JP2009012274A - 積層フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

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JP2009012274A JP2007176075A JP2007176075A JP2009012274A JP 2009012274 A JP2009012274 A JP 2009012274A JP 2007176075 A JP2007176075 A JP 2007176075A JP 2007176075 A JP2007176075 A JP 2007176075A JP 2009012274 A JP2009012274 A JP 2009012274A
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孝史 坪内
Toshiki Sakagami
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Abstract

【課題】環状オレフィン系付加(共)重合体からなる重合体フィルムと、ポリマー光導波路のクラッド層との密着性に優れた積層フィルムならびにその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】特定の要件を満たす1種以上の構造単位を有する重合体からなる重合体フィルム上に、(A)特定の要件を満たす構造を有するラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー、(B)前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートおよび(C)光重合開始剤を含む硬化液を塗工し、硬化させることにより得られる硬化層が、形成されてなる積層フィルムであることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、環状オレフィン系付加(共)重合体からなる重合体フィルム上に、ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーおよびその他の(メタ)アクリレート
を含む硬化液を塗工、硬化することによりアクリル系硬化層が形成されてなる積層フィルム、およびその積層フィルムの製造方法に関する。
近年、環状オレフィン系付加(共)重合体から得られるフィルムが、優れた耐熱性と光学透明性とを有し、さらに低吸湿性と寸法安定性とを有することから各種光学用途、電子用途での新材料として大いに期待されている。
このような光学用途等においては、環状オレフィン系付加(共)重合体から得られるフィルムがフィルム単体で用いられることは少なく、種々の機能を付与するために複数の光学フィルムを積層した積層フィルムとして、または光学フィルムを基板、基材上に保持した部材として使用されることが多い。
特に、フレキシブルポリマー光導波路の用途においては、耐熱性、耐湿熱性向上のため、重合体フィルムを保護フィルム基材として用いている。その製造工程では、重合体フィルム上に、クラッド材として特定の不飽和アクリル酸エステルモノマーからなる溶液を塗工し、その後、紫外線照射して硬化することにより、クラッド層を形成する。しかし、重合体フィルムは、そのフィルム表面の疎水性が高いため、上記クラッド層の密着性が極めて悪く、屈曲運動を継続することより、重合体フィルムとクラッド材が層間剥離するため、ポリマー光導波路の保護フィルムとしての展開が困難であった。
一方、環状オレフィン系付加(共)重合体からなるフィルムに接着性を付与する検討が以前よりなされてきた。例えば、特許文献1〜6に記載されているように、環状オレフィン系付加(共)重合体に架橋性のアルコキシシリル官能基を導入することにより金属との接着性、密着性に優れることが見出されている。しかしながら、アルコキシシリル基の影響により重合体フィルムの低吸湿性が損なわれ、さらには架橋反応により重合体フィルムの靭性が低下し、屈曲により重合体フィルムが割れる問題があり、これらの重合体フィルムは高い屈曲性が求められるポリマー光導波路の保護フィルム基材には適さない。
特開2002−226661号公報 特開2002−293843号公報 特開2002−327024号公報 特開2003−048918号公報 特開2003−160620号公報 特開2003−212927号公報
本発明は、環状オレフィン系付加(共)重合体からなる重合体フィルムと、ポリマー光導波路のクラッド層との密着性に優れた積層フィルムならびにその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、環状オレフィン系付加(共)重合体からなる重合体フィルムが低吸湿性、高屈曲性を保持しつつ、さらに重合体フィルム表面上に接着性を付与すべく鋭意検討し
た結果、重合体フィルム上に、ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーおよびその他の(メタ)アクリレートを含む硬化溶液を塗工、硬化することによりアク
リル系硬化層が形成されてなる積層フィルムがポリマー光導波路のクラッド材との密着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下に記載した事項により特定される。
下記式(1)で表される1種以上の構造単位を有する重合体からなる重合体フィルム上に、(A)下記式(2)で表される構造を有するラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー、(B)前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートおよび(C)光重合開始剤を含む硬化液を塗工し、硬化させることにより得られる硬化層が、形成されてなる積層フィルムであることを特徴とする。
Figure 2009012274
式(1)中、A1〜A4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、炭素原子数3〜15のオキセタニル基、炭素原子数1〜15のN−置換イミド基、アルコキシル基の炭素原子数が1〜5であるアルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノキシカルボニル基、カーボナート基およびグリシジル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、これらの置換基は、炭素原子数1〜10のアルキレン基によって、互いに環状に結合していてもよく、A1とA2とが、相互に結合して、脂環構造、環状の芳香族構造、または炭素原子数1〜15のアルキリデン基を形成していてもよく、A1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とが、炭素原子数1〜15の脂環構造、環状の芳香族構造、環状の酸無水物基または環状のイミド基を形成していてもよく、mは、0または1の整数を示す。
Figure 2009012274
式中、X1は−(CH2CH2O)m―、―(CH(CH3)CH2O)m―、または―CH2CH(OH)CH2O−、X2は水素原子またはハロゲン原子、Yは−C(CH32−、−CH2−、−O−または−SO2−、を表し、mは0〜10の整数である。
前記硬化液が、前記(A)成分を5〜90重量%、前記(B)成分を10〜95重量%、前記(C)成分を0.01〜10重量%含有することが好ましい。
前記式(1)中、A1〜A4が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、これらの置換基は、炭素原子数1〜10のアルキレン基によって、互いに環状に結合していてもよく、A1とA2とが、相互に結合して脂環構造を形成していてもよく、A1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とが、炭素原子数1〜15の脂環構造を形成していてもよい。
積層フィルムの製造方法が、前記硬化液を塗工する工程および、光照射することにより硬化層を形成する工程を含有することを特徴とする。
積層フィルムの製造方法は、さらに前記重合体フィルム表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、200〜300nmの波長を有するUVオゾン処理、および200nm以下の波長を有する電磁波放射線処理から選択される1つ以上の処理を施した後に、該表面上に、前記硬化液を塗工する工程および、該硬化液を硬化させることにより得られる硬化層を形成する工程を含有することを特徴とする。
本発明の積層フィルムは、重合体フィルムが特有の透明性、耐熱性、低吸湿性、屈曲性を保持しつつ、ポリマー光導波路のクラッド層との密着性に優れる。本発明によれば、フレキシブルポリマー光導波路の保護フィルム基材として好適な積層フィルム、ならびにその製造方法を提供することができるが、その効果はこれに限定されず、偏光板、導光板、拡散板等の各種光学材料、回路基板、プリント配線基板等の電子材料用途にも使用できる。
以下、本発明について具体的に説明する。
<環状オレフィン系付加(共)重合体およびその重合体フィルムの製造方法>
本発明の積層フィルムを構成する環状オレフィン系付加(共)重合体は、下記式(1)で表される1種以上の構造単位を有し、下記の単量体を付加重合または共重合して得られる。
Figure 2009012274
式(1)中、A1〜A4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数3〜15のオキセタニル基、炭素原子数1〜15のN−置換イミド基、アルコキシ基の炭素原子数が1〜5であるアルコ
キシカルボニル基、ジアルキルアミノキシカルボニル基、カーボナート基およびグリシジル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、これらの置換基は炭素原子数1〜10のアルキレン基によって互いに環状に結合していてもよく、A1とA2とが相互に結合して、脂環構造、環状の芳香族構造、または炭素原子数1〜15のアルキリデン基を形成していてもよく、A1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とで炭素原子数1〜15の脂環構造、環状の芳香族構造、環状の酸無水物基または環状のイミド基を形成していてもよく、mは0または1の整数を示す。
[単量体]
本発明における環状オレフィン系付加(共)重合体は、下記一般式(3)で表される単量体(以下、単量体(3)という)を付加(共)重合して得られる。
Figure 2009012274
式(3)中、A1〜A4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシ基、炭素原子数3〜15のオキセタニル基、炭素原子数1〜15のN−置換イミド基、アルコキシ基の炭素原子数が1〜5であるアルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノキシカルボニル基、カーボナート基およびグリシジル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、これらの置換基は炭素原子数1〜10のアルキレン基によって互いに環状に結合していてもよく、A1とA2とが相互に結合して、脂環構造、環状の芳香族構造、または炭素原子数1〜15のアルキリデン基を形成していてもよく、A1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とで炭素原子数1〜15の脂環構造、環状の芳香族構造、環状の酸無水物基または環状のイミド基を形成していてもよく、mは0または1の整数を示す。
このような単量体(3)としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の化合物を具体例として挙げることができる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−t−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ブチル−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロロ−6−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フロロ−6−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シクロオクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メトキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エトキシ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
N−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボイミド、
N−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−ジカルボイミ
ド、
5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジ(メトキシカルボニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
3−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
4−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
5−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−7−エン、
3−メチルトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−7−エン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エ
ン、
8−エトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ド
デカ−3−エン、
5−ビニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−(1−ブテニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ビニリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−3,9−ジエン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−4,9−ジエン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−4,8−ジエン、
トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−7,11−ジエン、
トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−6,11−ジエン、
トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−5,11−ジエン、
などが挙げられる。
これらの単量体(3)は、1種類のみで付加重合してもよいし、式(1)に示される2種類以上の単量体を混合して共重合してもよい。
また、本発明に係る環状オレフィン系付加(共)重合体を調製する際に、添加剤等に対する溶解性と耐熱性の向上させる目的で、さらに、エステル基、酸無水物基、カルボンイミド基などの官能基を有する環状オレフィン系化合物を、全単量体100モル%に対して10モル%以下の量で含有する単量体組成物を用いて付加(共)重合してもよい。エステル基、酸無水物基、カルボンイミド基などの官能基を有する、このような単量体の具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の化合物を挙げることができる。ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、
2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸メチル、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸エチル、
2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸エチル、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸t−ブチル、
2−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2−カルボン酸t−ブチル、
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸エチル、
4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル、
4−エチルテトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル
4−メチルテトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸エチル、
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸プロピル、
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4,5−ジカルボン酸
ジメチル、
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4−カルボン酸メチル−5−カルボン酸t−ブチル、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,3−N−シクロヘキシルカルボンイミド、
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4,5−N−シクロヘ
キシルカルボンイミド、
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4,5−N−エチルカ
ルボンイミド、
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−5−エン−2,2−N−シクロヘキシルスクシンイミド

テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4,4−N−シクロヘ
キシルスクシンイミド
テトラシクロ[6.2.1.13, 6.02, 7]ドデカ−9−エン−4,5−無水ジカルボ
ン酸、
などが挙げられる。
エステル基、酸無水物基、カルボンイミド基などの官能基を有する、このような単量体の割合が、全単量体中において10モル%を超えると、得られる重合体フィルムの吸湿性が増大することがある上、重合体フィルムの靭性が損なわれることがあり、さらに、付加(共)重合反応における重合活性が大きく低下することがある。
本発明に係る環状オレフィン系付加(共)重合体は、好ましくは式(1)中のA1〜A4
が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、これらの置換基は炭素原子数1〜10のアルキレン基によって、互いに環状に結合していてもよく、A1とA2とが相互に結合して脂環構造を形成していてもよく、A1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とで炭素原子数1〜15の脂環構造を形成していてもよい。
上記のように定義された式(1)で表される単量体(以下、単量体(4)という)を付加(共)重合して得られる場合、さらに吸湿性を低減させ、屈曲性を向上させることができる。
また、これらの単量体(4)は1種類のみで付加重合してもよいし、2種以上の単量体を混合して共重合してもよい。
このような単量体(4)としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の化合物を具体例として挙げることができる。
ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−プロピルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−t−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ブチル−6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロロ−6−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フロロ−6−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン
5−ペンチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ヘプチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−ドデシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5,6−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−メチル、5−エチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シクロヘキシル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−シクロオクチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
5−クロロ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
3−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
4−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
5−メチルトリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−8−エン、
トリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−7−エン、
3−メチルトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナ−7−エン、
トリシクロ[6.2.1.02,7]ウンデカ−9−エン、
トリシクロ[8.2.1.02,9]トリデカ−11−エン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−メチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
8−エチル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン、
などが挙げられる。
これらの単量体(4)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合せて用いてもよい。
[触媒]
本発明に係る環状オレフィン系付加(共)重合体の製造方法において、上述した単量体を、下記(I)、(II)および(IV)を用いて得られる触媒、あるいは、下記(III)および(IV)を用いて得られる触媒の存在下に付加(共)重合する。
(I)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、
(II)下記式(ii)で表されるホスフィン化合物、
P(R12(R2) …(ii)
(式(ii)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基より
選ばれる置換基であり、R2は炭素原子数3〜10の炭化水素基を表す。)
(III)下記式(iii)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体、
Pd[P(R12(R2)]n2 …(iii)
(式(iii)中、R1はシクロペンチル基、シクロヘキシル基、イソプロピル基よ
り選ばれる置換基であり、R2は炭素原子数3〜10の炭化水素基を表し、Xは有機酸ア
ニオンあるいはβ−ジケトネートアニオンであり、nは1または2を示す。)
(IV)イオン性のホウ素化合物。
本発明では、上記触媒成分を用いて得られるパラジウム系触媒を用いることにより、機械的強度に優れた環状オレフィン系付加(共)重合体を得ることができる。さらには非常に高い重合活性を示すため、極端に少ないパラジウム化合物を用いるのみにて95%を超える高い転化率で環状オレフィン系付加(共)重合体を製造することができるとともに、得られる環状オレフィン系付加(共)重合体中に残留する単量体や金属成分を充分に抑制できる。
以下、上記各触媒成分について説明する。
(I)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物とは、例えば2価パラジウムのカルボン酸塩、スルホン酸塩、β−ジケトネート化合物であり、具体的には、
〈1〉酢酸パラジウム、クロロ酢酸パラジウム、フルオロ酢酸パラジウム、トリフルオロ酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、3,3,3−トリフルオロプロピオン酸パラジウム、酪酸パラジウム、3−メチル酪酸パラジウム、ペンタン酸パラジウム、ヘキサン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、オクタン酸パラジウム、ドデカン酸パラジウム、2−メチルプロペン酸パラジウム、オクタデカ−9−エン酸パラジウム、シクロヘキサンカルボン酸パラジウム、安息香酸パラジウム、2−メチル安息香酸パラジウム、4−メチル安息香酸パラジウム、ナフタレンカルボン酸パラジウムなどの炭素原子数1〜15の有機モノカルボン酸塩;
〈2〉メタンスルホン酸パラジウム、トリフルオロメタンスルホン酸パラジウム、p−トルエンスルホン酸パラジウム、ベンゼンスルホン酸パラジウム、ナフタレンスルホン酸パラジウム、ドデシルベンゼンスルホン酸パラジウムなどの炭素原子数1〜20の有機スルホン酸塩;
〈3〉パラジウムの2,4−ペンタジオン(アセチルアセトネート)、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ヘキサフルオロアセチルアセトンなどの炭素原子数5〜15のβ−ジケトネート化合物、
が好ましい例として挙げられる。これらの中でも酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム、2−エチルヘキサン酸パラジウム、パラジウムビス(アセチルアセトネート)が好ましく、酢酸パラジウムがもっとも好ましい。
(II)前記式(ii)で表されるホスフィン化合物の具体例としては、トリシクロペ
ンチルホスフィン、ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロペンチル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロペンチル(s−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(t−ブチル)ホスフィン、ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(3−メチルシクロヘキシル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(イソプロピル)ホスフィン、ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン、トリイソプロピルホスフィンなどが挙げられる。これらの中でもトリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィンが好ましく用いられる。
(III)前記式(iii)で表される2価パラジウムのホスフィン錯体は、触媒成分(I)に挙げたパラジウム化合物と比較して良好な炭化水素溶媒への溶解性を示すため、溶液重合プロセスにおいて有利である。また、活性種の生成効率が高く、誘導期間がほとんどみられないことなどにおいても有利であり好ましい。
式(iii)で表されるパラジウムのホスフィン錯体としては、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
〔ビス(トリシクロペンチルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(t−ブチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロペンチル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
〔ジシクロペンチル(シクロヘキシル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
ビス(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
〔ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(t−ブチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、
〔ジシクロヘキシル(2−メチルフェニル)ホスフィン〕パラジウムジ(アセテート)、(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
〔ジシクロヘキシル(シクロペンチル)ホスフィン〕パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、などを挙げることができるがこれらに限定されない。中でも
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロアセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(プロピオネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(2−エチルヘキサノエート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(トリフルオロメタンスルホネート)、が好ましく、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)、
(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウムビス(アセチルアセトネート)がもっとも好ましい。これらのホスフィン錯体(III)の合成には、公知の方法を適宜もちいてよく、精製あるいは単離して用いてもよいし、合成後に単離することなく用いてもよい。たとえば適切なパラジウム化合物と触媒成分(II)で例示のホスフィン化合物とを、芳香族炭化水素溶媒またはハロゲン化炭化水素溶媒中で、0〜70℃の温度範囲で反応させることにより合成してもよい。
(IV)イオン性のホウ素化合物としては、例えば、下記式(d)で表される化合物が用いられる。
〔R3+〔M(R44- …(iv)
式(iv)中、R3はカルベニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、アンモニウムカ
チオンまたはアニリニウムカチオンから選ばれた炭素原子数4〜25の有機カチオンを示し、Mはホウ素原子あるいはアルミニウム原子を示し、R4はフッ素原子置換またはフッ
化アルキル置換のフェニル基を示す。具体例としては、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、
トリ(p−トリル)カルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレート、
トリフェニルカルベニウムテトラキス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
ジフェニルホスホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
トリブチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
N,N−ジエチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、
などを挙げることができる。これらの中でもカチオンがカルベニウムカチオンであり、アニオンがテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートアニオンまたはテトラキス(パーフルオロアルキルフェニル)ボレートアニオンであるイオン性ホウ素化合物が好ましく、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリフェニルカルベニウムテトラキス〔3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル〕ボレートがもっとも好ましい。
(I)パラジウムの有機酸塩またはパラジウムのβ−ジケトネート化合物、あるいは(III)2価パラジウムのホスフィン錯体は、単量体1モル当たり、パラジウム原子として0.0005〜0.02ミリモル、好ましくは0.001〜0.01ミリモル、さらに好ましくは0.001〜0.005ミリモルの範囲で用いるのみにて高い転化率を獲得できるため、高い経済性および生産性を示す。また、環状オレフィン系付加(共)重合体中に残留する金属成分を低く抑えられるため、着色が少なく透明性に優れた成形体を得ることが可能であり、脱灰工程の省略をできることもある。また、(II)ホスフィン化合物に関しては、触媒成分(I)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.1〜5モル、好ましくは0.5〜2モルの範囲で使用することが、高重合活性のために最適である。また、上記触媒成分(IV)イオン性のホウ素化合物に関しては、触媒成分(I)に含まれるパラジウム原子1モルに対して、通常0.5〜10モル、好ましくは0.7〜5.0モル、さらに好ましくは1.0〜2.0モルの範囲で用いられる。上記(I)〜(IV)の各触媒成分に関し、本発明においては添加順序等の調整法や使用法に特に制限はなく、本発明で重合反応に供される単量体と溶媒との混合物へ同時に、または逐次的に添加してもよい。
[付加(共)重合反応]
本発明において、付加(共)重合反応は、バッチ式で行ってもよく、また、例えば適切な単量体の供給口を装備した管型連続反応器を使用して行ってもよい。付加(共)重合反応は、必要なら窒素またはアルゴン雰囲気下にて行なわれるが、空気中であってもよい。反応温度は0〜150℃、より好ましくは10〜100℃、さらに好ましくは20〜80℃の範囲にて行なわれる。用いられる溶媒は特に限定されないが、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタンなどの脂環式炭化水素溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどの脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレンなどの芳香族炭化水素溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロべンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒を1種単独で、または2種以上を組み合わせることができる。これらのうちでも脂環式炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒が好ましい。これらの溶媒は、全単量体100重量部に対し、通常、0〜2,000重量部の範囲で用いられる。
本発明に係る環状オレフィン系付加(共)重合体の製造方法においては、分子量調節剤の存在下に付加(共)重合を行うことで、得られる環状オレフィン系付加(共)重合体の分子量を任意に制御することができ、その結果、溶融成形における流動特性などを制御できる。分子量調節剤としては、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、トリメチルビニルシラン、トリメトキシビニルシランなどのα−オレフィン化合物または置換α−オレフィン化合物、シクロペンテンなどの単環モノオレフィン化合物、スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物などが用いられる。これらの分子量調節剤のうちでも、α−オレフィン化合物または単環モノオレフィン化合物を用いることが好ましく、中でもエチレンがもっとも好ましい。分子量調節剤の使用量は、環状オレフィン系付加(共)重合体の目標とする分子量、触媒成分の選択、重合温度条件の選択などによって変わるため一概には言えないが、全単量体に対しモル比で0.001〜0.5倍の量を用いることが好ましい。また、これらの分子量調節剤は1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
本発明に係る環状オレフィン系付加(共)重合体の製造方法で用いるパラジウム系重合触媒は、非常に高活性であるため少量の触媒を用いるのみで転化率を96%以上、好ましくは99%以上とすることができる。その結果、残留する単量体や金属成分の除去工程を必ずしも必要としない。必要に応じて単量体や金属成分の除去を行う場合は公知の方法を適宜用いてよく、例えば、重合反応溶液を乳酸、グリコール酸、オキシプロピオン酸、オキシ酪酸などのオキシカルボン酸やトリエタノールアミン、ジアルキルエタノールアミン、エチレンジアミンテトラ酢酸塩などの水溶液、メタノール溶液およびエタノール溶液から選ばれた溶液を用いて抽出・分離処理するか、珪藻土、シリカ、アルミナ、活性炭、セライトなどの吸着剤を用いて吸着およびフィルターでの濾過分離の処理にて金属成分を除去できる。あるいは、重合反応溶液を、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類やアセトン、メチルエチルケトンなどのケトンを用いて凝固することもできる。本発明に係る環状オレフィン系付加(共)重合体に含まれる金属成分は、Pd原子として好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下にすることができる。
重合反応溶液からさらに脱溶工程を経て環状オレフィン系付加(共)重合体が得られる。その際に必要に応じて添加剤を配合してもよい。脱溶方法は特には限定されないが、例えば溶液を減圧下にて加熱濃縮する、またはスチームを導入するなどしてよく、押出機などを用いて乾燥およびペレット化してもよい。重合反応溶液をそのままキャストすることでフィルムに成形してもよい。
[分子量]
本発明に係る重合体フィルムを構成する環状オレフィン系付加(共)重合体の分子量は、ゲル・パーミエイションクロマトグラフィー(GPC)装置(昭和電工(株)製Shodex GPC−101)により、昭和電工(株)製Shodex GPC KFタイプカラムを使用し、テトラヒドロフランを溶媒として40℃の条件によって得られた測定値をポリスチレン換算し、重量平均分子量を得た。通常、重量平均分子量が20,000〜700,000、好ましくは重量平均分子量が50,000〜600,000、さらに好ましくは重量平均分子量が100,000〜500,000である。重量平均分子量が20,000未満の場合には、フィルムにしたときの靭性に劣り、割れやすいものとなることがある。一方、重量平均分子量が700,000を超えると、溶液粘度が高くなり、成形の作業性やフィルムの表面平滑性などが悪くなることがある。
[重合体フィルムの製造方法]
本発明に係る環状オレフィン系付加(共)重合体の重合体フィルムの製造方法は、所望の形状により適宜選択すればよく、特に限定されるものではないが、例えば、溶液キャスティング法、溶融押出法、金型成形法等が挙げられる。
<アクリル系硬化層を形成する硬化液およびその製造方法>
本発明に係るアクリル系硬化層を形成する硬化液は、
(A)下記式(2)で表される構造を有するラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー:
Figure 2009012274
式中、X1は−(CH2CH2O)m―、―(CH(CH3)CH2O)m―、または―CH2CH(OH)CH2O−、X2は水素原子またはハロゲン原子、Yは−C(CH32−、−CH2−、−O−または−SO2−、を表し、mは0〜10の整数である。
前記硬化液が、(A)成分を5〜90重量%、(B)成分を10〜90重量%、(C)成分を0.01〜10重量%含む混合物からなる。
[(A)ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー]
本発明に係る硬化液に含まれる(A)ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーとしては、例えば、ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより製造される。
この場合、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基は、ポリオール化合物の水酸基と、水酸基含有(メタ)アクリレート化合物の水酸基の各々と反応する。
ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーは、具体的には、例えば、以下の製法1〜製法4のいずれかの方法で製造される。
製法1:ポリオール化合物、ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを一括して仕込んで反応させる方法。
製法2:ポリオール化合物およびポリイソシアネート化合物を反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法。
製法3:ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオール化合物を反応させる方法。
製法4:ポリイソシアネート化合物および水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオール化合物を反応させ、最後にまた水酸基含有(メタ)アクリレート化合物を反応させる方法。
〈ポリオール化合物〉
(A)成分の原料となるポリオール化合物としては、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールAのブチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加ジオール等が挙げられる。市販品としては、ユニオールDA400、DB400、DA700、DA1000(以上、日本油脂社製)等が挙げられる。
〈ポリイソシアネート化合物〉
(A)成分の原料となるポリイソシアネート化合物としては、例えば、
2,4−トリレンジイソシアネート、
2,6−トリレンジイソシアネート、
1,3−キシリレンジイソシアネート、
1,4−キシリレンジイソシアネート、
1,5−ナフタレンジイソシアネート、
m−フェニレンジイソシアネート、
p−フェニレンジイソシアネート、
3,3′−ジメチル−4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、
4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、
3,3′−ジメチルフェニレンジイソシアネート、
4,4′−ビフェニレンジイソシアネート、
1,6−ヘキサンジイソシアネート、
イソホロンジイソシアネート、
メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、
1,4−ヘキサメチレンジイソシアネート、
ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、
6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、
4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、
リジンジイソシアネート、
水添ジフェニルメタンジイソシアネート、
水添キシリレンジイソシアネート、
テトラメチルキシリレンジイソシアネート等ポリイソシアネート化合物が挙げられる。中でも、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等が好ましい。ポリイソシアネート化合物は、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
〈水酸基含有(メタ)アクリレート〉
(A)成分の原料となる水酸基含有(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、
1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルホスフェート、
4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、
1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、
ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、
トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。さらにアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物が挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等は、好ましく用いられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
本発明の(A)成分を構成する各原料の配合割合は、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート1モルに対して、ポリオール化合物0.5〜2モル、ポリイソシアネート化合物1〜2.5モルである。
(A)成分の数平均分子量は、好ましくは500〜20,000、より好ましくは1,000〜15,000である。該値が500未満では、フィルム状の硬化層について十分な屈曲抵抗性を得ることが困難であり、粘度が低くなり過ぎて硬化液の塗工性が劣ることがある。また、該値が20,000を超えると、粘度が高くなり、塗工性が悪化することがある。
本発明の組成物中の(A)成分の配合量は、好ましくは5〜90重量%、より好ましくは5〜70重量%である。該配合量が5重量%未満では、基材に対する硬化層の長期信頼
性が低下することがある。該配合量が90重量%を超えると、基材に対する密着力が低下することがある。
[(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレート]
本発明に係る硬化液に含まれる(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートとしては、ラジカル重合性を有する1つ以上の(メタ)アクリロイル基
を有する不飽和カルボン酸エステルモノマーが用いられる。
1つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系モノマーの例として、
イソボルニル(メタ)アクリレート、
ボルニル(メタ)アクリレート、
トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、
ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、
ベンジル(メタ)アクリレート、
4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、
アクリロイルモルホリン、
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、
メチル(メタ)アクリレート、
エチル(メタ)アクリレート、
プロピル(メタ)アクリレート、
イソプロピル(メタ)アクリレート、
ブチル(メタ)アクリレート、
アミル(メタ)アクリレート、
イソブチル(メタ)アクリレート、
t−ブチル(メタ)アクリレート、
ペンチル(メタ)アクリレート、
イソアミル(メタ)アクリレート、
へキシル(メタ)アクリレート、
ヘプチル(メタ)アクリレート、
オクチル(メタ)アクリレート、
イソオクチル(メタ)アクリレート、
2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、
ノニル(メタ)アクリレート、
デシル(メタ)アクリレート、
イソデシル(メタ)アクリレート、
ウンデシル(メタ)アクリレート、
ドデシル(メタ)アクリレート、
ラウリル(メタ)アクリレート、
ステアリル(メタ)アクリレート、
イソステアリル(メタ)アクリレート、
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、
ブトキシエチル(メタ)アクリレート、
エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、
エトキシエチル(メタ)アクリレート、
メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、
メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、
イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、
t−オクチル(メタ)アクリルアミド、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、
7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、
N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、
N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、
フェノキシエチル(メタ)アクリレート、
フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、
フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、
3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、
2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、
p−クミルフェノールエチレンオキシド変性(メタ)アクリレート、
2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
4−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2,6−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、
2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
また、2つの(メタ)アクリロイル基を有するアクリル系モノマーの例として、
1,4−ブタンジオールジアクリレート、
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、
1,9−ノナンジオールジアクリレート等のアルキルジオールジアクリレート、
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、
テトラエチレングリコールジアクリレート、
トリプロピレングリコールジアクリレート等のポリアルキレングリコールジアクリレート、
ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
トリシクロデカンメタノールジアクリレート等が挙げられる。
これらの市販品の具体例としては、例えば、
アロニックスM120、M−150、M−156、M−215、M−220、M−225、M−240、M−245、M−270(以上、東亞合成(株)製)、
AIB、TBA、LA、LTA、STA、ビスコート#155、IBXA、ビスコート#158、#190、#150、#320、HEA、HPA、ビスコート#2000、#2100、DMA、ビスコート#195、#230、#260、#215、#335HP、#310HP、#310HG、#312(以上、大阪有機化学工業(株)製)、
ライトアクリレートIAA、L−A、S−A、BO−A、EC−A、MTG−A、DMP−A、THF−A、IB−XA、HOA、HOP−A、HOA−MPL、HOA−MPE、ライトアクリレート3EG−A、4EG−A、9EG−A、NP−A、1,6HX−A、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、
KAYARAD、TC−110S、HDDA、NPGDA、TPGDA、PEG400DA、MANDA、HX−220、HX−620(以上、日本化薬(株)製)、
FA−511A、512A、513A(以上、日立化成(株)製)、
VP(BASF製)、
ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人(株)製)、
NKエステルA−NPG、A−DCP(新中村化学(株)製)等が挙げられる。
また、(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレートも、好ましく用いられる。
(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレートとしては、3価以上の多価アルコールの(メタ)アクリレートが挙げられる。上記(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、
ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、
トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、
トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、
ペンタエリスリトールポリアクリレート等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
(メタ)アクリロイル基を3つ以上有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、
アロニックスM305、M309、M310、M315、M320、M350、M360、M408(以上、東亞合成(株)製)、
ビスコート#295、#300、#360、GPT、3PA、#400(以上、大阪有機化学工業(株)製)、
NKエステルTMPT、A−TMPT、A−TMM−3、A−TMM−3L、A−TMMT(以上、新中村化学(株)製)、
ライトアクリレートTMP−A、TMP−6EO−3A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学(株)製)、
KAYARAD PET−30、GPO−303、TMPTA、TPA−320、DPHA、D−310、DPCA−20、DPCA−60(以上、日本化薬(株)製)等が挙げられる。
本発明に係る硬化液は、さらにポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエポキシ(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはポリマーを配合してもよい。
これらの市販品の具体例としては、例えば、EBECRYL230(ダイセル・サイテック(株)製)等が挙げられる。
これらのアクリル系モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
[(C)光ラジカル重合開始剤]
本発明に係る硬化液に含まれる(C)光ラジカル重合開始剤の具体例としては、例えば、
アセトフェノン、
アセトフェノンベンジルケタール、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、
2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、
キサントン、
フルオレノン、
べンズアルデヒド、
フルオレン、
アントラキノン、
トリフェニルアミン、
カルバゾール、
3−メチルアセトフェノン、
4−クロロベンゾフェノン、
4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、
4,4'−ジアミノベンゾフェノン、
ミヒラーケトン、
ベンゾインプロピルエーテル、
ベンゾインエチルエーテル、
ベンジルジメチルケタール、
1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、
チオキサントン、
ジエチルチオキサントン、
2−イソプロピルチオキサントン、
2−クロロチオキサントン、
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、
ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。
(C)成分の市販品としては、例えば、
Irgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI11850、CG24−61、Darocurl116、1173(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、
LucirinLR8728(BASF社製)、
ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
成分(C)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明に係る硬化液に含まれる(C)成分の重量割合は、通常、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜7重量%である。含有量が0.01重量%以下であると、硬化速度が遅く、また硬化層の機械的強度が充分でない。また含有量が10重量%以上であると、硬化液の保存安定性が低下する。
[その他の添加剤]
本発明に係る硬化液には、光増感剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱架橋剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、帯電防止剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等、公知の添加剤を必要に応じて配合することができる。
[硬化液の製造方法]
本発明に係る硬化液は、前記各成分を常法により混合して製造することができる。このようにして調製される本発明の樹脂組成物の粘度は、通常、100〜20,000cp/25℃、好ましくは300〜10,000cp/25℃、より好ましくは400〜5,000cp/25℃である。粘度が高すぎると、重合体フィルムに硬化液を塗布する際に、
塗布ムラやうねりが生じる。逆に、粘度が低すぎても、目標とする膜厚が得られにくい等の問題が生じる。
また、上記のような硬化液の粘度を達成するために、硬化液を溶剤により希釈して用いてもよい。溶剤としてラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーとその他の(メタ)アクリレート、および光重合開始剤が溶解できる溶剤であれば用いることが
できるが、通常、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン等の有機溶剤が好適に用いられる。
本発明に係る硬化液は、上記の(A)ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーと(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートの混合物からなる。その組成としては、(A)成分:5〜90重量%、(B)成分:10〜95重量%が好ましい。特に好ましくは、(A)成分:5〜70重量%、(B)成分:30〜95重量%である。(A)成分が5重量%未満であると、積層フィルムとクラッド材との密着性が不充分である。一方、(A)成分が90重量%以上であると、硬化液の粘度が高くなり、作業性や塗工性が悪化することがある。
本発明に係る硬化液の硬化については、適当な光重合開始剤が混合された硬化液を重合体フィルムに塗工後、光重合開始剤の分解によりラジカルを発生させ、(メタ)アクリレートの不飽和炭化水素部が重合反応することにより硬化液が硬化する。光重合開始剤の分解の方法としては、加熱および光照射による分解反応が適応されるが、硬化反応の速さ、および硬化プロセスの簡便性から光照射による方法が好適に用いられる。
<積層フィルムの製造方法>
本発明の積層フィルムは、前述のように、環状オレフィン系付加(共)重合体からなる重合体フィルム上に、ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーとその他の(メタ)アクリレートとを含む硬化液を塗工、硬化することによりアクリル系硬化層
が形成されてなることを特徴とする積層フィルムである。
重合体フィルムの厚みは特に制限されず、例えば、5〜1000μmの範囲から、用途により適宜厚みを選択できる。
また、本発明に係る重合体フィルムは、硬化層との密着力をより高めるために、硬化層を形成する前に、重合体フィルム表面に表面処理が施されていることが好ましい。表面処理として、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、200〜300nmの波長を有するUVオゾン処理、200nm以下の波長を有する電磁波放射線処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知の方法が用いられるが、製造方法の簡便性、生産性の観点から、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理が好適に用いられる。
本発明の積層フィルムにおいて、重合体フィルム上に硬化層を形成する方法として、例えば、重合体フィルム上に硬化液を、硬化後の厚さが所定の厚さとなるように直接塗工し、常法により加熱乾燥して希釈溶剤を留去した後、光照射して硬化することにより硬化層を形成する方法、もしくは1枚または2枚のセパレータの所定の剥離処理面に、硬化後の厚さが所定の厚さとなるように塗工し、加熱乾燥して希釈溶剤を留去した後、光照射して形成した硬化層を、重合体フィルム上に転写する方法などにより、作製することができる。
硬化液の塗工に際しては、慣用のコーター、例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、バーコーター、スロットダイコーター、コンマコーター、リップコーター、ナイフコーター、スピンコーター、ディップロールコーター、スプレーコーターなどを用いることができる。
また、光照射よる硬化反応では、硬化液中の光重合開始剤の光分解によるラジカル発生により硬化反応が開始するため、使用する光重合開始剤の分解に対応した波長の光を照射する必要がある。照射する光として例えば、200〜400nmの紫外線、もしくは200nm以下の電子線であるが。好ましくは、照射設備が簡便である紫外線照射が用いられる。また、その照射量は、100〜5000mJ/cm2であることが好ましい。照射量
が少ないと充分な硬化が得られず、また照射量が多すぎると、硬化層および重合体フィルムが過剰な紫外線により劣化し、積層フィルムの機械的強度が低下する懸念がある。
また、光照射による硬化反応では、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。空気中で硬化反応を実施すると、酸素分子が光重合開始剤の光分解により発生したラジカルと反応して硬化反応を阻害するため、充分な硬化層が得られない。
本発明の積層フィルムは、例えば、ポリマー光導波路の保護フィルム基材として用いられる場合、積層フィルムの硬化層面上にポリマー光導波路のクラッド材をコートした後、加熱もしくは光照射によりクラッド材を硬化してクラッド層が形成することにより、重合体フィルムとクラッド層間に、良好な密着性を付与することができる。
また、本発明の積層フィルムは、硬化層の表面に、表面保護のため剥離フィルムを設けてもよい。当該剥離フィルムは、積層フィルムを使用する際に剥離される。
次に本発明について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例で用いた試料の、重合体フィルムとクラッド層との密着性評価は下記の方法で行った。
作製した積層フィルムの硬化層面側に、後述する調製例9より得られたポリマー光導波路用感光性クラッド材用組成物を、バーコーターを用いて厚みが50μmとなるように塗工した。得られた塗工フィルムを、窒素雰囲気下で1分間静置したのち、水銀ランプで紫外線を照射量1500mJ/Wで照射して硬化反応を行い、クラッド層が形成された評価用サンプルを得た。
評価用サンプルにおいて、形成されたクラッド層側より、JIS K5600−5−6(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に基づき、クロスカット試験を行い、環状オレフィン系付加(共)重合体からなる重合体フィルムとクラッド層との密着性を評価した。評価は、JIS K5600−5−6に記載の方法にしたがった。
<重合体フィルムの製造例>
[製造例1:重合体フィルムA]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下で脱水したトルエンを520g、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを83g(0.55mol)、5−デシルビシ
クロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを70g(0.30mol)仕込み、撹拌しながら
エチレンを0.025MPaとなるまで導入した。容器内を30℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)(3.40×10-3mmol)のトルエン溶液、およびトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(3.40×10-3mmol)のトルエン溶液を加えて付加(共)重合反応を開始した。付加(共)重合反応を計12時間行った結果、未反応の単量体の定量から転化率は
99%、付加(共)重合体中の5−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は34モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を4Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下で加熱乾燥し151gの環状オレフィン系付加(共)重合体を得た。
この環状オレフィン系付加(共)重合体100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.5重量部を、トルエン350重量部に溶解した。この溶液を25℃でキャストし、室温で12時間静置し溶剤を蒸発させ、続いて真空下100℃にて120分間保持し、厚さ100μmの重合体フィルムAを得た。
[製造例2:重合体フィルムB]
1Lのステンレス製反応器に窒素雰囲気下で脱水したトルエンを600g、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(0.50mol)の乾燥トルエン溶液を72.1ml、5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンを50g(0.33mol)仕込み、撹拌しながらエチレンを0.069MPaとなるまで導入した。容器内を50℃に昇温し、(トリシクロペンチルホスフィン)パラジウムジ(アセテート)(1.66×10-3mmol)のトルエン溶液、及びトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1.66×10-3mmol)のトルエン溶液を加えて付加(共)重合反応を開始した。付加(共)重合反応を計7時間行った結果、未反応の単量体の定量から転化率は99%、付加(共)重合体中の5−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン含量は39モル%と計算された。トルエンで希釈した反応溶液を4Lのイソプロピルアルコールで凝固し、ついで真空下95℃で20時間乾燥して96gの環状オレフィン系付加(共)重合体を得た。
この環状オレフィン系付加(共)重合体100重量部に対し、酸化防止剤としてペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート0.5重量部およびトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト0.5重量部を、トルエン400重量部に溶解した。この溶液を25℃でキャストし、室温で12時間静置し溶剤を蒸発させ、続いて真空下180℃にて90分間保持し、厚さ100μmの重合体フィルムBを得た。
<(A)ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーの製造例>
[製造例3:ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーU−1]
攪拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート35.32重量%、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫0.09重量%、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.02質量%を仕込んだ。攪拌しながら温度が30℃以下に保たれるように2−ヒドロキシエチルアクリレート23.55重量%を滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応させた。次に、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加ジオール(日本油脂社製DA400)を41.02重量%加え、50〜70℃で2時間反応を続けた。残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。この手法により得られたウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを「U−1」とした。
[製造例4:ラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーU−2]
攪拌機を備えた反応容器に、2,4−トリレンジイソシアネート16.99重量%、ジラウリル酸ジ−n−ブチル錫0.08重量%、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.01質量%を仕込んだ。攪拌しながら温度が30℃以下に保たれるように2−ヒドロキシエチルアクリレート11.33重量%を滴下した。滴下終了後、30℃で1時間反応させた。次に、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加ジオールを71.63重量
%加え、50〜70℃で2時間反応を続けた。残留イソシアネートが0.1重量%以下になった時を反応終了とした。この手法により得られたウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを「U−2」とした。
<硬化液の調製>
[製造例5:硬化液A]
紫外線がカットされた室内で、褐色ガラス瓶に製造例3で得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー「U−1」に、「U−1」16重量部に対して(メタ)アクリレートの合計が84重量部となるよう、(メタ)アクリレートとして、アクリロイルモルホリン20重量部、ブチルアクリレート20重量部、イソボルニルアクリレート14重量部、1,9−ノナンジオールジアクリレート17重量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート13重量部を添加した。得られた混合液に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを3重量部添加し、室温で24時間攪拌し、硬化液Aを得た。
[製造例6:硬化液B]
紫外線がカットされた室内で、褐色ガラス瓶に製造例3で得られたウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー「U−1」に、「U−1」16重量部に対して(メタ)アクリレートの合計が84重量部となるよう、(メタ)アクリレートとして、アクリロイルモルホリン20重量部、ブチルアクリレート20重量部、イソボルニルアクリレート14重量部、1,9−ノナンジオールジアクリレート17重量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート13重量部を添加した。得られた混合液に、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンを3重量部、希釈溶剤としてメチルイソブチルケトン30重量部、トルエン13重量部を添加し、室温で24時間攪拌し、硬化液Bを得た。
[製造例7:硬化液C]
製造例6において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー「U−2」を用いた以外は製造例6と同様の方法にて硬化液Cを得た。
[製造例8:硬化液D]
製造例6において、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを用いず、その代わりに(メタ)アクリレートの合計が100重量部となるよう、(メタ)アクリレートとして、ブチルアクリレート40重量部、イソボルニルアクリレート10重量部、1,9−ノナンジオールジアクリレート37重量部、ネオペンチルグリコールジアクリレート13重量部を添加した以外は製造例6と同様の方法にて硬化液Dを得た。
<ポリマー光導波路用感光性クラッド材用組成物の調製>
[製造例9:ポリマー光導波路用感光性クラッド材用組成物の調製]
ネオペンチルグリコールジアクリレート15重量部、イソボルニルアクリレート35重量部、トリシクロ[5.2.1.0]デカン−3,8−ジイルジメチルジアクリレート10重量部、ポリプロピレングリコール骨格を有するウレタンジアクリレート(分子量約4000)40重量部および光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン3部を仕込み、液温50〜60℃に制御しながら1時間攪拌した後、冷却してポリマー光導波路用感光性クラッド材用組成物を得た。
<積層フィルムの製造例>
[実施例1]
製造例1で得られた重合体フィルムAを、酸素プラズマドライエッチング装置(神港精機株式会社製E1113−023型)で200Wの出力で10秒間表面処理した。処理面側に、製造例5で得られた硬化液Aを、バーコーターを用い硬化後の硬化層が5μmの厚みになるように塗工し、25℃で20分間放置した。塗工フィルムを、窒素雰囲気下で5
分間静置したのち、水銀ランプで紫外線を照射量1500mJ/Wで照射して硬化反応を行い、積層フィルムを得た。
[実施例2]
製造例1で得られた重合体フィルムAを、酸素プラズマドライエッチング装置[神港精機株式会社製E1113−023型]で200Wの出力で10秒間表面処理した。処理面側に、製造例6で得られた硬化液Bを、バーコーターを用い硬化後の硬化層が5μmの厚みになるように塗工し、25℃で20分間放置した。塗工フィルムを、窒素雰囲気下で5分間静置したのち、水銀ランプで紫外線を照射量1500mJ/Wで照射して硬化反応を行ったのち、100℃で20分間加熱乾燥し積層フィルムを得た。
[実施例3]
実施例2において、製造例2で得られた重合体フィルムBを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて積層フィルムを得た。
[実施例4]
実施例2において、製造例7で得られた硬化液Cを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて積層フィルムを得た。
[比較例1]
実施例1のように硬化層を重合体フィルム表面に形成しなかった。
[比較例2]
実施例2において、製造例8で得られた硬化液Dを用いたこと以外は実施例2と同様の方法にて積層フィルムを得た。
実施例1〜4、比較例1〜2で作製した積層フィルムのクラッド層との密着性評価を行った。得られた結果を表1に示す。
Figure 2009012274
表1の結果より、本発明によって作製された積層フィルムを用いた場合、実施例1のように、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを用いた場合では、クロスカット試験において環状オレフィン系付加(共)重合体からなる重合体フィルムとクラッド層との層間剥離はほとんどみられず、密着性に優れることが明らかになった。また、実施例2〜4のように、硬化液を溶剤で希釈し、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを用いた場合でも、重合体フィルムとクラッド層との層間剥離はほとんどみられなかった。
比較例1にように、硬化層をまったく設けない場合には重合体フィルムとクラッド層との層間剥離は全面に及んだ。一方、比較例2のように硬化層にウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを用いない場合では、密着性が低下し良好な結果が得られなかった。
これらの結果より、ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマーを用いた硬化液を用いて硬化層を形成しないと、重合体フィルムとクラッド層との層間に良好な密着性が発現しないことが明らかになった。
本発明の積層フィルムは、重合体フィルムの優れた耐熱性、光学透明性および低吸湿性、高屈曲性を保持するともに、ポリマー光導波路材と優れた密着性を有するものであり、フレキシブルポリマー光導波路の保護フィルム基材として有効に用いることができる。

Claims (5)

  1. 下記式(1)で表される1種以上の構造単位を有する重合体からなる重合体フィルム上に、
    (A)下記式(2)で表される構造を有するラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー、
    (B)前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートおよび
    (C)光重合開始剤
    を含む硬化液を塗工し、硬化させることにより得られる硬化層が、形成されてなることを特徴とする積層フィルム。
    Figure 2009012274
    (式(1)中、A1〜A4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、炭素原子数3〜15のオキセタニル基、炭素原子数1〜15のN−置換イミド基、アルコキシル基の炭素原子数が1〜5であるアルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノキシカルボニル基、カーボナート基およびグリシジル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、
    これらの置換基は、炭素原子数1〜10のアルキレン基によって、互いに環状に結合していてもよく、
    1とA2とが、相互に結合して、脂環構造、環状の芳香族構造、または炭素原子数1〜15のアルキリデン基を形成していてもよく、
    1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とが、炭素原子数1〜15の脂環構造、環状の芳香族構造、環状の酸無水物基または環状のイミド基を形成していてもよく、
    mは、0または1の整数を示す。)
    Figure 2009012274
    (式中、X1は−(CH2CH2O)m―、―(CH(CH3)CH2O)m―、または―CH2CH(OH)CH2O−、X2は水素原子またはハロゲン原子、Yは−C(CH32−、−CH2−、−O−または−SO2−、を表し、mは0〜10の整数である。)
  2. 前記硬化液が、前記(A)成分を5〜90重量%、前記(B)成分を10〜95重量%、前記(C)成分を0.01〜10重量%含有することを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルム。
  3. 前記式(1)中、A1〜A4が、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、
    これらの置換基は、炭素原子数1〜10のアルキレン基によって、互いに環状に結合していてもよく、
    1とA2とが、相互に結合して脂環構造を形成していてもよく、
    1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とが、炭素原子数1〜15の脂環構造を形成していてもよいことを特徴とする、請求項1または2に記載の積層フィルム。
  4. 下記式(1)で表される1種以上の構造単位を有する重合体からなる重合体フィルム上に、(A)下記式(2)で表される構造を有するラジカル重合性ウレタン(メタ)アクリレートのオリゴマー、(B)前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリレートおよび(C)光重合開始剤を含む硬化液を塗工する工程および、光照射することにより硬化層を形成する工程を含有することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
    Figure 2009012274
    (式(1)中、A1〜A4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数5〜15のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、炭素原子数1〜10のアルコキシル基、炭素原子数3〜15のオキセタニル基、炭素原子数1〜15のN−置換イミド基、アルコキシル基の炭素原子数が1〜5であるアルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノキシカルボニル基、カーボナート基およびグリシジル基からなる群より選ばれる原子または置換基を表し、
    これらの置換基は、炭素原子数1〜10のアルキレン基によって、互いに環状に結合していてもよく、
    1とA2とが、相互に結合して、脂環構造、環状の芳香族構造、または炭素原子数1〜15のアルキリデン基を形成していてもよく、
    1とA3とそれぞれが結合する炭素原子とが、炭素原子数1〜15の脂環構造、環状の芳香族構造、環状の酸無水物基または環状のイミド基を形成していてもよく、
    mは、0または1の整数を示す。)
    Figure 2009012274
    (式中、X1は−(CH2CH2O)m―、―(CH(CH3)CH2O)m―、または―CH2
    CH(OH)CH2O−、X2は水素原子またはハロゲン原子、Yは−C(CH32−、−CH2−、−O−または−SO2−、を表し、mは0〜10の整数である。)
  5. 前記重合体フィルム表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、200〜300nmの波長を有するUVオゾン処理、および200nm以下の波長を有する電磁波放射線処理から選択される1つ以上の処理を施した後に、
    該表面上に、請求項4に記載の硬化液を塗工する工程および、該硬化液を硬化させることにより得られる硬化層を形成する工程を含有することを特徴とする積層フィルムの製造方法。
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