JP2009016273A - 電気化学セルシステムおよびその運転方法並びにその電気化学セルシステムを搭載した燃料電池自動車 - Google Patents

電気化学セルシステムおよびその運転方法並びにその電気化学セルシステムを搭載した燃料電池自動車 Download PDF

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Abstract

【課題】触媒金属の活性を回復させる為に,白金を含む電極触媒層の表面にヘテロ環状化合物を接触させ,触媒金属自体の溶解を抑える技術であり,ヘテロ環状化合物を電気化学セル内の電極触媒層に供給することができる電気化学セルシステムを提供する。
【解決手段】電気化学セルのカソードに供給する酸化剤ガスに加湿手段122,130を介してヘテロ環状化合物を含有させて、前記カソード反応ガスと前記電気化学セル内の白金を含む電極触媒層とを接触させる。供給するタイミングとして,起動時,発電停止時,発電電力量の積算値が所定値に達したとき,所定値以上の電流密度で発電しているとき,開回路電圧状態であるとき,運転時間が所定の積算時間に達したとき,がある。
【選択図】図1

Description

本発明は、電気化学セルシステムおよび電気化学セルシステムの運転方法並びにその電気化学セルシステムを搭載した燃料電池自動車に関する。
電気化学セルは、通常、2または3以上の反応体の電気化学反応によって、電気エネルギーを提供することの可能なセルであり、燃料電池、電解セル、酸素発生装置などの装置に用いられる。電気化学セルの劣化を防ぐことは、燃料電池、電解セル、酸素発生装置などの装置を長期間、安定して作動させるために重要である。
固体高分子型燃料電池を例にとれば、燃料電池は、一般的には、複数の電気化学セル(単セル)が積層されてなるものであって、電気化学セルは、膜―電極接合体(以下、「MEA」と称する)をセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、一般的には、ガス拡散層およびカソード触媒層からなるカソード電極と、固体高分子電解質膜と、ガス拡散層およびアノード触媒層からなるアノード電極とが積層した構造を有する。電気化学反応は、触媒、触媒を担持する担体、およびアイオノマー(イオン伝導性高分子)からなる触媒層において進行する。このため、触媒層の劣化を防止することは、燃料電池が長期間、安定して作動する上で重要な課題となっている。
触媒金属は、高電位であっても一定電位で保持されていれば触媒金属の固体高分子電解質膜への溶出はわずかであるが、触媒金属の酸化・還元を伴うような激しい電位の変化時には、触媒金属の溶出は著しくなる。触媒金属の溶出、特に白金の溶出は、金属白金と酸化白金との酸化・還元の繰り返しによって促進されることがわかっている。実際の燃料電池の運転時においては、停止時や開回路電圧(OCV)保持時にカソード電極の電位が上がるために白金が酸化され、発電中は白金が還元状態にあることから、これらの環境の繰り返しが白金の溶出を助長していると考えられている。
このため、白金の溶出を防止する技術として、例えば、下記特許文献1に記載されているように、燃料電池の起動時において特定の電位範囲で起動をさせることによって白金の溶出を抑える電気化学セルを作動するシステムが提案されている。
特開2007−53020号公報
しかしながら、この従来技術は、燃料電池の起動時にセル当たりの出力電圧を強制的に下げることにより、触媒金属の活性を回復させる技術であって、燃料電池の発電中における触媒金属の酸化・還元を伴うような電位の変化時においては、触媒金属自体の溶解を防止することが困難という問題点があった。
上記問題点は、燃料電池以外の、電気化学セルを用いる電解セル、酸素発生装置などの装置でも、同様である。
したがって、本発明は、上記問題点を解決し、白金を含む電極触媒層の表面にヘテロ環状化合物を接触させ、触媒金属自体の溶解を抑えるものであって、そのヘテロ環状化合物を電気化学セルに供給することができる電気化学セルシステムの提供を目的とする。
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
本発明の電気化学セルシステムは、電気化学セルに供給する反応ガスにヘテロ環状化合物を含有させて、前記反応ガスと前記電気化学セル内の白金を含む電極触媒層とを接触させることを特徴とする。
本発明の電気化学セルシステムの運転方法は、ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスと電気化学セル内の白金を含む電極触媒層とを接触させるように、前記反応ガスにヘテロ環状化合物を含有させることを特徴とする。
本発明の燃料電池自動車は、前記電気化学セルシステムを搭載し、または前記電気化学セルシステムの運転方法を適用することを特徴とする。
以上のように構成された本発明に係る電気化学セルシステムによれば、電気化学セルに供給する反応ガスにヘテロ環状化合物を含有させることで、電気化学セル内の白金を含む電極触媒層の表面にヘテロ環状化合物が添加して触媒金属自体の溶解を抑えることができる。
以下、本発明に係る電気化学セルシステムについて、第1実施形態および第2実施形態に分けて、図面を参照しながら詳細に説明する。本発明のそれぞれの実施形態では、電気化学セルシステムを適用した固体高分子形の燃料電池システムを例にとって説明する。また、本発明の燃料電池システムは、反応ガスの一例として、アノードガスとして水素を、カソードガスとして酸化剤ガスを燃料電池に供給し、白金を含む電極触媒層の一例として、カソード触媒層に白金を含むものとする。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態である燃料電池システムの概略構成を示す図である。
本発明の第1実施形態である燃料電池システム1は、電気化学セルに供給する酸化剤ガス(反応ガス)にヘテロ環状化合物を含有させて、前記酸化剤ガスと前記電気化学セル内の白金(Pt)を含むカソード触媒層(電極触媒層)とを接触させるものである。
図1に示されるとおり、第1実施形態の燃料電池システム1は、燃料電池100と、燃料電池100に水素を供給するための水素タンク110と、燃料電池100に酸化剤ガス(酸素)を供給するためのコンプレッサ120と、燃料電池100に向かって供給される酸化剤ガスをヘテロ環状化合物を含有した水で加湿する第1加湿手段130と、システム制御部140と、を含む。燃料電池100と水素タンク110とは、水素供給配管111を介して接続され、燃料電池100とコンプレッサ120とは、第2加湿手段122、第1加湿手段130、および空気供給配管121を介して接続される。
燃料電池100は、アノードガスとカソードガスの供給によって電力を発生するものである。燃料電池100は、固体高分子電解質膜を両側から一対の電極およびセパレータで狭持してなる電気化学セル(単セル)を少なくとも一つ備え、複数の単セルを備えている場合にはそれらの単セルは積層されている。燃料電池100の詳細な構成については後述する。
水素タンク110は、燃料電池100に供給される水素を貯蔵する水素貯蔵手段である。水素タンク110は、水素供給用配管111を通じて、燃料電池100のアノード(燃料極)に水素を供給する。ここで、燃料電池100に供給された水素のうち、消費されずに燃料電池100から排出された水素オフガスは、水素循環器112および水素循環ポンプ(図示せず)により水素循環配管113を通って、新たに供給される水素と混合して、再び燃料電池100のアノードに供給される。また、燃料電池100から排出される出口側に、パージ弁(図示せず)やパージ配管114を設け、必要に応じてパージ弁を開放して水素パージを行うことで、水素循環配管113内から不純物や窒素等を除去できる。
コンプレッサ120は、燃料電池100に酸化剤ガスを供給するものである。コンプレッサ120は、空気供給用配管121を通じて、燃料電池100のカソード(空気極)に酸化剤ガスを供給する。ここで、燃料電池100から排出されたカソードオフガスは、燃料電池100の化学反応により生成された水分を含んでいるため、第2加湿手段122を用いて、燃料電池100に供給する酸化剤ガスを加湿するのに用いられる。また、燃料電池100で消費されなかった酸素及び空気中の他の成分は、燃料電池100から排気管123を介して排出される。なお、第2加湿手段122自体は、電解質膜の水分の不足を補うものであって、膜を通じて1次流体と2次流体との間で水分を移動させる一般的な膜式加湿器であるため、詳細な説明は省略する。
第1加湿手段130は、燃料電池100に供給する酸化剤ガスにヘテロ環状化合物を含有した水を供給するものである。第1加湿手段130は、空気供給用配管121を介して燃料電池100と連結している。第1加湿手段130として一例を挙げれば、空気供給用配管121と連結している加湿室131と、加湿器131内に水を噴射する水噴射手段である水噴射ポンプ132と、水噴射ポンプ132に水配管133を介して設けられる水タンク134と、水噴射ポンプに送る水量を調節するウォータポンプ135とから構成されている。
水タンク134には、ヘテロ環状化合物を含有した水が貯蔵されている。水タンク134に貯蔵されているヘテロ環状化合物を含有した水は、ウォータポンプ135により水配管133を介して水噴射ポンプ132に送られ、水噴射ポンプ132により加湿室131に噴射される。加湿室131に噴射された加湿水は、コンプレッサを介して送られてくる酸化剤ガスの熱により蒸発し、水蒸気として酸化剤ガスとともに燃料電池100に供給される。すなわち、酸化剤ガスとともにヘテロ環状化合物を含んだ水蒸気も燃料電池100に供給され、燃料電池100内の単セルが有する白金を含むカソード触媒層にヘテロ環状化合物を接触させることができる。このヘテロ環状化合物が白金を含むカソード触媒層へ接触させることに関しては、後述で詳細に説明する。また、加湿室131で水蒸気とならなかった水は、弁136を介して水タンク134に送ることもできる。
水タンク134に貯蔵されるヘテロ環状化合物の水における濃度は、0.5μmol/l(μM)〜1mmol/l(mM)であることが望ましい。ヘテロ環状化合物の水における濃度は、1μM〜100μMの範囲であるとより望ましい。なお、水タンク134は、ヘテロ環状化合物を含有する水を補充する機構を別途に設けることもできる。
システム制御部140は、燃料電池システム100の出力状態に応じて、燃料電池100内に供給する酸化剤ガスに、ヘテロ環状化合物を含有させるか否かの切り換えを制御する制御手段である。システム制御部140は、たとえば、燃料電池100の出力電圧を測定する電圧計150により、加湿手段130から燃料電池100に供給される酸化剤ガスの加湿度をウォータポンプ135の作動を制御することにより調整することができる。システム制御部140は、たとえば、中央演算処理装置および演算に必要なデータを記憶する記憶装置であって、インターフェースを介して、電圧計150およびウォータポンプ135に接続される。なお、上記の加湿度は、第2加湿手段122を考慮して決めることが望ましい。第2加湿手段122による加湿度の調整は、従来の加湿手段を用いた調整と同様であるので、詳しい説明は省略する。
次に、図2を参照しつつ、本実施の形態における燃料電池100の構成を説明する。
図2は、図1に示される燃料電池100の全体構成を示す斜視図であり、図3は、燃料電池100のセル構造を示す要部拡大断面図である。
図2に示すように、燃料電池(燃料電池スタック)100は、水素と酸化剤ガスとの反応により起電力を生じる単位電池としての電気化学セル、すなわち単セル2を所定数だけ積層した積層体3、積層体3の両端に集電板4、絶縁板5、およびエンドプレート6を配置し、積層体3の内部にナット(図示は省略する)を螺合させることで構成されている。
この燃料電池100においては、水素タンク110から供給される水素(アノードガス)、コンプレッサ120から供給されるヘテロ環状化合物を含有した酸化剤ガス(カソードガス)、および冷却水ポンプ130から供給される冷却水をそれぞれ各単セル2のセパレータ(図示は省略する)に形成された流路溝に流通させるためのアノードガス導入口8、アノードガス排出口9、カソードガス導入口10、カソードガス排出口11、冷却水導入口12、および冷却水排出口13を、一方のエンドプレート6に形成している。
水素は、アノードガス導入口8により導入されてセパレータに形成されたアノードガス供給用の流路溝を流れ、アノードガス排出口9より排出される。ヘテロ環状化合物を含有した酸化剤ガスは、カソードガス導入口10より導入されてセパレータに形成されたカソードガス供給用の流路溝を流れ、カソードガス排出口11より排出される。冷却水は、冷却水導入口12より導入されてセパレータに形成された冷却水供給用の流路溝を流れ、冷却水排出口13より排出される。
図2に示される単セル2は、図3に示すように、MEA14と、このMEA14の両面にそれぞれ配置されるセパレータ15とから構成される。以下、MEA14のアノード側に配置されるセパレータ15をアノードセパレータ15Aと称し、カソード側に配置されるセパレータ15をカソードセパレータ15Bと称する。
MEA14は、たとえば、水素イオンを通す高分子電解質膜である固体高分子電解質膜141と、アノード触媒層142Aおよびガス拡散層143Aからなるアノードとしてのアノード電極144Aと、カソード触媒層142Bおよびガス拡散層143Bからなるカソードとしてのカソード電極144Bとからなる。MEA14は、アノード電極144Aおよびカソード電極144Bによって、固体高分子電解質膜141をその両側から挟みこんだ積層構造とされている。
セパレータ15は、板厚の薄い金属板を金型で所定形状に成形することにより形成される。セパレータ15は、図に示すように、発電に寄与するアクティブ領域(MEA14と接する中央部分の領域)に、凸条部16と凹条部17とを交互に形成した凹凸形状(いわゆる、コルゲート形状)を有している。
MEA14のアノード電極144A側に接して配置されるアノードセパレータ15Aの凸部16Aと凹部17Aは、MEA14との間に水素(アノードガス)を流通させる流路溝となりアノードガス流路18を形成する。
MEA14のカソード電極144B側に接して配置されるカソードセパレータ15Bの凸部16Bと凹部17Bは、MEA14との間に酸化剤ガス(カソードガス)を流通させる流路溝となりカソードガス流路19を形成する。カソード電極144Bは、触媒金属としてPtを含む。したがって、ヘテロ環状化合物を含有した酸化剤ガスとPtを含むカソード電極とが接触する。
MEA14は、カソードセパレータ15Bから供給されるヘテロ環状化合物の電解質膜141への拡散を防止する拡散防止層(トラップ層)145を含む。すなわち、塩基性を示すヘテロ環状化合物が、カソード触媒層に含まれるアイオノマや電解質膜のようなプロトン導電性材料に多量に接触するとプロトン導電性を低下させてしまうおそれがある。したがって、MEA14に、ヘテロ環状化合物を吸着保持してプロトン導電材のプロトン導電性を低下させることなく、さらにヘテロ環状化合物が不足したときにはバッファ層としての機能を発現するトラップ層145を配置する。トラップ層145は、図3に示すように、電解質膜141とカソード触媒層142Bとの間であって、電解質膜141のカソード触媒層142B側の一の面に形成されている。トラップ層145は、電解質膜141の厚さ方向に対して、電解質膜141の中心よりもカソード触媒層側に形成することで、カソード触媒層142Bから流出したヘテロ環状化合物を早期にトラップでき、電解質膜141がヘテロ環状化合物より被毒する部分がより少なくなる。トラップ層145は、たとえば、活性炭を材料として構成される。活性炭は、その内部に無数の微細孔をもつ多孔性の炭素物質で、あたかも分子マグネットのようなもので内部表面積が極めて大きく有機物質の吸着力に優れているので、トラップ層145に活性炭を用いると、ヘテロ環状化合物を効率的にトラップすることができる。トラップ層145の厚さは、たとえば、電解質膜の厚さの1/3〜1/50である。トラップ層が薄すぎると電解質膜に含有されるトラップ層材料(活性炭)が少なくなるためへテロ環状化合物トラップ容量が不十分になり効果を長期に得ることが出来なくなる。一方、トラップ層が厚すぎると十分なトラップ容量は得られるものの、トラップ層材料はプロトン導電性を有しないため電解質膜の本来の機能であるプロトン導電性が有意に低下し、発電性能を低下させてしまう。なお、トラップ層145を、カソード触媒層142Bの電解質膜141側の一の面に形成されることもできる。
以上のように構成される本実施形態の燃料電池システムは、以下のように処理を行う。
図4は、本実施形態の電気化学セルシステムの処理内容の一例を示すフローチャートである。なお、以下に示す処理では、初期段階として、燃料電池100に酸化剤ガスにヘテロ環状化合物を含有する水で加湿していないものとする。
図4に示すとおり、本実施の形態における燃料電池の制御方法では、まず、燃料電池100の出力状態が、現在、発電中であるか否かを判断する(ステップS100)。燃料電池100の出力状態が発電中か否かは、たとえば、現在の燃料電池100の出力電圧を電圧計150により取得し、その電圧値で判断する。なお、燃料電池の出力状態は、燃料電池100が車両の駆動源として用いられる場合、図示はしていないが、燃料電池100に関する信号ではなく、たとえば、車両の速度を指令する速度指令信号など外部の信号であってもよい。
そして、燃料電池100の出力状態が発電中でない場合(ステップS100:No)、次の処理(ステップS110)に進まず、待ち状態となる。燃料電池100の出力状態が発電中である場合(ステップS100:Yes)、システム制御部140により、ウォータポンプ135を起動させ、水噴射ポンプ132が加湿室131に水を噴射し、燃料電池100に供給される酸化剤ガスを、ヘテロ環状化合物を含有する水で加湿させる(ステップS110)。ヘテロ環状化合物の水における濃度は、0.5μmol/l(μM)〜1mmol/l(mM)であることが望ましい。ヘテロ環状化合物の冷却水における濃度が、1μM以下であるとPt溶出抑制効果が得られず、1mM以上ではPtへのヘテロ環状化合物の被覆率が高くなりすぎて活性が低下してしまう。ヘテロ環状化合物の冷却水における濃度は、1μM〜100μMの範囲であるとより望ましい。
次いで、加湿された酸化剤ガスを燃料電池100に供給する(ステップS120)。
以上の処理により、ヘテロ環状化合物を含有する水により酸化剤ガスを加湿して、加湿された酸化剤ガスを燃料電池100に供給すると、ヘテロ環状化合物が白金を含むカソード触媒層に接触する。
ここで、ヘテロ環状化合物がPtを含むカソード触媒層142Bに接触することに関して説明すれば、カソード触媒層142Bに存在するPtへのヘテロ環状化合物の供給機構は必ずしも明らかではないが、電気化学反応により液水がカソードガス流路19内で生成したときに、その液水に、酸化剤ガスとともに供給されるヘテロ環状化合物が溶解してカソード触媒層142Bにまで達することが考えられる。なお、図2に示すように、カソードガス流路19とカソード触媒層142Bとの間にカソード拡散層143Bを介するが、カソード拡散層143Bは多孔質で構成されるのが通常であり、ヘテロ環状化合物はカソード拡散層143Bを通過するものと考えられる。
そして、ヘテロ環状化合物がPtを含むカソード触媒層142Bに達すれば、以下に説明するように、Ptの溶出を抑えることができる。
現時点では、Ptの溶解・溶出を防止する詳しいメカニズムは判明していないが、以下のように推察できる。
すなわち、電気化学セルの電極反応に対して触媒効果を示さない金属配位能を有する窒素、硫黄、または酸素原子を含むヘテロ環状化合物が、電極触媒層中のPt表面上にヘテロ原子を介して共存することで、Ptの酸化を抑制して、Ptの溶出・溶解を抑制できると考えられる。また、電極反応に対して触媒効果を示さない金属配位能を有するヘテロ原子からなるヘテロ環状化合物は、Ptの特に表面エネルギーの高い部位へ優先的に配位するものと考えられる。図5は、ヘテロ環状化合物の一例としてビピリジンがPtを含む電極触媒層に添加される様子を示す概略図である。
したがって、Ptの溶解・溶出は、この表面エネルギーの高い部位で生じやすいと考えられており、ヘテロ環状化合物が表面エネルギーの高い部位へ選択的に吸着することで白金の酸化体形成を抑制し、結果としてPtの溶解・溶出が抑制されると推察できる。例えば、図5に示すように、Pt触媒は、主に、テラス、ステップ、キンクの部位に分けることができるが、Ptの表面エネルギーの高い部位であるステップおよびキンクにヘテロ環状化合物が吸着して、ステップおよびキンク領域の酸化を防止することで、Pt全体の急激な酸化を抑制でき、その結果、Pt触媒の溶出を防止することができ、Pt溶出耐性が向上すると考えられる。また、Pt触媒のステップおよびキンク領域は、テラス領域に比べ、活性が低いので、ヘテロ環状化合物をPt触媒に吸着させても、Pt触媒としての活性は保ちつつ、溶出を抑えることができると考えられる。
上述したヘテロ環状化合物としては、ピリジン類が効果を発揮するが、特にビピリジン類、ターピリジン類、フェナントロリン類が効果的である。これは、多環芳香族化合物が形成するブリッジ構造が白金の触媒機能サイトを確保することとなることと、上述の白金の溶解メカニズムを抑制することができるためと推測できる。
ここで、本実施形態に適用可能な、金属配位能を有する窒素原子からなるヘテロ6員環構造を含む芳香族化合物は、ピリジン類、ビピリジン類、ターピリジン類、フェナントロリン類からなる群から選択された少なくとも一つのピリジン誘導体を有する。具体例としては、2,6−ジ(2−ピジジル)ピリジン、1,10−フェナントロリン、4,7−ビフェニル−1,10−フェナントロリン、1,7−フェナントロリン、バソクプロイン、バソクプロインスルホン酸がある。
次に、ヘテロ環状化合物Pt溶出効果についてビピリジンを例にとって説明する。図6は、ビピリジンによるPt溶出耐性を検査し、その結果を示した図である。ここで、ビピリジンによるPt溶出耐性を検査する試験の方法は、白金の電極を電解液に沈めて、そこにビピリジンをある濃度で加えて、Ptの様子を検査する方法である。図6(a)は、ビピリジン濃度によるPt溶出量変化を示し、図6(b)は、Pt触媒上のビピリジン吸着量を示す図である。比較例としてビピリジンを含まないPt溶出量を100%とした場合、それぞれのビピリジン濃度/μM(実施例1、実施例2、実施例3)におけるPt溶出量変化は、図6(a)に示すようになった。図6(a)に示すように、ビピリジンを添加剤としてPt触媒に加えると、Pt溶出耐性が約5倍向上し、Pt溶出量を大幅に抑えることができることがわかる。また、それぞれのビピリジン濃度/μM(実施例1、実施例2、実施例3)によるPt触媒の被覆率(%)は、図6(b)に示すようになった。このとき、図6(b)に示す被覆率(%)であっても、ビピリジンの添加による電極触媒層の活性化の低下はあまり見られなかった。このことから、Pt触媒にビピリジンを加えても、Pt触媒における活性を保ちつつ、溶出を抑えることができる、という効果がわかる。
以上のように、第1実施形態の燃料電池システム1によれば、下記の効果を有する。
ヘテロ環状化合物を含有した水で酸化剤ガスを加湿させて、加湿した酸化剤ガスを電気化学セルに供給させることで、白金を含むカソード触媒層の表面にヘテロ環状化合物を添加させることができ、従来の電気化学セルの形態を変えることなく、簡便な手法、かつ、安価な対応策でPtの溶出・溶解を大幅に抑制することができる。
また、Ptの溶出が起こりやすいサイト(ステップ・キンク)にヘテロ環状化合物が優先的に配位吸着するため、電気化学セルの発電環境は安定しつつ、Pt溶出を抑制でき、耐久性を向上させることができる。
さらに、電気化学セルは、ヘテロ環状化合物の電解質膜への拡散を防止するトラップ層を含むことで、ヘテロ環状化合物によりプロトン導電特性の劣化を防止することができる。また、トラップ層を電解質膜に備えることで、膜の直近で阻害物質であるヘテロ環状化合物を漏れなく効果的にトラップできる。
<変形例1>
ここで、第1の実施形態の燃料電池システムの運転方法の変形例として、ヘテロ環状化合物を含有した水で加湿するか否かを切り換え、そのヘテロ環状化合物を含有した水で加湿するタイミングを設定することもできる。図7に、第1の実施形態の燃料電池システムの運転方法の変形例1のフローチャートを示す。
まず、前記第1実施形態と同様に、燃料電池100の出力状態が、起動したときであるか否かを判断する(ステップS200)。燃料電池100の出力状態が起動したときであるか否かは、たとえば、現在の燃料電池100の出力電圧を電圧計150により取得し、その出力電圧の値が予め設定された停止時の電圧値から増大したか否かで判断する。
燃料電池100の出力状態が起動していない場合(ステップS200:No)、次の処理(ステップS210)に進まず、待ち状態となる。そして、燃料電池100の出力状態が起動したとき(ステップS200:Yes)、システム制御部140により、ウォータポンプ135を起動させ、水噴射ポンプ132が加湿室131に水を噴射し、燃料電池100に向かう酸化剤ガスを、ヘテロ環状化合物を含有する水で加湿させる(ステップS210)。
次いで、ヘテロ環状化合物を含有する水で酸化剤ガスを加湿させ、加湿した酸化剤ガスを燃料電池100に供給させることで、燃料電池100内のPtを含むカソード触媒層にヘテロ環状化合物を接触させることができる(ステップS220)。
次いで、加湿した酸化剤ガスが燃料電池100に所定量供給したか否かを判断する(ステップS230)。加湿した酸化剤ガスが燃料電池100に所定量供給したか否かは、たとえば、酸化剤ガスの通路となる空気供給配管121上であって、燃料電池100のカソードガス導入口10の直前にガス流量計を設け、ガス流量計の値をシステム制御部140が取り込むことにより、判断することができる。そして、加湿した酸化剤ガスが燃料電池100に所定量供給していない場合(ステップS230:No)、所定量供給するまで、この処理を保持し、燃料電池100内にヘテロ環状化合物を含有する水で加湿した酸化剤ガスを供給し続ける。ここで、加湿した酸化剤ガスの燃料電池への供給の所定量とは、たとえば、カソード触媒層がヘテロ環状化合物で一定の被覆率を達成する量であり、電気化学セルの種類、容量によって、適宜調整する。
そして、加湿した酸化剤ガスが燃料電池100に所定量供給させた場合(ステップS230:Yes)、システム制御部140により、燃料電池100に供給する酸化剤ガスを、ヘテロ環状化合物を含有する水で加湿するのをストップさせる(ステップS240)。したがって、酸化剤ガスを、ヘテロ環状化合物を含有する水で加湿するのをストップさせるために、システム制御部140は、ウォータポンブ135の作動を止める。すなわち、ウォータポンブ135は、酸化剤ガスにヘテロ環状化合物を含有させるか否かを切り換える切換手段としての役割を担う。なお、酸化剤ガスは、ウォータポンブ135を停止して第1加湿手段130によっては加湿されなくても、カソードオフガスに含まれる水分を利用する第2加湿手段122により加湿される。
次いで、燃料電池100にヘテロ環状化合物を含有した水で加湿していない酸化剤ガスのみを供給させる(ステップS250)。
第1実施形態の変形例1は以上のような処理を行う。
上記処理において、ステップS210の処理は、ヘテロ環状化合物を含有する酸化剤ガスと燃料電池内の白金を含むカソード触媒層とを接触させるように、酸化剤ガスにヘテロ環状化合物を含有させる処理に対応する。
また、ステップS230〜S240の処理は、酸化剤ガスにヘテロ環状化合物を含有させるか否かを切り換えて、酸化剤ガスを燃料電池に供給させる処理に対応する。
燃料電池100の出力状態が起動するときは、カソード電位が高くなる場合があり、また、Pt表面に吸着したヘテロ環状化合物が酸化あるいは分解して脱離する可能性があるので、第1実施形態の変形例1のように、燃料電池100の起動したときに、ヘテロ環状化合物を含有した水で酸化剤ガスを加湿し、加湿した酸化剤ガスを燃料電池100に供給することが有効である。
<変形例2>
また、第1の実施形態の変形例2として、燃料電池100の出力状態が、起動したときであるか否かを判断する処理(ステップS200)の代わりに、図8のフローチャートに示すように、燃料電池100の出力状態が発電を停止しているか否かを判断する処理(テップS201)を用いることもできる。変形例2の他の処理は、変形例1と同様であるので、説明は省略する。
第1の実施形態の変形例2によれば、燃料電池、すなわち、電気化学セルの発電を停止しているときはセル温度が低下するため、ヘテロ環状化合物がPt触媒に吸着しやすくなり、ヘテロ環状化合物の供給量を抑えることができる。
<変形例3>
さらに、第1の実施形態の変形例3として、燃料電池100の出力状態が、起動しているときか否かを判断する処理(ステップS200)の代わりに、図9のフローチャートに示すように、燃料電池100による発電電力量の積算値が所定値に達したか否かを判断する処理(ステップS202)を用いることもできる。変形例3の他の処理は、変形例1と同様であるので、説明は省略する。
燃料電池、すなわち、電気化学セルを使用しつづけても、ヘテロ環状化合物のPt溶出抑制効果を維持するために、一定期にヘテロ環状化合物を含有した水で加湿した酸化剤ガスを供給することが望ましい。したがって、上記の変形例3は、その一定期を、燃料電池による発電電力量の積算値が所定値に達したときとし、ヘテロ環状化合物を含有した水で加湿した酸化剤ガスを燃料電池100に所定量供給させる。ここで、燃料電池の発電電力量は、燃料電池の発電電力モニタから積算値をモニタしておくことで計測し、一定の積算値ごとに、ヘテロ環状化合物を含有する水で加湿した酸化剤ガスを燃料電池に供給する。前記所定値は、たとえば、Pt溶出が増大しはじめる量であり、電気化学セルによって、適宜調整される。
なお、上記の一定期を、発電電力量の積算値の代わりに、運転の積算時間に合わせて、定期的にヘテロ環状化合物を含有する水で加湿した酸化剤ガスを燃料電池100に供給させることもできる。したがって、Ptに吸着したヘテロ環状化合物の単純な経時劣化を抑制することができる。
<変形例4>
さらに、第2の実施形態の変形例4として、燃料電池100の出力状態が、起動しているときか否かを判断する処理(ステップS200)の代わりに、図10のフローチャートに示すように、燃料電池100が所定値以上の電流密度で発電しているか否かを判断する処理(ステップS203)を用いることもできる。ここで、燃料電池の所定値以上の電流密度で発電しているか否かは、たとえば、電気化学セルの電極の単位面積当たりの電流値で判断する。変形例4の他の処理は、変形例1と同様であるので、説明は省略する。
燃料電池の高電流密度運転時は生成水の発生と発熱により、ヘテロ環状化合物の脱離が起こることが考えられるため、一定の電流密度に到達したときにヘテロ環状化合物を含有する水で加湿した酸化剤ガスを燃料電池100に供給することが有効である。
<変形例5>
さらに、第2の実施形態の変形例として、燃料電池100の出力状態が起動しているときか否かを判断する処理(ステップS200)の代わりに、図11のフローチャートに示すように、燃料電池が開回路電圧(OCV)状態であるか否かを判断する処理(ステップS204)を用いることもできる。開回路電圧状態とは、燃料電池に負荷をかけていない状態(電流を流していない状態)の燃料電池の電圧である。変形例5の他の処理は、変形例1と同様であるので、説明は省略する。
燃料電池、すなわち、電気化学セルがOCV状態のとき、カソード電位が高くなり、ヘテロ環状化合物の酸化脱離や分解が起こる可能性があるため、このOCV状態のときに、ヘテロ環状化合物を含有した水で加湿した酸化剤ガスを燃料電池100に供給することは有効である。
以上のように、第1実施形態の変形例1〜5に共通する効果として、所定量供給した後は、通常のヘテロ環状化合物を含有しない酸化剤ガスに切り換えて燃料電池100に供給することで、Pt溶出が起こりやすいとき、あるいはヘテロ環状化合物が脱離あるいは酸化されやすい条件のときにヘテロ環状化合物を集中して供給することができ、ヘテロ環状化合物の使用量を最小限に留めることができる。また、ヘテロ環状化合物を含有する水の供給を必要最小限に留めることで、電解質膜のプロトン導電特性の劣化を抑えることができる。
なお、第1の実施形態は、第1加湿手段130とともに従来の第2加湿手段122を併用して用いたが、発電中は常に第1加湿手段130により酸化剤ガスを加湿する場合は、第2加湿手段122を省略することも可能である。また、第1加湿手段130により酸化剤ガスを加湿する場合は、第2加湿手段122により酸化剤ガスを加湿しないようにすることもできる。
また、第1の実施形態は、第1加湿手段130として、水噴射ポンプ132により加湿室131内に水を噴射し、酸化剤ガスを加湿する手段を一例として挙げたが、これに限られず、たとえば、第2加湿手段122のように酸化剤ガスをヘテロ環状化合物を含有する水で加湿できる手段とすることもできる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態の電気化学セルシステムについて詳細に説明する。
第2実施形態の燃料電池システムは、第1実施形態とは異なり、ヘテロ環状化合物を加熱気化して、加熱気化されたヘテロ環状化合物と酸化剤ガスとを混合させた混合ガスを、電気化学セルに供給させるものである。
第2実施形態の燃料電池システム1´は、図12に示すように、第1実施形態の構成に含まれる加湿手段130に代えて、ヘテロ環状化合物を加熱気化する加熱気化手段160を有する。なお、第1実施形態と同様の構成については、上記第1実施形態の説明を参照するものとし、以下では説明を省略する。
加熱気化手段160は、固体状または液体状のヘテロ環状化合物を加熱気化するものである。加熱気化手段160は、固体状または液体状のヘテロ環状化合物を貯蔵する貯蔵手段161を有し、貯蔵手段161を燃料電池100の発熱により加熱して、前記へテロ環状化合物を加熱気化するものである。加熱気化手段160は、酸素供給配管121と三角弁162,163によって連結されている。三角弁162,163は、燃料電池100に向かって供給される酸化剤ガスを、貯蔵手段161を介して、加熱気化されたヘテロ環状化合物と混同して混同ガスとして燃料電池に供給するか、または、貯蔵手段161を介さず、加熱気化されたヘテロ環状化合物を含有しない酸化剤ガスを供給するかを切り換える切換手段となる。なお、第2の実施形態では、貯蔵手段161を加熱する手段として、燃料電池100の発熱を用いるが、燃料電池100の発熱を用いる代わりに、別途ヒーターなどの加熱器を用いることもできる。
システム制御部140は、たとえば、燃料電池100の出力電圧を測定する電圧計150により、燃料電池に供給される酸化剤ガスが、加熱気化手段160を介して、加熱気化されたヘテロ環状化合物と混合して混合ガスとして供給するか否かを三角弁161、162の作動により制御する。
以上のように構成される本実施形態の燃料電池システムの処理は、第1の実施形態およびその変形例1〜5と同様であり、上記説明を参酌するものとし、詳細な説明は省略する。
簡単に説明すれば、第2の実施形態は、第1の実施形態におけるヘテロ環状化合物を含有した水で加湿した酸化剤ガスを燃料電池100に供給する処理の代わりに、酸化剤ガスを加熱気化したヘテロ環状化合物と混合させて燃料電池100に供給する処理を用いる。また、第2の実施形態は、第1の実施形態の変形例における酸化剤ガスへのヘテロ環状化合物を含有した水の加湿をストップさせる処理の代わりに、三角弁161、162により、加熱気化されたヘテロ環状化合物を混合させない処理を用いることができる。
以上のように、第2の実施形態の燃料電池システム1´によれば、第1の実施形態の燃料電池システム1の効果に加え、固体状または液体状のヘテロ環状化合物を加熱気化することで、ヘテロ環状化合物の水への溶解度に関係なく、加熱温度と使用するヘテロ環状化合物種や酸化剤が酢との比率によって供給濃度を大きく変化させることができる。
ここで、図13に示すように、触媒金属の酸化・還元を伴うような激しい電位の変化をともなう燃料電池自動車200に、上述した第1の実施形態または第2の実施形態の燃料電池システム1(1´)を搭載すれば、Pt触媒自体の溶出を抑えることができることにより、燃料電池のメンテナンスを減らすことができ、特に有効である。
以上のように本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、以上の実施形態に限定されるべきものではなく、特許請求の範囲に表現された思想および範囲を逸脱することなく、種々の変形、追加、および省略が当業者によって可能である。
たとえば、本発明は、燃料電池を例にとり説明したが、これに限られず、電気化学セルを用いた電解セル、酸素発生装置などの装置に本発明の電気化学セルシステムを用いることができるのはもちろんである。
さらに、本発明は、Ptを含む電極触媒層としてカソード触媒層を例にとって説明したが、カソード触媒層に限られず、Ptを含む電極触媒層、たとえばアノード触媒層であっても本発明の電気化学セルシステムを適用可能である。
さらに、本発明は、トラップ層の材料として活性炭の代わりに、ゼオライトを用いることもできる。ゼオライトは、強酸性環境かつ電位の変動が大きい環境でも比較的安定であり、電解質膜のプロトン導電性を補助することができる。また、トラップ層の材料として活性炭の代わりに、電解質膜よりイオン交換容量の大きい電解質を配置することもできる。すなわち、電解質膜のうち、カソード触媒層側の電解質のイオン交換容量を大きくすることで、ヘテロ環状化合物を取り込んでも、電解質膜のプロトン導電性を補助することができる。
さらに、本発明は、トラップ層を、電解質膜のカソード触媒層側の側部、またはカソード触媒層の電解質膜側の側部に設ける代わりに、電解質膜およびカソード接触層の両方に設けてもよい。トラップ層を、電解質膜およびカソード接触層を両方に設けることで、同じ材質同士が対面することで、電解質膜とカソード触媒層とが積層しやすくなる。
本発明の第1実施形態の電気化学セルシステムを示す図である。 固体高分子形燃料電池の全体構成を示す斜視図である。 固体高分子形燃料電池のセル構造を示す要部拡大断面図である。 第1実施形態の燃料電池システムの処理内容を示すフローチャートである。 ビピリジンがPtを含む電極触媒層に添加される様子を示す概略図である。 ビピリジンによるPt溶出耐性を検査した結果を示す図である。 第1の実施形態の燃料電池システムの運転方法の変形例1のフローチャートを示す図である。 第1の実施形態の燃料電池システムの処理内容を示すフローチャートである。 第1の実施形態の燃料電池システムの処理内容を示すフローチャートである。 第1の実施形態の燃料電池システムの処理内容を示すフローチャートである。 第1の実施形態の燃料電池システムの処理内容を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態の電気化学セルシステムを示す図である。 燃料電池システムを搭載した燃料電池自動車の概略図を示す図である。
符号の説明
100 燃料電池、
110 水素タンク、
111 水素供給配管、
112 水素循環器、
113 水素循環配管、
120 コンプレッサ、
121 空気供給配管、
122 第2加湿手段、
123 排気管、
130 第1加湿手段、
131 加湿室、
132 水噴射ポンプ、
133 水配管、
134 水タンク、
135 ウォータポンプ、
136 弁、
140 システム制御部、
150 電圧計。

Claims (24)

  1. 電気化学セルに供給する反応ガスにヘテロ環状化合物を含有させて、前記反応ガスと前記電気化学セル内の白金を含む電極触媒層とを接触させることを特徴とする電気化学セルシステム。
  2. 前記反応ガスは、前記電気化学セルのカソードに供給する酸化剤ガスであることを特徴とする請求項1に記載の電気化学セルシステム。
  3. 前記酸化剤ガスを、ヘテロ環状化合物を含有する水で加湿する加湿手段を有することを特徴とする請求項2に記載の電気化学セルシステム。
  4. 固体状または液体状のヘテロ環状化合物を加熱気化する加熱気化手段を有し、
    前記酸化剤ガスと前記加熱気化したヘテロ環状化合物とを混合させた混合ガスを、前記電気化学セルに供給することを特徴とする請求項2に記載の電気化学セルシステム。
  5. 前記加熱気化手段は、
    前記固体状または液体状のヘテロ環状化合物を貯蔵する貯蔵手段を有し、
    前記貯蔵手段を前記電気化学セルの発熱により加熱して、前記へテロ環状化合物を加熱気化することを特徴とする請求項4に記載の電気化学セルシステム。
  6. 前記ヘテロ環状化合物は、ヘテロ原子として窒素を含む6員環構造を有することを特徴とする請求項2に記載の電気化学セルシステム。
  7. 前記へテロ環状化合物は、ビピリジン類、ターピリジン類、およびフェナントロリン類からなる群から選択された少なくとも一つのピリジン誘導体を有することを特徴とする請求項6に記載の電気化学セルシステム。
  8. 前記電気化学セルは、電解質膜、前記電極触媒層、およびセパレータを順次に積層する構造を有し、前記電解質膜と前記電気触媒層との間に前記へテロ環状化合物の電解質膜への拡散を防止する拡散防止層を含むことを特徴とする請求項2に記載の電気化学セルシステム。
  9. 前記拡散防止層は、前記電解質膜の前記電極触媒層側に形成されることを特徴とする請求項8に記載の電気化学セルシステム。
  10. 前記拡散防止層は、前記電極触媒層の前記電解質膜側に形成されることを特徴とする請求項8に記載の電気化学セルシステム。
  11. 前記拡散防止層は、活性炭からなることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電気化学セルシステム。
  12. 前記拡散防止層は、ゼオライトからなることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電気化学セルシステム。
  13. 前記拡散防止層は、前記電解質膜よりイオン交換容量の大きい電解質からなることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の電気化学セルシステム。
  14. さらに、前記酸化剤ガスにヘテロ環状化合物を含有させるか否かを切り換える切換手段を有することを特徴とする請求項2に記載の電気化学セルシステム。
  15. ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスと電気化学セル内の白金を含む電極触媒層とを接触させるように、前記反応ガスにヘテロ環状化合物を含有させることを特徴とする電気化学セルシステムの運転方法。
  16. 前記電気化学セルの発電中は前記ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスを前記電気化学セルに供給させることを特徴とする請求項15に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  17. さらに、前記反応ガスにヘテロ環状化合物を含有させるか否かを切り換えて、前記反応ガスを前記電気化学セルに供給させることを特徴とする請求項15に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  18. 前記電気化学セルシステムを起動したときに、前記ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスを前記電気化学セルに所定量供給させることを特徴とする請求項17に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  19. 前記電気化学セルシステムの発電を停止してから、前記ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスを前記電気化学セルに供給させることを特徴とする請求項17に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  20. 前記電気化学セルシステムによる発電電力量の積算値が所定値に達したときに前記ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスを前記電気化学セルに所定量供給させることを特徴とする請求項17に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  21. 前記電気化学セルシステムが所定値以上の電流密度で発電しているときに前記ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスを前記電気化学セルに供給させることを特徴とする請求項17に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  22. 前記電気化学セルシステムが開回路電圧状態であるときに前記ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスを前記電気化学セルに供給させることを特徴とする請求項17に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  23. 前記電気化学セルシステムの運転時間が所定の積算時間に達したときに前記ヘテロ環状化合物を含有する反応ガスを前記電気化学セルに供給させることを特徴とする請求項17に記載の電気化学セルシステムの運転方法。
  24. 請求項1〜14のいずれか一つに記載の電気化学セルシステム、または請求項15〜23のいずれか一つに記載の電気化学セルシステムの運転方法を適用した燃料電池自動車。
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