JP2009096259A - 音響システム - Google Patents

音響システム Download PDF

Info

Publication number
JP2009096259A
JP2009096259A JP2007268182A JP2007268182A JP2009096259A JP 2009096259 A JP2009096259 A JP 2009096259A JP 2007268182 A JP2007268182 A JP 2007268182A JP 2007268182 A JP2007268182 A JP 2007268182A JP 2009096259 A JP2009096259 A JP 2009096259A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sound
filter
seat
sound source
speaker
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2007268182A
Other languages
English (en)
Inventor
Masanobu Maeda
昌宣 前田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Denso Ten Ltd
Original Assignee
Denso Ten Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Denso Ten Ltd filed Critical Denso Ten Ltd
Priority to JP2007268182A priority Critical patent/JP2009096259A/ja
Priority to US12/285,521 priority patent/US20090097679A1/en
Publication of JP2009096259A publication Critical patent/JP2009096259A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04SSTEREOPHONIC SYSTEMS 
    • H04S3/00Systems employing more than two channels, e.g. quadraphonic
    • H04S3/008Systems employing more than two channels, e.g. quadraphonic in which the audio signals are in digital form, i.e. employing more than two discrete digital channels
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04SSTEREOPHONIC SYSTEMS 
    • H04S7/00Indicating arrangements; Control arrangements, e.g. balance control
    • H04S7/30Control circuits for electronic adaptation of the sound field
    • HELECTRICITY
    • H04ELECTRIC COMMUNICATION TECHNIQUE
    • H04RLOUDSPEAKERS, MICROPHONES, GRAMOPHONE PICK-UPS OR LIKE ACOUSTIC ELECTROMECHANICAL TRANSDUCERS; DEAF-AID SETS; PUBLIC ADDRESS SYSTEMS
    • H04R2499/00Aspects covered by H04R or H04S not otherwise provided for in their subgroups
    • H04R2499/10General applications
    • H04R2499/13Acoustic transducers and sound field adaptation in vehicles

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Acoustics & Sound (AREA)
  • Signal Processing (AREA)
  • Multimedia (AREA)
  • Fittings On The Vehicle Exterior For Carrying Loads, And Devices For Holding Or Mounting Articles (AREA)
  • Stereophonic System (AREA)
  • Soundproofing, Sound Blocking, And Sound Damping (AREA)

Abstract

【課題】他席からの漏れ音を低減しつつ臨場感のある個別音響環境を提供すること。
【解決手段】漏れ音低減フィルタが、第2の個別空間に設置された他スピーカーから第1の個別空間へ漏れる音を打ち消す制御音を他スピーカー/エラーマイク間の漏れ音伝達関数および自スピーカー/エラーマイク間の誤差経路伝達関数に基づいて生成し、生成した制御音を自スピーカーへ提供し、仮想音源フィルタが、聴取者の前方に音像を配した提供音である仮想音源を生成し、後方音源逆フィルタが、仮想音源が自スピーカーで再生されることによって生じる音像の後方定位を聴取者寄りに補正し、エラーマイク、漏れ音低減フィルタおよび後方音源逆フィルタに接続された補助フィルタが、動的に推定した漏れ音伝達関数および誤差経路伝達関数を漏れ音低減フィルタへ、動的に推定した誤差経路伝達関数を後方音源逆フィルタへ、それぞれ提供するように音響システムを構成する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、所定の空間内に設けられた各個別空間に対して個別音響環境を提供する音響システムに関し、特に、環境変化や経年変化がある場合であっても他席の漏れ音を効果的に低減することができるとともに、聴取者の視界を妨げることなく臨場感のある個別音響環境を提供することができる音響システムに関する。
飛行機、鉄道、自動車といった乗り物において、座席ごとに異なる音響環境を提供する音響システムが知られている。しかし、聴取者がヘッドセットを用いない場合には、他席からの漏れ音や騒音が問題となるため、快適な個別音響環境を提供するには、このような雑音を低減することが重要となる。
たとえば、特許文献1には、騒音を取得するエラーマイクを用い、取得した騒音を打ち消す制御音を発生させることで騒音を低減する手法が開示されている。また、他席からの漏れ音を低減する手法としては、エラーマイクの出力および他席音源を参照信号とするFilterd−XLMS(適応最小平均自乗フィルタ)が知られている。
ここで、他席には他席スピーカーを、自席には自席スピーカーおよび自席エラーマイクを配置したと仮定する。Filterd−XLMSを用いる場合、他席スピーカーから自席への漏れ音伝達関数と、自席スピーカー/自席エラーマイク間の誤差経路伝達関数とに基づき、漏れ音を打ち消す制御音を発生させることになる。そして、かかる誤差経路伝達関数は、音響システムの提供に先立って予め推定しておいたものを用いることが一般的である。
特開平5−61477号公報
しかしながら、予め推定した誤差経路伝達関数を用いると、推定時と制御時とで音場の環境が変わった場合に漏れ音の低減精度が悪化するという問題がある。具体的には、誤差経路伝達関数の推定時と、かかる誤差経路伝達関数を用いた制御時とでは、音場環境の変化(人の位置、湿度、温度といった環境の変化、エラーマイクおよびスピーカーの経年変化)が存在する。しかし、制御時に用いられる経路伝達関数は、制御時における音場環境に即したものではないため、高精度な漏れ音低減制御を行うことができない。
ところで、漏れ音低減制御の制御効率を向上させるには、スピーカーおよびエラーマイクは聴取者の耳元に近い位置に設置することが好ましいが、自動車において個別音響環境を提供する場合には、ドライバーの視界を遮らない等の安全上の理由から、自席シートにスピーカーおよびエラーマイクを設置せざるをえない。
しかし、自席シートにスピーカーを設置すると、聴取者は後方からの音を聴くことになるので、後方に音像が定位してしまい臨場感のある聴取が困難になるという問題が発生する。
これらのことから、聴取者の後方にスピーカーを配置した場合において、環境変化や経年変化がある場合であっても他席の漏れ音を効果的に低減することができるとともに、聴取者の視界を妨げることなく臨場感のある個別音響環境を提供することができる音響システムをいかにして実現するかが大きな課題となっている。
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、環境変化や経年変化がある場合であっても他席の漏れ音を効果的に低減することができるとともに、聴取者の視界を妨げることなく臨場感のある個別音響環境を提供することができる音響システムを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、所定の空間内に設けられた各個別空間に対して個別音響環境を提供する音響システムであって、第1の個別空間における聴取者の後方に設置された自スピーカーと、前記自スピーカーよりも前記聴取者寄りに設置されたエラーマイクと、第2の個別空間に設置された他スピーカーから前記第1の個別空間へ漏れる音を打ち消す制御音を前記他スピーカー/前記エラーマイク間の漏れ音伝達関数および前記自スピーカー/前記エラーマイク間の誤差経路伝達関数に基づいて生成し、該制御音を前記自スピーカーへ提供する漏音低減手段と、前記聴取者の前方に音像を配した提供音である仮想音源を生成する仮想音源手段と、前記仮想音源が前記自スピーカーで再生されることによって生じる音像の後方定位を前記聴取者寄りに補正する定位補正手段と、前記エラーマイク、前記漏音低減手段および前記定位補正手段に接続されており動的に推定した前記漏れ音伝達関数および前記誤差経路伝達関数を前記漏音低減手段へ、動的に推定した前記誤差経路伝達関数を前記定位補正手段へそれぞれ提供する動的推定手段とを備えたことを特徴とする。
本発明によれば、第1の個別空間における聴取者の後方に設置された自スピーカーと、自スピーカーよりも聴取者寄りに設置されたエラーマイクとを用い、漏れ音低減フィルタが、第2の個別空間に設置された他スピーカーから第1の個別空間へ漏れる音を打ち消す制御音を他スピーカー/エラーマイク間の漏れ音伝達関数および自スピーカー/エラーマイク間の誤差経路伝達関数に基づいて生成し、生成した制御音を自スピーカーへ提供し、仮想音源フィルタが、聴取者の前方に音像を配した提供音である仮想音源を生成し、後方音源逆フィルタが、仮想音源が自スピーカーで再生されることによって生じる音像の後方定位を聴取者寄りに補正し、漏れ音低減フィルタおよび後方音源逆フィルタに接続された補助フィルタが、エラーマイク、動的に推定した漏れ音伝達関数および誤差経路伝達関数を漏れ音低減フィルタへ、動的に推定した誤差経路伝達関数を後方音源逆フィルタへ、それぞれ提供することとしたので、環境変化や経年変化がある場合であっても他席の漏れ音を効果的に低減することができるとともに、聴取者の視界を妨げることなく臨場感のある個別音響環境を提供することができるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照して、この発明に係る音響システムの好適な実施例1および実施例2を詳細に説明する。なお、実施例1では、他席音源側に接続された補助フィルタで漏れ音低減フィルタおよび後方音源逆フィルタを適応制御する場合について、実施例2では、自席音源側に接続された補助フィルタで漏れ音低減フィルタおよび後方音源逆フィルタを適応制御する場合について、それぞれ説明する。また、以下では、本発明に係る音響システムを自動車に適用した場合について説明するが、映画館やコンサートホールなどの各座席に適用することとしてもよい。
図1は、実施例1に係る音響システムの概要構成を示す図である。同図に示すように、音響システム1aは、他席スピーカー2と、自席スピーカー3と、自席エラーマイク4と、他席音源11と、漏れ音低減フィルタ12と、自席音源13と、仮想音源フィルタ14と、後方音源フィルタ15と、補助フィルタ16とからなる。なお、自席スピーカー3から提供される音は、自席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する(同図の「仮想音源5」参照)。また、左上角が黒く示されたフィルタ(漏れ音低減フィルタ12、後方音源逆フィルタ15および補助フィルタ16は、これらのフィルタがADF(適応フィルタ;Adaptive Digital Filter)であることを表している。
同図に示すように、実施例1に係る音響システム1aは、他席スピーカー2から自席の聴取者に漏れる音を効果的に低減するために、他席スピーカー2/自席エラーマイク4間の漏れ音伝達関数P(z)および自席スピーカー3/自席エラーマイク4間の誤差経路伝達関数C(z)を動的に推定するとともに、臨場感のある個別音響環境を提供するために、自席スピーカー3が発する音を仮想音源5に示すように聴取者の前方に定位させる。
このように、補助フィルタ16が動的に推定した漏れ音伝達関数P(z)および誤差伝達関数C(z)を漏れ音低減フィルタ12に対して提供するとともに、動的に推定した誤差伝達関数C(z)を後方音源逆フィルタ15に対して提供することで、漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15の精度を向上させることができる。そして、1つの補助フィルタ(補助フィルタ16)を用いて漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15を適応制御するので、複数の補助フィルタを用いる場合に比べて演算量を低減することができる。
また、仮想音源フィルタ14で聴取者の前方に音像を有する音を生成し、さらに、後方音源逆フィルタ15で、自席スピーカー3の位置を基準とする音像を聴取者の耳位置に近い自席エラーマイク4の位置へ定位させることで臨場感のある個別音響環境を提供することができる。
ここで、実施例1に係る音響システム1aの特徴点を明確化する観点から、従来技術に係る音響システムについて図10を用いて説明しておく。図10は、従来技術に係る音響システム201の概要構成を示す図である。
同図に示すように、従来技術に係る音響システム201は、他席スピーカー202と、自席スピーカー203と、自席エラーマイク204と、他席音源211と、漏れ音低減フィルタ212と、自席音源213と、誤差経路伝達関数214と、LMS(最小平均自乗フィルタ;Least Mean Square)215およびLMS216とからなる。なお、LMS215およびLMS216は、左右の自席エラーマイク(204aおよび204b)にそれぞれ対応しており、左上角が黒く示されたフィルタ(漏れ音低減フィルタ12)は、このフィルタがADF(適応フィルタ;Adaptive Digital Filter)であることを表している。
また、同図に示すように、他席スピーカー202/自席エラーマイク204間の伝達関数を「漏れ音伝達関数P(z)」と、自席スピーカー203/自席エラーマイク204間の伝達関数を「誤差経路伝達関数C(z)」と、それぞれ定義する。なお、誤差経路伝達関数214の実体は、「誤差経路伝達関数C(z)」を予め推定しておいた「誤差経路伝達関数C^(z)」である。
すなわち、従来技術に係る音響システム201は、予め推定しておいた「誤差経路伝達関数C^(z)」および自席エラーマイク204の出力に基づいて漏れ音低減フィルタ212を適応制御するものである。そして、漏れ音低減フィルタ212は、静的な「誤差経路伝達関数C^(z)」に基づいて「漏れ音伝達関数P(z)」を推定する。
しかし、「誤差経路伝達関数C(z)」は、制御時における音場環境(人の位置、湿度、温度といった環境、エラーマイクおよびスピーカーの経年環境)に応じて変化するため、静的な「誤差経路伝達関数C^(z)」と乖離する。したがって、この「誤差経路伝達関数C^(z)」を実体とする誤差経路伝達関数214を用いて漏れ音低減フィルタ212を適応制御しても高精度な漏れ音低減を行うことはできない。
また、従来技術に係る音響システム201では、自席の聴取者に対する音響環境の提供を、自席の聴取者の後方に設置された自席スピーカー203で行うので、提供される音響環境が聴取者の後方に定位してしまう。このため、聴取者に対して臨場感のある音響環境を提供することができないという問題もある。
そこで、図1に示した本実施例に係る音響システム1では、「誤差経路伝達関数C(z)」および「漏れ音伝達関数P(z)」を動的に推定する補助フィルタ16を用いて漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15を適応制御させることとしている。そして、仮想音源フィルタ14および後方音源フィルタ15を用いて音像を聴取者の前方へ定位させることとしている。
図1の説明に戻り、実施例1に係る音響システム1aを詳細に説明する。他席スピーカー2は、右スピーカー2aおよび左スピーカー2bとからなり、たとえば、自動車における運転席等のシート背面部に設置される。なお、他席スピーカー2は、他席音源11と接続されており、他席用の音楽や音声などの個別音響環境を再生する。
自席スピーカー3は、右スピーカー3aおよび左スピーカー3bからなり、たとえば、自動車における後部座席等のシート背面部に設置される。なお、自席スピーカー3は、漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15に接続されており、自席用の音楽や音声などの個別音響環境を再生するとともに、他席スピーカー2からの漏れ音を打ち消す制御音を再生する。
自席エラーマイク4は、右エラーマイク4aおよび左エラーマイク4bからなり、自席スピーカー3を構成する右スピーカー3aおよび左スピーカー3bの前方に設置される。なお、自席エラーマイク4も自席スピーカー3と同じく、たとえば、自動車における後部座席等のシート背面部に設置される。そして、自席エラーマイク4の出力は、補助フィルタ16における各伝達関数の推定に用いられる。
他席音源11は、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disk)といった可搬型記憶媒体の音楽や音声、ラジオ、テレビ、カーナビゲーションシステム等の音楽や音声を再生するデバイスである。なお、他席音源11の出力は、他席スピーカー2へ入力される他、補助フィルタ16にも入力される。
漏れ音低減フィルタ12は、補助フィルタ16の出力に基づいて推定された漏れ音伝達関数P(z)および誤差経路伝達関数C(z)を用い、前席における他席スピーカー2からの漏れ音を打ち消す制御音を発生させるフィルタである。なお、この漏れ音低減フィルタ12は、ADF(適応フィルタ;Adaptive Digital Filter)として構成される。
ここで、漏れ音低減フィルタ12の算出手順について簡単に説明する。漏れ音低減フィルタ12を「Hl(z)」、補助フィルタ16を「S(z)」、漏れ音伝達関数を「P(z)」、誤差経路伝達関数を「C(z)」とすると、これらの関係は、式「S(z)=P(z)+Hl(z)C(z)」と表わされる。なお、漏れ音低減フィルタ12が生成する制御音(打ち消し音)は、「Hl(z)C(z)」と表わされる。
式「S(z)=P(z)+Hl(z)C(z)」において、S(z)およびHl(z)に2通りの初期値(S1(z)、Hl1(z)、S2(z),Hl2(z))を入力し、打ち消し誤差が最少となるようにS1(z)およびS2(z)を更新することで、最適なP(z)およびC(z)を推定することができる。そして、最適なHl(z)は、式「Hl(z)=−P(z)/C(z)」と表わされる。
自席音源13は、CD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disk)といった可搬型記憶媒体の音楽や音声、ラジオ、テレビ、カーナビゲーションシステム等の音楽や音声を再生するデバイスである。なお、自席音源13の出力は、仮想音源フィルタ14および後方音源逆フィルタ15を経て自席スピーカー3へ出力される。
仮想音源フィルタ14は、自席音源13からの出力を受け取り、自席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場を生成するフィルタ(Q(z))である。なお、仮想音源フィルタ14によって生成される仮想音場は、図1の仮想音源5に示したように、あたかも聴取者の前方に音源があるように自席音源13の信号を処理したものである。また、仮想音源フィルタ14は、事前の測定結果等に基づいて予め求められた伝達関数であるので、処理負荷をかけることなく臨場感のある音場を得ることができる。
後方音源逆フィルタ15は、自席スピーカー3/自席エラーマイク4間の誤差経路伝達関数C(z)の逆関数に相当するフィルタであり、自席スピーカー3位置を基準とする仮想音場を自席エラーマイク4位置へ定位させる処理を行う。これにより、自席スピーカー3が聴取者の後方に設置されることに起因する音像の後方定位を補正することができる。なお、後方音源逆フィルタ15を「Hb(z)」とすると、Hb(z)は、式「Hb(z)=1/C(z)」と表わされる。なお、この式におけるC(z)は、補助フィルタ16によって動的に推定されたものである。
補助フィルタ16は、他席音源11および自席エラーマイク4の出力を受け取り、漏れ音伝達関数P(z)および誤差経路伝達関数C(z)を推定する処理を行うフィルタである。そして、この補助フィルタ16の出力は、漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15の適応制御に用いられる。
次に、図1を用いて説明した他席スピーカー2、自席スピーカー3および自席エラーマイク4の位置関係について図2を用いて説明する。図2は、車内における個別音響環境を示す図である。同図に示すように、車内における各シートにはスピーカーが設置されており、各シートに対応する各個別空間に対してそれぞれ異なる音響環境、すなわち、個別音響環境を提供する。なお、同図においては、運転席の後部座席102を「自席」と、運転席101を「他席」とし、運転席の後部座席102に提供される個別音響環境を改善する場合について示している。
同図に示すように、運転席の後部座席102のシートにおける聴取者の頭部近傍には、右スピーカー3aおよび左スピーカー3bからなる自席スピーカー3が聴取者へ向けて設置される。また、自席スピーカー3の前方(シートにおける聴取者側の位置)には、右エラーマイク4aおよび左エラーマイク4bからなる自席エラーマイク4が設置される。
また、運転席101のシートにおける聴取者の頭部近傍には、右スピーカー2aおよび左スピーカー2bからなる他席スピーカー2が聴取者へ向けて設置される。なお、図2では、運転席の後部座席102を「自席」と、運転席101を「他席」とした場合について示したが、助手席103あるいは助手席の後部座席104のいずれかを「他席」とすることとしてもよく、各座席(102〜104)を複数組み合わせて「他席」とすることとしてもよい。また、各席にエラーマイクを設置し、運転席の後部座席102以外の席へ提供される個別音響環境を改善することとしてもよい。
次に、仮想音源フィルタ14および後方音源逆フィルタ15の効果について図3を用いて説明する。図3は、仮想音源フィルタ14および後方音源逆フィルタ15の効果を示す図である。同図に示すように、仮想音源フィルタ14によって生成される仮想音源5は、右仮想音源5aおよび左仮想音源5bからなり、あたかも聴取者111の前方に音源が存在しているかのような音像を有する。このため、自席音源13のみの場合と比べて臨場感のある個別音響環境を提供することができる。
しかし、仮想音源フィルタ14によって生成された仮想音源5は、聴取者111の前方に音像を有すものの、仮想音源フィルタ14には、自席スピーカー3/自席エラーマイク4間の空間(同図に示す112と113とで挟まれた空間)における伝達特性が含まれていない。このため、再生される音像が後方または不明瞭な定位となる。
かかる112と113とで挟まれた空間の影響によって定位感がぼやけることを是正するのが後方音源逆フィルタ15である。これにより、聴取者111の位置で仮想音源5を聴取させることができる。
次に実施例1に係る音響システム1aを複数座席に適用した場合における音響システム1bの概要構成について図4を用いて説明する。図4は、実施例1に係る音響システム1aを複数座席に適用した場合における概要構成を示す図である。なお、同図では、図1における「他席」を「前席」と、同じく「自席」を「後席」と、それぞれ呼ぶことにする。また、図1における他席音源11を前席音源101cと、同じく自席音源13を後席音源102cと記載する。
同図に示すように、音響システム1bは、図1に示した漏れ音低減フィルタ12、仮想音源フィルタ14、後方音源逆フィルタ15および補助フィルタ16を2組備えている。そして、前席101には前席エラーマイク101aおよび前席スピーカー101bが、後席102には、後席エラーマイク102aおよび後席スピーカー102bが、それぞれ設けられる。また、前席101に対応する音源として前席音源101cが、後席102に対応する音源として後席音源102cが、それぞれ用意される。また、同図に示すように、各席にはそれぞれ、エラーマイクおよびスピーカーが設置されている。
なお、図1に示した音響システム1aおいては、他席に対する仮想音源の提供および定位制御処理を省略したため、他席スピーカー2に他席音源11が直接接続されていた。しかし、図4に示した音響システム1bでは、各席に対して仮想音源の提供および定位制御処理を行うため、前席音源101cは、仮想音源フィルタ14aおよび後方音源逆フィルタ15aを経由して前席スピーカー101bに接続される。同様に、後席音源102cは、仮想音源フィルタ14bおよび後方音源逆フィルタ15bを経由して後席スピーカー102bに接続される。
図4に示すように、補助フィルタ16a(同図の補助フィルタ(1))は、後方音源逆フィルタ15a(同図の後方音源逆フィルタ(1))および漏れ音低減フィルタ12a(同図の後方音源逆フィルタ(1))を適応制御する。また、補助フィルタ16b(同図の補助フィルタ(2))は、後方音源逆フィルタ15b(同図の後方音源逆フィルタ(2))および漏れ音低減フィルタ12b(同図の後方音源逆フィルタ(2))を適応制御する。
後席102に対する漏れ音低減制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、前席音源101c、仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))および後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))を経由した信号と、後席エラーマイク102aの信号とが補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))へ入力される。補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))は、後席エラーマイク102a/後席スピーカー102b間の誤差経路伝達関数と、後席エラーマイク102a/前席スピーカー101b間の漏れ音伝達関数を動的に推定する。そして、動的に推定した誤差経路伝達関数および漏れ音伝達関数を漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ提供する。そして、漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))は、前席スピーカー101bから漏れる音を打ち消す制御音を後席スピーカー102bへ出力する。
また、後席102に対する定位制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))によって動的に推定された誤差経路伝達関数が後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))へ提供され、後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))は、仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))からの信号を前方へ定位させる処理を行ったうえで後席スピーカー102bへ出力する。
一方、前席101に対する漏れ音低減制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、後席音源102c、仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))および後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))を経由した信号と、前席エラーマイク101aの信号とが補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))へ入力される。補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))は、前席エラーマイク101a/前席スピーカー101b間の誤差経路伝達関数と、前席エラーマイク101a/後席スピーカー102b間の漏れ音伝達関数を動的に推定する。そして、動的に推定した誤差経路伝達関数および漏れ音伝達関数を漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))へ提供する。そして、漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))は、後席スピーカー102bから漏れる音を打ち消す制御音を前席スピーカー101bへ出力する。
また、前席101に対する定位制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))によって動的に推定された誤差経路伝達関数が後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))へ提供され、後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))は、仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))からの信号を前方へ定位させる処理を行ったうえで前席スピーカー101bへ出力する。
次に、図4に示した音響システム1bのシグナルフローについて図5を用いて説明する。図5は、実施例1に係る音響システム1bのシグナルフローである。なお、同図における「A/D30」はアナログデジタルコンバータを、[Spread21aA]および「Spread21aB」は信号の分配器または複製器を、「EQ&Spread21dA」および「EQ&Spread21aB」は分配器およびイコライザを、「FFT22d」は高速フーリエ変換を、「IFFT21f」は高速逆フーリエ変換を、「VOL31」および「VOL32」はボリュームを、「MIX33」および「MIX34」はミキサーを、「D/A35」はデジタルアナログコンバータを、それぞれ指している。
また、後席エラーマイク102aについて、右信号を「ERR」と、左信号を「ERL」と、後席スピーカー102bについて、右信号を「RR」と、左信号を「RL」とする。また、前席エラーマイク101aについて、右信号を「EFR」と、左信号を「EFL」と、前席スピーカー101bについて、右信号を「FR」と、左信号を「FL」とする。
同図に示すように、音響システム1bが行う制御処理は、仮想音源フィルタ14(同図の14aおよび14b参照)および後方音源逆フィルタ15(同図の15aおよび15b参照)を主な構成要素とする定位制御21と、補助フィルタ16(同図の16aおよび16b参照)および漏れ音低減フィルタ12(同図の12aおよび12b)を主な構成要素とする漏れ音低減制御22とに分けられる。なお、定位制御21におけるC−1Calc21cAが算出するC−1は、補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))が動的に推定した後席エラーマイク102a/後席スピーカー102b間の誤差経路伝達関数C(z)の逆関数であり、C−1Calc21cBが算出するC−1は、補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))が動的に推定した、前席エラーマイク101a/前席スピーカー101b間の誤差経路伝達関数C(z)の逆関数である。
まず、定位制御21におけるシグナルフローについて説明する。後席音源102cに対応する信号RRおよびRLは、A/D30を経由して仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))へ入力される。仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))では、信号RRおよびRLを、後席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場に対応する信号へと変換し、後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))および遅延器であるDelay21bAへ出力する。
また、後席エラーマイク102aに対応する信号ERRおよびERLは、A/D30およびSpread21aAを経由してC−1Calc21cAへ入力される。C−1Calc21cAでは、補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))が動的に推定した後席エラーマイク102a/後席スピーカー102b間の誤差経路伝達関数C(z)に基づいてC−1を算出し、後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))へ出力する。そして、後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))は、音像の後方定位を聴取者の耳位置へ近づける補正処理を行った信号RRおよびRLをEQ&Spread21dAへ出力する。
一方、前席音源101cに対応する信号FRおよびFLは、A/D30を経由して仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))へ入力される。仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))では、信号FRおよびFLを、前席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場に対応する信号へと変換し、後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))および遅延器であるDelay21bBへ出力する。
また、前席エラーマイク101aに対応する信号EFRおよびEFLは、A/D30およびSpread21aBを経由してC−1Calc21cBへ入力される。C−1Calc21cBでは、補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))が動的に推定した前席エラーマイク101a/前席スピーカー101b間の誤差経路伝達関数C(z)に基づいてC−1を算出し、後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))へ出力する。そして、後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))は、音像の後方定位を聴取者の耳位置へ近づける補正処理を行った信号FRおよびFLをEQ&Spread21dBへ出力する。
次に、漏れ音低減制御22におけるシグナルフローについて説明する。EQ&Spread21dAによって分配された信号RRおよびRLは、Delay22bAとDownSampleFIRフィルタ22aAとに入力される。分配された信号RRおよびRLを受けたDelay22bAでは、これらの信号に所定の遅延処理を施し、VOL31、MIX33およびD/A34を経由して後席スピーカー102bへ信号RRおよびRLとして出力する。
また、分配された信号RRおよびRLを受けたDownSampleFIRフィルタ22aAでは、入力された信号のサンプリング周波数よりも低いサンプリング周波数による再サンプリング(ダウンサンプリング)が行われる。なお、DownSampleFIRフィルタ22aAにおいてダウンサンプリングされた信号はUpSampleFIRフィルタ22gにおいてアップサンプリングされたうえで出力される。このように、ダウンサンプリング/アップサンプリング処理を併用することで、ローパスフィルタ等を用いて所定の周波数範囲の音のみを対象とする場合と比して高精度に漏れ音を低減することができる。
DownSampleFIRフィルタ22aAから出力された信号RRおよびRLは、補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))および漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))へ入力される。また、補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))から出力された信号RRおよびRLは、DownSampleFIRフィルタ22aCによってダウンサンプリングされた信号ERRおよびERLとともにADF−S−Calc22cAへ入力され、このADF−S−Calc22cAにおいて補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))のS(z)の値が算出される。
そして、ADF−S−Calc22cAにおいて算出された係数値群は、FFT22d、HoptCalc22eAおよびIFFT22fを経由して漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))へ出力される。なお、HoptCalc22eAは、漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))のHl(z)の値を算出する。
つづいて、漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))で算出された制御音(漏れ音の打ち消し音)は、UpSampleFIRフィルタ22gおよびVOL31を経由してMIX34に出力され、MIX34において定位制御21において変換された信号FRおよびFLと合成されたうえで、D/A35を経て前席スピーカー101bへ信号FRおよびFLとして出力される。
一方、EQ&Spread21dBによって分配された信号FRおよびFLは、Delay22bBとDownSampleFIRフィルタ22aBとに入力される。分配された信号FRおよびFLを受けたDelay22bBでは、これらの信号に所定の遅延処理を施し、VOL32、MIX34およびD/A35を経由して前席スピーカー101bへ信号FRおよびFLとして出力する。
また、分配された信号FRおよびFLを受けたDownSampleFIRフィルタ22aBでは、入力された信号のサンプリング周波数よりも低いサンプリング周波数による再サンプリング(ダウンサンプリング)が行われる。
DownSampleFIRフィルタ22aBから出力された信号FRおよびFLは、補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))および漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ入力される。また、補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))から出力された信号FRおよびFLは、DownSampleFIRフィルタ22aCによってダウンサンプリングされた信号EFRおよびEFLとともにADF−S−Calc22cBへ入力され、このADF−S−Calc22cBにおいて補助フィルタ16b(補助フィルタ(2))のS(z)の値が算出される。
そして、ADF−S−Calc22cBにおいて算出された係数値群は、FFT22d、HoptCalc22eBおよびIFFT22fを経由して漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ出力される。なお、HoptCalc22eBは、漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))のHl(z)の値を算出する。
つづいて、漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))で算出された制御音(漏れ音の打ち消し音)は、UpSampleFIRフィルタ22gおよびVOL32を経由してMIX33に出力され、MIX33において定位制御21において変換された信号RRおよびRLと合成されたうえで、D/A35を経て後席スピーカー102bへ信号RRおよびRLとして出力される。
上述してきたように、本実施例1によれば、第1の個別空間における聴取者の後方に設置された自スピーカーと、自スピーカーよりも聴取者寄りに設置されたエラーマイクとを用い、漏れ音低減フィルタが、第2の個別空間に設置された他スピーカーから第1の個別空間へ漏れる音を打ち消す制御音を他スピーカー/エラーマイク間の漏れ音伝達関数および自スピーカー/エラーマイク間の誤差経路伝達関数に基づいて生成し、生成した制御音を自スピーカーへ提供し、仮想音源フィルタが、聴取者の前方に音像を配した提供音である仮想音源を生成し、後方音源逆フィルタが、仮想音源が自スピーカーで再生されることによって生じる音像の後方定位を聴取者寄りに補正し、エラーマイク、漏れ音低減フィルタおよび後方音源逆フィルタに接続された補助フィルタが、動的に推定した漏れ音伝達関数および誤差経路伝達関数を漏れ音低減フィルタへ、動的に推定した誤差経路伝達関数を後方音源逆フィルタへ、それぞれ提供することとした。また、補助フィルタは、動的に推定した漏れ音伝達関数および誤差経路伝達関数を漏れ音低減フィルタへ提供する際に、かかる誤差経路伝達関数を後方音源逆フィルタへ提供することとした。
したがって、環境変化や経年変化がある場合であっても他席の漏れ音を効果的に低減することができるとともに、聴取者の視界を妨げることなく臨場感のある個別音響環境を提供することができる。
ところで、上述した実施例1では、他席音源側に接続された補助フィルタで漏れ音低減フィルタおよび後方音源逆フィルタを適応制御する場合について示したが、補助フィルタの接続位置を変更することも可能である。そこで、以下に示す実施例2では、自席音源側に接続された補助フィルタで漏れ音低減フィルタおよび後方音源逆フィルタを適応制御する場合について説明する。なお、実施例2の説明において実施例1と重複する部分については、説明を省略するか簡単な説明にとどめることとする。
図6は、実施例2に係る音響システムの概要構成を示す図である。同図に示すように、音響システム1cは、他席スピーカー2と、自席スピーカー3と、自席エラーマイク4と、他席音源11と、漏れ音低減フィルタ12と、自席音源13と、仮想音源フィルタ14と、後方音源フィルタ15と、補助フィルタ17とからなる。なお、自席スピーカー3から提供される音は、自席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する(同図の「仮想音源5」参照)。また、左上角が黒く示されたフィルタ(漏れ音低減フィルタ12、後方音源逆フィルタ15および補助フィルタ17は、これらのフィルタがADF(適応フィルタ;Adaptive Digital Filter)であることを表している。
同図に示すように、実施例2に係る音響システム1cは、他席スピーカー2から自席の聴取者に漏れる音を効果的に低減するために、他席スピーカー2/自席エラーマイク4間の漏れ音伝達関数P(z)および自席スピーカー3/自席エラーマイク4間の誤差経路伝達関数C(z)を動的に推定するとともに、臨場感のある個別音響環境を提供するために、自席スピーカー3が発する音を仮想音源5に示すように聴取者の前方に定位させる。
このように、補助フィルタ17が動的に推定した誤差伝達関数C(z)を後方音源逆フィルタ15に対して提供するとともに、動的に推定した漏れ音伝達関数P(z)および誤差伝達関数C(z)を漏れ音低減フィルタ12に対して提供することで、漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15の精度を向上させることができる。そして、1つの補助フィルタ(補助フィルタ17)を用いて漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15を適応制御するので、複数の補助フィルタを用いる場合に比べて演算量を低減することができる。
なお、仮想音源フィルタ14で聴取者の前方に音像を有する音を生成し、さらに、後方音源逆フィルタ15で、自席スピーカー3の位置を基準とする音像を聴取者の耳位置に近い自席エラーマイク4の位置へ定位させる点については、実施例1と同様である。
他席スピーカー2、自席スピーカー3、自席エラーマイク4および仮想音源5については実施例1と同様である。また、他席音源11および自席音源13についても実施例1と同様である。なお、実施例1における補助フィルタ16は他席音源11からの信号を受け取るのに対し、実施例2における補助フィルタ17は、自席音源13からの信号を仮想音源フィルタ14を介して受け取る点で実施例1と異なる。
漏れ音低減フィルタ12は、補助フィルタ17の出力に基づいて推定された漏れ音伝達関数P(z)および誤差経路伝達関数C(z)を用い、前席における他席スピーカー2からの漏れ音を打ち消す制御音を発生させるフィルタである。なお、この漏れ音低減フィルタ12が、ADF(適応フィルタ;Adaptive Digital Filter)として構成される点、漏れ音低減フィルタ12の算出手順については、実施例1と同様である。
仮想音源フィルタ14は、自席音源13からの出力を受け取り、自席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場を生成するフィルタ(Q(z))である。なお、仮想音源フィルタ14によって生成される仮想音場は、図1の仮想音源5に示したように、あたかも聴取者の前方に音源があるように自席音源13の信号を処理したものである。また、仮想音源フィルタ14は、事前の測定結果等に基づいて予め求められた伝達関数であるので、処理負荷をかけることなく臨場感のある音場を得ることができる。
後方音源逆フィルタ15は、自席スピーカー3/自席エラーマイク4間の誤差経路伝達関数C(z)の逆関数に相当するフィルタであり、自席スピーカー3位置を基準とする仮想音場を自席エラーマイク4位置へ定位させる処理を行う。これにより、自席スピーカー3が聴取者の後方に設置されることに起因する音像の後方定位を補正することができる。なお、後方音源逆フィルタ15を「Hb(z)」とすると、Hb(z)は、式「Hb(z)=1/C(z)」と表わされる。なお、この式におけるC(z)は、補助フィルタ17によって動的に推定されたものである。
補助フィルタ17は、仮想音源フィルタ14および自席エラーマイク4の出力を受け取り、漏れ音伝達関数P(z)および誤差経路伝達関数C(z)を推定する処理を行うフィルタである。そして、この補助フィルタ16の出力は、漏れ音低減フィルタ12および後方音源逆フィルタ15の適応制御に用いられる。
次に、実施例2に係る音響システム1cを複数座席に適用した場合における音響システム1dの概要構成について図7を用いて説明する。図7は、実施例2に係る音響システム1cを複数座席に適用した場合における概要構成を示す図である。なお、同図では、図6における「他席」を「前席」と、同じく「自席」を「後席」と、それぞれ呼ぶことにする。また、図6における他席音源11を前席音源101cと、同じく自席音源13を後席音源102cと記載する。
同図に示すように、音響システム1dは、図6に示した漏れ音低減フィルタ12、仮想音源フィルタ14、後方音源逆フィルタ15および補助フィルタ17を2組備えている。そして、前席101には前席エラーマイク101aおよび前席スピーカー101bが、後席102には、後席エラーマイク102aおよび後席スピーカー102bが、それぞれ設けられる。また、前席101に対応する音源として前席音源101cが、後席102に対応する音源として後席音源102cが、それぞれ用意される。また、同図に示すように、各席にはそれぞれ、エラーマイクおよびスピーカーが設置されている。
なお、図6に示した音響システム1cおいては、他席に対する仮想音源の提供および定位制御処理を省略したため、他席スピーカー2に他席音源11が直接接続されていた。しかし、図7に示した音響システム1dでは、各席に対して仮想音源の提供および定位制御処理を行うため、前席音源101cは、仮想音源フィルタ14aおよび後方音源逆フィルタ15aを経由して前席スピーカー101bに接続される。同様に、後席音源102cは、仮想音源フィルタ14bおよび後方音源逆フィルタ15bを経由して後席スピーカー102bに接続される。
図7に示すように、補助フィルタ17a(同図の補助フィルタ(1))は、仮想音源フィルタ14a(同図の仮想音源フィルタ(1))および前席エラーマイク101aに接続されており、後方音源逆フィルタ15a(同図の後方音源逆フィルタ(1))および漏れ音低減フィルタ12a(同図の後方音源逆フィルタ(1))を適応制御する。また、補助フィルタ17b(同図の補助フィルタ(2))は、仮想音源フィルタ14b(同図の仮想音源フィルタ(2))および後席エラーマイク102aに接続されており、後方音源逆フィルタ15b(同図の後方音源逆フィルタ(2))および漏れ音低減フィルタ12b(同図の後方音源逆フィルタ(2))を適応制御する。
後席102に対する漏れ音低減制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、前席音源101cからの信号は仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))を経由し、補助フィルタ17a(補助フィルタ(1))および後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))へ振り分けられる。後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))からの信号は、前席スピーカー101bおよび漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ入力される。
一方、補助フィルタ17b(補助フィルタ(2))は、後席エラーマイク102a/後席スピーカー102b間の誤差経路伝達関数と、後席エラーマイク102a/前席スピーカー101b間の漏れ音伝達関数を動的に推定する。そして、動的に推定した誤差経路伝達関数および漏れ音伝達関数を漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ提供する。そして、漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))は、前席スピーカー101bから漏れる音を打ち消す制御音を後席スピーカー102bへ出力する。
また、後席102に対する定位制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、補助フィルタ17b(補助フィルタ(2))によって動的に推定された誤差経路伝達関数が後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))へ提供され、後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))は、仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))からの信号を前方へ定位させる処理を行ったうえで後席スピーカー102bへ出力する。
一方、前席101に対する漏れ音低減制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、後席音源102cからの信号は仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))を経由し、補助フィルタ17b(補助フィルタ(2))および後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))へ振り分けられる。後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))からの信号は、後席スピーカー102bおよび漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(2))へ入力される。
一方、補助フィルタ16a(補助フィルタ(1))は、前席エラーマイク101a/前席スピーカー101b間の誤差経路伝達関数と、前席エラーマイク101a/後席スピーカー102b間の漏れ音伝達関数を動的に推定する。そして、動的に推定した誤差経路伝達関数および漏れ音伝達関数を漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))へ提供する。そして、漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))は、後席スピーカー102bから漏れる音を打ち消す制御音を前席スピーカー101bへ出力する。
また、前席101に対する定位制御は、以下に示す手順で行われる。すなわち、補助フィルタ17a(補助フィルタ(1))によって動的に推定された誤差経路伝達関数が後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))へ提供され、後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))は、仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))からの信号を前方へ定位させる処理を行ったうえで前席スピーカー101bへ出力する。
次に、図7に示した音響システム1dのシグナルフローについて図8を用いて説明する。図8は、実施例2に係る音響システム1dのシグナルフローである。なお、同図における「A/D30」はアナログデジタルコンバータを、「EQ&Spread21cA」および「EQ&Spread21cB」は分配器およびイコライザを、「FFT22c」は高速フーリエ変換を、「IFFT21e」は高速逆フーリエ変換を、「VOL31」および「VOL32」はボリュームを、「MIX33」および「MIX34」はミキサーを、「D/A35」はデジタルアナログコンバータを、それぞれ指している。
また、後席エラーマイク102aについて、右信号を「ERR」と、左信号を「ERL」と、後席スピーカー102bについて、右信号を「RR」と、左信号を「RL」とする。また、前席エラーマイク101aについて、右信号を「EFR」と、左信号を「EFL」と、前席スピーカー101bについて、右信号を「FR」と、左信号を「FL」とする。
同図に示すように、音響システム1dが行う制御処理は、仮想音源フィルタ14(同図の14aおよび14b参照)、後方音源逆フィルタ15(同図の15aおよび15b参照)および補助フィルタ17(同図の17aおよび17b参照)を主な構成要素とする定位制御21と、漏れ音低減フィルタ12(同図の12aおよび12b)を主な構成要素とする漏れ音低減制御22とに分けられる。
まず、定位制御21におけるシグナルフローについて説明する。後席音源102cに対応する信号RRおよびRLは、A/D30を経由して仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))へ入力される。仮想音源フィルタ14b(仮想音源フィルタ(2))では、信号RRおよびRLを、後席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場に対応する信号へと変換し、後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))およびADF−S−Calc21aAへ出力する。
また、後席エラーマイク102aに対応する信号ERRおよびERLは、ADF−S−Calc21aAへ入力される。ADF−S−Calc21aAでは、補助フィルタ17b(補助フィルタ(2))の値であるS(z)が算出される。また、ADF−S−Calc21aAは、動的に推定された後席エラーマイク102a/後席スピーカー102b間の誤差経路伝達関数C(z)をC−1Calc21bAへ出力するとともに、動的に推定された後席エラーマイク102a/後席スピーカー102b間の誤差経路伝達関数C(z)および後席エラーマイク102a/前席スピーカー101b間の漏れ音伝達関数P(z)を漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ向けて出力する。なお、C−1Calc21bAの出力を受け取った後方音源逆フィルタ15b(後方音源逆フィルタ(2))は、音像の後方定位を聴取者の耳位置へ近づける補正処理を行った信号RRおよびRLをEQ&Spread21cAへ出力する。
一方、前席音源101cに対応する信号FRおよびFLは、A/D30を経由して仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))へ入力される。仮想音源フィルタ14a(仮想音源フィルタ(1))では、信号RRおよびRLを、前席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場に対応する信号へと変換し、後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(1))およびADF−S−Calc21aBへ出力する。
また、前席エラーマイク101aに対応する信号EFRおよびEFLは、ADF−S−Calc21aBへ入力される。ADF−S−Calc21aBでは、補助フィルタ17a(補助フィルタ(1))の値であるS(z)が算出される。また、ADF−S−Calc21aBは、動的に推定された前席エラーマイク101a/前席スピーカー101b間の誤差経路伝達関数C(z)をC−1Calc21bBへ出力するとともに、動的に推定された前席エラーマイク101a/前席スピーカー101b間の誤差経路伝達関数C(z)および前席エラーマイク101a/後席スピーカー102b間の漏れ音伝達関数P(z)を漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))へ向けて出力する。なお、C−1Calc21bBの出力を受け取った後方音源逆フィルタ15a(後方音源逆フィルタ(2))は、音像の後方定位を聴取者の耳位置へ近づける補正処理を行った信号RRおよびRLをEQ&Spread21cBへ出力する。
次に、漏れ音低減制御22におけるシグナルフローについて説明する。EQ&Spread21cAによって分配された信号RRおよびRLは、Delay22bAとDownSampleFIRフィルタ22aAとに入力される。分配された信号RRおよびRLを受けたDelay22bAでは、これらの信号に所定の遅延処理を施し、VOL31、MIX33およびD/A35を経由して後席スピーカー102bへ信号RRおよびRLとして出力する。
また、分配された信号RRおよびRLを受けたDownSampleFIRフィルタ22aAでは、入力された信号のサンプリング周波数よりも低いサンプリング周波数による再サンプリング(ダウンサンプリング)が行われる。なお、DownSampleFIRフィルタ22aAにおいてダウンサンプリングされた信号はUpSampleFIRフィルタ22fにおいてアップサンプリングされたうえで出力される。このように、ダウンサンプリング/アップサンプリング処理を併用することで、ローパスフィルタ等を用いて所定の周波数範囲の音のみを対象とする場合と比して高精度に漏れ音を低減することができる。
DownSampleFIRフィルタ22aAから出力された信号RRおよびRLは、漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))へ入力される。また、ADF−S−Calc21aAからの信号は、DownSampleFIRフィルタ22aC、FFT22c、HoptCalc22dAおよびIFFT22eを経由して漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))へ入力される。漏れ音低減フィルタ12a(漏れ音低減フィルタ(1))で算出された制御音(漏れ音の打ち消し音)は、UpSampleFIRフィルタ22fおよびVOL31を経由してMIX34に出力され、MIX34において定位制御21において変換された信号FRおよびFLと合成されたうえで、D/A35を経て前席スピーカー101bへ信号FRおよびFLとして出力される。
一方、EQ&Spread21cBによって分配された信号FRおよびFLは、Delay22bBとDownSampleFIRフィルタ22aBとに入力される。分配された信号RRおよびRLを受けたDelay22bBでは、これらの信号に所定の遅延処理を施し、VOL32、MIX34およびD/A35を経由して前席スピーカー101bへ信号RRおよびRLとして出力する。
また、分配された信号FRおよびFLを受けたDownSampleFIRフィルタ22aBでは、入力された信号のサンプリング周波数よりも低いサンプリング周波数による再サンプリング(ダウンサンプリング)が行われる。なお、DownSampleFIRフィルタ22aBにおいてダウンサンプリングされた信号はUpSampleFIRフィルタ22fにおいてアップサンプリングされたうえで出力される。このように、ダウンサンプリング/アップサンプリング処理を併用することで、ローパスフィルタ等を用いて所定の周波数範囲の音のみを対象とする場合と比して高精度に漏れ音を低減することができる。
DownSampleFIRフィルタ22aBから出力された信号FRおよびFLは、漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ入力される。また、ADF−S−Calc21aBからの信号は、DownSampleFIRフィルタ22aC、FFT22c、HoptCalc22dBおよびIFFT22eを経由して漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))へ入力される。漏れ音低減フィルタ12b(漏れ音低減フィルタ(2))で算出された制御音(漏れ音の打ち消し音)は、UpSampleFIRフィルタ22fおよびVOL32を経由してMIX33に出力され、MIX33において定位制御21において変換された信号RRおよびRLと合成されたうえで、D/A35を経て後席スピーカー102bへ信号RRおよびRLとして出力される。
上述してきたように、本実施例2によれば、補助フィルタは、動的に推定した漏れ音伝達関数および誤差経路伝達関数を漏れ音低減フィルタへ提供する際に、かかる誤差経路伝達関数を後方音源逆フィルタへ提供することとした。したがって、環境変化や経年変化がある場合であっても他席の漏れ音を効果的に低減することができるとともに、聴取者の視界を妨げることなく臨場感のある個別音響環境を提供することができる。
ところで、上述した実施例1および実施例2に対し、席毎に提供される音響環境のモード(個別音響環境/同一音響環境)を変更する手段を付加したり、各フィルタの算出結果を記憶する記憶部を付加したりすることで、聴取者に対する利便性を向上させたり、個別音響環境の質を低下させることなく各フィルタの処理負荷を低減することができる。そこで、以下では、図9を用いることによって、かかる変形例について説明する。
図9は、定位制御および漏れ音低減制御の切替処理を示す図である。図5あるいは図8を用いて説明したように、本発明に係る音響システムは、各聴取者の後方に設置されたスピーカーから出力される音の音像を各聴取者の前方へ定位させる定位制御と、他席からの漏れ音を低減する漏れ音低減制御とを組み合わせたものである。しかしながら、各個別空間において、定位制御および漏れ音低減制御を双方とも機能させる必要がない場合もある。
たとえば、各個別空間において同じ音楽や音声を視聴する場合には、漏れ音低減制御を機能させず、定位制御のみを機能させることとすればよい。また、特定の視聴者が音楽や音声を視聴していないが、他席からの漏れ音が気になる場合には、漏れ音低減制御のみを機能させることとすればよい。
同図に示すように、車内の各座席(同図の101〜104参照)には、それぞれ、エラーマイク(同図の101a〜104a)およびスピーカー(同図の101b〜104b参照)が設置され、各座席に対して定位制御21および漏れ音低減制御22が提供可能であるものとする。
人検出センサ23aは、各座席に視聴者が着席しているか否かを検出するセンサである。なお、人検出センサ23aは、シートに設置された圧力センサ等のセンサで構成することができる。また、各座席を撮像するデバイスとの組み合わせで視聴者の有無を判定することとしてもよい。
再生モード入力部23bは、各席に提供する音響環境のモードを入力するデバイスである。たとえば、この再生モード入力部23bでは、前席へ提供する音源をすべて同一とする同一音響環境モードと、各席へ提供する音源をそれぞれ異なるものとする個別音響環境モードとを選択することが可能である。また、聴取者が選択した音源が結果的に異なる場合には、自動的に個別音響環境モードとし、聴取者が選択した音源が結果的に同一である場合には、自動的に同一音響環境モードとすることとしてもよい。
切替処理部24は、人検出センサ23aおよび再生モード入力部23bからの信号を受け取り、定位制御21あるいは漏れ音低減制御22の動作開始/動作停止を制御する処理部である。たとえば、この切替処理部24は、人検出センサ23aが、同図の101および102における聴取者を検出し、再生モード入力部23bにおいて個別音響モードが選択された場合には、同図の101および102においては、定位制御21および漏れ音低減制御22を動作させ、同図の103および104においては、定位制御21および漏れ音低減制御22を双方とも停止する。
また、人検出センサ23aが、同図の101および102における聴取者を検出したが、再生モード入力部23bにおいて同一音響環境モードが選択された場合には、同図の101および102においては、漏れ音低減制御22を停止させる一方、定位制御21は動作させる。また、人検出センサ23aが、再生モード入力部23bにおいて個別音響環境モードが選択されているが、人検出センサ23aが同図の101における聴取者のみを検出した場合には、同図の101においてのみ定位制御21を動作させ、すべての席における漏れ音低減制御22を停止する。
このように、各席における聴取者の有無あるいは嗜好に応じて定位制御21あるいは漏れ音低減制御22を個別に動作させたり停止させたりすることで、聴取者の利便性を向上させることができるとともに、各フィルタの動作に伴う処理負荷を低減することができる。
ところで、図9に示したように、各席に対する定位制御21あるいは漏れ音低減制御22の機能を停止して所定期間の停止後に動作を再開する場合、定位制御21あるいは漏れ音低減制御22の動作が安定して十分な効果を発揮するまでに所定量の演算処理が必要となる。これは、補助フィルタ16あるいは補助フィルタ17が、所定の初期値をもとに各種伝達関数を推定することによる。このため、各フィルタを停止させた際のフィルタ係数をメモリなどの記憶装置に記憶させておき、各フィルタの動作を再開した際には、記憶装置に記憶しておいたフィルタ係数を初期値として演算を再開することとすれば、動作再開時の処理負荷を低減することができるとともに、各フィルタの動作が安定するまでの時間を短縮することができる。
また、補助フィルタ16あるいは補助フィルタ17の値について一定時間変動がなければ、漏れ音低減フィルタ12や後方音源逆フィルタ15に対する適応制御を中止して固定値制御とすることとしてもよい。このようにすることで、演算処理に伴う処理負荷を低減することができる。なお、補助フィルタ16および補助フィルタ17は、ある時刻における現ステップの直前ステップにおける値を保持し、現ステップと直前ステップとの差分を計算するため、値の変動がない場合にはこの差分が0となるため、変動の有無を判定することが容易である。
また、特定のフィルタの動作を停止させた場合には、音響システム全体としての演算処理負荷が下がるため、この余裕分を他のフィルタに割り当てることとしてもよい。たとえば、他のフィルタの演算用に割り当てられたビット数を増加させたり、時間あたりの演算数を増加させたりすることができる。
以上のように、本発明に係る音響システムは、所定の空間内に設けられた各個別空間に対する個別音響環境の提供に有用であり、特に、自動車等の移動体における個別音響環境の提供に適している。
実施例1に係る音響システムの概要構成を示す図である。 車内における個別音響環境を示す図である。 仮想音源フィルタおよび後方音源逆フィルタの効果を示す図である。 実施例1に係る音響システムを複数座席に適用した場合における概要構成を示す図である。 実施例1に係る音響システムのシグナルフロー図である。 実施例2に係る音響システムの概要構成を示す図である。 実施例2に係る音響システムを複数座席に適用した場合における概要構成を示す図である。 実施例2に係る音響システムのシグナルフロー図である。 定位制御および漏れ音低減制御の切替処理を示す図である。 従来技術に係る音響システムの概要構成を示す図である。
符号の説明
1a、1b 音響システム(実施例1)
1c、1d 音響システム(実施例2)
2 他席スピーカー
2a 右スピーカー
2b 左スピーカー
3 自席スピーカー
3a 右スピーカー
3b 左スピーカー
4 自席エラーマイク
4a 右エラーマイク
4b 左エラーマイク
5 仮想音源
5a 右仮想音源
5b 左仮想音源
11 他席音源
12、12a、12b 漏れ音低減フィルタ
13 自席音源
14、14a、14b 仮想音源フィルタ
15、15a、15b 後方音源逆フィルタ
16、16a、16b 補助フィルタ(実施例1)
17、17a、17b 補助フィルタ(実施例2)
21 定位制御
22 漏れ音低減制御
23a 人検出センサ
23b 再生モード入力部
24 切替処理部
101 運転席(前席)
101a 前席エラーマイク
101b 前席スピーカー
101c 前席音源
102 運転席の後部座席(後席)
102a 後席エラーマイク
102b 後席スピーカー
102c 後席音源
103 助手席
104 助手席の後部座席
111 ダミーヘッド

Claims (13)

  1. 所定の空間内に設けられた各個別空間に対して個別音響環境を提供する音響システムであって、
    第1の個別空間における聴取者の後方に設置された自スピーカーと、
    前記自スピーカーよりも前記聴取者寄りに設置されたエラーマイクと、
    第2の個別空間に設置された他スピーカーから前記第1の個別空間へ漏れる音を打ち消す制御音を前記他スピーカー/前記エラーマイク間の漏れ音伝達関数および前記自スピーカー/前記エラーマイク間の誤差経路伝達関数に基づいて生成し、該制御音を前記自スピーカーへ提供する漏音低減手段と、
    前記聴取者の前方に音像を配した提供音である仮想音源を生成する仮想音源手段と、
    前記仮想音源が前記自スピーカーで再生されることによって生じる音像の後方定位を前記聴取者寄りに補正する定位補正手段と、
    前記エラーマイク、前記漏音低減手段および前記定位補正手段に接続されており動的に推定した前記漏れ音伝達関数および前記誤差経路伝達関数を前記漏音低減手段へ、動的に推定した前記誤差経路伝達関数を前記定位補正手段へそれぞれ提供する動的推定手段と
    を備えたことを特徴とする音響システム。
  2. 前記動的推定手段は、
    動的に推定した前記漏れ音伝達関数および前記誤差経路伝達関数を前記漏音低減手段へ提供する際に、該誤差経路伝達関数を前記定位補正手段へ提供することを特徴とする請求項1に記載の音響システム。
  3. 前記動的推定手段は、
    動的に推定した前記誤差経路伝達関数を前記定位補正手段へ提供する際に、該誤差経路伝達関数および該誤差経路伝達関数とともに推定した前記漏れ音伝達関数を前記漏音低減手段へ提供することを特徴とする請求項1に記載の音響システム。
  4. 前記第1の個別空間と前記第2の個別空間とを入れ替えた場合における、前記自スピーカー、前記エラーマイク、前記漏音低減手段、前記定位補正手段および前記動的推定手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の音響システム。
  5. 前記第1の個別空間および前記第2の個別空間における人の有無を検出する検出手段をさらに備え、
    前記漏音低減手段、前記定位補正手段および前記動的推定手段は、
    前記検出手段が人を検出した前記個別空間を対象として動作することを特徴とする請求項4に記載の音響システム。
  6. 前記個別空間ごとに前記個別音響環境の提供が必要か否かを選択させる選択手段をさらに備え、
    前記漏音低減手段、前記定位補正手段および前記動的推定手段は、
    前記選択手段において前記個別音響環境の提供が必要である旨の選択がなされた前記個別空間を対象として動作することを特徴とする請求項4または5に記載の音響システム。
  7. 前記定位補正手段および前記動的推定手段は、
    前記選択手段において前記個別音響環境の提供が不要である旨の選択がなされた前記個別空間においても当該個別空間を対象として動作することを特徴とする請求項6に記載の音響システム。
  8. 前記選択手段は、
    前記個別空間ごとに前記漏音低減手段の動作対象とするか否か、前記低補正手段の動作対象とするか否かをそれぞれ選択させることを特徴とする請求項6または7に記載の音響システム。
  9. 前記選択手段において前記個別音響環境の提供が必要から不要へ切り替えられたならば、切り替え時における前記漏音低減手段の内部係数を記憶する記憶手段をさらに備え、
    前記漏音低減手段は、
    前記選択手段において前記個別音響環境の提供が不要から必要へ切り替えられたならば、前記記憶手段に記憶された前記内部係数を用いて動作を継続することを特徴とする請求項6〜8のいずれか一つに記載の音響システム。
  10. 前記動的推定手段は、
    推定した前記漏れ音伝達関数あるいは前記誤差経路伝達関数の変動量が所定期間にわたって所定値を下回った場合に、前記漏音低減手段あるいは前記定位補正手段に対する適応処理を中止することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の音響システム。
  11. 前記漏音低減手段、前記定位補正手段、または、前記動的推定手段のうち1または複数の手段が停止した場合に、動作中の手段における演算精度を向上させる演算精度変更手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか一つに記載の音響システム。
  12. 前記自スピーカーは、
    前記第1の個別空間に設けられた座席の背面部における前記聴取者の頭部近傍に配置されたことを特徴とする請求項1〜11のいずれか一つに記載の音響システム。
  13. 前記第1の個別空間および前記第2の個別空間は、
    自動車内のいずれかの座席に対応する空間であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一つに記載の音響システム。
JP2007268182A 2007-10-15 2007-10-15 音響システム Withdrawn JP2009096259A (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007268182A JP2009096259A (ja) 2007-10-15 2007-10-15 音響システム
US12/285,521 US20090097679A1 (en) 2007-10-15 2008-10-08 Acoustic system for providing individual acoustic environment

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007268182A JP2009096259A (ja) 2007-10-15 2007-10-15 音響システム

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009096259A true JP2009096259A (ja) 2009-05-07

Family

ID=40534226

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007268182A Withdrawn JP2009096259A (ja) 2007-10-15 2007-10-15 音響システム

Country Status (2)

Country Link
US (1) US20090097679A1 (ja)
JP (1) JP2009096259A (ja)

Families Citing this family (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US20090097669A1 (en) * 2007-10-11 2009-04-16 Fujitsu Ten Limited Acoustic system for providing individual acoustic environment
EP2389016B1 (en) * 2010-05-18 2013-07-10 Harman Becker Automotive Systems GmbH Individualization of sound signals
EP2405670B1 (en) * 2010-07-08 2012-09-12 Harman Becker Automotive Systems GmbH Vehicle audio system with headrest incorporated loudspeakers
JP2012093705A (ja) * 2010-09-28 2012-05-17 Yamaha Corp 音声出力装置
US9008338B2 (en) * 2010-09-30 2015-04-14 Panasonic Intellectual Property Management Co., Ltd. Audio reproduction apparatus and audio reproduction method
US9641934B2 (en) * 2012-01-10 2017-05-02 Nuance Communications, Inc. In-car communication system for multiple acoustic zones
CN103971908B (zh) * 2014-05-06 2016-03-09 国家电网公司 一种变压器噪声抑制方法
JP6454495B2 (ja) * 2014-08-19 2019-01-16 ルネサスエレクトロニクス株式会社 半導体装置及びその故障検出方法
WO2016182184A1 (ko) * 2015-05-08 2016-11-17 삼성전자 주식회사 입체 음향 재생 방법 및 장치
US9888307B2 (en) * 2015-12-04 2018-02-06 Apple Inc. Microphone assembly having an acoustic leak path
CN111512366A (zh) * 2017-12-22 2020-08-07 声音理论有限公司 频率响应方法和装置
CN109613481A (zh) * 2019-01-10 2019-04-12 重庆大学 一种能适应风洞测试环境的波束形成声源识别方法
JP7262899B2 (ja) 2019-05-22 2023-04-24 アルパイン株式会社 能動型騒音制御システム
US11212606B1 (en) 2019-12-31 2021-12-28 Facebook Technologies, Llc Headset sound leakage mitigation
US11743640B2 (en) 2019-12-31 2023-08-29 Meta Platforms Technologies, Llc Privacy setting for sound leakage control
JP2022013122A (ja) * 2020-07-03 2022-01-18 アルプスアルパイン株式会社 能動型騒音制御システム
US11490190B1 (en) 2021-05-07 2022-11-01 Apple Inc. Speaker with multiple resonators
US11451902B1 (en) 2021-05-07 2022-09-20 Apple Inc. Speaker with vented resonator

Also Published As

Publication number Publication date
US20090097679A1 (en) 2009-04-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2009096259A (ja) 音響システム
US20090097669A1 (en) Acoustic system for providing individual acoustic environment
JP4722878B2 (ja) ノイズ低減装置および音響再生装置
US7933421B2 (en) Sound-field correcting apparatus and method therefor
US7978860B2 (en) Playback apparatus and playback method
JP2020511684A (ja) 摂動信号補償のためのオーディオシステムおよび方法
US20110038484A1 (en) device for and a method of processing audio data
WO2010076850A1 (ja) 音場制御装置及び音場制御方法
JP2006279548A (ja) 車載用スピーカシステム及びオーディオ装置
JP2004135023A (ja) 音響出力装置、音響出力システム、音響出力方法
JP2010156826A (ja) 音響制御装置
JP2010163054A (ja) 会話支援装置及び会話支援方法
US20180302736A1 (en) Audible Prompts in a Vehicle Navigation System
WO2017183462A1 (ja) 信号処理装置
US20060262937A1 (en) Audio reproducing apparatus
US8103017B2 (en) Sound reproducing system and automobile using such sound reproducing system
JP2004064739A (ja) 音像制御システム
JP2009094967A (ja) 音響システム
JP2009090930A (ja) 音響システム
JP4848774B2 (ja) 音響装置、音響再生方法および音響再生プログラム
JP2009147814A (ja) 音響システム及び音響制御方法
WO2020026726A1 (ja) 集音拡声装置、その方法、およびプログラム
JP2008227942A (ja) コンテンツ再生装置及びコンテンツ再生方法
JP2009143382A (ja) 音響制御装置および音響制御方法
JP4943098B2 (ja) 音響再生システム及び音響再生方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100922

A072 Dismissal of procedure [no reply to invitation to correct request for examination]

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A073

Effective date: 20120131

A300 Application deemed to be withdrawn because no request for examination was validly filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20120207