JP2009073727A - カーボンナノチューブ加工方法及びそれによって加工されたカーボンナノチューブ - Google Patents

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Abstract

【課題】カーボンナノチューブ壁面に孔を制御して導入できるようにすること。
【解決手段】金属硝酸塩10をカーボンナノチューブ12に付着させ、該金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを真空又は不活性ガス中で加熱することで、金属硝酸塩10の酸素によってカーボンナノチューブ12の骨格である炭素を酸化されて孔を導入する。
【選択図】図1

Description

本発明は、カーボンナノチューブの壁面に小さな孔を開けるカーボンナノチューブ加工方法、及び、そのような加工法によって孔が開けられたカーボンナノチューブに関する。
カーボンナノチューブは、非特許文献1に示すように1991年に発見されたものであり、近年、そのようなカーボンナノチューブには、様々な応用が期待されている。
例えば、電位窓が広いことを利用して、チャネル部分にナノ炭素材料を用いた電界効果トランジスタは、トランジスタのゲート部分に付着した蛋白質やDNAを検知するバイオセンサとしての応用が期待されている。チャネルに用いる炭素材料は、カーボンナノチューブが有望である。
このようなカーボンナノチューブは他にも、燃料電池の電極、キャパシタ、ドラッグデリバリシステム(DDS)、イメージング(DDSによるMRI等の造影剤の輸送)、水素やメタンの貯蔵、触媒担体、フィールドエミッション、不安定な分子の保存、電子顕微鏡観察に用いるナノサイズの試験管など、幅広い用途が期待されている。電子顕微鏡観察に用いるナノサイズの試験管は、カーボンナノチューブの内部に不安定な物質を入れて固定して電子顕微鏡で観察する技術である。カーボンナノチューブ内部では分子の動きが制限され、また、電子線によるダメージも緩和されるため、電子顕微鏡観察が難しい物質も観察でき、さらに原子の動きも観察することが可能となる。
このようなカーボンナノチューブの壁面に小さな孔を導入する場合、従来、加熱雰囲気中の酸素による酸化、酸化剤による液相酸化、酸やアルカリによる液相酸化、加熱雰囲気中の水や二酸化炭素による酸化が行われる。
S.Iijima、 Nature Vol.354 p.56 (1991)
加熱雰囲気中の酸素による酸化では、発熱反応であるため、反応が止まらず孔だけでなく、過剰反応によるデブリを生じ、それがチューブ壁面やチューブ内を汚染するという問題がある。また、チューブ自体反応が進みすぎ欠陥が入りすぎるという問題がある。
酸化剤による液相酸化、酸やアルカリによる液相酸化は、カーボンナノチューブへのダメージが大きく、また、操作が煩雑で、液相で行うためコンタミネーションの問題も大きい。
加熱雰囲気中の水や二酸化炭素による酸化は、吸熱反応であり、酸素による酸化よりも制御し易いが、それでも酸素による酸化と同様な、過剰反応によるデブリを生じ、それがチューブ壁面やチューブ内を汚染するという問題がある。また、チューブ自体反応が進みすぎ欠陥が入りすぎるという問題がある。
従って、カーボンナノチューブ壁面に孔を制御して導入することは難しかった。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、カーボンナノチューブ壁面に孔を制御して導入可能なカーボンナノチューブ加工方法及びそれによって加工されたカーボンナノチューブを提供することを目的とする。
本発明のカーボンナノチューブ加工方法の一態様は、
金属硝酸塩をカーボンナノチューブに付着させ、
該金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを真空又は不活性ガス中で加熱することを特徴とする。
また、本発明のカーボンナノチューブの一態様は、上記カーボンナノチューブ加工方法の一態様によって加工することで、壁面に孔が導入されたことを特徴とする。
本発明によれば、金属硝酸塩の酸素原子によってカーボンナノチューブの骨格である炭素原子が酸化されることで孔が導入されるので、カーボンナノチューブ壁面に孔を制御して導入可能なカーボンナノチューブ加工方法及びそれによって加工されたカーボンナノチューブを提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブの加工方法を説明するための図である。
本一実施形態においては、金属硝酸塩、例えば硝酸ランタン等を溶媒に溶解して、カーボンナノチューブとともに混合する。そして、図示しない乾燥箱に入れて、窒素気流中で乾燥することで、溶媒を飛ばす。こうして、図1に示すように、金属硝酸塩10が付着したカーボンナノチューブ12が調整される。なお、溶媒としては、親水性と親油性の両方を備えると共に、入手が容易であるのでエタノールを利用するのが好ましいが、それに限定するものではない。
次に、上記のようにして調整した金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを、真空又はアルゴン等の不活性ガスの気流中に配置し、300度で5分間、加熱する。このとき、例えば、二価の金属硝酸塩“M(NO”の場合(ここで、“M”は金属)、カーボンナノチューブ12の骨格は炭素原子“C”であるので、
C + M(NO → M + 2NO↑ + 2CO
のような反応となり、炭素が金属硝酸塩の酸素原子によって酸化されることで、孔14が開く。ここで、金属は触媒として働く。
ここで、上述の例では加熱温度を300度としているが、加熱温度は必ずしも300度とする必要はない。
図2は、金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを100度から500度まで加熱した際の重量変化を示す図である。ここで、図2においては、100度のときの重量を100としてその重量変化を重量%として示している。また、図2においては、金属硝酸塩として硝酸ランタンを付着させた例を示している。また、図2においては、硝酸ランタンの付着量を0.1atom%、0.5atom%、1.0atom%の3通りに変化させている。なお、0.1atom%は炭素原子100個に対して硝酸ランタン分子が0.1個存在する付着量である。同様に、0.5atom%は炭素原子100個に対して硝酸ランタン分子が0.5個存在する付着量であり、1.0atom%は炭素原子100個に対して硝酸ランタン分子が1個存在する付着量である。
図2に示すように、硝酸ランタンを全く付着させていない場合の曲線と比較して、0.1atom%の硝酸ランタンを付着させたカーボンナノチューブに対応した曲線、0.5atom%の硝酸ランタンを付着させたカーボンナノチューブに対応した曲線、1.0atom%の硝酸ランタンを付着させたカーボンナノチューブに対応した曲線は何れも200℃〜300℃付近において大きな重量の減少があることが分かる。即ち、この温度においてカーボンナノチューブを構成する炭素原子と硝酸ランタンとの反応が大きく進み、カーボンナノチューブに穴が形成されることが分かる。なお、図2では示していないが、硝酸ランタン以外の金属硝酸塩を付着させた場合も、加熱温度が200℃〜300℃付近となると反応が大きく進むことが分かっている。
以上より、金属硝酸塩付着カーボンナノチューブの加熱温度は200℃〜300℃程度とすることが望ましいことが分かる。
図3は、金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを500度から900度まで加熱した際の重量変化を示す図である。ここで、図3においても図2と同様に、金属硝酸塩として硝酸ランタンを付着させた例を示し、また、硝酸ランタンの付着量も0.1atom%、0.5atom%、1.0atom%の3通りに変化させている。
図3に示すように、硝酸ランタンを全く付着させていない場合の曲線と比較して、0.1atom%の硝酸ランタンを付着させたカーボンナノチューブに対応した曲線、0.5atom%の硝酸ランタンを付着させたカーボンナノチューブに対応した曲線、1.0atom%の硝酸ランタンを付着させたカーボンナノチューブに対応した曲線は何れも600℃〜800℃付近において大きな重量の減少があることが分かる。特に700〜800℃付近においては減少が顕著である。即ち、この温度においてもカーボンナノチューブを構成する炭素原子と硝酸ランタンとの反応が大きく進むことが分かる。このことは、200℃〜300℃の加熱で形成された穴をさらに拡げることが可能なことを意味している。
このように、200℃〜300℃程度の加熱と、600℃〜800℃程度との加熱を使い分けることで、カーボンナノチューブに形成される穴の大きさを調整することが可能である。
カーボンナノチューブの加熱の後、該真空又はアルゴン等の不活性ガス気流中で冷却する。こうして、壁面に孔14が導入された加工済カーボンナノチューブ16となる。
なお、該加工済カーボンナノチューブ16をバイオセンサ等に使用する場合には、金属が残留していても問題とならないが、ドラッグデリバリシステム(DDS)のように人体内に該加工済カーボンナノチューブ16を入れる場合や、マグネティックな測定を行うセンサに利用する場合等には、残留金属を除去する必要がある。従って、必要に応じて、加工済カーボンナノチューブ16を洗浄することで、その表面に残留している金属を除去する。
以上のようにして、本一実施形態によれば、金属硝酸塩が付着した部分にだけが孔を開けることができるので、カーボンナノチューブの壁面に孔を制御して導入することができる。
また、付着させた金属硝酸塩の量によって、単位面積あたりの孔の数(分布密度)を制御することができる。従って、必要以上に孔が開かないようにすることができる。
なお、金属硝酸塩10としては、特にこれらに限定するものではないが、硝酸ランタン、硝酸セリウム、硝酸ユーロピウム、等のランタニドや、硝酸ニッケル等の遷移金属を利用することができる。
以上、一実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した一実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
図1は、本発明の一実施形態に係るカーボンナノチューブの加工方法を説明するための模式図である。 図2は、金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを100度から500度まで加熱した際の重量変化を示す図である。 図3は、金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを500度から900度まで加熱した際の重量変化を示す図である。
符号の説明
10…金属硝酸塩、 12…カーボンナノチューブ、 14…孔、 16…加工済カーボンナノチューブ。

Claims (6)

  1. 金属硝酸塩をカーボンナノチューブに付着させ、
    該金属硝酸塩付着カーボンナノチューブを真空又は不活性ガス中で加熱することを特徴とするカーボンナノチューブ加工方法。
  2. 上記金属硝酸塩の量により、上記カーボンナノチューブに形成される孔の、単位面積あたりの数を制御することを特徴とする請求項1に記載のカーボンナノチューブ加工方法。
  3. 上記金属硝酸塩は、ランタニド又は遷移金属であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカーボンナノチューブ加工方法。
  4. 上記加熱の際の加熱温度を200度以上、300度以下とすることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のカーボンナノチューブ加工方法。
  5. 上記加熱の際の加熱温度を600度以上、800度以下とすることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のカーボンナノチューブ加工方法。
  6. 請求項1乃至5の何れかに記載のカーボンナノチューブ加工方法によって加工することで、壁面に孔が導入されたことを特徴とするカーボンナノチューブ。
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