の繊度とした。単繊維繊度については、上記の繊度をフィラメントを構成する単繊維の本数で割った値を単繊維繊度[dtex]とした。
B.繊維の初期引張弾性率、残留伸度および破断強度の測定
オリエンテック社製テンシロン引張試験機(TENSIRON UCT−100)を用い、未延伸糸であれば初期試料長50mm、引張速度400mm/分で、また延伸糸であれば初期試料長200mm、引張速度200mm/分で初期引張弾性率(延伸糸のみ)、強度および残留伸度をそれぞれ測定し、5回測定した平均値をそれぞれの測定値とした。初期引張弾性率は、チャート紙にチャート速度100cm/分、応力フルレンジ500gとして記録して、引張初期の曲線の傾きから求めた。
オリエンテック社製テンシロン引張試験機(TENSIRON UCT−100)を用い、未延伸糸であれば初期試料長50mm、引張速度400mm/分で、また延伸糸であれば初期試料長200mm、引張速度200mm/分で初期引張弾性率(延伸糸のみ)、強度および残留伸度をそれぞれ測定し、5回測定した平均値をそれぞれの測定値とした。初期引張弾性率は、チャート紙にチャート速度100cm/分、応力フルレンジ500gとして記録して、引張初期の曲線の傾きから求めた。
C.平均抵抗率P[Ω/cm]および平均抵抗率Pと抵抗率の標準偏差Qとの比R(R=Q/P)の測定
中温中湿度(温度23℃、湿度55%)で、測定すべき試料を少なくとも該雰囲気中に1時間保持した後、測定した。送糸ローラーと巻取ローラーからなる1対の鏡面ローラーで糸を走行させる際に、ローラー間に、東亜DKK製絶縁抵抗計SM−8220に接続された2本の棒端子からなるプローブに走行糸が接するように設置した装置で、棒の太さφ2mm、棒端子間で接する糸の距離2.0cm、印加電圧100V、送糸速度60cm/分、ローラー間の糸張力が0.05〜0.1cN/dtexの範囲となるようにして(この範囲であれば測定値に差はない)、絶縁抵抗計でのサンプリングレート0.2秒で120cmの長さ分、抵抗値を測定して、得られた値の平均[Ω]を棒端子間で接する糸の距離(2.0cm)で割った値を平均抵抗率P[Ω/cm]とした。また同時に、得られた全ての抵抗値の標準偏差Qを算出した後、上記のPとQとの比R(R=Q/P)を算出した。
中温中湿度(温度23℃、湿度55%)で、測定すべき試料を少なくとも該雰囲気中に1時間保持した後、測定した。送糸ローラーと巻取ローラーからなる1対の鏡面ローラーで糸を走行させる際に、ローラー間に、東亜DKK製絶縁抵抗計SM−8220に接続された2本の棒端子からなるプローブに走行糸が接するように設置した装置で、棒の太さφ2mm、棒端子間で接する糸の距離2.0cm、印加電圧100V、送糸速度60cm/分、ローラー間の糸張力が0.05〜0.1cN/dtexの範囲となるようにして(この範囲であれば測定値に差はない)、絶縁抵抗計でのサンプリングレート0.2秒で120cmの長さ分、抵抗値を測定して、得られた値の平均[Ω]を棒端子間で接する糸の距離(2.0cm)で割った値を平均抵抗率P[Ω/cm]とした。また同時に、得られた全ての抵抗値の標準偏差Qを算出した後、上記のPとQとの比R(R=Q/P)を算出した。
D.中温中湿度(温度23℃、湿度55%)での平均抵抗率Xと低温低湿度(温度10℃、湿度15%)での平均抵抗率Yとの平均抵抗率の比Z(Z=Y/X)(温湿度変化Z)
中温中湿度については、上記のC.項の測定方法を採用し、また低温低湿度においても上記のC.項と同様に測定して平均抵抗率を求め、それぞれ得た平均抵抗率XとYの比Z(Z=Y/X)を求めた。
中温中湿度については、上記のC.項の測定方法を採用し、また低温低湿度においても上記のC.項と同様に測定して平均抵抗率を求め、それぞれ得た平均抵抗率XとYの比Z(Z=Y/X)を求めた。
E.比抵抗値の測定方法
測定は、前記Dの中温中湿度で測定すべき試料を少なくとも該雰囲気中に1時間保持した後、測定した。測定物が長さ100mm以上の繊維状のものである場合には、繊維束を1000dtexの束にして50mmの長さに切断し(このとき、繊維端面は斜めにカットする)、端面に導電性ペーストを塗布してから電極を取り付けて500Vで測定した。また、測定物が長さ100mm未満の繊維状物あるいは粉体状のものである場合は、長さ10cm、幅2cm、深さ1cmの、両端面に電極を有する絶縁体の箱形容器に、10MPaの圧力で充填して密封したのち測定して、単位体積当たりの比抵抗値[Ω・cm]に換算して求めた。ガット状のものについては、1回の測定において、直径D(0.2〜0.3cmの範囲の直径のもの)で長さ12cmのガットについて、テスターを用いてテスターの2本の端子を任意の10cmの間隔でガットに押しつけ、その抵抗値R[Ω]を測定し、次式からガットの比抵抗値を求めた。
・比抵抗値=R×(D/2)2×π/10
そして5本の異なるガットについて各々1回ずつ比抵抗値を測定し、5回の平均値をそのガットの比抵抗値とした。
測定は、前記Dの中温中湿度で測定すべき試料を少なくとも該雰囲気中に1時間保持した後、測定した。測定物が長さ100mm以上の繊維状のものである場合には、繊維束を1000dtexの束にして50mmの長さに切断し(このとき、繊維端面は斜めにカットする)、端面に導電性ペーストを塗布してから電極を取り付けて500Vで測定した。また、測定物が長さ100mm未満の繊維状物あるいは粉体状のものである場合は、長さ10cm、幅2cm、深さ1cmの、両端面に電極を有する絶縁体の箱形容器に、10MPaの圧力で充填して密封したのち測定して、単位体積当たりの比抵抗値[Ω・cm]に換算して求めた。ガット状のものについては、1回の測定において、直径D(0.2〜0.3cmの範囲の直径のもの)で長さ12cmのガットについて、テスターを用いてテスターの2本の端子を任意の10cmの間隔でガットに押しつけ、その抵抗値R[Ω]を測定し、次式からガットの比抵抗値を求めた。
・比抵抗値=R×(D/2)2×π/10
そして5本の異なるガットについて各々1回ずつ比抵抗値を測定し、5回の平均値をそのガットの比抵抗値とした。
F.溶融粘度の測定
(株)東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、窒素雰囲気下、バレル径9.55mm、ノズル長10mm,ノズル内径1mmで、ポリマー押出ピストン速度1mm/分(剪断速度12.16[1/秒])で、サンプル充填直後から10分経過したのち測定した。5回測定した値の平均値を各剪断速度での溶融粘度とした。
(株)東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、窒素雰囲気下、バレル径9.55mm、ノズル長10mm,ノズル内径1mmで、ポリマー押出ピストン速度1mm/分(剪断速度12.16[1/秒])で、サンプル充填直後から10分経過したのち測定した。5回測定した値の平均値を各剪断速度での溶融粘度とした。
G.98℃熱水中で15分間の収縮率(熱水収縮率)の算出
延伸糸1mの輪を5本枷取りした束にクリップを1つ留め、束の長さL1を測る(このとき、約500mmの長さである。)。次に、この束を98℃の温度の熱水中にゆっくりと下ろして15分間静置し、15分後に取り出して1時間以上風乾する。風乾した後、再度束の長さL2を測定する。収縮率(%)を、次式で算出する。
・熱水収縮率(%)={(L1−L2)÷L1}×100。
延伸糸1mの輪を5本枷取りした束にクリップを1つ留め、束の長さL1を測る(このとき、約500mmの長さである。)。次に、この束を98℃の温度の熱水中にゆっくりと下ろして15分間静置し、15分後に取り出して1時間以上風乾する。風乾した後、再度束の長さL2を測定する。収縮率(%)を、次式で算出する。
・熱水収縮率(%)={(L1−L2)÷L1}×100。
H.ガラス転移点(Tg)および融点(Tm)の測定
パーキンエルマー社製示差走査熱量分析装置(DSC−2)を用い、試料10mgで、昇温速度16℃/分にて測定した。TmとTgの定義は、一旦昇温速度16℃/分で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、約(Tm1+20)℃の温度で5分間保持した後、25℃の温度まで急冷し、(急冷時間および25℃の温度の保持時間を合わせて5分間保持)、再度16℃/分の昇温条件で測定した際に、段状の基線のずれとして観測される吸熱ピーク温度をTgとし、結晶の融解温度として観測される吸熱ピーク温度をTmとした。
パーキンエルマー社製示差走査熱量分析装置(DSC−2)を用い、試料10mgで、昇温速度16℃/分にて測定した。TmとTgの定義は、一旦昇温速度16℃/分で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、約(Tm1+20)℃の温度で5分間保持した後、25℃の温度まで急冷し、(急冷時間および25℃の温度の保持時間を合わせて5分間保持)、再度16℃/分の昇温条件で測定した際に、段状の基線のずれとして観測される吸熱ピーク温度をTgとし、結晶の融解温度として観測される吸熱ピーク温度をTmとした。
I.短繊維の繊維長の測定
長さ20mm以上の短繊維は0.1g/dtexの荷重をかけてノギスを用いて、また20mm未満の短繊維はNIPPON KOGAKU K.K製SHADOW GRAPH Model6を用いて20倍で、短繊維50本の長さを測定し、その平均値を繊維長とした。
長さ20mm以上の短繊維は0.1g/dtexの荷重をかけてノギスを用いて、また20mm未満の短繊維はNIPPON KOGAKU K.K製SHADOW GRAPH Model6を用いて20倍で、短繊維50本の長さを測定し、その平均値を繊維長とした。
J.カーボンナノチューブ(CNT)の直径Dと長さLの比(アスペクト比)L/Dの確認
CNTを含有した繊維または樹脂をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに酸化ルテニウム溶液を用いて染色を施し、ウルトラミクロトームにて切削して60〜100nmの厚さの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察装置(日立製作所社製、H−7100FA型)にて、加速電圧75kVで、倍率2万〜10万倍の任意の倍率で観察を行い、得られた写真を白黒にデジタル化した。得られた写真を、コンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)において、黒で見えるCNTを画像解析することによって平均粒径について確認した。平均粒径については、写真上に存在する全てのCNTの面積をそれぞれ計算し、該面積値から略円形と判断して計算したCNTの直径の平均値によって算出した。
CNTを含有した繊維または樹脂をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに酸化ルテニウム溶液を用いて染色を施し、ウルトラミクロトームにて切削して60〜100nmの厚さの超薄切片を作製し、透過型電子顕微鏡(TEM)観察装置(日立製作所社製、H−7100FA型)にて、加速電圧75kVで、倍率2万〜10万倍の任意の倍率で観察を行い、得られた写真を白黒にデジタル化した。得られた写真を、コンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)において、黒で見えるCNTを画像解析することによって平均粒径について確認した。平均粒径については、写真上に存在する全てのCNTの面積をそれぞれ計算し、該面積値から略円形と判断して計算したCNTの直径の平均値によって算出した。
K.固有粘度(IV)および極限粘度[η]の測定
ポリエステル系ポリマーの場合は、試料をオルソクロロフェノール溶液に溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃の温度で測定した。また、ポリアミド系ポリマーの場合は、試料を蟻酸に溶解し、ポリエステル系ポリマと同様の方法で測定した。
ポリエステル系ポリマーの場合は、試料をオルソクロロフェノール溶液に溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃の温度で測定した。また、ポリアミド系ポリマーの場合は、試料を蟻酸に溶解し、ポリエステル系ポリマと同様の方法で測定した。
L.導電剤のポリエーテルエステル中における含有量
導電剤を含有する樹脂組成物のみからなる繊維で導電剤の含有量を求める場合は、(株)日立ハイテクノロジーズ社の分光光度計U−3010を用いて、あらかじめ導電剤の濃度が判っている、異なる濃度の溶液(ポリエステルを溶解する溶媒;ポリエーテルエステル、PET系ポリマー、3GT系ポリマー、PBT系ポリマー、6GT系ポリマーであれば、ヘキサフルオロイソプロパノール)5種類を用いて検量線を作成した後、導電剤を含有した樹脂組成物中での導電剤の含有量を求めた。複合繊維である場合は、後述のN.項で求めた導電剤を含有する樹脂組成物の割合から、導電剤の含有量を算出した。
導電剤を含有する樹脂組成物のみからなる繊維で導電剤の含有量を求める場合は、(株)日立ハイテクノロジーズ社の分光光度計U−3010を用いて、あらかじめ導電剤の濃度が判っている、異なる濃度の溶液(ポリエステルを溶解する溶媒;ポリエーテルエステル、PET系ポリマー、3GT系ポリマー、PBT系ポリマー、6GT系ポリマーであれば、ヘキサフルオロイソプロパノール)5種類を用いて検量線を作成した後、導電剤を含有した樹脂組成物中での導電剤の含有量を求めた。複合繊維である場合は、後述のN.項で求めた導電剤を含有する樹脂組成物の割合から、導電剤の含有量を算出した。
M.単繊維直径の測定
FEI Company社製 走査型電子顕微鏡(SEM) STRATA DB235を用いて、加速電圧2kVで、白金−パラジウム蒸着(蒸着膜圧:25〜50オングストローム)処理を行った後、繊維外径が全て視野に入る倍率(単繊維直径が25〜50μmであれば5千倍、15〜25μmであれば1万倍、5〜15μmであれば2万倍)で確認した。その際、単繊維直径は、少なくとも該測定を同一繊維において3cm以上の間隔をおいた任意の5点について観察、測定して得られた平均値を単繊維直径とする。
FEI Company社製 走査型電子顕微鏡(SEM) STRATA DB235を用いて、加速電圧2kVで、白金−パラジウム蒸着(蒸着膜圧:25〜50オングストローム)処理を行った後、繊維外径が全て視野に入る倍率(単繊維直径が25〜50μmであれば5千倍、15〜25μmであれば1万倍、5〜15μmであれば2万倍)で確認した。その際、単繊維直径は、少なくとも該測定を同一繊維において3cm以上の間隔をおいた任意の5点について観察、測定して得られた平均値を単繊維直径とする。
N.繊維中での、導電剤を含有する主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体から構成される樹脂組成物(導電剤含有PEE)の割合の算出、および繊維断面(繊維軸方向に垂直な繊維横断面)の形状観察
割合を算出する繊維のフィラメントをエポキシ樹脂中に包埋したブロックを、ミクロトームにて繊維軸方向に垂直な繊維横断面方向に切削して薄切片をつくり、光学顕微鏡200倍で透過光で繊維横断面を観察・撮影した後、得られた繊維横断面写真について、前記の三谷商事株式会社製WinROOFにおいて導電剤含有PEE部分と、他のポリマー成分との面積を画像解析することによってそれぞれ求めて割合を算出した。
割合を算出する繊維のフィラメントをエポキシ樹脂中に包埋したブロックを、ミクロトームにて繊維軸方向に垂直な繊維横断面方向に切削して薄切片をつくり、光学顕微鏡200倍で透過光で繊維横断面を観察・撮影した後、得られた繊維横断面写真について、前記の三谷商事株式会社製WinROOFにおいて導電剤含有PEE部分と、他のポリマー成分との面積を画像解析することによってそれぞれ求めて割合を算出した。
P.導電剤の体積平均粒径Dvおよび多分散指数Dv/Dnの算出
導電剤を含有するポリエーテルエステル(導電剤含有PEE)の試料量0.02〜0.06mgをガラス容器に入れた後、ヘキサフルオロイソプロパノール20mLを静かに注ぎ入れ、静置下で72時間(3日間)以上保持して測定液を調製した。その後、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000J(光源:半導体レーザー(波長680nm)、回分セル、センサー:76素子回折/散乱光センサー、粒子の複素屈折率2.00−0.10i(カーボンに関するマニュアル記載値)、粒子径計測範囲:0.03〜700μm)を用いて、あらかじめセル内に分散媒を加え、攪拌棒でゆっくりと攪拌しながら、その中に適切な光回折強度または吸光度になるまで前記の測定液を投入し、適切な光回折強度になったところで測定を行った。
導電剤を含有するポリエーテルエステル(導電剤含有PEE)の試料量0.02〜0.06mgをガラス容器に入れた後、ヘキサフルオロイソプロパノール20mLを静かに注ぎ入れ、静置下で72時間(3日間)以上保持して測定液を調製した。その後、株式会社島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−2000J(光源:半導体レーザー(波長680nm)、回分セル、センサー:76素子回折/散乱光センサー、粒子の複素屈折率2.00−0.10i(カーボンに関するマニュアル記載値)、粒子径計測範囲:0.03〜700μm)を用いて、あらかじめセル内に分散媒を加え、攪拌棒でゆっくりと攪拌しながら、その中に適切な光回折強度または吸光度になるまで前記の測定液を投入し、適切な光回折強度になったところで測定を行った。
測定によって得られた結果(粒子径(μm)と差分値(%))から、次の数式(1)、(2)および(3)に従って、体積平均粒径Dv(μm)、数平均粒径Dn(μm)および多分散指数Dv/Dnを求めた。
・多分散指数=Dv/Dn(体積平均粒径/数平均粒径) ・・・(3)
(ただし式中、di:i番目の粒子径(μm)、ni:i番目の粒径の粒子数。)。
(ただし式中、di:i番目の粒子径(μm)、ni:i番目の粒径の粒子数。)。
[比較例1](ポリエチレンテレフタレートの製法、導電剤を添加したポリエチレンテレフタレート樹脂組成物の調製および繊維の製造)
テレフタル酸166重量部とエチレングリコール75重量部を用い通常のエステル化反応によって得られた低重合体に、着色防止剤としてリン酸85%水溶液を0.03重量部、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.06重量部、調色剤として酢酸コバルト4水塩を0.06重量部添加して重縮合反応を行い、通常用いられるIV0.67、溶融粘度181[Pa・秒](測定温度290℃、12.16[1/秒])、融点(Tm)256℃のポリエチレンテレフタレート(以下PETとする。)のペレットを得た。
テレフタル酸166重量部とエチレングリコール75重量部を用い通常のエステル化反応によって得られた低重合体に、着色防止剤としてリン酸85%水溶液を0.03重量部、重縮合触媒として三酸化アンチモンを0.06重量部、調色剤として酢酸コバルト4水塩を0.06重量部添加して重縮合反応を行い、通常用いられるIV0.67、溶融粘度181[Pa・秒](測定温度290℃、12.16[1/秒])、融点(Tm)256℃のポリエチレンテレフタレート(以下PETとする。)のペレットを得た。
このPETペレットを、150℃の温度で10時間真空乾燥した後、窒素雰囲気下で粉粒体とした後、2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=45)を用いて溶融混練する前に、窒素雰囲気下で導電剤としてデグサ社製ファーネスブラック(“Printex”(登録商標)、タイプLSQ、比抵抗0.06[Ω・cm]、以下FBとする。)を粉体同士で混ぜ合わせた後、溶融して上記の2軸エクストルーダで混練した。ここでFBは、混練終了後に得られるPETとFBとの樹脂組成物において、FBが16重量%となるように調製し、また280℃の温度で混練した。混練した後、吐出されたガット状の樹脂組成物を15℃の温度の水道水で冷却した後カッターで切断し、溶融粘度1253[Pa・秒](測定温度290℃、12.16[1/秒])のPETとFBとの樹脂組成物(以下PET−FBとする。)のペレットを得た。ペレットにしなかった樹脂組成物のガットについて(平均)比抵抗値を測定したところ、102.38[Ω・cm]であった。
このPET−FBを用いて、2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を備えたエクストルーダ型溶融紡糸機で、紡糸温度290℃で孔径が0.3mm、孔数が24個の丸形の孔形状の口金および濾層の目の細かさが20μのフィルタを設置して溶融紡糸を行い、実効成分として糸に対して1重量%の付着量となるように水系処理剤(実効成分20重量%濃度)を付着せしめた後、1000m/分の引取速度で引き取る溶融紡糸を試みた。しかしながら、1000m/分の引取速度では断糸が激しく全く引き取りができなかったため200m/分の引取速度としたが、それでも断糸が激しく、結果として紡糸性は非常に悪いもので巻き取り糸は得られなかった。
[比較例2](ポリトリメチレンテレフタレートの製法、導電剤を添加したポリトリメチレンテレフタレート樹脂組成物の調製および繊維の製造)
テレフタル酸ジメチル130部(6.7モル部)、1,3−プロパンジオール114部(15モル部)、酢酸カルシウム1水和塩0.24部(0.014モル部)および酢酸リチウム2水和塩0.1部(0.01モル部)を仕込んで、メタノールを留去しながらエステル交換反応を行うことにより得られた低重合体に、トリメチルホスフェート0.065部とチタンテトラブトキシド0.134部を添加して、1,3−プロパンジオールを留去しながら、重縮合反応を行い、チップ状のプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを、さらに220℃の温度で、窒素気流下で固相重合を行い、IV1.15、溶融粘度493[Pa・秒](測定温度260℃、12.16[1/秒])、融点(Tm)229℃のポリトリメチレンテレフタレート(以下3GTとする。)ペレットを得た。
テレフタル酸ジメチル130部(6.7モル部)、1,3−プロパンジオール114部(15モル部)、酢酸カルシウム1水和塩0.24部(0.014モル部)および酢酸リチウム2水和塩0.1部(0.01モル部)を仕込んで、メタノールを留去しながらエステル交換反応を行うことにより得られた低重合体に、トリメチルホスフェート0.065部とチタンテトラブトキシド0.134部を添加して、1,3−プロパンジオールを留去しながら、重縮合反応を行い、チップ状のプレポリマーを得た。得られたプレポリマーを、さらに220℃の温度で、窒素気流下で固相重合を行い、IV1.15、溶融粘度493[Pa・秒](測定温度260℃、12.16[1/秒])、融点(Tm)229℃のポリトリメチレンテレフタレート(以下3GTとする。)ペレットを得た。
この3GTペレットを、150℃の温度で10時間真空乾燥した後、比較例1と同様の混練において、250℃の温度で混練したこと以外は、同じ装置で同じFB種、FB添加量(25重量%)など同様のものを採用して、溶融粘度1437[Pa・秒](測定温度260℃、12.16[1/秒])の3GTとFBとの樹脂組成物(以下3GT−FB)のペレットを得た。ペレットにしなかった樹脂組成物のガットについて(平均)比抵抗値を測定したところ、101.65[Ω・cm]であった。
この3GT−FBを用いて、比較例1で用いた同じエクストルーダ型溶融紡糸機で、紡糸温度を260℃としたこと以外は、同様の条件で紡糸実験を行ったところ、1000m/分の引取速度で全く問題なく総繊度362dtex、フィラメント数24本の未延伸糸を巻き取ることができた。紡糸性に全く問題はなく、24時間の連続紡糸においても全く断糸は見られなかった。しかしながら、これより単繊維繊度の細い繊維は、糸切れが頻発して得ることができなかった。
得られた362dtex−24フィラメントのマルチフィラメントについて延伸を行うに際し、送糸ローラーの送糸速度320m/分、第1ローラーは80℃で送糸速度320m/分、第2ローラーは140℃の温度で送糸速度800m/分、第3ローラーは25℃の温度で送糸速度792m/分(1%リラックス)として繊維に延伸、リラックスおよび熱処理を施した後、冷ローラーで糸をポリエステルのTg以下の温度(25℃)に冷却した後に巻き取った。延伸中にローラーへの単糸巻き付き等の問題は全く発生せず、延伸性は優れていた。糸物性を、表1に示す。
[実施例1](ポリエーテルエステルに導電剤を添加した樹脂組成物の調製と、繊維の製造)
東レ・デュポン社製ポリエーテル共重合ポリブチレンテレフタレート;“ハイトレル”(登録商標;タイプ4057、融点(Tm)163℃、溶融粘度620[Pa・秒](測定温度210℃、12.16[1/秒])、以後PEE1と称する。)のペレットを、80℃の温度で24時間真空乾燥した後、比較例1と同様の混練において、210℃の温度で混練したこと以外は、同じ装置で同じFB種、FB添加量(25重量%)など同様のものを採用して、溶融粘度4508[Pa・秒](測定温度210℃、12.16[1/秒])のPEE1とFBとの樹脂組成物(以下PEE1−FBとする。)のペレットを得た。ペレットにしなかった樹脂組成物のガットについて(平均)比抵抗値を測定したところ、101.43[Ω・cm]であった。
東レ・デュポン社製ポリエーテル共重合ポリブチレンテレフタレート;“ハイトレル”(登録商標;タイプ4057、融点(Tm)163℃、溶融粘度620[Pa・秒](測定温度210℃、12.16[1/秒])、以後PEE1と称する。)のペレットを、80℃の温度で24時間真空乾燥した後、比較例1と同様の混練において、210℃の温度で混練したこと以外は、同じ装置で同じFB種、FB添加量(25重量%)など同様のものを採用して、溶融粘度4508[Pa・秒](測定温度210℃、12.16[1/秒])のPEE1とFBとの樹脂組成物(以下PEE1−FBとする。)のペレットを得た。ペレットにしなかった樹脂組成物のガットについて(平均)比抵抗値を測定したところ、101.43[Ω・cm]であった。
このPEE1−FBを用いて、比較例1で用いた同じエクストルーダ型溶融紡糸機で、紡糸温度を210℃としたこと以外は、同様の条件で紡糸実験を行ったところ、1000m/分の引取速度で全く問題なく総繊度360dtex、フィラメント数24本の未延伸糸を巻き取ることができた。この紡糸性に全く問題はなく、12時間の連続紡糸においても全く断糸は見られなかった。そこで、更に単繊維繊度の小さい(細い)繊維について紡糸を行ったところ、総繊度240dtex、フィラメント数24本の未延伸糸を巻き取ることができた。この240dtex−24フィラメントの未延伸糸についても全く紡糸性について問題なく、12時間の連続紡糸を行い断糸は見られなかった。
得られた単繊維繊度の小さい240dtex−24フィラメントのマルチフィラメントについて延伸を行うに際し、送糸ローラーの送糸速度320m/分、第1ローラーは70℃の温度で送糸速度320m/分、第2ローラーは110℃の温度で送糸速度800m/分、第3ローラーは室温で送糸速度792m/分(1%リラックス)として繊維に延伸、リラックスおよび熱処理を施した後、冷ローラーで糸をポリエステルのTg以下の温度(25℃)に冷却した後に巻き取った。延伸中にローラーへの単糸巻き付き等の問題は全く発生せず、延伸性は優れていた。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた。糸物性を表1に示す。
[実施例2〜12]
実施例1において、表1のとおりにFB量(実施例2〜8)、ポリマー種(実施例9;東レ・デュポン社製ポリエーテル共重合ポリブチレンテレフタレート;“ハイトレル”(登録商標;タイプ5557、融点(Tm)208℃、溶融粘度771[Pa・秒](測定温度250℃、12.16[1/秒]))、以後PEE2と称する。)、導電剤種(実施例10、電気化学工業社製アセチレンブラック;“デンカブラック”(登録商標)、タイプHS−100、比抵抗値0.22[Ω・cm];以後ABとする。実施例11:カーボンナノチューブ;以後CNTとする。実施例12:アンチモン酸化物を含有(ドープ)した錫酸化物をコーティングしてなる酸化チタン粒子;以後白色粒子とする。)、単繊維繊度(実施例12)、をそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様の製糸条件にて、紡糸工程においては同一単繊維繊度(実施例12以外)となるようにして、また延伸条件に関しては、実施例1と同様にして繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた。導電剤の種類や単繊維繊度が変わっても、製糸性は問題なかった(実施例10〜12)。また、導電剤の含有量が増大するにつれ、ポリエステル樹脂組成物は安定して得られるものの、得られた繊維の物性は、導電性は向上するが、その他の物性は低下する傾向にある。また、導電剤が非常に高濃度(50重量%;実施例7)では、得られた繊維自体は高い導電性能を有していたものの、溶融紡糸において、やや糸切れが起こりやすい傾向が見られた(未延伸糸10kg採取当たり102回の糸切れが発生。ただし糸切れはマルチフィラメントにおいて単繊維が1本以上切れる現象を1回と数える)。糸物性を表1および表2に示す。
実施例1において、表1のとおりにFB量(実施例2〜8)、ポリマー種(実施例9;東レ・デュポン社製ポリエーテル共重合ポリブチレンテレフタレート;“ハイトレル”(登録商標;タイプ5557、融点(Tm)208℃、溶融粘度771[Pa・秒](測定温度250℃、12.16[1/秒]))、以後PEE2と称する。)、導電剤種(実施例10、電気化学工業社製アセチレンブラック;“デンカブラック”(登録商標)、タイプHS−100、比抵抗値0.22[Ω・cm];以後ABとする。実施例11:カーボンナノチューブ;以後CNTとする。実施例12:アンチモン酸化物を含有(ドープ)した錫酸化物をコーティングしてなる酸化チタン粒子;以後白色粒子とする。)、単繊維繊度(実施例12)、をそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様の製糸条件にて、紡糸工程においては同一単繊維繊度(実施例12以外)となるようにして、また延伸条件に関しては、実施例1と同様にして繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた。導電剤の種類や単繊維繊度が変わっても、製糸性は問題なかった(実施例10〜12)。また、導電剤の含有量が増大するにつれ、ポリエステル樹脂組成物は安定して得られるものの、得られた繊維の物性は、導電性は向上するが、その他の物性は低下する傾向にある。また、導電剤が非常に高濃度(50重量%;実施例7)では、得られた繊維自体は高い導電性能を有していたものの、溶融紡糸において、やや糸切れが起こりやすい傾向が見られた(未延伸糸10kg採取当たり102回の糸切れが発生。ただし糸切れはマルチフィラメントにおいて単繊維が1本以上切れる現象を1回と数える)。糸物性を表1および表2に示す。
[実施例13〜16]
2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機で、鞘成分としてPEE1−FBを用いて、また芯成分もPEE1からなる図1に示す芯鞘型の複合繊維(PEE1−FBを鞘に配置)を得る複合紡糸を、PEE1−FB(導電層)の割合が表3のとおりとなるように、芯と鞘の比率を変えて紡糸を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行い巻き取ってポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を更に延伸するに際し、実施例1と同様の延伸条件で表3に示す繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた。実施例14においては、導電剤の濃度は実施例13、15および16と同じであるものの、鞘成分(導電層)の割合が少ないことに由来すると思われる実施例13、15および16に対する平均抵抗率Pや比Rの上昇が見られたが、製糸性は良好であった。実施例1〜6と同様に、導電性および糸物性の優れた繊維が得られた。
2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機で、鞘成分としてPEE1−FBを用いて、また芯成分もPEE1からなる図1に示す芯鞘型の複合繊維(PEE1−FBを鞘に配置)を得る複合紡糸を、PEE1−FB(導電層)の割合が表3のとおりとなるように、芯と鞘の比率を変えて紡糸を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行い巻き取ってポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を更に延伸するに際し、実施例1と同様の延伸条件で表3に示す繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた。実施例14においては、導電剤の濃度は実施例13、15および16と同じであるものの、鞘成分(導電層)の割合が少ないことに由来すると思われる実施例13、15および16に対する平均抵抗率Pや比Rの上昇が見られたが、製糸性は良好であった。実施例1〜6と同様に、導電性および糸物性の優れた繊維が得られた。
<ポリヘキサメチレンテレフタレート(6GT)の製法(調製)>
テレフタル酸ジメチル194部(10モル部)、1,6−ヘキサンジオール212部(18モル部)、チタンテトラブトキシド0.013部を仕込んでメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った。得られた低重合体を1,6−ヘキサンジオールを留去しながら、重縮合反応を行い、チップ状のIV1.03、溶融粘度373[Pa・秒](測定温度170℃、12.16[1/秒])、融点(Tm)148℃のポリヘキサメチレンテレフタレート(以下6GTとする。)ペレットを得て、さらにこの6GTペレットを120℃の温度で10時間真空乾燥して溶融紡糸に供した。
テレフタル酸ジメチル194部(10モル部)、1,6−ヘキサンジオール212部(18モル部)、チタンテトラブトキシド0.013部を仕込んでメタノールを留去しながらエステル交換反応を行った。得られた低重合体を1,6−ヘキサンジオールを留去しながら、重縮合反応を行い、チップ状のIV1.03、溶融粘度373[Pa・秒](測定温度170℃、12.16[1/秒])、融点(Tm)148℃のポリヘキサメチレンテレフタレート(以下6GTとする。)ペレットを得て、さらにこの6GTペレットを120℃の温度で10時間真空乾燥して溶融紡糸に供した。
[実施例17、18]
実施例13〜16と同様の2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機を用いて、複合紡糸を行った。実施例17では、鞘成分として、実施例4で用いたFBが20重量%添加された樹脂組成物(PEE1−FB2)を用い、また実施例18では、鞘成分として、実施例5で用いたFBが35重量%添加された樹脂組成物(PEE1−FB3)をそれぞれ用いた。また、芯成分としては、実施例17および18共に、前記の6GTを用いて、図1に示す芯鞘型の複合繊維(導電層;PEE1−FB2,PEE1−FB3をともに鞘に配置)を得る複合紡糸を、導電層の割合が表3のとおり40体積%となるように定めて紡糸を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行い巻き取ってポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を更に延伸するに際し、実施例13と同様の延伸条件で表3に示す繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた。実施例1〜6と同様に、導電性および糸物性の優れた繊維が得られた。
実施例13〜16と同様の2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機を用いて、複合紡糸を行った。実施例17では、鞘成分として、実施例4で用いたFBが20重量%添加された樹脂組成物(PEE1−FB2)を用い、また実施例18では、鞘成分として、実施例5で用いたFBが35重量%添加された樹脂組成物(PEE1−FB3)をそれぞれ用いた。また、芯成分としては、実施例17および18共に、前記の6GTを用いて、図1に示す芯鞘型の複合繊維(導電層;PEE1−FB2,PEE1−FB3をともに鞘に配置)を得る複合紡糸を、導電層の割合が表3のとおり40体積%となるように定めて紡糸を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行い巻き取ってポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を更に延伸するに際し、実施例13と同様の延伸条件で表3に示す繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた。実施例1〜6と同様に、導電性および糸物性の優れた繊維が得られた。
[実施例19〜21]
実施例13〜16と同様の2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機を用いて複合紡糸を行った。実施例19〜21全てにおいて、鞘成分としてPEE2にABを25重量%含有させた樹脂組成物(PEE2−AB;導電層)を用い、芯成分として前記の3GTを用いて、図1に示す芯鞘型の複合繊維を得る複合紡糸を、導電層の割合をそれぞれ表3のとおりとなるように定めて、紡糸温度260℃として紡糸を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行い、巻き取ってポリエステル繊維を得た。実施例21については、溶融紡糸におけるポリマー吐出量を芯成分、鞘成分共に、体積分率で実施例19対比、33%として未延伸糸を得た。得られた繊維を更に延伸するに際し、第1ローラーは80℃の温度、第2ローラーは130℃の温度としたこと以外は、実施例1と同様の延伸条件で表3に示す繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた実施例1〜6と同様に、導電性および糸物性の優れた繊維が得られた。
実施例13〜16と同様の2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機を用いて複合紡糸を行った。実施例19〜21全てにおいて、鞘成分としてPEE2にABを25重量%含有させた樹脂組成物(PEE2−AB;導電層)を用い、芯成分として前記の3GTを用いて、図1に示す芯鞘型の複合繊維を得る複合紡糸を、導電層の割合をそれぞれ表3のとおりとなるように定めて、紡糸温度260℃として紡糸を行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行い、巻き取ってポリエステル繊維を得た。実施例21については、溶融紡糸におけるポリマー吐出量を芯成分、鞘成分共に、体積分率で実施例19対比、33%として未延伸糸を得た。得られた繊維を更に延伸するに際し、第1ローラーは80℃の温度、第2ローラーは130℃の温度としたこと以外は、実施例1と同様の延伸条件で表3に示す繊維を得た。得られたポリエステル繊維は、繊維表面が全てポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われていた実施例1〜6と同様に、導電性および糸物性の優れた繊維が得られた。
[比較例3]
実施例13と同様に2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機で、図2に示す芯鞘型(導電剤含有PEE(導電層)を芯に配置)の溶融紡糸を行った。芯成分として実施例1で用いたPEE1−FBを用い、また鞘成分がPEEからなる複合繊維を得る複合紡糸を、実施例13と同様の方法で溶融紡糸を行い巻き取ってポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を更に延伸するに際し、実施例13と同様の延伸条件で、表3に示す繊維を得た。繊維表層に導電層が配置されていない(導電性を担う層が繊維表面に露出していない)ことから、導電性は実施例1〜6に比べて低い導電性繊維が得られた。
実施例13と同様に2軸エクストルーダ(軸長L/軸径D=35)を2台備えたエクストルーダ型複合溶融紡糸機で、図2に示す芯鞘型(導電剤含有PEE(導電層)を芯に配置)の溶融紡糸を行った。芯成分として実施例1で用いたPEE1−FBを用い、また鞘成分がPEEからなる複合繊維を得る複合紡糸を、実施例13と同様の方法で溶融紡糸を行い巻き取ってポリエステル繊維を得た。得られたポリエステル繊維を更に延伸するに際し、実施例13と同様の延伸条件で、表3に示す繊維を得た。繊維表層に導電層が配置されていない(導電性を担う層が繊維表面に露出していない)ことから、導電性は実施例1〜6に比べて低い導電性繊維が得られた。
[比較例4]
実施例13と同様の複合紡糸を行う際に、図3に示すようなPEE1−FBを繊維表層に3箇所持つように配設し、その他のポリマーとしてPEEを用いたこと以外は、比較例3と同様の溶融紡糸および同様の延伸条件で延伸を行い、表3に記載の物性を有する繊維を得た。得られた繊維の導電性斑(比R)は、実施例13〜21と比較して非常に大きな導電性繊維であった。
実施例13と同様の複合紡糸を行う際に、図3に示すようなPEE1−FBを繊維表層に3箇所持つように配設し、その他のポリマーとしてPEEを用いたこと以外は、比較例3と同様の溶融紡糸および同様の延伸条件で延伸を行い、表3に記載の物性を有する繊維を得た。得られた繊維の導電性斑(比R)は、実施例13〜21と比較して非常に大きな導電性繊維であった。
[実施例22]
実施例1〜21において得られたポリエステル繊維を、それぞれ平均繊維長が0.5、1.0、および2.0mmの長さの短繊維に切断した後、日産化学工業株式会社製コロイダルシリカ「“スノーテックスOS”(登録商標)」で処理した。次いで、東レ株式会社製ポリエステルフィルム「“ルミラー”(登録商標)QT33(厚さ100μm)」に大日本インキ化学工業株式会社製アクリル酸エステル系接着剤DICNAL K−1500(K−1500の100重量%に対し、増粘剤としてDICNAL VS−20を2重量%使用;以下「接着剤A」と称する。)を、約100μmの厚さでフィルムの片面に塗布し、この接着剤を塗布したフィルムの片面に上記の単繊維を電気植毛加工し、植毛体を作製した。植毛性(植毛の成功の度合い)については、ほぼ直立している(◎)、寝ている繊維が少し見られる(○)、半数程度繊維が寝ている(△)、直立しているものが少ない(×)と視覚的に判断して評価したところ、全てにおいて2重丸◎と優れていた。
実施例1〜21において得られたポリエステル繊維を、それぞれ平均繊維長が0.5、1.0、および2.0mmの長さの短繊維に切断した後、日産化学工業株式会社製コロイダルシリカ「“スノーテックスOS”(登録商標)」で処理した。次いで、東レ株式会社製ポリエステルフィルム「“ルミラー”(登録商標)QT33(厚さ100μm)」に大日本インキ化学工業株式会社製アクリル酸エステル系接着剤DICNAL K−1500(K−1500の100重量%に対し、増粘剤としてDICNAL VS−20を2重量%使用;以下「接着剤A」と称する。)を、約100μmの厚さでフィルムの片面に塗布し、この接着剤を塗布したフィルムの片面に上記の単繊維を電気植毛加工し、植毛体を作製した。植毛性(植毛の成功の度合い)については、ほぼ直立している(◎)、寝ている繊維が少し見られる(○)、半数程度繊維が寝ている(△)、直立しているものが少ない(×)と視覚的に判断して評価したところ、全てにおいて2重丸◎と優れていた。
また、実施例1〜21において得られた繊維それぞれを用いて撚糸加工を施した後、パイル織物と、シングルトリコット編物を作成した後起毛処理したものをそれぞれ作成し、前記と同様に、接着剤Aを用いて前記のポリエステルフィルムに接着して、それぞれ布帛複合体を作製した。前記と同様、起毛性は全て優れていた。
[実施例23]
実施例1、5、6、10、16、18および20で作製したポリエステル繊維を、経糸および緯糸に用いて、織り密度150本/インチで平織の織物を作製した。長さ20cm、幅5cmとなるように、両端に電極を設けた長さ20cmの布帛物体を配線物と見なし、その両電極に100Vの電圧をかけたところ、それぞれ1.9℃/分、3.8℃/分、5.4℃/分、2.5℃/分、2.2℃/分、1.8℃/分、および1.4℃/分の昇温速度で温度が上昇する発熱体となった。
実施例1、5、6、10、16、18および20で作製したポリエステル繊維を、経糸および緯糸に用いて、織り密度150本/インチで平織の織物を作製した。長さ20cm、幅5cmとなるように、両端に電極を設けた長さ20cmの布帛物体を配線物と見なし、その両電極に100Vの電圧をかけたところ、それぞれ1.9℃/分、3.8℃/分、5.4℃/分、2.5℃/分、2.2℃/分、1.8℃/分、および1.4℃/分の昇温速度で温度が上昇する発熱体となった。
[実施例24]
実施例1〜21において得られたポリエステル繊維を用いて、平均繊維長が2mmの短繊維を作製した。実施例22の接着剤Aを用いて、SUS304からなる導電性カーボンブラックを5%添加したウレタン製中間層(厚さ1.5mmで金属棒端部2cmを残して覆った物)を設けた金属棒状物体Aに、上記の短繊維を用いて、前記中間層部分のみに電気植毛加工を施し、未接着短繊維を各々棒状物体から掃きとった後、ブラシローラーを得た(A1〜A21)。また、実施例1〜22を用いて実施例22と同様に撚糸加工したものを用いてパイル織物を作製し、パイルを起毛させて、更に起毛したパイル織物を1cm幅のスリット状にしたものを前記金属棒状物体Aに巻き付けて、ブラシローラー(Br1〜Br21)を得た。
実施例1〜21において得られたポリエステル繊維を用いて、平均繊維長が2mmの短繊維を作製した。実施例22の接着剤Aを用いて、SUS304からなる導電性カーボンブラックを5%添加したウレタン製中間層(厚さ1.5mmで金属棒端部2cmを残して覆った物)を設けた金属棒状物体Aに、上記の短繊維を用いて、前記中間層部分のみに電気植毛加工を施し、未接着短繊維を各々棒状物体から掃きとった後、ブラシローラーを得た(A1〜A21)。また、実施例1〜22を用いて実施例22と同様に撚糸加工したものを用いてパイル織物を作製し、パイルを起毛させて、更に起毛したパイル織物を1cm幅のスリット状にしたものを前記金属棒状物体Aに巻き付けて、ブラシローラー(Br1〜Br21)を得た。
[実施例25]
実施例24において得られたブラシローラーのうち、Br1、Br5、Br6、Br9、Br10、Br13〜Br16、およびBr18〜Br21を、清掃装置にそれぞれ組み込んで配設したモノクロレーザープリンターを用いて長時間連続印刷(1分間あたり10枚印刷・排出)を行い、プリンター中の湿度変化と共に印刷性を確認した。その結果、印刷開始1000枚程度でプリンター中の湿度は初期の65%から42%まで低下し、さらに10000枚程度印刷した時点では37%まで低下したものの、印刷枚数が20000枚を越えた時点であっても印刷の鮮明性、トナー除去性などは優れていた。また、ブラシローラーのうちBr1、Br5、Br6、Br16、Br18、およびBr20について、帯電装置にそれぞれ組み込んで同様に検討したところ、やはり印刷枚数が30000枚を越えた時点であっても印刷の鮮明性は優れていた。
実施例24において得られたブラシローラーのうち、Br1、Br5、Br6、Br9、Br10、Br13〜Br16、およびBr18〜Br21を、清掃装置にそれぞれ組み込んで配設したモノクロレーザープリンターを用いて長時間連続印刷(1分間あたり10枚印刷・排出)を行い、プリンター中の湿度変化と共に印刷性を確認した。その結果、印刷開始1000枚程度でプリンター中の湿度は初期の65%から42%まで低下し、さらに10000枚程度印刷した時点では37%まで低下したものの、印刷枚数が20000枚を越えた時点であっても印刷の鮮明性、トナー除去性などは優れていた。また、ブラシローラーのうちBr1、Br5、Br6、Br16、Br18、およびBr20について、帯電装置にそれぞれ組み込んで同様に検討したところ、やはり印刷枚数が30000枚を越えた時点であっても印刷の鮮明性は優れていた。
[実施例26]
実施例1〜10と12〜21において得られたそれぞれのポリエステル繊維を用いて、1つはそれを緯糸のみに用いて、経糸には、ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度75dtexで36本の単繊維横断面が丸のマルチフィラメント延伸糸を用いて平織りした物からYシャツを作製した(衣料X1〜衣料X10と、衣料X12〜衣料X21)。もう1つは、経糸および緯糸全てに実施例1〜6と9〜21において得られたポリエステル繊維を用いてYシャツを作製した(衣料Y1〜衣料Y6と、衣料Y9〜衣料Y21)。無作為に選んだ男性10名のモニターで着衣テストを行ったところ、衣料X1〜衣料X10、衣料X12〜衣料X21、衣料Y1〜衣料Y6、および衣料Y9〜衣料Y21の全てにおいて、全員が着衣すると冷たく感じる(接触冷感がある)と回答し、衣料X1、衣料X5、衣料X6、衣料X12、衣料X18、衣料Y1、衣料Y5、衣料Y6、衣料Y12、および衣料Y18の10点については、全員が着衣すると非常に冷たく感じる(接触冷感を強く感じる)と回答した。
実施例1〜10と12〜21において得られたそれぞれのポリエステル繊維を用いて、1つはそれを緯糸のみに用いて、経糸には、ポリエチレンテレフタレートからなる総繊度75dtexで36本の単繊維横断面が丸のマルチフィラメント延伸糸を用いて平織りした物からYシャツを作製した(衣料X1〜衣料X10と、衣料X12〜衣料X21)。もう1つは、経糸および緯糸全てに実施例1〜6と9〜21において得られたポリエステル繊維を用いてYシャツを作製した(衣料Y1〜衣料Y6と、衣料Y9〜衣料Y21)。無作為に選んだ男性10名のモニターで着衣テストを行ったところ、衣料X1〜衣料X10、衣料X12〜衣料X21、衣料Y1〜衣料Y6、および衣料Y9〜衣料Y21の全てにおいて、全員が着衣すると冷たく感じる(接触冷感がある)と回答し、衣料X1、衣料X5、衣料X6、衣料X12、衣料X18、衣料Y1、衣料Y5、衣料Y6、衣料Y12、および衣料Y18の10点については、全員が着衣すると非常に冷たく感じる(接触冷感を強く感じる)と回答した。
[実施例27]
実施例1、4〜6、9、10、12〜16および18〜21で得られたポリエステル繊維を用いて、これらのポリエステル繊維がそれぞれ10重量%混紡して含まれるナイロン6繊維から主としてなる大きさ1m×1mのウィルトンカーペット(パイル長:カットパイル6mm、全厚:7mm)を作製し、その上で導電加工等を施していない合成皮革からなる革靴を履いて温度23℃、湿度55%の雰囲気下で足踏みを100回行った後、カーペットの上に乗ったまま金属製のドアノブに触れる実験を行ったところ、全ての繊維の使用において、静電気の放電は起こらなかった。
実施例1、4〜6、9、10、12〜16および18〜21で得られたポリエステル繊維を用いて、これらのポリエステル繊維がそれぞれ10重量%混紡して含まれるナイロン6繊維から主としてなる大きさ1m×1mのウィルトンカーペット(パイル長:カットパイル6mm、全厚:7mm)を作製し、その上で導電加工等を施していない合成皮革からなる革靴を履いて温度23℃、湿度55%の雰囲気下で足踏みを100回行った後、カーペットの上に乗ったまま金属製のドアノブに触れる実験を行ったところ、全ての繊維の使用において、静電気の放電は起こらなかった。
以上の如く、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる織物は、非常に優れた導電性を有するポリエステル繊維を用いることから、織物全体に本発明のポリエステル繊維を用いる場合はもとより、織物の一部に本発明のポリエステル繊維を用いた場合であっても、優れた導電性能あるいは電気を逃がすことのできる静電性能を有する織物となるため、例えば、幕やカーテン、人体の静電気が発生しやすい自動車、鉄道、航空機など乗り物のシート、壁材や敷物、布団、毛布および敷布などの寝具などの各種資材用途に用いることができ、優れた性能を発揮することができる。
また、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる編物は、織物と同様に導電性能あるいは静電性能を有する編物となるため、例えば、建物の壁材や絨毯などの敷物、自動車、鉄道航空機などの乗り物のシート、壁材、敷物乗り物用シートあるいはその敷物、布団、毛布および敷布などの寝具などの各種資材用途に用いることができ、優れた性能を発揮することができる。
また、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる不織布は、織物や編物と同様に導電性あるいは静電性能を有する不織布となるため、織物や編物の用途と同様の資材として用いることができる他に、厚みが必要な、例えば、隔壁材や梱包物、クッションなど静電気の発生を嫌う装置、および部屋の周辺部材用資材として広く用いることができ、優れた性能を発揮することができる。
また、本発明のポリエステル繊維からなる短繊維や、織物、特にパイル織物や編物あるいは不織布の更に別の用途としては、これらを用い、基盤に植設することにより植毛体あるいは布帛複合体となすことができる。これらの植毛体あるいは布帛複合体は、導電性あるいは制電性に優れていることから、手触りの優れたものとして様々な内装材となり得る。
また、本発明のポリエステル繊維は、導電性に優れることから配線物を形成することができる。例えば、各種動作をする例えば微弱な電気で反応し得る人工筋肉のようなアクチュエーターの回路の一部として用いることができる。あるいは配線物から発熱体を形成することができる。具体的に、導電性に優れかつ導電性斑の小さな本発明のポリエステル繊維を用いていることから、所望の導電性能に制御したものを用いるだけで、発熱効率の良い発熱体が得られる。また、その発熱体を使用するであろう主に冬季においては、低温低湿度であるが、本発明のポリエステル繊維は温湿度依存性がないもしくは非常に小さいことから、安定した導電性能を発揮し非常に優れた発熱体となる。
また、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる衣料は、導電性に優れた繊維を用いることから、着衣時の静電気発生を抑制し体外に逃がすことができる。従って、特に静電気の発生を嫌う半導体産業の作業着や静電気が発生し難いことから埃を寄せ付けないため防塵衣として用いた場合に有用である。また、導電剤が熱伝導性に優れるため、体外に熱を放散することができる接触冷感衣類や、あるいは逆に冷えた身体に直ぐに体外からの熱を取り込み得る接触温感衣類などとしても有用である。例えば、これらの機能が必要とされるゴルフウェア、ゲートボール、野球、テニス、サッカー卓球、バレーボール、バスケットボール、ラグビー、アメリカンフットボール、ホッケー、陸上競技、トライアスロン、スピードスケート、およびアイスホッケーなどのユニフォームなどのスポーツ衣料や、幼児、婦人、年輩者の衣料、その他にも靴、カバン、サポーター、靴下および登山着などのアウトドア衣料に好適に用いることができる。
また、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる織物および/または編物および/または不織布を少なくとも一部に用いて接着してなるポリエステル繊維ブラシローラーは、導電性を有するポリエステル繊維を少なくとも一部に用いることから、電気的作用を利用することにより、効率的に不要物を除去あるいは必要とされる物質を付与する機能を有するため、優れた性能を発揮することができる。
また、本発明のポリエステル繊維からなる短繊維を用いてなるポリエステル繊維ブラシローラーは、導電性を有するポリエステル繊維を少なくとも一部に用いることから、前述と同様に電気的作用を利用することにより、効率的に不要物を除去あるいは必要とされる物質を付与する機能を有する点で優れている。また、短繊維の繊維長を制御することにより、ブラシローラーの繊維植設密度あるいは繊維ブラシローラーの前記除去性能あるいは付与性能を目的に応じて容易に制御できる点でも優れている。特に、植設される棒状物体が主として金属からなる場合は、本発明のポリエステル繊維の導電性を制御することにより、繊維ブラシローラー自体の導電性(比抵抗値)を制御することが可能であり、さらには棒状物体が金属および金属の少なくとも一部を覆う中間層とからなる場合には、中間層の材質や厚さなどを制御することでクッション性を付与し得る。従って、繊維ブラシローラー自体の前記除去性能あるいは付与性能を格段に向上せしめることができ、優れた性能を発揮することができる。
また、本発明のポリエステル繊維ブラシローラーを用いてなる清掃装置は、ブラシローラー自体が回転することにより、不要物を除去し清掃する場合には非常に除去性能に優れている。例えば、後述の電子写真装置などではトナーなどを電気的に除去し得る際に電子写真装置内の環境変化、特に湿度変化などがあった場合にもブラシローラーの導電性能が変動することがないため、常に安定した除去性能を有している。また、本発明のポリエステル繊維を用いたブラシローラーは、清掃装置において、対象となる物質、例えば電子写真装置においては感光体に直接接触して清掃を行う他にも、清掃活動を行う部材自身から不要物を除去して清掃装置自体を清掃するための部材としても有用であり、結果的に高性能な清掃装置となる。
また、本発明のポリエステル繊維ブラシローラーを用いてなる帯電装置は、ブラシローラー自体の導電性(比抵抗値)を制御することで用いられる。例えば、電子写真装置などで感光体を一様に帯電させるブラシローラーとして用いられる際に、感光体を均一に帯電させることができる。また、電子写真装置内の環境変化、例えば電子写真装置の稼働中あるいは季節変化による湿度変化に対しても、ブラシローラー自体の比抵抗値は変化しないかもしくは非常に変化が小さいため、感光体の帯電斑が発現しにくいという点でも優れている。また、電子写真装置の感光体に清掃が不十分なために残存した着色剤(トナー)があった場合に、ブラシローラーは清掃ローラーとしての機能を兼ねることができるため、現像あるいは印刷時の汚染がないかもしくは殆どない。加えて、電子写真装置を小型化する場合には、清掃装置および帯電装置を個別に設置せずに、兼用、すなわち清掃装置兼帯電装置としてブラシローラーのみで適用し得るため、非常に優れた性能を発揮することができる。
また、本発明のポリエステル繊維ブラシローラーを用いてなる現像装置は、前述の帯電装置での効果と同様にブラシローラー自体の導電性を駆使して用いられるもので、例えば、電子写真装置等で感光体に描かれた静電潜像にトナーを付着させる際に、前述のような湿度変化などの環境変化の際のブラシローラー自体の比抵抗値斑がないかもしくは殆どない。従って、トナーが均一に感光体に供給されて顕像化し、得られた現像物あるいは印刷物は、汚染のないかもしくは殆どない非常に美しいものとなる。
また、本発明のポリエステル繊維ブラシローラーを用いてなる除電装置は、繊維中に含有される導電性カーボンブラックなどの導電剤の含有量を制御してブラシローラーの導電性(比抵抗値)を小さくすることにより、非常に優れた除電性能を有するブラシローラーとなる。特に、それを電子写真装置に用いる際には、無数の毛(繊維)からなるブラシローラーが安定かつ均一な除電効果を有していることから、除電装置の後に配設される清掃装置による清掃効果をより高めることが可能である。また、電子写真装置を小型化する場合には、ブラシローラーを用いることにより除電装置兼清掃装置として組み込むことができる。
さらに、本発明のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなる清掃装置および/または帯電装置および/または現像装置および/または除電装置を用いてなる電子写真装置、具体的にはレーザービームプリンター、複写機、ファクシミリ、多機能型複合機およびワードプロセッサーなどの帯電した感光体にレーザーで潜像を描きトナーを用いて顕像化するメカニズムにより現像あるいは印刷を行う装置は、電子写真装置内の環境変化によらず安定した清掃・帯電・現像・除電性能を有していることから、得られた印刷あるいは現像物は非常に美しいものとなる。また、繊維ブラシローラーの繊維長あるいは含有する導電性カーボンブラックなどの導電剤の含有量などを最適化することにより、より安定した清掃・耐電・現像・除電性能を有するため、電子写真装置の駆動速度をより高める、すなわち単位時間あたりの印刷あるいは現像速度(枚数)を高めることが可能となる。
本発明のポリエステル繊維およびそれを用いた繊維製品は、優れた導電性が要求される種々の用途、湿度変化等に対して安定した導電性が要求される種々の用途、さらには他の性能、例えば除電性能や帯電性能が要求される種々の用途に、好適に用いることができる。
1:樹脂組成物
2:他のポリマー成分
2:他のポリマー成分
Claims (10)
- 繊維表面全てが、主たる繰り返し構造単位がポリエステルとポリエーテルとのブロック共重合体からなるポリエーテルエステルと導電剤を含有する樹脂組成物で覆われてなるポリエステル繊維。
- 平均抵抗率Pが1.0×107[Ω/cm]以下である請求項1記載のポリエステル繊維。
- 初期引張弾性率が5〜22cN/dtexである請求項1または2記載のポリエステル繊維。
- ブロック共重合体が、主たる繰り返し構造単位がポリブチレンテレフタレートとポリエーテルとのブロック共重合体である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル繊維。
- 単繊維繊度が0.5〜4.0dtexの範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載のポリエステル繊維。
- 導電剤がファーネスブラックおよび/またはアセチレンブラックである請求項1〜5のいずれかに記載のポリエステル繊維。
- 樹脂組成物が繊維横断面積の30〜80%を占めている請求項1〜6のいずれかに記載のポリエステル繊維。
- 請求項1〜7のいずれかに記載のポリエステル繊維を少なくとも一部に用いてなるポリエステル繊維製品。
- 繊維製品が繊維ブラシである請求項8記載のポリエステル繊維製品。
- 繊維ブラシが電子写真装置用のブラシである請求項9記載のポリエステル繊維製品。
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2024005669A1 (ru) * | 2022-06-27 | 2024-01-04 | Общество С Ограниченной Ответственностью "Ампертекс" | Электропроводящее композитное волокно и способ его получения и применения |
-
2007
- 2007-11-13 JP JP2007294234A patent/JP2009120977A/ja active Pending
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