JP2009046414A - プレニルフラボノイド、その製造方法、抗癌剤及び抗菌剤 - Google Patents

プレニルフラボノイド、その製造方法、抗癌剤及び抗菌剤 Download PDF

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Abstract

【課題】抗癌作用及び抗菌作用等を発揮して医薬品として有用な新規プレニルフラボノイド及びその製造方法の提供。
【解決手段】下記一般式(1)に示されるプレニルフラボノイド。
Figure 2009046414

式中、R1 〜R9 は水素、水酸基又はメトキシ基を示す。例えば、一般式(1)のプレニルフラボノイドは、原料としてガランギン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより製造される。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規なプレニルフラボノイド及びその製造方法に係り、さらにプレニルフラボノイドを有効成分として含有する抗癌剤及び抗菌剤に関する。
一般に、炭素数5のイソプレン単位から構成されるプレニル基を芳香族化合物に転移する酵素として多種類のプレニル基転移酵素(プレニルトランスフェラーゼ)が知られている。微生物の生体内で芳香族化合物を原料にプレニル基を付加する反応によって、ヒトに対して有用な様々な生理活性物質が生合成されることが知られる。例えば、抗酸化物質のナフテルピン、抗腫瘍活性を示すフラノキシン、その他多数のポリフェノール等が産生されている。抗酸化物質のナフテルピンは、放線菌、例えば、ストリプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)CL190株から生合成されることが知られている。ナフテルピンは、マロニル−CoAを出発原料として、中間代謝物のテトラヒドロキシナフタレン(THN)、若しくはフラビオリン又はその代謝物に、炭素数10のゲラニル二リン酸(GPP)由来のゲラニル基が付加して合成される(非特許文献1,2参照)。ゲラニル基を付加してナフテルピンを合成する酵素として、プレニル基転移酵素(ゲラニル基転移酵素)が、同定され、アミノ酸配列及び立体構造等が解明されている(非特許文献1,2参照)。ナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を用いて、芳香族化合物を原料にプレニル基を付加し、ヒトに対して有用な様々な生理活性物質が創製されることが期待されている。
特開2004−159563号公報 Kuzuyama T, et al: Nature (2005) 435: 983-987 葛山智久:細胞工学 (2005) 24: 830-831
ところで、プロポリスは、巣の防御及び補強等を目的として、ミツバチが種々の植物の滲出液、新芽、及び樹脂等から集めてきた膠状ないしは蝋状の物質である。このプロポリスは、抗菌効果や抗炎症効果を有していることが古くから知られている。また、プロポリスの主要な生理活性として、抗酸化作用及び免疫賦活作用が知られている。
プロポリス中に含まれる有効成分としては、極性の高い有機酸、フラボノイド類等のポリフェノール類、極性の低いテルペノイド類、その他各種のミネラル、ビタミン等の多種多様な有用成分を含有している。これら多様な種類の有効成分の生理活性が複雑に作用しあって、プロポリスの優れた生理活性を形成しているものと考えられる。例えば、フラボノイド類により抗酸化作用等を発揮することが知られている(特許文献1参照)。プロポリス中に含まれるフラボノイド類としては、例えば、クリシン、アピゲニン等のフラボン類、ガランギン、ケンペロール等のフラボノール類、サクラネチン、イソサクラネチン等のフラバノン類等が知られている。
本発明は、本発明者らの鋭意研究の結果、プロポリス中に含まれる特定のフラボノイド類にナフテルピンの生合成酵素であるプレニル基転移酵素を作用させることにより、従来知られていない新規なプレニルフラボノイドを得たことに基づくものである。また、該プレニルフラボノイドが高い抗癌作用及び抗菌作用を有することを見出したことに基づくものである。
本発明の目的とするところは、医薬品等の様々な用途に利用することが可能な新規プレニルフラボノイド及びその製造方法を提供することにある。別の目的とするところは、高い抗癌作用を発揮する抗癌剤及び高い抗菌作用を発揮する抗菌剤を提供することにある。
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明のプレニルフラボノイドは、下記一般式(1)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R9 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
請求項2に記載の発明のプレニルフラボノイドは、下記一般式(2)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R9 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
請求項3に記載の発明のプレニルフラボノイドは、下記一般式(3)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R8 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
請求項4に記載の発明のプレニルフラボノイドは、下記一般式(4)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R8 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
請求項5に記載の発明のプレニルフラボノイドは、下記一般式(5)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
請求項6に記載の発明のプレニルフラボノイドは、下記一般式(6)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
請求項7に記載の発明のプレニルフラボノイドは、下記一般式(7)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載のプレニルフラボノイドの製造方法において、原料としてガランギン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合する工程を備えることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載のプレニルフラボノイドの製造方法において、原料としてイソサクラネチン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合する工程を備えることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレニルフラボノイドの製造方法において、原料としてプロポリス、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合する工程を備えることを特徴とする。
請求項11に記載の発明の抗癌剤は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレニルフラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする。
請求項12に記載の発明の抗菌剤は、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレニルフラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする。
本発明によれば、医薬品等の様々な用途に利用することが可能な新規プレニルフラボノイドを提供することができる。また、高い抗癌作用を発揮する抗癌剤及び高い抗菌作用を発揮する抗菌剤を提供することができる。
以下、本発明のプレニルフラボノイドを具体化した実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の第1のプレニルフラボノイドは、下記一般式(1)で示される構造を有する化合物である。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R9 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
一般式(1)は、フラボノイドの一種であるフラボン及びフラボノール、又はそれらの誘導体の6位にゲラニル基を備えている化合物である。フラボンとしては、例えばクリシンが挙げられる。フラボノールとしては、例えばガランギン(galangin:3,5,7−トリヒドロキシフラボン)、ケンペロール(kaempferol)、ケンペライド(kaempferide)が挙げられる。一般式(1)で示される化合物は、フラボノイドの6位にゲラニル基を備えていることからフラボノイドよりも親油性(膜透過性)が高い。一般式(1)で示される化合物は、高い抗癌作用及び高い抗菌作用を有している。
一般式(1)で表わされる化合物のうち好ましいものとして、下記一般式(5)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2009046414
前記一般式(5)に示されるフラボノイド化合物は、6−ゲラニルガランギン(6-geranylgalangin、分子量406)である。ガランギン(galangin:3,5,7−トリヒドロキシフラボン(3,5,7-trihydroxyflavone)、分子量270.24)の6位にゲラニル基を備えていることからガランギンよりも親油性(膜透過性)が高い。6−ゲラニルガランギンは、高い抗癌作用及び高い抗菌作用を有している。

本実施形態の第2のプレニルフラボノイドは、下記一般式(2)で示される構造を有する化合物である。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R9 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)

一般式(2)は、フラボノイドの一種であるフラボン及びフラボノール、又はそれらの誘導体にゲラニル基を備えている化合物である。フラボンとしては、例えばクリシンが挙げられる。フラボノールとしては、例えばガランギン(galangin:3,5,7−トリヒドロキシフラボン)、ケンペロール(kaempferol)、ケンペライド(kaempferide)、6−メトキシケンペロール(6-methoxykaempferol)、ベツレトール(betuletol)が挙げられる。一般式(2)で示される化合物は、フラボノイドにゲラニル基を備えていることからフラボノイドよりも親油性(膜透過性)が高い。一般式(2)で示される化合物は、高い抗癌作用及び高い抗菌作用を有している。

本実施形態の第3のプレニルフラボノイドは、下記一般式(3)に示される構造を有する。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R8 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
一般式(3)は、フラボノイドの一種であるフラバノン及びジヒドロフラボノール、又はそれらの誘導体の6位にゲラニル基を備えている化合物である。フラバノンとしては、例えばピノセンブリン(pinocembrin)、サクラネチン(sakuranetin)、イソサクラネチン(isosakuranetin:5,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシフラバノン)が挙げられる。ジヒドロフラボノールとしては、例えばピノバンクシン(pinobanksin)、アロマデンドリン(aromadendrin)、ジヒドロケンペライド(dihydrokaempferide)が挙げられる。一般式(3)で示される化合物は、フラボノイドの6位にゲラニル基を備えていることからフラボノイドよりも親油性(膜透過性)が高い。一般式(3)で示される化合物は、高い抗癌作用及び高い抗菌作用を有している。
一般式(3)に示される化合物のうち好ましいものとして、下記一般式(6)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2009046414
前記一般式(6)に示されるフラボノイド化合物は、6−ゲラニルイソサクラネチン(6-geranylisosakuranetin、分子量422)である。イソサクラネチン(isosakuranetin:5,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシフラバノン(5,7-dihydroxy-4’-methoxyflavanone)、分子量286.29)の6位にゲラニル基を備えていることからイソサクラネチンよりも親油性(膜透過性)が高い。6−ゲラニルイソサクラネチンは、高い抗癌作用及び高い抗菌作用を有している。

本実施形態の第4のプレニルフラボノイドは、下記一般式(4)で示される構造を有する化合物である。
Figure 2009046414
(式中、R1 〜R8 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)

一般式(4)は、フラボノイドの一種であるフラバノン及びジヒドロフラボノール、又はそれらの誘導体にゲラニル基を備えている化合物である。一般式(4)で示される化合物は、フラボノイドにゲラニル基を備えていることからフラボノイドよりも親油性(膜透過性)が高い。一般式(4)で示される化合物は、高い抗癌作用及び高い抗菌作用を有している。
一般式(4)に示される化合物のうち好ましいものとして、下記一般式(7)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2009046414
前記一般式(7)に示されるフラボノイド化合物は、7−O−ゲラニルイソサクラネチン(7-O-geranylisosakuranetin、分子量422)である。イソサクラネチンにゲラニル基が付加されていることからイソサクラネチンよりも親油性(膜透過性)が高い。7−O−ゲラニルイソサクラネチンは、高い抗癌作用及び高い抗菌作用を有している。

上記第1〜第4のプレニルフラボノイドは、フラボノイド類を含有する原料として天然素材、例えばプロポリス中に、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸(geranyl diphosphate)及びプレニル基転移酵素(ゲラニル基転移酵素)を配合することにより合成することができる。また、公知の化学合成法を用いて合成してもよい。
第1のプレニルフラボノイドの一つである6−ゲラニルガランギンは、例えば、原料としてガランギン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸及び反応酵素としてナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素(ゲラニル基転移酵素)を配合し、所定条件下で反応させることにより合成することができる。その他、公知の化学合成法を用いて合成してもよい。
原料であるガランギンとしては、生合成品、化学合成品、天然素材から水・親水性有機溶媒を用いて抽出された粗抽出品又は精製品を使用してもよく、ガランギンを含有する天然素材を適用してもよい。ガランギンは、例えばプロポリスに多く含有されている。その他、ガランカ(Alpinia officinarum)の根茎等に多く含有されている。それらをガランギンが含有される素材として好ましく使用することができる。ガランギンの抽出物を得るために用いられるプロポリス原塊としては、ブラジルを含む南アメリカ諸国、中国や日本等のアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北アメリカ諸国、オセアニア諸国等のあらゆる産地のものを使用することができる。
プロポリス原塊からのガランギンの抽出方法は、公知の抽出法、例えば親水性有機溶媒又は水/親水性有機溶媒の混合溶媒を用いた抽出法、超臨界抽出法が用いられる。これらの中でガランギンを含むフラボノイド類を効率よく抽出することができる水/親水性有機溶媒の混合液が好ましく適用される。本実施形態において用いられる親水性有機溶媒としては、水に溶解する性質を有するエタノール、メタノール、イソプロパノール等の低級アルコールのほか、アセトンやメチルエチルケトン等のケトン類を適宜選択して使用することができる。これらの親水性有機溶媒を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、摂取することを考えればエタノールが最も好ましい。
例えば、水/親水性有機溶媒の混合液においてエタノールを用いる場合、その濃度は、好ましくは60〜100容量%、より好ましくは70〜100容量%、最も好ましくは95容量%である。エタノール濃度が60容量%未満の場合には、有効成分の抽出率が悪いので好ましくない。一方、エタノールの配合割合を高めることによりフラボノイド類の抽出効率を高めることができる。エタノール溶媒の使用容量は、プロポリス原塊の質量に対して好ましくは1〜20倍量、より好ましくは2〜10倍量、さらに好ましくは3〜8倍量である。エタノール溶媒の使用容量が1倍量未満の場合には、目的成分の抽出率が悪いので好ましくない。逆にエタノール溶媒の使用容量が20倍量を超える場合には、不必要に大きな装置が必要となるばかりでなく、濃縮等の工程に時間を要し、作業性が著しく低下するので好ましくない。
また、前記親水性有機溶媒としてエタノールを用いて抽出する場合、目的成分の抽出効率を向上させるために、抽出処理前に採取時に混入するゴミ等の夾雑物を除去し、粉砕することが好ましい。抽出温度は5〜40℃であることが好ましい。抽出温度が5℃未満の場合には、目的成分の抽出率が悪いので好ましくない。逆に抽出温度が40℃を超える場合には、ロウ成分が抽出されて、抽出後の濾過性が悪くなるおそれがある。また、抽出溶媒(エタノール)が蒸発するため好ましくない。なお、抽出操作は、前記抽出温度で攪拌しながら例えば4時間以上行なえばよい。そして、上記の抽出条件で目的成分を十分に抽出した後、濾紙濾過、珪藻土濾過などの濾過処理を行なうことによりガランギンを含有する粗抽出物を得ることができる。
本実施形態においては、ガランギンを含有する粗抽出物を原料として使用してもよく、さらにカラムクロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び薄層クロマトグラフィー等を用いて、分離及び精製したものを使用してもよい。クロマトグラフィー担体としては、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィーが挙げられる。それらを適宜組み合わせて、公知の分離手段により精製することができる。
反応酵素として使用されるナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素(ゲラニル基転移酵素)は、放線菌、例えば、ストリプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)CL190株のナフテルピンの生合成酵素のうちの一つである。ナフテルピンは、マロニル−CoAを出発原料として、中間代謝物のテトラヒドロキシナフタレン(THN)、若しくはフラビオリン又はその代謝物に、炭素数10のゲラニル二リン酸(GPP)由来のゲラニル基が付加して合成される(上記非特許文献1,2参照)。プレニル基転移酵素は、炭素数10のプレニル基供与体としてゲラニル二リン酸を基質としてナフテルピンを合成する反応を触媒する酵素である。プレニル基転移酵素は、アミノ酸配列、該アミノ酸配列をコードする塩基配列及びタンパク質の立体構造等が解明されている(上記非特許文献1,2参照)。
プレニル基転移酵素は、市販品を使用してもよく、放線菌、例えば、ストリプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)CL190株の菌体、該放線菌の培養上清から公知の方法を用いて粗抽出又は精製したものを使用してもよい。また、プレニル基転移酵素をコードするDNAより公知の方法、例えば、プラスミド等の発現ベクターを大腸菌、酵母等の微生物に導入することにより発現させるインビトロ(in vitro)タンパク合成系を利用することにより取得してもよい。プレニル基転移酵素をコードするDNAは、公知の塩基配列より公知の人工遺伝子合成法を用いて合成してもよく、放線菌、例えば、ストリプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)CL190株より公知の方法を用いてクローニングしてもよい。
上記プレニル基転移酵素を用いた原料のプレニル化処理は、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸を配合し、所定条件下で反応させることにより合成することができる。また、その他の成分として、Mg2+を反応溶液中に配合したほうが良い。Mg2+の配合量は、例えばMgClとして好ましくは1〜10mM、より好ましくは3〜7mMである。反応pHは、適宜設定され得るが、好ましくはpH4〜9、より好ましくはpH7〜8である。反応温度は、適宜設定され得るが、好ましくは10〜45℃、より好ましくは25〜35℃である。反応温度が10℃未満の場合、酵素活性が低く反応が遅くなり、逆に45℃を超える場合、酵素が失活するおそれがある。反応時間は、上記反応pH及び反応温度により適宜設定され得るが、好ましくは1〜48時間、より好ましくは6〜15時間である。反応時間が1時間未満の場合、十分な量の反応生成物が得られないので好ましくない。逆に反応時間が48時間を超える場合、それ以上の反応生成物が得られず、効率が悪い。得られた反応生成物である6−ゲラニルガランギンは、上記クロマトグラフィーを適用することにより精製することができる。
第3のプレニルフラボノイドの一つである6−ゲラニルイソサクラネチン及び第4のプレニルフラボノイドの一つである7−O−ゲラニルイソサクラネチンは、例えば、原料としてイソサクラネチン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸及び反応酵素としてプレニル基転移酵素(ゲラニル基転移酵素)を配合することにより、合成することができる。プレニル基転移酵素は、上記6−ゲラニルガランギンと同様のナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を適用することができる。酵素の反応条件も上記6−ゲラニルガランギンと同様の条件を適用することができる。その他、6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンは、公知の化学合成法を用いて合成してもよい。
原料であるイソサクラネチンとしては、生合成品、化学合成品、天然素材から水・親水性有機溶媒を用いて抽出された粗抽出品又は精製品を使用してもよく、イソサクラネチンを含有する天然素材を適用してもよい。イソサクラネチンは、例えばプロポリスに多く含有されている。その他、カラタチ(枳殻)の花弁中にフラバノン配糖体の形で多く含まれている。それらをイソサクラネチンが含有される素材として好ましく使用することができる。尚、フラバノン配糖体はβ−グルコシダーゼによりグリコシド結合が加水分解されてフラバノンと還元糖を遊離する。プロポリス原塊からのイソサクラネチンの抽出方法は、上記の方法を適宜採用することができる。
原料としてイソサクラネチン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸及び反応酵素としてナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより、6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンの2つの反応生成物が生成される。2つの反応生成物は、公知のカラムクロマトグラフィー、例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、及び薄層クロマトグラフィー等を用いて、分離及び精製することができる。
上記第1〜第4のプレニルフラボノイドは抗癌活性を有する。そのため、それらを有効成分として含有する抗癌剤として好ましく適用することができる。抗癌剤は、抗癌作用を効果・効能とする医薬品、医薬部外品、飲食品、化粧品等の形態で摂取され得る。
上記第1〜第4のプレニルフラボノイドは、抗菌活性を有する。そのため、それを有効成分として含有する抗菌剤として適用することができる。この抗菌剤は、飲食品の腐敗を防止するために該飲食品中に添加して利用してもよい。また、この抗菌剤は、医薬品中に含有させて利用してもよく、或いは感染症治療薬や抗菌性化学療法薬等の医薬品として利用してもよい。また、この抗菌剤は、皮膚、口腔、腋下等を清潔に保つために、化粧品又は医薬部外品中に添加して利用してもよい。
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態において、上記第1〜第4のプレニルフラボノイドは、高い抗癌作用を有している。したがって、抗癌作用を目的とした医薬品等に好ましく適用することができる。
(2)本実施形態において、上記第1〜第4のプレニルフラボノイドは、高い抗菌作用を有している。したがって、抗菌作用を目的とした医薬品等に好ましく適用することができる。
(3)本実施形態において、6−ゲラニルガランギンは、原料としてガランギン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより製造される。したがって、安価に且つ容易に製造することができる。
(4)本実施形態において、6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンは、原料としてイソサクラネチン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより製造される。したがって、安価に且つ容易に製造することができる。
(5)本実施形態において、上記第1〜第4のプレニルフラボノイドを製造するための原料としてプロポリスを使用することができる。したがって、プロポリスは、例えばガランギン及びイソサクラネチン等の他、ゲラニル基が付加されるフラボノイド類を多数含有するため、容易に製造することができる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、合成酵素としてナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を原料に配合することにより新規プレニルフラボノイドを製造した。しかしながら、ナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を使用する代わりに、ナフテルピンを生合成する放線菌、例えば、ストリプトマイセス・エスピー(Streptomyces sp.)CL190株を使用して、発酵処理により新規プレニルフラボノイドを製造してもよい。放線菌を用いた原料のフラボノイド類のプレニル化処理は、放線菌の培養に適した培地、培養温度、培養期間等の処理条件を適宜選択すればよい。
・上記実施形態において、フラボノイド類を含有する原料として天然素材、例えばプロポリス中に、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸及び合成酵素を配合して、上記一般式(1)〜(7)のプレニルフラボノイドを得た場合、酵素変換後の天然素材をそのまま医薬品、食品等として使用してもよい。また、酵素変換後の天然素材からカラムクロマトグラフィー等を用いて、新規プレニルフラボノイドを抽出及び精製処理して使用してもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。
<新規プレニルフラボノイドの製造>
(実施例1:6−ゲラニルガランギンの製造1)
原料としてガランギン(EXTRASYNTHESE社製)10mgをメタノール20mlに溶解させた後、蒸留水を220ml加えた。該水溶液に0.5M 2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸(HEPES)(pH7.9)及び0.05M塩化マグネシウムを各40ml加えた。その後、プレニル基供与体として0.6mg/mlゲラニル二リン酸アンモニウム(シグマ社製)、ナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素(NphB)溶液(0.8mg/ml)を各40ml加え、30℃で12時間、90rpmで回転振とうしながら反応させた。その後、反応溶液について酢酸エチルを用いた分配を行い、酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層を濃縮し、ODSカラム(Develosil ODS−HG−5、20mm×250mm、野村化学株式会社製)にアプライし、流速6ml/min、溶出溶媒95%メタノールで溶出させた。270nmの吸収をモニターしながら、ガランギンとは異なる主要なピーク(ピーク1、リテンションタイム17.5〜18.5分、収量4.4mg)を分取した。
次いで、前記ピーク1について、1H−NMR及び13C−NMRを測定することにより構造解析を行なった。核磁気共鳴スペクトル1H−NMR及び13C−NMR(MERCURY plus 300NB, Varian社製)の測定結果を下記の表1に示す。なお、表1において、(No.)の欄の番号は図1に記載されている番号である。更に、構造決定のために、HMBCスペクトル及びHMQCスペクトルなど様々な測定法を用い、その詳細な構造決定を行なった。詳細は以下に示す。
1H−NMR及び13C−NMRスペクトルをHMQCスペクトルと組み合わせて解析したところ、芳香族領域にガランギンの基本骨格の存在を示唆するシグナル(2〜10,1a〜6a)が観測された。一方、脂肪族領域には、ゲラニル基の存在を示唆するメチルプロトン(8b〜10b)、メチレンプロトン(1b,4b,5b)、メチンプロトン(2b,6b)が観測された。これら部分構造と4級炭素の帰属はHMBCスペクトルの解析により行なった。詳細を以下に示す。
HMBCスペクトルにより、上述のガランギン基本骨格の3個の芳香族炭素(C5,C6,C7)に対してゲラニル基のメチレンプロトン(1b)からHMBC相関が観測されたことから、C−1bはガランギン基本骨格上のC−6に結合していると考えられた。すなわち、ピーク1は、ガランギンにゲラニル基が炭素間結合した化合物、6−ゲラニルガランギンであると同定した。分子量は406、分子式はC2 5265である。図1に6−ゲラニルガランギンの構造を示す。矢印でHMBCの特徴的相関も示した。以上、実施例1に示されるように、原料としてガランギン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより新規プレニルフラボノイドである6−ゲラニルガランギンが製造されることが確認された。
Figure 2009046414
(実施例2:6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンの製造1)
原料としてイソサクラネチン(EXTRASYNTHESE社製)24mgをメタノール50mlに溶解させた後、蒸留水を500ml加えた。該水溶液に0.5M HEPES(pH7.9)及び0.05M塩化マグネシウムを各100ml加えた。その後、プレニル基供与体として0.65mg/mlゲラニル二リン酸アンモニウム(シグマ社製)を200ml、ナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素(NphB)溶液(7.2mg/ml)を50mlそれぞれ加え、30℃で12時間、90rpmで回転振とうしながら反応させた。その後、反応溶液について酢酸エチルを用いた分配を行い、酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層を濃縮し、ODSカラム(Develosil ODS−HG−5、20mm × 250mm、野村化学株式会社製)にアプライし、流速8ml/min、溶出溶媒92.5%メタノールで溶出させた。290nmの吸収をモニターしながら、イソサクラネチンとは異なる主要な2つのピーク(ピーク2、リテンションタイム17.5〜18.5分、収量4mg;ピーク3、リテンションタイム26.5〜28分、収量10mg)を分取した。
まず、前記ピーク2について、1H−NMR及び13C−NMRを測定することにより構造解析を行なった。核磁気共鳴スペクトル1H−NMR及び13C−NMRの測定結果を下記の表2に示す。なお、表2において、(No.)の欄の番号は図2に記載されている番号である。更に、構造決定のために、HMBCスペクトル及びHMQCスペクトルなど様々な測定法を用い、その詳細な構造決定を行なった。詳細は以下に示す。
1H−NMR及び13C−NMRスペクトルをHMQCスペクトルと組み合わせて解析したところ、芳香族領域にイソサクラネチンの基本骨格の存在を示唆するシグナル(2〜10,1a〜6a)が観測された。一方、脂肪族領域には、ゲラニル基の存在を示唆するメチルプロトン(8b〜10b)、メチレンプロトン(1b,4b,5b)、メチンプロトン(2b,6b)が観測された。これら部分構造と4級炭素の帰属はHMBCスペクトルの解析により行なった。詳細を以下に示す。
HMBCスペクトルにより、上述のイソサクラネチン基本骨格の3個の芳香族炭素(C5,C6,C7)に対してゲラニル基のメチレンプロトン(1b)からHMBC相関が観測されたことから、C−1bはC−6に結合していると考えられた。すなわち、ピーク2は、イソサクラネチンにゲラニル基が炭素間結合した化合物、6−ゲラニルイソサクラネチンであると同定した。分子量は422、分子式はC26305である。図2に6−ゲラニルイソサクラネチンの構造を示す。矢印でHMBCの特徴的相関も示した。尚、表2及び図2中における「Me」はメチル基を示す(以下同じ)。
Figure 2009046414
次いで、前記ピーク3について、1H−NMR及び13C−NMRを測定することにより構造解析を行なった。核磁気共鳴スペクトル1H−NMR及び13C−NMRの測定結果を下記の表3に示す。なお、表3において、(No.)の欄の番号は図3に記載されている番号である。更に、構造決定のために、HMBCスペクトル及びHMQCスペクトルなど様々な測定法を用い、その詳細な構造決定を行なった。詳細は以下に示す。
1H−NMR及び13C−NMRスペクトルをHMQCスペクトルと組み合わせて解析したところ、芳香族領域にイソサクラネチンの基本骨格の存在を示唆するシグナル(2〜10,1a〜6a)が観測された。一方、脂肪族領域には、ゲラニル基の存在を示唆するメチルプロトン(8b〜10b)、メチレンプロトン(1b,4b,5b)、メチンプロトン(2b,6b)が観測された。これら部分構造と4級炭素の帰属はHMBCスペクトルの解析により行なった。詳細を以下に示す。
HMBCスペクトルにより、上述のイソサクラネチン基本骨格の芳香族炭素(C7)に対してゲラニル基のメチレンプロトン(1b)からHMBC相関が観測されたことから、C−1bは酸素原子を介してC−7に結合していると考えられた。すなわち、ピーク3は、7−O−ゲラニルイソサクラネチンであると同定した。分子量は422、分子式はC26305である。図3に7−O−ゲラニルイソサクラネチンの構造を示す。矢印でHMBCの特徴的相関も示した。以上、実施例2に示されるように、原料としてイソサクラネチン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより新規プレニルフラボノイドである6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンが製造されることが確認された。
Figure 2009046414
(実施例3:6−ゲラニルガランギンの製造2)
原料として中国産プロポリスの原塊100gに95容量%エタノール400mlを加え、室温で一晩撹拌した。3000rpmで10分間遠心分離し、その上清をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去した。このようにして得られた中国産プロポリス抽出物のうち10mgをメタノール10mlに溶解させ、このうち3μlを蒸留水30μlに加えた。該水溶液に0.5M HEPES(pH7.5)及び0.05M塩化マグネシウムを各10μl加えた。その後、プレニル基供与体として0.6mg/mlゲラニル二リン酸アンモニウム(シグマ社製)を10μl、ナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素(NphB)(3.5mg/ml)溶液を30μlそれぞれ加え、30℃で12時間、90rpmで回転振とうしながら反応させた。その後、反応溶液について酢酸エチルを用いた分配を行い、酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層を濃縮し、ODSカラム(CAPCELL PAK C18 AG120、4.6mm × 250mm、資生堂製)にアプライし、0.1%トリフルオロ酢酸含有蒸留水:0.1%トリフルオロ酢酸含有メタノール=45:55→0:100(0分〜35分で直線的にメタノール濃度増加し、以後0.1%トリフルオロ酢酸含有メタノールを流し続ける)、流速0.8ml/minの条件で溶出させた。210〜400nmの吸収を検出(検出器:Waters996 Photodiode Array Detector)した結果、もとの中国産プロポリス抽出物には無い、リテンションタイムとUVスペクトルが6−ゲラニルガランギン(リテンションタイム32.3分、極大吸収270.3nm)と推定されるピークを新たに確認した。以上、実施例3に示されるように、原料として中国産プロポリスのエタノール抽出物、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより新規プレニルフラボノイドである6−ゲラニルガランギンが製造されることが確認された。
(実施例4:6−ゲラニルガランギンの製造3)
実施例3と同様の方法で得られた中国産プロポリス抽出物のうち5.0gをシリカゲル(BW820MH、41mm×400mm、富士シリシア化学株式会社製)に供し、95%クロロホルム/5%メタノール混液で溶出させ50mlずつ分画した。フラボノイドの含有量が多かった13及び14番目の溶出画分を混合し、ロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去して濃縮物2.2gを得た。このようにして得られたフラボノイド画分のうち10mgをメタノール10mlに溶解させ、このうち25μlを蒸留水61.7μlに加えた。該水溶液に0.5M HEPES(pH7.5)及び0.05M塩化マグネシウムを各10μl加えた後、プレニル基供与体として1.5mg/mlゲラニル二リン酸アンモニウムを10μl、ナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素(NphB)(12mg/ml)溶液を8.3μlそれぞれ加えた。そして、30℃で12時間、90rpmで回転振とうしながら反応させた。その後、反応溶液について酢酸エチルを用いた分配を行い、酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層を濃縮し、実施例3の条件でODSカラムにアプライし、210〜400nmの吸収を検出した。その結果、もとのプロポリス抽出物には無い、リテンションタイムとUVスペクトルが6−ゲラニルガランギン(リテンションタイム32.3分、極大吸収270.3nm)と推定されるピークを新たに確認した。以上、実施例4に示されるように、原料として中国産プロポリスのエタノール抽出物のフラボノイド分画、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合することにより新規プレニルフラボノイドである6−ゲラニルガランギンが製造されることが確認された。
(実施例5:6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンの製造2)
原料としてブラジル産プロポリスの原塊120gに95容量%エタノール400mlを加え、室温で一晩撹拌した。3000rpmで10分間遠心分離し、その上清をロータリーエバポレーターを用いて溶媒留去した。このようにして得られたブラジル産プロポリス抽出物のうち10mgをメタノール10mlに溶解させ、このうち10μlを蒸留水61.7μlに加えた。該水溶液に0.5M HEPES(pH7.5)及び0.05M塩化マグネシウムを各10μl加えた後、プレニル基供与体として0.6mg/mlゲラニル二リン酸アンモニウムを10μl、ナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素(NphB)(12mg/ml)溶液を8.3μlそれぞれ加えた。そして、30℃で12時間、90rpmで回転振とうしながら反応させた。その後、反応溶液について酢酸エチルを用いた分配を行い、酢酸エチル層を得た。酢酸エチル層を濃縮し、実施例3の条件でODSカラムにアプライし、210〜400nmの吸収を検出した。その結果、もとのブラジル産プロポリス抽出物には無い、6−ゲラニルイソサクラネチン(リテンションタイム31.0分、極大吸収295.5nm)、7−O−ゲラニルイソサクラネチン(リテンションタイム36.1分、極大吸収290.7)と推定されるピークを新たに確認した。以上、実施例5に示されるように、原料としてブラジル産プロポリスのエタノール抽出物、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合した。それにより、新規プレニルフラボノイドである6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンが製造されることが確認された。
(試験例1:抗癌作用に対する試験)
上記実施例1で得られた6−ゲラニルガランギンと実施例2で得られた6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンについて、ヒト胃癌細胞Kato III及びヒト大腸癌細胞SW480の増殖におよぼす影響を調べた。Kato III細胞(TKG 0213)及びSW480細胞(TKG 0505)は、東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより供給を受けた。これらの細胞は、10%牛胎児血清(FBS)を含むRPMI1640培地(シグマ社、#R8758)で37℃、5%二酸化炭素存在下で継代培養を行なった。シャーレより0.02%EDTAで細胞を剥離し、10%FBSを含むRPMI1640培地で100,000細胞/mlになるように希釈した。96ウェルプレート(ヌンク社、#167008)に、1ウェル当たり0.1ml(10,000細胞)を分注し、37℃,5%二酸化炭素存在下で24時間培養した。培地を除き、10%FBSを含むRPMI1640培地にジメチルスルフォキシド(DMSO)に溶解した試料を1%添加した試験液を1ウェル当たり0.1ml添加し、更に48時間培養した。次に、試験液を除いて1ウェル当たり0.1mlのPBS(137mM NaCl,2.7mM KCl,1.5mM KH2PO4,8mM Na2HPO4,pH7.3)を加え、MTTアッセイキット(Chemicon International, Inc. #28835; Colorimetric assay for cell survival and proliferation kit)を用い、反応を行なった。生細胞数の測定には、マイクロプレートリーダー(Bio-Tek Instruments, Inc.; μQuant)で630nmを対照にとり、570nmの吸収を測定した。なお、陰性対照群は試料の代わりにDMSOを1%含む培地で培養した。また、上記ゲラニル化合物のほかに、ゲラニル基を付加していないガランギン及びイソサクラネチンも同様に試験を行なった。各試料及び各対照群は、n=6で行なった。試験例1の結果を表4に示した。試料の細胞増殖抑制活性及び増殖促進活性は、陰性対照群における吸光度を100としたときの相対値で表した。
Figure 2009046414
表4に示されるように、ゲラニル基を付加していないガランギン及びイソサクラネチンは、Kato III細胞及びSW480細胞に対し、比較的低濃度において増殖促進活性を示した。一方、6−ゲラニルガランギン及び6−ゲラニルイソサクラネチンは、Kato III細胞及びSW480細胞に対し、濃度依存的な増殖抑制(阻害)活性を示した。7−O−ゲラニルイソサクラネチンは、SW480の細胞に対し、増殖抑制活性を示した。
(試験例2:抗菌作用に対する試験)
上記実施例1で得られた6−ゲラニルガランギンと実施例2で得られた6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンについて、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus; MRSA)、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(Methicillin-sensitive Staphylococcus aureus; MSSA)及び枯草菌(Bacillus subtilis)に対する抗菌活性を調べた。MRSA(ATCC 33591)及びMSSA(ATCC 6538P)は、ATCCより入手した。枯草菌(JCM 2499)は、理化学研究所バイオリソースセンターより購入した。DMSOに溶解した試料を4%添加した感受性測定用ブイヨン「ニッスイ」(日水製薬株式会社製、#05534)を、4%DMSOを含む感受性測定用ブイヨンを用いて2倍系列希釈を行って試験培地とした。この試験培地をあらかじめ、96ウェルプレートに1ウェル当たり0.1ml添加した。104 cfu/0.1mlとなるように感受性測定用ブイヨンで調整しておいた黄色ブドウ球菌液又は枯草菌液を試験培地の入ったウェルに1ウェルあたり0.1ml添加し、混合後37℃で一晩静置培養した。黄色ブドウ球菌や枯草菌が増殖すれば、培地に濁りを生ずるが、増殖が抑制された場合、培地は澄明なままである。したがって、培地が澄明になったウェルを目視により判定し、そのうち最も低い試料濃度を最小生育阻止濃度(MIC)とした。なお、陽性対照群は、試料の代わりにオキサシリンを用いた。また、上記ゲラニル化合物のほかに、ゲラニル基を付加していないガランギン及びイソサクラネチンも同様に試験を行なった。試験例2の結果を表5に示した。各試料のMRSA、MSSA及び枯草菌に対する抗菌活性は、最小生育阻止濃度(MIC)で表した。
Figure 2009046414
表5に示されるように、6−ゲラニルガランギンは、MRSAに対するMICが12.5μg/mlとなり、陽性対照のオキサシリンに相当する抗菌活性が認められた。また、MSSAや枯草菌に対してもMICがそれぞれ62.5μg/ml、15.6μg/mlとなり、ゲラニル基を付加していないガランギンよりも抗菌活性が顕著に上昇した。また、イソサクラネチンのゲラニル化合物である6−ゲラニルイソサクラネチン及び7−O−ゲラニルイソサクラネチンは、イソサクラネチンよりも枯草菌に対する抗菌活性が僅かに向上した。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(a)前記プレニルフラボノイドの製造方法において、原料としてのプロポリスと放線菌培地とを混合する工程からなることを特徴とする。したがって、(a)に記載の発明によれば、放線菌が自ら合成しているナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素およびプレニル基供与体であるゲラニル二リン酸を使用するため、プレニル基転移酵素やゲラニル二リン酸を新たに添加することなく新規プレニルフラボノイドを製造することができる。
実施例1の6−ゲラニルガランギンの構造を示す図。 実施例2の6−ゲラニルイソサクラネチンの構造を示す図。 実施例2の7−O−ゲラニルイソサクラネチンの構造を示す図。

Claims (12)

  1. 下記一般式(1)に示される構造を有するプレニルフラボノイド。
    Figure 2009046414
    (式中、R1 〜R9 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
  2. 下記一般式(2)に示される構造を有するプレニルフラボノイド。
    Figure 2009046414
    (式中、R1 〜R9 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
  3. 下記一般式(3)に示される構造を有するプレニルフラボノイド。
    Figure 2009046414
    (式中、R1 〜R8 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
  4. 下記一般式(4)に示される構造を有するプレニルフラボノイド。
    Figure 2009046414
    (式中、R1 〜R8 は、それぞれ水素、水酸基又はメトキシ基を示す。)
  5. 下記一般式(5)に示される構造を有するプレニルフラボノイド。
    Figure 2009046414
  6. 下記一般式(6)に示される構造を有するプレニルフラボノイド。
    Figure 2009046414
  7. 下記一般式(7)に示される構造を有するプレニルフラボノイド。
    Figure 2009046414
  8. 原料としてガランギン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合する工程を備えることを特徴とする請求項5に記載のプレニルフラボノイドの製造方法。
  9. 原料としてイソサクラネチン、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合する工程を備えることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のプレニルフラボノイドの製造方法。
  10. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレニルフラボノイドの製造方法において、原料としてプロポリス、プレニル基供与体としてゲラニル二リン酸、及びナフテルピンの合成酵素であるプレニル基転移酵素を配合する工程を備えることを特徴とするプレニルフラボノイドの製造方法。
  11. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレニルフラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする抗癌剤。
  12. 請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のプレニルフラボノイドを有効成分として含有することを特徴とする抗菌剤。
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