JP2009026527A - 燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃料電池の電極面における反応ガスの配流性を向上する技術を提供する。
【解決手段】アノード側に配置されるアノード用ガス流路部材30は、第1ないし第4の誘導流路層31,33,35,37と、それらに挟持される拡散流路層32とを備える多層構造である。第1ないし第4の誘導流路層31,33,35,37のそれぞれには、貫通孔61,63,65,67が設けられている。貫通孔61,63,65,67は、アノード電極層12aの近くに配置される誘導流路層の貫通孔ほど、径が小さくなるとともに、数が多くなるように、各層ごとに等間隔で設けられている。拡散流路層32は、多孔質部材によって構成される。反応ガスは、各誘導流路層の貫通孔から隣接する拡散流路層へと流入し、拡散流路層において面方向に拡散して、再び隣接する誘導流路層の貫通孔へと流入する。この繰り返しによって電極面に略均一に拡散する。
【選択図】図3
【解決手段】アノード側に配置されるアノード用ガス流路部材30は、第1ないし第4の誘導流路層31,33,35,37と、それらに挟持される拡散流路層32とを備える多層構造である。第1ないし第4の誘導流路層31,33,35,37のそれぞれには、貫通孔61,63,65,67が設けられている。貫通孔61,63,65,67は、アノード電極層12aの近くに配置される誘導流路層の貫通孔ほど、径が小さくなるとともに、数が多くなるように、各層ごとに等間隔で設けられている。拡散流路層32は、多孔質部材によって構成される。反応ガスは、各誘導流路層の貫通孔から隣接する拡散流路層へと流入し、拡散流路層において面方向に拡散して、再び隣接する誘導流路層の貫通孔へと流入する。この繰り返しによって電極面に略均一に拡散する。
【選択図】図3
Description
この発明は、燃料電池に関する。
燃料電池は、通常、反応ガスとして水素及び酸素がマニホールド孔を介して供給されることによって発電を行う。即ち、反応ガスは、供給用のマニホールド孔から発電領域である電極面を経て、排出用のマニホールド孔へと流れる(特許文献1等)。
しかし、上述のような反応ガスの供給経路によれば、ガス流路の圧力損失の影響により、供給用マニホールド孔に近い電極面の領域ほど反応ガスの供給量が多くなる。一方、燃料電池の発電効率を向上させるためには、各電極における反応ガスの供給量分布をほぼ均一とすることが好ましい。しかし、これまで、そうした反応ガスの配流性の向上に対する工夫が十分になされてこなかったのが実情であった。
本発明は、燃料電池の電極面における反応ガスの配流性を向上する技術を提供することを目的とする。
本発明の一形態は、燃料電池であって、電解質膜がアノードとカソードとで挟持された発電体と、前記発電体の電極面に渡って反応ガスを供給するためのガス流路部材とを備え、前記ガス流路部材は、前記反応ガスを誘導するためのガス誘導孔が設けられた2つ以上の誘導流路層と、前記誘導孔から供給された前記反応ガスを前記電極面に沿った方向に拡散する1つ以上の拡散流路層とを備え、前記誘導流路層と前記拡散流路層とが交互に積層されていることを特徴とする。この構成によれば、反応ガスを、誘導流路層によってガス流路部材の厚み方向に誘導しつつ、隣接する拡散流路層によって面方向に拡散させることが出来る。従って、各層の厚みや、誘導孔の配置などによって、反応ガスの配流性を制御することが出来る。
前記複数の誘導流路層は、前記電極面に近い前記誘導流路層ほど、前記ガス誘導孔の数が増加するものとしても良い。この構成によれば、電極面に近づくほど反応ガスの拡散領域が広がるようにすることが出来る。従って、反応ガスの配流性を向上することができる。
前記ガス誘導孔は、前記誘導流路層の表面上に略同一間隔で設けられているものとしても良い。この構成によれば、反応ガスの供給量分布の不均一さをより低減することが出来る。
前記ガス流路部材は、アノード側に配置されており、前記ガス誘導孔は、アノード電極面に発電反応に供されることのない不純物が局所的に滞留することによって発電が停止する領域が生じることなく、前記不純物の分布が均一化するように設けられているものとしても良い。
前記燃料ガスを供給して行なう運転の態様として、該供給されたほぼすべての燃料ガスを前記アノード側で消費する態様を含むものとしても良い。
発電体のアノード側へ燃料ガスを供給して行なう燃料電池の運転を、アノードデッドエンド運転と呼ぶ。アノードデッドエンド運転では、燃料ガスのアノード側への供給を継続しつつ、アノード側からの燃料ガスの排出をしない状態で発電を継続する。結果的に、少なくとも定常発電時に供給された燃料ガスのほぼ全量をアノード側に留めて発電を行うことになる。発電体が、電解質膜の両面にアノードおよびカソードをそれぞれ接合してなる膜電極接合体を備え、アノード側に燃料ガス(多くは、水素または水素含有ガス)を供給して発電を行う場合には、アノードに供給された燃料ガスのほぼすべてを、外部に排出することなく、内部に滞留させた状態で発電に利用することになる。この場合、結果的には、燃料ガスが供給されるアノード側は、一般的に、燃料ガスを外部に排出あるいは放出しない閉塞構造となる。
本願明細書では、燃料ガスの消費層に供給されたほぼ総ての燃料ガスを燃料ガス消費層で消費する運転の態様を、デッドエンド運転と呼ぶが、燃料ガス消費層からの燃料ガスの循環を意図せず、燃料ガスの消費層から名目的に燃料ガスを取り出して利用する形態が加えられていたとしても、当該構成は、デッドエンド運転に含まれる。例えば、燃料ガス消費層あるいはその上流から僅かな燃料ガスを取り出す流路を設け、取り出した燃料ガスを燃焼して補機などのプレヒートに用いる構成などを考えることができる。こうした多目的な燃料ガスの消費は、燃料ガスの取り出しを、燃料ガスの消費層もしくはその上流からとすることに格別な意味がなければ、本願明細書における「ほぼすべての燃料ガスの燃料ガス消費層で消費する」ことから除外される構成とはならない。
本願発明の燃料電池は、さらに、アノード極(水素極)の不純物(たとえば窒素)の分圧が、カソード極(空気極)の不純物(たとえば窒素)の分圧とつりあった状態で継続的に発電する運転状態を実現するものとして把握することもできる。ここで、「つりあった状態」とは、たとえば平衡状態を意味し、必ずしも両者の分圧が等しい状態に限られない。
本願発明の燃料電池は、さらに、たとえば図23や図24に示されるような構成をも含む。図23の構成例は、第1の流路と第2の流路と有している。第1の流路は、第2の流路よりも上流側に配置されている。第1の流路および第2の流路は、第1の流路あるいは第2の流路よりも流れの抵抗が高い高抵抗連通部2100xを介して連通している。これらの流路は、発電領域面外(燃料電池セルの外部)から燃料ガス導入口(マニホールド)を経由して燃料ガスを導入する。換言すれば、第2の流路への燃料ガスの供給は、主として高抵抗連通部2100xを介して(たとえば高抵抗連通部2100xのみを介して)第1の流路から導入される。
なお、第1の流路や第2の流路は、後述の実施例のように多孔体を利用しても形成可能であるが、たとえばシール材S1、S2の挟持(図23)やハニカム構造材H2を使用した流路の形成(図24)として構成してもよい。
高抵抗連通部2100xは、たとえば図23や図24に示されるような複数の導入部2110x(貫通孔)が面内方向に分散した板状部材が利用可能である。高抵抗連通部2100xは、以下のうちの少なくとも一つの役割を有している。第1の役割は、「第2の流路のうち燃料ガス導入口に近接する領域への燃料ガス供給を制限する役割」である。第2の役割は、「アノード反応部に沿った第2の流路の面直方向に働くガス圧の面内の不均一を抑制する役割」である。第3の役割は、「第1の流路を面内方向に流れる燃料ガスの向きを面直方向(あるいは面に交差する方向)に変換する役割」である。
本願発明の燃料電池は、さらに、以下のような燃料電池システムとして把握することもできる。すなわち、この燃料電池システムは、
供給されたほぼすべての燃料ガスをアノード反応部で消費する態様を含む燃料電池システムであって
発電セル内にアノードガスを導入する導入口と、
前記導入口から供給されたアノードガスをセル面内方向に導く第1のガス流路と、
前記アノード反応部に沿って延在し、
前記第1のガス流路より流れの抵抗が高く、第1のガス流路から第2のガス流路へのアノードガスの流入を妨げつつも、セル面内方向に分布した複数の連通部を介して、第1のガス流路から第2のガス流路へアノードガスを導く高抵抗部と、
を備える。
供給されたほぼすべての燃料ガスをアノード反応部で消費する態様を含む燃料電池システムであって
発電セル内にアノードガスを導入する導入口と、
前記導入口から供給されたアノードガスをセル面内方向に導く第1のガス流路と、
前記アノード反応部に沿って延在し、
前記第1のガス流路より流れの抵抗が高く、第1のガス流路から第2のガス流路へのアノードガスの流入を妨げつつも、セル面内方向に分布した複数の連通部を介して、第1のガス流路から第2のガス流路へアノードガスを導く高抵抗部と、
を備える。
本願発明の燃料電池は、さらに、以下のような構成を含む燃料電池システムとして把握することもできる。すなわち、この燃料電池システムは、
前記高抵抗部は、前記アノード反応部のうち一の領域に対応した一の連通部と、他の領域に対応した他の連通部とを有し、
前記一の領域で消費されるアノードガスは、前記高抵抗部のうち一の連通部を通過したガスの比率が、他の連通部を通過したガスの比率より高い、
あるいは、
前記高抵抗部は、前記アノード反応部のうち一の領域に対応した一の連通部と、他の領域に対応した他の連通部とを有し、
前記一の連通部を通過したアノードガスは、前記アノード反応部のうちの一の領域で消費される比率が、他の領域で消費される比率より高い
といった構成も可能である。
前記高抵抗部は、前記アノード反応部のうち一の領域に対応した一の連通部と、他の領域に対応した他の連通部とを有し、
前記一の領域で消費されるアノードガスは、前記高抵抗部のうち一の連通部を通過したガスの比率が、他の連通部を通過したガスの比率より高い、
あるいは、
前記高抵抗部は、前記アノード反応部のうち一の領域に対応した一の連通部と、他の領域に対応した他の連通部とを有し、
前記一の連通部を通過したアノードガスは、前記アノード反応部のうちの一の領域で消費される比率が、他の領域で消費される比率より高い
といった構成も可能である。
一方、カソード流路は少なくとも上記高抵抗連通部が有さないことが好ましい。さらにカソード流路は、第2の流路も設けることなく、カソード導入口から供給されたカソードガスをセル面内方向に導く第1のガス流路のみとすることが好ましい。ただし、いわゆるガス拡散層を第2の流路と捉えれば、第1および第2の流路の組み合わせとしても良い。いずれにせよ、上記高抵抗連通部をカソード極からのみ省略することにより、カソードガスの送給機の仕事量の低減およびカソード極での排水性の向上が期待でき、特に、アノード極からの排水性能が低いシステム(燃料ガスの定常的排気の無い)燃料電池システムでは好適である。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池、その燃料電池を備えた燃料電池システム、その燃料電池システムを搭載した車両等の形態で実現することができる。
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての燃料電池を利用した燃料電池システムの構成を示すブロック図である。この燃料電池システム1000は、燃料電池100と、高圧水素タンク1100と、エアコンプレッサ1200と、制御部1300とを備えている。
図1は、本発明の一実施例としての燃料電池を利用した燃料電池システムの構成を示すブロック図である。この燃料電池システム1000は、燃料電池100と、高圧水素タンク1100と、エアコンプレッサ1200と、制御部1300とを備えている。
燃料電池100は、反応ガスとして水素と酸素含有ガス(空気)の供給を受けて発電を行う固体高分子型燃料電池である。燃料電池100の詳細は後述する。なお、燃料電池100としては、固体高分子型燃料電池でなくとも良く、任意の種々のタイプの燃料電池に本発明を適用することが可能である。
高圧水素タンク1100は、燃料電池100の燃料ガスとしての水素を貯蔵する。高圧水素タンク1100は、水素供給配管1110によって燃料電池100のアノード側のマニホールド孔(後述)と接続している。水素供給配管1110には、上流側に水素遮断弁1120と、その下流側に水素の圧力を調整するためのレギュレータ1130が設けられている。なお、この燃料電池システム1000では、燃料電池100に後述するアノードデッドエンド運転を行わせるため、アノード側に排ガスの経路が設けられていない。
エアコンプレッサ1200は、燃料電池100に酸化ガスとしての高圧空気を供給する。エアコンプレッサ1200は、空気供給配管1210によって燃料電池100のカソード側の供給用マニホールド孔(後述)と接続している。空気供給配管1210には加湿器が設けられているものとしても良い。なお、カソード側において生じた排ガスは、カソード側の排出用マニホールド孔(後述)に接続する排出配管1220から燃料電池100の外部へと排出される。
制御部1300は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPU(図示せず)と、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROM(図示せず)と、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAM(図示せず)と、各種信号を入出力する入出力ポート(図示せず)等を備える。制御部1300は、遮断弁1120や、エアコンプレッサ1200などと信号線を介して接続されている。
図2(A)は、本発明の一実施例としての燃料電池の構成を示す概略断面図である。燃料電池100は、複数の膜電極接合体10と複数のセパレータ20とが交互に積層された、いわゆるスタック構造を有している。膜電極接合体10は、電解質膜11と、その両面にそれぞれ配置されたアノード電極層12a及びカソード電極層12cとを有している。電解質膜11は、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示すフッ素系樹脂等の高分子材料によって構成することができる。
2つの電極層12a,12cの電解質膜11と接する面にはそれぞれ、発電反応(燃料電池反応)を促進するための触媒が担持された触媒層(図示せず)が設けられている。一方、2つの電極層12a,12cの電解質膜11とは接しない外面にはそれぞれ、供給された反応ガスを電解質膜11の全体に行き渡らせるためのガス拡散層(図示せず)が設けられている。
なお、2つの電極層12a,12cの触媒層は、電解質膜11と接しない側がほぼ平坦な面を構成するように設けられることが好ましい。これによって、反応ガス及び後述する非反応ガスが触媒層の外表面に滞留する可能性を低減でき、水素の配流性の低下を抑制することができる。
膜電極接合体10の外周縁には流体の漏洩を防止するためのシール部13が設けられている。具体的には、シール部13は、電解質膜11の外周端部11e及び2つの電極層12a,12cの外周端部12eを被覆するように成形されている。なお、シール部13が上記のように一体的に成形された膜電極接合体10を、以後、「シール一体型膜電極接合体10s」と呼ぶ。
シール部13には、水素供給用のマニホールド孔51と、空気の供給用及び排出用のマニホールド孔53,54が貫通孔として設けられている。空気供給用マニホールド孔53は、発電領域に対して水素供給用マニホールド孔51と同じ側に並列に設けられている。一方、空気排出用マニホールド孔54は、発電領域を挟んで空気供給用マニホールド孔53及び水素供給用マニホールド孔51と反対側に設けられている。
シール部13の両面のそれぞれ対向する位置には、突起部14が設けられている。突起部14は、マニホールド孔51,53,54のそれぞれと、発電領域である2つの電極層12a,12cとを連続的に囲むシールラインを形成する。燃料電池100として組み付けられたときに、この突起部14がセパレータ20によって押圧されて、反応ガスなどの流体がシール領域外部へと漏洩することを抑制する。
セパレータ20は、アノードプレート21と、中間プレート22と、カソードプレート23とを備える、いわゆる3層式セパレータである。アノードプレート21は、膜電極接合体10のアノード側に配置され、カソードプレート23は、膜電極接合体10のカソード側に配置される。中間プレート22は、アノードプレート21とカソードプレート23によって挟持されている。
セパレータ20には、シール一体型膜電極接合体10sと同様に、反応ガスのためのマニホールド孔51,53,54が貫通孔として設けられている。また、セパレータ20の各プレート21,22,23には、各マニホールド孔51,53,54と膜電極接合体10の発電領域とを連通するガス流路が設けられている(後述)。即ち、セパレータ20は、反応ガス供給路としての機能を有する。
なお、セパレータ20としては、導電性を有する金属板等で構成することが好ましい。これによってセパレータ20は、発電された電気を集電する機能を実現することができる。また、セパレータ20には、冷媒のための冷媒流路が設けられているものとしても良い。これによって、セパレータ20は、燃料電池反応によって生じた熱を冷却する冷却機能を実現することができる。
セパレータ20と2つの電極層12a,12cの間にはそれぞれ、アノード用ガス流路部材30とカソード用ガス流路部材40とが配置される。2つのガス流路部材30,40は、セパレータ20に設けられたガス流路から流入した反応ガスを、各電極層12a、12cの全体に拡散しつつ行き渡らせるためのガス拡散流路層として機能する部材である。アノード用ガス流路部材30については後述する。
カソード用ガス流路部材40は、多孔質部材や、エキスパンドメタルなどで構成することが可能である。なお、アノード用ガス流路部材30及びカソード用ガス流路部材40を導電性を有する部材で構成することによって、各電極層12a,12cとセパレータ20との間の導電パスを形成している。
図2(B)は、アノード側に配置されたアノード用ガス流路部材30を示す概略断面図である。アノード用ガス流路30は、複数の誘導流路層31,33,35,37のそれぞれの間に、導電性の多孔質部材によって構成される拡散流路層32が配置されて、積層体として構成される。
複数の誘導流路層31,33,35,37はそれぞれ、導電性を有するシート状の部材に1つ又は複数の貫通孔61,63,65,67が設けられた、いわゆるシャワー板として構成される。なお、図1(A),(B)には、理解を容易にするため便宜的に、各誘導流路層31,33,35,37に設けられた各貫通孔61,63,65,67を同一断面に図示してある。
図3(A)は、第1の誘導流路層31の構成を示す概略図である。第1の誘導流路層31は、その表面中央部に1つの貫通孔61が設けられている。図3(B)は、第2の誘導流路層33を示す概略図である。図3(B)には、アノード用ガス流路部材30として積層された際に第1の誘導流路層31の貫通孔61と重なる領域(「貫通孔61の配置領域」と呼ぶ)を破線で示してある。第2の誘導流路層33は、貫通孔61の配置領域を囲むように4つの貫通孔63が設けられている。なお、第1の誘導流路層31の貫通孔61と、第2の通道流路層33の4つの貫通孔63のそれぞれとの距離は、ほぼ等しい。
図3(C)は、第3の誘導流路層35の構成を示す概略図である。図3(C)には、図3(B)と同様に、第2の誘導流路層33に設けられた4つの貫通孔63の配置領域を破線で示してある。第3の誘導流路層35には、縦(図の上下方向)に3列、横(図の左右方向)に4列となるように計12個の貫通孔65が互いにほぼ等距離で配列されている。なお、貫通孔65は、4つの貫通孔63のいずれにも重ならないように設けられており、隣接する貫通孔65のそれぞれからほぼ等距離の位置に設けられている。
図3(D)は、第4の誘導流路層37の構成を示す概略図である。図3(D)には、図3(C)と同様に、第3の誘導流路層35に設けられた12個の貫通孔65の配置領域を破線で示してある。第4の誘導流路層37には、縦に12列、横に16列となるように計192個の貫通孔67が互いにほぼ等距離で配列されている。なお、貫通孔67は、第3の誘導流路層35の貫通孔65とは重ならないように設けられ、隣接する貫通孔67のそれぞれからほぼ等距離の位置に設けられている。
図4(A)は、燃料電池100における水素の流れを説明するための模式図である。図4(A)は、図2(A)と同様に、燃料電池100の概略断面図を示している。ただし、図4(A)は、説明の便宜のために、アノード側のセパレータ20とシール一体型膜電極接合体10sとを分離して図示するとともに、アノード用ガス流路部材30の各層31,32,33,35,37を分離して図示してある。また、図4(A)には、セパレータ20に設けられたガス流路である水素供給流路71及び水素供給孔72を追加して図示してある。なお、セパレータ20の水素供給流路71及び水素供給孔72は、説明の便宜上同一断面上に図示してある。図中の矢印は、水素の経路を示している。
水素は、水素供給用マニホールド孔51から燃料電池100の内部へと供給される。なお、水素は加湿することなく供給されることが好ましい。この理由は、発電中にカソード側で燃料電池反応によって生じた水分がアノード側に移動してくる場合もあるため、加湿された水素ガスを供給すると、アノード側の水分が増大して、水素の流れを阻害する可能性があるからである。
水素供給用マニホールド孔51の水素の一部は、セパレータ20の中間プレート22に設けられた水素供給流路71へと流入する。水素供給流路71の水素は、アノードプレート21のほぼ中央部に設けられた水素供給孔72を介して、第1の誘導流路層31に設けられた貫通孔61からアノード用ガス流路部材30の内部へと供給される。
第1の誘導流路層31に至った水素は、貫通孔61によって、第1の誘導流路層31に隣接する拡散流路層32へと誘導される。拡散流路層32内の水素は、拡散流路層32の厚み方向へと拡散しつつ、第2の誘導流路層33の表面に沿った面方向へと拡散する。その後、第2の誘導流路層33の貫通孔63を介して、さらに下層の拡散流路層32へと流入する。以下同様に、水素は、第3と第4の誘導流路層35,37のそれぞれの貫通孔65,67及びそれらに挟持された拡散流路層32を経て、アノード電極層12aへと供給される。
図3(A)〜(D)で説明したように、アノード用ガス流路部材30は、アノード電極層12aの近くに配置される誘導流路層ほど貫通孔の数が多くなるとともにその径が小さくなっている。従って、アノード用ガス流路部材30に流入した水素は、図4(A)の矢印に示すように、各層ごとに、拡散領域を広げつつ、アノード電極層12aに向かって移動する。このように、水素は、アノード用ガス流路部材30のアノードプレート21との接触面側のほぼ中央部から、アノード電極層12aに向かって均一に拡散しつつ供給される。従って、本実施例のアノード用ガス流路部材30によれば、電極層に供給されるアノードガスの配流性を向上することが出来る。
ところで、一般に、多孔質部材によって構成されたガス流路において、水素の配流性を向上させるためには、水素が電極の面方向に行き渡るように、面方向の拡散性を向上させることが好ましい。そのために、略均一な気孔率を有する単層構造の多孔質部材によってガス流路を構成する場合がある。この場合には、水素を面方向へ行き渡らせるために、当該多孔質部材の厚みを増すことによって水素の拡散領域を確保することができる。しかし、多孔質部材の厚みを増すと、水素の移動距離が増加して、電極に到達する時間が遅延する原因となる。また、燃料電池が大型化してしまい、好ましくない。
しかし、このアノード用ガス流路部材30によれば、各拡散流路層32における水素の面方向への移動距離は、隣接する上層の誘導流路層に設けられた貫通孔から、隣接する下層の誘導流路層に設けられた貫通孔までの距離を確保できればよい。従って、各誘導流路層に設けられた各貫通孔の間隔(ピッチ)によっては、拡散流路層32の厚みを薄くすることが可能である。
一方、ガス流路部材として、電極層との接触面に流路溝等を設けた部材を配置する場合には、当該流路部材から電極面が受ける面圧は、流路溝等のために不均一となる場合がある。すると、当該流路部材と電極面との接触抵抗が不均一となり、発電効率が低下する原因となる。
しかし、本実施例の構成によれば、アノード電極層12aと接する第4の誘導流路層37に設けられた貫通孔67を微小(例えば直径1mm以下)な貫通孔として電極面内に均一に分散するように設けることができる。これによって、アノード用ガス流路部材30とアノード電極層12aとの接触抵抗の不均一さを低減させることができる。
ところで、本実施例の燃料電池100にはアノード側にガスの排出経路が設けられていない。これは、この燃料電池100では、アノード電極側への燃料ガスの供給を継続しつつ、アノード電極側からの燃料ガスの排出をしない状態で発電を行う、いわゆるアノードデッドエンド運転の一態様を行うためである。これによって、水素が発電に供されることなく排出されることを抑制し、水素の利用効率を向上することが出来る。
図4(B)は、燃料電池100における酸素の流れを説明するための模式図である。図4(B)は、酸素用のマニホールド孔53,54における燃料電池100の断面を示しており、酸素の経路を矢印で図示している点以外は図2(A)と同様である。また、図4(B)のセパレータ20には、セパレータ20に設けられたガス流路73,74,75,76が図示されている。なお、図4(B)には、酸素の流路を、説明の便宜上同一断面に図示してある。
酸素は他の空気中の不純ガスとともに、酸素供給用マニホールド孔53から燃料電池100の内部へと供給される。酸素供給用マニホールド孔53の酸素及び不純ガスの一部は、セパレータ20の中間プレート22に設けられた酸素供給流路73へと流入し、カソードプレート23の酸素供給孔74を介してカソード用ガス流路部材40へと流入する。酸素及び不純ガスは、カソード用ガス流路部材40の内部を拡散しつつ膜電極接合体10のカソード電極層12cへと至り、酸素は燃料電池反応に供される。
反応に供されることのなかった酸素及び不純ガスは、排ガスとして燃料電池100の外部へと排出される。具体的には、排ガスは、燃料電池反応によって生成された水分とともに、カソード用ガス流路部材40からカソードプレート23の酸素排出孔75及び中間プレート22の酸素排出流路76を経て、酸素排出用マニホールド孔54から排出される。
ところで、一般に、カソード側に酸素とともに供給された不純ガス(主に窒素、以下「非反応ガス」とも呼ぶ)の一部は、アノード側へと移動してしまうことが知られている(図4(B)の破線矢印)。通常、アノード側に水素の排出経路が設けられている場合には、反応に供されることのなかった水素とともに、アノード側へと移動した不純ガスは、排ガスとして排出される。しかし、上述したように本実施例の燃料電池100には、アノード側に水素の排出経路が設けられていない。従って、この燃料電池100では、アノード側に移動した不純ガスの排出が困難となる。すると、アノード側の窒素分布によってアノード側の水素分布が影響を受けるため、燃料電池100の発電効率が低下する場合がある。
図5(A)は、燃料電池100の発電中におけるアノード電極層12aの発電領域における窒素分布を示す模式図であり、図中の微小な黒点は窒素分子を示している。なお、図5(A)には、便宜のため、発電領域を単位セル領域12acごとに区分けして示してある。また、アノード電極層12aに接するアノード用ガス流路部材30の第4の誘導流路層37に設けられた貫通孔67の配置領域を破線で示してある。
本実施例のアノード用ガス流路部材30によれば、第4の誘導流路層37(図3(D))の各貫通孔67の径及びピッチを調整することによって、水素がほぼ等しい流量及び流速でほぼ均一にアノード電極層12aへと供給させることが可能である。これによって、カソード側から窒素等の不純ガスが移動してきた場合であっても、図に示すように、供給水素によって窒素が均一に分布した状態を保持することが可能である。このように窒素が均一に分布した状態が保持されていれば、アノード側とカソード側とで窒素分圧の均衡がとれた状態で発電を継続することが可能である。
図5(B)は、比較例として他の構成を有する燃料電池の発電中におけるアノード電極層12aAの窒素分布を、図5(A)と同様に示す模式図である。この比較例の燃料電池は、本実施例の燃料電池100と同様に水素の排出経路が設けられていない。また、この比較例の燃料電池では、アノード側への水素の供給を、アノード用ガス流路部材30(図4(A))を用いることなく、カソード用ガス流路部材40(図4(B))と同様な多孔質性の流路部材によって行う。なお、水素は、図中の矢印に示すように、発電領域の一方の側(図の右側)から供給されている。
ここで、窒素分子は水素分子よりも拡散速度が遅い。そのため、この比較例のように一方の側から水素が供給されるような場合には、カソード側から移動してきた窒素は、図に示すように、水素の供給孔とは反対側へと凝縮された分布となってしまう。このように不純ガスが局所的に存在すると、その発電領域は発電不能に陥る可能性がある。なお、図5(B)には、窒素の局所的分布によって発電停止に陥った単位セル領域12acを×印で示してある。この発電不能領域において異常電位が生じた場合には、触媒層の劣化などを引きおこすおそれもある。従って、アノードデッドエンド運転を行う燃料電池には、本実施例のアノード用ガス流路部材30を用いた構成が好ましい。
なお、アノード電極層12aに接する最下層の誘導流路層の貫通孔から所定の流速で水素を噴出させることによって、アノード側に移動してきた非反応ガスがアノード用ガス流路部材30へと侵入することを抑制できる。これによって、非反応ガスによって、アノード用ガス流路部材30の内部における水素の拡散が阻害される可能性を低減できる。即ち、本実施例における誘導流路層は、マニホールド孔から供給された高濃度の水素ガスと、アノード電極層12aに存在する非反応ガス及び水素の混合ガスとを分離する分離板として機能していると解釈することも可能である。
このように、本実施例の構成によれば、アノード側における排気処理が省略されているような場合であっても、アノード側への水素の供給をほぼ均一化することによって、発電を良好に続行することが出来る。
B.アノード用ガス流路部材の他の構成例:
上記第1実施例で説明したアノード用ガス流路部材30は、以下に説明する他の構成によっても実現することが可能である。以下に、図6〜図10を用いてアノード用ガス流路部材の他の構成例を説明する。なお、図6〜図10にはそれぞれ、複数の誘導流路層の構成のみ図示されているが、複数の誘導流路層に拡散流路層が挟持される構成は、上記実施例と同様である。また、図6〜図10に示された誘導流路層には、図3と同様に、アノード電極層12aを下側と見たときに、上側に配置される誘導流路層に設けられた貫通孔の配置領域が破線で図示してある。
上記第1実施例で説明したアノード用ガス流路部材30は、以下に説明する他の構成によっても実現することが可能である。以下に、図6〜図10を用いてアノード用ガス流路部材の他の構成例を説明する。なお、図6〜図10にはそれぞれ、複数の誘導流路層の構成のみ図示されているが、複数の誘導流路層に拡散流路層が挟持される構成は、上記実施例と同様である。また、図6〜図10に示された誘導流路層には、図3と同様に、アノード電極層12aを下側と見たときに、上側に配置される誘導流路層に設けられた貫通孔の配置領域が破線で図示してある。
B1.第1構成例:
図6(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第1構成例として、第1ないし第4の誘導流路層の構成を示す説明図である。図6(A)〜(D)は、図6(D)に示す第4の誘導流路層37Aの貫通孔67の形成領域が異なる点以外は、上記実施例で説明した図3(A)〜(D)とほぼ同じである。
図6(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第1構成例として、第1ないし第4の誘導流路層の構成を示す説明図である。図6(A)〜(D)は、図6(D)に示す第4の誘導流路層37Aの貫通孔67の形成領域が異なる点以外は、上記実施例で説明した図3(A)〜(D)とほぼ同じである。
図6(D)に示す第4の誘導流路層37Aは、図3(D)に示す第4の誘導流路層37と異なり、貫通孔67が、面中央の領域70には設けられておらず、その周辺領域に周状に配列して設けられている。このような構成とすることによって、中央領域70の周辺領域における水素の供給量を増加させることが出来る。
B2.第2構成例:
図7(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第2構成例として、各誘導流路層の構成を示す説明図である。図7(A)〜(D)は、図7(D)に示す第4の誘導流路層37Bに径の異なる2種類の貫通孔67a、67bが設けられている点以外は、図3(A)〜(D)とほぼ同じである。
図7(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第2構成例として、各誘導流路層の構成を示す説明図である。図7(A)〜(D)は、図7(D)に示す第4の誘導流路層37Bに径の異なる2種類の貫通孔67a、67bが設けられている点以外は、図3(A)〜(D)とほぼ同じである。
第4の誘導流路層37Bには、径の大きい第1の貫通孔67aが、径の小さい第2の貫通孔67の形成された領域の外周を囲むように配列して設けられている。なお、各貫通孔67a,67bの形成位置は、上記実施例の第4の誘導流路層37(図3(D))と同様である。この構成によれば、第1の貫通孔67aの設けられた領域の水素供給量を増加させることが出来る。
B3.第3構成例:
図8(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第3構成例として、各誘導流路層の構成を示す説明図である。図8(A)〜(D)は、図8(A)に示す第1の誘導流路層31Cに設けられた貫通孔61の形成領域が異なる点と、図8(D)に示す第4の誘導流路層37Cに設けられた貫通孔67の形成領域が異なる点以外は、図3(A)〜(D)とほぼ同じである。
図8(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第3構成例として、各誘導流路層の構成を示す説明図である。図8(A)〜(D)は、図8(A)に示す第1の誘導流路層31Cに設けられた貫通孔61の形成領域が異なる点と、図8(D)に示す第4の誘導流路層37Cに設けられた貫通孔67の形成領域が異なる点以外は、図3(A)〜(D)とほぼ同じである。
この第3構成例では、第1の誘導流路層31Cの貫通孔61が、一方の側(紙面に対して右側)に片寄って設けられている(図7(A))。また、第4の誘導流路層37Cの貫通孔67は、その反対の側(紙面に対して左側)の方が数が多くなるように片寄って設けられている。このように、アノード用ガス流路部材30へ水素が供給される位置に応じて第4の誘導流路層37C(アノード電極層12aに最も近い誘導流路層)の貫通孔67の形成位置を決定しても良い。
B4.第4構成例:
図9(A),(B)は、アノード用ガス流路部材の第4構成例として、第1と第2の誘導流路層の構成を示す説明図である。図9(A)は、第1の誘導流路層31Dを示しており、図3(A)に示す第1の誘導流路層31とほぼ同じである。図9(B)は、第2の誘導流路層33Dを示しており、図3(C)に示す第3の誘導流路層35とほぼ同じである。即ち、この第4構成例のアノード用ガス流路部材は、図3で説明した第2と第4の誘導流路層33,37が省略されており、2つの誘導流路層31D,33Dに1つの拡散流路層32が挟持された構成である。このように、アノード用ガス流路部材は、誘導流路層及び拡散流路層の数を少なくして構成しても良い。
図9(A),(B)は、アノード用ガス流路部材の第4構成例として、第1と第2の誘導流路層の構成を示す説明図である。図9(A)は、第1の誘導流路層31Dを示しており、図3(A)に示す第1の誘導流路層31とほぼ同じである。図9(B)は、第2の誘導流路層33Dを示しており、図3(C)に示す第3の誘導流路層35とほぼ同じである。即ち、この第4構成例のアノード用ガス流路部材は、図3で説明した第2と第4の誘導流路層33,37が省略されており、2つの誘導流路層31D,33Dに1つの拡散流路層32が挟持された構成である。このように、アノード用ガス流路部材は、誘導流路層及び拡散流路層の数を少なくして構成しても良い。
B5.第5構成例:
図10(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第5構成例として、各誘導流路層の構成を示す説明図である。この第5構成例の4つの誘導流路層31E,33E,35E,37Eには、それぞれ同じ径の大きさで同じ数の貫通孔61,63,65,67が設けられている。ただし、各誘導流路層31E,33E,35E,37Eごとに貫通孔61,63,65,67の形成位置が異なっている。具体的には、各誘導流路層31E,33E,35E,37Eの貫通孔61,63,65,67は、縦3列、横3列で等間隔に配列されているが、アノード電極層12aの近くに配置される誘導流路層ほど、貫通孔61,63,65,67の間隔が広くなるように設けられている。このような構成であっても、供給水素の拡散性を向上させることが可能である。
図10(A)〜(D)は、アノード用ガス流路部材の第5構成例として、各誘導流路層の構成を示す説明図である。この第5構成例の4つの誘導流路層31E,33E,35E,37Eには、それぞれ同じ径の大きさで同じ数の貫通孔61,63,65,67が設けられている。ただし、各誘導流路層31E,33E,35E,37Eごとに貫通孔61,63,65,67の形成位置が異なっている。具体的には、各誘導流路層31E,33E,35E,37Eの貫通孔61,63,65,67は、縦3列、横3列で等間隔に配列されているが、アノード電極層12aの近くに配置される誘導流路層ほど、貫通孔61,63,65,67の間隔が広くなるように設けられている。このような構成であっても、供給水素の拡散性を向上させることが可能である。
B6.まとめ:
このように、誘導流路層に設けられる貫通孔の位置や大きさなどは、任意に構成することが出来る。但し、貫通孔は、アノード電極面に発電反応に供されることのない不純物が局所的に滞留することによって発電が停止する領域が生じることなく、不純物の分布が均一化するように設けられていることが好ましい。
このように、誘導流路層に設けられる貫通孔の位置や大きさなどは、任意に構成することが出来る。但し、貫通孔は、アノード電極面に発電反応に供されることのない不純物が局所的に滞留することによって発電が停止する領域が生じることなく、不純物の分布が均一化するように設けられていることが好ましい。
C.第1実施例の変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
C1.第1実施例の変形例1:
上記実施例において、燃料電池のアノード側には排ガスのための流路が設けられていなかったが、カソード側と同様に排ガスのためのガス流路が設けられるものとしても良い。また、上記実施例において、燃料電池は、アノードデッドエンド運転を行っていたが、アノードガスを燃料電池外部へと排出しつつ発電を行う通常の運転を行うものとしても良い。また、アノードガスを燃料電池システム内において循環させる運転を行うものとしても良い。
上記実施例において、燃料電池のアノード側には排ガスのための流路が設けられていなかったが、カソード側と同様に排ガスのためのガス流路が設けられるものとしても良い。また、上記実施例において、燃料電池は、アノードデッドエンド運転を行っていたが、アノードガスを燃料電池外部へと排出しつつ発電を行う通常の運転を行うものとしても良い。また、アノードガスを燃料電池システム内において循環させる運転を行うものとしても良い。
C2.第1実施例の変形例2:
上記第1実施例において、第1ないし第4の誘導流路層31,33,35,37が設けられていたが、さらに複数の誘導流路層が設けられているものとしても良い。誘導流路層は少なくとも、2層以上設けられていれば良い。
上記第1実施例において、第1ないし第4の誘導流路層31,33,35,37が設けられていたが、さらに複数の誘導流路層が設けられているものとしても良い。誘導流路層は少なくとも、2層以上設けられていれば良い。
C3.第1実施例の変形例3:
上記第1実施例において、拡散流路層32には、導電性の多孔質部材を配置していたが、他の部材を配置するものとしても良い。例えば、隣接する各誘導流路層の貫通孔同士を連結する流路溝が設けられた板状部材としても良いし、いわゆるエキスパンドメタルによって構成されていても良い。
上記第1実施例において、拡散流路層32には、導電性の多孔質部材を配置していたが、他の部材を配置するものとしても良い。例えば、隣接する各誘導流路層の貫通孔同士を連結する流路溝が設けられた板状部材としても良いし、いわゆるエキスパンドメタルによって構成されていても良い。
また、拡散流路層32は、単なる空間(中空)として設けられているものとしても良い。ただし、この場合には、各誘導流路層の間に距離を設けるためのスペーサ部材が配置されるとともに、各誘導流路層間に導電経路が設けられることが好ましい。
D.他の変形例:
上述した実施例では、アノードに供給された燃料ガスが、ほぼ全量、アノードで消費される構造を採用しているが、係る構造での運転が可能としているアノードへの燃料供給の流路構成としては、種々の構成が採用可能である。代表的な流路構成として、ここでは、上述したシャワー板を有する構成(以下、「シャワー流路タイプ」と呼ぶ)の他、櫛歯型の構成や循環型の構成などを挙げることができる。まず、シャワー流路タイプの変形例から説明する。
上述した実施例では、アノードに供給された燃料ガスが、ほぼ全量、アノードで消費される構造を採用しているが、係る構造での運転が可能としているアノードへの燃料供給の流路構成としては、種々の構成が採用可能である。代表的な流路構成として、ここでは、上述したシャワー板を有する構成(以下、「シャワー流路タイプ」と呼ぶ)の他、櫛歯型の構成や循環型の構成などを挙げることができる。まず、シャワー流路タイプの変形例から説明する。
D1.ガス流路構造の変形例(シャワー流路タイプ):
図11は、ガス流路の第1変形例の構成を示す説明図である。第1変形例は、上述の実施例のシャワー板に相当する分散板2100が膜電極接合体2000と一体として形成された構成を有している。膜電極接合体2000は、水素側電極2200と電解質膜2300とを有している。また、分散板2100には、所定間隔で多数の細孔(オリフィス)2110が設けられている。
図11は、ガス流路の第1変形例の構成を示す説明図である。第1変形例は、上述の実施例のシャワー板に相当する分散板2100が膜電極接合体2000と一体として形成された構成を有している。膜電極接合体2000は、水素側電極2200と電解質膜2300とを有している。また、分散板2100には、所定間隔で多数の細孔(オリフィス)2110が設けられている。
図12は、分散板2100の機能を説明する説明図である。燃料ガスは、分散板2100によって水素ガスを消費する水素側電極2200から隔離された上流側の流路で分配される。上流側の流路で分配された燃料ガスは、分散板2100に設けられた細孔2110を通って、燃料ガス消費層である水素側電極2200に局所的に供給される。つまり、本変形例では、燃料ガスは、細孔2110の存在位置に対応する部位の水素側電極2200に直接的に供給される。こうした局所的な燃料ガスの供給を実現する構成としては、例えば、燃料ガスが、水素側電極2200の他の領域を経由することなく、燃料ガスを消費する部位に直接供給する経路を有する構成、あるいは水素側電極2200の面外の離れた方向(好ましくは水素側電極2200から隔離された流路)から水素側電極2200に向かって、主として垂直な方向に燃料ガスを供給する構成なども採用可能である。一方、水素側電極2200は、窒素の滞留が発生しにくい形状とすればよい。例えば、平滑な面(フラットな面)から構成し、電解質膜2300側に凹部などを有しない形状とすればよい。
分散板2100の細孔2110の径およびピッチは、実験的に定めることができるが、例えば所定の運転状態(たとえば定格運転状態)において、細孔2110を通過する燃料ガスの流速が窒素ガスの拡散による逆流を十分に抑制できるようにしても良い。係る条件が成立するように、細孔2110における十分な流速あるいは十分な圧力損失が発生するように、細孔2110の間隔と流路断面積を設定すればよい。たとえば、固体高分子型燃料電池では、分散板2100の開口率を1%程度以下とすることで、十分な流速あるいは十分な圧力損失が発生することが確認された。開口率とは、分散板2100の開口面積を分散板2100の全面積で除した割合である。このような開口率は、循環型の燃料ガス流路と比較すると1桁から2桁程度少ないため、循環型の燃料ガス流路にコンプレッサを用いて燃料ガスの流量を確保する構成とは本質的に異なっている。本実施例および変形例では、燃料タンクからの高圧水素を直接(あるいは所定の高圧圧力まで調圧弁で調圧した状態で)、燃料電池に導くことにより、開口率の低い構造でも十分な燃料ガスを確保している。
次に、上述のシャワー流路タイプの他の構成例について説明する。図13は、シャワー流路の第2変形例の構成を示す説明図である。この変形例では、水素側電極2200と電解質膜2300とを備えた膜電極接合体2201上に配置される分散板2101を、緻密な多孔体を用いて実現している。分散板2101の多孔体の開口率は、十分な流速あるいは十分な圧力損失が発生するように選択されている。細孔を用いた場合には、細孔毎に、いわば離散化して、燃料ガスが局所的に供給されるのに対して、多孔体を用いた場合には、連続的に燃料ガスを供給することができるという利点を有している。また燃料ガスの水素側電極2200への供給が一層均一化されるという利点も得られる。緻密な多孔体は、カーボン粉を焼結することによって製造しても良いし、カーボン分や金属粉をバインド剤を用いて固めることにより製造することも可能である。多孔は、連続多孔体であれば良く、厚さ方向への連続性を確保して面方向の連続性を確保しない異方性を備えたものとしても良い。多孔体の開口率については、変形例1と同様に決定すればよい。
次にシャワー流路の第3変形例について説明する。図14は、プレスメタルを用いて構成された分散板2102を示す説明図、図15は、そのC−C断面を示す模式図である。分散板2202は、分散板2102の上流側の流路を形成するための突部2102tを備え、この突部2102tの側面には細孔2112が形成されている。この分散板2202は、電解質膜2300の両側に水素側電極2200と酸素側電極2400とを備えた膜電極接合体2202の水素側電極2200側に配置されており、図15に示したように、突部2102tを利用して、分散板2102の上流側の流路を一体に形成している。燃料ガスは、この突部2102tの側面に形成された細孔2112を介して、水素側電極2200に供給される。
係る構成によれば、分散板2102をプレス加工により容易に形成することができるうえ、分散板2102上流の流路を簡易に形成できるという利点も得られる。細孔2112を通過した燃料ガスは、突部2102t内部の空間を経て、水素側電極2200に到るので、分散性を十分に確保することができる。細孔2112は、プレス加工に拠って形成しても良いし、突部2102tの形成の前工程または後工程において、放電加工など、他の手法により形成しても良い。細孔2112による開口率については、変形例1と同様に決定すればよい。
次に、シャワー流路の第4変形例について説明する。図16は、分散板2014hmの内部に、流路を形成した構成例を示す説明図である。この変形例の分散板2014hmは、長方形の形状の分散板2014hmの短手方向に形成された複数の流路2142nと、この流路2142nから、分散板2014hmの厚さ方向に設けられ、図示しない水素電極側に開披した多数の細孔2143nとを備える。分散板2014hmは、電解質膜2300の両側に水素側電極(図示せず)と酸素側電極2400とを備えた膜電極接合体2203の水素側電極側に配置されており、分散板2014hmを介して、燃料ガスの供給を受ける。係る構成に拠れば、各細孔2143nまでの流路を、個別に用意できるという利点が得られる。なお、図16では、細孔2143nの配置は千鳥状としたが、格子状であってもよいし、ある程度ランダムに配置しても良い。
次に、第5変形例について説明する。図17は、パイプを使用して分散板2014hpを形成した例を示す説明図である。分散板2014hpは、図17に示したように、矩形のフレーム2140を備え、その短手方向に亘って、中空の多数のパイプ2130を備えている。このパイプ2130の表面には、複数の細孔2141nが形成されている。この分散板2014hpは、水素側電極2200とで電解質膜2300とを備えた膜電極接合体2204の水素側電極2200上に設置される。分散板2014hpのフレーム2140に用意されたガス流入口から燃料ガスを供給すると、燃料ガスは、分散板2014hpの各パイプ2130の内部を通り、細孔2141nから、水素側電極2200へと分配される。係る構成によれば、燃料ガスを均一に分散できるのに加えて、分散板2014hpを構成するのに細孔2141nを除いて穴加工を行なう必要がないという利点が得られる。細孔2141nは、水素側電極2200側に向けて配置して良いし、反対側に向けて配置してもよい。後者の場合には、燃料ガスの分散性は一層改善される。
以上説明したように、燃料ガスを水素側電極2200に分散させつつ導く構造であれば、種々の構成を採用することができる。分散板としては、多孔体やプレスメタルに限られず、燃料ガスを分配しつつ水素側電極2200に導くように構成されていればよい。
D2.ガス流路構造の変形例(櫛歯流路タイプ):
上述した実施例では、燃料ガスの流路は、燃料ガスを各拡散流路層31,33,35,37のシート面に沿った方向に拡散(分散)させつつ電極全体に行き渡らせる多孔質流路タイプのものを用いたが、燃料ガスの流路の形態は種々の構成を採ることができる。
上述した実施例では、燃料ガスの流路は、燃料ガスを各拡散流路層31,33,35,37のシート面に沿った方向に拡散(分散)させつつ電極全体に行き渡らせる多孔質流路タイプのものを用いたが、燃料ガスの流路の形態は種々の構成を採ることができる。
図18は、いわゆる分岐流路タイプの燃料ガス流路を用いた構成例を示す模式図である。図示する燃料ガス流路は、上述した実施例のアノード用ガス流路部材30の拡散流路層32に代えて用いられる流路形成部材5000に、櫛歯状に形成されている。具体的には、ガス流路は、燃料ガスを導入する主流路5010、この主流路から分岐し、主流路5010とは交差する方向に形成された複数本の副流路5020、この副流路から更に櫛歯状に分岐する櫛歯流路5030から形成されている。主流路5010および副流路5020は、先端の櫛歯流路5030と比べて流路断面積を十分に確保しているので、流路形成部材5000の面内の圧力分布は、拡散流路層32と同程度もしくはそれ以下となっている。
この流路形成部材5000は、カーボンや金属などを用いて形成することができる。カーボンを用いる場合は、型を用いてカーボン粉を高温または低温で焼結することにより、図18に示した流路を備えた流路形成部材5000を得ることができる。金属を用いる場合には、金属プレートから溝を削り出すことにより、同様の流路を備えた流路形成部材5000を形成しても良いし、あるいはプレス加工により、図示する流路を備えた流路形成部材5000を得ても良い。なお、流路形成部材5000は、単品として設ける必要はなく、他の部材、例えばセパレータと一体に形成することも可能である。
なお、この流路形成部材5000は、全ての拡散流路層32に代えて用いてもよいが、一部の拡散流路層32に代替してもよい。この場合には、櫛歯流路5030を十分に細い流路とし、副流路5020から、いわば毛細血管のように細かくかつ多数に分岐させておけばよい。また、図18では、主流路5010を流路形成部材5000の一縁部に沿って設けたが、流路形成部材5000面内の燃料ガスの圧力差を小さくするために、主流路5010を複数の縁部に設けて、副流路5020の長さを短くしたり、あるいは主流路5010を流路形成部材の中心に設けて、副流路5020を主流路5010の左右に配置しても良い。同様に、櫛歯流路5030は、副流路5020の両側に設けても差し支えない。
次に、図19に基づいて、サーペンタイン型の流路構成について説明する。図19は、流路が葛籠折れの形状をとっているサーペンタイン型流路を備えた流路形成部材の構成例を模式的に示す模式図である。図19(A)は、燃料ガスの流路が単一のタイプの流路形成部材5100を例示し、図19(B)は、燃料ガス流路が複数本統合されたタイプの流路形成部材5200を例示している。
図示するように、図19(A)に例示した流路形成部材5100は、燃料ガスの流路を囲う外壁のうち対向する外壁5110,5115から、内側に向けて交互に延長された複数の流路壁5120を備える。流路壁5120で区切られた部分が連続する流路となっている。この一端に流入口5150が形成されており、燃料ガスはここから流路に供給される。この流路形成部材5100は、図18の流路形成部材5000と同様、上述した実施例の多孔体840に代えて用いられる。
図19(B)は、このサーペンタイン型流路が、複数本の流路の束として構成された例を示している。この場合、外壁5210および5215から内側に向けて交互に延長された複数の流路壁5220の間に、外壁5210,5215とは連設されていない仕切壁5230,5240が設けられている。また、流路の入り口には、流入口5250が形成されている。流入口5250から流入した燃料ガスは、仕切壁5230,5240を備えた幅広のサーペンタイン型流路を流れて、流路形成部材5200の面方向にくまなく行き渡る。この流路形成部材5200は、図18の流路形成部材5000と同様、上述した実施例の多孔体840に代えて用いられる。
図19に示した流路形成部材5100,5200は、図18に示した櫛歯型の流路を備えた流路形成部材5000と同様に、カーボンや金属から形成される。その形成方法も同様である。これらの流路形成部材5100,5200は、単品として設ける必要はなく、他の部材、例えばセパレータと一体に形成することも可能である。
D3.燃料ガスの供給形態の第1の変形例:
図20は、燃料ガスの供給形態の変形例の一つとして、循環路タイプの燃料電池6000の内部構成を模式的に示す説明図である。図示するように、本変形例の燃料電池6000では、アノード側セパレータ6200に、燃料ガス流路となる凹部6220と燃料ガス入口ポート6210と規制板6230とが設けられている。燃料ガス流路となる凹部6220は、アノード側セパレータ6200の膜電極接合体のアノード6100と対向する領域に亘って形成されている。アノード側セパレータ6200における燃料ガス入口ポート6210には、ノズル6300が、凹部6220に向けて燃料ガスを噴出可能に取り付けられている。このノズル6300から燃料ガスを噴出することによって、燃料ガス入口ポート6210から、凹部6220内に燃料ガスが供給される。規制板6230は、燃料ガスの流れ方向を規制する部材であり、ノズル6300の近傍から、凹部6220の中心付近に向けて、凹部6220の底面から立設されている。規制板6230のノズル6300に近い側の端部は、ノズル6300の側面形状に合わせて湾曲され、ノズル6300との間で通路Aを形成している。
図20は、燃料ガスの供給形態の変形例の一つとして、循環路タイプの燃料電池6000の内部構成を模式的に示す説明図である。図示するように、本変形例の燃料電池6000では、アノード側セパレータ6200に、燃料ガス流路となる凹部6220と燃料ガス入口ポート6210と規制板6230とが設けられている。燃料ガス流路となる凹部6220は、アノード側セパレータ6200の膜電極接合体のアノード6100と対向する領域に亘って形成されている。アノード側セパレータ6200における燃料ガス入口ポート6210には、ノズル6300が、凹部6220に向けて燃料ガスを噴出可能に取り付けられている。このノズル6300から燃料ガスを噴出することによって、燃料ガス入口ポート6210から、凹部6220内に燃料ガスが供給される。規制板6230は、燃料ガスの流れ方向を規制する部材であり、ノズル6300の近傍から、凹部6220の中心付近に向けて、凹部6220の底面から立設されている。規制板6230のノズル6300に近い側の端部は、ノズル6300の側面形状に合わせて湾曲され、ノズル6300との間で通路Aを形成している。
このような燃料電池6000では、燃料ガス入口ポート6210から供給された燃料ガスが、ノズル6300の噴射孔6320から燃料ガス流路(凹部6220)内に噴射されると、この燃料ガスは、アノード側セパレータ6200の凹部6220の内側壁、および、規制板6230によって流れ方向が規制され、図中に白抜き矢印で示したように、アノード6100の表面に沿って、図示した上流側から下流側に流れる。このとき、ノズル6300から噴出する高速の燃料ガスによって生じるエゼクタ効果により、下流側の燃料ガスおよび不純物ガスを含む流体は、規制板6230の一方の端部とノズル6300との間の隙間(通路A)から吸引され、上流側に循環する。こうすることによって、燃料ガス流路、および、アノード6120表面における上記流体の滞留を抑制することができる。
なお、上記変形例の燃料電池6000では、エゼクタ効果を利用して、上記流体をアノード6100の表面に沿った方向に循環させるものとしたが、燃料電池の内部において、アノードの表面に沿った方向に上記流体を循環させることが可能な構造であれば、他の構成を用いても良い。例えば、燃料電池6000において、ノズル6300や規制板6230の代わりに、アノード側セパレータ6200や、アノード6100の面内等、燃料ガス流路となり得る部位に、整流板を設けるようにし、この整流板、および燃料ガスの流れによって、上記流体をアノード6100の表面に沿った方向に循環させるようにしてもよい。あるいは凹部6220などのガス流路に、微小なアクチュエータ(例えばマイクロマシン)を循環路に沿って組み込んで、燃料ガスの循環を起こさせる構造としても良い。このほか、凹部6220内に温度差を設けて対流を利用して循環を起こさせる構成も考えられる。
D4.燃料ガスの供給形態の第2の変形例及び第3の変形例:
図21及び図22を用いて、上述した実施例の燃料ガス供給形態の変形例について説明する。図21は、第2の変形例としての燃料ガスの流れを説明する説明図である。図22は、第3の変形例についての燃料ガスの流れを説明する説明図である。まず、両変形例に共通する構成から説明する。これら2つのの燃料電池では、発電体は、フレーム7550と膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)7510と多孔体7540を備える。フレーム7550の中央部には、MEGA7510を嵌め込むための開口部7555が設けられており、この開口部7555を覆うように、MEGA7510が配置される。多孔体7540はMEGA7510の上に配置される。また、フレーム7550の外周部には、燃料ガスや空気、あるいは冷却水が通る貫通孔が複数設けられているのは、上述した実施例と同一である。
図21及び図22を用いて、上述した実施例の燃料ガス供給形態の変形例について説明する。図21は、第2の変形例としての燃料ガスの流れを説明する説明図である。図22は、第3の変形例についての燃料ガスの流れを説明する説明図である。まず、両変形例に共通する構成から説明する。これら2つのの燃料電池では、発電体は、フレーム7550と膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)7510と多孔体7540を備える。フレーム7550の中央部には、MEGA7510を嵌め込むための開口部7555が設けられており、この開口部7555を覆うように、MEGA7510が配置される。多孔体7540はMEGA7510の上に配置される。また、フレーム7550の外周部には、燃料ガスや空気、あるいは冷却水が通る貫通孔が複数設けられているのは、上述した実施例と同一である。
第2の変形例と第3の変形例とは、上記の全体構造はほぼ同一であり、燃料ガスが、図示しないアノード対向プレートを介して供給される点も同一である。第2と第3の変形例では、多孔体7540への燃料ガスの供給方向が異なっている。第2の変形例では、多孔体7540に燃料を供給するための複数のガス供給口7417aは、フレーム7550の開口部7555の外縁部のうち、一つの長辺近傍に一列に設けられ、もう一列の複数のガス供給口7417bは、対向するもう一つの長辺近傍に配置されている。他方、第3の変形例では、図22に示したように、複数の燃料ガス供給孔7517a及び7517bは、それぞれ、開口部7555の対向する2つの短辺に隣接して配置されている。
第2の変形例では、燃料ガスは、燃料ガス供給孔7417aや燃料ガス供給孔7417bを通り、多孔体7540の中で長辺端部側から中央方向、すなわち矢印7600aの方向(図21において上から下へ)へ、あるいは矢印7600bの方向(図22において下から上へ)に供給される。このとき、燃料ガス供給孔7417aを通って多孔体7540に供給された燃料ガスと燃料ガス供給孔7417bを通って多孔体7540に供給された燃料ガスは、モジュールの中央付近でぶつかり混合する。一方、第3の変形例では、燃料ガスは、燃料ガス供給孔7517aや燃料ガス供給孔7517bを通り、多孔体7540の中で短辺端部側から中央方向、すなわち矢印7700aの方向(図22において左から右へ)及び矢印7700bの方向(図22において右から左へ)に流れる。第3の変形例でも、燃料ガス供給孔7517aを通って多孔体7540に供給された燃料ガスと燃料ガス供給孔7517bを通って多孔体7540に供給された燃料ガスは、モジュールの中央付近でぶつかり混合する。
以上説明した第2と第3の変形例によれば、燃料ガスは、多孔体7540に対して、対向する2つの辺の端部側に設けられた複数の燃料ガス供給孔7417aおよび7417b(あるいは燃料ガス供給孔7517aおよび7517b)から、対向する2方向に供給される。対向流として供給された燃料ガスは、多孔体7540の中央部でぶつかって互いに混合するので、窒素ガスなどの不純物が局在化しにくいという利点が得られる。したがって、燃料電池の発電効率を向上させることができる。もとより、対向する2辺から燃料ガスを供給することにより、多孔体7540内での燃料ガスの分布の偏りが抑制されるという利点も得られる。なお、第2と第3の変形例ではガス流路として多孔体を用いているが、ガス流路は多孔体に限られず、種々の供給方式が利用可能である。
D5−1.燃料電池に始動性制御時における変形例1:
つぎに、上記実施例の燃料電池の始動時制御について説明する。変形例の燃料電池では、始動時において、アノード側の燃料ガス流路に燃料ガスの供給が開始され、所定時間TA経過後、初めて負荷を接続し、燃料電池から電流を取り出している。このようにすれば、燃料電池の発電終了後にカソード側からアノード側にリークし滞留しているリークガス(窒素ガスまたは不活性ガス)は、所定時間TAの間に、燃料ガスの圧力で、カソード側に押し返され、リークガス滞留量が減少してから負荷が接続されることになる。したがって、アノードにおいて、燃料電池の始動時に燃料ガスが欠乏した状態で運転されるという事態の発生を抑制することができる。なお、この場合の「始動」とは、燃料電池に反応ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)を供給すると共に、燃料電池に負荷を接続することをいう。燃料電池の停止時にリークガスがアノード側に滞留するのは、燃料ガスの供給が停止された結果、アノード側の燃料ガス圧力が低下するためである。特にアノードデッドエンドの構成を採用した場合、燃料ガスの供給によるリークガスの排出路への排出が期待できない。したがって、燃料ガスの供給を開始してから、負荷を接続するまでに十分な時間TAを確保することは有効である。
つぎに、上記実施例の燃料電池の始動時制御について説明する。変形例の燃料電池では、始動時において、アノード側の燃料ガス流路に燃料ガスの供給が開始され、所定時間TA経過後、初めて負荷を接続し、燃料電池から電流を取り出している。このようにすれば、燃料電池の発電終了後にカソード側からアノード側にリークし滞留しているリークガス(窒素ガスまたは不活性ガス)は、所定時間TAの間に、燃料ガスの圧力で、カソード側に押し返され、リークガス滞留量が減少してから負荷が接続されることになる。したがって、アノードにおいて、燃料電池の始動時に燃料ガスが欠乏した状態で運転されるという事態の発生を抑制することができる。なお、この場合の「始動」とは、燃料電池に反応ガス(燃料ガスおよび酸化ガス)を供給すると共に、燃料電池に負荷を接続することをいう。燃料電池の停止時にリークガスがアノード側に滞留するのは、燃料ガスの供給が停止された結果、アノード側の燃料ガス圧力が低下するためである。特にアノードデッドエンドの構成を採用した場合、燃料ガスの供給によるリークガスの排出路への排出が期待できない。したがって、燃料ガスの供給を開始してから、負荷を接続するまでに十分な時間TAを確保することは有効である。
D5−2.燃料電池に始動性制御時における変形例2:
燃料電池の始動時において、燃料ガスの供給量および電気的な負荷を接続するまでの所定時間TAのうち少なくとも一方を、燃料電池の運転開始時におけるリークガス滞留量に基づいて決定する構成とすることも可能である。このリークガス滞留量は、例えば、燃料電池において前回の起動終了時から今回の始動時までの燃料電池停止期間や燃料電池の温度から推定するようにしてもよい。燃料電池の温度は、例えば、燃料電池を冷却する冷媒の温度等に基づいて検出することができる。このようにすれば、燃料電池の始動時間の短縮化を実現しつつ、アノード側の燃料ガス流路におけるリークガス滞留量を減少させることができる。
燃料電池の始動時において、燃料ガスの供給量および電気的な負荷を接続するまでの所定時間TAのうち少なくとも一方を、燃料電池の運転開始時におけるリークガス滞留量に基づいて決定する構成とすることも可能である。このリークガス滞留量は、例えば、燃料電池において前回の起動終了時から今回の始動時までの燃料電池停止期間や燃料電池の温度から推定するようにしてもよい。燃料電池の温度は、例えば、燃料電池を冷却する冷媒の温度等に基づいて検出することができる。このようにすれば、燃料電池の始動時間の短縮化を実現しつつ、アノード側の燃料ガス流路におけるリークガス滞留量を減少させることができる。
また、燃料電池の始動時に負荷を接続するタイミングを、アノード側の水素濃度に基づいて決定しても良い。上記実施例の燃料電池において、水素濃度センサをアノード側の燃料ガス流路内の所定部位に取り付け、始動時において、アノード側の燃料ガス流路に燃料ガスの供給が開始された後、水素濃度センサから検出される水素濃度値を監視する。水素濃度値が、所定の閾値より高くなった場合に、電気的な負荷を接続するものとすれば、アノードにおいて、水素欠乏運転となることを抑制することができる。このほか、アノード側の圧力や温度から、電気的な負荷の接続のタイミングを求める構成なども可能である。
なお、上記実施例、変形例では、発電体として膜電極接合体を用いた固体高分子型の燃料電池を例に取り説明したが、本発明が利用可能な燃料電池の種類はこれに限られない。本発明は、例えば、リン酸型、固体酸化物型、溶融炭酸塩型など固体高分子型以外の燃料電池にも利用可能であることはいうまでもない。
10…膜電極接合体
10s…シール一体型膜電極接合体
11…電解質膜
11e…外周端部
12a,12aA…アノード電極層
12ac…単位セル領域
12c…カソード電極層
12e…外周端部
13…シール部
14…突起部
20…セパレータ
21…アノードプレート
22…中間プレート
23…カソードプレート
30…アノード用ガス流路
30…アノード用ガス流路部材
31,31C,31D,31E…第1の誘導流路層
33,33D、33E…第2の誘導流路層
35,35E…第3の誘導流路層
37,37A,37B,37C,37E…第4の誘導流路層
32…拡散流路層
40…カソード用ガス流路部材
51,53,54…マニホールド孔
61,63,65,67,67a,67b…貫通孔
70…中央領域
71…水素供給流路
72…水素供給孔
73…酸素供給流路
74…酸素供給孔
75…酸素排出孔
76…酸素排出流路
100…燃料電池
1000…燃料電池システム
1100…高圧水素タンク
1110…水素供給配管
1120…遮断弁
1120…水素遮断弁
1130…レギュレータ
1200…エアコンプレッサ
1210…空気供給配管
1220…排出配管
1300…制御部
2000…膜電極接合体
2014hm…分散板
2014hp…分散板
2100…分散板
2101…分散板
2102…分散板
2102t…突部
2110…細孔
2112…細孔
2130…パイプ
2140…フレーム
2141n…細孔
2142n…流路
2143n…細孔
2200…水素側電極
2201…膜電極接合体
2202…分散板
2202…膜電極接合体
2203…膜電極接合体
2204…膜電極接合体
2300…電解質膜
2400…酸素側電極
2100x…高抵抗連通部
2110x…導入部
H2…ハニカム構造材
S1…シール材
5000…流路形成部材
5010…主流路
5020…副流路
5030…櫛歯流路
5100,5200…流路形成部材
5100…流路形成部材
5110,5115…外壁
5120…流路壁
5150…流入口
5200…流路形成部材
5210,5215…外壁
5210…外壁
5220…流路壁
5230,5240…仕切壁
5250…流入口
6000…燃料電池
6100…アノード
6120…アノード
6200…アノード側セパレータ
6210…燃料ガス入口ポート
6220…凹部
6230…規制板
6300…ノズル
6320…噴射孔
7417a…ガス供給口
7417a…燃料ガス供給孔
7417b…ガス供給口
7417b…燃料ガス供給孔
7510…MEGA
7517a…燃料ガス供給孔
7517b…燃料ガス供給孔
7540…多孔体
7550…フレーム
7555…開口部
10s…シール一体型膜電極接合体
11…電解質膜
11e…外周端部
12a,12aA…アノード電極層
12ac…単位セル領域
12c…カソード電極層
12e…外周端部
13…シール部
14…突起部
20…セパレータ
21…アノードプレート
22…中間プレート
23…カソードプレート
30…アノード用ガス流路
30…アノード用ガス流路部材
31,31C,31D,31E…第1の誘導流路層
33,33D、33E…第2の誘導流路層
35,35E…第3の誘導流路層
37,37A,37B,37C,37E…第4の誘導流路層
32…拡散流路層
40…カソード用ガス流路部材
51,53,54…マニホールド孔
61,63,65,67,67a,67b…貫通孔
70…中央領域
71…水素供給流路
72…水素供給孔
73…酸素供給流路
74…酸素供給孔
75…酸素排出孔
76…酸素排出流路
100…燃料電池
1000…燃料電池システム
1100…高圧水素タンク
1110…水素供給配管
1120…遮断弁
1120…水素遮断弁
1130…レギュレータ
1200…エアコンプレッサ
1210…空気供給配管
1220…排出配管
1300…制御部
2000…膜電極接合体
2014hm…分散板
2014hp…分散板
2100…分散板
2101…分散板
2102…分散板
2102t…突部
2110…細孔
2112…細孔
2130…パイプ
2140…フレーム
2141n…細孔
2142n…流路
2143n…細孔
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2201…膜電極接合体
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2202…膜電極接合体
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2300…電解質膜
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2110x…導入部
H2…ハニカム構造材
S1…シール材
5000…流路形成部材
5010…主流路
5020…副流路
5030…櫛歯流路
5100,5200…流路形成部材
5100…流路形成部材
5110,5115…外壁
5120…流路壁
5150…流入口
5200…流路形成部材
5210,5215…外壁
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6000…燃料電池
6100…アノード
6120…アノード
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6210…燃料ガス入口ポート
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6230…規制板
6300…ノズル
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7417a…ガス供給口
7417a…燃料ガス供給孔
7417b…ガス供給口
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7510…MEGA
7517a…燃料ガス供給孔
7517b…燃料ガス供給孔
7540…多孔体
7550…フレーム
7555…開口部
Claims (5)
- 燃料電池であって、
電解質膜がアノードとカソードとで挟持された発電体と、
前記発電体の電極面に渡って反応ガスを供給するためのガス流路部材と、
を備え、
前記ガス流路部材は、
前記反応ガスを誘導するためのガス誘導孔が設けられた2つ以上の誘導流路層と、
前記誘導孔から供給された前記反応ガスを前記電極面に沿った方向に拡散する1つ以上の拡散流路層と、
を備え、
前記誘導流路層と前記拡散流路層とが交互に積層されている、燃料電池。 - 請求項1記載の燃料電池であって、
前記複数の誘導流路層は、前記電極面に近い前記誘導流路層ほど、前記ガス誘導孔の数が増加する、燃料電池。 - 請求項1または請求項2に記載の燃料電池であって、
前記ガス誘導孔は、前記誘導流路層の表面上に略同一間隔で設けられている、燃料電池。 - 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記ガス流路部材は、アノード側に配置されており、
前記ガス誘導孔は、アノード電極面に発電反応に供されることのない不純物が局所的に滞留することによって発電が停止する領域が生じることなく、前記不純物の分布が均一化するように設けられている、燃料電池。 - 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の燃料電池であって、
前記燃料ガスを供給して行なう運転の態様として、該供給されたほぼすべての燃料ガスを前記アノード側で消費する態様を含む、燃料電池。
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JP2007186706A Pending JP2009026527A (ja) | 2007-07-18 | 2007-07-18 | 燃料電池 |
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JP (1) | JP2009026527A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013182791A (ja) * | 2012-03-01 | 2013-09-12 | Ngk Spark Plug Co Ltd | 燃料電池セル及び燃料電池スタック |
WO2016038738A1 (ja) * | 2014-09-12 | 2016-03-17 | 日産自動車株式会社 | 燃料電池 |
-
2007
- 2007-07-18 JP JP2007186706A patent/JP2009026527A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2013182791A (ja) * | 2012-03-01 | 2013-09-12 | Ngk Spark Plug Co Ltd | 燃料電池セル及び燃料電池スタック |
WO2016038738A1 (ja) * | 2014-09-12 | 2016-03-17 | 日産自動車株式会社 | 燃料電池 |
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