JP2009110773A - 送風装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡単な構成で、送風特性を高めることが可能な送風装置を提供する。
【解決手段】送風装置100は、放電によってイオンを発生させる放電電極110と、放電電極110に対向する対向電極120とを備え、イオンを発生させることによりイオン風による気流を発生させる送風装置100であって、放電電極110は、複数の発泡部112と、隣接する複数の発泡部112の間を満たす金属部111とを含む発泡金属によって形成されている。
【選択図】図1
【解決手段】送風装置100は、放電によってイオンを発生させる放電電極110と、放電電極110に対向する対向電極120とを備え、イオンを発生させることによりイオン風による気流を発生させる送風装置100であって、放電電極110は、複数の発泡部112と、隣接する複数の発泡部112の間を満たす金属部111とを含む発泡金属によって形成されている。
【選択図】図1
Description
この発明は、一般的には送風装置に関し、特定的には、イオン風を生じさせる送風装置に関する。
従来、空気の流れを誘引して気流を起こし、その気流を用いた送風装置が様々な領域で用いられている。これらの送風装置は、ほとんどの場合において、ファンを用いて気流を発生させるものである。ファンとしては、様々な形態が実用されているが、主な形態としては、プロペラ、シロッコファン、クロスフローファンなどがある。また、これらのファンを駆動するための動力源としては、電気モーターやガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等を用いることができる。
しかし、このような送風装置にはいくつかの課題がある。まず、一つ目の課題としては、振動による騒音の問題がある。送風装置において、モーターやエンジンといったファンの駆動源を作動させることによって、これらの駆動源に起因する振動と騒音が発生する。低振動、低騒音のモーターが開発されているが、モーターやエンジンといった機械的な駆動機構を使用すれば、騒音を完全になくすことは原理的に不可能である。
次に、二つ目の課題としては、ファンを用いた送風装置における気流の乱れによって騒音が発生するという問題がある。プロペラファン、シロッコファン、クロスフローファンといったファンを用いた送風装置では、気流を完全に均一化することができないため、気流中に局所的に渦が発生したりすることによって騒音が発生する。
さらに、三つ目の課題としては、ファンやモーター、エンジンといった機械的手段を備えている場合においては、駆動部分の磨耗や熱発生などによって、長期間使用すると故障しやすくなるといった課題が残っている。
そこで、上記課題を解決することができる送風装置として、近年、放電現象により発生するイオン風を利用した送風装置が大きく注目されている。イオン風は、放電によって生じるイオンの泳動に励起される空気流である。
イオン風を利用した送風装置は、ファンを駆動して機械的エネルギーによって気流を発生させるのではなく、空気中に電界を形成し、帯電粒子を直接加速することにより、帯電粒子と空間に存在する空気分子との間の相互作用によって空気の流れを発生させるものである。このように、イオン風を利用した送風装置は、従来の機械的な手法とは別の手法によって、原理的に高効率な送風を達成することができるものである。
このようなイオン風を用いた送風装置の基本的な原理については、米国特許第4210847号明細書(特許文献1)に記載されている。簡単に記すと、接地された金属スクリーンに対して、高電圧のプローブでコロナ放電現象を発生させて、空気流(イオン風)を得る。米国特許第4210847号明細書(特許文献1)にはイオン風による送風の基本的事項が記載されており、この文献に記載の送風装置は、1本の針型電極とメッシュ状の対向電極からなるデバイスとなっている。
図8は、イオン風を利用した従来の送風装置の基本的な構成を模式的に示す図である。
図8に示すように、送風装置9Aは、先端が尖がった形状の針型電極910と、対向電極として例えばメッシュ状の対向電極920と、針型電極910と対向電極920が接続される電源902を備える。針型電極910と対向電極920とは、一定の間隔をおいて配置されている。従来のイオン風を利用した送風装置においては、対向電極920としては、メッシュ状や平板状、ワイヤー状などの電極が利用されている。メッシュ状の対向電極920と、針型電極910は、筐体901としての治具に固定されている。対向電極920は、対向電極920のメッシュの面が、針型電極910が延びる方向と垂直となるように配置されている。
送風装置9Aの針型電極910と対向電極920の間に直流電圧または交流電圧を印加すると、針型電極910と対向電極920の形状が大きく異なっているために、双方の電極近傍で電界の分布が不平等になる不平等電界の状態においての放電現象(例えばコロナ放電現象)が発生する。このような放電現象が発生することによって、針型電極910の先端部からは、対向電極920に向かって、イオンが放出される。針型電極910から発生するイオンの極性は、針型電極910の極性と同一となる。すなわち、針型電極910を正とした場合は正極性イオンが放出され、針型電極910を負とした場合は負極性イオンが放出されることとなる。
針型電極910において発生したイオンは、針型電極910と対向電極920との間に生じる電界により、針型電極910の先端部から放出され、対向電極920に向かって加速される。このとき、針型電極910と対向電極920の間に存在する多数の中性分子や中性粒子にイオンが頻繁に衝突するために、イオンだけでなく、これらの中性粒子も次第にイオンと同一方向に、すなわち、針型電極910から対向電極920に向かって動き出し、全体として空気の流れが発生する。これが上述のイオン風である。イオン風は、図中の矢印の方向に流れる。このようにして、送風装置9Aが機能することとなる。
従って、米国特許第4210847号明細書(特許文献1)に示されたイオン風発生の原理を利用した送風装置を応用展開することにより、従来のファンとモーターやエンジンとの組み合わせといった機械的形態とは別の送風装置を達成することができる。このような送風装置においては、従来の形態の送風装置とは異なり、ファンやモーターやエンジンといった機械的機構が存在しないために、騒音の発生がほとんど無く、無音化送風装置を達成することができる。さらに、機械的機構による気流生成の際に発生する渦気流についても、イオン風を用いた送風装置においては発生しにくい。
このように、イオン風を利用した送風装置は、騒音が抑制され、合わせて、機械的駆動における熱発生が無いために、導入する電気エネルギーから得られる風エネルギーの度合いが向上してエネルギー効率が向上し、送風装置としての消費電力の抑制につながるといった優れた特徴を有する。イオン風送風装置については、各方面で研究開発が進められている。
図8には、針型電極910が1本からなる送風装置9Aが示されているが、針型電極910が1本では実際に送風装置として使用する場合には風量が不足するため、通常は、針型電極910を複数本組み合わせて送風装置として使用することが多い。
図9は、複数の針型電極を用いた従来の送風装置の基本的な構成を模式的に示す図である。図9の(A)は送風装置全体の概略を示す図、図9の(B)は送風装置の筐体の内部を矢印Bで示す方向から見た正面図を示す。
図9に示すように、送風装置9Bは、複数本の針型電極910と、メッシュ状の対向電極920を備える。対向電極920は、針型電極910の針が延びる方向と垂直になるように配置されている。針型電極910と対向電極920は、電源902に接続されている。複数の針型電極910を備えることにより、送風装置9Aのように針型電極が1本の場合と比較して高風量化を達成することができる。
上述のように、図8に示す送風装置9Aや図9に示す送風装置9Bでは、針型電極と、針型電極に対向して配置される対向電極の形状が著しく異なっているために、これらの電極間に電圧を印加した際に生じる電場の状態が歪んだ状態となる。この電場の強度は、針型電極の先端部近傍で最大となる。
良好な送風特性を得るためには、電場強度を高めることが効果的である。針型電極の先端部は、例えば、先端半径が60μmといった鋭い形状を有しているために、放電電極として先端の鋭い針型電極を用いることによって、先端部近傍での電場強度を高めることができる。このように、針型電極を用いた送風装置は最も優れた特性を示す。
たとえば、同一形状の2枚の平行平板電極を用いた場合において、平板間距離を5mmとして、2枚の平行平板電極間に3kVの電圧を印加すると、電極近傍での電場強度は3kV/5mm=0.6kV/mmという小さな値となる。そのため、放電現象は全く発生せず、送風も全く発生しない。一方、放電電極として、先端半径が2μmと極めて小さな鋭い形状の針型電極を用いた場合においては、平板間距離を5mmとして、2枚の平行平板電極間に3kVの電圧を印加すると、電場強度シミュレーション解析により、300kV/mm以上という極めて強い電場が形成されることがわかっている。そのため、放電現象が発生し、放電現象によって発生したイオンが針型電極近傍での強い電場によって加速され、送風が得られる。
以上の通り、従来の機械的に気流を発生させる送風装置とは全く異なる送風装置として、針型電極と対向電極からなるデバイスの放電現象を用いることにより、優れた特性を有する送風装置を達成することが可能となる。
また、特表2002−528260号公報(特許文献2)に記載の動電空気搬送調節装置の放電電極としては、図8や図9に示すような針型電極ではなく、円柱状や角柱状といったワイヤーが用いられている。このようなワイヤー型の放電電極を用いた場合には、複数本の針型電極を用いた送風装置と比較して、使用する材料が少なく、また、複数本の針を配列するといった製造工程を省略することができる。
米国特許第4210847号明細書
特表2002−528260号公報
しかしながら、図8、図9に示す送風装置のように放電電極として針型電極を用いた送風装置は、送風装置を製造するためのコストが高くなるという問題を有している。特に、図9に示す送風装置9Bのように、風量を高めるために複数本の針型電極を用いる場合、その針型電極の製造コストが高くなる。また、針型電極と対向電極の空間距離が変動すると電場の形状が変わり、送風特性が低下することがあるので、複数の針型電極と対向電極の間の空間距離を一定にするように配列する必要がある。このように、放電電極として針型電極を配列することは容易ではなく、送風装置の製作にあたって高いコストが発生することになる。
一方、特表2002−528260号公報(特許文献2)に記載の送風装置のように、ワイヤー型の放電電極を用いる場合には、放電電極の製作コストを抑えることができ、放電電極の配置も容易であるが、針型電極を用いた場合と比較して充分な送風特性を得ることができない。
放電現象を用いた送風装置においては、優れた送風特性を得るためには、電極の先端部近傍において電場強度を高めることが必要である。しかしながら、放電電極としてワイヤー型電極を用いた場合、効果的に電場強度を高めることができないために、優れた送風特性を得ることができない。ワイヤー型電極を用いた場合に送風特性を高めることができないのは、放電電極として用いられるワイヤーの直径は通常0.2mm以上、すなわち半径としては100μm以上であるため、先端の鋭い針型電極と比較して電場強度が高くならないためである。
そこで、この発明の目的は、簡単な構成で、送風特性を高めることが可能な送風装置を提供することである。
この発明に従った送風装置は、放電によってイオンを発生させる放電電極と、放電電極に対向する対向電極とを備え、イオンを発生させることによりイオン風による気流を発生させる送風装置であって、放電電極は、複数の発泡部と、隣接する複数の発泡部の間を満たす金属部とを含む発泡金属によって形成されている。
従来、放電電極としては、板型やワイヤー型に加工したバルク状の固体金属が用いられている。放電電極として、例えば、ワイヤー型の金属を用いる場合には、ワイヤーの最外周部に局所的に電界を集中させる必要がある。しかし、このようなバルク状の固体金属によって形成されている放電電極の表面や内部は、ほぼ均一な状態となっており、局所的に電界が集中するような部分が少ない。特に、直径が数ミリメートル程度のワイヤーを放電電極として用いる場合には、効果的な電界集中を得ることが難しい。
一方、発泡金属は、複数の発泡部と、隣接する複数の発泡部の間を満たす金属部とを含むので、金属部の表面の曲率半径は、放電電極全体の半径よりも小さく、金属部の表面の曲率が大きくなるので、金属部には電界が集中しやすい。また、発泡部と金属部との境界部分は、直線状にはならず、曲率を持った形状や、多数の突起が形成されたような形状になる。このような、不均一な形状を有する金属部と発泡部との境界部分には、電界が集中しやすい。
また、例えば、隣接する発泡部が連通している箇所が多数、存在する発泡金属においては、発泡部の形状がいびつになる。そのため、発泡金属の表面や内部には、非常に多くの突起が三次元的に形成される。発泡金属を放電電極として用いることによって、これらの突起に電界を容易に集中させることが可能となり、優れた送風特性を発揮させることが可能となる。
そこで、このように、発泡金属によって放電電極を形成することによって、放電電極に局所的に曲率半径の小さな部分を効果的に形成し、電界を容易に集中させることが可能になる。電界を容易に集中させることができるので、より低い電圧で放電現象が発生し、その結果、より低い電圧で送風を得ることができる。このようにして、送風を得るのに必要な印加電圧を低減することができるので、送風装置の消費電力を低減することができ、また、安全性を向上させることができる。
このようにすることにより、簡単な構成で、送風特性を高めることが可能な送風装置を提供することができる。
この発明に従った送風装置においては、金属部の表面は、曲率半径が100μm以下である部分を有することが好ましい。
このようにすることにより、曲率の大きな箇所、すなわち、曲率半径の小さな箇所において、電界を効果的に集中させることができ、印加電圧を低減することができる。
以上のように、この発明によれば、簡単な構成で、コストを抑えることが可能であって、優れた送風特性を有する送風装置を提供することができる。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の一つの実施の形態として、送風装置を示す図である。図1の(A)は送風装置全体の概略を示す図、図1の(B)は送風装置の筐体の内部を矢印Bで示す方向から見た正面図を示す。
図2は、放電電極の全体を示す図(A)と、図2の(A)の放電電極を左側から見たときの図(B)と、放電電極の部分を示す拡大図(C)である。
図3は、放電電極の一部を模式的に示す斜視図(A)と、放電電極の表面の拡大図(B)である。
図1に示すように、送風装置100は、放電電極(放電現象発生電極)110と、対向電極120と、放電電極110と対向電極120とが配置される筐体101と、駆動回路部102とを備える。筐体101の下流端は開口し、メッシュ状の対向電極120が筐体101の開口部を覆うようにして配置されている。
図1と図2に示すように、放電電極110は、ワイヤー型に加工された発泡金属から形成されている。放電電極110は、スライドガラス104によって筐体101に固定されている。放電電極110は、対向電極120とほぼ平行になるように配置されている。放電電極110の両端は、エポキシ系接着剤103でスライドガラス104に、スライドガラス104と平行になるように固定されている。この実施の形態では、スライドガラス104の板厚は0.7mmとする。
図1から図3に示すように、放電電極110は、ステンレス鋼を材質とする発泡金属によって形成されている。この実施の形態では、板厚が4mmの発泡ステンレス鋼を切り出して、直径4mmの断面を有するワイヤー状態に加工したものを放電電極110とする。
発泡金属としては、公知の金属材料を使用することが可能である。例えば、銅、ニッケル、金、銀、白金、ステンレス鋼、ニッケル合金、コバルト合金等を用いて発泡金属を形成することができる。特に、放電電極として用いるので、ステンレス鋼等のような、放電現象に対する耐性の大きな金属を用いることが好ましい。
放電電極110の表面と内部には、多数の発泡部112が形成されている。隣接する発泡部112の間を金属部111が満たす。金属部111と発泡部112との境界部113には、多数の突起114が形成されている。
発泡金属は、三次元網目状構造を有することによって、非常に隙間の多い構造となっている。発泡金属は、例えば、スラリー発泡法(粉末焼結法)等の公知手法を用いて、発泡部が三次元的に配置される三次元網目状構造を有する状態とすることが可能である。電気伝導性については、発泡金属であってもバルク状の金属と同様の電気伝導性を有するので、発泡金属を放電電極110として用いることができる。
発泡部112の大きさは、発泡金属を作製するときの条件によって調整することができ、通常は、直径10μmから1000μmまでの間の大きさに自由に設定することができる。放電電極110中に形成される発泡部112の大きさによって、金属部111の表面の曲率半径は、5μmから500μmの間の大きさとなる。
金属部111の表面は、曲率半径が100μm以下である部分を有する。金属部111の表面の曲率半径が100μm以下である部分では、発泡部112と金属部111との境界部113に形成される突起の曲率が大きくなる、すなわち、先端の曲率半径が小さい、鋭い突起114が形成されることになる。突起114の先端の曲率半径は、80μm程度となっている。
図4は、放電電極の内部を拡大して示す図である。
図4に示すように、放電電極110は、金属部111と発泡部112とが多数存在することによって、内部に三次元網目状の構造を有する。それぞれの発泡部112の周囲を満たす金属部111によって、非常に多くの突起114が三次元的に形成されている。
このように形成されている放電電極110を送風装置100(図1)に設置し、送風装置100を駆動して放電電極110に電圧を印加した場合、それぞれの突起114には、電界が集中しやすい。そのため、放電電極110の表面および内部に形成されている非常に多数の突起114のそれぞれが、放電現象の発生箇所となることができる。突起114は、従来のバルク状の固体金属をワイヤー型に形成した放電電極の表面よりも鋭く尖った形状を有するので、突起114に電界を容易に集中させることができ、低電圧で放電現象を発生させることができる。放電現象を低電圧で発生させることができるので、送風装置100は所定の風量をより低電圧で送風することができ、送風特性が向上する。
このように、送風装置100は、放電によってイオンを発生させる放電電極110と、放電電極110に対向する対向電極120とを備え、イオンを発生させることによりイオン風による気流を発生させる送風装置100であって、放電電極110は、複数の発泡部112と、隣接する複数の発泡部112の間を満たす金属部111とを含む発泡金属によって形成されている。
従来、放電電極としては、板型やワイヤー型に加工したバルク状の固体金属が用いられている。放電電極として、例えば、ワイヤー型の金属を用いる場合には、ワイヤーの最外周部に局所的に電界を集中させる必要がある。しかし、このようなバルク状の固体金属によって形成されている放電電極の表面や内部は、ほぼ均一な状態となっており、局所的に電界が集中するような部分が少ない。特に、直径が数ミリメートル程度のワイヤーを放電電極として用いる場合には、効果的な電界集中を得ることが難しい。
一方、発泡金属は、複数の発泡部112と、隣接する複数の発泡部112の間を満たす金属部111とを含むので、金属部111の表面の曲率半径は、放電電極110の全体の半径よりも小さく、曲率が大きくなるので、金属部111には電界が集中しやすい。また、発泡部112と金属部111との境界部113は、直線状にはならず、曲率を持った形状や、多数の突起114が形成されたような形状になる。このような、不均一な形状を有する金属部111と発泡部112との境界部113には、電界が集中しやすい。
また、例えば、隣接する発泡部112が連通している箇所が多数、存在する発泡金属においては、発泡部112の形状がいびつになる。そのため、発泡金属の表面や内部には、非常に多くの突起114が三次元的に形成される。発泡金属を放電電極110として用いることによって、これらの突起114に電界を容易に集中させることが可能となり、優れた送風特性を発揮させることが可能となる。
そこで、このように、発泡金属によって放電電極110を形成することによって、放電電極110に局所的に曲率半径の小さな部分を効果的に形成し、電界を容易に集中させることが可能になる。電界を容易に集中させることができるので、より低い電圧で放電現象が発生し、その結果、より低い電圧で送風を得ることができる。このようにして、送風を得るのに必要な印加電圧を低減することができるので、送風装置100の消費電力を低減することができ、また、安全性を向上させることができる。
このようにすることにより、簡単な構成で、送風特性を高めることが可能な送風装置100を提供することができる。
また、このように、送風装置100においては、金属部111の表面は、曲率半径が100μm以下である部分を有する。
このようにすることにより、曲率の大きな箇所、すなわち、曲率半径の小さな箇所において、電界を効果的に集中させることができ、印加電圧を低減することができる。
本発明の一つの効果として、送風装置の送風特性を向上させる効果がある。以下、本発明の送風装置について、送風特性を調べた実験結果について説明する。
本発明の一つの実施の形態の送風装置を用いて、以下の条件で送風特性を調べる実験を行なった。
対向電極については、ワイヤー直径0.1mmで25メッシュのステンレス製の網状電極を対向電極とした。本実施例では、平織りに編みこんだ形状の対向電極120を使用したが、他の方法として、フォトリソグラフィー法によるエッチング法や、メッキ法により形成することが可能である。
放電電極と対向電極の配置としては、放電電極と対向電極を、放電電極から対向電極までの距離が2mmとなるように配置した。放電電極と対向電極の固定方法については、図示しないが、針型電極と対向電極の配置が送風装置の駆動中にずれることを防ぐため、すなわち、送風装置を駆動しているときに放電電極と対向電極の距離が変わってしまうことを防ぐ為に、筺体としてのアクリル樹脂で固定した。
駆動電源としては、放電電極と対向電極の電圧印加方法として放電電極に正極性電圧もしくは負極性電圧を印加し、対向電極をGNDとするように直流電圧を印加した。駆動用電源としては、2台の直流高圧電源を用いた。負極性電圧を印加する電源として、松定プレシジョン株式会社製の直流高圧電源(型番:HEL−10R10)を用いた。正極性電圧を印加する電源としては、松定プレシジョン株式会社製の直流高圧電源(型番:HJPQ−10P3)を用いた。
送風装置の筺体としては、公知の部材を使用することが可能であるが、本発明においては、安価で加工が比較的容易であるアクリル樹脂板を用いて、放電電極と対向電極を固定した。アクリル樹脂板の板厚さを3mmとした。
送風装置から発生するイオン風を測定するための風速測定装置としては、日本カノマックス株式会社製のサーマル式風速計(型番:6543)を用いた。測定原理としては、公知手法であるが、加熱された風速測定センサー部に風があたり、熱が奪われたセンサー部の温度変化を補うために必要な電流量から風速を算出する方式となっている。なお、この実施例で用いた風速測定装置の測定可能範囲は0.05m/秒〜5.0m/秒であった。
これらの測定は全て一般的な空間で実施した。室温は、空気調和装置にて20℃に調節した。また、湿度に関しては、加熱方式を用いた加湿器を用いて30%RHから45%RHとなるように調整した。
上述の駆動電源と風速測定装置を用いて、この発明の一つの実施の形態の送風装置について、印加電圧と風速特性とを測定した。また、以下に示す比較形態の送風装置についても、この発明の実施の形態の送風装置について行なった条件と同じ条件で、送風特性を調べる実験を行なった。
(比較形態)
図5は、比較形態として送風装置を示す図である。図5の(A)は送風装置全体の概略を示す図、図5の(B)は送風装置の筐体の内部を矢印Bで示す方向から見た正面図を示す。
図5は、比較形態として送風装置を示す図である。図5の(A)は送風装置全体の概略を示す図、図5の(B)は送風装置の筐体の内部を矢印Bで示す方向から見た正面図を示す。
図6は、放電電極の全体(A、B)と、放電電極の一部(C、D)を示す図である。
図5に示すように、比較形態の送風装置8は、放電電極810と、対向電極820と、放電電極810と対向電極820とが配置される筐体801と、駆動回路部802とを備える。筐体801の下流端は開口し、メッシュ状の対向電極820が筐体801の開口部を覆うようにして配置されている。
図5と図6に示すように、放電電極810は、導電性線材として、発泡金属ではない、ステンレス鋼よって構成されたワイヤー型電極から構成されている。放電電極810は、スライドガラス804に固定されている。放電電極810は、対向電極820と平行になるように、放電電極810の両端においてエポキシ系接着剤803でスライドガラス804に固定されている。
図6の(C)に示すように、放電電極810としては、株式会社岩崎商店製のステンレスワイヤー線(SUS304)を用いた。ステンレス鋼線の直径として4mm、すなわち、半径が2mmのものを用いた。この放電電極810を、板厚が0.7mmのスライドガラス804上に、エポキシ系接着剤のアラルダイトにて、スライドガラス804と平行になるように固定した。放電電極810と対向電極820との距離が2mmとなるように配置した。
表1は、この発明の一つの実施形態と比較形態の送風装置の風速特性の結果を示す表である。
表1に示すように、この発明の一つの実施形態の送風装置100によって得られる風速は、印加電圧を5.5kVとした場合に、0.15m/秒であった。一方、比較形態の送風装置8によって得られる風速は、印加電圧を6.5kVとした場合に、0.10m/秒であった。このように、この発明の送風装置100では、比較形態の送風装置8よりも低い印加電圧で、高い風速を得ることができた。
図7は、比較形態の放電電極の一部を模式的に示す斜視図(A)と、放電電極の表面の拡大図(B)である。
図7の(A)と(B)に示すように、比較形態の放電電極810は、発泡金属でないステンレス鋼製のワイヤーによって作製されているので、表面や内部に発泡部が形成されていない。そのため、局所的な電界の集中が生じにくく、放電現象を発生させるために必要な印加電圧が大きくなり、送風を得るために必要な印加電圧も大きくなった。
このように、発泡金属によって形成されている放電電極を用いることによって、電極近傍の電場強度を効果的に高めて、発泡金属に含まれる突起が放電端として有効に作用することがわかった。このようにして、送風を得るのに必要な印加電圧を低減することができるので、送風装置の消費電力を低減することができ、また、安全性を向上させることができる。
以上に開示された実施の形態と実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考慮されるべきである。本発明の範囲は、以上の実施の形態と実施例ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての修正や変形を含むものである。
100:送風装置、110:放電電極、120:対向電極、111:金属部、112:発泡部。
Claims (2)
- 放電によってイオンを発生させる放電電極と、
前記放電電極に対向する対向電極とを備え、イオンを発生させることによりイオン風による気流を発生させる送風装置であって、
前記放電電極は、複数の発泡部と、隣接する前記複数の発泡部の間を満たす金属部とを含む発泡金属によって形成されている、送風装置。 - 前記金属部の表面は、曲率半径が100μm以下である部分を有する、請求項1に記載の送風装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007280833A JP2009110773A (ja) | 2007-10-29 | 2007-10-29 | 送風装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2007280833A JP2009110773A (ja) | 2007-10-29 | 2007-10-29 | 送風装置 |
Publications (1)
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JP2009110773A true JP2009110773A (ja) | 2009-05-21 |
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ID=40779045
Family Applications (1)
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Country | Link |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010284625A (ja) * | 2009-06-15 | 2010-12-24 | Mitsubishi Electric Corp | 静電霧化装置及び空気調和機 |
JP2012187584A (ja) * | 2012-05-24 | 2012-10-04 | Mitsubishi Electric Corp | 静電霧化装置及び空気調和機 |
JP2014049428A (ja) * | 2012-09-04 | 2014-03-17 | Tokyo Metropolitan Univ | プラズマアクチュエータ |
-
2007
- 2007-10-29 JP JP2007280833A patent/JP2009110773A/ja active Pending
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