JP2007129908A - システインプロテアーゼ及びその利用 - Google Patents

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Abstract

【課題】 納豆菌の新規遺伝子であるcprE過剰発現株を構築し、新規なシステインプロテアーゼを生産する。
【解決手段】 納豆菌のゲノム情報から推定したシステインプロテアーゼに相同な特異的遺伝子配列を納豆菌を宿主として過剰発現させた。細胞内より抽出された酵素は、酵素阻害剤PCMBによってほぼ完全に阻害されるものである。また、pH4.2からpH10.8まで活性を有し、特にpH4.8からpH10.3までの範囲で高活性を有するものである。また、10℃から70℃まで活性を有し、至適温度は45℃であるものである。
さらに、pH耐性はpH3.0からpH11まで活性を有し、特にpH3.5からpH11まで安定に酵素活性を保持するものであり、温度耐性は55℃まで活性を有し、特に50℃までは安定に酵素活性を保持するものである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)及びその利用に関する。さらに詳細には、微生物に由来する蛋白質分解酵素活性を有する蛋白質をコードする遺伝子、また、該遺伝子の発現を増強した宿主細胞、特に納豆菌、又は枯草菌を含むバシラス属細菌、又は大腸菌、又は酵母及びこれらの微生物を用いて高濃度の蛋白質分解酵素を効率良く製造する方法に関する。
納豆菌は、蒸煮大豆を発酵することで納豆生産能力を有する微生物であり、これまで食品用微生物として広く利用されてきた。
納豆菌の特徴として、蛋白質分解酵素を著量に生産することが知られており、主要な酵素としてセリンプロテアーゼ(serine protease)が知られており、ズブチリシン(subtilisin)(例えば、非特許文献1参照)とバシロペプチダーゼ(bacillopeptidase)(例えば、非特許文献2参照)が公知である。その他にも、金属プロテアーゼ(metallo protease)(例えば、非特許文献3参照)などが報告されている。
一方、納豆菌の近縁種である枯草菌の蛋白質分解酵素としてはセリンプロテアーゼ(serine protease)や金属プロテアーゼ(metallo protease)などが知られており(例えば、非特許文献4参照)、その他、少数の蛋白質分解酵素も報告されている(例えば、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7参照)。
枯草菌のゲノム情報はデータベース(例えば、パスツール研究所 枯草菌データベース:http://genolist.pasteur.fr/SubtiList/)で参照することができ、納豆菌はそのほとんどの遺伝子が枯草菌と相同であるため、納豆菌が有する機能も推定可能である。ところが、これまでに納豆菌や枯草菌からシステインプロテアーゼ遺伝子として分離された報告はなく、このような実情から、特に伝統食として長年、食経験があった納豆菌からシステインプロテアーゼ活性を有する蛋白質をコードする新規な遺伝子の分離、加えて酵素を利用するために、該遺伝子を用いた効率良い酵素生産が望まれていた。
バイオサイエンス・バイオテクノロジー・アンド・バイオケミストリー(bioscience, biotechnology, and biochemistry)、1992年、11月、第56巻、第11号、1869-71頁 カレント・マイクロバイオロジー(Current Microbiology)、1995年、12月、第31巻、第6号、340-4頁 ジャーナル・オブ・バクテオロジー(Journal of Bacteriology)、1979年、8月、第139巻、第2号、583-90頁 ジャーナル・オブ・バクテオロジー(Journal of Bacteriology)、1984年、5月、第158巻、第2号、411-8頁 ジャーナル・オブ・バクテオロジー(Journal of Bacteriology)、1988年、12月、第170巻、第12号、5557-63頁 ジャーナル・オブ・バクテオロジー(Journal of Bacteriology)、1990年、2月、第172巻、第2号、1024-9頁 ジャーナル・オブ・バクテオロジー(Journal of Bacteriology)、1991年、11月、第173巻、第21号、6889-95頁
システインプロテアーゼ(Cysteine protease)はチオールプロテアーゼとも称するSH基が活性中心に存在するプロテアーゼの総称である。植物ではパパイン(Papain)、フィシン(Ficin)、ブロメライン(Bromelain)、キモパパイン(Chymopapain)、動物ではカテプシンB(Cathepsin B)、カテプシンH(Cathepsin H)、カテプシンL(Cathepsin L)、カルパイン(Calpain)等が知られている。システインプロテアーゼの利用法として例えば、パパイヤ(Papaya carica)由来のパパインは食肉加工、入浴剤、洗剤などに利用されている。
前述の通り、これまでに納豆菌のシステインプロテアーゼ機能を遺伝子レベルで解明し、システインプロテアーゼ活性を有する実用納豆菌の開発に成功した例は未だ報告されていない。そこで、本発明は新規なシステインプロテアーゼ遺伝子を分離すること、さらに該遺伝子を改良して、より優れた蛋白質分解酵素活性を有する納豆菌又は枯草菌を含むバシラス属の細菌、又は大腸菌、又は酵母等を育種すること、さらにこれら微生物を用いて、システインプロテアーゼを効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究する過程で、納豆菌の新規蛋白質分解酵素遺伝子を見出し、係る知見に基づいて本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は次の通りである。
(1)下記の(a)、又は(b)に示す配列を有する蛋白質。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質。
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質。
(2)請求項1記載の蛋白質をコードするDNA。
(3)下記の(a)、(b)、又は(c)に示すDNA。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855の塩基配列からなるDNAの一部から作製したプローブとなりうる塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(4)請求項1記載のアミノ酸配列の全部、又は一部と80%以上相同である蛋白質をコードするDNA。
(5)請求項2〜4に記載のDNAを含む組換えベクター。
(6)請求項5に記載の組換えベクターを形質転換されたシステインプロテアーゼを発現することができる宿主細胞。
(7)請求項2〜4に記載のDNA上流の転写活性を強めることにより、システインプロテアーゼ活性が増強された宿主細胞。
(8)宿主細胞が、納豆菌、又は枯草菌を含むバシラス属の細菌、又は大腸菌、又は酵母であることを特徴とする請求項6又は7に記載の微生物。
(9)請求項8に記載の微生物の培養物であって、当該微生物の菌体外、又は菌体内に発現されるシステインプロテアーゼ。
(10)請求項8に記載の微生物を培養し、培養物からシステインプロテアーゼを採取することを特徴とするシステインプロテアーゼの製造方法。
尚、本発明により得られたシステインプロテアーゼは細胞内に局在する蛋白質であり、酵素阻害剤PCMB(p-chloro-mercuribenzoic acid)によってほぼ完全に阻害されるものである。また、pH4.2からpH10.8までの範囲で活性を有し、特にpH4.8からpH10.3までの範囲で高活性を有するものである。この酵素は、10℃から70℃まで活性を有し、至適温度は45℃である。
さらに、pH安定性については、pH3.0からpH11まで活性を有し、特にpH3.5からpH11まで安定に酵素活性を保持するものであり、温度安定性については、55℃まで活性を有し、特に50℃までは安定に酵素活性を保持するものである。
本発明によれば、納豆菌由来の新規蛋白質分解酵素が提供される。さらに、所定の微生物に対して、当該酵素システインプロテアーゼ活性を付与し、増強することができる。さらに、本発明により、酵素活性が増強された微生物を用いてシステインプロテアーゼを効率良く製造する方法が提供される。
本発明者らは、納豆菌から新規な蛋白質分解酵素遺伝子を取得する方法について、鋭意研究を行った結果、納豆菌のゲノムを解読することで、納豆菌固有の配列を見出した。
当該固有配列からORFを抽出し、プロテアーゼをコードすると推定できたORFをベクターにクローニングし、次いでこれを納豆菌へ形質転換した。この形質転換株を用いて、蛋白質分解酵素活性が増強されたことを確認することによって、納豆菌から目的とする蛋白質分解酵素遺伝子を分離する方法を開発した。
この方法によって、システインプロテアーゼをコードする遺伝子(以下、cprEと称する)の解明に初めて成功した。
即ち、システインプロテアーゼ遺伝子と推定できたORFのアミノ酸配列を、BLAST検索した結果、ワイル病原菌〔Leptospira interrogans (strain Fiocruz L1-130)〕(相同性35%)や、植物病原菌〔Xylella fastidiosa (strain Temecula1)〕(相同性34%)、アセトン−ブタノール発酵細菌〔Clostridium acetobutylicum (ATCC824)〕(相同性31%)、トマト斑葉細菌病菌〔Pseudomonas syringae (pv. tomato)〕(相同性29%)、アカンソアメーバ(Acanthamoeba polyphaga mimivirus)(相同性28%)や、メタン生成菌(Methanosarcina acetivorans C2A)〔相同性28%〕等とホモロジーを見出せた。
ところが、どの相同性上位の候補も相同性が低く、さらに同属のBacillus属とは相同性が無かった。これら相同性上位の候補と、低いながらも相同性が確認できたパパイヤ(Carica papaya)のchymopapainをアウトグループとして系統樹を作成(図1)したところ、CprEはClostridiumやLeptospiraと近いグループに属することが判明した。尚、図中の数値はブートストラップ値であり、値が1000に近いほど、その分岐が確からしいことを示す。
以上から、上記の納豆菌由来の蛋白質分解酵素は、バシラス属細菌では全く新規なシステインプロテアーゼであることが言える。
本発明において、cprE遺伝子をプラスミドベクターにクローニングして納豆菌に形質転換して作製した、コピー数及び転写活性を増強させた形質転換株においては、蛋白質分解酵素活性が約40倍増大し、該遺伝子が納豆菌の蛋白質分解酵素活性を有する蛋白質をコードする遺伝子であることが確認された。
さらに、PMSF(Phenylmethylsulfonyl Fluoride)及びEDTA(Ethylene Diamine Tetra acetic Acid)存在下においては、蛋白質分解酵素活性に影響がないことを確認したため、セリンプロテアーゼ(serine protease)や金属プロテアーゼ(metallo protease)ではないことがわかった。さらに、PCMB存在下においてほぼ完全に失活したことから、本酵素はシステインプロテアーゼ(cysteine protease)であることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
請求項1に記載の本発明の蛋白質は、下記の(a)、又は(b)に示す配列を有するものである。
(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質。
(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質。
配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質は、上記したように、既知の蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)のアミノ酸配列とある程度の相同性を有するものの、何れも低かった。さらに、同属であるバシラス属の相同性は確認できなかったことから、この蛋白質はバシラス属細菌において全く新規な酵素であると考えられる。
この酵素は、(a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質であってもよいが、(b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質、即ち(a)の蛋白質と実質的に同一の蛋白質であってもよい。
かかる(b)の蛋白質は、例えば部位特異的変異法によって、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列となるように改変することにより取得できる。また、従来より知られている突然変異処理によっても取得することができる。取得方法の詳細は、後述の本発明のDNAについての説明のところで述べる。
cprE遺伝子を高発現させる宿主としては、納豆菌や枯草菌を含めたバシラス属細菌、又は大腸菌、又は酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ピキア・メタノリカ(Pichia methanolica)等)など酵素生産に一般的に用いる宿主を親株とすることができる。例えば、納豆菌バシラス・サチリスMIZ1(Bacillus subtilis MIZ1)株(以下、MIZ1株と称する場合もある)を用いることができる。本菌は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託されており、その受託番号はFERM ABP-10437である。
プラスミドベクターとしては、各宿主細胞で複製可能であるプラスミドであれば利用可能である。例えば、納豆菌を宿主とした場合ではpWH1520(Mo Bi Tec社製)を用いることができる。pWH1520は大腸菌とバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)とのシャトルベクターであり、大腸菌ではアンピシリン(ampicilline)耐性マーカーを利用し、枯草菌ではテトラサイクリン(tetracycline)耐性マーカーを利用することができる。さらに、マルチクローニングサイトの上流にはXylose isomerase(XylA)の転写領域と、Xylose-dependent repressor(XylR)がクローニングされている。通常培養条件では、XylRによってxylAの転写が阻害されているが、Xylose存在下では、XylRの調節機構が外れ、XylAプロモーターの転写が誘導される。この転写機構を利用して、目的遺伝子の発現を厳密にコントロール、且つ強力に発現誘導させることができる。
即ち、MIZ1株を宿主として、pWH1520のマルチクローニングサイトにcprE遺伝子を転写調節領域と同方向に挿入したプラスミドベクターを保持させた遺伝子組換え株を利用することができる。その他にも、大腸菌BL21株(タカラバイオ社製)を宿主として、pCold TF DNAベクター(タカラバイオ社製)のマルチクローニングサイトにcprE遺伝子を転写調節領域と同方向に挿入したプラスミドベクターを保持させた遺伝子組換え株を利用することができる。
また、培養条件、培地の種類及びその他の遺伝子組換え技術は、バシラス属細菌に用いる一般的な方法を用いることができ、例えば、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、1992年、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリ・プレス・ニューヨーク(Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)」などが参考になる。
次に、本発明のDNAは、請求項1記載の蛋白質をコードするDNAであってもよく、あるいは請求項3に記載の如く、下記の(a)、(b)、又は(c)に示すDNAであってもよい。
(a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855からなる塩基配列を含むDNA。
(b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質をコードするDNA。
(c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855の塩基配列からなるDNAの一部から作製したプローブとなりうる塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質をコードするDNA。
即ち、コードされる蛋白質のシステインプロテアーゼ活性が損なわれない限り、1又は複数の位置で1又は数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加、或いは、逆位された蛋白をコードするものであってもよい。
さらには、cprEと実質的に同一の蛋白をコードするDNAは、例えば部位特異的変異法によって、特定のアミノ酸が欠失、置換、挿入又は付加、或いは逆位として塩基配列を改変することによっても取得することができる。また、上記のような改変されたDNAは、従来知られている突然変異処理によっても取得することができる。
尚、ストリンジェントな条件で得られるポリヌクレオチドとは、配列表の配列番号1に示した塩基配列と相補的な塩基配列を有するポリヌクレオチドをプローブとして、サザン・ハイブリダイゼーション法、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法等を利用することにより得られるものである。さらに詳細には、PCR法によって合成したDNAや、コロニー又はプラーク由来のポリヌクレオチドを固定化したメンブレンを0.7〜1.0M 塩化ナトリウム存在下65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC溶液(SSC溶液の組成は150mM 塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)を用い65℃でメンブレンを洗浄することで同定できるポリヌクレオチドである。ハイブリダイゼーションは、例えば、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、1992年、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリ・プレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)」に記載の方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズできるポリヌクレオチドとして、詳細には、配列表の配列番号1に示した塩基配列と相同性が60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは99%以上のポリヌクレオチドである。
さらに、一般的に蛋白質のアミノ酸配列及びそれをコードする塩基配列は、種間、株間、変異体、変種間で僅かに異なることが知られているので、実質的に同一の蛋白質をコードするDNAは、バシラス属細菌の種、株、変異体、変種から得ることも可能である。
また、本発明により得られたシステインプロテアーゼ活性が増強された宿主細胞を液体培地で培養した菌体を破砕することにより、システインプロテアーゼ粗酵素液を得ることができる。詳細には、栄養合成培地にて20〜45℃で培養して菌体を回収し、フレンチプレス細胞破砕機や超音波細胞破砕機などを使用する方法が挙げられる。さらに好ましくはLB培地(表1)にて37℃で培養して菌体を回収して、フレンチプレス細胞破砕機を用いることにより菌体を破砕し、その遠心上清からシステインプロテアーゼ粗酵素液を取得できる。
このときの培地容量を増加させて、納豆菌などの微生物の菌体量を高濃度で得ることができる。工業的にシステインプロテアーゼを生産する場合、数L〜数kL又は、それ以上の容量で培養することで、高濃度の蛋白を得ることができる。
このようにして得られた酵素は、食肉の軟化などの食品分野、蛋白質分解酵素などの化粧品分野、医薬品分野などで利用可能である。
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
(実施例1)cprE高発現納豆菌株の作製
(1)基本条件
cprE遺伝子を高発現させる親株として、納豆菌バシラス・サチリスMIZ1株(FERM ABP-10437)を用いた。プラスミドベクターとして、pWH1520を用いた。
尚、特に記載しない限り、培養条件、培地及びその他の遺伝子組換え技術は、「分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、2版(1992)、Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY」の記載に従った。また、基本的な培養は以下の表1に示す組成のLB培地を用いて行った。
Figure 2007129908
PCRによるDNA断片の増幅には、Ex Taq(タカラバイオ社製)を使用し、反応条件は、Ex Taqに添付のマニュアルに従った。
納豆菌の形質転換等は、以下の方法によった。
即ち、納豆菌の染色体DNAは、市販のキットを使用して調製し、形質転換は既報(例えば、ジャーナル・オブ・バクテオロジー(Journal of Molecular Biology)、1971年、第56巻、209−221頁)の方法に従った。
(2)ベクター構築
ベクター構築に用いた各DNA断片の作製概略を図2に示した。
即ち、MIZ1株のcprE遺伝子の増幅にはSpeIサイトを付加したプライマー1(配列表の配列番号3に記載)及びSmaIサイトを付加したプライマー2(配列表の配列番号4に記載)を使用した。
それぞれのプライマーは、cprE遺伝子領域をDNA Sequencer(ABI PRISM 3700 DNA Analyzer:PE Applied Biosystems製)を用いて塩基配列を決定し、設計したものをシグマ・アルドリッチ・ジャパン社にて受注合成した。
即ち、MIZ1株の全DNAを鋳型にし、プライマー1(配列表の配列番号3に記載)及びプライマー2(配列表の配列番号4に記載)を用いcprE遺伝子を増幅した(DNA断片1)(図2参照)。
続いて、上記DNA断片をベクターに挿入したが、その概略は図3に示した。即ち、DNA断片1をSpeI及びSmaIで処理した。得られたDNA断片をpWH1520のマルチクローニングサイト上のSpeI及びSmaIサイトにDNA断片1を導入し、プラスミドpWHcprEを得た(図3参照)。
(3)形質転換
プラスミドpWHcprEのプラスミドDNAをDonor DNAとして、MIZ1株へ形質転換した。形質転換株の選抜はテトラサイクリン(tetracycline)10μg/mlを添加したLB培地で37℃、18時間培養することにより行った。得られた形質転換株バシラス・サチリスcprE1(Bacillus subtilis cprE1)株(以下、cprE1株と称する場合もある)は、そのプラスミドDNAとpWHcprEが同じであることが分子量及び、塩基配列を決定することで確認された。
(実施例2)cprE過剰発現納豆菌株(cprE1)の蛋白分解酵素活性
納豆菌の蛋白分解酵素活性の測定は以下の方法に従った。即ち、cprE1株を100mlのLB液体培地で培養し、濁度を分光光度計で測定した(OD660は波長660nmでの濁度、A520は波長520nmでの吸光度を意味する)。
OD660≒0.05で培養を開始し、OD660≒0.3に到達した時点でキシロース(終濃度2%)を添加することでcprEの発現を誘導させ、さらに2時間培養を続けた後、集菌し、50mlの10mM リン酸Na (pH7.0) + 2M KCl溶液で2回洗浄し、さらに50mlの10mM リン酸Na(pH7.0)溶液で2回洗浄した。
その後、10mlの10mM リン酸Na(pH7.0)+1mg/ml Lysozyme溶液に懸濁し、フレンチプレス細胞破砕機で菌体を破砕した。5000rpm 10min.で残渣(debris)を取り除き、さらに40000rpm、 30min.で細胞壁画分を取り除いたものを粗酵素液とした。また、1% AZOCOLL Substrate(カルビオケム(CALBIOCHEM)社製)溶液に適宜、酵素阻害物質(終濃度1mM PMSF/ 1mM PCMB / 1mM EDTA)やL-システイン(終濃度10mM)を添加したものを基質溶液とした。50μl 粗酵素液と700μl基質溶液と250μlマレイン酸/Tris/NaOH buffer (終濃度125mM;pH6.5)を混合したものを、37℃で30min.インキュベートし、遠心して得た上清をA520で測定した。なお、この例では細胞内及び細胞膜酵素活性を例示するが、菌体外酵素活性はcprE1株に限っては誘導条件でも増加しないことを確認している。
(1)蛋白分解酵素活性の増加
粗酵素液の蛋白量を120μgに合わせて酵素活性を測定した。
結果を表2に示す。
Figure 2007129908
以上の結果から、cprE発現誘導で、蛋白分解酵素活性が増加したことを確認した。また、非誘導条件ではほとんど、その活性が確認できないことがわかった。
(2)酵素活性の局在
フレンチプレス細胞破砕機で菌体を破砕し、5000rpm 10min.でdebrisを取り除き、さらに40000rpm、30min.で遠心後のペレットは細胞膜画分であり、上清は細胞内画分である。細胞膜画分は再度10mM リン酸Na(pH7.0)に溶解させ、各々の蛋白量を50μgに合わせた粗酵素液を用いてプロテアーゼ活性を測定した。
結果を表3に示す。
Figure 2007129908
以上の結果から、CprEは膜画分に発現せず、細胞内に局在していることを確認した。
(実施例3)酵素特性
(1)酵素阻害剤の影響
酵素反応液に適宜酵素阻害剤を添加し、プロテアーゼ活性を測定した。即ち、50μl 粗酵素液と700μl基質溶液〔1% AZOCOLL Substrate溶液、酵素阻害物質(終濃度1mM PMSF/1mM PCMB / 1mM EDTA)、及びL-システイン(終濃度10mM)〕と250μlマレイン酸/Tris/NaOH buffer (終濃度125mM;pH6.5)を混合したものを、酵素反応物とした。それぞれ、粗酵素液の蛋白量を120μgに合わせて酵素活性を測定した。
結果を表4、5に示す。
Figure 2007129908
Figure 2007129908
以上の結果から、CprEはPMSFやEDTAに阻害されず、PCMBに阻害されることを確認できたため、システインプロテアーゼであることが確認できた。
(2)至適pHの測定
cprE1株を発現誘導した粗酵素液(蛋白量70μg)を用い、1mM PMSF及び1mM EDTA及び10mMシステイン存在下での酵素活性を、温度を37℃に固定して様々なpHにおいて測定した。なお、使用したbufferはクエン酸/NaOH buffer、マレイン酸/Tris/NaOH buffer、グリシン/NaOH buffer、NaHPO4/NaOH buffer(終濃度125mM)である。
結果を図4に示す。
以上の結果から、CprEはpH4.2からpH10.8まで活性を有し、特にpH4.8からpH10.3までの範囲で高活性を有することを確認した。
(3)至適温度の測定
cprE1株を発現誘導した粗酵素液(蛋白量70μg)を用い、1mM PMSF及び1mM EDTA及び10mMシステイン存在下での酵素活性を、pH6.5に固定し、様々な温度において測定した。
得られた結果を図5に示す。
以上の結果から、CprEは10℃から70℃まで活性を有し、特に45℃において最大活性であることを確認した。
(4)pH安定性試験
cprE1株を発現誘導した粗酵素液(蛋白量70μg)を用い、1mM PMSF及び1mM EDTA及び10mMシステイン存在下での酵素活性を、様々なpHで30min.4℃処理した後に、pH6.5に調整し37℃において測定した。結果を図6に示す。
以上の結果から、CprEはpH3.0からpH11まで活性を有し、特にpH3.5からpH11までは安定に酵素活性を保持することを確認した。
(5)温度安定性試験
cprE1株を発現誘導した粗酵素液(蛋白量70μg)を用い、1mM PMSF及び1mM EDTA及び10mMシステイン及び10mMシステイン存在下での酵素活性を、様々な温度で30min.処理した後に、pH6.5で37℃において測定した。結果を図7に示す。
以上の結果から、CprEは55℃まで活性を有し、特に50℃までは安定に酵素活性を保持することを確認した。
(実施例4)酵素生産
バシラス・サチリスcprE1株由来のシステインプロテアーゼを大量に生産するために、ミニジャー(三ツワ理化学工業社製;KMJ−5A)を用いて、1LのLB培地で回転数を500r.p.m.に設定して培養した。2回の培養を行った後、遠心分離することで菌体を取得した。
その結果、発現誘導した菌体が湿重量で約25g得られ、そこから酵素液を蛋白量で約300mg抽出することができた。
cprE遺伝子の系統樹を示す。 実施例1のDNA断片作製の概略図である。 実施例1で構築したベクターを示す。 実施例2の酵素の至適pHを示す。 実施例2の酵素の至適温度を示す。 実施例2の酵素のpH安定性を示す。 実施例2の酵素の温度安定性を示す。

Claims (10)

  1. 下記の(a)、又は(b)に示す蛋白質。
    (a)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質。
    (b)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列からなり、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質。
  2. 請求項1記載の蛋白質をコードするDNA。
  3. 下記の(a)、(b)、又は(c)に示すDNA。
    (a)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855からなる塩基配列を含むDNA。
    (b)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855の塩基配列からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質をコードするDNA。
    (c)配列表の配列番号1に記載の塩基配列のうち、塩基番号1〜855の塩基配列からなるDNAの一部から作製したプローブとなりうる塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ蛋白質分解酵素(システインプロテアーゼ)活性を有する蛋白質をコードするDNA。
  4. 請求項1記載のアミノ酸配列の全部、又は一部と80%以上相同である蛋白質をコードするDNA。
  5. 請求項2〜4に記載のDNAを含むベクター。
  6. 請求項5に記載のベクターを形質転換されたシステインプロテアーゼを発現することができる宿主細胞。
  7. 請求項2〜4に記載のDNA上流の転写活性を強めることにより、システインプロテアーゼ活性が増強された宿主細胞。
  8. 宿主細胞が納豆菌(Bacillus subtilis natto)、又は枯草菌(Bacillus subtilis)を含むバシラス(Bacillus)属の細菌、又は大腸菌(Escherichia coli)、又は酵母であることを特徴とする請求項6又は7に記載の微生物。
  9. 請求項8に記載の微生物の培養物であって、当該微生物の菌体外、又は菌体内に発現されるシステインプロテアーゼ。
  10. 請求項8に記載の微生物を培養し、培養物からシステインプロテアーゼを採取することを特徴とするシステインプロテアーゼの製造方法。
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