JP2009112224A - 三次元疾患皮膚再構築物 - Google Patents

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Abstract

【課題】再現性よく実質的に均質に製造でき、疾患状態を十分に発現することができる三次元疾患皮膚構築物及び簡便に再現性よく製造することができる三次元疾患皮膚構築物の製造方法を提供すること。
【解決手段】エピモルフィンをコードする核酸が発現可能に導入されている遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養して得られる三次元疾患皮膚再構築物及び表皮基底細胞に、エピモルフィンをコードする核酸を発現可能に導入し、得られた遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養する三次元疾患皮膚再構築物の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、三次元疾患皮膚再構築物に関する。より詳しくは、本発明は、皮膚の疾患モデルとして有用な、三次元疾患皮膚再構築物及びその製造方法に関する。
動物において、細胞分化や形態形成に際しては、種々の因子が発現していることが知られている。例えば、マウスにおいて、集塊状で培養された間充織細胞は、上皮の形態形成を誘導するが、偏平な細胞形態をとる単層で培養された間充織細胞では、上皮の形態形成を誘導しないことが知られている。マウスにおける前記上皮の形態形成に関与する因子として、集塊状で培養された間充織細胞で産生され、偏平な細胞形態をとる単層で培養された間充織細胞では産生されないエピモルフィンが単離されている(特許文献1を参照)。さらに、前記特許文献1には、マウスのエピモルフィンのホモログとして、ヒトのエピモルフィンが開示されている。
一方、皮膚の疾患の発症機構の解明や前記疾患の治療又は予防薬の開発には、疾患モデル動物や、正常表皮細胞を三次元で培養することにより得られる三次元培養皮膚モデル(非特許文献1、非特許文献2を参照のこと)が用いられている。
しかしながら、前記疾患モデル動物の場合、個体間でのバラツキが大きく、多検体のスクリーニングに十分な再現性を得ることが困難であるという欠点がある。
また、前記非特許文献1及び非特許文献2記載の三次元培養皮膚モデルは、十分量の細胞の回収が困難であり、かつモデルの構築に適する細胞を得ることが困難である疾患皮膚の細胞ではなく、正常表皮細胞から構築されている。そのため、前記非特許文献1及び非特許文献2記載の皮膚三次元モデルは、品質管理がしやすく、モデル間のバラツキが小さく、多検体のスクリーニングに十分な再現性を得ることができるものの、疾患状態の皮膚を再現することが困難であるという欠点がある。
特許第2849517号公報 ベル(Bell E)ら、「再構築皮膚の製法(Recipes for reconstituting skin.)」、ジャーナル オブ バイオメカニカル エンジニアリング(Journal of Biomechanical Engineering)、1991年、第113巻、p.113-119 スクープ(Schoop VM)ら、「ヒト皮膚線維芽細胞との器官型培養におけるHaCaTケラチノサイトの表皮形成及び分化(Epidermal organization and differentiation of HaCaT keratinocytesin organotypic coculture with human dermal fibroblasts.)」、ジャーナル オブ インベスティゲイティブ ダーマトロジー(Journal of Investigative Dermatology)、1991年、第112巻、p.343-353
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、再現性よく実質的に均質に製造でき、疾患状態を十分に発現することができる三次元疾患皮膚構築物を提供することを1つの目的とする。また、本発明は、簡便に再現性よく製造することができる、三次元疾患皮膚構築物の製造方法を提供することを他の目的とする。
すなわち、本発明の要旨は、
(1) エピモルフィンをコードする核酸が発現可能に導入されている遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養して得られる三次元疾患皮膚再構築物、
(2) 前記核酸が、アミノ末端側にシグナルペプチドが付加されたエピモルフィンをコードする核酸である前記(1)記載の三次元疾患皮膚再構築物、
(3) 前記遺伝子導入表皮基底細胞が、ヒト表皮基底細胞から得られる遺伝子導入細胞であり、前記支持体が、ヒト線維芽細胞がコラーゲンゲル内に包埋された細胞包埋コラーゲンゲルである前記(1)又は(2)に記載の三次元疾患皮膚再構築物、並びに
(4) 表皮基底細胞に、エピモルフィンをコードする核酸を発現可能に導入して得られた遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養することを特徴とする三次元疾患皮膚再構築物の製造方法
に関する。
本発明の三次元疾患皮膚構築物は、再現性よく実質的に均質に製造でき、疾患状態を十分に発現することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の三次元疾患皮膚構築物の製造方法は、簡便に再現性よく製造することができるという優れた効果を奏する。
本発明の三次元疾患皮膚再構築物は、エピモルフィンをコードする核酸が発現可能に導入されている遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養して得られることを1つの大きな特徴としている。
本発明の三次元疾患皮膚再構築物は、前記遺伝子導入表皮基底細胞を支持体上で三次元に培養すること(三次元培養)により得られる再構築物であるため、一定の条件での製造を行なうことができ、再現性よく実質的に均質に製造することができるという優れた効果を奏する。したがって、本発明の三次元疾患皮膚再構築物は、製造上の品質管理が容易である。
また、本発明の三次元疾患皮膚再構築物は、エピモルフィンをコードする核酸が発現可能に導入されている遺伝子導入表皮基底細胞の三次元培養により得られる再構築物であるため、エピモルフィンに起因する疾患状態を十分に再現するという優れた効果を奏する。
前記遺伝子導入表皮基底細胞は、表皮基底細胞に、エピモルフィンをコードする核酸が発現可能に導入されている細胞である。前記遺伝子導入表皮基底細胞は、本発明の目的を妨げないのであれば、エピモルフィンを内因的に発現している細胞であってもよい。
前記表皮基底細胞は、表皮の基底層を構成する細胞であればよい。前記表皮基底細胞としては、例えば、ケラチノサイト、メラノサイトなどが挙げられる。前記表皮基底細胞は、ケラチノサイト単独であってもよく、ケラチノサイトとメラノサイトとの混合物であってもよい。なお、前記表皮基底細胞として、ケラチノサイトとメラノサイトとの混合物を用いる場合には、再現する疾患状態に応じて、ケラチノサイト及びメラノサイトの少なくとも一方に、前記核酸を導入すればよい。
前記表皮基底細胞としては、特に限定されないが、例えば、ヒト表皮基底細胞、マウス表皮基底細胞などが挙げられる。なかでも、ヒトにおける疾患状態を十分に再現する観点から、正常に分化する能力を有したヒト表皮基底細胞が好ましい。前記ヒト表皮基底細胞としては、特に限定されないが、例えば、HaCaT細胞(ブライトクロイツ(Breitkreutz D)、ヨーロピアン ジャーナル オブ セル バイオロジー(European Journal of Cell Biology)、1998年発行、第75巻、p.273-286.)、正常ヒト皮膚表皮角化細胞(NHEK)などが挙げられる。なかでも、前記ヒト表皮基底細胞は、ヒトにおける角化異常を伴う疾患を再現することができる観点及び細胞の性質が継代回数によらず比較的均一であり、細胞分化状態が正常である観点から、好ましくはHaCaT細胞が望ましい。
本発明の三次元疾患皮膚再構築物は、エピモルフィンをコードする核酸が導入されている前記遺伝子導入表皮基底細胞から得られるため、当該三次元疾患皮膚再構築物は、角化異常を伴う疾患のモデルとして用いることができるという優れた効果を奏する。本発明の三次元疾患皮膚再構築物の製造に際して、前記遺伝子導入表皮基底細胞の三次元培養を行なうと、増殖する細胞は、細胞間接触により前記エピモルフィンの刺激を受け続けることとなる。
ここで、正常な皮膚構造は、下層から順に、真皮と、基底層と、有棘層と、顆粒層と、角質層とからなる。また、正常な皮膚構造では、基底層のケラチノサイトは、サイトケラチン−5及びサイトケラチン−14が発現し、その後、分化の過程で、正常な皮膚構造の有棘層のケラチノサイトでは、サイトケラチン−1及びサイトケラチン−10が発現し、エンボプラキン、ペリプラキン、インボルクリンが発現するようになる。さらに、前記エンボプラキンとペリプラキンとがヘテロダイマーを形成し、形成されたヘテロダイマーと前記インボルクリンとが細胞膜上で結合するとともに、トランスグルタミナーゼ1が、発現し、ヘテロダイマーと前記インボルクリンとの間以外に、細胞膜上の他のタンパク質との間に架橋構造を形成する。また、正常な皮膚構造の顆粒層では、上層部で、ロリクリンが発現し、発現したロリクリンが、トランスグルタミナーゼ−3の作用によりSPR分子との架橋を形成し、これにより、前記有棘層で生成した架橋構造が補強される。正常な皮膚構造の角質層では、前記顆粒層まで存在していた細胞核や、細胞内小器官が消失する。また、正常な皮膚構造の角質層では、成熟コーニファイドエンベロープが生成する。
しかしながら、本発明の三次元疾患皮膚再構築物は、エピモルフィンをコードする核酸が発現可能に導入されている前記遺伝子導入表皮基底細胞から得られるため、層形成してもタイトジャンクションの形成不全などの細胞形態異常や、インボルクリン及びサイトケラチン−1の異常発現などの分化マーカーの発現異常を伴う皮膚構造を形成する。また、本発明の三次元疾患皮膚構築物は、すべての層にわたって、よく発達したデスモソーム結合が中間フィラメントネットワークにより支持される中程度の分化表現型の細胞が残り、最上細胞層の細胞においては、細胞核は、そのまま残る。かかる構造は、正常に機能しない最終分化をもたらす角化異常を伴い疾患状態の表皮の病理学的特徴に類似する。このように、本発明の三次元疾患皮膚再構築物は、角化異常を伴う疾患、例えば、魚鱗癬(例えば、葉状魚鱗癬症、非水胞型先天性魚鱗癬症など)、乾癬(例えば、尋常性乾癬、滴状乾癬、膿疱性乾癬、関節症性乾癬など)、ざ瘡、日光角化症、遺伝性掌蹠角化症、扁平苔癬、ダリエ病、Reiter病、ジベルばら色粃糠疹、毛孔性紅色粃糠疹、汗孔角化症などの疾患状態の少なくとも一部を再現することができる。ここで、前記タイトジャンクションは、隣接する細胞同士が密着し、細胞膜が融合しているように見える外観を呈する結合であり、例えば、細胞外の溶質が細胞間隙に侵入することを防ぐ役割などを果たす。また、前記デスモソーム結合は、カドヘリンを介する結合であり、細胞膜外側と内側とに円盤状のタンパク質を挟み、この円盤状のタンパク質がケラチンフィラメントと結合している構造を有する。
前記エピモルフィンとしては、特に限定されないが、ヒトエピモルフィン、マウスエピモルフィンなどが挙げられる。なかでも、ヒトの疾患状態を十分に再現する観点から、好ましくはヒトエピモルフィンである。前記ヒトエピモルフィンは、GenBankアクセッション番号:D14582に示されるアミノ酸配列(配列番号:2)からなるポリペプチドである。また、前記ヒトエピモルフィンは、GenBankアクセッション番号:D14582に示される塩基配列(配列番号:1)によりコードされる。また、前記マウスエピモルフィンは、GenBankアクセッション番号:D10475に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドである。また、前記マウスエピモルフィンは、GenBankアクセッション番号:D10475に示される塩基配列によりコードされる。
なお、前記エピモルフィンのアミノ酸配列は、このアミノ酸配列からなるポリペプチドが、エピモルフィンとしての機能を発現する範囲で、前記GenBankアクセッション番号:D14582(配列番号:2)又は前記GenBankアクセッション番号:D10475のアミノ酸配列において、少なくとも1個、例えば、1個又は数個のアミノ酸残基の挿入、置換又は欠失を有するアミノ酸配列であってもよい。また、前記核酸は、表皮基底細胞への導入後に、エピモルフィンとしての機能を示すポリペプチドを発現するのであれば、(a)前記GenBankアクセッション番号:D14582(配列番号:1)又は前記GenBankアクセッション番号:D10475の塩基配列において、少なくとも1個、例えば、1個又は数個のヌクレオチド残基の挿入、置換又は欠失を有する塩基配列からなる核酸、(b)前記GenBankアクセッション番号:D14582(配列番号:1)又は前記GenBankアクセッション番号:D10475の塩基配列に対して、米国生物工学情報センター(NCBI)のウェブページ〔アドレスhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/〕にて利用できるNCBI BLASTにより、Cost
to open gap 11、Cost to extend gap 1、expect value 10、wordsize 11の条件(デフォルト値)下、アライメントし、算出される値として、少なくとも80%以上、好ましくは90%以上の配列相同性を有する塩基配列からなり、かつコードされるポリペプチドが、表皮基底細胞中において、エピモルフィンとしての機能を示すポリペプチドである核酸、又は(c)前記GenBankアクセッション番号:D14582(配列番号:1)又は前記GenBankアクセッション番号:D10475の塩基配列に完全に相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件(例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と0.5重量% SDSと5×デンハルト溶液と100μg/ml 変性サケ精子DNAと50体積% ホルムアミドとを含む溶液中、少なくとも50℃の温度条件で10時間インキュベーションし、つぎに、2×SSCのイオン強度条件下で、少なくとも42℃の温度条件下での洗浄を行なう条件)又はよりストリンジェントな条件下にハイブリダイズし、コードされるポリペプチドが、エピモルフィンとしての機能を発現するポリペプチドである核酸などであってもよい。
前記核酸は、三次元疾患皮膚再構築物中の細胞において、細胞形態の異常及び分化マーカーの発現異常を十分に発現させる観点から、シグナルペプチドがさらに付加したエピモルフィンをコードする核酸であることが好ましい。これにより、遺伝子導入表皮基底細胞の表面にエピモルフィンが提示されるため、細胞間接触により、三次元培養に際して、細胞同士がエピモルフィンの刺激を十分に受け続けることになる。
前記シグナルペプチドとしては、このシグナルペプチドのカルボキシル末端側に連結されているエピモルフィンを表皮基底細胞の細胞表面に分泌させる機能を発現するのであれば、特に限定されるものではなく、例えば、IL−2シグナルペプチド(配列番号:3)、アルブミンシグナルペプチド(配列番号:5)などが挙げられる。なかでも、前記IL−2シグナルペプチドは、シグナルペプチドのカルボキシル末端に、細胞内で合成されたポリペプチドが小胞体内部に挿入された後に効率よく切断・除去されるためのシグナルペプチターゼ認識配列を有し、かつシグナルペプチドのカルボキシル末端付近をコードする核酸の塩基配列中に複数の制限酵素認識部位(平滑末端)を有するため、核酸構築物の作製及び加工が容易である点に優れる。
前記支持体としては、表皮基底細胞を維持することができればよく、特に限定されないが、多孔性ポリマー(例えば、ポリビニルアルコールなどの合成高分子化合物、コラーゲンゲル、キトサンなど)の基質、当該基質に線維芽細胞を包埋させて得られた産物などが挙げられる。より具体的には、前記支持体としては、特に限定されないが、例えば、線維芽細胞が包埋されたコラーゲンゲル、表皮基底細胞を分化させる物質を含むコラーゲンゲル、基底膜成分と類似の成分を有するゲル(例えば、日本ベクトン・ディッキンソン株式会社製、商品名:マトリゲル)などが挙げられる。なかでも、前記支持体は、真皮としての機能を発揮させ、皮膚における疾患状態を十分に再現する観点から、線維芽細胞が包埋されたコラーゲンゲルが好ましい。また、よりヒトの皮膚における疾患状態を十分に再現する観点から、前記線維芽細胞は、ヒト線維芽細胞が好ましい。前記ヒト線維芽細胞としては、特に限定されないが、例えば、MRC−細胞(ATCC:CCL171)、ヒト初代皮膚線維芽細胞などが挙げられる。なかでも、培地に添加物質(増殖因子など)を添加することなく、HaCaT細胞の培地と同じ組成で培養でき、同一継代の細胞を大量に揃えられる観点から、好ましくはMRC−5細胞である。
本発明の三次元疾患皮膚再構築物の製造方法は、表皮基底細胞に、エピモルフィンをコードする核酸を発現可能に導入し、得られた遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養することを特徴とする方法である。
表皮基底細胞への核酸の導入は、特に限定されないが、例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターなどのウイルスベクターを用いる方法〔例えば、モレキュラー クローニング:ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)、ザンブルーク(Sambrook)ら、コールドスプリングハーバープレス(Cold Spring Harbor Press)、1989年発行など参照)などにより行なうことができる。前記ウイルスベクターを用いる方法のなかでは、前記核酸によりコードされるエピモルフィンを安定に発現させる場合には、レトロウイルスベクターを用いる方法が望ましく、発現量を自在に制御して前記核酸によりコードされるエピモルフィンを発現させる場合、アデノウイルスベクターを用いる方法が望ましい。
前記遺伝子導入表皮基底細胞は、得られた細胞中における導入遺伝子の存在、細胞におけるエピモルフィンの機能の発現などを指標として選択することができる。
前記支持体は、例えば、当該支持体が、ヒト線維芽細胞が包埋されたコラーゲンゲルである場合、I型コラーゲンを含む溶液にヒト線維芽細胞を播種し、ゲル化させることにより調製することができる。前記コラーゲンゲルは、ヒト線維芽細胞が包埋されることにより、当該ヒト線維芽細胞の作用によって、前記コラーゲンゲルが収縮し、三次元培養における真皮相当物として機能を発揮する点で有利である。
前記支持体が、ヒト線維芽細胞が包埋されたコラーゲンゲルである場合、前記表皮基底細胞を前記ヒト線維芽細胞が包埋されたコラーゲンゲルに接着させて、この表皮基底細胞の足場を維持する観点から、前記コラーゲンゲルの表面には、フィブロネクチンなどの細胞接着因子を存在させることが望ましい。
前記支持体が、ヒト線維芽細胞が包埋されたコラーゲンゲルである場合、前記ヒト線維芽細胞は、例えば、DMEM/HamF12培地、α−MEM培地、MEM1培地などの線維芽細胞の生育に適した培地中、ヒト線維芽細胞が包埋されたコラーゲンゲルを、5体積% CO2下、36℃〜38℃(細胞を良好に生育させる観点から、好ましくは36.5℃〜37.5℃、特に好ましくは37℃)の条件で培養することができる。
前記遺伝子導入表皮基底細胞の三次元培養のための培地は、表皮基底細胞の生育に適した培地であればよい。前記培地としては、特に限定されないが、例えば、熱不活性化血清(例えば、熱不活性化FCSなど)を含むダルベッコ改変培地(DMEM)とHamF12との混合培地(熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地)、熱不活性化血清を含むDMEM培地、熱不活性化血清を含むMEM培地などが挙げられる。なかでも、長期間の高密度培養に適し、かつ細胞のコロニー増殖に適する観点から、好ましくは熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地である。なお、前記熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地は、遺伝子導入表皮基底細胞の三次元培養に際して前記熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地を用いた場合、例えば、特定の物質に対する抗体により当該物質を阻害する操作を行なうことが可能になり、疾患の発症機構の解明や前記疾患の治療又は予防薬の開発への応用性に優れる点で有利である。
前記遺伝子導入表皮基底細胞の三次元培養は、例えば、
(A)前記支持体上に、当該遺伝子導入表皮基底細胞を播種する工程、
(B)前記工程(A)で得られた播種後の支持体を、一定期間、前記表皮基底細胞の生育に適した培地に浸漬させて、5体積% CO2下、36℃〜38℃(細胞を良好に生育させる観点から、好ましくは36.5℃〜37.5℃、特に好ましくは37℃)の条件で培養する工程、及び
(C)前記工程(B)で得られた培養物における遺伝子導入表皮基底細胞の表面を、空気と前記培地との接触面まで持ち上げて配置し、一定期間、5体積% CO2下、36℃〜38℃(細胞を良好に生育させる観点から、好ましくは36.5℃〜37.5℃、特に好ましくは37℃)の条件で培養する工程、
を含む方法(Air−lift法)などにより行なわれる。前記遺伝子導入表皮基底細胞の三次元培養により、遺伝子導入表皮基底細胞が重層化され、導入した遺伝子に応じて分化が進行し、本発明の三次元疾患皮膚再構築物が得られる。
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(試験例1)
(1)マウスへの紫外線照射
メス7週齢ヘアレスマウスHR−1(以下、「HR−1マウス」ともいう(清水実験材料株式会社供給)の背部の皮膚を、商品名:GL20SE UVBランプ(280−380nm、発光ピーク:306nm、三共電気株式会社製)による7分間のUVBの単回照射(300mJ/cm2)に曝した。その後、前記HR−1マウスを、さらに5日間飼育した。
(2)エピモルフィン発現の確認
前記(1)で得られたHR−1マウスの皮膚組織の凍結切片(10μm四方)を、冷メタノール中10分間浸漬させて、固定し、固定試料を得た。つぎに、前記固定試料を、ブロッキング試薬(3質量% BSAのリン酸緩衝生理的食塩水溶液)とともに、室温で30分間インキュベーションした。その後、得られた試料を、一次抗体として、エピモルフィンに対するアフィニティー精製抗体(1:150)ともに、室温で60分間インキュベーションし、つづいて、Alexa Fluor 488−結合二次抗体(モレキュラー・プローブズ・ヨーロッパ社製)とともに、室温で60分間インキュベーションすることにより、UVBが照射されたHR−1マウスの皮膚組織におけるエピモルフィンの局在を調べた。なお、対照として、UVBが照射されていないHR−1マウスの皮膚組織の凍結切片(10μm四方)を用いて、UVBが照射されたHR−1マウスの場合と同様に、UVBが照射されていないHR−1マウスの皮膚組織におけるエピモルフィンの局在を調べた。また、ヨウ化プロピジウム(シグマ−アルドリッチ社製)を用いて、細胞核を、対比染色した。結果を図1に示す。図1は、試験例1におけるUVB照射HR−1マウス及びUVB非照射HR−1マウスの皮膚組織の免疫化学染色の結果を示す図面代用写真である。図1(a)は、UVB非照射HR−1マウスの皮膚組織の免疫化学染色の結果を示す図面代用写真であり、図1(b)は、UVB照射HR−1マウスの皮膚組織の免疫化学染色の結果を示す図面代用写真である。図中、1は、エピモルフィンの局在位置の一例を示す。また、図中、スケールバーは、100μmを示す。
図1の結果から、エピモルフィンは、表皮コンパートメントではなく、主に、真皮コンパートンメントに分布していることがわかる。また、図1の結果から、図1(a)のUVB非照射HR−1マウスの皮膚組織中の染色されたエピモルフィンの局在位置の数に比べ、図1(b)のUVB照射HR−1マウスの皮膚組織中の染色されたエピモルフィンの局在位置の数が増加していることがわかる。さらに、図1の結果から、図1(a)のUVB非照射HR−1マウスの皮膚組織中の染色された細胞核の数に比べ、図1(b)のUVB照射HR−1マウスの皮膚組織中の染色された細胞核の数が増加していることがわかる。
したがって、UVB照射により、エピモルフィン発現のアップレギュレーションを伴う皮膚線維芽細胞の数の増加がもたらされることが示唆される。
(製造例1)
DMEM/HamF12(シグマ−アルドリッチ社製)に、終濃度:10質量%となるように熱不活性化FCSを添加し、熱不活性化FCS含有DMEM/HamF12培地(以下、DH10)を得た。
正常ヒト表皮ケラチノサイト細胞株であるHaCaT細胞を、前記DH10中、5体積%CO2下、37℃で培養した。
ヒトエピモルフィンをコードするcDNA(GeneBank:D14582、配列番号:1)におけるエピモルフィンのN末端側に対応する部位に、T7−タグ(配列番号:6)をコードするDNA(配列番号:7)を付加し、T7−タグエピモルフィンをコードするcDNAを調製した。次に、前記T7−タグエピモルフィンをコードするcDNAを、レトロウイルス発現ベクターpQCXIN(商品名、クローンテック社製)のEcoRI認識部位に挿入し、T7−タグエピモルフィン用発現プラスミドを調製した。
得られたT7−タグエピモルフィン用発現プラスミドを、遺伝子導入用試薬(インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン及びインビトロジェン社製、商品名:プラス試薬)を用いてパッケージング細胞(クローンテック社製、商品名:ampho293)に導入した。つぎに、得られた細胞のうち、1mg/mlのジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)に対して耐性能を示す細胞から培養上清を回収した。回収された培養上清中から、レトロウイルスを得た。得られたレトロウイルスを前記HaCaT細胞に感染させ、1mg/mlジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)の存在下に、5体積%CO2下、37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、T7−タグエピモルフィンを産生するケラチノサイト(HaCaT−TE細胞)を単離した。
(製造例2)
線維芽細胞であるPT67細胞を、DH10中、5体積%CO2下、37℃で培養した。
前記製造例1のT7−タグエピモルフィン用発現プラスミドを、遺伝子導入用試薬(インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン及びインビトロジェン社製、商品名:プラス試薬)を用いて、PT67細胞に導入した。つぎに、得られた細胞を、1mg/mlジェネティシン(G418)(ギブコ・ラボラトリー社製)の存在下に、5体積%CO2下、37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、T7−タグエピモルフィンを産生する線維芽細胞(PT67−TE細胞)を単離した。
(製造例3)
IL−2シグナルペプチド(配列番号:3)をコードする核酸(配列番号:4)を、エピモルフィンをコードするcDNA(配列番号:1)におけるエピモルフィンのN末端に対応する部位に付加し、IL−2シグナルペプチド結合エピモルフィンをコードする核酸を得た。得られた核酸をレトロウイルス発現ベクター(クローンテック社製、商品名:pQCXIN)のEcoRI認識部位に挿入して、細胞表面エピモルフィン用発現プラスミドを調製した。
得られた細胞表面エピモルフィン用発現プラスミドを、商品名:リポフェクタミン(インビトロジェン社製)及びプラス試薬(インビトロジェン社製)を用いてパッケージング細胞PT67に導入した。前記製造例1と同様にして得られたレトロウイルスをHaCaT細胞に感染させた。つぎに、得られた細胞を、1mg/mlジェネティシン(ギブコ・ラボラトリー社製、商品名:G418)の存在下に、5体積%CO2下、37℃で8日間培養した。その後、培養後の細胞におけるエピモルフィン発現を調べることにより、細胞表面エピモルフィンを産生する2種の細胞(HaCaT−EPM1細胞及びHaCaT−EPM2細胞)を単離した。
(製造例4)
レトロウイルス発現ベクターpQCXIN(商品名、クローンテック社製)を、遺伝子導入用試薬(インビトロジェン社製、商品名:リポフェクタミン及びインビトロジェン社製、商品名:プラス試薬)を用いてパッケージング細胞PT67に導入した。得られた細胞の培養上清からレトロウイルスを得た。得られたレトロウイルスをHaCaT細胞に感染させ、検出可能な量のトランスジーン産物を持たない細胞(HaCaT−TF−対照細胞)を得た。
(試験例2)
(1)線維芽細胞(PT67−TE細胞)におけるエピモルフィンの強制発現
前記製造例2で得られたPT67−TE細胞を、前記DH10中、60−70%コンフルエントになるまで培養した。得られたPT67−TE細胞を、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄した。その後、得られたPT67−TE細胞に、商品名:GL20SE UVBランプ(三共電気株式会社製、発光ピーク306nm)を用いて、10秒間、10mJ/cm2のUVBを直接照射し、その後、DH10中で5体積% CO2下、37℃で、3日間培養した。
得られたPT67−TE細胞の培養物の上清を、T7−タグに対するモノクローナル抗体(カルビオケム−ノバビオケムコーポレーション製)及びプロテインG−セファロースビーズ(GEヘルスケア社製)とともに2時間インキュベーションし、分泌型のT7−タグエピモルフィンをプロテインG−セファロースビーズに吸着させた。
前記PT67−TE細胞を、SDSサンプルバッファー(組成:62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、10質量%グリセロール、2質量% SDS、5体積% 2−メルカプトエタノール、0.0025質量%ブロモフェノールブルー)に直接溶解させ、5分間煮沸し、全細胞ライゼート試料を得た。また、前記プロテインG−セファロースビーズに吸着した分泌型のT7−タグエピモルフィンを、SDSサンプルバッファーに直接溶解させ、5分間煮沸し、上清試料を得た。
得られた各試料を、4−20質量%濃度勾配SDS−ポリアクリルアミドゲルに負荷した後、電気泳動を行なった。つぎに、全てのタンパク質バンドをPVDF膜(商品名:イモビロン−P、ミリポアコーポレーション製)に転写させた。転写後のPVDF膜を、5質量%スキムミルクTBS溶液とともに室温で60分間インキュベーションした。その後、得られたPVDF膜を、一次抗体として、エピモルフィンに対するアフィニティー精製抗体ともに、室温で60分間インキュベーションし、その後、HRP−標識二次抗体とともに、室温で60分間インキュベーションした。また、β−アクチンに対するアフィニティー精製抗体(1:2000)(シグマ−アルドリッチ社製)を一次抗体として用いて、同様の操作を行ない、対照とした。結果を図2に示す。図2は、試験例2におけるPT67−TE細胞の全細胞ライゼート試料及び上清試料それぞれでのエピモルフィンのイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真である。図2(a)は、全細胞ライゼート試料のイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真、図2(b)は、上清試料のイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真である。なお、図中、「-」は、UVB非照射を示し、「+」は、UVB照射を示す。
図2に示される結果から、T7−タグエピモルフィンを安定的に発現する線維芽細胞であるPT67−TE細胞へのUVB照射により、上清における30KDa型のエピモルフィンの分泌の増大を導くことがわかる。
(2)ケラチノサイト(HaCaT−TE細胞)におけるエピモルフィンの強制発現
前記製造例1で得られたHaCaT−TE細胞を、前記DH10中、60−70%コンフルエントになるまで培養した。得られたHaCaT−TE細胞を、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で2回洗浄した。その後、得られたHaCaT−TE細胞に、商品名:GL20SE UVBランプ(三共電気株式会社製、発光ピーク306nm)を用いて、10秒間、10mJ/cm2のUVBを直接照射した。その後、UVB照射されたHaCaT−TE細胞を、DH10の入ったチャンバースライド(ヌンク・インコーポレーティッド製)上で、5体積% CO2下、37℃で、1時間培養した。
培養後の細胞を、エピモルフィンに対するアフィニティー精製抗体とβ−アクチンに対するアフィニティー精製抗体(シグマ−アルドリッチ社製)との混合物(各10μg/ml)と、室温で60分間インキュベーションし、リン酸緩衝生理的食塩水(PBS)で3回洗浄した。その後、洗浄後の細胞を、氷冷メタノールに浸漬させた。得られた細胞を、HRP−標識二次抗体とともに、室温で60分間インキュベーションした。また、対照として、HaCaT−TE細胞を、氷冷メタノールに浸漬させて得られた膜透過化HaCaT−TE細胞及びUVB非照射HaCaT−TE細胞を用い、同様に、エピモルフィンに対するアフィニティー精製抗体とβ−アクチンに対するアフィニティー精製抗体(シグマ−アルドリッチ社製)との混合物(各10μg/ml)と、室温で60分間インキュベーションし、その後、HRP−標識二次抗体とともに、室温で60分間インキュベーションした。細胞核は、ヨウ化プロピジウムで対比染色した。結果を図3に示す。図3は、試験例2におけるHaCaT−TE細胞の免疫細胞化学染色の結果を示す図面代用写真である。図3(a)は、膜透過化UVB非照射HaCaT−TE細胞、図3(b)は、膜透過化させていない(膜非透過化)UVB非照射HaCaT−TE細胞、図3(c)は、膜非透過化UVB照射HaCaT−TE細胞を示す。図中、スケールバーは、10μmである。なお、図中、「透過化」は、膜を透過化させた細胞、「非透過化」は、膜を透過化させていない細胞、「UVB非照射」は、UVBが照射されていない細胞、「UVB照射」は、UVBが照射されている細胞を示す。
図3に示される結果から、図3(c)の膜非透過化UVB照射HaCaT−TE細胞において、図3(b)の膜非透過化UVB非照射HaCaT−TE細胞に比べて、エピモルフィンがより多く検出されているため、UVB照射により、細胞表面にエピモルフィンの細胞外提示が増加することがわかる。
(試験例3)
(1)ケラチノサイトの増殖における細胞外エピモルフィンの影響
製造例3で得られたHaCaT−EPM1細胞を、前記DH10で培養し、経時的に細胞の増殖・代謝活性を調べた。各所定時間に採取した細胞に、細胞計数用キット(商品名:Cell Counting Kit(株式会社同仁科学研究所製))に添付の試薬A(株式会社同仁科学研究所製、商品名:WST−1)と溶液Bとの混合溶液110μlを添加し、3時間インキュベーションし、分光光度計(ワッラック(WALLAC)社製、商品名:ARVOtmSX 1420 MULTILABEL COUNTER)で、450nmにおける吸光度を測定し、代謝挙動を調べた。同様に、製造例3で得られたHaCaT−EPM2細胞、製造例4で得られたHaCaT−TF−対照細胞及びHaCaT細胞それぞれについても、代謝挙動を調べた。結果を図4に示す。図4は、試験例3におけるケラチノサイトの増殖における細胞外エピモルフィンの影響を調べた結果を示すグラフである。図中、黒四角は、HaCaT細胞、白四角は、HaCaT−TF−対照細胞、黒丸は、HaCaT−EPM1細胞、白丸は、HaCaT−EPM2細胞を示す。図中、*は、P<0.05、**は、P<0.01、***は、P<0.001である。
図4の結果から、細胞外エピモルフィンを発現するケラチノサイト(HaCaT−EPM1細胞及びHaCaT−EPM2細胞)ならびに細胞外エピモルフィンを発現しないケラチノサイト(HaCaT細胞及びHaCaT−TF−対照細胞)は、サブコンフルエントになるまで(3日目まで)は、同様に増殖するが、その後、HaCaT細胞及びHaCaT−TF−対照細胞に比べ、HaCaT−EPM1細胞及びHaCaT−EPM2細胞では、著しい代謝低下がみられることがわかる。
(2)ケラチノサイトの分化における細胞外エピモルフィンの影響
製造例3で得られたHaCaT−EPM1細胞を前記DH10中、5体積% CO2下、37℃で4日間培養した。得られた細胞を、SDSサンプルバッファーに添加して、5分間煮沸し、全細胞ライゼート試料を得た。同様に、製造例3で得られたHaCaT−EPM2細胞、製造例4で得られたHaCaT−TF−対照細胞及びHaCaT細胞それぞれについて、全細胞ライゼート試料を得た。
得られた各全細胞ライゼート試料を、4−20質量%濃度勾配SDS−ポリアクリルアミドゲルに負荷した後、電気泳動を行なった。つぎに、全てのタンパク質バンドをPVDF膜(商品名:イモビロン−P、ミリポアコーポレーション製)に転写させた。転写後のPVDF膜を、5質量%スキムミルクTBS溶液とともに室温で60分間インキュベーションした。その後、得られたPVDF膜を、一次抗体として、インボルクリンに対するアフィニティー精製抗体(1:100)(サンタクルズバイオテクノロジーインコーポレーティッド製)、サイトケラチン−5に対するアフィニティー精製抗体(1:1000)(コバンス社製)及びβ−アクチンに対するアフィニティー精製抗体(1:1000)(シグマ−アルドリッチ社製)ともに、室温で60分間インキュベーションし、その後、HRP−標識二次抗体とともに、室温で60分間インキュベーションした。結果を図5に示す。図5は、試験例3におけるケラチノサイトでの各種分化マーカーのイムノブロット解析を行なった結果を示す図面代用写真である。図5(a)は、ケラチノサイトにおけるインボルクリンのイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真、図5(b)は、ケラチノサイトにおけるサイトケラチン−5のイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真、図5(c)は、ケラチノサイトにおけるβ−アクチンのイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真を示す。図中、レーン1は、HaCaT細胞、レーン2は、HaCaT−EPM1細胞、レーン3は、HaCaT−EPM2細胞、レーン4は、HaCaT−TF−対照細胞である。
図5に示されるように、細胞外エピモルフィンを発現するケラチノサイト(HaCaT−EPM1細胞及びHaCaT−EPM2細胞)においては、初期分化プログラムの分化マーカーであるインボルクリンがアップレギュレートされることがわかる。
(試験例4)
(1)ケラチノサイトによる不溶性コーニファイドエンベロープの形成におけるエピモルフィンの影響
前記試験例3の結果から、ケラチノサイトにおいては、エピモルフィンシグナルは、コーニファイドエンベロープ前駆体であるインボルクリンの生産が増大した細胞において、初期分化を誘導していることがわかる。そこで、ケラチノサイトの分化を強制的に促進させ、コーニファイドエンベロープの能動的産生及び不溶性物質へのそれらの会合をもたらすカルシウム流入を引き起こすことにより、ケラチノサイトの後期分化(角化プロセス)にみられる不溶性コーニファイドエンベロープの形成におけるエピモルフィンの影響を調べた。
無血清DH培地(DMEM/HamF12、シグマーアルドリッチ社製)に懸濁したHaCaT細胞、HaCaT−EPM1細胞又はHaCaT−EPM2細胞(1.0×10/ml)を、カルシウム流入を引き起こすカルシウムイオノフォアA23187(終濃度:20ng/ml、シグマ−アルドリッチ社製)とともに5時間、37℃でインキュベーションした。
その後、HaCaT細胞、HaCaT−EPM1細胞及びHaCaT−EPM2細胞それぞれを、リン酸緩衝生理的食塩水で洗浄し、ついで、2質量% SDSと20mMジチオスレイトールとを含むリン酸緩衝生理食塩水中で、5分間煮沸した。
得られた産物について、カルシウムイオノフォアA23187によるカルシウム流入後の不溶性コーニファイドエンベロープに起因する残存不溶化細胞の数を計数した。なお、陰性対照として、カルシウムイオノフォアA23187を用いずに、同様にインキュベーションしたHaCaT細胞を用いた。また、陽性対照として、10nMデキサメタゾン存在下、DH培地中、5体積%CO2下、37℃で48時間インキュベーション後、前記無血清DH培地に懸濁し、同様にカルシウムイオノフォアA23187とインキュベーションしたHaCaT細胞を用いた。試験例4におけるケラチノサイトの後期分化にみられる不溶性コーニファイドエンベロープの形成に対する細胞外エピモルフィンの影響を調べた結果を示すグラフを図6に示す。図中、バー1は、陰性対照、バー2は、HaCaT細胞、バー3は、HaCaT−EPM1細胞、バー4は、HaCaT−EPM2細胞、バー5は、陽性対照である。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、*は、P<0.05、***は、P<0.001である。
図6の結果から、カルシウムイオノフォアA23187とともにHaCaT細胞をインキュベーションした場合においては、全細胞中の残存不溶化細胞が33.0±1.64%であるのに対し、カルシウムイオノフォアA23187とともにエピモルフィンを発現するケラチノサイト(HaCaT−EPM1細胞及びHaCaT−EPM2細胞)をインキュベーションした場合においては、残存不溶化細胞が10.1±1.8%であり、減少していることがわかる。かかる結果より、従来、ケラチノサイトにおける分化応答を誘発することが示唆されているエピモルフィンが、予想外にも、角化のその後の成熟プロセスを阻害することが示唆される。
(2)ケラチノサイトの足場依存性細胞死(アノイキス)におけるエピモルフィンの影響
IL−2シグナルペプチド結合エピモルフィンをコードするcDNAと、商品名:Adeno−X Expression System 1(クローンテック社製)とを用いて、IL−2シグナルペプチド結合エピモルフィン発現用の組換えアデノウイルスを構築した。
HaCaT細胞を、1000U/ml DNアーゼI(シグマ−アルドリッチ社製)を含むDH10 350μlに懸濁し、得られた懸濁物を、24−ウェルディッシュ(超低接着表面、コーニング社製)中、100rpmで24時間回転培養した。
いくつかのウェルに、前記組換えアデノウイルス(10pfu)を添加して、HaCaT細胞に導入し、IL−2シグナルペプチド結合エピモルフィンを一過性発現する細胞(HaCaT−Av−EPM細胞)を得た。また、いくつかのウェルに、IL−2シグナルペプチド結合エピモルフィンをコードするcDNAをもたないアデノウイルス添加して、HaCaT細胞に導入し、HaCaT−Av−対照細胞を得た。
HaCaT細胞、製造例3で得られたHaCaT−EPM1細胞及びHaCaT−EPM2細胞、製造例4で得られたHaCaT−TF−対照細胞、前記HaCaT−Av−EPM細胞ならびに前記HaCaT−Av−対照細胞それぞれを、24時間培養して、平滑で丸い細胞凝集物を形成させた。
形成された平滑で丸い細胞凝集物を、0.5質量%タイプIAコラーゲン溶液(株式会社高研製)で調製された高密度のコラーゲンゲル中に包埋した。包埋後の細胞凝集物を、インスリン(5μg/ml)を含むDH10 0.3ml中、5体積% CO2下、37℃で3日間インキュベーションし、細胞クラスターを得た。インキュベーション後のすべての細胞クラスターのうち、足場依存性細胞死(アノイキス)による大きな中央空間を有するクラスターを計数した。すべての細胞クラスター中における足場依存性細胞死による空間が形成された細胞クラスターの割合(空間形成率)を示すグラフを図7に示す。図中、バー1は、HaCaT細胞、バー2は、HaCaT−EPM1細胞、バー3は、HaCaT−EPM2細胞、バー4は、HaCaT−TF−対照細胞、バー5は、HaCaT−Av−対照細胞、バー6は、HaCaT−Av−EPM細胞である。図中、データは、3回の計数に基づくものであり、平均±標準誤差で示す。また、図中、**は、P<0.01である。
また、前記HaCaT−Av−対照細胞及びHaCaT−Av−EPM細胞それぞれを、インボルクリンに対するアフィニティー精製抗体(サンタクルズバイオテクノロジーインコーポレーティッド製)とβ−アクチンに対するアフィニティー精製抗体(シグマ−アルドリッチ社製)との混合物(各10μg/ml)と、室温で60分間インキュベーションし、その後、HRP−標識二次抗体とともに、室温で60分間インキュベーションして、免疫細胞化学染色を行なった。なお、細胞核は、ヨウ化プロピジウムで対比染色した。また、前記HaCaT−Av−対照細胞及びHaCaT−Av−EPM細胞それぞれを位相差顕微鏡により観察した。結果を図8に示す。図8は、試験例4における表皮基底細胞にエピモルフィンをコードする核酸を導入した場合の細胞クラスターの形態の位相差顕微鏡観察の結果及び前記細胞クラスターでのマーカーの発現を調べた免疫細胞化学染色の結果を示す図面代用写真である。図8(A)の(a)は、HaCaT−Av−対照細胞の位相差顕微鏡観察の結果を示す図面代用写真、(b)は、HaCaT−Av−対照細胞の免疫細胞化学染色の結果を示す図面代用写真であり、図8(B)の(a)は、HaCaT−Av−EPM細胞の位相差顕微鏡観察の結果を示す図面代用写真、(b)は、HaCaT−Av−EPM細胞の免疫細胞化学染色の結果を示す図面代用写真である。図中、スケールバーは、いずれも50μmである。図中、2は、形成された空間、3は、ヨウ化プロピジウムに対する染色位置の一例、4は、インボルクリンに対する染色位置の一例である。
図7の結果から、細胞外エピモルフィンを強制発現させた細胞であるHaCaT−EPM1細胞、HaCaT−EPM2細胞及びHaCaT−Av−EPM細胞それぞれの細胞クラスターでは、対照であるHaCaT細胞、HaCaT−TF−対照細胞及びHaCaT−Av−対照細胞それぞれの細胞クラスターに比べ、足場依存性細胞死による空間が形成された細胞クラスターの割合が著しく低いことがわかる。したがって、細胞外エピモルフィンの強制発現により、足場依存性細胞死による空間形成が阻害されることが示唆される。
また、図8の結果から、HaCaT−Av−対照細胞の細胞クラスターでは、コラーゲン基質から物理的に離れる当該細胞クラスターの中央部の細胞が直ちに死に至り、前記細胞クラスターにおける中央空間の形成及び膨張をもたらすことがわかる。また、図8の結果から、細胞表面の膜基部において、インボルクリンを含むよく発達したエンベロープ構造を示すことがわかる。しかしながら、HaCaT−Av−EPM細胞では、細胞質において、インボルクリンの粒子が沈着することがわかる。
(実施例1)
ヒト胎児肺線維芽細胞のMRC−5細胞を、10質量%熱不活性化FCSを含むα−MEM(ギブコ・ラボラトリー社製)10ml中、5体積%CO2下、37℃で72時間培養した。
24ウェル培養プレートに設置した商品名:セルカルチャーインサート(BDバイオサイエンス社製)中で、前記MRC−5細胞を、コラーゲンゲル混合溶液(コラーゲンI型、新田ゼラチン株式会社製)に添加して、ゲル化させて、MRC−5細胞包埋コラーゲンゲル(1.7×105/ml)を得た。得られたMRC−5細胞包埋コラーゲンゲルの上表面に、50ng/mlのフィブロネクチン(BDバイオサイエンス社製)0.05mlを添加し、1時間放置した。その後、このMRC−5細胞包埋コラーゲンゲルを、DH10培地中、一晩インキュベーションした。
一方、ヒドロコルチゾン(0.4μg/ml)(シグマ−アルドリッチ社製)とゲンタマイシン(100μg/ml)(ギブコ・ラボラトリー社製)とインスリン(5μg/ml)とアスコルビン酸(50μg/ml)(シグマ−アルドリッチ社製)とを補ったDH10に、製造例3のHaCaT−EPM1細胞(7.0×10細胞)を懸濁させ、HaCaT−EPM1細胞懸濁物を得た。
得られたHaCaT−EPM1細胞懸濁物を、前記セルカルチャーインサート中のMRC−5細胞包埋コラーゲンゲルの上に添加し、HaCaT−EPM1細胞を播種した。HaCaT−EPM1細胞が播種された前記セルカルチャーインサート中のMRC−5細胞包埋コラーゲンゲルを、24ウェル培養プレートに入れたDH10に浸漬させ、5体積% CO2下、37℃でインキュベーションした。
5日後、得られた培養構築物のHaCaT−EPM1細胞の表面を、空気とDH10との接触面まで持ち上げて配置した。その後、この培養構築物を、さらに14日間培養し、HaCaT−EPM1細胞を重層化させ、分化させた。これにより、HaCaT−EPM1細胞を含む三次元培養産物を得た。
(実施例2)
HaCaT−EPM1細胞に代えて、製造例3のHaCaT−EPM2細胞を用いて、実施例1と同様に、三次元培養産物を得た。
(比較例1)
HaCaT−EPM1細胞に代えて、製造例4のHaCaT−TF−対照細胞を用いて、実施例1と同様に、三次元培養産物を得た。
(試験例5)
実施例1の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物それぞれについて、ヘマトキシリン・エオシン染色を行なった。その後、得られた産物を光学顕微鏡及び蛍光顕微鏡により観察した。また、前記三次元培養産物から、凍結切片(10μm四方)を調製し、インボルクリンに対するアフィニティー精製抗体(サンタクルズバイオテクノロジーインコーポレーティッド製)及びサイトケラチン−1に対するアフィニティー精製抗体(コバンス社製)を一次抗体として用いて、試験例1と同様に、実施例1の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物の免疫組織化学染色を行なった。結果を図9に示す。図9は、実施例1の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物それぞれのヘマトキシリン・エオシン染色後の産物の光学顕微鏡観察の結果、並びに免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真である。図9aは、比較例1の三次元培養産物のヘマトキシリン・エオシン染色の光学顕微鏡観察の結果を示す図面代用写真、図9bは、比較例1の三次元培養産物におけるインボルクリンの免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真、図9cは、比較例1の三次元培養産物におけるサイトケラチン−1の免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真、図9dは、実施例1の三次元培養産物のヘマトキシリン・エオシン染色の光学顕微鏡観察の結果を示す図面代用写真、図9eは、実施例1の三次元培養産物におけるインボルクリンの免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真、図9fは、実施例1の三次元培養産物におけるサイトケラチン−1の免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真である。図中、3は、インボルクリンに対する染色位置、4は、ヨウ化プロピジウムに対する染色位置の一例、5は、サイトケラチン−1に対する染色位置である。図中、スケールバーは、50μmである。
図9a〜図9cの結果から、比較例1の三次元培養産物では、増殖し、上方細胞層の膜基部に、よく積層したコーニファイドエンベロープを有する正常な形態学的/機能的な層形成を示すことがわかる。
しかしながら、図9d〜図9fの結果から、実施例1の三次元培養産物では、すべての層の細胞が類似の形態を示し、分化マーカーであるインボルクリン及びサイトケラチン−1を伴う類似の発現プロファイルを示す特徴のある多細胞層を形成していることがわかる。また、図9eの結果から、実施例1の三次元培養産物では、インボルクリンが非局在的に分布しているため、コーニファイドエンベロープ構造が崩壊していることがわかる。かかる結果から、細胞外エピモルフィンを発現する細胞の三次元培養により、分化マーカーの異常発現パターンとともに表皮細胞層にわたって不規則な細胞形状を示す三次元培養産物が得られることがわかる。
(試験例6)
(1)三次元培養産物における分化マーカーの発現プロファイル
実施例1の三次元培養産物、実施例2の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物のそれぞれの細胞を、SDSサンプルバッファー(組成:62.5mM Tris−HCl(pH6.8)、10質量%グリセロール、2質量% SDS、5体積% 2−メルカプトエタノール、0.0025質量%ブロモフェノールブルー)に直接溶解させ、ホモジナイザーで30秒処理後、5分間煮沸し、実施例1の三次元培養産物、実施例2の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物のそれぞれの細胞の全細胞ライゼート試料を得た。
得られた全細胞ライゼート試料について、一次抗体として、インボルクリンに対する抗体(サンタクルズバイオテクノロジーインコーポレーティッド製)、サイトケラチン−1に対する抗体(コバンス社製)、サイトケラチン−14に対する抗体(コバンス社製)、ロルクリンに対する抗体(コバンス社製)、C/EBPαに対する抗体(サンタクルズバイオテクノロジーインコーポレーティッド製)、C/EBPβに対する抗体(サンタクルズバイオテクノロジーインコーポレーティッド製)、トランスグルタミナーゼIに対する抗体(バイオメディカルテクノロジーズインコーポレーティッド製)及びβ−アクチンに対する抗体(シグマ−アルドリッチ社製)を用いて、試験例2と同様に、イムノブロット解析を行なった。結果を図10に示す。図10は、実施例1の三次元培養産物、実施例2の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物のそれぞれの細胞における分化マーカーのイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真である。図中、(a)は、インボルクリン、(b)は、C/EBPα、(c)は、トランスグルタミナーゼ1、(d)は、サイトケラチン−14、(e)は、ロリクリン、(f)は、β−アクチン、(g)は、サイトケラチン−1、(h)は、C/EBPβである。また、図中、レーン1は、HaCaT細胞、レーン2は、HaCaT−EPM1細胞、レーン3は、HaCaT−EPM2細胞である。
図10に示される結果から、エンベロープ前駆体間を共有結合的にクロスリンクして、細胞末梢領域における強固なエンベロープの形成を媒介するトランスグルタミナーゼIは、比較例1の三次元培養産物の細胞に対して、実施例1の三次元培養産物及び実施例2の三次元培養産物それぞれの細胞内でダウンレギュレートされることがわかる。また、図10の結果から、C/EBPα及びC/EBPβ(LAP及びLIP)のタンパク質レベルは、比較例1の三次元培養産物の細胞に比べ、実施例1の三次元培養産物及び実施例2の三次元培養産物それぞれの細胞において、顕著に増加することがわかる。
(2)三次元培養産物の組織構造
実施例1の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物それぞれの組織構造について、電子顕微鏡により観察した。結果を図11に示す。図11は、実施例1の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物の電子顕微鏡による観察の結果を示す図面代用写真である。図11(A)は、比較例1の三次元培養産物の組織構造の電子顕微鏡による観察の結果を示す図面代用写真、図11(B)は、実施例1の三次元培養産物の組織構造の電子顕微鏡による観察の結果を示す図面代用写真である。図中、BLは、基底層又はその相当物、SLは、有棘層又はその相当物、GLは、顆粒層又はその相当物、CLは、角化層又はその相当物を示す。スケールバーは、いずれも1μmである。
図11(A)の結果から、インビボ表皮などと同様に、比較例1の三次元培養産物では、最上角化層には、細胞核及び細胞内小器官が存在していないことがわかる。
一方、図11(B)の結果から、実施例1の三次元培養産物では、すべての層にわたって、よく発達したデスモソーム結合が中間フィラメントネットワークにより支持される中程度の分化表現型の細胞が残っており、最上細胞層の細胞においては、細胞核は、そのまま残っていることがわかる。かかる構造は、正常に機能しない最終分化を伴う角化細胞の生存により特徴付けられる損傷皮膚の表皮の病理学的特徴及び乾癬患者の特定の病変に似ているため、実施例1の三次元培養産物は、三次元疾患皮膚再構築物として疾患モデルに用いることができることが示唆される。
試験例1におけるUVB照射HR−1マウス及びUVB非照射HR−1マウスの皮膚組織の免疫化学染色の結果を示す図面代用写真である。 試験例2におけるPT67−TE細胞の全細胞ライゼート試料及び上清試料それぞれでのエピモルフィンのイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真である。 試験例2におけるHaCaT−TE細胞の免疫細胞化学染色の結果を示す図面代用写真である。 試験例3におけるケラチノサイトの増殖に対する細胞外エピモルフィンの影響を調べた結果を示すグラフである。 試験例3におけるケラチノサイトでの各種分化マーカーのイムノブロット解析を行なった結果を示す図面代用写真である。 試験例4におけるケラチノサイトの後期分化にみられる不溶性コーニファイドエンベロープの形成に対する細胞外エピモルフィンの影響を調べた結果を示すグラフである。 試験例4におけるすべての細胞クラスター中の足場依存性細胞死による空間が形成された細胞クラスターの割合(空間形成率)を示すグラフである。 試験例4における表皮基底細胞にエピモルフィンをコードする核酸を導入した場合の細胞クラスターの形態の位相差顕微鏡観察の結果及び前記細胞クラスターでのマーカーの発現を調べた免疫細胞化学染色の結果を示す図面代用写真である。 実施例1の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物それぞれのヘマトキシリン・エオシン染色後の産物の光学顕微鏡観察の結果、並びに免疫組織化学染色の結果を示す図面代用写真である。 実施例1の三次元培養産物、実施例2の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物のそれぞれの細胞における分化マーカーのイムノブロット解析の結果を示す図面代用写真である。 実施例1の三次元培養産物及び比較例1の三次元培養産物の電子顕微鏡による観察の結果を示す図面代用写真である。
配列番号:3は、IL−2シグナルペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号:4は、IL−2シグナルペプチドをコードする核酸の塩基配列である。
配列番号:5は、アルブミンシグナルペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号:6は、T7−タグ配列のアミノ酸配列である。
配列番号:7は、T7−タグ配列をコードする核酸の塩基配列である。

Claims (4)

  1. エピモルフィンをコードする核酸が発現可能に導入されている遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養して得られる三次元疾患皮膚再構築物。
  2. 前記核酸が、アミノ末端側にシグナルペプチドが付加されたエピモルフィンをコードする核酸である請求項1記載の三次元疾患皮膚再構築物。
  3. 前記遺伝子導入表皮基底細胞が、ヒト表皮基底細胞から得られる遺伝子導入細胞であり、前記支持体が、ヒト線維芽細胞がコラーゲンゲル内に包埋された細胞包埋コラーゲンゲルである請求項1又は2に記載の三次元疾患皮膚再構築物。
  4. 表皮基底細胞に、エピモルフィンをコードする核酸を発現可能に導入して得られた遺伝子導入表皮基底細胞を、支持体上で三次元に培養することを特徴とする三次元疾患皮膚再構築物の製造方法。
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