近年、人工衛星からの電波によってデジタルテレビ放送などのサービスを受けることが、一般に浸透しつつある。例えば、個々の家庭などの受信側は、衛星放送受信用のアンテナを用いて人工衛星からの電波を直接受信することにより、衛星放送を受信している。衛星放送には、放送衛星を利用するBS放送や、通信衛星を利用するCS放送がある。
衛星放送から送信されている周波数を、衛星放送受信用のアンテナにて受信後にチューナに伝送するためにそのまま同軸ケーブルに流すと、非常に減衰が大きい。このため、衛星放送受信用のアンテナには、衛星放送受信用のアンテナにて受信した電波の映像信号を、同軸ケーブルに流す前に入力するLNB(Low Noise Block Converter:ローノイズコンバータ)が取り付けられている。LNBは、入力した映像信号の周波数を中間周波数(以下、IFと記す)に変換してIF信号を作成する低雑音コンバータである。これにより、衛星放送受信用のアンテナにて受信した電波は、LNBにて衛星放送から送信されている周波数からIFに変換された後、同軸ケーブルを介してチューナに伝送される。
なお、LNBは、特に、衛星放送受信用の低雑音コンバータとして使用する場合、衛星放送受信コンバータやBSコンバータとも呼ばれる。そこで、以下では、衛星放送受信コンバータと記して説明する。
さて、様々な人工衛星が異なる軌道上に存在している。このため、異なる軌道上にある別々の人工衛星からの電波を受信するためには、その人工衛星毎に、衛星放送受信用のアンテナおよび衛星放送受信コンバータの組を設ける必要がある。この場合、受信する電波の種類に応じてアンテナおよび衛星放送受信コンバータの組を切り替える切替回路が、衛星放送受信コンバータと同軸ケーブルとの間に備えられる。切替回路は、チューナから上記同軸ケーブルを介して供給される制御信号に応じて自動的に動作する。
ところが、上記切替回路が適切に動作せず、所望の電波を適切に受信することができない場合があった。つまりは、切替回路には、チューナにおいて作成した制御信号が同軸ケーブルを介して供給されている。このため、制御信号として供給されるパルス信号の立ち上がりが、同軸ケーブルを伝搬する間に鈍ってしまう事態が発生し、衛星放送受信コンバータを切り替えるために切替回路を初期化することができず、切替回路を適切に動作させることができない場合があった。
これに対し、特許文献1には、チューナから切替回路への電圧の供給を開始する際、切替回路を初期化するリセット信号を確実に生成可能な電圧を供給することにより、切替回路の動作を適切に制御して、所望の電波を適切に受信する技術が記載されている。
また、人工衛星毎に衛星放送受信用のアンテナおよび衛星放送受信コンバータの組を設けずに、アンテナおよび衛星放送受信コンバータの組を1つだけ設けて受信するために、衛星放送受信コンバータに内蔵されている周波数変換用の局部発振器の発振周波数を、チューナから供給される制御信号により切り替えるスイッチング回路を備えるように構成した衛星放送受信コンバータも知られている。
しかし、上記スイッチング回路は、チューナから制御信号として供給されるDC電圧に22kHzの周波数の信号が重畳されたパルス信号を、一般的なAM検波技術を利用して検波した結果に応じて駆動するようになっている。このため、ノイズなどの大きな振幅を有する信号が入力した場合に、正規の信号として誤検出をしてしまうという問題があった。
そこで、特許文献2および特許文献3には、チューナから供給されるパルス信号の信号レベルを判断して検出するのではなく、周波数値を直接判断してその有無を検出することにより、スイッチ回路が誤動作することを防止する技術が記載されている。スイッチ回路に入力されるパルス信号の周波数が所定の周波数範囲内にあるか否かを、特許文献2に記載の技術は、周波数を電圧に変換して周波数検出を行うことにより判断し、特許文献3に記載の技術は、周波数カウンタ回路の計測値により検出することにより判断している。
なお、上述したようなチューナから衛星放送受信コンバータに制御信号を与えることにより、衛星放送受信コンバータの動作を自動的に切り替える方式は、DiSEqC(Digital Satellite Equipment Control)と呼ばれている。DiSEqCは、衛星放送の受信技術分野において、衛星放送を受信する通信方式として規格化されている通信方式である。DiSEqCでは、制御信号として、DC電圧に22kHzの周波数の信号を重畳したパルス信号を、チューナから供給することになっている。また、チューナは、高低2種類(13V/17V)の電圧を、切り替えながら、衛星放送受信コンバータに供給する。
次いで、従来の衛星放送受信コンバータとして、異なる軌道上にある別々の人工衛星からの電波を受信し、DiSEqC通信に基づいて、衛星放送受信用のチューナと通信することが可能な衛星放送受信コンバータの構成および処理動作について説明する。
図6は、従来の衛星放送受信コンバータ100の構成を示す。
従来の衛星放送受信コンバータ100は、図6に示すように、人工衛星から送信された電波(12.2〜12.7GHz帯のマイクロ波信号)を、衛星放送受信用のアンテナ(図示せず)において反射させることにより、衛星放送受信コンバータ100のフィードホーンを介して受信する。そして、衛星放送受信コンバータ100は、入力した信号を、例えば、1GHzのIF信号に周波数変換した後、同軸ケーブル140を介して、衛星放送受信用のチューナ150に供給する。
衛星放送受信コンバータ100は、西経129度、西経119度、および西経110度の軌道上にある人工衛星からそれぞれ送信された、異なる種類の電波を、各電波の信号毎に周波数変換する周波数変換部と、周波数変換部から出力されたIF信号のうち、チューナ150に供給するIF信号を選択する信号選択部と、信号選択部から出力されたIF信号を増幅して出力する増幅出力部とにより構成されている。
周波数変換部は、低ノイズアンプ(LNA)111a〜111c、バンドパスフィルタ(BPF)112a〜112c、ミキサ(MIX)113a〜113c、局部発振器114h・114l、バッファアンプ115h・115l、フィルタ116a〜116c、結合器117a〜117c、アンプ118a〜118c、コンデンサ119a〜119cにより構成される部分である。
信号選択部は、スイッチIC120、制御部(マイコン&DiseqC Circuit)125、および電源管理回路(Power Management Circuit)126により構成される部分である。
増幅出力部は、フィルタ部121a〜121c、アンプ122a〜122c、コンデンサ123a〜123c、および入出力ポート124a〜124cにより構成される部分である。
周波数変換部では、西経129度の軌道上にある人工衛星から送信された電波の信号が、高帯域側経路と低帯域側経路とにおいて、LNA111aにて増幅され、BPF112aにてノイズが除去される。そして、BPF112aを通過した信号が、高帯域側経路では、14.35GHzで局部発振器114hにより発振されるLO信号によりIF信号に周波数変換され、低帯域側経路では、11.25GHzで局部発振器114lにより発振されるLO信号によりIF信号に周波数変換され、フィルタ116aにて必要信号成分がそれぞれ抽出された後、2つの経路のIF信号が結合器117aにより結合される。そして、IF信号が、アンプ118aおよびコンデンサ119aを通って、スイッチIC120に送出される。
また、西経119度および西経110度の軌道上にある人工衛星からそれぞれ送信された電波の信号においても、周波数変換部において、西経129度の軌道上にある人工衛星から送信された電波の信号と同様に処理され、スイッチIC120にそれぞれ送出される。
信号選択部では、入力されたIF信号のうち、チューナ150に供給するIF信号が制御部125の制御により選択され、入出力ポート124a〜124cに対応付けられたフィルタ部121a〜121cに送出される。詳細には、制御部125は、入出力ポート124a〜124cに接続されており、チューナ150から供給される制御信号を入力することにより、この制御信号に応じて、スイッチIC120にIF信号を選択するための選択信号を与えている。また、制御部125は、入出力ポート124a〜124cに接続されるとともにチューナ150から同軸ケーブル140を介して電源が供給される電源管理回路126により、供給される電源が管理されている。
増幅出力部では、スイッチIC120から出力されたIF信号が、フィルタ部121a(121b、121c)にて必要信号成分が抽出され、アンプ122a(122b、122c)にて増幅された後、コンデンサ123a(123b、123c)を通って、入出力ポート124a(124b、124c)に送出される。入出力ポート124a(124b、124c)から出力されたIF信号は、同軸ケーブル140を介して、チューナ150に送出される。
このように、従来の衛星放送受信コンバータ100では、異なる軌道上にある別々の人工衛星からの電波を受信してIF信号に周波数変換した後、チューナ150に供給するIF信号を自動的に選択してチューナ150に供給することが、1つの筐体で可能となっている。
ここで、チューナ150から制御部125に供給される制御信号は、DC電圧に22kHzの周波数の信号を重畳したパルス信号である。それゆえ、制御部125は、DiSEqC通信に基づいて、チューナ150から供給されるパルス信号をデータ処理し、スイッチIC120にてIF信号を選択するための選択信号を作成している。
つまりは、DiSEqC通信においては、制御部125は、入力された制御信号すなわちパルス信号を、図7に示すように、そのパルス信号が発生しているパルス時間によって、データ1およびデータ0の振り分け(ビット処理)を行っている。データ1はパルス時間が400〜600μsecの時間幅を持って規定され、データ0はパルス時間800〜1200μsecの時間幅を持って規定されている。これにより、制御部125は、入力されたパルス信号のパルス時間が500μsecの場合は、データ1として処理し、入力されたパルス信号のパルス時間が1000μsecの場合は、データ0として処理する。
ところが、ノイズの影響や、制御部125(マイコンなど)の読み取り精度の問題によって、パルス時間の伸び縮み(ずれ)が発生する場合がある。ノイズの影響によりパルス時間が縮んだ場合の例を図8に示し、また、ノイズの影響によりパルス時間が伸びた場合の例を図9に示す。図8は、本来400μsecであるパルス検知時間(パルス時間)が314μsecに縮んでいる状態を示している。図9は、本来600μsecであるパルス検知時間が667μsecに伸びている状態を示している。
このため、パルス時間が600〜800μsecの領域で観測される場合が発生してしまう。しかし、この600〜800μsecの領域で観測されたパルス時間であっても、1か0のどちらかのデータに振り分けなければならない。そこで、通常は、上記領域のセンター値である700μsecをしきい値に設定して振り分けを行っている。これにより、例えば630μsecのパルス時間が入ってくればデータ1、例えば750μsecのパルス時間が入ってくればデータ0というように振り分けを行っている。このデータ1とデータ0との集まり(例えば3バイトの集まり)を、制御部125はコマンドとして認識し、通信処理を行う。
特開2000−341161号公報(平成12年12月8日公開)
特開2005−347975号公報(平成17年12月15日公開)
特開2006−25157号公報(平成18年1月26日公開)
しかしながら、上述した従来の技術では、600〜800μsecの領域で観測されたパルス時間を、上記領域のセンター値である700μsecをしきい値に設定して振り分けを行っているため、100μsec以上のパルス時間の伸び縮みが発生する場合に、正しく通信処理することができないという問題点を有している。
つまりは、実際にはノイズの影響により、最大で150μsec程度の伸び縮みが発生することが分かっている。そのため、例えば700μsecのパルス時間を観測した場合、従来技術では、そのパルス時間がデータ1の振り分け領域である600μsecのパルス時間が延びて700μsecに達したのか、あるいは、データ0の振り分け領域である800μsecのパルス時間が縮んで700μsecになってしまったのかを判断することができない。それゆえ、ノイズの影響が大きく、100μsec以上のパルス時間の伸び縮みが生じる場合、正しいデータ処理が行われないので、制御部125はコマンドを認識できず、通信エラーが発生してしまう。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、ノイズの影響などによるパルス時間の伸び縮みに起因する通信エラーを防止することができる衛星装置の制御方法、および衛星装置を提供することにある。
本発明の衛星装置の制御方法は、上記課題を解決するために、衛星放送受信用チューナから与えられるパルス信号の列からなる制御信号に基づいて、衛星から発信された複数の映像信号のうち、何れか1つの映像信号を上記衛星放送受信用チューナに送出する衛星装置の制御方法において、上記制御信号に含まれるパルス信号のパルス幅に対して論理値1と論理値0とを振り分けるためのしきい値を複数設定する第1のステップと、上記設定したそれぞれのしきい値に基づいて、上記制御信号を論理値1と論理値0とからなるデータ系列に変換する第2のステップと、上記変換したそれぞれのデータ系列のうち、上記衛星放送受信用チューナに送出する信号を指示する命令が記述されているデータ系列に基づいて、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を決定する第3のステップと、を含むことを特徴としている。
従来、例えば、ノイズの影響やマイコンの読み取り精度の問題などによって、パルス幅の伸び縮み(ずれ)が発生していた。このため、パルス信号の列からなる制御信号を論理値1と論理値0とからなるデータ系列に変換する際、使用するしきい値によっては、正しいデータ系列に変換できず、制御信号に応じた処理を行うことができなかった。
これに対し、上記の構成によれば、それぞれのしきい値に基づいて制御信号を変換したデータ系列を得る。そして、複数のデータ系列のうち、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を特定し、その特定したデータ系列に基づいて、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を決定することになる。
これにより、パルス幅の伸び縮みが発生したとしても、それぞれのしきい値に基づいて制御信号を変換したデータ系列を導出するので、いずれかのしきい値により、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を正しく導出することが可能となる。それゆえ、衛星放送受信用チューナから与えられる制御信号に応じて、衛星放送受信用チューナに映像信号を確実に送出することが可能となる。よって、衛星装置と衛星放送受信用チューナとの間における、パルス幅の伸び縮みに起因する通信エラーを防止することが可能となる。
また、本発明の衛星装置の制御方法は、上記第3のステップは、上記複数のしきい値のうち最も大きい値のしきい値に基づいて変換したデータ系列から順番に、上記複数のしきい値のうち最も小さい値のしきい値に基づいて変換したデータ系列に至る順番により、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を特定することが好ましい。
複数のしきい値のうち最も大きい値のしきい値は、パルス幅が伸びる方向に、論理値1と論理値0とを振り分ける振り分け許容量が大きい。それゆえ、上記の構成によれば、パルス幅が伸びる方向にあるという場合に、特に有効的に、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を特定することが可能となる。
また、本発明の衛星装置の制御方法は、上記第3のステップは、上記複数のしきい値のうち最も小さい値のしきい値に基づいて変換したデータ系列から順番に、上記複数のしきい値のうち最も大きい値のしきい値に基づいて変換したデータ系列に至る順番により、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を特定することが好ましい。
複数のしきい値のうち最も小さい値のしきい値は、パルス幅が縮む方向に、論理値1と論理値0とを振り分ける振り分け許容量が大きい。それゆえ、上記の構成によれば、パルス幅が縮む方向にあるという場合に、特に有効的に、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を特定することが可能となる。
また、本発明の衛星装置の制御方法は、上記第3のステップは、上記制御信号に含まれるパルス信号のパルス幅の分布に応じて、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を特定することが好ましい。
上記の構成によれば、パルス幅の伸び縮みが発生したとしても、実際に与えられるパルス幅を参照して、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を特定することにより、通信環境に合った好適なデータ系列を特定することが可能となる。
また、本発明の衛星装置の制御方法は、上記制御信号に含まれるパルス信号のパルス幅は、時間軸に沿ったパルス信号の発生時間により識別し、上記しきい値として、時間単位の値を用いることが好ましい。
上記の構成によれば、しきい値を簡単に設定することが可能となる。また、例えば、DiSEqC(Digital Satellite Equipment Control)においては、400〜600μsecの範囲のパルス幅を論理値1に、800〜1200μsecの範囲のパルス幅を論理値0に振り分けることが規定されている。ゆえに、時間単位のしきい値を用いれば、制御信号を論理値1と論理値0とからなるデータ系列に容易に変換することが可能となる。
また、本発明の衛星装置の制御方法は、上記しきい値として、600μsecの第1のしきい値、および、800μsecの第2のしきい値を設定するとともに、上記分布において1000μsec以上のパルス幅が存在する場合、第2のしきい値に基づいて変換したデータ系列を、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列として特定することが好ましい。
例えば、DiSEqC通信において、パルス幅に199μsecの伸び縮みがある場合、論理値1に振り分ける最大のパルス幅は、本来600μsecのパルス幅が199μsec伸びたときの799μsecとなる。また、論理値0に振り分ける最小のパルス幅は、本来800μsecのパルス幅が199μsec縮んだときの601μsecとなる。
これにより、上記の構成のように、しきい値として、600μsecの第1のしきい値、および、800μsecの第2のしきい値を設定し、また、論理値0に振り分けるパルス幅に注目して、1000μsec以上のパルス幅が存在するかどうかを判断材料とすることにより、最大199μsecまで伸び縮むパルス幅に対応して、好適なデータ系列を特定することが可能となる。
また、本発明の衛星装置の制御方法は、上記しきい値として、600μsecの第1のしきい値、および、800μsecの第2のしきい値を設定するとともに、上記分布において500μsec以下のパルス幅が存在する場合、第1のしきい値に基づいて変換したデータ系列を、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列として特定することが好ましい。
上記の構成によれば、しきい値として、600μsecの第1のしきい値、および、800μsecの第2のしきい値を設定し、また、論理値1に振り分けるパルス幅に注目して、500μsec以下のパルス幅が存在するかどうかを判断材料とすることにより、最大199μsecまで伸び縮むパルス幅に対応して、好適なデータ系列を特定することが可能となる。
また、本発明の衛星装置は、上記課題を解決するために、衛星放送受信用チューナから与えられるパルス信号の列からなる制御信号に基づいて、衛星から発信された複数の映像信号のうち、何れか1つの映像信号を上記衛星放送受信用チューナに送出する衛星装置において、上記制御信号に含まれるパルス信号のパルス幅に対して論理値1と論理値0とを振り分けるしきい値に基づいて、上記制御信号を論理値1と論理値0とからなるデータ系列に変換し、当該データ系列に基づいて、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号の選択を制御する制御手段を備え、上記しきい値は、複数設けられ、かつ、上記パルス幅の変動に対応するように予め設定されていることを特徴としている。
従来、例えば、ノイズの影響やマイコンの読み取り精度の問題などによって、パルス幅の伸び縮みが発生していた。このため、パルス信号の列からなる制御信号を論理値1と論理値0とからなるデータ系列に変換する際、使用するしきい値によっては、正しいデータ系列に変換できず、制御信号に応じた処理を行うことができなかった。
これに対し、上記の構成によれば、パルス幅の伸び縮みが発生したとしても、パルス幅の変動すなわち上記伸び縮みに対応するように予め複数のしきい値が設定されていることにより、いずれかのしきい値により、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を選択する命令が記述されているデータ系列を、確実に導出することが可能となる。
それゆえ、衛星放送受信用チューナから与えられる制御信号に応じて、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を選択し、衛星放送受信用チューナに信号を確実に送出することが可能となる。よって、衛星装置と衛星放送受信用チューナとの間における、パルス幅の伸び縮みに起因する通信エラーを防止することが可能となる。
また、本発明の衛星装置は、上記制御手段は、それぞれのしきい値に基づいて変換したデータ系列を、メモリにそれぞれ格納することが好ましい。
上記の構成によれば、制御信号は、論理値1と論理値0とからなるデータ系列に変換されてメモリに格納されるので、制御信号をそのまま格納する場合と比べて、データ量を低減するとともに、必要なメモリ量を減らすことが可能となる。それゆえ、制御手段は、効率の良い制御を行うことが可能となる。
以上のように、本発明の衛星装置の制御方法は、衛星放送受信用チューナから与えられるパルス信号の列からなる制御信号に基づいて、衛星から発信された複数の映像信号のうち、何れか1つの映像信号を上記衛星放送受信用チューナに送出するために、上記制御信号に含まれるパルス信号のパルス幅に対して論理値1と論理値0とを振り分けるためのしきい値を複数設定する第1のステップと、上記設定したそれぞれのしきい値に基づいて、上記制御信号を論理値1と論理値0とからなるデータ系列に変換する第2のステップと、上記変換したそれぞれのデータ系列のうち、上記衛星放送受信用チューナに送出する信号を指示する命令が記述されているデータ系列に基づいて、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を決定する第3のステップと、を含む方法である。
これにより、ノイズの影響やマイコンの読み取り精度の問題などによって、パルス幅の伸び縮みが発生したとしても、それぞれのしきい値に基づいて制御信号を変換したデータ系列を導出するので、いずれかのしきい値により、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を指示する命令が記述されているデータ系列を正しく導出することが可能となる。
それゆえ、衛星放送受信用チューナから与えられる制御信号に応じて、衛星放送受信用チューナに映像信号を確実に送出することができる。よって、衛星装置と衛星放送受信用チューナとの間における、パルス幅の伸び縮みに起因する通信エラーを防止することができる衛星装置の制御方法を提供するという効果を奏する。
また、本発明の衛星装置は、衛星放送受信用チューナから与えられるパルス信号の列からなる制御信号に基づいて、衛星から発信された複数の映像信号のうち、何れか1つの映像信号を上記衛星放送受信用チューナに送出するために、上記制御信号に含まれるパルス信号のパルス幅に対して論理値1と論理値0とを振り分けるしきい値に基づいて、上記制御信号を論理値1と論理値0とからなるデータ系列に変換し、当該データ系列に基づいて、上記衛星放送受信用チューナに送出する映像信号の選択を制御する制御手段を備え、上記しきい値は、複数設けられ、かつ、上記パルス幅の変動に対応するように予め設定されている構成である。
これにより、ノイズの影響やマイコンの読み取り精度の問題などによって、パルス幅の伸び縮みが発生したとしても、パルス幅の変動すなわち上記伸び縮みに対応するように予め複数のしきい値が設定されていることにより、いずれかのしきい値により、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を選択する命令が記述されているデータ系列を、確実に導出することが可能となる。
それゆえ、衛星放送受信用チューナから与えられる制御信号に応じて、衛星放送受信用チューナに送出する映像信号を選択し、衛星放送受信用チューナに信号を確実に送出することができる。よって、衛星装置と衛星放送受信用チューナとの間における、パルス幅の伸び縮みに起因する通信エラーを防止することができる衛星装置を実現するという効果を奏する。
また、本発明の衛星装置は、ソフトウェア的な解決方法であるため、追加部品などを構成する必要はなく、コストアップ要素は無いという効果も合わせて奏する。
本発明の一実施形態について図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
図1は、本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10の一構成例を示すブロック図である。
本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10は、LNBやBSコンバータとも呼ばれるものであり、屋外に設置される衛星放送受信用のアンテナ(図示せず)に取り付けられる。そして、衛星放送受信コンバータ10は、上記アンテナにより受信した電波の映像信号を、DiSEqC通信に基づき、同軸ケーブル40を介して、屋内に設置される衛星放送受信用のチューナ50に送出する。同軸ケーブル40およびチューナ50は、DiSEqC通信が可能なものであればよく、従来使用されているものを利用することが可能である。
本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10は、異なる軌道上にある2つの人工衛星からそれぞれ送信された、異なる種類の電波(例えば、12.2〜12.7GHz帯のマイクロ波信号)を、各電波の信号毎に周波数変換して、例えば、1GHzのIF信号を作成する周波数変換部と、周波数変換部から出力されたIF信号のうち、チューナ50に供給するIF信号を選択する信号選択制御部と、信号選択制御部から出力されたIF信号を増幅して出力する増幅出力部とにより構成されている。なお、1つの人工衛星から複数の電波が発信されている場合であっても良い。
周波数変換部は、人工衛星から送信された電波の信号が入力される初段アンプおよび2段目アンプからなる低ノイズアンプ(LNA)11a・11bと、LNA11a・11bから出力された信号の周波数をIFにダウンコンバートするミキサ(MIX)12a・12bと、MIX12a・12bに局部発振信号を供給する局部発振器13とにより構成される部分である。衛星放送受信コンバータ10では、局部発振器13を共用して、異なる2種類の電波毎に、周波数を変換する回路が設けられている。
信号選択制御部は、スイッチIC14、アナログIC18、およびマイコン19により構成される部分である。信号選択制御部の詳細な構成については後述する。
増幅出力部は、スイッチIC14から出力されたIF信号が入力されるIFアンプ15と、IFアンプ15の出力部に接続されるコンデンサ16と、コンデンサ16の一方の端子に接続され、衛星放送受信コンバータ10の外部と信号の入出力が可能な入出力ポート17とにより構成される部分である。入出力ポート17は、同軸ケーブル40を介して、チューナ50の入出力ポートに接続されている。
なお、本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10において注目すべきは、チューナ50から同軸ケーブル40を介して与えられる制御信号に基づいた、衛星放送受信コンバータ10の制御方法である。そのため、図1に示す衛星放送受信コンバータ10は、上記衛星放送受信コンバータ10の制御方法を説明する上で、必要最小限の構成を挙げている。また、受信する人工衛星からの電波の種類も3種類に限定されるものではない。
ゆえに、衛星放送受信コンバータ10の構成は図1に示す構成に限定されるものではない。特に、衛星放送受信コンバータ10における周波数変換部および増幅出力部は、人工衛星から送信された電波の信号を周波数変換して、好適にIF信号を作成する構成であれば、その構成は設計に応じて種々に変更が可能である。例えば、衛星放送受信コンバータ10における周波数変換部は、図6に示した周波数変換部のように構成しても良いし、増幅出力部は、図6に示した増幅出力部のように構成しても良い。
続いて、信号選択制御部の詳細な構成について説明する。
スイッチIC14は、MIX12a・12bから出力されたIF信号のうち、チューナ50に送出するIF信号を、マイコン19から供給される選択信号に基づいて選択するように構成されたICである。すなわち、スイッチIC14は、チューナ50に送出するIF信号を、マイコン19から供給される選択信号に基づいて切り替えている。スイッチIC14は、選択したIF信号をIFアンプ15に出力する。
アナログIC18は、チューナ50から与えられる制御信号をデジタル処理するように構成されたICであり、入力端子が入出力ポート17に接続され、出力端子がマイコン19に接続されている。アナログIC18には、制御信号として、DC電圧に22kHzの周波数の信号を重畳したパルス信号が、チューナ150から送られてくる。アナログIC18は、上記パルス信号を検知して、デジタル信号に変換した後、マイコン19に出力する。
マイコン19は、アナログIC18から出力されたデジタル信号を受け取り、デジタル信号に記述されているコマンドを読み取って実行することにより、スイッチIC14にて選択するIF信号を制御する制御部である。
詳細には、マイコン19は、アナログIC18から出力されたデジタル信号に含まれる各パルスの幅を、時間軸に沿ったパルスの発生時間により識別し、パルス幅に対して、しきい値に基づき、データ1(論理値1)およびデータ0(論理値0)の振り分け(ビット処理)を行う。ここで、上記パルスの発生時間により識別したパルス幅を、以下ではパルス時間と称する。上記しきい値は、複数設けられ、パルス時間の伸び縮みに対応可能なように予め設定される。
そして、マイコン19は、ビット処理後のデータ1とデータ0との集まり(例えば5バイトの集まり)(データ系列)を、チューナ50から指示されるコマンド、例えば、チューナ150に送出するIF信号を指示する命令が記述されているコマンドとして認識し、スイッチIC14に指示に応じた選択信号を供給する。なお、上記パルス時間のビット処理は、マイコン19が行う制御の一部であり、マイコン19は、衛星放送受信コンバータ10における他の制御も行っている。
上記構成を有する、本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10では、人工衛星から送信された電波が、衛星放送受信用のアンテナにおいて反射することにより、衛星放送受信コンバータ10のフィードホーンを介して受信される。そして、衛星放送受信コンバータ10に入力された信号は、LNA11a・11bにて増幅され、MIX12a・12bにてIF信号にダウンコンバートされた後、スイッチIC14に出力される。そして、スイッチIC14にて、マイコン19から供給される選択信号に基づいて選択され出力されたIF信号が、IFアンプ15にて増幅され、コンデンサ16を通って、入出力ポート17から、同軸ケーブル40を介して、チューナ50に送出される。
これにより、衛星放送受信コンバータ10では、異なる軌道上にある別々の人工衛星からの電波を受信してIF信号に周波数変換した後、チューナ50に供給するIF信号を自動的に選択してチューナ50に供給することが、1つの筐体で可能となっている。
次に、本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10の制御方法について、詳細に説明する。本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10は、チューナ50から同軸ケーブル40を介して与えられる制御信号に基づいた、衛星放送受信コンバータ10の制御を特徴点としている。
図2は、本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10におけるマイコン19のデータ処理の流れを示すフローチャートである。
まず、チューナ50から制御信号を供給して、衛星放送受信コンバータの制御を開始する前に、マイコン19にしきい値を設定する。DiSEqC通信においては、データ1はパルス時間が400〜600μsecの時間幅を持って規定され、データ0はパルス時間800〜1200μsecの時間幅を持って規定されている。なお、データ0はデータ1の2倍の時間となっている。そこで、600〜800μsecの領域で観測されたパルス時間をビット処理するためのしきい値として、以下の説明では、例えば、760μsecのしきい値大と、640μsecのしきい値小との2つのしきい値を、マイコン19に設定したとする。
チューナ50が、制御信号を、衛星放送受信コンバータ10に向かって出力する。チューナ50と衛星放送受信コンバータ10との間には、DiSEqC通信が行われている。よって、DC電圧に22kHzの周波数の信号を重畳したパルス信号が、上記制御信号として出力される。
衛星放送受信コンバータ10は、同軸ケーブル40を介して入出力ポート17に入力してきた制御信号を、アナログIC18に入力させる。アナログIC18は、入力した制御信号のパルスを検知して、デジタル信号に変換する。図3に、アナログIC18における、(a)は入力前の信号波形、(b)は出力後の信号波形を示す。よって、(b)に示すようなパルス信号の列からなる制御信号が、マイコン19に出力されることになる。
なお、このデジタル信号に変換する際、従来技術では、アナログICの性能によって、本来のパルス時間を正しく変換できず、パルス時間の伸び縮みが生じるという問題があった。これに対し、衛星放送受信コンバータ10では、マイコン19が、パルス時間の伸び縮みの影響を回避する処理を行うことにより、パルス時間の伸び縮みに起因する通信エラーを防止することが可能となっている。
アナログIC18から出力されたデジタル信号がマイコン19に入力されると、マイコン19は、デジタル信号におけるパルスが発生している時間、すなわちパルス時間を計測する(ステップS1)。例えば、図3に示すように、マイコン19は、1つ目のパルス時間が610μsec、2つ目のパルス時間が590μsec、3つ目のパルス時間が1250μsec、4つ目のパルス時間が300μsecと、入力されるパルスから順番に計測する。パルス時間は、DC電圧に22kHzの周波数の信号が重畳されたパルス信号の1つの塊の時間幅とも呼ぶことができる。
続いて、マイコン19は、計測したパルス時間に対して、しきい値小に基づいて、データ1およびデータ0の振り分け(ビット処理)を行う。詳細には、マイコン19は、パルス時間が400〜600μsecの場合はデータ1に振り分け、パルス時間800〜1200μsecの場合はデータ0に振り分ける。また、パルス時間が600〜800μsecの場合は、しきい値小に基づいて、データを振り分ける。すなわち、マイコン19は、しきい値小よりも小さければデータ1に振り分け、しきい値小よりも大きければデータ0に振り分ける。マイコン19は、ビット処理の結果算出(変換)したデータ系列を、メモリ(図示せず)の小用エリアに追加しながら格納していく(ステップS2)。
続いて、マイコン19は、計測したパルス時間に対して、しきい値大に基づいて、データ1およびデータ0の振り分け(ビット処理)を行う。すなわち、マイコン19は、しきい値大よりも小さければデータ1に振り分け、しきい値大よりも大きければデータ0に振り分ける。マイコン19は、ビット処理の結果算出したデータ系列を、メモリの大用エリアに追加しながら格納していく(ステップS3)。
続いて、マイコン19は、入力されるパルスデータが終了したか否かを判断する(ステップS4)。詳細には、マイコン19は、パルスを検知してから、所定の設定された時間に次のパルスが入力されて来なければ、パルスデータが終了したと判断する。パルスデータが終了していないと判断する場合(ステップS4でno)、マイコン19は、ステップ1に戻って、入力されてくるパルスのパルス時間を計測する。一方、パルスデータが終了したと判断する場合(ステップS4でyes)、続く処理に進む。制御信号はパルス信号の列からなっているので、この時点で、制御信号全体を読み取ることになる。
続いて、マイコン19は、しきい値大に基づいてビット処理したデータ系列を、正しく変換されているものと仮定して、そのデータ系列に記述されたコマンドに沿って処理を試みる(ステップS5)。つまりは、マイコン19はデータ系列を参照して、処理可能なコマンドであるか否かを判定する(ステップS6)。
マイコン19は、処理したデータ系列が意味を成すものであるか否かを判定している。例えば、正しい命令として、データ系列が“E2 10 01”であるような決められた形があり、頭はE0〜E3と決まっている。これにより、しきい値大で変換したデータ系列が“AC 39 0f”であった場合は、マイコン19は、不当な命令と判定し、処理可能なコマンドではないと判定する。
処理可能なコマンドであると判定する場合(ステップS6でyes)、マイコン19はそのコマンドを実行する(ステップS7)。マイコン19は、スイッチIC14がIF信号を選択するための選択信号を作成し、スイッチIC14に出力する。これにより、チューナ50からの制御信号により、衛星放送受信コンバータ10がチューナ50に送出するIF信号を選択する制御が、自動的に行われる。一方、処理可能なコマンドではないと判定する場合(ステップS6でno)、続く処理に進む。
続いて、マイコン19は、しきい値小に基づいてビット処理したデータ系列を、正しく変換されているものと仮定して、そのデータ系列に記述されたコマンドに沿って処理を試みる(ステップS8)。つまりは、マイコン19はデータ系列を参照して、処理可能なコマンドであるか否かを判定する(ステップS9)。よって、マイコン19は、しきい値小で変換したデータ系列で再度処理を試みることになる。
処理可能なコマンドであると判定する場合(ステップS9でyes)、マイコン19はそのコマンドを実行する(ステップS10)。例えば、しきい値小で変換したデータが”E2 11 00“であるとすると、マイコン19は、正しい命令であると判定し、この命令を実行する。マイコン19は、スイッチIC14がIF信号を選択するための選択信号を作成し、スイッチIC14に出力する。これにより、チューナ50からの制御信号により、衛星放送受信コンバータ10がチューナ50に送出するIF信号を選択する制御が、自動的に行われる。一方、処理可能なコマンドではないと判定する場合(ステップS9でno)、マイコン19は、処理エラーと判断し(ステップS11)、制御信号の供給により開始したデータ処理を終了する。
以上のマイコン19のデータ処理により、大小2つのしきい値に基づいて、制御信号を変換したデータ系列を得る。それゆえ、パルス時間の伸び縮みが発生したとしても、いずれかのしきい値により、処理可能なコマンドが記述されているデータ系列を正しく導出することが可能となる。それゆえ、マイコン19がスイッチIC14に確実に選択信号を出力することが可能となる。よって、衛星放送受信コンバータ10とチューナ50とが、通信エラーを防止しながら、正確に通信を行うことが可能となる。
また、図2に示した処理では、マイコン19は、しきい値小に基づいてビット処理したデータ系列よりも先に、しきい値大に基づいてビット処理したデータ系列に対して、処理を試みている。それゆえ、パルス時間が伸びる方向に振り分け許容量が大きいしきい値大にてビット処理したデータ系列により、先に処理を行うので、この順番で行う処理は、基本的にパルス時間に伸び縮みがない場合、および、特にパルス時間が伸びる方向にあるという場合に有効である。
但し、この順番で行う処理は、パルス時間が縮んだ場合に注意を払う必要がある。つまりは、パルス時間が「しきい値大」よりもかなり小さく縮んだ場合は、「しきい値小」によって変換したデータ系列で正しく処理を行うことが可能であるが、パルス時間が「しきい値大」の値と同じ時間に縮んだ場合には、変換エラーが発生する可能性が残っている。このため、「しきい値大=760μsec」および「しきい値小=640μsec」の場合、160μsecの伸びまで正しく処理を行うことが可能となっている。また、縮みに対しても、160μsecの縮みまで正しく処理を行うことが可能となっている。
また、衛星放送受信コンバータ10の制御方法では、最終的には、マイコン19は、しきい値大およびしきい値小のどちらかのしきい値を使って、ビット処理により変換したデータ系列に応じて、処理を行っている。しかし、ステップS1に計測した真のパルス時間をメモリに格納して、後からデータ変換するのではなく、データ変換の前に、ステップS2およびS3の処理に示すように、予め両方のしきい値で変換したデータ系列をそれぞれメモリに格納している。
これにより、パルス時間を、例えば、614μsecと格納するよりも、変換された0または1の1bit情報を格納していく方がデータ量が少ないので、メモリの使用量を減らすことが可能となる。それゆえ、効率の良いデータ処理を行うことが可能である。
また、衛星放送受信コンバータ10の制御方法は、マイコン19の制御によって行うソフトウェア的な解決方法であるため、追加部品などは不要で、コストアップ要素は無い。また、従来存在する衛星放送受信コンバータを利用することが可能である。
なお、本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10におけるマイコン19のデータ処理は、図2を参照しながら説明した処理やその処理の順番に限るものではない。
すなわち、図2に示した処理では、マイコン19は、しきい値小に基づいてビット処理したデータ系列よりも先に、しきい値大に基づいてビット処理したデータ系列に対して、処理を試みているが、しきい値大に基づいてビット処理したデータ系列よりも先に、しきい値小に基づいてビット処理したデータ系列に対して、処理を試みてもよい。この場合、図2に示したステップS5の処理と、ステップS8の処理とを入れ替えることにより、実施可能である。
このように、先に、しきい値小に基づいてビット処理したデータ系列、その次に、しきい値大に基づいてビット処理したデータ系列、の順番で行う処理は、パルス時間が縮む方向に振り分け許容量が大きいしきい値小にてビット処理したデータ系列により、先に処理を行うので、基本的にパルス時間に伸び縮みがない場合、および、特にパルス時間が縮む方向にあるという場合に有効である。
但し、この順番で行う処理は、パルス時間が伸びた場合に注意を払う必要がある。つまりは、パルス時間が「しきい値小」よりもかなり大きく伸びた場合は、「しきい値大」によって変換したデータ系列で正しく処理を行うことが可能であるが、パルス時間が「しきい値小」の値と同じ時間に縮んだ場合には、変換エラーが発生する可能性が残っている。このため、「しきい値大=760μsec」および「しきい値小=640μsec」の場合、160μsecの縮みまで正しく処理を行うことが可能となっている。また、伸びに対しても、160μsecの伸びまで正しく処理を行うことが可能となっている。
ところで、上述した、大小2つのしきい値に基づいてそれぞれビット処理したデータ系列に対して、いずれかのデータ系列を先に用いて処理を行う方法は、通信エラーを大きく減らすことが可能であるが、それぞれのケースにおいて不得意なポイントが一点あり、通信エラーを完全に無くすことができない。
例えば、先に、しきい値大に基づいてビット処理したデータ系列に応じて処理する場合、最初に判定するしきい値をちょうどまたぐ、40μsecの縮みが発生するような状況において、通信エラーが発生する可能性がある。また、先に、しきい値小に基づいてビット処理したデータ系列に応じて処理する場合、最初に判定するしきい値をちょうどまたぐ、40μsecの伸びが発生するような状況において、通信エラーが発生する可能性がある。
そこで、上記のような通信エラーを防止するために、本実施の形態の衛星放送受信コンバータ10では、しきい値大およびしきい値小によって変換したデータ系列を、機械的にどちらかを先に使って処理を試みるという方法に限らず、パルス時間の分布に応じて、しきい値大およびしきい値小の何れかによって変換したデータ系列を使うかを決めるという方法(以下、制御方法Zと称する)により、制御することもできる。
つまりは、制御方法Zでは、データ0に振り分けるパルス時間に注目して、どちらのしきい値を採用すべきかを決定する方法としている。具体的には、1000μsec以上のパルス時間が存在するかどうかを判断材料とし、1000μsec以上のパルス時間が一回でも存在すれば「しきい値大」を、一回も存在しなければ「しきい値小」を採用するように設定している。これにより、パルス時間が最大199μsecまで伸びても縮んでも、マイコン19は、エラー無く処理を行うことが可能となっている。
この制御方法Zについて、以下に詳細に説明する。
図4に、パルス時間に199μsecの伸び縮みがある場合の、しきい値の設定を示す。
DiSEqC通信においては、データ1はパルス時間が400〜600μsecの時間幅を持って規定され、データ0はパルス時間800〜1200μsecの時間幅を持って規定されている。
図4では、データ1に規定される400〜600μsecのパルス時間のうち、最小値の400μsec、中間値の500μsec、および最大値の600μsecを、基本時間として挙げている。また、データ0はデータ1の2倍の時間となっているので、伸び縮み時間がゼロのとき、データ0に振り分けるパルス時間は、800μsec、1000μsec、および1200μsecとなる。また、縮み時間が199μsecのとき、および伸び時間が199μsecのときにおいてのパルス時間も、図4に示す。
図4を参照すると、x=500で伸び縮みがゼロおよび伸びが発生する場合、並びに、x=600で伸び縮みがゼロおよび伸び縮みが発生する場合に、1000μsec以上のパルス時間が発生することがわかる。これらの場合、データ1に振り分ける最大のパルス時間は799μsecであるので、しきい値を800μsecに設定することにより、データ系列が正しく導出されるので、マイコン19はエラーなく処理を行うことが可能となる。これにより、1000μsec以上のパルス時間が発生すれば、800μsecのしきい値により変換したデータ系列を採用するように設定している。
また、データ0に振り分ける最小のパルス時間は、本来800μsecのパルス時間が199μsec縮んだときの601μsecとなるので、しきい値を600μsecに設定することにより、マイコン19はエラーなくデータ処理を行うことが可能となる。
これにより、しきい値大を800μsec、かつ、しきい値小を600μsecに設定し、さらに、1000μsec以上のパルス幅が存在するかどうかを判断材料として、いずれのしきい値により変換したデータ系列を採用することにより、パルス時間が最大199μsecまで伸びても縮んでも、これに対応して、マイコン19は、エラー無く処理を行うことが可能となっている。
次いで、制御方法Zにおけるマイコン19のデータ処理について説明する。
まず、チューナ50から制御信号を供給して、衛星放送受信コンバータの制御を開始する前に、マイコン19にしきい値を設定する。ここでは、800μsecのしきい値大と、600μsecのしきい値小との2つのしきい値を、マイコン19に設定したとする。
続いて、チューナ50が、制御信号を、衛星放送受信コンバータ10に向かって出力すると、マイコン19は、図2のステップS1〜S4と同様の処理を行う。すなわち、アナログIC18から出力されたデジタル信号がマイコン19に入力されると、マイコン19は、デジタル信号におけるパルスが発生している時間、すなわちパルス時間を計測する。そして、マイコン19は、計測したパルス時間に対して、しきい値小に基づいて、データ1およびデータ0の振り分けを行い、その結果算出(変換)したデータ系列を、メモリの小用エリアに追加しながら格納していく。その次に、マイコン19は、計測したパルス時間に対して、しきい値大に基づいて、データ1およびデータ0の振り分けを行い、その結果算出(変換)したデータ系列を、メモリの大用エリアに追加しながら格納していく。その後、マイコン19は、入力されるパルスデータが終了したか否かを判断する。パルスデータが終了したと判断した後、図5に示す制御方法Zに沿った、続く処理に進む。
図5は、制御方法Zに沿ったマイコン19のデータ処理の流れを示すフローチャートである。
マイコン19がパルスデータが終了したと判断した後、マイコン19は、計測したパルス時間を参照しながら、1000μsec以上のパルス時間が存在するか否かを判定する(ステップS21)。例えば、マイコン19は、個別のパルス時間を計測している最中に、1000μsecを超えるパルス時間を計測すれば、その時点でフラグを立てる。一旦立ったフラグは、制御信号内の全てのパルス時間を調べ終わるまで維持される。これにより、制御信号内の全てのパルス時間を調べた後、マイコン19は、フラグの状態を確認して、1000μsec以上のパルス時間が存在するか否かを判定する。
マイコン19は1000μsec以上のパルス時間が存在すると判定すると(ステップ21でyes)、マイコン19は、しきい値大に基づいてビット処理したデータ系列に記述されたコマンドに沿って処理を実行する(ステップS22)。マイコン19は、スイッチIC14がIF信号を選択するための選択信号を作成し、スイッチIC14に出力する。これにより、チューナ50からの制御信号により、衛星放送受信コンバータ10がチューナ50に送出するIF信号を選択する制御が、自動的に行われる。
一方、マイコン19は1000μsec以上のパルス時間が存在しないと判定すると(ステップ21でno)、マイコン19は、しきい値小に基づいてビット処理したデータ系列に記述されたコマンドに沿って処理を実行する(ステップS23)。マイコン19は、スイッチIC14がIF信号を選択するための選択信号を作成し、スイッチIC14に出力する。これにより、チューナ50からの制御信号により、衛星放送受信コンバータ10がチューナ50に送出するIF信号を選択する制御が、自動的に行われる。
以上のマイコン19のデータ処理により、大小2つのしきい値に基づいて、制御信号を変換したデータ系列を得る。そして、パルス時間の分布に応じて、実行するデータ系列を決定している。それゆえ、通信環境に合うように、実際に入力されるパルス時間に適応して決定したデータ系列で処理を行うので、パルス時間が最大199μsecまで伸びても縮んでも、マイコン19がスイッチIC14に確実に選択信号を出力することが可能となる。よって、衛星放送受信コンバータ10とチューナ50とは、通信エラーを防止しながら、正確に通信を行うことが可能となる。
また、上述した制御方法Zでは、データ0に振り分けるパルス時間に注目して、1000μsec以上のパルス時間が存在するかどうかを判断材料としているが、これに限らない。すなわち、逆に、データ1に振り分けるパルス時間に注目して、500μsec以下のパルス時間が存在するかどうかを判断材料とすることも可能である。この場合においても、1000μsec以上のパルス時間が存在するかどうかを判断材料とする場合と同様の効果を発揮する。
なお、上述した何れの制御方法においても、大小2つのしきい値を設けたが、しきい値は2つに限らない。すなわち、少なくとも2つ以上の異なる値のしきい値を設ければ実施可能であり、複数設けて使い分けることによって、想定されるパルス時間の伸び縮みに好適に対応することが可能となる。また、しきい値として、時間単位の値を用いたが、時間単位に限定するものでもなく、制御信号をデータ系列に変換可能な基準であれば構わない。
また、上述した何れの制御方法においても、アナログIC18から出力されたデジタル信号に対して、マイコン19はデータ処理を行ったが、デジタル信号に限るわけでななく、マイコン19はアナログ信号に対してデータ処理を行うことも可能である。すなわち、マイコン19がパルス時間を計測して、チューナ50からの制御指示を読み取ることができれば、デジタル信号でもアナログ信号でもどちらであっても構わない。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。