JP2009114002A - 耐磨耗性材料及びそれを用いた補修工法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】セメント100質量部と、最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3以上の骨材が10〜40質量%及び最大粒子径が1.2mm以下で粒子径0.105mm未満の骨材が2〜20質量%の密度が3.0g/cm3未満の骨材60〜90質量%からなる平均粒子径が0.5mmを超え1.0mm以内の混合骨材100〜300質量部と、膨張材2〜10質量部と、ポリマーエマルジョン(固形分換算で)1〜10質量部とを含有する耐磨耗性材料であり、それを用いたコンクリート構造物の補修工法である。
【選択図】なし
Description
水利構造物の場合は、水流や流れてくる土砂等による磨耗で劣化したり、コンクリート中からカルシウム分が溶脱することで、表面から数cm領域で強度が低下することで欠損したりするケースが多い。そのため、表面が粗になることで通水能力の低下やひび割れによる水路からの漏水等の問題が発生している。
パネルの貼付け工法は、既存の躯体に鉄板、FRPパネル、セメント系材料のパネル等をボルト等で固定する工法であり、パネルの粗度係数が小さく、ボルトでの固定であるためはく落等の心配はないが、通水断面積を減少させることや施工が難しいこと等の短所がある(特許文献1、2)。
ウレタン樹脂等の吹付け工法は、粗度係数が小さいこと、パネルに比べ厚みが薄いので通水断面積の減少量が少ないことなどの利点があるが、脆弱化した部分等があった場合、樹脂と躯体との付着が不十分となり剥がれやすいといった課題がある(特許文献3)。
セメント系材料による断面修復工法は、通常、ポリマーセメントモルタルが使用されており、経済性や作業性の点で優れているが、通常のポリマーセメントモルタルは中性化、塩害、凍害等の劣化要因に対しては優れた抵抗性を示すものの、磨耗に対する抵抗性はそれほど高くないのが現状である。セメント系材料による水路の補修工法としては、例えば、水硬性材料と特定の重量比のポリマーディスパージョンとメタクリル酸塩からなる硬化性組成物及び該組成物を水路内面に塗布する工法が提案されているが、短時間に作業が完了するがコテ仕上げを行うことが難しい(特許文献4)。
さらに、特定の粒径を有するガラス屑を利用して、セメントやフライアッシュと共に一定の配合割合で配合されたモルタル組成物及びそれを用いた水路の補修方法、水路構造が提案されている。これは、耐衝撃性や耐磨耗性はある程度優れた性能を示すが、乾燥による収縮によるひび割れ発生やそれによる遮水性能の低下については充分ではない(特許文献5)。
また、コンクリートを補修するにあたり、エポキシ樹脂接着剤を塗布し、特定ポリマーセメントモルタルで補修することで一体性に優れ、耐磨耗、遮水性、粗度係数に優れたコンクリート水路の補修工法が提案されているが、耐磨耗性や厚塗り性に課題がある(特許文献6)。
骨材Aの最大粒子径は、1.2mm以下であり、0.8mm以下がより好ましい。1.2mmを超えると、表面のコテ仕上げ性が低下する場合がある。
骨材Aの密度は、3.0g/cm3以上であり、3.2以上がより好ましい。3.0g/cm3未満では、充分な耐磨耗性を付与できない場合がある。
骨材Bの最大粒子径は、1.2mm以下であり、0.8mm以下がより好ましい。1.2mmを超えると、表面のコテ仕上げ性が低下する場合がある。
骨材Bの密度は、3.0g/cm3未満であり、2.8g/cm3以下がより好ましい。3.0g/cm3未満の骨材を併用することで、モルタル密度の過剰な増大を押さえ作業性の低下を防止することができる。
骨材A又はBでは、0.105mm未満の骨材粒子を平均粒子径0.5〜0.8mmとなる範囲内で2〜20質量%含有することが望ましく、骨材Aと骨材Bを混合したときは全骨材の5質量%以上あればよい。微粒子の骨材は、コテ仕上げ時にペースト層を表面に形成することで平滑な仕上げが可能となるが、その層は耐磨耗性が低下する。しかし、適度な微粒子骨材が存在すると、その骨材分もペースト層に取り込まれるので平滑性に優れかつ硬度が高い層を形成させることが可能となる。2質量%未満ではペースト層に充分な微粒子骨材が取り込まれないので耐磨耗性が低下する場合がある。
混合骨材の平均粒子径は、0.5mmを超え1.0mm以内が好ましい。0.5mm以下では厚塗り性が低下し、1.0mmを超えるとコテ仕上げ性が低下する場合がある。
混合骨材の使用量は、セメント100質量部に対して、100〜300質量部が好ましい。100質量部未満では、モルタルの収縮量が大きくなる場合があり、300質量部を超えると適度な流動性が確保できなくなる場合がある。
膨張材の使用量は、セメント100質量部に対して2〜10質量部が好ましく、4〜8質量部がより好ましい。2質量部未満ではモルタルの収縮量抑制に効果が小さく、10質量部を超えても効果が向上しない。
ポリマーエマルジョンの種類としては、例えば、JIS A 6203で規定されているセメント混和用のポリマー(ポリマーディスパージョン)が使用でき、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、及び天然ゴム等のゴムラテックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリル酸エステル、酢酸ビニルビニルバーサテート系共重合体、及びスチレン・アクリル酸エステル共重合体やアクリロニトリル・アクリル酸エステルに代表されるアクリル酸エステル系共重合体、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂に代表される液状ポリマー等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。
ポリマーエマルジョンの使用量は、セメント100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、2〜8質量部がより好ましい。1質量部未満では曲げ強度や付着強度の改善や耐久性を付与する効果が小さく、10質量部を超えると凝結の遅れや強度発現性の低下が起きる場合がある。
収縮低減剤の使用量は、セメント100質量部に対して、0.5〜10質量部が好ましく、1〜7質量部がより好ましい。0.5質量部未満では、改善効果が小さく、10質量部を超えても効果の向上が期待できなく、コスト高となる。
ロジン誘導体の使用量は、セメント100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。0.05質量部未満では、改善効果が小さく,5質量部を超えると強度発現性が低下する場合がある。
繊維の形状は、繊維径が50μm以下で繊維長が12mm以下のものが分散性と初期ひび割れの防止効果が大きい点で好ましい。
繊維の使用量は、セメント、膨張材、混合骨材の合計100質量部に対して、0.02〜0.8質量部が好ましく、0.05〜0.5質量部がより好ましい。0.05質量部未満では、初期ひび割れ防止効果が小さく、0.8質量部を超えると適度な流動性が得られない場合がある。
モルタルを製造するときの水の量は、セメントと100質量部に対して、30〜50質量部が好ましく、35〜45質量部がより好ましい。30質量部未満では、適度な流動性を確保することが難しい場合があり、50質量部を超えると充分な強度が得られない場合がある。
水を加え練り混ぜて得られるモルタルの施工方法としては、特に限定されるものではないが、コテ塗りや吹付ける方法で施工できる。
磨耗輪:H−22、荷重:1000g、回転数:1000回/rpm
本発明の耐磨耗性材料を用いた補修は、通常、エポキシ樹脂系接着剤又は水性エマルジョン系接着剤を補修するコンクリート面に塗布した後、水を加え練り混ぜて得られたモルタルをその上に塗布する方法である。
エポキシ樹脂系接着剤や水性エマルジョン系接着剤は、コンクリート躯体と耐磨性モルタルの付着性を向上させることを目的に使用するものであり、充分な一体性を確保することが可能である。
また、エポキシ樹脂の硬化剤としては、従来公知のものが使用可能である。例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、1,3,6−トリスアミノメチルヘキサン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、メンセンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、N−アミノエチルピペラジン、メタキシリレンジアミン、メタフェニルレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、イソフォロンジアミン、ジアミノジフェニルメタンの単体及びこれらの変性物等を単独又は混合して用いることが可能である。
さらに、フェノールノボラック、ポリメルカプタン化合物、ポリサルファイド、ケチミン化合物、オキサゾリジン化合物、第3アミン化合物、有機酸ヒドラジッド、ポリアミノアミド、アミンイミド、カルボン酸エステル、三フッ化ホウ素−アミン錯体、イミダゾール化合物、酸無水物類、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリルヨードニウム塩、トリアリススルホニウム塩、また、これらエポキシ樹脂に各種無機粉体(顔料成分、炭酸カルシウム、微粉シリカ、タルク、マイカ、ケイ酸アルミニウム、砂等)等を混合して用いることが可能である。
これらエポキシ樹脂系接着剤の有効打継ぎ時間(エポキシ樹脂を塗布してモルタルを塗布するまでの最大の時間)は、気温によっても変化するが、タック(べた付き)が残っている状態が好ましく、塗布直後〜24時間が好ましい。24時間を超えると(タックが無い)モルタルとの付着を確保することが難しい場合がある。
塗布量は、特に限定するものではないが、100〜2000g/m2であれば良い。多すぎるとコスト高となり、少なすぎると充分な付着力を確保できない場合がある。
水性エマルジョン系接着剤の塗布量は、50〜500g/m2であれば良い。多すぎるとコスト高となり、少なすぎると充分な付着力を確保できない場合がある。
本発明の耐磨耗性材料(セメント、骨材、各種混和材)は、一般的なミキサーで練り混ぜ可能である。例えば、ペール缶等に材料と水を加えて練り混ぜるハンドミキサーによる混合、材料や水をパン型容器に投入し練り混ぜるパン型ミキサー、さらに、練り効率の高い自転羽を有するパン型ミキサー(ダマカットミキサー)、二軸強制練りミキサー、ホバートミキサー等による混合が可能である。
練り混ぜたモルタルは、そのままコテを用いて塗布することや、吹付けによって塗布することも可能である。
吹付けで施工する場合は、通常、断面修復工事等で使用するスクイズポンプやスネークポンプを用いて練り混ぜたモルタルを圧送し、ノズル出口手前で圧縮空気を合流させることでモルタルを吹き飛ばし施工面に塗布する。塗布した後、コテを用いて仕上げを行えばよい。1回で施工できる最大厚みは、最初からコテ塗りで行う場合や吹付けで行う場合ともに、およそ30mmである。30mmを超えるとダレやはく落が生じる場合がある。
物質遮蔽効果のある水性エマルジョンとは、水,水蒸気、炭酸ガス、酸素、塩化物イオン等の物質遮蔽性の高い皮膜をモルタル表層部に形成する水性エマルジョンである。例えば、比較的高分子セグメントの運動性が小さいアクリル酸エステル系共重合体エマルジョンが好ましい。
また、水性エマルジョンにモンモリロナイト、ヘクトライト、合成マイカ等の膨潤性ケイ酸塩類を含有する有機−無機複合エマルジョンを用いることがより好ましい。
物質遮蔽効果のある水性エマルジョンをコテ仕上げ時に使用することで、平滑な表面にすることが可能となり、合わせて、養生効果も付与できる。
セメント100質量部に対して、膨張材を6質量部、ポリマーエマルジョンを5質量部、混合骨材中の最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3以上の骨材と最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3未満の骨材の割合を、表1に示すように変えた混合骨材を180質量部配合して耐磨耗性材料を調製した。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して、40質量部となるように加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、圧縮強度、磨耗減量、コテ仕上げ性を評価した。結果を表1に示す。
セメント:普通ポルトランドセメント、電気化学工業社製
膨張材:カルシウムサルホアルミネート系、電気化学工業社製、商品名「CSA#20」
ポリマーエマルジョン:アクリル酸エステル−スチレン系共重合体、粉末状、ELOTEX社製、商品名「BN0107」
骨材A:混合骨材中の最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3以上の骨材(市販、フェロクロムスラグ骨材6号、0.105mm未満の骨材量8.5質量%,密度3.52g/cm3)
骨材B(1):最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3未満の骨材(新潟県糸魚川産石灰砂の乾燥品、0.105mm未満の骨材量4.3質量%、密度2.66g/cm3)
骨材B(2):最大粒子径が2.5mm以下で密度が3.0g/cm3未満の骨材(新潟県糸魚川産石灰砂、乾燥品、0.105mm未満の骨材量2.6質量%、密度2.67g/cm3)
骨材B(3):最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3未満の骨材(市販品、珪砂4号の0.105mm未満の珪石粉末を5質量%混合したもの、乾燥品、密度2.55g/cm3)
骨材B(4):最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3未満の骨材(新潟県糸魚川産石灰砂の乾燥品、0.105mm未満の骨材量1.7質量%、密度2.66g/cm3)
圧縮強度:JIS R 5201に準じて測定
磨耗減量:JIS K 7204に準じて下記条件でテーパー式磨耗試験を行ったときの試験前と試験後の質量減少量、磨耗輪:H−22、荷重:1000g、回転数:1000回/rpm
コテ仕上げ性:コテ仕上げを行って翌日に表面を目視観察し、骨材が表面に浮き出ている状態であれば×、滑らかな状態であれば○とした。
実施例1と同様に、セメント100質量部に対して、膨張材を6質量部、ポリマーエマルジョンを5質量部、質量比で骨材A30:骨材B(1)70の混合骨材の使用量を表2に示すように変えて耐磨耗性材料を調製した。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して、40質量部加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、実施例1と同様に、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、圧縮強度、磨耗減量を測定し、さらに、硬化収縮を測定した。結果を表2に示す。
硬化収縮:JHS−416に準じて硬化収縮率を測定
実施例1と同様に、セメント100質量部に対して、膨張材を6質量部、ポリマーエマルジョンを5質量部、最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3以上の骨材A(フェロクロムスラグ骨材6号)と最大粒子径が1.2mm以下で密度が3.0g/cm3未満の骨材B(新潟県糸魚川産石灰砂の乾燥品)を質量比30:70で混合した混合骨材を180質量部配合して耐磨耗性材料を調製した。その際、骨材Aと骨材Bの粒子径0.105mm未満のそれぞれの骨材の量、さらに、全骨材中の0.105mm未満の骨材の量を表3に示すように調製したものを用いた。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して、40質量部加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、実施例1と同様に、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、圧縮強度、磨耗減量を測定した。結果を表3に示す。
実施例1と同様に、セメント100質量部に対して、膨張材の使用量を表4に示すように変え、ポリマーエマルジョンを5質量部、質量比で骨材A30:骨材B(1)70の混合骨材を180質量部配合して耐磨耗性材料を調製した。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して、40質量部加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、実施例1と同様に、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、圧縮強度、磨耗減量を測定し、さらに、実施例2と同様に、硬化収縮を測定した。結果を表4に示す。
実施例1と同様に、セメント100質量部に対して、膨張材6質量部、ポリマーエマルジョンの使用量を表5に示すように変え、質量比で骨材A30:骨材B(1)70の混合骨材を180質量部配合して耐磨耗性材料を調製した。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して40質量部加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、実施例1と同様に、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、圧縮強度、磨耗減量を測定し、さらに、凍結融解抵抗性、中性化抵抗性を測定した。結果を表5に示す。
凍結融解抵抗性:JIS A 1171に準じて測定した。表中に示す数値は相対動弾性係数である。
中性化抵抗性:JIS A 1171に準じて測定した。表中に示す数値はフェノールフタレイン法で測定したときの中性化深さである。
実施例1と同様に、セメント100質量部に対して、膨張材6質量部、ポリマーエマルジョン5質量部、さらに、収縮低減剤の使用量を表6に示すように変え、質量比で骨材A30:骨材B(1)70の混合骨材を180質量部配合して耐磨耗性材料を調製した。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して40質量部加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、実施例1と同様に、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、圧縮強度、磨耗減量を測定し、実施例2と同様に、硬化収縮を測定した。結果を表6に示す。
収縮低減剤:低級アルコールアルキレンオキシド誘導体系、電気化学工業社製、商品名「エスケーガード」
実施例1と同様に、セメント100質量部に対して、膨張材6質量部、ポリマーエマルジョン5質量部、さらに、ロジン誘導体の使用量を表7に示すように変え、質量比で骨材A30:骨材B70(1)の混合骨材を180質量部配合して耐磨耗性材料を調製した。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して、40質量部加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、実施例1と同様に、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、実施例1と同様に、圧縮強度、磨耗減量を測定し、さらに、カルシウムの溶脱率を測定した。結果を表7に示す。
ロジン誘導体:ELOTEX社製、商品名「ERA100」
カルシウム溶脱率:4×4×16cmの試験体を作製し1年間水流20L/minで流れている水槽に浸漬させた。試験体を取り出し、表層3mm部分のカルシウム含有量を測定した。カルシウム溶脱率は、浸漬前の表層3mm部分のカルシウム含有量から浸漬後の表層3mm部分のカルシウム含有量の差を浸漬前の表層3mm部分のカルシウム含有量で割った百分率で示した。
実施例1と同様に、セメント100質量部に対して、膨張材6質量部、ポリマーエマルジョン5質量部、質量比で骨材A30:骨材B(1)70の混合骨材を180質量部、さらに、セメント、膨張材、混合骨材の合計100質量部に対して、繊維の使用量を表8に示すように変えて配合し耐磨耗性材料を調製した。この耐磨耗性材料に、水をセメント100質量部に対して、40質量部加え練り混ぜて耐磨耗性モルタルとし、実施例1と同様に、所定の型枠に詰めて試験体を作製し、圧縮強度,磨耗減量を測定し、さらに、初期ひび割れ抵抗性を測定した。結果を表8に示す。
繊維A:ビニロン繊維、繊維長8mm、繊維径40μm、クラレ社製、商品名「RSC−15」
繊維B:アラミド繊維、繊維長9mm、繊維径12μm、帝人テクノプロダクツ社製、商品名「T−320」
初期ひび割れ抵抗性:縦30cm×横30cm×厚み6cmのコンクリート製歩道板に厚み10mmで繊維を添加した耐磨耗性モルタルを塗布し、温度5℃、湿度50%、風速3〜5m/sの条件で養生し、1日後のひび割れ発生状況を確認した。ひび割れが全くない場合を○、全ひび割れ長さが10cm以下を△、全ひび割れ長さが10cmを超える場合を×とした。
横30cm×縦60cm×厚み6cmのコンクリート製板をサンドブラストし、エポキシ樹脂系接着剤を400g/m2塗布した場合と水性エマルジョン系接着剤を200g/m2塗布した場合について、実験No.1-3、6-3、7-3、8-3の耐磨耗性モルタルを厚み10mmでコテ塗り及び吹付けにより塗布したときの付着強度を測定した。結果を表9に示す。
コテ塗りの場合は、ペール缶でハンドミキサーを用いて練り混ぜた。吹付けの場合は、ダマカットミキサーで練り混ぜ、一般的な吹付け材料の断面修復工事で使用するスクイズポンプで30m圧送し、ノズル出口手前で圧縮空気を合流させ吹付けて施工した。
エポキシ樹脂系接着剤:主剤(ビスフェノールA型エポキシ樹脂):硬化剤(変性脂環式ポリアミン系)=2:1、電気化学工業社製、商品名「アクアハード主剤およびアクアハード硬化剤」
水性エマルジョン系接着剤:エチレン−酢酸ビニル系エマルジョン、固形分15%、電気化学工業社製、商品名「RIS211E」の3倍希釈液
付着強度:材齢3日後に縦4cm×横4cmのサイズにコンクリートカッターで切れ目を入れ、建研式付着力試験器で引き抜くことで測定した。測定材齢は28日。
横30cm×縦60cm×厚み6cmのコンクリート製板をサンドブラストし、エポキシ樹脂系接着剤を400g/m2塗布し、実験No.1-3、8-3の耐磨耗性モルタルを厚み10mmでコテ塗りにより塗布し、さらに、モルタルの上に物質遮蔽効果のある水性エマルジョンを200g/m2塗布し仕上げを行ったときの表面の長さ変化を測定した。結果を表10に示す。
物質遮蔽効果のある水性エマルジョンA:アクリル酸エステル−スチレン共重合体系エマルジョン、固形分25%、ニチゴー・モビニール社製、商品名「LDM6481」の2倍希釈液
物質遮蔽効果のある水性エマルジョンB:合成マイカを含有するアクリル酸エステルースチレン共重合体系エマルジョン、固形分38%、電気化学工業社製、商品名「RISフルコート」
仕上げ直後にコンタクトチップを固定し8時間後に基長し、コンタクトゲージを用いることで表面の長さ変化を測定した。環境条件は温度20℃、湿度50%、風速3〜5m/s。測定材齢28日。
実施例10と同様に、物質遮蔽効果のある水性エマルジョンを耐磨耗性モルタルに1日後に塗布した。基長は塗布した時点とした。それ以外は実施例10と同様に行った。結果を表11に示す。
実施例10と同様に、4×4×16cmに成型した実験No.1-3、8-3の耐磨耗性モルタルに、打込み後翌日に物質遮蔽効果のある水性エマルジョンを塗布して、28日間、温度20℃、湿度50%で気中養生した。その後、実施例5と同様に、中性化深さ、凍結融解抵抗性を測定し、さらに、塩化物イオン浸透深さを測定した。結果を表12に示す。
Claims (8)
- セメント100質量部と、最大粒子径が1.2mm以下で粒子径0.105mm未満の骨材が2〜20質量%の密度が3.0g/cm3以上の骨材が10〜40質量%及び最大粒子径が1.2mm以下で粒子径0.105mm未満の骨材が2〜20質量%の密度が3.0g/cm3未満の骨材60〜90質量%からなる平均粒子径が0.5mmを超え1.0mm以内の混合骨材100〜300質量部と、膨張材2〜10質量部と、ポリマーエマルジョン(固形分換算で)1〜10質量部とを含有する耐磨耗性材料。
- セメント100質量部に対して、収縮低減剤を0.5〜10質量部含有する請求項1記載の耐磨耗性材料。
- セメント、膨張材、混合骨材の合計100質量部に対して、繊維径50μm以下で繊維長12mm以下の繊維を0.02〜0.8質量部含有する請求項1又は2記載の耐磨耗性材料。
- セメント100質量部に対して、ロジン誘導体を0.05〜5質量部含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の耐磨耗性材料。
- コンクリート構造物を補修するにあたり、エポキシ樹脂系接着剤又は水性エマルジョン系接着剤を塗布した後に、請求項1〜4記載のいずれか1項記載の耐磨耗材料に水を加え練り混ぜて得られるモルタルを塗布するコンクリート構造物の補修工法。
- モルタルを塗布した後に、物質遮蔽効果のある水性エマルジョンを塗布しコテ仕上げを行う請求項5記載のコンクリート構造物の補修工法。
- モルタルを塗布し、モルタルの凝結始発時間以降に、物質遮蔽効果のある水性エマルジョンを塗布する請求項5記載のコンクリート構造物の補修工法。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の耐磨耗性材料に水を加え練り混ぜて得られる硬化体のJIS K 7204に準じて測定した磨耗減量が4.0g未満であるモルタル。
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