JP2009091613A - 成膜方法及び成膜装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】成膜速度を損なうことなく、平滑性に優れた薄膜を形成する成膜方法及び成膜装置を提供する。
【解決手段】固体物質を有するターゲット2に、第1のレーザ光源4からレーザ光6を照射して、ターゲット2の固体物質を飛散させる工程と、飛散された固体物質に第2のレーザ光源5からレーザ光7を照射する工程とを有し、飛散された飛散物質を基板3に付着させて成膜する。
【選択図】図1

Description

本発明は、レーザアブレーション法を用いた成膜方法及び成膜装置に関する。
従来、薄膜を形成する方法として、PVD法(物理気相成長法)の一種であるレーザアブレーション法(Pulsed Laser Deposition法)が用いられている。レーザアブレーション法では、レーザ光を金属や化合物等の所望の材料からなるターゲットに照射し、ターゲットの物質をプラズマ化させることにより、プラズマ状のプルームを発生させる。そして、この発生したプルーム内の物質が基板方向に飛散し、その飛散物質が基板上に堆積されることにより薄膜が形成される。
このようなレーザアブレーション法は、ターゲットの組成と基板上に作製される薄膜の組成のずれが少ない等の特徴を有している。
ところで、レーザアブレーション法において、プラズマ状のプルーム内の物質には、分子、原子、イオン、電子、等が混在している。レーザアブレーション法では、このプルーム内を飛散する解離された荷電粒子や中性原子、中性小分子などの小さな粒子により、基板上に平坦な膜が作製される。しかしながら、プルーム内には、粒径が1μm〜10μm程度のドロップレットの原因となる粗大粒子も混在している。ここで、粗大粒子とは、例えば、微粒子やクラスタを示す。ドロップレットとは、解離されていない粗大粒子が基板上に被着したものである。従来、このドロップレットの原因となる粗大粒子が基板に堆積されると、膜表面に凹凸ができてしまい膜質が悪化するという問題があった。
そこで、レーザアブレーション法を用いた成膜において、ドロップレットの原因となる粗大粒子が基板に堆積されてしまうことを防ぐ為に、様々な提案がなされている(特許文献1、特許文献2)。
特許文献1には、ターゲット上のレーザ照射位置と、基板とを結ぶ直線上のターゲット近傍に遮蔽物を設ける構成が記載されている。この遮蔽物を設けることにより、ターゲットから出た微粒子等の重い粒子は遮蔽物に遮られる。一方で、軽い粒子は粒子同士衝突し合いながら飛散していくため、基板上には質量の軽い粒子のみが散乱して到達する。このため、基板上にドロップレットの原因となる重い粒子は到達しないので、ドロップレットを含まない平坦な薄膜を作製することができる。
また、特許文献2には高速回転体をターゲットと基板との間の基板寄りに設ける構成が記載されている。この高速回転体は、回転軸と回転軸に放射状に取り付けられた多数の平面吸着板から構成されており、この回転体の高速回転によりドロップレットの原因となる粗大粒子を平面吸着板全面で均一に捕捉吸着させる。このようにして、成膜に寄与させたくない粗大粒子を捕捉して、基板に付着する飛散物質から完全に分離することができるため、平坦で良質な膜が得られる構成となっている。
以上のように、従来のレーザアブレーション法では、ドロップレットの原因となる粗大粒子を取り除く構成を設けることにより、作製する薄膜の平滑性の向上が図られていた。
特開平7−34231号公報 特開2003−49262号公報
ところで、アブレーション法において、特許文献1のドロップレットを低減させる方法では、遮蔽物によりドロップレットの原因となる粗大粒子を遮蔽するために、成膜速度が極端に低減するという問題がある。また、特許文献2のように、高速回転体によりドロップレットの原因となる粗大粒子を捕捉する場合、ターゲットと基板間に高速回転体を構成しなければならないため、ターゲットと基板間の距離が制限されてしまう問題がある。さらに、従来のように、ドロップレットの原因となる粗大粒子を、遮蔽物や高速回転体で捕捉する方法では、遮蔽物や高速回転体を取り出して洗浄しなければならないため、装置の管理に手間が掛かる問題もある。
本発明は、上述の点に鑑み、成膜速度を損なうことなく、平滑性に優れた薄膜を形成する成膜方法及び成膜装置を提供する。
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の成膜方法は、固体物質を有するターゲットに、第1レーザ光源からレーザ光を照射して、ターゲットの固体物質を飛散させる工程と、飛散された飛散物質に第2のレーザ光源からレーザ光を照射する工程とを有し、飛散された飛散物質を基板に付着させて成膜することを特徴とする。
また、本発明の成膜装置は、固体物質を有するターッゲトと、ターゲットにレーザ光を照射する第1レーザ光源と、ターゲットから飛散した飛散物質に対してレーザ光を照射する、少なくとも1以上のレーザ光源からなる第2レーザ光源と、飛散物質が付着して成膜される基板とを有することを特徴とする。
本発明の成膜方法及び成膜装置では、第2のレーザ光源により、飛散物質にレーザ光が照射されるので、飛散物質中のドロップレットの原因となる粗大粒子が分解される。
本発明の成膜方法によれば、ドロップレットの原因となる粗大粒子を分解して成膜に寄与させるので、成膜速度を損なうことなく平滑性に優れた膜を基板上に成膜することができる。
本発明の成膜装置によれば、第2レーザ光を飛散物質に照射することにより、飛散物質が分解されるので、基板上に成膜されるドロップレットを抑制することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に本発明の一実施形態に係る成膜装置1の概略構成を示す。本発明の成膜装置1は、所望の固体物質材料で構成されたターゲット2と、ターゲット2上に第1レーザ光6を照射する第1のレーザ光源4と、ターゲット2から飛散した飛散物質に対して第2レーザ光7を照射する第2のレーザ光源5と、ターゲット2から飛散された飛散物質が堆積される基板3とから構成される。本実施形態例では、基板3上に磁性膜であるNd−Fe−B膜を形成する例を示す。
表1に、本実施形態例の成膜条件を示す。
表1に示すように、本実施形態例における成膜は、2×10−6Torr〜8×10−6Torrの真空雰囲気中でなされる。ターゲット2及び基板3は、図示しない真空容器内に構成されている。
本実施形態例において、ターゲット2は、Nd2.6Fe14Bから構成される。また、基板3はタンタル(Ta)から構成され、ターゲット2上の第1レーザ光6の照射位置に対向した位置に所要の距離を保って配置される。ターゲット2は所要の回転速度で回転するように配置される。本実施形態例において、基板3の成膜される基板面3aと、ターゲット2のレーザ照射されるターゲット面2aとの間の距離は10mmに設定されている。また、本実施形態例におけるターゲット2の回転速度は、7.0rpmである。
第1のレーザ光源4としては、例えばYAGレーザを用いる。第1のレーザ光源4は、ターゲット2上に第1レーザ光6を照射できる位置に配置される。第1のレーザ光源4から発振される第1レーザ光6のビームエネルギーは5〜6Wに設定する。そして、第1のレーザ光源4から発振される第1レーザ光6は、ターゲット2から電離された物質を飛散させるだけのエネルギー密度を有していればよい。
第2のレーザ光源5としては、第1のレーザ光源4と同様に例えばYAGレーザを用いる。第2のレーザ光源5は、第2レーザ光7を、ターゲット2上の第1レーザ光6が照射されるターゲット面2aと、基板3の成膜される側の基板面3aとを結ぶ直線上に照射できるような位置に配置される。本実施形態例では、第2レーザ光7がターゲット2と基板3間にあって、ターゲット面2a及び基板面3aに平行に照射されるように、第2のレーザ光源5が配置される。第2のレーザ光源5から発振される第2レーザ光7のビームエネルギーは5〜6Wに設定する。また、第2のレーザ光源5からの第2レーザ光7は、第1のレーザ光源4の発振に対して所望の遅延をかけて発振されるように構成されている。
このような構成の成膜装置1において、レーザアブレーション法により、真空雰囲気中において基板3上に成膜が成される。本実施形態例では、Nd2.6Fe14Bから構成されるターゲット2を構成することにより、Taからなる基板3上にはNd−Fe−B膜が形成される。
以下に、本実施形態例の成膜装置1を用いた成膜方法を示す。
まず、第1のレーザ光源4から第1レーザ光6を発振して、ターゲット2上に照射する。そうすると、図1に示すように、ターゲット2が瞬間的に昇華(アブレーション)され、電離された荷電粒子、中性原子、中性小分子等からなる微細粒子9が混在したプラズマ状のプルーム10が発生する。そうすると、プルーム10内の各々の粒子は基板面3aに向って飛散する。このとき、プルーム10内には、成膜に寄与させたい荷電粒子や中性原子、中性小分子等の微細粒子9の他に、ドロップレットの原因となるクラスタや微粒子からなる粗大粒子8が混在している状態である。
次に、第2のレーザ光源5から第2レーザ光7を発振し、第1レーザ光6により発生したプルーム10内の飛散物質に照射する。この第2レーザ光7の発振は、第1レーザ光6の発振に対して、所望の遅延を持たせている。第1レーザ光6に対して遅延をかけられた第2レーザ光7を照射することにより、ターゲット2から飛散してプルーム10内に混在している粗大粒子8がプラズマ化される。すなわち、第2レーザ光7の照射により、ドロップレットの原因となる粗大粒子8が分解され荷電粒子、中性粒子、中性小分子等の電離された微細粒子9になって飛散する。
図2に、ターゲット2から飛散した粗大粒子8が第2レーザ光7に照射される前の様子(図2A)と、照射された後の様子(図2B)の模式的に示す。図2に示すように、粗大粒子8に第2レーザ光7が照射されることにより、粗大粒子8が、荷電粒子や中性子、中性小分子等の粒径が微小の微細粒子9に電離される。
従って、第2レーザ光7によりドロップレットの原因となる粗大粒子8が分解されるので、基板3上に粗大粒子8が被着してドロップレットができるのを防ぐことができる。すなわち、基板3上に到達する粒子のほとんどが、良質な膜質を構成する粒径の小さな荷電粒子、中性分子、中性小分子等の微細粒子9とされるので、膜の凹凸の原因となるドロップレットが低減される。
さらに、本実施形態例では、第1レーザ光6をターゲット2に照射した際に発生する荷電粒子等の微細粒子8に加え、第2レーザ光7をターゲット2から発生した粗大粒子8に照射することにより発生した荷電粒子等の微細粒子9も成膜に寄与するので、成膜速度が向上する。
ここで、本実施形態例において、第1のレーザ光源4からの第1レーザ光6の発振に対して第2のレーザ光源5から発振される第2レーザ光7に遅延をかける理由を、図3を用いて説明する。
図3に、一般的なレーザアブレーション法において、レーザ光をターゲット上に照射して物質をアブレーションさせた後の、プルーム内の粒子移動を示す。横軸がアブレーション後の経過時間で、縦軸が各物質のターゲットからの飛散距離を示す。レーザアブレーション法では、前述したように、ターゲットをレーザ照射した際にプラズマ状のプルームが発生する。このプルーム内には、荷電粒子や中性原子、中性小分子等のプラズマに加えて、クラスタや微粒子等のドロップレットの原因となる粗大粒子が含まれる。図3からわかるように、荷電粒子や中性原子、中性小分子等の粒径の小さい粒子は軽いため、アブレーション後のターゲットからの飛散距離は、少しの経過時間で大きな飛散距離となる分布を有する。それに対して、アブレーションによりターゲットから放出されるクラスタや微粒子等の粒径の大きな粒子は重いため、荷電粒子や中性原子、中性小分子に比べて経過時間に対する飛散距離は小さい分布となっている。すなわち、図2に示す各粒子のアブレーション後の経過時間に対する飛散距離の分布により、ドロップレットとなるクラスタや微粒子は、荷電粒子や中性原子、中性小分子等のプラズマよりも飛散速度が小さいことがわかる。
本実施形態例では、第2のレーザ光源5から発振される第2レーザ光7を、ドロップレットの原因となる粗大粒子8に照射して、プラズマ化する構成とする。すなわち、図3に示した各粒子の経過時間と飛散距離の時間の関係を用いて、第2レーザ光7の照射タイミングを調整することで、粗大粒子8に有効にレーザを照射することができる。このように、本実施形態例では、第1のレーザ光源4の発振に対して、第2のレーザ光源5に適切な遅延をかけることにより、クラスタや微粒子が分解され、基板表面に到達するドロップレットが低減される。
本実施形態例において、第1のレーザ光源4からの第1レーザ光6発振に対する第2のレーザ光源5の第2レーザ光7発振の最適な遅延時間は、成膜条件によって変わってくる。また、どの程度まで膜の平滑性を求めるかにより、問題とする粗大粒子8の粒径は変わってくる。
図4、図5に、表1に示した成膜条件において、第1レーザ光6のレーザエネルギーを6.0W、第2レーザ光7のレーザエネルギーを5.0Wに設定し、成膜時間を1時間として、第1レーザ光6に対して第2レーザ光7にかける遅延時間の最適化を行ったときの測定結果を示す。また、本実施形態例において、問題とする粗大粒子8は、図3で示したクラスタや微粒子とする。
図4は、基板3上に堆積されるドロップレットの粒径の高さ(μm)毎に、ドロップレットの数(個)を計測して示したものであり、第2レーザ光7を照射せずに成膜した通常成膜のときのドロップレットの数、第2レーザ光7に0.2μsの遅延をかけたときのドロップレットの数、第2レーザ光7に50μsの遅延をかけたときのドロップレットの数、第2レーザ光7に100μsの遅延をかけたときのドロップレットの数をそれぞれ計測している。例えば、基板3に堆積されるドロップレットの粒径高さが1〜5μmであるとき、通常成膜の時のドロップレットの数は69個、0.2μsの遅延をかけたときのドロップレットの数は57個、50μsの遅延をかけたときのドロップレットの数は39個、100μsの遅延をかけたときのドロップレットの数は42個である。図4の結果を平均すると、50μsの遅延を第2レーザ光7にかけたときが、ドロップレットの発生を最も有利に抑制することがわかる。
図5には、第2レーザ光7にかける遅延時間に対する基板3上に成膜されるNd−Fe−B膜の膜厚を示す。破線bは、第2レーザ光7を照射しない場合の平均膜厚を示すものである。図5の実線aで示すように、膜厚の平均値は遅延時間がおよそ50μsのときに最も低い値となる。膜厚の平均値の減少は、第2レーザ光7でプラズマ化された物質は基板2方向以外にも飛散するためであり、遅延時間が50μsのときに第2レーザが有効に粗大粒子をプラズマ化しているといえる。
図4及び図5の結果により、本実施形態例の成膜条件においては、第2レーザ光7に対して第1レーザ光5から50μsの遅延時間をかけたときに、ドロップレットの数が低減された平滑性のよい薄膜が基板3上に成膜されることがわかる。
図6に、通常成膜した場合、すなわち第2レーザ光7を照射しない場合の薄膜の表面状態(図6A)と、エネルギー密度が0.25J/cmである第2レーザ光7に、第1レーザ光5に対して50μsの遅延時間をかけて照射した場合の薄膜の表面状態(図6B)を映したSEM(Scanning Electro Microscope)写真を示す。図6Aでは、粒径の大きなドロップレット11が表面に確認することができる。それに対し、図6Bでは、図6Aで見られるような粒径の大きな粒が見られない。すなわち、第2レーザ光7に50μsの遅延時間をかけて照射した場合には、ドロップレットが低減されているのがわかる。さらに、図6Aに見る膜厚は9.12μmであり、図6Bに見る膜厚は7μmである。これは、第2レーザ光7でプラズマ化された物質は基板2方向以外にも飛散するためであり、第2レーザ光7を照射しない場合(図6A)よりも、照射した場合(図6B)の方が、膜厚が薄くなっている
以上より、本実施形態例の成膜条件においては、第2レーザ光7に50μsの遅延時間をかけて第2レーザ光7を照射した場合のほうが、薄い膜を平滑性良く成膜することができることがわかる。
次に図7に、表1に示した成膜条件において、第1レーザ光5のレーザエネルギーを6.0W、第2レーザ光7のレーザエネルギーを5.0W、第2レーザ光7にかける遅延時間を50μs、ターゲット2と基板3間の距離L(図1参照)を10mmとし、第2レーザ光6のビーム径の最適化を行ったときの測定結果を示す。
図7は、基板3上に堆積されるドロップレットの粒径の高さ(μm)毎に、ドロップレットの数(個)を計測して示したものであり、第2レーザ光7を照射せずに成膜した通常成膜のときのドロップレットの数、第2レーザ光7のビーム径d(図1参照)を8.0mmに設定したときのドロップレットの数、第2レーザ光7のビーム径を3.7mmに設定したときのドロップレットの数、第2レーザ光7のビーム径を2.6mmに設定したときのドロップレットの数、第2レーザ光7のビーム径を1.7mmに設定したときのドロップレットの数をそれぞれ計測している。例えば、基板3に堆積されるドロップレットの粒径高さが1〜5μmであるとき、通常成膜の時のドロップレットの数は62個、ビーム径が8.0mmのときのドロップレットの数は35個、ビーム径が3.7mmのときのドロップレットの数は41個、ビーム径が2.6mmのときのドロップレットの数は55個、ビーム径が1.7mmのときのドロップレットの数は47である。図7に示す結果を平均すると、第2レーザ光7のビーム径が8.0mmであるときに、ドロップレットの発生が最も有利に抑制されることがわかる。
ここで、レーザ光のエネルギー密度はビーム径に依存する。第2レーザ光7のビーム径8.0mm、3.7mm、2.6mm、1.7mmは、それぞれ、エネルギー密度0.33J/cm、1.6J/cm、3.1J/cm、7.3J/cmに対応する。
図8に、通常成膜した場合、すなわち第2レーザ光7を照射しない場合の薄膜の表面状態(図8A)と、ビーム径が8.0mmである第2レーザ光7を照射した場合の薄膜の表面状態(図8B)を映したSEM写真を示す。図8Aでは、粒径の大きなドロップレット12が表面に確認することができる。それに対し、図8Bでは、図8Aに比べて、粒径の大きな粒が低減されている。すなわち、ビーム径を8.0mmに設定した第2レーザ光7を照射した場合には、ドロップレットが低減されているのがわかる。このように、本実施形態例の成膜条件においては、第2レーザ光7のビーム径を8.0mmに設定したときが最もドロップレットを抑制することができ、薄い膜を平滑性良く成膜することができることがわかる。
ところで、図7,図8を用いて説明したビーム径の最適化では、ターゲット2と基板3との間の距離を10mmと設定していた。そして、このとき最適なビーム径は8.0mmであり、これは、ターゲット2と基板3との間の距離10mmに最も近い値である。すなわち、ターゲット2と基板3との間に存在している粒子全体にレーザ光が照射されることにより、飛散する粗大粒子8に高い確率で照射される。そして、粗大粒子8が高い確率で分解されるので、基板3上にできる薄膜上のドロップレットが低減され、膜の平滑性が向上する。このように、第2レーザ光7は、粗大粒子8を分解するだけの十分なエネルギーであればよく、ビーム径は、ターゲット2と基板3との間の距離と同程度であることが好ましい。
このように、第2レーザ光7のレーザエネルギーが十分高い場合には、ビーム径はターゲット2と基板3との間の空間(距離Lで示す)をすべて覆うように設定するのが好ましい。従って、原理的には、例えばターゲット2と基板3間の距離Lが5mmのときに、ビーム径が5mmである第2レーザ光7を照射することがよいが、実際には、基板3やターゲット2に第2レーザ光7があたってしまうのを防ぐために、多少の余裕をとる。すなわち、上述したように、ビーム径は、ターゲット2と基板3との間の距離と同程度であることが好ましい。この場合の「同程度」とは、ビームがターゲット2や基板3にあたらない程度に、ビーム径が距離Lと近い値であることと定義する。
また、ターゲット2と基板3間の距離Lを広げていったときに、ビーム径を大きくしていくと、レーザエネルギー密度がちいさくなり、第2レーザ光7で粗大粒子をプラズマ化できなくなるという問題もある。このため、ビーム径には、エネルギー密度に制約される限界値もあり、第2レーザ光7のレーザエネルギーが十分で無い場合には、このビーム径よりも小さくする必要がある。
本実施形態例では、第2のレーザ光源5から発振される第2レーザ光7を円形のビーム形状とし、ビーム径dがターゲット2と基板3間の距離L全体を照射できるビーム径であればよいとしたが、第2レーザ光7はライン状のビームでもよく、その形状は問わない。この場合、本実施形態例で示したビーム径dは、ビーム幅に対応させるものとし、レーザエネルギーが十分大きければ、ビーム幅が、ターゲット2と基板3との距離L全体を照射できるものであることが好ましい。
本実施形態例によれば、第2レーザ光7の第1レーザ光5に対する遅延時間と、第2レーザ光7のビーム径を最適に設定することにより、プルーム10内に混在する粗大粒子8を効果的にプラズマ化することができる。このため、基板3に到達する粗大粒子8を抑制することができ、ドロップレットを低減することができる。
本実施形態例においては、第2のレーザ光源5を1つのレーザ光源から構成されるものとしたが、複数のレーザ光源で第2レーザ光源5を構成してもよい。第2のレーザ光源5を複数設けて、ターゲット2と基板3との間に配置することにより、複数段階に分けて粗大粒子8が分解されるように構成する。これにより、はじめの第2レーザ光でプラズマ化されなかった粗大粒子8が、次の第2レーザ光でプラズマ化される。例えばこの場合、第2レーザの遅延時間を変えて複数のレーザを順次照射する。この方法では,飛来してくる粒子を順次プラズマ化させることになる。
また、第2のレーザ光源5を複数のレーザ光源で構成する他の例としては、複数のレーザを同じ位置に同時に照射する方法がある。この方法では,エネルギー密度の不足を補うために,複数のレーザを用いる。
以上のように、第2のレーザ光源5を複数のレーザ光源で構成する例とすれば、ドロップレットの原因となる粗大粒子がプラズマ化される確率が大きくなるため、より平滑性のよい膜を成膜することができる。
また、本実施形態例では、基板3上に磁性膜を形成する例としたが、これに限定されるものではなく、超伝導薄膜や半導体薄膜等の複合材料系薄膜の作製等にも用いることができる。
また、本実施形態例では、基板は、ターゲット上のレーザ光が照射される位置に対向する位置に配置されている。基板とターゲットを対向させて配置することにより、成膜速度が速くなる効果を奏する。また、基板を、ターゲットの面に対して垂直に配置する構成としてもよい。その場合には、第2レーザ光を照射しきれなかった粗大粒子が基板上に成膜することをも防ぐことができ、より膜表面の平滑性が良好になる。
本発明の一実施形態例に係る成膜装置の概略構成図である。 粗大粒子にレーザ光を照射する前と照射した後を示した模式図である。 アブレーション後のプルーム内の粒子移動を示した概略分布図である。 第2レーザ光にそれぞれの遅延時間をかけたときの、ドロップレットの粒径高さ毎に計測したドロップレットの数を示す図である。 第2レーザ光にかける遅延時間に対する膜厚を求めた図である。 A,B 第2レーザ光を照射しないときの膜表面のSEM写真と、第2レーザ光に50μsの遅延時間をかけたときの膜表面のSEM写真である。 第2レーザ光のビーム径をそれぞれ設定したときの、ドロップレットの粒径高さ毎に計測したドロップレットの数を示す図である。 A,B 第2レーザ光を照射しないときの膜表面のSEM写真と、第2レーザ光のビーム径を8.0mmにしたときの膜表面のSEM写真である。
符号の説明
1・・成膜装置、2・・ターゲット、3・・基板、4・・第1のレーザ光源、5・・第2のレーザ光源、6・・第1レーザ光、7・・第2レーザ光、8・・粗大粒子、9・・微細粒子、10・・プルーム、11・・ドロップレット

Claims (6)

  1. 固体物質を有するターゲットに、第1のレーザ光源からレーザ光を照射して、前記ターゲットの固体物質を飛散させる工程と、
    前記飛散された飛散物質に第2のレーザ光源からレーザ光を照射する工程とを有し、
    前記飛散された飛散物質を基板に付着させて成膜する
    ことを特徴とする成膜方法。
  2. 前記第2のレーザ光源からのレーザ光の照射は、第1のレーザ光源からのレーザ光の照射後、所望の遅延時間後になされる
    ことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
  3. 前記飛散物質が付着して成膜される基板は、ターゲットに対向した位置に設ける
    ことを特徴とする請求項1記載の成膜方法。
  4. 固体物質材料から構成されるターッゲトと、
    前記ターゲットにレーザ光を照射する第1のレーザ光源と
    前記ターゲットから飛散した飛散物質に対してレーザ光を照射する、少なくとも1以上のレーザ光源からなる第2のレーザ光源と、
    前記飛散物質が付着して成膜される基板とを有する
    ことを特徴とする成膜装置。
  5. 前記第2のレーザ光源からのレーザ光の照射は、第1のレーザ光源からのレーザ光の照射後、所望の遅延時間後になされる
    ことを特徴とする請求項4記載の成膜装置。
  6. 前記飛散物質が付着して成膜される基板は、ターゲットに対向した位置に設けられる
    ことを特徴とする請求項4記載の成膜装置。
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