JP2009082616A - 多管球x線ctにおける散乱線強度分布のスケーリング方法および多管球x線ct装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】複数のX線発生部からそれぞれ照射されたX線が被写体を透過することにより得られたX線強度の実データと、前記被写体の同一位置を反対方向にこれらX線が透過することにより得られたX線強度の対向データと、の第1の差分を求め、前記実データに含まれる一次散乱線を推定し、前記被写体の同一位置を反対方向にX線がそれぞれ透過することにより得られるX線強度の前記対向データに含まれる一次散乱線を推定し、前記実データに含まれる散乱線強度と前記前記対向データに含まれる散乱線強度との第2の差分を求め、前記第1の差分と前記第2の差分の比に基づいて、前記推定された一次散乱線強度分布のスケーリングを行う。
【選択図】図6
Description
図1は、本発明の実施形態において採用する一次散乱線強度分布の推定方法を説明する概略図である。
点Mにある第1の管球10から被写体30の中心に対し角度βmの方向に発せられたX線は、点Nにおいて被写体30に入射する。透過線20は、点Qを経て点RまでのパスNQRに沿って被写体30を透過して、検出器14上の点Dにて検出器14に到達する。被写体30内での透過線20のパス長x’は、次式により与えられる。
ここで、X線CTにおいては、第1の管球10とは別に、X線を発生する第2の管球12を設けることができる。検出器14には第1の管球10からの透過線20の他に、被写体30から見て第1の管球10に対し角度φの方向の点Sにある第2の管球12から発せられたX線も、被写体30内で散乱して検出器14に到達する。つまり、散乱線の発生源としては、例えば、第1の管球10とは別に設けられた第2の管球12から発せられたX線の散乱線を挙げることができる。以下、第2の管球12を設けた具体例について説明する。
第2の管球12から発せられたX線は、被写体30内で散乱し、散乱線を発生させるため、βsを振ってX線を発し、点Dにおける一次散乱線24の強度を積算する。第2の管球12は、散乱線計算のため仮想的に設置し、計算を行うが、実際に設置し実験データを得て、推定値と測定値の比較を行うことが可能である。
上式の右辺の第1項は検出器14上での透過線20の強度であり、右辺の第2項は検出器14上での一次散乱線の強度である。さらに、第1の管球10から発生するX線の角度βmを振ることにより、検出器14上の検出点Dの位置を走査しながら、検出器14上の一次散乱線強度ΣIsの分布と透過線20の強度Ipの分布を求めることができ、さらにそれらの和としてX線強度Iの分布を求めることができる。
第2の管球12から放射状に発せられたX線は被写体30内のあらゆる場所で散乱し、第1の管球10からの透過線20と同様に検出器14に到達する。複数回散乱した多重散乱線26も検出器14に到達する。多重散乱線26は無視し、被写体30内で1回だけ散乱した一次散乱線24についてのみ、検出器14への入射強度分布を計算する。第2の管球12と対向する位置に検出器15を配置することにより、第2の管球12からの透過線22を検出することも可能である。なお、ここでは、被写体30は人体を模して楕円形としてある。
図3は、本発明の実施形態に係るX線散乱線強度分布の推定方法を例示するフローチャートである。
本実施形態の推定方法は、被写体の外形形状を推定する工程(ステップS100)、散乱線強度を推定する検出チャンネルを決定する工程(ステップS102)、管球と検出チャンネル間の透過線パスを決定する工程(ステップS104)、一次散乱線の被写体透過パスを決定する工程(ステップS106)、一次散乱線の強度を計算する工程(ステップS108)、全ての一次散乱線の強度を積算する工程(ステップS110)、全ての検出チャンネルについて一次散乱線の積算を実施したかを判定する工程(ステップS112)、新たな検出チャンネルを決定する工程(ステップS114)及び検出器上の一次散乱線強度分布を計算する工程(ステップS116)と、を備える。
図4(a)に示すように、散乱線を含む被写体30の投影データ40を得る。次に、図4(b)に示すように、投影像40から、検出器14のチャンネルに沿うプロファイルを得る。楕円体に模した被写体30の長径52と短径54に関して得られる長径プロファイル42と短径プロファイル44は、投影像40の濃淡に沿う強度を示している。プロファイルの幅から、それぞれ長径52と短径54を求めることができる。
図5(a)は、検出器14上で散乱線強度を推定する検出チャンネル16を決定する工程(ステップS102)を表す。検出器14上に配列されている全ての検出チャンネル16それぞれにおいて散乱線強度の推定を行い、それらを集積して検出器14上のX線強度分布を求める。
ここで、θは、図1で示した一次散乱線24の散乱角である。
一次散乱推定の結果、推定散乱線としてΣIsが得られる。
一方、多管球CTでは、検出器正面から入射する散乱線の除去が課題となる。その場合には、第1の管球10からの散乱線を装置に設けられる機器によらず、計算により除去する方法が必須となる。
ここで、「スケーリング」は、推定した一次散乱線強度の補正を行うことに対応する。
本実施形態の散乱線強度分布のスケーリング方法は、X線強度の実データと対向データの差分をとる工程(ステップS202)、実データに含まれる散乱線と対向データに含まれる散乱線を推定し、これら散乱線の差分をとる工程(ステップS204)、2つの差分データのピーク値を用いて推定した散乱線のスケーリングを行う工程(ステップS206)と、を備えている。
本具体例においても、X線発生部としては、第1の管球10と第2の管球12とを備えている。第1の管球10から出射したX線は、被写体30に入射し、透過線20は被写体30を透過し、検出器14に到達する。同時に、第2の管球12から出射したX線も、被写体30に入射し、被写体30内で1回散乱した一次散乱線24が、被写体30を透過した後、検出器14に到達する。
図7(a)では、被写体30の中心を通る基線をZとしたとき、基線Zに対し被写体30の中心から見て角度βの方向に、第1の管球10が位置し、第1の管球10から被写体30の中心を見て角度γの方向にX線が出射するとしている。角度γを振ったとき、検出器14上では透過線20の強度分布が測定される。また、第2の管球12から出射したX線は、被写体30内で散乱して検出器14に到達し、一次散乱線24は、検出器14上において第2の管球12に近い側では、被写体30内での透過パスが短いため、第2の管球12から遠い側よりも強い強度が測定されることとなる。
一方、第2の管球12から出射し、被写体30の同じ位置で1回散乱した一次散乱線24の検出器14でのカウントは、被写体30内での透過パスが長くなるため、実データ取得時のカウントに比べ低い。そして、一次散乱線24の検出器14でのカウントは、第2の管球12に近い側の方が高くなる。つまり、第2の管球12から出射した散乱線の強度分布については、実データに含まれる散乱線の強度分布と、対向データに含まれる散乱線の強度分布と、が同一ではなくなる。
このように、実データと対向データの間で、X線強度分布には、一次散乱線24の強度分布の違いを反映した差異が得られる。
その結果、多管球CTでは、実データと対向データの差分を取ることにより、散乱線が寄与する差分データを得ることができる(S202)。
ここで、一例として、水に対するX線散乱確率を使用して散乱線強度分布の推定を行う。
図9は、水に対するX線の散乱確率P(θ)を例示するグラフ図である。散乱確率P(θ)は、X線スペクトルと散乱角度、被写体の材質から計算により求めることができる。θは、図1に関して前述したように、入射するX線に対する散乱X線の散乱角度である。
散乱線強度分布は、第2の管球12に近い側で強くなることから、計算による推定散乱線分布は、実データと対向データで違いが生じる。その結果、推定散乱線について差分データを得ることができる(S204)。
スケーリングされた推定散乱線の差分データから、一次散乱線24のスケーリングされたプロファイルを求めることができる(S206)。
このスケーリングされた一次散乱線強度分布を用いて検出器14で得られたX線強度のカウントを補正することにより、断面像を再構成することができる。
シミュレーションにより水円柱を作成し、第1の管球10、第2の管球12よりX線を適宜照射し、散乱線補正を行った断面像である。
図11(a)は、第2の管球12からの照射を行わないとしたときの断面像である。水は均一な構造を持つため、断面像に濃淡などは現れていない。
図11(b)は、第2の管球12からもX線を照射したときの、散乱線を含む断面像である。散乱線の影響が濃淡の不均一性となって現れている。
図11(c)は、本実施形態の方法により第2の管球12からの散乱線の影響を補正した断面像である。散乱線の影響は取り除かれ、明るさが均一な断面像が得られている。
図13は、散乱線強度分布の推定を可能とする多管球X線CT装置を例示する概略図である。
本実施形態のX線CT装置は、第1の管球10、第2の管球12、被写体30、検出器14、15と検出器14、15に接続される散乱線計算部60及び画像再構成部70を備える。
検出器14には、第1の管球10からの透過線20、第2の管球12からの多重散乱線26及び一次散乱線24が入射する。検出器15には、第2の管球12からの透過線22の他、第2の管球12からの一次散乱線が入射する。検出器14で検出される透過線20及び一次散乱線24とから形成されるX線強度分布に対し、散乱線計算部60は図1〜図12に関して前述した方法により散乱線強度分布のスケーリングを実行する。すなわち、散乱線計算部60は、第1の計算部62と、第2の計算部64と、第3の計算部66と、を有する。第1の計算部62は、散乱線が被写体を透過するパス長を計算する。第2の計算部64は、パス長と、被写体のX線吸収係数と、被写体の散乱確率と、に基づいて散乱線の強度を推定する。第3の計算部66は、検出器14、15上のカウントの実データと対向データの差分データのピーク値と、これら実データと対向データにそれぞれ含まれる散乱線分布を推定して得られた差分データのピーク値と、の比をとって、推定散乱線分布のスケーリングを行う。
このようにして得られた散乱線強度分布に基づいて、X線強度分布に対する散乱線成分の補正を行い、画像再構成部70はその補正データを用いて断面像を作成する。
すなわち、本発明は、具体例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々変型して実施することが可能であり、これらすべては本発明の範囲に包含される。
Claims (9)
- 複数のX線発生部から被写体にX線をそれぞれ照射し、前記被写体を透過した前記X線を検知して前記被写体の断層画像を構成する多管球X線CTにおける散乱線強度分布のスケーリング方法であって、
前記複数のX線発生部からそれぞれ照射されたX線が被写体を透過することにより得られたX線強度の実データと、前記被写体の同一位置を反対方向にこれらX線が透過することにより得られたX線強度の対向データと、の第1の差分を求め、
前記複数のX線発生部からそれぞれ照射されたX線が被写体を透過することにより得られるX線強度の前記実データに含まれる一次散乱線を推定し、前記被写体の同一位置を反対方向にX線がそれぞれ透過することにより得られるX線強度の前記対向データに含まれる一次散乱線を推定し、前記実データに含まれる散乱線強度と前記前記対向データに含まれる散乱線強度との第2の差分を求め、
前記第1の差分と前記第2の差分の比に基づいて、前記推定された一次散乱線強度分布のスケーリングを行うことを特徴とする多管球X線CTにおける散乱線強度分布のスケーリング方法。 - 前記第1の差分と前記第2の差分のピーク値の比に基づいて、前記推定された一次散乱線強度分布のスケーリングを行うことを特徴とする請求項1記載の多管球X線CTにおける散乱線強度分布のスケーリング方法。
- 前記一次散乱線強度分布の推定は、一次散乱線が前記被写体を透過するパス長を計算し、
前記パス長と、前記被写体のX線吸収係数と、前記被写体のX線の散乱確率と、に基づいて前記一次散乱線の強度を計算することにより実行されることを特徴とする請求項1記載の散乱線強度分布のスケーリング方法。 - 前記一次散乱線強度分布の推定は、前記被写体の断面構造が均一であるとして、前記散乱線のうち1回散乱した成分の強度を計算することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の散乱線強度分布のスケーリング方法
- 前記被写体を水に近似して前記一次散乱線強度分布を推定することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の散乱線強度分布のスケーリング方法。
- 前記被写体の形状を、散乱線を含む投影データから再構成し、前記形状から前記被写体のパス長を求めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の散乱線強度分布のスケーリング方法。
- X線を発生する複数のX線発生部と、
被写体を透過した前記X線を検知するX線検知部と、
前記X線検知部で検知された結果に基づいて前記被写体の断層画像を構成する画像再構成部と、
前記被写体内における前記X線の一次散乱線強度分布を推定する散乱線計算手段と、
を備え、
前記散乱線計算部は、
前記複数のX線発生部から照射されたX線が被写体を透過することにより前記X線検知部において得られたX線強度の実データと、前記被写体の同一位置を反対方向にこれらX線が透過することにより前記X線検知部において得られたX線強度の対向データと、の第1の差分を求め、
前記複数のX線発生部から照射されたX線が被写体を透過することにより得られるX線強度の前記実データに含まれる一次散乱線を推定し、前記被写体の同一位置を反対方向にこれらX線が透過することにより得られるX線強度の前記対向データに含まれる一次散乱線を推定し、前記実データに含まれる散乱線強度と前記対向データに含まれる散乱線強度との第2の差分を求め、
前記第1の差分と前記第2の差分の比に基づいて、前記推定された一次散乱線強度分布のスケーリングを行い、
前記画像再構成部は、前記散乱線計算部によりスケーリングされた前記一次散乱線強度分布を用いて、前記X線検知部で検知された前記結果を補正することにより前記断層画像を再構成することを特徴とする多管球X線CT装置。 - 前記第1の差分と前記第2の差分のピーク値の比に基づいて、前記推定された一次散乱線強度分布のスケーリングを行うことを特徴とする請求項7記載の多管球X線CT装置。
- 前記計算部は、前記一次散乱線が前記被写体を透過するパス長を計算する第1の計算部と、
前記パス長と、前記被写体のX線吸収係数と、前記被写体のX線の散乱確率と、に基づいて前記一次散乱線強度分布を推定する第2の計算部と、
前記第1の差分と前記第2の差分の比に基づいて、前記第2の計算部により推定された前記一次散乱線強度分布のスケーリングを実行することを特徴とする請求項7または8記載の 多管球X線CT装置。
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