JP2009107970A - Nrf2活性化作用を有する化合物を有効成分として含むマクロファージの鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】マクロファージに鉄が異常蓄積する病態の予防又は改善に効果的な新規医薬品を提供すること。
【解決手段】Nrf2活性化作用を有する化合物を有効成分として含有するマクロファージの鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤、該発現増強剤を有効成分として含む貧血や機能的な鉄欠乏症の改善剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、NF-E2関連因子2(以下、「Nrf2」という)活性化作用を有する化合物を有効成分として含有する医薬品及び食品に関する。特に本発明は、Nrf2活性化作用を有する化合物を有効成分として含有する、マクロファージの鉄代謝を改善するための医薬品及び食品に関する。
鉄は全ての細胞に必須の微量金属で、哺乳類ではヘムの構成成分としてヘモグロビン、ミオグロビン、シトクロムなどヘム結合タンパク質に含まれる。これらヘム鉄は、ヘモグロビンの酸素運搬機能やシトクロムの酸化還元機能に不可欠であることは有名である。また、体内には直接タンパク質に結合する非ヘム鉄も存在し、血中で鉄を運搬するトランスフェリンなどが知られている。このように鉄は生体内で数多くの重要な働きを担っているが、状況によっては毒性に繋がるような性質も有している。例えば、中性pHの環境下ではFe2+からFe3+へ酸化され易く、不溶性の水酸化第二鉄となってしまう性質が挙げられる。また、過酸化水素と反応すると毒性の高いヒドロキシラジカルが生成し、核酸やタンパク質等を傷害して生体へむしろ悪影響を与えることも分かっている。そのため、生体内の鉄は、特定のタンパク質と結合するなどして毒性の無い可溶性の状態が保たれ、吸収、輸送、貯蔵などが適切に行われるよう巧妙に制御されている。哺乳類の鉄代謝と密接に関わる臓器としては、腸、肝、脾、赤血球、マクロファージなどが挙げられる。近年、これら臓器の鉄代謝が分子レベルで明らかとなり、さらに臓器間のバランスの制御機構についても知見が蓄積されつつある(非特許文献1及び2)。
健常な成人の体内には約3〜4gの鉄が存在しており、通常、約2/3は血液循環している赤血球のヘモグロビン中にあり、残りの大部分はフェリチンに結合して肝臓で貯蔵鉄として存在する。また、血中には体内での鉄輸送を担うトランスフェリンと結合した血清鉄も少量存在しており、骨髄における造血や鉄含有酵素などの産生に寄与している。これに対して、われわれが1日あたりの食事からの摂取量は僅か1〜2mg程度に過ぎず、消化管や皮膚の上皮から脱落して体外へ排出される量もほぼ同量であることから均衡が保たれている。したがって、長期的には食事からの鉄の摂取の影響を無視することはできないが、日々の鉄代謝では体内のターンオーバーが中核となっている。
なかでも最も注目すべきは、赤血球のターンオーバーの過程である。赤血球はヘモグロビンを細胞内に大量に含み、このヘモグロビンに肺で酸素を結合させ、血流に乗って体内の各組織へ酸素を運搬するという役割を果たしている。その寿命はラットで約60日、ヒトで約120日といわれており、毎日、全体の約1%が古いものから新しいものへと置き換わっている。赤血球は骨髄で造血幹細胞より作られており、赤芽球バースト形成細胞(burst-forming unit-erythroid:BFU-E)から好塩基性赤芽球(basophilic erythroblast:BasoEB)までの分化過程の前半では、赤血球増殖因子のエリスロポエチン(EPO)の刺激が不可欠である。EPOは腎臓で主として産生されており、赤血球数の低下によって酸素の運搬量が低下すると産生が増大して血中濃度が上昇し、酸素の運搬量が十分になると低下する。また、これに続くBasoEBから網赤血球までの後半の過程では、ヘモグロビンの合成や蓄積に利用される鉄が不可欠となる。この造血過程で利用される鉄の大部分は、老化したり損傷を受けたりした赤血球をマクロファージが細網内皮系で貪食、破壊、放出して供給されており、骨髄へ輸送された後、再利用されている。この赤血球のヘモグロビン生成に必要とされる鉄が1日あたり約25mgにも達する。
脾臓や肝臓などの細網内皮系でマクロファージが赤血球を貪食、破壊する過程に関しては未だ不明な点が多いが、現在、次のように推定されている。マクロファージにより貪食された赤血球の膜は細胞内で溶解され、ヘムはNADPH存在下でヘムオキシゲナーゼ-1(以下、「HO-1」と称する。)によりビリベルディン、一酸化窒素及び鉄に分解される(非特許文献3)。そして、この鉄は細胞表面に存在するトランスポーターのフェロポルチン1(以下、「FPN1」と称する)によって細胞外へ放出される。続いて、細胞外でフェロキシダーゼ活性をもつセルロプラスミンによってFe2+からFe3+へ変換された後、アポトランスフェリンへ渡され、トランスフェリンに結合する。さらに、このトランスフェリンは血中を移動し、骨髄でトランスフェリン受容体を細胞上に発現する赤芽球に取り込まれる。最終的に、鉄はミトコンドリアへ輸送され、ヘム生合成に利用される(非特許文献4)。
このような古くなった赤血球から新しい赤血球への鉄のターンオーバーが異常をきたすと疾患になることが知られている。例えば、腸細胞やマクロファージ細胞で鉄の放出に関わるFPN1では、遺伝子配列の変異により機能が低下する多型と亢進する多型との2種類の異常が知られている。鉄排出が低下してしまう多型では、マクロファージによる老化した赤血球からの鉄のリサイクルが滞り、鉄欠乏性による造血異常から軽度の貧血になる。逆に、鉄排出が亢進してしまう多型では、マクロファージや腸からの鉄排出が過剰となり、肝細胞などに異常な蓄積が起こり、ヘモクロマトーシスになる(非特許文献5〜7)。また近年、HIV及び病原菌の感染症、がん、自己免疫疾患、臓器移植後の拒絶反応、慢性腎疾患など幅広い炎症性の慢性疾患で高い頻度で認められる貧血(ACD: anemia of chronic disease)も、造血時の鉄の動態の異常が大きな要因となっていることが明らかとなってきた。すなわち、細網内皮系のマクロファージで異常に鉄が蓄積され、赤血球前駆細胞への鉄供給が低下し(機能的鉄欠乏)、造血におけるヘモグロビン生合成が阻害されて貧血が引き起こされるというものである。この場合、炎症によって産生されるIL-6やIFNγなどのサイトカインが肝臓のヘプシジン産生を増大させるなどして、マクロファージのFPN1を介した鉄排出機能を抑制することが大きく影響している。また、これらのサイトカインには、赤血球に損傷を与えて寿命を低下させ、マクロファージへの貪食を増加させる作用や、腎臓からのEPO産生や赤血球前駆細胞のEPO受容体の発現量を低下させて赤芽球の増殖や分化を阻害する作用も知られている(非特許文献8及び9)。
ACDは不良な予後と密接に関係しており、QOL(quality of life)の観点からも冠動脈疾患、肺疾患、慢性腎疾患、がんなどを合併する高齢者で治療の必要性が高い。透析患者における治療の有効性は複数報告されており有益と考えられるが、一般的には認知度が低く、安全で効果的な治療方法は未だ確立されていない。
ところで、近年、我々が生体内に保有している酸化ストレスからの防御機構や生体異物の解毒機構が明らかとなってきた。これらの機構では、通常、Keap1(Kelch-like ECH-associated protein 1)と複合体を形成して細胞質に存在するNrf2が、活性化物質の作用により核内へ移行し、一連の第二相酵素の発現を誘導させることが重要である。第二相酵素としては、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、NAD(P)H:キノン酸化還元酵素1(NQO1)、グルタメートシステインリガーゼ(GCL)、ヘムオキシゲナーゼ-1(HO-1)、チオレドキシン還元酵素1(TXNRD1)等が知られており、Nrf2は小Mafタンパク質とヘテロ二量体を形成し、これら遺伝子のプロモーター上に存在する抗酸化剤応答配列(ARE)に結合して発現増加させると考えられている(非特許文献10)。
一般的に、酸化ストレスを軽減することは各種の慢性疾患(動脈硬化、糖尿病、脳神経変性疾患、皮膚疾患、眼疾患、喘息など)の予防や進行の遅延に有用であると言われている(非特許文献11)。そして、Nrf2の活性化物質として有名なブロッコリーなどアブラナ科の野菜に含まれるスルフォラファンでは、高血圧(非特許文献12)、加齢性黄斑変性症(非特許文献13)、発がん(非特許文献14及び15)などの予防、改善効果が既に示されている。
しかし、これまでに、Nrf2活性化剤がマクロファージにおいて一連の鉄代謝関連遺伝子の発現を協調的に増加させ、鉄放出を促進したり、感染防御能を向上したりする作用は知られていない。
Cell 117 285-97 (2004) Clin. Chem. 52 950-68 (2006) FASEB J 2 2557-68 (1988) Annu. Rev. Nutr. 24 105-31 (2004) Nature 403 776-81 (2000) Cell Metab. 1 191-200 (2005) Clin. Chem. 52 950-68 (2006) N Engl. J. Med. 352 1011-23 (2005) Hematology Am. So.c Hematol. Educ. Program 507 29-35 (2006) Annu Rev Pharmacol Toxicol. 43:233-60 (2003) Biomed Pharmacother.57 251-60 (2003) Proc Natl Acad Sci U S A. 101 7094-9 (2004) Proc Natl Acad Sci U S A. 101 10446-51 (2004) Proc Natl Acad Sci U S A. 89 2399-403 (1994) Carcinogenesis. 21 2287-91(2000)
現在、ACDのうち、慢性腎疾患の患者の薬物治療では、一般的にrHuEPO(遺伝子組み換えヒトエリスロポエチン)が用いられている。また化学療法中のがん患者、骨髄抑制療法中のHIV患者等に対して、欧米ではrHuEPOが承認され用いられている。しかし、rHuEPOを投与しても改善が不十分なrHuEPO治療抵抗性の患者が存在し、その一因が鉄欠乏であることが分かっている。そのため、rHuEPOによる治療前に鉄欠乏の可能性を確認することが推奨されている。造血ではEPOと鉄の両方が不可欠であるため、鉄が欠乏していればrHuEPO投与だけで貧血は改善できない。特に、腎性貧血を合併する透析患者では、僅かな鉄の欠乏が直ちに貧血の悪化として顕著に現れることが知られている。これは、透析操作や検査による失血、消化管出血の合併症、鉄を含む食品や鉄の吸収を促進する食品の摂取不足、鉄吸収を抑制する薬剤の服用、rHuEPO投与による造血亢進による鉄不足、など鉄を欠乏する要因が多いためである。また、透析患者は感染症や慢性疾患の併発によりACDに陥ることが珍しくなく、機能的鉄欠乏の改善は大きな課題となっている。
貧血を伴う炎症性腸疾患やリウマチなどごく一部のACDでは、非経口の鉄剤投与が効果的との報告がある。しかし、これには感染症、組織障害、血管内皮機能低下、急性心血管系イベント等のリスクを増大させる欠点が知られており、十分安全な治療方法にはなってない。また、ACDでは腸管の鉄吸収能力が低下し、吸収されたごく一部の鉄も細網内皮系へ輸送されてしまうため、鉄剤の経口投与も実質的な効果が期待できない。これらのことから、現在、ACDの場合には鉄剤による治療は基本的に推奨されていない。
ACDの治療では、輸血もしばしば用いられており、重度あるいは生命を脅かす貧血の場合には効果的である。しかし、輸血には予期せぬウイルス感染、多臓器不全や鉄過剰症の危険性が指摘されており、免疫機能に対する影響もあるため、長期的な治療方法としてはあまり適していない。
以上のように、今のところACDには有力な治療薬や治療方法が無いため、一般的にはACDの原因となっている慢性疾患の治療が優先されている。しかし、期待通りの治療成績を上げられない場合も多く、機能的鉄欠乏の改善薬や改善食品など新たな治療薬や機能性食品が強く望まれている(非特許文献8)。
本発明者らは今般、Nrf2活性化剤がマクロファージにおける鉄代謝関連遺伝子の発現を増強することを見出した。また本発明者らは、このようなNrf2活性化剤の性質に基づき、Nrf2活性化剤は、潜在的に、老化した赤血球の分解から鉄の排出までの連動的亢進や病原微生物の増殖抑制に有効であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づくものである。
すなわち、本発明は以下の特徴を包含する:
(1) Nrf2活性化作用を有する化合物を有効成分として含有するマクロファージの鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤。
(2) 鉄代謝関連遺伝子は自然抵抗性関連マクロファージタンパク質1(Nramp1)及び/又はフェロポルチン1(FPN1)をコードする遺伝子であることを特徴とする上記(1)記載の発現増強剤。
(3) Nrf2活性化作用を有する化合物は、oltipraz(4-メチル-5-[2-ピラジニル]-1,2-ジチオール-3-チオン)、アセタミノフェン、アスピリン、フルナリジン、α-ルミノール一ナトリウム(Galavit)、アポモルフィン、ブシラミン、エブセレン、デルタメトリン、2-インドール-3-イル-メチレンキヌクリジン-3-オール、4-ヒドロキシエストラジオール、3',4',5',3,4,5-ヘキサメトキシ-カルコン、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエン-28-酸、1-[2-シアノ-3-,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエノ-28-イル]イミダゾール、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、3-ヒドロキシアントラニル酸、ビス(2-ヒドロキシベンジリデン)アセトン、2',4',6'-トリス(メトキシメトキシ)カルコン、15-デオキシ-Δ(12,14)-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、ニトロ-リノール酸、スルフォラファン、フェネチルイソチオシアネート、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-HITC)、イソフムロン、イソコフムロン、キサントフモル、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(エトキシキン)、カフェストール 、カウェオール、クロロゲン酸、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、カルノソール、ゼルンボン、レスベラトロール、リコピン、硫化ジアリル、α-リポ酸、アセチルカルニチン、ルテオリン、3-O-カフェオイル-1-メチルキナ酸、エピガロカテキン-3-ガレート、ケルセチン、ケルセチン3-O-β-L-アラビノピラノシド、ケルセチン3-O-β-D-グルコピラノシド、4-アセチル-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、4-(1-ヒドロキシ-エチル)-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、5-ヒドロキシ-3, 4, 5-トリメチル-5-H-フラン-2-オン、酢酸1-(4-メチル-5-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3-イル)-エチルエステル、(5-エチル-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-酢酸、2-フェニル-ピラン-4-オン、ジヒドロ-4-フェニル-2(3H)-フラノン、2-(2-ホルミルピロール-1-イル)-4-メチル吉草酸よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、上記(1)記載の発現増強剤。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発現増強剤を有効成分として含有する、マクロファージが貯蔵する鉄の放出促進剤。
(5) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発現増強剤を有効成分として含有する炎症性鉄欠乏症改善剤。
(6) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発現増強剤を有効成分として含有する機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤。
(7) 赤血球造血刺激製剤(ESA)をさらに含有する上記(6)記載の機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤。
(8) ESAはEPO、ダルベポエチンアルファ、若しくはこれらの誘導体である上記(7)記載の機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤。
(9) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発現増強剤を有効成分として含有する、炎症又は慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease)の改善剤。
(10) 赤血球造血刺激製剤(ESA)をさらに含有する上記(9)記載の炎症又は慢性疾患に伴う貧血の改善剤。
(11) ESAはEPO、ダルベポエチンアルファ、若しくはこれらの誘導体である上記(10)記載の炎症又は慢性疾患に伴う貧血の改善剤。
(12) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の発現増強剤を有効成分として含有する、マクロファージ中で増殖する感染性微生物及びウイルスの増殖抑制剤。
(13) 微生物はサルモネラ(Salmonella)属細菌、マイコバクテリア(Mycobacterium)属細菌、又はリーシュマニア(Leishmania)属寄生虫、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)であることを特徴とする上記(12)記載の増殖抑制剤。
(14) 抗生物質をさらに含む上記(12)又は(13)記載の増殖抑制剤。
(15) 抗生物質は、第三世代セフェム系抗生物質又はニューキノロン系抗生物質である上記(14)記載の増殖抑制剤。
本発明の鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤によれば、鉄代謝関連遺伝子の発現の増強により、マクロファージが貯蔵する鉄の放出を促進することができるため、機能的鉄欠乏を改善することができる。したがって、本発明の鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤は、マクロファージに鉄が異常蓄積する病態の予防又は改善効果を有するため、機能的鉄欠乏による貧血の改善剤として有効である。
また本発明の鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤は、鉄代謝関連遺伝子発現の増強による結果、感染性微生物及びウイルスの増殖抑制効果を有するため、感染症の予防または治療剤として有効である。
本発明は、Nrf2活性化作用を有する化合物を有効成分として含有する鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤に関する。
本明細書で使用する「Nrf2」とは、哺乳類に存在する塩基性ロイシンジッパー(basic leucine zipper)モチーフを有する転写因子の1つで、NF-E2関連因子2、Nuclear factor erhythroid 2-related factor 2、 Nuclear factor erythroid 2-like 2 (Nfe2l2)、Nuclear factor erhythroid 2-related transcription factor 2などと称されるものである(Proc Natl Acad Sci U S A. 91 9926-30 (1994); Biochem Biophys Res Commun. 209 40-6 (1995); 生化学 78 79-92 (2006))。Nrf2は幅広い臓器に発現し、通常、Keap1タンパク質と結合して細胞質に存在するが、親電子物質や酸化ストレスの刺激によって核内へ移行し、小Mafタンパク質とヘテロ二量体を形成して解毒や抗酸化に関連する遺伝子群の発現を誘導する。この転写活性化で、Nrf2の複合体は標的遺伝子群のプロモーター領域に共通して存在する抗酸化剤応答配列(ARE)に結合する。これまでに、Nrf2欠損マウスの解析などから、Nrf2の活性化は、発がん、肝障害、肺障害、炎症などの抑制に寄与していることが示唆されている(生化学 78 79-92 (2006))。
本願明細書中で使用する「Nrf2活性化作用を有する化合物」は、「Nrf2活性化剤」とも称し、転写因子Nrf2を活性化する作用を有するものであれば特に制限されない。
例えば、Nrf2活性化剤として以下の食品成分又は医薬関連成分が知られる:
食品成分
スルフォラファン(J Nutr. 131 (Suppl 11) 3027S-33S (2001))、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)(Toxicol. Appl. Pharmacol. 141 59-67 (1996))、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)(Mol Carcinog. 45 841-50 (2006)、Biochem Soc Trans. 28 (2000)、Toxicol. Appl. Pharmacol. 126, 150-55 (1994))、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(エトキシキン)(Biochem Soc Trans. 28 (2000))、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-HITC) (J.Biol.Chem. 277 3456-63 (2002))、カフェストール (Food Chem Toxicol. 40 1155-63 (2002))、カウェオール(kahweol)(Food Chem Toxicol. 40 1155-63 (2002))、クルクミン(Biochem J. 371 887-95 (2003)、Am J Physiol Endocrinol Metab. 293 E645-55 (2007))、デメトキシクルクミン(Am J Physiol Endocrinol Metab. 293 E645-55 (2007))、ビスデメトキシクルクミン(Am J Physiol Endocrinol Metab. in press (2007))、ピペリン(J Nutr Biochem. 18 615-22 (2007))、フェネチルイソチオシアネート(Pharm Res. 20 1351-6 (2003))、カルノソール(carnosol)(J Biol Chem. 279 8919-29 (2004))、ゼルンボン(zerumbone)(FEBS Lett. 572 245-50 (2004))、レスベラトロール(Biochem Biophys Res Commun. 331 993-1000 (2005))、リコピン(Mol Cancer Ther. 4 177-86 (2005))、硫化ジアリル(Free Radic Biol Med. 37 1578-90 (2004)、Arch Biochem Biophys. 432 252-60 (2004))、三硫化ジアリル(Free Radic Biol Med. 37 1578-90 (2004))、キサントフモル(Chem Res Toxicol. 18 1296-305 (2005))、3-O-カフェオイル-1-メチルキナ酸(methylquinic acid)(Free Radic Biol Med. 40 1349-61 (2006))、クロロゲン酸(J Biol Chem. 280 27888-95 (2005))、α-リポ酸(Proc Natl Acad Sci U S A. 101 3381-6 (2004))、アセチルカルニチン(J Neurosci Res. 79 509-21 (2005))、アヴィシンス(avicins)(J Clin Invest. 113 65-73 (2004))、フィセチン(fisetin)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、ルテオリン(luteolin)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、エリオジクチオール(eriodictyol)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、ガランギン(galangin)(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006))、エピガロカテキン-3-ガレート(Pharm Res. 22 1805-20 (2005))、ケルセチン(Invest Ophthalmol Vis Sci. 47 3164-77 (2006)、Free Radic Biol Med. 42 1690-703 (2007))、ケルセチン3-O-β-L-アラビノピラノシド(Food Chem Toxicol. 44 1299-307 (2006))、ケルセチン3-O-β-D-グルコピラノシド(Food Chem Toxicol. 44 1299-307 (2006))、1,2,3,4,6-ペンタ-O-ガロイル-β-D-グルコース(World J Gastroenterol. 12 214-21 (2006))、アクテオシド(Pharmazie. 61 356-8 (2006))、イソフムロン(PCT/JP2005/019415)、イソコフムロン(PCT/JP2005/019415)、4-アセチル-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、4-(1-ヒドロキシ-エチル)-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、5-ヒドロキシ-3, 4, 5-トリメチル-5-H-フラン-2-オン、酢酸1-(4-メチル-5-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3-イル)-エチルエステル、(5-エチル-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-酢酸、2-フェニル-ピラン-4-オン、ジヒドロ-4-フェニル-2(3H)-フラノン、2-(2-ホルミルピロール-1-イル)-4-メチル吉草酸(特願2007-043783)、デヒドロコスタスラクトン(Eur J Pharmacol. 565 37-44 (2007))、トリフロレトールA(triphlorethol-A)(FEBS Lett. 581 2000-8 (2007))。
医薬関連成分
oltipraz(4-メチル-5-[2-ピラジニル]-1,2-ジチオール-3-チオン)(Proc Natl Acad Sci USA 98 3410-5 (2001))、アセタミノフェン(Hepatology 39 1267-76 (2004))、アスピリン(Carcinogenesis 27, 803-10(2006))、フルナリジン(Cell Death Differ. 13 1763-75(2006))、α-ルミノール一ナトリウム(Galavit)(J Virol. 80(9):4557-69 (2006))、アポモルフィン(J Neurosci Res. 84 860-6.(2006))、ブシラミン(Biochem Pharmacol. 72 455-62 (2006))、エブセレン(Chem Res Toxicol. 19 1196-204 (2004))、デルタメトリン(Toxicol Lett. 171 87-98 (2007)、15-デオキシ-Δ(12,14)-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)(J Biol Chem. 275 11291-9 (2000))、4-ヒドロキシ-2-ノネナール(Circ Res. 94 609-16 (2004))、2-インドール-3-イル-メチレンキヌクリジン-3-オール(Cancer Res. 63 5636-45 (2003))、4-ヒドロキシエストラジオール(Biochim Biophys Acta. 1629 92-101 (2003))、3',4',5',3,4,5-ヘキサメトキシ-カルコン(Br J Pharmacol. 142 1191-9 (2004))、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエン-28-酸(Cancer Res. 65 4789-98 (2005))、1-[2-シアノ-3-,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエノ-28-イル]イミダゾール(Cancer Res. 65 4789-98 (2005))、α-メチレン-γ-ブチロラクトン(Eur J Pharmacol. 565 37-44 (2007))、ニトロ-リノール酸(Am J Physiol Heart Circ Physiol. 293 H770-6 (2007))、3-ヒドロキシアントラニル酸(Atherosclerosis. 187 274-84 (2006))、ビス(2-ヒドロキシベンジリデン)アセトン(Cancer Lett. 245 341-9 (2007))、2',4',6'-トリス(メトキシメトキシ)カルコン(Biochem Pharmacol. 74 870-80 (2007))。
本発明の発現増強剤は、上記のようなNrf2活性化剤の1種以上を有効成分として含有せしめることができる。
本発明の鉄代謝関連遺伝子は、古くなった赤血球から新しい赤血球への鉄のターンオーバーに関与するタンパク質をコードする遺伝子を指す。このようなタンパク質としては、例えば鉄の細胞外放出に関与するFPN1、NADPH存在下で鉄分解に関与するHO-1、ファゴソームやリソソームに存在して鉄やマンガンを排出する自然抵抗性関連マクロファージタンパク質1(以下、「Nramp1」と称する)などを挙げることができる。
本発明の発現増強剤は、有効成分としてのNrf2活性化剤の他、鉄代謝関連遺伝子の増強効果を阻害しない限りにおいて、乳糖、マルチトール、ソルビトール、デキストリン、グルコース、果糖、スクラロース、ショ糖、異性化糖、パラチノース、トレハロース、キシロース、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット、還元水飴、還元麦芽糖水飴、アスパルテーム、ソーマチン、アセスルファムK、ステビアなどの甘味料;セルロース、微結晶セルロース、リン酸カルシウム、乳糖、糖、トウモロコシデンプン、ソルビトール、グリシンなどの充填剤;クエン酸、クエン酸ナトリウム、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、コハク酸などのpH調整剤;果糖、麦芽デキストリン、麦芽糖、メントール、はっか油、オレンジ油、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、ユーカリ油、サリチル酸メチル、バニラ抽出物、ガーリック油、アセト酢酸エチル、アニスアルデヒド、エチルバニリン、桂皮酸、酢酸シトロネリル、シトラール、バニリン、酢酸ブチル、エステル類などの香料;メチルセルロース、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、エチルセルロース、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、乳糖、白糖などの結合剤;エリソルビン酸、L-アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、トコフェロール、ルチンなどの抗酸化剤;硝酸カリウム、L−アスコルビン酸、硫酸第一鉄、亜硝酸ナトリウムなどの発色剤;ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、硬化油、モノステアリン酸グリセリン、タルク、カオリン、ショ糖脂肪酸エステル、セタノール、糖類(乳糖、マンニトール等)、ポリエチレングリコール、ポリソルベート、酸化チタン、ベンガラなどのコーティング助剤、滅菌水などの他の成分を含んでもよい。
本発明の発現増強剤は、1種以上の上記鉄代謝関連遺伝子の発現を増強することができる。事実、代表的なNrf2活性化剤である15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)、ジエチルマレイン酸(DEM)、スルフォラファン(Sul)又はブナハリタケエキス(Bun)を野生型マウス由来のマクロファージに作用させると、FPN1及びNramp1の遺伝子発現が増加するが、このような変化はNrf2を欠損したマウス由来のマクロファージでは検出できないことがわかった(下記実施例1及び4参照)。このように、FPN1及びNramp1遺伝子の発現上昇は、Nrf2活性化剤に共通した作用であり、Nrf2を欠損することにより作用が消失することから、Nrf2の活性化を介した作用であることが立証された。
またNrf2活性化剤により、鉄代謝関連遺伝子、特にFPN1とHO-1とが速やかに発現増加すること(下記実施例2及び3参照)、及び実際にマクロファージ系細胞からの鉄放出の亢進が認められること(下記実施例5参照)から、本発明の発現増強剤は、鉄代謝関連遺伝子の発現の増強を介して、マクロファージからの鉄の放出を促進することができる。
一方、Nramp1は、その遺伝子に変異が生じて機能が失われると、マイコバクテリア(Mycobacterium)、サルモネラ(Salmonella)、リーシュマニア(Leishmania)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染性が増大することが知られている(J. Leukoc. Biol. 77 868-877 (2005)、Clinical Science 110 503-524 (2006))。これはNramp1がマクロファージのファゴソームやリソソームに存在して鉄やマンガンを排出し、これら微生物が利用できる鉄を制限して増殖を抑制する役割を果たしているためと考えられている(J. Biol. Chem. 281 31677-31688 (2006))。マイコバクテリアによって引き起こされる結核に関しては、細網内皮系に鉄の蓄積が起きているヒトでリスクが高く、治療成績が悪いことを示唆する報告もある(J. Infect. Dis. 195 1745-53 (2007))。また、サルモネラの増殖に関しては、マクロファージのFPN1も関係しており、その発現量が増加すると抑制されることが分かっている(Infect. Immun. 74 3065-7 (2006))。これらの事実から、本発明の発現増強剤は、Nramp1及びFPN1を含む鉄代謝関連遺伝子の発現を増強することができるため(下記実施例1参照)、病原菌の感染予防、並びに治療成績及び予後の改善にも有効と考えられる。
したがって、本発明の発現増強剤は、マクロファージが貯蔵する鉄の放出促進剤、炎症性鉄欠乏症改善剤、炎症又は慢性疾患に伴う貧血(ACD)の改善剤、機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤、マクロファージ中の感染性微生物及びウイルスの増殖抑制剤などの医薬品として提供することができる。
本発明の発現増強剤が、機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤又はACD改善剤として提供される場合には、1種以上の赤血球造血刺激製剤(「ESA」とも称する)をさらに含むように製剤化するか、あるいは別個に製剤化して組合せ医薬の形態にすることができる。本発明において、ESAは、赤血球の産生を促進するエリスロポエチン様作用を有する化合物の総称を指し、Nrf2活性化剤をESAと併用することにより、より良好な貧血改善効果が期待できる。本発明に使用できるESAとしては、例えば再生不良性貧血患者の尿から抽出して得られた天然のヒトEPO(J. Biol. Chem., 252:5558(1977))、ヒトEPOのアミノ酸配列に対応するRNAを採取し、そのmRNAを利用して組換えcDNAを作製し、適当な宿主(例えば、大腸菌、酵母、植物細胞、動物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、ヒト株化細胞など)で産生される遺伝子組み換え技術により製造されたもの(例えば、特許第2140052号に記載されたヒトEPO)などである。このような組換え型ヒトEPOは、日本では、エスポー(登録商標)(エポエチンアルファ、キリンファーマ)、エポジン(エポエチンベータ、中外製薬)、欧米ではEPOGEN・PROCRIT・EPREX(エポエチンアルファ、AMGEN・J&J)、Neorecormon(エポエチンベータ、ロシュ)、DYNEPO(エポエチンデルタ)等様々な製造業者から市販されており、これら市販のrHuEPOを使用してもよい。
また本発明では、ESAとして、ダルベポエチンアルファ(特許第2938572号等に記載)などのヒトエリスロポエチン変異体を使用することもできる。
このような変異体は、ヒトエリスロポエチンの成熟アミノ酸配列中のある特定のアミノ酸残基をアスパラギン(Asn)残基及び/又はセリン(Ser)もしくはトレオニン(Thr)残基に置換し、これによってN結合型及びO結合型炭水化物鎖の数を増加させたものである。特に、ダルベポエチンアルファは、ヒトEPOのアミノ酸残基30及び88番目に2つの追加のN-結合炭水化物鎖を含み、より長い血清半減期とより高いin vivo生物活性とを有する。ダルベポエチンアルファのようなヒトエリスロポエチン変異体は、例えば特許第2938572号公報に記載されるような部位特異的突然変異誘発によって製造することができる。このようなヒトエリスロポエチン変異体は、例えば、日本ではネスプ(登録商標)(ダルベポエチンアルファ、キリンファーマ)、欧米ではARANESP(登録商標)(Darbepoetin alfa、Amgen, Inc.)、として市販されており、これら市販のヒトエリスロポエチン変異体を使用してもよい。
上記のようなヒトエリスロポエチン変異体の例として、例えば非限定的に以下のものを挙げることができる:
[Ser87Asn88Thr90]EPO
[Val87Asn88Thr90]EPO
[Ser87Asn88Thr90Ala162]EPO
[Asn30Thr32Val87Asn88Thr90]EPO
[Asn30Thr32]EPO
[Asn51Thr53]EPO
[Asn57Thr59]EPO
[Ser68Asn69Thr71]EPO
[Ser87Asn88Gly89Thr90]EPO
[Asn89Ile90Thr91]EPO
[Thr125]EPO
本発明においては、ESAとして、EPOやEPO変異体(例えばダルベポエチンアルファなど)の誘導体、例えば化学修飾体(例えば「PEG化体」であってWO 2000/03372、WO 2002/49673に記載される)、低分子EPOアゴニスト(例えば、Domlingら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 17 (2007) 379-384;H.F. Bunn, BLOOD, 1 February 2007, Volume 109, Number 3, 868-873に記載される)、融合によるEPOの二量体又は三量体(例えば、WO 1999/02710に記載される)、EPOと他のタンパク質との融合タンパク質などの誘導体(例えば、WO 1995/21197、WO 2002/048194、WO 2003/46013に記載される)などを使用することができる。更に、擬エリスロポエチン、プロリルヒドロキシラーゼ酵素阻害剤であるHIF安定化剤などをこの目的のために使用することもできる。
本発明のACD改善剤におけるESAの含有量は、ESAの種類、適用疾患、患者の年齢、性別又は体重、症状の重篤度、投与経路などに応じて当業者が適宜設定することができる。例えばESAとしてヒトEPOを使用する場合に、ヒトEPOの含有量は、典型的には、成人1人当たり50〜500,000IU、好ましくは500〜50,000IUのヒトEPOが投与される量とすることができる。ここで、IUとは、赤血球産生単位であり、当該技術分野で一般的に使用される定義と同じである。
本発明の発現増強剤が感染性微生物及びウイルスの増殖抑制剤として提供される場合には、例えばサルモネラ(Salmonella)属細菌、マイコバクテリア(Mycobacterium)属細菌、リーシュマニア(Leishmania)属寄生虫、又はヒト免疫不全ウイルス(HIV)の増殖抑制に効果的である。特に、サルモネラ属細菌に対して本発明の増殖抑制剤を適用することが好ましい。この場合、本発明の増殖抑制剤は抗生物質をさらに含むことができる。使用できる抗生物質としては、例えば第三世代セフェム系抗生物質、ニューキノロン系抗生物質を挙げることができるが、これに限定されるものではない。また本発明の増殖抑制剤における抗生物質の含有量は、適用疾患、患者の年齢又は体重、症状の重篤度などに応じて当業者が適宜設定することができる。典型的には、約60kgの成人に対し、1日当たり50〜16000mg、好ましくは100〜8000mg、より好ましくは200〜4000mgの抗生物質が投与される量とすることができる。
本発明が上記のように医薬品として提供される場合、本発明の発現増強剤は薬学上許容される担体と共に含んでなる医薬品として提供することができる。
本発明の医薬品は、経口投与又は非経口投与(例えば、静注、筋注、皮下投与、腹腔内投与、直腸投与、経粘膜投与など)で、ヒト又はヒト以外の動物に投与することができる。また、投与経路に応じて適当な剤形とすることができる。具体的には顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、シロップ剤、乳剤、懸濁剤、静注、筋注用の注射剤、点滴剤、外用剤、坐剤などの各種製剤形態に調製することができる。
これらの各種製剤は、通常用いられている賦形剤、増量剤、結合剤、浸潤剤、崩壊剤、表面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐剤、着色料、香味剤、及び安定化剤などを用いて常法により製造することができる。
賦形剤としては、例えば、乳糖、果糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット及び結晶セルロース、滅菌水、エタノール、グリセロール、生理食塩水、緩衝液などが、崩壊剤としては、例えば澱粉、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリン、炭酸マグネシウム及び合成ケイ酸マグネシウムなどが、結合剤としては、例えばメチルセルロース又はその塩、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース及びポリビニルピロリドンなどが、滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール及び硬化植物油などが、安定化剤としては、例えばアルギニン、ヒスチジン、リジン、メチオニンなどのアミノ酸、ヒト血清アルブミン、ゼラチン、デキストラン40、メチルセルロース、亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどが、その他の添加剤としては、シロップ、ワセリン、グリセリン、エタノール、プロピレングリコール、クエン酸、塩化ナトリウム、亜硝酸ソーダ及びリン酸ナトリウムなどがそれぞれ挙げられる。
本発明の上記医薬品の投与量は、適用疾患、患者の年齢、性別又は体重、症状の重篤度、投与経路など、様々な要因により変化する。典型的には、体重約60kgの成人に対し、1日当たり0.25〜1000mg、好ましくは1〜250mg、より好ましくは5〜50mgのNrf2活性化剤が投与される量である。前記投与量は1日1回又は複数回で投与することができる。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されないことは言うまでもない。
実施例1 マクロファージにおける医薬関連成分によるNrf2依存的FPN1及びNramp1遺伝子の発現上昇
Nrf2は15-デオキシ-Δ12,14-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)及びジエチルマレイン酸(DEM)により活性化することが知られている。野生型及びNrf2遺伝子欠損マウスより骨髄由来マクロファージ(BMDM)を採取し、これらの活性化剤により鉄排出タンパク質のFPN1やNramp1遺伝子の発現がNrf2依存的に上昇するかを調べた。
C57BL/6を遺伝的背景に持つ野生型あるいはNrf2遺伝子欠損マウス(Biochem Biophys Res Commun. 236(2) 313-322(1997))の骨髄を取り出し、そこから骨髄細胞を取り出した。10%牛胎仔血清(FBS、BioWest社製)、2mM グルタミン(和光純薬社製)、15mM Hepes(同仁化学研究所製)、0.02%重炭酸ナトリウム(和光純薬社製)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100単位/ml、100μg/ml、インビトロジェン社製)を含むD-MEM培地(シグマ社製)で完全D-MEM培地を調製し、250mlフラスコに1x107cells/mlで播種した後、37℃、5%C02条件下で一晩培養した。接着した細胞を除いた後、2.5x106cell/mlでディッシュに播種し、8%LCCM(M-CSFとしてL929細胞の培養上清)を含有する完全D-MEM培地で37℃、5%C02条件下で一週間培養し、単球をマクロファージへ分化させた。各サンプルに15d-PGJ2(CaymenChemical社製)又はDEM(和光純薬社製)をそれぞれ10μM、100μMで添加し、24時間後にQuickGene SP Kit RNA cultured cell HG(富士フィルム社製)によりRNAを抽出した。1μgのトータルRNAを用いてTranscriptor First Strand cDNA Synthesis kit(ロシュ社製)によりcDNAを合成した。このcDNAを使用して半定量的PCRによりFPN1遺伝子及びNramp1遺伝子の発現量を調べた。内在性コントロールとしてβ-アクチン遺伝子の発現量を測定した。FPN1のセンス及びアンチセンスプライマーとして、5’-ACAAACACGGGGAGAACGC-3’(配列番号1)及び5’-ATGACGGACACATTCTGAACCA-3’(配列番号2)、Nramp1のセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして5’-TTCTACTATGACCGGCAC-3’(配列番号3)及び5’-AAGTAACCTATTGCGAAC-3’(配列番号4)、β-アクチンのセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして、5’-ATGGATGACGATATCGCT-3’(配列番号5)及び5’-ATGAGGTAGTCTGTCAGGT-3’(配列番号6)を用いた。プライマーは全てインビトロジェン社で合成した。
図1に示したように,15d-PGJ2及びDEMのいずれのNrf2活性化剤においても、野生型ではFPN1及びNramp1の発現が上昇したが、Nrf2遺伝子欠損ではいずれの発現も上昇しなかった。これらの結果から、Nrf2の活性化によりマクロファージのFPN1及びNramp1の発現が増大されることが示された。
実施例2 医薬品関連成分によるFPN1、HO-1、Nramp1遺伝子発現誘導の経時的解析
上記実施例1の実験により、マクロファージにおいてFPN1やNramp1がNrf2依存的に発現することがわかった。そこで、これら遺伝子の発現誘導を経時的に調べた。また同様に、鉄代謝に関連するタンパク質としてHO-1、フェリチン重鎖(Ferritin Heavy Chain)、フェリチン軽鎖(Ferritin Light Chain)の遺伝子発現誘導も解析した。
6ウェルプレートに3×105 cells/ wellとなるようにマウス由来マクロファージ系細胞J774.1細胞(理化学研究所)を播種して、10%FBS(BioWest社製)、ペニシリン-ストレプトマイシン(それぞれ100単位/ml、100μg/ml、インビトロジェン社製)を含有するD-MEM培地(シグマ社製)で37℃、5%CO2条件下24時間培養した。さらに、終濃度100μMとなるようDEMを加え、0、6、12、24時間それぞれ培養した。一定時間後、QuickGene SP kit RNA cultuered cell HG(富士フィルム社製)を用いてトータルRNAを抽出した。抽出した1μgのトータルRNAからTranscriptor First Strand cDNA Synthesis kit(ロシュ社製)を用いてcDNAを合成し、qPCR-Master Mix(Eurogentec社製)、Chromo 4TM Real-Time PCR Detection System(BioRad社製)、SYBR(登録商標) Premix Ex TaqTM II(Perfect Real Time)(タカラバイオ社製)のいずれかを使用して各種遺伝子のmRNA発現量を定量した。各遺伝子の発現量はハウスキーピング遺伝子18s ribosomal RNA(Applied Biosystems社製)の発現量で補正し、相対発現量を算出した(n=3、平均±標準誤差)。遺伝子発現解析に使用したオリゴヌクレオチドは、FPN1遺伝子のセンス及びアンチセンスプライマー、蛍光標識プローブとして5’-AACAGGAGCAGATTAGCAGACATG-3’(配列番号7)及び5’-CCAAATGTCATAATCTGGCCG-3’(配列番号8)、5’Cy5-CAACATCCTGGCCCCCATGGC-3’BHQ3(配列番号9)、HO-1遺伝子のセンス及びアンチセンスプライマー、蛍光標識プローブとして5’-GTGATGGAGCGTCCACAGC-3’(配列番号10)及び5’-TTGGTGGCCTCCTTCAAGG-3’(配列番号11)、蛍光標識プローブとして5’FAM-CGACAGCATGCCCCAGGATTTGTC-3’TAMRA(配列番号12)、フェリチン重鎖遺伝子のセンス及びアンチセンスプライマー、蛍光標識プローブとして5’-CGGGCCTCCTACACCTACCT-3’(配列番号13)及び5’-TTCTCCTCGGCCAATTCG-3’(配列番号14)、5’Cy5-CTGCAGAACCAGCGAGGTGGCC-3’BHQ3(配列番号15)、フェリチン軽鎖遺伝子のセンス及びアンチセンスプライマー、蛍光標識プローブとして5’-AGAGGGAGCATGCCGAGAA-3’(配列番号16)及び5’-GCTCTCCCAGTCATCACGGT-3’(配列番号17)、5’cy5-TCTGGAGGGCGTAGGCCACTTCTTC-3’BHQ3(配列番号18)で、プライマーは全てインビトロジェン社で、蛍光標識プローブは全て日本バイオサービス社で合成した。またNramp1遺伝子の発現解析には、上記配列番号3及び配列番号4を用いた。
図2に示したように、Nrf2活性化剤によりFPN1、HO-1、Nramp1の遺伝子は6時間後に高い発現レベルとなった。但し、前二者はそれ以降で発現レベルが低下傾向を示したのに対し、Nramp1は24時間後まで発現が増大した。一方、フェリチン軽鎖とフェリチン重鎖遺伝子は6時間後では明確な発現上昇を示さなかった。
以上の結果から、Nrf2活性化剤はマクロファージ細胞の鉄代謝に関連する遺伝子として、FPN1、HO-1、Nramp1をいずれも比較的早期から発現上昇させることが明らかとなった。また、これらタンパク質に関して知られている機能から、Nrf2活性化剤は老化した赤血球の分解から鉄の排出までを速やかに連動して亢進させることが示唆された。
実施例3 食品成分スルフォラファンによるFPN1、GCLC、HO-1、Nramp1遺伝子発現誘導の経時的解析
Nrf2は、ブロッコリー等由来のスルフォラファン(Sul)によって活性化することが知られている。そこで、野生型マウスより腹腔マクロファージを採取し、食品成分であるSulによる鉄代謝およびNrf2の標的遺伝子の発現変化を経時的に調べた。
C57BL/6野生型マウスに4%チオグリコレート (DIFCO Laboratories社製) 2 mlを腹腔注射し、4日後に腹腔マクロファージを採取した。10%牛胎児血清 (FBS、ハイクローン社製)、ペニシリン-ストレプトマイシン (100単位/ml、100μg/ml、シグマ社製)を含むRPMI1640培地 (シグマ社製)で完全RPMI1640培地を調製した。35 mmディッシュに2.0x106cells/mlで播種した後、37℃、5% CO2条件下で一時間培養した。接着しなかった細胞を除いた後、R,S-Sul (LKT Laboratories 社製) を3.3μM含む新しい培地1mlを添加して培養し、0、2、4、8、20時間後に細胞を回収した。TRIzol (インビトロジェン社製)を用いてtotal RNAを調製し、RNeasy Mini キット (キアゲン社製)を用いて精製した。更に、精製されたtotal RNA 1μgからThermo Script RT-PCRシステム(インビトロジェン社製)を用いてcDNAを合成し、このcDNAを用いてFastStart DNA Master SYBR Green I (ロシュ社製) 及びライトサイクラー(ロシュ社製) を使用して各種遺伝子のmRNA発現量を定量した。各種遺伝子の発現量はハウスキーピング遺伝子P0の発現量で補正し、相対発現量を算出した。
遺伝子発現解析に使用したDNAプライマーは、グルタメートシステインリガーゼ触媒サブユニット(Glutamate cysteine ligase catalytic subunit(GCLC))のセンス及びアンチセンスプライマーとして、5’-tctgcaaaggcggcaacgctgt-3’ (配列番号19)、および5’-gcatcgggtgtccacatcaacttcc-3’ (配列番号20)、FPN1のセンス及びアンチセンスプライマーとして、5’-tcaggggctgagtggatccatcctt-3’ (配列番号21)、および5’-tccaaggggcttccaggcatga-3’ (配列番号22)、Nramp1のセンス及びアンチセンスプライマーとして、5’-gagtttgccaacggccggatga-3’ (配列番号23)、および5’-cgatgcaacaggtccaggccagat-3’ (配列番号24)、HO-1のセンス及びアンチセンスプライマーとして、5’-tgcacgccagccacacagcactat-3’ (配列番号25)、および5’-acttggtggggctgtcgatgttcg-3’ (配列番号26)、ハウスキーピング遺伝子の酸性リボソームリン酸タンパク質P0のセンス及びアンチセンスプライマーとして、5’-gcgtcctggcattgtctgtg-3’ (配列番号27)、および5’-tcctcatctgattcctccgactc-3’ (配列番号28)、を使用した。プライマーは全てインビトロジェン社で合成した。
図3に示したように、Sulは、FPN1、Nramp1、GCLC、HO-1の全ての遺伝子発現を4時間後には顕著に上昇させた。但し、Nramp1が20時間後までさらに発現が増加したのに対し、他は20時間後には低下した。これらの結果は実施例2で認められたDEMによる変化とよく似ており、安全性の高い食品成分によっても、マクロファージに対する作用を期待できることが明らかとなった。
実施例4 食品成分によるFPN1、GCLC遺伝子の発現上昇
実施例3において、Nrf2を活性化する食品成分であるSulがFPN1等の発現を上昇させることが明らかとなった。そこで、この発現誘導がNrf2依存的であるかを調べた。また同時に、Nrf2を活性化する別の食品成分であるブナハリタケエキス(Bun)による作用も評価した。
実施例3と同様に、野生型マウス(C57BL/6)及びNrf2遺伝子欠損マウスより腹腔マクロファージを調製し、各種遺伝子の発現量を解析した (n=3、平均値±標準偏差)。SulとBunは、それぞれ終濃度3.3μM、400μg/mlとなるように添加し、8時間作用させた。なお、Bunは特願2007-043783に記載の方法で調製した。
図4に示したように、SulとBunは野生型マウスのマクロファージのFPN1とGCLCの遺伝子発現を有意に上昇させた。しかし、Nrf2欠損マウスのマクロファージでは、野生型とは異なり、発現上昇は認められなかった。これらの結果から、食品成分のSulとBunは、いずれもNrf2の活性化を介してFPN1やGCLCの発現を上昇させることが確認された。
実施例5 Nrf2活性化によるマクロファージの細胞外への鉄排出促進
哺乳動物においてFPN1は細胞内から細胞外へ鉄を排出する唯一のトランスポーターとして知られている。上記実施例においてNrf2活性化剤により,マクロファージにおける鉄代謝関連遺伝子群の発現増大が示されたため、次に鉄の細胞外への排出が実際に増大するかを調べた。
12穴プレートに1x106cells/wellでJ774.1を播種し、10%FBS(BioWest社製)、ペニシリン-ストレプトマイシン(100単位/ml、100ug/ml、インビトロジェン社製)を含有するRPMI-1640培地(シグマ社製)で37℃、5%C02条件下で一晩培養した。アイソトープラベルした50μg/ml鉄-トランスフェリン(59Fe-Tf、それぞれGEヘルスケア社製、シグマ社製)を加え、さらに4時間培養し細胞内に取り込ませた。細胞をPBSで洗浄し、新しい培地に非アイソトープラベルの50μg/ml鉄-トランスフェリン及び終濃度100μMとなるようDEMを加えて、さらに37℃、5%C02条件下で24時間培養した。そして、培養液を回収した後、細胞を2%SDS溶液で破砕、回収した。培養液中及び細胞内の59Fe量はガンマカウンター(アロカ社製)により測定した。鉄排出率は以下の式により算出した:
鉄の排出率=
(培養液中の59Fe量(cpm))/(細胞内59Fe量(cpm)+培養液中59Fe量(cpm))×100(%)
さらに、FPN1の依存性を調べるために、FPN1を分解するヘプシジン(HEPC:ペプチド研究所製)を700nM存在させた条件下で、DEMによる鉄放出率を同様に測定した。
図5に示すように、DEM添加により、定常状態では22.42%の鉄放出率が29.47%まで上昇した。一方、ヘプシジン添加条件下では、定常状態の鉄放出率は9.96%まで顕著に低下した。DEMをさらに添加した場合には、11.61%まで鉄放出率は上昇したが有意な変化ではなかった。これらの結果より、Nrf2活性化はマクロファージからの鉄排出を実際に亢進させることが明らかとなった。また、この作用はFPN1の機能亢進に強く依存していることが示唆された。
実施例6 ヒト末梢血由来マクロファージにおけるFPN1およびHO-1遺伝子の発現誘導
Theurlら(Blood,107,4142-4148,(2006))は、ヒトにおいて慢性疾患に伴う貧血(ACD)が、マクロファージからの鉄再利用の崩壊が引き金となっている可能性を示している。また、ACDではインターフェロンγやLPSによる炎症性刺激がマクロファージのFPN1の発現低下を引き起こすことも報告されている(Blood,101,4148-4854,(2003))。そこで、マクロファージや単球において炎症によって低下したFPN1の発現を回復できれば、鉄代謝異常に起因する慢性貧血の治療に繋がると考え、以下の実験を行った。
Nycoprep(AXIS-SHIELD社製)を用いて、60mlの血液よりヒト末梢血由来単核球細胞(PBMC)を単離し、25nMリコンビナントM-CSF(R&D Systems社製)、10%FBS(BioWwest社製)、ペニシリン-ストレプトマイシン(それぞれ100単位/ml、100μg/ml、インビトロジェン社製)を含有するRPMI-1640培地(シグマ社製)で37℃、5%CO2条件下で7日間培養し、マクロファージ細胞へ分化させた。培地交換後、100μM DEM(終濃度)を添加し、0、6、12、24時間それぞれ培養した。あるいは、100μM DEM(終濃度)と10μg/ml リポポリサッカライド(LPS、シグマ社製)(終濃度)を加え24時間培養した。培養終了後、total RNAをRNeasy Mini Plus(QIAGEN社製)にて抽出、精製した。得られたうちの1μgのtotal RNAからTranscriptor First Strand cDNA Synthesis kit(ロシュ社製)を用いてcDNAを合成し、qPCR-Master Mix(Eurogentec社製)及びChromo 4TM Real-Time PCR Detection System(BioRad社製)を使用して各種遺伝子のmRNA発現量を定量した。各遺伝子の発現量はハウスキーピング遺伝子18s ribosomal RNA(Applied Biosystems社製)の発現量で補正し、相対発現量を算出した(n=3、平均±標準誤差)。遺伝子発現解析に使用したDNAプライマーは、FPN1遺伝子のセンス及びアンチセンスプライマー、蛍光標識プローブとして5’-TTGGCCGACTACCTGACCTC-3’(配列番号29)及び5’-CCAGCCCGTAGACTGCTGTC-3’(配列番号30)、5’Cy5-AGATCGGATGTGGCACTTTGCGGT-3’BHQ3(配列番号31)、HO-1遺伝子のセンス及びアンチセンスプライマー,蛍光標識プローブとして5’-CCAGCAACAAAGTGCAAGATTC-3’(配列番号32)及び5’-TCACATGGCATAAAGCCCTACAG-3’(配列番号33)、蛍光標識プローブとして5’FAM-TCTCCGATGGGTCCTTACATCAGCTTTCT-3’TAMRA(配列番号34)で、プライマーは全てインビトロジェン社で、蛍光標識プローブは全て日本バイオサービス社で合成した。
図6に示したように、Nrf2活性化剤はヒト由来マクロファージにおいてもFPN1及びHO-1遺伝子の発現を誘導した。この結果を上記実施例の結果と合わせて考えると、Nrf2活性化剤の作用はヒトを含め幅広い哺乳類のマクロファージに作用して鉄の排出を促進するものと結論できる。
さらに、LPSを用いて細菌感染による炎症状態を擬似的に惹起させた条件下の変化も解析した。LPSによってFPN1遺伝子の発現は有意に低下したが、Nrf2活性化剤を同時に添加することによりLPS単独よりも2.5倍FPN1の発現は上昇し、LPS無添加の正常なレベルにまで回復した。また、HO-1遺伝子ではLPSによる発現低下は検出されなかったが、Nrf2活性化剤により正常時と同等以上の誘導が観察された。以上の結果から、Nrf2活性化剤は炎症によるFPN1の発現低下を改善し、マクロファージにおける鉄の蓄積を効果的に抑制するものと考えられる。また、HO-1の発現変化から、炎症状態においても老化した赤血球からのヘモグロビン分解を促進できるものと思われる。
本発明は、貧血や機能的鉄の欠乏症の改善のために、治療において有効に使用できる。
図1は、実施例1における、Nrf2活性化剤による野生型及びNrf2遺伝子欠損マウス由来のマクロファージにおけるFPN1及びNramp1遺伝子の発現変化を示す。 図2は、実施例2における、Nrf2活性化剤によるFPN1、HO-1、フェリチン重鎖、フェリチン軽鎖の遺伝子発現の変化を定量的に示す。 図3は、実施例3における、食品成分スルフォラファン(Sul)によるFPN1、GCLC、HO-1、Nramp1の経時的な遺伝子発現の変化を定量的に示す。 図4は、実施例4における、食品成分による野生型及びNrf2遺伝子欠損マウス由来のマクロファージにおけるFPN1及びGCLC遺伝子の発現変化を示す。図中の*は危険率1%以下を示している。 図5は、実施例5におけるNrf2活性化剤のマクロファージからの鉄放出に対する影響を示す。図中の*は危険率1%以下を示している。 図6は、実施例6における、Nrf2活性化剤のヒト由来マクロファージに対する影響を示す。図中の*は危険率1%以下を示している。

Claims (15)

  1. Nrf2活性化作用を有する化合物を有効成分として含有するマクロファージの鉄代謝関連遺伝子の発現増強剤。
  2. 鉄代謝関連遺伝子は自然抵抗性関連マクロファージタンパク質1(Nramp1)及び/又はフェロポルチン1(FPN1)をコードする遺伝子であることを特徴とする請求項1記載の発現増強剤。
  3. Nrf2活性化作用を有する化合物は、oltipraz(4-メチル-5-[2-ピラジニル]-1,2-ジチオール-3-チオン)、アセタミノフェン、アスピリン、フルナリジン、α-ルミノール一ナトリウム(Galavit)、アポモルフィン、ブシラミン、エブセレン、デルタメトリン、2-インドール-3-イル-メチレンキヌクリジン-3-オール、4-ヒドロキシエストラジオール、3',4',5',3,4,5-ヘキサメトキシ-カルコン、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエン-28-酸、1-[2-シアノ-3-,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエノ-28-イル]イミダゾール、α-メチレン-γ-ブチロラクトン、3-ヒドロキシアントラニル酸、ビス(2-ヒドロキシベンジリデン)アセトン、2',4',6'-トリス(メトキシメトキシ)カルコン、15-デオキシ-Δ(12,14)-プロスタグランジンJ2(15d-PGJ2)、4-ヒドロキシ-2-ノネナール、ニトロ-リノール酸、スルフォラファン、フェネチルイソチオシアネート、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-HITC)、イソフムロン、イソコフムロン、キサントフモル、tert-ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、6-エトキシ-1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン(エトキシキン)、カフェストール 、カウェオール、クロロゲン酸、クルクミン、デメトキシクルクミン、ビスデメトキシクルクミン、カルノソール、ゼルンボン、レスベラトロール、リコピン、硫化ジアリル、α-リポ酸、アセチルカルニチン、ルテオリン、3-O-カフェオイル-1-メチルキナ酸、エピガロカテキン-3-ガレート、ケルセチン、ケルセチン3-O-β-L-アラビノピラノシド、ケルセチン3-O-β-D-グルコピラノシド、4-アセチル-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、4-(1-ヒドロキシ-エチル)-3-メチル-ジヒドロ-フラン-2-オン、5-ヒドロキシ-3, 4, 5-トリメチル-5-H-フラン-2-オン、酢酸1-(4-メチル-5-オキソ-テトラヒドロ-フラン-3-イル)-エチルエステル、(5-エチル-テトラヒドロ-フラン-2-イル)-酢酸、2-フェニル-ピラン-4-オン、ジヒドロ-4-フェニル-2(3H)-フラノン、2-(2-ホルミルピロール-1-イル)-4-メチル吉草酸よりなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1記載の発現増強剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項記載の発現増強剤を有効成分として含有する、マクロファージが貯蔵する鉄の放出促進剤。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項記載の発現増強剤を有効成分として含有する炎症性鉄欠乏症改善剤。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項記載の発現増強剤を有効成分として含有する機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤。
  7. 赤血球造血刺激製剤(ESA)をさらに含有する請求項6記載の機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤。
  8. ESAはEPO、ダルベポエチンアルファ、若しくはこれらの誘導体である請求項7記載の機能的鉄欠乏症による貧血の改善剤。
  9. 請求項1〜3のいずれか1項記載の発現増強剤を有効成分として含有する、炎症又は慢性疾患に伴う貧血(anemia of chronic disease)の改善剤。
  10. 赤血球造血刺激製剤(ESA)をさらに含有する請求項9記載の炎症又は慢性疾患に伴う貧血の改善剤。
  11. ESAはEPO、ダルベポエチンアルファ、若しくはこれらの誘導体である請求項10記載の炎症又は慢性疾患に伴う貧血の改善剤。
  12. 請求項1〜3のいずれか1項記載の発現増強剤を有効成分として含有する、マクロファージ中で増殖する感染性微生物及びウイルスの増殖抑制剤。
  13. 微生物はサルモネラ(Salmonella)属細菌、マイコバクテリア(Mycobacterium)属細菌、又はリーシュマニア(Leishmania)属寄生虫、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)であることを特徴とする請求項12記載の増殖抑制剤。
  14. 抗生物質をさらに含む請求項12又は13記載の増殖抑制剤。
  15. 抗生物質は、第三世代セフェム系抗生物質又はニューキノロン系抗生物質である請求項14記載の増殖抑制剤。
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