本発明は、帯電防止剤及びその用途に関するものである。
加工性の高さ、軽量、素材の多様性といった観点から、樹脂は、現代において欠かすことのできない素材の一つとなっている。その一般的な性質として、絶縁性の高さが挙げられる。この特性を利用して、樹脂は、数多くの電子製品、電子部品の絶縁部位として利用されてきた。一方、その絶縁性の高さゆえ、摩擦・剥離などにより容易に帯電するといった問題を抱えている。
帯電した樹脂成形物には、ほこりやゴミが付着するだけでなく、電子製品や電子部品に応用した場合、内装された回路、トランジスタ、IC、CPUなどに悪影響を与え、それらを破損する恐れもある。他にも、人体に電撃を与えたり、可燃性気体や粉塵を扱う場所においては、爆発事故を起こす可能性もある。また、クリーンルームや医療機関などでは、チリやホコリが嫌われるため、帯電防止性能を持った内装材が求められている。
電子製品や電子部品に用いられる電子材料の分野では、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンによる汚染が問題視されている。これらイオンが、電子材料に混入することにより、電子製品や電子部品の機能を低下、もしくは破壊するのみでなく、これらに起因した発熱や発火、さらには爆発の危険も含むこととなる。このような観点から、電子製品や電子部品に応用される材料は、金属イオンを含有しないことが望ましいとされている。
これらの諸問題を解決するために、樹脂には帯電防止剤による処理が行われていることが多い。帯電防止剤による処理は、利用のされ方によって、表面処理と内部処理に大別される。
表面処理とは、樹脂成形物の表面に対して、塗布・浸漬・吹きつけなどの手法を用いて帯電防止剤を塗布するものである。水溶性界面活性剤等がその代表であるが、時間がたつとともにその帯電防止能が低下するといった欠点を持つ。
内部処理とは、樹脂成形時に高分子中に帯電防止剤を添加する手法である。この手法における代表的な帯電防止剤としては、導電性微粒子や界面活性剤が挙げられる。
導電性微粒子としては、金属粉、ITOやATOといった金属酸化物微粒子さらにはカーボン等が挙げられるが、これらの材料を用いて樹脂に帯電防止能を付与するには、かなりの量を添加しなくてはいけなく、更にはこれらを均一に分散させる高度な技術が必要になる。また、その添加量の多さゆえ、本来の樹脂物性に大きな影響を与えてしまう。
更に、金属酸化物微粒子の中には、アンチモンやインジウムといった金属を含むものが多い。中でも、アンチモン等の重金属は、廃棄時に大きな問題を抱え、人の健康及び環境安全性も懸念されている。更に、インジウム等の貴金属は、その枯渇問題や価格の高さが問題となっている。
界面活性剤としては、アニオン系・カチオン系・ノニオン系などのものがあり、安価なため様々な用途で利用されている。しかし、それらが樹脂表面からブリードを起こし、周囲を汚染するといった問題も抱えている。加えて、アニオン系では、高分子に対しての相溶性に欠け、均一分散が困難であり耐熱性も低い、カチオン系では、帯電防止性は問題ないが、熱的安定性が低い、ノニオン系では、高分子への相溶性が低いなどの特徴を持つ。
さらに、これらの材料においては、周囲の環境による性能への影響が大きい。とりわけ、湿度の影響が大きいとされる。一般的には、湿度の高い条件下では、帯電防止効果を発揮するが、湿度が低くなるとその効果が薄れ、最終的には全く機能しなくなることもある。
また、透明性の高い樹脂と組み合わせた場合には、その特徴を失わないよう、帯電防止剤にも高い透明性が要求される。あまり透明性を要しない用途であったとしても、意匠上の問題等から、透明性が高いことが望まれる。
特開平4−239565号公報
特開平4−7350号公報
特開平4−198239号公報
帯電防止剤としての本来の機能のみならず、透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性を併せ持つ帯電防止剤が求められている。
さらには、金属フィラーを活用し、帯電防止機能を付与した場合には、貴金属や重金属を使う場合がある。貴金属は、その資源の枯渇問題が懸念されており、かつ高価である。重金属に関しては、廃棄時に大きな問題を抱え、人体への安全性にも懸念をかかえる。そのため、貴金属や重金属を含まない材料が望まれている。
電子製品や電子材料の分野では、ナトリウムイオンやカリウムイオン等のアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンによる汚染が問題視されている。これらイオンが、電子材料等に混入することにより、それ自身の機能を低下、もしくは破壊するのみでなく、それに起因した発熱や発火、さらには爆発の危険も含むこととなる。このような観点から、電子製品や電子部品に応用される材料は、金属イオンを含有しないことが望ましいとされている。
したがって、本発明の目的は、これらの問題を解決すること、すなわち、高い帯電防止能のみならず、透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せ持ち、金属や金属イオンを含まない帯電防止剤を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記帯電防止剤を用いた樹脂組成物、樹脂ワニス、重合性組成物、及び塗液、並びにこれらを用いた帯電防止能を有する樹脂造形品の製造方法を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、帯電防止能を有する樹脂造形品を提供することにある。
本発明は、下記一般式[1]で表される化合物からなる帯電防止剤に関する。
(式中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよい複素環基を表し、隣り合うR5〜R8は、互いに結合して環を形成してもよい。)
R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有してもよいアリール基であることが好ましく、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアリール基であることがより好ましい。また、R5〜R8は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、または、置換基を有してもよいアリール基であることが好ましい。
また、他の本発明は、樹脂と、前記帯電防止剤とを含んでなる樹脂組成物に関する。好ましくは、樹脂は熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂である。
また、他の本発明は、前記樹脂組成物と、溶剤とを含んでなる樹脂ワニスに関する。
また、他の本発明は、重合性官能基を有する化合物と、重合開始剤と、前記帯電防止剤とを含んでなる重合性組成物に関する。さらに、他の本発明は、前記重合性組成物を、光照射することにより硬化させる、帯電防止能を有する樹脂硬化物の製造方法、及び、前記製造方法で製造された、帯電防止能を有する樹脂硬化物に関する。
また、他の本発明は、溶剤と、帯電防止剤とを含んでなる塗液に関する。さらに、他の本発明は、前記塗液を樹脂造形品に塗布する、帯電防止能を有する樹脂造形品の製造方法、及び、前記製造方法で製造された、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
また、他の本発明は、前記樹脂組成物、前記樹脂ワニス、又は前記重合性組成物を用いて製造された、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
また、他の本発明は、前記樹脂組成物、前記樹脂ワニス、前記重合性組成物、又は前記塗液を用いて形成された、帯電防止能を有する塗膜に関する。
また、他の本発明は、前記塗膜を表面に設けた、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
さらに、他の本発明は、前記帯電防止剤を用いた、帯電防止能を有する樹脂造形品に関する。
本発明は、下記一般式[1]で表される化合物からなる帯電防止剤であることを特徴とする。
(式中、R1〜R8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、または、置換基を有してもよい複素環基を表し、隣り合うR5〜R8は、互いに結合して環を形成してもよい。)
本発明における一般式[1]で示される化合物のR1からR8は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基を表す。
置換基を有してもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基、フェナシル基、1−ナフトイルメチル基、2−ナフトイルメチル基、4−メチルスルファニルフェナシル基、4−フェニルスルファニルフェナシル基、4−ジメチルアミノフェナシル基、4−シアノフェナシル基、4−メチルフェナシル基、2−メチルフェナシル基、3−フルオロフェナシル基、3−トリフルオロメチルフェナシル基、3−ニトロフェナシル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルケニル基としては、炭素数2〜10のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、スチリル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアルキニル基としては、炭素数2〜10のアルキニル基が好ましく、例えば、エチニル基、プロピニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
置換基を有してもよいアリール基としては、炭素数6〜30のアリール基が好ましく、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、クオーターフェニル基、o−、m−、およびp−トリル基、キシリル基、o−、m−、およびp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基等が挙げられる。
置換基を有してもよい複素環基としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子を含む、芳香族あるいは脂肪族の複素環が好ましい。例えば、チエニル基、ベンゾ[b]チエニル基、ナフト[2,3−b]チエニル基、チアントレニル基、フリル基、ピラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、2H−ピロリル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、3H−インドリル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、プリニル基、4H−キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサニリル基、キナゾリニル基、シンノリニル基、プテリジニル基、4aH−カルバゾリル基、カルバゾリル基、β−カルボリニル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、ペリミジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェナルサジニル基、イソチアゾリル基、フェノチアジニル基、イソキサゾリル基、フラザニル基、フェノキサジニル基、イソクロマニル基、クロマニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル基、インドリニル基、イソインドリニル基、キヌクリジニル基、モルホリニル基、チオキサントリル基等が挙げられる。
さらに、前述した置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルケニル基、置換基を有してもよいアルキニル基、置換基を有してもよいアリール基および置換基を有してもよい複素環基の水素原子はさらに他の置換基で置換されていても良い。
そのような置換基としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン基、メトキシ基、エトキシ基、tert−ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p−トリルオキシ基等のアリールオキシ基、メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のアリールオキシカルボニル基、ビニルオキシカルボニル基等のアルケニルオキシカルボニル基、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基、アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、メトキサリル基等のアシル基、メチルスルファニル基、tert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基、フェニルスルファニル基、p−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基、メチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアルキルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、モルホリノ基、ピペリジノ基等のジアルキルアミノ基、フェニルアミノ基、p−トリルアミノ基等のアリールアミノ基、メチル基、エチル基、tert−ブチル基、ドデシル基等のアルキル基、フェニル基、p−トリル基、キシリル基、クメニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナントリル基等のアリール基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、スルホンアミド基、ホルミル基、メルカプト基、アルキルチオ基、スルホ基、メシル基、p−トルエンスルホニル基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、トリメチルシリル基、ホスフィニコ基、ホスホノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、ジメチルスルホニウミル基、トリフェニルフェナシルホスホニウミル基等が挙げられる。これらの置換基は、さらにハロゲン基によって置換されていてもよい。
このような置換基のうち、好ましい置換基として電子求引性の置換基が挙げられる。電子求引性の置換基により置換されることにより、一般的にイオン性化合物は解離しやすくなり、帯電防止能は高くなる。
このような、電子求引性の置換基とは、共鳴効果や誘起効果によって相手から電子をひきつける置換基の総称であり、その多くは、ハメット則において、置換基定数σが正の値で示される。これらの置換基としては、特に制限はないが、具体的には、Chemical Review Vol.91、第165−195項 1991年発行に記載のσpが0より大きなものが挙げられる。より具体的には、ハロゲン基、シアノ基、カルボキシル基、ニトロ基、ニトロソ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリアルキルアンモニウム基、アミド基、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルキルチオ基、ペルフルオロアルキルカルボニル基、スルホンアミド基、4−シアノフェニル基等が挙げられる。
R1からR4は、化合物の安定性面から考慮して、好ましくは置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基であり、より好ましくは、置換基を有してもよいアリール基である。帯電防止能の観点から、置換基としてはハロゲン基が好ましい。
R5からR8は、化合物の安定性面から考慮して、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましく、より好ましくは、置換基を有してもよいアリール基である。また、樹脂との相溶性や帯電防止能の観点から、R5からR8は、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルオキシ基などの親水性の置換基を有していないこと、さらには、いずれの置換基も有していないことが好ましい場合もある。R5からR8が置換基を有する場合、好ましい一例として疎水性の置換基が挙げられる。
本発明の一般式[1]で表される化合物の代表例を例示化合物(1)〜(112)として以下に具体的に例示するが、これらに限られるものではない。なお、例示化合物中のMeはメチル基、Etはエチル基、Prはノルマルプロピル基、i−Prはイソプロピル基、Buはノルマルブチル基、tBuは第3級ブチル基、Hexはノルマルヘキシル基、Octはノルマルオクチル基、Cetはノルマルセチル基、Phはフェニル基を示す。
本発明の帯電防止剤は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の帯電防止剤を樹脂造形品へと応用する手法として、帯電防止剤を直接配合(混練)した樹脂を造形する方法と、造形した樹脂の表面に帯電防止剤の塗膜(皮膜)を形成する方法の大きく2種類が挙げられる。
まず、帯電防止剤を直接配合(混練)した樹脂を造形する方法について説明する。造形には、帯電防止剤および樹脂を含有する樹脂組成物や、樹脂組成物(帯電防止剤および樹脂)および溶剤を含有する樹脂ワニスなどを用いることができる。
本発明の帯電防止剤を配合(混練)することができる樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、フッ素樹脂、高分子ゴム等が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリハロオレフィン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルブチラール、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、ケトン樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルホルマール、ポリメチルメタクリレート、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)等が挙げられる。
ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
ポリハロオレフィンとしては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニリデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、フラン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ウレア樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリ乳酸樹脂、グアナミン樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン等が挙げられる。
高分子ゴムとしては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
さらには、これら樹脂を組み合わせた、いわゆるポリマーアロイでもよい。
また、これらを混練する方法としては、通常使用されている任意の方法を用いることができる。例えば、ロール混練り、バンパー混練り、押し出し機或いはニーダー等で混練することが可能である。
混練された樹脂組成物を、任意の形状に造形することにより、帯電防止能を有する樹脂造形品を製造することができる。
本発明の帯電防止剤を樹脂および溶剤に配合して樹脂ワニスとして使用することもできる。この際、樹脂としては、前出の樹脂類を用いることが可能である。好ましくは、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂、大豆油、桐油、アマニ油を用いることができる。さらに、これらは任意に単独または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
ワニス中の溶剤としては、高沸点石油系溶剤、脂肪族炭化水素溶剤、アルコール系溶剤、水系溶剤など樹脂の性質に合わせて、さまざまな溶剤を用いることができる。汎用されている溶剤としては、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、メトキシプロパノール、トルエン、水等が挙げられる。さらに、これらの溶剤は、単独あるいは2種類以上の組み合わせで任意に使用できる。
樹脂ワニスを、例えば、適当な支持体上に塗布し、乾燥させることによっても、帯電防止能を有する樹脂造形品を製造することができる。
塗布した樹脂ワニスの乾燥およびキュアは、組み合わせる溶剤等によって適宜選択され、常温乾燥することもできるが、通常は加熱乾燥炉を利用して行うことが多い。乾燥炉は、空気、不活性ガス(窒素、アルゴンなど)などで満たしておく、または、乾燥炉内に不活性ガスをフローさせることが好ましい。乾燥およびキュアの温度は、溶媒の沸点などに応じて適宜選択されるが、60℃〜600℃の範囲にあることが好ましい。また、段階的に温度を上昇させることが、発泡やユズ肌などの問題が発生せず、膜厚が均一で、さらに寸法安定性にも優れる樹脂造形品が得られるために好ましい。乾燥およびキュアの時間は、形成される樹脂造形品の厚み、樹脂ワニスの固形分濃度、溶媒の種類により適宜選択されるが、0.05分〜500分程度であることが望ましい。
樹脂組成物および樹脂ワニスにおいて、帯電防止剤を樹脂に配合する量は特に限定されない。しかし、多量に配合すると、樹脂の機械的強度等の物性が低下するといった本来の樹脂物性に影響を与えたり、配合量が少ないと帯電防止効果が不十分となる場合がある。したがって、好ましい配合量は樹脂に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.02〜25重量%、最も好ましくは0.02〜20重量%である。
次に、造形した樹脂の表面に帯電防止剤の塗膜を形成する方法について説明する。塗膜の形成には、樹脂組成物、および樹脂ワニスに加え、帯電防止剤および溶剤を含有する塗液を用いることができる。
例えば、塗液を用いる場合、造形した樹脂の表面に塗膜を形成する塗布方法としては、本発明に係る帯電防止剤を含有する溶液、分散液、乳化液を浸漬法、スピンコート法、スプレー法、ローラーコート法、グラビアコート法、ダイコート法、コンマコート法、ロールコート法、カーテンコート法、バーコート法等各種の手段を用いた方法がある。それらの方法は、塗布する厚み、粘度等に応じて適宜利用できる。
このとき用いられる溶剤は、帯電防止剤を溶解または分散させることができる溶媒であれば特に限定されることはないが、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、プロピオン酸ブチル、酪酸エチル、酪酸イソプロピル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル等のエステル類、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等を挙げることができる。
これらの溶剤は単独あるいは2種以上を適宜混合して用いることが可能である。
さらに、本発明の帯電防止剤をこれら溶剤に配合する量は特に限定されない。しかし、多量に配合すると、塗液の粘度が高くなりすぎてしまったり、塗液の白化が生じることがある。したがって、好ましい配合量は塗液全体に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.02〜15重量%、最も好ましくは0.02〜10重量%である。
本発明の帯電防止剤と、重合性官能基を有する化合物(モノマー、オリゴマーまたはプレポリマー)および重合開始剤とを混合して重合性組成物として利用することも可能である。重合性組成物の利用方法としては、その重合性組成物の形態に応じて、重合性組成物を重合させて樹脂造形品を製造する方法と、造形した樹脂の表面に重合性組成物を用いて帯電防止剤塗膜を形成する方法の両方の手法をとることができる。すなわち、重合性組成物を樹脂基板等に塗布し硬化させる場合は後者の手法に、重合性組成物単体で硬化させる場合は前者の手法に相当する。
重合性組成物は、少なくとも、帯電防止剤と、重合性官能基を有するモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーと、重合開始剤からなる。
重合性官能基を有するモノマーの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヒドロキシピバリン酸トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化リン酸トリアクリレート、エトキシ化トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、テトラメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化イソシアヌール酸トリアクリレート、トリ(2−ヒドロキシエチルイソシアヌレート)トリアクリレート、プロポキシレートグリセリルトリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、ネオペンチルグリコールオリゴアクリレート、1,4−ブタンジオールオリゴアクリレート、1,6−ヘキサンジオールオリゴアクリレート、トリメチロールプロパンオリゴアクリレート、ペンタエリスリトールオリゴアクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、メチルフェノキシエチルアクリレート、ジプロピレングリコールアクリレート、β−カルボキシルエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、N-ビニルホルムアミド、エチルジグリコールアクリレート、トリメチロールプロパンフォルマルモノアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、トリ(メタ)アリルイソシアヌレート、イミドアクリレート、イソアミルアクリレート、エトキシ化コハク酸アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリルアクリレート、トリブロモフェニルアクリレート、エトキシ化トリブロモフェニルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられる。さらには、山下晋三ら編、「架橋剤ハンドブック」、(1981年、大成社)や加藤清視編、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」、(1985年、高分子刊行会)、ラドテック研究会編、「UV・EB硬化技術の応用と市場」、79項、(1989年、シーエムシー)、赤松清編、「新・感光性樹脂の実際技術」、(1987年、シーエムシー)、滝山榮一郎著、「ポリエステル樹脂ハンドブック」、(1988年、日刊工業新聞社)に記載の市販品もしくは業界で公知の架橋性モノマーが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
オリゴマー、プレポリマーの例としては、ダイセルUCB社製「Ebecryl230、244、245、270、280/15IB、284、285、4830、4835、4858、4883、8402、8803、8800、254、264、265、294/35HD、1259、1264、4866、9260、8210、1290、1290K、5129、2000、2001、2002、2100、KRM7222、KRM7735、4842、210、215、4827、4849、6700、6700−20T、204、205、6602、220、4450、770、IRR567、81、84、83、80、657、800、805、808、810、812、1657、1810、IRR302、450、670、830、835、870、1830、1870、2870、IRR267、813、IRR483、811、436、438、446、505、524、525、554W、584、586、745、767、1701、1755、740/40TP、600、601、604、605、607、608、609、600/25TO、616、645、648、860、1606、1608、1629、1940、2958、2959、3200、3201、3404、3411、3412、3415、3500、3502、3600、3603、3604、3605、3608、3700、3700−20H、3700−20T、3700−25R、3701、3701−20T、3703、3702、RDX63182、6040、IRR419」、サートマー社製「CN104、CN120、CN124、CN136、CN151、CN2270、CN2271E、CN435、CN454、CN970、CN971、CN972、CN9782、CN981、CN9893、CN991」、BASF社製「Laromer EA81、LR8713、LR8765、LR8986、PE56F、PE44F、LR8800、PE46T、LR8907、PO43F、PO77F、PE55F、LR8967、LR8981、LR8982、LR8992、LR9004、LR8956、LR8985、LR8987、UP35D、UA19T、LR9005、PO83F、PO33F、PO84F、PO94F、LR8863、LR8869、LR8889、LR8997、LR8996、LR9013、LR9019、PO9026V、PE9027V」、コグニス社製「フォトマー3005、3015、3016、3072、3982、3215、5010、5429、5430、5432、5662、5806、5930、6008、6010、6019、6184、6210、6217、6230、6891、6892、6893−20R、6363、6572、3660」、根上工業社製「アートレジンUN−9000HP、9000PEP、9200A、7600、5200、1003、1255、3320HA、3320HB、3320HC、3320HS、901T、1200TPK、6060PTM、6060P」、日本合成化学社製「紫光 UV−6630B、7000B、7510B、7461TE、3000B、3200B、3210EA、3310B、3500BA、3520TL、3700B、6100B、6640B、1400B、1700B、6300B、7550B、7605B、7610B、7620EA、7630B、7640B、2000B、2010B、2250EA、2750B」、日本化薬社製「カヤラッドR−280、R−146、R131、R−205、EX2320、R190、R130、R−300、C−0011、TCR−1234、ZFR−1122、UX−2201、UX−2301、UX3204、UX−3301、UX−4101、UX−6101、UX−7101、MAX−5101、MAX−5100、MAX−3510、UX−4101」等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
重合性官能基を有する化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。重合性官能基を有する化合物の配合量は、重合性組成物全体に対して70〜99.5重量%、より好ましくは75〜99重量%、最も好ましくは80〜99重量%であることが好ましい。
重合開始剤としては、イルガキュアー651、イルガキュアー184、ダロキュアー1173、イルガキュアー500、イルガキュアー1000、イルガキュアー2959、イルガキュアー907、イルガキュアー369、イルガキュアー379、イルガキュアー1700、イルガキュアー149、イルガキュアー1800、イルガキュアー1850、イルガキュアー819、イルガキュアー784、イルガキュアー261、イルガキュアーOXE−01(CGI124)、CGI242(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社)、アデカオプトマーN1414、アデカオプトマーN1717(旭電化社)、Esacure1001M(Lamberti社)、ルシリンTPO(BASF社)、ダイドキュア174(大同化成社製)、特公昭59−1281号公報、特公昭61−9621号公報ならびに特開昭60−60104号公報記載のトリアジン誘導体、特開昭59−1504号公報ならびに特開昭61−243807号公報記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号公報、特公昭44−6413号公報、特公昭47−1604号公報ならびにUSP第3567453号明細書記載のジアゾニウム化合物公報、USP第2848328号明細書、USP第2852379号明細書ならびにUSP第2940853号明細書記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号公報、特公昭37−13109号公報、特公昭38−18015号公報ならびに特公昭45−9610号公報記載のオルト−キノンジアジド類、特公昭55−39162号公報、特開昭59−140203号公報ならびに「マクロモレキュルス(MACROMOLECULES)」、第10巻、第1307頁(1977年)記載のヨードニウム化合物をはじめとする各種オニウム化合物、特開昭59−142205号公報記載のアゾ化合物、特開平1−54440号公報、ヨーロッパ特許第109851号明細書、ヨーロッパ特許第126712号明細書、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.IMAG.SCI.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の金属アレン錯体、特開昭61−151197号公報記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(COORDINATION CHEMISTRY REVIEW)」、第84巻、第85〜第277頁(1988年)ならびに特開平2−182701号公報記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号公報記載のアルミナート錯体、特開平2−157760号公報記載のホウ酸塩化合物、特開昭55−127550号公報ならびに特開昭60−202437号公報記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,1’−ビイミダゾール、四臭化炭素や特開昭59−107344号公報記載の有機ハロゲン化合物、特開平5−213861号公報、特開平5−255347号公報、特開平5−255421号公報、特開平6−157623号公報、特開2000−344812号公報、特開2002−265512号公報、特願2004−053009号公報、ならびに特願2004−263413号公報記載のスルホニウム錯体またはオキソスルホニウム錯体、特開2001−264530号公報、特開2001−261761号公報、特開2000−80068号公報、特開2001−233842号公報、USP3558309号明細書(1971年)、USP4202697号明細書(1980年)、特開昭61−24558号公報、特表2004−534797号公報、ならびに特開2004−359639号公報記載のオキシムエステル化合物、特表2002−530372号公報記載の二官能性光開始剤などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。重合開始剤は、単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
また、重合性組成物に、紫外から近赤外の光に対して吸収を持つ増感剤を加えることにより、紫外から近赤外領域にかけての光に対する活性を高め、極めて高感度な重合性組成物とすることが可能である。
そのような増感剤としては、ベンゾフェノン類、カルコン誘導体やジベンザルアセトンなどに代表される不飽和ケトン類、ベンジルやカンファーキノンなどに代表される1,2−ジケトン誘導体、ベンゾイン誘導体、フルオレン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、キサンテン誘導体、チオキサンテン誘導体、キサントン誘導体、チオキサントン誘導体、クマリン誘導体、ケトクマリン誘導体、シアニン誘導体、メロシアニン誘導体、オキソノール誘導体等のポリメチン色素、アクリジン誘導体、アジン誘導体、チアジン誘導体、オキサジン誘導体、インドリン誘導体、アズレン誘導体、アズレニウム誘導体、スクアリリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、テトラフェニルポルフィリン誘導体、トリアリールメタン誘導体、テトラベンゾポルフィリン誘導体、テトラピラジノポルフィラジン誘導体、フタロシアニン誘導体、テトラアザポルフィラジン誘導体、テトラキノキサリロポルフィラジン誘導体、ナフタロシアニン誘導体、サブフタロシアニン誘導体、ピリリウム誘導体、チオピリリウム誘導体、テトラフィリン誘導体、アヌレン誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、チオスピロピラン誘導体、金属アレーン錯体、有機ルテニウム錯体などが挙げられ、その他さらに具体例には大河原信ら編、「色素ハンドブック」(1986年、講談社)、大河原信ら編、「機能性色素の化学」(1981年、シーエムシー)、池森忠三朗ら編、「特殊機能材料」(1986年、シーエムシー)に記載の色素および増感剤が挙げられるがこれらに限定されるものではない。その他、紫外から近赤外域にかけての光に対して吸収を示す色素や増感剤が挙げられる。これらは必要に応じて任意の比率で二種以上用いてもかまわない。上記、増感剤の中でチオキサントン誘導体としては、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントンなどを挙げることができ、ベンゾフェノン類としては、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメチルベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンなどを挙げることができ、クマリン類としては、クマリン1、クマリン338、クマリン102などを挙げることができ、ケトクマリン類としては、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明で使用される重合開始剤および増感剤の配合量は特に限定されないが、これらの合計量が、好ましくは、重合性組成物全体の0〜20重量%、より好ましくは、0.1〜15重量%の範囲である。
本発明の帯電防止剤を重合性組成物に配合する量は特に限定されない。しかし、多量に配合すると、硬化に時間がかかる、完全に硬化できないといった硬化特性に影響を与える場合があるので、好ましい配合量は重合性組成物全体に対して0.01〜30重量%、より好ましくは0.02〜25重量%、最も好ましくは0.02〜20重量%である。
また、本発明の重合性組成物は、保存時の重合を防止する目的で重合禁止剤を添加することが可能である。
添加可能な重合禁止剤の具体例としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、アルキル置換ハイドロキノン、カテコール、tert−ブチルカテコール、フェノチアジン等を挙げることができる。重合禁止剤の添加量はとくに限定されるものではないが、好ましくは重合性組成物中に0.01〜5重量%の範囲で用いられる。
さらに、本発明の重合性組成物には、さらに重合を促進する目的で、アミンやチオール、ジスルフィドなどに代表される重合促進剤や連鎖移動触媒を添加することが可能である。
本発明の重合性組成物に添加可能な重合促進剤や連鎖移動触媒の具体例としては、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、N−フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類、USP第4414312号明細書や特開昭64−13144号公報記載のチオール類、特開平2−291561号公報記載のジスルフィド類、USP第3558322号明細書や特開昭64−17048号公報記載のチオン類、特開平2−291560号公報記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類が挙げられる。重合促進剤や連鎖移動触媒の添加量はとくに限定されるものではないが、好ましくは重合性組成物中に0.001〜5重量%の範囲で用いられる。
本発明における重合性組成物は、紫外線や可視光線、近赤外線、電子線等によるエネルギーの付与により重合し、目的とする重合物を得ることが可能である。尚、本明細書でいう紫外線、可視光線、近赤外線等の定義は久保亮五ら編「岩波理化学辞典第4版」(1987年、岩波)によった。
したがって、本発明の重合性組成物は、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、アルゴンイオンレーザ、ヘリウムカドミウムレーザ、ヘリウムネオンレーザ、クリプトンイオンレーザ、各種半導体レーザ、YAGレーザ、発光ダイオード、CRT光源、プラズマ光源、電子線、γ線、ArFエキシマーレーザ、KrFエキシマーレーザ、F2レーザ等の各種光源によるエネルギーの付与により目的とする重合物(硬化物)を得ることができる。
本発明における帯電防止剤を使用する際に、必要に応じて他の帯電防止剤、顔料、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、補強剤、耐候剤、滑剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、香料、無機電解質、発泡剤、難燃剤、フィラー、表面調整剤等の添加物を同時に配合することも可能である。
他の帯電防止剤としては、グリセリンモノ脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ジエタノールアミン脂肪酸アミド、ポリアルキレングリコールアルキルエーテル、N−アルキルアンモニウムクロライド、金属微粒子、金属酸化物(ITO、FTO、ATO等)等が挙げられる。
顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、ストロンチウムクロマート、プルシアンブルー等の無機顔料、アゾ顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料、キノフタロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、インダンスロン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジン顔料等の有機顔料が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert.−ブチルフェノール(以下、tert.−ブチルを「t−ブチル」と略記する。)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,6−ビス(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルベンジル)4−メチルフェノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、2−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ステアリル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オレイル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ドデシル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸オクチル、テトラキス{3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオニルオキシメチル}メタン、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸グリセリンモノエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸とグリセリンモノオレイルエーテルとのエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸ブチレングリコールエステル、3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオン酸チオジグリコールエステル、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,6−ジ−t−ブチル−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)サルファイド、トリス{(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル−オキシエチル}イソシアヌルレート、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾイル)イソシアヌレート、ビス{2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル)サルファイド、1,3,5−トリス(4−ジ−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、テトラフタロイル−ジ(2,6−ジメチル−4−t−ブチル−3−ヒドロキシベンジルサルファイド)、6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−{ジエチル−ビス−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)}プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシナミド)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル−リン酸ジエステル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルベンジル)サルファイド、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス{3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド}グリコールエステル、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジイソトリデシル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、1,1,3−ブチリジントリス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジイソトリデシル)ホスファイト、2,2−プロピリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニルジイソトリデシル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレン−ジホスホナイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシルオキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、ジオクチルチオジプロピオネート、ジデシルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジステアリル−β,β’−チオジブチレート、(3−オクチルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−デシルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ラウリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ステアリルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−オレイルチオプロピオン酸)ペンタエリスリトールテトラエステル、(3−ラウリルチオプロピオン酸)−4,4’−チオジ(3−メチル−5−t−ブチル−4−フェノール)エステル、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾールジスルフィド、ジラウリルサルファイド、アミルチオグリコール等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル}ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニルメタン)、フェニルサリシレート、4−t−ブチルフェニルサリシレート、4−オクチルフェニルサリシレート等のサリシレート系;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系;2−エトキシ−2’−エチルオキザリックアシッドビスアニリド等のオキザリックアシッド系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、(ミックスト−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト−{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ミックスト−{1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル/β,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエチル}−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}、ジメチルサクシネート/4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノール重合体、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート、エチレンビス(2,2,6,6−テトラメチル−3−オキサ−4−ピペリジン)、{2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)}−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、ニッケルジブチルジチオカルバメート、{2,2'−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)}−2−ブチルアミンニッケル(II)、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルリン酸モノエチレートニッケル錯体等のニッケル系光安定剤;2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5'−ジ−t−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられる。
可塑剤としては、フタル酸エステル、リン酸エステル、ポリエステル、トリメリット酸エステル、塩素化パラフィン、二塩基酸エステル、エポキシ化エステル等が挙げられる。
難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、テトラブロモ無水フタル酸、塩素化ポリエチレン、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、クロレンド酸、テトラクロロ無水フタル酸、リン酸アンモニウム、トリクレジルフォスフェート、トリエチルフォスフェート、トリス(β−クロロエチル)フォスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェート、クレジルジフェニルフォスフェート、キシレニルジフェニルフォスフェート、赤燐、酸化スズ、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、窒素化グアニジン等が挙げられる。
表面調整剤としては、ビックケミー社製「BYK−300、302、306、307、310、315、320、322、323、325、330、331、333、337、340、344、370、375、377、350、352、354、355、356、358N、361N、357、390、392、UV3500、UV3510、UV3570」、テゴケミー社製「Tegorad−2100,2200、2250、2500、2700」等が挙げられる。これら表面調整剤は、一種または必要に応じて二種以上用いてもよい。
本発明によれば、高い帯電防止能のみならず、透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せ持ち、金属や金属イオンを含まない帯電防止剤を提供することが可能となる。
本発明において、樹脂造形品としては、FPD向け各種フィルム、導電性ゴム、帯電防止コーティング、電子部品パッケージなどがある。
次に、本発明について実施例を用いて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、以下に本発明における化合物の合成例を示す。
<合成例1> 化合物(1)の合成
ナトリウムテトラフェニルボレート 342gを、イオン交換水1Lに溶解させ、ナトリウムテトラフェニルボレート水溶液を得た。この水溶液に、テトラブチルホスホニウムクロライド294gをイオン交換水1Lに溶解させて得たテトラブチルホスホニウムクロライド水溶液を徐々に添加した。析出物をろ過することにより、化合物(1)を 520g得た。元素分析((株)柳本製作所製 MT−5より、C,Hの含有量を、ICP発光分光分析(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、SPS4000型)よりP、Bの含有量の測定を行った、以下同様)(組成式:C40H56BP 計算値(%):C,83.02; H, 9.75; B,1.87; P,5.35 実測値(%):C,83.04; H, 9.75; B,1.83; P,5.30)により確認した。
<合成例2> 化合物(5)の合成
ナトリウムテトラフェニルボレート の代わりに、ナトリウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート を、テトラブチルホスホニウムクロライドの代わりに、テトラエチルホスホニウムクロライドを用いた以外は、合成例1と同様にして、化合物(5)を得た。元素分析、ICP発光分光分析(組成式:C32H20BF20P 計算値(%):C,46.52; H,2.44; B,1.31; P,3.75 実測値(%):C,46.49; H,2.49; B,1.35; P,3.74)により確認した。
により確認した。
<合成例3> 化合物(8)の合成
テトラブチルホスホニウムクロライドの代わりに、テトラエチルホスホニウムクロライドを用いた以外は、合成例1と同様にして、化合物(8)を得た。元素分析、ICP発光分光分析(組成式:C32H40BP 計算値(%):C,82.40; H,8.64; B,2.32; P,6.64 実測値(%):C,82.39; H,8.59; B,2.30; P,6.61)により確認した。
<合成例4> 化合物(62)の合成
テトラエチルホスホニウムクロライド の代わりに、テトラブチルホスホニウムブロマイド を用いた以外は、合成例2と同様にして、化合物(62)を得た。元素分析、ICP発光分光分析(組成式:C40H36BF20P 計算値(%):C,51.19; H,3.87; B,1.15; P,3.30 実測値(%):C,51.20; H,3.85; B,1.19; P,3.36)により確認した。
<合成例5> 化合物(63)の合成
テトラエチルホスホニウムクロライド の代わりに、ビニルトリフェニルホスホニウムブロマイド を用いた以外は、合成例2と同様にして、化合物(63)を得た。元素分析、ICP発光分光分析(組成式:C45H20BF20P 計算値(%):C,55.02; H,2.05; B,1.10; P,3.15 実測値(%):C,55.4; H,2.09; B,1.19; P,3.20)により確認した。
<合成例6> 化合物(80)の合成
テトラエチルホスホニウムクロライド の代わりに、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド を用いた以外は、合成例2と同様にして、化合物(80)を得た。元素分析、ICP発光分光分析(組成式:C49H22BF20P 計算値(%):C,57.00; H,2.15; B,1.05; P,3.00 実測値(%):C,57.08; H,2.17; B,1.08; P,3.08)により確認した。
<合成例7> 化合物(100)の合成
テトラエチルホスホニウムクロライド の代わりに、テトラフェニルホスホニウムブロミド を用いた以外は、合成例2と同様にして、化合物(100)を得た。元素分析、ICP発光分光分析(組成式:C48H20BF20P 計算値(%):C,56.61; H,1.98; B,1.06; P,3.04 実測値(%):C,56.58; H,1.93; B,1.09; P,3.06)により確認した。
<合成例8> 化合物(110)の合成
テトラエチルホスホニウムクロライド の代わりに、ジメチルジフェニルホスホニウムクロライド を用いた以外は、合成例2と同様にして、化合物(110)を得た。元素分析、ICP発光分光分析(組成式:C38H16BF20P 計算値(%):C,51.04; H,1.80; B,1.21; P,3.46 実測値(%):C,50.84; H,1.91; B,1.18; P,3.60)により確認した。
<その他の合成例> 化合物(2)〜(4)、(6)、(7)、(9)〜(61)、(64)〜(79)、(81)〜(99)、(101)〜(109)、(111)および(112)の合成
合成例1に従い、目的とする化合物に相当するボレートのナトリウム、カリウム、リチウムまたはマグネシウムハライド塩と、目的とする化合物に相当するホスホニウム塩のブロマイド、クロライドまたはヨーダイドとの塩交換により化合物を合成した。なお、原料はアルドリッチ社、東京化成社、ナカライテスク社、メルク社等の試薬メーカーから購入した。
また、入手が困難なボレートに関しては、特開昭62−132893号公報、特開昭62−277307号公報、特開平6−247980号公報、特開平6−247981号公報、特開平8−311074号公報、特開平10−330381号公報、特開平10−310589号公報、特開平11−292883号公報、特開2000−143671号公報、特開2003−238572号公報、特開2003−335786号公報、特開2004−43435号公報、米国特許第398236号公報、米国特許第5473036号公報、Journal of Organometallic Chemistry誌 1964年 第2巻 245頁、Journal of Organometallic Chemistry誌 1967年 第8巻 411頁等を参考に合成を行った。
入手が困難なホスホニウムに関しては、日本化学会編、「第4版 実験化学講座24有機合成VI」252頁(1992年、丸善株式会社)、L.Maierら著「Organic Phosphorus Compounds」 vol. 2(1972)189頁、Journal of the American Chemical Society誌 1965年 第92巻 2756頁、特開平7−267970号公報を参考に合成を行った。
表1に、合成した化合物のうち代表的なものの元素分析値、ICP発光分光分析値を示す。
実施例1
UV硬化性モノマーとして、紫光UV1700B(日本合成化学社製)を1.5g、重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.15g、希釈溶剤としてPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を3g、帯電防止剤として、化合物(1)を0.03g(樹脂比2%)秤量し、混合し、混合液が均一になるように撹拌した。
バーコーター#12を用いて、混合液をPET基板上に塗布し、塗膜を形成した後、90℃にて一分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて光照射し(640mW/cm2)、塗膜を硬化させた。硬化塗膜の表面抵抗値を測定(アドバンテスト社製 R8340A)することにより、帯電防止能を評価した。以降、表面抵抗値(Ω/□)は、1010台Ω/□以下の値を◎、1011乗台Ω/□の値を○、1012乗台Ω/□の値を△、1013乗台Ω/□の値を▽、1013乗以上を×と示した。また、硬化塗膜の全光線透過率(スガ試験機社製 HGM−2B)についても測定した。
実施例2〜実施例112
化合物(1)の代わりに、化合物(2)から化合物(112)を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。
実施例113〜実施例224
化合物(1)から化合物(112)を0.075g(樹脂比5%)用いた以外は、実施例1から実施例80と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。
比較例1
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ライトエステルDQ−100(共栄社化学社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。
比較例2
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ライトエステルDQ−100(共栄社化学社製)を用いた以外は、実施例113と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。
比較例3
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤サンコノールA400−50R(三光化学工業社製)を用いた以外は、実施例1と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。
比較例4
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤サンコノールA400−50R(三光化学工業社製)を用いた以外は、実施例113と同様にして硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。
表2に、実施例1〜実施例224及び比較例1〜比較例4の結果を示す。
本発明の帯電防止剤を用いた場合、その添加量にもかかわらず、十分な帯電防止効果が得られた。具体的には、2%と5%との値を比較しても大差がなく、少量でも十分に効果があった。一方、市販の帯電防止剤を用いた場合、硬化塗膜の表面抵抗が測定範囲を超えており、帯電防止剤としては機能していなかった。
基板のPETフィルムの全光線透過率は、89.80%であり、本発明の帯電防止剤を用いた場合は、ほぼ同等の値を示していた。本発明の帯電防止剤は、非常に透明性の高い材料である。一方、比較例3および比較例4では、帯電防止剤の相溶性の低さからか、塗膜にはブツが観測された。それらによる散乱成分が増加したためか、全光線透過率は低い値を示した。
実施例225
アクアブル48E(昭和ワニス株式会社製 水溶性アルキッド樹脂)100gに、化合物(1)を5g添加し均一になるように混合し、樹脂ワニスを作製した。この樹脂ワニスをバーコーター#15を用いて、ガラス基板上に塗布し、塗膜を形成し、120℃にて45分加熱乾燥した。帯電防止能の評価として、塗膜の表面抵抗値を測定した結果を表3に示す。
実施例225〜実施例274
化合物(1)の代わりに、表3に記載した化合物を用いた以外は、実施例225と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表3に示す。
比較例5
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ライトエステルDQ−100(共栄社化学社製)を用いた以外は、実施例225と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表3に示す。
比較例6
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ダスパー125B(ミヨシ樹脂株式会社製)を用いた以外は、実施例225と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表3に示す。
比較例7
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤エマルゲン105(花王株式会社製)を用いた以外は、実施例225と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表3に示す。
表3の結果から分かるように、本発明の帯電防止剤は、水系のワニスに配合した場合でも、均一に分散され、十分な帯電防止効果が得られた。一方、比較例では、本発明の帯電防止剤を用いた場合に比べ、高い表面抵抗値を示した。特に比較例7においては、帯電防止剤を水系ワニスに均一に分散できず、塗膜は白化していた。
実施例275
高密度ポリエチレン(アルドリッチ社製)100gと化合物(1)5gを井上製作所製ニーダーを用いて150℃で5時間混練した。さらに、押出し成型機を用いて混練物を押し出し、厚さ5mmの樹脂板を形成した。帯電防止能の評価として、樹脂板の表面抵抗値を測定した結果を表4に示す。また、樹脂板の変色の有無についても評価した。
実施例276〜実施例328
化合物(1)の代わりに、表4に記載した化合物を用いた以外は、実施例202と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定した。結果を表4に示す。
比較例8
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ドデシルピリジニウムクロライド(DPC:東京化成社製)を用いた以外は、実施例275と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定した。結果を表4に示す。
比較例9
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ダスパー125B(ミヨシ樹脂株式会社製)を用いた以外は、実施例275と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定した。結果を表4に示す。
比較例10
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤エマルゲン105(花王株式会社製)を用いた以外は、実施例275と同様にして樹脂板の表面抵抗値を測定した。結果を表4に示す。
実施例275〜実施例328の結果から分かるように、本発明の帯電防止剤は、熱可塑性樹脂に150℃、5時間という高温長時間で混練しても、十分な帯電防止能を示した。また、本発明の帯電防止剤を用いた樹脂板においては、黄変は全く認められなかった。
一方、汎用の帯電防止剤で試験を行った比較例8〜比較例10では、帯電防止効果はえられず、さらには高温長時間の混練のためか、黄変も見られた。特に、比較例8では、不快臭が感じられた。ガスクロマトグラフィーの分析より、帯電防止剤の構成成分であるピリジンに起因する臭気であることを確認した。
実施例329
化合物(1)0.5gをPGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)10gに溶解させ、溶液をスピンコーターを用いて100μmのPETフィルムの上に塗布し、100℃で1分間乾燥させ塗膜を形成した。帯電防止能の評価として、塗膜の表面抵抗値を測定した結果を表5に示す。
実施例330〜実施例391
化合物(1)の代わりに、表5に記載した化合物を用いた以外は、実施例329と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表5に示す。
比較例11
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ドデシルピリジニウムクロライド(DPC:東京化成社製)を用いた以外は、実施例329と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表5に示す。
比較例12
化合物(1)の代わりに、市販の帯電防止剤ダスパー125B(ミヨシ樹脂株式会社製)を用いた以外は、実施例329と同様にして塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表5に示す。
表5の結果から明らかなように、本発明の帯電防止剤は、汎用の帯電防止剤と比較して、低い表面抵抗値を示した。
実施例392〜実施例411
本発明の帯電防止剤のいくつかについて、水、有機溶剤、UV硬化性モノマーへの溶解性を表7にまとめた。
比較例13〜比較例16
表6に示す帯電防止剤の水、有機溶剤、UV硬化性モノマーへの溶解性について表7にまとめた。
表7に示した本発明の帯電防止剤は、有機溶剤やUV硬化性モノマーに高い溶解性を示した。一方、比較例の帯電防止剤は、水に対する溶解性は高く、有機溶剤やUV硬化性モノマーへの溶解性が低く、本発明の帯電防止剤とほぼ逆の性質を示した。表7に示した本発明の帯電防止剤は、有機材料に対しての相溶性が、比較化合物よりもはるかに高い。比較化合物と有機材料との相溶性の低さは、比較化合物が、有機アニオンと金属カチオンから形成されているという点に大きく起因しているのではないかと推測することができる。
なお、本発明の帯電防止剤は、分散性に優れているために、実施例392〜実施例411に示すとおり水系ワニスなどにも好ましく適用することができる。
実施例412
UVモノマーとして、紫光UV1700B(日本合成化学社製)を5g、重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.5g、希釈溶剤として酢酸エチルを15g、化合物(1)を0.25g(樹脂比5%)秤量し、混合し、撹拌した。
バーコーター#12を用いて、混合液をPET基板上に塗布し、塗膜を形成した後、100℃にて一分間乾燥を行った。メタルハライドランプを用いて光照射し(640mW/cm2)、塗膜を硬化させた。硬化直後の硬化塗膜のヘイズ値と、一週間放置(23℃、55%RH)した後の硬化塗膜のヘイズ値を測定した結果を表8に示す。
実施例413〜実施例428、比較例17〜比較例20
化合物(1)の代わりに、表8に示す化合物を用いたこと以外は実施例303と同様にして、硬化塗膜を作成してヘイズ値を測定した。結果を表8に示す。
硬化直後は、いずれの硬化塗膜もヘイズ値が低く、透明性が高かった。しかしながら、23℃、55%RHにおいて一週間保管した硬化塗膜では、本発明の帯電防止剤を用いた場合は、硬化直後とほぼ同様な値を示した。一方、比較例の帯電防止剤を用いた場合には、ヘイズ値が高くなった。硬化塗膜を詳しく観察すると、比較例の硬化塗膜では、ブツが観測できた。おそらく、塗膜中の比較化合物の硬化樹脂に対しての相溶性がよくないために、結晶化したのではないかと考えることができる。
実施例429
UV硬化性モノマーとして、アロニックスM408(東亞合成株式会社製)を5g、重合開始剤として、ダイドキュア174(大同化成社製)を0.5g、希釈溶剤として酢酸エチルを15g、化合物(1)を0.25g(樹脂比5%)秤量し、混合し、撹拌した。
バーコーター#12を用いて、混合液をPET基板上に塗布し、塗膜を形成した後、100℃にて一分間乾燥させた。メタルハライドランプを用いて光照射し(640mW/cm2)、塗膜を硬化させた。湿度条件を変化させ硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表9に示す。
実施例430〜実施例448、比較例21〜比較例24
化合物(1)の代わりに、表9に示す化合物を用いたこと以外は実施例429と同様にして、表面抵抗値を測定した。結果を表9に示す。
本発明の帯電防止剤を用いた場合には、湿度の変化によらず、その表面抵抗値はほとんど変化しなかった。しかし、比較例の帯電防止剤を用いた場合においては、湿度が低下するにつれ表面抵抗値が大きくなり、35%RHでは1014Ω/□以上の値となり、帯電防止剤としては、機能していなかった。
実施例449
UVモノマーとして、アロニックスM402(東亞合成株式会社製)を10g、重合開始剤として、イルガキュア907(チバスペシャルティケミカルズ社製)を0.5g、希釈溶剤として酢酸エチルを15g秤量し、混合し、撹拌した。得られた混合液に、化合物(1)0.1g(樹脂比1%)のメタノール(5g)溶液を加え、混合液が一様になるように撹拌した。
スピンコーターを用いて、混合液をガラス基板上に塗布し、塗膜を形成した後、100℃にて一分間乾燥させた。高圧水銀灯を用いて光照射し(730mW/cm2)、塗膜を硬化させた。湿度条件を変化させ硬化塗膜の表面抵抗値を測定した。結果を表10に示す。
実施例450〜実施例482、比較例25〜比較例55
化合物(1)の代わりに、表10に示す化合物を用いたこと以外は実施例449と同様にして、表面抵抗値を測定した。結果を表10に示す。なお、表中、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはノルマルブチル基、Phはフェニル基、Tolはp−トリル基、c−Hexはシクロヘキシル基、Bnはベンジル基を示す。
表10に示す本発明の帯電防止剤は、湿度の変化によらず、その表面抵抗値はほとんど変化しなかった。しかし、比較例に示す化合物においては、湿度55%RH条件下で、その表面抵抗値が一桁ほど大きくなった。さらに、湿度が低下するにつれ表面抵抗値が大きくなり、35%RHでは1014Ω/□以上の値となり、帯電防止剤としては、機能していなかった。比較例に示した化合物は、水の対しての溶解性が高いものが多いため、湿度の影響が大きいものと推測できる。
実施例483
錠剤成型器を用いて、化合物(1)のペレットを作成し、湿度条件を変化させ表面抵抗値を測定した。結果を表11に示す。
実施例484〜実施例528、比較例56〜比較例93
化合物(1)の代わりに、表11に示す化合物を用いたこと以外は実施例483と同様にして、表面抵抗値を測定した。結果を表11に示す。なお、表中、Meはメチル基、Etはエチル基、Buはノルマルブチル基、Phはフェニル基、Tolはp−トリル基、c−Hexはシクロヘキシル基、Bnはベンジル基を示す。
表11に示す本発明の帯電防止剤は、表面抵抗値は湿度による影響を全く受けず、どの湿度条件化においてもほぼ同じ値を示していた。一方、比較例の化合物は、湿度による影響が顕著に認められた。さらに、湿度が35%RHの条件においては、表面抵抗値は非常に大きくなり、帯電防止剤としては、機能していなかった。
実施例392から実施例528および比較例13から比較例93の結果を総合的に考えると、比較例に挙げた化合物群は、水に対しての溶解度が高いという特徴がある。これは、比較化合物の多くが、有機物のカチオン(ホスホニウム)と無機物のアニオンから構成されることに起因していると推測される。さらに、比較例に挙げた化合物群は、湿度が低い条件では、表面抵抗値が大きくなり、帯電防止能が低下することから、その除電メカニズムには水が大きく関与していると考えられる。しかしながら、実施例に挙げた本発明の帯電防止剤は、水に対しての溶解性が低く、さらに様々な条件において、その表面抵抗値は湿度による影響を受けなかった。
これら実施例から総合的に判断をすると、本発明の特定のカチオンと特定のアニオンとの組み合わせからなる帯電防止剤は、高い帯電防止能のみならず、透明性・樹脂や溶剤への溶解性(相溶性)・耐熱性・耐湿性を併せ持ち、貴金属や重金属さらには金属イオンを含まないといった特徴を兼ね備えていた。本発明の帯電防止剤は、特に湿度の低い環境下で、優れた帯電防止能を発揮する。