以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明に係る液体吐出装置の一例として示す第1実施形態のプリンタ3を備えた複合機1の斜視図である。図1に示すように、複合機1は、プリンタ機能やスキャナ機能やコピー機能やファクシミリ機能を有するものであり、複合機1の本体外形をなす略直方体状の筐体2を備える。筐体2の下部にはインクジェット方式の印刷を行うプリンタ(液体吐出装置)3が備えられ、筐体2の上部にはスキャナ4が備えられる。筐体2の正面には開口5が形成されており、この開口5の下段には給紙トレイ6が設けられ、上段には排紙トレイ7が設けられている。筐体2の正面側右下部には、扉8が開閉自在に取り付けられており、この扉8の内側にはカートリッジ装着部9(図2及び図3参照)が設けられている。扉8が開かれると、カートリッジ装着部9が正面側に露出して、インク(第1の液体)を貯留しているインクカートリッジ(液体タンク)10(図2及び図3参照)を着脱交換可能になる。筐体2の正面側上部には、オペレータが複合機1を操作するための操作パネル11が設けられている。
図2は、第1実施形態のプリンタ3の概要構成を側面視で示す模式図である。図2に示すように、筐体2の内部において、給紙トレイ6の上方にはプラテン12が設けられており、プラテン12の上方には画像記録ユニット13が設けられている。
画像記録ユニット13は、キャリッジ14にインクを吐出する吐出ヘッド15等が搭載されて構成される。吐出ヘッド15は、内部のインク流路(図示せず)及び該インク流路の下流端開口をなすノズル孔を有したキャビティユニット16と、該インク流路内のインクに吐出圧を付与する圧電アクチュエータ17とを有してなる。吐出ヘッド15は、キャリッジ14の外底面に取り付けられており、キャビティユニット16におけるノズル孔の開口面が下方に向けられている。圧電アクチュエータ17が作動すると、インク流路内のインクに吐出圧が付与され、該吐出圧及びインクの粘度に応じた量のインクがノズル孔から吐出される。
更にキャリッジ14には、圧電アクチュエータ17を駆動制御するための回路を内蔵したICチップ18と、インクを貯留可能であってキャビティユニット16のインク流路の上流端開口と連通するインクサブタンク19とが搭載されている。
給紙トレイ6の直上には、給紙トレイ6内の記録用紙20を搬送路21へ供給する給紙ローラ22が設けられている。搬送路21は、給紙トレイ6の背面側から上方へ向かった後に正面側へ向けてUターンし、プラテン12及び画像記録ユニット13の間を通って排紙トレイ7(図1参照)に繋がっている。プラテン12の背面側には、搬送路21を流れる記録用紙20を狭持してプラテン12上へ搬送する搬送ローラ対23が設けられており、画像記録ユニット13の正面側には、印刷済みの記録用紙20を狭持して排紙トレイ7へ搬送する排紙ローラ対24が設けられている。
図3は、第1実施形態のプリンタ3の概要構成を平面視で示す模式図である。図3に示すように、プラテン12の上方には、左右に平行に延びる前後一対のガイドレール25,25が設けられている。画像記録ユニット13のキャリッジ14は、これらガイドレール25に左右(走査方向)に往復移動可能に支持されている。画像記録ユニット13は、一対のプーリー26,26に巻き掛けられたタイミングベルト27に接合されており、タイミングベルト27はガイドレール25の延在方向と平行に配設されている。一方のプーリー26には正逆回転駆動するモータ(図示せず)が設けられており、そのプーリー26が正逆回転駆動されることでタイミングベルト27が往復移動し、画像記録ユニット13がガイドレール25に沿って走査される。
プラテン12の右側にはカートリッジ装着部9が配置されており、インクカートリッジ10は、このカートリッジ装着部9に着脱交換自在に装着される。本プリンタ3は、4色のカラーインク(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を使用してフルカラー印刷を行うことができ、カートリッジ装着部9には、各色のインクを貯留した4つのインクカートリッジ10が左右に並ぶようにして装着される。キャリッジ14には、インクカートリッジ10に対応する個数のインクサブタンク19が設けられている。
なお、本プリンタ3のインクは、水性インクであって溶媒が水となっている。インクに含まれる固相成分はインクに粘性を与える。吐出ヘッド15の吐出動作に影響を及ぼす因子の一つであるインクの粘度は、インクの濃度が大きくなるとこれに伴って大きくなるように変化する。
図2及び図3に示すように、筐体2の内部における各インクカートリッジ10とキャリッジ14との間には、インクカートリッジ10内のインクをキャリッジ14に搭載されている吐出ヘッド15に供給するためのインク供給チューブ28(液体供給管)が配設されている。インク供給チューブ28は、インクカートリッジ10に接続されるカートリッジ側インク供給チューブ28aと、インクサブタンク19に接続されるキャリッジ側インク供給チューブ28bとからなり、両チューブ28a,28bはチューブ保持部材30を介して連通している。即ち、インクカートリッジ10は、両チューブ28a,28b及びチューブ保持部材30を介してインクサブタンク19と連通している。
図3に示すように、キャリッジ14の走査範囲のうちプラテン12の上方領域は、インク吐出位置となっている。本プリンタ3のインク吐出位置は、少なくとも記録用紙の幅寸法に相当する所定の範囲を有したものとなっており、キャリッジ14はこの範囲内で往復移動可能になっている。キャリッジ14がこのインク吐出位置にあるときには、搬送路21(図2参照)に沿って正面側へ向けて(すなわち、キャリッジ14の走査方向と直交する方向に)搬送されてプラテン12上に到達した記録用紙に向けて吐出ヘッド15のノズル孔より適宜のタイミングでインクを吐出し、記録用紙に画像や文字を印刷する印刷動作を実施することができる。
なお、キャリッジ14の走査範囲のうちインク吐出位置の右側は、メンテナンス位置となっている。キャリッジ14がこのメンテナンス位置にあるときには、プラテン12の右側に設けられたメンテナンス部29を利用して、吐出ヘッド15のノズル孔の開口面を拭き取るワイピング動作や、ワイピング後のノズル孔の開口面を整えるためにインクを吐出するフラッシング動作や、ノズル孔から乾燥したインクや異物等を負圧吸引するパージ動作を実施することができる。
印刷動作やフラッシング動作やパージ動作により吐出ヘッド15内のインクが消費されると、インクサブタンク19内のインクが吐出ヘッド15のインク流路に供給され、インクカートリッジ10内のインクがインク供給チューブ28を介してインクサブタンク19内に供給される。このようにインク供給チューブ28は、常にインクで満たされた状態となっている。
図4は、チューブ保持部材30及びその周辺の構成を示す斜視図である。図5は、図3に示すV−V矢視図であり、チューブ保持部材30の断面図である。図4に示すように、チューブ保持部材30は、例えばエラストマ等の弾性を有すると共に透湿性の小さい材料から成形されており、長手方向に延びる一対の側壁30a,30aと、両側壁30a,30aの一端縁を繋ぐ一端壁30bと、両側壁30a,30aの他端縁を繋ぐ他端壁30cと、各壁30a,30a,30b,30cの底面を繋ぐ底壁30dとを有してなり、図5に示すように断面U字状に形成されている。チューブ保持部材30には、開放された面を覆うようにして透湿性の小さいフィルム31が接着されており、これにより両側壁30aと底壁30dとフィルム31とにより囲まれたチューブ収容空間32が形成される。
各カートリッジ側インク供給チューブ28aは、チューブ保持部材30の一端壁30bに挿入されてチューブ収容空間32内を側壁30aの延在方向に沿って延び、チューブ保持部材30の他端壁30cの内面に圧入されている。この他端壁30cの外面にキャリッジ側インク供給チューブ28bの一端が接続されている。他端壁30cの内部には、両チューブ28a,28bを連通させるための内部流路(図示略)が形成されている。4本のカートリッジ側インク供給チューブ28aは、チューブ収容空間32内において、両側壁30a,30aの間にて略等間隔をおいて並ぶようにして長手方向に延在している。
図2乃至図5に示すように、チューブ収容空間32は、チューブ保持部材30の一端壁30bに形成された貫通孔30e(図5参照)に外側から圧入された水供給チューブ33を介して水溶液タンク34(図2,図3参照)に連通している。水溶液タンク34は、筐体2の内面から略水平に延びるフレームに取り付けられており、チューブ収容空間32に対して高さhだけ上方に配置されている。水溶液タンク34の内部には、インクと同じく水を溶媒とした水溶液を貯留可能になっている。なお、この水溶液には、例えばパラベン等の防腐剤が溶解しており、長期に亘って水溶液が変質しないようになっている。また、水溶液タンク34には、該水溶液が貯留される内部空間を大気と連通させる大気連通孔35が設けられている。水供給チューブ33の一端は、水溶液貯留タンク34の内部空間を外部と連通させる水流出孔36に接続されている。従って、チューブ収容空間32内には、水溶液タンク34内に貯留されている水溶液で満たされた状態となっており、チューブ収容空間32内の水溶液には前述した高さhに応じた水頭圧が液圧として付与された状態となっている。
水溶液で満たされるチューブ収容空間32内に収容されるカートリッジ側インク供給チューブ28aは、例えばシリコンゴム等の透湿性の大きい合成樹脂材から成形されている。キャリッジ側インク供給チューブ28bは、例えばポリプロピレン等の透湿性の小さい合成樹脂材から成形されている。
水溶液のモル濃度は、インクのモル濃度よりも小さくなるように設定されているため、チューブ収容空間32内において、水溶液とインクとの間でこの濃度差に応じた浸透圧が発生する。従って、図5に点線矢印Wで示すように、チューブ収容空間32内を満たしている水溶液の溶媒である水が、透湿性を有した材料からなるカートリッジ側インク供給チューブ28aを介してチューブ内に透過可能になる。
この水溶液の溶媒である水がカートリッジ側インク供給チューブ28aを介してチューブ内に単位時間当たりに透過する量(透過速度)は、浸透圧を決める水溶液とインクの濃度差と、チューブ収容空間32内の水溶液に液圧として付与される水頭圧を定める前述した高さhと、浸透圧及び水頭圧に応じた単位時間当たり及び単位面積当たりの水透過量を決めるカートリッジ側インク供給チューブ28aの材料及び厚さΔ1(図2参照)と、カートリッジ側インク供給チューブ28aのうちチューブ収容空間32内に収容されて水溶液と接している領域の表面積とにより定まる。なお、カートリッジ側インク供給チューブ28aの厚さΔ1と、浸透圧に応じた単位時間当たり単位面積当たりの水透過量とは、概ね反比例の関係にある。また、上記表面積は、チューブ収容空間32の長手方向の寸法L1(図2参照)と、カートリッジ側インク供給チューブ28aの径φ1(図2参照)とにより定まる。このように水溶液の水が単位時間当たりに透過する量は、適宜変更可能な水溶液とインクの濃度差と、カートリッジ側インク供給チューブ28a及びチューブ保持部材30の仕様と、水溶液タンク34の配置とに応じて定まる。
また、インク供給チューブ28は、前述したとおり常にインクで満たされている。インク供給チューブ28のうちカートリッジ側インク供給チューブ28aについては、インクカートリッジ10とチューブ保持部材30の間において筐体2の内部で外気に接しており、キャリッジ側供給チューブ28bについては、その全体が筐体2の内部で外気に接している。このように外気に接している部分においては、インクの溶媒である水がチューブ外に蒸発する。
カートリッジ側インク供給チューブ28a内のインクの水がチューブ外に単位時間当たりに蒸発する量は、インクの溶媒である水が単位時間当たり単位面積当たりに蒸発する量を決めるカートリッジ側インク供給チューブ28aの材料及び厚さΔ1(図2参照)と、カートリッジ側インク供給チューブ28aにおける外気と接している部分の表面積とにより定まる。この表面積は、該チューブ28aが外気と接している部分の長さL2(図2参照)と、該チューブ28aの径φ1(図2参照)とから得られる。キャリッジ側インク供給チューブ28b内のインクの水がチューブ外に単位時間当たりに蒸発する量についても同様にして、キャリッジ側インク供給チューブ28bの材料及び厚さΔ3(図2参照)と、キャリッジ側インク供給チューブ28bにおける外気と接している部分の表面積とにより定まる。この表面積は、該チューブ28bが外気と接している部分の長さL3(図2参照、本実施形態においては全長)と、該チューブ28bの径φ3(図2参照)とから得られる。なお、各チューブ28a,28bの厚さΔ1,Δ3と、インクの水が単位時間当たり及び単位面積当たりに蒸発する量とは、概ね反比例の関係にある。このようにして得られた各チューブ28a,28bからの単位時間当たりの蒸発量の和が、インク供給チューブ28を介した蒸発量の全量となる。このようにインクの水が単位時間当たりに蒸発する量は、インク供給チューブ28の仕様により決まる。
従って、水溶液の溶媒である水の単位時間当たりの透過量を決める各パラメータと、インクの溶媒である水の単位時間当たりの蒸発量を決める各パラメータとを考慮することにより、これら透過量と蒸発量とが等しくなるように設定することができる。
このように構成されるプリンタ3においては、インク供給チューブ28内のインクの水が蒸発しても、その蒸発量と等しい量の水がインク貯留室32内に透過するようになる。これによりインクの濃度を長期に亘って一定に保つことができるようになり、インクの粘度も長期に亘って一定に保つことができるようになる。
なお、インクの溶媒が水であると共に、チューブ収容空間32内を満たす液体の溶媒がインクと同じく水であるため、チューブ収容空間32内の液体の溶媒がカートリッジ側インク供給チューブ28aを介してチューブ内に透過しても、インクの濃度に影響を及ぼすだけであって、インクの組成を変化させることはない。
また、本実施形態においては、チューブ収容空間32内の水溶液が水頭圧を付与されているため、その付与されている液圧に応じてチューブ内に単位時間当たり単位面積当たりで透過する水の量を大きくすることができる。このように水溶液タンク34の配置の設定を通じて水頭圧の調整を行うことにより、透過量と蒸発量とが等しくなるように設定することが可能になる。また、透過によってチューブ収容空間32内の水溶液が減少されることがあっても、水溶液タンク34内の水溶液が水供給チューブ33を介して補充されるため、チューブ収容空間32内の水溶液量を一定に保つことができる。
なお、図4に示すように、チューブ保持部材30のチューブ収容空間32内に水溶液を供給する水供給チューブ33は、チューブ保持部材30のうちカートリッジ側に位置する一端壁30bに接続されている。このような位置にある一端壁30bは、キャリッジ14と遠い位置にあるため、キャリッジ14の往復移動に伴って移動する量がキャリッジ側と比べて小さくなる。従って、水供給チューブ33は、キャリッジ14が往復移動してもチューブ保持部材30に引っ張られて移動する量が小さく、筐体2の内部で水供給チューブ33を引き回すためのスペースをコンパクトにすることができる。
また、本実施形態においては、インクカートリッジ10とキャリッジ14との間を繋ぐインク供給チューブ28が、カートリッジ側とキャリッジ側との2つのチューブから構成されている。そのうちの一方(本実施形態ではカートリッジ側インク供給チューブ)のみが水溶液で満たされたチューブ収容空間32に収容されており、他方(本実施形態ではキャリッジ側インク供給チューブ)についてはその全体が外気に接するようにして設けられている。本実施形態では、水を透過させる側のチューブに対して透湿性の高い材料が選択され、外気に接している側のチューブに対して透湿性の低い材料が選択されているため、水の透過の促進と蒸発の抑制とを効果的に両立させることができる。これにより、蒸発が抑制されることによりインクの濃度を一定に保つために必要な水の透過量が小さくなると同時に、単位面積当たりの水の透過量が大きくなるため、チューブ収容空間32の容量を小型化することができる。
なお、インクカートリッジ10とキャリッジ14との間を繋ぐインク供給チューブを、1本としてもよいし、インクカートリッジ10とチューブ保持部材とを繋ぐ部分と、チューブ収容空間32に収容される部分と、チューブ保持部材とキャリッジとを繋ぐ部分とに三分してもよい。三分する場合には、チューブ収容空間32内に収容される部分を透湿性の大きい材料から形成し、残り2つの部分を透湿性の小さい材料から形成することで、上記の効果をさらに高めることができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態は、前述した実施形態に対し、水溶液に液圧を付与するための構成が異なる。なお、前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図6は、第2実施形態のチューブ保持部材230とその周辺の構成を側断面視で示す模式図である。図6に示すように、このチューブ保持部材230は、外形は第1実施形態と同様のものとなっており、一対の側壁30a、カートリッジ側に位置する一端壁30b、キャリッジ側に位置する他端壁30c、及び底壁30dを有した断面U字状に形成されており、チューブ保持部材230には、開放面を覆うようにしてフィルム31が取り付けられている。これにより形成されたチューブ収容空間32内には、カートリッジ側インク供給チューブ28aが収容されていると共に、前述した水溶液が充填されている。
チューブ保持部材230には、一端壁30bに設けられてチューブ収容空間32を外部に連通させる第1連通孔236と、他端壁30cに設けられてチューブ収容空間32を外部と連通させる第2連通孔237とが設けられている。チューブ保持部材230の外部には、この第1連通孔236と第2連通孔237の間を接続する水循環チューブ238が設けられている。
また、筐体の内側面から延びるフレーム239に支持されて、水循環チューブ238内の水溶液を循環させるためのポンプ240が設けられている。このポンプ240は、チューブポンプにより構成されており、矢印Rで示す所定の回転方向に回転駆動されるドラム241と、ドラム241の外周面上から突出するようにして設けられて水循環チューブ238に外側から圧接される複数の圧子242とを備えてなる。ドラム241が回転駆動されると、圧子242が水循環チューブ238を押しつぶしながら回転し、これに応じてチューブ238内の水溶液に動圧が付与され、圧子242の回転方向に沿って冷却液が一方向に流れるようになる。
本実施形態においては、このポンプ240により付与される動圧が、第1実施形態における水頭圧に相当するものとなる。この動圧が付与されることにより、水溶液の溶媒である水は、点線矢印Wで示すようにカートリッジ側インク供給チューブ28aを介してチューブ内に透過するが、動圧が大きくなるようにポンプ240を駆動すれば、インク供給チューブ28aの単位面積当たり及び単位時間当たりの透過量を増加させることができる。このため、チューブ収容空間32の容量を小型化することができる。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態は、前述した実施形態に対し、インクカートリッジの内部構成が異なる。ここでは、第3実施形態を便宜的に第1実施形態の変更形態としているが、第2実施形態にも同様にして適用可能である。なお、前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図7は、第3実施形態のインクカートリッジ310の内部構成を示す断面図である。インクカートリッジ310は、合成樹脂材から成形される直方体状のケーシング331を有し、このケーシング331の内部には、インクが貯留されるインク貯留室332を形成するインクパック334が収容されている。ケーシング331には、このインク貯留室332を外部と連通させるインク供給孔333が設けられており、このインク供給孔333には、カートリッジ310がカートリッジ装着部9に装着されると、カートリッジ側インク供給チューブ28aの端部と接続されるようになっている。インクカートリッジ310のインク供給孔333の内部には、普段は閉じていてインク供給チューブ28aの端部と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。インクパック334は、例えばポリスチレンフィルムやウレタンフィルムやポリオレフィンフィルム等の透湿性を有したフィルムにより構成されている。ケーシング331の内部には、インクパック334の外側の空間領域に水貯留室335が形成されており、この水貯留室335には前述した水溶液が貯留されている。
このインクカートリッジ310は、インクパック334の内面に囲まれたインク貯留室332と、インクパック334の外面とケーシング331の内面とに囲まれた水貯留室335とを有しており、両室332,335がインクパック334を構成する透湿性のフィルムにより仕切られている。
このインクカートリッジ310の内部では、水貯留室335内に貯留される水溶液とインク貯留室332内に貯留されるインクとの間に濃度差に応じて浸透圧が発生し、点線矢印Wで示すように、水貯留室335内に貯留されている水溶液の溶媒である水がインクパック334を介してインク貯留室332内に透過可能になる。
水貯留室335内の水溶液の溶媒である水がインクパック334を介してインク貯留室332内に単位時間当たりに透過する量(透過速度)は、浸透圧を決める水溶液とインクの濃度差と、浸透圧に応じた単位時間当たり単位面積当たりの水透過量を決めるインクパック334の材料及び厚さΔ4と、インクパック334のうちインク貯留室332及び水貯留室335を仕切っている領域の面積(本実施形態ではインクパック334の全表面積に相当)とにより定まる。なお、インクパック334の厚さΔ4と、浸透圧に応じた単位時間当たり単位面積当たりの水透過量とは、概ね反比例の関係にある。このように水溶液の水が単位時間当たりに透過する量は、適宜変更可能な水溶液とインクの濃度差と、インクパック334の仕様とにより決まる。
そして、本実施形態において水の全透過量は、第1実施形態にて述べたチューブ収容空間30内における水溶液の水が透過する量と、このインクカートリッジ10の内部における水溶液の水が透過する量との和となる。一方、インクの溶媒である水は、第1実施形態にて述べたとおりの量で蒸発する。従って、水溶液の溶媒である水の単位時間当たりの透過量を決める各パラメータと、インクの溶媒である水の単位時間当たりの蒸発量を決める各パラメータとを考慮することにより、これら透過量と蒸発量とが等しくなるように設定することができる。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第3実施形態に対し、インクカートリッジの内部構成が異なる。なお、第3実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図8は、第4実施形態のインクカートリッジ410の内部構成を示す断面図であり、(a)は、インクカートリッジ410がカートリッジ装着部9に装着される前の状態を示しており、(b)は、インクカートリッジ410がカートリッジ装着部9に装着されている状態を示している。図8に示すように、インクカートリッジ410のケーシング331の内部には、水貯留室335と初期水貯留室437(初期液体貯留室)とを仕切る仕切壁436が設けられている。このようにしてケーシング331の内部が二分されるが、インクパック334は水貯留室335に内蔵されており、初期水貯留室437は、インクパック334とは隔離された空間をなしている。この初期水貯留室437は、仕切壁436を貫通してなる小孔438を介して水貯留室35と連通しており、ケーシング331に形成された大気連通孔439を介して大気と連通している。また、第3実施形態と同様に、ケーシング331には、このインク貯留室332を外部と連通させるインク供給孔333が設けられており、そのインク供給孔333にはバルブ機構(不図示)が設けられている。
インクカートリッジ410の製造時には、水性インクがインク貯留室332に封入されると共に、図8(a)に示すように初期水貯留室437内に前述した水溶液が封入された状態とされ、水貯留室335及び初期水貯留室437の内圧が大気圧に対して負圧となるように減圧される。更にケーシング331の外面には、シール440が容易に取り外し可能に接着され、このシール440により大気連通孔439が封止され、水貯留室335及び初期水貯留室437が減圧された状態で維持される。小孔438は、初期水貯留室437内に封入された水溶液が表面張力によってメニスカスを形成するために十分小さく形成されており、シール440が接着されている状態では初期水貯留室437内の水溶液が水貯留室335内に流入しないようになっている。
これに対し、図8(b)に示すように、シール440が取り外されると、初期水貯留室437が大気連通孔439を介して大気と連通し、初期水貯留室437が水貯留室335に対して正圧となる。これにより、小孔438に形成されていたメニスカスが破壊され、初期水貯留室内437の水が小孔438を通って水貯留室335内へと流入する。
本実施形態のインクカートリッジ410によると、シール440が接着している状態では、インク貯留室332とは独立した初期水貯留室437内に水が貯留されており、インク貯留室332内に水が透過しないようになっている。シール440が取り外されると初めて、水貯留室335内に水溶液が流入し、図8(b)に点線矢印Wで示すように、流入した水溶液の溶媒である水がインクパック334を介してインク貯留室332内に透過可能になっている。従って、シール440をインクカートリッジ410の着脱交換直前まで取り外さないようにすれば、製造時からカートリッジ装着部9に装着されるまでの期間で水溶液の水がインク貯留室332内に透過するのを防ぐことができる。このようにシール440を正しく取り扱うことにより、インクカートリッジ410を実際に使用するまでの間、インク貯留室332内に貯留されているインクの濃度を適正な状態に保つことができるようになる。
次に、本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態は、第3及び第4実施形態に対し、水貯留室335内の水溶液に別途液圧を付与するための液圧付与部541を備えている点で異なる。ここでは、第5実施形態を便宜的に第4実施形態の変更形態とするが、該液圧付与部541は第3実施形態にも適用可能である。なお、前述した第4実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図9は、第5実施形態のインクカートリッジ510の内部構成と液圧付与部541の構成を示す模式図であり、シール440を取り外されたインクカートリッジ510がカートリッジ装着部9に装着されている状態を示している。図9に示すように、液圧付与部541は、インクカートリッジ510の水貯留室335に対して上方に設けられた上方水タンク542と、上方水タンク542を水貯留室335と連通させる水供給チューブ543とを備える。上方水タンク542は、筐体2の内面における扉8よりも上方の部位から水平に延びるフレーム544に取り付けられており、水貯留室335に対して所定の高さh′だけ上方に配置されている。この上方水タンク542は、内部に前述の水溶液を貯留可能となっており、該内部空間は大気連通孔545を介して大気と連通している。水供給チューブ543は、上方水タンク542の内部空間を外部と連通させる水供給孔546と、インクカートリッジ510の水貯留室335を外部と連通させる水流入孔547との間を接続している。従って水貯留室335内の水溶液には、高さh′に応じて定まる水頭圧が作用する。なお、水供給チューブ543の水流入孔547と接続される端部は図示しない支持機構により支持されてその配置が固定されており、インクカートリッジ510がカートリッジ装着部9に装着されると自動的に水流入孔547と接続される。そして、その水供給チューブ543端部の内部には、普段は閉じていて水流入孔547の端部と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。これにより、インクカートリッジ510がカートリッジ装着部9に装着されていないときに、上方水タンク542の水溶液が水供給チューブ543から漏出することは防止される。また、インクカートリッジ510の水流入孔547内部には、普段は閉じていて水供給チューブ543の端部と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。
このように、本実施形態においては、水貯留室335内の水溶液が水頭圧を受けて液圧が大きくなるため、水貯留室335内の水溶液の水がインクパック334を介してインク貯留室332内に単位時間当たり単位面積当たりで透過する量を増加させることができる。また、透過によって水貯留室335内の水溶液が減少されることがあっても、上方水タンク542内の水溶液が水供給チューブ543を介して補充されるようになり、水貯留室335内の水溶液量を一定に保つことができる。
次に、本発明の第6実施形態について説明する。第6実施形態は、第3乃至第5実施形態に対し、吐出ヘッド15の周辺を冷却するための冷却部648を備えている点で異なる。ここでは、第6実施形態を便宜的に第4実施形態の変更形態としているが、該冷却部448は第3及び第5実施形態にも適用可能である。前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図10は、第6実施形態のプリンタ603の概要構成を平面視で示す模式図である。このプリンタ603は、図1に示す筐体2の内部に設けられて複合機1を構成している。図10に示すように、カートリッジ装着部9にはフルカラー印刷を行うべく4つのインクカートリッジが装着されるが、そのうち3つは図8で示した第4実施形態のインクカートリッジ410と同一の構成となっており、残りの1つのインクカートリッジ610は、後述するように第4実施形態のインクカートリッジ410の構成を変更したものとなっている。
まず、インクカートリッジ410,610とインクサブタンク19とを接続するための構成に関して説明すると、各インクカートリッジ410,610のインク供給孔333(図8及び図14参照)には、カートリッジ側インク供給チューブ28aが接続され、該インク供給チューブ28aはチューブ保持部材649を介してキャリッジ側インク供給チューブ28bに接続されており、該キャリッジ側インク供給チューブ28bはインクサブタンク19に接続されている(図15も参照)。
図11は、第6実施形態のチューブ保持部材649の斜視図である。図12は、図10のXII−XII矢視図であり、第6実施形態のチューブ保持部材649の断面図である。このチューブ保持部材649も、図4及び図5に示した第1実施形態のチューブ保持部材30と同様にして、例えばエラストマ等の弾性を有すると共に透湿性の小さい材料から成形されており、図11に示すように長手方向に延びる一対の側壁649a,649aと、両側壁649a,649aの一端縁を繋ぐ一端壁649bと、両側壁649a,649aの他端縁を繋ぐ他端壁649cとを有していると共に、該壁649a,649a,649b,649cに囲まれた矩形枠状の空間を2つの空間に仕切る中間壁649dとを有している。図12に示すように、このチューブ保持部材649は、断面H字状に形成されており、チューブ保持部材649には2つの開放面のそれぞれを覆うようにして透水性の小さいフィルム650,651が接着される。従って、両側壁649aの内面と中間壁649dの一方の面とフィルム650により囲まれた第1空間652と、両側壁649aの内面と中間壁649dの他方の面とフィルム651とにより囲まれた第2空間653とが形成される。
図11に示すように、各カートリッジ側インク供給チューブ28aは、チューブ保持部材649の一端壁649bに挿入されて第1空間652内を側壁の延在方向に沿って延び、チューブ保持部材649の他端壁649cの内面に圧入されている。この他端壁649cの外面にキャリッジ側インク供給チューブ28bの一端が接続されている。他端壁649cの内部には、両インク供給チューブ28a,28bを連通させるための内部流路(図示せず)が形成されている。なお、4本のカートリッジ側インク供給チューブ28aは、第1空間652内において、両側壁649a,649aの間にて略等間隔をおいて並ぶようにして長手方向に延在している。
図13は、第6実施形態の冷却部648の構成を説明する模式図である。図13に示すように、この冷却部648は、インクカートリッジ610内の水貯留室335内に貯留されている水溶液を冷却液として、キャリッジ14に搭載されて圧電アクチュエータ17を駆動制御するICチップ18の周囲を冷却するように構成されている。冷却部648は、キャリッジ14内のICチップ18近傍に設けられて冷却液を貯留可能な冷却液室656を形成する冷却液タンク665と、それぞれインクカートリッジ610の水貯留室335を冷却液室656と連通させる冷却液往路655及び冷却液復路657からなる冷却液循環経路654と、冷却液循環経路654内の冷却液に動圧を付与するポンプ669とを備える。
図14は、図7のXIV−XIV矢視図であり、第6実施形態のインクカートリッジ610の構成を示す断面図である。図14に示すように、このインクカートリッジ610には、水貯留室335を外部と連通させる水流出孔662と水流入孔663とが設けられており、水流出孔662には、冷却液往路655を構成するカートリッジ側冷却液供給チューブ658が接続されており、水流入孔663には、冷却液復路657を構成するカートリッジ側冷却液回収チューブ661が接続されている(図13も参照)。なお、カートリッジ側冷却液供給チューブ658、カートリッジ側冷却液回収チューブ661及びカートリッジ側インク供給チューブ28aの端部は図示しない支持機構により支持されてその配置が固定されており、インクカートリッジ610がカートリッジ装着部9に装着されると自動的に、カートリッジ側冷却液供給チューブ658が水流出孔662と接続され、カートリッジ側冷却液回収チューブ661が水流入孔663と接続され、カートリッジ側インク供給チューブ28aがインク供給孔333と接続されるようになっている。そして、これらチューブ658,661,28aの端部内には、普段は閉じていて対応する孔と接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。これにより、インクカートリッジ610がカートリッジ装着部9に装着されていないときに、冷却液往路及び冷却液復路内の水溶液がチューブから漏出することが防止され、インクがチューブから漏出することが防止される。また、インクカートリッジ610の水流入孔662、水流出孔663及びインク供給孔333の内部にも、普段は閉じていて対応するチューブと接続されたときに開くバルブ機構(不図示)が設けられている。
図11に示すように、カートリッジ側冷却液供給チューブ658は、チューブ保持部材649の一端壁649bに圧入されており、冷却液室335と第1空間652とを連通させている。チューブ保持部材649の他端壁649cには、キャリッジ側インク供給チューブ628bと並ぶようにして、キャリッジ側冷却液供給チューブ659が接続されている。該冷却液供給チューブ659は、他端壁649cの内部に形成された貫通孔664を介して第1空間652と連通している。
図15は、図10のXV−XV矢視図であり、画像記録ユニット613の構成を側断面視で示す模式図である。図15に示すように、キャリッジ14の内底面にはICチップ18が搭載されており、冷却液タンク665は、このICチップ18とインクサブタンク19との間に配設されている。冷却液タンク656には、それぞれ冷却液室656を外部と連通させる水流入孔666及び水流出孔667が設けられている。水流入孔666には、前述したキャリッジ側冷却液供給チューブ659が接続されており、水流出孔667にはキャリッジ側冷却液回収チューブ660が接続されている(図13も参照)。
図11及び図12に示すように、キャリッジ側冷却液回収チューブ660は、チューブ保持部材649の他端壁649cに接続されており、貫通孔668を介して第2空間653と連通している。また、図11に示すように、チューブ保持部材649の一端壁649bには、カートリッジ側冷却液回収チューブ661が接続されている。該カートリッジ側冷却液回収チューブ661は、一端壁649bの内部に形成された貫通孔668bを介して第2空間653と連通していると共に、前述したようにインクカートリッジ610の水流入孔663を介して水貯留室335と連通している(図14も参照)。
このように、冷却液往路655は、カートリッジ側冷却液チューブ658と、第1空間652と、キャリッジ側冷却液供給チューブ659とから構成されており、冷却液復路657は、キャリッジ側冷却液回収チューブ660と、第2空間653と、カートリッジ側冷却液回収チューブ661とから構成されている(図13参照)。
図10に示すように、カートリッジ側冷却液供給チューブ658は、カートリッジ側インク供給チューブ28aと上下に重なった状態で配置されており、キャリッジ側冷却液供給チューブ659はキャリッジ側インク供給チューブ28bと上下に重なった状態で配置されている。このカートリッジ側冷却液供給チューブ658とカートリッジ側冷却液回収チューブ661は、インクカートリッジ610とチューブ保持部材649の一端壁649bとの間で左右に並んでそれぞれ前後に延びている。これら両チューブ658,661に挟まれるようにしてポンプ669が設けられている。図13にその構成を示すように、ポンプ669は、チューブポンプにより構成されており、矢印Rで示す所定方向に回転駆動されるドラム670と、ドラム670の外周面上に突起状に設けられた複数の圧子671とを備えてなり、両チューブ658,661はこの圧子671により押し潰されるようにして配置されている。
また、前述したようにチューブ保持部材649は、その一部を筐体2の内側面に接触させた上で屈曲されている。チューブ保持部材649は、側壁649a,649aを上下に向けるようにして配置されており、第1空間652をなすフィルム650が屈曲されたチューブ保持部材649の内周側に向けられ、第2空間653をなすフィルム651がその外周側に向けられている。従って、第2空間653をなすフィルム651の一部が筐体2の内側面に接触した状態となる。これに対し、筐体2の内側面には、このフィルム651と接触する部分において、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料をプレート状に成型してなるヒートシンク672が取り付けられている(図13も参照)。なお、このようにチューブ保持部材649を配置すれば、4本のインク供給チューブ28aは両側壁649a,649aの間にて上下に並んだ状態となるため、同じ曲率でチューブを引き回すことができる。
このような冷却部648を備えたプリンタ603において、ポンプ669が駆動されると、水貯留室内335の水溶液(冷却液)が冷却液往路655を冷却液室656に向けて流れる。このとき、第1空間内652を通過する過程で、カートリッジ側インク供給チューブ28a内のインクの温度上昇を抑えることができる。また、カートリッジ側インク供給チューブ28aの外側が水溶液で満たされているため、カートリッジ側インク供給チューブ28a内のインクの水の蒸発を抑えることができる(図11及び図12参照)。
また、冷却液室656に流入した冷却液がICチップ18からの熱を奪うことにより、キャリッジ14内における吐出ヘッド15の周辺の温度上昇を抑えることができる。
また、このポンプ669の駆動により、ICチップ18との熱交換によって温度上昇された冷却液室656内の冷却液が、冷却液復路657を水貯留室335に向けて流れる。このとき、第2空間653を通過する過程で、冷却液は、筐体2の内側面に取り付けられたヒートシンク672に熱を吸収される。このように冷却された冷却液が、カートリッジ側冷却液回収チューブ661を介して水貯留室335に導かれる。
本実施形態においても、第3乃至第5実施形態と同様にして、水貯留室335内の水溶液の水をインクパック334を介してインク貯留室332内に透過させると共に、第1空間652内の水溶液の水をカートリッジ側インク供給チューブ28aを介してチューブ内に透過させることにより、インクの蒸発が生じても長期に亘ってインクの濃度を一定に保つことができ、インクの粘度を長期に亘って一定に保つことができる。従って、吐出ヘッド15によるインクの吐出動作を安定して行うことができるようになる。
さらに、冷却部648により、この水溶液を冷却液として吐出ヘッド15の周辺を水冷可能になっている。これにより吐出ヘッド15のインク流路内のインクや、吐出ヘッド15の上方に配置されたインクサブタンク19内のインクの温度上昇を抑えることができる。従って、吐出ヘッド15の周辺におけるインクの粘度変化を防止することができ、吐出ヘッド15によるインクの吐出動作をより安定して行うことができるようになる。
このように、本実施形態の水貯留室335内に貯留される水溶液は、冷却液として流用されるため、そのために効果的な成分が混入されていてもよい。すなわち、グリセリン等の高沸点の液体が混入されていてもよいし、ICチップ18の周辺の温度条件下(例えば20〜80度)で相変化を行う相変化材料を封入した微粒カプセルが混入されていてもよい。
なお、ポンプ669を駆動するタイミングについては、キャリッジ15の周辺からの発熱は、ICチップ18に内蔵される回路により圧電アクチュエータ17が駆動制御されて印刷動作が実施されているときに顕著に表れるため、この印刷動作の実施と同時に行うようにしてもよい。これにより、発熱が顕著に表れるときに冷却を行い、その他のときにはポンプ669を休止して電力消費等を抑えることができる。また、キャリッジ14に、吐出ヘッド15の周辺の温度を検知して該温度を表す温度データを出力可能な温度センサを搭載しておき、該温度データが予め定めてある閾値温度を超えていると判断されるときにポンプ669を駆動する制御を行うようにしてもよい。
次に、本発明の第7実施形態について説明する。第7実施形態は、第6実施形態に対し、冷却部748の構成が異なる。なお、前述した実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を簡略にする。
図16は、第7実施形態のプリンタ703の概要構成を平面視で示す模式図である。図17は、図16のXVII−XVII矢視図であり、第7実施形態の画像記録ユニット713の構成を側断面視で示す模式図である。図16及び図17に示す本実施形態の冷却部748は、第6実施形態を示した図10及び図15と比べるとわかるように、ポンプ669が省略されている替わりに、冷却液室665の水流入孔666に流入側逆止弁773が設けられていると共に、水流出孔667に流出側逆止弁774が設けられている。インクカートリッジ610や冷却液循環経路654やチューブ保持部材649やヒートシンク672等の他の構成については、第6実施形態の冷却部648と同様となっている。
図16に示すように、キャリッジ側冷却液供給チューブ659及びキャリッジ側冷却液回収チューブ660は、画像記録ユニット713からキャリッジ14の走査方向の一方向である右方に向けて延びている。なお、キャリッジ14の走査方向のうちいずれかに延びていればよく、左方に延びていてもよい。
図17に示すように、冷却液タンク665の水流入孔666は下面に形成されており、キャリッジ側冷却液供給チューブ659内の冷却液は、水流入孔666を下側から上側へ向けて流れて冷却液室656内に流入する。また、冷却液タンク665の水流出孔667は上面に形成されており、冷却液室656内の冷却液は、水流出孔667を下側から上側へ向けてキャリッジ側冷却液回収チューブ660へと流出する。流入側逆止弁773は、この水流入孔666の上側の開口を塞ぐようにして載置された弁体を含んでなり、流出側逆止弁774は、この水流出孔667の上側の開口を塞ぐようにして載置された弁体を含んでなる。該弁体は、冷却液よりも比重が大きくなっていると共に、冷却液の動圧によって浮上可能なように軽量になっている。
図18は、本実施形態における冷却液を循環させるための動作を説明する作用図であり、(a)はキャリッジ14が移動方向を右方に反転すべくインク吐出位置の左端に位置している状態を示しており、(b)はキャリッジ14が移動方向を左方に反転すべくインク吐出位置の右端に位置している状態を示している。なお、プリンタ703が印刷動作を実施する際には、キャリッジ14がインク吐出位置において左右に往復移動するようになっているが、キャリッジ14はインク吐出位置における中間部分では略等速運動を行うようになっている。
図18(a)に示すように、左方に移動するキャリッジ14が移動方向を右方へ反転する際には、キャリッジ14が所定の減速度で減速されて左端で停止状態となった後、所定の加速度で加速しながら右方に移動していく。従って、キャリッジ14から右方に延びるようにして設けられているキャリッジ側冷却液供給チューブ659及びキャリッジ側冷却液回収チューブ660内の冷却液には、左方に向けた慣性力が作用する。このため、チューブ659,660内の冷却液は、矢印Wで示すようにこの慣性力に応じた動圧を受けて流れようとする。すなわち、キャリッジ側冷却液供給チューブ659内の冷却液は、水流入孔666を下側から上側へと向けて流れることとなり、動圧が流入側逆止弁773の重力に抗して流入側逆止弁773の弁体を浮上させて流入側逆止弁773が開弁させ、冷却液が冷却液室656内へと流入する。キャリッジ側冷却液回収チューブ660内の冷却液は、水流出孔667を上側から下側へ向けて流れようとするが、流入側逆止弁774の弁体が水流出孔667の開口を塞ぐため、冷却液が冷却液室656内へと逆流しないようになっている。
図18(b)に示すように、右方に移動するキャリッジ14が移動方向を左方へ反転する際には、キャリッジ14が所定の減速度で減速されて右端で停止状態となった後、所定の加速度で加速しながら左方に移動していく。従って、キャリッジ側冷却液供給チューブ659及びキャリッジ側冷却液回収チューブ660内の冷却液には、右方に向けた慣性力が作用する。このため、チューブ659,660内の冷却液は、矢印Wで示すようにこの慣性力に応じた動圧を受けて流れようとする。すなわち、キャリッジ側冷却液回収チューブ660の冷却液は、水流出孔667を下側から上側へ向けて流れようとし、動圧が流出側逆止弁774の重力に抗して流出側逆止弁774の弁体を浮上させて流出側逆止弁774を開弁させ、冷却液がキャリッジ側冷却液回収チューブ660へと流れていく。キャリッジ側冷却液供給チューブ659内の冷却液は、水流入孔666を上側から下側へと流れようとするが、流入側逆止弁773の弁体が水流入孔666の開口を塞ぐために冷却液室656内からキャリッジ側冷却液供給チューブ659へと冷却液が逆流しないようになっている。
このように印刷動作の実施に伴ってキャリッジ14が左右に往復移動されると、その方向転換時の加減速に伴って作用する慣性力を動圧として冷却液循環経路654内を冷却液が流れる。このとき、逆止弁773,774により逆流が防止され、冷却液循環経路654内の冷却液は一方向に流れて循環することとなる。なお、チューブ659,660をキャリッジ14からキャリッジ14の走査方向に延びるようにして設けており、キャリッジ14の加減速に応じた慣性力により生じる動圧の発生する方向と、チューブ659,660の延びる方向とが平行となっているため、キャリッジ14の往復移動を利用した冷却液の流通をスムーズに行わせることができる。
このように、本実施形態では、冷却液を循環させるための専用の駆動源を不要としており、冷却部748をコンパクトに構成することができる。ただし、本実施形態に第6実施形態のポンプ669を併設し、キャリッジ14の走査が行われていない間にも冷却液を循環可能に構成してもよい。
なお、第3乃至第5実施形態においては、チューブ収容空間内での水溶液の透過を行わせず、インクカートリッジ内における水溶液の透過のみを行わせ、このインクカートリッジ内における透過量を蒸発量と等しくなるべく設定してもよい。