JP2009009715A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜・電極接合体を構成する高分子電解質膜を反応ガスの加湿膜として利用する自己加湿型燃料電池において、該高分子電解質膜を介して行われる反応ガスによる湿度交換の効率を向上させた燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料ガスと酸化剤ガスは対向流で流通し、燃料ガスの上流域と酸化剤ガスの下流域、及び燃料ガスの下流域と酸化剤ガスの上流域が、高分子電解質膜1を挟んで対向しており、高分子電解質膜は発電領域(A)と、発電領域に隣接し、且つ、高分子電解質膜の表面に設けられた親水性材料層からなると共に、少なくとも一部がガス拡散層5a,5bと接触する湿度交換部が設けられ、湿度交換部を介して、燃料ガスと酸化剤ガスの湿度交換が行われる湿度交換領域(B)と、を有し、湿度交換領域は、燃料ガス又は酸化剤ガスと湿度交換部が接触する表面積が、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜のガス拡散層への投影面積よりも大きくする。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池に関する。
燃料電池は、電気的に接続された2つの電極に燃料と酸化剤を供給し、電気化学的に燃料の酸化を起こさせることで、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する。火力発電とは異なり、燃料電池はカルノーサイクルの制約を受けないので、高いエネルギー変換効率を示す。燃料電池は、通常、電解質膜を一対の電極で挟持した膜・電極接合体を基本構造とする単セルを複数積層して構成されている。中でも、電解質膜として固体高分子電解質膜を用いた固体高分子電解質型燃料電池は、小型化が容易であること、低い温度で作動すること、などの利点があることから、特に携帯用、移動体用電源として注目されている。
図6は、一般的な固体高分子電解質型燃料電池における膜・電極接合体の一形態例を示す断面図である。膜・電極接合体100は、燃料電池用固体高分子電解質膜(以下、単に電解質膜ということがある)7の一面側に燃料極(アノード)8、及び酸化剤極(カソード)9が設けられた膜・電極接合体12を有している。燃料極8は電解質膜7側から順に燃料極側触媒層10a、燃料極側ガス拡散層11aが積層した構成となっている。酸化剤極9も同様に電解質膜7側から順に酸化剤極側触媒層10b、酸化剤極側ガス拡散層11bが積層された構成となっている。
各触媒層10(10a、10b)には、各電極(8,9)における電極反応に対して触媒活性を有する電極触媒が少なくとも備えられる。電極触媒としては、燃料極の燃料の酸化反応又は酸化剤極の酸化剤の還元反応に対して触媒活性を有しているものであれば、特に限定されず、例えば、白金、又はルテニウム、鉄、ニッケル、マンガン等の金属と白金との合金などが用いられている。電極触媒は、通常、カーボンブラック等の炭素粒子や炭素繊維のような導電性炭素材料、金属粒子や金属繊維等の金属材料からなる導電性粒子に担持された状態で触媒層に含有される。
膜・電極接合体12は、二つのセパレータ13a、13bで狭持され、単セル100が構成される。各セパレータ13a、13bの片面には、反応ガス(燃料ガス、酸化剤ガス)の流路を形成する溝が設けられており、これらの溝と燃料極8、酸化剤極9の外面とで燃料ガス流路14a、酸化剤ガス流路14bが画成されている。燃料ガス流路14aは、燃料極8に燃料ガス(水素を含む又は水素を発生させる気体)を供給するための流路であり、酸化剤ガス流路14bは、酸化剤極9に酸化剤ガス(酸素を含む又は酸素を発生させる気体)を供給するための流路である。
尚、図6において、各電極(燃料極、酸化剤極)は、共に、触媒層とガス拡散層とが積層した構造を有しているが、触媒層のみからなる単層構造や、触媒層とガス拡散層の他に機能層を設けた構造もある。
固体高分子電解質型燃料電池において、アノード(燃料極)では下記(1)式の反応が進行する。
2 → 2H+ + 2e- ・・・(1)
(1)式で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、カソード(酸化剤極)に到達する。そして、(1)式で生じたプロトンは、水と水和した状態で、電気浸透により固体高分子電解質膜内をアノード側からカソード側に移動する。
一方、カソードでは下記(2)式の反応が進行する。
4H+ + O2 + 4e- → 2H2O ・・・(2)
上記したように、プロトンは水分子を随伴して燃料極側から酸化剤極側へと移動する。すなわち、燃料極から酸化剤極へと効率よくプロトンが伝導され、優れた発電性能を発現する燃料電池を得るためには、膜・電極接合体内の含水量が非常に重要となってくる。
そこで、膜・電極接合体内の乾燥を防止すべく、反応ガスを加湿した状態で供給することが行われている。反応ガスの加湿方法としては、例えば、反応ガスを単セルへ供給する前に水透過性膜を介して水分と接触させる方法や、貯留された水中に反応ガスを散気する方法等が挙げられる。しかしながら、これら反応ガスの加湿方法は、上記加湿装置のためのスペースや稼動エネルギーを必要とするため、燃料電池の大型化、発電効率の低下等の問題点がある。また、反応ガスの供給システムの複雑化という問題もある。
上記問題を解決すべく、膜・電極接合体を構成する高分子電解質膜の一部を反応ガスを加湿する水透過膜として利用し、且つ、膜・電極接合体から排出される高湿潤状態の残余ガス中の水分によって、該高分子電解質膜を介して流通する燃料ガスや酸化剤ガスを加湿する方法も提案されている(特許文献1、2等)。このようにセル面内に加湿部を設けた自己加湿型燃料電池として、例えば、特許文献1には、燃料ガスと酸化剤ガスとを対向して通流するようになし、さらに、高分子電解質膜を挟んで配設した触媒電極層の外側隣接部であって、かつ反応ガスの上流部及び下流部の両側に、高分子電解質膜の両面を対向して流れる反応ガスの一方から他方へ電解質膜を介して水分を移動させる加湿部を設けたことを特徴とする燃料電池が記載されている。
特開2002−25584号公報 特開2003−288923号公報
特許文献1に記載の燃料電池は、加湿部がカーボン粒子をフッ化エチレン樹脂のバインダーで結着した構造を有しているため、フッ化エチレン樹脂の撥水性により加湿部から水分が逃げてしまい、反応ガスを充分に加湿することができないおそれがある。すなわち、電解質膜を介して行われる湿度交換効率が低く、反応ガスを充分に加湿するためには、加湿部のセル面に対する投影面積を広くする必要がある。その結果、発電領域である触媒層の面積が小さくなり、発電性能が低下してしまう。
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、膜・電極接合体を構成する高分子電解質膜を反応ガスの加湿膜として利用する自己加湿型燃料電池において、該高分子電解質膜を介して行われる反応ガスによる湿度交換の効率を向上させた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池は、高分子電解質膜と、該高分子電解質膜の一方の面に設けられた燃料極と、該高分子電解質膜の他方の面に設けられた酸化剤極と、を備え、前記燃料極に燃料ガス及び前記酸化剤極に酸化剤ガスを供給することによって発電する燃料電池であって、前記燃料極及び前記酸化剤極の少なくとも一方の電極が、前記電解質膜側から、少なくとも電極触媒と高分子電解質を含有する触媒層と導電性多孔質構造を有するガス拡散層とが積層した構造を有しており、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスは対向流で流通し、該燃料ガスの上流域と該酸化剤ガスの下流域、及び該燃料ガスの下流域と該酸化剤ガスの上流域が、前記高分子電解質膜を挟んで対向しており、前記高分子電解質膜は、前記触媒層が設けられた発電領域(A)と、該発電領域(A)に隣接し、且つ、前記燃料ガスの上流域であって前記酸化剤ガスの下流域、及び/又は、前記燃料ガスの下流域であって前記酸化剤ガスの上流域に対応する領域に位置し、該高分子電解質膜、或いは、該高分子電解質膜及び該高分子電解質膜の表面に設けられた親水性材料層からなると共に、少なくとも一部が前記ガス拡散層と接触する湿度交換部が設けられ、該湿度交換部を介して、燃料ガスと酸化剤ガスの湿度交換が行われる湿度交換領域(B)と、を有し、該湿度交換領域(B)は、燃料ガス又は酸化剤ガスと前記湿度交換部が接触する表面積が、該湿度交換領域を構成する高分子電解質膜の前記ガス拡散層への投影面積よりも大きいことを特徴とする。
本発明の燃料電池は、膜・電極接合体を構成する高分子電解質膜の一部を介して、流通する反応ガスの湿度交換を行う自己加湿型燃料電池であって、反応ガスの湿度交換を行う湿度交換部と反応ガスの接触面積を大きくすることによって、湿度交換効率を向上させたものである。すなわち、本発明の燃料電池は、小さな投影面積でも湿度交換能が高く、反応ガスを充分に加湿することができる湿度交換領域を有しており、未反応ガスと共にセル外へと排出される水分を反応ガスの加湿に効率よく有効利用することが可能である。
前記湿度交換領域の具体的な構造としては、例えば、湿度交換領域(B)において前記湿度交換部を構成する前記高分子電解質膜が前記ガス拡散層側の表面が凹凸形状を有している構造が挙げられる。このとき、具体的な凹凸形状としては、例えば、前記高分子電解質膜の厚さ方向に該高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有するひだ形状、前記高分子電解質膜の厚さ方向に該高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有する独立峰状の凸形状及び深さが前記高分子電解質膜の膜厚未満の凹部を有する形状が挙げられる。
また、前記湿度交換領域のその他具体的な構造としては、前記湿度交換領域(B)において前記湿度交換部を構成する前記親水性材料層が、親水性高分子樹脂と粒子の混合物又は親水性粒子を含み、多孔質構造を有している構造が挙げられる。このとき、具体的な親水性粒子としては、親水性高分子樹脂からなる粒子が挙げられる。
前記親水性粒子及び親水性高分子は、水接触角が90度以下であることが好ましい。
本発明によれば、セル内の水分を利用して、効率よく反応ガスを加湿することが可能であり、しかも、燃料電池の大型化を伴わず、エネルギー効率にも優れるものである。
本発明の燃料電池は、高分子電解質膜と、該高分子電解質膜の一方の面に設けられた燃料極と、該高分子電解質膜の他方の面に設けられた酸化剤極と、を備え、前記燃料極に燃料ガス及び前記酸化剤極に酸化剤ガスを供給することによって発電する燃料電池であって、前記燃料極及び前記酸化剤極の少なくとも一方の電極が、前記電解質膜側から、少なくとも電極触媒と高分子電解質を含有する触媒層と導電性多孔質構造を有するガス拡散層とが積層した構造を有しており、前記燃料ガスと前記酸化剤ガスは対向流で流通し、該燃料ガスの上流域と該酸化剤ガスの下流域、及び該燃料ガスの下流域と該酸化剤ガスの上流域が、前記高分子電解質膜を挟んで対向しており、前記高分子電解質膜は、前記触媒層が設けられた発電領域(A)と、該発電領域(A)に隣接し、且つ、前記燃料ガスの上流域であって前記酸化剤ガスの下流域、及び/又は、前記燃料ガスの下流域であって前記酸化剤ガスの上流域に対応する領域に位置し、該高分子電解質膜、或いは、該高分子電解質膜及び該高分子電解質膜の表面に設けられた親水性材料層からなると共に、少なくとも一部が前記ガス拡散層と接触する湿度交換部が設けられ、該湿度交換部を介して、燃料ガスと酸化剤ガスの湿度交換が行われる湿度交換領域(B)と、を有し、該湿度交換領域(B)は、燃料ガス又は酸化剤ガスと前記湿度交換部が接触する表面積が、該湿度交換領域を構成する高分子電解質膜の前記ガス拡散層への投影面積よりも大きいことを特徴としている。
以下、本発明の燃料電池について、図1〜図5を用いて説明する。尚、図1は、本発明の燃料電池における膜・電極接合体の一形態例を示す断面図(1A)及びその分解斜視図(1B)である。
図1において、高分子電解質膜1の一方の面には燃料極2、他方の面には酸化剤極3が設けられている。燃料極2及び酸化剤極3は共に、高分子電解質膜1側から順に触媒層4(4a、4b)とガス拡散層5(5a、5b)とが積層した構造を有している。尚、本実施形態においては、燃料極2及び酸化剤極3共に上記積層構造を有しているが、触媒層のみからなる単層構造であってもよいし、触媒層とガス拡散層以外の機能層を有する多層構造であってもよい。
高分子電解質膜1としては、特に限定されず、例えば、ナフィオン(商品名)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂等のフッ素系高分子電解質や、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンスルフィド等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、ボロン酸基、水酸基等のプロトン伝導性基を導入した炭化水素系高分子電解質等を含有するものが挙げられる。このような高分子電解質を含有してなる高分子電解質膜は、燃料電池の使用環境のような湿潤状態下においては、親水性を発現する。
触媒層は、通常、各電極における電極反応に対して触媒活性を有する電極触媒と電解質樹脂とを含有する触媒インクを用いて形成される。
電極触媒としては、通常、触媒成分を導電性粒子に担持させたものが用いられる。触媒成分としては、燃料極の燃料の酸化反応又は酸化剤極の酸化剤の還元反応に対して触媒活性を有しているものであれば、特に限定されず、固体高分子型燃料電池に一般的に用いられているものを使用することができる。例えば、白金、又はルテニウム、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、銅等の金属と白金との合金等が挙げられる。触媒担体である導電性粒子としては、カーボンブラック等の炭素粒子や炭素繊維のような導電性炭素材料、金属粒子や金属繊維等の金属材料も用いることができる。
電解質樹脂としては、電解質膜を構成する高分子電解質樹脂として例示したもの等を用いることができる。
触媒インクは上記のような電極触媒と電解質樹脂とを、溶媒に溶解又は分散させて得られる。触媒インクの溶媒は、適宜選択すればよく、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の有機溶媒、又はこれら有機溶媒の混合物やこれら有機溶媒と水との混合物を用いることができる。触媒インクには、電極触媒及び電解質樹脂以外にも、必要に応じて結着剤や撥水性樹脂等のその他の成分を含有させてもよい。
触媒層の形成方法は特に限定されず、例えば、触媒インクをガス拡散層用シート(導電性多孔体)の表面に塗布、乾燥することによって、ガス拡散層用シート表面に触媒層を形成してもよいし、或いは、電解質膜表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、電解質膜表面に触媒層を形成してもよい。或いは、転写用基材表面に触媒インクを塗布、乾燥することによって、転写シートを作製し、該転写シートを、電解質膜又はガス拡散用シートと熱圧着等により接合し、電解質膜表面上に触媒層を形成するか、ガス拡散層用シート表面に触媒層を形成してもよい。
触媒インクの塗布方法、乾燥方法等は適宜選択することができる。例えば、塗布方法としては、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法などが挙げられる。また、乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、減圧加熱乾燥などが挙げられる。減圧乾燥、加熱乾燥における具体的な条件に制限はなく、適宜設定すればよい。
触媒インクの塗布量は、触媒インクの組成や、電極触媒に用いられる触媒金属の触媒性能等によって異なるが、単位面積当りの触媒成分量が、0.1〜0.8mg/cm2程度となるようにすればよい。また、触媒層の膜厚は、特に限定されないが、1〜20μm程度とすればよい。
ガス拡散層は、触媒層に効率良くガスを供給することができるガス拡散性、導電性、及びガス拡散層を構成する材料として要求される強度を有するもの、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の炭素質多孔質体や、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、ニッケル−クロム合金、銅及びその合金、銀、アルミ合金、亜鉛合金、鉛合金、チタン、ニオブ、タンタル、鉄、ステンレス、金、白金等の金属から構成される金属メッシュ又は金属多孔質体等の導電性多孔質体からなるガス拡散層シートを用いて形成することができる。ガス拡散層層の厚さは、50〜300μm程度であることが好ましい。
ガス拡散層シートは、上記したような導電性多孔質体の単層からなるものであってもよいが、触媒層に面する側に撥水層を設けることもできる。撥水層は、通常、炭素粒子や炭素繊維等の導電性粉粒体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の撥水性樹脂等を含む多孔質構造を有するものである。撥水層を導電性多孔質体上に形成する方法は特に限定されず、例えば、炭素粒子等の導電性粉粒体と撥水性樹脂、及び必要に応じてその他の成分を、エタノール、プロパノール、プロピレングリコール等の有機溶剤、水又はこれらの混合物等の溶剤と混合した撥水層インクを、導電性多孔質体の少なくとも触媒層に面する側に塗布し、その後、乾燥及び/又は焼成すればよい。
また、ガス拡散層シートは、導電性多孔質体の触媒層と面する側に、ポリテトラフルオロエチレン等の撥水性樹脂をバーコーター等によって含浸塗布することによって、触媒層内の水分がガス拡散層の外へ効率良く排出されるように加工してもよい。
上記したような方法によって触媒層を形成した電解質膜及びガス拡散層用シートは、適宜、ガス拡散層用シート又は電解質膜と重ね合わせて熱圧着等し、互いに接合することで、膜・電極接合体が得られる。
作製された膜・電極接合体は、さらに、セパレータ(図示せず)で狭持され、単セルを形成する。セパレータとしては、導電性及びガスシール性を有し、集電体及びガスシール体として機能しうるもの、例えば、炭素繊維を高濃度に含有し、樹脂との複合材からなるカーボンセパレータや、金属材料を用いた金属セパレータ等を用いることができる。金属セパレータとしては、耐腐食性に優れた金属材料からなるものや、表面をカーボンや耐腐食性に優れた金属材料等で被覆し、耐腐食性を高めるコーティングが施されたもの等が挙げられる。
燃料極2に供給される燃料ガス(例えば、水素を発生又は水素含むガス。H2ガスなど)と、酸化剤極3に供給される酸化剤ガス(例えば、酸素を発生又は酸素含むガス。空気など)は、高分子電解質膜1を燃料極2及び酸化剤極3で狭持してなる膜・電極接合体200の面内において、燃料ガスの上流域と酸化剤ガスの下流域、及び、燃料ガスの下流域と酸化剤ガスの上流域が、それぞれ高分子電解質膜1を挟んで対向するように対向流で流通している。
ここで、燃料ガスの上流域及び下流域とは、膜・電極接合体に供給され、膜・電極接合体内を流通し、膜・電極接合体から排出される燃料ガスの膜・電極接合体内における流通経路の上流側及び下流側を意味するものであり、該流通経路の流路長のうち、ガス供給側の2分の1を上流域、ガス排出側の2分の1を下流域とする。
同様に、酸化剤ガスの上流域及び下流域とは、膜・電極接合体に供給され、膜・電極接合体内を流通し、膜・電極接合体から排出される酸化剤ガスの膜・電極接合体内における流通経路の上流側及び下流側を意味するものであり、該流通経路の流路長のうち、ガス供給側の2分の1を上流域、ガス排出側の2分の1を下流域とする。
また、燃料ガスの上流域と酸化剤ガスの下流域が高分子電解質膜を挟んで対向するように流通しているとは、高分子電解質膜1の一方の面に設けられた燃料極2に供給される燃料ガスの上流域の少なくとも一部と、高分子電解質膜のもう一方の面に設けられた酸化剤極3に供給される酸化剤ガスの下流域の少なくとも一部とが、該高分子電解質膜1を挟んで対峙している状態であり、燃料ガスの上流域全体と酸化剤ガスの下流域全体とが対峙していなくてもよい。
本発明による効果を高める観点からは、少なくとも、燃料ガスの流路長のガス供給側の4分の1〜2分の1の領域と、酸化剤ガスの流路長のガス排出側の4分の1〜2分の1の領域とが、高分子電解質膜を挟んで対向することが好ましい。同様に、少なくとも、燃料ガスの流路長のガス排出側の4分の1〜2分の1の領域と、酸化剤ガスの流路長のガス供給側の4分の1〜2分の1の領域とが、高分子電解質膜を挟んで対向することが好ましい。特に、燃料ガスの上流域全体と酸化剤ガスの下流域全体が高分子電解質膜を挟んで対向、及び/又は燃料ガスの下流域全体と酸化剤ガスの上流域全体が電解質膜を挟んで対向することが好ましい。
高分子電解質膜1は、触媒層4a、4bが設けられた発電領域(A)と、発電領域(A)に隣接する湿度交換領域(B)とを有している。湿度交換領域(B)は、発電領域(A)とは異なり、電極触媒が配置されておらず、電極反応の場となる領域ではない。また、湿度交換領域(B)は、燃料ガスの上流域であって且つ酸化剤ガスの下流域である領域(B1)と、燃料ガスの下流域であって且つ酸化剤ガスの上流域である領域(B2)からなり、高分子電解質膜1の表面には、親水性材料を含む多孔質層6a及び6bが設けられている。多孔質層6a及び6bは、それぞれ、高分子電解質膜1と接合する面と反対側の面において、ガス拡散層5a、5bと接合している。
多孔質層6(6a、6b)は、高分子電解質樹脂と炭素粒子を溶媒中に溶解又は分散させた混合物を、高分子電解質膜1の表面に塗布することで形成されており、表面が高分子電解質樹脂で被覆された炭素粒子間に細孔が形成された多孔質構造を有している。多孔質層6a、6bに含まれる高分子電解質樹脂(親水性材料)は、高分子電解質膜1と接触し、湿度交換領域Bの厚さ方向に、多孔質層6a−高分子電解質膜1−多孔質層6b間で連続する水移動パスを形成しており、該湿度交換領域Bを挟んでその両側を流れる燃料ガスと酸化剤ガスの間での湿度交換が、高分子電解質膜1と多孔質層6a、6bに含有される高分子電解質樹脂とからなる湿度交換部を介して可能になっている。
ここで、図1の膜・電極接合体200の湿度交換領域(B)において、燃料極2に供給される燃料ガスと、酸化剤極3に供給される酸化剤ガスとの間で行われる湿度交換について詳しく説明する。
燃料極2に供給された燃料ガスは、触媒層4aで反応成分を消費されつつ、燃料極2内の水分で加湿されながら、燃料極2の面内を上流側から下流側へと流れる。従って、燃料ガスは、下流側において高湿度状態となっている。同様に、酸化剤極3に供給された酸化剤ガスは、触媒層5bで反応成分を消費されつつ、酸化剤極3内の水分で加湿されながら、酸化剤極3の面内を上流側から下流側へと流れ、下流側において高湿度状態となっている。
本実施形態において、燃料ガスと酸化剤ガスは、燃料ガスの上流域と酸化剤ガスの下流域、並びに、燃料ガスの下流域と酸化剤ガスの上流域が、高分子電解質膜1を挟んで対向するように、すなわち、低湿度状態の燃料ガスと高湿度状態の酸化剤ガス、並びに、高湿度状態の燃料ガスと低湿度状態の酸化剤ガスとが高分子電解質膜を挟んで対向するように流通している。
従って、燃料ガスの上流域と酸化剤ガスの下流域が対向する領域(湿度交換領域B1)においては、ガス拡散層5b内を流通する酸化剤ガスが多孔質層6bの細孔内に入り込んだ際に、酸化剤ガス中の水分が該多孔質層6b内の湿度交換部を構成する高分子電解質樹脂に取り込まれ、該高分子電解質樹脂内を移動して高分子電解質膜1へと到達する。或いは、多孔質層6bの細孔に入り込んだ酸化剤ガスの水分が直接高分子電解質膜1に取り込まれる。そして、これら高分子電解質膜1に到達した水分は、湿度交換領域B1の多孔質層6a内の湿度交換部を構成する高分子電解質樹脂内を移動し、又は高分子電解質膜1から直接、多孔質層6aの細孔内を流れる燃料ガスと接触して燃料ガス中へと蒸散する。
同様に、燃料ガスの下流域と酸化剤ガスの上流域が対向する領域(湿度交換領域B2)においては、ガス拡散層5a内を流通する燃料ガスが多孔質層6aの細孔内に入り込んだ際に、燃料ガス中の水分が該多孔質層6a内の湿度交換部を構成する高分子電解質樹脂に取り込まれ、該高分子電解質樹脂内を移動して高分子電解質膜1へと到達する。或いは、多孔質層6aの細孔に入り込んだ燃料ガスの水分が直接高分子電解質膜1に取り込まれる。そして、これら高分子電解質膜1に到達した水分は、湿度交換領域B2の多孔質層6b内の湿度交換部を構成する高分子電解質樹脂内を移動し、又は高分子電解質膜1から直接、多孔質層6bの細孔内を流れる酸化剤ガスと接触し、酸化剤ガス中へと蒸散する。
本発明の燃料電池は、燃料ガス中に含まれる水分を利用して酸化剤ガスを加湿及び/又は酸化剤ガス中に含まれる水分を利用して燃料ガスを加湿する、自己加湿型の燃料電池であり、上記湿度交換領域(B)において、ガス拡散層を流れる反応ガスと、該湿度交換領域(B)の湿度交換部(高分子電解質膜1並びに多孔質層6a及び6bの高分子電解質樹脂)との接触面積を、該湿度交換領域(B)を構成する高分子電解質膜のガス拡散層に対する投影面積よりも大きくすることによって、該反応ガスと湿度交換部間における湿度交換効率の向上を可能としたものである。湿度交換部と反応ガスとが接触する表面積を大きくすることによって、湿度交換部による反応ガスからの水分吸収と湿度交換部に吸収された水分の反応ガスへの蒸散を効率良く進行させることができる。
ここで、反応ガス(燃料ガス又は酸化剤ガス)と、湿度交換部が接触する表面積とは、湿度交換部が高分子電解質膜のみからなる場合には、該湿度交換部を構成する高分子電解質膜の表面積であり、湿度交換部が高分子電解質膜とその表面に設けられた親水性材料層とからなる場合には、該湿度交換部を構成する高分子電解質膜の表面積と、親水性材料層の内部空隙を形成する親水性材料の表面積との和とする。
このように、燃料ガスと酸化剤ガス間の湿度交換効率を向上することによって、湿度交換領域の電解質膜のガス拡散層に対する投影面積を小さくすることが可能である。すなわち、投影単位面積あたりの湿度交換能力が低い従来の燃料電池では、充分な湿度交換を行うために、湿度交換領域の投影面積を大きくする必要があり、発電領域の面積減少による発電性能低下や燃料電池の大型化を伴っていたが、投影単位面積あたりの湿度交換効率に優れる本発明の燃料電池によれば、燃料電池を大型化しなくても充分な面積の発電領域を確保することができ、燃料電池の発電効率を高めることができる。
ここで、湿度交換領域の高分子電解質膜のガス拡散層に対する投影面積(以下、単に湿度交換領域の投影面積ということがある)とは、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜をガス拡散層に面方向)をガス拡散層に投影させた際の面積、つまり、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜の膜・電極接合体の積層方向における投影面積である。
図1に示す本実施形態は、湿度交換部と反応ガスとの接触表面積を湿度交換領域の投影面積よりも増大させる手段として、湿度交換部を形成する高分子電解質膜の表面に、該高分子電解質膜と接触し、共に湿度交換部を形成する高分子電解質樹脂を含む多孔質層を設けたものである。
高分子電解質樹脂としては、高分子電解質膜や触媒層を形成するものとして用いることが可能なものであればよく、例えば、ナフィオン(デュポン社製)に代表されるパーフルオロカーボンスルホン酸樹脂等のフッ素系高分子電解質の他、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエチレンスルフィド等の炭化水素系高分子にスルホン酸基、ボロン酸基、水酸基等のプロトン伝導性基を導入した炭化水素系高分子電解質等が挙げられる。
また、多孔質構造を形成する粒子としては、炭素粒子の他、SiO2、SnO2、Al23、CeO2、TiO2、ZrO2、ガラス等が挙げられる。これら粒子は、球状の他、繊維状等アスペクト比の大きな形状であってもよい。該粒子の表面に付着して湿度交換部として機能する親水性材料と反応ガスの接触面積を効率よく向上させる観点から、該粒子の粒径は、0.05〜20μm程度であることが好ましい。
多孔質層は上記構造に限定されず、高分子電解質膜と接触して連続する水移動パスを形成する親水性材料を含有し且つ多孔質構造を有し、該親水性材料及び高分子電解質膜からなる湿度交換部と反応ガスとの接触面積が湿度交換領域の投影面積よりも大きくなればよい。例えば、親水性材料としては、高分子電解質樹脂の他、親水性を示す材料、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の高分子樹脂、SiO2、SnO2、Al23、CeO2、TiO2、ZrO2、ゼオライト等の無機酸化物等が挙げられる。また、ポリエチレンやポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン等の親水性を有していない高分子樹脂の粒子表面をプラズマ処理、CVD法等により親水化処理したものでもよい。中でも、親水性高分子樹脂(高分子電解質樹脂を含む)が好適である。親水性高分子樹脂としては、乾燥状態において、加湿条件下、水分を吸収する吸水性を有するものが好ましい。
ここで、親水性材料の親水性とは、水接触角で特定することができ、水接触角が90度以下、特に、30度以下であることが好ましい。親水性材料の水接触角は一般的な方法に準じて測定することができる。例えば、親水性材料で形成された平滑な表面を持つ試験体表面の水接触角と考えることができ、接触角計により測定することができる。尚、水の接触角は試験体に純水2μlを滴下してから1秒後の値とする。
親水性材料として、多孔質層形成後、粒子状態を保持できるもの、例えば、SiO2、Al23、TiO2、ゼオライト等の無機酸化物粒子、ポリアクリル酸等の親水性高分子樹脂からなる親水性粒子を用いる場合には、親水性材料単独で多孔質構造を形成できるが、高分子樹脂等の親水性材料を溶媒に溶解した混合物を用いて多孔質層を形成する場合には、該樹脂をバインダーとして、多孔質構造を形成できる粒子を併用することが好ましい。
蒸散性促進の観点から、多孔質層は、親水性高分子樹脂からなる粒子、或いは、親水性高分子樹脂と粒子(親水性を有していても有していなくてもよい)の混合物により構成されることが好ましい。
多孔質層の厚さは特に限定されず、その構造によって好適な厚さは変わってくるが、触媒層より厚くても薄くてもよく、一般的には、2〜20μmの範囲であることが好ましい。
多孔質層の形成方法は特に限定されず、多孔質層を形成する親水性材料及び必要に応じて粒子等その他成分を、適当な溶媒に分散及び/又は溶解し、得られた混合溶液を高分子電解質膜の湿度交換領域に相当する位置に直接塗布する方法、或いは、ガス拡散層を構成するガス拡散層シートの湿度交換領域と対向する位置に直接塗布し、該多孔質層付きガス拡散層シートと高分子電解質膜とを接合する方法、或いは、基材シートに塗布、乾燥させて転写シートを作製し、高分子電解質膜又はガス拡散層シートの該当位置に熱転写する方法等が挙げられる。
上記溶媒としては特に限定されず、多孔質層を形成する材料の分散性や溶解性、高分子電解質やガス拡散層シートとの相性等を適宜考慮して選択すればよい。
湿度交換部と反応ガスとが接触する表面積を増大させる手段としては、上記多孔質層を形成する方法に限定されず、例えば、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜のガス拡散層側表面を凹凸形状とし、湿度交換部を構成する高分子電解質膜の表面積を増大させる方法(図2参照)が挙げられる。このように高分子電解質膜の表面を凹凸形状とすることによって、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜と反応ガスが接触する表面積を、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜の投影面積よりも大きくすることができる。該凹凸形状を有する高分子電解質膜は、直接、ガス拡散層と接合してもよいし(図2参照)、図1に示した実施形態のようにさらにその凹凸表面上に親水性材料を含有する多孔質層を形成してもよい。
高分子電解質膜の特定領域のみに凹凸形状を形成する方法は特に限定されず、例えば、表面に凹凸形状を有するガス拡散層により挟みこむ方法、凹凸状の鋳型を用いて製膜(キャスト法、溶融法など)する方法、膜をひだ状に折りたたんだ状態でガス拡散層シート等と接合して固定する方法等が挙げられる。中でも、工程の簡略化の観点から、凹凸形状を有するガス拡散層を用いる方法が好適である。
高分子電解質膜の凹凸形状の具体的な形、サイズ等は、特に限定されず、湿度交換効率、湿度交換領域における高分子電解質膜の機械的強度等を考慮して適宜決定すればよい。具体的には、湿度交換効率の観点から、湿度交換領域の投影面積に対して、湿度交換領域の電解質膜の表面積が2〜10倍程度になるように、凹凸形状を設計することが好ましい。凹凸形状は、電解質膜の厚さはほぼ一定とし、電解質膜を厚さ方向に全体的に変形した形状(図3の3A、3Bも参照)でもよいし、或いは、電解質膜の厚さを部分的に変化させることで、その表面形状を変形させた形状(図3の3C参照)でもよい。
具体的な凹凸形状としては、例えば、高分子電解質膜の厚さ方向に該高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有するひだ形状[図3(3A)参照]、高分子電解質膜の厚さ方向に該高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有する独立峰状の凸形状[図3(3B)参照]、及び深さが高分子電解質膜の膜厚未満の凹部を有する形状[図3(3C)参照]が挙げられる。
ここで、高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有するひだ形状とは、図3の(3A)に示すように、厚さhの高分子電解質膜をひだ折りすることで形成された峰状の凸部と凹部の高低差Hが、膜厚h以上の形状である。具体的には、湿度交換領域の投影面積に対して、湿度交換領域の電解質膜の表面積が2〜10倍程度となるように、例えば、膜厚hに対する高低差Hが2〜10倍、隣り合う峰状の凸部と凸部の間隔(P1)が40〜400μmの形状が挙げられる。
また、高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有する独立峰状の凸形状とは、図3の(3B)に示すように、厚さhの高分子電解質膜を、一方の面側に膜厚h以上の高さH’で独立峰状に隆起させた形状である。具体的には、湿度交換領域の投影面積に対して、湿度交換領域の電解質膜の表面積が2〜10倍程度となるように、例えば、膜厚hに対する高さH’が1〜2倍、隣り合う凸部の頂点間の間隔(P2)が50〜200μmの形状が挙げられる。
また、深さが高分子電解質膜の膜厚未満の凹部を有する形状とは、図3の(3C)に示すように、厚さhの高分子電解質膜を部分的に薄くすることにより、膜厚h未満の深さDを有する凹部を形成した形状である。具体的には、湿度交換領域の投影面積に対して、湿度交換領域の電解質膜の表面積が2〜10倍程度となるように、例えば、膜厚hに対する深さDが0.1〜0.3倍、隣り合う凹部の間隔(P3)が、円柱状の凹部の半径r(2〜20μm)に対して、3r〜6rの形状が挙げられる。
本発明における湿度交換領域での湿度交換効率をさらに高める方法として、以下の方法が挙げられる。
まず、図4に示す実施形態のように、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜の膜厚を、発電領域における膜厚よりも薄くする方法が挙げられる。湿度交換領域を構成する高分子電解質膜を薄くすることによって、高分子電解質膜の厚さ方向における水の移動性を高めることが可能であり、燃料ガスと酸化剤ガス間の湿度交換効率をさらに向上させることができる。
このとき、湿度交換領域を構成する高分子電解質膜の膜厚は、特に限定されないが、水分の移動性の他、機械的強度、クロスリークの発生等を考慮して、10〜25μm程度とすることが好ましい。
また、ガス拡散層は排水性を考慮して撥水性が付与され、通常、100〜150度程度の水接触角を有しているが、湿度交換領域と対向する領域(5a’及び/又は5b’)のみを限定的に親水性(水接触角90度以下)とすることで、撥水性を有するガス拡散層から排出されるべき余剰の水分を、湿度交換領域部分のガス拡散層に呼び込むことが可能となり、水移動を促進させることができる(図5参照)。その結果、湿度交換領域において反応ガスの湿度交換に使用される水分量が増加し、湿度交換効率をさらに向上させることが可能となる。
尚、ここで、ガス拡散層の水接触角は、上記親水性材料の水接触角と同様にして測定することができる。ガス拡散層の親水性(水接触角)を調節する方法としては、例えば、スパッタリングによる親水化処理や、プラズマ放電加工による親水化処理が挙げられる。
また、ガス拡散層の湿度交換領域における気孔率(ガス拡散層の空孔が占める体積/ガス拡散層全体の体積×100%)を、発電領域における気孔率よりも大きくする方法が挙げられる。発電領域よりも湿度交換領域における気孔率を高くすることによって、湿度交換領域のガス拡散層に多くの液水が導かれても、該液水の滞留によるガス拡散性の低下が生じにくくなるため、湿度交換領域のガス拡散層へのガス透過性が保持され効率的に湿度交換できると共に、発電領域におけるガス拡散性が確保され、発電性能の保持も可能である。
また、酸化剤ガス下流側及び/又は燃料ガス下流側を冷却する方法が挙げられる。反応ガス下流側を冷却することによって、各反応ガスの下流域においてガス中の水分が凝縮し、液水を発生させることができる。その結果、湿度交換領域を挟んで対峙する燃料ガスの下流側と酸化剤ガスの上流側及び燃料ガスの上流側と酸化剤ガスの下流側における水分濃度差が大きくなる、すなわち、下流側から上流側への水移動の駆動力が大きくなり効率的に湿度交換を行うことが可能となる。具体的な手段としては、反応ガスの排出口側から冷却水を流通させる方法が挙げられる。
尚、ここでは、燃料ガスの上流域であって酸化剤ガスの下流域である領域と、燃料ガスの下流域であって酸化剤ガスの上流域である領域を、湿度交換領域(B1、B2)としたが、本発明においては、上記2つの領域のうち、少なくとも一方を湿度交換領域としてもよい。燃料ガスと酸化剤ガスの湿度交換効率向上効果が高いという観点から、少なくとも、燃料ガスの上流域であって酸化剤ガスの下流域である領域を湿度交換領域とすることが好ましい。酸化剤極では電極反応により水が生成するため、酸化剤ガスの下流域における水分量は燃料ガスの下流域における水分量よりも多いからである。
本発明の燃料電池における膜・電極接合体の一形態例を示す図である。 本発明の燃料電池における膜・電極接合体の他の形態例を示す図である。 本発明の燃料電池における高分子電解質膜の凹凸形状の一例を示す図である。 本発明の燃料電池における膜・電極接合体の他の形態例を示す図である。 本発明の燃料電池における膜・電極接合体の他の形態例を示す図である。 従来の一般的な単セルの一形態例を示す断面図である。
符号の説明
1…高分子電解質膜
2…燃料極
3…酸化剤極
4…触媒層(4a:燃料極側触媒層、4b:酸化剤極側触媒層)
5…ガス拡散層(5a:燃料極側ガス拡散層、5b:酸化剤極側ガス拡散層)
6…親水性多孔質層(6a:燃料極側親水性多孔質層、6b:酸化剤極側親水性多孔質層)
7…高分子電解質膜
8…燃料極
9…酸化剤極
10…触媒層(10a:燃料極側触媒層、10b:酸化剤極側触媒層)
11…ガス拡散層(11a:燃料極側ガス拡散層、12b:酸化剤極側ガス拡散層)
13a…アノード側セパレータ
13b…カソード側セパレータ
14a…アノード側ガス流路
14b…カソード側ガス流路
100…単セル
200…膜・電極接合体
A…発電領域
B…湿度交換領域(B1、B2)

Claims (6)

  1. 高分子電解質膜と、該高分子電解質膜の一方の面に設けられた燃料極と、該高分子電解質膜の他方の面に設けられた酸化剤極と、を備え、前記燃料極に燃料ガス及び前記酸化剤極に酸化剤ガスを供給することによって発電する燃料電池であって、
    前記燃料極及び前記酸化剤極の少なくとも一方の電極が、前記電解質膜側から、少なくとも電極触媒と高分子電解質を含有する触媒層と導電性多孔質構造を有するガス拡散層とが積層した構造を有しており、
    前記燃料ガスと前記酸化剤ガスは対向流で流通し、該燃料ガスの上流域と該酸化剤ガスの下流域、及び該燃料ガスの下流域と該酸化剤ガスの上流域が、前記高分子電解質膜を挟んで対向しており、
    前記高分子電解質膜は、
    前記触媒層が設けられた発電領域(A)と、
    該発電領域(A)に隣接し、且つ、前記燃料ガスの上流域であって前記酸化剤ガスの下流域、及び/又は、前記燃料ガスの下流域であって前記酸化剤ガスの上流域に対応する領域に位置し、該高分子電解質膜、或いは、該高分子電解質膜及び該高分子電解質膜の表面に設けられた親水性材料層からなると共に、少なくとも一部が前記ガス拡散層と接触する湿度交換部が設けられ、該湿度交換部を介して、燃料ガスと酸化剤ガスの湿度交換が行われる湿度交換領域(B)と、を有し、
    該湿度交換領域(B)は、燃料ガス又は酸化剤ガスと前記湿度交換部が接触する表面積が、該湿度交換領域を構成する高分子電解質膜の前記ガス拡散層への投影面積よりも大きいことを特徴とする燃料電池。
  2. 前記湿度交換領域(B)において前記湿度交換部を構成する前記高分子電解質膜は、前記ガス拡散層側の表面が凹凸形状を有していることを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池。
  3. 前記凹凸形状は、前記高分子電解質膜の厚さ方向に該高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有するひだ形状、前記高分子電解質膜の厚さ方向に該高分子電解質膜の膜厚以上の高低差を有する独立峰状の凸形状及び深さが前記高分子電解質膜の膜厚未満の凹部を有する形状から選ばれる1種である、請求項2に記載の燃料電池。
  4. 前記湿度交換領域(B)において前記湿度交換部を構成する前記親水性材料層は、親水性高分子樹脂と粒子の混合物又は親水性粒子を含み、多孔質構造を有していることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の燃料電池。
  5. 前記親水性粒子は、親水性高分子樹脂からなる粒子である、請求項4に記載の燃料電池。
  6. 前記親水性粒子及び親水性高分子樹脂は、水接触角が90度以下である、請求項4又は5に記載の燃料電池。
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