JP2009091682A - 繊維架橋体および繊維架橋体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生分解性、生体適合性、吸水性および保水性に優れた繊維架橋体および繊維架橋体の製造方法を提供すること。
【解決手段】分子量20万以上のポリグルタミン酸を含有する繊維および繊維集合体を、静電紡糸法により形成する。溶媒としては水と水溶性有機溶媒を併用する。静電紡糸法により形成されたポリグルタミン酸の繊維の径寸法は0.01μm以上3μm以下が好ましく、より好ましくは0.05μm以上1.8μm以下である。そして、静電紡糸法により得られた繊維および繊維集合体を架橋させる。
【選択図】図1
Description
そして、ポリグルタミン酸を架橋したゲルは特に吸水性に優れ、化粧品などの保湿剤として使用されている。
このようなポリグルタミン酸を含有した繊維として、例えば、特許文献1には、ポリ−γ−グルタミン酸を含浸させた繊維が開示されている。
また、特許文献2には、ポリグルタミン酸を含む高分子をナノファイバー化した繊維を用いた医用材料が開示されている。
さらに、特許文献3には、湿式紡糸で形成したポリグルタミン酸を含んだ繊維が開示されている。
そして、特許文献4には、ポリグルタミン酸が含有された繊維構造体により人口心臓弁を形成する技術が記載されている。
また、特許文献2、4の繊維は医療用として臓器の代替品として使用されるものであるが、ポリグルタミン酸のナノファイバーの具体的提示はない。
さらに、特許文献3に記載の繊維は、湿式紡糸により繊維を形成している。湿式紡糸では繊維径を十分に小さく(ナノサイズ)することができないので、この繊維からなる基材の吸水性は不十分であった。
ポリグルタミン酸は、アミノ酸の一種であるグルタミン酸が直鎖状に連結した高分子で、生分解性、生体適合性などの特性を備えている。
また、吸水性および保水性に優れているため、ポリグルタミン酸の分子量を20万以上とすることにより、繊維化が可能となり、吸水性および保水性に優れた繊維架橋体を提供することができる。
この発明によれば、繊維が静電紡糸法により紡糸されるので、極細の繊維を得ることができる。したがって、このような繊維であれば、表面積が大きく、吸水性および保水性に優れた製品を提供することができる。
この発明によれば、前述の繊維が積層されて繊維集合体となる。そして、繊維が架橋されて繊維架橋体を形成する。繊維が積層されることにより、繊維間に多数の細孔が形成され、この細孔に大量の水分が吸収される。したがって、吸水性に優れている。
繊維の径寸法が3μmを超えると、超極細繊維としての特徴であるフィルター性能、表面積による吸水性が繊維集合体の単位重量あたりで優位ではなくなってしまい、風合い的にもゴアゴア感が生じてくる。繊維の径はさらに細い方が好ましいが、0.01μm以下になると、生産性、強度、取り扱いの面で適宜選択されうるものである。
そして、静電紡糸法により紡糸するため、電荷の高まりが糸の細化を促進し、細化に伴い溶媒の揮散が進むため、極細繊維を得ることができる。
なお、静電紡糸法においては、ノズル式とロール式のどちらを用いてもよい。ノズル式では他成分との芯/鞘構造であっても良い。
本実施形態では、ポリグルタミン酸を含む溶液を静電紡糸法により紡糸して繊維および繊維集合体を形成し、この繊維集合体に架橋処理を実施して、ポリグルタミン酸の繊維架橋体を形成する。
(1−1.ポリグルタミン酸)
ポリグルタミン酸は、分子量が20万以上であれば特に限定されず、公知の製法で得られたもの、天然物由来のもの、また、ナトリウム塩を使用することができる。
分子量が20万未満であると、静電紡糸する際にポリグルタミン酸の濃度を上げたとしても粒子しか生成されず、繊維状に紡糸することができない。
また、ポリグルタミン酸を溶解せしめる溶媒には、水と水溶性有機溶媒が用いられる。ポリグルタミン酸は水に可溶であるが、静電紡糸する際に、水だけでは紡糸が困難であるため、水溶性有機溶媒と併用する。
水溶性有機溶媒としてはポリグルタミン酸水溶液と混合しうるものが適宜選択される。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類以外にも、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどを用いることができる。この中でも、肌への刺激が小さく生体への影響が小さいことから、特に、炭素数1〜3の脂肪族低級アルコールであるメタノール、エタノール、プロパノールを用いることが好ましい。これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリグルタミン酸の含有量が1質量%未満であると、濃度が薄すぎて紡糸することができない。また、50質量%を超えると、粘度が高すぎて静電紡糸する際に紡糸することが困難となる恐れがある。
なお、紡糸後の繊維中のポリグルタミン酸の配合比としては、20%以上であることが好ましい。20%未満であると、生分解性、生体適合性などのポリグルタミン酸の特有の機能を十分に発揮することができない。
さらに、必要に応じて、界面活性剤、金属塩、増粘剤、色剤、防腐剤、各種安定剤を適宜使用することができる。
界面活性剤としては、特に制限はなく、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、両性界面活性剤といった公知の界面活性剤を使用することができ、具体的には、p−ノニルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリルオキシスルホン酸ナトリウム、ラウリルオキシリン酸二ナトリウム等のアニオン界面活性剤や、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド等のカチオン界面活性剤や、ステアリン酸ポリエチレングリコール、ペンタエリスリットステアリン酸モノエステル等のノニオン界面活性剤や、ラウリルジメチルペタイン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらの一種を単独で、または、二種以上を組み合わせて使用することができる。
増粘剤としては、例えば、メチルセルロースやヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、各種ガム類やペクチン、アルギン酸ソーダ、デキストリン、寒天、ゼラチン等の天然高分子増粘剤が挙げられる。
(2−1.製造装置)
次に、本発明の一実施形態にかかる繊維の製造装置を、図面を用いて説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる繊維の製造装置の概略を示す斜視図、図2は図1の概略断面図である。
図1および図2において、繊維の製造装置は静電紡糸装置であって、ポリグルタミン酸を収納した溶解液浸漬槽10の中に電圧印加ロール20が設置されている。
電圧印加ロール20は溶解液浸漬槽10の中で回転可能に支持され、少なくとも周面部は金属製である。溶解液浸漬槽10には高電圧発生装置21が接続されており、高電圧発生装置21の電源21から電圧が加えられ、ポリグルタミン酸溶液はプラスに帯電し、電圧印加ロール20で電荷が集中するようになっている。電圧印加ロール20は図示しない回転駆動機構と連結されている。
集積コンベア30は導電性のある素材、例えば、アルミニウム等から形成された帯状部材、または金属製ブロック31の導電性を妨げない紙もしくは合成繊維から成る不織布であり、図示しない繰り出しロールから繰り出されるとともに図示しない巻き取りロールで巻き取られる構成である。
金属製ブロック31の集積コンベア30の流れ方向の前後にはガイドロール32がそれぞれ配置されている。
電圧印加ロール20と集積コンベア30の集積面30Aとの距離は、溶媒が気化するように、糸の堆積状態をみながら自由に選択すればよく、特に限定するものではない。印加電圧は、溶液の性状、堆積量によって変えればよく、電圧が高いほど多量の繊維が得やすい。従って、電圧印加ロール20と金属製ブロック31が電極となって、その間に静電場が形成され、電圧印加ロール20に付着した液体表面に電荷が蓄積され、液体の表面張力以上に電荷が高まると、電圧印加ロール20の表面から金属製ブロック31に向かって糸状に引き出され、集積面30Aに堆積する。
次に、繊維の製造方法について説明する。本実施形態の繊維の製造方法は図1および図2で示される静電紡糸装置を用いた静電紡糸法(エレクトロスピニング法)である。
まず、溶解液浸漬槽10の内部にポリグルタミン酸溶液を収納しておき、集積コンベア30を駆動する。集積コンベア30には高電圧発生装置21に接続された金属製ブロック31が近接配置されているため、この状態で、高電圧をかけると、溶液表面に電荷が誘発、蓄積される。この静電引力はポリグルタミン酸溶液の表面張力に対抗する。電場力が臨界値を超えると、静電引力が表面張力を超え、荷電した溶液のジェットが噴射される。噴射されたジェットは体積に対して表面積が大きいため、溶媒が効率よく蒸発し、また体積の減少により電荷密度が高くなるため、さらに細いジェットになる。溶液のジェット噴射により金属製ブロック31側に自発的に牽引されることで紡糸がなされる。
紡糸されたポリグルタミン酸の繊維は集積コンベア30の集積面30Aに堆積されるが、集積コンベア30は巻き取られるため、集積面30Aに堆積されたポリグルタミン酸の繊維はコンベアの長さ方向に亘って所定厚さとなる。集積されたポリグルタミン酸の繊維は繊維集合体となり、図示しない装置によって集積コンベア30から剥離される。
静電紡糸法によって得られた繊維集合体は、熱架橋、電子線架橋、紫外線架橋、放射線架橋、グルタルアルデヒド架橋などの従来公知の架橋処理を実施することができる。この中でも特に、ポリグルタミン酸のゲル化処理にも一般に用いられている電子線架橋が好ましい。
このようにして、繊維架橋体を得ることができる。
したがって、本実施形態によれば次の作用効果を奏することができる。
(1)ポリグルタミン酸は、生分解性および生体適合性などの機能を有する。また、分子量20万以上のポリグルタミン酸を使用するので、極細の繊維および極細の繊維からなる繊維集合体を製造することができる。
また、静電紡糸法は常温で紡糸できるのでポリグルタミン酸の熱劣化を抑えて製造することができる。また、溶媒は水と水溶性有機溶媒であるので、取り扱いおよび製造を容易に行うことができる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、静電紡糸装置の静電場は、電圧印加ロール20と金属製ブロック31とで一対の電極を形成しているが、本発明ではこれを増やして、複数の電極間、溶解液浸漬槽で形成するものでもよい。この場合、複数の電圧印加ロール20は、異なる電圧値であってもよい。
また、前記実施形態では、ロール式の静電紡糸装置を使用したが、ノズル式の静電紡糸装置を用いてもよい。ノズル式では多成分との芯/鞘構造であっても良い。
ポリグルタミン酸として、分子量150万の和光純薬工業株式会社製ポリ−γ−グルタミン酸ナトリウム(平均分子量150万〜250万)を使用した。
なお、分子量の測定は、ポリグルタミン酸5mlを水1mlに溶解し、ゲル浸透クロマトグラフ測定(島津製作所製「LC−10ADvpシステム」、カラム:昭和電工製「SHODEX ASAHIPAK GS−710+GS−310 7G」、室温、移動相:(50mmol/lリン酸緩衝液)+(0.3mol/lNaCl水溶液)、0.7ml/min、検出器:示差屈折率検出器)により行った。
この溶液を、ノズル式の静電紡糸装置(メック(株)製、製品名「Nanon」)で、電圧65〜78kV、電極間距離100〜110mm、電荷ロール8〜4rpmで紡糸し、アルミ箔に繊維集合体を堆積させた。
得られた繊維集合体を、気密性のあるナイロンフィルム袋(旭化成パックス(株)製、商品名「飛竜(登録商標)N−9」、延伸ナイロン15μm/ポリエチレン60μmの積層体)に入れ、密閉した(特開2005−314489参照)。
これを、コッククロフトウォルトン型電子線照射装置にて、照射距離10cm、2.0kGy/secにて照射合計量が140kGyになるように照射した。
この照射物を、サンユー電子社製「SC−701 GUICKCOATER」で金蒸着し、キーエンス社製の3Dリアルサーフェイスビュー顕微鏡「VE−8800」にて繊維径を観察した。図3に実施例1の繊維集合体の拡大写真を示す。
そして、ナイロンフィルム袋を開放して空気中の水蒸気を吸湿させ、24時間放置した。
実施例1のポリ−γ−グルタミン酸ナトリウムを使用し、水/メタノール/塩化カルシウム/ポリグルタミン酸=61質量%/23質量%/1質量%/15質量%の配合比で混合し、攪拌溶解した。
この溶液を、ノズル式の静電紡糸装置(メック(株)製、製品名「Nanon」)で、電圧30kV、電極間距離150mm、吐出2.0ml/hで紡糸し、アルミ箔に繊維集合体を堆積させた。
実施例1と同様の電子線架橋処理を実施し、さらに実施例1と同様に繊維径を観察した。図4に実施例2の繊維集合体の拡大写真を示す。
そして、ナイロンフィルム袋を開放して空気中の水蒸気を吸湿させ、24時間放置した。
電子線照射を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の方法で繊維集合体を製造した。図5に比較例1の繊維集合体が24時間放置された後の拡大写真を示す。
実施例1のポリ−γ−グルタミン酸ナトリウムを使用し、水/ポリグルタミン酸=90質量%/10質量%の配合比で混合し、攪拌溶解した。
この溶液を、実施例1と同様に静電紡糸装置で紡糸したが、径寸法が略同じである糸状の繊維を形成することができなかった。図6に比較例2の繊維集合体の拡大写真を示す。
実施例1のポリ−γ−グルタミン酸ナトリウムを使用し、水/ポリグルタミン酸=80質量%/20質量%の配合比で混合し、攪拌溶解した。
この溶液を、実施例1と同様に静電紡糸装置で紡糸したが、径寸法が略同じである糸状の繊維を形成することができなかった。図7に比較例3の繊維集合体の拡大写真を示す。
ポリグルタミン酸として、分子量5万のもの(和光純薬工業株式会社製、商品名「ポリ−L−グルタミン酸」、平均分子量1.5万〜5万)を用いた。
水/エタノール/ポリグルタミン酸=55質量%/25質量%/20質量%の配合比で混合し、攪拌溶解した。
この溶液を、静電紡糸装置(エレクトロスピニング装置)で、電圧65〜78kV、電極間距離100〜110mm、電荷ロール8〜4rpmで紡糸したが、繊維を得ることができなかった。
実施例1および2、比較例1〜4の評価結果を以下の表1に示す。
なお、紡糸性の評価は以下の通りである。
○:径寸法が略同じである糸状の繊維を紡糸できる。
△:紡糸できるが、繊維の径寸法がばらばらで糸状に形成されない。
×:紡糸できない。
一方、比較例1は、電子線照射(架橋処理)を行わなかったので、繊維状に紡糸できなかった。
比較例2、3は、溶媒に水のみを使用したので、繊維の径寸法が略同じである糸状の繊維が形成されず紡糸性が劣っていた。
比較例4は、分子量の小さいポリグルタミン酸を使用したので、静電紡糸装置による紡糸ができなかった。
20…電圧印加ロール
30…集積コンベア
30A…集積面
Claims (6)
- 分子量20万以上のポリグルタミン酸を原料として用いた繊維が架橋されたものである
ことを特徴とする繊維架橋体。 - 請求項1に記載の繊維架橋体において、
前記繊維は、静電紡糸法により紡糸されたものである
ことを特徴とする繊維架橋体。 - 請求項1または請求項2に記載の繊維架橋体において、
前記繊維は、繊維集合体を構成している
ことを特徴とする繊維架橋体。 - 請求項1から請求項3のいずれかに記載の繊維架橋体において、
前記繊維の径寸法が、0.01μm以上3μm以下である
ことを特徴とする繊維架橋体。 - 請求項4に記載の繊維架橋体において、
前記繊維の径寸法が、0.05μm以上1.8μm以下である
ことを特徴とする繊維架橋体。 - 請求項1から請求項5のいずれかに記載の繊維架橋体を製造する製造方法であって、
前記ポリグルタミン酸と、
水と、
水溶性有機溶媒と、を混合してポリグルタミン酸溶液とし、
このポリグルタミン酸溶液を帯電させて紡糸する静電紡糸法で前記繊維を紡糸する
ことを特徴とする繊維架橋体の製造方法。
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