JP2009061543A - 表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】表面被覆切削工具の工具切刃部の逃げ面、ホーニング部およびすくい面の表面に蒸着形成する硬質被覆層は、少なくとも、Al2O3層からなる内部層とTi、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの1層または2層以上からなる最表面層とで構成し、また、上記工具切刃部のランド部表面の硬質被覆層はAl2O3層で構成する。
【選択図】 図1
Description
(a)一般に、被覆工具の切刃部は、逃げ面−ホーニング部−ランド部−すくい面から構成され、その全体に亘って、硬質被覆層が蒸着形成されているが、このような従来被覆工具を、ステンレス鋼、耐熱鋼、ステンレス鋳鋼等の高速切削加工に用いた場合には、切刃に被削材が溶着しやすく、切削中にこの溶着物の脱落と生成が繰り返される際に、溶着物とともに硬質被覆層が脱落し、これがチッピングの原因となっていること。
以上(a)〜(d)に示される研究結果を得たのである。
「 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、少なくとも、Al2O3層と、Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上からなる硬質被覆層が蒸着形成され、また、工具切刃部が、逃げ面、ホーニング部、ランド部およびすくい面で構成された表面被覆切削工具において、
上記工具切刃部の逃げ面、ホーニング部およびすくい面の表面に蒸着形成する硬質被覆層は、少なくとも、Al2O3層からなる内部層とTi、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上からなる最表面層とで構成し、また、上記工具切刃部のランド部表面の硬質被覆層は、Al2O3層で構成したことを特徴とする表面被覆切削工具(被覆工具)。」
に特徴を有するものである。
(1)Al2O3層(内部層)
Al2O3層からなる内部層は、ステンレス鋼、耐熱鋼、ステンレス鋳鋼等の溶着性の高い被削材に対してすぐれた耐溶着性を示すとともに、すぐれた高温硬さ、耐熱性を有し、基本的に、硬質被覆層の耐摩耗性を担保する層であるが、その層厚が1.0μm未満では、十分な耐摩耗性を発揮することはできず、また、その層厚が12μmを越えると、チッピングを発生し易くなることから、その層厚は1.0〜12μmとすることが望ましい。
この発明では、切刃のランド部には、Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上からなる最表面層を設けず、Al2O3層からなる内部層を敢て露出させておくことによって、ステンレス鋼、耐熱鋼、ステンレス鋳鋼製等の黒皮偏肉部を有する鍛造部品等の高速切削加工における被覆工具の耐溶着性を高め、溶着物の生成、脱落に起因するチッピングの発生を防止することができる。
切刃部のランド部のみに、Al2O3層からなる内部層を露出形成させる方法としては、例えば、ランド部を含め、切刃部全体にAl2O3層からなる内部層を蒸着形成し、さらに、Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上層からなる最表面層を蒸着形成した後、ランド部の最表面層のみを研磨加工により除去すれば、ランド部にAl2O3層からなる内部層を露出させることができる。また、Al2O3層からなる内部層を蒸着形成後、ランド部にのみマスキングを施し、この状態で最表面層を蒸着することにより、ランド部のみにAl2O3層からなる内部層を露出させることができる。いずれにしても、この発明では、ランド部のみに、Al2O3層を露出形成させる手段については、特にその手段を限定するものではなく、いかなる手段をも採用することができる。
なお、工具基体表面にAl2O3層を蒸着形成するにあたり、工具基体とAl2O3層の密着性、密着強度等を向上させるために、従来から良く知られているTi化合物(TiC、TiN、TiCN、TiCO、TiNO、TiCNO)層を、下部密着層として蒸着形成することができる。また、これに加えて、この発明で最表面層として蒸着形成する、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上を下部密着層として蒸着形成することも勿論可能であり、この発明では、工具基体とAl2O3層との間に、下部密着層を介在形成することを何ら排除するものではない。
ただ、Al2O3層からなる内部層と工具基体の間に、下部密着層を介在形成した場合には、下部密着層の合計層厚が0.2μm未満では、これを設けたことによる効果の向上が少なく、また、合計層厚が20μmを超えると、高熱を発生する切削加工において熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その合計層厚は0.2〜20μmとすることが望ましい。
Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上からなる最表面層は、すぐれた高温強度を備え、硬質被覆層全体としての強度を高めるとともに、耐チッピング性向上に寄与するが、特に、ステンレス鋼、耐熱鋼、ステンレス鋳鋼製等の黒皮偏肉部を有する鍛造部品の高速切削加工を行った場合には、黒皮偏肉部で一時的に刃先が被削材に切り込まなくなり、硬質な黒皮をホーニング部だけで擦る状態になっても、Al2O3層の上面に高温強度にすぐれたTi、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上からなる最表面層が被覆されていることによって保護されているので、Al2O3層にチッピングが発生することを防止できる。
Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上を最表面層として設けた場合、その層厚が0.5μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その層厚が6μmを越えると、易溶着性被削材の切削加工では耐溶着性が劣化し、チッピングが発生しやすくなることから、Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上からなる最表面層の層厚は、0.5〜6μmとすることが望ましい。
(a)表3に示されるいずれかの条件で、Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上を、下部密着層として合計層厚0.2〜20μmの厚さで蒸着形成し、
(b)ついで、切刃部の逃げ面、ホーニング部、ランド部、すくい面を含む工具基体の表面に、
反応ガス組成:容量%で、AlCl3:1〜5%、CO2:3〜7%、HCl:0.3〜3%、H2S:0.02〜0.4%、H2:残り、の範囲内の所定の組成、
反応雰囲気温度:950〜1100℃の範囲内の所定の温度、
反応雰囲気圧力:6〜13kPaの範囲内の所定の圧力、
の条件で表4に示される目標層厚で、Al2O3層からなる内部層を蒸着形成し、
(c)ついで、上記Al2O3層からなる内部層の上面に、表3に示される条件にて、表4に示されるそれぞれ目標層厚のTi、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物の1層または2層以上を最表面層として蒸着形成し、
(d)その後、切刃部のランド部のみに、砥粒を内部に含有した樹脂製のブラシで機械研磨を施し、内部層のAl2O3層を露出させることにより、本発明被覆工具1〜10をそれぞれ製造した。
被削材:JIS・SUS316の楕円形黒皮丸棒(長径350mm,短径347mm)、
切削速度: 280 m/min.、
切り込み: 0〜1.5 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 5 分
の条件(切削条件Aという)でのステンレス鋼の湿式連続高速切削試験(通常の切削速度は、150m/min.)、
被削材:JIS・SUH310の楕円形黒皮丸棒(長径280mm,短径276mm)、
切削速度: 250 m/min.、
切り込み: 0〜2 mm、
送り: 0.25 mm/rev.、
切削時間: 5 分
の条件(切削条件Bという)での耐熱鋼の湿式連続高速切削試験(通常の切削速度は、110m/min.)、
被削材:JIS・SCS10の楕円形黒皮丸棒(長径310mm,短径306mm)、
切削速度: 260 m/min.、
切り込み: 0〜2 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 5 分
の条件(切削条件Bという)でのステンレス鋳鋼の湿式連続高速切削試験(通常の切削速度は、120m/min.)、
を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、少なくとも、Al2O3層と、Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの1層または2層以上からなる硬質被覆層が蒸着形成され、また、工具切刃部が、逃げ面、ホーニング部、ランド部およびすくい面で構成された表面被覆切削工具において、
上記工具切刃部の逃げ面、ホーニング部およびすくい面の表面に蒸着形成する硬質被覆層は、少なくとも、Al2O3層からなる内部層と、Ti、Zr、Hfの炭化物、窒化物、炭窒化物のうちの1層または2層以上からなる最表面層とで構成し、また、上記工具切刃部のランド部表面の硬質被覆層は、Al2O3層で構成したことを特徴とする表面被覆切削工具。
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2007
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