図20に示された接地線引出部において、カバー5として熱収縮性のものを用いれば、接地線引出部に遮水性を持たせることができる。しかし、使用環境が厳しい場合には、長年の使用により、接地線3と分岐管部5aとの間に隙間が生じて遮水性能が低下するおそれがある。万一接地線の引出部から電力ケーブル接続部に水が浸入すると、接続部で絶縁破壊が生じるおそれがある。電力ケーブルの接続部に水が浸入するのを防ぐためには、接地線引出部の遮水性能を確実なものにしておくことが必要である。
電力ケーブル接続部の防水性能については、数十年間の設計寿命が求められる。従来の接地線引出構造でも、環境によりある程度の遮水性能を維持することができるが、従来より厳しい仕様が求められる場所では、更に長期間に亘って性能の維持が求められることが予想される。従って、遮水性能を従来より向上させた接地線引出部の開発が望まれている。
特に常時水没する場所や、降雨時に大量の水が流入することがある地下溝内等に電力ケーブルが敷設される場合には、電力ケーブルからの接地線引出部の遮水性能に特に配慮する必要がある。
特許文献2に示された接地線引出部で用いるアダプタは、接地線と防水スリーブとが防水モールド部を貫通しているため、同アダプタを用いて接地線引出部を構成した場合には、接地線及び防水スリーブと防水モールド部との接着強度が十分でない場合や、防水モールド部が熱膨張収縮を繰り返して、接地線と防水スリーブの貫通部分と防水スリーブとの間に隙間が生じた場合に、接地線及び防水スリーブの貫通部分を通して水が浸入おそれがある。
また特許文献2に示されたアダプタでは、予め接地線を防水モールド部によりモールドしておく必要があるため、接地線の長さが決まってしまい、融通性に乏しいという問題もあった。
本発明の目的は、遮水性能を従来よりも向上させて、信頼性を向上させた電力ケーブルからの接地線引出部及び該接地線引出部を備えた電力ケーブル接続部を提供することにある。
本発明は、電力ケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体に接地線を電気的に接続して該接地線を外部に引き出す接地線引出部に係わるものである。
本発明においては、電力ケーブルの軸線に沿う方向に一定の長さを有し、電力ケーブルの絶縁シースの外周に沿うように湾曲した凹面を外面の一部に有するとともに、該凹面の反対側の部分の外面が湾曲した凸面となっている接地線引出金具が設けられる。この接地線引出金具は、その一端を電力ケーブルのシールド導体導出部に向け、かつ凹面を電力ケーブルの絶縁シースの外周にシール層を介して当接させた状態で電力ケーブルのシールド導体導出部付近に配置される。電力ケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体が接地線引出金具の一端に電気的に接続され、接地線引出金具の外面の少なくとも一部と、電力ケーブルのシールド導体導出部付近の外面とを含む要被覆部を一括して被覆する被覆層が設けられて、該被覆層と前記接地線引出金具とにより、電力ケーブルのシールド導体導出部側の領域と接地線が引き出される側の領域との間の遮水が図られる。外部に引き出される接地線は上記接地線引出金具の他端側に接続される。
被覆層は、収縮性のものであることが好ましい。収縮性の被覆層は、熱収縮性を有するものからなっていても良く、それ自体が弾性を有して常温で収縮する性質(常温収縮性)を有するもの(例えば、要被覆部の外径よりも小さい内径を有するゴムチューブ)からなっていても良い。
上記のように、ケーブルの軸線方向に一定の長さを有する接地線引出金具の凹面を電力ケーブルの絶縁シースの外周にシール層を介して面接触させて、この接地線引出金具を通して、接地線とケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体とを接続する構造にしておくと、電力ケーブルの絶縁シースと接地線引出金具とをシール層を介して広い面積で接触させて、接地線引出金具と電力ケーブルの絶縁シースとの間を通して水が流れるのを確実に阻止することができる。
また上記のように構成すると、要被覆部を一括して被覆する収縮性の被覆層が、接地線に比べてはるかに大きい外表面積を有する接地線引出金具の外面に面接触するので、該被覆層と接地線引出金具との間を通して水が流れるのを確実に阻止することができる。
従って、上記のように構成すると、電力ケーブルのシールド導体導出部側の領域と接地線が引き出される側の領域との間の遮水を確実に図ることができ、接地線引出部の遮水性能を向上させることができる。
本発明の好ましい態様では、上記シール層が、柔軟性及び(又は)弾性を有するシール材からなるシートからなっている。
柔軟性及び(又は)弾性を有するシール材のシートによりシール層を形成すると、該シール層を電力ケーブルの絶縁シースの表面と接地線引出金具の表面とに良く馴染ませて、接地線引出金具とケーブルの絶縁シースとの間のシールを確実に図ることができる。またシート状のシール材を用いると、ケーブルの絶縁シースの上にシール材を載せてその上に接地線引出金具を載せるだけで、ケーブルの絶縁シースと接地線引出金具との間にシール材を介在させることができるため、ケーブルの絶縁シースと接地線引出金具との間をシールする作業を簡単にすることができる。
本発明の好ましい態様では、前記シール層が、接地線引出金具の凹面を取り囲む周縁部から外側にはみ出す大きさを有し、接地線引出金具の周縁部の全体に亘って、かつ接地線引出金具とシール層の表面との間に跨って、シール用テープが貼り付けられて接地線引出金具とシール層の表面との間が液密にシールされる。シール用テープは、接地線引出金具に接着する接着性とシール層に融着する融着性とを有するものであることが好ましい。
上記のように、シール層が、接地線引出金具の凹面を取り囲む周縁部から外側にはみ出す大きさを有するようにしておいて、接地線引出金具とシール層の表面との間を液密にシールするようにシール用テープを貼り付けておくと、接地線引出部の遮水性を向上させることができる。
本発明の好ましい態様では、接地線引出金具の凸面を覆う防食層が形成される。防食層は、例えばポリ塩化ビニル樹脂等の防食性を有する樹脂製のコーティング材料により形成するのが好ましい。
上記のように、接地線引出金具の凸面を防食層で覆っておくと、接地線引出金具の耐食性を高めることができる。
上記のように接地線引出金具の凸面を防食層で覆った場合、接地線引出金具の凹面と凸面との境界部を接地線引出金具の長手方向に沿って伸びる防食層の端縁部と、シール層との間にシール材が入りにくい、奥深い狭間隙が形成され、この狭間隙が、接地線引出金具とシール層との間のシールの盲点となるおそれが生じる。
そこで、本発明の好ましい態様では、上記のように接地線引出金具の凸面を防食層で覆う場合に、接地線引出金具の凹面と凸面との境界部を接地線引出金具の長手方向に沿って伸びる防食層の端縁部が、先端側ほど薄くなるように斜めに面取りされる。
上記のように、接地線引出金具の凹面と凸面との境界部を接地線引出金具の長手方向に沿って伸びる防食層の端縁部を斜めに面取りしておくと、接地線引出金具の凹面と凸面との境界部(接地線引出金具の幅方向の両端部)とケーブルの絶縁シース外面との間に奥深い狭隙間が形成されて該狭間隙がシールの盲点となるのを防ぐことができるため、遮水信頼性を向上させることができる。
上記シール層は、接着性を有するシール材からなっていることが好ましい。また、上記接地線引出金具は、その量産性を高めるために、銅等の良導電性を有する金属からなる鋳造品とすることが好ましい。この場合、接地線引出金具の凹面を鋳物肌のままとしておく(研磨しないでおく)ことが好ましい。
上記のように、接地線引出金具を鋳造品として、その凹面を鋳物肌のままにしておくと、接地線引出金具とシール材との接着性を良好にすることができる。
本発明の好ましい態様においては、接地線引出金具の一端寄りの一部の肉厚を薄くすることにより接地線引出金具の一端側に前記凸面の頂部に対して段差を有するシールド導体接続部が形成され、該シールド導体接続部に電力ケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体が接続される。
上記のように、接地線引出金具の一端寄りに凸面の頂部に対して段差を有するシールド導体接続部を形成して、該シールド導体接続部に電力ケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体を接続するようにすると、シールド導体と接地線引出金具との接続部が接地線引出金具の凸面上にはみ出すのを防ぐことができるため、被覆層を形成する際にシールド導体と接地線引出金具との接続部が障害になるのを防ぐことができる。
本発明の他の好ましい態様では、電力ケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体が、接地線引出金具の一端の端面に開口するようにして接地線引出金具に形成された孔を用いて接地線引出金具に電気的に接続される。シールド導体は直接又は接続導体を介して接地線引出金具と接続される。これらと接地線引出金具との電気的な接続は溶接やろう付けなどにより行うことができる。
上記のように構成した場合にも、シールド導体と接地線引出金具との接続部が接地線引出金具の凸面上にはみ出すことがないため、被覆層を形成する際にシールド導体と接地線引出金具との接続部が障害になるのを防ぐことができる。
本発明の好ましい態様では、接地線引出金具の他端寄りの一部の肉厚を薄くすることにより接地線引出金具の他端側に前記凸面の頂部に対して段差を有する接地線接続導体接続部が形成されて、該接地線接続導体接続部に接地線が電気的に接続される。
上記のように、接地線引出金具の他端寄りに凸面の頂部に対して段差を有する接地線接続導体接続部を形成して、該接地線接続導体接続部に接地線を直接又は接続導体を介して接続する構造にすると、接地線と接地線引出金具との接続部が接地線引出金具の凸面上にはみ出すのを防ぐことができるため、被覆層を形成する際に接地線と接地線引出金具との接続部が障害になるのを防ぐことができる。
本発明の他の好ましい態様では、接地線引出金具の他端の端面に開口するようにして接地線引出金具に形成された孔を用いて接地線が接地線引出金具に電気的に接続される。
上記のように構成した場合も、接地線と接地線引出金具との接続部が接地線引出金具の凸面上にはみ出すことがないため、被覆層を形成する際に接地線接続導体と接地線引出金具との接続部が障害になるのを防ぐことができる。
本発明の好ましい態様では、上記接地線引出金具が、前記凹面を外面に有する遮水壁部と、外面が前記凸面となっている外周側壁部とを一体に有する中空の金属部材と該金属部材の長手方向の両端で該金属部材の中空部を閉じる端部材とからなっている。この場合、シールド導体は、接地線引出金具の長手方向の一端側の端部材に電気的に接続される。また接地線引出金具の長手方向の他端側の端部材に接地線が電気的に接続される。
上記中空の金属部材は、例えば、金属パイプを適当な長さに切断して、該適当な長さの金属パイプをプレス加工などにより変形させることにより低コストで製作することができる。
上記のように、接地線引出金具を中空に形成すると、該接地線引出金具を形成する導電材料を節約して、コストの低減を図ることができる。また上記のように接地線引出金具を中空に形成すると、接地線引出金具の軽量化を図ることができるため、接地線引出部を形成する際の作業性を向上させることができる。
本発明の好ましい態様では、接地線引出金具が、前記凹面を外面に有する遮水壁部と、外面が前記凸面となっている外周側壁部とを一体に有する中空の金属部材により構成されて、接地線引出金具の一端寄りの部分が縮小されることにより管状のシールド導体圧着部が形成され、該シールド導体圧着部の内側にシールド導体が電気的に接続される。
本発明の他の好ましい態様では、接地線引出金具が、前記凹面を外面に有する遮水壁部と、外面が前記凸面となっている外周側壁部とを一体に有する中空の金属部材により構成されて、接地線引出金具の他端寄りの部分が縮小されることにより管状の接地線接続導体圧着部が形成され、該接地線接続導体圧着部に接地線接が電気的に接続される。
上記のように、凹面及び凸面を有する中空の金属部材により接地線引出金具を構成する場合に、該接地線引出金具の一端側及び他端側にそれぞれ管状のシールド導体圧着部及び接地線接続導体圧着部を形成し、これらの圧着部にそれぞれシールド導体及び接地線を電気的に接続するように構成すると、接地線引出金具とシールド導体との接続及び接地線引出金具と接地線との接続を簡単に行うことができる。
本発明の好ましい態様では、被覆層で被覆された接地線引出金具と電力ケーブルとを一括して収容し得る形状及び大きさを有する筒部の底部から電力ケーブルを貫通させ得る大きさの第1の分岐管部と接地線又は接地線を接地線引出金具に接続する接続導体を貫通させ得る大きさの第2の分岐管部とを突出させた構造を有する分岐管ユニットが設けられる。この分岐管ユニットは、その筒部内に接地線引出金具を電力ケーブル及び被覆層の一部とともに収容し、電力ケーブルの接地線引出金具よりも接地線側に位置する部分を第1の分岐管部内を通して外部に導出するとともに、接地線又は接続導体を第2の分岐管内を通して外部に導出した状態で電力ケーブルの接地線引出金具が配置された部分に装着され、分岐管ユニットの筒部と被覆層との間の防水を図る防水層と、第1の分岐管部とここから導出された電力ケーブルとの間の防水を図る防水層と、第2の分岐管部とここから導出された接地線接続導体との間の防水を図る防水層とが形成される。
上記のような分岐管ユニットを設けると、電力ケーブルの絶縁シース周りの防水と接地線の引出部の防水とをより確実に図ることができる。
上記被覆層は遮水性を有する材料からなる収縮性チューブにより形成されていることが好ましい。収縮性チューブは、熱収縮性のチューブでも良く、常温収縮性を有するチューブでも良い。常温収縮性のチューブとしては例えば、要被覆部の外径よりも小さい内径を有するゴムチューブを用いることができる。
本発明はまた、電力ケーブルを他の電力ケーブルに接続しているケーブル接続部本体と、ケーブル接続部本体により接続されている電力ケーブルのうちの特定の電力ケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体に接地線を電気的に接続して該接地線を外部に引き出す接地線引出部と、ケーブル接続部本体と接地線引出部とを一括して覆う遮水構造の保護外装部とを備えた電力ケーブル接続部に適用される。
本発明に係わる電力ケーブル接続部は、接地線引出部の構成に特徴があるが、本発明で用いる接地線引出部がとるべき構成は、接地線引出部に係わる発明について既に述べたものと同様であるので、その説明は省略する。
本発明に係わる接地線引出部によれば、ケーブルの軸線方向に一定の長さを有する接地線引出金具の凹面を電力ケーブルの絶縁シースの外周にシール層を介して面接触させて、この接地線引出金具を通して接地線とケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体とを接続する構造にしたので、電力ケーブルの絶縁シースと接地線引出金具とをシール層を介して広い面積で接触させて、接地線引出金具と電力ケーブルの絶縁シースとの間を通して水が流れるのを確実に阻止することができる。また要被覆部を一括して被覆する収縮性の被覆層は、接地線に比べてはるかに大きい外表面積を有する接地線引出金具の外面に面接触させるので、該被覆層と接地線引出金具との間を通して水が流れるのを確実に阻止することができる。従って、本発明によれば、電力ケーブルのシールド導体導出部側の領域と接地線が引き出される側の領域との間の遮水を確実に図ることができ、接地線引出部の遮水性能を向上させることができる。
請求項2に記載された発明によれば、柔軟性及び(又は)弾性を有するシール材のシートによりシール層を形成するので、該シール層を電力ケーブルの絶縁シースの表面と接地線引出金具の表面とに良く馴染ませて、接地線引出金具とケーブルの絶縁シースとの間のシールを確実に図ることができる。またシート状のシール材を用いたことにより、ケーブルの絶縁シースの上にシール材を載せてその上に接地線引出金具を載せるだけで、ケーブルの絶縁シースと接地線引出金具との間にシール材を介在させることができるため、ケーブルの絶縁シースと接地線引出金具との間をシールする作業を簡単にすることができる。
請求項3に記載された発明によれば、シール層が、接地線引出金具の凹面を取り囲む周縁部から外側にはみ出す大きさを有するように設けられて、接地線引出金具とシール層の表面との間を液密にシールするように接地線引出金具とシール層との間に跨ってシール用テープが貼り付けられるので、接地線引出部の遮水性を向上させることができる。
請求項4に記載された発明によれば、接地線引出金具の凸面が防食層で覆われているので、接地線引出金具の耐食性を高めることができ、接地線引出部の信頼性を高めることができる。
請求項5に記載された発明によれば、接地線引出金具の凸面を防食層で覆う場合に、接地線引出金具の凹面と凸面との境界部を接地線引出金具の長手方向に沿って伸びる防食層の端縁部を斜めに面取りしたので、接地線引出金具の凹面と凸面との境界部(接地線引出金具の幅方向の両端部)とケーブルの絶縁シース外面との間に奥深い狭隙間が形成されて該狭間隙がシールの盲点となるのを防ぐことができ、遮水信頼性を向上させることができる。
請求項6に記載された発明によれば、接地線引出金具を鋳造品として、その凹面を鋳物肌のままにしたので、接地線引出金具とシール材との接着性を良好にすることができる。
請求項7又は8に記載された発明によれば、シールド導体と接地線引出金具との接続部が接地線引出金具の凸面上にはみ出すのを防ぐことができるため、被覆層を形成する際にシールド導体と接地線引出金具との接続部が障害になるのを防いで、被覆層の形成を容易にすることができる。
請求項9又は10に記載された発明によれば、接地線と接地線引出金具との接続部が接地線引出金具の凸面上にはみ出すのを防ぐことができるため、被覆層を形成する際に接地線接続導体と接地線引出金具との接続部が障害になるのを防いで、被覆層の形成を容易にすることができる。
請求項11に記載された発明によれば、接地線引出金具が中空に形成されているので、該接地線引出金具を形成する導電材料を節約して、コストの低減を図ることができる。また接地線引出金具が中空に形成されていることにより、接地線引出金具の軽量化を図ることができるため、接地線引出部を形成する際の作業性を向上させることができる。
請求項12又は13に記載された発明によれば、凹面及び凸面を有する中空の金属部材により接地線引出金具を構成する場合に、該接地線引出金具の端部に管状のシールド導体圧着部又は接地線接続導体圧着部を形成して、これらの圧着部を用いてそれぞれシールド導体及び接地線を電気的に接続するように構成したので、接地線引出金具とシールド導体との接続及び接地線引出金具と接地線との接続を簡単に行うことができる。
請求項14に記載された発明によれば、被覆層で被覆された接地線引出金具と電力ケーブルとを一括して収容し得る形状及び大きさを有する筒部の底部から電力ケーブルを貫通させ得る大きさの第1の分岐管部と接地線又は接地線を接地線引出金具に接続する接続導体を貫通させ得る大きさの第2の分岐管部とを突出させた構造を有する分岐管ユニットを設けて、この分岐管ユニットを電力ケーブルの接地線引出金具が配置された部分に装着するとともに、分岐管ユニットの筒部と被覆層との間の防水を図る防水層と、第1の分岐管部とここから導出された電力ケーブルとの間の防水を図る防水層と、第2の分岐管部とここから導出された接地線又は接続導体との間の防水を図る防水層とを形成したので、電力ケーブルの絶縁シース周りの防水と接地線の引出部の防水とをより確実に図って、接地線引出部の信頼性を高めることができる。
請求項15に記載された発明によれば、被覆層が、遮水性を有する材料からなる収縮性チューブにより形成されているので、接地線引出部の遮水性能を高めて、その信頼性を高めることができる。
また本発明に係わる電力ケーブル接続部においても、接地線引出部を上記と同様に構成したため、上記と同様の効果を得ることができ、接地線引出部の遮水性能が高く、信頼性が高い電力ケーブル接続部を得ることができる。
以下図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係わる電力ケーブル接続部10を示したものである。図示の電力ケーブル接続部10は、電力ケーブル11を他の電力ケーブル12に接続しているケーブル接続部本体13と、接地線引出部16と、保護外装部17とを備えている。接地線引出部16は、ケーブル接続部本体13により接続されている電力ケーブル11,12のうちの特定の電力ケーブル11の遮蔽層から導出されたシールド導体11b1に接地線15を電気的に接続して接地線15を外部に引き出す部分である。また保護外装部17は、接地線引出部16と、ケーブル接続部本体13と、ケーブル接続部本体13により接続されている電力ケーブル11,12のケーブル接続部本体13寄りの一定長さの部分とを一括して覆う部分で、遮水構造を有するように構成されている。
なお本明細書において、「ケーブル接続部本体により接続されている電力ケーブルのうちの特定の電力ケーブル」とは、ケーブル接続部本体により接続されている電力ケーブルのうち、遮蔽層から引き出されたシールド導体が、外部に引き出される接地線に電気的に接続される電力ケーブルである。図示の例ではケーブル接続部本体により接続されている電力ケーブルのうち、電力ケーブル11のみから接地線が引き出されるため、電力ケーブル11が特定の電力ケーブルとなる。電力ケーブル11,12の双方の遮蔽層から外部に接地線を引き出す場合には、電力ケーブル11,12の双方が特定の電力ケーブルとなる。
図11を参照すると、ケーブル接続部本体13の構成の一例が概略的に示されている。電力ケーブル11及び12は相互に接続されるに当って段剥ぎされ、それぞれを構成する各部が所定の長さずつ露呈される。接地線が引き出される特定の電力ケーブル11においては、最外層の絶縁シース11aから外部半導電層11cと絶縁体11dと導体11eとが所定の長さずつ露呈され、絶縁シース11aの内側にある遮蔽層から該遮蔽層を構成しているシールド導体11b1が撚り合わされるなどして外部に引き出されている。また電力ケーブル12においては、絶縁シース12aから遮蔽層12bと外部半導電層12cと絶縁体12dと導体12eとが所定長さずつ露呈されている。
電力ケーブル11及び12は、それぞれの導体11e及び12eを対向させた状態で配置され、それぞれの導体11e、12eが圧着スリーブ等により接続されて導体接続部20が構成される。導体接続部20が構成された後、電力ケーブル11の外部半導電層11c、絶縁体11d、電力ケーブル12の外部半導電層12c、絶縁体12d及び導体接続部20からなるケーブル11及び12の接続部分を覆うように公知の常温収縮性のゴムユニット21が配設される。
ゴムユニット21は、ケーブルの接続部の保護と電界の緩和とを図るために設けられるもので、図示のゴムユニット21は、電力ケーブル11,12の接続部分を覆う筒状の補強絶縁層21aと、該補強絶縁層の内周で導体接続部20を同心的に取り囲む環状の内部半導電層21bと、補強絶縁層21aの外周に形成されてケーブルを同心的に取り囲む外部半導電層21cと、電力ケーブル11側及び12側にそれぞれ配置されて少なくとも一部が補強絶縁層21aの内部に埋め込まれた1対の半導電性のストレスコーン21d,21eとにより構成されている。この例では、導体接続部20とゴムユニット21とにより、ケーブル接続部本体13が構成されている。
なお図示のケーブル接続部本体13は、その一例を示したものであり、本実施形態で用いることができるケーブル接続部本体13の構成は図示の例に限定されない。
接地線が引き出される電力ケーブル11側には、該ケーブルのシールド導体導出部(シールド導体11b1が導出された絶縁シース11aの端部)11fの近傍に位置させて、本発明の特徴部分である接地線引出部16が設けられ、ケーブル接続部本体13と接地線引出部16とを一括して覆うように遮水性を有する材料からなる保護外装部17が設けられる。
図2ないし図4に詳細に示したように、本実施形態においては、接地線引出部16が、銅等の良導電性の金属からなる接地線引出金具25を備えている。図示の接地線引出金具25は、電力ケーブル11の軸線に沿う方向に一定の長さL1(図2参照)を有している。接地線引出金具25は、接地線を引出す特定の電力ケーブル11の絶縁シース11aの外周に沿うように湾曲した凹面25Aを外面の一部に有し、凹面25Aの反対側の部分の外面が、湾曲した凸面25Bとなっている金属部材からなっている。この接地線引出金具は、凹面25Aがシール層Sを介して電力ケーブル11の絶縁シースの外周に当接された状態で配置されることにより遮水壁として機能して、電力ケーブル接続部への水の浸入を阻止する働きをする。接地線引出金具の凹面25Aの軸線方向長さL1は、接地線引出金具25と電力ケーブルの絶縁シースとの間を通して内部に水が浸入するのを確実に阻止するために必要な長さ、即ち、接地線引出金具25に遮水壁としての機能を持たせるために必要な長さに設定される。
接地線引出金具25は、言うまでもなく、接地線として用いられる電線に流れる電流を十分に通電させる機能を有している。図示の例では、接地線引出金具25の凹面25Aが円筒面状をなすように形成され、凸面25Bがほぼ放物面状をなすように形成されている。
凹面25Aの曲率半径は、該凹面と電力ケーブルの絶縁シース11aとの間に介在させるシール層Sの外面(凹面25A側の面)の曲率半径に等しく設定するか、又はシール層Sの外面の曲率半径より僅かに大きめに設定しておくことが好ましい。凹面25Aの曲率半径がシール層Sの曲率半径よりも小さいと、図5(B)に示すように、凹面25Aの幅方向の中央部寄りの部分とシール層Sとの間に、幅方向の両端が閉じた隙間g′が形成される。この隙間g′が形成された部分にはシール材が入らないため、この部分が接地線引出金具25と電力ケーブル11との間のシールの盲点になって、水を通過させるおそれがある。凹面25Aの曲率半径と、シール層Sの外面の曲率半径と等しくすることができれば、凹面25Aとシール層Sとの間に隙間は生じないが、シール層Sの厚さを正確に一定とすることは難しく、凹面25Aの曲率半径とシール層の外面の曲率半径とを正確に等しくすることは難しい。従って、実際には、図5(A)に示すように、凹面25Aの幅方向の両端とシール層Sとの間に、外方に開口した僅かな隙間g,gが形成される程度に、凹面25Aの曲率半径をシール層Sの曲率半径よりも大きく設定しておくことが好ましい。凹面25Aの曲率半径をシール層Sの曲率半径よりも大きく設定する場合、凹面25Aの曲率半径と、シール層Sの外面の曲率半径との差が2.0 mmを超えないように設定するのが好ましい。
図5(A)に示したように、凹面25Aとシール層Sとの間に形成される隙間g,gが、凹面25Aの幅方向の両端で外方に開口するようにしておくと、各隙間gをシール用テープ等により塞ぐことは容易であるので、接地線引出金具25と電力ケーブルとの間のシール性が損なわれるのを防ぐことができる。
接地線引出金具25を電力ケーブルの上に設置した状態で、接地線引出金具25と電力ケーブルとを一括して取り囲むようにテープを巻き付けた際に、接地線引出金具25の幅方向の両端付近で該テープと電力ケーブルの外周との間に大きな隙間を生じさせないように構成しておくのが好ましい。そのためには、図3に見られるように、接地線引出金具25を電力ケーブル11の上に設置した状態で、凸面25Bの周方向の両端の延長面が電力ケーブル11の絶縁シースの外周面に接するか、又はほぼ接した状態になるように、凸面25Bの曲面形状と、接地線引出金具25の幅寸法とを設定することが好ましい。本実施形態では、凹面25Aと凸面25Bの境界部を形成する接地線引出金具25の幅方向の両端が、図9に見られるように、角部を有しない、Rが付けられた形状を呈するように加工されている。
本実施形態では、接地線引出金具25が中実の部材からなっている。このように、接地線引出金具を中実に形成する場合には、量産性を高めるため、該接地線引出金具を鋳造により製造するのが好ましい。接地線引出金具25を鋳造により製造する場合、該接地線引出金具25の凹面25Aとシール層Sとの接着性を良好にするために、少なくとも凹面25Aは、鋳物肌のままとしておくことが好ましい。通常鋳物肌の表面粗さは、数十μmないし200μm程度である。接地線引出金具25の凹面25Aを研磨すると、シール層との接着性が弱くなる。
本実施形態では、接地線引出金具25の一端25a(図2参照)寄りの一部の肉厚を他の部分の肉厚よりも薄くすることにより,接地線引出金具25の一端側に凸面25Bの頂部に対して段差を有して、凸面25Bの頂部よりも凹面25A側に落ち込んだ接続面25C1を有するシールド導体接続部25Cが形成されている。このシールド導体接続部には、電力ケーブル11の遮蔽層から導出されたシールド導体11b1の先端に取り付けられた端子金具26がボルト27により接続されている。ケーブル11から導出されたシールド導体11b1は、外部半導電層11cに巻き付けられたロールスプリング23によりケーブル11の外部半導電層11cの外周に固定されている。
更に、図3及び図4に見られるように、接地線引出金具の他端25b側には、その端面に開口する孔(有底の孔)25Dが形成されている。この孔25D内に接地線接続導体28の一端が挿入されて該孔25D内で接地線接続導体28が圧入、溶接、又は銀ろう付け等により接地線引出金具に接続されている。接地線接続導体28としては、平編導体のような可撓性を有する導体を用いることが好ましい。接地線接続導体28の他端には、防水形の圧着端子金具29が接続され、引き出される接地線15の一端に半田付けされた端子金具30(図2参照)がボルト31及びナット32により圧着端子金具29に接続されている。
なお本実施形態では、接地線接続導体28の他端に圧着端子金具29を接続して、該圧着端子金具29を介して接地線接続導体28と接地線15とを接続しているが、接地線接続導体28に圧着端子金具29を接続することなく、該接地線接続導体28を接地線や別の電力ケーブルから引き出された接地線接続導体等に圧着スリーブや半田付け等により接続するようにしても良い。また接地線15を、直接、接地線引出金具25に接続しても良い。
図4に示したように、接地線引出金具25の外面は防食性を有するコーティング用樹脂材料からなる防食層33により覆われ、接地線接続導体28の外周には防水絶縁テープ34が巻き付けられる。防食層33は、例えばポリ塩化ビニル樹脂等のコーティング用樹脂材料により形成するのが好ましい。防食層33は、ディッピング(接地線引出金具の凸面を処理槽に収容したコーティング用の樹脂液に接触させる方法)や吹きつけ塗装等の適宜の方法により形成することができる。接地線引出金具25の凹面25Aとシール層Sとの接着性を高め、凸面25Bと防食層33との接着性を高めるため、接地線引出金具25の凹面25A及び凸面25Bの外面には接着剤を塗布しておくのが好ましい。この接着剤としては、熱硬化性のものを用いるのが好ましい。接地線引出金具25の凸面から凹面にかけて接着剤を塗布しておくと、防食層33を接地線引出金具25に強固に接着することができ、防食層が剥がれて遮水性が損なわれるおそれをなくすことができる。特にディッピングにより防食層33を形成する場合には、接地線引出金具25の幅方向の両端部に達している防食層の端部が剥がれやすい。万一防食層の端部が剥がれると、その部分から接地線引出金具25の長手方向に沿って内部に水が浸入して遮水性が失われるため、上記のように接着剤を塗布して、防食層の端部の剥離を防止しておくことが有効である。
なお本実施形態では、接地線接続導体28として裸導体(好ましくは平編導体)を用いているが、接地線接続導体28は、外周に絶縁被覆を有する絶縁電線(但し可撓性を有するもの)からなっていても良い。接地線接続導体28として絶縁電線を用いる場合には、その電気的な接続に用いられる部分、即ち、接地線引出金具25に接続される部分及び接地線15又は他の電力ケーブルから引き出された接地線接続導体等に接続される部分のみの絶縁被覆を除去して、電気的な接続には用いない部分の絶縁被覆を残しておくことにより、テープ巻きを省略することができる。
接地線引出金具25の高さは、シールド導体11b1の接続及び接地線接続導体28の接続に支障を来さない大きさに設定される。図示のように、シールド導体11b1の端部に接続した端子金具26をボルト27により接地線引出金具25に接続する場合には、端子金具26及びボルト27が接地線引出金具25からはみ出さないように、接地線引出金具25の高さが設定される。絶縁シースの外径が40mm〜65mmの範囲にある66kVCVTクラスの電力ケーブルに接地線引出金具25を適用する場合、接地線引出金具25の高さは15mm〜25mmの範囲に設定することが好ましい。接地線引出金具25の高さが低すぎると、シールド導体11b1を接続するボルト27が接地線引出金具25からはみ出してしまう。例えば、ボルト27としてM8規格のものを用いる場合、その頭部が接地線引出金具25からはみ出さないようにするためには、接地線引出金具25の高さを15mm以上とすることが必要である。接地線引出金具25の高さが高すぎると、不安定になり、接地線引出金具25が電力ケーブルから落ちやすくなる。
図1及び図2に示されているように、接地線引出金具25は、その一端25aを電力ケーブル11のシールド導体導出部11fに向け、かつ凹面25Aを電力ケーブル11の絶縁シース11aの外周にシール層Sを介して当接させた状態で電力ケーブル11のシールド導体導出部11f付近に設置される。
シール層Sは、粘着性と柔軟性及び(又は)弾性とを有するシール材からなる絶縁シート35により形成するのが好ましい。絶縁シート35としては、粘着性を有する絶縁パテシートが好適である。絶縁パテシートとしては、電力ケーブルの分野でケーブル同士の接続部のシール等の目的で広く用いられているものを使用することができる。
図6ないし図10は、電力ケーブル11の外周に接地線引出金具25を配置して固定する過程を順に示している。
電力ケーブル11の外周に接地線引出金具25を配置する際には、先ず図6(A)に示すように、電力ケーブル11の外周の接地線引出金具を配置する箇所に、矩形状の絶縁シート35を、その粘着性を利用して固定する。次いで図6(B)及び(C)に示すように絶縁シート35の上に接地線引出金具25を、その凹面25Aを絶縁シート35に接触させた状態で載せ、絶縁シート35の粘着性を利用して接地線引出金具25をシート35に固定する。このように、接地線引出金具25を配置した状態で、シール層Sの周縁部が接地線引出金具の凹面25Aを取り囲む周縁部から外側にはみ出すように、シール層を構成するシート35の大きさを設定しておく。
上記のようにして電力ケーブル11の上に接地線引出金具25を設置した後、接地線引出金具の凹面25Aを取り囲む周縁部の全体に亘って、かつ接地線引出金具25とシール層Sの表面との間に跨って、接地線引出金具25に接着する接着性とシール層Sに融着する融着性と隙間内への充填性とを有するシール用テープを貼り付けることにより、接地線引出金具25とシール層Sの表面との間を液密にシールする。このシールを行う際には、先ず図7(A)及び(B)に示したように接地線引出金具25の幅方向の両端(軸線方向に対して直角な方向)の端縁部とシール層Sの外面とに跨って、接地線引出金具25の軸線方向にシール用テープ36を貼り付ける。
次いで、図8(A)ないし(C)に示したように、接地線引出金具25の軸線方向の(長手方向の)両端の端面の、凹面25Aの周方向に沿う端縁部と、シール層Sの外面とに跨って、凹面25Aの周方向に沿ってシール用テープ37を貼り付ける。シール用テープ36及び37を貼り付ける際には、接地線引出金具の端縁部とシール層Sの外面との間に存在する隙間にシール用テープを押し込んで、該隙間をシール用テープで充填するようにする。
接地線引出金具25の凸面の外周を覆う防食層33を形成した場合、図9(B)に示すように、接地線引出金具25の凹面25Aと凸面25Bとの境界部25p付近で接地線引出金具25の長手方向に沿って伸びる防食層33の端縁部33aが、接地線引出金具25の幅方向の端部に重なるため、接地線引出金具25の幅方向の両端の端部のR(曲率半径)が大きくなり、接地線引出金具25の幅方向の両端とシール層Sの外面との間に奥深い狭間隙G′が形成され易い。この狭間隙G′には、シール用テープ36が入りにくいため、この部分がシールの盲点になりやすい。
そこで、本実施形態では、図9(A)に示したように、接地線引出金具の凹面と凸面との境界部25pで接地線引出金具の長手方向に沿って伸びる防食層33の端縁部33aが、先端側ほど薄くなるように加工されている。すなわち、傾斜面をなすように斜めに面取りされている。このように、防食層Sの端縁部33aを面取りしておくと、接地線引出金具25の幅方向の両端とシール層Sの外面との間に形成される間隙Gを浅くすることができるため、シール用テープ36を間隙Gに容易に充填することができ、シールの盲点が生じるのを防ぐことができる。
上記のようにして、接地線引出金具25とシール層Sの表面との間を液密にシールした後、図10に示したように、接地線引出金具25と電力ケーブル11とを一括して取り囲むようにシール用テープ38を巻く。このようにシール用テープ38を巻いた際に、接地線引出金具25の幅方向の両端の近傍でシール用テープ38と電力ケーブル11の外周との間に大きな隙間を生じさせないように、接地線引出金具25の凸面25Bの曲面形状と、接地線引出金具25の幅寸法とを設定しておく。
シール用テープ36ないし38としては、ブチルゴムをベースとした自己融着テープ、粘着性水密テープ、パテテープ等、電力ケーブルの接続部の水密処理を行う際に用いられているものを用いることができる。
上記のようにして、電力ケーブル11の外周に接地線引出金具25を設置した後、図2に示されているように、接地線引出金具25の外面の少なくとも一部と、電力ケーブル11のシールド導体導出部11f付近の外面とを含む要被覆部が、一括して保護外装部17により被覆され、保護外装部17と接地線引出金具25とにより、電力ケーブルのシールド導体導出部側の領域と前記接地線が引き出される側の領域との間の遮水が図られる。
上記「要被覆部」は、電力ケーブルのシールド導体導出部側の領域と接地線が引き出される側の領域との間の遮水を図るために被覆する必要がある部分であり、要被覆部の範囲は、実験により検証して、適宜に設定される。
本実施形態では、図1に示すように、保護外装部17は、電力ケーブル11の接地線引出金具25が配置された部分から電力ケーブル12のケーブル接続部本体13付近の部分に至るように配置されている。この保護外装部17は、図2に示すように、ケーブル接続部本体13と、接地線引出金具25の大部分(接地線引出部16の大部分)と、ケーブル接続部本体13により接続されている電力ケーブル11,12のケーブル接続部本体13寄りの一定長さの部分とを一括して覆う被覆層17aと、被覆層17aの端部から該被覆層内に水が浸入するのを阻止するために、被覆層17aの端部と接地線引出金具25の外周及び電力ケーブル11の外周とに跨って巻き付けられた防水テープ17bとにより構成されている。防水テープ17bとしては、自己融着テープを用いるのが好ましい。
被覆層17aは、遮水性を有する収縮チューブからなっていて、被覆層17aの遮水性と、防水テープ17bによる遮水機能(被覆層17aの端部から該被覆層内に水が浸入するのを阻止する機能)とにより、保護外装部17が遮水構造(外部からの水の浸入を遮断する構造)とされている。
本実施形態では、接地線引出金具25の凸面25Bの外周面にディッピング等により防食層33が形成されているが、防食層33は、被覆層17aを形成する収縮チューブとの密着性が良い。従って、凸面25Bの外周面に防食層33を形成しておくと、接地線引出金具25の耐食性を高めることができるだけでなく、被覆層17aと接地線引出金具25の凸面25Bとの密着性を良くして、遮水性能を高めることができる。
なお保護外装部17の内側にはケーブル接続部本体13を覆う半導電層や遮蔽層を形成するためのテーピングなどが施されるが、本発明の要旨とは直接関係がないためその説明は省略する。
図2に示した例では、収縮チューブからなる被覆層17aの端部が接地線引出金具25の他端25bの手前の位置で終端しているが、防水テープ17bの巻き付けに支障を来さない範囲で、被覆層17aの端部の位置を接地線引出金具の他端25bに近づけることもできる。被覆層17aは、接地線引出金具25の外面の大部分を覆うように設ければよく、その端部の位置は特定の位置に限定されないが、被覆層17aと接地線引出金具25との重なり代L2が、所定の遮水性能が得るために必要な大きさを下回らないようにしておく必要がある。
被覆層17aを構成する収縮性チューブとしては、常温で収縮性を有するもの、又は加熱されることにより収縮するもの(熱収縮性チューブ)を選択する。「常温で収縮性を有するチューブ」は、弾性材料からなっていて、自由な状態では要被覆部の外径よりも小さい内径を有し、要被覆部に被せられたときに自らが有する弾性により常温で収縮するものであり、典型的のものは、ゴムチューブである。
常温収縮性のチューブにより被覆層17aを形成する場合には、適宜の拡径手段により該チューブの径を拡大した状態で該チューブを要被覆部に被せた後、径拡手段をチューブから外して、その径を収縮させることにより、チューブを要被覆部に密着させる。
本実施形態では、接地線接続導体28の導出部及び電力ケーブル11の導出部の防水を効果的に図るため、更に図2、図12に示したような分岐ユニット40が設けられている。図示の分岐ユニット40は、被覆層17aで被覆された接地線引出金具25と電力ケーブル11とを一括して収容し得る形状及び大きさを有する有底の筒部41と、筒部41の底部から外方に突出して延びる第1の分岐管部42及び第2の分岐管部43とを一体に有している。筒部41は、その横断面が、電力ケーブル11の外周の一部を隙間を介して取り囲む大径の円弧状部41aの両端と、接地線引出金具25の外面を隙間を介して取り囲む小径の円弧状部41bの両端との間をそれぞれ直線41c,41dで結んだほぼ卵形の輪郭形状を有するように形成されている。筒部41の底部には、大径の円弧状部41a側及び小径の円弧状部41b側にそれぞれ位置させて、第1の分岐管部42及び第2の分岐管部43が、それぞれの中心軸線を筒部41の軸線と平行させた状態で突設されている。第1の分岐管部42は、電力ケーブル11を貫通させ得る大きさに形成され、第2の分岐管部43は、接地線接続導体28を貫通させ得る大きさに形成されている。
上記分岐管ユニット40は、図2に示されているように、その筒部41内に接地線引出金具25と電力ケーブル11及び被覆層17aの一部とを収容した状態で、電力ケーブル11の接地線引出金具25が配置された部分に装着されている。そして、電力ケーブル11の接地線引出金具25よりも接地線側に位置する部分が、第1の分岐管部42内を通して外部に導出され、接地線接続導体28が、第2の分岐管43内を通して外部に導出されている。
また分岐管ユニット40の筒部41と被覆層17aとの間をシールする防水層45と、第1の分岐管部42と該第1の分岐管部から導出された電力ケーブル11との間をシールする防水層46と、第2の分岐管部43と該第2の分岐管部から導出された接地線接続導体28との間をシールする防水層47とが形成されている。分岐管ユニット40内には、防水コンパウンド50やジェルを充填するのが好ましい。
図示の例では、分岐管ユニット40の筒部41と被覆層17aとの間の防水を図る防水層45が、分岐管ユニット40の筒部41の外周と被覆層17aの外周とに跨って自己融着テープ等からなる防水テープ又は防水用絶縁パテを巻き付けることにより形成されている。また、第1の分岐管部42と該第1の分岐管部から導出された電力ケーブル11との間の防水を図る防水層46は、第1の分岐管部42の外周と電力ケーブル11の外周とに跨って防水テープ又は防水用絶縁パテを付けることにより形成され、第2の分岐管部43と該第2の分岐管部から導出された接地線接続導体28との間の防水を図る防水層47は、第2の分岐管部43と接地線接続導体28との間に防水用パテやテープ等を付けることにより形成されている。
図2に示した例では、分岐管ユニット40の第2の分岐管部43を通して導出された接地線接続導体28の端部と、該接地線接続導体28に接続された接地線15とを覆うように絶縁被覆48が設けられている。
上記のように、ケーブル11の軸線方向に一定の長さ(遮水を図るために十分な長さ)L1を有する接地線引出金具25の凹面25Aを電力ケーブル11の絶縁シース11aの外周にシール材35を介して面接触させて、この接地線引出金具25を通して接地線15とケーブル11の遮蔽層から導出されたシールド導体11b1とを接続する構造にすると、接地線引出金具25が電力ケーブル11の絶縁シース11aにシール材35を介して広い面積で接触して遮水壁を構成するため、接地線引出金具25と電力ケーブル11の絶縁シース11aとの間を通して内部に水が浸入するのを確実に防止することができる。また本実施形態の接地線引出部では、要被覆部を一括して被覆する収縮性の被覆層17aが、接地線に比べてはるかに大きい外表面積を有する接地線引出金具25の外面に面接触するので、該被覆層17aと接地線引出金具25との間を通して内部に水が浸入するのを確実に阻止することができる。従って、本発明によれば、電力ケーブルのシールド導体導出部側の領域と接地線が引き出される側の領域との間の遮水を確実に図ることができ、接地線引出部の遮水性能を向上させることができる。
また上記のように構成すると、接地線15に比べて十分に広い外表面を有する接地線引出金具25が電力ケーブル11の絶縁シース11aの外面と要被覆部を被覆する被覆層17aとに面接触して遮水を図るので、電力ケーブルの絶縁シースの外面と要被覆部を被覆する被覆層17aとの間から接地線を直接引き出す場合に比べて、遮水機能を果たす部分の面積を大幅に広くして遮水性能を向上させることができる。
図13は、本発明の他の実施形態を示している。前記の実施形態では、分岐管ユニット40を設けて、電力ケーブル11の導出部及び接地線接続導体28の導出部の防水を図るようにしたが、図13に示した実施形態では、分岐管ユニット40が省略されている。
上記の各実施形態では、接地線15を接地線接続導体28を介して接地線引出金具25に接続するようにしたが、接地線15を直接接地線引出金具25に接続するように構成することもできる。
シールド導体11b1と接地線引出金具25との接続の仕方及び接地線接続導体28又は接地線15と接地線引出金具25との接続の仕方は、電気的及び機械的な接続を図ることができるものであればよく、上記の例に限定されない。
例えば、図14に示したように、接地線引出金具25の一端側に、該接地線引出金具の凸面の頂部に対して段差を有するシールド導体接続部を設けることなく、接地線引出金具25の一端にシールド導体接続導体60を接続して、シールド導体11b1をこのシールド導体接続導体60を介して接地線引出金具25に接続するようにしても良い。
図14に示した例では、接地線引出金具25の一端の端面に開口するようにして接地線引出金具25に形成された孔(有底の孔)内にシールド導体接続導体60の一端を挿入して該孔内でシールド導体接続導体60が接地線引出金具25に電気的に接続されている。そして、電力ケーブルの遮蔽層から導出されたシールド導体11b1が、圧着スリーブ61やろう付けなどによりシールド導体接続導体60に接続され、シールド導体11b1がシールド導体接続導体60を通して接地線引出金具25に電気的に接続されている。
図15は、本発明の更に他の実施形態を示したもので、この実施形態では、接地線引出金具25の他端寄りの一部の肉厚を薄くすることにより接地線引出金具25の他端側に凸面25Bの頂部に対して段差を有する接地線接続導体接続部(図2に示されたシールド導体接続部25Cと同様のもの)25C′が形成されている。接地線接続導体接続部25C′には、図2に示されたシールド導体11b1とシールド導体接続部25Cとの接続構造と同様の構造で、接地線接続導体28が接続されている。
上記の実施形態では、接地線引出金具が中実に形成されているが、本発明は、接地線引出金具25を中実に形成する場合に限定されるものではなく、接地線引出金具25は中空に形成されていても良い。中空の接地線引出金具25は、例えば、凸面側の部分を構成する部材及び凹面側の部分を構成する部材をそれぞれ板状の部材を湾曲させることにより製作するとともに、両端の壁部を構成する部材を板状部材を打ち抜くことにより製作して、これらの部材を組み合わせて溶接やろう付けなどにより接合することにより得ることができる。
またパイプ状の金属部材をプレス加工等により変形させることにより凹面25A及び凸面25Bを有する中空の金属部材を製造して、この中空金属部材の両端の開口部を閉じる端板を該中空部材の両端に溶接又はろう付け等により接合することによっても中空の接地線引出金具を得ることができる。
更に、凹面及び凸面を有する長尺の中空部材を押出し加工により製造した後、この長尺の中空部材を適当な長さにカットすることにより凹面25A及び凸面25Bを有する必要長さの中空金属部材を得て、この金属部材の両端の開口部を閉じる端板を該金属部材の両端に溶接又はろう付け等により接合することによっても中空の接地線引出金具を得ることができる。
接地線引出金具25を中空に構成する場合、電力ケーブルの絶縁シースから引き出されたシールド導体と接地線引出金具25との接続構造及び接地線接続導体28と接地線引出金具25との接続構造は任意であるが、シールド導体と接地線引出金具25及び接地線接続導体28と接地線引出金具25をそれぞれ接続した状態で、接地線引出金具の中空部内が外部に対して閉鎖されるように、上記各接続構造を構成するのが好ましい。
図16及び図17は、中空に形成された接地線引出金具25を用いた実施形態を示している。本実施形態では、円筒状のパイプを中空部材として用い、このパイプの周壁部の一部を径方向の内側に押し込むようにプレス加工することにより接地線引出金具25を形成している。本実施形態で用いる接地線引出金具25は、電力ケーブル11の絶縁シース11aの外周に沿うように湾曲した凹面25A(この例では円筒面)を外面に有する断面円弧状の遮水壁部25Eと、遮水壁部と反対側にあって外面が凸面25Bとなっている外周側壁部25Fとを一体に有する中空の金属部材と、この金属部材の長手方向の両端で該金属部材の中空部を閉じる端部材25G及び25Hとからなっていて、横断面がほぼ三日月形を呈するように形成されている。シールド導体11b1は、接地線引出金具25の長手方向の一端側の端部材25Gに電気的に接続され、接地線引出金具25の長手方向の他端側の端部材25Hに接地線接続導体28の一端が電気的に接続されている。遮水壁部25Eの凹面25Aの軸線方向長さL1は、該遮水壁部に遮水機能を持たせるために必要な長さに設定されている。また遮水壁部25Eの厚さは、遮水性、電気的な特性及び機械的な強度を考慮して適宜に設定される。なお図16及び図17に示された接地線引出金具は、押出し加工により製造することもできる。
接地線引出金具25は、その遮水壁部25Eの凹面25Aを、柔軟性を有するシール材からなる絶縁シート35を介して電力ケーブル11の絶縁シースの外周に当接させた状態で配置されている。図17に示されたように、電力ケーブルの遮蔽層から引き出されたシールド導体11b1の先端部が、接地線引出金具25の一端25a側の開口部を閉じる端部材25Gに設けられた孔に挿入されて、該シールド導体11b1が端部材25Gに溶接やろう付け等により接続されている。また接地線接続導体28の一端が、接地線引出金具25の他端25b側の開口部を閉じる端部材25Hに設けられた孔内に挿入されて、該接地線接続導体28が端部材25Hに溶接やろう付け等により接続されている。なお、端部材25Hには接地線15を直接接続しても良い。
図18は本発明の更に他の実施形態の要部を示したものである。この例で用いる接地線引出金具25は、凹面25Aを外面に有する遮水壁部25Eと、外面が凸面25Bとなっている外周側壁部25Fとを一体に有する中空金属部材からなっている。この接地線引出金具は、図16及び図17に示した実施形態で用いた接地線引出金具25から端部材25G及び25Hを省略したものに相当し、その横断面は三日月形を呈している。本実施形態では、プレス成形又は押出し成形により形成された中空の接地線引出金具25の軸線方向の一端25a及び他端25bの開口部の内側にシールド導体11b1及び接地線接続導体28の端部を挿入した状態で、接地線引出金具25の内周側の遮水壁部25Eの凹面25Aの形状を変えることなく、接地線引出金具25の一端25a寄りの部分及び他端25b寄りの部分を径方向に押し潰して、接地線引出金具の一端25a及び他端25bにそれぞれ圧着接続部25I及び25Jを形成し、これらの圧着接続部25I及び25Jによりそれぞれシールド導体11b1及び接地線接続導体28を接地線引出金具25に電気的に接続している。
接地線引出金具25の内周側の遮水壁部25Eの凹面25Aの形状を変えることなく、接地線引出金具25の一端25a寄りの部分及び他端25b寄りの部分を径方向に押し潰して、圧着接続部25I及び25Jを形成するには、適用する電力ケーブル11の半径に、柔軟性を有するシール材からなるシート35により形成されるシール層Sの厚みを加えた大きさの半径を有する円筒状の金属管を凹面25Aに当接させた状態で、接地線引出金具の一端寄りの部分及び他端寄りの部分で外周側壁部25Fを該金属管側に押し潰すようにすれば良い。なお、接地線を、直接、接地線接続金具25に接続しても良い。またシールド導体11b1を、シールド導体接続導体を介して金具25に接続しても良い。
図19は本発明の更に他の実施形態の要部を示したものである。この例でも、プレス成形又は押出し成形により図16に示したものと同様の横断面形状を有するように形成された中空金属部材により接地線引出金具25が構成されている。本実施形態では、接地線引出金具25の軸線方向の一端25a及び他端25bの開口部の内側にシールド導体11b1及び接地線接続導体28の端部を挿入した状態で、接地線引出金具25の一端25a寄りの部分及び他端25b寄りの部分のそれぞれの全体を押し潰して、圧着接続部25I及び25Jを形成し、これらの圧着接続部25I及び25Jをそれぞれシールド導体11b1及び接地線接続導体28に圧着することにより、シールド導体11b1及び接地線接続導体28をそれぞれ接地線引出金具25に電気的に接続している。
この実施形態では、接地線引出金具25の一端25a寄りの部分及び他端25b寄りの部分のそれぞれの全体を押し潰して、圧着接続部25I及び25Jを形成しているため、接地線引出金具25の圧着接続部25I及び25Jが形成された部分には、電力ケーブルの絶縁シースにシール材を介して当接される凹面25Aが形成されない。この場合は、接地線引出金具25の圧着接続部25I及び25Jが形成された部分以外の部分に形成された凹面25Aが、遮水壁部25Eに遮水機能を持たせるために必要な軸線方向長さL1を有するように接地線引出金具25の長さを設定しておく。
上記の例では、ケーブル接続部により接続されている電力ケーブルから接地線を引き出す場合を例にとったが、ケーブル接続部以外の部分で電力ケーブルの遮蔽層から外部に接地線を引き出す場合にも本発明を適用することができる。
上記の各実施形態では、接地線引出金具25の凹面25Aを電力ケーブル11の絶縁シース11aの外周に柔軟性を有するシール材からなるシート35を介して当接させるようにしたが、接地線引出金具25の凹面25Aは、遮水機能を有するシール層を介して電力ケーブル11の絶縁シース11aの外周に当接した状態で設置されればよく、本発明は、上記実施形態のように柔軟性を有するシール材からなるシート35を用いる場合に限定されるものではない。
上記の実施形態では、接地線引出金具25の凹面25Aと電力ケーブル11の絶縁シース11aの外周との間に介在させるシール層Sを、ある程度の厚みを有する絶縁パテシートにより形成するとしたが、シール層は、接着剤のような、塗布により薄く施される材料により形成されても良い。