JP2009013037A - セメント組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明はハンドリング性を改良した、低アルカリ性セメント、さらに望ましくはアンモニアの発生しないセメント、を得ることを目的とする。
【解決手段】マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物。さらには、マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物。マグネシアおよび炭酸カルシウムとしてはドロマイトの仮焼物が好適である。本発明のセメント組成物は地盤改良材、重金属を含む産業廃棄物の固定化材、放射性廃棄物用地層固定化材、発泡注入材等として有用である。
【選択図】図3

Description

本発明は、セメント組成物およびその製造方法、ならびにその用途に関する。
軟弱地盤の固化処理や注入工法、放射性廃棄物の埋設処分施設の建設、重金属の処理等においては、セメント系固化材や注入材等の高アルカリ性(たとえば、ポルトランドセメントは通常pH12以上である)が地下水や周辺環境、あるいは人工バリアとして利用するベントナイト、へ悪影響を及ぼすことが懸念されている。そこで、環境に低負荷な低アルカリ性固化材等が注目されている。
一方、急硬セメントとしてマグネシアとリン酸二水素アンモニウムを用いた酸塩基反応によるセメントが多くの研究者により検討され、低温用や補修用セメントとして製品化もされている。さらに、フライアッシュとの混合による利用等、副産物との併用も検討されている。しかしながら、これらにおいては、刺激性のアンモニア等が発生する等、実用上の難点も指摘され、可使時間の調製等のハンドリング性に難がある(たとえば、特許文献1および2)。
特開平4−119951号公報 特開平7−206488号公報
本発明は従来のマグネシアとリン酸二水素アンモニウム等のリン酸二水素塩を用いたセメントに、炭酸カルシウムを併用することにより、またはリン酸二水素塩に対するマグネシアの質量比を特定の範囲とすることにより、ハンドリング性を改良した、低アルカリ性セメント、さらに望ましくはアンモニアの発生しないセメント、を得ることを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明は以下の発明を提供する。
(1)マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物;
(2)リン酸二水素塩に対するマグネシアおよび炭酸カルシウムの質量比が4/6〜6/4である上記(1)に記載のセメント組成物;
(3)マグネシアおよび炭酸カルシウムがドロマイトの仮焼により得られる上記(1)もしくは(2)に記載のセメント組成物;
(4)硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセメント組成物;
(5)マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物;
(6)リン酸二水素塩に対するマグネシアの質量比が2.0/8.0〜2.6/7.4である上記(5)に記載のセメント組成物;
(7)硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜8である上記(5)もしくは(6)に記載のセメント組成物;
(8)マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分として配合することを特徴とするセメント組成物の製造方法;
(9)リン酸二水素塩に対するマグネシアおよび炭酸カルシウムの質量比が4/6〜6/4である上記(8)に記載のセメント組成物の製造方法;
(10)マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分として、リン酸二水素塩に対するマグネシアの質量比が2.0/8.0〜2.6/7.4であるように配合して、硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHを7〜11とすることを特徴とするセメント組成物の製造方法;
(11)マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物を含む地盤改良材;
(12)マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物を含む地盤改良材;
(13)マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物を含む放射性廃棄物用地層固定化材;
(14)マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物を含む放射性廃棄物用地層固定化材;ならびに
(15)マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物を含む発泡注入材、
である。
本発明によれば、従来のマグネシアとリン酸二水素アンモニウム等のリン酸二水素塩を用いたセメントに、炭酸カルシウムを併用することにより、またはリン酸二水素塩に対するマグネシアの質量比を特定の範囲とすることにより、ハンドリング性を改良した、低アルカリ性セメント、さらに望ましくはアンモニアの発生しないセメント、を得ることができる。さらに、炭酸カルシウムを併用する場合には、天然資源であるドロマイトを有効利用することができ、また炭酸ガス発生を利用してウレタン注入材に替わる発泡注入材としても有用である。
本発明のセメント組成物の第1の態様は炭酸カルシウムを用いる場合であり、マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とする。炭酸カルシウムに対するマグネシアの質量比は9:1〜1:9程度から選択される。マグネシアもしくは炭酸カルシウムはそれぞれいかなる原料であっても特に制限されないが、ドロマイトの有効利用の観点からは、ドロマイト[CaMg(CO]の仮焼により得られるものが用いられる(炭酸カルシウムに対するマグネシアの質量比は17.7:72.3)。マグネシアもしくは炭酸カルシウムを適宜配合することにより上記の質量比を任意に調整しうる。ドロマイトはカルサイト(炭酸カルシウム)(CaCO)とマグネサイト(MgCO)の複塩であり、約700〜800℃でCaMg(CO→CaCO+MgO+COの分解を生じる。
また、リン酸二水素塩に対するマグネシアおよび炭酸カルシウムの質量比は好適には4/6〜6/4である。好適には、後述する硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11、さらに好ましくはpHが7〜10であるように、調整される。
リン酸二水素塩としては、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素アンモニウムが上げられるが、低アルカリ性という観点から、リン酸二水素カリウムが最も好ましく、リン酸二水素アンモニウムはアンモニア臭の発生を避ける場合には好ましくない。
水粉体比も常法によることができ、通常20〜65質量%程度から選択され、増粘剤を用いる場合には200質量%程度までとしうる。
本発明のセメント組成物の第2の態様は発泡作用を必要としない場合に炭酸カルシウムを用いないものであり、マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物である。リン酸二水素塩に対するマグネシアの質量比は好適には2.0/8.0〜2.6/7.4である。さらに好ましくは硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜8であるように、調整される。
さらに、本発明のセメント組成物においては、減水剤、流動化剤、消泡剤、増粘剤、防錆剤、防凍剤、収縮低減剤、凝結促進剤、凝結遅延剤等、各種の混和剤の一種以上を、目的に応じて適宜使用することができる。
上記のマグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩、またはマグネシアおよびリン酸二水素塩、を主成分として配合する際には、配合順序、配合方法は特に制限されず、常法によることができる。すなわち、それぞれの成分を使用時に配合してもよく、予め少なくとも一部を混合しておいてもよい。好適には、発泡、硬化時間の制御を考慮すると、マグネシアまたはマグネシアおよび炭酸カルシウム、のスラリーとリン酸二水素塩とを別々に圧送して配合する二液配合が用いられる。配合装置としては、たとえば各種のミキサが挙げられる。
本発明のセメント組成物は、特に地盤改良材、重金属を含む産業廃棄物の固定化材、放射性廃棄物用地層固定化材もしくは発泡注入材等として好適に使用されうる。
たとえば、地盤改良材として用いる場合には、種々の工法にしたがって本発明のセメント組成物を含むスラリーを注入し、地盤と混合攪拌する方法、等によることができる。これにより、住宅地盤改良、路床、造成、浚渫等の各種土木工事を効率よく行い得る。
また、放射性廃棄物用地層固定化材として用いる場合には、低アルカリであるためベントナイト等の粘土の溶解・変質等のおそれが小さいので、廃棄物の周囲に設けられるバリアを長期にわたって安定化させて利用しうる。
さらに、発泡注入材として用いる場合には、各種の止水、開削、耐震対策等の各種工事用の注入材として、発泡ウレタンの代替品として有用であり、地下水汚染の懸念も著しく低減し、低コストである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
実施例において、原材料は以下のものを使用した。
1)MgO:宇部マテリアル社製 軽焼マグネシアUC95M(平均粒径2.3μm、BET比表面積10m/g)(以下、「M」ということがある。)
2)KHPO:和光純薬社製 試薬特級 150μm以下に粉砕(以下、「K」ということがある。)
3)NHPO:メルク社製 150μm以下に粉砕(以下、「A」ということがある。)
4)宇部マテリアル社製ドロマイト(MgO17.69%、1.7μm残分全通)をルツボに蓋をしてCO分圧の高い状態で、720℃、2時間焼成したところ、X線回折によりMgOとCaCO(カルサイト)が確認された。これを150μm以下になるように粉砕した。(以下、「D」ということがある。)
実施例1
下記に示す所定割合の原材料を粉体で混合し、水粉体比0.5で水を添加して混練し、速やかに成形後、室温養生を行った。硬化は、MgOの系で30秒、MgO−CaCOの系で60秒であり、後者の方がハンドリング時間を長くとることができた。生成物と未反応量は材齢1日より材齢7日まで定量したが、材齢1日で反応はほとんど終了していた。材齢7日の試料を用いて、環境庁告示46号に準拠して、硬化体を250μm以下になるように粉砕し、液固比10となるように蒸留水を添加して、容器を200rpmで6時間振とうし、全量を吸引ろ過後、ろ液のpHを測定した。その結果を表1および表2に示す。
Figure 2009013037
Figure 2009013037
表2において、D/Aが5/5以下ではCaCOの分解による発泡が起こり、成形体は得られていないが、発泡材として好適である。
実施例2
ドロマイトを仮焼して得られた(MgO+CaCO)混合物とKHPOを質量比で4/6,水粉体比を0.5になるように混合して30秒間練り混ぜ,室温で養生した。硬化するまで試料の様子を観察し,水和7日で水和停止を行い,X線回折で生成相の同定を行った。水和1時間を経ても硬化せず,水和2時間経過後より試料下部から徐々に硬化するとともに試料は膨張した。水和7日で試料を取り出すと,下部の比較的硬い灰白色部分と上部の軟らかい白色部分が生成した。試料の高さ変化は水和1分の20mmから水和3時間以降の34mmに変化した。試料を観察すると,試料中央に比較的大きな空洞(多くは高さ方向に伸びている)が存在し,底面には直径1−3mm程度の空洞が確認された。
試料の硬い部分(下部・灰白色)と軟らかい部分(上部・白色)を分けて水和停止させ,得られた試料の生成物をそれぞれ粉末X線回折試験により同定した。その回折図を図1に示す(硬:硬い部分,軟:軟らかい部分)。回折図上では明らかに硬い部分と軟らかい部分を構成している相が異なることが分かった。硬い部分はKMgPO・6HO、CaCO等、D/K=5/5〜7/3と同様な構成相である。
なお、ドロマイトの仮焼方法は次のとおりである。ドロマイト(宇部マテリアルズ社製)をるつぼに入れ,専用のふたをして720℃で2時間焼成した。得られた粉末をX線回折で試験した結果,主にMgOとCaCOから構成されていることが分かった。これをその粒径が150μm以下になるように調製したものを上記の実験に用いた。
また、水和実験方法は次のとおりである。仮焼したドロマイトとリン酸塩を所定の割合で調製したものをユニパック内で5分間混合し,スチロール瓶内で蒸留水を水粉体比0.5になるようにして30秒間練混ぜた後,7日間室温で養生させた。その後,アセトンを用いて水和停止させ,24時間真空乾燥させたものを試験した。
実施例3
マグネシアリン酸塩セメントのpH試験を,MgOとKHPOの質量比で変えて以下のように行った。
所定の質量比(M/K=2.0/8.0, 2.2/7.8, 2.4/7.6, 2.6/7.4, 2.8/7.2, 3.0/7.0)( MgO:M、KHPO:K)で材料を混合し,蒸留水を用いて水粉体比が0.5になるように調製したものを室温20℃で7日間養生した。これを環境庁告示46号に準拠した方法(*)で溶出試験を行い,得られたろ液をpH評価した。具体的には,まず試料はその粒径が250μm以下になるように調製し,粉末8gに対して蒸留水が80gになるように容器内で調整したものを,200rpmで6時間平行振とうさせた。容器の中味全てを孔径45μmのメンブランフィルターを通して吸引ろ過して,得られたろ液を検液した。
図2は、得られたMgO-KHPO-HO系硬化体の粉末X線回折図である。図2において、a:M/K=2.0/8.0, b:2.2/7.8, c:2.4/7.6, d:2.6/7.4, e:2.8/7.2, f:3.0/7.0を示す。KHPOは2.0/8.0〜2.6/7.4において残存しており,MgO比が大きくなるほどピーク強度は小さくなった。したがって混合比が2.4/7.6〜2.8/7.2の間に大きなpHの変化があることが予想された。
pH試験結果は、次のとおりであった。
M/K=2.0/8.0,pH7.10;M/K=2.2/7.8,pH7.41;M/K=2.4/7.6,pH8.21;M/K=2.6/7.4, pH10.67;
M/K=2.8/7.2, pH11.20;M/K=3.0/7.0, pH11.44
MgO量が多くなるにつれてpHは大きくなるが、図3のグラフに表すといわゆるpH滴定曲線のようになることがわかる。M/K=2.4/7.6〜2.6/7.4の間に大きなpHの変化があるが全体的には緩やかに変化していることが分かった。
(*)環境庁告示46号試験方法と本実験で用いた溶出方法の違いを表3にまとめる。
Figure 2009013037
本発明によれば、ハンドリング性を改良した、低アルカリ性セメント、さらに望ましくはアンモニアの発生しないセメント、を得ることができる。さらに、本発明のセメント組成物は、炭酸カルシウムを併用する場合には、天然資源であるドロマイトを有効利用することができ、また炭酸ガス発生を利用してウレタン注入材に替わる発泡注入材としても有用である。
実施例2で得られたMgO-CaCO-KHPO-HO系硬化体の粉末X線回折図。 実施例3で得られたMgO-KHPO-HO系硬化体の粉末X線回折図。 実施例3におけるpH試験結果。

Claims (15)

  1. マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物。
  2. リン酸二水素塩に対するマグネシアおよび炭酸カルシウムの質量比が4/6〜6/4である請求項1に記載のセメント組成物。
  3. マグネシアおよび炭酸カルシウムがドロマイトの仮焼により得られる請求項1もしくは2に記載のセメント組成物。
  4. 硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11である請求項1〜3のいずれかに記載のセメント組成物。
  5. マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物。
  6. リン酸二水素塩に対するマグネシアの質量比が2.0/8.0〜2.6/7.4である請求項5に記載のセメント組成物。
  7. 硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜8である請求項5もしくは6に記載のセメント組成物。
  8. マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分として配合することを特徴とするセメント組成物の製造方法。
  9. リン酸二水素塩に対するマグネシアおよび炭酸カルシウムの質量比が4/6〜6/4である請求項8に記載のセメント組成物の製造方法。
  10. マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分として、リン酸二水素塩に対するマグネシアの質量比が2.0/8.0〜2.6/7.4であるように配合して、硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHを7〜11とすることを特徴とするセメント組成物の製造方法。
  11. マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物を含む地盤改良材。
  12. マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物を含む地盤改良材。
  13. マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物を含む放射性廃棄物用地層固定化材。
  14. マグネシアならびにリン酸二水素塩を主成分とし、かつ硬化体の溶出試験により得られる溶液のpHが7〜11であるセメント組成物を含む放射性廃棄物用地層固定化材。
  15. マグネシア、炭酸カルシウムならびにリン酸二水素塩を主成分とするセメント組成物を含む発泡注入材。
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