JP2009102288A - 脂肪蓄積阻害剤 - Google Patents

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喬 山岸
Makoto Nishizawa
信 西澤
Kimi Uejima
希実 上島
Tsutomu Kanazawa
勉 金澤
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Abstract

【課題】生活習慣等の変化により増加傾向にあるメタボリックシンドロームをはじめとする疾病、特に糖尿病、動脈硬化症などに影響を及ぼす肥満症に効果を有する成分ならびにこれらを含む植物エキスを提供する。
【解決手段】ハマナス類の花または偽果、またはマイカイの花に含まれるtellimagrandinIを主成分とする、脂肪細胞への脂肪蓄積阻害剤。
【選択図】なし

Description

本発明は、脂肪細胞への脂肪蓄積阻害剤に関する。
過食、栄養過多と運動不足という近年の生活習慣により、脂肪組織への過剰な脂肪蓄積、すなわち肥満が引き起こされ、人口に占める肥満者の割合が増加している。さらに糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病が重複することにより、虚血性心疾患などの重篤な疾病を発症するリスクが高くなることも明らかとなっており、すなわち、メタボリックシンドロームと呼ばれる概念が定着している。したがって、上記の生活習慣病を改善することとともに肥満を解消することが動脈硬化症、さらには虚血性心疾患などの病態を抑える一つの要因となる。
糖尿病、高脂血症、高血圧などのいわゆる生活習慣病は、遺伝的素因などの先天的要素や、喫煙、アルコールの過剰摂取、薬剤などの後天的要素で起こることが明らかとなっており、必ずしも脂肪が蓄積して起こる肥満が原因で起こるものではない。
そのため、糖尿病、高脂血症、高血圧症などの生活習慣病を改善する効果を有し、さらに肥満を改善する効果を併せ持つような素材が望まれている。
一般的に肥満の改善には、食餌療法(摂取エネルギーの制限)、運動療法あるいは重度の肥満症では薬物治療が行われている。長年にわたり上記改善法が提唱されているが、継続性の問題等により、肥満は現在でもますます増加の一途をたどっているのが現状である。そのため、体内に蓄積している脂肪を低減させることが注目されている。
また、近年、成人においても脂肪組織の細胞数が増加することが明らかとなり、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化の抑制し成熟した脂肪細胞数を減少させること、さらに、脂肪細胞への脂肪の取り込みを抑え、脂肪蓄積を抑制することにより肥満を改善させることが期待されている。
現在までに、脂肪の蓄積を抑制する素材としてきのこ類(特許文献1)、アスタキサンチンおよび/またはそのエステル(特許文献2)、小麦蛋白質の加水分解物(特許文献3)グレープフルーツオイル(特許文献4)、チリロサイド(特許文献5)、ハス胚芽および/またはヤーコンの抽出物(特許文献6)などがある。これらのような素材の使用の場合、実際には脂肪の蓄積を阻害するには多量に摂取しなければならない、他の疾病に対して効果がない、さらには、ヒトでの効果が充分でない場合が多いなどの問題がある。
また、これらの素材においてはチリロサイド(特許文献5)に脂肪の蓄積抑制ならびに糖尿病への有効性が示されているのみであり、その他については糖尿病や高脂血症などその他の有効な効果は見当たらない。
本研究者らはすでに ハマナス類の様々な生理活性について研究の過程で、生活習慣病に対する効果を見出してきた。すなわち、α−アミラーゼ阻害作用、α−グルコシダーゼ阻害作用ならびにグルコース吸収阻害作用(特許文献7)、ハマナス花粉末摂取時のヒト血中中性脂肪低下作用(非特許文献1)、血圧上昇抑制作用などの効果が明らかとなっている。
これらの効果に加え、本発明のように脂肪細胞への脂肪蓄積阻害作用を有することは肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧症などを総合的に予防または改善できるメリットがある。
特開2007−63206号公報 特開2007−153845号公報 特開2007−106683号公報 特開2005−194252号公報 特開2007−176858号公報 特開2007−186427号公報 特開2005−306801号公報 山岸喬:2006、化学工業Vol.7,No1,p49
本発明は各種生活習慣病に効果を有することが知られており、かつ、生体内で脂肪細胞への脂肪の蓄積を抑制することにより、肥満を抑える脂肪蓄積阻害剤を提供することを目的とする。
ハマナス類にはα−アミラーゼ阻害作用、α−グルコシダーゼ阻害作用ならびにグルコース吸収阻害作用、ハマナス花粉末摂取時のヒト血中中性脂肪低下作用、血圧上昇抑制作用など生活習慣病に対する効果が明らかとなっている。
これらの有用な効果に加え、さらに肥満症を改善する効果を明らかにする目的で、本発明者らは脂肪細胞への脂肪の蓄積を抑制する物質について鋭意検討を行った。すなわち、マウス前駆脂肪細胞3T3−L1を用いて脂肪細胞への脂肪の蓄積阻害効果を指標にスクリーニングを行い、その結果、ハマナス花または偽果、またはマイカイ花抽出物ならびにそれらのポリフェノール画分に脂肪の蓄積を抑制する効果を見出した。さらにその主要成分であり以下の式(1):
Figure 2009102288
で表されるtellimagrandinIに優れた脂肪蓄積阻害作用を見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明はtellimagrandinIを有効成分とするものである。この化合物は前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化の抑制し、脂肪細胞への脂肪の蓄積を阻害する。したがって、脂肪細胞への脂肪の蓄積やそれに伴う肥満症の抑制、改善に寄与し得る。
また、本発明の有効成分を含むハマナスの花または偽果およびマイカイの花抽出物は糖尿病、高脂血症ならびに高血圧症に有用であり、さらに脂肪の蓄積を抑制する上記物質を多量に含有することで、より効果的にこれらのメタボリックシンドロームをはじめとする疾病の改善、予防が可能となる。
本発明に用いる「ハマナス類」はバラ科ハマナス(Rosa rugosa thumb.)、コハマナス(Rosa multiflora x Rosa rugosa)、ヤマハマナス(Rosa dauvurica Pallas)、ならびにこれらの交配種、改良種を指し、その形態、花の色、花弁の枚数など、これらいずれにも限定されるものでない。
また、本発明に用いる「マイカイ」はバラ科マイカイ(Rosa maikwai Hara)であり、その蕾はお茶や医薬品として用いられている。
本発明にいう「花」とは被子植物においては、萼、花弁の集まった花冠、花托である。さらに上記のものに花柄を含んでいても差し支えない。
本発明においては、tellimagrandinIを含有するハマナスの花または偽果、および、マイカイの花そのもの、それらを加工したもの(乾燥物、破砕物、粉砕物等、ならびにこれらを成型したものなど)を用いてもよい。さらに、より有効成分であるtellimagrandinIの濃度を高めるために溶媒により抽出して得られる抽出物を用いることが好ましい。
ここで抽出物とは上記植物またはそれらを加工したものを溶媒で抽出して得られる抽出液(エキスなど)、その濃縮液あるいは希釈液、さらにはそれらの乾燥物のことである。
上記抽出物は、抽出したままの溶液でもよい。さらに必要に応じて、希釈、濃縮等を行っても差し支えない。また、抽出した液を濃縮乾固、凍結乾燥、噴霧乾燥などにより乾燥物として用いても良い。また、乾燥の際に適宜賦型剤を加えても差し支えない。
抽出に用いる溶媒は極性溶媒であっても、非極性溶媒であってもよく、特に制限はない。このような溶媒として例を挙げれば、水、低級アルコール類(メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノールなど)、多価アルコール(グリセリン、1,3−ブチレングリコールなど)、アセトン等のケトン類、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなど)、アセトニトリル、エステル類(酢酸エチルエステル、酢酸ブチルエステルなど)炭化水素類等が挙げられる。これらの溶媒を1種または2種以上混合して用いても良い。
上記溶媒のうち、抽出する成分の抽出効率や安全性の面などから、水、エタノールを用いることが好ましく、さらには水とエタノールとの混合溶媒が好ましい。
抽出方法または抽出条件に特に制限はない。使用上の安全性あるいは利便性、抽出効率などの観点から穏やかな条件で行うのが好ましい。抽出時間については、有効成分であるtellimagrandinIが効率的に抽出されるまで行えばよく、通常、30分〜48時間で行われる。
抽出の具体例を示すと、原料植物そのまま、あるいはその乾燥物、またはそれらの破砕、細断、粉砕あるいは微粉砕したもの、これらいずれかを用い、5〜20倍量の溶媒を加え、4℃〜溶媒が還流する温度で30分〜48時間、攪拌や振とうなどの条件下で操作を行う。抽出後、適宜、ろ過、遠心分離などの分離操作を行い不溶物を除去し、必要に応じて濃縮、希釈あるいは乾燥して抽出物を得ることができる。さらに上記不溶物から再び抽出物を得てもよい。
こうして得られた抽出物は、そのままあるいは濃縮して、液状物、ペースト、さらに乾燥した乾燥物などで用いられる。乾燥に関しては、凍結乾燥など当業者が通常用いる方法により行われる。
また、抽出物は溶媒による分配、透析、限外ろ過膜などによる分離、各種クロマトグラフィーなどによる段階的な精製など当業者が通常行う処理により得られた分画物として用いることが可能である。さらに精製されたtellimagrandinIを用いることが最も好適である。
摂取する際には、このようにして得られた抽出物ならびにtellimagrandinI、またはハマナス類の花または偽果、またはマイカイの花そのままでも良く、その摂取量は年齢、体重、症状の程度ならびに製剤の形態により適宜決定される。例えば、tellimagrandinIでは0.001mg〜10mg/kg体重程度が好ましく、抽出物では0.1mg〜1000mg/kg体重程度が好ましい。さらにハマナス類の花または偽果、またはマイカイの花そのままでは0.3mg〜3000mg/kg体重程度が好ましい。
本発明の脂肪蓄積阻害剤の利用形態は、摂取される食品、医薬品などの形態に応じて適宜設定される。例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ゼリー等、当業者が通常用いる添加剤を用いて様々な形状に成型してもよい。あるいは、抽出液または抽出物を水、飲料等に溶解した液剤として用いてもよい。
本発明の脂肪蓄積阻害剤は、上述のごとく食品、医薬品などとして利用される。利用上において、必要に応じ、本発明とは異なる作用を有する物質、例えば、体内脂肪を燃焼させるような素材などと組み合わせてもよく、組み合わせにより作用の増強、相乗効果が期待できる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、統計解析は、Non−repeated measures ANOVAを用い、Dunnett’s testにより有意差検定を行った。
(実施例1;ハマナス花抽出物、マイカイ花抽出物、ハマナス花ポリフェノール画分ならびにtellimagrandinIの調製)
(1)ハマナス花抽出物の作成
北海道北見産乾燥ハマナス(Rosa rugosa thumb)花1kgに10Lの50(V/V)%エタノール水溶液を加えて、室温下一晩放置した。この混合物をろ過し、不溶物を回収し再度50%エタノール水溶液6Lを加えて一晩抽出した。得られた抽出液をすべて合わせ、減圧下溶媒を溜去し、凍結乾燥後、抽出物551.5gを得た。
(2)マイカイ花抽出物の作成
中国市場品乾燥マイカイ(Rosa maikwai Hara)の花1kgに10Lの50(V/V)%エタノール水溶液を加えて、室温下一晩放置した。この混合物をろ過し、不溶物を回収し再度50%エタノール水溶液6Lを加えて一晩抽出した。得られた抽出液をすべて合わせ、減圧下溶媒を溜去し、凍結乾燥後、抽出物526.7gを得た。
(3)ハマナス花抽出物からポリフェノール画分の作成
上記北見産乾燥ハマナス花抽出物100.4gを水300mlに溶解し、MCI GELCHP20P(平均粒径75/150μm、三菱化学社製)を充填(内径10.0cmx28cm)したカラムに附し、水3L、50(V/V)%アセトン水溶液3Lならびにアセトン2Lで溶出した。得られた50%アセトン水溶液画分を減圧下にて溶媒を溜去し、凍結乾燥後、ポリフェノール画分30.6gを得た。
(4)tellimagrandinIの分離
北海道紋別市で採集した乾燥ハマナス(Rosa rugosa thumb)の花500gに3Lの70(V/V)%アセトン水溶液を加えて、室温下一晩放置した。この混合物をろ過し、不溶物を回収し再度70%アセトン水溶液1.5Lを加えて一晩抽出した。この混合物をろ過し、不溶物を回収し30(V/V)%アセトン水溶液1.5Lで上記と同様の操作を2回行い、得られた抽出液をすべて合わせ、減圧下アセトンを溜去し、残留物に酢酸エチルを加え、水層と酢酸エチル層に分配し、酢酸エチル層を回収した。水層に再び酢酸エチルを加え分配し、計3回分配操作を行った。得られた酢酸エチル層を減圧下にて溶媒を溜去し29.2gの粉末を得た。
得られた粉末25.0gをエタノールに溶解し、Sephadex LH−20(AmershamBiosciences社製)を充填(内径8.5cmx18cm)したカラムにより、以下の溶出条件1で10画分に分画した。
(条件1)
移動層:エタノール/水/アセトン(容積比が100/0/0、90/10/0、80/20/0、70/30/0、60/40/0、54/36/10、48/32/20、42/28/30、36/24/40および0/0/100の順で溶出を行った。)
得られた画分のうち、60%エタノール水溶液溶出部1.00gをさらに中圧逆相カラムクロマトグラフィー(充填済GT−クロマト管 C18、ジーエルサイエンス株式会社製、内径3.0cmx30cm)により以下の溶出条件2で分画した。
(条件2)
移動層:メタノール/水(15/8、20/80、25/75および30/70)+0.3%容量のギ酸添加。
分画して得られた画分のうち、20%メタノールで溶出した画分よりtellimagrandinIを235.0mg得た。得られたtellimagrandinIは例えば以下の条件3により4.68ならびに7.30分に互変異性体として検出される。
(条件3)
カラム:Inaertsil ODS−3(φ4.6x150mm、ジーエルサイエンス株式会社製)
移動層:12.5%(V/V)アセトニトリル水溶液+0.2%容量のギ酸添加
カラム温度:40℃
流速:1ml/min
検出波長:280nm(UV)
(実施例2:マウス前駆脂肪細胞(3T3−L1)を用いた脂肪細胞への脂肪蓄積阻害効果)
(1)脂肪細胞への分化・誘導
マウス前駆脂肪細胞3T3−L1は、大日本住友製薬株式会社から購入した。3T3−L1の培養は、10%calf serum(大日本住友製薬Lot.No.8979H)、100units/mlのペニシリンならびに100mg/mlのストレプトマイシン(Gibco社製)を含むDMEM培地(Sigma社製)で継代培養した。
分化誘導は、10%FBS(非動化済仔牛胎児血清、ASAHI TECHNO社製 Lot.No.S04569S1810BF)、100units/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを含むDMEM培地で24ウェルプレートに5×104cells/wellを播種し、細胞がコンフルエントになった後(0日目)、次のように実施した。10%FBS、0.5mM 3−イソブチル−1−メチルキサンチン(Sigma社製)、0.5μMデキサメタゾン(Sigma社製)、10μg/mlインスリン(Sigma社製)を含むDMEM培地で2日間培養した。3日目、10%FBS、10μg/mlインスリンを含むDMEM培地で培地交換し、以後、2日毎に同様の培地で培地交換を行った。試料はジメチルスルフォキサイド(最終濃度0.1%)で溶解し分化誘導時(0日目)に各ウェルに添加し、さらに培地交換時にも添加した。
(2)脂肪量の測定
脂肪細胞の蓄積脂肪量はオイルレッド0染色液を用い細胞内の脂肪滴を染色し、その染色液を吸光度法を用いて測定した。
すなわち、24ウェルプレートに播種したのち分化誘導したものを用いた。8日間培養後PBSで洗浄した後、10%ホルマリン溶液で固定した。その後、0.5%オイルレッド0/イソプロピルアルコール溶液:蒸留水=6:4の割合で混合した溶液を、各ウェルに加え15分間染色した。染色後、蒸留水で3回よく洗浄し検鏡した。検鏡後、各ウェルにイソプロパノールを500μl添加し、10分間室温で溶解した後、吸光度法(570nm)により細胞中の脂肪量を測定した。
(3)トリグリセライド量の測定
細胞は上記の方法により、10×104cells/wellで12ウェルプレートに播種したのち分化誘導したものを用いた。8〜10日間培養後PBSで洗浄した後、細胞溶解バッファー(25mM Tris−HCl/1mM EDTA,pH7.5)に溶解後、超音波破砕を行った。Triglyceride E−test(和光純薬株式会社製)を用いてトリグリセライド量を測定した。求められたトリグリセライド量は、タンパク質含量で補正した。タンパク質の測定は、BCA Protein Assay Kit(PIERCE社製)を用いた。
その結果、図1、図2ならびに図3に示すようにコントロールと比較して、ハマナス花抽出物、マイカイ花抽出物ならびにハマナス花ポリフェノール画分はいずれも濃度依存的に脂肪細胞への脂肪の蓄積およびトリグリセライドの蓄積を抑制することが明らかとなった。
さらに、図4ならびに図5に示すようにハマナス花より分離したtellimagrandinIも同様に低容量で濃度依存的に脂肪細胞への脂肪の蓄積を抑制した。
(実施例3:tellimagrandinIの細胞分化抑制活性確認試験)
(1)Glycerol−3−phoshate dehydrogenase(GPDH)活性の測定
GPDH活性の測定は、上記の方法により細胞を播種したのち分化誘導したものを用いた。8日間培養後PBSで洗浄した後、酵素抽出バッファーに溶解後、超音波破砕を行った。12,800×g、4分間遠心後、上清を回収し、測定溶液とした。活性の測定は、GPDHActivity Measurement Kit(株式会社プライマリーセル社製)を使用した。得られたGPDH活性は、タンパク質含量で補正した。タンパク質の測定は、トリグリセライド量の測定試験と同じ方法を用いた。
(2)Quantitative RT−PCR
遺伝子発現は、real time RT−PCR(ABI7500PE、Applied Biosystems社製)を用いて測定した。3T3−L1細胞からのRNAの抽出は、Trizol Reagents(インビトロジェン社製)に溶解し、ポリトロンを用いてホモジナイズした後、フェノールクロロホルム法で粗抽出した。精製はRNeasy Mini Kit(Qiagen社製)を使用しDNaseI処理を行った。回収したtotal RNAの純度は、アガロース電気泳動と吸光度により確認を行った。cDNA合成は0.1μgのTotal RNAを鋳型として、Taqman Reverse Transcription Reagents(Applied Biosystems社製)を用いて行った。すなわち、全RNA 0.1μg、1xTaqman RT Buffer、5.5mM 塩化マグネシウム、500μM dNTPs、2.5μM Randam Hexamer、0.4U/μl RNase InhibitorとMultiScribe Reverse Transcriptase 1.25U/μlを含む25μlの反応液中で反応させた。cDNA合成反応は、25℃で10分間の前加熱の後、48℃で60分間のRT反応を行い、引き続き95℃で5分間の後加熱を行った。次に得られたcDNAを鋳型として、1xSYBR Green PCR Master Mix、各0.2μ MFor ward primerおよびReverse Primerを含む20μlの反応液中で反応を行った。PCR反応は、50℃で2分間、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒間、60℃で1分間の反応を40サイクル行った。実験に使用した6種類のプライマーは、Primer3を用いて設計した。それぞれの遺伝子発現の定量は、β−Actinの発現量を内部標準としてΔΔCt法により算出した。
図6に示すようにtellimagrandinIを添加した培地で培養した3T3−L1細胞はコントロールに比較してGPDHの活性を抑制した。また、図7ならびに図8に示すように細胞分化の指標であるPPARγならびにC/EBPαの発現を抑制していた。その結果、tellimadrandinIの脂肪細胞への脂肪の蓄積の抑制には、前駆脂肪細胞からの脂肪細胞への分化の抑制が関与していることも明らかとなった。
以上のことから、tellimagrandinI、ハマナス類の花または偽果ならびにマイカイの花由来の抽出物、またはポリフェノール画分は脂肪細胞への脂肪の蓄積を抑制することが明らかとなった。さらにtellimagrandinIの脂肪の蓄積抑制作用には、前駆脂肪細胞からの脂肪細胞への分化の誘導抑制が関与することも明らかとなった。
以上説明したように、本発明によれば、ハマナス類の花または偽果、またはマイカイの花由来のtellimagrandinIを有効成分としてなることを特徴とする脂肪細胞への脂肪蓄積阻害剤が提供され、tellimagrandinIならびに本化合物を含有するハマナス類の花または偽果、またはマイカイの花、あるいはそれらの抽出物、あるいはそれらのポリフェノール画分を摂取することで脂肪細胞への脂肪の蓄積が抑制され、脂肪蓄積による肥満の解消が期待できる。また、ハマナス類の花または偽果、またはマイカイの花にはα−アミラーゼ阻害作用、α−グルコシダーゼ阻害作用ならびに血中中性脂肪低下作用などが認められており、本発明による効果と合わせ、虚血性心疾患などの重篤な疾病を発症するリスクが高くなることが指摘されているメタボリックシンドロームと呼ばれる病態の予防および改善が期待できる。
ハマナス花抽出物とマイカイ花抽出物の脂肪細胞へのオイルレッド 0染色液を用いて測定した時の脂肪蓄積率を示したグラフである。 ハマナス花抽出物とマイカイ花抽出物の脂肪細胞へのトリグリセライド(中性脂肪)の蓄積率を示したグラフである。 ハマナス花ポリフェノール画分の脂肪細胞へのオイルレッド 0染色液を用いて測定した時の脂肪蓄積率を示したグラフである。 tellimagrandinIの脂肪細胞への脂肪蓄積率を示したグラフである。 tellimagrandinIの脂肪細胞へのトリグリセライド(中性脂肪)の蓄積率を示したグラフである tellimagrandinI添加時の前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化の指標である酵素(GDPH)の活性を示すグラフである。 tellimagrandinI添加時の前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化の指標である蛋白質(PPARγ)の遺伝子発現量を示すグラフである。 tellimagrandinI添加時の前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化の指標である蛋白質(C/EBPα)の遺伝子発現量を示すグラフである。

Claims (2)

  1. 次の化学式(1)
    Figure 2009102288
    で表されるtellimagrandinIを有効成分とする脂肪細胞への脂肪蓄積阻害剤
  2. 請求項1記載の化合物がハマナス類の花または偽果、またはマイカイの花由来の脂肪細胞への脂肪蓄積阻害剤
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