JP2009115055A - 回転式流体機械 - Google Patents

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Yoshitaka Shibamoto
祥孝 芝本
Ryuzo Sotojima
隆造 外島
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Abstract

【課題】可動部材が固定部材に対して自転を伴って揺動しながら偏心回転する回転式流体機械において、可動部材の自転に起因する振動を抑制する。
【解決手段】駆動軸(33)の軸心(X)に対して偏心した状態で駆動軸(33)に回転自在に取り付けられて、且つ環状ピストン(22)の鏡板の背面側に設けられて環状ピストン(22)の軸心(X)周りの自転に起因するモーメントとは逆向きのモーメントを発生するように駆動される偏心回転体(51)を備えた逆モーメント発生機構(50)を設ける。さらに、偏心回転体(51)と環状ピストン(22)との間に、該偏心回転体(51)と環状ピストン(22)との間の隙間空間を径方向の内外に分離して内周側及び外周側隙間空間(S3,S4)に区画するシールリング(29)を有し、内周側隙間空間(S3)内に所定圧を作用させて環状ピストン(22)をシリンダ(21)に押付ける押付機構(60)を設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、固定部材と、該固定部材と共に流体室を形成する可動部材とを備えた回転式流体機械に関するものである。
従来より、固定部材と該固定部材と共に流体室を形成する可動部材とを備えた回転式流体機械が知られている。
例えば、特許文献1に記載された回転式流体機械は、環状のシリンダ室を有するシリンダ(可動部材)と、そのシリンダ室内に配置された環状ピストン(固定部材)とが相対的に偏心回転運動するように構成されている。この回転式流体機械では、シリンダを構成する内側シリンダと外側シリンダとの間に環状のシリンダ室が形成され、そのシリンダ室が環状ピストンによって内側と外側とに区画され、さらに外側及び内側シリンダ室それぞれがシリンダに設けられたブレードによって高圧室と低圧室とに区画されている。このブレードは、環状ピストンに揺動自在に支持された揺動ブッシュ(可動部材支持部)のブレード溝に嵌め込まれている。このように、ブレード及び揺動ブッシュで支持されたシリンダは、偏心回転運動する際に、揺動ブッシュに対して進退すると共に、揺動ブッシュを中心として揺動する。
そして、この回転式流体機械は、シリンダが環状ピストンに対して偏心回転運動すると、各シリンダ室において低圧室側から流体が吸入され、該流体は圧縮された後に高圧室側から吐出される。
特開2005−330962号公報
ところで、前記の如くシリンダが揺動ブッシュを中心に揺動する構成においては、該シリンダはブレードが揺動ブッシュの中心点を向くように自転している。このシリンダの自転は、該シリンダの偏心回転運動に合わせて、換言すれば、シリンダの揺動運動に合わせて自転速度及び自転の向きが変わる。その結果、シリンダには、自転のモーメント(以下、自転モーメントともいう)が発生している。このとき、シリンダは、前述の如く、揺動ブッシュによって自転が制限されているため、該揺動ブッシュにはシリンダの自転モーメントの反力が作用している。この反力は回転式流体機械全体に対して該回転式流体機械の重心(通常は、駆動軸部)回りのモーメント(以下、反力に起因するモーメントともいう)として作用して該回転式流体機械を振動させる加振力となる。また、シリンダが偏心した状態で取り付けられた駆動軸部にはシリンダの自転モーメントによる荷重が作用しており、この荷重は駆動軸部回りのモーメント(以下、荷重に起因するモーメントともいう)を生じさせる。前記反力に起因するモーメントが支配的ではあるが、この荷重に起因するモーメントも回転式流体機械を駆動軸部回りに振動させる加振力となる。以下、反力に起因するモーメントと荷重に起因するモーメントとを併せて自転に起因するモーメントともいう。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記可動部材の自転に起因する振動を抑制することにある。
上記の課題を解決するため、第1の発明は、
駆動軸(33)と、背面に鏡板を有するシリンダ(21)と、背面に鏡板(26)を有し、上記シリンダ(21)と共に作動室(C1,C2)を形成するピストン(22)とを備え、上記シリンダ(21)及びピストン(22)の何れか一方が固定部材(21)に構成され、他方が上記駆動軸(33)の軸心(X)に対して偏心した状態で該駆動軸(33)に取り付けられて上記固定部材(21)に対して偏心回転する可動部材(22)に構成されて上記作動室(C1,C2)の容積を変化させる回転式流体機械であって、
上記可動部材(22)の自転を所定の揺動範囲内に制限する可動部材支持部(23,27)と、
上記駆動軸(33)の軸心(X)に対して偏心した状態で該駆動軸(33)に回転自在に取り付けられて且つ上記可動部材(22)の鏡板の背面側に設けられて上記可動部材(22)の軸心(X)周りの自転に起因するモーメントとは逆向きのモーメントを発生するように駆動される偏心回転体(51)を備えた逆モーメント発生機構(50)と、
上記偏心回転体(51)と可動部材(22)との間に、該偏心回転体(51)と可動部材(22)との間の隙間空間を径方向の内外に分離して内周側及び外周側隙間空間(S3,S4)に区画するシール部(29)を有し、上記内周側隙間空間(S3)内及び外周側隙間空間(S4)内のうちの少なくとも一方に所定圧を作用させて上記可動部材(22)を固定部材(21)に押付ける押付機構(60)とを備えていることを特徴とする。
これにより、逆モーメント発生機構(50)の偏心回転体(51)が、上記可動部材の回転軸(X)周りの自転に起因するモーメントとは逆向きのモーメントを発生し、その逆向きのモーメントによって、可動部材の自転に起因する振動を抑制する。
また、上記偏心回転体(51)と可動部材との間に、該偏心回転体(51)と可動部材との間の隙間空間を径方向の内外に分離して内周側及び外周側隙間空間(S3,S4)に区画するシール部(29)を設けると共に、上記内周側隙間空間(S3)内及び外周側隙間空間(S4)内のうちの少なくとも一方に所定圧を作用させて上記可動部材を固定部材に押付けるようにしたので、シリンダ室(C1,C2)内の圧力上昇によって発生する固定部材と可動部材との間のスラスト反力に抗して、固定部材と可動部材との軸方向隙間が縮小される。
ところで、固定部材(21)と可動部材(22)との間のスラスト反力を適切に打ち消すには、シール部(29)の径を調整して可動部材(22)の中心と周囲とで押付け力を異ならせたり、シール部(29)を可動部材(22)の中心から偏心させたりするなどの工夫が必要になる。
例えば、逆モーメント発生機構(50)と押付機構(60)の他の構成例としては、シールリング(29)の支持部材において該シールリング(29)よりも内周側に凹部を設け、その凹部内に偏心回転体(51)を配置して、凹部の底面で偏心回転体(51)を支持することも考えられる。しかし、この構成では、シールリング(29)は、偏心回転体(51)よりも大径にしなければならないので、シールリング(29)が必要以上に大径になって、可動部材(22)に対する押付け力が過大になってしまう可能性がある。また、この構成ではシール部(29)を適切な位置に偏心させるのも容易ではない。したがって、この構成では、押付け力を適切に設定できず、結果として圧縮効率の低下が懸念される。しかも、シールリング(29)の大径化はそれ自体がコストアップの要因となる。これに対して、本発明は、偏心回転体(51)と可動部材(22)との間にシール部(29)を設けたので、シール部(29)を必要以上に大径にする必要もなく、偏心位置の調整もより容易である。したがって、本発明によれば、押付け力を適切に設定でき、且つコストの抑制もできる。
また、逆モーメント発生機構(50)と押付機構(60)の他の構成例としては、シールリング(29)用と偏心回転体(51)用の支持部材とをそれぞれ、鏡板(26)背面側に、駆動軸(33)の軸方向に二重に設けることも考えられる。詳しくは、鏡板(26)に近い方の支持部材をシールリング(29)用にしてシールリング(29)を配置して押付機構(60)を構成し、シールリング(29)用の支持部材と他方の支持部材との間に偏心回転体(51)を配置する。この構成によれば、シール部(29)の径や偏心位置を適切に設定できる。しかし、この構成では、回転式流体機械(1)の軸方向の長さが大きくなるうえ、シールリング(29)用と偏心回転体(51)用の2つの支持部材が必要になるため、コストアップや生産性の悪化が懸念される。これに対し、本発明では、偏心回転体(51)がシールリング(29)を支持するので、シールリング(29)用と偏心回転体(51)用にそれぞれ別個の支持部材を設ける必要がなく、コスト、生産性の両面で有利である。
また、第2の発明は、
第1の発明の回転式流体機械であって、
上記シール部(29)は、上記偏心回転体(51)と上記可動部材(22)との間に配設された環状のシールリングであることを特徴とする。
このシールリングによって、該偏心回転体(51)と可動部材との間の隙間空間が径方向の内外に分離されて内周側及び外周側隙間空間(S3,S4)に区画される。そして、上記内周側隙間空間(S3)内に所定圧を作用させるために導入された高圧の潤滑油などがこのシールリングによって封止される。
また、第3の発明は、
第2の発明の回転式流体機械であって、
上記偏心回転体(51)は、上記環状のシールリングが嵌め込まれる環状溝(51a)が形成されていることを特徴とする。
この環状溝(51a)により、シールリングが保持される。これにより、上記内周側隙間空間(S3)内に所定圧を作用させるために導入された高圧の潤滑油などが確実に封止される。
また、第4の発明は、
第1の発明の回転式流体機械であって、
上記シール部(29)は、上記偏心回転体(51)に形成された環状凸部(51b)であることを特徴とする。
この環状凸部(51b)によって、該偏心回転体(51)と可動部材との間の隙間空間が径方向の内外に分離されて内周側及び外周側隙間空間(S3,S4)に区画される。そして、上記内周側隙間空間(S3)内に所定圧を作用させるために導入された高圧の潤滑油等がこの環状凸部(51b)によって封止される。
また、第5の発明は、
第1の発明の回転式流体機械であって、
上記偏心回転体(51)に作用する上記押圧力の反作用力を相殺する荷重相殺部(51c)をさらに備えていることを特徴とする。
これにより、偏心回転体(51)の上面(第1の内周側隙間空間(S3)に面している側)に作用する荷重(すなわち第1の内周側隙間空間(S3)内の圧力によって可動部材に作用する押圧力の反力)と、偏心回転体(51)の下面に作用する荷重とが相殺される。したがって、偏心回転体(51)に作用するスラスト荷重の発生を抑えることができる。
また、第6の発明は、
第5の発明の回転式流体機械であって、
上記荷重相殺部(51c)は、上記可動部材(22)を支持する支持部(17)と上記偏心回転体(51)との間に作用空間を形成する仕切り部材(51b)を有し、該作用空間と上記第1の内周側隙間空間(S3)とを均圧穴によって連通して構成されていることを特徴とする。
これにより、上記可動部材を支持する支持部(17)と上記偏心回転体(51)との間に形成された作用空間の圧力と、上記第1の内周側隙間空間(S3)の圧力とが均圧になる。したがって、第1の内周側隙間空間(S3)内の圧力によって偏心回転体(51)に作用するスラスト荷重の発生を抑えることができる。
第1の発明によれば、上記可動部材の回転軸(X)周りの自転に起因するモーメントとは逆向きのモーメントによって、可動部材の自転に起因する振動を抑制することができる。
また、上記可動部材が固定部材に押付けられることによって、シリンダ室(C1,C2)内の圧力上昇によって発生する、固定部材と可動部材との間のスラスト反力に抗して、固定部材と可動部材との軸方向隙間が縮小される。また、シール部(29)の大きさと、偏心位置を最適に設定できるので、環状ピストン(22)に対する押付け力を適切に設定でき、その結果、圧縮効率の高効率化ができる。しかも、偏心回転体(51)用とシールリング(29)用のそれぞれ別個の支持部材を用意する必要がないので、回転式流体機械をコンパクトに構成できる。
また、第2の発明によれば、上記内周側隙間空間(S3)内に所定圧を作用させるために導入された高圧の潤滑油等がこのシールリングによって封止される。
また、第3の発明によれば、環状溝(51a)により、シールリングが保持され、上記内周側隙間空間(S3)内に所定圧を作用させるために導入された高圧の潤滑油等が確実に封止される。
また、第4の発明によれば、上記内周側隙間空間(S3)内に所定圧を作用させるために導入された高圧の潤滑油等がこの環状凸部(51b)によって封止される。
また、第5の発明及び、第6の発明によれば、偏心回転体(51)に作用するスラスト荷重の発生を抑えることができる。
また、第6の発明によれば、第1の内周側隙間空間(S3)内の圧力によって偏心回転体(51)に作用するスラスト荷重の発生を抑えることができる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下の各実施形態や変形例の説明において、一度説明した構成要素と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る圧縮機(1)の縦断面図である。同図に示すように、本実施形態の圧縮機(1)は、ケーシング(10)内に、圧縮機構(20)と電動機(30)とが収納され、全密閉型に構成されている。前記圧縮機(1)は、例えば、空気調和装置の冷媒回路において、蒸発器から吸入した冷媒を圧縮して、凝縮器へ吐出するために用いられる。
ケーシング(10)は、円筒状の胴部(11)と、この胴部(11)の上端部に固定された上部鏡板(12)と、胴部(11)の下端部に固定された下部鏡板(13)とから構成されている。胴部(11)には、該胴部(11)を貫通する吸入管(14)と吐出管(15)とが設けられている。
前記圧縮機構(20)は、ケーシング(10)に固定された上部ハウジング(16)と下部ハウジング(17)との間に構成されている。この圧縮機構(20)は、軸直角断面形状が環状のシリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(21)と、該シリンダ室(C1,C2)内に配置された環状ピストン(22)と、シリンダ室(C1,C2)を高圧室(C1-Hp,C2-Hp)と低圧室(C1-Lp,C2-Lp)とに区画するブレード(23)とを有している。後に詳述するように、上記のシリンダ(21)と環状ピストン(22)とは、相対的に偏心回転運動をするように構成されている。なお、実施形態1では、シリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(21)が本発明で言う固定部材であり、シリンダ室(C1,C2)内に配置される環状ピストン(22)が可動部材である。
前記電動機(30)は、ステータ(31)とロータ(32)とを備えている。ステータ(31)は、圧縮機構(20)の下方に配置され、ケーシング(10)の胴部(11)に固定されている。ロータ(32)には駆動軸(33)が連結されていて、該駆動軸(33)がロータ(32)と共に回転軸(X)を軸心として回転するように構成されている。また、駆動軸(33)は、前記シリンダ室(C1,C2)を上下方向に貫通している。
前記駆動軸(33)は、環状ピストン(22)に対応する位置に形成された偏心部(33a)を有している。この偏心部(33a)は、該偏心部(33a)の上下の部分よりも大径に形成されており、該偏心部(33a)の中心は回転軸(X)から所定量だけ偏心している。
また、駆動軸(33)には、該駆動軸(33)の内部を軸方向に延びる給油路(図示省略)が設けられている。また、駆動軸(33)の下端部には、給油ポンプ(34)が設けられている。そして、前記給油路は、該給油ポンプ(34)から圧縮機構(20)まで上方へのびている。この構成により、ケーシング(10)内にある後述の高圧空間(S2)の油溜まり(19)に貯まる潤滑油を、この給油ポンプ(34)で前記給油路を通じて圧縮機構(20)の摺動部まで供給するようにしている。
上部ハウジング(16)には、外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)が設けられている。これらの外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)が上部ハウジング(16)に一体化されてシリンダ(21)が構成されている。
また、前記上部ハウジング(16)には、その中央部に前記駆動軸(33)を支持するための軸受部(16a)が形成されている。
一方、前記下部ハウジング(17)には、その中央部に凹陥部(17b)が形成されており、この凹陥部(17b)の底部(17c)の中央には駆動軸(33)を支持するための軸受部(17a)が貫通形成されている。このように、本実施形態の圧縮機(1)は、前記駆動軸(33)が前記シリンダ室(C1,C2)を上下方向に貫通し、偏心部(33a)の軸方向両側部分が軸受部(16a,17a)を介してケーシング(10)に保持される貫通軸構造となっている。これらのシリンダ(21)及び下部ハウジング(17)は例えば鋳鉄等で形成されている。
外側シリンダ(24)の内周面と内側シリンダ(25)の外周面は、互いに同一中心上に配置された円筒面であり、その間に前記シリンダ室(C1,C2)が形成されている。外側シリンダ(24)と内側シリンダ(25)は、下端部が上部ハウジング(16)で連結されることにより一体化されている。
前記ブレード(23)は、図2に示すように、シリンダ室(C1,C2)の径方向線上で、シリンダ室(C1,C2)の内周側の壁面(内側シリンダ(25)の外周面)から外周側の壁面(外側シリンダ(24)の内周面)まで延在するように構成され、外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)に固定されている。本実施形態では、ブレード(23)は、シリンダ(21)とは別の部材が両シリンダ(24,25)に嵌め込まれている。なお、ブレード(23)は、この例のように、別部材を両シリンダ(24,25)に嵌め込むようにしてもよいし、外側シリンダ(24)及び内側シリンダ(25)と一体的に形成してもよい。
シリンダ(21)と下部ハウジング(17)の間には、環状ピストン(22)が保持されている。環状ピストン(22)は、外周面が外側シリンダ(24)の内周面よりも小径で、内周面が内側シリンダ(25)の外周面よりも大径に形成されている。この環状ピストン(22)は、シリンダ(21)のシリンダ室(C1,C2)内に配設され、環状ピストン(22)の外周面と外側シリンダ(24)の内周面とが1点で実質的に接する状態(厳密にはミクロンオーダーの隙間があるが、その隙間での冷媒の漏れが問題にならない状態)において、その接点と位相が180°異なる位置で、環状ピストン(22)の内周面と内側シリンダ(25)の外周面とが1点で実質的に接するようになっている。こうして、環状ピストン(22)の外周面と外側シリンダ(24)の内周面との間に外側シリンダ室(C1)が形成され、環状ピストン(22)の内周面と内側シリンダ(25)の外周面との間に内側シリンダ室(C2)が形成されている。
また、この環状ピストン(22)は、鏡板(26)と一体化されている。該鏡板(26)には駆動軸(33)の偏心部(33a)に摺動自在に嵌合するハブ(26a)が設けられている。そして、駆動軸(33)が回転すると、後述するように、環状ピストン(22)がシリンダ室(C1,C2)内で偏心回転運動をする。
また、環状ピストン(22)は、図2に示すように、円環の一部分が分断されたC型形状に形成されており、この分断された部分に、環状ピストン(22)とブレード(23)とを相互に可動に連結する連結部材として、揺動ブッシュ(27)が設けられている(図3を参照)。この揺動ブッシュ(27)は、図3に示すように、ブレード(23)に対して高圧室(C1-Hp,C2-Hp)側に位置する吐出側ブッシュ(27A)と、ブレード(23)に対して低圧室(C1-Lp,C2-Lp)側に位置する吸入側ブッシュ(27B)とから構成されている。吐出側ブッシュ(27A)と吸入側ブッシュ(27B)は、いずれも断面形状が略半円形で同一形状に形成され、フラット面同士が対向するように配置されている。そして、揺動ブッシュ(27A,27B)の対向面の間のスペースがブレード溝(28)を構成している。
このブレード溝(28)にブレード(23)が挿入され、揺動ブッシュ(27A,27B)のフラット面(第2摺動面(P2):例えば図3の(C)を参照)がブレード(23)と実質的に面接触し、円弧状の外周面(第1摺動面(P1))が環状ピストン(22)と実質的に面接触している。そして、揺動ブッシュ(27A,27B)は、ブレード溝(28)にブレード(23)を挟んだ状態で、該揺動ブッシュ(27A,27B)がブレード(23)に沿って進退するように構成されている。同時に、揺動ブッシュ(27A,27B)は、シリンダ(21)に対して環状ピストン(22)と一体的に揺動するように構成されている。したがって、該揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として前記ブレード(23)と環状ピストン(22)とが相対的に揺動可能となり、かつ環状ピストン(22)がシリンダ(21)に対して該ブレード(23)に沿って進退可能となるように構成されている。これらブレード(23)及び揺動ブッシュ(27)が可動部材支持部を構成する。なお、この実施形態では揺動ブッシュ(27A,27B)を別体とした例について説明したが、揺動ブッシュ(27A,27B)は、一部で連結することにより一体構造としてもよい。
また、環状ピストン(22)には、吸入口(41)(後述)に臨む位置に貫通孔(43)が設けられており、この貫通孔(43)を介して内側シリンダ室(C2)へ冷媒などを吸入する。上記の環状ピストン(22)は、例えばアルミニウム合金等で形成されている。
以上の構成により、駆動軸(33)が回転すると、環状ピストン(22)は、回転軸(X)回りに偏心回転をすると共に、揺動ブッシュ(27)がブレード(23)に対して進退しながら、揺動ブッシュ(27)の中心点を揺動中心として揺動する。この揺動動作により、環状ピストン(22)とシリンダ(21)との接触点が図3において(A)図から(D)図へ順に移動する。
また、上部ハウジング(16)には、図1に示すように、上部ハウジング(16)内の低圧空間(S1)から外側シリンダ室(C1)に連通する吸入口(41)が形成されている。また、上部ハウジング(16)には、図2に示すように、外側シリンダ室(C1)の吐出口(45)及び内側シリンダ室(C2)の吐出口(46)が形成されている。これらの吐出口(45,46)は、それぞれ、上部ハウジング(16)をその軸方向に貫通している。吐出口(45)の下端は外側シリンダ室(C1)の高圧室(C1-Hp)に臨むように開口し、吐出口(46)の下端は内側シリンダ室(C2)の高圧室(C2-Hp)に臨むように開口している。一方、これらの吐出口(45,46)の上端は、該吐出口(45,46)を開閉する吐出弁(図示せず)を介して吐出空間(49)に連通している。上部ハウジング(16)及び下部ハウジング(17)には、吐出空間(49)から下部ハウジング(17)の下方の空間(高圧空間(S2))に連通する吐出通路(49a)が形成されている。
下部ハウジング(17)と環状ピストン(22)の鏡板(26)との間の凹陥部(17b)には、逆モーメント発生機構(50)が設けられている。この逆モーメント発生機構(50)は、偏心回転体(51)と、下部ハウジング(17)に設けられたピン部(53)と、該偏心回転体(51)に形成されてピン部(53)の移動を案内するスライド溝(54)とを有している。
偏心回転体(51)は、詳しくは、図4に示すように、円盤状に形成された部材である。上記駆動軸(33)の偏心部(33a)は、下部ハウジング(17)の凹陥部(17b)内にも伸びており、偏心回転体(51)は、この偏心部(33a)に回転自在に嵌め込まれている。
また、偏心回転体(51)は、図4に示すように、一方の面には、環状溝(51a)が形成されており、この環状溝(51a)には、図1に示すように、シールリング(29)が装填される。なお、環状溝(51a)は、偏心回転体(51)の中心から所定量偏心した位置に設けられている。そのため、偏心回転体(51)を偏心部(33a)に取り付けた状態では、シールリング(29)は環状ピストン(22)に対して偏心した状態で当接することになる。
上記シールリング(29)は、環状ピストン(22)の鏡板(26)の下面に圧接しており、偏心回転体(51)と環状ピストン(22)との間の空間を径方向に分割する。そして、シールリング(29)よりも内周側の空間(第1の内周側隙間空間(S3))は、高圧の潤滑油が導入されるようになっている。その際、偏心回転体(51)の中心に対するシールリング(29)の偏心量の設定によって、環状ピストン(22)に対する押付け力が作用する位置を設定できる。このように、環状ピストン(22)(可動部材)をシリンダ(21)(固定部材)に押付ける機構を押付機構(60)と呼ぶことにする。
上記偏心回転体(51)における環状溝(51a)の反対面には、環状溝(51a)とほぼ同径の環状凸部(51b)が形成されている。この環状凸部(51b)は、下部ハウジング(17)の底部(17c)と接触するようになっており、上記環状凸部(51b)は、偏心回転体(51)と下部ハウジング(17)との間の空間を径方向に分割する。ここで、環状凸部(51b)よりも内周側の空間を第2の内周側隙間空間(S5)と呼ぶことにする。
また、偏心回転体(51)は、該偏心回転体(51)の上面と下面とに作用する荷重を相殺する荷重相殺部(51c)を備えている。具体的には、荷重相殺部(51c)は、上記環状凸部(51b)を有しており、環状凸部(51b)によって形成した第2の内周側隙間空間(S5)と上記第1の内周側隙間空間(S3)とを連通する均圧穴を偏心回転体(51)に設けて構成されている。この構成では、偏心回転体(51)において第1の内周側隙間空間(S3)に面している部分の面積と、第2の内周側隙間空間(S5)に面している部分の面積とはほぼ等しい面積なので、第1の内周側隙間空間(S3)と第2の内周側隙間空間(S5)とが均圧穴で均圧にされることによって、偏心回転体(51)の上下の各面に作用する力が互いに打ち消しあう。したがって、偏心回転体(51)に作用するスラスト反力による運転時のロスが低減される。
なお、上記偏心回転体(51)は、板材をプレス加工して製造するのが好ましい。この場合、環状溝(51a)は、プレス加工で大凡の形状を形成した後に、シールリング(29)を装填した際に十分なシール性能を発揮できるように、切削加工を加えて所定の寸法精度に仕上げる。プレス加工のみで所定の寸法精度が得られる場合には、この切削加工の必要ない。一方、環状凸部(51b)は、環状溝(51a)をプレス加工した際に、該環状溝(51a)の反対面が押し出されるようにプレス用金型を構成しておけば、容易に形成できる。環状凸部(51b)の底部(17c)との接触部分は、所定のシール性能が得られるように平面研磨加工(切削加工)をする。ただし、この平面研磨加工(切削加工)も、プレス加工のみで所定の寸法精度が得られる場合には必要ない。
上記ピン部(53)は、円柱状に形成された1本の柱状ピンによって構成されている。ピン部(53)の外径は、スライド溝(54)の幅よりも僅かに小さくなっている。また、下部ハウジング(17)の底部(17c)にはピン部(53)を挿入するための取り付け孔が予め形成されており、この取り付け孔にピン部(53)の基端部が圧入されている。つまり、ピン部(53)は、下部ハウジング(17)に固着されており、下部ハウジング(17)に対する相対移動が禁止された状態となっている。なお、ピン部(53)は下部ハウジング(17)の取り付け孔に対して緩嵌されて、該取り付け孔に対して回転自在に構成されていてもよい。
なお、下部ハウジング(17)は、シリンダ(21)が形成された上部ハウジング(16)と同様に、ケーシング(10)に固定されている。そのため、ピン部(53)は、環状ピストン(22)に対して間接的に固定された状態となっている。
一方、前記スライド溝(54)は、偏心回転体(51)を駆動軸(33)の偏心部(33a)に取り付けた状態で、図5に示すように、駆動軸(33)の回転軸(X)回りにおいて前記揺動ブッシュ(27)と略180°位相がずれた位置に形成されている。すなわち、平面視で、回転軸(X)を挟んでスライド溝(54)とブレード(23)とが一直線上に並んでいる。
スライド溝(54)は、一定の幅を有して直線状に延びる凹溝であって、概ね偏心回転体(51)の半径方向へ延びている。このスライド溝(54)にピン部(53)が嵌め込まれることにより、偏心回転体(51)は、該スライド溝(54)の長手方向に自在に進退でき、且つピン部(53)を中心に自在に回転することができる。
このように構成された逆モーメント発生機構(50)においては、駆動軸(33)が回転すると、偏心回転体(51)が、図6の(A)〜(D)に示すように、回転軸(X)回りに偏心回転をすると共に、ピン部(53)を揺動中心として揺動しつつ、スライド溝(54)がピン部(53)に対して進退する。
−運転動作−
次に、上記圧縮機(1)の運転動作について説明する。
この圧縮機(1)は、シリンダ(21)が固定されており、環状ピストン(22)がシリンダ(21)に対して偏心回転する。
具体的には、図3に示すように、環状ピストン(22)が偏心回転する。環状ピストン(22)の偏心回転角度は、平面視において、駆動軸(33)の回転軸(X)から半径方向に延びる直線上に揺動ブッシュ(27)の揺動中心と環状ピストン(22)の軸心(Y)(偏心部(33a)の軸心)とが並んだ(即ち、回転軸(X)とブレード(23)とを結ぶ線分上に環状ピストン(22)の軸心(Y)が位置する)時点における偏心回転角度を0°とする。(A)図は環状ピストン(22)の偏心回転角度が0°又は360°の状態を、(B)図は環状ピストン(22)の偏心回転角度が90°の状態を、(C)図は環状ピストン(22)の偏心回転角度が180°の状態を、(D)図は環状ピストン(22)の偏心回転角度が270°の状態をそれぞれ示している。
図3の(A)の状態における外側シリンダ室(C1)では、低圧室(C1-Lp)への吸入が完了し、且つ高圧室(C1-Hp)からの吐出が完了した状態である。ここから駆動軸(33)が図の時計回りに回転して図3の(B)の状態に変化するときに、新たな低圧室(C1-Lp)が形成され、そこから図3の(C),(D),(A)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C1-Lp)の容積が増大することで、冷媒が、吸入管(14)、低圧空間(S1)及び吸入口(41)を通って該低圧室(C1-Lp)に吸入される。
駆動軸(33)が一回転して再び図3の(A)の状態になると、前記低圧室(C1-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C1-Lp)は、今度は冷媒が圧縮される高圧室(C1-Hp)となり、ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C1-Lp)が形成される。駆動軸(33)がさらに回転すると、前記低圧室(C1-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される。一方、高圧室(C1-Hp)の容積が減少し、該高圧室(C1-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(C1-Hp)の圧力が所定値となって吐出空間(49)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(C1-Hp)の高圧冷媒によって吐出弁が開き、高圧冷媒が吐出空間(49)から吐出通路(49a)を通って高圧空間(S2)へ流出する。
一方、図3の(C)の状態における内側シリンダ室(C2)では、低圧室(C2-Lp)への吸入が完了し、且つ高圧室(C2-Hp)からの吐出が完了した状態である。ここから駆動軸(33)が図の時計回りに回転して図3の(D)の状態に変化するときに新たな低圧室(C2-Lp)が形成され、そこから図3の(A),(B),(C)の状態へ変化するのに伴って該低圧室(C2-Lp)の容積が増大することで、冷媒が、吸入管(14)、低圧空間(S1)、吸入口(41)及び貫通孔(43)を通って該低圧室(C2-Lp)に吸入される。
駆動軸(33)が一回転して再び図3の(C)の状態になると、前記低圧室(C2-Lp)への冷媒の吸入が完了する。そして、この低圧室(C2-Lp)は、今度は冷媒が圧縮される高圧室(C2-Hp)となり、ブレード(23)を隔てて新たな低圧室(C2-Lp)が形成される。駆動軸(33)がさらに回転すると、前記低圧室(C2-Lp)において冷媒の吸入が繰り返される一方、高圧室(C2-Hp)の容積が減少し、該高圧室(C2-Hp)で冷媒が圧縮される。高圧室(C2-Hp)の圧力が所定値となって吐出空間(49)との差圧が設定値に達すると、該高圧室(C2-Hp)の高圧冷媒によって吐出弁が開き、高圧冷媒が吐出空間(49)から吐出通路(49a)を通って高圧空間(S2)へ流出する。
ここで、第1の内周側隙間空間(S3)には、高圧の潤滑油が導入されているので、環状ピストン(22)は、潤滑油の圧力(押圧力)によって、その背面側からシリンダ(21)側に押し付けられている。これにより、シリンダ室(C1,C2)内の圧力上昇によって発生するシリンダ(21)と環状ピストン(22)との間のスラスト反力に抗して、シリンダ(21)と環状ピストン(22)との軸方向隙間が縮小され、その結果、圧縮効率を高効率化できる。この際、第1の内周側隙間空間(S3)と、該第1の内周側隙間空間(S3)の反対側に形成されている第2の内周側隙間空間(S5)とは、均圧穴(荷重相殺部(51c))によって連通されているので、偏心回転体(51)の第1の内周側隙間空間(S3)に面している部分と、第2の内周側隙間空間(S5)に面している部分とに作用する荷重とが相殺される。
なお、上記の運転中は、油溜まり(19)の潤滑油が、駆動軸(33)の下端の給油ポンプ(34)により、前記給油路内を上方へ押し上げられて、圧縮機構(20)の各軸受部(16a,17a)や、上記第1の内周側隙間空間(S3)に供給される。
上記のように、環状ピストン(22)が偏心回転することで冷媒を圧縮する間、揺動ブッシュ(27)がブレード(23)と係合しているため、揺動ブッシュ(27)がブレード(23)の方向を向くように自転している。すなわち、環状ピストン(22)は、揺動ブッシュ(27)がブレード(23)の方向を向くように自転が制限されており、環状ピストン(22)の自転は、該環状ピストン(22)とブレード(23)との相対位置に応じて、その自転速度及び方向が変化する。こうして、環状ピストン(22)には自転モーメントが発生している。そして、この環状ピストン(22)は、ブレード(23)によって自転が制限されているため、ブレード(23)には環状ピストン(22)の自転モーメントの反力が作用している。その結果、圧縮機(1)には回転軸(X)回りに反力に起因するモーメントが作用している。また、この環状ピストン(22)の自転モーメントによって偏心部(33a)には荷重が作用している。その結果、駆動軸(33)には、偏心部(33a)への荷重に起因するモーメントが作用している。しかし、これら反力に起因するモーメントと荷重に起因するモーメントとを含む自転に起因するモーメントは、逆モーメント発生機構(50)の作用によって打ち消される。
そこで、逆モーメント発生機構(50)の作用について、図6を用いて詳しく説明する。
ここで、偏心回転体(51)の偏心回転角度は、平面視において、駆動軸(33)の回転軸(X)から半径方向に延びる直線上にスライド溝(54)と偏心回転体(51)の軸心(Z)(偏心部33aの軸心)とが並んだ(即ち、回転軸(X)とスライド溝(54)とを結ぶ線分上に偏心回転体(51)の軸心(Z)が位置する)時点における偏心回転角度を0°とする。図6の各図においては、環状ピストン(22)及び偏心回転体(51)の偏心回転角度の値を前後に並べて表示している。本実施形態では、環状ピストン(22)と偏心回転体(51)とは回転軸(X)に対して同じ側に偏心しており、且つ環状ピストン(22)の偏心回転角度の基準点を決定するブレード(23)と、偏心回転体(51)の偏心回転角度の基準点を決定するピン部(53)及びスライド溝(54)との回転軸(X)回りの角度の位置が回転軸(X)回りに180°ずれているため、環状ピストン(22)の偏心回転角度と偏心回転体(51)の偏心回転角度とは180°ずれている。
まず、図6の(A)に示すように、環状ピストン(22)の偏心回転角度が0°のとき、環状ピストン(22)も偏心回転体(51)も回転軸(X)に対して12時の方角に位置している。ただし、偏心回転体(51)の偏心回転角度は、前述の如く、環状ピストン(22)の偏心回転角度に対して180°ずれているため、180°である。
そこから、駆動軸(33)が時計回りに偏心回転すると、図6の(B)に示すように、環状ピストン(22)及び偏心回転体(51)は回転軸(X)に対して3時の方角へ時計回りに偏心回転する。このとき、環状ピストン(22)は、揺動ブッシュ(27)がブレード(23)の方向を向くように反時計回りに自転しながら偏心回転する。この自転の自転速度は、環状ピストン(22)の偏心回転角が0°から増大するにつれて減少して、該偏心回転角が略90°となったとき(詳しくは、揺動ブッシュ(27)を中心とした環状ピストン(22)の一方向側への揺動角が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
一方、偏心回転体(51)は、ピン部(53)を揺動中心として自転しながら偏心回転する。ここで、環状ピストン(22)と偏心回転体(51)とは回転軸(X)に対して同じ側に偏心しており、且つ環状ピストン(22)の揺動中心であるブレード(23)及び揺動ブッシュ(27)と、偏心回転体(51)の揺動中心であるピン部(53)及びスライド溝(54)との回転軸(X)回りの角度の位置が回転軸(X)回りに180°ずれている。そのため、偏心回転体(51)の自転方向は、環状ピストン(22)の自転方向とは逆の時計回りである。この自転の自転速度は、偏心回転体(51)の偏心回転角が180°から増大するにつれて減少して、該偏心回転角が略270°となったとき(詳しくは、ピン部(53)を中心とした偏心回転体(51)の一方向側への揺動角が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
その後、駆動軸(33)が時計回りにさらに偏心回転すると、図6の(C),(D)に示すように、環状ピストン(22)及び偏心回転体(51)は、回転軸(X)に対して3時から6時を経て9時の方角へ時計回りに偏心回転する。このとき、環状ピストン(22)は、揺動ブッシュ(27)がブレード(23)の方向を向くように時計回りに自転する。この自転の自転速度は、環状ピストン(22)の偏心回転角が90°から増大するにつれて増大して該偏心回転角が180°となったときに最大となり、該偏心回転角が180°から増加するにつれて減少して該偏心回転角が略270°となったとき(詳しくは、揺動ブッシュ(27)を中心とした環状ピストン(22)の他方向側への揺動角が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
一方、偏心回転体(51)は、ピン部(53)を揺動中心として反時計回りに自転する。この自転の自転速度は、偏心回転体(51)の偏心回転角が270°から増大するにつれて増大して該偏心回転角が360°(0°)となったときに最大となり、該偏心回転角が0°から増大するにつれて減少して該偏心回転角が略90°となったとき(詳しくは、ピン部(53)を中心とした偏心回転体(51)の他方向側への揺動角が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
そこからさらに、駆動軸(33)が時計回りに偏心回転すると、図6の(A)に示すように、環状ピストン(22)及び偏心回転体(51)は回転軸(X)に対して9時から12時の方角へ時計回りに偏心回転する。このとき、環状ピストン(22)は、揺動ブッシュ(27)がブレード(23)の方向を向くように反時計回りに自転する。この自転の自転速度は、環状ピストン(22)の偏心回転角が270°から増大するにつれて増大して、該偏心回転角が360°(0°)となったときに最大となる。
一方、偏心回転体(51)は、ピン部(53)を揺動中心として時計回りに自転する。この自転の自転速度は、偏心回転体(51)の偏心回転角が90°から増大するにつれて増大して、該偏心回転角が180°となったときに最大となる。
このように、環状ピストン(22)が回転軸(X)回りに偏心回転を一回行う間に、偏心回転体(51)も回転軸(X)回りに一回転する。このとき、偏心回転体(51)と環状ピストン(22)とは互いに逆向きに自転する。そして、環状ピストン(22)の自転速度が増大するときには偏心回転体(51)の自転速度も増大する(ただし、自転方向は逆向き)一方、環状ピストン(22)の自転速度が減少するときには偏心回転体(51)の自転速度も減少する(ただし、自転方向は逆向き)。その結果、環状ピストン(22)には偏心部(33a)を中心とする自転モーメントが発生する一方、偏心回転体(51)には該環状ピストン(22)の自転モーメントとは逆向きの、偏心部(33a)を中心とする自転モーメントが発生する。
前述の如く、環状ピストン(22)はブレード(23)により自転が制限されているため、該ブレード(23)に自転モーメントの反力が作用しており、この反力は圧縮機(1)に対して回転軸(X)回りのモーメント、即ち、反力に起因するモーメントとして作用する。一方、偏心回転体(51)もピン部(53)とスライド溝(54)によって自転が制限されているため、ピン部(53)に自転モーメントの反力が作用しており、この反力は圧縮機(1)に対して回転軸(X)回りの反力に起因するモーメントとして作用する。ここで、環状ピストン(22)の自転と偏心回転体(51)の自転とは互いに逆向きであるため、ブレード(23)に作用する自転モーメントの反力とピン部(53)に作用する自転モーメントの反力との向きは回転軸(X)回りに互いに逆向きである。つまり、環状ピストン(22)の反力に起因するモーメントと偏心回転体(51)の反力に起因するモーメントとは回転軸(X)回りに互いに打ち消し合う方向に作用している。
また、前述の如く、環状ピストン(22)は偏心部(33a)に取り付けられているため、環状ピストン(22)の自転モーメントによって偏心部(33a)には荷重が作用しており、この荷重は偏心部(33a)を介して駆動軸(33)に対して回転軸(X)回りのモーメント、即ち、荷重に起因するモーメントとして作用する。一方、偏心回転体(51)も偏心部(33a)に取り付けられているため、偏心回転体(51)の自転モーメントによって偏心部(33a)には荷重が作用しており、この荷重は偏心部(33a)を介して駆動軸(33)に対して回転軸(X)回りの荷重に起因するモーメントとして作用する。ここで、環状ピストン(22)の自転と偏心回転体(51)の自転とは互いに逆向きであるため、駆動軸(33)に作用する、環状ピストン(22)の荷重に起因するモーメントと偏心回転体(51)の荷重に起因するモーメントとは、回転軸(X)回りに互いに打ち消し合う方向に作用している。
こうして、環状ピストン(22)の自転に起因するモーメントと偏心回転体(51)の自転の起因するモーメントとが互いに打ち消し合い、圧縮機(1)の振動が抑制される。
−実施形態1の効果−
したがって、本実施形態によれば、駆動軸(33)の回転軸(X)に対して環状ピストン(22)と同じ側に偏心させた偏心回転体(51)設けると共に、下部ハウジング(17)のピン部(53)を支持するスライド溝(54)を、回転軸(X)回りでブレード(23)と180°ずれた位置に配設することによって、回転軸(X)回りに作用する、環状ピストン(22)の自転に起因するモーメントを、逆向きの偏心回転体(51)の自転に起因するモーメントで打ち消すことができ、圧縮機(1)の振動を低減することができる。
ところで、シリンダ(21)と環状ピストン(22)との間のスラスト反力を適切に打ち消すには、シールリング(29)の径を調整して第1の内周側隙間空間(S3)と、シールリング(29)よりも外周側の空間(外周側隙間空間(S4))の圧力を異ならせて環状ピストン(22)の中心と周囲とで押付け力を異ならせたり、シールリング(29)を環状ピストン(22)の中心から偏心させたりするなどの工夫が必要になる。
例えば、逆モーメント発生機構(50)と押付機構(60)の他の構成例としては、シールリング(29)の支持部材のシールリング(29)よりも内周側に凹部を設け、その凹部内に偏心回転体(51)を配置して、凹部の底面で偏心回転体(51)を支持することも考えられる。しかし、この構成では、シールリング(29)は、偏心回転体(51)よりも大径にしなければならないので、シールリング(29)が必要以上に大径になって、環状ピストン(22)に対する押付け力が過大になってしまう可能性がある。また、この構成ではシールリング(29)を適切な位置に偏心させるのも容易ではない。したがって、この構成では、押付け力を適切に設定できず、結果として圧縮効率の低下が懸念される。しかも、シールリング(29)の大径化はそれ自体がコストアップの要因となる。これに対して、本実施形態では、偏心回転体(51)でシールリング(29)を支持するので、シールリング(29)を必要以上に大径にする必要もなく、偏心位置の調整もより容易である。したがって、本実施形態によれば、押付け力を適切に設定でき、且つコストの抑制もできる。
また、逆モーメント発生機構(50)と押付機構(60)の他の構成例としては、シールリング(29)用と偏心回転体(51)用の支持部材とをそれぞれ、鏡板(26)背面側に、駆動軸(33)の軸方向に二重に設けることも考えられる。詳しくは、鏡板(26)に近い方の支持部材をシールリング(29)用にしてシールリング(29)を配置して押付機構(60)を構成し、シールリング(29)用の支持部材と他方の支持部材との間に偏心回転体(51)を配置する。この構成によれば、シールリング(29)の径や偏心位置を適切に設定できる。しかし、この構成では、圧縮機(1)の軸方向の長さが大きくなるうえ、シールリング(29)用と偏心回転体(51)用の2つの支持部材が必要になるため、コストアップや生産性の悪化が懸念される。これに対し、本実施形態では、偏心回転体(51)がシールリング(29)を支持するので、シールリング(29)用と偏心回転体(51)用にそれぞれ別個の支持部材を設ける必要がなく、コスト、生産性の両面で有利である。
さらに、本実施形態の他の効果としては、以下のものもある。
本実施形態では、偏心回転体(51)が環状ピストン(22)に近接して設けられているので、両者の軸方向の距離に基づく軸たわみも最小化できる。このように環状ピストン(22)と偏心回転体(51)とを近接して配置すれば、1つの偏心部(33a)を偏心回転体(51)と環状ピストン(22)とで共用できるので、駆動軸(33)の加工が容易になる。
また、偏心回転体(51)には、荷重相殺部(51c)が設けられているので、偏心回転体(51)に作用する軸方向の荷重が相殺され、偏心回転体(51)のスラスト荷重の発生はほとんどない。したがって、偏心回転体(51)に作用するスラスト反力による運転時のロスが低減される。なお、この荷重相殺部(51c)は、環状溝(51a)が形成された面の反対側面に設けたシールリング(29)とほぼ同径の環状凸部(51b)と、均圧穴とによる簡単な構成なので低コストで実現できる。
《発明の実施形態2》
図7は、本発明の実施形態2に係る圧縮機(2)の縦断面図である。この圧縮機(2)は、逆モーメント発生機構(50)の構成が実施形態1と異なっている。具体的には、圧縮機(2)では、偏心回転体(51)の揺動の中心が、回転軸(X)周りに見て、揺動ブッシュ(27)と同位相の位置にあり、偏心回転体(51)を駆動する偏心部の偏心方向が環状ピストン(22)を駆動する偏心部(33a)と180°逆方向になっている。詳しくは、この圧縮機(2)では、駆動軸(33)は、環状ピストン(22)用に形成された偏心部(33a)に加え、該偏心部(33a)の下方に形成された偏心回転体(51)用の偏心部(33b)を有している。各偏心部(33a,33b)は、該偏心部(33a,33b)の上下の部分よりも大径に形成されており、且つ回転軸(X)を挟んで互いに反対方向に所定量だけ偏心している。
この偏心回転体(51)は、実施形態1の偏心回転体(51)と同様に円盤状に形成された部材であり、本実施形態においては駆動軸(33)の偏心部(33b)に回転自在に嵌め込まれている。
一方、偏心回転体(51)のスライド溝(54)は、駆動軸(33)の回転軸(X)回りにおいて揺動ブッシュ(27)と同じ角度の位置に形成されている。言い換えれば、スライド溝(54)は、平面視で回転軸(X)から半径方向に延びる直線上において揺動ブッシュ(27)と並ぶ位置に設けられている。また、ピン部(53)も、スライド溝(54)に対応した位置に設けられている。
−運転動作−
このように構成された逆モーメント発生機構(50)においては、駆動軸(33)が回転すると、偏心回転体(51)は、図8の(A)〜(D)に示すように、回転軸(X)回りに偏心回転をすると共に、ピン部(53)を揺動中心として揺動しつつ、スライド溝(54)がピン部(53)に対して進退する。
ここで、偏心回転体(51)の偏心回転角度は、平面視において、駆動軸(33)の回転軸(X)から半径方向に延びる直線上にピン部(53)と偏心回転体(51)の軸心(偏心部(33b)の軸心)(Z)とが並んだ(即ち、回転軸(X)とスライド溝(54)とを結ぶ線分上に偏心回転体(51)の軸心(Z)が位置する)時点における偏心回転角度を0°とする。図8の各図においては、環状ピストン(22)及び偏心回転体(51)の偏心回転角度の値を前後に並べて表示している。本実施形態では、環状ピストン(22)と偏心回転体(51)とは回転軸(X)を挟んで反対側に偏心しており、且つ環状ピストン(22)の偏心回転角度の基準点を決定する揺動ブッシュ(27)と、偏心回転体(51)の偏心回転角度の基準点を決定するピン部(53)及びスライド溝(54)との回転軸(X)回りの角度の位置が合致している。そのため、環状ピストン(22)の偏心回転角度と偏心回転体(51)の偏心回転角度とは180°ずれている。
まず、図8の(A)に示すように、環状ピストン(22)の偏心回転角度が0°のとき、環状ピストン(22)は回転軸(X)に対して12時の方角に位置する一方、偏心回転体(51)は回転軸(X)に対して6時の方角に位置する。すなわち、偏心回転体(51)は、常に、環状ピストン(22)と回転軸(X)に対して位相が180°ずれた位置に位置する。
そこから、駆動軸(33)が時計回りに偏心回転すると、図8の(B)に示すように、環状ピストン(22)は回転軸(X)に対して3時の方角へ、偏心回転体(51)は回転軸(X)に対して9時の方角へ時計回りに偏心回転する。このとき、環状ピストン(22)は、ブレード(23)が揺動ブッシュ(27)の方向を向くように反時計回りに自転しながら偏心回転する。この自転の自転速度は、環状ピストン(22)の偏心回転角度が0°から増大するにつれて減少して、該偏心回転角度が略90°となったとき(詳しくは、揺動ブッシュ(27)を中心とした環状ピストン(22)の一方向側への揺動角度が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
一方、偏心回転体(51)は、ピン部(53)を揺動中心として自転しながら偏心回転する。ここで、環状ピストン(22)と偏心回転体(51)とは回転軸(X)を挟んで反対側に偏心していると共に、環状ピストン(22)の揺動中心となる揺動ブッシュ(27)と、偏心回転体(51)の揺動中心となるピン部(53)及びスライド溝(54)との回転軸(X)回りの角度の位置が合致している。そのため、偏心回転体(51)の自転方向は環状ピストン(22)の自転方向とは逆の時計回りである。この自転の自転速度は、偏心回転体(51)の偏心回転角度が180°から増大するにつれて減少して、該偏心回転角度が略270°となったとき(詳しくは、ピン部(53)を中心とした偏心回転体(51)の他方向側への揺動角度が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
その後、駆動軸(33)が時計回りにさらに偏心回転すると、図8の(C),(D)に示すように、環状ピストン(22)は回転軸(X)に対して3時から6時を経て9時の方角へ、偏心回転体(51)は回転軸(X)に対して9時から12時を経て3時の方角へ時計回りに偏心回転する。このとき、環状ピストン(22)は、ブレード(23)が揺動ブッシュ(27)の方向を向くように時計回りに自転する。この自転の自転速度は、環状ピストン(22)の偏心回転角度が90°から増大するにつれて増大して該偏心回転角度が180°となったときに最大となり、該偏心回転角度が180°から増加するにつれて減少して該偏心回転角度が略270°となったとき(詳しくは、揺動ブッシュ(27)を中心とした環状ピストン(22)の他方向側への揺動角度が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
一方、偏心回転体(51)は、ピン部(53)を揺動中心として反時計回りに自転する。この自転の自転速度は、偏心回転体(51)の偏心回転角度が270°から増大するにつれて増大して該偏心回転角度が360°(0°)となったときに最大となり、該偏心回転角度が0°から増大するにつれて減少して該偏心回転角度が略90°となったとき(詳しくは、ピン部(53)を中心とした偏心回転体(51)の一方向側への揺動角度が最大となったとき)に零となる。その後、自転方向が切り替わる。
そこからさらに、駆動軸(33)が時計回りに偏心回転すると、図8の(A)に示すように、環状ピストン(22)は回転軸(X)に対して9時から12時の方角へ、偏心回転体(51)は回転軸(X)に対して3時から6時の方角へ時計回りに偏心回転する。このとき、環状ピストン(22)は、ブレード(23)が揺動ブッシュ(27)の方向を向くように反時計回りに自転する。この自転の自転速度は、環状ピストン(22)の偏心回転角度が270°から増大するにつれて増大して、該偏心回転角度が360°(0°)となったときに最大となる。一方、偏心回転体(51)は、ピン部(53)を揺動中心として時計回りに自転する。この自転の自転速度は、偏心回転体(51)の偏心回転角度が90°から増大するにつれて増大して、該偏心回転角度が180°となったときに最大となる。
このように、環状ピストン(22)が回転軸(X)回りに偏心回転を一回転する間に、偏心回転体(51)も回転軸(X)回りに一回転する。このとき、偏心回転体(51)と環状ピストン(22)とは、前述の如く、互いに逆向きに自転する。そして、環状ピストン(22)の自転速度が増大するときには偏心回転体(51)の自転速度も増大する(ただし、自転方向は逆向き)。一方、環状ピストン(22)の自転速度が減少するときには偏心回転体(51)の自転速度も減少する(ただし、自転方向は逆向き)。その結果、環状ピストン(22)には偏心部(33a)を中心とする自転モーメントが発生する。一方、偏心回転体(51)には、該環状ピストン(22)の自転モーメントとは逆向きの、偏心部(33b)を中心とする自転モーメントが発生する。
そして、前述の如く、環状ピストン(22)は揺動ブッシュ(27)により自転が制限されているため、該揺動ブッシュ(27)に自転モーメントの反力が作用しており、この反力は圧縮機(2)に対して回転軸(X)回りのモーメント、即ち、反力に起因するモーメントとして作用する。一方、偏心回転体(51)もスライド溝(54)によって自転が制限されているため、該スライド溝(54)に自転モーメントの反力が作用しており、この反力は圧縮機(2)に対して回転軸(X)回りの反力に起因するモーメントとして作用する。ここで、環状ピストン(22)の自転と偏心回転体(51)の自転とは互いに逆向きであるため、揺動ブッシュ(27)に作用する自転モーメントの反力とスライド溝(54)に作用する自転モーメントの反力との向きは回転軸(X)回りで互いに逆向きである。つまり、環状ピストン(22)の反力に起因するモーメントと偏心回転体(51)の反力に起因するモーメントとは回転軸(X)回りに互いに打ち消し合う方向に作用している。
また、前述の如く、環状ピストン(22)は偏心部(33a)に取り付けられているため、環状ピストン(22)の自転モーメントによって偏心部(33a)には荷重が作用しており、この荷重は偏心部(33a)を介して駆動軸(33)に対して回転軸(X)回りのモーメント、即ち、荷重に起因するモーメントとして作用する。一方、偏心回転体(51)も偏心部(33b)に取り付けられているため、偏心回転体(51)の自転モーメントによって偏心部(33b)には荷重が作用しており、この荷重は偏心部(33b)を介して駆動軸(33)に対して回転軸(X)回りの荷重に起因するモーメントとして作用する。ここで、環状ピストン(22)の自転と偏心回転体(51)の自転とは互いに逆向きであるため、駆動軸(33)に作用する、環状ピストン(22)の荷重に起因するモーメントと偏心回転体(51)の荷重に起因するモーメントとは、回転軸(X)回りに互いに打ち消し合う方向に作用している。
以上のように、環状ピストン(22)の自転に起因するモーメントと偏心回転体(51)の自転の起因するモーメントとが互いに打ち消し合い、圧縮機(2)の振動が抑制される。
なお、この実施形態のように偏心部(33a)に対して偏心部(33b)を180度づらせた構成で、偏心回転体(51)を駆動する構成とすることで、環状ピストン(22)の偏心運動に伴う遠心力を相殺することも可能であり、モータの回転子に設けるバランスウエイト(図示せず)の省略や小型化などを図ることも出来る。
《上記の実施形態の変形例》
なお、実施形態1、2では、偏心回転体(51)の上下を逆向きにしてもよい。つまり、図9に示すように、環状凸部(51b)がシリンダ(21)の鏡板(26)の下面に圧接するようにし、環状凸部(51b)によって、偏心回転体(51)とシリンダ(21)との間の空間を径方向に分割する。また、シールリング(29)が、下部ハウジング(17)の底部(17c)と接触するようにし、このシールリング(29)によって、偏心回転体(51)と下部ハウジング(17)との間の空間を径方向に分割する。
また、ピン部(53)とスライド溝(54)との位置関係は逆であってもよい。すなわち、ピン部(53)を偏心回転体(51)に設け、スライド溝(54)を下部ハウジング(17)の底部(17c)に設けるようにしてもよい。
また、実施形態1では、上記のように環状ピストン(22)と偏心回転体(51)とが1つの偏心部(33a)を共用するのではなく、それぞれに対して別個の偏心部を、駆動軸(33)に設けてもよい。
また、環状ピストン(22)を固定部材として構成し、シリンダ(21)を可動部材として構成し、シリンダ(21)が環状ピストン(22)に対して偏心回転するようにしてもよい。
また、本発明は、上記の形式の圧縮機以外にも、何れか一方が偏心回転するピストン及びシリンダを有する回転式流体機械であれば適用できる。たとえば、固定スクロールと偏心回転する可動スクロールを有するスクロール流体機械も、固定スクロールをシリンダ、可動スクロールをピストンとみなせるので適用できる。
また、押付機構(60)は、上記の例では、第1の内周側隙間空間(S3)の圧力に着目して説明したが、第1の内周側隙間空間(S3)内及び外周側隙間空間(S4)内のうちの少なくとも一方に所定圧を作用させて押圧力を発生させるようにしておけばよい。例えば、第1の内周側隙間空間(S3)、外周側隙間空間(S4)の何れか一方にのみ圧力を加えるようにしたり、第1の内周側隙間空間(S3)と外周側隙間空間(S4)との両方に圧力を加え、これらの圧力バランスを調整して環状ピストン(22)の中心と周囲とで押付け力を異ならせたりしてもよい。
本発明に係る回転式流体機械は、固定部材と、該固定部材と共に流体室を形成する可動部材とを備えた回転式流体機械として有用である。
本発明の実施形態1に係る圧縮機の縦断面図である。 圧縮機構の軸直角断面形状を示す図である。 圧縮機構の動作を示す概略説明図である。 偏心回転体の構成を示す図である。 ピン部、スライド溝、及びブレードの位置関係を示す図である。 本発明の実施形態1に係る逆モーメント発生機構の動作を示す概略説明図である。 実施形態2に係る圧縮機の縦断面図である。 本発明の実施形態2に係る逆モーメント発生機構の動作を示す概略説明図である。 逆モーメント発生機構の変形例に係る圧縮機の縦断面図である。
符号の説明
17 下部ハウジング
21 シリンダ
22 環状ピストン
26 鏡板
29 シールリング
33 駆動軸
50 逆モーメント発生機構
51 偏心回転体
51a 環状溝
51b 環状凸部
51c 荷重相殺部
60 押付機構
C1 外側シリンダ室
C2 内側シリンダ室
S3 第1の内周側隙間空間
S4 外周側隙間空間

Claims (6)

  1. 駆動軸(33)と、背面に鏡板を有するシリンダ(21)と、背面に鏡板(26)を有し、上記シリンダ(21)と共に作動室(C1,C2)を形成するピストン(22)とを備え、上記シリンダ(21)及びピストン(22)の何れか一方が固定部材(21)に構成され、他方が上記駆動軸(33)の軸心(X)に対して偏心した状態で該駆動軸(33)に取り付けられて上記固定部材(21)に対して偏心回転する可動部材(22)に構成されて上記作動室(C1,C2)の容積を変化させる回転式流体機械であって、
    上記可動部材(22)の自転を所定の揺動範囲内に制限する可動部材支持部(23,27)と、
    上記駆動軸(33)の軸心(X)に対して偏心した状態で該駆動軸(33)に回転自在に取り付けられて且つ上記可動部材(22)の鏡板の背面側に設けられて上記可動部材(22)の軸心(X)周りの自転に起因するモーメントとは逆向きのモーメントを発生するように駆動される偏心回転体(51)を備えた逆モーメント発生機構(50)と、
    上記偏心回転体(51)と可動部材(22)との間に、該偏心回転体(51)と可動部材(22)との間の隙間空間を径方向の内外に分離して内周側及び外周側隙間空間(S3,S4)に区画するシール部(29)を有し、上記内周側隙間空間(S3)内及び外周側隙間空間(S4)内のうちの少なくとも一方に所定圧を作用させて上記可動部材(22)を固定部材(21)に押付ける押付機構(60)とを備えていることを特徴とする回転式流体機械。
  2. 請求項1の回転式流体機械であって、
    上記シール部(29)は、上記偏心回転体(51)と上記可動部材(22)との間に配設された環状のシールリングであることを特徴とする回転式流体機械。
  3. 請求項2の回転式流体機械であって、
    上記偏心回転体(51)は、上記環状のシールリングが嵌め込まれる環状溝(51a)が形成されていることを特徴とする回転式流体機械。
  4. 請求項1の回転式流体機械であって、
    上記シール部(29)は、上記偏心回転体(51)に形成された環状凸部(51b)であることを特徴とする回転式流体機械。
  5. 請求項1の回転式流体機械であって、
    上記偏心回転体(51)に作用する上記押圧力の反作用力を相殺する荷重相殺部(51c)をさらに備えていることを特徴とする回転式流体機械。
  6. 請求項5の回転式流体機械であって、
    上記荷重相殺部(51c)は、上記可動部材(22)を支持する支持部(17)と上記偏心回転体(51)との間に作用空間を形成する仕切り部材(51b)を有し、該作用空間と上記第1の内周側隙間空間(S3)とを均圧穴によって連通して構成されていることを特徴とする回転式流体機械。
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