JP2009021061A - 有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】ウェットプロセスで成膜された有機EL材料をアニール処理した場合であっても、熱劣化等を生じさせず、発光寿命、基板への密着性等、特性の優れた有機EL素子を製造する方法及び製造装置を提供する。
【解決手段】一層又は複数の有機機能層からなる有機EL層を有するエレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、少なくとも一の有機機能層を、有機機能性材料を含む溶液を基板上に塗布することで形成する工程と、前記有機機能層に可溶な溶媒により該有機機能層を膨潤させるとともに加熱するアニール処理工程とを有する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、基板上に形成された有機機能性薄膜及び有機機能性薄膜を用いた素子に関するものである。
近年、電子部材の薄層軽量化やフレキシブル化を目標とした、有機機能性材料を用いた有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子)、有機太陽電池、有機薄膜トランジスタなどの有機機能性素子の開発が盛んに行われている。特に有機EL素子は、自発光型の表示装置として注目を集めている。
有機EL素子に用いられる有機機能性材料としては、低分子系の物と高分子系の物がある。一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。また、蒸着法では蒸着源が通常ボートのピンホールや坩堝のような点形状であるため、大型化した基板に対し膜厚が均一になるように層を形成するのが困難である。また、蒸着法は高真空下で行われることが多く、そのために大掛かりな真空装置が必要となる。
一方、高分子系の有機機能性材料はアモルファス性が高いため、有機機能性材料を溶媒に溶解若しくは分散させた塗工液(インキ)にし、これをウェットプロセスにて薄膜形成する方法が広く用いられている。薄膜形成するための方法としては、インクジェット法、スピンコート法、バーコート法、ディップコート法、印刷法等がある。特に印刷法では、塗りわけ、パターニングが可能であり、生産性も高いことから薄膜の高精細パターン形成に有効であると考えられる(特許文献1)。
ところで、有機EL素子ではアニール処理を施すことにより、寿命が大幅に向上することが知られている(非特許文献2)。その理由としては、アニール処理によりキャリア移動度が向上する(非特許文献3)、パッキングが密に成る(非特許文献4)、電極を構成する原子の分散が無くなる(非特許文献5)等、様々な理由が考えられている。また、アニール処理の効果として、有機EL層と隣接する層との密着性が向上することも本発明の発明者は確認している。
この様に、アニール処理を施すことにより、膜質の改善、層の界面での密着性向上などによる有機EL素子の高性能化が期待できる。
このアニール処理は、ガラス転移温度(T)前後で行うことが多い(特許文献2、特許文献3参照)。特に高分子材料の場合には、低分子系材料とは異なり、ガラス転移温度以上の加熱による結晶化並びに不均一な膜質への劣化を考慮しなくても良いので、ガラス転移温度以上に加熱する事が多い。
しかしながら、アニール処理の問題点としては、加熱による高分子材料の分解などによる熱劣化が懸念される。特に近年、有機EL素子の高性能化の試みとして、例えばキャリア再結合確率を上げるために高分子機能性材料の分子量を上げる試みが盛んに行われている。分子量が上げられた結果、ガラス転移温度も上昇し、現在市販されている高分子機能性材料の中には200℃近いガラス転移温度を有する材料もある。この様な高温でアニール処理を行う場合、高分子材料の分解などによる熱劣化が懸念される。
特に問題となるのは、多色表示の表示装置を作製するために、複数の異なるガラス転移温度を有する有機EL材料を用いた場合である。例えばRGBそれぞれに対応する有機発光層を形成し、その後にアニール処理を施す場合、ガラス転移温度及び熱劣化の影響が現れる温度が異なるために、ある材料に関してはアニール処理の効果が得られない一方、他の材料に関しては熱分解により有機EL素子としての性能が劣化してしまうといったおそれがある。
特開2003−17261号公報 特開平11−40352号公報 特開2000−173770号公報 有機ELディスプレイ、時任静士他、株式会社オーム社、2004 "Effect of thermal annealing on the lifetime of polymerlight-emitting diodes"J. Kim et al, Appl. Phys. Lett. 82, 4238-4240 (2003). "Hole and electron transport in poly(9,9-dioctylfluorene9 andpoly(9,9-dioctylfluorene-co-benzothiadiazole)" T. Kreouzis et al, Proc. of SPIE 5214,141-149 (2004). "Extreme baking effect of interlayer on PLED’s performance" M.-G. Kim et al,IMID/IDMC ’06DIGEST 50-3 (2006). "Effect of electrical annealing on the luminous efficiency ofthermally annealed polymer light-emitting diodes"T.-W. Lee et al, Appl. Phys. Lett. 77,3334-3336 (2000). "PROPERTIES OF POLYMERS" D. W. Van Krevelen, Elsevier Science B.V., Amsterdam, TheNetherlands, (1997)
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであって、ウェットプロセスで成膜された有機EL材料をアニール処理した場合であっても、熱劣化等の影響を生じさせず、発光寿命、基板への密着性等、特性の優れた有機EL素子を製造する方法及び製造装置を提供することを課題とする。
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、一層又は複数の有機機能層からなる有機EL層を有するエレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、少なくとも一の有機機能層を、有機機能性材料を含む溶液を基板上に塗布することで形成する工程と、前記有機機能層に可溶な溶媒により該有機機能層を膨潤させるとともに加熱するアニール処理工程とを有する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。溶媒により有機機能層を膨潤させつつアニール処理を行うことにより、アニール処理による熱劣化を抑制し、かつ有機EL素子の素子特性を向上させることができる。
第2の発明は、上記発明において、加熱する工程における加熱温度が、膨潤した有機機能層におけるガラス転移温度以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。また第3の発明は、前記一の有機機能層が有機発光層であることを特徴とするエレクトロルミネセンス素子である。アニール処理を施す有機機能層のガラス転移温度以上であることにより、有機機能層の密着性、発光寿命等の効果を奏するが、溶媒により有機機能層を膨潤させつつアニール処理を行うことにより、有機機能層のガラス転移温度が低下するため、熱劣化等加熱の影響を抑制し、かつ有機EL素子の素子特性を向上させることができる。
第4の発明は、一層又は複数の有機機能層からなる有機EL層のうち、少なくとも一層が複数の発光色に対応するようにパターニングされた有機発光層であるエレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、各有機発光層を、有機発光層材料を含む溶液を塗り分けてパターニングし形成する工程と、各有機発光層に可溶な溶媒により各有機機能層を膨潤させるとともに加熱するアニール処理工程とを有する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。この発明により、それぞれガラス転移温度の異なる有機発光層をアニール処理する場合でも、アニール処理による熱劣化することなく、また加熱不足により素子特性が改善されないということもなくなった。例えばR(赤)G(緑)B(青)三色に対応するように形成された各有機発光層を、同時にアニール処理することが可能となった。
第5の発明は、第4の発明において、加熱する工程における加熱温度が、膨潤した各有機発光層におけるガラス転移温度のうち、最も高いガラス転移温度以上であることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。このような加熱温度でアニール処理することにより、全ての有機発光層においても大きくアニール処理による素子特性の向上を図ることができる。また、各有機発光層を溶媒により膨潤させることで、各有機発光層のガラス転移温度が降下し、また各ガラス転移温度の差が減少することから、同時にアニール処理をしても熱劣化等加熱の影響を抑制できる。
第6の発明は、第4の発明において、加熱する工程における加熱温度が、溶媒を含んでいない各有機発光層におけるガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。通常の乾燥状態における各有機発光層におけるガラス転移温度以下であれば、熱劣化等の影響はほとんどない。従って、複数の有機発光層にアニール処理を施す場合においても、最も低いガラス転移温度以下で加熱することで、いずれの有機発光層も加熱による劣化を生じない。その一方で、膨潤させることにより、実際のガラス転移温度を下げることができるため、アニール処理の効果を十分に得ることができる。
第7の発明は、上記の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法において、各有機EL層が、画素ごとに隔壁により区切られていることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。隔壁があることで、塗布時に隣り合う画素間で塗布液が混ざり合うことがない。
第8の発明は、上記の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法において、有機機能層を形成する工程において、該有機機能層が印刷ロールにより塗布形成されることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。印刷法、特にロールを用いた塗布法では、塗り分けが可能であり、かつ高速にパターニングすることが可能であるために、生産性が高い。
第9の発明は、上記の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法のアニール処理工程において、ガス状又は霧状の溶媒により有機機能層を膨潤させることを特徴とする有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法である。ガス状又は霧状の溶媒を用いることにより、有機機能層の膜形状に悪影響を与えることなく膨潤させることができる。
第10の発明は、上記の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法により作製される有機エレクトロルミネセンス素子である。
第11の発明は、上記有機エレクトロルミネセンス素子を組み込むことを特徴とする表示装置である。
第12の発明は、チャンバー内に設置された基板設置部と、基板を加熱する手段と、前記チャンバー内にガス状又は霧状の溶媒を導入する手段と、膨潤の度合いを測定する手段とを有する有機EL素子製造装置である。このような有機EL素子製造装置を用いることにより、有機機能層の膨潤度合いを測定し溶媒の含有率からアニール時の最適な加熱温度を設定しつつ本発明の有機EL素子の製造方法により有機EL素子を作製できる。
第13の発明は、上記有機EL素子製造装置の発明において、チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段を備えることを特徴とする有機EL素子製造装置である。不活性ガス雰囲気内でのアニール処理を可能とすることにより、酸素等による有機EL層の損傷を防ぐことができる。
第14の発明は、上記有機EL素子製造装置の発明において、チャンバー内の溶媒排気のための排気弁及び真空ポンプが接続されていることを特徴とする有機EL素子製造装置である。真空ポンプにより排気弁を開いて有機溶媒を排出し、チャンバー内を低圧にすることにより、有機機能層から迅速に溶媒を除去することができる。
本発明の有機EL素子の製造方法および製造装置を用いることにより、有機EL層にアニール処理を施すことによって密着性の向上、長寿命化等の素子特性向上の効果を奏し、かつアニール処理時の熱による素子の劣化を抑制することができた。特に、フルカラー表示の有機EL素子の製造のために、複数の有機発光層をパターニングして形成した場合でも、全ての有機発光層に対して熱劣化を生じさせずに素子特性を向上させることが可能となった。
A 有機EL素子及びその製造方法
(有機EL素子の素子構成)
まず、本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。本発明の製造方法は少なくとも一層の有機EL層をウェットプロセスにて塗布形成する有機EL素子に適用可能である。例えば図1は、基本的な有機EL素子の構造を示している。有機EL素子は、電極間に挟持された有機EL層に電圧を印加することにより、発光するものである。有機EL層103は単層又は複数の層からなり、電荷輸送層103a、有機発光層103bの他、電子注入層、正孔輸送層、正孔注入層等によって構成することができる。有機EL層103の上部には、電極層104が形成される。また、図1では図示していないが、電極層の上部には陽極を形成し、外部の酸素や水分から保護するために封止される。
さらには図2に示すように、画素間に隔壁を形成し、有機EL層を例えば赤(103R)、緑(103R)、青(103R)と異なる構成で形成することにより、フルカラーの有機ELディスプレイを製造することができる。隔壁があることで、塗布時に隣り合う画素間で塗布液が混ざり合うことがないため、複数色に対応する有機EL層をウェットプロセスで形成することができる。また、隔壁はストライプ状であってもマトリックス状であってもよい。なお基板として画素ごとに薄膜トランジスタを配置したアクティブマトリックス方式であってもよい。
(有機EL素子の製造方法)
本発明に用いられる基板101としては、ある程度の強度がある基板なら制限はないが、具体的にはガラス基板やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。0.2〜1mmの薄いガラス基板を用いれば、バリア性が非常に高い薄型の有機EL素子を作製することができる。なおボトムエミッション型の有機EL素子とする場合には透光性がある基板材料を用いる。また前述のように、基板として画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT)を配した駆動基板を用いてもよい。
透明導電層102としては、透明または半透明の電極を形成することのできる導電性材料なら特に制限はない。具体的には酸化物としてインジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)、インジウムと亜鉛の複合酸化物(以下IZOという)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、亜鉛アルミニウム複合酸化物等があるが、低抵抗であること、対溶剤性があること、透明性があること等からITOを好ましく用いることができ、前記透光性基板201上に蒸着またはスパッタリング法により製膜することもできる。また、オクチル酸インジウムやアセトンインジウムなどの前駆体を基板上に塗布後、熱分解により酸化物を形成する塗布熱分解法等により形成することもできる。又は、金属としてアルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものを用いることができる。又はポリアニリン等の有機半導体も用いることができる。
上記、透明導電層102は、必要に応じてエッチングによりパターニングを行う、またはUV処理、プラズマ処理などにより表面の活性化を行ってもよい。
次に隔壁105の材料としては、絶縁性を有する必要があり、感光性材料等を用いることができる。感光性材料としては、ポジ型であってもネガ型であってもよく、光ラジカル重合系、光カチオン重合系の光硬化性樹脂、又はアクリロニトリル成分を含有する共重合体、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ノボラック樹脂、ポリイミド樹脂、およびシアノエチルプルラン等を用いることができる。また、隔壁形成材料として、SiO2、TiO2等を用いることもできる。隔壁の形成方法としては、隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングを行うことにより形成することができる。また、隔壁形成材料がSiO2、TiO2の場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。この場合、隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
本発明における有機EL層103は、単層若しくは複数の機能性層を積層させてもよい。有機EL素子の場合では、陽極および陰極の電極間に少なくとも有機発光層を設ける必要があるが、その他にも機能性層として正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の電荷輸送層を設けることができ、その構成は任意である。
各層に用いる有機EL材料としては、高分子材料と低分子材料が存在する。主に高分子材料では溶媒に溶解し、溶液として塗布することにより、一方低分子材料ではスパッタ法、真空蒸着法等のドライプロセスにより成膜される。後述するように、本発明の有機EL素子の製造においては、溶媒によりガラス転移温度を降下させることが可能な高分子材料からなる有機EL層を有することが重要である。従って、少なくとも一層は高分子による有機機能性材料層を有するものとする。また特に異なる有機EL材料からなる複数の有機発光層を高分子材料により形成することが、本発明において有効であるため好ましい。
図1では、有機EL層が電荷輸送層103aおよび有機発光層103bの2層からなる場合を示している。有機発光層材料を高分子とした場合には、有機発光層以外の層はウェットプロセス又は低分子材料をドライプロセスにて成膜してもよく、又は無機材料からなる層を積層してもよい。
主に透明導電層102に隣接して設けられる電荷輸送層103aに用いる材料としては、一般に正孔輸送材料として用いられているものであれば良く、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール(PVK)誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の高分子材料を用いることが出来る。また、ポリパラフェニレン(PPP)等のポリアリーレン系、ポリフェニレンビニレン(PPV)等のポリアリーレンビニレン系等の導電性高分子若しくはポリスチレン(PS)等の高分子に、アリールアミン類、カルバゾール誘導体、アリールスルフィド類、チオフェン誘導体、フタロシアニン誘導等の低分子の電荷輸送性を示す材料を混合した物を用いても良い。また無機材料を用いた場合には、TiO、Fe、Cu O、ZrO、Nb、MoO、WO、FeTiO、BaTiO等の遷移金属を含む金属酸化物を用いてもよい。
有機EL素子における有機発光層103bに用いる発光体としては、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系等の高分子発光体や、クマリン系、ペリレン系、ピレン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系、白金錯体系、ユーロピウム錯体系等の低分子発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に溶解若しくは高分子に共重合させたものを用いることができる。
これらの有機発光層材料は、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、アミルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒に溶解または分散させて塗布液として用い、スピンコート法、カーテンコート法、バーコート法、ワイヤーコート法、スリットコート法といったコーティング法や、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法により成膜することが可能である。特に図2のように隔壁104を設けておけば、画素ごとに有機EL層を形成することが可能である。
また、有機発光層103bと電荷輸送層103aの間に、インターレイヤーと呼ばれる加熱により電荷輸送層103aとの密着性を増す材料からなる層を挟んでも良い。このインターレイヤーにより、有機発光層103bの発光効率が増し、駆動寿命も長く成る事が知られている。この様な材料としては、ポリ(2,7−(9,9−ジ−オクチルフルオロレン))−alt−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(TFB)が挙げられる。
有機EL素子をフルカラー表示させる場合、幾つかの方法があるが、図2に示したように、複数色の色に対応する有機EL層、例えばR(赤)G(緑)B(青)三色に対応する有機EL層(103R、103G、103B)を設けることが素子構成上容易である。この場合には、発光部である有機発光層103bを三色に塗り分けてパターニングする必要がある。このように有機発光層をパターニングする際には、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法を好適に用いることができ、発光色の異なる有機発光層を画素ごとにパターン形成することができる。また、有機EL素子において、正孔輸送層や電子輸送層といった電荷輸送層は、隣接する画素への電流のリークを防止するために、画素ごとにパターニングすることが好ましい。この場合においても、凸版印刷法(フレキソ印刷法)、凹版オフセット印刷法、凸版反転オフセット印刷法、インクジェット印刷法、凹版印刷法といった印刷法を好適に用いることができる。
(凸版印刷法による有機EL層の形成方法)
背景技術で述べたように、高分子機能性材料を成膜する際にはウェットプロセス、特に印刷法が適しているため、その一例として、図3に基づいて凸版印刷法による有機EL層各層の形成方法を示す。図3は、凸版印刷による成膜プロセスの説明図である。ステージ307には被印刷基板306が固定されており、本発明によってパターン形成された印刷用凸版304は版胴305に固定され、印刷用凸版304はインキ供給体であるアニロックスロール303と接しており、アニロックスロール303はインキ補充装置301とドクター302を備えている。
まず、インキ補充装置301からアニロックスロール303へインキを補充し、アニロックスロール303に供給されたインキ308のうち余分なインキは、ドクター302により除去される。インキ補充装置301には、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクター302にはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロール303は、クロム製やセラミックス製のものを用いることができる。
印刷用凸版へのインキ供給体であるアニロックスロール303表面にドクターによって均一に保持されたインキ304は、版胴305に取り付けられた印刷用凸版306の凸部パターンに転移、供給される。そして、版胴305の回転に合わせて印刷用凸版306の凸部パターンと基板は接しながら相対的に移動し、インキはステージ308上にある被印刷基板306の所定位置に転移し被印刷基板にインキパターンを形成する。
複数の層を形成する場合には、下部層を乾燥させた後、同様の工程を繰り返して積層する。また、上述のようにフルカラー表示のために有機発光層を塗りわけてパターニングする場合には、色ごとに上記印刷工程を繰り返す。このように印刷ロールを用いた塗布法では、塗り分けが可能であり、かつ高速にパターニングすることが可能であるために、生産性が高い。
(有機機能層のアニール処理工程)
以上の様に成膜した有機EL層各層(有機機能層)に対して、本発明のアニール処理を施す。背景技術で示した通り、高分子機能性材料はガラス転移温度(T)以上の温度でアニール処理を行うことにより改質され、素子特性が向上するためである。特に、有機EL層の密着性の向上は、有機ELディスプレイのフレキシブル化の開発が進められている現在、ディスプレイの耐久性、折り曲げ強度の向上のために必要不可欠である。
本発明でのアニール処理は有機EL素子製造過程の任意のタイミングで行う事が可能である。つまり、有機EL層を構成する有機機能層ごとにアニール処理したり、又は全ての積層工程を終えてからアニール処理したりすることができる。しかし当然のことながら、加熱による熱劣化をできるだけ回避するため、さらには製造時間の短縮及び工程の簡素化のために、各有機機能層を全て積層した後にアニール処理を行うことが望ましい。
一方で、アニールによって素子特性改善の効果を得るためには、一定以上の温度に加熱する必要があることが判明している。本発明の発明者は、ガラス転移温度が196℃のポリアリーレンビニレン系高分子発光体を塗布し、ガラス転移温度以上の温度(200℃)でアニール処理を施した場合と、ガラス温度未満の温度(150℃)でアニール処理を施した場合の基板との密着性の比較を行った(詳細は実施例を参照)。以下の表1はその実験結果である。
表から明らかなように、200℃でアニール処理を施した場合には、アニールしない場合と比較して大きな密着性の向上が見られる。しかし、150℃でのアニール処理の場合には、アニールしない場合と比較して密着性の向上は見られなかった。
このように、ガラス転移温度よりも低い温度でアニール処理を行うと、所望の効果を得られないことになるため、アニール処理においては少なくともガラス転移温度近くまで加熱する必要が生じる。しかしながら、一度のアニールで複数の有機機能層を処理する場合、各層でガラス転移温度が異なっているために問題が生じるおそれがある。例えば、前述のようにR(赤)G(緑)B(青)三色に対応する3種類の発光層を形成し、アニール処理を施す場合、各色の発光層のガラス転移温度が異なるために、ある色の発光層部分ではアニールの効果が得られず、また加熱温度を上げた場合、ガラス転移温度の低い発光層では加熱による熱劣化を生じるといったおそれがある。
本発明では、有機機能層にアニール処理と同時に、有機機能層材料高分子に可溶な溶媒を用いることにより、上述の問題点を解決した。
高分子材料のガラス転移温度は、溶媒に混ぜる事により低下することが知られている(非特許文献6参照)。そこで本発明では、基板上に担持させた有機機能層を有機溶媒によって膨潤させることによりガラス転移温度を下げ、これと同時に加熱を行うことにより、有機機層の熱劣化のおそれ無くアニール処理を行うことを可能としたのである。ここで本発明での膨潤とは、有機機能層中に溶媒が吸収されて含んでいる状態をいい、体積の膨張は本発明においては必ずしも本質的ではない。
有機機能性材料として使用されている材料の多くは芳香環の構造を有するπ電子系の材料である。その様な化合物はトルエンやキシレンなどの芳香族系の溶媒に溶け易い。そこで以下、アニール処理の一例として、ガラス転移温度200℃の高分子機能性材料をトルエンにて膨潤させた場合について示す。但し、あくまでこれは一例であり、高分子材料によって膨潤させる有機溶媒や温度は用いる材料に合わせて随時適切なものを選択する必要がある。
高分子材料を溶媒で膨潤させた場合のガラス転移温度は、次式により示される(非特許文献6)。
但し、
gP=高分子材料の乾燥状態でのガラス転移温度
gS=溶媒のガラス転移温度
φ=膨潤状態の高分子における溶媒が占める体積の割合
K=定数(通常Kは1から3の間の数値を取るが、不明な場合は平均値2.5を用いて計算する)
である。
式1においてTgPを473K(200℃)とし、TgSとしてトルエンの106Kを用いたときの、ポリマー分率(1−φ)に対するガラス転移温度Tの推移を表したグラフが図4である。Kの値に2.5を用いたとするとφ=0.13(高分子材料及び溶媒の混合物の全体積中87%が高分子、13%がトルエンの状態)にてTが373K(100℃)となる。
また、図示していないが、トルエンの代わりにヘキサンのガラス転移温度(TgS=70K)を用いて計算すると、Tが363K(90℃)となる。
以上より高分子材料及び溶媒の混合物のガラス転移温度(T)と溶媒には次のような関係があることが分かる。
(1)膨潤度合いは差ほど大きくなくとも、十分にガラス転移温度は下がる。
(2)有機溶媒のガラス転移温度(TgS)が低いと、更にガラス転移温度(T)は下がる。
(1)により、トルエンのように高分子機能性材料を膨潤させやすい溶媒で無く、貧溶媒で有ったとしても1割程度の膨潤を起こす溶媒であれば良い。
また(2)については、TgS/TmS(溶媒の融点) がおおよそ2/3という関係が知られているので、TgS若しくはTmSが低い溶媒である程、ガラス転移温度低下の現象がより顕著に現れる事が判る。TmSが低い溶媒は概して沸点も低いため、その様な溶媒はアニール処理後の溶媒除去(乾燥)もしやすく好ましい。
有機機能層の膨潤に用いる溶媒としては、有機機能層の塗布液の溶媒と同様、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、安息香酸エチル、安息香酸メチル、メシチレン、テトラリン、アミルベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独または混合溶媒を、有機機能層を構成する高分子材料に合わせて適宜選択すればよい。なお凸版印刷、凹版印刷等の印刷ロールを用いた印刷形成においては、印刷時の転写状態を安定させるためにある程度沸点の高い溶媒を用いる必要があるが、アニール処理工程においてはこのような制限はなく、逆に上述のように低沸点溶媒がアニール処理後の溶媒除去のためには好ましいが、あまりにも沸点が低すぎるとチャンバー内を飽和状態としても十分な膨潤状態が得られない可能性が有る。
溶媒による有機機能層の膨潤に用いる手段としては、溶媒蒸気中に基板をさらすか、又は溶媒をスプレー等で噴霧することにより溶媒を有機機能層に吸収させることができる。このような方法を用いれば、ガス状又は霧状であるために有機機能層の膜形状に悪影響を与えることなく膨潤させることができるために好ましい。なお有機EL素子の構造として画素間に隔壁が設けられていれば、溶媒によって有機機能層を膨潤させても各画素間で混合されることがないために好ましい。
溶媒による膨潤度合いが高い程、有機機能層のガラス転移温度(T)は低くなるが、膨潤度合いはφが0.2以下程度にとどめることが好ましい。膨潤度合いが過度になると平滑な膜面に欠陥を生じるおそれがあり、また積層後に本発明のアニール処理を行う場合には他層間での混合が起こりうるためである。
次に有機機能層の加熱は、後述するように基板を加熱する手段によってなしうる。このときの加熱温度としては、溶媒により膨潤した状態の有機機能層におけるガラス転移温度(T)近傍又はガラス転移温度以上であることが好ましい。前述のように、ガラス転移温度よりも大きく低い加熱温度では、アニール処理の効果が得られないためである。図4から明らかなように、この膨潤した状態でのガラス転移温度(T)は、乾燥時の有機機能層のガラス転移温度(TgP)よりも大きく下がるために、より低い温度での加熱でもアニール処理の効果を得ることができる。
ここで複数の異なるガラス転移温度を有する有機機能層に対してアニール処理を行う場合について説明する。具体的には、複数の発光色に対応するようにパターニングされた有機発光層に対してアニール処理を施す場合である。ここで3色の有機発光層の膨潤状態でのガラス転移温度の相対関係が、TgR<TgG<TgBであったとすると、加熱温度をTgB近傍又はTgB以上とすることが好ましい。ここでつまり、膨潤した各有機発光層におけるガラス転移温度のうち、最も高いガラス転移温度近傍又は以上とする。式1によれば、K及びφが各有機発光層においてほぼ同一と見なせる場合には、乾燥状態における有機発光層のガラス転移温度の相対関係についてもTgPR<TgPG<TgPBとなる。さらには元のガラス転移温度が高いほど、膨潤時にはガラス転移温度が大きく低下するため、各有機発光層のTの差は小さくなる。従って、複数の異なるガラス転移温度を有する有機機能層に対してアニール処理を施す場合、溶媒により膨潤させながら加熱することにより、加熱する温度を下げることにより熱劣化を回避しつつ、アニールによる素子性能の向上させることが可能となる。
また、アニール処理の加熱温度を、溶媒を含んでいない各有機発光層におけるガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度以下とすることが好ましい。通常の乾燥状態における各有機発光層におけるガラス転移温度以下であれば、熱劣化等の影響はほとんどない。従って、複数の有機発光層にアニール処理を施す場合においても、最も低いガラス転移温度以下で加熱することで、いずれの有機発光層も加熱による劣化を生じさせずに処理することができる。その一方で、膨潤させることにより、実際のガラス転移温度を下げることができるため、アニール処理の効果を十分に得ることができる。前述の3色の有機発光層の例で示すと、TgR<TgG<TgB<TgPR<TgPG<TgPBとなって、膨潤状態における最も高いガラス転移温度TgBよりも通常の乾燥状態における最も低いガラス転移温度TgPRが高くなるように有機溶媒を有機発光層に加えて膨潤させれば、TgPR以下の加熱温度であっても十分にアニール処理の効果を得ることが可能である。
これらのアニール処理により、有機機能性薄膜の膜質改善や密着性の向上が図られ、その結果素子特性が向上する。また、複数の有機機能性薄膜を積層する場合、各有機機能性薄膜を形成する毎に行うこともできるし、各有機機能性薄膜形成後、一括でアニール処理することも可能である。但し、一括アニール処理を行う場合には、各層間での混合が起き無い様に気を付ける必要がある。また、アニール処理工程は、外気の影響を避けるために、窒素やアルゴンなどの不活性ガス内で行ってもよい。
なお、各有機機能層の塗布工程の後、アニール処理工程前に、加熱乾燥、真空乾燥等による乾燥工程を設けてもよい。特に印刷ロールにより塗工を行う場合、高沸点溶媒を用いることが多く、上述のように本発明のアニール工程ではより低沸点の溶媒を用いた方が、溶媒により膨潤した有機機能層のガラス転移温度を下げることができるため、あらかじめ乾燥工程により高沸点溶媒を除去しておくことで、アニール処理の効果を高められると考えられるからである。
(有機EL素子の封止工程)
全ての有機EL層を形成し、アニール処理した後、有機EL層103の上から陰極からなる電極層104を形成する。電極層としてはMg、Al、Yb、Ba、Ca等の金属単体を用いたり、発光媒体材料と接する界面にLiやLiF等の化合物を1nm程度はさんで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いることが可能である。または、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数の低い金属と安定な金属との合金系、例えばMgAg、AlLi、CuLi等の合金が使用できる。陰極の形成方法は材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法、スパッタリング法を用いることができる。電極層の厚さは、10nmから1000nm程度が望ましい。
最後にこれらの有機機能性積層体を、外部の酸素や水分から保護するために、ガラスキャップと接着剤を用いて密閉封止し、有機EL素子を得ることができる。また、透光性基板が可撓性を有する場合は封止剤と可撓性フィルムを用いて密閉封止をおこなう。
(表示装置)
上記工程で作製した有機EL素子を組み込むことで、例えばTV用ディスプレイ、PC用ディスプレイ、その他の電子機器用表示装置として用いることができる。
B 有機EL素子の製造装置
次に上記本発明の有機EL素子の製造方法に用いる製造装置について説明する。図5は本発明の製造装置の概略図である。本装置は有機機能層を形成した基板502が設置される基板設置部503を有する。基板設置部には、有機機能層にアニール処理を施すための加熱手段が接続されている。また、基板102上の有機機能層が加熱時に酸化反応を起こさぬよう、アニールチャンバー501は窒素やアルゴンなどの不活性な雰囲気に置換するために、排気弁504や給気弁505につながっている。また、チャンバー501内に有機溶媒を導入できるように有機溶媒供給弁506が設置されており、余分な液状の有機溶媒を外に取り出すドレン抜き507も設置されている。また、有機機能層を溶媒にて膨潤させるための膨潤手段を備えている。また、膨潤した有機機能層における溶媒の含有率を測定するための膨潤度合い測定手段を有してもよい。
チャンバー501としては、窒素置換時の減圧に耐え、有機溶媒により変質しない物であればよいが、発塵性や耐食性も兼ね備えているSUS又はアルミニウムを用いることが好ましい。チャンバーには図示されていないが耐圧ガラスでのぞき窓を設置しても良い。
またチャンバー501の壁面に加熱体508を設けてもよい。加熱体によって、有機機能層の膨潤に用いる霧状又はガス状の有機溶媒が、壁面に吸着し、滴下することを防ぐことができる。特に、チャンバー天井面に設置すれば、溶媒の滴下によって有機機能層を損傷することを回避することができる。
基板設置部503もまた、チャンバーと同様な素材を用いる事が好ましい。基板にかかった余分な有機溶媒がドレン抜きにスムーズに流れるように溝やテーパーをきっても良い。また、基板を加熱する為のホットプレート機能や、基板の重量変化を観測する為の秤の機能を持たせても良い。
チャンバー501内に有機溶媒を供給する方法としては、加熱されガス状に成った有機溶媒を有機溶媒供給弁506経由でチャンバー内に導入する方法や、液状の有機溶媒を有機溶媒供給弁506経由でチャンバー内に導入し、チャンバー内でスプレー噴霧する方法が挙げられる。そのため、有機溶媒供給弁506には、使用する有機溶媒に対して耐薬剤性を有するものを用いる必要がある。排気弁504並びに給気弁505、ドレン抜き507に関しても、有機溶媒に触れるため、同様な耐薬剤性が必要と成る。
排気弁504は、窒素置換時には真空ポンプへ接続され、有機溶媒供給弁506から有機溶媒が供給されている場合には逆止弁経由で排気口(図示せず)へ接続される。不活性ガスによりチャンバー内の雰囲気を置換することにより、酸素等によるアニール時の有機EL素子の損傷を抑制することができる。また、アニール処理後、有機機能層から溶媒を除去する必要があるが、排気弁から有機溶媒を排出し、チャンバー内を低圧にすることにより、有機機能層から溶媒を除去することができる。また加熱手段による加熱状態を維持することで、より迅速に溶媒の除去が可能となる。
チャンバー501内に設置された基板502に、有機機能性薄膜を膨潤させる為の有機溶媒を導入する方法としては、加熱されガス状に成った有機溶媒を有機溶媒供給弁506経由でチャンバー内に導入する方法や、液状の有機溶媒を有機溶媒供給弁506経由でチャンバー内に導入し、チャンバー内でスプレー噴霧する方法が挙げられる。また、その溶媒の沸点以下の温度で十分にアニール処理が行え、且つ溶媒により有機機能性材料が溶けてしまわない様な有機機能性薄膜と溶媒との組み合わせを用いる場合には、基板502を溶媒に浸漬させて溶媒と基板とを同時に加熱しても良い。
ガス状の有機溶媒を導入する場合、導入するガスに適宜窒素やアルゴンなどの不活性ガスを混合させても良い。このときのガスの混合の比率は溶媒と機能性材料との相溶性に合わせて適宜決める事が可能である。
霧状の有機溶媒を吹き掛ける場合には、噴霧位置が基板に当たるように有機溶媒噴霧用のノズルを設置する。ノズル先端に付いた液滴が基板上に落ち無い様にノズル位置を配置することが好ましく、従って横方向若しくは斜め方向から吹きかけるように設置するのが好ましい。
さらに膨潤度合い測定手段を有することで、溶媒により膨潤させたときに有機機能層に含まれる有機溶媒の含有率(あるいはポリマー分率)を算出し、膨潤状態におけるガラス転移温度を求めることができる。膨潤度合い測定手段としては、基板の重量を計測する装置により乾燥時と膨潤時の重量変化を測定する手段、あるいは膜厚を測定する手段を用いることができる。膜厚を測定する手段としては、位相差を測定する干渉式膜厚計やエリプソメトリー、触針式膜厚計などを用いる事が可能である。
以下、本発明の実施例として、有機EL素子を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
ITO付きガラス基板を用意し、そのITOを所定のパターンにエッチングした。次いで、エッチングした透明導電層上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物を水に分散させた液を、凸版印刷法によりITO基板上にパターン状に塗布した。この基板を200℃にて3min、大気下にて乾燥させた。乾燥後の厚さは50nmであった。
また、ポリアリーレンビニレン系高分子発光体であるポリ(2−(2−エチルヘキシロキシメトキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン)(ガラス転移温度196℃)をトルエンに溶解し、基板上に、凸版印刷法により基板上にパターン状に塗布し、有機EL層を形成した基板502を得た。
この膜面を図5に示した装置にてアニール処理した。
基板502をアニールチャンバー501に入れ、窒素置換を十分に行いチャンバー内の酸素濃度を1ppmとし、露点を−60℃とした。
その後、トルエン蒸気を含む窒素ガスを150℃に予熱してからチャンバー内に導入した。
基板温度が150℃となってから10minのアニール処理を行った。その間、チャンバー上部ののぞき窓から、基板上の有機機能成材料が溶けだしていない事を目視で確認した。
チャンバー内に導入するガスを、トルエン蒸気を含む予熱された窒素ガスから室温の窒素ガスに変え、基板温度が25℃となってから窒素の導入を止め、基板を取り出した。
この基板上にフッ化リチウム、アルミニウムをそれぞれ0.5nm、200nm真空蒸着により成膜し、有機EL素子を得た。
得られたEL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/mにて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は3000hrであった。また、下記(剥離性評価方法)に示す剥離性評価方法を用いて剥離試験を行ったところ、剥離率は20%であった。
(比較例1)
発光体薄膜をアニール処理しなかったこと以外は、すべて実施例1と同様に素子を作製した。得られたEL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/mにて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は1500hrであった。また、同様な剥離試験を行ったところ剥離率は70%であった。
(比較例2)
発光層形成までを実施例1と同様に行い、発光体薄膜を窒素雰囲気のグローブボックス内に設置されたホットプレート上で150℃、10minのアニール処理を行った。陰極形成以降も、すべて実施例1と同様に素子を作製した。得られたEL素子に8Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/mにて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は1600hrであった。また、同様な剥離試験を行ったところ剥離率は70%であった。
(比較例3)
発光層形成までを実施例1と同様に行い、発光体薄膜を窒素雰囲気のグローブボックス内に設置されたホットプレート上で200℃、10minのアニール処理を行った。陰極形成以降も、すべて実施例1と同様に素子を作製した。得られたEL素子に10Vの電圧を印可したところ、100cd/mのパターン化された発光を示した。また、初期輝度100cd/m2にて定電流駆動時の輝度半減時間を測定したところ、輝度半減寿命は2600hrであった。また、同様な剥離試験を行ったところ剥離率は20%であった。
(剥離性評価方法)
任意の有機機能性薄膜表面と、その層以下の界面の中で最も密着性が弱い界面における密着性は、JISK5400−1990にある試験を用いる事が可能である。特に8.5.2に準拠した碁盤目テープ法付着性試験が最も適している。ただし、上記試験の条件では有機機能性素子の薄膜の剥離性の基準に適用することは困難であるために、以下のようにいくつか変更して用いた。
まずアニール処理まで行った基板107の発光体薄膜を1mmの隙間間隔のカッターガイドを用いてカッターナイフで傷を付け、1cm角の中に100個の碁盤目をつくり、その表面に0.17mN/25mmの粘着テープ(寺岡製作所製No.605)を消しゴムで押し付けて貼り付け、剥離した。
JIS K5400−1990 8.5.1に於いては、碁盤目試験の評価点数は傷の状態により0点から10点で評価する。しかしながら、我々は有機機能性薄膜の評価に関しては、その点数法ではなく、碁盤目の総面積に対していくつの碁盤目が剥離したかを面積比で示した剥離率で考察した方がよいと結論付けた。すなわち、
(剥離率)% = (剥離した碁盤目面積)÷(粘着テープを貼り付けた碁盤目面積)×100
として剥離率を算出した。この剥離率が40%以下であるときに、素子特性の向上が確認され、アニール効果が十分に得られたと結論付けられる。
以下、表2に上記各実施例及び比較例の実験結果をまとめた。表から明らかなように、本発明の有機エレクトロルミネセンスの製造方法を用いることにより、より低温でのアニール処理でも密着性の向上及び輝度半減寿命の長寿命化が可能となった。さらには低温でのアニール処理が可能なことから熱による有機EL素子の劣化起こさずに、より高性能な有機エレクトロルミネセンス素子の製造が可能となった。
本発明に係る有機EL素子の一例の断面図である。 本発明に係る有機EL素子の一例の断面図である。 凸版印刷法による有機EL層の形成方法の説明図である。 ガラス転移温度200℃の高分子材料をトルエンにて膨潤した場合の高分子材料のガラス転移点の変化を算出した結果のグラフである。 本発明に係る有機EL素子製造装置の一例の断面図である。
符号の説明
101・・・透光性基板
102・・・透明導電層
103・・・有機EL層
103a・・電子輸送層
103b・・有機発光層
104・・・電極層
105・・・隔壁
301・・・インキ補充装置
302・・・ドクター
303・・・アニロックスロール
304・・・インキ
305・・・版胴
306・・・印刷用凸版
307・・・被印刷基板
308・・・ステージ
501・・・アニールチャンバー
502・・・有機機能層形成基板
503・・・基板設置部
504・・・排気弁
505・・・給気弁
506・・・有機溶媒供給弁
507・・・ドレン抜き
508・・・加熱体

Claims (14)

  1. 一層又は複数の有機機能層からなる有機EL層を有するエレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、
    少なくとも一の有機機能層を、有機機能性材料を含む溶液を基板上に塗布することで形成する工程と、
    前記有機機能層に可溶な溶媒により該有機機能層を膨潤させるとともに加熱するアニール処理工程と
    を有する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  2. 前記加熱する工程における加熱温度が、膨潤した有機機能層におけるガラス転移温度以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  3. 前記一の有機機能層が有機発光層であることを特徴とする請求項1に記載のエレクトロルミネセンス素子。
  4. 一層又は複数の有機機能層からなる有機EL層のうち、少なくとも一層が複数の発光色に対応するようにパターニングされた有機発光層であるエレクトロルミネセンス素子の製造方法であって、
    各有機発光層を、有機発光層材料を含む溶液を塗り分けてパターニングし形成する工程と、
    前記各有機発光層に可溶な溶媒により該各有機機能層を膨潤させるとともに加熱するアニール処理工程と
    を有する有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  5. 前記加熱する工程における加熱温度が、膨潤した各有機発光層におけるガラス転移温度のうち、最も高いガラス転移温度以上であることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  6. 前記加熱する工程における加熱温度が、溶媒を含んでいない各有機発光層におけるガラス転移温度のうち、最も低いガラス転移温度以下であることを特徴とする請求項4に記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  7. 各有機EL層が、画素ごとに隔壁により区切られていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  8. 有機機能層を形成する工程において、該有機機能層が印刷ロールにより塗布形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  9. アニール処理工程において、ガス状又は霧状の溶媒により有機機能層を膨潤させることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の有機エレクトロルミネセンス素子の製造方法。
  10. 請求項1から9のいずれかの製造方法により作製される有機エレクトロルミネセンス素子。
  11. 請求項10に記載の有機エレクトロルミネセンス素子を組み込むことを特徴とする表示装置。
  12. チャンバー内に設置された基板設置部と、
    基板を加熱する手段と、
    前記チャンバー内にガス状又は霧状の溶媒を導入する手段と、
    膨潤の度合いを測定する手段と、
    を有する有機EL素子製造装置。
  13. チャンバー内の雰囲気を不活性ガスで置換する手段を備えることを特徴とする請求項12に記載の有機EL素子製造装置。
  14. チャンバー内の溶媒の排気のための排気弁及び真空ポンプが接続されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の有機EL素子製造装置。
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