JP2009005274A - 音響装置及びハウリング抑制方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】信号の増幅量g(dB)が帰還ループの減衰量L(dB)より大きくても信号の発振が生じにくい電気音響変換再生装置に適用される音響装置及びハウリング抑制方法を提供すること。
【解決手段】音響信号を電気信号に変換する音響入力部1と、入力信号をデジタル信号に変換するAD変換部2と、デジタル信号を処理する信号処理部3と、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部4と、アナログ信号を増幅する信号増幅部5と、増幅された信号を音響信号として出力する音響出力部6とを備え、信号処理部3は、櫛型フィルタ部7と周波数変換部8を含むことを特徴とする音響装置である。
【選択図】図1
【解決手段】音響信号を電気信号に変換する音響入力部1と、入力信号をデジタル信号に変換するAD変換部2と、デジタル信号を処理する信号処理部3と、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部4と、アナログ信号を増幅する信号増幅部5と、増幅された信号を音響信号として出力する音響出力部6とを備え、信号処理部3は、櫛型フィルタ部7と周波数変換部8を含むことを特徴とする音響装置である。
【選択図】図1
Description
本発明は、音響装置及びハウリング抑制方法に係り、特に、補聴器や拡声器、カラオケ装置のような音響入力信号を増幅してスピーカやイヤホンから出力させる電気音響変換再生装置に適用される音響装置及びハウリング抑制方法に関する。
近年、補聴器は小型化、高出力化が進んでおり、音を入力するマイクロホン部と音を出力するイヤホン部が数十ミリメートルほどの距離を隔てて配置されている。重度難聴者用補聴器の場合、イヤホン部からの出力レベルが最大140dB SPL(sound pressure level)を超える場合がある。また拡声器においても、高出力スピーカがマイクロホンに近接して配置される場合がある。
しかし、スピーカ又はイヤホンがマイクロホンに近接するこれらの装置では、音響フィードバック経路(音響結合)ができるため、スピーカやイヤホンからの出力信号の一部がマイクロホンに帰還することになる。このとき、音響出力信号は、マイクロホンに達するまでの間に減衰するが、この減衰量L(dB)に比べて装置の増幅量g(dB)が大きいと、帰還が繰り返され、信号レベルは無限に増幅されてしまう。つまり、ハウリングと呼ばれるこの現象は、不快な音を生じるだけでなく、スピーカやイヤホンを酷使し、不必要な電力を消費するといった問題を生じる。
このハウリングを抑制するために、ハウリングが発生しているかどうか、及びハウリングの発生している周波数を自動的に推定し、その周波数の成分を逆位相の信号にて相殺する、又はその周波数付近の増幅率を選択的に低下させるといった方法(特許文献1、特許文献2)や信号の位相を変調する方法、遅延時間を変化させる方法等が提案されている(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7)。また、入力部と出力部の間に周波数変換部を設けることによって音響結合を低減させる方法(特許文献8)。さらに、2つの櫛型フィルタを交互に適用することによってすべての帯域の発振を抑える技術が提案されている(特許文献9)。
補聴器に関しては、イヤホン部からの出力が外耳道から外に漏れる、いわゆる音漏れを防ぐためのイヤモールドの素材や成型技術が各種提案されている。又、イヤモールドが外耳に正しく装着されている時にのみ補聴器の電源をonにできるといったものが提案されている。
特開平6−22397号公報
欧州特許公開第0467499A2号
特開2000−341707公報
特開平3−263999公報
特開平9−168195公報
米国特許第5621802号
米国特許第5033090号
特開平8−97751公報
特開平2007−43512号公報
補聴器に関しては、イヤホン部からの出力が外耳道から外に漏れる、いわゆる音漏れを防ぐためのイヤモールドの素材や成型技術が各種提案されている。又、イヤモールドが外耳に正しく装着されている時にのみ補聴器の電源をonにできるといったものが提案されている。
しかし、ハウリングの有無やハウリング発生周波数を確実に自動推定させるのはきわめて難しく、特定の周波数の増幅率を選択的に低下させる方法は、発振が限られた周波数範囲で生じているときには効果的であるが、広い範囲で発振が生じている場合には効果が得にくいという問題がある。信号に周波数変換を施すことにより音響結合を低減することはできるが、広い周波数範囲で音響結合が生じている場合には効果が得にくい。2つの櫛型フィルタを交互に適用する手法は広い範囲の発振を抑える効果はあるが、フィルタの周波数特性が時変となるため、阻止域内に側帯波が生じ大きな効果が得にくい。
また、補聴器の音漏れの防止には限界があり、特に発汗時や咀嚼時、運動の際には期待された効果が得られにくい。音漏れをなくすためには外耳道を完全に塞ぐ必要があるが、これは閉塞感や圧迫感といった心理的ストレスを生じる。さらに、成長期の子供の場合、成長にともなってイヤモールドを何度も交換するためコストが高くなるといった問題がある。
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、信号の増幅量が帰還ループの減衰量より大きくても信号の発振が生じにくい電気音響変換再生装置に適用される音響装置及びハウリング抑制方法を提供することにある。
本発明は、上記の問題を解決するために、下記の手段を採用した。
第1の手段は、音響信号を電気信号に変換する音響入力部と、入力信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、デジタル信号を処理する信号処理部と、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、アナログ信号を増幅する信号増幅部と、増幅された信号を音響信号として出力する音響出力部とを備え、前記信号処理部は、櫛型フィルタ部と周波数変換部を含むことを特徴とする音響装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記櫛型フィルタ部を通過した信号を、前記周波数変換部において任意の量だけ周波数移動させることを特徴とする音響装置である。
第3の手段は、第1の手段において、前記周波数変換部において任意の量だけ周波数を移動させた信号を、前記櫛型フィルタ部を通過させることを特徴とする音響装置である。
第4の手段は、第1の手段乃至第3の手段のいずれか1つの手段において、ハウリングの生じやすい周波数帯域に対してのみ前記櫛型フィルタ部及び周波数変換部において信号処理を行わせることを特徴とする音響装置である。
第5の手段は、第1の手段乃至第4の手段のいずれか1つの手段において、前記櫛型フィルタは、通過域と阻止域を有し、阻止域内の周波数成分は減衰又は無音化され、通過域内の周波数成分は増幅されて出力されることを特徴とする音響装置である。
第6の手段は、第1の手段乃至第5の手段のいずれか1つの手段において、前記櫛型フィルタ部及び周波数変換部における信号処理は、常時又は必要な時にのみ行われることを特徴とする音響装置である。
第7の手段は、第1の手段乃至第6の手段のいずれか1つの手段において、ハウリングの有無又は強弱に応じて、前記櫛型フィルタ部の通過域及び阻止域の幅、及び/又は前記周波数変換部の周波数の移動量を変化させることを特徴とする音響装置である。
第8の手段は、音響信号を音響入力部に入力し、音響入力部から出力された信号を処理して増幅し、音響出力部から音響信号を出力する音響装置のハウリング抑制方法において、前記音響入力部から出力された信号を通過域と阻止域を有する櫛型フィルタ部を通過させる工程と、前記通過域を通過させた信号を周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記周波数移動させた信号を前記音響出力部から音響信号として出力させる工程と、前記音響出力部から出力された音響信号の一部が前記音響入力部に帰還したとき、前記帰還した信号を前記櫛型フィルタ部の阻止域に入力させる工程とからなることを特徴とするハウリング抑制方法である。
第9の手段は、音響信号を音響入力部に入力し、音響入力部から出力された信号を処理して増幅し、音響出力部から音響信号を出力する音響装置のハウリング抑制方法において、前記音響入力部から出力された信号を周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記周波数移動させた信号を通過域と阻止域を有する櫛型フィルタ部を通過させる工程と、前記通過域を通過した信号を前記音響出力部から音響信号として出力させる工程と、前記音響出力部から出力された音響信号の一部が前記音響入力部に帰還したとき、前記帰還した信号を前記周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記帰還し周波数移動された信号を前記櫛型フィルタ部の阻止域に入力させる工程とからなることを特徴とするハウリング抑制方法である。
第1の手段は、音響信号を電気信号に変換する音響入力部と、入力信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、デジタル信号を処理する信号処理部と、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、アナログ信号を増幅する信号増幅部と、増幅された信号を音響信号として出力する音響出力部とを備え、前記信号処理部は、櫛型フィルタ部と周波数変換部を含むことを特徴とする音響装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記櫛型フィルタ部を通過した信号を、前記周波数変換部において任意の量だけ周波数移動させることを特徴とする音響装置である。
第3の手段は、第1の手段において、前記周波数変換部において任意の量だけ周波数を移動させた信号を、前記櫛型フィルタ部を通過させることを特徴とする音響装置である。
第4の手段は、第1の手段乃至第3の手段のいずれか1つの手段において、ハウリングの生じやすい周波数帯域に対してのみ前記櫛型フィルタ部及び周波数変換部において信号処理を行わせることを特徴とする音響装置である。
第5の手段は、第1の手段乃至第4の手段のいずれか1つの手段において、前記櫛型フィルタは、通過域と阻止域を有し、阻止域内の周波数成分は減衰又は無音化され、通過域内の周波数成分は増幅されて出力されることを特徴とする音響装置である。
第6の手段は、第1の手段乃至第5の手段のいずれか1つの手段において、前記櫛型フィルタ部及び周波数変換部における信号処理は、常時又は必要な時にのみ行われることを特徴とする音響装置である。
第7の手段は、第1の手段乃至第6の手段のいずれか1つの手段において、ハウリングの有無又は強弱に応じて、前記櫛型フィルタ部の通過域及び阻止域の幅、及び/又は前記周波数変換部の周波数の移動量を変化させることを特徴とする音響装置である。
第8の手段は、音響信号を音響入力部に入力し、音響入力部から出力された信号を処理して増幅し、音響出力部から音響信号を出力する音響装置のハウリング抑制方法において、前記音響入力部から出力された信号を通過域と阻止域を有する櫛型フィルタ部を通過させる工程と、前記通過域を通過させた信号を周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記周波数移動させた信号を前記音響出力部から音響信号として出力させる工程と、前記音響出力部から出力された音響信号の一部が前記音響入力部に帰還したとき、前記帰還した信号を前記櫛型フィルタ部の阻止域に入力させる工程とからなることを特徴とするハウリング抑制方法である。
第9の手段は、音響信号を音響入力部に入力し、音響入力部から出力された信号を処理して増幅し、音響出力部から音響信号を出力する音響装置のハウリング抑制方法において、前記音響入力部から出力された信号を周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記周波数移動させた信号を通過域と阻止域を有する櫛型フィルタ部を通過させる工程と、前記通過域を通過した信号を前記音響出力部から音響信号として出力させる工程と、前記音響出力部から出力された音響信号の一部が前記音響入力部に帰還したとき、前記帰還した信号を前記周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記帰還し周波数移動された信号を前記櫛型フィルタ部の阻止域に入力させる工程とからなることを特徴とするハウリング抑制方法である。
本発明によれば、音響装置の信号処理部において、櫛型フィルタ部の通過域を通過する周波数成分だけが増幅され、この周波数成分が周波数変換部において周波数移動処理が施されるので、音響装置からの出力が入力部に帰還されても、帰還信号が櫛型フィルタの阻止域に入るので、帰還信号が再度増幅されることがなくなり、発振の継続が抑制され、ハウリングの抑制を行うことができる。
また、本発明によれば、音響装置の入力部に到来する外来信号にも櫛型フィルタ処理と周波数変換処理が施されるため、音質は変化するが、櫛型フィルタ部の阻止域の幅を充分に狭く、周波数変換部の周波数変化量が数%程度であれば、深刻な音質劣化を生じることなくハウリング抑制を有効に行うことができる。
また、本発明によれば、発振周波数の推定や帰還経路の伝達特性を求めておく必要がないので、比較的単純な回路構成でハウリング抑制を実現することができる。
また、本発明によれば、音響装置の入力部に到来する外来信号にも櫛型フィルタ処理と周波数変換処理が施されるため、音質は変化するが、櫛型フィルタ部の阻止域の幅を充分に狭く、周波数変換部の周波数変化量が数%程度であれば、深刻な音質劣化を生じることなくハウリング抑制を有効に行うことができる。
また、本発明によれば、発振周波数の推定や帰還経路の伝達特性を求めておく必要がないので、比較的単純な回路構成でハウリング抑制を実現することができる。
本発明の実施形態を図1乃至図3を用いて説明する。
図1は、本実施形態の発明に係る音響装置の構成を示す図である。
同図に示すように、音響信号は音響入力部1にてアナログ電気信号に変換される。アナログ電気信号はAD変換器2にてデジタル信号に変換され、信号処理部3へ送られる。信号処理部3は、交互櫛型フィルタ部7と周波数変換部8から構成される。信号処理部3に信号が入力されると、櫛型フィルタ7の通過域を通る周波数成分だけが増幅され、阻止域を通る周波数成分は減衰される。櫛型フィルタ部7から出力された信号は、周波数変換部8にて、任意量の周波数移動が施される。信号処理部3から出力されたデジタル信号は、DA変換器4によってアナログ信号に変換され、アナログ増幅器である信号増幅部5によって所望の増幅量に増幅され、増幅されたアナログ信号は、スピーカやイヤホンといった電気音響変換器からなる音響出力部6にて音響信号に変換されて、出力される。なお、信号処理部3から出力されたデジタル信号を増幅するデジタル増幅器を用いる場合は、DA変換器4と信号増幅部5の順序を入れ替えることになる。
図1は、本実施形態の発明に係る音響装置の構成を示す図である。
同図に示すように、音響信号は音響入力部1にてアナログ電気信号に変換される。アナログ電気信号はAD変換器2にてデジタル信号に変換され、信号処理部3へ送られる。信号処理部3は、交互櫛型フィルタ部7と周波数変換部8から構成される。信号処理部3に信号が入力されると、櫛型フィルタ7の通過域を通る周波数成分だけが増幅され、阻止域を通る周波数成分は減衰される。櫛型フィルタ部7から出力された信号は、周波数変換部8にて、任意量の周波数移動が施される。信号処理部3から出力されたデジタル信号は、DA変換器4によってアナログ信号に変換され、アナログ増幅器である信号増幅部5によって所望の増幅量に増幅され、増幅されたアナログ信号は、スピーカやイヤホンといった電気音響変換器からなる音響出力部6にて音響信号に変換されて、出力される。なお、信号処理部3から出力されたデジタル信号を増幅するデジタル増幅器を用いる場合は、DA変換器4と信号増幅部5の順序を入れ替えることになる。
なお、この音響装置において、櫛型フィルタ部7の通過域における増幅量を周波数ごとに独立に制御することにより、所望のスペクトル包絡を得ることができる。安定な動作を保障するためにはFIRフィルタによる櫛型フィルタが望まれるが、櫛型特性が実現できるならこれ以外の手段を用いても構わない。
通常、増幅された音響信号が音響入力部1に帰還することによって発振が生じるが、帰還信号の周波数を移動させ、櫛型フィルタ部7の阻止域に入るようにすれば発振を抑えることができる。つまり、周波数変換部8において櫛型フィルタ7から出力された信号に周波数移動処理を施す。任意量の周波数移動処理は、ヒルベルト変換器を用いることで実現できるが、他の手段を用いても構わない。
また、櫛型フィルタ部7と周波数変換部8の順序は、図1に示すとおりであるが、このように構成することは必須ではなく、櫛型フィルタの通過前に周波数移動を行うようにしても良い。
通常、増幅された音響信号が音響入力部1に帰還することによって発振が生じるが、帰還信号の周波数を移動させ、櫛型フィルタ部7の阻止域に入るようにすれば発振を抑えることができる。つまり、周波数変換部8において櫛型フィルタ7から出力された信号に周波数移動処理を施す。任意量の周波数移動処理は、ヒルベルト変換器を用いることで実現できるが、他の手段を用いても構わない。
また、櫛型フィルタ部7と周波数変換部8の順序は、図1に示すとおりであるが、このように構成することは必須ではなく、櫛型フィルタの通過前に周波数移動を行うようにしても良い。
図2は、信号処理部3における櫛型フィルタ部7と周波数変換部8の出力特性を示す図であり、図Aは櫛型フィルタ部7の出力特性、図Bは周波数変換部8による周波数移動後の出力特性を示す。入力信号が櫛型フィルタ部7を通過するとき、通過域を通る成分は増幅量g(dB)にて増幅され、阻止域を通る成分は減衰量l(dB)減衰される。この図では、通過域の増幅量g(dB)は一定となっているが、周波数ごとに独立に設定してもよい。
図2に示すように、櫛型フィルタ部7における通過域幅fp及び阻止域幅fe、周波数変換部8における周波数移動量Δfとして、これらの関係について説明すると、周波数移動量Δf(Hz)が通過域幅fpのn分の1、すなわち、
fp=n×Δf
の場合、帰還信号は、n回帰還するまでに必ず阻止域に入ることになる。例えば、nが1なら、帰還信号が2回続けて通過域を通ることはない。ただし、
fe≧Δf
つまり、周波数移動量Δfは、阻止域幅feより狭い必要がある。周波数移動量Δfが阻止域幅feよりも大きいと、帰還信号が阻止域を超えて次の通過域に入ってしまうため、効果が減少する。また、音質変化をできるだけ少なくするためには、阻止域幅fe、周波数移動量Δfともに小さくすることが望ましい。
fp=n×Δf
の場合、帰還信号は、n回帰還するまでに必ず阻止域に入ることになる。例えば、nが1なら、帰還信号が2回続けて通過域を通ることはない。ただし、
fe≧Δf
つまり、周波数移動量Δfは、阻止域幅feより狭い必要がある。周波数移動量Δfが阻止域幅feよりも大きいと、帰還信号が阻止域を超えて次の通過域に入ってしまうため、効果が減少する。また、音質変化をできるだけ少なくするためには、阻止域幅fe、周波数移動量Δfともに小さくすることが望ましい。
本発明におけるハウリング抑制の原理を図3を用いて説明する。図中、Iは、櫛型フィルタ部7に入力される初期入力信号(A〜E)のスペクトル(実線)、IIは、櫛型フィルタ部7の櫛型フィルタ特性(灰色が通過域)と櫛型フィルタ部7を通過後増幅された信号のスペクトル(実線)、IIIは、櫛型フィルタ部7を通過後の増幅された信号が周波数変換部8で周波数移動された後の信号のスペクトル(実線)、IVは、櫛型フィルタ部7に入力された帰還信号(実線)と新たに入力された入力信号(破線)を合わせた信号のスペクトル、Vは、前記帰還信号(実線)と前記新たに入力された入力信号(破線)を合わせた信号の櫛型フィルタ部7を通過後のスペクトル、VIは、スペクトルVが周波数変換部8で周波数移動された後の信号のスペクトルを示す。
即ち、初期入力信号には、A〜Eの周波数成分が含まれている(I)。このうち周波数成分A、C、Eは櫛型フィルタ部7の通過域を通って増幅されるが、周波数成分B、Dは阻止域で無音化される(II)。増幅された各周波数成分A’、C’、E’は周波数変換部8によって周波数移動処理が施されて出力される(III)。音響フィードバック経路を介して減衰した出力信号の帰還信号A”、C”、E”は、外部から新たに到来する入力信号とともに櫛型フィルタ部7に入力される(IV)。櫛型フィルタ部7に入力された信号のうち、阻止域に入る成分は無音化されるので、帰還信号(実線)が除去されることがわかる。
上記の原理により、帰還信号が繰り返し増幅されることを防ぎ、発振を抑制することが可能となる。図3では、阻止域幅、通過域幅、及び周波数移動量が等しい幅になっているが、これらを同じ幅にする必要はない。また、櫛型フィルタ部7のフィルタ特性や周波数変換部8の周波数移動量は一定としてもよいが、状況に応じて変化させてもよい。特に周波数移動量が大きいと音声等の印象を変えてしまうので、通常は小さい値にしておき、出力信号のレベルが大きくなったときだけ効果が早く現れるように周波数移動量を大きくするといった方法を採用してもよい。
特許文献2には、特定の周波数域の出力を低減させるノッチフィルタをノッチ(阻止域)の中心周波数を変化させながら適用することが記載されているが、ノッチフィルタでは一度に処理できる周波数範囲が限定される。広い帯域で発振が生じている場合、幅の広いノッチが必要になるが、幅の広いノッチを用いると所望の周波数特性を実現できなくなる。それに対して、本発明では、数回帰還する間にすべての成分が阻止域を通るようにすることができるので、広い周波数帯域の発振にも効果が期待される。
また、特許文献8に示すように、信号に周波数変換を施すことにより、音響結合を低減させることができる。しかし、発振周波数が狭帯域に限定されている場合には、僅かな周波数変換で発振を抑えることができるが、広帯域にわたって発振が生じている場合は、大幅に周波数変換させないと発振を抑えることができない。大幅な周波数変換は音質を著しく変化させてしまう。それに対して、本発明では、周波数変換処理と櫛型フィルタを併用することにより、信号の周波数を僅かに変換させるだけですべての成分を阻止域に通すことが可能となり、広帯域の発振に対しても有効である。
また、特許文献9には、特性が相補的な2つの櫛型フィルタを交互に適用するハウリング抑制技術が提案されている。しかし、2つの櫛型フィルタを切り替える場合、周波数特性が時変となり、フィルタにハニング窓等の窓処理を施す必要がある。このため阻止域内に窓処理にともなう側帯波が生じ、効果が損なわれる。それに対して、本発明では、櫛型フィルタの周波数特性は固定でも構わないので側帯波の影響を少なくできる。
なお、図1に示した音響装置は、あくまで一例であって、櫛型フィルタ部7と周波数変換部8等は、同図に示す順序とする必要はなく、様々な配置が可能である。また、本発明では、櫛型フィルタにより周波数成分が除去され、残った成分も周波数が変化するので、音質の変化は不可避である。そこで、入力あるいは出力信号のレベルが大きくなったときにのみ作動する、または発振が検知されたときにのみ作動するように設計してもよい。そのためには図示されていないレベル判定器や発振検知器を付加してもよい。
通常、補聴器では100Hz、200Hzといった低い周波数でハウリングが生じることは少ない。このように予めハウリングの生じる周波数帯域が分かっている場合は、ハウリングの生じやすい周波数に対してのみハウリング防止の信号処理を行うことにより、不必要な音質変化を減らすようにするとよい。
以上、本発明の基本的な実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜の変更が可能なものである。
1 音響入力部
2 AD変換器
3 信号処理部
4 DA変換器
5 信号増幅部
6 音響出力部
7 櫛型フィルタ部
8 周波数変換部
2 AD変換器
3 信号処理部
4 DA変換器
5 信号増幅部
6 音響出力部
7 櫛型フィルタ部
8 周波数変換部
Claims (9)
- 音響信号を電気信号に変換する音響入力部と、入力信号をデジタル信号に変換するAD変換部と、デジタル信号を処理する信号処理部と、デジタル信号をアナログ信号に変換するDA変換部と、アナログ信号を増幅する信号増幅部と、増幅された信号を音響信号として出力する音響出力部とを備え、前記信号処理部は、櫛型フィルタ部と周波数変換部を含むことを特徴とする音響装置。
- 前記櫛型フィルタ部を通過した信号を、前記周波数変換部において任意の量だけ周波数移動させることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
- 前記周波数変換部において任意の量だけ周波数を移動させた信号を、前記櫛型フィルタ部を通過させることを特徴とする請求項1に記載の音響装置。
- ハウリングの生じやすい周波数帯域に対してのみ前記櫛型フィルタ部及び周波数変換部において信号処理を行わせることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つの請求項に記載の音響装置。
- 前記櫛型フィルタは、通過域と阻止域を有し、阻止域内の周波数成分は減衰又は無音化され、通過域内の周波数成分は増幅されて出力されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1つの請求項に記載の音響装置。
- 前記櫛型フィルタ部及び周波数変換部における信号処理は、常時又は必要な時にのみ行われることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つの請求項に記載の音響装置。
- ハウリングの有無又は強弱に応じて、前記櫛型フィルタ部の通過域及び阻止域の幅、及び/又は前記周波数変換部の周波数の移動量を変化させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1つの請求項に記載の音響装置。
- 音響信号を音響入力部に入力し、音響入力部から出力された信号を処理して増幅し、音響出力部から音響信号を出力する音響装置のハウリング抑制方法において、前記音響入力部から出力された信号を通過域と阻止域を有する櫛型フィルタ部を通過させる工程と、前記通過域を通過させた信号を周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記周波数移動させた信号を前記音響出力部から音響信号として出力させる工程と、前記音響出力部から出力された音響信号の一部が前記音響入力部に帰還したとき、前記帰還した信号を前記櫛型フィルタ部の阻止域に入力させる工程とからなることを特徴とするハウリング抑制方法。
- 音響信号を音響入力部に入力し、音響入力部から出力された信号を処理して増幅し、音響出力部から音響信号を出力する音響装置のハウリング抑制方法において、前記音響入力部から出力された信号を周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記周波数移動させた信号を通過域と阻止域を有する櫛型フィルタ部を通過させる工程と、前記通過域を通過した信号を前記音響出力部から音響信号として出力させる工程と、前記音響出力部から出力された音響信号の一部が前記音響入力部に帰還したとき、前記帰還した信号を前記周波数変換部において周波数移動させる工程と、前記帰還し周波数移動された信号を前記櫛型フィルタ部の阻止域に入力させる工程とからなることを特徴とするハウリング抑制方法。
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JP (1) | JP2009005274A (ja) |
Cited By (1)
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