JP2009108359A - 複層塗膜形成方法 - Google Patents

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岡本  聡
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Abstract

【課題】従来の煩雑かつ高コストの防錆化成処理工程(例えば、リン酸亜鉛処理工程など)を省略し、なおかつ、その代替として、従来の化成処理工程と同等もしくはそれ以上の優れた防錆性、密着性ならびに優れた塗膜外観を発現させることができ、さらに、経済性および環境保全性に優れた、電着塗装に適した下地防錆工程を含む複層塗膜形成方法の提供。
【解決手段】(a)希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を含む水溶液に未処理の金属基材を浸漬し、陰極電解により、該金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む電解膜を形成する工程、および
(b)工程(a)で電解膜が形成された金属基材を電着塗料に浸漬し、電着塗装を行うことにより電着塗膜を形成する工程
を包含する複層塗膜形成方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、未処理の金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む電解膜を形成する工程および電着塗装工程を含む複層塗膜形成方法および当該複層塗膜形成方法により得られる複層塗膜に関する。
自動車車体は、冷延鋼板、亜鉛メッキ鋼板等の金属基材の成形物を塗装し、組み立て等を行うことにより製品化されている。このような金属成形物は、まず下地電着塗膜に対する密着性等を付与するために、塗装工程の前処理段階で脱脂工程、表面調整工程、リン酸亜鉛処理工程等の防錆化成処理工程が行われていた。
従来のリン酸亜鉛処理等の防錆化成処理においては、充分な下地防錆効果を得るために、単位面積あたりの析出量を多くする必要があり、材料およびエネルギーの観点から不経済であった。さらに、スラッジが多く析出することから、環境保全に悪影響を与えるなど実用上の課題があった。
そこで、環境保全に配慮し、かつ経済的な下地防錆システムとして、従来の防錆化成処理を省略した代替法が提案されており、例えば、特開2000−64090号公報(特許文献1)には、水溶液中で、被処理金属を陰極として電解してなる金属の表面処理方法が開示されており、この表面処理方法は、前記水溶液が、イットリウム(Y)イオン、ネオジム(Nd)イオン及びプラセオジム(Pr)イオンからなる群より選択される少なくとも1種の希土類金属イオン、硫酸イオン、並びに、亜鉛イオンを、それぞれ0.05g/L以上含み、前記水溶液が、pH2〜7であり、得られる膜重量が約1g/m(実施例参照)であることを特徴とする。なお、上記希土類金属イオンと組み合わせて使用するイオンは、硫酸イオンおよび亜鉛イオンに限定されており、この表面処理方法において、希土類金属イオン、硫酸イオンおよび亜鉛イオンが必須構成要素である。しかし、この方法では、従来の防錆化成処理と同等以上の下地密着性を発現させ、かつ、電着塗装後における実用的な防錆性および耐食性、とりわけ、自動車用途の下地防錆性能を充分に発現する程には至っていない。また、硫酸イオンの代わりに硝酸イオンを使用すると、得られる膜の防錆性が劣ることが知られており、特に、硫酸イオンを必須の構成要素としている。
また、特開2000−226690号公報(特許文献2)には、無機化合物からなる結合剤の1種以上、さらに金属イオン供給物質(アルミニウム、クロム、モリブデン、タングステン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、セリウム、亜鉛、スズ、ニッケル、コバルト、銅のいずれかに由来するイオンの供給物質)の1種以上とからなるpH2〜11の水溶液中において、金属板に陰極処理または陽極処理を施し、金属板上にゾル状の水和酸化物、または金属板上にゾル状の水和酸化物と金属からなる膜を形成させた後、次いで水洗後または水洗せずにそのまま乾燥することを特徴とする、塗装下地用表面処理金属板の製造方法が開示されている。しかし、特許文献2では、金属イオン供給物質の1つとして亜鉛を用いており、亜鉛塩と希土類金属の塩との併用は開示されていない。
特開2003−082496号公報(特許文献3)には、電解液中で鋼板を陰極とした電解処理を行う表面処理鋼板の製造方法において、Al、Mn、Mg、Zn、Ca、Ceの中から選ばれる1種又は2種以上の金属カチオンを合計で0.001〜3mol/L、Pを含む酸素酸イオンをP換算で0.001〜3mol/L、酸化剤成分を0.001〜2mol/L含有し、かつPを含む酸素酸イオンのP換算モル濃度[A]と金属カチオンのモル濃度[B]の比[A]/[B]が0.5〜10である水溶液を前記電解液として用いることを特徴とする、耐食性に優れた表面処理鋼板の製造方法が開示されている。この方法で使用する酸化剤成分としては、硝酸イオン、亜硝酸イオン、塩素酸イオン、過塩素酸イオン、過マンガン酸イオン、臭素酸イオン、バナジン酸イオン、モリブデン酸イオンの中から1種または2種以上が選ばれる。しかし、特許文献3では、使用する金属カチオンがAl、Mn、Mg、Zn、CaおよびCeに限定されている。
特開2000−64090号公報 特開2000−226690号公報 特開2003−082496号公報
本発明は、従来の煩雑かつ高コストの防錆化成処理工程(例えば、リン酸亜鉛処理工程など)を省略し、なおかつ、その代替として、従来の化成処理工程と同等もしくはそれ以上の優れた防錆性、密着性ならびに優れた塗膜外観を発現させることができ、さらに、経済性および環境保全性に優れた、電着塗装に適した下地防錆工程を含む複層塗膜形成方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を含む水溶液に未処理の金属基材を浸漬し、陰極電解により、該金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む電解膜(本明細書中、金属複合層と称する場合もある)を形成することによって、金属基材に優れた防錆性を与えることができ、さらに、金属複合層が電着塗料との密着性に優れ、電着塗装に適していることを見出した。従って、本発明は以下を提供する。
(a)希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を含む水溶液に未処理の金属基材を浸漬し、陰極電解により、該金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む電解膜を形成する工程、および
(b)工程(a)で電解膜が形成された金属基材を電着塗料に浸漬し、電着塗装を行うことにより電着塗膜を形成する工程
を包含する複層塗膜形成方法。
前記電着塗料が、さらに、希土類金属の塩を含有する、上記の複層塗膜形成方法。
前記希土類金属が、亜鉛より沈殿pHの低い金属である、上記の複層塗膜形成方法。
前記希土類金属が、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)およびそれらの混合物から成る群から選択される、上記の複層塗膜形成方法。
工程(b)の後における電解膜の重量が20〜100mg/mであり、該電解膜における亜鉛/希土類金属の重量比が6/4〜9/1である、上記の複層塗膜形成方法。
上記の複層塗膜形成方法により得られる金属基材上に形成される電解膜および電着塗膜から成る複層塗膜。
本発明において、電解膜が希土類金属の濃度勾配を有することが好ましい。
詳細には、本発明は、金属基材上に形成される希土類金属および亜鉛を含む金属複合層、および該金属複合層上に形成される電着塗膜から成る複層塗膜であって、該金属複合層は希土類金属の濃度勾配を有し、金属基材の表面で希土類金属の濃度が最も高く、金属基材から離れるに従い希土類金属の濃度が低下する、複層塗膜に関する。
本発明の複層塗膜形成方法において希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を組み合わせて使用することによって、リン酸亜鉛処理工程などの従来の煩雑かつ高コストの防錆化成処理工程を省略することができ、なおかつ、従来の防錆化成処理工程と同等もしくはそれ以上の優れた防錆性ならびに密着性を未処理の金属基材に提供することができる。また、本発明によって、経済性および環境保全性に優れた複層塗膜形成方法および複層塗膜を提供することができる。また、本発明は、硫酸イオンを含まないことから、本発明での工程(a)における処理液の成分である硝酸イオンが次工程(b)での電着塗料に混入しても電着塗料に悪影響を与えないという利点がある。さらに、本発明の複層塗膜形成方法に含まれる工程(a)(前処理工程)は、未処理の金属基材に優れた密着性を提供することができるので、本発明は電着塗装に適した下地防錆工程を提供することができる。
本発明は、
工程(a):希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を含む水溶液に未処理の金属基材を浸漬し、陰極電解により、該金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む電解膜を形成する工程、および
工程(b):工程(a)で電解膜が形成された金属基材を電着塗料に浸漬し、電着塗装を行うことにより電着塗膜を形成する工程
を包含する複層塗膜形成方法に関し、以下、各工程を詳細に説明する。
工程(a)
本発明の工程(a)で用いる金属基材としては、例えば、冷延鋼板、高強度鋼、高張力鋼、鋳鉄、亜鉛および亜鉛メッキ鋼、アルミニウムおよびアルミニウム合金等が挙げられる。本発明では、未処理、すなわち、従来の一般的な表面調整工程および防錆化成処理工程などの前処理が施されておらず、一般的な脱脂工程後の上記金属基材を使用する。
本発明の工程(a)では、希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を含む水溶液(以下、「前処理剤水溶液」と称する場合もある)を用いる。
本発明で用いる希土類金属は、より具体的には、沈殿pHが亜鉛よりも低い希土類金属である。亜鉛の沈殿pHは酢酸亜鉛の場合7付近となるため、それよりも低い希土類金属、例えば、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)、およびそれらの混合物などが挙げられ、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)およびその混合物が好ましく、イッテルビウム(Yb)がさらに好ましい。
本発明において、沈殿pHが亜鉛よりも低い希土類金属を用いることによって、金属基材表面に希土類金属を優先的に沈殿させることができる。
なお、希土類金属の水酸化物における沈殿pHは、ランタノイド系列金属では、原子番号の増加に伴い低下することが知られている(文献:Y.Suzuki,T.Nagayama,M.Sekine,A.Mizuno,K.Yamaguchi,J.Less−Common Met 126,351(1986)参照)。
具体的には、希土類金属の硝酸塩の溶液中に0.1規定のKOH溶液を滴下するとpHが変化する。その際に滴定曲線を作成し、pHが変化する曲線部分に接線を引き、その接線が滴定曲線と接する点におけるpHを沈澱pHとする。
希土類金属の硝酸塩は、前処理剤水溶液に対して、0.005〜10%、好ましくは0.01〜5%、より好ましくは0.05〜1%(w/w)であり、0.005%未満では、電解膜の析出効率が低下するため、満足する電解膜が得られない等の問題の恐れがあり、10%を超過すると、経済的に好ましくない。
前処理剤水溶液に含まれる亜鉛塩としては、例えば、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、スルファミン酸亜鉛、ギ酸亜鉛、乳酸亜鉛、次亜リン酸亜鉛などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
亜鉛塩は、前処理剤水溶液に対して、0.005〜10%、好ましくは0.01〜5%、より好ましくは0.05〜1%(w/w)であり、0.005%未満では、電解膜の析出効率が低下するため、満足する電解膜が得られない等の問題の恐れがあり、10%を超過すると、経済的に好ましくない。
前処理剤水溶液に含まれる希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩の重量比は、10/1〜10/20、好ましくは10/2〜10/10、より好ましくは10/5〜10/10(希土類金属の硝酸塩/亜鉛塩)であり、重量比(希土類金属の硝酸塩/亜鉛塩)が、10/1を超過すると、亜鉛の複合化が不十分となるため、所望の性能が得られない等の問題の恐れがあり、10/20未満であると、希土類金属の複合化が不十分となるため、所望の性能が得られない等の問題の恐れがある。
前処理剤水溶液で使用する水としては、例えば、水道水、純水、蒸留水、脱イオン水、イオン交換水などが挙げられるが、特にこれらに限定されない。
上記希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を水に溶解、懸濁および/または分散させることによって、前処理剤水溶液を調製することができる。特に、添加順序に限定はない。
前処理剤水溶液のpHは2〜7、好ましくは4〜7、より好ましくは5〜6である。pHが2未満であると、電解時における水素ガス発生が激しくなるため、電解膜の析出効率が急激に低下してしまうとともに、析出塗膜の緻密性が低下してしまう等の問題の恐れがあり、pHが7を越えると、金属イオンの安定性が失われてしまうため、処理液中に金属水酸化物の沈殿が生じてしまう等の問題の恐れがある。
pHの調整に用いる薬品として、前処理剤水溶液のpHが所望のpHより高い場合、硝酸などの無機酸、あるいは、ギ酸、酢酸などの有機酸が挙げられ、所望のpHよりpHが低い場合、アミンなどの有機塩基、あるいは、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
本発明の工程(a)では、上記前処理剤水溶液に陰極として未処理の金属基材を浸漬し、電圧および電流を印加して陰極電解(電析)を行い、金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む電解膜を形成する。
陰極である金属基材の表面では溶存酸素や水素イオン、水等の化学種が還元を受け、水酸化物イオン(OH)が生成し、水酸化物イオンが金属表面近傍の希土類金属イオンおよび亜鉛イオンと反応することで、希土類金属および亜鉛の水酸化物の沈殿が生成し、金属表面に電解膜が析出する。
電圧および電流の印加方法としては、特に限定はないが、例えば、直流法などの方法が挙げられる。
印加電圧は、1〜20V、好ましくは2〜10V、より好ましくは3〜7Vである。印加電圧が、1V未満であると、上記金属水酸化物の析出が不充分となる等の問題の恐れがあり、20Vを超過すると、上記金属水酸化物の析出よりも、むしろ水の電気分解による水素ガスの発生が顕著化する等の問題の恐れがある。
通電時間(処理時間)は、特に限定はなく、5〜300秒、好ましくは10〜180秒、より好ましくは30〜120秒である。
処理時間が5秒より短い場合、電解膜は生成しないか、生成しても厚みが不足しているため耐食性が劣る。処理時間が300秒より長い場合、無光沢のヤケあるいはコゲと呼ばれる外観不良が発生する場合がある。また、過剰の処理時間は生産性を極端に低下させるので好ましくない。
電解後、必要に応じて、金属基材を水洗してもよい。
電解膜の重量[金属換算重量(全析出量)]は、20〜100mg/m、好ましくは20〜60mg/m、より好ましくは30〜50mg/mである。電解膜の重量が、20mg/m未満であると、電解膜の腐食抵抗値が低下してしまうため、電解膜および電着塗装後の耐食性低下を招いてしまう等の問題の恐れがあり、100mg/mを超過すると、電解膜の成膜性が低下することから、欠陥等の発生を招いてしまう等の問題の恐れがある。
電解膜における亜鉛/希土類金属の重量比[金属換算重量比]は、6/4〜9/1、好ましくは7/3〜9/1、より好ましくは8/2〜9/1である。重量比が、6/4未満であると、満足な耐食性が得られない等の問題の恐れがあり、9/1を超過しても、上記同様に満足な耐食性が得られない等の問題の恐れがある。
なお、上記の電解膜の重量および亜鉛/希土類金属の重量比は、後述の工程(b)の後、未硬化の電着塗膜を除去(例えば、未硬化の電着塗膜をそのまま水洗し、アセトンを用いて溶解除去)した後に残存する電解膜において、従来公知の蛍光X線測定を行い、電解膜の重量(金属換算重量)を定量することができる。なお、定量した希土類金属および亜鉛の各重量(金属換算重量)に基づいて、亜鉛/希土類金属の重量比を算出することができる。
工程(a)の電解膜は、従来の煩雑かつ高コストの防錆化成処理工程(例えば、リン酸亜鉛処理工程など)の代替として利用可能であり、経済性および環境保全性に優れ、従来の処理工程と同等もしくはそれ以上の優れた防錆性ならびに密着性を未処理の金属基材に与えることができる。
工程(b)
工程(b)で使用する電着塗料は、特に限定はなく、当業者に公知の電着塗料を使用することができ、例えば、電着塗料はカチオン基を有する基体樹脂、硬化剤および必要に応じて顔料を含む電着塗料が好ましい。
電着塗料に含まれるカチオン基を有する基体樹脂は、樹脂骨格中のオキシラン環を有機アミン化合物で変性して得られるカチオン変性エポキシ樹脂である。一般にカチオン変性エポキシ樹脂は、出発原料樹脂分子内のオキシラン環を1級アミン、2級アミンあるいは3級アミンおよび/またはその酸塩等のアミン類との反応によって開環して製造される。出発原料樹脂の典型例は、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の多環式フェノール化合物とエピクロルヒドリンとの反応生成物であるポリフェノールポリグリシジルエーテル型エポキシ樹脂である。また他の出発原料樹脂の例として、特開平5−306327号公報に記載のオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂を挙げることができる。これらのエポキシ樹脂は、ジイソシアネート化合物、またはジイソシアネート化合物のNCO基をメタノール、エタノール等の低級アルコールでブロックして得られたビスウレタン化合物と、エピクロルヒドリンとの反応によって得られるものである。
上記出発原料樹脂は、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、2官能性のポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ビスフェノール類、2塩基性カルボン酸等により鎖延長して用いることができる。
また同じく、アミン類によるオキシラン環の開環反応の前に、分子量またはアミン当量の調節、熱フロー性の改良等を目的として、一部のオキシラン環に対して2−エチルヘキサノール、ノニルフェノール、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルなどのモノヒドロキシ化合物を付加して用いることもできる。
オキシラン環を開環し、アミノ基を導入する際に使用し得るアミン類の例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミンなどの1級アミン、2級アミンまたは3級アミンおよび/もしくはその酸塩を挙げることができる。また、アミノエチルエタノールアミンメチルイソブチルケチミンなどのケチミンブロック1級アミノ基含有2級アミン、ジエチレントリアミンジケチミンも使用することができる。これらのアミン類は、全てのオキシラン環を開環させるために、オキシラン環に対して少なくとも当量で反応させる必要がある。
上記カチオン変性エポキシ樹脂の数平均分子量は1,500〜5,000、好ましくは1,600〜3,000の範囲である。数平均分子量が1,500未満の場合は、硬化形成塗膜の耐溶剤性および耐食性等の物性が劣ることがある。反対に5,000を超える場合は、樹脂溶液の粘度制御が難しく合成が困難なばかりか、得られた樹脂の乳化分散等の操作上ハンドリングが困難となることがある。さらに高粘度であるがゆえに加熱、硬化時のフロー性が悪く、塗膜外観を著しく損ねる場合がある。
上記カチオン変性エポキシ樹脂は、ヒドロキシル価が50〜250の範囲となるように分子設計することが好ましい。ヒドロキシル価が50未満では塗腹の硬化不良を招き、反対に250を超えると硬化後に塗膜中に過剰の水酸基が残存し、その結果、耐水性が低下することがある。
また、上記カチオン変性エポキシ樹脂は、アミン価が40〜150の範囲となるように分子設計することが好ましい。アミン価が40未満では下記で詳説する酸中和による水媒体中での乳化分散不良を招き、反対に150を超えると硬化後に塗膜中に過剰のアミノ基が残存し、その結果、耐水性が低下することがある。
電着塗料に含まれる硬化剤としては、加熱時に各樹脂成分を硬化させることが可能であれば、どのような種類のものでもよいが、その中でも電着塗料用途の硬化剤として好適なブロックポリイソシアネートが推奨される。上記ブロックポリイソシアネートの原料であるポリイソシアネートの例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(3量体を含む)、テトラメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイシシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)等の脂環式ポリイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートが挙げられる。これらを適当な封止剤でブロック化することにより、上記ブロックポリイソシアネートを得ることができる。
上記封止剤の例としては、n−ブタノール、n−ヘキシルアルコール、2−エチルヘキサノール、ラウリルアルコール、フェノールカルビノール、メチルフェニルカルビノール等の一価のアルキル(または芳香族)アルコール類;エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル等のセロソルブ類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールフェノール等のポリエーテル型両末端ジオール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール等のジオール類と、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸等のジカルボン酸類から得られるポリエステル型両末端ポリオール類;パラ−t−ブチルフェノール、クレゾール等のフェノール類;ジメチルケトオキシム、メチルエチルケトオキシム、メチルイソブチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類;およびε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムに代表されるラクタム類が好ましく用いられる。
上記ブロックポリイソシアネートは、封止剤の単独あるいは複数種の使用によってあらかじめブロック化しておくことが望まれる。ブロック化率については、前記の各樹脂成分と変性反応する目的がなければ、塗料の貯蔵安定性確保のためにも100%にしておくことが好ましい。
上記ブロックポリイソシアネートの前記カチオン基を有する基体樹脂に対する配合比は、硬化塗膜の利用目的などで必要とされる架橋度に応じて異なるが、塗膜物性や中塗り塗装適合性を考慮すると固形分量として、15〜40重量%の範囲が好ましい。この配合比が15重量%未満では塗膜硬化不良を招く結果、機械的強度などの塗膜物性が低くなることがあり、また、中塗り塗装時に塗料シンナーによって塗膜が侵されるなど外観不良を招く場合がある。一方、40重量%を超えると、逆に硬化過剰となって、耐衝撃性等の塗膜物性不良などを招くことがある。なお、ブロックポリイソシアネートは、塗膜物性、硬化度および硬化温度の調節等の都合により、複数種を組み合わせて使用してもよい。
カチオン基を有する前記基体樹脂は、樹脂中のアミノ基を適当量の塩酸、硝酸、次亜リン酸等の無機酸、またはギ酸、酢酸(無水酢酸、氷酢酸を含む)、乳酸、スルファミン酸、アセチルグリシン酸等の有機酸で中和処理し、カチオン化エマルションとして水中に乳化分散させることによって調製される。また、乳化分散する際には、通常、硬化剤をコアとし、基体樹脂をシェル(殼)として含むエマルション粒子を形成させる。
本発明の方法において用いられる電着塗料は、さらに顔料を配合してもよい。顔料としては、通常、塗料に使用されるものならば特に制限なく使用することができる。その例としては、カーボンブラック、二酸化チタン、グラファイト等の着色顔料、カオリン、珪酸アルミニウム(クレー)、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、また無機コロイド(シリカゾル、アルミナゾル、チタンゾル、ジルコニアゾルなど)等の体質顔料、リン酸系顔料(リンモリブデン酸アルミニウム、(ポリ)リン酸亜鉛、リン酸カルシウムなど)やモリブデン酸系顔料(リンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸亜鉛など)等の鉛フリー型防錆顔料が挙げられる。
これらの中でも、電着塗料に含まれる顔料として、特に重要なものは、二酸化チタン、カーボンブラック、珪酸アルミニウム(クレー)、シリカ、リンモリブデン酸アルミニウム、(ポリ)リン酸亜鉛である。とくに二酸化チタン、カーボンブラックは着色顔料として隠蔽性が高く、しかも安価であることから、電着塗膜用に最適である。
なお、上記顔料は単独で使用することもできるが、目的に合わせて複数種を使用するのが一般的である。
電着塗料への顔料の導入方法は、特に制限されるものではなく、例えば、顔料分散樹脂(例えば、エポキシ系スルホニウム塩型樹脂、エポキシ系4級アンモニウム塩型樹脂、エポキシ系3級アミン型樹脂、アクリル系4級アンモニウム塩型樹脂などが挙げられ、上記のカチオン基を有する基体樹脂を含んでいてもよい)中に予め顔料を分散させて顔料分散ペーストを作製し、それを電着塗料に配合することができる。
電着塗料中に含有される顔料(P)および樹脂固形分(V)の合計重量(P+V)に対する顔料(P)の重量比{P/(P+V)}×100%(以後、PWCと称する)が、5〜30重量%の範囲にあることが好ましい。上記重量比が5重量%未満では、顔料不足により塗膜に対する水、酸素などの腐食要因の遮断性が過度に低下し、実用レベルでの耐食性を発現できないことがある。ただし、そのような不都合を生じない場合は、顔料濃度を極力ゼロとし、クリア、もしくはクリアに近い電着塗料をなして本発明に給してもかまわない。また、上記重量比が30重量%を超えると、顔料過多により硬化時の粘性増大を招き、フロー性が低下して塗膜外観が著しく悪くなることがあるので注意を要する。ただし、上記樹脂固形分(V)とは、電着塗料の主樹脂である前記基体樹脂、および硬化剤の他、顔料分散樹脂をも含めた電着塗膜を構成する全樹脂バインダーの合計固形分量を示す。
さらに、工程(b)で使用する電着塗料は希土類金属の塩を含んでいてもよい。
希土類金属の塩は、電着工程の間、希土類金属イオンを生成し、この希土類金属イオンは、カチオン基を有する基体樹脂、硬化剤および任意の顔料よりも析出性が高いので、優先的に工程(a)で形成された電解膜上に析出し、工程(a)で形成された電解膜の隙間を埋め、複合化した緻密な連続性化成膜を形成することができる。
希土類金属の塩としては、好ましくは、希土類金属の有機酸塩および無機酸塩が挙げられ、例えば、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、乳酸、スルファミン酸など、好ましくは酢酸、ギ酸およびスルファミン酸)および無機酸(例えば、次亜リン酸、硝酸、硫酸など)から選択される少なくとも1種の酸と、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)およびそれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種の希土類金属とからなる塩が挙げられる。
電着塗料における希土類金属の塩の含有量(希土類金属換算)は、電着塗料全固形分重量に対して、0.005〜2.5%、好ましくは0.01〜1%、より好ましくは0.05〜1%(w/w)である。含有量が、0.005%未満であると、充分な下地密着性に基づく耐食性が得られない場合があり、2.5%を超過すると、電着塗料成分の分散安定性や電着塗膜の平滑性および耐水性が低下する場合がある。
電着塗料への希土類金属の塩の導入方法は、特に制限されるものではなく、通常の顔料分散法と同様にして行うことができる。例えば、分散用樹脂中に予め希土類金属の塩を分散させて分散ペーストを作製し、それを電着塗料に配合することができる。あるいは、塗料用樹脂エマルション作製後、または塗料作製後にそのまま分散あるいは溶解して配合することができる。なお、分散用樹脂としては、カチオン電着塗料用の一般的なもの(エポキシ系スルホニウム塩型樹脂、エポキシ系4級アンモニウム塩型樹脂、エポキシ系3級アミン型樹脂、アクリル系4級アンモニウム塩型樹脂など)が用いられる。
電着塗料は、全固形分量が5〜40重量%、好ましくは10〜25重量%の範囲となるように調整する。全固形分濃度の調節には水性媒体(水単独かまたは水と親水性有機溶剤との混合物)を用いる。
さらに、電着塗料中には少量の添加剤を導入してもよい。添加剤の例としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、界面活性剤、塗膜表面平滑剤、硬化触媒(例えば、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジベンゾエートおよびジオクチルスズジベンゾエートなどの有機スズ化合物)、硬化促進剤(例えば、酢酸亜鉛)などを挙げることができる。
電着塗装方法としては、特に限定はなく、当該分野で公知の方法を使用することができ、例えば、金属基材を陰極とした陰極電着塗装が好ましく、その場合、上記電着塗料の浴温を15〜35℃に維持しながら、印加電圧を50〜450V、好ましくは100〜400Vに設定することで、主に、希土類金属の塩からの析出物(存在しても、存在しなくてもよい)、電着塗料ビヒクルであるカチオン基を有する基体樹脂、硬化剤および顔料が優先的に析出する。上記印加電圧が50V未満では、電着塗料のビヒクル成分の析出性が不足し、また印加電圧が450Vを超えると、上記ビヒクル成分が適正量を超えて析出し、その結果、実用に耐えない膜外観を呈する恐れがあるので好ましくない。
通電時間(処理時間)は30〜300秒、好ましくは30〜180秒である。処理時間が30秒より短すぎる場合は、電着塗膜が生成しないか、生成しても厚みが不足しているために耐食性が劣る。また300秒を超える過剰の処理時間は生産性を極端に低下させるために好ましくない。
電着塗装後、120〜200℃、好ましくは140〜180℃にて硬化反応を行うことによって、高い架橋度の電着硬化塗膜を得ることができる。ただし、200℃を超えると、塗膜が過度に堅く、かつ脆くなり、一方、120℃未満では硬化が充分でなく、耐溶剤性や膜強度等の膜物性が低くなるので好ましくない。硬化時間は、好ましくは10〜30分である。
上述の工程(a)によって、金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む金属複合層(電解膜)を形成することができ、工程(b)によって、金属複合層上に電着塗膜を形成することができ、金属複合層および電着塗膜から成る複層塗膜を形成することができる。
本発明の工程(a)は陰極電解を利用するので、水の電気分解によって金属基材表面では電解液のpHが上昇し、沈殿pHの低い金属から優先的に沈殿が生成するものと考えられる。よって、亜鉛より沈殿pHの低い希土類金属を使用することによって、電解初期では希土類金属が優先的に析出し、電解時間が経過するに従ってpHが上昇し、亜鉛析出の比率が増加し、相対的に希土類金属の濃度が低下する。その結果、電解によって形成される金属複合層には希土類金属の濃度勾配が生じる。本発明の好ましい態様では、金属基材の表面において希土類金属の濃度が最も高く、金属基材から離れるに従い希土類金属の濃度が低下する。このように希土類金属の濃度勾配が形成されることによって、優れた防錆性を金属基材に付与することができる。また、本発明によって得られる防錆性は、リン酸亜鉛処理などの従来の防錆化成処理と同等もしくはそれ以上である。さらに、本発明によって得られる金属複合層は、電着塗膜に対する優れた密着性を提供することもでき、非常に有用である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。また、実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
製造例1(前処理剤水溶液の製造)
希土類金属塩および亜鉛塩をイオン交換水に溶解し、1000mlの前処理剤水溶液を調製した(表2〜6の溶液)。
製造例2(カチオン基を有する基体樹脂の製造)
撹拌機、デカンター、窒素導入管、温度計および滴下ロートを備え付けた反応容器に、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J、ダウケミカル社製)2400部とメタノール141部、メチルイソブチルケトン168部、ジブチルスズジラウレート0.5部を仕込み、40℃で撹拌し均一に溶解させた後、2,4−/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20重量比混合物)320部を30分間かけて滴下したところ発熱し、70℃まで上昇した。これにN,N−ジメチルベンジルアミン5部を加え、系内の温度を120℃まで昇温し、メタノールを留去しながらエポキシ当量が500になるまで120℃で3時間反応を続けた。さらに、メチルイソブチルケトン644部、ビスフェノールA341部、2−エチルヘキサン酸413部を加え、系内の温度を120℃に保持し、エポキシ当量が1070になるまで反応させた後、系内の温度が110℃になるまで冷却した。ついでジエチレントリアミンジケチミン(固形分73%のメチルイソブチルケトン溶液)241部とN−メチルエタノールアミン192部の混合物を添加し、110℃で1時間反応させることにより、カチオン変性エポキシ樹脂を得た。この樹脂の数平均分子量は2100、アミン価=74、ヒドロキシル価は160であった。また赤外吸収スペクトル等の測定から、樹脂中にオキサゾリドン環(吸収波数;1750cm−1)を有していることが確認された。
製造例3(電着塗料用硬化剤の製造)
撹拌機、窒素導入管、冷却管および温度計を備え付けた反応容器にイソホロンジイソシアネート222部を入れ、メチルイソブチルケトン56部で希釈した後、ジブチルスズジラウレート0.2部を加え、50℃まで昇温の後、メチルエチルケトオキシム17部を内容物温度が70℃を超えないように加えた。そして赤外吸収スペクトルによりイソシアネート残基の吸収が実質上消滅するまで70℃で1時間保温し、その後n−ブタノール43部で希釈することによって目的のブロックドイソシアネート硬化剤溶液(固形分70%)を得た。
製造例4(顔料分散樹脂の製造)
撹拌機、冷却管、窒素導入管、温度計を備えた反応容器にエポキシ当量198のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名エポン829、シェル化学社製)710部、ビスフェノールA289.6部を仕込んで、窒素雰囲気下150〜160℃で1時間反応させ、ついで120℃まで冷却後、2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)406.4部を加えた。反応混合物を110〜120℃で1時間保持した後、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル1584.1を加えた。そして85〜95℃に冷却して均一化させた。
上記反応物の製造と平行して、別の反応容器に2−エチルヘキサノール化ハーフブロック化トリレンジイソシアネートのメチルイソブチルケトン溶液(固形分95%)384部にN,N−ジメチルエタノールアミン104.6部を加えたものを80℃で1時間撹拌し、ついで75%乳酸水141.1部を仕込み、さらに、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル47.0部を混合、30分撹拌し、4級化剤(固形分85%)を製造しておいた。そしてこの4級化剤620.46部を先の反応物に加え酸価1になるまで混合物を85から95℃に保持し、顔料分散樹脂(平均分子量2200)の樹脂溶液(樹脂固形分56%)を得た。
製造例5(電着塗料用顔料分散ペーストの製造)
サンドミルを用いて、製造例4で得られた顔料分散樹脂を含む以下の表1に示す配合に基づき、得られた混合物を40℃において、粒度5μm以下となるまで分散し、調製して、顔料分散ペースト(固形分59%)を得た。
Figure 2009108359
製造例6(電着塗料の製造)
製造例2で得た基体樹脂350g(固形分)と、製造例3で得た硬化剤150g(固形分)とを混合し、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルを固形分に対して3%(15g)になるように添加した。次に氷酢酸を中和率40.5%になるように加えて中和し、イオン交換水を加えてゆっくり希釈し、次いで固形分が36%になるように減圧下でメチルイソブチルケトンを除去した。このようにして得られたエマルション2000gに、製造例5で得た顔料分散ペースト460.0gおよびイオン交換水2252gを添加し、樹脂固形分に対して固形分が20.0重量%の電着塗料を調製した。
希土類金属塩を水溶液の形態で上記で得られた電着塗料組成物に表2〜表6で示される濃度となるように直接添加し、以下の表2〜6に示す電着塗料を調製した。
(実施例1〜7および比較例1〜8)
製造例1記載の方法にて調製した表2〜6に示す各前処理剤水溶液に、陰極として表面未処理冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)をサーフクリーナーSC−53(日本ペイント社製)で脱脂、水洗したのち、同表に示す条件により電解処理した(乾燥膜厚約20nm)。その後、電解処理済の基材を純水にて充分に水洗し、次いで製造例6で調製した表2〜6に示す各電着塗料を同表の電着塗装条件で、電着塗装工程における電着塗膜の乾燥膜厚が20μmになるように電着塗装した後、170℃×20分で硬化し、塗膜を得た。電解膜の析出量については、電着塗装工程の後、未硬化の電着塗膜をアセトンにて溶解除去し、蛍光X線測定によって定量することにより求めた。ここでの蛍光X線測定の測定条件は、以下の条件で行った。
蛍光X線測定条件
(株)Rigaku製 走査型蛍光X線分析装置にて各測定元素の標準液(和光純薬工業株製)を用いて未処理鋼板上に所定量の標準液を滴下、乾燥させた試料により検量線を作成し、これに基づいて分析および定量を行った。
(比較例9)
表面未処理冷延鋼板(JIS G3141、SPCC−SD)をサーフダインSD−5000(日本ペイント社製)で処理したリン酸亜鉛処理鋼板を用いて、表6に示す電着塗料および電着塗装条件を用いて乾燥膜厚が20μmになるように電着塗装して電着塗膜を得た。
得られた複層塗膜について、塩水噴霧試験(SST:Salt Spray Test)および(Salt Dip Test(SDT))による防錆性、電解剥離試験による密着性、ならびに塗膜外観を評価し、その結果を以下の表2〜6に示す。各試験方法は以下の通りである。
(試験方法)
(1)防錆性評価:
塩水噴霧試験方法(Salt Spray Test(SST))
硬化後の電着塗装板に対してクロスカットを行い、JISZ2371に基づく塩水噴霧試験を1000時間行った後、テープ剥離を行い、カット部からの片側最大剥離幅にて防錆性を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:剥離幅3mm以下
○:剥離幅3mm〜4mm
△:剥離幅4mm〜6mm
×:剥離幅6mm以上
塩温水浸漬試験(Salt Dip Test(SDT))
硬化後の電着塗装板を5%食塩水中に50℃で900時間浸漬した後、電着塗装板全面に対してテープ剥離を行い、剥離面積率を求めた。
評価基準
◎:剥離面積率10%以下
○:剥離面積率30%以下
△:剥離面積率50%以下
×:剥離面積率50%以上
(2)密着性評価:電解剥離(カソード剥離)試験
硬化後の電着塗装板に対してカットを行い、0.1mAの電流値にて72時間電解後、テープ剥離を行い、その両側の剥離幅にて密着性を評価した。評価基準は以下の通りである。
評価基準
◎:剥離幅3mm以下
○:剥離幅3mm〜6mm
△:剥離幅6mm〜10mm
×:剥離幅10mm以上
(3)塗膜外観
目視にて塗膜外観における異常の有無を判断した。評価基準は以下の通りとした。
評価基準
○:問題なし
×:肌荒れ等の外観不良あり
(試験結果)
Figure 2009108359
Figure 2009108359
Figure 2009108359
Figure 2009108359
Figure 2009108359
*希土類金属の全析出量および亜鉛含有率は、工程(b)の後、未硬化の電着塗膜を除去した後に残存する電解膜の重量(mg/m)およびその中に含まれる亜鉛の重量%を意味する。
上記の結果から明らかなように、本発明の複層塗膜形成方法による複層塗膜(実施例1〜7)の防錆性、密着性および塗膜外観などの性能は、リン酸亜鉛処理鋼板上に形成された電着塗膜(比較例9)と同等もしくはそれ以上である。
また、比較例1〜8の複層塗膜は、いずれも、本願発明(実施例1〜7)の複層塗膜よりも性能が劣り、従来のリン酸亜鉛処理鋼板上に形成された電着塗膜(比較例9)よりも性能が低い。
元素分布
実施例6および比較例2の複層塗膜について、透過電子顕微鏡(TEM)による断面観察を行うとともに、エネルギー分散型X線分析(EDX)による元素分析を行い、複層塗膜における金属元素の分布を解析し、結果を図1〜4に示す。
実施例6の複層塗膜(Yb/Zn系)では、亜鉛よりも低い沈殿pHを有するYbを使用することによって、電解膜にYbの濃度勾配が形成され、金属基材表面からの距離が大きくなるに従って、Ybの濃度が徐々に低下する(図1および図2)。
一方、比較例2の複層塗膜(Nd/Zn系)では、亜鉛よりも高い沈殿pHを有するNdを使用しているので、電解膜におけるNdの濃度分布は、Ybの場合とは逆転し、金属基材表面付近では非常に少ない一方で、金属基材表面からの距離が大きくなるに従ってNd濃度が上昇する(図3および図4)。
従って、本願発明の複層塗膜は、亜鉛よりも低い沈殿pHを有する希土類金属を使用することによって、電解膜中に上記Yb/Zn系で見受けられるような希土類金属の濃度勾配を形成することができ、上記の表2〜6に示す優れた性能(防錆性、密着性および塗膜外観など)を発揮することができる。
本発明の複層塗膜形成方法において、亜鉛よりも低い沈殿pHを有する希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を組み合わせて使用して、電解膜中に希土類金属の濃度勾配を形成することによって、リン酸亜鉛処理工程などの従来の煩雑かつ高コストの防錆化成処理工程を省略することができ、なおかつ、従来の防錆化成処理工程と同等もしくはそれ以上の優れた防錆性および密着性ならびに優れた塗膜外観を未処理の金属基材に提供することができる。また、防錆化成処理工程の省略によるスラッジの低減や処理時間の短縮化によって、経済性および環境保全性に優れた複層塗膜形成方法および複層塗膜を提供することができる。さらに、本発明の複層塗膜形成方法に含まれる工程(a)は未処理の金属基材に優れた密着性を提供することができるので、本発明は電着塗装に適した下地防錆処理工程を簡便に提供することができる。
透過電子顕微鏡(TEM)による実施例6の複層塗膜(Yb/Zn系)の断面を示す図であり、上側の黒い部分は電着塗膜を示し、下側の白い部分は金属基材を示し、電着塗膜と金属基材との間に電解膜が形成されていることを示す。 実施例6の複層塗膜(Yb/Zn系)について、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて元素分析した結果を示すグラフであり、縦軸は金属の相対比率を示し、横軸は金属基材表面からの距離(nm)を示す。基板表面から約20nmの距離に電解膜と電着塗膜との境界が存在する。 透過電子顕微鏡(TEM)による比較例2の複層塗膜(Nd/Zn系)の断面を示す図であり、上側の黒い部分は電着塗膜を示し、下側の白い部分は金属基材を示し、電着塗膜と金属基材との間に電解膜が形成されていることを示す。 比較例2の複層塗膜(Nd/Zn系)について、エネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて元素分析した結果を示すグラフであり、縦軸は金属の相対比率を示し、横軸は金属基材表面からの距離(nm)を示す。基板表面から約20nmの距離に電解膜と電着塗膜との境界が存在する。
符号の説明
▲:亜鉛
■:希土類金属(図2において希土類金属はYbであり、図4において希土類金属はNdである)

Claims (8)

  1. (a)希土類金属の硝酸塩および亜鉛塩を含む水溶液に未処理の金属基材を浸漬し、陰極電解により、該金属基材上に希土類金属および亜鉛を含む電解膜を形成する工程、および
    (b)工程(a)で電解膜が形成された金属基材を電着塗料に浸漬し、電着塗装を行うことにより電着塗膜を形成する工程
    を包含する複層塗膜形成方法。
  2. 前記電着塗料が、さらに、希土類金属の塩を含有する、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  3. 前記希土類金属が、亜鉛より沈殿pHの低い金属である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  4. 前記希土類金属が、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)およびそれらの混合物から成る群から選択される、請求項3記載の複層塗膜形成方法。
  5. 工程(b)の後における電解膜の重量が20〜100mg/mであり、該電解膜における亜鉛/希土類金属の重量比が6/4〜9/1である、請求項1記載の複層塗膜形成方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載の複層塗膜形成方法により得られる金属基材上に形成される電解膜および電着塗膜から成る複層塗膜。
  7. 電解膜が希土類金属の濃度勾配を有する、請求項6記載の複層塗膜。
  8. 金属基材上に形成される希土類金属および亜鉛を含む金属複合層、および該金属複合層上に形成される電着塗膜から成る複層塗膜であって、該金属複合層は希土類金属の濃度勾配を有し、金属基材の表面で希土類金属の濃度が最も高く、金属基材から離れるに従い希土類金属の濃度が低下する、複層塗膜。
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