JP2009032707A - Si基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法及び結晶性SiC基板 - Google Patents
Si基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法及び結晶性SiC基板 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】大気圧プラズマを用いて、従来の熱的な手法に比べ、より低温で、かつ、より高速に高品位な単結晶3C-SiC薄膜をSi基板上に形成することが可能なSi基板表面の炭化による単結性SiCの形成方法及び結晶性SiC基板を提供する。
【解決手段】Si単結晶基板と電極とを成膜ギャップを設けて反応室内に配置し、該反応室内に炭化水素系原料ガスとH2及び不活性ガスからなるキャリアガスを供給して100Torr〜10atmの圧力とし、前記基板の温度を200〜1000℃に設定し、前記電極に10MHz〜10GHzの高周波電力を投入してSi基板の表層部に単結性SiC層を形成する。
【選択図】 図14
【解決手段】Si単結晶基板と電極とを成膜ギャップを設けて反応室内に配置し、該反応室内に炭化水素系原料ガスとH2及び不活性ガスからなるキャリアガスを供給して100Torr〜10atmの圧力とし、前記基板の温度を200〜1000℃に設定し、前記電極に10MHz〜10GHzの高周波電力を投入してSi基板の表層部に単結性SiC層を形成する。
【選択図】 図14
Description
本発明は、Si基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法に係わり、更に詳しくは単結晶Siからなる基板表面を炭化して、該基板の表層部に結晶性の良好なSiCを形成する方法及びそれにより製造する結晶性SiC基板に関するものである。
シリコンカーバイド(SiC)は、高硬度であることや化学的に安定であるといった、優れた物理的・化学的特性を持った半導体材料である。SiCデバイスが実現されれば、従来のSiデバイスに比べて約100分の1の電力損失、約10倍の動作周波数が期待できる。しかも、Siに比べてバンドギャップが大きいため、動作温度はSiデバイスの120℃程度に対して原理的に500℃を超えると考えられる。したがって、SiCは耐環境半導体材料として、古くから注目されている。SiCは200種類以上の結晶多形(ポリタイプ)構造をもつ化合物半導体であるが、その中で比較的形成しやすく実用的なものは、立方晶系の3C-SiC、六方晶系の4H-および6H-SiCである。
高性能なSiCデバイスを実現するためには、その基板材料であるSiCバルク単結晶ウエハ(主に4H-または6H-SiC)を高品質化しなければならない。現在のSiCバルク単結晶は、黒鉛坩堝に装填されたSiC原料粉末を2000℃以上に加熱し、SiC種結晶上に昇華再結晶化させる方法(昇華法)で成長させる。しかし、そのようにして成長させた結晶中の転位密度は非常に高い上に、マイクロパイプと呼ばれる直径〜10μmの特異なパイプ状貫通欠陥も多数存在する。このような欠陥は、デバイス特性に致命的な悪影響を及ぼすが、それらを抑制する手段は見つかっていない。そのため、SiCバルク単結晶よりも高品位なSiC単結晶層をホモエピタキシャル成長により形成することが不可欠となっている。しかし、一般に4H-または6H-SiCのホモエピタキシャル薄膜は熱CVD法で形成され、やはり1500℃以上もの高温が必要とされる。そのため、種々の結晶欠陥の導入や不純物混入等の問題が不可避となっている。また、現在入手可能な4H-または6H-SiCウエハは直径2〜3インチであり、Siウエハに比べて小さいため、SiCデバイスの開発・普及が制限される一因となっている。
これに対して、3C-SiCは、SiCのポリタイプの中で最も低温で安定な相であり、電子移動度や電子飽和速度、絶縁破壊電界などの特性において最も優れている。しかし、低温安定相であるがゆえに4H-SiCや6H-SiCのようにバルク単結晶を作ることができず、そのためSi基板上へのヘテロエピタキシャル成長の研究が行われてきた。Siウエハを基板とすることで、4H-SiCや6H-SiCのようにウエハサイズが小さいという問題が解消される反面、SiとSiCの格子不整合が大きいため、高品位な3C-SiCのヘテロエピタキシャル薄膜が本質的に得られにくい。この格子不整合を緩和するための一般的な方策としては、3C-SiCの成膜前に、CH4やC2H2等の原料ガス雰囲気においてSi基板を800℃以上に加熱して表面を熱炭化し、ごく薄いSiC層を形成する手法が用いられている。また、3C-SiCのヘテロエピタキシャル薄膜は、4H-または6H-SiCのホモエピタキシャル成長と同様、一般に1000〜1400℃という高温下での熱CVDにより形成されている(特許文献1,2参照)。このように、Si基板の熱炭化プロセス、および、それに続く3C-SiCの熱CVDによる成膜プロセスには、1000℃前後の高温が不可欠であり、しかも、実用的な炭化層厚さや3C-SiCの成膜速度を得るためには、より高い基板温度が必要になる。しかし、基板温度がSiの融点に近づくとともに、プロセス中に基板のSi原子がSiC層に拡散しやすくなり、界面付近にボイドが形成されるという重大な問題が顕在化する。したがって、Si基板上に高品位な3C-SiCのヘテロエピタキシャル薄膜を実用的な速度で形成するためには、できる限り低いプロセス温度において結晶性の良好なSiC形成反応を効率的に生じさせることが可能な技術の開発が急務である。
尚、特許文献3には、特許文献2に開示されたSOI基板の表面Si層を熱炭化してSiCに変成する製造方法の問題点として、変成されたSiC層と埋め込まれているSiO2層との界面は、高温下で不安定で、特にSiCがSiO2層に侵入しやすいうえ、Si→SiC反応が急激に進行するため、上記SiC/SiO2界面が不安定となり、界面が荒れて波打つような状態になり、均一な界面の単結晶SiC基板が得られず、またSiC層の厚みにばらつきが生じ、更にエピタキシャル成長によりSiCを成長させる場合に、成長したSiC層の結晶性が低下してきれいな単結晶SiC層が得られないうえ、その膜厚も不均一になり、しかも表面状態も粗い状態になりやすいという点が指摘されている。
特開2002−363751号公報
特開2003−224248号公報
特開2005−268460号公報
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、大気圧プラズマを用いて、従来の熱的な手法に比べ、より低温で、かつ、より高速に高品位な結晶性の良好なSiC薄膜をSi基板上に形成しようとするものである。
本発明は、前述の課題解決のために、Si単結晶基板と電極とを成膜ギャップを設けて反応室内に配置し、該反応室内に炭化水素系原料ガスとH2及び不活性ガスからなるキャリアガスを供給して100Torr〜10atmの圧力とし、前記基板の温度を200〜1000℃に設定し、前記電極に10MHz〜10GHzの高周波電力を投入してSi基板の表層部に結晶性SiC層を形成することを特徴とするSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法を構成した(請求項1)。
ここで、前記電極が円筒状の回転電極であり、該回転電極と基板間の成膜ギャップを0.1mm〜5mmに設定して、該回転電極の表面の周速度が10m/sec〜音速であることがより好ましい(請求項2)。
また、前記炭化水素系原料ガスが、CH4、C2H2である(請求項3)。更に、原料ガスにSi系ガスを加えてなることも好ましい(請求項4)。
また、全ガス中の原料ガス濃度を0.01%〜10%、H2濃度を1〜99.9%としてなることが好ましく(請求項5)、更に前記炭化水素系原料ガスがCH4であり、H2/CH4比を5〜1000としてなることが好ましい(請求項6)。
更に、H2/CH4比をxとし、電力密度(投入電力/プラズマ体積:W/cm3)をyとしたときに、以下の不等式
y≦900×ln(x)・・・(但し、lnは自然対数)
で表される範囲を条件とすることがより好ましい(請求項7)。
y≦900×ln(x)・・・(但し、lnは自然対数)
で表される範囲を条件とすることがより好ましい(請求項7)。
また、本発明は、請求項1〜7記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法によって、Si基板の表層部に結晶性SiC層を形成したことを特徴とする結晶性SiC基板を構成した(請求項8)。
以上にしてなる本発明のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法は、大気圧プラズマの利用により、原料ガスを分解し、活性化する効率が、従来の熱的な手法に比べて格段に高いので、より低温でSiCを形成することが可能である。また、大気圧プラズマは、一般的な減圧下でのプラズマに比べると、原料ガスの密度が著しく高いため、SiCの形成速度を速くすることができる。さらに、大気圧プラズマ中に高密度に存在する不活性ガス(HeやAr等)の原子は熱運動のエネルギーを持っているが、これらの原子が表面と絶えず衝突を繰り返すことによって表面が活性化され、比較的低温であってもSiC形成反応が促進される。その結果、低温であっても結晶性の優れたSiCを高速形成することが可能になる。Si基板表面に結晶性の良好なSiCを形成した基板は、それ自体を半導体デバイス用の基板として、あるいはGaN等を成膜するための基板として使用することができる。
次に、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、Si基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法であるが、特に大気圧プラズマCVD法を応用して、より低温で単結晶SiCを形成するものである。大気圧プラズマCVD法は、大気圧・高周波プラズマ中で生成した高密度ラジカルを利用する、機能薄膜の超高速形成技術である。回転電極を用いることにより、プロセスガスを高能率かつ均一に供給でき、原理的に大面積基板上に均質な薄膜の高速形成が可能である。大気圧プラズマ中には、反応ガスが分解・活性化されたラジカルとともに、熱運動のエネルギーを持った高密度な不活性ガス(He、Ar等)の原子が存在する。このような不活性ガス原子が膜成長表面に適度な構造緩和エネルギーを供給すると考えられるため、成膜温度の低温化が可能であり、また、成膜速度が速くても高品質な機能薄膜の形成が期待できる。
本発明では、基本的にCH4やC2H2等の炭化水素系ガスのみを原料ガスとして用い、大気圧プラズマにより十分に分解・活性化することによってSi基板表面を炭化させ、SiCを形成する。このようにして得られるSiCの膜厚をより厚くする必要がある場合には、原料ガス中にSiH4等のSi系の原料ガスを混合してSiCを堆積させることもあり得る。
図1は、大気圧プラズマによりSiを炭化し、SiCを形成する反応の概念図である。基板温度が低い場合には、原料ガスであるCH4やC2H2等の炭化水素系ガスが熱分解しないため、そのままでは炭化反応が進行しない。しかし、大気圧プラズマにより原料ガスを分解・活性化することによって、活性なCHnラジカルが高密度に生成し、これらのラジカルがSi基板表面に吸着し、さらにC原子が基板内部に拡散することによって、SiCが形成される。C原子のSi基板内部への拡散も、基板温度が低い場合には生じにくいが、本発明では、大気圧プラズマが常に基板表面に接しているため、大気圧プラズマ中の不活性ガス原子の基板表面への衝突によって常に表面が活性化されており、低温でもC原子の拡散が促進されやすい。その結果、一般的な熱炭化に比べて格段に厚く、しかも結晶性の優れたSiC層が得られると考えられる。
図2は、大気圧プラズマCVD装置のプラズマ部の概略図である。本装置の回転電極1の直径は300mm、幅は100mmである。基板2(幅10mm×長さ90mm)はXステージ上に設置された基板加熱ステージ3に真空チャックにより固定した。Xステージを走査させることにより、その走査距離に応じた面積の均一な成膜を行うことができ、Zステージ(図示せず)を昇降させることにより、電極1−基板2間の最小ギャップ(以下、成膜ギャップ)を調節できる。使用した高周波電源の周波数は150MHzである。
成膜条件を表1に示す。洗浄した基板を基板加熱ステージにセットし、一旦成膜チャンバおよびガス循環配管内部を高真空(5×10-4Pa)まで排気した後、プロセスガス(He、H2、CH4)を大気圧まで導入してSiCを形成した。基板としては、主にp型、面方位(001)、抵抗率10〜20ΩCmのCZ-Siウエハを用いた。ただし、基板面方位の影響の検討においては面方位(111)のSiウエハも用いた。今回の成膜条件の範囲では、プラズマ長さL(図2参照)は30〜40mmであり、このプラズマ長さに相当する領域に形成されたSiC薄膜を、赤外線(IR)吸収分光法および反射高速電子線回折(RHEED)により評価した。
(大気圧プラズマにより形成したSiCの厚さ分布)
図2から分かるように、電極が円筒形状であるために、電極−基板間ギャップの大きさが場所によって異なる。そのため、回転電極によって大気圧プラズマを発生させると、プラズマ密度は一様ではなく、最小ギャップ部においてプラズマ密度が最も高くなる。そこで、プラズマ密度がSiCの構造に及ぼす影響を調べるために、水素濃度99.75%、CH4濃度0.25%、投入電力1000W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃の条件で、大気圧プラズマによりSiウエハ表面を炭化し、形成されたSiCをRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価した。図3〜図5は、その結果の一例である。炭化時間は2分とした。
図2から分かるように、電極が円筒形状であるために、電極−基板間ギャップの大きさが場所によって異なる。そのため、回転電極によって大気圧プラズマを発生させると、プラズマ密度は一様ではなく、最小ギャップ部においてプラズマ密度が最も高くなる。そこで、プラズマ密度がSiCの構造に及ぼす影響を調べるために、水素濃度99.75%、CH4濃度0.25%、投入電力1000W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃の条件で、大気圧プラズマによりSiウエハ表面を炭化し、形成されたSiCをRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価した。図3〜図5は、その結果の一例である。炭化時間は2分とした。
図3から、プラズマ密度が異なってもSiC表面層の結晶構造には目立った変化はなく、結晶性の良好なSiCが形成されていることが確認できる。しかし、図4より、800cm-1のSi-C結合に起因した吸収ピークの強度が測定位置によって異なっており、形成されたSiC層の厚さが一様ではないことが考えられる。図5は図4における800cm-1のピークの積分強度と測定位置の関係を分かりやすく整理したものである。ピークの積分強度は、膜中のSi-C結合の数、すなわち膜厚に比例することから、形成されたSiCの厚さは最小ギャップ部付近で最も厚く、最小ギャップ部から離れるとともに減少していることが分かる。これらの結果から、プラズマ密度の違いは炭化速度に影響を及ぼすが、形成されるSiCの構造にはあまり影響がないものと考えられる。
(基板温度がSiC形成プロセスに及ぼす影響)
次に、基板温度の影響について検討した。成膜条件は、水素濃度99.75%、CH4濃度0.25%、投入電力1000W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μmとし、4通りの基板温度(130℃、300℃、550℃、800℃)で形成したSiCをRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価した。炭化時間は2分とした。
次に、基板温度の影響について検討した。成膜条件は、水素濃度99.75%、CH4濃度0.25%、投入電力1000W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μmとし、4通りの基板温度(130℃、300℃、550℃、800℃)で形成したSiCをRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価した。炭化時間は2分とした。
図6は、最小ギャップ部に形成されたSiCをRHEEDによって観察した結果である。基板温度が130℃の場合には、多結晶3C-SiCを示す回折リングが観察されているが、300℃以上の温度においては、単結晶を含む結晶性の良好なSiCが形成されていることが分かる。また、図7は、IR吸収分光法によって評価した結果である。何れも800cm-1を中心とするピークが見られ、結晶性の良好なSiCが形成されていることが確認できるが、130℃のスペクトルは他の温度のスペクトルに比べて半値幅が大きく、結晶性が劣っていることが示唆される。また、130℃を除けば、温度が高くなることによって、SiCの膜厚が大きくなっていることが分かる。
図7における800cm-1のピークの積分強度をアレニウスプロットしたものが図8である。これより、大気圧プラズマ炭化による結晶性の良好なSiC形成の活性化エネルギーは約0.1eVと求まる。これらの結果から、温度が高い程、SiCの形成反応は促進されるといえるが、大気圧プラズマを用いれば、300℃という低温でも結晶性の良好なSiCを形成することが可能である。一方、大気圧プラズマ炭化においても基板温度130℃では結晶性の良好なSiCは得られていないが、この原因を考察するために、発光分光法により大気圧プラズマの分析を行った。図9は、その結果をまとめたものである。図9より、基板温度が130℃の場合、251nmと288nmに明瞭なSi原子からの発光が見られる。これは、大気圧プラズマ中にSi原子が存在することを示しており、基板のSiが原子状水素によってエッチングされていることが分かる。したがって、基板温度130℃における大気圧プラズマ炭化では、基板がエッチングされて生じたSi原子とCH4の分解により生じたCHnラジカルが気相中で反応し、Si基板表面にSiC薄膜が堆積したものと考えられ、Si基板の炭化は起こっていないことが推測できる。
一般的な熱炭化に比べて、大気圧プラズマがどの程度効果的であるかを調べるために、同じ装置で、大気圧プラズマを用いずに熱炭化によりSiCの形成を試み、その評価を行った。成膜条件は、大気圧プラズマによる炭化の場合と同じガス濃度(水素濃度99.75%、CH4濃度0.25%)で、基板温度は1000℃、1050℃、1100℃、1150℃の4通りとし、炭化時間は10分とした。
図10は、各温度で実験を行った後の基板表面をRHEEDで観察した結果である。1000℃および1050℃においては、SiCによる回折パターンは見られず、下地のSiを示すストリークパターンが見られる。しかし、1100℃および1150℃においては、3C-SiCが形成されていることが確認できる。これらの基板をIR吸収分光法によって測定し、800cm-1のSi-C結合による吸収ピークの積分強度をアレニウスプロットしたものが図11である。これより、熱炭化によるSiC形成の活性化エネルギーは約7.7eVと求まる。この値と図8から求まった大気圧プラズマ炭化の活性化エネルギーとの比較から、大気圧プラズマはSiの炭化反応を著しく促進し、低温であっても結晶性の良好なSiCを形成可能であるといえる。
(投入電力がSiC形成プロセスに及ぼす影響)
大気圧プラズマ炭化によるSiCの形成においては、大気圧プラズマのエネルギーが原料ガスであるCH4の分解、および、結晶性の良好なSiCの形成反応に関して重要な役割をもっていることが分かった。そこで、投入電力が形成されるSiC層の厚さや結晶性に及ぼす影響について検討した。成膜条件は、水素濃度10%、CH4濃度1%(残りはHe)、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃とし、投入電力を200〜800Wの間で変化させて形成したSiCをRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価した。炭化時間は30分とした。
大気圧プラズマ炭化によるSiCの形成においては、大気圧プラズマのエネルギーが原料ガスであるCH4の分解、および、結晶性の良好なSiCの形成反応に関して重要な役割をもっていることが分かった。そこで、投入電力が形成されるSiC層の厚さや結晶性に及ぼす影響について検討した。成膜条件は、水素濃度10%、CH4濃度1%(残りはHe)、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃とし、投入電力を200〜800Wの間で変化させて形成したSiCをRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価した。炭化時間は30分とした。
図12は、形成されたSiCをRHEEDによって観察した結果である。200Wでは下地のSiによる回折パターンが見られ、明瞭な結晶性の良好なSiCの回折パターンが見られていないが、400Wでは結晶性の良好なSiCが得られていることが分かる。しかし、さらに投入電力が大きくなると、600Wでは結晶構造が乱れ始め、800Wでは完全に多結晶構造を示すリングパターンとなっている。解析の結果、800Wの場合のリングパターンは多結晶C薄膜によるものであることが分かった。図13は、図12の試料のIR吸収スペクトルである。投入電力の増加とともにSiCの厚さが増加していることから、投入電力を大きくすると、大気圧プラズマ中でのCH4の分解やSiCの形成反応が促進されるといえる。ただし、図12から、投入電力が過剰になると、基板上にC薄膜が堆積してしまうことが分かった。
(H2/CH4比がSiC形成プロセスに及ぼす影響)
図12および図13の結果は水素濃度10%、CH4濃度1%でのものであるが、大気圧プラズマ中で水素の分解によって生成される原子状水素は、CH4の分解反応に影響を及ぼすと考えられる。そこで、大気圧プラズマ中の水素濃度とCH4濃度の比(H2/CH4比)がSiC形成プロセスに及ぼす影響を調べた。図14は、種々の水素濃度およびCH4濃度において、投入電力を変化させて炭化した基板をRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価し、結果を分かりやすく整理したものである。その他の成膜条件は、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃とした。ここで、投入電力は装置のパラメータによって影響を受けるので、電力密度で評価する方がより不変的である。電力密度は、プラズマ生成領域の体積が約0.2cm3と見積もられるので、投入電力をこのプラズマ体積で除して換算する。図14には、投入電力と併せて電力密度の値を示している。図14に示した境界線は、H2/CH4比をxとし、電力密度をyとすると、y=900×ln(x)(但し、lnは自然対数)と表され、この境界線より下の領域(y≦900×ln(x))で結晶性の良好なSiCが形成され、境界線より上の領域ではC薄膜が形成されることを示している。この図から、H2/CH4比が0(水素濃度0%)の場合には炭化がほとんど生じずC薄膜の堆積が生じることが分かる。H2/CH4比を大きくしても、過剰な投入電力(電力密度)ではC薄膜が堆積するが、H2/CH4比を大きくしていくと、Si基板の炭化によりSiCが形成される上限の投入電力(電力密度)が増加することが分かる。この傾向は、基板温度が変わっても同じであり、少なくとも基板温度が200〜1000℃の範囲では、前述の境界線の位置は殆ど変わらない。但し、基板温度が高いほど、炭化が促進されるので、SiC層の形成速度が速くなる。
図12および図13の結果は水素濃度10%、CH4濃度1%でのものであるが、大気圧プラズマ中で水素の分解によって生成される原子状水素は、CH4の分解反応に影響を及ぼすと考えられる。そこで、大気圧プラズマ中の水素濃度とCH4濃度の比(H2/CH4比)がSiC形成プロセスに及ぼす影響を調べた。図14は、種々の水素濃度およびCH4濃度において、投入電力を変化させて炭化した基板をRHEEDおよびIR吸収分光法によって評価し、結果を分かりやすく整理したものである。その他の成膜条件は、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃とした。ここで、投入電力は装置のパラメータによって影響を受けるので、電力密度で評価する方がより不変的である。電力密度は、プラズマ生成領域の体積が約0.2cm3と見積もられるので、投入電力をこのプラズマ体積で除して換算する。図14には、投入電力と併せて電力密度の値を示している。図14に示した境界線は、H2/CH4比をxとし、電力密度をyとすると、y=900×ln(x)(但し、lnは自然対数)と表され、この境界線より下の領域(y≦900×ln(x))で結晶性の良好なSiCが形成され、境界線より上の領域ではC薄膜が形成されることを示している。この図から、H2/CH4比が0(水素濃度0%)の場合には炭化がほとんど生じずC薄膜の堆積が生じることが分かる。H2/CH4比を大きくしても、過剰な投入電力(電力密度)ではC薄膜が堆積するが、H2/CH4比を大きくしていくと、Si基板の炭化によりSiCが形成される上限の投入電力(電力密度)が増加することが分かる。この傾向は、基板温度が変わっても同じであり、少なくとも基板温度が200〜1000℃の範囲では、前述の境界線の位置は殆ど変わらない。但し、基板温度が高いほど、炭化が促進されるので、SiC層の形成速度が速くなる。
投入電力が過剰になるとC薄膜が堆積する原因を考察するために、発光分光法により大気圧プラズマ中の発光種を分析した。図15および図16は、CH4濃度0.25%に対してそれぞれ水素濃度0%および10%の場合における、投入電力を変化させた場合の大気圧プラズマの発光スペクトルである。この場合も投入電力をプラズマ体積(約0.2cm3)で除して電力密度に換算できる。図15から、水素を混合しない場合は、CH4の分解によって生成されたCHラジカルやC2分子からの発光が顕著に見られ、投入電力の増加とともにそれらの発光強度も増加していることが分かる。このように、大気圧プラズマ中にCHラジカルやC2分子が存在することは、CH4の分解が過剰に進み、C原子が生成されていることを示している。このことは、気相中でC原子同士が重合し、高次のC分子が生成されることを示唆するものであり、これがC薄膜の堆積につながると考えられる。また、図16の水素10%の場合においては、200Wおよび400WではCHラジカルやC2分子からの発光はほとんど見られないが、600Wではそれらの発光がはっきりと確認できる。これらの結果から、投入電力が過剰になると、大気圧プラズマ中でのCH4の分解が進みすぎる結果、基板上にはC薄膜が堆積してしまい、炭化によるSiCの形成反応が阻害されるといえる。しかし、水素の混合は、CH4の過分解を抑制する効果があり、大気圧プラズマによるSiC形成プロセスにおいて水素濃度は非常に重要なパラメータといえる。
(基板面方位と形成されるSiCの構造との相関)
これまでの成膜結果は全てSi(001)ウエハを基板として用いたが、基板面方位がSiCの構造に及ぼす影響を調べるために、Si(111)ウエハを用いて同様の成膜を行い、Si(001)ウエハの場合と比較した。成膜条件は、水素濃度10%、CH4濃度0.25%、投入電力200W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃で、炭化時間は10分とした。図17にRHEEDによる観察結果を示す。Si(001)ウエハとSi(111)ウエハとで、回折パターンが異なっている。解析の結果、Si(001)ウエハにおける回折パターンは3C-SiC(001)面、Si(111)ウエハにおけるパターンは3C-SiC(111)面によるものであった。この結果から、大気圧プラズマ炭化により形成されるSiCの面方位は、基板の面方位を反映することが分かった。
これまでの成膜結果は全てSi(001)ウエハを基板として用いたが、基板面方位がSiCの構造に及ぼす影響を調べるために、Si(111)ウエハを用いて同様の成膜を行い、Si(001)ウエハの場合と比較した。成膜条件は、水素濃度10%、CH4濃度0.25%、投入電力200W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃で、炭化時間は10分とした。図17にRHEEDによる観察結果を示す。Si(001)ウエハとSi(111)ウエハとで、回折パターンが異なっている。解析の結果、Si(001)ウエハにおける回折パターンは3C-SiC(001)面、Si(111)ウエハにおけるパターンは3C-SiC(111)面によるものであった。この結果から、大気圧プラズマ炭化により形成されるSiCの面方位は、基板の面方位を反映することが分かった。
(大気圧プラズマにより形成される結晶性の良好なSiCの厚さ)
図18および図19は、大気圧プラズマにより形成されるSiCの厚さの炭化時間依存を調べたものである。成膜条件は、水素濃度10%、CH4濃度0.25%、投入電力200W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃で、炭化時間は10分および60分とした。
図18および図19は、大気圧プラズマにより形成されるSiCの厚さの炭化時間依存を調べたものである。成膜条件は、水素濃度10%、CH4濃度0.25%、投入電力200W、電極回転速度1000rpm、成膜ギャップ500μm、基板温度800℃で、炭化時間は10分および60分とした。
図18のRHEED写真より、炭化時間にかかわらず結晶性の良好なSiCが得られていることが分かる。図19のIR吸収分光測定の結果から、炭化時間を長くすれば、得られるSiCの厚さも厚くなることが確認できた。分光エリプソメータで測定した結果、得られたSiCの厚さは、炭化時間10分の場合が約10nm、60分の場合は約70nmであった。これらの結果から、さらに時間をかければ、100nm以上の厚さの結晶性の良好なSiCが得られる可能性が十分にあるといえる。
1 回転電極
2 Si基板
3 基板加熱ステージ
2 Si基板
3 基板加熱ステージ
Claims (8)
- Si単結晶基板と電極とを成膜ギャップを設けて反応室内に配置し、該反応室内に炭化水素系原料ガスとH2及び不活性ガスからなるキャリアガスを供給して100Torr〜10atmの圧力とし、前記基板の温度を200〜1000℃に設定し、前記電極に10MHz〜10GHzの高周波電力を投入してSi基板の表層部に単結性SiC層を形成することを特徴とするSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法。
- 前記電極が円筒状の回転電極であり、該回転電極と基板間の成膜ギャップを0.1mm〜5mmに設定して、該回転電極の表面の周速度が10m/sec〜音速である請求項1記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法。
- 前記炭化水素系原料ガスが、CH4、C2H2である請求項1又は2記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法。
- 原料ガスにSi系ガスを加えてなる請求項1〜3何れかに記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法。
- 全ガス中の原料ガス濃度を0.01%〜10%、H2濃度を1〜99.9%としてなる請求項1〜4何れかに記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法。
- 前記炭化水素系原料ガスがCH4であり、H2/CH4比を5〜1000としてなる請求項1〜5何れかに記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法。
- H2/CH4比をxとし、電力密度(投入電力/プラズマ体積:W/cm3)をyとしたときに、以下の不等式
y≦900×ln(x)・・・(但し、lnは自然対数)
で表される範囲を条件とする請求項6記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法。 - 請求項1〜7記載のSi基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法によって、Si基板の表層部に結晶性SiC層を形成したことを特徴とする結晶性SiC基板。
Priority Applications (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005329318A JP2009032707A (ja) | 2005-11-14 | 2005-11-14 | Si基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法及び結晶性SiC基板 |
PCT/JP2006/322656 WO2007055377A1 (ja) | 2005-11-14 | 2006-11-14 | Si基板表面の炭化による結晶性SiCの形成方法及び結晶性SiC基板 |
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JP2009032707A true JP2009032707A (ja) | 2009-02-12 |
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Family Applications (1)
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JP (1) | JP2009032707A (ja) |
WO (1) | WO2007055377A1 (ja) |
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JPH08209349A (ja) * | 1995-02-06 | 1996-08-13 | Kokusai Electric Co Ltd | プラズマcvd装置 |
JPH08227875A (ja) * | 1995-02-17 | 1996-09-03 | Seiko Epson Corp | プラズマ状態検出方法及びその装置、プラズマ制御方法及びその装置並びにエッチング終点検出方法及びその装置 |
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2005
- 2005-11-14 JP JP2005329318A patent/JP2009032707A/ja active Pending
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2006
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Publication number | Publication date |
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WO2007055377A1 (ja) | 2007-05-18 |
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