以下、本発明のいくつかの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、搬送体の回転方向に像担持体を移動させて第1色トナー像に第2色トナー像を位置決める限りにおいて、各実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、中間転写ベルトを用いる画像形成装置に限らず、記録材搬送ベルトに担持された記録材へトナー像を転写する画像形成装置でも実施できる。中間転写ベルトに沿って複数の感光ドラムを配置したタンデム型画像形成装置のみならず、複数色の現像が可能な1個の感光ドラムを配置した1ドラム型画像形成装置でも実施できる。
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1、2、3に示される画像形成装置の一般的な事項については、図示を省略して重複する説明を省略する。説明中、特許請求の範囲で用いた構成に括弧を付して示した参照記号は、理解を助ける目的の例示に過ぎず、各実施形態中のその参照符号に該当する部材等に限定する趣旨のものではない。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の画像形成装置の構成の説明図、図2は感光ドラムの駆動系の説明図である。
図1に示すように、第1実施形態の画像形成装置100は、中間転写ベルト9に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部PY、PM、PC、PKを配置したタンデム型フルカラー軽印刷機である。
画像形成部PYでは、感光ドラム1Yにイエロートナー像が形成され、中間転写ベルト9に一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム1Mにマゼンタトナー像が形成され、イエロートナー像に重ね合わせて中間転写ベルト9に一次転写される。画像形成部PC、PKでは、感光ドラム1C、1Kにシアントナー像、ブラックトナー像が形成され、同様に重ね合わせて中間転写ベルト9に一次転写される。
搬送体の一例である中間転写ベルト9は、駆動ローラ13、テンションローラ12、バックアップローラ10に掛け渡して支持されて矢印R2方向に回転する。
中間転写ベルト9に担持された4色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。記録材Pは、給紙カセット20から給紙ローラ14によって引き出され、分離装置15によって1枚づつに分離されてレジストローラ16へ送り出される。
レジストローラ16は、中間転写ベルト9のトナー像に先頭を一致させて、記録材Pを二次転写部T2へ給送する。
4色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置17へ受け渡されて加熱加圧を受けることにより、表面にフルカラー画像を定着される。
中間転写ベルトクリーニング装置18は、ニ次転写部T2を通過して中間転写ベルト9に残った転写残トナーを除去する。
画像形成部PY、PM、PC、PKは、付設された現像装置4Y、4M、4C、4Kで用いるトナーがイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は同様に構成される。従って、以下では、イエローの画像形成部PYについて説明し、画像形成部PM、PC、PKについては、説明する構成の記号末尾のYをC、M、Kに読み替えて説明されるものとする。
画像形成部PYは、感光ドラム1Yの周囲に、帯電装置2Y、露光装置3Y、現像装置4Y、一次転写ローラ5Y、クリーニング装置6Yを配置する。
第1像担持体、像担持体の一例である感光ドラム1Yは、アルミニウム製シリンダの外周面に、帯電極性が負極性の有機光導電体層(OPC)を塗布して構成され、矢印R1方向に回転する。
帯電装置2Yは、負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を印加された帯電ローラを感光ドラム1Yに当接回転させることにより、感光ドラム1Yの表面を一様な負極性の電位に帯電する。
露光装置3Yは、イエローの分解色画像を展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1Yの表面に静電像を書き込む。走査線の副走査方向のピッチは600dpi(42.3μm)、主走査方向の画素ピッチも600dpi(42.3μm)である。
現像装置4Yは、トナーに磁性キャリアを混合したニ成分現像剤を攪拌してトナーを負極性に帯電させる。帯電したトナーは、固定磁極4jの周囲で感光ドラム1Yとカウンタ方向に回転する現像スリーブ4sに穂立ち状態で担持されて、感光ドラム1Yを摺擦する。
電源D4は、負極性の直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧を現像スリーブ4sに印加して、現像スリーブ4sよりも相対的に正極性となった感光ドラム1Yの静電像へトナーを付着させて、静電像を反転現像する。
一次転写ローラ5Yは、感光ドラム1Yとの間に中間転写ベルト9を挟持して、感光ドラム1Yと中間転写ベルト9との間に第1転写部、転写部の一例である一次転写部TYを形成する。
電源DYは、正極性の直流電圧を一次転写ローラ5Yに印加して、負極性に帯電して感光ドラム1Yに担持されたトナー像を、一次転写部TYを通過する中間転写ベルト9へ一次転写させる。
クリーニング装置6Yは、クリーニングブレードを感光ドラム1Yに摺擦して、一次転写部TYを通過して感光ドラム1Yの表面に残留した転写残トナーを除去する。
二次転写ローラ11は、中間転写ベルト9を介してバックアップローラ10に圧接して、中間転写ベルト9と二次転写ローラ11との間に二次転写部T2を形成する。
二次転写部T2は、中間転写ベルト9のトナー像に重ね合わせて記録材Pを挟持搬送し、記録材Pが二次転写部T2を通過する過程で、中間転写ベルト9から記録材Pへトナー像を二次転写させる。
電源D2は、負極性の直流電圧をバックアップローラ10に印加して、中間転写ベルト9に担持されて負極性に帯電したトナー像を記録材P側へ押し出すように二次転写させる。
図2に示すように、感光ドラム1Yは、駆動モータMYから回転軸1Ybを介して駆動力が伝達される。手前側の回転軸1Yaには図示しないカップリングを介してロータリーエンコーダからなるドラムエンコーダEYが連結される。制御回路CYは、ドラムエンコーダEYからの出力信号をもとに駆動モータMYを回転させることで、感光ドラム1Yの回転が等角速度回転となるように回転速度を制御する。
中間転写ベルト9のトナー像担持面の反対側面(内周面)の両側の縁領域には、光の反射と吸収を利用して中間転写ベルト9の移動量を測定するための位置指標32が配置されている。そして、中間転写ベルト9の内周面の縁領域に対向させて、位置指標32を検知する読み取り装置33Yが配置される。
<位置指標>
図3は位置指標の説明図、図4は読み取り装置の説明図である。
図3に示すように、位置指標32は、周期的な目盛パターンを設けたテープスケールを中間転写ベルト9内周面の一周全周(両側)に貼り付けて形成される。テープスケールは、裏面に粘着材をつけた幅10mm程度の樹脂製のテープに、あらかじめ300dpi(84.7μm)のピッチで反射部32aと非反射部32bとを等幅、等間隔に配列している。
ここでは、インクリメンタルパターンのテープスケールを用いるので、すべての位置指標32が何番目の位置指標32であるのかを識別するために、他の非反射部32bのほぼ3倍の幅を有する原点非反射部32cが設けられている。原点非反射部32cは原点指標の一例である。従って、通常の反射部32aの間隔が300dpiの84.7μmとなっているのに対して、原点非反射部32cをまたがった部分では、反射部32aの間隔が約2倍の150μm以上になる。
これにより、読み取り装置33Yが反射部32aからの光の反射を検知してパルス信号を出力したときのパルス間隔は、原点非反射部32cを読み取ったときだけ通常の2倍程度以上の時間間隔となって、原点が認識可能となる。また、原点非反射部32cが、テープスケールの先端と後端のつなぎ目となるように構成して、つなぎ目が位置決め精度に影響しないようにしている。
原点非反射部32cに続いて読み取った反射部32aから位置指標32の番号が順に付与される。1番目の反射部32aは、位置指標32−1、2番目の反射部32aは位置指標32−2、3番目の反射部32aは位置指標32−3、4番目の反射部32aは位置指標32−4と識別される。(n−1)番目の反射部32aは位置指標32−(n−1)、n番目の反射部32aは位置指標32−n、(n+1)番目の反射部32aは位置指標32−(n+1)、(m−1)番目の反射部32aは位置指標32−(m−1)と識別される。このようにしてm番目の反射部32aの位置指標32−mまで、すべての位置指標32に番号が付与される。図3の場合、目盛りは全部でm個存在する。
<位置指標検知手段>
図4は位置指標32を読み取る手段の具体例を示す図である。位置指標32には、前述したように等幅一定ピッチの反射部32aと非反射部32bとが交互に設けられている。読み取り装置33Yは、発光ダイオード47、フォトセンサアレイ46、センサ基板45により構成される。発光ダイオード47から照射された光は、位置指標32の反射部32aで反射され、フォトセンサアレイ46に入射する。反射光は、位置指標32のピッチに応じた明暗パターンになっていて、位置指標32の移動とともに、明暗パターンがフォトセンサアレイ46上を移動する。
フォトセンサアレイ46は、フォトセンサアレイ46上における明暗パターンの1/4周期離れた2つの位置での受光量変化に相当する90度位相のずれた正弦波状のアナログ出力を出力する。搬送指標32のピッチは84.7μmであるが、2つの正弦波状のアナログ出力を信号処理によって64分割することで、1.323μmピッチのパルス信号を得ている。目標とする位置合わせ精度(色ずれの限界値)を10μmとして、1μm程度の距離分解能で感光ドラム1Mの移動量を制御するためである。
なお、第1実施形態では、原点を設定しないと位置判別ができないインクリメンタルエンコーダパターンの搬送指標としたが、個別位置で直ちに位置判別が可能なアブソリュートエンコーダパターンの搬送指標に置き換えてもよい。原点を判別する方法も原点非反射部32cには限らない。
また、位置指標32は、レーザー加工などによりベルトに直接溝加工して形成してもよい。光学的な検知パターンは、ストライプには限らず、スタンプ加工、エッチング加工等で形成した凹凸のピットパターンに置き換えてもよい。光学的な検知には限定されず、磁気トラックを形成して磁気パターンで位置指標を形成してもよく、機械的に接触検知される凹凸パターンとしてもよい。
<移動手段、回動方向移動手段>
図5は感光ドラム移動機構の正面図、図6は感光ドラム移動機構の側面図、図7は感光ドラム移動機構の平面図である。
図1に示す画像形成部PY、PM、PC、PKは共通に構成された感光ドラム移動機構をそれぞれ備えている。ここでも、画像形成部PYの感光ドラム移動機構について説明して画像形成部PM、PC、PKについては重複する説明を省略する。
また、以下では、中間転写ベルト9の両側の縁領域に準備された位置指標32をそれぞれ32a、32bとしている。移動装置35Y、35Mは、一対配置されて、移動装置35Ya、35Yb、35Ma、35Mbと表記される。読み取り装置33Y、33Mは、一対配置されて、読み取り装置33Ya、33Yb、33Ma、33Mbと表記される。符号末尾のa、bは、それぞれ画像形成装置100の正面側と背面側とに対応している。
また、以下では、中間転写ベルト9に担持されたイエロートナー像に感光ドラム1Mに担持されたマゼンタトナー像を重ね合わせる制御を説明するが、感光ドラム1C、1Kについても同様な制御が実行される。
すなわち、中間転写ベルト9に担持された第1色(イエロー、マゼンタ)トナー像に、感光ドラム1Cに担持された第2色(シアン)トナー像を位置決めして重ね合わせる制御も同様に実行される。中間転写ベルト9に担持された第1色(イエロー、マゼンタ、シアン)トナー像に感光ドラム1Kに担持された第2色トナー像を位置決めして重ね合わせる制御も同様に実行される。
図5に示すように、感光ドラムPYは、軸方向の両端に設けられた一対の移動装置35Ya、35Ybを作動させることにより、中間転写ベルト9の回転方向の移動と、中間転写ベルト9の面内における回動とが可能である。感光ドラム1Yは、中間転写ベルト9の回転方向に移動可能な中間移動シャーシに対して中間転写ベルト9の面内で回転可能に取り付けたプロセスユニットシャーシ54に回転軸を固定されている。
感光ドラム1Y、帯電装置2Y、露光装置3Y、現像装置4Y、クリーニング装置6Yは、コの字形状のプロセスユニットシャーシ54に支持されている。
露光装置3Yは、プロセスユニットシャーシ54に固定されており、画像形成部PYが移動装置35Ya、35Ybによって移動したとき、露光装置3Yも画像形成部PYと一体に移動する。露光装置3Yが走査するレーザービームは、プロセスユニットシャーシ54の開口60を通過して感光ドラム1Yの表面を露光する。
このとき、画像形成部PYが移動装置35Ya、35Ybによって移動しても、露光装置3Yも一体に移動するので、感光ドラム1Yに対するレーザービームの走査位置は、副走査方向に移動しない。
図6に示すように、感光ドラム1Yは、両端の回転軸1Ya、1Ybで、ベアリング57a、57bを介してプロセスシャーシ54に支持されている。
一方の回転軸1Ybは、プロセスシャーシ54に支持された駆動モータMYに連結されており、他方の回転軸1Yaは、プロセスシャーシ54に支持されたドラムエンコーダEYに連結されている。
プロセスユニットシャーシ54の中央上部にはベアリング軸52が設けられ、プロセスユニットシャーシ54は、ベアリング53を介して、コの字形状の中間移動シャーシ51に対して回転可能に支持されている。
中間移動シャーシ51は、その両端において中間転写ベルト9の回転方向にのみ移動可能なリニアガイド55a、55bを介して、それぞれサイドシャーシ56a、56bに支持されている。サイドシャーシ56a、56bは、装置本体シャーシ101に固定されているため、中間移動シャーシ51は、中間転写ベルト9の回転方向に平行に移動可能である。
図7に示すように、サイドシャーシ56a、56bには、プロセスユニットシャーシ54をアクチュエータ駆動方向R4に駆動可能な感光ドラム1Yシフト用のリニアアクチュエータからなる移動装置35Ya、35Ybが設けられている。移動装置35Ya、35Ybを推力が比較的大きく、応答性が高く、1μm以下の移動分解能がある積層タイプ圧電アクチュエータで構成したので、高精度に位置調整が可能な構成となっている。
移動装置35Ya、35Ybに個別の移動量を設定することで、プロセスユニットシャーシ54の両端を、中間転写ベルト9の回転方向の上流側及び下流側へ独立に移動させることができる。このため、露光装置3Yを一体化させた画像形成部PYは、中間転写ベルト9の回転方向へ平行移動できるだけではなく、中間転写ベルト9に平行な面内における傾き角度を変える回動方向移動もできる。このため、傾き角度を調整する回動方向移動制御が可能である。
なお、移動装置手段35Ya、35Ybは、積層タイプ圧電アクチュエータ以外に、ボイスコイル型リニアアクチュエータ等を用いることができる。
図7に示すように、読み取り装置33Ya、33Ybは、サイドシャーシ56a、56bにそれぞれ固定された支持部材59a、59bに、移動しないように支持されている。読み取り装置33Ya、33Ybは、位置指標32a、32bに対向して配置されて中間転写ベルト9の位置指標32a、32bをそれぞれ読み取る。
図5に示すように、サイドシャーシ56a、56bの移動装置35Ya、35Ybに対向する位置には、プロセスユニットシャーシ54を移動装置35Ya、35Yb側に付勢するための圧縮ばね63a、63bが設けられている。
また、サイドシャーシ56a、56bの上方には、プロセスユニットシャーシ54の変位測定面61a、61bの変位を測定するための感光ドラム位置センサ36Ya、36Ybが設けられている。感光ドラム位置センサ36Ya、36Ybは、分解能1μm以下程度、ストローク1mm程度のものが好ましい。ここでは、小型で比較的安価なホール素子を用いた変位センサ(旭化成電子株式会社:HGシリーズ、または、HQシリーズ)を用いている。
プロセスユニットシャーシ54の両端の移動量を感光ドラム位置センサ36Ya、36Ybでそれぞれ検知して移動装置35Ya、35Ybの駆動にフィードバックする制御を行うため、画像形成部PYの高精度な位置制御が可能となっている。
なお、感光ドラム位置センサ36Ya、36Ybは、ホール素子を用いた変位センサ以外にも、高周波差動トランスを用いたものや、平面状コイルを用いた変位センサ(日本システム開発株式会社:超小型変位センサDS2001)などを採用してもよい。
<積層タイプ圧電アクチュエータ>
図8は積層タイプ圧電アクチュエータの応答性の説明図、図9は積層タイプ圧電アクチュエータの駆動制御の説明図である。
ここでは、移動装置35Ya、35Ybとして、積層タイプ圧電アクチュエータの一例である株式会社日本セラテック製ピエゾポジショナPFT1070(登録商標)を用いた。本製品は、特許第3367003号公報に記載されているように、内部に支柱バネ、ボールジョイントを有した基本構造であって、表1に示す仕様が公表されている。
表1に示すように、主な仕様としては、最大変位量60μm、最大発生力784N(80kgf)である。
図8に示すように、積層タイプ圧電アクチュエータを負荷0で約1μm変位させたとき、1msまでは動作が不安定であるが、それ以降は変位量が安定している。図8で示す応答性は、1μmという比較的小さな変位量の場合であったが、変位量が大きくなっても安定するまでの時間は同等であり、ほぼ1msで変位量が安定するという特性をもっている。
第1実施形態では、図5に示す露光装置3Yが画像形成部PYと一体に移動して合計の質量が10kgであって、感光ドラム1Yと中間転写ベルト9との摩擦抵抗が最大19.6N(2kgf)である。
この条件のとき、図9の速度制御曲線に従って2msの間に5μm移動させる場合、移動装置35Ya、35Ybに必要な発生力は以下のように計算される。
停止状態から一定の加速度aで加速/減速して、2msで5μm移動させて停止させたとき、最大速度vは次式となる。
v = 5μm/1ms
= 5 × 10−3 m/s
このとき必要な加速度aは次式となる。
a = ( 5 × 10−3 ) / (1 × 10−3)
= 5 m/sec2
10kgの質量の画像形成部PYを加速度 a で移動するのに必要な力 F は次式となる。
F = 10 × 5
= 50 (N)
これに摩擦抵抗19.6N(2kgf)を加算すると、移動装置35Ya、35Ybに必要な発生力は次式となる。
50 + 19.6 = 69.6 (N)
従って、第1実施形態で用いた積層タイプ圧電アクチュエータは、最大発生力が784N(80kgf)であるので、2msの間に10kgのものを5μm移動させることは十分に可能である。
<搬送体の速度変動量>
図10は一次転写部の構成の説明図、図11は中間転写ベルトの速度変動に伴う位置ずれの説明図、図12は図11の時間軸を引き延ばした位置ずれの説明図である。
図10に示すように、感光ドラム1Yの中心線と、一次転写ローラ5Yの中心線は、転写不良をなくすため、一次転写ローラ5Yのほうが下流側に4mmオフセットしている。また、転写開始位置Aは、感光ドラム1Yの中心線が通る位置Cよりも1mm上流側に設定され、読み取り装置33Yは、転写開始位置Aより0.6mm上流側の位置Bに設定されている。
中間転写ベルト9に担持された第1色トナー像は、転写位置Dの手前の転写開始位置Aにて、感光ドラム1Yに担持された第2色トナー像に重ね合わせられて、転写位置Dへ搬送される。読み取り位置Bで位置指標32を検知して演算した移動量で感光ドラム1Yが移動すると、転写開始位置Aが上流側/下流側へ移動して、第2色トナー像を第1色トナー像に位置合わせする。
図11、図12は、読み取り装置33Yで検知した中間転写ベルト9の累積位置ズレの経時変化を示している。図12は、図11の時間軸を拡大したもので、横軸の一目盛りが2msec、縦軸の一目盛りが1μmになっている。中間転写ベルト9の回転速度(プロセススピード)は300mm/secである。
すなわち、中間転写ベルト9にトナー像を一次転写したとき、トナーが中間転写ベルト9と感光ドラム1Yの間に存在することで、中間転写ベルト9と感光ドラム1Yの間に働く摩擦力がトナーの量や分布によって変動する。これにより、複数の画像形成部PY、PM、PC、PKを有するタンデム型の画像形成装置100では、画像形成部PY、PM、PC、PKの間隔それぞれで中間転写ベルト9に働く張力が変動する。このため、ヤング率が比較的高いポリイミド樹脂のベルト材を用いた場合でも、数μmから数10μmの伸びが生じて、色ずれの大きな要因となっていた。
図11に示すように、数秒間という比較的に長い周期で見ると、読み取り装置33Yを通過する中間転写ベルト9の累積位置ズレ(遅れ/進み)は、−0.03mmから0.01mmの間(レンジ0.04mm)で刻々変動する。
図12に示すように、2msという短い周期で見ると、読み取り装置33Yを通過する中間転写ベルト9の累積位置ズレ(遅れ/進み)は、大きくずれても2μm以下となっている。
ここで、中間転写ベルト9が2msecの間に進む距離は、回転速度300mm/secから、0.6mmとなる。また、上述したように、積層タイプ圧電アクチュエータは、感光ドラム1Yを2msecで5μm移動させる能力を有している。
図10に示すように、第1実施形態では、転写開始位置Aから読み取り位置Bまでの距離を0.6mmと設定している。このため、図12に示すように、2msの間に2μmずれたとしても、最大誤差2μmで転写開始位置Aまでに第2色トナー像を第1色トナー像に位置合わせできる。
以下に説明する各実施例では、第1色トナー像と第2色トナー像との許容最大ずれ量を20μmとしている。このため、第1転写部、第2転写部における第1色、第2色トナー像の搬送体に対する位置決め誤差(位置ずれ量)は、それぞれ10μm以内に押える必要がある。
そして、図12に示すように、2msecの間に最大2μmずれることを想定すると、累積位置ずれ量が10μmに達する可能性がある10mscc以内に、転写開始位置Aで第2色トナー像を第1色トナー像に位置決める必要がある。
従って、以下の実施例に関して言えば、転写開始位置Aから読み取り装置33Yの位置Bまでの距離は、中間転写ベルト9が10msecで進む距離3mmよりも短いことが望ましい。以下の実施例では、転写部、第1転写部、第2転写部の近傍位置とは、一次転写部TY、TM、TC、TKから3mm以内のことである。
しかし、近傍位置は、3mm以内には限定されない。近傍位置は、説明したように、中間転写ベルト9の回転速度のばらつき、積層タイプ圧電アクチュエータによる移動の応答性、目標とする位置決め誤差、感光ドラム、一次転写部の構成、寸法によって変化する。
<実施例1>
図13は実施例1の制御の説明図、図14は位置指標の検知時刻の説明図である。図15はイエロー画像形成部の制御のフローチャート、図16はマゼンタ画像形成部の制御のフローチャート、図17はシアン画像形成部の制御のフローチャート、図18はブラック画像形成部の制御のフローチャートである。
図13に示すように、実施例1では、個別の位置指標検知手段(33Y、33M)ごとに位置指標(32)の検知周期を測定して、個別の感光ドラム(1Y、1M)の移動量を計算する。第1制御手段(110Y)は、第1位置指標検知手段(33Y)が位置指標(32)を周期的に検知する時間間隔の変動量に応じて移動手段(35Y)の作動量を設定する。第2制御手段(110M)は、第2位置指標検知手段(33M)が位置指標(32)を周期的に検知する時間間隔の変動量に応じて移動手段(35M)の作動量を設定する。
図14に示すように、読み取り装置33Y、33Mは、中間転写ベルト9の内周面に形成された位置指標32に番地を割り振って、位置指標32ごとに副走査方向の絶対位置を定義する。第1トナー像、第2トナー像は、等しい絶対位置の位置指標にそれぞれ位置決めされる。
図13を参照して図15に示すように、画像形成の動作が開始されると、感光ドラム1Y、中間転写ベルト9が起動され(S11)、制御部110Yは、位置指標32の読み取り動作を開始する(S12)。
感光ドラム1Yは、上述したように等角速度回転制御されているので、感光ドラム1Yの露光位置HYが一次転写部TYに到達する時間THは、感光ドラム1Yの精度に関係なく常に一定となる。このため、一次転写部TYを特定の位置指標に位置決めると、時間TH前に書き込まれた走査線が特定の位置指標に位置決めて一次転写される。
中間転写ベルト9は、1回転以上回転される。制御部110Yは、読み取り装置33Yによって、すべての位置指標32を検知して、図3に示すように、絶対位置の番号を付与する(S13)。
その後、中間転写ベルト9の回転が安定すると、制御部110Yは、読み取り装置33Yにより、すべての隣接する位置指標32のパルス出力の時間間隔を計測して、位置指標の平均検出時間間隔tbmを算出する(S14)。
このとき、まだ、中間転写ベルト9にはトナー像が転写されていないので、中間転写ベルト9と感光ドラム1Yとの間に働く摩擦力の変動は比較的少なく、従って、中間転写ベルト9の張力変動も少ない。このため、中間転写ベルト9の伸縮量も比較的微小量に押えられ、隣接する位置指標32のパルス出力の時間間隔の変動も比較的少なく安定した値となっている。
制御部110Yは、読み取り装置33Yによって1番位置指標(32−1)を検出すると(S15のYES)、露光装置3Yを制御して感光ドラム1Yへの走査線書き込みを開始させる(S16)。
実施例1では、1番位置指標(32−1)を検出したときに、露光を開始するように設定したが、1番位置指標(32−1)である必要性は無く、どの番号の位置指標で露光開始したかを記憶しておけばよい。
制御部110Yは、読み取り装置33Yが1番位置指標(32−1)を検出してから2番位置指標(32−2)を検出するまでの時間間隔t1−2を計測する(S17)。
制御部110Yは、後述する式(1)によって、移動装置35Yによって感光ドラム1Yを移動させるときのシフト量を計算する(S18)。
制御部110Yは、計算されたシフト量と、感光ドラム位置センサ36Yの検知結果をもとに、移動装置35Yを作動させて、感光ドラム1Yを中間転写ベルト9の回転方向にシフトさせる(S19)。
イエロー画像の書き込みが終了すると(S20のYES)、画像形成の終了(最終画像の定着、排出完了)を待って(S21のYES)、感光ドラム1Yを停止させる(S22)。
なお、実施例1では、図6に示すように、感光ドラム1Yは、中間転写ベルト9の回転方向への移動と中間転写ベルト9の面内での傾き調整とが可能である。また、中間転写ベルト9の両側の縁領域に位置指標32a、32bを設け、読み取り装置33Ya、33Ybで位置指標32a、32bをそれぞれ独立に検知している。そして、移動装置35Ya、35Ybには、読み取り装置33Ya、33Ybの検知結果に応じたそれぞれ異なる移動量が設定される。
このため、感光ドラム1Yは、両端が独立して中間転写ベルト9の回転方向にシフトして、中間転写ベルト9の両端の伸び量の違いに対応できるように構成されている。
このため、傾き角度を含めた高精度なトナー像の位置合わせを実施でき、中間転写ベルト9の両端で色ずれ量の差が少ないフルカラートナー像を形成できる。
しかし、以下では、説明を簡単にするために、図7に示す一対の移動装置35Ya、35Ybに対して等しいシフト量を設定して、感光ドラム1Yを回動させることなく平行移動させるものとする。そして、図13では、背面側に位置する移動装置35Ybは図示を省略し、移動装置35Ya、35Ybを併せて移動装置35Yと略記する。
このようにして、感光ドラム1Yに対して走査線の書き込みが順次行われるのと並行して、読み取り装置33Yで読み取った一次転写部TYへの位置指標の到達の遅れ/進みを相殺するだけ感光ドラム1Yが刻々移動する。等角速度回転する感光ドラム1Yに担持された第1色トナー像の走査線が「位置指標の到達の遅れ/進みを相殺した一次転写部TY」へ次々に到達して、対応する番号の位置指標に位置決めされて一次転写される。
実施例1では、一次転写部TYにおける中間転写ベルト9の速度変動量に合わせて、感光ドラム1Yが中間転写ベルト9の回転方向の上流側/下流側へシフトさせる。これにより、中間転写ベルト9の速度変動(搬送ムラ)が生じても、一次転写されるイエロートナー像と位置指標との相対的な位置ズレが無くなる。
実施例1では、隣接する位置指標32の検出時間間隔を位置指標32ごとに計測し、検出時間間隔の変動量をもとに感光ドラム1Yを移動させる。感光ドラム1Yのシフト量は、以下の計算式(1)で計算される。
位置指標の検出時間間隔の平均値をtbm、目盛りの平均ピッチをdmとすると、中間転写ベルト9の平均速度vmは次の式で表される。
vm = dm / tbm
図14に示すように、読み取り装置33Yで位置指標32が次々に検出された時刻をTb1、Tb2、Tb3、・・・とし、検知時刻の間隔をt1−2、t2−3、t3−4、・・・とする。このとき、2番位置指標(32−2)が読み取り装置33Yを通過したときに算出されるドラムシフト量s1は、平均の時間間隔tbmと、目盛りの平均ピッチdmとから次の式(1)で計算される。
s1 = {(Tb2 − Tb1) − tbm} × vm
= (t1−2 − tbm) × ( dm / tbm)
= (t1−2 / tbm − 1) × dm ・・・(1)
中間転写ベルト9の速度が速くなった場合、すなわち、隣接する位置指標の検出時間間隔が短くなった場合、遅く転写される方向すなわち下流側に感光ドラム1Yをシフトさせる。そして、中間転写ベルト9の速度が遅くなった場合、すなわち、隣接する位置指標の検出時間間隔が長くなった場合、早く転写される方向すなわち上流側に感光ドラム1Yをシフトさせる。
一次転写部TYでの中間転写ベルト9の速度変動にあわせて、感光ドラム1Yの位置を位置指標32の一目盛りごとにこまめに調整する。感光ドラム1Yが露光位置HYから一次転写部TYへ回転する間に中間転写ベルト9が速度変動を起こすと、速度変動量に応じて感光ドラム1Yの位置が即座にシフトされて、イエロートナー像が中間転写ベルト9の所望の転写位置に転写される。感光ドラム1Yのシフト動作は、画像の転写がすべて終了するまで繰り返し行っていく。
このような画像形成部1Yでの制御と並行して、画像形成部1Mでは、制御部110Mによって、第2色トナー像の形成と一次転写が実行される。
図13を参照して図16に示すように、画像形成の動作が開始されると、感光ドラム1Yの起動と同時に感光ドラム1Mも起動される(S31)。
制御部110Mは、制御部110Yから位置指標32の平均検出時間間隔tbmを受信する(S34)。
制御部110Mは、読み取り装置33Mが1番位置指標(32−1)を検知するまで待機する。読み取り装置33Y、33M、33C、33Kの間隔がそれぞれ150mmとすると、読み取り装置33Yが1番位置指標(32−1)を検知して約2秒後に、読み取り装置33Mが1番位置指標(32−1)を検知する。読み取り装置33Yが1番位置指標(32−1)を検知してから約4秒後、約6秒後に、読み取り装置33C、33Kが1番位置指標(32−1)を検知する。
制御部110Mは、読み取り装置33Mによって1番位置指標(32−1)を検出すると(S35のYES)、感光ドラム1Mへの走査線書き込みを開始させる(S36)。
制御部110Mは、読み取り装置33Mによって位置指標32を検知して位置指標32ごとの時間間隔t1−2を計測する(S37)。
制御部110Mは、式(1)によって、感光ドラム1Mのシフト量を計算する(S38)。
制御部110Mは、感光ドラム位置センサ36Mの出力をフィードバックして、計算されたシフト量だけ移動装置35Mを作動させる(S39)。このとき、制御部110Mは、両側の移動装置(35Ma、35Mb:図5)によって感光ドラム1Mの回動方向制御も行う。
制御部110Mは、マゼンタ画像の書き込みが終了すると(S40のYES)、画像形成の終了を待って(S41のYES)、感光ドラム1Mを停止させる(S42)。
図13を参照して図17、図18に示すように、画像形成部PC、PKでも、制御部110C、110Kが、制御部110Mと同様な制御を行う。制御部110Yから位置指標32の平均検出時間間隔tbmを受信して(S54、S74)、位置指標32ごとの時間間隔t1−2を計測し(S57、S77)、計算されたシフト量だけ移動装置35C、35Kを作動させる(S59、S79)。
このようにして、画像形成部PY、PM、PC、PKにて、個別にトナー像が特定の位置指標32に位置決めて中間転写ベルト9に一次転写される。最初に一次転写されたイエロートナー像に、位置指標32を仲介させてマゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が順次重ね合わせられて、中間転写ベルト9上に、色ズレの少ないフルカラートナー像が形成される。
ところで、図2に示すように、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kは、等角速度回転制御されている。また、図1に示すように、露光位置HY、HM、HC、HKと一次転写部TY、TM、TC、TKとの位置関係は、すべての感光ドラム1Y、1M、1C、1Kで同じにしてある。このため、すべての感光ドラム1Y、1M、1C、1Kで露光されてから転写までの時間が等しくなる。
ただし、実際には、1番位置指標(32−1)の検知タイミングと露光開始タイミングとの間には、画像形成部PY、PM、PC、PKごとに異ならせた僅かな遅延時間が付与されている。実際に画像形成された画像の色ずれ量を計測して、遅延時間を付与することで、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kの取り付け誤差や露光位置HY、HM、HC、HKの機械的な設定誤差を排除している。
このことから、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kへ露光を開始するタイミングとして、一つの位置指標32(例えば1番位置指標(32−1))の検知時期を用いることが可能になっている。1番位置指標(32−1)が読み取り装置33Yで検知されたときに感光ドラム1Yでの露光を開始し、次に、1番位置指標(32−1)が読み取り装置33Mで検知されたときに感光ドラム1Mでの露光を開始している。
そして、画像形成部PY、PM、PC、PKのそれぞれにおいて、中間転写ベルト9の速度変動による転写位置の誤差を相殺するように、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kをシフトさせている。そして、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kから一次転写されている間ずっと、速度変動量に合わせて感光ドラム1Y、1M、1C、1Kの位置を微調整し続けている。これにより、画像全域に渡って色ずれの少ないフルカラートナー像が形成される。
実施例1の制御では、位置指標32によって絶対位置を規定された中間転写ベルト9の走査線2本ごとの転写位置で、中間転写ベルト9の速度変動を検出し、検出結果に基づいて感光ドラム1Y、1M、1C、1Kをシフトさせる。このため、感光ドラム1Y、1M、1C、1Kが露光、現像されてトナー像が一次転写されるまでの間の中間転写ベルト9の速度変動が画像品質に影響しなくなる。感光ドラム1Y、1M、1C、1Kと中間転写ベルト9との間に存在するトナーの影響などにより中間転写ベルト9が速度変動しても、画像の書き出しから終了まで色ずれすることなく中間転写ベルト9にトナー像を転写できる。
<実施例2>
図19は実施例2の制御の説明図、図20は位置指標の検知時刻の説明図である。図21はイエロー画像形成部の制御のフローチャート、図22はマゼンタ画像形成部の制御のフローチャート、図23はシアン画像形成部の制御のフローチャート、図24はブラック画像形成部の制御のフローチャートである。
実施例2では、同一位置指標(32)が上流側検知手段(33Y)から位置指標検知手段(33M)まで移動する時間の変動量に応じて第2像担持体(1M)の移動量を計算する。同一位置指標(32)を上流側検知手段(33Y)が検知してから位置指標検知手段(33M)が検知するまでの時間間隔の変化量に応じて、移動手段(35M)の作動量が設定される。
図19に示すように、具体的には、読み取り装置33Yで検知された位置指標32が読み取り装置33Mで検知されるまでに要した時間を計測して、予め算出した平均値と比較する。そして、平均値よりも実測時間が長い場合は一次転写部TMへのイエロートナー像の到着が遅れていると判断して、感光ドラム1Mを上流側へシフトさせる。逆に、平均値よりも実測時間が短い場合は一次転写部TMへのイエロートナー像の到着が進んでいると判断して、感光ドラム1Mを下流側へシフトさせる。
画像形成部PYには、移動装置(35Y:図13)が配置されない。制御部110Mは、絶対位置を付与された同一位置指標32が読み取り装置33Yに検知されてから読み取り装置33Mに検知されるまでの時間を計測して基準の平均値と比較する。これ以外の構成及び制御は実施例1と同様であるので、図19中、実施例1と共通する構成には図13と共通の符号を付して重複する説明を省略する。また、図21〜図24中、実施例1と同一の制御には図15〜図18と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
感光ドラム1Y、1Mは、等角速度回転制御され、露光位置HY、HMから一次転写部TY、TMまでの感光ドラム1Y、1Mの回転角度は等しいので、露光位置HY、HMから一次転写部TY、TMまでの感光ドラム1Y、1Mの回転に要する時間は等しい。
そして、一次転写部TY、TM間のイエロートナー像の搬送時間が常に一定であれば、マゼンタトナー像との間で色ずれを生じないように、感光ドラム1Y、1Mが配置されて露光制御される。感光ドラム1C、1Kのシアントナー像、ブラックトナー像に対しても同様である。
しかし、実際には、一次転写部TY、TM間で中間転写ベルト9が伸縮して、イエロートナー像が一次転写部TMへ到着する時刻がばらつき、ばらつきに応じた色ずれが発生する可能性がある。
そこで、実施例2では、一次転写部TY、TM間のイエロートナー像の搬送時間が常に一定になるように、感光ドラム1Mを中間転写ベルト9の回転方向に移動させる。実施例2の制御が実施例1と異なるのは、画像形成部PM、PC、PKにおける感光ドラム1M、1Y、1Cの移動量の計算方法である。
図20に示すように、読み取り装置33Y、33Mは、位置指標32に番地を割り振って、位置指標32ごとに副走査方向の絶対位置を定義する。第1トナー像、第2トナー像は、位置指標32を用いた等しい絶対位置指標にそれぞれ位置決めされる。
読み取り装置33Yは、位置指標(32−1)、(32−2)、(32−3)、(32−4)、(32−5)、(32−6)を順次検知する。そして、位置指標(32−1)が読み取り装置33Yで検知されてから読み取り装置33Mで検知されるまでの時間は、位置指標(32−2)が読み取り装置33Yで検知されてから読み取り装置33Mで検知されるまでの時間とは異なる。そして、時間差に相当するだけ、読み取り装置33Yから読み取り装置33Mまでの中間転写ベルト9が伸縮して速度変動が発生している。
図19を参照して図21に示すように、画像形成の動作が開始されると、制御部110Yは、感光ドラム1Yと中間転写ベルト9とを起動する。このとき、後述するように、感光ドラム1M、1C、1Kも起動されている(S11)。
制御部110Yは、少なくとも1回転以上、感光ドラム1Yを回転し、読み取り装置22Yを用いて位置指標32を読み取り開始し(S12)、図3に示すように、それぞれの位置指標32に番号を付与する(S13)。
制御部110Yは、番号を付与して絶対位置座標化したそれぞれの位置指標32の検知時刻を送信する(S114)。画像形成前の回転における位置指標32の検知時刻は、制御部110M、110C、110Kに送信されて、画像形成部PM、PC、PKにおける基準の平均値の計算に用いられる。
制御部110Yは、読み取り装置33Yが一番指標(32−1)を検知すると(S15のYES)、露光装置3Yによる感光ドラム1Yの露光を開始する(S16)。
制御部110Yは、イエロートナー像の静電像の書き込み開始後、読み取り装置33Yが刻々検知する位置指標32の検出時刻を制御部110M、110C、110Kに送信する(S117)。
制御部110Yは、イエロー画像の書き込みが終了すると(S20のYES)、画像形成の終了を待って(S21のYES)、感光ドラム1Y、中間転写ベルト9を停止させる(S22)。このとき、感光ドラム1M、1C、1Kも同時に停止される。
図19を参照して図22に示すように、画像形成の動作が開始されると、制御部110Mは、感光ドラム1Mを起動する(S31)。
制御部110Mは、読み取り装置33Yによるそれぞれの位置指標32の検出時刻を受信する(S132)。
制御部110Mは、少なくとも1回転以上、感光ドラム1Mを回転して、それぞれの位置指標32を読み取り装置33Mで読み取って検出時刻を取り込む(S133)。
制御部110Mは、受信した時刻を検出した時刻から差し引いて、それぞれの位置指標32が読み取り装置33Yで検知されてから読み取り装置33Mで検知されるまでの検出時間間隔を算出して平均値を求める(S134)。平均値は、速度変動が生じない状態で、中間転写ベルト9が、読み取り装置33Y(一次転写部TY)から読み取り装置33M(一次転写部TM)まで移動するために要する平均検出時間間隔である。
制御部110Mは、読み取り装置33Yが一番指標(32−1)を検知してから平均検出時間間隔が経過するとすると(S135のYES)、露光装置3Mによる感光ドラム1Mの露光を開始する(S36)。
制御部110Mは、感光ドラム1Yにおけるイエロートナー像の静電像の書き込み開始後に読み取り装置33Yが検知した位置指標の検出時刻を受信する(S137)。
制御部110Mは、マゼンタトナー像の静電像の書き込み開始後、読み取り装置33Mが刻々検知する位置指標32の検出時刻を取り込む(S138)。
制御部110Mは、受信した検出時刻と取り込んだ検出時刻との差を平均検出時間間隔と比較して移動装置35Mの移動量を算出する(S38)。
制御部110Mは、算出した移動量を移動装置35Mに設定して、感光ドラム1Mのマゼンタトナー像を中間転写ベルト9のイエロートナー像に位置決める(S39)。
制御部110Mは、マゼンタ画像の書き込みが終了すると(S40のYES)、画像形成の終了を待って(S41のYES)、感光ドラム1Mを停止させる(S42)。
図19を参照して図23、図24に示すように、画像形成部PC、PKでも、制御部110C、110Kが、制御部110Mと同様な制御を行う。制御部110Yから送信された位置指標32の検出時刻を用いて平均検出時間間隔を算出して(S154、S174)画像形成を開始する。画像形成の開始後は、位置指標32ごとの検出時刻を取り込んで(S158、S178)、検出時間間隔を算出して(S159、S179)、平均検出時間間隔との差に基づいて移動装置35C、35Kの移動量が設定される(S58、S78)。
このようにして、画像形成部PM、PC、PKにて、個別にトナー像が特定の位置指標32に位置決めて中間転写ベルト9に一次転写される。最初に一次転写されたイエロートナー像に、位置指標32を仲介させてマゼンタ、シアン、ブラックのトナー像が順次重ね合わせられて、中間転写ベルト9上に、色ズレの少ないフルカラートナー像が形成される。
ところで、n番位置指標(32−n)に対して、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kが検出した時刻をT1−n、T2−n、T3−n、T4−nとする。nは、1から位置指標32の総数までの自然数である。
図20に示すように、1番位置指標(32−1)から6番位置指標(32−6)までに対して具体的に示す。
1番位置指標(32−1)に対しては、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kを通じて時刻T1−1、T2−1、T3−1、T4−1が取り込まれる。
2番位置指標(32−2)に対しては、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kを通じて時刻T1−2、T2−2、T3−2、T4−2が取り込まれる。
3番位置指標(32−3)に対しては、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kを通じて時刻T1−3、T2−3、T3−3、T4−3が取り込まれる。
4番位置指標(32−4)に対しては、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kを通じて時刻T1−4、T2−4、T3−4、T4−4が取り込まれる。
5番位置指標(32−5)に対しては、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kを通じて時刻T1−5、T2−5、T3−5、T4−5が取り込まれる。
6番位置指標(32−6)に対しては、読み取り装置33Y、33M、33C、33Kを通じて時刻T1−6、T2−6、T3−6、T4−6が取り込まれる。
次に、位置指標(32―n)を、読み取り装置33Yが検知した時刻T1−nから読み取り装置33M、33C、33Kが検知するまでの検出時間間隔t2−n、t3−n、t4−n・・を算出する。検出時間間隔t2−n、t3−n、t4−n・・は、制御部33Mの記憶装置に記憶保持される。
中間転写ベルト9が位置指標32の原点非反射部(32c:図3)を検知した後に1回転することにより、すべての位置指標32に対して、読み取り装置33Yを基準にした検出時間間隔を計測し終わる。
読み取り装置33Yから読み取り装置33Mまでの中間転写ベルト9の通過時間の平均値をt2mとし、同じく読み取り装置33C、33Kまでの平均値をそれぞれt3m、t4mとする。平均値t2m、t3m、t4mは、それぞれ制御部110M、110C、110Kで計算されて内部の記憶装置に保持され、上述した平均検出時間間隔として、露光装置3M、3C、3Kの露光開始タイミングを決定する。
すなわち、実施例2では、1番位置指標(32−1)を読み取り装置33Yで検知した時刻T1−1に、露光装置3Yによる感光ドラム1Yへの静電像書き込みを開始する。この後、画像形成部PM、PC、PKにおいて、複数の画像形成動作を平行して行う。
画像形成部PMでは、時刻T1−1から平均値t2mの経過後に露光装置3Mによる感光ドラム1Mの露光が開始される。画像形成部PC、PKでは、時刻T1−1から平均値t3m、t4mの経過後に、露光装置3C、3Kによる感光ドラム1C、1Kの露光が開始される。
また、平均値t2m、t3m、t4mは、感光ドラム1M、1C、1Kのシフト量の計算にも使用される。画像形成部PMでの動作を説明すれば、1番位置指標(32−1)を読み取り装置33Yが検知した時刻T1−1から読み取り装置33Mが検知した時刻T2−1までの時間t2−1が次式により計算される。
t2−1 = T2−1 ― T1−1
次に、時間t2−1を使用して、画像形成部PMにおける感光ドラム1Mのシフト量が計算される。同時に、画像形成部PC、PKにおける感光ドラム1C、1Yのシフト量も計算される。
以下のように、距離L2 、L3 、L4 を定義する。
L2:読み取り装置33Yから読み取り装置33Mまでの距離
L3:読み取り装置33Yから読み取り装置33Cまでの距離
L4:読み取り装置33Yから読み取り装置33Kまでの距離
このとき、読み取り装置33Y、33M間のベルトの平均速度v2m、読み取り装置33Y、33C間のベルトの平均速度v3m、読み取り装置33Y、33M間のベルトの平均速度v4mは以下のようになる。
v2m = L2 / t2m
v3m = L3 / t3m
v4m = L4 / t4m
1番位置指標(32−1)が一次転写部TMを通過する際に算出される感光ドラム1Mのシフト量s2−1は次のようになる。
s2−1 = (t2−1 − t2m) × v2m
= (t2−1 − t2m) × ( L2 / t2m)
= (t2−1 / t2m − 1) × L2 ・・・・・(2)
1番位置指標(32−1)が一次転写部TCを通過する際に算出される感光ドラム1Cのシフト量s3−1は次のようになる。
s3−1 = (t3−1 − t3m) × v3m
= (t3−1 − t3m) × ( L3 / t3m)
= (t3−1 / t3m − 1) × L3 ・・・・・(3)
1番位置指標(32−1)が一次転写部TCを通過する際に算出される感光ドラム1Kのシフト量s4−1は次のようになる。
s4−1 = (t4−1 − t4m) × v4m
= (t4−1 − t4m) × ( L4 / t4m)
= (t4−1 / t4m − 1) × L4 ・・・・・(4)
式(2)、(3)、(4)は、1番位置指標(32−1)が、画像形成部PM、PC、PKを通過する時の感光ドラム1M、1C、1Kのシフト量を計算している。しかし、2番位置指標(32−2)から最後の位置指標(32−n)まで全く同様な計算式でシフト量を計算できる。
実施例2では、実施例1と同様に各色トナー像の色ずれを防止できるが、画像形成部PYで感光ドラム1Yをシフトさせる必要が無いので、実施例1より構成が簡単になるという効果がある。
また、実施例1と同様に、中間転写ベルト9の両端部に位置指標32と読み取り装置33M、33C、33Kを画像形成部PM、PC、PKごとに取り付けてあり、感光ドラム1M、1C、1Kの軸端を独立してシフトできる。このため、中間転写ベルト9の両端の伸びの違いに対応でき、より高精度な画像位置合わせを実施できる。
なお、中間転写ベルト9の両端部に配置された位置指標32から得られた検出時刻等のデータは、どちらか一方のみを用いても良いし、左右の平均値を用いてもよい。このようにすることで、露光タイミングを決定が容易になり、平均値を算出することも容易になり、中間転写ベルト9の両端で位置指標32を検出するタイミングが異なる場合への対応も容易である。
上述したように、一次転写されたトナーの影響などにより、一次転写部TYと一次転写部TMとの間の中間転写ベルト9に伸縮が生じて一次転写部TY、TM間の回転時間が変動する場合がある。このような場合に、実施例2では、中間転写ベルト9に設けられた位置指標32を検知することで、中間転写ベルト9の一次転写部TY、TM、TC、TKでの位置をすべて計測する。そして、中間転写ベルト9の伸びが大きく生じた場合など転写時間間隔が大きくなりそうな場合には、感光ドラム1Mを中間転写ベルト9の搬送方向上流側にシフトさせる。逆に、転写時間間隔が小さくなりそうな場合には感光ドラム1Mを中間転写ベルト9の搬送方向下流側にシフトさせる。これにより、中間転写ベルト9のどの場所においてもイエロートナー像を転写されてから同じ時間経過後にマゼンタトナー像が一次転写される。従って、画像形成部PY、PM、PC、PKの間で中間転写ベルト9が伸縮しても、色ずれを生じることなく、フルカラートナー像を中間転写ベルト9上に形成できる。
なお、実施例2では、上流側像担持体に付設した上流側位置検知手段と下流側像担持体の位置検知手段とで絶対位置座標の等しい位置指標を検知した。
しかし、第1位置指標検知手段は、上流側像担持体に付設したものに限定する必要は無く、第2位置指標検知手段の上流の任意の位置に配置できる。任意の位置に配置しても、下流側像担持体の転写部へ進入する搬送体の速度変動を検知して、速度変動に応じた移動量を設定できるからである。
ただし、上流側像担持体の上流側転写部と第1位置指標検知手段との位置関係を、下流側像担持体の下流側転写部と第2位置指標検知手段との位置関係に揃えて等しくすることによって、トナー像の重ね合わせ精度は最も高くなる。上流側転写部を通過して位置指標に位置決められた第1トナー像(走査線)に対して、下流側転写部を通過するその位置指標に位置決められた第2トナー像(走査線)を重ね合わせるからである。
また、実施例2では、上流側像担持体では、像担持体を移動させない制御を行ったが、上流側像担持体にも移動手段を設けて、実施例1、実施例2と同様な位置指標に対する位置決め制御を実行させてもよい。実施例2の制御を行う場合は、第1位置指標検知手段の上流側に、別の上流側位置指標検知手段を配置すれば、制御に必要な経過時間を計測できる。
<実施例3>
図25は実施例3における感光ドラム移動機構の正面図、図26は感光ドラム移動機構の側面図、図27は感光ドラム移動機構の平面図である。
実施例3では、画像形成部PY、PMに対して露光装置3Y、3Mを独立させて一体に移動させない。それ以外の構成は第1実施形態の構成と同一に構成されるので、第1実施形態と共通する構成には図5〜図7と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図25に示すように、露光装置3Y、3Mは、画像形成部PY、PMに固定して取り付けられていないので。画像形成部PY、PMが移動装置35Ya、35Yb、35Ma、35Mbによって移動しても、露光装置3Y、3Mは移動しない。
実施例3でも、位置指標32を用いてイエロートナー像とマゼンタトナー像との重ね合わせ制御が実行される。ただし、具体的な制御の方法としては、実施例1、実施例2いずれの方法を採用してもよい。
図26に示すように、露光装置3Y、3Mは、装置本体シャーシ101に固定されているサイドシャーシ56a、56bに対して固定されている。露光装置3Y、3Mを画像形成部PY、PMと一体に移動させることなく、装置本体シャーシ101に固定したため、実施例3では、画像形成部PY、PMの質量が大幅に減少される。これにより、移動装置35Ya、35Yb、35Ma、35Mbとして、より小型で安価のリニアアクチュエータを用いることが可能になるだけでなく、移動の応答性も高まるため、より細かな各色トナー像の位置決めが可能となる。
ところで、図13に示すように、実施例1では、感光ドラム1Y、1Mが移動した場合、露光装置3Y、3Mも一体に移動するので、露光位置HY、HMの移動は生じない。しかし、実施例3では、露光装置3Y、3Mに対して感光ドラム1Y、1Mが移動した分だけ感光ドラム1Y、1M上の露光位置HY、HMを補正するように感光ドラム1Y、1Mのシフト量を算出することが望ましい。
<実施例4>
図28は実施例4の制御に用いる構成の説明図、図29は中間転写ベルト機構の斜視図、図30は幅方向位置指標の説明図である。
実施例1〜実施例3では、搬送体の回転方向に像担持体を移動させる制御と、搬送体の面内で像担持体を回動させて、搬送体の回転方向に対する像担持体の傾き角度を調整する制御とを説明した。
これに対して実施例4では、搬送体の回転方向に直角な搬送体の幅方向に像担持体を移動させて、各色トナー像の主走査方向の色ずれを減少させている。実施例4でも位置指標32を用いて各色トナー像の副走査方向の色ずれも減少させているが、このための構成及び制御については実施例1で説明したとおりである。従って、図28〜図32中、実施例1と共通する構成には図1〜図13と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図28に示すように、中間転写ベルト9に沿って感光ドラム1Y、1Mが配置され、感光ドラム1Yから一次転写されたイエロートナー像に重ねて感光ドラム1Yから中間転写ベルト9へマゼンタトナー像が一次転写される。感光ドラム1Mの下流側に配置される感光ドラム(1C、1K:図2参照)については、必要な読み取り装置を同様に配置して、感光ドラム1Mと実質的に同一の制御を行うので、図示を行わず、重複する説明も省略した。
中間転写ベルト9の幅方向の両側の縁領域には、中間転写ベルト9の回転方向に配列したインクリメンタルパターンの位置指標32が配置されている。位置指標32の内側に隣接させて、幅方向に配列したインクリメンタルパターンの幅方向位置指標72が配置される。位置指標32と幅方向位置指標72とは一体のテープ状に形成して中間転写ベルト9の内側面に接着した。
位置指標32と幅方向位置指標72とをそれぞれ読み取るために、中間転写ベルト9の内側に読み取り装置33と幅方向読み取り装置73とが配置される。幅方向読み取り装置73Mは、中間転写ベルト9を介して感光ドラム1Mに対向配置され、中間転写ベルト9の回転方向における読み取り装置33Mと等しい位置で幅方向位置指標72を検知する。
幅方向読み取り装置73Mは、実施例1で説明した読み取り装置33と全く同じ構成である。幅方向読み取り装置73Mは、読み取り装置33と同様に、300dpiの反射・非反射の縞模様を読み取って、電気的分割処理で64分割して、分解能1.323μmのパルス信号を出力する。このため、5μm以下の高精度で幅方向の位置調整を可能になっている。
感光ドラム1Mには、感光ドラム軸方向位置センサ76Mと幅方向移動装置75Mとが取り付けられている。感光ドラム(1C、1K:図2参照)についても同様に構成されて、それぞれ独立して主走査方向位置が調整可能である。
幅方向移動装置75Mと感光ドラム軸方向位置センサ76Mとは、実施例1(図1)で説明した感光ドラム位置センサ36Mと移動装置35Mと同等のものである。幅方向移動装置75Mは、積層タイプ圧電アクチュエータを採用しており、感光ドラム軸方向位置センサ76Mは、ホール素子を用いた変位センサを採用している。
実施例4では、感光ドラム1Mの軸方向の移動量を感光ドラム軸方向位置センサ76Mで検知して幅方向移動装置75Mの駆動にフィードバックする制御を行うため、高精度な幅方向位置制御が可能となっている。
図29に示すように、中間転写ベルト9の裏面側の両側の縁領域に、中間転写ベルト9の全周にわたって、位置指標32と幅方向位置指標72とが配置される。
図30に示すように、位置指標32は、中間転写ベルト9の回転方向にほぼ等ピッチで並んだ反射/非反射の縞からなる光学的なインクリメンタルパターンである。
幅方向位置指標72は、中間転写ベルト9の回転方向と直角な幅方向にほぼ等ピッチで並んだ反射/非反射の縞からなる光学的なインクリメンタルパターンである。
幅方向位置指標72は、中間転写ベルト9の回転方向に平行な反射部と非反射部が交互に並び、反射部のピッチが位置指標32の場合と等しく84.7μmであるような目盛りパターンである。幅方向位置指標72は、位置指標32の原点非反射部32cの部分がつなぎ目となっている。
図30はパターン幅を誇張しているので、1番幅方向位置指標(72−1)〜9番幅方向位置指標(72−9)だけが図示される。しかし、実際には合計60本の反射部と非反射部とで構成される84.7μm×60=5.082mm、約5mmの幅のパターンである。
<幅方向移動手段>
図31は実施例4における感光ドラム移動機構の正面図、図32は感光ドラム移動機構の側面図、図33は感光ドラム移動機構の平面図、図34は実施例4の制御の説明図である。
上述したように、実施例4では、画像形成部PC、PYは、画像形成部PMと同様に構成される。しかし、最も上流側の画像形成部PYは、幅方向の移動制御を行わないので、幅方向移動装置及び感光ドラム軸方向位置センサを備えていない。
図31に示すように、露光装置3Mは、実施例1と同様に、画像形成部PMのプロセスユニットシャーシ54に固定されて、画像形成部PMと一体に、中間転写ベルト9の回転方向に移動制御される。
図32に示すように、中間転写ベルト9の一対の位置指標32を検知する読み取り装置33Ma、33Mbは、サイドシャーシ56a、56bに固定された支持部材59a、59bに支持されている。
これに対して、幅方向位置指標72を検知する幅方向読み取り装置(幅方向位置指標検知手段)73Mは、サイドシャーシ56a側にしか設けておらず、装置本体シャーシ101に対して固定された支持部材59dに支持されている。
図6に示すように、実施例1では、サイドシャーシ56a、56bは、装置本体シャーシ101に固定されていた。
図33に示すように、これに対して、実施例4では、サイドシャーシ56a、56bは、装置本体シャーシ101に固定されたベースフレーム71に対して、リニアガイド79a、79bを介して取り付けられている。これにより、サイドシャーシ56a、56bに支持された画像形成部PMの構造全体が感光ドラム1Mの軸方向に移動可能である。
サイドシャーシ56a側には、画像形成部PMを感光ドラム1Mの軸方向に移動させる幅方向移動装置75Mが本体シャーシ101に対して固定されている。そして、感光ドラム軸方向位置センサ76Mがサイドシャーシ56aの位置を検知することで、感光ドラム1Mの軸方向位置を検知可能なようになっている。
サイドシャーシ56bと装置本体シャーシ101との間には、サイドシャーシ56bを幅方向移動装置75M側へ付勢する圧縮ばね78が設けられている。幅方向移動装置75Mは、圧縮ばね78を押し縮めて画像形成部PMを圧縮ばね78側へ移動させ、幅方向移動装置75Mが縮むと、画像形成部PMは、圧縮ばね78に付勢されて幅方向移動装置75M側へ移動する。
以上のように構成することによって、露光装置3Mを含む画像形成部PMの全体が一体となって中間転写ベルト9の回転方向と直角な幅方向(主走査方向)へ移動する。このため、中間転写ベルト9の幅方向の位置変動(蛇行)に合わせて、感光ドラム1Mの位置を幅方向へ移動させて、中間転写ベルト9の一定の幅位置に位置決めできる。
実施例4では、中間転写ベルト9の回転方向のトナー像の位置合わせに関して実施例1又は2の制御をそのまま実施し、これに加えて、中間転写ベルト9の幅方向の位置決めを同時に行う。
幅方向の位置決めに関して、幅方向位置指標(72)は、転写部(TM)に近接した位置に配置された幅方向位置指標検知手段(73M)と、上流側幅方向検知手段(73Y)とによって検知される。
そして、幅方向制御手段(110M)は、上流側幅方向検知手段(73Y)から幅方向位置指標検知手段(73M)までの搬送体(9)の移動に伴う幅方向位置指標(72)の検知結果に応じて幅方向移動手段(75M)を作動させる。
図34に示すように、感光ドラム1Yは、実施例1、2と同様に等角速度回転制御される。これにより、感光ドラム1Yが露光位置HYで露光されてから一次転写部TYで一次転写が開始されるまでの時間が常に一定となり、露光開始時刻がわかれば転写開始時刻もわかる。従って、読み取り装置33Yにより、どの位置指標32が一次転写部TYにあるときに転写が開始されるのかがわかることになる。
同時に、幅方向読み取り装置(上流側幅方向検知手段)73Yによって幅方向位置指標72を検知することにより、中間転写ベルト9が主走査方向のどの位置にいるのかがわかることになる。
制御部110Mは、実施例1と同様に、中間転写ベルト9の空転期間に原点非反射部32cを検知して、すべての位置指標32に番号を付与する。原点非反射部32cは原点指標の一例である。このとき、テンションローラ12の傾き角度を変化させて、中間転写ベルト9を幅方向に往復移動させて、幅方向位置指標72を幅方向読み取り装置73Y、73Mに対して走査する。いわゆるステアリング制御が行われる。そして、幅方向位置指標72の縁を検知して、すべての幅方向位置指標72に番号を付与する(図30参照)。
制御部110Mは、一次転写部TYで一次転写が開始されてから、すべての位置指標32に対応して検知時刻だけでなく、幅方向読み取り装置38Yで検知した主走査方向位置も一緒に記憶していく。
制御部(幅方向制御手段)110Mは、画像形成部PYで転写が開始されたときの位置指標32を検出すると、対応して記憶された主走査方向位置を読み出し、幅方向読み取り装置38Mで検知した主走査方向位置と比較する。そして、制御部110Mは、読み出した主走査方向位置と検知した主走査方向位置との差分に相当するだけ、感光ドラム軸方向位置センサ76Mと幅方向移動装置(幅方向移動手段)75Mとを用いて、感光ドラム1Mを軸方向に移動させる。
これにより、一次転写部TYにおける感光ドラム1Yと中間転写ベルト9との幅方向の位置関係が、一次転写部TMにおける感光ドラム1Mと中間転写ベルト9との幅方向の位置関係に一致する。言い換えれば、一次転写部TYから一次転写部TMまで中間転写ベルト9が進む間の蛇行量だけ感光ドラム1Mが軸方向に移動する。
制御部110Mは、この制御を、全ての位置指標32に対して連続的に行う。中間転写ベルト9が蛇行して中間転写ベルト9の幅方向の位置がずれても、中間転写ベルト9のイエロートナー像と感光ドラム1Mのマゼンタトナー像を幅方向に精密に重ね合わせ続ける。
同様に、画像形成部PC、PKについても、制御部110C、110Kは、画像形成部PYで計測された中間転写ベルト9の幅方向の位置に合わせて、感光ドラム1C、1Kの軸方向の位置を調整する。これにより、中間転写ベルト9のイエロー、マゼンタトナー像に、シアントナー像、ブラックトナー像を主走査方向に精密に重ね合わせて、色ずれのないフルカラー画像が形成される。
実施例4の制御によれば、それぞれの一次転写部で、主走査方向と副走査方向との両方で中間転写ベルトの移動量を計測し、画像形成中に中間転写ベルトの移動量に応じて感光ドラムの位置を移動させる。このため、画像形成部間で中間転写ベルトの搬送速度に変動が生じたり蛇行が生じた場合であっても、上流側で一次転写されたトナー像に対し下流側でトナー像を正確に位置決めて一次転写することが可能となる。これにより、色ずれの少ない高品位の画像を形成することが可能なフルカラープリンタ、軽印刷装置等を提供できる。
<第2実施形態>
図35は第2実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
第2実施形態は、中間転写体を記録材搬送体に置き換えた以外は第1実施形態と同様に構成される。従って、図35中、第1実施形態と共通する構成には、図1と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図35に示すように、第2実施形態の画像形成装置200は、記録材搬送ベルト9Hに沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部PY、PM、PC、PKを配置したフルカラーレーザビームプリンタである。
画像形成部PYでは、感光ドラム1Yにイエロートナー像が形成され、記録材搬送ベルト9Hに担持された記録材Pに一次転写される。画像形成部PMでは、感光ドラム1Mにマゼンタトナー像が形成され、イエロートナー像に重ね合わせて記録材Pに一次転写される。画像形成部PC、PKでは、感光ドラム1C、1Kにシアントナー像、ブラックトナー像が形成され、同様に重ね合わせて記録材Pに一次転写される。
搬送体の一例である記録材搬送ベルト9Hは、駆動ローラ13、テンションローラ12、バックアップローラ10に掛け渡して支持されて矢印R2方向に回転する。
記録材Pは、給紙カセット20から給紙ローラ14によって引き出され、分離装置15によって1枚づつに分離され、レジストローラ16によって記録材搬送ベルト9Hに受け渡される。
記録材搬送ベルト9Hに静電的に担持された記録材Pは、4色のトナー像を転写された後に記録材搬送ベルト9Hから静電的に分離される。
4色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置17へ受け渡されて加熱加圧を受けることにより、表面にフルカラー画像を定着される。
このような記録材搬送体を用いる画像形成装置においても、必要な構成を備えて実施例1〜4の制御を実施できる。
搬送体の一例である記録材搬送ベルト9Hに位置指標を形成し、一次転写部TM、TC、TKでは、位置指標に対して感光ドラム1M、1C、1Kを位置決め制御する。
<第3実施形態>
図36は第3実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
第3実施形態は、搬送体に沿って配置される像担持体が1個である以外は第1実施形態と同様に構成される。従って、図36中、第1実施形態と共通する構成には、図1と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図36に示すように、第3実施形態の画像形成装置300は、複数色のトナー像を形成可能な1個の感光ドラム1を中間転写ベルト9に沿って配置した1ドラム型フルカラープリンタである。ロータリ現像装置4は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの現像装置4Y、4M、4C、4Kを感光ドラム1の現像位置へ移動して複数色のトナー像を形成可能である。
静電像形成手段の一例である露光装置3は、感光ドラム1に静電像を書き込む。
1回転目の感光ドラム1には、第1色のトナーの一例であるイエロートナーを用いてイエロートナー像を形成して中間転写ベルト9に一次転写する。
2回転目の感光ドラム1には、第2色のトナーの一例であるマゼンタトナーを用いてマゼンタトナー像を順次形成し、イエロートナー像に順次重ねて中間転写ベルト9に一次転写する。
3回転目の感光ドラム1には、第2色のトナーの一例であるシアントナーを用いてシアントナー像を順次形成し、マゼンタトナー像に順次重ねて中間転写ベルト9に一次転写する。
4回転目の感光ドラム1には、第2色のトナーの一例であるブラックトナーを用いてブラックトナー像が順次形成し、シアントナー像に順次重ねて中間転写ベルト9に一次転写する。
搬送体の一例である中間転写ベルト9は、駆動ローラ13、テンションローラ12、バックアップローラ10に掛け渡して支持されて矢印R2方向に回転する。
中間転写ベルト9に担持された4色のトナー像は、二次転写部T2へ搬送されて記録材Pへ一括二次転写される。記録材Pは、給紙カセット20から給紙ローラ14によって引き出され、分離装置15によって1枚づつに分離されてレジストローラ16へ送り出される。
レジストローラ16は、中間転写ベルト9のトナー像に先頭を一致させて、記録材Pを二次転写部T2へ給送する。
4色のトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置17へ受け渡されて加熱加圧を受けることにより、表面にフルカラー画像を定着される。
このような1ドラム型の画像形成装置においても、必要な構成を備えて実施例1〜4の制御を実施できる。
搬送体の一例である中間転写ベルト9に位置指標を形成し、一次転写部T1では、位置指標に対して感光ドラム1を位置決め制御する。