JP2009078318A - 切削加工方法および切削加工装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前逃げ角γが大きく、かつ、すくい角αが負の切削工具8を用い、切削工具8の切り込み量を高速で変化させるとともに、切削工具8をワークの表面往路に沿って移動させながら、ワークに凹部を切削加工する。次に、切削工具8の切り込み量を高速で変化させるとともに、切削工具8をワークの表面復路に沿って移動させながら、ワークに加工した前記凹部を再度切削加工する。これにより、往路加工で発生したバリ31を復路加工で除去できるので、凹部を正確に加工できる。
【選択図】図6
Description
これは、被加工物を搭載し、往復運動をする第1のスライド機構と、この第1のスライド機構の運動方向と直角方向に間欠位置決め運動をする第2のスライド機構と、これら第1および第2のスライド機構の運動軸とそれぞれ直角な方向に切削工具の切込み量を高速かつ微細に制御する工具切込み機構と、第1のスライド機構の運動に従ってパルス信号を発生する位置検出器とを備えて構成されている。
いま、図7に示す通常の切削工具(バイト)8を使用し、図8に示すように、ワークWの表面に断面略半円形状の凹部Gを切削加工する場合を考える。使用する切削工具8は、前逃げ角(水平面に対する前逃げ面8Aの角度)がγ、すくい角(垂直面に対するすくい面8Bの角度)がα(=0度)、刃物角(前逃げ面8Aとすくい面8Bとの角度)がβである。
また、このような課題は、断面略半円形状の凹部を切削加工する場合だけでなく、断面略半円形状の凸部を切削加工する場合にも生じる課題でもある。
しかし、このようにすると、次のような新たな課題が生じる。
つまり、図4に示すように、切削工具8をワークWに切り込んで、断面略半円形状の凹部Gを加工する際、切削工具8の前逃げ角γを凹部Gの入口側つまり加工方向前半側形状接線角度δ1より大きくしておけば、凹部Gの加工方向前半側については、前逃げ面8AがワークWの加工部位以外の部分に干渉しないため、凹部Gを正確に加工できる。
しかし、図5に示すように、凹部Gの出口側つまり加工方向後半側については、加工方向後半側形状接線角度δ2が負で、しかも、切削工具8のすくい角も負であるから、せん断角が減り、バリ31が発生するという課題が生じる。
しかし、凸部の入口側つまり加工方向前半側については、形状接線角度が負で、しかも、切削工具8のすくい角も負であるから、せん断角が減り、確実な切削加工が行えないという課題が生じる。
このような切削工具を用いて、まず、切削工具の切り込み量を高速で変化させるとともに、切削工具を被加工物の表面往路に沿って移動させながら、被加工物に凹部または凸部を切削加工する。
次に、切削工具の切り込み量を高速で変化させるとともに、切削工具を被加工物の表面復路に沿って移動させながら、被加工物に加工した前記凹部を再度切削加工する。これにより、復路加工において、往路加工で発生したバリを除去できるから、被加工物の形状接線角度が大きくなっても、目標形状に凹部を切削加工することができる。
次に、切削工具の切り込み量を高速で変化させるとともに、切削工具を被加工物の表面復路に沿って移動させながら、被加工物に加工した前記凸部を再度切削加工する。これにより、復路加工において、往路加工で発生したバリ、あるいは、加工できなかった部分を除去できるから、被加工物の形状接線角度が大きくなっても、目標形状に凸部を切削加工することができる。
例えば、凹部を加工する際、切削工具のすくい角を負にすると、往路加工において、凹部の加工方向後半側の切削加工ではせん断角が減るため正確な形状に切削加工することが困難になるが、上記構成によれば、往路加工では、凹部の加工方向前半側の約半分を切削加工し、復路加工では、凹部の残りの約半分を切削加工するので、凹部を正確に切削加工できる。
この構成によれば、凹部または凸部の形状接線角度が20°以上の形状でも、正確に加工することができる。
この構成によれば、とくに、凹部または凸部の形状が、加工方向前半側形状接線と被加工物表面との角度と、加工方向後半側形状接線と被加工物との角度とが略等しく、かつ、これらの形状接線角度が20°以上である断面半円形状を有する凹部または凸部の切削加工に適する。例えば、半球形状の凹部や凸部、断面が半円形状の溝部や凸条部、あるいは、断面がV字状、台形状などの凹部または凸部の加工に適する。
この構成によれば、往復動ステージに、複数の圧電素子を積層した圧電素子積層体を用いたので、切削工具の切込量を高速で制御することができる。従って、被加工物の表面に微細な形状を高精度にかつ高い仕上げ精度に加工できる。
<図1の説明>
図1は、本発明の切削加工装置の実施形態を示す正面図である。同切削加工装置は、ベース1と、このベース1の上面にY軸方向(図1の紙面に対して直交する方向)へ移動可能に設けられ上面に被加工物としてのワークWを載置したテーブル2と、ベース1の両側に立設されたコラム3と、このコラム3の上端間に掛け渡されたクロスレール4と、このクロスレール4に沿ってX軸方向へ移動可能に設けられたスライダ5と、このスライダ5にZ軸方向へ移動可能に設けられた切込軸6と、この切込軸6に往復動ステージ7を介して取り付けられた切削工具8とを備える。
図2は、切削加工装置の制御システムを示している。同システムには、X軸駆動機構12、Y軸駆動機構11、Z軸駆動機構13などを制御する制御手段としてのNC装置21と、このNC装置21からのトリガー信号を受けて往復動ステージ7を駆動する往復動ステージ駆動手段22と、入力装置23と、出力装置24とを備える。
出力装置24は、表示装置やプリンタなどによって構成されているが、これに限られない。
図3は、凹部加工に用いる切削工具8を示している。
切削工具8は、前逃げ面8AがワークWに干渉してワークWの加工部位(凹部G)以外の部分に転写されるのを防止するために、切削工具8の前逃げ角γを、ワークWの形状接線角度よりも大きくし、かつ、これに伴って刃物角βが小さくなってしまう点を、すくい角αを負(すくい面8Bが垂直面に対して切削方向へ傾いている)にすることによって刃物角βを維持している。
本実施形態では、前逃げ角γが50°、すくい角αが40°、刃物角βが80°の切削工具8が用いられている。
ワークWの表面に断面半円形状の凹部G(凹部Gの加工方向前半側および加工方向後半側形状接線角度が45°の断面半円形状の凹部G)を一定ピッチで切削加工する場合について説明する。
NC装置21によって駆動プログラムが開始されると、この駆動プログラムに従って、X軸移動機構12、Y軸移動機構11およびZ軸移動機構13の駆動が制御される。
すると、往復動ステージ駆動手段22は、NC装置21からのトリガー信号を受けて、予め設定した切込量で切削工具8が進退するように、往復動ステージ7を駆動させる。つまり、一定周期毎に、切削工具8の切込量が次第に大きくなったのち小さくなり、こののち一定に維持されるように制御される。これにより、ワークWの表面に断面半円形状を有する凹部Gが一定ピッチ間隔で加工される。
この問題を解決するために、切削工具8の両面、つまり、前逃げ面8Aとすくい面8Bとの両面を用いて、往復経路で凹部Gの切削加工を行う。つまり、往路加工で発生したバリ31を復路加工で除去する。
すると、往復動ステージ駆動手段22は、NC装置21からのトリガー信号を受けて、予め設定した切込量で切削工具8が進退するように、往復動ステージ7を駆動させる。これにより、ワークWの表面に切削加工された断面半円形状を有する凹部Gが再度切削加工される。
なお、すくい面8Bと水平面とのなす角度が、凹部Gの加工方向後半側形状接線角度δ2よりも大きくしておけば、すくい面8Bが凹部G以外の部分に転写されることがないから、切削工具8の復路切り込み時にも凹部Gを正確に加工することができる。
本実施形態では、次に述べる効果が期待できる。
(1)すくい角αが負の切削工具8を用いているから、前逃げ角γを大きくしても、つまり、ワークWの加工方向前半側形状接線角度δ1よりも大きくしても、刃物角βを維持できる。従って、切削工具8の強度低下が少ないので、耐久性を維持できる。
しかも、従来の加工では、往路のみで加工して、復路は戻りの目的のみで無駄時間となっていたが、その戻りの時間を利用して加工を行うので、加工時間が増えるのを防止できる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
上記実施形態では、断面半円形状の凹部Gを切削加工する例を示したが、必ずしも、この例に限られるものではない。例えば、断面がV字形状や台形形状の凹部の加工にも適する。
例えば、断面略半円形状の凸部を加工する場合、切削工具8の前逃げ角γを凸部の加工方向後半側形状接線角度より大きくしておけば、凸部の加工方向後半側につては、前逃げ面8AがワークWの加工部位以外の部分に干渉しないため、凸部を正確に加工できる。しかし、凸部の入口側つまり加工方向前半側については、形状接線角度が負で、しかも、切削工具8のすくい角αも負であるから、せん断角が減り、確実な切削加工が行えないという課題が生じる。
次に、切削工具8の切り込み量を高速で変化させるとともに、切削工具8をワークWの表面復路に沿って移動させながら、ワークWに加工した前記凸部を再度切削加工する。これにより、復路加工において、往路加工で発生したバリ、あるいは、加工できなかった部分を除去できるから、ワークWの形状接線角度が大きくなっても、目標形状に凸部を切削加工することができる。
あるいは、X軸駆動機構12およびY軸駆動機構11によって、切削工具8をXおよびY軸方向へ同時に移動させながら、往復動ステージ7を駆動して切削工具8の切込量を制御するようにしてもよい。
6…切込軸、
7…往復動ステージ、
8…切削工具、
11…Y軸駆動機構、
12…X軸駆動機構、
13…Z軸駆動機構、
21…NC装置(制御手段)、
W…ワーク(被加工物)
G…凹部
α…すくい角、
β…刃物角、
γ…前逃げ角、
δ1…加工方向前半側形状接線角度、
δ2…加工方向後半側形状接線角度。
Claims (6)
- 被加工物に凹部または凸部を切削加工する切削加工方法において、
すくい角が負の切削工具を用い、
前記切削工具の切り込み量を高速で変化させるとともに、前記切削工具を被加工物の表面往路に沿って移動させながら、被加工物に凹部または凸部を切削加工したのち、
前記切削工具の切り込み量を高速で変化させるとともに、前記切削工具を被加工物の表面復路に沿って移動させながら、前記被加工物に加工した前記凹部または凸部を再度切削加工する、
ことを特徴とする切削加工方法。 - 請求項1に記載の切削加工方法において、
前記往路加工では、前記凹部または凸部の加工方向前半または加工方向後半を切削加工し、
前記復路加工では、前記凹部または凸部の残りの半分を切削加工することを特徴とする切削加工方法。 - 請求項1または請求項2に記載の切削加工方法において、
前記切削工具は、すくい角が−5°〜−70°、前逃げ角が20°〜60°であることを特徴とする切削加工方法。 - 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の切削加工方法において、
前記凹部または凸部は、加工方向前半側形状接線と被加工物表面との角度と、加工方向後半側形状接線と被加工物との角度とが略等しく、かつ、これらの形状接線角度が20°以上の断面半円形状を有する凹部または凸部であることを特徴とする切削加工方法。 - 被加工物を載置したテーブルおよび切削工具と、
前記テーブルおよび前記切削工具を互いに直交するX軸およびY軸方向へ相対移動させるX軸移動機構およびY軸移動機構と、
前記切削工具を前記X軸およびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ進退させる切込軸を有するZ軸移動機構と、
前記切込軸に設けられ前記Z軸方向への前記切削工具の切込量を高速で変化させる往復動ステージと、
前記X軸移動機構、前記Y軸移動機構および前記Z軸移動機構を制御する制御手段とを備えた切削加工装置において、
前記切削工具は、すくい角が負の切削工具が用いられ、
前記制御手段によって、前記切削工具の切り込み量を高速で変化させるとともに、前記切削工具を被加工物の表面往路に沿って移動させながら、被加工物に凹部または凸部を切削加工したのち、前記切削工具の切り込み量を高速で変化させるとともに、前記切削工具を被加工物の表面復路に沿って移動させながら、前記被加工物に加工した前記凹部または凸部を再度切削加工するよう構成されていることを特徴とする切削加工装置。 - 請求項5に記載の切削加工装置において、
前記往復動ステージは、複数の圧電素子を積層した圧電素子積層体によって構成されていることを特徴とする切削加工装置。
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