JP2009056576A - 構造体の製造方法、構造体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材上に設けられた鋳型の表面に、金属層または金属酸化物層からなる被覆膜を形成する工程(1)、該被覆膜の表面に有機膜または無機膜を形成する工程(2)、および該有機膜または無機膜の一部、および被覆膜の一部を除去する工程(3)を行うことにより基材上に被覆膜と有機膜または無機膜とからなる複合膜を形成し、該複合膜の表面に、金属層または金属酸化物層からなる第二の被覆膜を形成し、該第二の被覆膜形成後の基材上に有機被覆膜を形成し、該有機被覆膜により側面の少なくとも一部が支持された第二の被覆膜の一部を除去した後、前記基材上に残存する、前記被覆膜および第二の被覆膜以外の残留物を除去する。
【選択図】なし
Description
従来の、微細な構造体の製造方法としては、鋳型法と呼ばれる手法や、リソグラフィー法を用いる方法などが知られている。例えば非特許文献1には、鋳型微粒子を溶液に分散させて、該鋳型微粒子の表面を薄膜で被覆した後、鋳型微粒子を除去することによって、球状カプセル型の中空三次元構造を有するナノ材料を製造する方法が提案されている。
また、本出願人等は、ナノパターンが形成された鋳型表面を、被覆膜や、金属酸化物と有機化合物との複合膜で被覆し、最終的に該鋳型を除去することによりナノ構造体を製造する方法を提案している(特許文献1〜2参照。)。
また、(1)金属層上にリソグラフィー法によって微細パターンを形成し、該微細パターンをマスクとして金属層をエッチングする方法、(2)リソグラフィー法によって形成された微細パターンに金属めっきを施す方法等により金属の微細構造体を作成する方法が知られている。
アドバンスド・マテリアルズ,13(1),11−22頁(2001年)
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、良好な形状の微細な構造体を簡便に製造できる製造方法および該製造方法により製造される構造体を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の第一の態様は、下記工程(1)〜(3):
基材上に設けられた鋳型の表面に、金属層または金属酸化物層からなる被覆膜を形成する工程(1)、
前記被覆膜の表面に有機膜または無機膜を形成する工程(2)、
前記有機膜または無機膜および前記被覆膜の一部を除去する工程(3)、
を行うことにより、前記基材上に、前記被覆膜および前記有機膜または無機膜からなる複合膜を形成する複合膜形成工程と、
前記複合膜の表面に、金属層または金属酸化物層からなる第二の被覆膜を形成する第二の被覆膜形成工程と、
前記第二の被覆膜形成後の前記基材上に、該基材表面を被覆する有機被覆膜を形成する被覆工程と、
前記有機被覆膜により側面の少なくとも一部が支持された前記第二の被覆膜の一部を除去する除去工程と、
前記基材上に残存する、前記被覆膜および第二の被覆膜以外の残留物を除去することにより、前記基材上に、金属層または金属酸化物層からなる構造体を形成する構造体形成工程と、
を行うことを特徴とする構造体の製造方法である。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様の構造体の製造方法により製造される構造体である。
<複合膜形成工程>
[工程(1)]
工程(1)では、基材上に設けられた鋳型の表面に、金属層または金属酸化物層からなる被覆膜を形成する。
(基材、鋳型)
工程(1)では、まず、鋳型が設けられた基材を用意する。
基材は、その上に鋳型が形成できるものであれば、その種類は特に限定されず、たとえばシリコン、銅、クロム、鉄、アルミニウム等の金属、ガラス、酸化チタン、シリカ、マイカなどの無機物からなる基材、アクリル板、ポリスチレン、セルロース、セルロースアセテート、フェノール樹脂などの有機化合物からなる基材などが代表的である。また、基材は、その表面に、有機系または無機系の反射防止膜が設けられていてもよい。
特に、後述する金属酸化物層形成用材料を用いて被覆膜を形成する際に、基材表面に被覆膜が形成されにくく、鋳型表面により選択的に被覆膜が形成される(被覆選択性に優れる)ことから、その表面に前記金属化合物(W)と反応する官能基を有さない基板が好ましい。
好適な基材として、具体的には、シリコン基板、グラファイト、テフロン(登録商標)、アクリル板、ポリスチレン、フェノール樹脂等が挙げられる。
基材の大きさ、形状等は特に限定はない。基材は必ずしも平滑な表面を有する必要はなく、様々な材質や形状の基材を適宜選択することができる。例えば、曲面を有する基材、表面が凹凸形状の平板、薄片状などの様々な形状のものまで多様に用いることができる。
鋳型として、より具体的には、例えば、リソグラフィー法によって作製された鋳型や、コンタクトプリンティングで作製された鋳型、インプリンティングで作製された鋳型、機械的微細加工により作製された鋳型、LIGA(リソグラフィー、電気鍍金および鋳型成型(LIthographie Galvanoformung und Abformung)による鋳型、ビーム描画による鋳型等を採用できる。これらの中でも、リソグラフィー法によって作製された鋳型が好ましい。
また、鋳型としては、上記のような鋳型の表面に物理的処理および/または化学的処理をしてなる鋳型を採用してもよい。物理的処理および/または化学的処理としては、研磨、表面に薄膜を形成する等の付着操作、プラズマ処理、溶媒処理、表面の化学的分解、熱処理、引き伸ばし処理等が挙げられる。
鋳型の形状の具体例としては、たとえば矩形、円柱、ホール、ラインおよびそれらのネットワーク構造や分岐構造、多角形およびそれらの複合/繰り返し構造、集積回路などに見られるような回路状構造、格子形状を採用することができる。
たとえばライン形状の構造体を得ようとする場合、鋳型としては、断面矩形状のラインパターンが好ましく用いられる。この場合、後述するように、鋳型表面に被覆膜と有機膜または無機膜とからなる複合膜ならびに第二の被覆膜を形成し、それらの上端部を除去すると、基材上に、被覆膜および第二の被覆膜の側壁部分からなる複数のライン形状の構造体(幅が被覆膜の厚さであり、高さが、残った側壁部分の高さであるライン)が形成される。
また、たとえばシリンダ(筒)状の構造体を得ようとする場合、鋳型として、ホールパターンまたは柱状のパターンを形成することが好ましい。この場合、上記と同様、複合膜ならびに第二の被覆膜を形成し、それらの上端部を除去すると、基材上に、被覆膜および第二の被覆膜の側壁部分からなるシリンダ形状の構造体(ホールパターンの内径または柱状パターンの外径と略同一の外径のシリンダ)が形成される。
鋳型の高さは、特に限定されず、形成しようとする構造体の大きさ、形状等に応じて適宜設定すればよい。例えば数nm〜数μm程度の範囲で決定することができ、好ましくは50〜500nmの範囲である。
本発明において、鋳型の材質としては、有機物が好ましい。この場合、プラズマ、オゾン酸化、溶出、焼成等により容易に除去できる。また、被覆膜が金属酸化物層からなるものである場合は、鋳型の材質として、金属も好ましく用いられる。この場合、たとえば酸を用いて当該金属を溶出させることにより、被覆膜を損なうことなく鋳型を除去できる。
鋳型の材質が有機物である場合、該鋳型を形成するための材料としては、下記に示す鋳型形成用材料が好ましく用いられる。
本発明において好ましく用いられる鋳型形成用材料は、分子量が500以上の有機化合物を含有するものである。該有機化合物の分子量が500以上であると、強度、形状等に優れた鋳型を形成できる。また、ナノレベルのサイズの鋳型を形成しやすい。また、かかる鋳型形成用材料を用いて形成された鋳型が、酸素ガス、水素ガス等によるエッチングによって除去しやすいという利点も有する。
前記有機化合物としては、一般的に膜形成用材料の基材成分として用いられているものが利用できる。ここで、「基材成分」とは、膜形成能を有する有機化合物である。
前記有機化合物は、分子量が500以上2000以下の低分子量の有機化合物(以下、低分子化合物という。)と、分子量が2000より大きい高分子量の高分子化合物とに大別される。前記低分子化合物としては、通常、非重合体が用いられる。高分子化合物としては、通常、樹脂(重合体、共重合体)が用いられ、その場合は、「分子量」として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、単に「樹脂」という場合は、分子量が2000以上のものを示すものとする。
前記親水性基として、好ましくは水酸基、カルボキシ基、カルボニル基、エステル基、アミノ基、アミド基からなる群から選択される1種以上が用いられる。これらの内、水酸基(特にはアルコール性水酸基またはフェノール性水酸基)、カルボキシ基、エステル基がより好ましい。中でもカルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基からなる群から選択される1種以上が好ましい。
前記有機化合物が高分子化合物の場合、親水性基を、0.2当量以上有することが好ましく、0.5〜0.8当量有することがより好ましい。これは、高分子化合物が親水性基を有する構成単位とそれ以外の構成単位からなるものである場合には、前者の構成単位が20モル%以上、より好ましくは50〜80モル%であることを意味する。
前記有機化合物が低分子化合物の場合、親水性基を、該低分子化合物の1分子当たり1〜20当量有することが好ましく、より好ましくは2〜10当量の範囲である。ここでの、例えば「1分子当たり1〜20当量の親水性基を有する」とは、1分子中に親水性基が1〜20個存在することを意味する。
リソグラフィー法においては、感放射線性を有する材料であるレジスト組成物が用いられる。レジスト組成物としては、特に限定されず、これまで提案されている任意のレジスト組成物を適宜選択して用いればよい。レジスト組成物には、露光によりアルカリ溶解性が増大するポジ型と、露光によりアルカリ溶解性が低下するネガ型とがある。本発明においては、特にポジ型のレジスト組成物が好ましい。
化学増幅型レジスト組成物としては、特に制限はなく、これまで提案されている多数の化学増幅型レジスト組成物のなかから適宜選択して用いることができる。該化学増幅型レジスト組成物としては、酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する基材成分(A’)(以下、(A’)成分という。)および放射線の照射により酸を発生する酸発生剤成分(B’)(以下、(B’)成分という。)を含有するものが一般的である。
かかるネガ型レジスト組成物においては、露光により(B’)成分から酸が発生すると、当該酸の作用により(A’)成分と架橋剤との間で架橋が起こり、(A’)成分がアルカリ可溶性からアルカリ不溶性へと変化する。そのため、当該ネガ型レジスト組成物を基材上に塗布して得られる有機膜(レジスト膜)に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ不溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ可溶性のまま変化しないため、アルカリ現像により未露光部のみが除去され、レジストパターン(鋳型)が形成される。
ネガ型レジスト組成物の(A’)成分としては、通常、アルカリ可溶性樹脂が用いられ、該アルカリ可溶性樹脂としては、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸、またはα−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸の低級アルキルエステルから選ばれる少なくとも一つから誘導される単位を有する樹脂が、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。なお、α−(ヒドロキシアルキル)アクリル酸は、カルボキシ基が結合するα位の炭素原子に水素原子が結合しているアクリル酸と、このα位の炭素原子にヒドロキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基)が結合しているα−ヒドロキシアルキルアクリル酸の一方または両方を示す。
架橋剤としては、例えば、通常は、メチロール基またはアルコキシメチル基を有するグリコールウリルなどのアミノ系架橋剤を用いると、膨潤の少ない良好なレジストパターンが形成でき、好ましい。架橋剤の配合量は、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、1〜50質量部であることが好ましい。
かかるポジ型レジスト組成物は、露光前はアルカリ不溶性であり、露光により(B’)成分から酸が発生すると、当該酸の作用により酸解離性溶解抑制基が解離し、(A’)成分がアルカリ可溶性へと変化する。そのため、レジストパターンの形成において、当該ポジ型レジスト組成物を基材上に塗布して得られるレジスト膜に対して選択的に露光すると、露光部はアルカリ可溶性へ転じる一方で、未露光部はアルカリ不溶性のまま変化しないため、アルカリ現像により露光部のみが除去され、レジストパターンが形成される。
酸解離性溶解抑制基は、露光前の(A’)成分全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有すると同時に、露光後に(B’)成分から発生した酸の作用により解離し、(A’)成分全体をアルカリ可溶性へ変化させる基である。酸解離性溶解抑制基としては、特に限定されず、化学増幅型のポジ型レジスト組成物において用いられている任意のものであってよい。
・(A’−1)成分:酸解離性溶解抑制基を有する樹脂。
・(A’−2)成分:酸解離性溶解抑制基を有する低分子化合物。
以下、(A’−1)成分および(A’−2)成分の好ましい態様をより具体的に説明する。
(A’−1)成分としては、親水性基を有する構成単位と酸解離性溶解抑制基を有する構成単位とを有する樹脂が好ましい。
当該樹脂中の、前記親水性基を有する構成単位の割合は、当該樹脂を構成する全構成単位の合計量に対し、20〜80モル%であることが好ましく、20〜70モル%がより好ましく、20〜60モル%がさらに好ましい。
当該樹脂中の、前記酸解離性溶解抑制基を有する構成単位の割合は、当該樹脂を構成する全構成単位の合計量に対し、20〜80モル%であることが好ましく、20〜70モル%がより好ましく、30〜60モル%がさらに好ましい。
好ましくは、前記親水性基を有する構成単位が、カルボキシ基、アルコール性水酸基、フェノール性水酸基を有する構成単位であり、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、アルコール性水酸基を有する(α−低級アルキル)アクリル酸エステル、ヒドロキシスチレンから誘導される単位である。
なお、本明細書において、「(α−低級アルキル)アクリル酸」とは、アクリル酸(CH2=CH−COOH)およびα−低級アルキルアクリル酸の一方あるいは両方を示す。α−低級アルキルアクリル酸は、アクリル酸におけるカルボニル基が結合している炭素原子に結合した水素原子が、低級アルキル基で置換されたものを示す。「(α−低級アルキル)アクリル酸エステル」は「(α−低級アルキル)アクリル酸」のエステル誘導体であり、アクリル酸エステルおよびα−低級アルキルアクリル酸エステルの一方あるいは両方を示す。
「(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位」とは、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルのエチレン性2重結合が開裂して形成される構成単位であり、以下(α−低級アルキル)アクリレート構成単位ということがある。「(α−低級アルキル)アクリレート」は、アクリレートおよびα−低級アルキルアクリレートの一方あるいは両方を示す。
「ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」とは、ヒドロキシスチレン又はα―低級アルキルヒドロキシスチレンのエチレン性2重結合が開裂して形成される構成単位であり、以下ヒドロキシスチレン単位ということがある。「α−低級アルキルヒドロキシスチレン」は、フェニル基が結合する炭素原子に低級アルキル基が結合していることを示す。
「α−低級アルキルアクリル酸エステルから誘導される構成単位」及び「α−低級アルキルヒドロキシスチレンから誘導される構成単位」において、α位に結合している低級アルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基であり、直鎖または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基などが挙げられる。工業的にはメチル基が好ましい。
当該(A’−11)成分においては、露光によって酸発生剤から発生する酸の作用によって、構成単位(a’2)および/または構成単位(a’3)において開裂が生じ、これによって、はじめはアルカリ現像液に対して不溶性であった樹脂において、そのアルカリ溶解性が増大する。その結果、露光・現像により、化学増幅型のポジ型のパターンを形成することができる。
構成単位(a’1)は、フェノール性水酸基を有する単位であって、好ましくは下記一般式(I’)で表されるヒドロキシスチレンから誘導される単位である。
−OHのベンゼン環への結合位置は、特に限定されるものではないが、式中に記載の4の位置(パラ位)が好ましい。
構成単位(a’1)は、パターンを形成する点からは、(A’−11)成分中に40〜80モル%、好ましくは50〜75モル%含まれることが好ましい。40モル%以上とすることにより、アルカリ現像液に対する溶解性を向上させることができ、パターン形状の改善効果も得られる。80モル%以下とすることにより、他の構成単位とのバランスをとることができる。
また、パターン上に被覆膜が形成される点からは、構成単位(a’1)は、(A’−11)成分中に、50モル%以上含まれることが好ましく、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは75モル%以上である。上限は特に限定されないが80モル%以下である。上記の範囲であると、フェノール性水酸基の存在により、パターン上に良好な被覆膜が形成でき、良好な形状のパターンを得ることができる。またパターンと被覆膜との密着性が良好となる。
構成単位(a’2)は、酸解離性溶解抑制基を有する構成単位であって、下記一般式(II’)で表される。
この様な酸解離性溶解抑制基Xは、例えば化学増幅型のポジ型レジスト組成物において用いられているものの中から上記以外のものも任意に使用することができる。
ここで、「脂肪族」とは、当該基または化合物が芳香族性を有さないことを意味し、「脂肪族環式基」は、芳香族性を持たない単環式基または多環式基を意味する。
R11、R12、R13が脂肪族環式基を有さない場合には、例えばR11、R12、R13がいずれもメチル基であるものが好ましい。
R11、R12、R13のいずれかが脂肪族環式基を有する場合において、脂肪族環式基が単環の脂肪族環式基である場合は、構成単位(a’2)として、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基を有するもの等が好ましい。
脂肪族環式基が多環の脂環式基である場合、構成単位(a’2)として好ましいものとしては、例えば下記一般式(IV’)で表されるものを挙げることができる。
構成単位(a’3)は、酸解離性溶解抑制基を有する構成単位であって、下記一般式(VI’)で表されるものである。
中でも、tert―ブチルオキシカルボニル基、tert―ブチルオキシカルボニルメチル基、tert−ブチル基、テトラヒドロピラニル基、エトキシエチル基が好ましい。
酸解離性溶解抑制基X’は、例えば化学増幅型のポジ型レジスト組成物において用いられているものの中から上記以外のものも任意に使用することができる。
一般式(VI’)において、ベンゼン環に結合している基(−OX’)の結合位置は特に限定するものではないが式中に示した4の位置(パラ位)が好ましい。
構成単位(a’4)は、アルカリ不溶性の単位であって、下記一般式(VII’)で表されるものである。
n’は0または1〜3の整数を示すが、0であることが好ましい。
また、(A’−11)成分は、前記構成単位(a’1)、(a’2)、(a’3)、(a’4)以外のものを任意に含むことができるが、これらの構成単位の割合が80モル%以上、好ましくは90モル%以上(100モル%が最も好ましい)であることが好ましい。
特には、第三級アルキルオキシカルボニル基で保護したポリヒドロキシスチレンと、1−アルコキシアルキル基で保護したポリヒドロキシスチレンとの混合物であることが好ましい。かかる混合を行う場合、各重合体の混合比(質量比)(第三級アルキルオキシカルボニル基で保護したポリヒドロキシスチレン/1−アルコキシアルキル基で保護したポリヒドロキシスチレン)は、例えば1/9〜9/1、好ましくは2/8〜8/2とされ、さらに好ましくは2/8〜5/5である。
(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂(以下、(A’−12)成分という。)においては、酸解離性溶解抑制基を含む(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位(a’5)を有する樹脂が好ましい。α−低級アルキル基については上記と同様である。
構成単位(a’5)の酸解離性溶解抑制基は、露光前の樹脂成分全体をアルカリ不溶とするアルカリ溶解抑制性を有すると同時に、露光後に(B’)成分から発生した酸の作用により解離し、(A’−12)成分全体をアルカリ可溶性へ変化させる基である。
また、(α−低級アルキル)アクリル酸エステル樹脂成分においては、構成単位(a’5)における酸解離性溶解抑制基が、(B’)成分から発生した酸により解離すると、カルボン酸を生成する。この生成したカルボン酸の存在により、レジストパターン上に形成される被覆膜との密着性が向上する。
ここで、「第3級アルキルエステルを形成する基」とは、アクリル酸のカルボキシ基の水素原子と置換することによりエステルを形成する基である。すなわちアクリル酸エステルのカルボニルオキシ基[−C(O)−O−]の末端の酸素原子に、鎖状または環状の第3級アルキル基の第3級炭素原子が結合している構造を示す。この第3級アルキルエステルにおいては、酸が作用すると、酸素原子と第3級炭素原子との間で結合が切断される。
なお、第3級アルキル基とは、第3級炭素原子を有するアルキル基である。
鎖状の第3級アルキルエステルを形成する基としては、例えばtert−ブチル基、tert−アミル基等が挙げられる。
環状の第3級アルキルエステルを形成する基としては、後述する「脂環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示するものと同様のものが挙げられる。
このような環状または鎖状のアルコキシアルキル基としては、1−メトキシメチル基、1−エトキシエチル基、1−イソプロポキシエチル、1−シクロヘキシルオキシエチル基、2−アダマントキシメチル基、1−メチルアダマントキシメチル基、4−オキソ−2−アダマントキシメチル基、1−アダマントキシエチル基、2−アダマントキシエチル基等が挙げられる。
ここで、「脂肪族」および「脂肪族環式基」は、上記で定義した通りである。
脂肪族環式基としては、単環または多環のいずれでもよく、例えばArFレジスト等において、多数提案されているものの中から適宜選択して用いることができる。耐エッチング性の点からは多環の脂環式基が好ましい。また、脂環式基は炭化水素基であることが好ましく、特に飽和の炭化水素基(脂環式基)であることが好ましい。
単環の脂環式基としては、例えば、シクロアルカンから1個の水素原子を除いた基が挙げられる。多環の脂環式基としては、例えばビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどから1個の水素原子を除いた基などを例示できる。
具体的には、単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。多環の脂環式基としては、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個の水素原子を除いた基などが挙げられる。
これらの中でもアダマンタンから1個の水素原子を除いたアダマンチル基、ノルボルナンから1個の水素原子を除いたノルボルニル基、トリシクロデカンからの1個の水素原子を除いたトリシクロデカニル基、テトラシクロドデカンから1個の水素原子を除いたテトラシクロドデカニル基が工業上好ましい。
また、(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位であって、そのエステル部に上記した環状のアルコキシアルキル基を有する単位、具体的には2−アダマントキシメチル基、1−メチルアダマントキシメチル基、4−オキソ−2−アダマントキシメチル基、1−アダマントキシエチル基、2−アダマントキシエチル基等の置換基を有していても良い脂肪族多環式アルキルオキシ低級アルキル(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される単位から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
R1の低級アルキル基としては、炭素数1〜5の直鎖又は分岐状のアルキル基が好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。中でも、メチル基、エチル基であることが工業的に入手が容易であることから好ましい。
R2及びR3の低級アルキル基は、それぞれ独立に、炭素数1〜5の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。中でも、R2およびR3が共にメチル基である場合が工業的に好ましい。具体的には、2−(1−アダマンチル)−2−プロピルアクリレートから誘導される構成単位を挙げることができる。
環状の第3級アルキル基としては、前述の「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示したものと同じであり、2−メチル−2−アダマンチル基、2−エチル−2−アダマンチル基、2−(1−アダマンチル)−2−プロピル基、1−エチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロペンチル基等を挙げることができる。
また、基−COOR4は、式中に示したテトラシクロドデカニル基の3または4の位置に結合していてよいが、結合位置は特定できない。また、アクリレート構成単位のカルボキシ基残基も同様に式中に示した8または9の位置に結合していてよい。
(A’−12)成分中、構成単位(a’5)の割合は、(A’−12)成分を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%であることが好ましく、30〜50モル%がより好ましく、35〜45モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによってパターンを得ることができ、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a’6)において、α位の炭素原子に結合しているのは、低級アルキル基または水素原子である。α位の炭素原子に結合している低級アルキル基は、構成単位(a’5)の説明と同様であって、好ましくはメチル基である。
構成単位(a’6)としては、アクリル酸エステルのエステル側鎖部にラクトン環からなる単環式基またはラクトン環を有する多環の環式基が結合した構成単位が挙げられる。なお、このときラクトン環とは、−O−C(O)−構造を含むひとつの環を示し、これをひとつの目の環として数える。したがって、ここではラクトン環のみの場合は単環式基、さらに他の環構造を有する場合は、その構造に関わらず多環式基と称する。
構成単位(a’6)としては、例えば、γ−ブチロラクトンから水素原子1つを除いた単環式基や、ラクトン環含有ビシクロアルカンから水素原子を1つ除いた多環式基を有するもの等が挙げられる。
構成単位(a’6)として、より具体的には、例えば以下の一般式(IV”)〜(VII”)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
構成単位(a’6)は1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
(A’−12)成分中、構成単位(a’6)の割合は、(A’−12)成分を構成する全構成単位の合計に対して、20〜60モル%が好ましく、20〜50モル%がより好ましく、30〜45モル%が最も好ましい。下限値以上とすることによりリソグラフィー特性が向上し、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a’7)により、(A’−12)成分全体の親水性が高まり、現像液との親和性が高まって、露光部でのアルカリ溶解性が向上し、解像性の向上に寄与する。また、パターンとの密着性が高い被覆膜を形成することができる。
構成単位(a’7)において、α位の炭素原子に結合しているのは、低級アルキル基または水素原子である。α位の炭素原子に結合している低級アルキル基は、構成単位(a’5)の説明と同様であって、好ましくはメチル基である。
極性基としては、水酸基、シアノ基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられ、特に水酸基が好ましい。
多環式基としては、前述の(a’5)単位である「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示した脂肪族環式基のうち、多環式のものから適宜選択して用いることができる。
構成単位(a’7)としては、下記一般式(VIII”)〜(IX”)から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中でも、nが1であり、水酸基がアダマンチル基の3位に結合しているものが好ましい。
(A’−12)成分中、構成単位(a’7)の割合は、(A’−12)成分を構成する全構成単位の合計に対して、10〜50モル%が好ましく、15〜40モル%がより好ましく、20〜35モル%がさらに好ましい。下限値以上とすることによりリソグラフィー特性が向上し、上限値以下とすることにより他の構成単位とのバランスをとることができる。
構成単位(a’8)としては、上述の構成単位(a’5)〜(a’7)に分類されない他の構成単位であれば特に限定するものではない。
例えば多環の脂肪族炭化水素基を含み、かつ(α−低級アルキル)アクリル酸エステルから誘導される構成単位等が好ましい。該多環の脂肪族炭化水素基は、例えば、前述の「脂肪族環式基を含有する酸解離性溶解抑制基」で例示した脂肪族環式基のうち、多環式のものから適宜選択して用いることができる。特にトリシクロデカニル基、アダマンチル基、テトラシクロドデカニル基、ノルボルニル基、イソボルニル基から選ばれる少なくとも1種以上であると、工業上入手し易い等の点で好ましい。構成単位(a’8)としては、酸非解離性基であることが最も好ましい。
構成単位(a’8)として、具体的には、下記(X”)〜(XII”)の構造のものを例示することができる。
(A’−1)成分は、質量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィによるポリスチレン換算質量平均分子量、以下同様。)30000以下であることが好ましく、20000以下であることが好ましく、12000以下であることがさらに好ましい。下限値は、2000超であればよく、パターン倒れの抑制、解像性向上等の点で、好ましくは4000以上、さらに好ましくは5000以上とされる。
(A’−2)成分としては、分子量が500以上2000以下であって、親水性基を有するとともに、上述の(A−1)成分の説明で例示したような酸解離性溶解抑制基XまたはX’を有する低分子化合物が好ましい。具体的には、複数のフェノール骨格を有する化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基XまたはX’で置換したものが挙げられる。
(A’−2)成分は、例えば、非化学増幅型のg線やi線レジストにおける増感剤や耐熱性向上剤として知られている低分子量フェノール化合物の水酸基の水素原子の一部を上記酸解離性溶解抑制基で置換したものが好ましく、そのようなものから任意に用いることができる。
かかる低分子量フェノール化合物としては、例えば、次のようなものが挙げられる。
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)メタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−2−(2’,3’,4’−トリヒドロキシフェニル)プロパン、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−4−ヒドロキシフェニルメタン、ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシ−6−メチルフェニル)−3,4−ジヒドロキシフェニルメタン、1−[1−(4−ヒドロキシフェニル)イソプロピル]−4−[1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾールまたはキシレノールなどのフェノール類のホルマリン縮合物の2、3、4核体などが挙げられる。勿論これらに限定されるものではない。
なお、酸解離性溶解抑制基も特に限定されず、上記したものが挙げられる。
(B’)成分としては、従来、化学増幅型レジストにおける酸発生剤として公知のものの中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような酸発生剤としては、これまで、ヨードニウム塩やスルホニウム塩などのオニウム塩系酸発生剤、オキシムスルホネート系酸発生剤、ビスアルキルまたはビスアリールスルホニルジアゾメタン類、ポリ(ビススルホニル)ジアゾメタン類などのジアゾメタン系酸発生剤、ニトロベンジルスルホネート系酸発生剤、イミノスルホネート系酸発生剤、ジスルホン系酸発生剤など多種のものが知られている。
(B’)成分の使用量は、(A’)成分100質量部に対し、1〜20質量部、好ましくは2〜10質量部とされる。上記範囲の下限値以上とすることにより充分はパターン形成が行われ、上記範囲の上限値以下であれば溶液の均一性が得られやすく、良好な保存安定性が得られる。
化学増幅型レジスト組成物には、パターンパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるために、さらに任意成分として、含窒素有機化合物(D’)(以下、(D’)成分という。)を配合させることができる。
この(D’)成分は、既に多種多様なものが提案されているので、公知のものから任意に用いれば良いが、アミン、特に第2級低級脂肪族アミンや第3級低級脂肪族アミンが好ましい。
ここで、低級脂肪族アミンとは炭素数5以下のアルキルまたはアルキルアルコールのアミンを言い、この第2級や第3級アミンの例としては、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリペンチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンなどが挙げられるが、特にトリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミンのような第3級アルカノールアミンが好ましい。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D’)成分は、(A’)成分100質量部に対して、通常0.01〜5.0質量部の範囲で用いられる。
有機カルボン酸としては、例えば、マロン酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、安息香酸、サリチル酸などが好適である。
リンのオキソ酸若しくはその誘導体としては、リン酸、リン酸ジ‐n‐ブチルエステル、リン酸ジフェニルエステルなどのリン酸又はそれらのエステルのような誘導体、ホスホン酸、ホスホン酸ジメチルエステル、ホスホン酸‐ジ‐n‐ブチルエステル、フェニルホスホン酸、ホスホン酸ジフェニルエステル、ホスホン酸ジベンジルエステルなどのホスホン酸及びそれらのエステルのような誘導体、ホスフィン酸、フェニルホスフィン酸などのホスフィン酸及びそれらのエステルのような誘導体が挙げられ、これらの中で特にホスホン酸が好ましい。
(E’)成分は、(A’)成分100質量部当り、通常0.01〜5.0質量部の割合で用いられる。
(S’)成分としては、使用する各成分を溶解し、均一な溶液とすることができるものであればよく、従来、レジスト組成物の溶剤として公知のものの中から任意のものを1種又は2種以上適宜選択して用いることができる。
具体例としては、γ−ブチロラクトン等のラクトン類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2−ヘプタノンなどのケトン類、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジプロピレングリコール、又はジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル又はモノフェニルエーテルなどの多価アルコール類及びその誘導体や、ジオキサンのような環式エーテル類や、乳酸メチル、乳酸エチル(EL)、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどのエステル類などを挙げることができる。これらの中でも、PGMEA、EL、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)が好ましい。これらの有機溶剤は単独で用いてもよく、2種以上の混合溶剤として用いてもよい。
(S’)成分の使用量は特に限定しないが、化学増幅型レジスト組成物が、支持体上に塗布可能な濃度の液体となる量が用いられる。
上記鋳型形成用材料を用いる場合、鋳型の形成には、微細パターンを高精度で形成できることから、リソグラフィー法が好ましく用いられる。
リソグラフィー法による鋳型の形成は、従来公知の手順で行うことができ、たとえば化学増幅型レジスト組成物を用いる場合は以下の様にして行うことができる。
まず、基材上に、レジスト組成物をスピンナーなどで塗布し、80〜150℃の温度条件下、プレベーク(ポストアプライベーク(PAB))を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施し、レジスト膜を形成する。該レジスト膜の膜厚は、一概に限定することはできないが、数十nm〜数μm程度の範囲で決定することができ、好ましくは100〜800nmの範囲である。
次に、該レジスト膜に対し、市販の露光装置などを用いて選択的露光を行った後、80〜150℃の温度条件下、PEB(露光後加熱)を40〜120秒間、好ましくは60〜90秒間施す。次いでこれをアルカリ現像液、例えば0.1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理する。このようにして、鋳型(レジストパターン)を得ることができる。
また、鋳型の形成方法は、リソグラフィー法に限定されない。例えば、インプリント法(予め微細加工された基板を押し付けることで別の基板に構造転写ることで作成された微細構造を利用する方法)等も利用可能である。該インプリント法は、鋳型形成用材料が感放射線性を有する場合であっても有さない場合であっても適用可能である。
本発明においては、鋳型表面に被覆膜を形成する前に、鋳型の表面に活性化処理を施すことが好ましい。活性化処理を施すことにより、鋳型表面の親水性が向上(活性化)し、該表面に、高密度に、高い密着性で被覆膜を形成でき、鋳型の形状が精度良く複写または転写された形状の被覆膜を形成できる。
活性化処理としては、従来公知の方法を利用でき、たとえば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。これらの中でも、処理時間が短く、簡便であることから、酸素プラズマ処理が好ましい。また、酸素プラズマ処理を行うことにより、鋳型表面の活性化のみならず、その処理条件を調節することにより、鋳型の高さ、ひいては形成される構造体の高さを調節できる。たとえば酸素プラズマ処理の処理時間が長いほど、鋳型の高さが低くなり、より微細な構造体が得られる。
例えば、酸素プラズマ処理を用いる場合、酸素プラズマ処理時の圧力は、1.33〜66.5Pa(10〜50mtorr)が好ましく、13.3〜26.6Pa(100〜200mtorr)がより好ましい。また、酸素プラズマ処理時のプラズマ出力は、5〜500Wが好ましく、5〜50Wがより好ましい。また、酸素プラズマ処理時の処理時間は、1〜30秒が好ましく、2〜5秒がより好ましい。また、酸素プラズマ処理の温度は、−30〜300℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、最も好ましくは室温(5〜40℃)である。酸素プラズマ処理に用いるプラズマ装置は、特に限定されず、例えば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
(金属化合物(W))
金属化合物(W)は、加水分解により水酸基を生成し得る化合物である。
かかる金属化合物(W)を含有する金属酸化物層形成用材料を鋳型表面に塗布すると、または塗布後さらに水、好ましくは脱イオン水を塗布すると、低温(たとえば室温程度)であっても、金属化合物(W)が大気中の水分や塗布した水と反応し、加水分解により水酸基を生成する。そして、生成した水酸基同士が脱水縮合し、複数の金属化合物(W)分子同士が結合して、密度の高い緻密な金属酸化物層が形成される。このような金属酸化物層は、高密度に金属酸化物を含有していることから、耐エッチング性に優れており、また、低温で被覆可能であることから、被覆される鋳型の形状を損なうこともない。
さらに、前記鋳型がカルボキシ基、水酸基等の反応基を有する有機物からなるものであると、該鋳型表面の反応基と、金属酸化物(W)から生成した水酸基とが反応(脱水縮合、吸着等)して、鋳型表面に強固に密着した金属酸化物層が形成される。
官能基は金属原子に直接結合していることが望ましい。
官能基の数は、金属原子1つに対して2以上であることが好ましく、2〜4であることが好ましく、特には4であることが望ましい。2以上の官能基を有することにより、加水分解によって生成された水酸基どうしが脱水縮合し、複数の金属化合物(W)分子同士が連続的に結合して強固な金属酸化物層が形成される。
アルコキシ基としては、炭素数1〜5の直鎖状または分岐状の低級アルコキシ基、たとえばメトキシ基(−O−Me)、エトキシ基(−O−Et)、n−プロポキシ基(−O−nPr)、イソプロポキシ基(−O−iPr)、n−ブトキシ基(−O−nBu)等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、中でも塩素原子が好ましい。
上記の中で、アルコキシ基、イソシアネート基は、特に、当該金属酸化物層形成用材料がパターン上に塗布されて金属酸化物層が形成される場合に、鋳型表面にカルボキシ基、水酸基等の反応基が存在すると、これと縮合反応するため好ましい。これにより、加水分解後に形成される水酸基と鋳型表面の反応基とが縮合反応して、被覆膜と鋳型表面とが強固に密着する。
上記の中で、カルボニル基、ハロゲン原子は、特に、当該金属酸化物層形成用材料が鋳型上に塗布されて被覆膜が形成される場合に、鋳型表面にカルボキシ基、水酸基等の反応基が存在すると、これに吸着するため好ましい。これにより、加水分解後に形成される水酸基と該表面の反応基とが吸着し、被覆膜と鋳型表面とが強固に密着する。
これらの中でも、イソシアネート基、ハロゲン原子(特に塩素原子)が、高活性で、加熱処理を特に行わずとも簡便に被覆膜を形成することができるため好ましく、特に、イソシアネート基が好ましい。
金属化合物(W)を構成する金属として、好適なものとしては、例えばチタン、ジルコニウム、アルミニウム、ニオブ、ケイ素、ホウ素、ランタニド、イットリウム、バリウム、コバルト、鉄、ジルコニウム、タンタル等が挙げられ、チタン、ケイ素が好ましく、特にケイ素が好ましい。
また、金属化合物(W)中の金属原子の数は1であっても2以上であってもよく、好ましくは1である。
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「アルキル基」は、特に断りがない限り、直鎖状、分岐鎖状および環状の1価の飽和炭化水素基を包含するものとする。
アルコキシ基を有する金属化合物(以下、「金属アルコキシド類」ということがある)としては、以下のものが挙げられる。
例えば、チタンブトキシド(Ti(O−nBu)4)、ジルコニウムプロポキシド(Zr(O−nPr)4)、アルミニウムブトキシド(Al(O−nBu)3)、ニオブブトキシド(Nb(O−nBu)5)、シリコンテトラメトキシド(Si(O−Me)4)、ホウ素エトキシド(B(O−Et)3)等の希土類金属以外の金属アルコキシド化合物;
ランタニドイソプロポキシド(Ln(O−iPr)3)、イットリウムイソプロポキシド(Y(O−iPr)3)等の希土類金属の金属アルコキシド化合物;
バリウムチタンアルコキシド(BaTi(OR60)x)等のダブルアルコキシド化合物(なお、ここでの「R60」は炭素数1〜5の低級アルキル基であり、Xは2〜4の整数である);
メチルトリメトキシシラン(MeSi(O−Me)3)、ジエチルジエトキシシラン(Et2Si(O−Et)2)等の、2個以上のアルコキシ基を有し、かつアルコキシ基以外の有機基を有する金属アルコキシド化合物;
アセチルアセトン等の配位子を有し、2個以上のアルコキシ基を有する金属アルコキシド化合物等が挙げられる。
さらには、チタンブトキシドテトラマー(C4H9O[Ti(OC4H9)2O]4C4H9)等の、複数個または複数種の金属元素を有する二核またはクラスター型のアルコキシド化合物や、酸素原子を介して一次元に架橋した金属アルコキシド化合物に基づく高分子等も、上記金属アルコキシド類に含まれる。
具体的には、テトライソシアネートシラン(Si(NCO)4)、チタンテトライソシアネート(Ti(NCO)4)、ジルコニウムテトライソシアネート(Zr(NCO)4)、アルミニウムトリイソシアネート(Al(NCO)3)等が挙げられる。
ハロゲン原子を有する化合物は金属錯体であってもよい。
具体的には、テトラクロロチタン(TiCl4)、テトラクロロシラン(SiCl4)等が挙げられる。また、金属錯体として、塩化コバルト(CoCl2)等も挙げられる。
該ケイ素化合物の1分子中のケイ素の数は1であっても2以上であってもよく、好ましくは1である。中でも、以下の一般式(w−1)で表される化合物が好ましい。
SiWa ・・・(w−1)
[式中、aは2〜4の整数、Wはイソシアネート基(NCO基)またはハロゲン原子を示し、複数のWは相互に同じであっても異なっていてもよい。]
Wはイソシアネート基またはハロゲン原子であり、ハロゲン原子については上記と同様であり、塩素原子であることが望ましい。これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。
溶剤(S)としては、前記金属化合物(W)を溶解するものであればよく、特に限定されないが、前記金属化合物(W)と反応する官能基を有さない溶剤(S1)を含有することが好ましい。
溶剤(S1)としては、金属化合物(W)と反応する官能基を有さず、かつ使用する金属化合物(W)を溶解できるものであればよく、従来公知の有機溶剤から選択して用いることができる。
金属化合物(W)と反応する官能基としては、ビニル基等の炭素−炭素二重結合を有する基や、水酸基、カルボキシ基、ハロゲン原子などが挙げられる。溶剤(S1)がかかる官能基を有さないものであると、金属化合物(W)が溶剤(S)中において安定に存在するため、金属酸化物層形成能に優れる。また、金属酸化物層を形成する際の被覆選択性が向上する。すなわち、前記鋳型形成用材料や、後述する工程(3)で有機膜の形成に用いられる材料には、通常、水酸基等の、金属化合物(W)と反応する官能基を比較的多く含む有機化合物が用いられており、これらの官能基が、前記鋳型形成用材料を用いて形成される鋳型や有機膜の表面に存在している。そのため、被覆膜を形成する際、金属酸化物(W)が溶解した金属酸化物層形成用材料を、当該鋳型や有機膜上に塗布すると、それらの表面には、化学的吸着により比較的強く金属化合物(W)が吸着する。一方、このとき、基材表面にも金属酸化物層形成用材料が接触するが、基材表面には、金属化合物(W)と反応する官能基が存在しないか、存在したとしてもわずかであるため、金属化合物(W)と基材表面との間に化学的吸着は生じにくい。そのため、基材表面よりも前記鋳型や有機膜の表面の方に金属酸化物層が形成されやすくなる(被覆選択性が向上する)。特に、金属酸化物層形成用材料を前記鋳型または有機膜上に塗布した後、有機溶剤で洗浄(リンス)を行うと、前記鋳型または有機膜表面に化学的吸着した金属化合物(W)はそれらの表面に均一に残り、基材表面の金属化合物(W)は洗い流され、結果、前記鋳型または有機膜の表面に、より選択的に、均一な金属酸化物層を形成することが可能となる。
さらに、化学的吸着が生じていることから、前記鋳型または有機膜の表面に形成される金属酸化物層は、当該表面との間の密着性が強固なものであり、エッチング時に剥がれが生じにくい。
ここで、本明細書における「化学的吸着」とは、レジストパターン等のパターン表面に存在する、金属化合物(W)と反応する官能基(好ましくは水酸基またはカルボキシ基)と、金属化合物(W)との間に化学結合(共有結合、水素結合、配位結合等)または静電気による結合(イオン結合等)が形成されて、パターン表面に、金属化合物(W)やその金属イオンが結合している状態を意味する。
また、「物理的吸着」とは、ファン・デル・ワールス力などの弱い分子間力により、パターンや下層膜の表面に、金属化合物(W)やその金属イオンが結合している状態を意味する。
特に、後述するように、金属酸化物層形成用材料の塗布後、表面の洗浄(リンス処理)を行うと、非被覆部基材に対するエッチング選択比がさらに向上する。これは、洗浄を行うまでの間、溶剤(S)がほとんど揮発することなく残っているため、化学的吸着等により比較的強く付着しているパターン表面の金属化合物(W)は洗浄してもそのまま残るが、物理的吸着等により比較的弱く付着している非被覆部基材表面の金属化合物(W)は洗浄により除去され、結果、非被覆部基材表面には金属酸化物層がほとんど形成されないためと推測される。
溶剤(S1)の沸点の上限は、特に制限はないが、塗布性等を考慮すると、300℃以下が好ましく、250℃以下がより好ましい。
脂肪族化合物としては、その構造中に環を含まない鎖式化合物であってもよく、また、その構造中に環を有する環式化合物であってもよく、環式化合物が好ましい。また、環式化合物は、炭化水素であることが好ましく、特に飽和の炭化水素であることが好ましい。このような環式化合物としては、例えば、モノシクロアルカンや、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカン、これらの環にアルキル基等の置換基が結合した化合物などを例示できる。
鎖式化合物としては、炭素数6〜10のアルカン系溶剤が好ましく、該アルカン系溶剤としては、たとえば、n−ヘキサン(沸点約69℃)、n−ヘプタン(沸点約98℃)等が挙げられる。
環式化合物としては、たとえば、下記一般式(s−1)で表される化合物等が挙げられる。
R21〜R23のうちの少なくとも2つのアルキル基は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。
本発明においては、R21〜R23の少なくとも1つが分岐状のアルキル基であることが好ましく、特に、少なくとも1つがイソプロピル基であることが好ましい。
化合物(s−1)は、特に、イソプロピル基およびメチル基の両方を有することが好ましい。
ここで、アルキル基が、「シクロヘキサン環における当該アルキル基が結合した炭素原子以外の炭素原子と結合して環を形成している」とは、当該アルキル基から水素原子を1つ除いた基(アルキレン基)によって、シクロヘキサン環上の、当該アルキル基が結合した炭素原子と、それ以外の炭素原子との間が架橋されていることを意味する。
溶剤(S)中、溶剤(S1)の割合は、50〜100質量%の範囲内であることが好ましく、80〜100質量%がより好ましく、最も好ましくは100質量%である。
溶剤(S2)としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;トルエン、ベンゼン、クメン等の芳香族化合物などを挙げることができ、緻密な膜が形成できる点から、クメン(沸点約152℃)が好ましい。
溶剤(S2)は1種単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
金属酸化物層形成用材料には、金属化合物(W)および溶剤(S)の他に、任意成分を配合してもよい。
任意成分としては、たとえば有機化合物が挙げられる。これにより、形成される金属酸化物層が、金属酸化物とともに有機化合物を含むものとなる。
有機化合物は、上述した溶剤(S)に溶解するものであれば、特に制限はない。ここでいう溶解とは、有機化合物単独で溶解する場合に限らず、4−フェニルアゾ安息香酸のように、金属アルコキシド類との複合化によりクロロホルム等の溶媒に溶解する場合も含まれる。
有機化合物の分子量については特に制限はない。
この様な有機化合物として、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸等の水酸基やカルボキシ基を有する高分子化合物;デンプン、グリコゲン、コロミン酸等の多糖類;グルコース、マンノース等の二糖類、単糖類;末端に水酸基やカルボキシ基を持つポルフィリン化合物やデンドリマー等が好ましく用いられる。
カチオン性高分子化合物の具体例として、PDDA(ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド)、ポリエチレンイミン、ポリリジン、キトサン、末端にアミノ基を持つデンドリマー等を挙げることができる。
有機化合物は1種または2種以上混合して用いることができる。
有機化合物を配合する場合、その配合量は、金属化合物(W)100質量部に対して0.1〜50質量部が好ましく、1〜20質量部が特に好ましい。
また、上記金属酸化物層形成用材料によれば、低温処理(加熱処理して被覆膜を形成しても良いし、加熱処理しなくても金属酸化物層を形成することができる)で鋳型または有機膜表面の被覆が可能であり、その処理方法も簡便なので、生産効率の向上、コストダウンを図ることができ、種々の材料からなる鋳型に適用可能である。
工程(1)において、上記金属酸化物層形成用材料を用いて金属酸化物層を形成する場合、該金属酸化物層は、上記金属酸化物層形成用材料を鋳型の表面に塗布して塗膜を形成した後、該塗膜を乾燥することによって形成できる。
すなわち、塗膜を形成した後、乾燥が完了するまでの間に、空気中の水分により塗膜中の金属化合物(W)が徐々に加水分解して水酸基が生じ、この水酸基が脱水縮合することにより、鋳型の表面に薄膜(金属酸化物層)が形成される。ここで、金属酸化物層は、基本的に金属酸化物から構成される層である。金属酸化物層形成用材料が上述したように有機物を含む場合には、形成される金属酸化物層中に、金属酸化物とともに有機物が含まれる。かかる方法によれば、低温(たとえば室温(20〜25℃))で膜が形成できる。
なお、金属酸化物層を形成する操作は、反応性制御の点から、不活性ガス雰囲気下で処理することが望ましい。このとき、雰囲気中に水分が含まれていない場合には、膜を形成するために、後述する加水処理を行う必要がある。
鋳型上に金属酸化物層形成用材料を塗布する際の温度(塗布温度)は、用いられる金属化合物(W)の活性によって異なり、一概に限定することはできないが、通常、0〜100℃の範囲内で決定すればよい。
また、鋳型上に金属酸化物層形成用材料を塗布してから乾燥するまで(塗布、および必要に応じて行われる洗浄、吸着等の処理等を含む)の時間、すなわち加水分解前の塗膜と鋳型との接触時間と、その間の温度(接触温度)は、用いられる金属化合物(W)の活性によって異なり、一概に限定することはできないが、通常、数秒から数時間で、上記塗布温度と同様の範囲内で決定すればよい。
特に、ベーク処理を行うと、鋳型表面に形成される金属酸化物層の均一性が向上するため好ましい。これは、ベーク処理により、塗膜中に存在する金属化合物(W)の加水分解により生じた複数の水酸基間で、あるいは当該水酸基と鋳型との間で架橋が生じることにより、金属酸化物層がより緻密な膜となり、その強度や鋳型表面への密着性が向上するためと考えられる。
ベーク処理において、ベーク温度は、下限としては、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上がさらに好ましい。
ベーク温度が100℃以上であると、より強固な金属酸化物層が形成できる。これは、金属化合物(W)の加水分解により生じた複数の水酸基間で、あるいは当該水酸基とパターンとの間で架橋が生じやすいためと考えられる。
ベーク温度の上限は、特に制限はなく、当該金属酸化物層形成用材料により被覆される鋳型を構成する材料の耐熱性等を考慮して決定すればよく、好ましくは200℃以下であり、より好ましくは190℃以下、さらに好ましくは170℃以下である。
ベーク時間は、特に制限はないが、被覆後ベーク処理による効果、鋳型形状の安定性等を考慮すると、30〜300秒間の範囲内が好ましく、60〜180秒間がより好ましい。
さらに、上述したように、洗浄を行うことにより、金属酸化物層が、膜厚が薄くて均一なものとなる。すなわち、洗浄を行うと、鋳型上の、化学的に吸着していない余分な金属化合物(W)が除去され、一方、化学的吸着等により比較的強く鋳型表面に結合した金属化合物(W)は鋳型表面に均一に残る。そのため、ナノメーターレベルの金属酸化物層が、均一な膜厚で、極めて精度良く、かつ高い再現性で形成される。
特に、洗浄時にレジストパターン等の鋳型と接触することから、有機溶剤(S”)は、当該鋳型を溶解しないものを選択して用いることが好ましい。これにより、当該鋳型表面に有機溶剤(S”)を塗布した際に、鋳型の形状を損ないにくい。有機溶剤(S”)としては、特に、上述した溶剤(S)が好ましい。
洗浄条件(洗浄時間、有機溶剤(S”)の使用量等)は、洗浄方法、有機溶剤(S”)の種類等を考慮して適宜設定すればよい。
たとえばスピンコート法による洗浄を行う場合、たとえば100〜5000rpm、1〜100秒間程度の範囲内で適宜調節すればよい。
洗浄は、塗膜中の溶剤(S)が完全に揮発する前に行うことが好ましい。塗膜中の溶剤(S)が完全に揮発していないかどうかは、視認により確認できる。
加水処理の手段は、公知の方法が特に限定されずに使用できる。たとえば、塗膜を水と接触させるゾルゲル法が最も一般的である。より具体的には、塗膜表面に水を塗布する方法や、塗膜を形成した積層体を少量の水を含んだ有機溶媒に浸漬する方法が挙げられる。なお、金属化合物(W)として水との反応性が高いものを含む場合には、大気中に放置することにより、大気中の水蒸気と反応し、加水分解されるため、加水処理は行わなくてもよい。
水としては、不純物等の混入を防止し、高純度の金属酸化物を生成するために、脱イオン水を用いることが好ましい。
また、加水処理において、酸や塩基等の触媒を用いることにより、これらの工程に必要な時間を大幅に短縮することも可能である。
金属酸化物層の厚さは、好ましくは0.1nm以上であり、より好ましくは0.5〜50nmであり、さらに好ましくは1〜30nmである。0.1nm以上とすることにより、エッチング、たとえば酸素プラズマエッチング等のドライエッチングに対する十分な耐性が得られる等の効果がある。
金属酸化物層の厚さは、たとえば、金属酸化物層形成用材料の塗布、洗浄および加水処理を繰り返して行うことにより調整できる。すなわち、金属酸化物層形成用材料を塗布して塗膜を形成し、洗浄し、必要に応じて放置し、そして加水分解処理を行う一連の操作を繰り返して行うことにより、所望の厚さを有する均一な薄膜を形成することができる。
この様な操作によって、例えば数nmから数十nm、条件によっては数百nmの厚さの金属酸化物層を精度良く形成できる。
例えば金属化合物(W)として、シリコンテトライソシアネート、チタンブトキシド等の一種類の金属原子を含有する金属アルコキシドを含む金属酸化物層形成用材料を用いた場合、接触条件により、数オングストロームの厚みの薄膜を逐次積層化することができる。
この場合、1サイクルあたりの膜厚の増加は金属酸化物層形成用材料の積層回数に対応している。一方、金属化合物(W)として、アルコキシドゲルの微粒子等を用いると、1サイクルあたり、60nm程度の厚みの薄膜を積層化することもできる。また、スピンコート法により金属酸化物層形成用材料による塗膜を形成する場合は、用いる溶媒や金属化合物(W)の濃度、スピン速度等を変えることにより、膜厚を数nmから200nm程度まで任意に制御することができる。
その際、1サイクル毎に使用する金属化合物(W)の種類を変えることにより、異なる種類の金属酸化物(W)からなる薄膜が積層された多層構造の金属酸化物層を得ることもできる。
無電解めっきによる金属層の形成は、たとえば、所定の金属種のイオンを含むめっき液を鋳型表面に接触させ、該イオンを還元する(金属を析出させる)ことにより実施でき、これにより、前記所定の金属種で構成される金属層が形成される。
目的とする金属種が、直接無電解めっきが困難な金属種(たとえば金などの貴金属)である場合、あらかじめ、該金属種よりもイオン化傾向の高い金属種(たとえばニッケル)を用いて無電解めっきにより金属層を形成し、その後、該金属層の金属種を目的とする金属種に置換することで、容易に目的とする金属種の金属層を形成できる。
無電解めっきの金属種としては、特に限定されず、一般的に無電解めっきの金属種として用いられているものが使用でき、たとえば金、銀、銅、ニッケル、コバルト、すず、白金族(パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム)等が挙げられる。これらの中でも、一般的にめっき技術が確立していることから、金、銀、銅、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
金属層を構成する金属としては、導電性を持つ構造体が得られることから、金、銀および銅からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。すなわち、金属層として、金層、銀層および銅層のうちのいずれか1種または2種以上を有することが好ましい。
また、金属層を構成する金属としては、強磁性を有する構造体が得られることから、コバルトも好ましい。
金属種のイオンの還元は、公知の方法により行うことができる。具体例としては、還元反応の触媒となるもの(無電解めっきにおける触媒)を使用する方法、めっき金属よりもイオン化傾向の高い金属を置換する方法等が挙げられる。
無電解めっきにおける触媒としては、一般的に、金属の微粒子や薄膜等が用いられる。触媒となる金属の種類は、使用する金属種の種類によって異なっており、通常、使用する金属種と同じか、またはそれよりもイオン化しやすい金属が触媒として用いられる。
具体例としては、たとえば金属種が銀の場合は主に銀触媒が用いられ、金属種が銅の場合は主に銀触媒、銅触媒が用いられ、金属種がニッケル、コバルト、金等の場合は主にパラジウム触媒、すず触媒等が用いられる。触媒としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
鋳型の表面への触媒を導入は、公知の方法により行うことができる。たとえば、触媒となる金属の塩(たとえば硝酸銀、金属塩化物等)の水溶液と鋳型表面に接触させて該塩を鋳型表面に吸着させ、該塩を還元する。これにより、鋳型表面に金属微粒子を導入できる。
金属層の厚さは、形成しようとする構造体の寸法に応じて適宜設定すればよく、前記金属酸化物層と同様の厚さであってよい。
たとえば、詳しくは後述するが、図1に示す実施形態のように、工程(1)(図1中の工程(b))の後、そのまま工程(2)(図1中の工程(c))を行う場合は、1つの鋳型から4つの構造体が形成できるが、図3に示す実施形態のように、工程(1)(図3中の工程(b))の後、被覆膜の一部および鋳型を除去(図3中の工程(c))し、その後、工程(2)(図3中の工程(d))を行う場合は、1つの鋳型から6つの構造体が形成できる。
被覆膜の一部を除去する工程において、除去する部分は特に限定されず、いずれの部位をどのように除去してもよい。好ましくは、被覆膜の一部を含む1つの平面を除去するのが好ましい。この場合、前記1つの平面は、基材に平行であってもよいし、垂直であってもよいし、適当な角度の傾斜を持っていてもよい。もちろん、これ以外の除去であってもよいことはいうまでもない。
特に、矩形の鋳型を採用した場合、その表面に設けられた被覆膜のうち、上端部(本明細書において上面、天面ということもある。)を除去することが好ましい。これにより、鋳型表面の被覆膜のうちの側面部分が残り、基板上に自己支持的な構造体を形成できる。
被覆膜の一部を除去する際は、全体の1〜99%を除去するのが好ましく、5〜95%を除去するのがより好ましい。
また被覆膜の一部を除去する際には、該被覆膜の内側の鋳型の一部が露出するように除去することが好ましい。
また、被覆膜の一部を除去する際に、同時に鋳型の一部または全部を除去してもよい。
例えば、CF3ガスを用いたプラズマエッチングの場合、エッチング時の圧力は、1〜20Pa(7.5〜150mtorr)、好ましくは2〜10Pa(15〜75mtorr)であることが適当である。また、エッチング時のプラズマ出力は、5〜500W、好ましくは10〜50Wであることが適当である。また、エッチングの処理時間は、被覆膜の種類、膜厚等により適宜設定すればよい。また、エッチングの温度は、好ましくは−30〜300℃であり、さらに好ましくは0〜100℃であり、最も好ましくは室温(5〜40℃)である。エッチングに用いるプラズマ装置は、特に限定されず、例えば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
鋳型を除去する方法は、従来から知られている鋳型の除去方法を広く採用でき、鋳型の材質に応じて適宜選択すればよい。たとえば被覆膜が金属酸化物層からなり、鋳型の材質が金属である場合、たとえば酸を用いて当該金属を溶出させることにより、被覆膜を損なうことなく鋳型を除去できる。
また、鋳型の材質が有機物である場合、制御のし易さの観点から、プラズマ処理、オゾン酸化処理、溶出、焼成からなる群から選ばれる少なくとも一種の処理方法で行うことが好ましく、特に、プラズマ処理がさらに好ましい。
例えば、プラズマ処理時の時間、圧力、出力及び温度は、除去すべき成分の種類、大きさ、プラズマ源などに応じて適宜決定することができる。
プラズマ処理のプラズマ源としては、酸素ガス、水素ガス、窒素ガスなどの各種のガスを用いることができる。これらの中でも、酸素ガスを用いる酸素プラズマ処理、または水素ガスを用いる水素プラズマ処理が好ましく、特に、酸素プラズマ処理が好ましい。
例えば、酸素プラズマ処理を用いる場合、酸素プラズマ処理時の圧力は、1.33〜66.5Pa(10〜500mtorr)、好ましくは13.3〜26.6Pa(100〜200 mtorr)であることが適当である。また、酸素プラズマ処理時のプラズマ出力は、5〜500W、好ましくは10〜50Wであることが適当である。また、酸素プラズマ処理時の処理時間は、5分〜数時間、好ましくは5〜60分であることが適当である。また、酸素プラズマ処理の温度は、低温であり、好ましくは−30〜300℃であり、さらに好ましくは0〜100℃であり、最も好ましくは室温(5〜40℃)である。酸素プラズマ処理に用いるプラズマ装置は、特に限定されず、例えば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
例えば、水素プラズマ処理を用いる場合、水素プラズマ処理時の圧力は、1.33〜66.5Pa(10〜500mtorr)、好ましくは13.3〜26.6Pa(100〜200 mtorr)であることが適当である。また、水素プラズマ処理時のプラズマ出力は、5〜500W、好ましくは10〜50Wであることが適当である。また、水素プラズマ処理時の処理時間は、5分〜数時間、好ましくは5〜60分であることが適当である。また、水素プラズマ処理の温度は、低温であり、好ましくは−30〜300℃であり、さらに好ましくは0〜100℃であり、最も好ましくは室温(5〜40℃)である。水素プラズマ処理に用いるプラズマ装置は、特に限定されず、例えば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
溶出処理を用いる場合の条件は、除去しようとする鋳型の成分等に応じて適宜公知の溶出方法を採用することができる。例えば、鋳型が上記分子量500以上の有機化合物を含有する鋳型形成用材料を用いて形成されたものである場合、該鋳型は、メタノール、エタノール、アセトン等の有機溶剤を用いることにより溶出させることができる。
焼成処理を用いる場合の処理の条件としては、大気雰囲気中で100〜1000℃、好ましくは300〜500℃で、30秒〜数時間、好ましくは1〜60分間であることが好ましい。また、シリコンなどの酸化しやすい材料の基材を用いる場合、基材の酸化を防ぐために、窒素雰囲気中で焼成処理を行うことが好ましい。窒素中における焼成処理の諸条件は、大気雰囲気中と同じである。
また、鋳型を複数設けた場合、それらの鋳型を除去する工程は、同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。別々に行う場合、より内側もしくは下側に存在するものから、順次除去するのが好ましい。
さらに、複数の鋳型を設けた場合、すべての鋳型について除去する必要はなく、その全部を完全除去してもよいし一部のみを除去してもよい。一部を除去する場合、全体の1〜99%を除去するのが好ましく、5〜95%を除去するのがより好ましい。
有機化合物の一部または全部が除去されると、金属酸化物層中の、該有機化合物に対応する部分が除去され、結果、得られる構造体が、当該除去された有機化合物の分子形状に応じた空隙を有するものとなる。具体的には、たとえばa)金属酸化物層に含まれる有機化合物に対応する部分がそのまま空隙になっている構造体、b)金属酸化物層に含まれる有機化合物に対応する部分を中心としてその近傍が空隙になっている構造体、c)金属酸化物層に含まれる有機化合物に対応する部分あるいはその近傍が空隙になっており、さらにそれらの空隙の一部が互いにつながって網目状になっている構造体などが挙げられる。このような空隙を有する構造体は、たとえば分子構造選択的な透過膜として利用することができる。
なお、必要に応じて、鋳型を除去する工程とは別に、金属酸化物層中の有機化合物を除去する工程を設けることもできる。該工程は、例えば上述したように、プラズマ、オゾン酸化、溶出、焼成等の処理により実施できる。
工程(2)では、工程(1)で形成した被覆膜の表面に有機膜または無機膜を形成する。
有機膜は、従来公知の方法により形成でき、たとえば膜形成能を有する有機化合物を含有する膜形成用材料の溶液を前記被覆膜上に塗布し、乾燥させることにより形成できる。膜形成能を有する有機化合物としては、たとえば上述した鋳型形成用材料で挙げた「分子量500以上の有機化合物」が挙げられる。
膜形成用材料の塗布方法は、公知の方法が使用でき、例えば、鋳型が形成された基材を膜形成用材料中に浸漬する方法(ディップコート法)、鋳型が形成された基材上に、膜形成用材料をスピンコート法により塗布する方法、交互吸着法等が挙げられる。これらの中でも、有機膜の膜厚の調整が容易であることから、交互吸着法が好ましく用いられる。
有機膜を交互吸着法により形成する場合、該有機膜を形成するための材料としては、後述する有機膜形成用材料を用いることが好ましい。
無機膜としては、酸化アルミナ、酸化ケイ素、銀、銅、ニッケル等からなるものが挙げられる。これらの無機膜は従来公知の方法により形成でき、たとえばゾルゲル反応やメッキ法、スパッタリング(蒸着)法などが挙げられる。
無機膜の種類は、被覆膜や鋳型の種類等を考慮して適宜選択すればよい。たとえば被覆膜がシリカ層からなる場合、無機膜として、酸化アルミナ等のアルカリに対する溶解性が異なる材質のものを用いると、後の工程(3)や構造体形成工程において、被覆膜を大きく損なうことなく当該無機膜を除去できる。
本発明の製造方法において好ましく用いられる有機膜形成用材料は、水溶液中で正の電荷を帯びる部位を有する水溶性樹脂(A1)を含有する第一の水溶液と、水溶液中で負の電荷を帯びる部位を有する水溶性樹脂(A2)を含有する第二の水溶液とから構成される。
第一の水溶液は、水溶液中で正の電荷を帯びる部位を有する水溶性樹脂(A1)を含有する。
水溶性樹脂(A1)としては、たとえば、これまで交互吸着法に用いられているカチオン性樹脂を用いることができる。中でも、当該樹脂のポリマー主鎖または側鎖部分に、水溶液中で電離して正の電荷を帯びる塩形成部位を有するものが好ましい。該塩形成部位は、正の電荷を帯びた原子を含む基(以下、正電荷基という。)と、該正電荷基の電荷を中和して塩を形成する対イオンとからなる部位であり、該正電荷基としては、たとえば、N+を有する基、S+を有する基等が挙げられる。
N+を有する基としては、たとえば、NH4から1個の水素原子を除いた基(−NH3 +)、またはその水素原子の一部もしくは全部が置換基で置換された基;NH4から2個の水素原子を除いた基(>NH2 +)、またはその水素原子の一部もしくは全部が置換基で置換された基;NH4から3個の水素原子を除いた基(≡NH+)、またはその水素原子が置換基で置換された基等が挙げられる。前記置換基としては、たとえばアルキル基、アルコキシ基、アリール基等が挙げられ、これらの中でも炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
前記正電荷基の対イオンとしては、前記正電荷基と塩を形成するものであれば特に限定されず、たとえば塩素イオン、臭素イオン、フッ素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン等が挙げられる。これらの中でも、ハロゲンイオンが好ましく、特に塩素イオンまたは臭素イオンが好ましい。
また、上記以外の、水溶液中で電離して正の電荷を帯びる部位としては、−NH2、>NH等が挙げられる。
X11〜X18は、それぞれ独立に、ハロゲンイオンまたはアニオン性有機イオンである。ハロゲンイオンとしては、塩素イオン、臭素イオン等が挙げられる。アニオン性有機イオンとしては、パラトルエンスルホン酸などのアニオン性有機イオンが挙げられる。
環式基としては、脂肪族環式基であってもよく、芳香族環式基であってもよい。
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「脂肪族」とは、芳香族に対する相対的な概念であって、芳香族性を持たない基、化合物等を意味するものとする。「脂肪族環式基」は、芳香族性を有する単環式基または多環式基であることを示す。「芳香族環式基」は、芳香族性を有する単環式基または多環式基であることを示す。
脂肪族環式基において、置換基を除いた基本の環の構造としては、炭素および水素からなる基(脂肪族炭化水素基)であってもよく、該脂肪族炭化水素基の環骨格上の炭素原子が窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換された脂肪族複素環式基であってもよい。
脂肪族炭化水素基は、飽和または不飽和のいずれでもよいが、通常は飽和であることが好ましい。脂肪族炭化水素基の具体例としては、モノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基;ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。具体的には、シクロペンタン、シクロヘキサン等のモノシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基や、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカンなどのポリシクロアルカンから1個以上の水素原子を除いた基などが挙げられる。これらの基は、その水素原子の一部または全部が置換基(例えば低級アルキル基、フッ素原子またはフッ素化アルキル基)で置換されていてもよい。
芳香族環式基において、置換基を除いた基本の環の構造は、炭素および水素からなる基(芳香族炭化水素基)であってもよく、その環骨格上の炭素原子が窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子で置換された芳香族複素環式基であってもよい。芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜16の芳香族炭化水素基が挙げられ、具体的には、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレンなどから1個以上の水素原子を除いた基などを例示できる。
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「ジアリルジアルキルアンモニウム塩から誘導される構成単位」とは、ジアリルジアルキルアンモニウム塩のエチレン性二重結合(アリル基の二重結合)が開裂して形成される構成単位を意味する。
ジアリルジアルキルアンモニウム塩から誘導される構成単位としては、たとえば下記一般式(a−1−1)または(a−1−2)で表される構成単位が挙げられる。
M1〜M2としては、前記対イオンとして挙げたものと同様のものが挙げられる。
樹脂(A1−1)は、特に、ジアリルジアルキルアンモニウム塩から誘導される構成単位からなる樹脂、すなわちポリジアリルジアルキルアンモニウム塩であることが最も好ましい。
また、水溶性樹脂(A1)として、樹脂(A1−1)と、それ以外の水溶性樹脂との混合樹脂を用いてもよい。
水溶性樹脂(A1)は、市販のものを用いてもよく、合成してもよい。
イオン強度調整剤としては、NaClなどの無機塩(アルカリ金属イオン)、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、テトラメチルブロミドなどの有機塩が挙げられる。
pH調節剤としては、一般的な酸、アルカリ、pH調整用緩衝剤などを使用できる。
第一の水溶液のpHは、0.1〜11が好ましく、0.2〜9がより好ましく、0.1〜7が最も好ましい。
第二の水溶液は、水溶液中で負の電荷を帯びる部位を有する水溶性樹脂(A2)を含有する。
水溶性樹脂(A2)としては、たとえば、これまで交互吸着法に用いられているアニオン性樹脂を用いることができる。かかるアニオン性樹脂としては、当該樹脂のポリマー主鎖または側鎖部分に、水溶液中で負に帯電する基(以下、負電荷基という。)を有する樹脂が挙げられる。該負電荷基の具体例としては、たとえば、−SO3H、−SO3 − M3、−COOH、−COO− M3等が挙げられ、これらの中でも−SO3H、−SO3 − M3が好ましい。式中、M3は1価のカチオンであり、たとえばナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン等が挙げられる。
水溶性樹脂(A2)として、より具体的には、たとえば下記式(21)〜(29)で表される構成単位のいずれか1種以上を有する樹脂が挙げられる。これらの樹脂はいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
水溶性樹脂(A2)の具体例としては、たとえばポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリマレイン酸(PMA)、ポリマレイン酸アンモニウム塩(PMAA)、PSSとポリ(2,3−ジハイドロチエノ(3,4−b−1,4−ジオキシン))(PDHD)との混合樹脂(PSS−PDHD)等が挙げられる。PSS−PDHDとしては、たとえば下記式(30)で表されるものが挙げられる。
環式基としては、前記水溶性樹脂(A2)の項で挙げた環式基と同様のものが挙げられる。
ここで、本明細書および特許請求の範囲において、「スチレンスルホン酸またはその塩から誘導される構成単位」とは、スチレンスルホン酸またはその塩のエチレン性二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。
スチレンスルホン酸またはその塩から誘導される構成単位としては、たとえば下記一般式(a−2−1)で表される構成単位が挙げられる。
Rとしては、水素原子または低級アルキル基であることが好ましく、工業上の入手の容易さから、水素原子またはメチル基であることが最も好ましい。
R5のアルキル基としては、Rのアルキル基と同様のものが挙げられる。
M3のカチオンとしては、特に制限はなく、たとえばナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン等が挙げられる。
M3としては、水素原子が最も好ましい。
pは1が最も好ましい。
qは0または1が好ましく、0が最も好ましい。
樹脂(A2−1)は、特に、スチレンスルホン酸から誘導される構成単位からなる樹脂、すなわちポリスチレンスルホン酸であることが最も好ましい。
また、水溶性樹脂(A2)として、樹脂(A2−1)と、それ以外の水溶性樹脂との混合樹脂を用いてもよい。かかる混合樹脂としては、たとえば上述したPSS−PDHDが挙げられる。
水溶性樹脂(A2)は、市販のものを用いてもよく、合成してもよい。
イオン強度調整剤としては、NaClなどの無機塩(アルカリ金属イオン)、パラトルエンスルホン酸ナトリウム、テトラメチルブロミドなどの有機塩が挙げられる。
pH調節剤としては、一般的な酸、アルカリ、pH調整用緩衝剤などを使用できる。
第二の水溶液のpHは、3〜13が好ましく、4〜11がより好ましく、6〜8が最も好ましい。
前記有機膜形成用材料を用いた有機膜の形成は、前記被覆膜の表面に、前記有機膜形成用材料の第一の水溶液および第二の水溶液を交互に接触させることにより実施できる。
より具体的には、前記被覆膜の表面に、前記第一の水溶液を接触させる工程(以下、第一接触工程という。)と、前記第一の水溶液を接触させた後の前記被覆膜表面に前記第二の水溶液を接触させる工程(以下、第二接触工程という。)とを含む方法により、前記被覆膜の表面に有機膜を形成できる。
被覆膜表面に、前記第一の水溶液を接触させる方法としては、特に限定されず、たとえば前記第一の水溶液中に当該被覆膜が形成された基材を浸漬する方法、該被覆膜上に、前記第一の水溶液をスピンコート法により塗布する方法等が挙げられる。
被覆膜表面と第一の水溶液の接触時間は、特に限定されない。たとえば接触時間を10〜60秒間の間で変化させても、形成される(A1)層の膜厚にはほとんど影響は見られない。これは、水溶性樹脂(A1)の被覆膜表面への吸着が、接触時に瞬時に完了するためではないかと推測される。
乾燥方法は、特に制限はなく、公知の方法が使用でき、たとえばベーク処理を行ってもよく、窒素ガス等の乾燥用ガスを用いてもよく、また、スピンナーを用いて第一の水溶液の塗布を行った場合には、そのまま振り切り乾燥を行ってもよい。
該第二の水溶液を接触させる方法としては、特に限定されず、たとえば前記第二の水溶液中に当該(A1)層が形成された支持体を浸漬する方法、該(A1)層上に、前記第二の水溶液をスピンコート法により塗布する方法等が挙げられる。
(A1)層表面と第二の水溶液の接触時間は、特に限定されない。たとえば接触時間を10〜60秒間の間で変化させても、形成される(A2)層の膜厚にはほとんど影響は見られない。これは、水溶性樹脂(A2)の(A1)層への吸着が、接触時に瞬時に完了するためではないかと推測される。
同様に、形成される(A2)層の膜厚は、第二の水溶液中の水溶性樹脂(A2)の濃度にも影響されず、たとえば該含有量を0.1〜0.5質量%の範囲内で変化させても、形成される(A2)層の膜厚はほぼ同じである。
第一の水溶液および前記第二の水溶液を交互に接触させる(交互接触処理)回数は、所望の膜厚に応じて適宜設定すればよい。該回数が多いほど、形成される有機膜の膜厚が厚くなる。
乾燥方法は、特に制限はなく、公知の方法が使用でき、たとえばベーク処理を行ってもよく、窒素ガス等の乾燥用ガスを用いてもよく、また、スピンナーを用いて第一の水溶液の塗布を行った場合には、そのまま振り切り乾燥を行ってもよい。
洗浄には、公知の方法が使用でき、たとえば水等を用いて行えばよい。
該乾燥方法は、特に制限はなく、公知の方法が使用でき、たとえばベーク処理を行ってもよく、窒素ガス等の乾燥用ガスを用いてもよく、また、スピンナーを用いて第一の水溶液および/または第二の水溶液の塗布を行った場合には、そのまま振り切り乾燥を行ってもよい。
本発明においては、特に、ベーク処理を行うことが好ましい。
ベーク処理において、ベーク温度は100〜120℃が好ましい。
ベーク時間は、特に制限はなく、通常、30〜90秒間の範囲内である。
該有機膜または無機膜の膜厚は、基材上に形成しようとする複数の構造体の所望のピッチ、機械的強度等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されないが、好ましくは0.1〜50nm、より好ましくは1〜10nm、さらに好ましくは1〜5nmである。
工程(3)では、上述のようにして形成した有機膜または無機膜の一部および前記被覆膜の一部を除去する。
有機膜または無機膜の一部および被覆膜の一部を除去する際、除去する部分は特に限定されず、いずれの部位をどのように除去してもよい。好ましくは、有機膜または無機膜の一部、および被覆膜の一部を含む1つの平面を除去するのが好ましい。この場合、前記1つの平面は、基材表面に対して平行であってもよいし、垂直であってもよいし、適当な角度の傾斜を持っていてもよい。もちろん、これ以外の除去であってもよいことはいうまでもない。
本工程においては、特に、有機膜または無機膜の上端部、および被覆膜の上端部を除去することが好ましい。中でも、鋳型として、断面形状が矩形の鋳型(たとえば矩形ライン構造、ホール構造、円柱構造等)を用いる場合、その表面に設けられた有機膜または無機膜、および被覆膜のうち、天面を含む上端部を除去することが好ましい。この場合、上端部を除去する度合いを調節することにより、最終的に得られる構造体の高さを調節できる。また、鋳型がライン状であれば、基板上に自己支持的に直立した、高アスペクト比のライン状構造体を形成できる。
例えば、酸素プラズマエッチングの場合、酸素プラズマエッチングの圧力は、1.33〜66.5Pa(10〜500mtorr)、好ましくは2.66〜26.6Pa(20〜200mtorr)であることが適当である。また、酸素プラズマエッチングのプラズマ出力は、5〜500W、好ましくは10〜50Wであることが適当である。また、酸素プラズマエッチングの処理時間は、有機膜の種類、膜厚等により適宜設定すればよい。また、酸素プラズマエッチングの温度は、好ましくは−30〜300℃であり、さらに好ましくは0〜100℃であり、最も好ましくは室温(5〜40℃)である。酸素プラズマエッチングに用いるプラズマ装置は、特に限定されず、例えば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
また、無機膜の場合、除去方法としては、アルカリによる溶出、酸による溶出、化学的エッチング等が挙げられる。
有機膜または無機膜の一部を除去する際は、全体の1〜99%を除去するのが好ましく、5〜95%を除去するのがより好ましい。
また有機膜または無機膜の一部を除去する際には、有機膜または無機膜を除去することにより被覆膜の一部を露出させるのが好ましい。
また、有機膜または無機膜の一部を除去する際に、同時に、被覆膜の一部を除去してもよい。
被覆膜の一部を除去する際は、全体の1〜99%を除去するのが好ましく、5〜95%を除去するのがより好ましい。
また被覆膜の一部を除去する際には、被覆膜を除去することにより鋳型の一部を露出させるのが好ましい。
本発明においては、被覆膜の一部の除去と、前記有機膜または無機膜の一部または全部の除去とを連続的に行ってもよく、同時に行ってもよい。たとえば、鋳型として断面形状が矩形のものを用いる場合、1回のエッチング処理により、有機膜または無機膜の上端部の除去と、それに引き続いての被覆膜の上端部の除去、さらにはその内側に鋳型が存在する場合には該鋳型の上端部の除去を行うことができる。
鋳型の除去は、前記で述べた鋳型の除去方法(工程(1)の後、次の工程(2)を行う前に、工程(1)で形成した被覆膜の一部および前記鋳型を除去する場合の除去方法)と同様の方法で実施できる。
前記一部が除去された有機膜または無機膜の表面に、金属層または金属酸化物層からなる被覆膜を形成する工程(1’)、
前記被覆膜の表面に有機膜または無機膜を形成する工程(2’)、
前記有機膜または無機膜の一部および被覆膜の一部を除去する工程(3’)、
の一連の工程を少なくとも1回行うことが好ましい。
これにより、1つの鋳型の外側に、さらに、これら一連の工程を繰り返した数と同じ数の被覆膜が、有機膜または無機膜を介して形成され、結果、基材上に、より多くの構造体が形成される。たとえば、詳しくは後述するが、図1に示す実施形態のように、工程(3)(図1中の工程(d))の後、そのまま第二の被覆膜形成工程(図1中の工程(e))を行う場合は、1つの鋳型から4つの構造体が形成できるが、工程(3)の後、図2に示す実施形態のように、工程(1’)(図2中の(b’))、工程(2’)(図2中の(c’))、工程(3’)(図2中の(d’))の一連の工程を1回繰り返した場合には、1つの鋳型から6つの構造体が形成できる。また、工程(1’)〜工程(3’)をさらにもう1回繰り返した場合には、1つの鋳型から8つの構造体が形成できる。
工程(1’)〜工程(3’)は、それぞれ、前記工程(1)〜工程(3)と同様にして実施できる。
次に、前記複合膜形成工程で形成した複合膜の表面に、金属層または金属酸化物層からなる第二の被覆膜を形成する。
第二の被覆膜の形成は、前記工程(1)と同様にして実施できる。
また、第二の被覆膜の膜厚は、前記工程(1)で形成する被覆膜と同様であってよい。
また、第二の被覆膜を構成する金属層または金属酸化物層は、前記工程(1)で形成する被覆膜を構成する金属層または金属酸化物層と同じであってもよく、異なっていてもよい。たとえば前記金属酸化物層形成用材料として、工程(1)で用いたのとは異なる金属化合物(W)を含むものを用いれば、基材上に、それぞれ異なる金属酸化物で構成された複数の構造体を形成できる。
次に、上述のようにして形成した第二の被覆膜形成後の前記基材上に、該基材表面を被覆する有機被覆膜を形成する。これにより、前記第二の被覆膜の側面の少なくとも一部が当該有機被覆膜で支持された状態となる。そのため、この後の除去工程で第二の酸化物膜の一部を除去する際に、該第二の被覆膜のうちの除去しない部分へのダメージが抑制され、最終的に得られる構造体が、形状(自己支持性、基材表面に対する垂直性、矩形性等)に優れたものとなる。
膜形成用材料の塗布方法は、公知の方法が使用でき、例えば、鋳型が形成された基材を膜形成用材料中に浸漬する方法(ディップコート法)、鋳型が形成された基材上に、膜形成用材料をスピンコート法により塗布する方法、交互吸着法等が挙げられる。
被覆膜形成用材料としては、特に限定されず、上述した鋳型形成用材料、有機膜形成用材料や市販のレジスト組成物などのなかから適宜選択すればよい。
有機被覆膜の厚さとして、具体的には、前記第二の被覆膜の高さの5〜200%程度の膜厚が好ましく、10〜150%程度の膜厚が好ましい。
次に、有機被覆膜により側面の少なくとも一部が支持された前記第二の被覆膜の一部を除去する。
本工程において除去する部分は特に限定されず、いずれの部位をどのように除去してもよい。好ましくは、第二の被覆膜の一部を含む1つの平面を除去するのが好ましい。この場合、前記1つの平面は、基材に平行であってもよいし、垂直であってもよいし、適当な角度の傾斜を持っていてもよい。もちろん、これ以外の除去であってもよいことはいうまでもない。
特に、矩形の鋳型を採用した場合、第二の被覆膜の上端部を除去することが好ましい。これにより、第二の被覆膜のうちの側面部分が残り、基材上に自己支持的な構造体を形成できる。
第二の被覆膜の一部を除去する際は、全体の1〜99%を除去するのが好ましく、5〜95%を除去するのがより好ましい。
また、前記工程(1)の後、工程(2)の前に鋳型を除去していない場合には、除去工程における第二の被覆膜の除去は、鋳型の一部が露出するように行うことが好ましい。これにより、除去工程以降の工程で鋳型を除去する場合に、該除去を、エッチング等により容易に行うことができる。また、第二の被覆膜の一部の除去と同時進行的に、鋳型の一部または全部の除去を行ってもよい。
鋳型の除去は、前記で工程(1)の後、次の工程(2)を行う前に、工程(1)で形成した被覆膜の一部および前記鋳型を除去する場合に述べた鋳型の除去方法と同様の方法で実施できる。
第二の被覆膜の除去は、前記工程(3)で述べた被覆膜の除去方法と同様の方法で実施できる。
有機被覆膜の薄膜化は、アルカリ水溶液、酸水溶液等を用いるウェットプロセスにより行ってもよく、ドライエッチング等のドライプロセスにより行ってもよい。たとえば有機被覆膜がアルカリ可溶性である場合には、該基材をアルカリ水溶液中に浸漬することにより有機被覆膜を薄膜化できる。また、有機被覆膜のドライエッチングは、たとえば前記有機膜の除去と同様のプラズマエッチングにより実施できる。これらのうち、ウェットプロセスは、被覆膜や有機膜の表面のダメージが少ない、低コストである等の利点がある。
次に、前記基材上に残存する、前記被覆膜および第二の被覆膜以外の残留物を除去することにより、前記基材上に、金属酸化物からなる構造体を形成する。
すなわち、前記除去工程後の基材上には、少なくとも、複合膜形成工程で形成した有機膜または無機膜と被覆膜とからなる複合膜の一部と、第二の被覆膜形成工程で形成した第二の被覆膜の一部と、被覆工程で形成した有機被覆膜の少なくとも一部とが存在している。また、前記工程(1)の後、被覆膜の一部および鋳型を除去していない場合には鋳型も残留している。これらのうち、被覆膜および第二の被覆膜以外のものを除去することにより、基材上に、被覆膜の一部および第二の被覆膜の一部から構成される複数の構造体が得られる。
これらの残留物の除去は、前記工程(3)、除去工程等で挙げたのと同様の被覆膜の除去方法、有機膜の除去方法、無機膜の除去方法、鋳型の除去方法等により実施できる。
図1に、第1の実施形態のフロー図を示す。
本実施形態では、まず、図1(a)に示すように、基材1上に断面形状が矩形のライン構造(矩形ライン構造)の鋳型11を形成する(工程(a))。
次に、図1(b)に示すように、鋳型11の表面を被覆するように被覆膜12を形成する(工程(b))。
次に、図1(c)に示すように、被覆膜12の表面を被覆するように有機膜13を形成する(工程(c))。
次に、図1(d)に示すように、有機膜13および被覆膜12の上端部を、基材1に対して平行な面で除去し、鋳型11の上端を露出させる(工程(d))。その結果、基材1上に、有機膜13の側面部分と、被覆膜12の側面部分と、鋳型11とが残る。このとき、有機膜13および被覆膜12の上端部とともに、鋳型11の上端部を除去してもよい。
次に、図1(e)に示すように、前記除去後に基材1上に残った有機膜13、被覆膜12および鋳型11の表面を被覆するように被覆膜14を形成する(工程(e))。
次に、図1(f)に示すように、基材1上に、基材1表面から被覆膜14の上端までの距離よりも厚い膜厚の有機被覆膜15を形成し(工程(f))、その後、図1(g)に示すように、該有機被覆膜15を薄膜化する(工程(g))。
次に、図1(h)に示すように、有機被覆膜15の上端部、および被覆膜14の上端部を、基材1に対して平行な面で除去し、有機膜13、被覆膜12および鋳型11を露出させる(工程(h))。このとき、有機被覆膜15の上端部、および被覆膜14の上端部とともに、有機膜13、被覆膜12および鋳型11の上端部を除去してもよい。
最後に、基材1上に残留する鋳型11、有機膜13および有機被覆膜15を除去すると、基材1上に、図1(i)に示すように、被覆膜12の側面部分からなる構造体12’および被覆膜14の側面部分からなる構造体14’が得られる(工程(i))。
これらのうち、隣接する2つの構造体12’、12’間の距離は、鋳型11の幅に対応し、隣接する2つの構造体12’、14’間の距離は、有機膜13の膜厚に対応する。
この実施形態では、1つの鋳型から、ライン状の4つの構造体(構造体12’×2、構造体14’×2)が得られる。
図2に、第2の実施形態のフロー図を示す。なお、以下の実施形態において、第1の実施形態と同じものには同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
本実施形態では、まず、前記第1の実施形態と同様にして工程(a)〜(d)を行う。
次に、図2の(b’)に示すように、前記除去後に基材1上に残った有機膜13、被覆膜12および鋳型11の表面を被覆するように被覆膜16を形成する(工程(b’))。
次に、図2の(c’)に示すように、被覆膜16の表面を被覆するように有機膜17を形成する(工程(c’))。
次に、図2(d’)に示すように、有機膜17および被覆膜16の上端部を、基材1に対して平行な面で除去し、有機膜13、被覆膜12および鋳型11の上端を露出させる(工程(d’))。その結果、基材1上に、有機膜17の側面部分と、被覆膜16の側面部分と、有機膜13の側面部分と、被覆膜12の側面部分と、鋳型11とが残る。このとき、有機膜17および被覆膜16の上端部とともに、有機膜13、被覆膜12、鋳型11の上端部を除去してもよい。
次に、図2(e’)に示すように、前記除去後に基材1上に残った有機膜17、被覆膜16、有機膜13、被覆膜12および鋳型11の表面を被覆するように被覆膜18を形成する(工程(e’))。
次に、図2(f’)に示すように、基材1上に、基材1表面から被覆膜18の上端までの距離よりも厚い膜厚の有機被覆膜19を形成する(工程(f’))。
次に、図2(h’)に示すように、有機被覆膜19の上端部、および被覆膜18の上端部を、基材1に対して平行な面で除去し、有機膜17、被覆膜16、有機膜13、被覆膜12および鋳型11を露出させる(工程(h’))。このとき、有機被覆膜19の上端部、および被覆膜18の上端部とともに、有機被覆膜17、被覆膜16、有機膜13、被覆膜12および鋳型11の上端部を除去してもよい。
最後に、基材1上に残留する鋳型11、有機膜13、有機膜17および有機被覆膜15を除去すると、基材1上に、図1(i’)に示すように、被覆膜12の側面部分からなる構造体12’、被覆膜16の側面部分からなる構造体16’および被覆膜18の側面部分からなる構造体18’が得られる(工程(i’))。
これらのうち、隣接する2つの構造体12’、12’間の距離は、鋳型11の幅に対応し、隣接する2つの構造体12’、16’間の距離は、有機膜13の膜厚に対応し、隣接する2つの構造体16’、18’間の距離は、有機膜17の膜厚に対応する。
この実施形態では、1つの鋳型から、ライン状の6つの構造体(構造体12’×2、構造体16’×2、構造体18’×2)が得られる。
さらに、上記実施形態において、工程(d’)の後、工程(b’)〜(d’)をさらに繰り返せば、構造体18’、18’の外側(鋳型11があった側とは反対側)に、それぞれ、工程(b’)〜(d’)を繰り返した回数分の構造体が形成される(1回あたり構造体が2個増加する)。
図3に、第3の実施形態のフロー図を示す。
本実施形態では、まず、図3(a)に示すように、基材1上に矩形ライン構造の鋳型11を形成する。
次に、図3(b)に示すように、鋳型11の表面を被覆するように被覆膜21を形成する。
次に、図3(c)に示すように、被覆膜21の上端部を除去して鋳型11を露出させ、引き続き、鋳型11を除去する。その結果、基材11上に、被覆膜21の側面部分が残る。
次に、図3(d)に示すように、被覆膜21の表面を被覆するように有機膜22を形成する(工程(c))。
次に、図3(e)に示すように、有機膜22の上端部を、基材1に対して平行な面で除去し、被覆膜21の上端を露出させる。このとき、有機膜22の上端部とともに、被覆膜21の上端部を除去してもよい。
次に、図3(f)に示すように、前記除去後に基材1上に残った有機膜22および被覆膜21の表面を被覆するように被覆膜23を形成する。
次に、図3(g)に示すように、基材1上に、基材1表面から被覆膜23の上端までの距離よりも厚い膜厚の有機被覆膜24を形成する。
次に、図3(h)に示すように、有機被覆膜24の上端部、および被覆膜23の上端部を、基材1に対して平行な面で除去し、有機膜22および被覆膜21の上端部を露出させる。このとき、有機被覆膜24の上端部、および被覆膜23の上端部とともに、有機膜22および被覆膜21の上端部を除去してもよい。
最後に、基材1上に残留する有機膜22および有機被覆膜24を除去すると、基材1上に、図3(i)に示すように、被覆膜21の側面部分からなる構造体21’および被覆膜23の側面部分からなる構造体23’が得られる。
これらのうち、1つの構造体21’と、該構造体21’に隣接する2つの構造体23’との間の距離は、それぞれ、有機膜22の膜厚に対応する。
この実施形態では、1つの鋳型から、ライン状の6つの構造体(構造体21’×2、構造体23’×4)が得られる。
たとえば、上記第1〜第3の実施形態において、有機膜や被覆膜の上端部の代わりに側面の一方を、基材1に対して垂直な断面で除去し、天面と一方の側面を残すと、断面形状がL字型のライン状の構造体が形成される。
また、上記第1〜第3の実施形態では、有機膜を形成しているが、代わりに酸化アルミナ等の無機膜を形成してもよい。
また、該製造方法によれば、基材上に形成される複数の構造体間の距離の微細な制御が可能であり、構造体の形状設計の自由度が高い。
本発明の構造体は、前記本発明の製造方法により製造されるものである。
構造体の形状は、特に限定されない。具体例としては、たとえばライン、シリンダ、およびその他の3次元構造、ならびにそれらのネットワーク構造や複合構造、繰り返し構造等を採用することができる。
前記本発明の製造方法は、上述したように、ナノ構造体を簡便に製造できることから、本発明の構造体はナノ構造体であることが好ましい。
以下の実施例1〜4のうち、実施例1〜2は図1に示す実施形態に対応し、実施例3は図2に示す実施形態(工程(b’)〜(d’)を1回行う例)および該実施形態における工程(b’)〜(d’)をさらに1回(計2回)繰り返す例に対応し、実施例4は図3に示す実施形態に対応する。
各実施例において、プラズマエッチングのガス流量(単位:sccm)は、1atm(大気圧1,013hPa)、23℃における測定値を示す。
また、各プラズマエッチングにおける処理温度(チャンバ内の温度)は25℃であった。
まず、リソグラフィー法により、以下の手順で鋳型を形成した。
シリコンウェハ基板上に、KrFエキシマレーザー用のポジ型レジスト組成物(商品名:TDUR−P015 PM、東京応化工業社製)をスピンコート法により塗布し、90℃、90秒の条件でプリベークして膜厚780nmのレジスト膜を形成した。該レジスト膜に対し、KrFエキシマレーザ露光機ニコン社製NSR−S205(NA=0.75)を用い、マスクパターンを介して露光し、110℃、90秒の条件でポストベーク(PEB)を行った後、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて60秒間現像することによって、幅約500nm、奥行約10mm、高さ780nmの矩形ライン構造のレジストパターン(鋳型)を形成した。
上記のようにして形成されたレジストパターンを持つシリコンウェハ基板に対して酸素プラズマ処理(10sccm、10Pa、10W、3分間)を施して、矩形ライン構造のサイズを幅約300nm、奥行約10mm、高さ480nmにし、これを鋳型とした。
このシリコンテトライソシアネート溶液の滴下→洗浄→乾燥の一連の操作(表面ゾルゲル操作)を30回行うことにより、鋳型表面に、膜厚約30nmのシリコン酸化物(SiO2)層(以下、シリカ層)を形成した。
上記PDDA水溶液への浸漬から、PSS水溶液浸漬後の洗浄、乾燥までの一連の操作(ポリマー接触処操作)を1セットとし、このポリマー接触処操作を、トータルのセット回数が80回となるように繰り返し行うことにより、シリカ層で被覆された鋳型表面に、膜厚約50nmのポリマー層を形成した。
このシリコンテトライソシアネート溶液の滴下から洗浄、乾燥までの一連の操作(表面ゾルゲル操作)を30回行い、膜厚約30nmのシリカ層を形成した。
次に、該シリコンウェハ基板を現像液(東京応化工業製;NMD)中に9分間浸漬した後、純水で洗浄し、窒素ガスを吹き付けながら基板表面を乾燥させた。
この後、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(SAMCO社製)を用いて、酸素およびCHF3混合ガスによるプラズマエッチング処理(酸素ガス流量10sccm、CHF3流量30sccm、2Pa、70W、10分間)を行い、CHF3のみを用いたプラズマエッチング処理(30sccm、2Pa、70W、3分間)の後、酸素ガスのみを用いたプラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、10W、5分間)を行った。
図4に示すように、幅約33nm、高さ約320nmのシリカライン(ナノ構造体)が形成されていることが認められた。
さらに、それぞれ隣接する複数のシリカライン間の間隔は、最も接近する部分で45nmであった。この間隔は2つのシリカ層に挟まれたポリマー層の膜厚に対応することから、隣接するシリカライン構造のピッチは、ポリマー層の膜厚によって制御可能であると考えられる。
さらにラインの側面も極めて平滑であることが認められた。
また、このシリカラインは、線幅に対して高いアスペクト比(この場合はおよそ高さ/幅比が8程度)を有しており、自己支持的にシリカラインが保持されていることがわかる。
シリコンウェハ基板上に、実施例1と同様にして幅約300nm、奥行約10mm、高さ480nmの矩形ライン構造の鋳型を形成した。
次に、この基板に、実施例1と同じ表面ゾルゲル操作を30回行うことにより、鋳型表面に、膜厚約30nmのシリカ層を形成した。
次に、該シリカ層が形成された基板に、実施例1と同じポリマー接触処操作を、所定の回数(15回、30回、60回または90回)繰り返し行うことにより、シリカ層で被覆された鋳型表面に、ポリマー層を形成した。
該ポリマー層が形成された基板に対し、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(SAMCO社製)を用いて、酸素プラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、70W)を行い、前記矩形ライン構造の上面にあるポリマー層を除去した。さらにCHF3ガスによるプラズマエッチング処理(30sccm、2Pa、70W)を行って該矩形ライン構造の上面にあるシリカ層を除去した後、酸素プラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、10W、3秒間)を行った。
次に、この基板に、実施例1と同じ表面ゾルゲル操作を30回行い、膜厚約30nmのシリカ層を形成した。
該シリカ層が形成された基板上に、レジスト組成物(東京応化工業製;OFPR−800LB)をスピンコート塗布し、該基板上に膜厚約1μmのレジスト膜を形成させた。
この後、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(SAMCO社製)を用いて、酸素およびCHF3混合ガスによるプラズマエッチング処理(酸素ガス流量10sccm、CHF3流量30sccm、2Pa、70W、13分間)を行い、CHF3のみを用いたプラズマエッチング処理(30sccm、2Pa、70W、3分間)の後、酸素ガスのみを用いたプラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、10W、5分間)を行った。
このとき、ポリマー接触処操作回数を横軸にとり、該ポリマー接触処操作回数と対応するシリカラインのピッチを測定し、その結果を縦軸にとってグラフを作成した。該グラフを図5に示す。
図5に示すように、ポリマー接触操作回数とピッチとは比例していた。この結果から、ポリマー接触操作回数を調節することにより、構造体間の距離を調節できることが確認できた。
シリコンウェハ基板上に、実施例1と同様にして幅約300nm、奥行約10mm、高さ480nmの矩形ライン構造の鋳型を形成した。
次に、この基板に、実施例1と同じ表面ゾルゲル操作(以下、表面ゾルゲル操作Aという。)を30回行うことにより、鋳型表面に、膜厚約30nmのシリカ層を形成した。
次に、該シリカ層が形成された基板に、実施例1と同じポリマー接触処操作を80回繰り返し行うことにより、シリカ層で被覆された鋳型表面に、膜厚約50nmのポリマー層を形成した。
上記酸素プラズマエッチング処理からCHF3ガスによるプラズマエッチング処理、酸素プラズマエッチング処理までの一連のプラズマエッチング処理をエッチング処理Aとする。
次に、上記表面ゾルゲル操作Aからポリマー接触処操作、エッチング処理Aまでの一連の処理を1セットとし、これを所定のセット回数(2回または3回)繰り返した。
このシリコンテトライソシアネート溶液の滴下から洗浄、乾燥までの一連の操作(表面ゾルゲル操作B)を30回行い、膜厚約30nmのシリカ層を形成した。
次に、該シリコンウェハ基板を現像液(東京応化工業製;NMD)中に9分間浸漬した後、純水で洗浄し、窒素ガスを吹き付けながら基板表面を乾燥させた。
この後、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(SAMCO社製)を用いて、酸素およびCHF3混合ガスによるプラズマエッチング処理(酸素ガス流量10sccm、CHF3流量30sccm、2Pa、70W、10分間)を行い、CHF3のみを用いたプラズマエッチング処理(30sccm、2Pa、70W、3分間)の後、酸素ガスのみを用いたプラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、10W、5分間)を行った。
図6は、表面ゾルゲル操作Aからポリマー接触処操作、エッチング処理Aまでの処理を2セット繰り返した例の結果を示し、図7は、表面ゾルゲル操作Aからポリマー接触処操作、エッチング処理Aまでの処理を3セット繰り返した例の結果を示す。
図6においては、幅約30nm、高さ260nmから300nmのシリカライン(ナノ構造体)が、図7においては、幅約30nm、高さ210nmから300nmのシリカライン(ナノ構造体)が形成されていることが認められた。
さらに、隣接するシリカラインの間隔(最も隣接する部分)は図6、図7ともに約47nmであった。この間隔は2つのシリカ層に挟まれたポリマー層の膜厚に対応していた。
さらにラインの側面も極めて平滑であることが認められた。
また、このシリカラインは、線幅に対して高いアスペクト比(この場合はおよそ高さ/幅比が8から10程度)を有しており、自己支持的にシリカラインが保持されていることがわかる。
そして、これらの例では、表面ゾルゲル操作Aからポリマー接触処操作、エッチング処理Aまでの処理のセット回数に応じて、1つの鋳型から形成されるシリカラインの数が増加しており、セット回数が2回の図6の例では6本、セット回数が3回の図7の例では8本のシリカラインが、一つの鋳型から形成されていた。このように、表面ゾルゲル操作Aからポリマー接触処操作、エッチング処理Aまでの一連の処理を繰り返すことで、基板上に形成される構造体の数を容易に増やすことができる。
シリコンウェハ基板上に、実施例1と同様にして幅約300nm、奥行約10mm、高さ480nmの矩形ライン構造の鋳型を形成した。
次に、この基板に、実施例1と同じ表面ゾルゲル操作を30回行うことにより、鋳型表面に、膜厚約30nmのシリカ層を形成した。
続いて、シリカ層が形成された基板に対し、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(SAMCO社製)を用いてCHF3ガスによるプラズマエッチング処理(30sccm、2Pa、70W、3分間)、および酸素プラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、70W、5分間)を行った。
該基板に、実施例1と同じポリマー接触処操作を60回繰り返し行い、膜厚約50nmのポリマー層を形成した。
続いてRIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(SAMCO社製)を用いて酸素プラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、70W、23秒間)を行った。
次いで、実施例1と同じ表面ゾルゲル操作を30回行い、膜厚約30nmのシリカ層を得た。
該シリコンウェハ基板にレジストポリマー(東京応化工業製;OFPR−800LB)をスピンコート塗布し、シリコンウェハ基板上に約1μmの膜厚のレジスト膜を形成させた。
その後、RIE(リアクティブイオンエッチング)装置RIE−10NR(SAMCO社製)を用いて酸素およびCHF3混合ガスによるプラズマエッチング処理(酸素ガス流量10sccm、CHF3流量30sccm、2Pa、70W、13分間)を行い、CHF3ガスのみを用いたプラズマエッチング処理(30sccm、2Pa、70W、2分間)の後、酸素ガスのみを用いたプラズマエッチング処理(10sccm、10Pa、10W、5分間)を行った。
図8に示すように、上記一連の操作によって、幅約33nm、高さ300nmから270nmのシリカライン(ナノ構造体)が形成されていることが認められた。また、このとき、1つの鋳型(矩形ライン構造)から6個のシリカラインが形成されていた。
さらに、それぞれ隣接する複数のシリカライン間の間隔は、最も接近する部分で45nmであり、この間隔は2つのシリカ層に挟まれたポリマー層の膜厚に対応していた。
また、このシリカラインは、線幅に対して高いアスペクト比(この場合はおよそ高さ/幅比が8程度)を有しており、自己支持的にシリカラインが保持されていることがわかる。
Claims (13)
- 下記工程(1)〜(3):
基材上に設けられた鋳型の表面に、金属層または金属酸化物層からなる被覆膜を形成する工程(1)、
前記被覆膜の表面に有機膜または無機膜を形成する工程(2)、
前記有機膜または無機膜の一部および前記被覆膜の一部を除去する工程(3)、
を行うことにより、前記基材上に、前記被覆膜および前記有機膜または無機膜からなる複合膜を形成する複合膜形成工程と、
前記複合膜の表面に、金属層または金属酸化物層からなる第二の被覆膜を形成する第二の被覆膜形成工程と、
前記第二の被覆膜形成後の前記基材上に、該基材表面を被覆する有機被覆膜を形成する被覆工程と、
前記有機被覆膜により側面の少なくとも一部が支持された前記第二の被覆膜の一部を除去する除去工程と、
前記基材上に残存する、前記被覆膜および第二の被覆膜以外の残留物を除去することにより、前記基材上に、金属層または金属酸化物層からなる構造体を形成する構造体形成工程と、
を行うことを特徴とする構造体の製造方法。 - 前記複合膜形成工程において、前記工程(3)の後、下記工程(1’)〜(3’):
前記一部が除去された有機膜または無機膜の表面に、金属層または金属酸化物層からなる被覆膜を形成する工程(1’)、
前記被覆膜の表面に有機膜または無機膜を形成する工程(2’)、
前記有機膜または無機膜の一部および前記被覆膜の一部を除去する工程(3’)、
の一連の工程を少なくとも1回行う請求項1に記載の構造体の製造方法。 - 前記複合膜形成工程において、前記工程(1)の後、前記工程(2)を行う前に、前記被覆膜の一部および前記鋳型を除去する請求項1または2に記載の構造体の製造方法。
- 前記除去される被覆膜の一部が、前記被覆膜の上端部である請求項1〜3のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
- 前記被覆工程において、前記有機被覆膜を、前記第二の被覆膜の高さよりも厚い膜厚で形成する請求項1〜4のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
- 前記金属酸化物層を、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物(W)が溶剤(S)に溶解してなる金属酸化物層形成用材料を用いて形成する請求項1〜5のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
- 前記金属化合物(W)が、イソシアネート基および/またはハロゲン原子を2個以上有するケイ素化合物である請求項6に記載の構造体の製造方法。
- 前記溶剤(S)が、前記金属化合物(W)と反応する官能基を有さない溶剤(S1)を含有する請求項6または7に記載の構造体の製造方法。
- 水溶液中で正の電荷を帯びる部位を有する水溶性樹脂(A1)を含有する第一の水溶液と、水溶液中で負の電荷を帯びる部位を有する水溶性樹脂(A2)を含有する第二の水溶液とから構成される有機膜形成用材料を用いて前記有機膜を形成する請求項1〜8のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
- 前記被覆膜の表面に、前記有機膜形成用材料の第一の水溶液および第二の水溶液を交互に接触させることにより前記有機膜を形成する請求項9に記載の構造体の製造方法。
- 前記鋳型が、分子量500以上の有機化合物を含有する鋳型形成用材料からなるものである請求項1〜10のいずれか一項に記載の構造体の製造方法。
- 前記鋳型形成用材料がレジスト組成物である請求項11に記載の構造体の製造方法。
- 請求項1〜12のいずれか一項に記載の構造体の製造方法により製造される構造体。
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