JP2009062647A - 耐熱弾性糸状体及びその製造方法 - Google Patents

耐熱弾性糸状体及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高温下で使用できる弾性糸状体及び当該糸状体を含む構造体を提供すること。
【解決手段】コイル状バネの外周を編組被覆してなることを特徴とする弾性糸糸状体。
【選択図】図1

Description

本発明は、耐熱性に優れた弾性糸状体及び当該糸状体を含む構造体に係わるものである。
弾性糸状体は、ゴム、ポリウレタン系弾性長繊維、コンジュゲート糸、仮撚り加工糸などを含むものが一般的である。
弾性糸または弾性繊維(以後これらの総称を弾性糸状体と呼ぶこととする)の耐熱性を向上させるための手法として、耐熱ポリウレタン弾性糸(特許文献1)、弾性率、耐アルカリ性および耐熱性が高い弾性繊維を製造する方法(特許文献2)、耐熱性に優れた被覆弾性糸および収縮性布帛とその染色方法(特許文献3)などが開示されている。
しかし、上記弾性糸状体は、いずれも、高温に長時間さらされると、伸縮性が大幅に低下するという欠点を持っており、耐熱性が充分ではなく、そのため使用温度上限が限定され、工業資材として満足できるものではなかった。
一方 コイル状のバネは、さまざまな工業用途に使用されており、高温下でも使用できる弾性体と言える。
しかし、コイルバネは伸張時に隙間が開き、この隙間に、他の物が挟み込まれるため、コイルバネを把持している両端の間には、障害物がない状態で使用されることが一般的である。
長いコイルバネは取り扱い性が非常に悪くなるため、コイルバネは、Lmm(コイル長さ)/Dmm(コイル直径)が100以下であることが一般的であり、L/Dが100を超えるものはなかった。
たとえばコイル直径(D)が1mmでコイル長さ(L)が100mmというようなものは知られておらず、糸状体として、利用することは不可能であった。
コイルバネに対する被覆としては、発泡弾性体の中に金属コイルバネを埋設したものが提案されている(特許文献4)が、やはりL/D<100で、弾性糸状体として取り扱えるものではなかった。
本発明は、上記現状に鑑み、高温下で使用できる弾性糸状体及び当該弾性糸状体を含む構造物を提供するものである。
特許第2773943号公報 特表2007−504370号公報 特開平5−78937号公報 特開昭61−184238号公報
本発明は、高温下で使用できる弾性糸状体及び当該弾性糸状体を含む構造物を提供することにある。
本発明者は、高温下でも使用できる弾性糸状体を得るために鋭意検討した結果、連続コイル状バネの筒状外周をマルチフィラメント又は紡績糸で編組被覆することにより、高温下でも使用できる弾性糸状態が得られることを見出し本発明に至った。
すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)連続コイル長さL(mm)>1000、コイル直径D(mm)<10であり、かつL/D>100である連続コイル状バネを芯部に含み、当該連続コイル状バネの筒状外周をマルチフィラメント又は紡績糸で編組被覆してなることを特徴とする耐熱弾性糸状体。(2)前記連続コイル状バネが、金属からなり、コイル直径Dmmと伸線(コイルを形成する線材のこと)直径dmmの関係が、24>D/d>4、1mm>d>0.01mmであり、コイルピッチ間隔が0.5D以下であることを特徴とする上記(1)記載の耐熱弾性糸状体。
(3)前記連続コイルバネを伸張下で編組被覆することを特徴とする上記(1)記載の耐熱弾性糸状体。
(4)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の、耐熱弾性糸状体を少なくとも一部に含むことを特徴とする耐熱弾性構造体。
本発明の耐熱弾性糸状体は、高温下で使用でき、工業分野の弾性材料として好適である。
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明の弾性糸状体は、連続コイル長さL(mm)>1000、コイル直径D(mm)<10であり、かつL/D>100である連続コイル状バネを芯部に含み、連続コイル状バネの筒状外周に、マルチフィラメントまたは、紡績糸で編組を形成することにより得ることができる。
連続コイルバネの長さ(Lmm)は1000mm以上であることが重要である。
1000mm未満の場合は、外周に編み組みを形成することが困難で、実用糸状体として使用することが難しい。
コイル直径(Dmm)は10mm以下であることが重要である。これ以上の場合は、繊維製品の加工機械での取り扱い性が悪く実用上糸状体として使用することが困難である。
また、L/Dは100以上であることが重要であり、100未満の場合は、同じく糸状体として使用することが困難である。
本発明で用いる連続コイル状バネは、金属であることが好ましい。金属以外のコイルバネもあるが、繰り返し変形や、耐熱性の点で、劣る。コイル形状のバネは、コイリングマシンの選定と選定したコイリングマシンの条件設定で任意に設計できる。
コイル直径Dmmと伸線(コイルを形成する線材のこと)直径dmmが、24>D/d>4であることが重要である。D/dが24以上の場合は、安定な形態のバネが得られず、変形しやすく好ましくない。好ましくは、D/dが、16以下である。一方、D/dが4以下では、コイルを形成することが困難となると同時に、伸縮性が発現しにくい。好ましくは6〜15の範囲である。
伸線の直径dは1mm以下であることが重要である。1mm未満となると、バネが重くなり、伸縮応力もコイル直径も大きくなるため好ましくない。
一方、伸線の直径が0.01mm以下となると、形成できるバネが弱すぎて、焼き入れをしたものであっても、横から力が加わると変形しやすく、実用的ではない。
コイルのピッチ間隔は、0.5D(mm)以下であることが望ましい。これ以上の間隔であってもコイル状のバネを形成することはできるが、コイル外周への編み組み形成が困難となる。伸縮性が低下するとともに、外力により変形しやすくなるので好ましくない。好ましくは0.1D以下である。
ピッチ間隔を、ほぼゼロとしたものは、伸縮性を最も高くすることができ、バネそのものがからまりにくく、巻き取ったバネを引き出しやすいという特徴があり、外力による変形にも強いという利点があり好ましい。
コイルバネの材料は、公知の伸線から任意に選ぶことができる。線材の材料は、ピアノ線、硬鋼線、ステンレス鋼線、オイルテンパー線、燐青銅線、ベリウム銅線、洋白線などがある。耐食性、耐熱性に優れ、入手しやすい点から、ステンレス鋼線が望ましい。
連続したコイル形状のバネは、伸線をコイリングマシーンにてコイリングを行い、焼き入れ及び冷却を行うことによって得ることができる。細いコイル状のバネは、からまりやすいため、コイリングマシーンに引き続いて連続して焼き入れ(テンパー)及び冷却を行うことが好ましい。
バネを巻き取る時、コイルが重なりあうことがあり、引出しずらい場合がある。このような場合は、コイル状バネに細幅テープを重ねて巻き取ることにより容易に対応できる。
本発明において、連続コイル状バネの筒状外周をマルチフィラメント又は紡績糸で編組被覆するが、バネの筒状外周を編組する繊維材料としては、フッ素繊維、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリケトン繊維、カーボン繊維、耐炎化アクリル繊維、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、木綿、ウール、絹、レーヨン繊維、キュプラ繊維、アセテート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、サラン繊維、ガラス繊維、セラミック繊維等を使用でき用途に応じて任意に選定することができる。
伸縮によりバネとの接触面が、こすられやすいため、磨耗性に優れた素材が好ましい。耐熱性が高く、磨耗性にも優れている点から、フッ素繊維を用いることが好ましい。しかし、これに限定されるものではなく、実用上は、用途に応じて、実用性能及び価格を考慮し、任意に選ぶことができる。
例えば、耐熱性に優れるものとして、アラミド繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維が挙げられる。
汎用性を重視する場合は、ナイロン繊維とポリエステル繊維が挙げられる。
耐火性を求める場合は、ガラス繊維、無機繊維、フッ素繊維、耐炎化アクリル、サラン繊維を挙げることができる。
意匠性を重視する場合は、発色の良いアクリル繊維を用いることもできる。
さらに、人との接触による触感を重視する場合は、キュプラ、アセテート、コットン、レーヨンなどのセルロース系繊維や、絹、または、繊度の細い合成繊維を用いることができる。
また、上記編組被覆はバルキー性があるものを用いることもできる。バネそのものは、硬く感じられるため、その周囲をバルキー性のあるもので覆うことで、触感が改良される。また、バルキー性のあるものを用いることで、緩衝作用が期待でき、外力や変形に対して、耐性が高まる。
バルキー性を持つ編組被覆は、バルキー性のあるマルチフィラメント又は紡績糸を用い、締付けすぎることのないように編組することにより得られる。あまり粗い編み組では、被覆が不十分となり好ましくない。
バルキー性のあるマルチフィラメント又は紡績糸は、公知の方法により得ることができる。例えば、マルチフィラメントを1種類以上引きそろえ、仮撚り加工するか、コンジュゲート糸のマルチフィラメントを用いることもできる。また、紡績糸においては、1種類以上の短繊維を混合し、紡績することで、バルキー性が得られる。特に、熱収縮率の異なる短繊維を混合し、紡績し、熱処理することにより、バルキー性の高い紡績糸を得ることができる。
汎用性があり、磨耗性と、バルキー性が良好な絶縁繊維としては、ウーリーナイロンや、エステルウーリー糸があげられる。
磨耗性に優れる絶縁繊維とバルキー性のある絶縁繊維を組み合わせる(混合紡績するか
、合糸するか、多重に被覆する)こともできる。
編組に使用する繊維材料は、生糸のままでも良いが、意匠性や、劣化防止の観点から原着糸や、先染め糸を用いることもできる。仕上げ加工により、柔軟性や、摩擦性の向上を図ることもできる。さらに、難燃加工、撥水加工、撥油加工、防汚加工、抗菌加工、制菌加工、消臭加工など、公知の繊維の加工を程速ことにより、実用時の取り扱い性を向上させることもできる。
本発明の弾性糸状体は、コイル状バネを伸長させた状態で、その周囲を組ひも状、編みひも状に形成した筒状の繊維で被覆することが重要である。好ましくは30%以上さらに好ましくは50%以上伸張下で被覆することにより、高い伸縮性をもった糸状体を得ることができる。
本発明の 耐熱弾性糸状体を少なくとも一部に含む耐熱弾性構造体とは、耐熱弾性糸状体を部分的に使用した、紐、テープ、シート、ネット、網、布帛などをいう。これらは、耐熱弾性糸状体を、公知の加工方法により、加工することで、ロープにすることや、布帛やネットの一部に取り付けて衣服や手袋の口ゴムとすることや、収納容器や、拘束用具とすることができる。
この時、耐熱弾性糸状体の切断面は、金属が露出しないように、折り返しておくことや、接着剤などで、被覆をしておくことが好ましい。
このようにして得られた構造体は、高温にさらされても、弾性が要求される用途や、耐久性が要求される用途に使用される。
具体例として、消火現場で使用される消防服や、溶接現場で使用される耐熱性保護衣、いずれの場面でも使用される耐熱手袋などの口ゴムとすることができる。
また、バスや列車の座席に備え付けられている収納具のネットを構成するゴム紐として使用すると、耐久性を大幅に向上させることができる。
一方、伸縮性のあるロープは、物体を固定しやすく、様々な場面で使用できるが、
通常のゴムは劣化しやすく、その使用範囲が限られていた。このような場面においても、本発明の耐熱弾性糸状体を含む紐状物やテープ状物によって、使用できる範囲を広げることや、耐久性を向上させることができる。
例えば自動車の社内で使用されるシートカバー取り付けのゴム紐やゴムテープを提供することができる。
このように、これまで いわゆる「ゴムが風邪をひいてダメになった」と言われるケースに対し、その耐久性を飛躍的に向上させる画期的な弾性糸状体及びそれを用いた構造体を提供するものである。
本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
(1)コイリング状態
コイリングマシーンでコイリングを行い、下記基準で判断した。
コイル数10以上の連続コイリングができる。 :○
コイル数10以上の連続コイリングができない。:×
(2)コイルへの編組性
コイル直径に応じた製紐機を用い、コイルを伸張しながら、エステル繊維により編み組みを形成し、下記基準で判断した。
編み組みを形成できた。:○
製紐機に仕掛からない。:×
(3)糸状態としての取り扱い性
編組後の糸状体を両手でつかみ、結び目をつくり、下記基準で判断した。
結び目を作る事ができた。:○
結び目を作る事ができない。:×
(4)50%伸張応力(cN)
標準状態(20℃65%)にコントロールされた試験室に置かれたテンシロン測定器を用い、試料長100mm、引張り速度500mm/minで引張り、50%伸張時の応力を求めた。
(5)50%伸張回復率(%)
100mmの試料をテンシロン測定機にて500mm/minで引張り、50%伸張後リターンし、応力がゼロになる距離(Amm)を求め次式により回復率を求めた。
50%伸張回復率(%)=((100−A)/100 )×100
(6)耐熱性
弛緩状態で100mmに印をつけたのち、当該印両端を25mm引き伸ばし25%伸張状態とした金枠に固定した。この伸張状態のまま、120℃に設定した乾燥機中で、16時間熱処理を行った。
熱処理後、室温で15分放冷した後金枠から取り外した。
この試料を室温で15分間弛緩し、印間の距離を測定した。
劣化の判定は、熱処理テスト後の長さ(mm)から、次式を用いて、回復率を求め、回復率が90%以上を〇、70%以上〜90%を△、50%以上〜70%未満を×、50%未満を××とした。
回復率(%)=100×(25−(熱処理後長さ−100))/25
[実施例1]
直径(d)0.2mmのステンレス製伸線(住友金属スチールワイヤー(株)製)をコイリングマシーンSH−7(オリイメック(株))を用いてコイリングを行い、テンパーにて270℃20分熱処理を行い、冷却して、ピッチ間隔ゼロ、コイル直径(D)1.6mm、連続長さ(L)2000mmのバネを得た(D/d≒8、L/D≒1250)。このバネを芯にして、220dt(72f)ウーリーナイロン黒を用いて、16本打ち製紐機にて140%伸張下で編組加工を行い本発明の弾性糸状体を得た。
「比較例1、2」
実施例1と同様にして、所定の直径のステンレス製伸線を用いて、コイリングマシーンにてコイリングを行い、製紐機を用いて、編組加工を行い、弾性糸条体を得ることを試みた。
コイル長さが1000mm未満のものは、製紐機に仕掛からず、糸状体を得る事ができなかった。 コイル直径が10mm以上のものは、手で結び目を作る事ができず、糸状体としての取り扱い性が困難であった。
[比較例3、4]
ポリウレタン弾性糸18700dtを10本引きそろえたもの、または、丸ゴム(#12番)を芯にして、実施例1と同様にして弾性糸状体を得た。
Figure 2009062647
Figure 2009062647
本発明の耐熱弾性糸状体は、高温下で使用でき、工業分野の弾性材料として好適に用いることができるものである。
弾性糸状体の構成 図1の断面略図

Claims (4)

  1. 連続コイル長さL(mm)>1000、コイル直径D(mm)<10であり、かつL/D>100である連続コイル状バネを芯部に含み、当該連続コイル状バネの筒状外周をマルチフィラメント又は紡績糸で編組被覆してなることを特徴とする耐熱弾性糸状体。
  2. 前記連続コイル状バネが、金属からなり、コイル直径Dmmと伸線(コイルを形成する線材のこと)直径dmmの関係が、24>D/d>4、1mm>d>0.01mmであり、コイルピッチ間隔が0.5D以下であることを特徴とする請求項1記載の耐熱弾性糸状体。
  3. 前記連続コイルバネを伸張下で編組被覆することを特徴とする請求項1又は2記載の耐熱弾性糸状体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の耐熱弾性糸状体を少なくとも一部に含むことを特徴とする耐熱弾性構造体。
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