JP2009062300A - クマリン化合物及びその用途 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、クマリン化合物及びその用途等に関する。
前立腺癌、良性前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大および多嚢胞性卵巣症候群等の男性ホルモン依存性の疾患は、その発症や進行が男性ホルモンの活性により促進される。
3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼは、低活性男性ホルモンであるアンドロステンジオンから高活性男性ホルモンであるテストステロンへの変換を触媒する酵素である。例えば、癌化した前立腺組織においては、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の発現レベルが、正常組織での発現レベルよりも高いことが観察されている(例えば、非特許文献1)。
The Prostate,53,154−159,(2002)
本発明は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害することができ、よって男性ホルモン依存性疾患の処置または予防において有用な化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、かかる状況の下、鋭意検討した結果、下記の式(I)及び(II)で示される化合物(以下、一括して本化合物と記すこともある)が3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する能力を有することを見出し、本発明に至った。
即ち、本発明は、
1.式(I)
[式中、XIは、水素原子、メトキシメチル基、フェニル基、ベンジル基又はフッ素原子で置換されてもよいC1-C4アルキル基を表し、YIは、水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、メトキシメチル基又はフェニル基を表し、ZIは、水素原子又はハロゲン原子を表し、RIは、水素原子、C1-C4アルキルカルボニル基又はC1-C4アルキルアミノカルボニル基を表す。ただし、XIが水素原子又はメチル基であり、YIが水素原子であるとき、RIが水素原子となることはない。]
で示されるクマリン化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;
2.式(II)で示されるクマリン化合物;
3.前項2に記載の化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;
4.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための有効成分としての、前項1に記載の組成物に有効成分として含有される化合物の使用;
5.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための有効成分としての、前項2に記載の化合物の使用;
6.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、該方法が、治療的に有効な量の少なくとも一つの前項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物または該クマリン化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは該クマリン化合物の薬学的に受容可能な溶媒和物を、そのような阻害を必要とする患者に投与する工程を包含する方法;
7.男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、該方法が、該処置または予防を必要とする患者に、治療的に有効な量の少なくとも一つの請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物または該クマリン化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは該クマリン化合物の薬学的に受容可能な溶媒和物を投与する工程を包含する方法;
8.男性ホルモン依存性疾患が、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、多毛症、アクネ、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大または多嚢胞性卵巣症候群である、前項7に記載の方法;
等を提供するものである。
即ち、本発明は、
1.式(I)
[式中、XIは、水素原子、メトキシメチル基、フェニル基、ベンジル基又はフッ素原子で置換されてもよいC1-C4アルキル基を表し、YIは、水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、メトキシメチル基又はフェニル基を表し、ZIは、水素原子又はハロゲン原子を表し、RIは、水素原子、C1-C4アルキルカルボニル基又はC1-C4アルキルアミノカルボニル基を表す。ただし、XIが水素原子又はメチル基であり、YIが水素原子であるとき、RIが水素原子となることはない。]
で示されるクマリン化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;
2.式(II)で示されるクマリン化合物;
3.前項2に記載の化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物;
4.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための有効成分としての、前項1に記載の組成物に有効成分として含有される化合物の使用;
5.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための有効成分としての、前項2に記載の化合物の使用;
6.3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、該方法が、治療的に有効な量の少なくとも一つの前項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物または該クマリン化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは該クマリン化合物の薬学的に受容可能な溶媒和物を、そのような阻害を必要とする患者に投与する工程を包含する方法;
7.男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、該方法が、該処置または予防を必要とする患者に、治療的に有効な量の少なくとも一つの請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物または該クマリン化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは該クマリン化合物の薬学的に受容可能な溶媒和物を投与する工程を包含する方法;
8.男性ホルモン依存性疾患が、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、多毛症、アクネ、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大または多嚢胞性卵巣症候群である、前項7に記載の方法;
等を提供するものである。
本発明により、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの活性を阻害し、組織における男性ホルモン活性の亢進を抑制することにより、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防するための組成物等の開発および提供が可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子があげられる。
本発明において、C1-C4アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等があげられ、C1-C4アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等があげられ、C1-C4アルキルアミノカルボニル基としては、例えば、メチルアミノカルボニル基があげられる。
本発明において、ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子があげられる。
本発明において、C1-C4アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基等があげられ、C1-C4アルキルカルボニル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基等があげられ、C1-C4アルキルアミノカルボニル基としては、例えば、メチルアミノカルボニル基があげられる。
本化合物は、それらの薬理学上許容されうる塩も、同時に表す。薬理学上許容されうる塩とは、本化合物の、無機酸との塩、有機酸との塩、無機塩基との塩又は有機塩基との塩を表す。無機酸との塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩等があげられ、有機酸との塩とは、例えば、酢酸塩、安息香酸塩等があげられ、無機塩基との塩とは、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩等があげられ、有機塩基との塩とは、例えば、ピリジン塩、モルホリン塩等があげられる。
本化合物のうち、化合物番号(1)〜(24)で表される化合物(A)を、表1〜表2に例示する。
本化合物は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの活性を阻害する能力を有する。当該能力は、高活性男性ホルモンであるテストステロンの産生を抑制して、組織における男性ホルモン活性の低下を導くことにより、男性ホルモン依存性疾患の発症や進行を妨げるために重要である。よって、本化合物は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性を阻害し、組織における男性ホルモン活性の亢進を抑制することにより、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防するための組成物(医薬品、化粧品、食品添加物等)の有効成分として利用することができる。
例えば、本化合物は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を、そのような阻害を必要とする患者に投与する工程を包含する方法に利用することができる。
また例えば、本化合物は、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を、該処置又は予防を必要とする患者に投与する工程を包含する方法に利用することができる。
例えば、本化合物は、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を、そのような阻害を必要とする患者に投与する工程を包含する方法に利用することができる。
また例えば、本化合物は、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を、該処置又は予防を必要とする患者に投与する工程を包含する方法に利用することができる。
本化合物は、その発症または進行が男性ホルモンの活性により促進される男性ホルモン依存性疾患の予防または治療に有用である。本化合物の適用可能な男性ホルモン依存性疾患としては、例えば、前立腺癌および他の男性ホルモン依存性新生物、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、男性ホルモン性脱毛症(すなわち、男性患者および女性患者の両方におけるパターン禿頭症)、多毛症、多嚢胞性卵巣症候群、性的早熟、副腎性肥大、脂漏症およびアクネ等をあげることができる。例えば、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、多毛症、アクネ、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大または多嚢胞性卵巣症候群を処置または予防する方法であって、該処置又は予防を必要とする患者に、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物を投与する工程を包含する方法に利用することができる。
好ましい投与量(有効な量)は、1日あたり、体重1kgあたり約0.001〜500mgの本化合物である。より好ましい投与量は、1日あたり、体重1kgあたり約0.01〜25mgの本化合物、または本化合物の薬学的に受容可能な塩または本化合物の溶媒和物である。
本化合物は通常、少なくとも一つの本化合物、または本化合物の薬学的に受容可能な塩または本化合物の溶媒和物と、少なくとも一つの不活性担体とを含む組成物の形で投与される。これらの組成物中に含有される本化合物は、通常、0.01重量%〜99.99重量%であり、不活性担体は、通常、99.99重量%〜0.01重量%である。当該不活性担体は、薬学的に許容される担体や賦形剤である。本発明の組成物はさらに、医薬品添加剤、化粧品添加剤、食品添加剤等を含有してもよい。
本化合物を含有する上記組成物を調製するために用いられる薬学的に許容される担体、賦形剤、医薬品添加剤、食品添加剤、化粧品添加剤等は、当該組成物の具体的用途に応じて適宜選択することができる。また、当該組成物の形態も、具体的用途に応じて、例えば、種々の固体、液体等の形態とすることができる。
固体形態の製剤としては、散剤、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤および坐剤等が挙げられる。この散剤および錠剤は、約5〜約95パーセントの活性成分から構成され得る。固体担体としては、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖またはラクトース等があげられる。錠剤、散剤、カシェ剤およびカプセル剤は、経口投与のために適切な固体投薬形態として使用され得る。薬学的に受容可能な担体の例および様々な組成物のための製造の方法は、A.Gennaro(編),Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版,(1990),Mack Publishing Co.,Easton,Pennsylvania中に見出され得る。
液体形態の製剤としては、液剤、懸濁剤および乳剤等が挙げられる。例えば、非経口注入のための水もしくは水−プロピレングリコール液剤が挙げられる。経口用の液剤、懸濁剤および乳剤には、甘味料や乳白剤が添加されてもよい。液体形態の製剤の例としては、鼻腔内投与のための液剤を挙げることもできる。
また、吸入のために適切なエアゾール製剤とすることもでき、この場合、溶液および粉末形態の固体を挙げることができる。かかる溶液または粉末形態の固体は、不活性な圧縮ガス(例えば、窒素)などの薬学的に受容可能な担体と組み合わされて製剤されてもよい。
経口投与または非経口投与のいずれかのために、使用の直前に、液体形態の製剤に変換することを意図される固体形態の製剤も挙げられる。そのような液体形態としては、液剤、懸濁剤および乳剤が挙げられる。
本化合物は、経皮的に投与されてもよい。この経皮用組成物は、クリーム、ローション、エアゾールおよび/または乳剤の形態とすることができ、この目的のために該分野で通常のように、マトリックス型の経皮用パッチ内またはレザバー型の経皮用パッチ内に含有されてもよい。
また、本化合物は皮下に送達されてもよい。さらに好ましくは、本化合物は経口により投与されてもよい。
また、本化合物は皮下に送達されてもよい。さらに好ましくは、本化合物は経口により投与されてもよい。
上記組成物は、単位用量形態(unit dosage form)にすることもできる。そのような形態においては、上記組成物は、適切な量の上記活性成分、例えば、所望の目的を達成するための有効量を含有する、適切な大きさの単位用量に細分される。
組成物の単位用量中の活性化合物の量は、その特定の適用に従って、約1mg〜約100mg、好ましくは約1mg〜約50mg、より好ましくは約1mg〜約25mgとなるように調整されてもよい。
用いられる実際の投薬量は、患者の体重および処置される疾患の重篤度に依存して変更され得る。便宜のために必要とされる場合には、一日の総投薬量をいくつかに分けて投与してもよい。
本化合物および/またはこの化合物の薬学的に受容可能な塩の投与の量および頻度は、その患者の年齢、状態および体格、ならびに処置されようとする症状の重篤さなどの因子を考慮して、主治医の判断に従って調節される。経口投与のための代表的な一日の推奨投薬量レジメンは、1日あたり、約1mg〜約500mg、好ましくは、1日あたり、約1mg〜約200mgの範囲とすることができ、これらは2〜4回に分けて投与され得る。
本発明は、治療的に有効な量の少なくとも一つの本化合物、または本化合物の薬学的に受容可能な塩または本化合物の溶媒和物と、薬学的に受容可能な担体、賦形剤または希釈剤とを含むキットも提供する。かかるキットは、当該キット内の一つ以上の容器内に上記成分を含み得る。
本化合物を化粧品に添加して用いる場合には、当該化合物が添加された化粧品の具体的な形態としては、例えば、液状、乳状、クリーム、ローション、軟膏、ゲル、エアゾール、ムース等をあげることができる。ローションは、例えば、懸濁剤、乳化剤、保存剤等の化粧品添加剤を用いて、通常の方法に従って製造することができる。
投与量は、投与される患者の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明の組成物の種類、投与形態等によって異なるが、通常ヒト成人で有効成分量として約0.01mg〜約50mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
投与量は、投与される患者の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明の組成物の種類、投与形態等によって異なるが、通常ヒト成人で有効成分量として約0.01mg〜約50mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
本化合物を食品添加物として用いる場合には、当該添加物が添加された食品の具体的な形態としては、例えば、粉末、錠剤、飲料、摂取可能なゲル若しくはシロップとの混合液状物、例えば、調味料、和菓子、洋菓子、氷菓、飲料、スプレッド、ペースト、漬物、ビン缶詰、畜肉加工品、魚肉・水産加工品、乳・卵加工品、野菜加工品、果実加工品、穀類加工品等の一般的な飲食物や嗜好物等をあげることができる。また、家畜、家禽、蜜蜂、蚕、魚等の飼育動物のための飼料や餌料への添加も可能である。
投与量は、投与される患者の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明の組成物の種類、投与形態等によって異なるが、通常ヒト成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
投与量は、投与される患者の年令、性別、体重、疾患の程度、本発明の組成物の種類、投与形態等によって異なるが、通常ヒト成人で有効成分量として約0.1mg〜約500mgを投与すればよい。また、前記の1日の投与量を1回又は数回に分けて投与することができる。
以下に実施例を挙げ、本発明を更に具体的に説明する。
実施例1 実施例1−1に、本化合物の合成を記す。
実施例1−1 本化合物[化合物番号(16)の合成]
レゾルシノール0.11g及びエチル 4,4,5,5,5-ペンタフルオロプロピオニルアセテート0.23gのトリフルオロ酢酸2.5ml溶液を、還流下に15時間攪拌した。還流下に15時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、クロロホルムとヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより、化合物番号(16)のクマリン化合物の白色粉体40mgを得た。
1H−NMR(270MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.73(s,1H),6.83(d,1H,J=2.4Hz),6.89(dd,1H,J=2.7Hz,8.9Hz),7.61(d,1H,J=8.4Hz)
レゾルシノール0.11g及びエチル 4,4,5,5,5-ペンタフルオロプロピオニルアセテート0.23gのトリフルオロ酢酸2.5ml溶液を、還流下に15時間攪拌した。還流下に15時間攪拌した。反応液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに供し、クロロホルムとヘキサンの混合溶媒から再結晶することにより、化合物番号(16)のクマリン化合物の白色粉体40mgを得た。
1H−NMR(270MHz,DMSO-d6)δ(ppm):6.73(s,1H),6.83(d,1H,J=2.4Hz),6.89(dd,1H,J=2.7Hz,8.9Hz),7.61(d,1H,J=8.4Hz)
実施例2 本化合物が有する3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害能力の測定
(2−1)ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミドの作製
ヒト精巣cDNA(MTC Multiple Tissue cDNA Panels / Human II、クロンテック)からPCR法によりヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子のcDNAをクローニングした。配列番号1で示される塩基配列からなるプライマーおよび配列番号2で示される塩基配列からなるプライマーをそれぞれ終濃度0.4μMとなるよう添加し、耐熱性DNAポリメラーゼ(TaKaRa LA Taq、タカラバイオ)を使用して、PCR反応をサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700、アプライドバイオシステム)にて行った。反応条件としては、95℃で5分間保温した後、95℃30秒間、次いで59℃1分間、さらに72℃45秒間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル行い、さらに72℃で7分間保温した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、約1.1kbのDNAを回収した。
発現ベクターpcDNA3.1/Hyg(インビトロジェン)を制限酵素HindIII(タカラバイオ)で消化した後、T4 DNA Polymerase(DNA Blunting Kit、タカラバイオ)で処理してその末端を平滑化した。
上記で得られた約1.1kbのDNAと直鎖化された発現ベクターとを混合し、T4 DNA Ligase(DNA Ligation Kit Ver.2.1、タカラバイオ)を用いて連結した後、大腸菌DH5のコンピテントセル(タカラバイオ)に導入した。得られた形質転換体から、ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミドを得た。当該プラスミドにクローニングされたDNAの塩基配列は、公的データベースであるGenBankに登録番号U05659にて開示されているヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の相当する塩基配列と一致した。
(2−2)ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの一過性発現細胞の調製
HeLa細胞1.6x106細胞を10%FCS含有D-MEM培地に浮遊させた10mLの細胞浮遊液を直径10cmの細胞培養用ディッシュにまき、20〜24時間CO2インキュベーターで静置した。(2−1)で得られたヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミド2μgをFCS不含D-MEM培地300μlに添加し、静かに2回ピペッティングし軽く混合させた。得られたDNA溶液にトランスフェクション試薬(PolyFect Transfection Reagent、キアゲン)を50μl添加し、ピペッティングを5回行って混ぜ、10分間室温で静置した。このDNA溶液に1mLの10%FCS含有D-MEM培地を加えピペッティングを2回行って当該DNA溶液を混ぜた。20〜24時間静置後の上記の細胞の培地を新しい培地8mLに交換し、前記DNA溶液を添加した。20〜24時間CO2インキュベーターで静置した後、細胞をトリプシンで剥がして96ウェルプレートにまいて酵素活性測定に用いた。
(2−3)酵素活性の測定
ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを一過性に発現させたHeLa細胞にアンドロステンジオンを添加し、転化されて生じたテストステロンの濃度を測定する方法で評価した。(2−2)で調製されたヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現プラスミドが導入されたHeLa細胞を10%FCS含有D-MEM培地に浮遊させた。得られた細胞浮遊液を96ウェルプレートにウェルあたり1x104細胞(100μL)添加し、20〜24時間CO2インキュベーターで静置した。静置後に培地を抜き取り、新たにFCS不含培地を80μL 添加した。1%DMSO含有FCS不含培地で希釈した化合物溶液を10μL添加して30分間CO2インキュベーターで静置した。そこに、FCS不含培地で500nMとなるように希釈したアンドロステンジオン溶液10μLを添加して20分間CO2インキュベーターで静置した。その後、時間分解蛍光法試薬(DELFIA Testosterone Reagents、パーキンエルマー)を用いて、当該試薬付属の手順書に従って培地中のテストステロンの濃度を測定した。測定はマルチファンクショナル・プレートリーダー(テカン社製、ウルトラ)を使用した。測定波長は励起340nm、蛍光は612nm。Lag timeは400μsec。Integration timeは400μsec。0%阻害の対照値として、上記の20〜24時間静置した細胞に1%DMSO含有FCS不含培地および500nMのアンドロステンジオン溶液をそれぞれ10μL添加した後、同様にテストステロン濃度を測定した。また、100%阻害の対照値として、上記の20〜24時間静置した細胞に1%DMSO含有FCS不含培地およびFCS不含培地をそれぞれ10μL添加した後、同様にテストステロン濃度を測定した。このようにして得られた測定値から、各濃度の各化合物による17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性の阻害率を計算した。
化合物番号(1)で表される化合物(A)は、濃度5μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が100%であった。化合物番号(2)〜(11)、(14)、(16)、(18)〜(20)、(22)、(23)のいずれかで表される化合物(A)は、濃度10μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が80%以上であった。化合物番号(13)または(15)で表される化合物(A)は、濃度1μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が70%以上であった。前記の化合物番号(17)で表される化合物(A)は、濃度10μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が70%以上であった。
(2−1)ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミドの作製
ヒト精巣cDNA(MTC Multiple Tissue cDNA Panels / Human II、クロンテック)からPCR法によりヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子のcDNAをクローニングした。配列番号1で示される塩基配列からなるプライマーおよび配列番号2で示される塩基配列からなるプライマーをそれぞれ終濃度0.4μMとなるよう添加し、耐熱性DNAポリメラーゼ(TaKaRa LA Taq、タカラバイオ)を使用して、PCR反応をサーマルサイクラー(GeneAmp PCR System 9700、アプライドバイオシステム)にて行った。反応条件としては、95℃で5分間保温した後、95℃30秒間、次いで59℃1分間、さらに72℃45秒間の保温を1サイクルとしてこれを30サイクル行い、さらに72℃で7分間保温した。得られたPCR産物をアガロースゲル電気泳動に供し、約1.1kbのDNAを回収した。
発現ベクターpcDNA3.1/Hyg(インビトロジェン)を制限酵素HindIII(タカラバイオ)で消化した後、T4 DNA Polymerase(DNA Blunting Kit、タカラバイオ)で処理してその末端を平滑化した。
上記で得られた約1.1kbのDNAと直鎖化された発現ベクターとを混合し、T4 DNA Ligase(DNA Ligation Kit Ver.2.1、タカラバイオ)を用いて連結した後、大腸菌DH5のコンピテントセル(タカラバイオ)に導入した。得られた形質転換体から、ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミドを得た。当該プラスミドにクローニングされたDNAの塩基配列は、公的データベースであるGenBankに登録番号U05659にて開示されているヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ遺伝子の相当する塩基配列と一致した。
(2−2)ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの一過性発現細胞の調製
HeLa細胞1.6x106細胞を10%FCS含有D-MEM培地に浮遊させた10mLの細胞浮遊液を直径10cmの細胞培養用ディッシュにまき、20〜24時間CO2インキュベーターで静置した。(2−1)で得られたヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現用プラスミド2μgをFCS不含D-MEM培地300μlに添加し、静かに2回ピペッティングし軽く混合させた。得られたDNA溶液にトランスフェクション試薬(PolyFect Transfection Reagent、キアゲン)を50μl添加し、ピペッティングを5回行って混ぜ、10分間室温で静置した。このDNA溶液に1mLの10%FCS含有D-MEM培地を加えピペッティングを2回行って当該DNA溶液を混ぜた。20〜24時間静置後の上記の細胞の培地を新しい培地8mLに交換し、前記DNA溶液を添加した。20〜24時間CO2インキュベーターで静置した後、細胞をトリプシンで剥がして96ウェルプレートにまいて酵素活性測定に用いた。
(2−3)酵素活性の測定
ヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを一過性に発現させたHeLa細胞にアンドロステンジオンを添加し、転化されて生じたテストステロンの濃度を測定する方法で評価した。(2−2)で調製されたヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ発現プラスミドが導入されたHeLa細胞を10%FCS含有D-MEM培地に浮遊させた。得られた細胞浮遊液を96ウェルプレートにウェルあたり1x104細胞(100μL)添加し、20〜24時間CO2インキュベーターで静置した。静置後に培地を抜き取り、新たにFCS不含培地を80μL 添加した。1%DMSO含有FCS不含培地で希釈した化合物溶液を10μL添加して30分間CO2インキュベーターで静置した。そこに、FCS不含培地で500nMとなるように希釈したアンドロステンジオン溶液10μLを添加して20分間CO2インキュベーターで静置した。その後、時間分解蛍光法試薬(DELFIA Testosterone Reagents、パーキンエルマー)を用いて、当該試薬付属の手順書に従って培地中のテストステロンの濃度を測定した。測定はマルチファンクショナル・プレートリーダー(テカン社製、ウルトラ)を使用した。測定波長は励起340nm、蛍光は612nm。Lag timeは400μsec。Integration timeは400μsec。0%阻害の対照値として、上記の20〜24時間静置した細胞に1%DMSO含有FCS不含培地および500nMのアンドロステンジオン溶液をそれぞれ10μL添加した後、同様にテストステロン濃度を測定した。また、100%阻害の対照値として、上記の20〜24時間静置した細胞に1%DMSO含有FCS不含培地およびFCS不含培地をそれぞれ10μL添加した後、同様にテストステロン濃度を測定した。このようにして得られた測定値から、各濃度の各化合物による17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ活性の阻害率を計算した。
化合物番号(1)で表される化合物(A)は、濃度5μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が100%であった。化合物番号(2)〜(11)、(14)、(16)、(18)〜(20)、(22)、(23)のいずれかで表される化合物(A)は、濃度10μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が80%以上であった。化合物番号(13)または(15)で表される化合物(A)は、濃度1μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が70%以上であった。前記の化合物番号(17)で表される化合物(A)は、濃度10μMでヒト3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの酵素阻害率が70%以上であった。
本発明によって、3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼの活性を阻害し、組織における男性ホルモン活性の亢進を抑制することにより、男性ホルモン依存性疾患を処置または予防するための組成物等の開発および提供することができる。
配列番号1
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号2
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
配列番号2
PCRのために設計されたオリゴヌクレオチドプライマー
Claims (8)
- 式(I)
[式中、
XIは、水素原子、メトキシメチル基、フェニル基、ベンジル基又はフッ素原子で置換されてもよいC1-C4アルキル基を表し、
YIは、水素原子、ハロゲン原子、C1-C4アルキル基、メトキシメチル基又はフェニル基を表し、
ZIは、水素原子又はハロゲン原子を表し、
RIは、水素原子、C1-C4アルキルカルボニル基又はC1-C4アルキルアミノカルボニル基を表す。
ただし、XIが水素原子又はメチル基であり、YIが水素原子であるとき、RIが水素原子となることはない。]
で示されるクマリン化合物と不活性担体とを含有することを特徴とする3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物。 - 請求項2に記載のクマリン化合物と不活性担体とを含有する3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物。
- 請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための有効成分として含有されるクマリン化合物の使用。
- 3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害するための有効成分としての、請求項2に記載のクマリン化合物の使用。
- 3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼを阻害する方法であって、
該方法が、治療的に有効な量の少なくとも一つの請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物または該クマリン化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは該クマリン化合物の薬学的に受容可能な溶媒和物を、そのような阻害を必要とする患者に投与する工程を包含する方法。 - 男性ホルモン依存性疾患を処置または予防する方法であって、
該方法が、該処置または予防を必要とする患者に、治療的に有効な量の少なくとも一つの請求項1に記載の3型17β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害組成物に有効成分として含有されるクマリン化合物または該クマリン化合物の薬学的に受容可能な塩もしくは該クマリン化合物の薬学的に受容可能な溶媒和物を投与する工程を包含する方法。 - 男性ホルモン依存性疾患が、前立腺癌、良性前立腺肥大、前立腺上皮内新生物形成、多毛症、アクネ、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、性的早熟、副腎性肥大または多嚢胞性卵巣症候群である、請求項7に記載の方法。
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WO2022070483A1 (ja) * | 2020-09-30 | 2022-04-07 | 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター | 前立腺癌又は乳癌治療用医薬組成物 |
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