JP2009097678A - 潤滑流体の注入装置および注入方法 - Google Patents

潤滑流体の注入装置および注入方法 Download PDF

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Abstract

【課題】潤滑流体の飛散や注入量不足を防止しつつ、潤滑流体の真空注入を短時間で行うことが可能な流体軸受装置への潤滑流体の注入装置および注入方法を提供する。
【解決手段】流体軸受装置1の間隙部分8の真空度が所定の真空度よりも高真空となるように減圧処理し、潤滑流体10の滴下開始時の真空度に対し潤滑流体10の滴下終了時の真空度が低真空(高圧力)となるように、真空チャンバ30の真空度を制御しながら潤滑流体10を滴下し、真空チャンバ30を大気圧に復圧して流体軸受装置1内に潤滑流体10を注入する。
【選択図】図5

Description

本発明は、ハードディスク、光ディスク等を回転駆動するスピンドルモータに搭載された流体軸受装置に対して真空状態で潤滑流体を注入する潤滑流体の注入装置および注入方法に関するものである。
従来、ハードディスク、光ディスク等を回転駆動するスピンドルモータには、シャフトと、シャフトが挿入されるスリーブと、シャフトとスリーブとの間隙部分に保持されシャフトの回転時に動圧を発生して回転自在にシャフトを保持する潤滑流体と、を含む流体軸受装置が搭載されている。
一般的に、シャフトとスリーブとの間に形成される間隙部分が一方向のみに開口している流体軸受装置では、その間隙部分に連続的かつ確実に潤滑流体を注入方法として、以下のような真空注入方式(以下、従来技術1とする。)が採用されている。すなわち、まず、流体軸受装置の間隙の開口端を潤滑流体によって封止し、間隙内部の空気を排気処理して間隙部分を減圧させる。次に、軸受内部の空気を気泡として除去し、流体軸受装置の外部を大気圧に復圧することでその差圧によって潤滑流体が間隙部に注入される(特許文献1参照)。
また、流体軸受装置への潤滑流体の別の注入方法として、以下のような真空注入方式(以下、従来技術2とする)も提案されている。すなわち、真空中における潤滑流体の滴下の際、潤滑流体内に溶存した空気が発泡することを防止する目的で、予め潤滑流体を減圧下で脱気処理する。次に、流体軸受装置を減圧して間隙内部を排気処理し、減圧下で流体軸受装置の間隙部の開口端に潤滑流体を滴下して封止する。そして、流体軸受装置外部を大気圧に復圧することで、その差圧によって潤滑流体を間隙部に注入する(特許文献2参照)。
特開2002−5170号公報(平成14年1月9日公開) 特開2005−36974号公報(平成17年2月10日公開)
しかしながら、上記従来の装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された従来技術1によれば、潤滑流体を流体軸受装置の間隙部の開口端へ滴下する工程が大気圧下において実施される。このため、潤滑流体によって封止された間隙部には、大気圧レベルの気体が残存している。ここで、この残存気体を排気するために流体軸受装置を減圧下に置くと、残存気体が膨張して開口端の潤滑流体を突き破って発泡を繰り返す。このような現象は、残存気体の圧力が潤滑流体の表面張力による封止力に打ち勝っても完全に排出されず、流体軸受装置外部の減圧がさらに進むと残存した気体が再び膨張して発泡することに起因する。残存気体の排気が進むにつれて発泡の頻度は徐々に減少するものの、発泡が収まるまでには長時間、減圧下において放置することが必要となる。よって、この方法では、実用上完全な状態まで間隙部に潤滑流体を注入するためには、確実性に欠けるという問題がある。
また、以上のような潤滑流体の発泡は、潤滑流体の飛沫が流体軸受装置の外部、あるいは製造装置内に飛散し、汚染や潤滑流体の滴下量不足の原因となる。特に、流体軸受装置がハードディスクドライブに搭載される場合には、潤滑流体のハードディスク面への付着は不良発生の原因となる。このため、この飛沫を完全に拭き取って洗浄しなければならず、不要な製造工程を追加しなくてはならない。
また、上記公報に開示された従来技術2によれば、流体軸受装置の間隙部分に存在する気体を減圧下において十分に排気した後、潤滑流体を滴下する方法であるため、従来技術1のような間隙部分からの発泡は起こらない。さらに、予め減圧下において潤滑流体の脱気処理を行うため、潤滑流体を流体軸受装置の開口端に滴下する際にも、ノズルからの発泡を防止することができる。
しかしながら、潤滑流体が注入される流体軸受装置内部のシャフトとスリーブとの間隙部分は狭いところではミクロンオーダーとなっている上、その間隙部分は複雑な構造となっている。したがって、間隙部分のコンダクタンスは小さく、気体の排気速度が遅くなってしまう。また、流体軸受装置内部の真空度を直接計測することは困難であることから、真空チャンバ内部の真空度を真空計によって監視し、所定の真空度以下で所定の時間だけ放置することで、流体軸受装置内が十分に排気されたものとして、潤滑流体の滴下工程へと移行する。そのため、潤滑流体の滴下工程に先立って、長時間の流体軸受装置内部の排気工程が必要であることに変わりはない。
また、上述のように流体軸受装置の排気工程が長時間となるため、生産性を考慮し、複数の流体軸受装置を同時に真空チャンバ内に収容して排気するバッチ処理方式が多く採用される。この場合、潤滑流体の滴下工程にも所定の時間が必要となり、真空チャンバ内が排気されて徐々に高真空となっていく過程において潤滑流体の滴下を行うと、次のような問題を引き起こす。すなわち、最初の流体軸受装置において滴下された潤滑流体によって封止される流体軸受装置内部の残留気体は、流体軸受装置外部の真空度の差圧によって徐々に膨張する。そして、さらには潤滑流体の封止を破って流体軸受装置外部へと出る際に発泡してしまう。これにより、従来技術1と同様に、潤滑流体の飛沫の飛散による汚染、あるいは潤滑流体の注入量不足の問題が生じるおそれがある。
この結果、潤滑流体の滴下工程に先立って、全ての流体軸受装置内部の真空度が真空チャンバ内部の真空度と略平衡状態となるまで、長時間放置する必要があり、非常に非効率であった。一方、生産性を上げるために排気時間を短縮することは、上記問題を助長することになり、その実施が困難になるという問題があった。
本発明は、上述した従来の課題を解決するものであり、潤滑流体の外部への飛散や注入量不足等の問題を回避して、潤滑流体の真空注入を短時間で行うことが可能な流体軸受装置への潤滑流体の注入装置および注入方法を提供することを目的とする。
第1の発明に係る潤滑流体の注入装置は、所定の隙間に潤滑流体が保持される流体軸受装置に対して、潤滑流体を真空状態で注入する注入装置であって、筐体部と、減圧部と、滴下部と、制御部と、を備えている。筐体部は、潤滑流体が注入される流体軸受装置を収容する。減圧部は、筐体部内を減圧する。滴下部は、流体軸受装置に対して潤滑流体を滴下する。制御部は、筐体部内において、滴下部による流体軸受装置に対する潤滑流体の滴下開始時の真空度を、所定の到達真空度よりも低くなるように設定するとともに、滴下開始時における真空度よりも滴下終了時の真空度が低くなるように制御する。
ここでは、真空ポンプ等の減圧部を用いて、流体軸受装置が載置される筐体内を真空状態として潤滑流体の注入処理を行う注入装置において、筐体部内を所定の到達真空度よりも低くなるように真空化した後、潤滑流体の滴下処理を開始する際の筐体部内の真空度と滴下処理終了時における真空度とを比較して、滴下処理終了時における真空度が滴下処理を開始する際の真空度よりも低くなるように設定される。
ここで、上記所定の到達真空度とは、長時間に渡って真空化処理を行って安定化された真空状態を意味している。
これにより、潤滑流体の滴下開始時において大気圧とし滴下開始後に真空度を上げていく従来の方法と比較して、滴下開始時には既に真空度が上がっているために、流体軸受装置内部の気体によって潤滑流体が発泡、飛散する等の問題を効果的に防止することができる。また、潤滑流体の注入処理を、所定の到達真空度に達する前に行うため、流体軸受装置を筐体部内に載置して長時間待つ必要はない。さらに、潤滑流体の注入開始時よりも注入終了時の方が真空度が低くなるように設定されているため、潤滑流体を流体軸受装置内部に浸入させて行く過程において流体軸受装置の内部と外部との差圧が繰り返し大きくなることはない。よって、流体軸受装置の内部と外部との差圧によって繰り返し潤滑流体が発泡して、周辺に飛散してしまうことを防止することができる。この結果、潤滑流体の外部への飛散等の問題を回避しつつ、短時間で流体軸受装置への潤滑流体の注入処理を実施することができる。
第2の発明に係る潤滑流体の注入装置は、第1の発明に係る潤滑流体の注入装置であって、制御部は、潤滑流体の滴下開始時における筐体部内の真空度、および潤滑流体の滴下終了時における真空度が、到達真空度よりも低く、かつ使用環境下における最高の真空度よりも高い所定の真空度になるように制御する。
ここでは、流体軸受装置に対して潤滑流体を滴下する時、およびその終了時における真空度が、使用環境において考えられる最も高い真空度と、上述した到達真空度の間に入るように制御される。
ここで、上記使用環境下における最高の真空度としては、例えば、大気圧の約1/10となる航空機内における使用環境等が考えられる。
これにより、使用環境下において確実に潤滑流体の漏れ出しを防止することができる。一方、上述した到達真空度よりも低い真空度に設定することで、長時間かけて真空度を高くする必要がない。この結果、最も厳しい使用環境下における潤滑流体の漏れ出しを確実に防止しつつ、流体軸受装置内への潤滑流体の浸入を短時間で行うことができる。
第3の発明に係る潤滑流体の注入装置は、第1または第2の発明に係る潤滑流体の注入装置であって、筐体部と減圧部との間に設けられたコンダクタンス可変バルブをさらに備えている。制御部は、コンダクタンス可変バルブのコンダクタンスを小さくして、潤滑流体の滴下開始時の真空度に対して滴下終了時の真空度を低真空化する制御を行う。
ここでは、潤滑流体が注入される流体軸受装置を収容する筐体部と、真空ポンプ等の減圧部との間に設けられたコンダクタンス可変バルブを制御することで、潤滑流体の滴下時から滴下終了時にかけて真空度が低くなるように制御を行う。
これにより、コンダクタンス可変バルブを用いて、容易に低真空化制御を行うことができる。
第4の発明に係る潤滑流体の注入装置は、第1から第3の発明のいずれか1つに係る潤滑流体の注入装置であって、流体軸受装置を収容する筐体部内に大気を導入するリークバルブをさらに備えている。制御部は、リークバルブを開放して、潤滑流体の滴下開始時の真空度に対して滴下終了時の真空度を低真空化する制御を行う。
ここでは、潤滑流体が注入される流体軸受装置を収容する筐体部内に大気を導入するリークバルブを開放することで、潤滑流体の滴下時から滴下終了時にかけて真空度が低くなるように制御を行う。
これにより、リークバルブを用いて、容易に低真空化制御を行うことができる。
第5の発明に係る潤滑流体の注入装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る潤滑流体の注入装置であって、流体軸受装置を収容する筐体部に接続された減圧部としてターボ分子ポンプを用いている。制御部は、ターボ分子ポンプの回転数を制御して、潤滑流体の滴下開始時の真空度に対して滴下終了時の真空度を低真空化する制御を行う。
ここでは、潤滑流体が注入される流体軸受装置を収容する筐体部に接続された減圧部として、ターボ分子ポンプを用いている。そして、制御部は、このターボ分子ポンプの回転数を制御して、潤滑流体の滴下時から滴下終了時にかけて真空度が低くなるように制御を行う。
これにより、ターボ分子ポンプの回転数を制御して排気能力を低下させることで、容易に低真空化制御を行うことができる。
第6の発明に係る潤滑流体の注入方法は、所定の隙間に潤滑流体が保持される流体軸受装置に対して潤滑流体を真空状態で注入する注入方法であって、以下のようなステップを備えている。第1のステップでは、流体軸受装置を筐体部内に載置する。第2のステップでは、筐体部内の真空度が所定の到達真空度よりも低くなるように減圧する。第3のステップでは、流体軸受装置に対して潤滑流体の注入を開始する。第4のステップでは、滴下開始時における真空度よりも滴下終了時の真空度が低くなるように筐体部内の気圧を制御する。
ここでは、真空ポンプ等を用いて、流体軸受装置が載置される筐体内を真空状態として潤滑流体の注入処理を行う注入方法において、筐体部内を所定の到達真空度よりも低くなるように真空化した後、潤滑流体の滴下処理を開始する。そして、滴下開始時における筐体部内の真空度と滴下処理終了時における真空度とを比較して、滴下処理終了時における真空度が滴下処理を開始する際の真空度よりも低くなるように制御する。
ここで、上記所定の到達真空度とは、長時間に渡って真空化処理を行って安定化された真空状態を意味している。
これにより、潤滑流体の滴下開始時において大気圧とし滴下開始後に真空度を上げていく従来の方法と比較して、滴下開始時には既に真空度が上がっているために、流体軸受装置内に内包された気体によって潤滑流体が発泡、飛散する等の問題を効果的に防止することができる。また、潤滑流体の注入処理を、所定の到達真空度に達する前に行うため、流体軸受装置を筐体部内に載置して長時間待つ必要はない。さらに、潤滑流体の注入開始時よりも注入終了時の方が真空度が低くなるように設定されているため、潤滑流体を流体軸受装置内部に浸入させて行く過程において流体軸受装置の内部と外部との差圧が繰り返し大きくなることはない。よって、流体軸受装置の内部と外部との差圧によって繰り返し潤滑流体が発泡して、周辺に飛散してしまうことを防止することができる。この結果、潤滑流体の外部への飛散等の問題を回避しつつ、短時間で流体軸受装置への潤滑流体の注入処理を実施することができる。
第7の発明に係る潤滑流体の注入方法は、第6の発明に係る潤滑流体の注入方法であって、潤滑流体の滴下開始時よりも真空度が高くなるように、潤滑流体を予め減圧処理するステップを、さらに備えている。
ここでは、筐体部内において流体軸受装置に対して注入される潤滑流体を、滴下開始時よりも高い真空度になるように、予め減圧処理している。
これにより、潤滑流体の注入過程において減圧処理を行った場合でも、潤滑流体に溶解した気体が膨張して潤滑流体を発泡、飛散させることを効果的に防止することができる。
本発明に係る潤滑流体の注入装置によれば、潤滑流体の外部への飛散や滴下量不足を回避して、潤滑流体の真空注入を短時間で行うことができる。
本発明の一実施形態に係る流体軸受装置への潤滑流体の注入装置および注入方法について、図1〜図8を用いて説明すれば以下の通りである。
まず、図1および図2を用いて、本発明における真空注入方法のプロセスと、それに対応する真空度のプロファイルの概要について説明する。
図1は、潤滑流体の真空注入方法の手順を示すフローチャートである。
本実施形態に係る真空注入プロセスは、まず前処理階として、潤滑流体の脱気処理ステップS10と、脱気処理された潤滑流体を流体軸受装置に滴下するディスペンサに充填するステップS11と、を含む。
さらに、上記前処理段階を経て、以下のステップS01〜ステップS07までの処理を行う。
すなわち、ステップS01では、大気圧下において流体軸受装置を真空チャンバ内に収容する。
ステップS02では、真空チャンバ内を真空ポンプによって排気して減圧する。
ステップS03では、真空チャンバ内が所定の真空度に到達したか否かを、真空計の計測結果に基づいて判断する。
ステップS04と、一旦、所定の真空度に到達した真空チャンバ内の真空度を低真空化する(真空度を悪化させる)。
ステップS05では、潤滑流体をディスペンサによって流体軸受装置に滴下する。
ステップS06では、真空チャンバ内に大気を導入して大気圧に復圧することで、潤滑流体を流体軸受装置内に注入する。
ステップS07では、注入が完了した流体軸受装置を、真空チャンバから取り出す。
ここで、ステップS03における所定の真空度とは、真空注入工程によって流体軸受装置内部の間隙部分が潤滑流体で実用上十分に充填されるために、その間隙部分の残留気体が除去される真空度を意味している。ここでは、本発明者らが実験結果から得た推奨される所定の真空度として、100Paよりも高真空、好ましくは10Paよりも高真空であればよい。
一般に、ハードディスクドライブに搭載されるスピンドルモータに搭載される流体軸受装置は、航空機内の使用環境まで想定して設計されている。具体的には、大気圧の1/10、すなわち約10000Paまで減圧された場合でも、流体軸受装置の内部から潤滑流体が溢れ出すことがないように設計されている。したがって、真空注入工程において、流体軸受装置内の残存気体を十分に排気して潤滑流体を充填しておけば、流体軸受装置内に内包される気泡に起因する潤滑流体の溢れ出しを防止することができる。上述した所定の真空度は、使用環境で想定される減圧の真空度に比べて十分に高く設定されるため、このような要求を十分に満足する。
図2は、図1のフローチャートに対応した真空チャンバ内における真空度のプロファイルを示すグラフであって、図2(a)は従来の真空度のプロファイル、図2(b)は本発明の真空度を示すプロファイルである。
なお、図2(a)および図2(b)に示されている「AT」は大気圧、「P0」は潤滑流体を滴下してもよい真空度の上限である所定の真空度を示している。さらに、図2(a)の従来の真空度のプロファイルと、図2(b)の本発明の真空度のプロファイルに対応する、潤滑流体の滴下開始時における真空度と滴下終了時における真空度を、それぞれP1,P2およびP3,P4で示している。
ステップS02の排気工程では、図2(a)および図2(b)に示すように、排気工程初期は排気速度が速く高真空化が急激に進む。そして、真空度が真空ポンプの排気能力の限界である到達真空度付近になると高真空化の速度が鈍くなり、やがてほぼ一定の真空度で安定する。
従来の真空注入方法によれば、潤滑流体の滴下を行うステップS05は、図2(a)に示すように、排気を長時間行って真空度が十分に安定した真空条件下において実施される。これにより、潤滑流体によって流体軸受装置の開口端を封止された後の流体軸受装置の内部の真空度と流体軸受装置外部(真空チャンバ内)の真空度とに大きな差は生じず、差圧による流体軸受装置内部の残留気体の膨張による発泡を防止している。
しかしながら、到達真空度は、主に真空ポンプの排気能力と真空チャンバのエアリーク量に支配され、到達真空度で安定するまでには長時間の放置が必要である。このため生産性が悪く、数十個から数百個の単位でのバッチ処理を行う必要があるため真空チャンバの大型化が避けられない。
一方、本実施形態では、図2(b)に示す潤滑流体を滴下するステップS05では、滴下のタイミングを排気工程の初期に移動して排気時間の短縮化を図ることができる。さらに、真空チャンバ内における真空度を滴下開始時から滴下終了時にかけて徐々に低真空化するように制御している。ここで、滴下開始時および滴下終了時における真空チャンバ内の真空度は、いずれも所定の第1真空度よりも高真空でなければならない。これにより、排気が安定しておらず徐々に高真空化される排気の初期においても、流体軸受装置内部の残留気体が膨張することがなく、潤滑流体の発泡による飛散を防止することができる。
ここで、ステップS05における真空チャンバの真空度をP、上記所定の第1真空度をP0、滴下開始時の真空度をP3、滴下終了時の真空度をP4とすると、これらの真空度の関係は、
P3≦P≦P4≦P0 ・・・・・(式1)
として表される条件下において制御される。この制御を低真空化制御と呼ぶこととする。なお、真空チャンバの真空度Pは、滴下工程のステップS05を通じて、真空度P3からP4まで緩やかに低真空化(圧力が上昇)することが好ましい。
理論的には、真空チャンバ内の真空度を一定に保つように制御(P3=P4)しても同等の効果が得られるが、厳密かつ迅速に所定の真空度に制御し、維持することは技術的に難しい。真空チャンバ内の真空度を徐々に低真空化する手段については、後述の実施形態にて具体的に説明する。
潤滑流体を滴下するステップS05において、全ての流体軸受装置の開口端が潤滑流体で封止された後、エアリークを行うステップS06において、真空チャンバに大気を導入し、チャンバ内を大気圧に復圧する。これにより、流体軸受装置内部の真空圧と流体軸受装置外部の大気圧の差圧によって、潤滑流体を気圧が低い流体軸受装置内部へと注入することができる。
最後に、流体軸受装置をステップS07において、真空チャンバから取り出し、真空注油工程を終了する。
なお、流体軸受装置の間隙部分は非常に狭いことから、毛細管現象と大気圧とによって流体軸受装置内部の隅々に完全に潤滑流体を十分に行き渡らせるために、大気圧にて所定の時間放置することが望ましい。
<潤滑流体の発泡メカニズム>
次に、図3を用いて潤滑流体の発泡のメカニズムについてより詳細に説明する。図3は潤滑流体の注入状態を示す流体軸受装置1の断面図である。図3では、図4に示す流体軸受装置1を簡略化して示しており、同一構成部材には同一の番号を付与している。
まず、本実施形態の真空注入方法(図2(b))について説明する。
図3(a)は、図1のステップS04における状態である。ディスペンサから潤滑流体を滴下するためのノズル20が、適切な位置に配置されている。この時点において、流体軸受装置1内の間隙部8は所定の真空度P0以上になるように設定されている。
図3(b)は、ステップS05において潤滑流体10を滴下し、間隙部分8の開口端7を潤滑流体10によって封止した状態である。上述した式1の関係を満たすために、ステップS05において真空チャンバの真空度Pは徐々に低真空化(圧力上昇)される。このため、この時点で、潤滑流体10の一部はその差圧、あるいは毛細管現象によって、間隙部分8に完全に浸透するには至らないものの若干浸透していく。すなわち、ステップS05においては、間隙部分8の残留気体が膨張し、発泡することはない。
ここで、潤滑流体10の滴下量としては、間隙部分8の容積と同等以上とすればよい。しかし、もしスリーブ2の天面の面積が小さい、あるいは開口端7より外部に突き出したシャフト3の高さが低い等の設計上の都合による制約から1回の滴下では必要量を滴下できない場合には、滴下処理を複数回行い、真空チャンバ内の真空を維持したまま先に滴下した潤滑流体10が毛細管現象によって間隙部分8に吸引されるのを待って滴下総量が必要量に達するまで滴下を行えばよい。この際、滴下の途中で真空チャンバを所定の真空度P0以上とすると、間隙部分8に気泡を内包する原因となる。
なお、潤滑流体10が開口端7部付近から外部へと流出しないように、必要に応じてフッ素樹脂等の潤滑流体10をはじくものを流体軸受装置1の適所に塗布しておくとよい。
続くステップS06では、真空チャンバ内を大気圧に復圧すると、図3(c)に示すように、潤滑流体10は毛細管現象と大気圧の加圧とによって、間隙部分8へと浸入していく。なお、開口端7に残留した余剰な潤滑流体10は、図示しない適当なノズルで吸引するかワイパーで拭き取るなどすればよい。
一方、従来の真空注入方法を用いる図2(a)において、図2(b)と同様のタイミングで滴下開始を行う場合を考える。図2(a)から図2(b)へと引かれた点線は、滴下開始および終了のタイミングを示している。図2(b)では、滴下開始時の真空度P3よりも滴下終了時の真空度P4が低真空であったのに対し、図2(a)では、滴下開始時よりも滴下終了時の真空度がΔVだけ高真空となっている。
従来の真空注入方法に係る図2(a)では、ステップS05における潤滑流体10の滴下後、潤滑流体10によって封止された流体軸受装置1内部の真空度よりも、流体軸受装置1外部の真空度の方が高真空となる。このため、その差圧によって流体軸受装置1内部の残存気体が膨張する。そして、膨張した残存気体が潤滑流体10の封止を破って外部に出る際、図3(d)に示すように、潤滑流体10内に気泡が生じ、気泡が破裂する際に潤滑流体10の飛沫を周囲に飛散させる。気泡が破裂すると、間隙部分8の残存気体は減少し流体軸受装置1内外の圧力差は近づくが、真空チャンバの真空度がさらに上がることで再び差圧が生じ、再び発泡を繰り返すことになる。
以上が、潤滑流体の汚染、あるいは注入量の減少といった問題を引き起こすメカニズムである。
次に、本実施形態に係る流体軸受装置へ潤滑流体を真空注入する方法について、具体的な実施例を挙げて説明する。
[実施例1]
図5は、本実施例1に係る流体軸受装置1へ潤滑流体の真空注入を行うための第1の真空注入装置(潤滑流体の注入装置)101の構成を示す模式図である。
本実施例1の真空注入装置101は、図5に示すように、パレット25と、ステージ26と、ディスペンサ20と、真空チャンバ(筐体部)30と、真空ポンプ(減圧部)32と、コンダクタンス可変バルブ34と、リークバルブ36と、真空計31と、制御部50と、を備えている。
流体軸受装置1は、パレット25上に設けられた流体軸受装置1の保持穴に開口端7を略上方に向くように収容される。そして、流体軸受装置1は、駆動ステージ26とその制御装置とによってディスペンサ10との相対位置が所定の位置に来るように配置される。
ディスペンサ20は、その内部に予め脱気処理された潤滑流体10を保持しており、適時、流体軸受装置1の開口端7に対して所定の量の潤滑液体を滴下する。ディスペンサ20による滴下方法は、特に限定されるものではなく、シリンジに潤滑流体を充填してプランジャの押し込み量によって適量を押し出す容積計量方式や、ディスペンサ内部に開閉バルブを有し外部からエア圧等によって加圧された潤滑流体を吐出制御する方式、あるいは圧電素子等による加圧によって微小量の吐出を行うインクジェット方式等、使用者にとって便宜な既知の方法を用いることができる。なお、ここでは、シリンジに潤滑流体を充填してプランジャの押し込み量によって適量を押し出す容積計量方式を例として示している。
潤滑流体10の脱気処理は、潤滑流体中の溶存気体を除去することが目的である。溶存気体の除去が不十分である場合、真空中における滴下時に溶存気体の膨張によってノズル20から出た直後に発泡して潤滑流体の飛沫によって、流体軸受装置1あるいは真空チャンバ30内の汚染を引き起こす。このような脱気処理は、潤滑流体10を滴下時の真空度と同等、あるいはより高真空条件下に置き、潤滑流体10からの発泡が収まるまで放置すればよく、加温や撹拌処理等の作用を併用すれば、より短時間で脱気することができる。
なお、潤滑流体10としては、一般的に低揮発性と金属部材に対する優れた潤滑特性とからポリオールエステル系オイルが多く用いられている。
真空チャンバ30は、複数個の流体軸受装置1およびそれらを収容するパレット25を出し入れするために、図示しない開閉機構を備えた密閉容器であって、外部からのエアリークが小さいものを用いることが望ましい。
真空ポンプ32は、真空チャンバ30内を排気・減圧し、真空チャンバ30内に収容された流体軸受装置1内部の間隙部分8内に存在する気体を排気する。真空チャンバ30内は100Pa以下の真空、好ましくは10Pa以下にまで減圧されることが望ましく、例えば、到達真空度が0.1Paから1Paであるロータリーポンプあるいはドライポンプ等が適している。
コンダクタンス可変バルブ34は、真空チャンバ30と真空ポンプ32の間に接続されており、真空ポンプ32による真空チャンバ30の排気速度を減ずる制御が可能なバルブである。コンダクタンス可変バルブ34としては、例えば、排気経路となる円筒配管内に密着するように配置された円盤が、流れ方向と垂直方向に回転することでバルブの開閉度を任意に可変可能なバタフライバルブを用いることができる。他にも、配管の断面積を可変することで配管のコンダクタンスを可変することが可能なものであれば、この形態に限定されるものではない。例えば、フラップバルブ等、入手可能なバルブを用いることができる。ただし、コンダクタンス可変バルブ34に排気経路を完全に閉塞させる能力がない場合、真空チャンバ30と真空ポンプ32との排気経路の間に加えて開閉バルブを設けることが望ましい。
リークバルブ36は、潤滑流体の滴下工程後、真空チャンバ30内に大気を導入し、減圧された流体軸受装置1内部と大気圧に復圧された真空チャンバ30内部の差圧によって、流体軸受装置1の内部に潤滑流体10を浸入させる際に用いられる。真空チャンバ30内への大気の導入に際して、大気中の異物が真空チャンバ30内の流体軸受装置1内に進入し、流体軸受装置1の回転性能を阻害することを防止するため、気体中の異物を除去するエアフィルタ37が設けられていることが望ましい。エアフィルタ37のメッシュは0.2μm程度である。また、リークバルブ36を介した大気の急激な流入による真空チャンバ30内の異物の巻上げを防止するため、リーク速度の小さなリークバルブを用いることが望ましい。
真空計31は、真空チャンバ30内の真空度が所定の真空度に達したか、あるいはエアリーク後に大気圧に復圧したかどうかを確認するために用いられる。0.1Pa程度の中真空領域まで計測できる真空計としてピラニーゲージ等を用いるとよい。
制御部50は、上述した真空ポンプ32と真空計31とに接続されており、真空計31における検知結果に基づいて、真空ポンプ32をフィードバック制御することで、真空チャンバ30内における真空度を制御する。
なお、本実施例では、流体軸受装置1の位置決めは駆動ステージ26によってなされるように説明したが、ディスペンサ20が移動することで流体軸受装置1との位置決めをするようにディスペンサ20を駆動するようにしてもよい。
次に、本実施例1の第1の真空注油装置101の動作について、上述の図1に示したプロセスチャートに照らし合わせて以下で説明する。
まず、図1のステップS10において所定の真空度以下で脱気処理された潤滑流体10を、ステップS11においてディスペンサ20に充填する。図5に例として示した容積計量方式のディスペンサ20の場合、脱気処理済みの潤滑流体10をディスペンサ20に充填する作業はできる限り減圧された環境下において実施されることが望ましい。一度完全に脱気処理されても、潤滑流体10が大気に暴露されると容易に気体(空気)が潤滑流体に溶解してしまうためである。したがって、脱気処理を真空チャンバ30内で実施し、高真空状態を維持したままディスペンサ20内に潤滑流体10を補充すればよい。なお、図示しない別の真空装置を用いて予め脱気処理した潤滑流体10を、大気圧にてディスペンサ20内に吸引する等して充填する場合は、ディスペンサ20を真空チャンバ30内に設置してから真空ポンプ32によって真空チャンバ30内を減圧する。そして、潤滑流体10からの発泡が生じていないことを確認できるまで、再度脱気処理することが必要となる。
続いて、パレット25上に配列された複数個の流体軸受装置1を真空チャンバ30内の駆動ステージ26上にセットする(ステップS01)。真空チャンバ30の図示しない開閉機構を閉じるとともに、リークバルブ36を閉じ、真空ポンプ32によって真空チャンバ30内の排気を開始する(ステップS02)。このとき、コンダクタンス可変バルブ34はその開閉度が最大となるように制御され、排気速度は最大となっている。
制御部50が、真空チャンバ30内の真空度が所定の真空度(図2(b)における真空度P0)に到達したことを認識すると(ステップS03)、コンダクタンス可変バルブ34の開閉度をステップS02時よりも小さく絞って排気速度を小さくする(ステップS04)。そして、個々の流体軸受装置1の間隙部8の開口端7へと潤滑流体10の滴下を開始する(ステップS05)。従来の技術のように、真空度が所定の真空度に到達した後、真空度がほぼ一定となる到達真空度になるまで放置する必要はない。
ここで、制御部50は、ステップS04におけるコンダクタンス可変バルブ34の開閉度は、潤滑流体の滴下が終了するステップS05の最終時点において、真空チャンバ30内の真空度が所定の真空度P0を超えない範囲で徐々に低真空化、すなわち大気圧に近づくような排気速度が得られるように制御する。
潤滑流体10の滴下量は流体軸受装置1の設計によるが、5mgから20mg程度であり、個々の滴下時間は0.5secから2sec程度である。一例として挙げると、600個の流体軸受装置1に滴下する時間は10min程度であり、所定の真空度は100Pa、滴下開始時の真空度P3は3Pa、滴下終了時の真空度P4は10Pa前後である。
現実的には、ステップS05の滴下中の真空度を完全に一定に保つ(P3=P4)よりも、真空度を徐々に悪化させるように制御する(P3<P4)方が、技術的に実現が容易である。このため、潤滑流体の滴下開始は真空チャンバ30内の真空度が所定の真空度P0に到達しても直ちに行わず、P4がP0より真空度が高くなるように、P3とP4の差分を見込んで若干の時間差をおいて実施する。さらに、ステップS05の滴下の一連の動作中は、真空計31にて真空チャンバ30の真空度が上述のように制御されていることを確認することが望ましい。さらに好ましくは、真空計31によって計測された真空度に基づいて、コンダクタンス可変バルブ34の開閉度をフィードバック制御すればよい。
以上のような制御により、潤滑流体10が滴下され、開口端7を封止された流体軸受装置1内の間隙部分8には、残存した気体の圧力よりも、流体軸受装置1外部の圧力の方が徐々に高まって、封止している潤滑流体10が間隙部分8へと浸入する方向に圧力が働くため、潤滑流体の発泡の問題は生じない。
なお、ステップS05における真空チャンバ30内の真空度を一定、もしくは徐々に低真空化させる手段としては、ステップS02の間、真空チャンバ30に接続されるすべてのバルブを閉じて密閉することで容易に実現されるように思われる。しかし、実際に式1の条件を満足させることは容易ではない。真空チャンバ30の構造に由来するエアリーク、あるいは真空チャンバ30内壁や内部に備えられた部材からのアウトガスによる低真空化を防止することが困難であるばかりか、その低真空化の速度も真空チャンバ毎に異なるためである。P3とP4の差分を吸収するために、P3<<P0とすることは排気時間を長時間化することであり、本発明に目的に合致しない。
続いて、リークバルブ36を開き、エアフィルタ37を介して真空チャンバ30内部に大気を導入して真空チャンバ30内を大気圧に復圧する。そして、減圧された流体軸受装置1内部と、大気圧となった流体軸受装置1外部との差圧によって潤滑流体10を間隙部分8へと浸入させる(ステップS06)。
最後に、流体軸受装置1をパレット25とともに真空チャンバ30から取り出し、真空注入工程は終了する。なお、製造ラインにおいては、真空注入工程の付帯工程として、真空注入済みの流体軸受装置1を再び真空チャンバ30内で減圧する。そして、間隙部分に気泡の混入がないかどうかを検査する減圧試験工程、さらには流体軸受装置1の開口部に付着した余剰な潤滑流体を吸引もしくは拭き取りする工程が実施される。
以上のように実施例1の第1の真空注油装置101によれば、潤滑流体の滴下工程中における流体軸受装置1の間隙部分からの潤滑流体の発泡を防止しつつ、真空注入工程の短時間化を実現することができる。
[実施例2]
図6は、本実施例2に係る流体軸受装置1へ潤滑流体の真空注入を行うための第2の真空注入装置(潤滑流体の注入装置)102の構成を示す模式図である。
第2の真空注入装置102では、図6に示すように、上述した第1の真空注入装置101のうち、コンダクタンス可変バルブ34を削除して開閉バルブ33だけの構成に変更され、さらに大気を導入するリークバルブ36に並列して接続される流量調整バルブ39とバルブ38が追加されている点で異なっているが、そのほかの点については同様である。なお、図5と同一の番号を付与した部材については、その機能は同一であるため、ここではその説明を省略する。
本実施例2においても、真空注入方法の手順は、図1に示したフローチャートに従うが、ステップS05の潤滑流体10の滴下時における真空度の制御手段が異なる。実施例1に示した図5の第1の真空注油装置101では、ステップS05における低真空化の手段が排気経路のコンダクタンスを下げて排気速度を減じることであった。
第2の真空注入装置102では、制御部50は、真空ポンプ32による排気速度は制御せず、バルブ38を開放して流量調整バルブ39によって制御される微量なエアリークにより真空チャンバ30内の真空度を低真空化する。好ましくは、制御部50は、真空計31による真空度の計測値を元に、バルブ38を断続的に開閉、あるいは流量調整バルブ39の流量を調整するフィードバック制御をする。
なお、図6では、真空チャンバ30にバルブ38が接続され、バルブ38に流量調整バルブ39が接続され、流量調整バルブ39にエアフィルタ37が接続された例を示しているが、必ずしもこの順序に限定されるものではない。例えば、順序を入れ替えても同等の機能が得られれば順序を入れ替えても構わない。また、流量調整バルブ39が完全に流量をゼロとできるものであれば、バルブ38を省略してもよい。
以上のように、本実施例2に係る第2の真空注油装置102によれば、実施例1と同様の効果が得られ、潤滑流体の滴下工程中における流体軸受装置1の間隙部分における潤滑流体の発泡を防止しつつ、真空注入工程の短時間化を実現することができる。
[実施例3]
図7は、本実施例3に係る流体軸受装置へ潤滑流体の真空注入を行うための第3の真空注入装置(潤滑流体の注入装置)103の構成を示す模式図である。
第3の真空注入装置103では、図7に示すように、上述した第1の真空注入装置101のうち、コンダクタンス可変バルブ34を削除して開閉バルブ33だけの構成に変更されている。さらに、真空ポンプ40として、低真空領域用のロータリーポンプあるいはドライポンプと、中真空から高真空用としてターボ分子ポンプを備えている点で異なっているが、その他の構成については同様である。なお、図5と同一の番号を付与した部材については、その機能が同一であるから、ここではその説明を省略する。
ターボ分子ポンプは、ロータの回転速度をデジタル制御して排気速度を可変できるものである。通常、排気速度の大きな大型のターボ分子ポンプの場合、大気圧付近ではモータにかかる負荷が大きいため、先にロータリーポンプ等で真空チャンバを例えば1Pa程度まで排気した後に使用される。しかし、小型のターボ分子ポンプの中には、高真空用のタービン翼に加え低真空用のねじ溝ポンプを併せ持つハイブリットタイプがあり、1000Pa程度の低真空領域から用いることができ、1Pa程度の中真空領域における真空注油を狙った場合、減圧する時間を短縮するのに有効である。
本実施例3においても、真空注入方法の手順は図1に示したフローチャートに従うが、ステップS05の潤滑流体の滴下時における真空度の制御手段が異なる。
具体的には、実施例1に示した図5の第1の真空注油装置101では、ステップS05における低真空化の手段が排気経路のコンダクタンスを下げて排気速度を減じることであった。
第3の真空注入装置103では、制御部50が、真空ポンプ40を構成するターボ分子ポンプのロータの回転速度を低下させることで、ポンプの排気速度そのものを低下させ、真空チャンバ30の真空度を低真空化する。好ましくは、制御部50が、真空計31による真空度の計測値に基づいて、ターボ分子ポンプのロータ回転数をフィードバック制御する。一般的に、ターボ分子ポンプは投入電源を停止しても慣性で回転し続け、急激な減速は見込めない。穏やかな減速で排気速度を制御できる場合以外は、レスポンスのよいロータ回転速度制御を得るために、小型のロータでかつ電磁ブレーキで減速できるタイプのターボ分子ポンプを選定する必要がある。
以上のように、本実施例3の第3の真空注油装置103によれば、実施例1と同様の効果が得られ、潤滑流体10の滴下工程中における流体軸受装置1の間隙部分8における潤滑流体の発泡を防止しつつ、真空注入工程のさらなる短時間化を実現することができる。
さらに、所定の真空度P0をより高真空側に設定することが可能になり、流体軸受装置1内部の残留気体をより完全に排気することで真空注入の信頼性を高めることができる。
なお、実施例1から実施例3に示した真空チャンバ30の真空度を徐々に低真空化する手段は、それぞれ排他的なものではなく、組み合わせて実施してもよい。
次に、本発明の実施例による、発明の効果について実験結果を元に説明する。
図8は、排気時間の短縮という観点において、従来の真空注入装置と本発明の真空注入装置101〜103とを比較した結果を示す説明図である。
「a」は、従来の真空注入装置による潤滑流体の真空注入の結果であり、「a’」はステップS05における低真空化制御をせずに滴下開始を早めた結果である。さらに、「b」は、低真空化制御をしながら滴下開始を従来よりも早めた結果を示している。
サンプル数は600個、滴下量それぞれ9mg、個々の滴下時間は1.6secでありステップS05の滴下開始から終了までの時間は16minであった。また、所定の真空度P0を10Paとし、潤滑流体の脱気処理は0.1Pa以下で2時間、気泡が発生しなくなるまで十分に行った。潤滑流体の滴下開始までのおおよその排気時間と滴下開始時の真空度はそれぞれ、「a」:30min,0.1Pa、「a’」:3min,3Pa、「b」:3min,3Paであった。滴下終了時の真空度は、従来の技術で真空度が安定するまで減圧放置した「a」では0.1Paとほぼ変わらなかった。一方、ステップS05において低真空化の制御をしなかった「a’」では、0.2Pa、低真空化の制御を行った「b」では、8Paであった。
すなわち、低真空化の制御を行わないで排気時間のみを1/10に短縮した「a’」は、流体軸受装置の内外での差圧が流体軸受装置内の残留気体を膨張させる方向に約15倍となった。一方、低真空化の制御を行って排気時間を1/10に短縮した「b」では、流体軸受装置の内外での差圧が流体軸受装置内の残留気体を圧縮する方向に約2.7倍となった。
これらの条件において、潤滑流体の真空注入後の流体軸受装置外部面に飛沫として付着した潤滑流体の有無と、滴下量の不足の有無とを目視にて確認した。この潤滑流体の飛沫の付着は、流体軸受装置の間隙部分からの発泡が原因であるが、個々の流体軸受装置について発泡現象を同時に捉えることが困難であるため、その結果としての飛沫の付着の有無をもって、このステップS05における真空チャンバの低真空化制御の効果として判断した。
結果として、低真空化の制御を行わない「a’」では600個中、68個(11.3%)の潤滑流体の飛沫が確認された。一方、低真空化の制御を行った「b」では、飛沫は確認されなかった。
これは、本発明による低真空化制御を用いた真空注入方法が、工程時間を短縮しながら潤滑流体の飛散による汚染を防止することに有効であることを証明している。
本発明に係る流体軸受装置への潤滑流体の注入装置は、潤滑流体の飛散や滴下量不足といった問題の発生を回避しつつ、潤滑流体の真空注入を短時間で行うことができるという効果を奏することから、ハードディスク、光ディスク等を回転駆動するスピンドルモータに含まれる流体軸受装置の製造工程において適用されることが特に有用である。
本発明の一実施形態に係る潤滑流体の注入装置による真空注入方法の処理の流れを示すフローチャート。 (a)は、従来の真空注入方法における真空度プロファイルを示すグラフ。(b)は、図1の真空注入方法における真空度プロファイルを示すグラフ。 (a)〜(d)は、図1の真空注入方法による潤滑流体の注入時における流体軸受装置の内部の状態を示す断面図。 図1の真空注入方法によって処理される流体軸受装置の構成を示す断面図。 本発明の一実施例に係る第1の真空注入装置の構成を示す模式図。 本発明の他の実施例に係る第2の真空注入装置の構成を示す模式図。 本発明のさらに他の実施例に係る第3の真空注入装置の構成を示す模式図。 本発明に係る真空注入装置と従来の真空注入装置とで処理した結果を比較した説明図。
符号の説明
1 流体軸受装置
2 スリーブ
3 シャフト
4 スラストプレート
7 開口端
8 間隙部
10 潤滑流体
11 気泡
20 ディスペンサ(滴下部)
25 パレット
26 駆動ステージ
30 真空チャンバ(筐体部)
31 真空計
32,40 真空ポンプ(減圧部)
33,38 バルブ
34 コンダクタンス可変バルブ
36 リークバルブ
37 エアフィルタ
39 流量調整バルブ
40 真空ポンプ
50 制御部
101 第1の真空注入装置(潤滑流体の注入装置)
102 第2の真空注入装置(潤滑流体の注入装置)
103 第3の真空注入装置(潤滑流体の注入装置)

Claims (7)

  1. 所定の隙間に潤滑流体が保持される流体軸受装置に対して、前記潤滑流体を真空状態で注入する注入装置であって、
    前記潤滑流体が注入される前記流体軸受装置を収容する筐体部と、
    前記筐体部内を減圧する減圧部と、
    前記流体軸受装置に対して前記潤滑流体を滴下する滴下部と、
    前記筐体部内において、前記滴下部による前記流体軸受装置に対する前記潤滑流体の滴下開始時の真空度を、所定の到達真空度よりも低くなるように設定するとともに、前記滴下開始時における真空度よりも滴下終了時の真空度が低くなるように制御する制御部と、
    潤滑流体の注入装置。
  2. 前記制御部は、前記潤滑流体の滴下開始時における前記筐体部内の真空度、および前記潤滑流体の滴下終了時における真空度が、前記到達真空度よりも低く、かつ使用環境化における最高の真空度よりも高い所定の真空度になるように制御する、
    請求項1に記載の潤滑流体の注入装置。
  3. 前記筐体部と前記減圧部との間に設けられたコンダクタンス可変バルブをさらに備えており、
    前記制御部は、前記コンダクタンス可変バルブのコンダクタンスを小さくして、前記潤滑流体の滴下開始時の真空度に対して滴下終了時の真空度を低真空化する制御を行う、
    請求項1または2に記載の潤滑流体の注入装置。
  4. 前記流体軸受装置を収容する前記筐体部内に大気を導入するリークバルブをさらに備えており、
    前記制御部は、前記リークバルブを開放して、前記潤滑流体の滴下開始時の真空度に対して滴下終了時の真空度を低真空化する制御を行う、
    請求項1から3のいずれか1項に記載の潤滑流体の注入装置。
  5. 前記流体軸受装置を収容する前記筐体部に接続された前記減圧部としてターボ分子ポンプを用いており、
    前記制御部は、前記ターボ分子ポンプの回転数を制御して、前記潤滑流体の滴下開始時の真空度に対して滴下終了時の真空度を低真空化する制御を行う、
    請求項1から4のいずれか1項に記載の潤滑流体の注入装置。
  6. 所定の隙間に潤滑流体が保持される流体軸受装置に対して前記潤滑流体を真空状態で注入する注入方法であって、
    前記流体軸受装置を筐体部内に載置する第1のステップと、
    前記筐体部内の真空度が所定の到達真空度よりも低くなるように減圧する第2のステップと、
    前記流体軸受装置に対して前記潤滑流体の注入を開始する第3のステップと、
    前記滴下開始時における真空度よりも滴下終了時の真空度が低くなるように前記筐体部内の気圧を制御する第4のステップと、
    を備えている潤滑流体の注入方法。
  7. 前記潤滑流体の滴下開始時よりも真空度が高くなるように、前記潤滑流体を予め減圧処理するステップを、さらに備えている、
    請求項6に記載の潤滑流体の注入方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101300456B1 (ko) * 2012-01-18 2013-08-27 삼성전기주식회사 유체 주입 방법 및 이를 구현하기 위한 장치와 이에 의해 제조되는 모터

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