JP2009118782A - 新規なコラーゲン分解酵素とその利用 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】次の理化学的性質を有するコラーゲン分解酵素である。(1)作用:カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ケラチンおよびエラスチンの蛋白質を分解し、特にコラーゲンおよびゼラチンに対して強い分解作用を有する。また、合成基質であるAIPM、AAPF、AAPM、AAPL、AAVAに対して活性を有するが、AAPV、GPLGPには活性を示さない。(2)最適反応pH:pH8.5〜9.0(3)最適反応温度:40〜50℃、45℃まで安定な酵素活性を有する。(4)分子量:50,000〜70,000また、特定のアミノ酸配列、又はこの配列中の1個もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する新規なコラーゲン分解酵素である。これらは、特にコラーゲン、ゼラチンに対してアルカリ条件下で高い分解活性を有する。
【選択図】図4
Description
(1)作用:
カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ケラチンおよびエラスチンの蛋白質を分解し、特にコラーゲンおよびゼラチンに対して強い分解作用を有する。
また、合成基質であるN-メトキシスクシニル-Ala-Ile-Pro-Met-p-ニトロアニリド、N-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-p-ニトロアニリド、N-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Met-p-ニトロアニリド、N-グルタリル-Ala-Ala-Pro-Leu-p-ニトロアニリド、及びN-スクシニル-Ala-Ala-Val-Ala-p-ニトロアニリドに対して分解作用を有するが、N-メトキシスクシニル- Ala-Ala-Pro-Val-p-ニトロアニリド、及びN-スクシニル-Gly-Pro-Leu-Gly-Pro-4-メチルクマリル-7-アミドに対して分解作用を示さない。
(2)最適反応pH: pH8.5〜9.0
(3)最適反応温度は40〜50℃であり、45℃まで安定な酵素活性を有する。
(4)分子量:
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が、50,000〜70,000である。
(5)阻害剤
セリンプロテアーゼの阻害剤であるフェニルメチルスルフォニルフルオライドにより完全に阻害されるが、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸では10mM濃度で35%の残存活性を示す。
(a)配列番号3に示す成熟酵素を構成するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号3に示す成熟酵素を構成するアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号5に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号5に示すアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号7に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号7に示すアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号2に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、又は
(h)配列番号2に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコラーゲン分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
から選ばれるコラーゲン分解酵素をコードする遺伝子を提供するものである。
本発明酵素は、カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ケラチンおよびエラスチンの蛋白質を分解し、特にコラーゲンおよびゼラチンに対して強い分解作用を有する。
また、本発明酵素は、合成基質であるN-メトキシスクシニル-Ala-Ile-Pro-Met-p-ニトロアニリド(「AIPM」という)、N-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-p-ニトロアニリド(「AAPF」という)、N-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Met-p-ニトロアニリド(「AAPM」という)、N-グルタリル-Ala-Ala-Pro-Leu-p-ニトロアニリド(「AAPL」という)、及びN-スクシニル-Ala-Ala-Val-Ala-p-ニトロアニリド(「AAVA」という)に対して分解作用を有するが、N-メトキシスクシニル-Ala-Ala-Pro-Val-p-ニトロアニリド(「AAPV」という)及びN-スクシニル-Gly-Pro-Leu-Gly-Pro-4-メチルクマリル-7-アミド(「GPLGP」という)に対して分解作用を示さない。
(2)本発明酵素の最適反応pHは、pH8.5〜9.0である。
(3)本発明酵素の最適反応温度は、40〜50℃である。また、本発明酵素は45℃までは安定な酵素活性を有する。
(4)分子量:
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(「SDS−PAGE」という)による分子量が、50,000〜70,000である。
(5)阻害剤
本発明酵素は、セリンプロテアーゼの阻害剤であるフェニルメチルスルフォニルフルオライド(「PMSF」という)により完全に阻害されるが、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸(「EDTA」という)では10mM濃度で35%の残存活性を示す。
培養温度は5〜37℃、特に33℃が好ましく、pHは7.0〜10.5、特に8.5〜10.5が好ましく、この条件下において通常1〜3日間で培養が完了する。
その他の公知のプロテアーゼやコラーゲン分解酵素との相同性は極めて低く、本発明のコラーゲン分解酵素前駆体は新規な酵素前駆体であることが示唆された。従って、配列番号1に示すアミノ酸配列と適切なアライメントがなされた場合、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の相同性を有し、このコラーゲン分解酵素前駆体は本発明に包含される。
この2種類の小型化コラーゲン分解酵素AおよびBは、それぞれ配列番号3に示すアミノ酸配列の441番目から636番目のアミノ酸(配列番号4の1321〜1908番目の番目ヌクレオチドに相当する)、および配列番号3に示すアミノ酸配列の551番目から636番目のアミノ酸(配列番号4の1654〜1908番目の番目ヌクレオチドに相当する)が欠損しているものである。
配列番号5のアミノ酸配列の相同性を検索した結果、シュワネラ アマゾネンシス(Shewanella amazonensis)SB2B株の生産する cold-active alkaline serine protease(YP929185)と57%の相同性を示した。その他の公知のプロテアーゼやコラーゲン分解酵素との相同性は極めて低く、小型化コラーゲン分解酵素Aは新規な酵素であることが示唆された。従って、配列番号5に示すアミノ酸配列を有するたんぱく質のアミノ酸配列と適切なアライメントがなされた場合、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有し、酵素学的特性の1〜4を満たすコラーゲン分解酵素は本発明に包含される。
配列番号7のアミノ酸配列の相同性を検索した結果、コルウェリア サイクレエリスリア(Colwellia psychrerythraea)34H株の生産する cold-active alkaline serine protease(YP269576)と53%の相同性を示した。その他の公知のプロテアーゼやコラーゲン分解酵素との相同性は極めて低く、小型化コラーゲン分解酵素Bは新規な酵素であることが示唆された。従って、配列番号7に示すアミノ酸配列を有するたんぱく質のアミノ酸配列と適切なアライメントがなされた場合、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上の相同性を有し、酵素学的特性の1〜4を満たすコラーゲン分解酵素は本発明に包含される。
即ち、上記のアルカリモナス コラゲニマリナ AC40株から本発明酵素のアミノ酸配列をコードする遺伝子を取得した後、遺伝子工学技術を用いて組換え微生物を作製し、当該組換え微生物を培養する方法が挙げられる。具体的には、本発明酵素のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列を上記菌株より取得し、次いでこのヌクレオチド配列を適当なベクターに組込み、更に、このベクターにより大腸菌等の宿主を形質転換し、これを培養して本発明酵素を産生させ、その培養物より本発明酵素を採取すればよい。
(a)配列番号3に示す成熟酵素を構成するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号3に示す成熟酵素を構成するアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号5に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号5に示すアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号7に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号7に示すアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号2に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、又は
(h)配列番号2に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコラーゲン分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
から選ばれる遺伝子である。
一方、酵素溶液の代わりに100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10)を添加したものを、ブランクに用いた。酵素1単位(P.U)は、上記の反応条件において1分間に1mmoLのチロシンに相当する酸可溶性タンパク質分解物を遊離する酵素量とした。
鳥島沖海底土壌より採取したサンプルを1.0%コラーゲン含有アルカリ寒天培地へ塗抹し、4℃で1ヶ月間、静置培養を行った。生育した菌を選抜し、純化した後に液体培地へ接種し、15℃で2日間、振盪培養を行い、上清液中のコラーゲン分解活性を測定した。スクリーニング用の液体培地組成は次の表1に示すものであり、これにコラーゲン(タイプ1、シグマアルドリッチ)1.0%を加えた。得られた培養液から、コラーゲン分解酵素生産量の高い菌株としてアルカリモナス コラゲニマリナ AC40株を選抜した。
アルカリモナス コラゲニマリナ AC40株を、前記表1に示す組成からなる500mLの液体培地に接種し、15℃、3日間振盪培養を行った。
培養液を遠心分離(7,500×g、30分間、4℃)し、得られた上清液480mLに対し、硫安を80%飽和になるように徐々に加え遠心分離(9,000×g、30分間、4℃)し、沈殿したタンパク質を回収した。回収したタンパク質を100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10.0)に溶解した後、限外濾過により脱塩濃縮した。溶解したタンパク質を、予め100mMグリシン水酸化−ナトリウム緩衝液(pH10.0)にて平衡化しておいた DEAE Toyopearlカラムへ添着させ、0.22M塩化ナトリウムによりコラーゲン分解活性を有する吸着タンパク質を溶出した。
次いで、予め1M硫安を含む100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH10)で平衡化しておいたButyl Toyopearlカラムへ添着させた後、1M〜0.5M硫安の直線濃度勾配法により吸着タンパク質を溶出させた。コラーゲン分解活性画分を集め、限外ろ過にて濃縮脱塩を行った。濃縮液のSDS−PAGEを行ったところ、分子量60kDa付近に2本のタンパク質バンドが確認された。これらのバンドをPVDF膜(バイオラッド社製)にブロッティングし、アミノ酸シークエンサー(476A型、アプライドバイオシステムズ製)にてN末端からのアミノ酸配列を決定した。
両方のバンドのアミノ酸配列は一致しており、Ala−Gln−Gln−Thr−Pro−Tyr−Gly−Tyr−Thr−Met−Val−Gln−Ala−Asp−Gln−Val−Ser−Asp−Glnの19アミノ酸配列が決定された。したがって、2本のバンドは双方とも同一のコラーゲン分解酵素であると判断した。分子量の小さいバンドは、分子量の大きいバンドのC末端部分が欠損したものと考えられた。
次に、Achromobacter Protease I (Residue-specific Proteases Kit, タカラバイオ)を用いて精製コラーゲン分解酵素を部分的に切断し、得られたペプチドをSDS−PAGEにより分離した後、バンドのアミノ酸配列を解析した。その結果、Thr−Leu−Ala−Gly−Phe−Ser−Gln−Arg−Asn−Ala−Gln−Val−Glu−Leu−Ala−Gly−Pro−Gly−Val−Aspの20アミノ酸配列が決定された。
実施例2で得られた精製酵素(本発明酵素)を用いてその性質を検討した。
(1)最適反応pH:
2.5%(w/v)コラーゲン(シグマアルドリッチ)を含む100mMのpHが6.0から13.0の範囲の下記の種々の緩衝液を用いて、本発明酵素によるコラーゲン分解反応を行った。
pH6.0−8.0 ・・・ モルホリノプロパンスルホン酸−水酸化ナトリウム
(MOPS)、(●)
pH7.1−8.9 ・・・ トリス−塩酸、(○)
pH8.0−10.0 ・・・ ホウ酸−塩化カリウム−水酸化ナトリウム、(△)
pH8.5−11.1 ・・・ グリシン−水酸化ナトリウム、(■)
pH10.9−13.0 ・・ 塩化カリウム−水酸化ナトリウム、(▲)
その結果を図1に示す。この図からわかるように、本発明酵素はグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.5〜9.0)中で最も反応速度が高かった。
標準反応条件{2.5%(w/v)コラーゲン(シグマアルドリッチ)、1mM塩化カルシウムを含む100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9)0.09mL、酵素画分0.01mL}において、反応温度を5〜70℃に種々変化させ、本発明酵素によるコラーゲン分解反応を行った。その結果を図2に示す。この結果からわかるように、本発明酵素は40〜50℃で最も高い反応速度を示し、特に45℃で最も高い反応速度を示した。
100mMトリス−塩酸緩衝液(pH8)中に本発明酵素を添加して5〜55℃の各温度で15分間加熱処理を行ない、標準反応条件{2.5%(w/v)コラーゲン(シグマアルドリッチ)、1mM塩化カルシウムを含む100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9)0.09mL、酵素画分0.01mL}により残存活性を求めた。加熱前の活性を100%として加熱処理後の残存活性を図3に示す。本発明のコラーゲン分解酵素は、45℃までは安定で優れた活性を保持することが判った。また、塩化カルシウム(1mM)を添加して同様の試験を行なったところ、塩化カルシウムの添加によってその安定性を若干増加させることができた。
同様に標準反応条件下においてコラーゲンの代わりに様々なタンパク質(カゼイン、ケラチン、ゼラチン、エラスチン)を添加し、これらのたんぱく質の分解反応を行った。その結果を図4に示す。ゼラチンに対する活性が最も高く、これを100%としてその他の各基質に対する反応性を相対活性とした。この結果からわかるように、本発明酵素は特にコラーゲンおよびゼラチンに対して大きな分解活性を示した。
合成オリゴペプチド基質として表2に示すもの又は下記のものを用いて本発明のコラーゲン分解酵素の各種合成基質に対する反応性を調べた。
1mM塩化カルシウムを含む100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9)0.085mLに10mMの合成基質溶液0.005mLを混合し45℃で2分間恒温した後、酵素画分0.01mLを加え、5分間反応を行った。分光光度計を用いて405
nmにおける吸光度を20秒ごとに測定して、1分間あたりに遊離したp-ニトロアニリンを定量した。
N-メトキシスクシニル-Ala-Ile-Pro-Met-p-ニトロアニリド(AIPM)に対する活性が最も高く、これを100%としてその他の各合成基質に対する反応性を相対活性として表2に示す。
次に、同様の方法によってコラゲナーゼ用の合成オリゴペプチド基質としてN-スクシニル-Gly-Pro-Leu-Gly-Pro-4-メチルクマリル-7-アミド(GPLGP)に対する反応性を調べた。反応組成、条件は上記と同様にし、分解により遊離する7-アミノ-4-メチルクマリンを分光光度計を用いて370nmにて測定した。その結果、本発明酵素はGPLGPを分解することはなく、活性を示さなかった。
本発明酵素の分子量を10%SDS−PAGEにより測定した。分子量マーカーにはプレシジョンPlusデュアルスタンダード(バイオラッド)を用いた。その結果を図5に示す。この結果から本発明酵素の分子量は50〜70kDaであった。
100mMトリス−塩酸緩衝液(pH8)に、表3に示す各種阻害剤を所定濃度になるように加え、本発明酵素を添加し、15℃で15分間恒温した。その後、標準反応条件{2.5%(w/v)コラーゲン(シグマアルドリッチ)、1mM塩化カルシウムを含む100mMグリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH9)0.09mL、酵素画分0.01mL}において、残存活性を測定した。その結果を表3に示す。
表3に示すように、本発明のコラーゲン分解酵素は、セリンプロテアーゼの阻害剤であるPMSFより完全に阻害され、キレート剤であるEDTAにより活性が35%となった。
染色体DNAを抽出するために、アルカリモナス コラゲニマリナ AC40株を表1に示す組成の10mLの液体培地に接種し、33℃で1日間振盪培養した。続いてGenomic−Tip100/G(キアゲン)を用いて菌体から染色体DNAを抽出した。
実施例2で得られた、N末端の19アミノ酸配列と内部の20アミノ酸配列を基に、それぞれ配列番号9に示すプライマー1(5‘−TAY GGN TAY ACN ATG GT−3’、ここでNはGATC、 YはCT、 RはAGを示す。)、配列番号10に示すプライマー2(5’−TCN ACY TGN GCR TTN CKY TG−3’、ここでKはGTを示す。)をデザインした。上記で精製した染色体DNAを鋳型に、プライマー1(配列番号9)とプライマー2(配列番号10)、EX Taq(タカラバイオ)を用いてPCRを行った。PCRの反応条件は、94℃で4分間変性後、94℃で1分間、51.2℃で30秒間、72℃で30秒間を1サイクルとしてこれを30サイクル行なった。その結果、約0.5kbのPCR増幅断片を取得した。得られたDNA断片をpCR4−Topo(TOPO TA PCR クローニングキット、インビトロジェン)に挿入し、M13フォワードプライマー(インビトロジェン)およびM13リバースプライマー(インビトロジェン)、Big Dye Teminator Cycle Sequencingキット(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてシーケンスを行い、コラーゲン分解酵素遺伝子の部分塩基配列を決定した。得られた増幅断片を基にプライマーを合成し、インバースPCR法とLA PCR in vitro Cloning キット(タカラバイオ)によりさらに上流と下流域の塩基配列を決定し、その中にプレプロ配列を含むコラーゲン分解酵素をコードする2283塩基対から成るオープンリーディングフレーム(配列番号2)を見出した。この塩基配列から配列番号1に示したアミノ酸配列を決定した。決定されたアミノ配列中には精製酵素のN末端アミノ酸配列(配列番号3の1〜19番目のアミノ酸)およびAchromobacter Protease Iによって部分消化して得られたペプチド断片のアミノ酸配列(配列番号3の183〜201番目のアミノ酸)が確認された。
コラーゲン分解酵素遺伝子の5’末端(配列番号2の1〜19番目のヌクレオチド)にアニールするプライマー3(配列番号11、5‘−GGA ATT CCA TAT GTC CAA ACC ACA TTT CT−3’、 下線部は新たに付加したNdeIサイトを示す)、さらに3’末端(配列番号2の2265〜2283番目のヌクレオチド)にアニールするプライマー4(配列番号12、5’−CCG GAA TTC TTA CTC GTA GCT AAC TTT C−3’、下線部は新たに付加したEcoRIサイトを示す)、PyrobestDNAポリメラーゼ(タカラバイオ)を用いて、AC40株の染色体DNAを鋳型として、コラーゲン分解酵素をコードする遺伝子(配列番号2の両側にNdeIとEcoRIサイトを新しく付加した遺伝子)をPCRにより増幅した。得られたPCR増幅断片をNdeIとEcoRIで分解した後、同様に処理しておいたベクターpRSET−a(インビトロジェン)に導入し、組換えプラスミド(pRSET−AcpII)を調製した。この組換えプラスミドを用いて大腸菌TOP10株(インビトロジェン)を形質転換した。この形質転換体を2%スキムミルクと100μg/mLアンピシリンを含むLBプレート[1%トリプトン(ディフコ)、0.5%酵母エキス(ディフコ)、1%塩化ナトリウム、1.5%寒天]に生育させたところコロニーの周辺にスキムミルク溶解斑が認められた。
得られたそれぞれの発現用プラスミドを用いて大腸菌BL21(DE3)pLysS株(インビトロジェン)を形質転換し、100μg/mLアンピシリン及び35μg/mLクロラムフェニコールを含むLB培地にて30℃、一晩好気的に振盪培養を行った結果、培養液中の小型化コラーゲン分解酵素A(配列番号5)、小型化コラーゲン分解酵素B(配列番号7)の生産量はそれぞれ0.44 P.U/L、0.61 P.U/Lであった。
Claims (11)
- 次の理化学的性質を有する新規なコラーゲン分解酵素。
(1)作用:
カゼイン、ゼラチン、コラーゲン、ケラチンおよびエラスチンの蛋白質を分解し、特にコラーゲンおよびゼラチンに対して強い分解作用を有する。
また、合成基質であるN-メトキシスクシニル-Ala-Ile-Pro-Met-p-ニトロアニリド、N-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Phe-p-ニトロアニリド、N-スクシニル-Ala-Ala-Pro-Met-p-ニトロアニリド、N-グルタリル-Ala-Ala-Pro-Leu-p-ニトロアニリド、及びN-スクシニル-Ala-Ala-Val-Ala-p-ニトロアニリドに対して分解作用を有するが、N-メトキシスクシニル- Ala-Ala-Pro-Val-p-ニトロアニリド、及びN-スクシニル-Gly-Pro-Leu-Gly-Pro-4-メチルクマリル-7-アミドに対して分解作用を示さない。
(2)最適反応pH: pH8.5〜9.0
(3)最適反応温度及び熱安定性:
最適反応温度は40〜50℃であり、45℃まで安定な酵素活性を有する。
(4)分子量:
ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量が、50,000〜70,000である。
(5)阻害剤
セリンプロテアーゼの阻害剤であるフェニルメチルスルフォニルフルオライドにより完全に阻害されるが、キレート剤であるエチレンジアミン四酢酸では10mM濃度で35%の残存活性を示す。 - 配列表の配列番号3で示されるアミノ酸配列、又はこの配列中の1個もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の新規なコラーゲン分解酵素。
- 配列表の配列番号3で示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有する、請求項1又は2に記載の新規なコラーゲン分解酵素。
- 配列表の配列番号5で示されるアミノ酸配列、又はこの配列中の1個もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する、新規なコラーゲン分解酵素。
- 配列表の配列番号7で示されるアミノ酸配列、又はこの配列中の1個もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列を有する、新規なコラーゲン分解酵素。
- アルカリモナス コラゲニマリナ由来のものである、請求項1ないし5のいずれかに記載の新規なコラーゲン分解酵素。
- 配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列、又はこの配列中の1個もしくは複数のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有する、新規なコラーゲン分解酵素前駆体。
- 請求項1ないし7のいずれかに記載の新規なコラーゲン分解酵素またはその前駆体のアミノ酸配列をコードする遺伝子であって、下記(a)〜(h)からなる群、
(a)配列番号3に示す成熟酵素を構成するアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(b)配列番号3に示す成熟酵素を構成するアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(c)配列番号5に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(d)配列番号5に示すアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(e)配列番号7に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(f)配列番号7に示すアミノ酸配列中の1個もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
(g)配列番号2に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、又は
(h)配列番号2に示すヌクレオチド配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつコラーゲン分解活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド、
から選ばれるコラーゲン分解酵素をコードする遺伝子。 - 請求項8に記載の遺伝子のいずれかを含有する組換えベクター。
- 請求項9に記載の組換えベクターにより形質転換された微生物。
- アルカリモナス コラゲニマリナ、又は請求項10に記載の形質転換された微生物を培養し、その培養液よりコラーゲン分解酵素を採取することを特徴とする、前記理化学的性質又は前記アミノ酸配列を有するコラーゲン分解酵素の製造方法。
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