JP2009024152A - 温暖化係数が低いトリフルオロヨードメタンとジフルオロメタンの不燃性組成物 - Google Patents

温暖化係数が低いトリフルオロヨードメタンとジフルオロメタンの不燃性組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】オゾン破壊係数及び地球温暖化に及ぼす影響が極めて低く、しかも冷媒能力がR410Aとほぼ同等若しくはそれ以上の値を示し且つ不燃である混合物を提供する。
【解決手段】ジフルオロメタン10mass%〜60mass%とトリフルオロヨードメタン90mass%〜40mass%からなる不燃性冷媒組成物。
【選択図】図1

Description

本発明は、ジフルオロメタンとトリフルオロヨードメタンとの不燃性冷媒組成物、更に安定化剤を加えた不燃性冷媒組成物に関する。本発明の不燃性冷媒組成物は、家庭用又は業務用エアコンに広く使用されているR410A代替冷媒として好適である。
従来、冷凍機における冷媒、ヒートポンプにおける熱媒体等としてはクロロフルオロ炭化水素、フルオロ炭化水素が使用され、これらの単体若しくは共沸組成物及び混合物等はフロンと称されていた。
しかし、近年、大気中に放出されたそれらフロン類がオゾン層を破壊し、人類を含む地球上の生態系に重大な悪影響を及ぼすことが指摘されており、既にオゾン層破壊の危険性が高いフロンについては国際的な取り決めにより、使用及び生産が規制されるに至っている。ジクロロジフルオロメタン(R12)は主に家庭用冷蔵庫、カーエアコン、ターボ冷凍機、コンテナ用冷凍装置の冷媒として使用されてきたが、前述の規制により1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134a)に代替された。
しかしながら、EUではRegulation on certain fluorinated greenhouse gases 及びDirective relating to emissions of f-gas form air conditioning systems fitted to carsの2つの法規制(Fガス規制)が2006年6月に公布され、モバイル型空調機器(カーエアコン)については2011年から新たに出荷される新型車及び2017年からは全ての車両について地球温暖化係数(GWP)150以下の冷媒の使用が義務付けられ、現在搭載されているHFC134aについてもGWP1300を示しているため、その代替候補としてCO等が提案されている。
家庭用エアコンについてもHCFC−22から混合HFCガスであるR410A(HFC32/HFC125=50/50(mass%))に代替されているが、不燃でオゾン破壊係数を持たない利点はあるがGWP値が1980と高いものであり、そのため、低GWPで且つエネルギー効率、冷媒特性(冷凍能力、沸点、圧力、不燃等)がR410Aとほぼ同等で機器の改良の必要性が少ない又は軽微である不燃冷媒の開発が望まれている。
CFIとHFC32の混合冷媒組成物が提案されている(特許文献1〜3)。特許文献1ではそれらの混合物はHFC32が95mass%以下で不燃であるとされている。
特開平4−323294 特開2000−178543 US20050233933A1
本発明者は、ASHRAE Standardの燃焼性測定方法(実施例参照)に基づきCFIとHFC32の混合冷媒の不燃性範囲について再検討したところ、HFC32が80%でも可燃性であることが新たにわかった。また、特許文献2,3ではそれぞれHFC32が60mass%以上、67mass%以上で共沸様になるとの記載があるが燃焼性については記載がない。
本発明の主な目的は、オゾン破壊の恐れが小さい若しくは0に近く、冷媒特性がR410Aとほぼ同等で且つ不燃でありながら、地球温暖化に及ぼす影響(GWP値)はR410Aの1/5〜1/10と地球環境に影響を与えない代替品として各種の用途に有用な混合物を提供することである。
本発明者は、上述した如き課題に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、冷凍性能は非常に高いが燃焼範囲を有するために冷媒としては単独で使用できないジフルオロメタンに不燃性ガスであるトリフルオロヨードメタンを混合することで、その混合物が不燃性冷媒組成物を形成し、且つジフルオロメタンの冷凍性能を損なわない混合範囲がある事を見出した。
即ち、本発明は、下記の不燃性冷媒組成物である冷媒を提供するものである。
項1:ジフルオロメタン10mass%〜60mass%とトリフルオロヨードメタン90mass%〜40mass%からなる不燃性冷媒組成物。
項2:ジフルオロメタン20mass%〜60mass%とトリフルオロヨードメタン80mass%〜40mass%からなる項1に記載の組成物。
項3:ジフルオロメタン20mass%〜50mass%とトリフルオロヨードメタン80mass%〜50mass%からなる項1に記載の組成物
項4:ジフルオロメタンとトリフルオロヨードメタンとの合計量100重量部に対して、更に、安定化剤を0.1〜10重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。項5:項1〜4の何れかに記載の不燃性冷媒組成物からなるR410Aの代替冷媒。
本発明の不燃性組成物は、下記の様な優れた特性を有するものである。
(1)塩素及び臭素を含まないために、大気中に放出されてもオゾン層を破壊する危険性が殆どない。また、地球温暖化係数も小さく、地球温暖化への影響はR410Aの約1/5〜1/10以下である。
(2)冷凍能力等の冷媒性能がR410Aよりも良好若しくは同等である。
本明細書で使用する不燃性冷媒組成物という用語は、2成分以上の混合冷媒として燃焼性がない組成物を意味する。
本発明で用いるジフルオロメタン(HFC32)は下記の特性を有する化合物であり、オゾン層を破壊する危険がなく、しかもCOを1とした場合の地球温暖化係数(GWP)が550であり、R410AのGWP1980と比較すると約1/4であり、地球温暖化に対する影響が比較的少なく、冷媒としての性能も非常に高いが、燃焼範囲(13.3vol%〜29.3vol%)を有している。
(HFC32)
分子式;CF
分子量;52
沸点;−51.8℃
GWP;550
また、トリフルオロヨードメタンは下記の特性を有する化合物であり、オゾン層に影響を与える塩素原子及び臭素原子を全く含まないので、オゾン層を破壊する危険性がほとんどない化合物であり、しかも地球温暖化係数(GWP)が5以下であり、地球温暖化に対する影響が非常に小さい。また、不燃性のガスであるが分子量の大きいヨウ素を配しているため冷凍能力はHFC32の約1/3程度である。
(トリフルオロヨードメタン)
分子式;CF
分子量;196
沸点;−22.5℃
GWP;<5
本発明者は燃焼範囲を有するジフルオロメタンと不燃であるトリフルオロヨードメタンとの混合割合と燃焼性の関係を鋭意研究した。燃焼性はASHRAE法に準じた方法(10L、球形フラスコ、放電点火、測定温度60℃)で実施した。ASHRAE法については、ASHRAESTANDARD 34-2001 ASTM Designation;E681 に記載されている。
測定の結果、HFC32+CFI混合ガスにおいて、CFIを35mass%以上の比率で混合すれば不燃性を示す事が判明した。
ASHRAE法では、混合ガスの漏洩ガス組成での危険性を判断基準としており、混合ガスの沸点+10℃と−40℃の値を比較し、高い側の温度による漏洩組成を燃焼判定する。HFC32+CFIの混合系では−40℃における漏洩ガス組成での評価となる。−40℃における気液平衡で不燃限界組成であるHFC32/CFI=65/35(mass%)を気相とする液相組成はHFC32/CFI=75/25(mass%)であり、CFIを25mass%以上添加すれば不燃性を示すことが判明した。
今回、HFC32の含有量が65mass%を越えると可燃性となることが新たにわかったが、そのことがわかっていたとしても、特許文献3では、HFC32が67mass%以上で共沸様を示すとしているので液相組成と気相組成が同等となり、共沸様を示すという全ての範囲であるHFC32が67mass%以上の範囲で可燃性になる疑いがあったことになる。
一方、GWPを低下させるためにはHFC32の組成比は低い方が良い。また、HFC32が多いほうが冷凍能力は高い。HFC32の含有量の下限は、組成物の冷凍能力が急激に低下する前の10mass%(R410Aの冷凍能力の73%程度)、好ましくはR410Aの冷凍能力の80%程度となる20mass%である。HFC32の含有量の上限は、組成物が不燃性を示す75mass%であるが、本発明ではGWPをR410Aの1/6レベルまで下げる60mass%、好ましくは50mass%である。また、CFIの含有量の下限は40mass%、好ましくは50mass%であり、その上限は90mass%、好ましくは80mass%である。
特に好ましくはR410Aの冷凍能力の80%、GWP(R410A比)1/7となるHFC32が20〜50mass%、CFIが80〜50mass%である。
本発明の不燃性組成物は高い安定性を示すが過酷な使用条件において、高度の安定性が要求される場合には必要に応じて、安定剤を添加することが出来る。
この様な安定剤としては、(i)ニトロメタン、ニトロエタン等の脂肪族ニトロ化合物、ニトロベンゼン、ニトロスチレン等の芳香族ニトロ化合物、(ii)1,4−ジオキサン等のエーテル類、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルアミン、ジフェニルアミン等のアミン類、ブチルヒドロキシキシレン、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
安定剤は少なくとも(i)より選択された化合物の1種類を含み(ii)から選択された少なくとも1種類の化合物を任意に混合しても良い。
安定剤の使用量は、安定剤の種類により異なるが、不燃性組成物の性質に支障ない程度とする。通常安定剤の使用量はジフルオロメタンとトリフルオロヨードメタンの混合物100重量部に対して、0.1〜10重量部程度とすることが好ましく、0.1〜5重量部程度とすることがより好ましい。
本発明の不燃性組成物は、従来のフロンと同様に冷媒、熱移動媒体、動作流体、発泡剤などの各種の用途に用いることができ、特に、エアコン、冷凍機、冷蔵庫、カーエアコン、コンテナ用冷凍装置などその他各種低温機器用の冷媒として有用である。特に、R410Aの代替冷媒として好適に用いられる。
以下、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
実施例1
各種の組成のジフルオロメタンとトリフルオロヨードメタンの混合物について、蒸発器における熱媒体の蒸発温度を5℃、凝縮器における凝縮温度を45℃、過熱度0℃、過冷却度0℃として、運転を行い、冷凍能力を求めた結果を以下の表1及び図1に示す。
比較例1
R410Aも同様に蒸発器における熱媒体の蒸発温度を5℃、凝縮器における凝縮温度を45℃、過熱度0℃、過冷却度0℃として、運転を行い、冷凍能力を求めた結果を表1に示す。
なお、冷凍能力は、冷凍サイクル運転を行い、蒸発器出口の作動流体のエンタルピーh1、蒸発器入り口の作動流体のエンタルピーh4、蒸発器出口のガス密度ρとした場合、計算式(h1−h4)×ρにより求めた。
Figure 2009024152
以上の結果から、本発明者はHFC32/CFIの混合物は特定の組成範囲HFC32/CFI=10〜60/40〜90(mass%)において、HFC32の特徴である冷凍能力の高さを大きくは損なわず、R410Aの冷媒性能(圧力、冷凍能力)と同等もしくは急激な減少が無い事を見出した。本発明の組成物は、CFIの特徴である不燃性を示しGWPの低減も可能であり、R410Aより地球環境に配慮した混合ガスの提供ができ有意義である。
各種の組成のジフルオロメタンとトリフルオロヨードメタンの混合物についての冷凍能力を求めた結果を示す。

Claims (5)

  1. ジフルオロメタン10mass%〜60mass%とトリフルオロヨードメタン90mass%〜40mass%からなる不燃性冷媒組成物。
  2. ジフルオロメタン20mass%〜60mass%とトリフルオロヨードメタン80mass%〜40mass%からなる請求項1に記載の組成物。
  3. ジフルオロメタン20mass%〜50mass%とトリフルオロヨードメタン80mass%〜50mass%からなる請求項1に記載の組成物
  4. ジフルオロメタンとトリフルオロヨードメタンとの合計量100重量部に対して、更に、安定化剤を0.1〜10重量部含有する請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載の不燃性冷媒組成物からなるR410Aの代替冷媒。
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