まず、本発明の概要を説明する。本発明では、移動通信システムのコアネットワークにおいて、無線アクセスネットワークとコアネットワークとを接続するアクセスゲートウェイ装置に対して、コアネットワークのネットワークドメイン内で使用可能な複数のIPアドレスを割当て、これらのIPアドレスを各ベアラに割り当てることで、外部のパケットデータネットワークと接続するゲートウェイ装置との間で、ベアラ毎のPMIPトンネルを生成可能とする。
従って、アクセスゲートウェイ装置は、無線アクセスネットワーク側からパケットを受信すると該パケットのベアラに対応する自装置のIPアドレスを送信元とするIPパケットに、受信したパケットをカプセル化して、コアネットワークに送信する。また、アクセスゲートウェイ装置は、コアネットワークからパケットを受信すると該パケットの宛先アドレスを参照して、該宛先アドレスに対応するベアラのパケットとして、該パケットをデカプセル化したパケットを、無線アクセスネットワークに送信する。無線アクセスネットワークでGTPトンネルが使用されている場合は、該宛先アドレスに対応するベアラのトンネル識別子を付加したGTPヘッダで該パケットをカプセル化して、無線アクセスネットワークに送信する。
同様に、ゲートウェイ装置は、コアネットワークからパケットを受信すると、該パケットの送信元アドレスを参照して、該送信元アドレスに対応するベアラのパケットとして、該パケットをデカプセル化したパケットを、外部のパケットデータネットワークに送信する。また、ゲートウェイ装置は、外部のパケットデータネットワークからパケットを受信すると、そのヘッダもしくはペイロード等、パケットに含まれる情報から移動通信システム内でこのパケットを配送するために使用するベアラを識別し、識別したベアラに対応するアクセスゲートウェイ装置のIPアドレスを、宛先アドレスとするパケットに、受信したパケットをカプセル化して、コアネットワークに送信する。なお、このようなベアラ毎のPMIPトンネルを使ったデータ転送については、図18以降にて詳細に説明する。
次に、本発明の詳細を説明するに先立ち、本発明の実施形態であるゲートウェイ装置21、アクセスゲートウェイ装置22a、22bを含む移動通信システムのネットワークと、そのベアラ設定動作を説明する。図1は、本発明による移動通信システムの構成を示す概略システム構成図である。本実施形態における移動通信システムの機能アーキテクチャは、第3世代移動通信システムとして標準化されているUMTSにおける機能アーキテクチャと同様であり、図1に示すように、大きく無線アクセスネットワーク10とコアネットワーク20の2つに分割される。無線アクセスネットワーク10では、伝送帯域などの資源に代表される通信に必要な無線リソースが割り当てられ、通信データを含むユーザ情報が移動端末装置30とコアネットワーク20の間で転送される。
ゲートウェイ装置(PGW)21、アクセスゲートウェイ装置(SGW)22a、22b、アクセス制御装置(MME)23a、23b及び基地局装置15a〜15n、16a〜16nは階層構成になっており、一つのゲートウェイ装置21に複数のアクセスゲートウェイ装置22a、22bが接続され、一つのアクセス制御装置23a、23b及びアクセスゲートウェイ装置22a、22bに複数の基地局装置15a〜15n、16a〜16nが接続されるような構成となっている。
図1に示す移動通信システムは、基地局装置15aから基地局装置15nの無線エリア11a内に移動端末装置30が存在する限り、移動端末装置30はアクセスゲートウェイ装置22aを経由してゲートウェイ装置21に接続し、アクセス制御装置23aによって移動などの管理が行われる。移動端末装置30が、基地局装置16aから基地局装置16nの無線エリア11b内に移動した場合は、アクセスゲートウェイ装置22bを経由して通信を行い、無線エリア11aと同様にアクセスゲートウェイ装置22b配下の基地局装置16a〜16n及び前記基地局装置配下の移動端末装置30は、アクセス制御装置23bによって管理される。それぞれの無線エリア11a、11bは複数の基地局装置15a〜15n、16a〜16nから構成される。基地局装置15a〜15n、16a〜16nは無線リソース制御、無線リンク制御、媒体アクセス制御等の無線プロトコルによる制御を行い、移動端末装置30に対する無線チャネルの割り当てなどの管理も行う。
ここでは、無線エリア11a、11bが複数の基地局装置15a〜15n、16a〜16nから構成される例を挙げたが、各無線エリアが一つもしくは複数の無線ネットワークサブシステム(RNS:Radio Network Subsystem)から構成され、各無線ネットワークサブシステムは一つの無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)と複数の基地局装置からなる構成でも構わない。また、本実施形態では無線エリア11a、11bとアクセス制御装置23a、23bとアクセスゲートウェイ装置22a、22bが一対一の関係になっているが、一つのアクセスゲートウェイ装置に対して、複数のアクセス制御装置及び無線エリアが対応付けられているような構成であってもよい。
コアネットワーク20は、ユーザ(移動端末装置30)からのサービス要求に基づいて、音声やパケットなどのユーザ情報を、無線アクセスネットワーク10間、あるいは無線アクセスネットワーク10とコアネットワーク20間、あるいは無線アクセスネットワーク10と外部IPネットワークであるパケットデータネットワーク40との間で転送する。コアネットワーク20は、移動通信ネットワークと外部IPネットワークであるパケットデータネットワーク40との接続を行うゲートウェイ装置21と、移動端末装置30の位置管理、加入者の管理を行う加入者管理サーバ(HSS)24と、移動端末装置30の位置管理及び認証や、基地局装置15a〜15n、16a〜16nの制御等を行うアクセス制御装置23a、23bを具備する。また、コアネットワーク20は、これらの装置をIPネットワークにより接続しており、このIPネットワークは、IPルータなどの汎用のネットワーク機器にて構成されている。
移動端末装置30は、無線アクセスネットワーク10を経由してコアネットワーク20に接続し、さらにコアネットワーク20のゲートウェイ装置21を経由してパケットデータネットワーク40に接続することが可能である。さらに、ユーザの移動によって該ユーザの移動端末装置30の接続可能な無線エリアが変化するため、通信中のユーザに対して継続してサービスを提供するために、移動端末装置30は、基地局15a〜15n、16a〜16n間、無線エリア11a、11b間で通信のハンドオーバを行う。
本実施形態ではアクセスゲートウェイ装置22a、22bが各無線アクセスネットワーク10の基地局装置15a〜15n、16a〜16nに接続するネットワーク構成になっているが、アクセスゲートウェイ装置22a、22bと基地局装置15a〜15n、16a〜16nの間にさらに基地局装置15a〜15n、16a〜16nを階層的に管理する装置を置いて階層的な構造にしてもよいし、この階層的に管理する装置を無線アクセスネットワーク10側に配置するような構成にしてもよい。さらに、ゲートウェイ装置21、アクセス制御装置23a、22bを複数配置して負荷分散させたり、地理的な階層化をするために一つの無線アクセスネットワーク10の多数の基地局装置15a〜15n、16a〜16nを管理する複数のアクセスゲートウェイ装置22a、22bを配置させたりするような運用にしてもよい。
また、運用によってはゲートウェイ装置21とアクセスゲートウェイ装置22a、22b、もしくはアクセス制御装置23a、23bとアクセスゲートウェイ装置22a、22b、もしくはアクセスゲートウェイ装置22a、22bと基地局装置15a〜15n、16a〜16nの機能を備える一つの装置として配置されるようにしてもよい。すなわち、本実施形態は、機能的な説明をするために便宜上の図1のようなシステム構成を示したが、アクセスゲートウェイ装置22a、22bとゲートウェイ装置21とアクセス制御装置23a、23bとは機能的に区別されており、例えばアクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21、もしくはアクセスゲートウェイ装置22aとアクセス制御装置23aが同一の装置として実現されても構わず、同一の装置により図1に示したような移動通信システムのネットワークを実現してもよい。
図2は、本実施形態における移動端末装置30の構成を示す概略ブロック図である。移動端末装置30は、図2に示すように、無線通信IF(Interface)部210と、無線制御部220と、通信制御部230とを具備する。無線通信IF部210は、無線接続を介して移動端末装置30と無線アクセスネットワーク10内の基地局装置15a〜15n、16a〜16bとの間で通信を行う。無線制御部220は、無線制御機能部221により、電波に情報をのせて移動端末装置30と基地局装置15aとの間で送受信するために、多重化、チャネル符号化、拡散、変調など物理層での制御を行う。
また、無線信号制御部222により、無線通信IF部210を制御して無線チャネルの制御や基地局装置15a〜15n、16a〜16nの探索、無線信号の送受信のための制御など、基地局装置15a〜15n、16a〜16nと無線通信を行なうための制御を行う。
通信制御部230は、無線制御機能部234により、無線通信IF210を介して無線アクセスネットワーク10内の基地局装置15a〜15n、16a〜16nと無線プロトコルを使用した通信を制御し、移動端末装置30と無線アクセスネットワーク10間の接続を可能にし、さらには移動端末装置30の位置登録や移動通信ネットワークへの登録、パケットデータネットワーク40へ接続するためのネットワーク接続設定などの制御も行う。通信制御部330は、移動通信ネットワークへ登録する時に、ユーザを認証するための認証情報を送信する。また、通信制御部330は、ベアラ管理機能部231により、アクセス制御装置23a、23bからの指示に応じて基地局装置15a〜15n、16a〜16nとの無線ベアラを確立し、EPSベアラとの対応付けを行ない、使用するサービスに応じてEPSベアラ(もしくは前記EPSベアラに対応付けられた無線ベアラ)を使い分ける制御も行い、アドレス設定機能部232により設定されたIPアドレスを使用して移動通信装置30間、もしくはパケットデータネットワーク40との間でデータ通信を行なう。また、基地局15a〜15n、16a〜16nからページング信号を受信して移動端末装置30を待機状態から受信可能状態に遷移させるページング受信機能部233も具備する。
図3は、本実施形態による基地局装置15a(基地局装置15b〜15n、16a〜16nも同様の構成)の構成を示す概略ブロック図である。基地局装置15aは、図3に示すように、無線制御部310と、無線ネットワーク制御部320と、通信制御部330とを具備する。無線制御部310は、電波に情報をのせて移動端末装置30と基地局装置15aとの間で送受信するために、無線制御機能部311により、多重化、チャネル符号化、拡散、変調など物理層での制御を行う。また、無線制御部310は、無線信号制御機能部312により、無線チャンネルの制御や移動端末装置30への無線リソースの割当て等、無線リソースに関する制御も行う。
無線ネットワーク制御部320は、無線アクセスネットワーク10内の通信制御を行う無線通信制御機能部323を具備し、該無線通信制御機能部323は、無線リソース制御、無線リンク制御、媒体アクセス制御などの無線プロトコルを使用した通信機能を実現し、通信制御部330を制御して無線チャネルの割り当てなどの管理も行う。無線通信制御機能部323は、さらに同時に移動端末装置30とアクセスゲートウェイ装置22a、22b間のベアラサービスを提供するための通信制御も行う。無線ネットワーク制御320部は、移動端末装置30を待機状態から受信可能状態に遷移させるためのページング報知機能部321も具備する。また、無線ネットワーク制御部320は、移動端末装置30と基地局装置15a間の無線ベアラ及び、基地局装置15aとアクセス制御装置間と基地局とアクセスゲートウェイ間の無線アクセスベアラの設定、更新、削除等の制御を行うベアラ管理機能部322を具備する。
通信制御部330は、移動端末装置30とアクセス制御装置23a間の制御信号や移動端末装置30とアクセスゲートウェイ装置22a間の通信データを転送するデータ転送機能部331を備える。また、データ転送機能部331は、アクセス制御装置23aからの移動端末装置30と基地局装置15a間の無線リソースの割当てやページング要求などの基地局装置15aへの要求メッセージを受信して、無線制御部310や無線ネットワーク制御部320へメッセージに含まれる情報を伝達する。また、通信制御部330は、無線制御部310や無線ネットワーク制御部320からの要求に応じて無線通信IF333を介して移動端末装置30との通信を、通信IF332を介してアクセス制御装置23a及びアクセスゲートウェイ装置22aとの通信を行なう。
図4は、本実施形態によるアクセス制御装置23a(アクセス制御装置23bの構成も同様である。)の構成を示す概略ブロック図である。アクセス制御装置23aは、図4に示すように移動管理部410と、ネットワークアクセス制御部420と、通信IF部430とを具備する。移動管理部410は、移動端末装置30の位置を追跡する位置管理機能部411、移動端末装置30への着信呼がある場合に当該移動端末装置30を呼び出すためのページング(呼び出し)機能部412を備える。また、移動管理部410は、移動端末装置30の位置更新をトリガとして、基地局装置15aの通信制御部330と連携して移動端末装置30の移動にともない使用する基地局装置を、例えば基地局装置15aから基地局16aに変更する際の基地局間15aと基地局16a間のパケットの転送や、無線エリア11aから無線エリア11bの基地局装置16a配下に移動端末装置30が移動した場合の基地局装置16aやアクセスゲートウェイ装置23bと無線ベアラ及び無線アクセスベアラの設定等の制御信号の送受信を行うハンドオーバ制御機能部413を備える。
ネットワークアクセス制御部420は、通信IF部430を介した無線アクセスネットワーク10内の基地局装置15a〜15nと専用のプロトコルを使用して通信IF部430を介して基地局装置15a〜15nに対して移動端末装置30の通信を制御するための制御メッセージを送信する。また、ネットワークアクセス制御部420は、基地局装置15a〜15n経由で送られてくる移動端末装置30の登録、ユーザ認証、どの基地局装置15a〜15n経由で移動端末装置30との通信を行うかを選択するデータ転送ルート再配置や移動端末装置30からの通信メッセージの制御及び基地局装置15a〜15nとの通信メッセージの制御を行う。
ネットワークアクセス制御部420は、移動端末装置30を登録したり、ユーザ認証したりするために必要なユーザ識別情報やサービス加入者情報といったような情報を、加入者管理サーバ24を参照して取得する加入者情報管理機能部422を備える。サービス加入者情報には、ユーザが接続することが出来る無線アクセスネットワーク10の契約情報やQoS情報等も含まれる。また、ネットワークアクセス制御部420は、移動通信システムに登録され、位置管理が行なわれている状態の移動端末装置30に対して、待ち受け状態及び受信可能状態の管理を行ない、待ち受け状態の移動端末装置30に対して着呼やデータの着信があった場合に、移動管理部410のページング機能部412を用いて移動端末装置30を受信可能な状態にするといったようなUE状態管理機能部421を備える。また、ネットワークアクセス制御部420は、移動端末装置30からの登録要求やサービス要求、移動端末装置30への着呼要求を受けて、アクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21間のネットワークベアラや、アクセスゲートウェイ装置と基地局間の無線アクセスベアラの設定、変更、削除、ネットワークベアラと無線アクセスベアラの対応付け等のベアラの制御を行うベアラ管理機能部423も備える。
次に、図5は、本実施形態によるアクセスゲートウェイ装置22a(アクセスゲートウェイ装置22bも同様の構成である)の構成を示す概略ブロック図である。アクセスゲートウェイ装置22aは、図5に示すように通信制御部510と、ベアラ管理部520と、通信IF部530とを具備する。通信制御部510は、アクセス制御装置23aからの指示に従ってベアラ管理部520を制御するベアラ管理部制御機能部511、ベアラによって提供されるベアラサービスで転送される通信データの経路を制御する経路制御機能部512及び通信データの転送をするデータ転送機能部513を提供する。また、データ転送機能部513は、移動端末装置30が待機状態の際にゲートウェイ装置21から送られてきた移動端末装置30宛のデータを移動端末装置30が受信可能状態になるまで格納するバッファ機能も備える。また、データ転送機能部513は、通信IF部530を介して上記アクセス制御装置23aとの間でベアラを制御するための制御メッセージの送受信や、ゲートウェイ装置21との間でネットワークベアラを確立するためのトンネル設定のための制御メッセージの送受信も行なう。なお、データ転送機能部513によるベアラサービスでの通信データの転送の詳細については、後述する。
ベアラ管理部520は、基地局装置15a〜15nとアクセスゲートウェイ装置22a間の無線アクセスベアラ及びゲートウェイ装置21とアクセスゲートウェイ装置22a間のネットワークベアラのベアラの設定、変更、削除や、無線アクセスベアラとネットワークアクセスベアラの対応付けなどベアラの制御を行うベアラ管理機能部522を備える。また、ベアラ管理部520は、移動端末装置30の移動にともなって発生する基地局装置15a〜15n、16a〜16n間のハンドオーバ時にベアラの設定やベアラ情報のコンテストトランスファーといったようなハンドオーバ時に必要な制御を行うハンドオーバ機能部521を備える。さらに、ベアラ管理部520は、ネットワークベアラを確立するためのトンネリング設定に必要なトンネル識別子、トンネルのエンドポイントを構成する装置のアドレスやQoS(Quality of Service:サービス品質)といったようなポリシー情報等のベアラ情報をベアラ情報記憶部523のEPSベアラテーブルに記憶させて管理するベアラ管理機能部522を備える。なお、このベアラ情報記憶部523が記憶するEPSベアラテーブルの詳細については、後述する。
次に図6は、本実施形態によるゲートウェイ装置21の構成を示す概略ブロック図である。ゲートウェイ装置21は、図6に示すように、通信IF部610と、通信制御部630と、ベアラ管理部620とを具備する。通信制御部630は、移動通信ネットワークとパケットデータネットワーク40との接続をするPDN接続機能部632を備える。また、通信制御部630は、ベアラ管理部620によって確立されたトンネルを介してアクセス制御装置23a、23bへ通信データを転送する転送経路の設定をする経路制御機能部634を備える。また、通信制御部630は、アタッチした移動端末装置30に対してパケットデータネットワーク40へ接続するためのアドレスを割当てるアドレス管理機能部631を備える。また、通信制御部630は、通信データの経路制御(アクセスゲートウェイ装置22a、22bへのベアラ確立のための経路設定を含めたトンネル設定等)や通信データの転送といったルータの機能部を提供するデータ転送機能部633を備える。また、データ転送機能部633は、アクセスゲートウェイ装置のリロケーション時のアクセスゲートウェイ装置22aからアクセスゲートウェイ装置22bへのデータの転送といった通信データの転送も行う。また、通信IF部610を介してアクセスゲートウェイ装置22a、22bとの間でネットワークベアラを確立するためのトンネルを設定するための制御メッセージの送受信も行う。なお、データ転送機能部633の詳細については、後述する。
ベアラ管理部620は、ゲートウェイ装置21とアクセスゲートウェイ装置22a、22b間のネットワークベアラのベアラ設定、変更、削除などベアラの制御を行うベアラ管理機能部623を備える。さらに、ベアラ管理機能部623は、課金情報やサービス品質情報やサービス加入状況等の加入者情報に基づいた課金のためのデータキャプチャ及びカウント及びサービス品質(QoS)の制御などを行う。上記加入者情報は、アクセス制御装置23aもしくは他のネットワーク装置を経由して加入者管理サーバ24から送られる。さらに、ベアラ管理機能部620は、トンネルのエンドポイントを構成する装置のアドレス、移動端末装置30の識別子やパケットデータネットワーク40へ接続するためのIPアドレス、ベアラに設定するQoSといったようなポリシー情報等のベアラ情報をベアラ情報記憶部621のベアラテーブルおよびトラフィック・フロー・テンプレートに記憶させて管理するポリシー管理機能部622を備える。なお、このトラフィック・フロー・テンプレートを用いて、前記ベアラ情報と転送される通信データのデータ種別に基づいてパケットデータネットワーク40で送受信される通信データをEPSベアラへ振り分けるパケットフィルタリングの制御も行う。このベアラ情報記憶部621が記憶するベアラテーブルおよびトラフィック・フロー・テンプレートの詳細については、後述する。
次に、図7は、本実施形態による加入者管理サーバ(HSS)24の構成を示す概略ブロック図である。加入者管理サーバ24は、図7に示すように、サービス加入者情報記憶部710と、ユーザ識別情報記憶部720と、ユーザ位置情報記憶部730とを具備する。ユーザ識別情報記憶部720が記憶するユーザ識別情報には、IMSI(International Mobile Subscriber Identity)、MSISDN(MS International PSTN/ISDN Number)等があり、これらの情報を参照して移動端末装置30の移動通信ネットワークへの登録やユーザ認証が行われる。
サービス加入者情報記憶部710は、接続先パケットデータネットワーク40もしくはパケットデータネットワーク40そのものを識別する識別子や移動端末装置30のIPアドレス、加入契約している無線アクセスネットワークの情報やQoSパラメータ値等を記憶する。ユーザのサービス加入者情報は、ユーザ位置情報記憶部730で管理されているユーザの位置情報を参照して、該ユーザの移動端末装置30が接続しているゲートウェイ装置21に転送されサービスのアクセス制御に使用される。また、移動端末装置30に対して一意な固定のIPアドレスを割当てる場合は、ユーザ識別情報に対応付けたIPアドレスをサービス加入者情報に含めて管理してもよい。ユーザ位置情報記憶部730には、移動端末装置30が現在属しているコアネットワーク20に関する情報が管理され、これによって加入者管理サーバ24はユーザ(移動端末装置30)の所在範囲を把握する。ただし、これらの機能を実現する移動通信網のシステム構成は、それぞれの移動通信システムの規格によって異なる可能性がありこれに限定するものではない。
図8は、電源を入れるなどして、移動端末装置30が移動通信システムにアタッチ(登録)する際の、各部の動作を示すシーケンス図である。図9は、既にアタッチしている移動端末装置30に追加のEPSベアラ設定を行う際の各部の動作を示すシーケンス図である。先ず、移動端末装置30が移動通信システムにアタッチする図8の動作シーケンスを説明する。
まず、移動端末装置30は電源ONされると現在接続可能な基地局装置の探索を行う(S101)。ここでは、接続可能な基地局装置15aが発見されたとすると、移動端末装置30はUE識別子(UE−ID)といったような移動端末装置30を一意に識別するための識別子やアタッチ種別等の情報要素を含んだアタッチ要求を該当する基地局装置15a経由でアクセス制御装置23aに送信する(S102)。ここで、基地局装置15aが、基地局装置15aとアクセスゲートウェイ装置22a間で確立する無線アクセスベアラの下り方向のトンネル識別子(TEID)をアタッチ要求に含めて送信するようにもよい。次に、アクセス制御装置23aは、受信したアタッチ要求に基づき移動端末装置30を加入者管理サーバ24に登録し、ユーザ・ネットワーク間の相互の認証及び、加入者管理サーバ24へのアクセス制御装置23aの登録(S103)を行う。
加入者管理サーバ24はアクセス制御装置23aの登録を確認し、移動端末装置30が使用する初期EPSベアラに対して認証されたサービス加入情報や課金情報といった加入者情報及びパケットデータネットワーク40へ接続するためのゲートウェイ装置21のアドレスもしくはFully Qualified Domain Name(FQDN)のようなゲートウェイ装置21の識別子、といった移動端末装置30のプロファイル情報をアクセス制御装置23aへ転送する(S104)。ここで、加入者管理サーバ24は、移動端末装置30に対してパケットデータネットワーク40へ接続するための移動端末装置30のIPアドレスが固定的に割り振られている場合には、移動端末装置30のIPアドレスを含めて送るようにしてもよい。
次に、アクセス制御装置23aは、加入者管理サーバ24から受信したプロファイル情報及び移動端末装置30から受信したユーザプリファレンス等をもとに移動端末装置30のプロファイルを作成する(S105)。図10に移動端末装置30のプロファイル情報の一例を示す。図10に示すように、プロファイル情報には、該移動端末装置30がパケットデータネットワーク40との接続に用いるゲートウェイ装置21のアドレスもしくは識別子、該移動端末装置30の識別子、該移動端末装置30のIPアドレス、QoS情報、課金情報を記憶する。ここでは、アクセス制御装置23aが加入者管理サーバ24からゲートウェイ装置21へ接続するための情報を受信する例を挙げたが、移動端末装置30が予めゲートウェイ装置21に関する情報を保持しており、アタッチ時に移動端末装置30が、このゲートウェイ装置21へ接続するための情報をアクセス制御装置23aに送信し、この情報をもとにアクセス制御装置23aがゲートウェイ装置21のアドレスを解決してもよいし、移動端末装置30と加入者管理サーバ24から送られてくる情報をもとにゲートウェイ装置21のアドレスを解決してもよい。
次に、パケットデータネットワーク40へ接続するためのゲートウェイ装置21のアドレスを取得すると、アクセス制御装置23aは、移動端末装置30の識別子を含めたベアラ作成要求をアクセスゲートウェイ装置22aへ送る(S106)。アクセスゲートウェイ装置22aは、アクセス制御装置23aから受信したベアラ作成要求をもとに、アクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21間のPMIP(Proxy Mobile IP)トンネルを確立するためのアクセスゲートウェイ装置22aのIPアドレス(Care of Address:気付けアドレス、以下、「気付けアドレスCoA」という)及び前記アクセスゲートウェイ装置22aのIPアドレスにより設定されるPMIPトンネルに対応するトンネル識別子(TEID)及び移動端末装置30の識別子を含んだベアラ作成要求をゲートウェイ装置21へ送信する(S107)。アクセスゲートウェイ装置22aには複数のIPアドレスが割当られており、アクセスゲートウェイ装置22aは、これらのIPアドレスの中から、当該PMIPトンネルのベアラ専用のIPアドレスを選び出し、該IPアドレスを含んだベアラ作成要求を送信する。なお、本実施形態ではアクセスゲートウェイ装置22aに既に複数のIPアドレスが割当てられているとしたが、ベアラ作成要求に応じてネットワークドメイン内の装置から動的に割当てるようにしてもよい。また、ベアラ作成要求に使用するメッセージはPMIPプロトコルで規定されているBinding Updateメッセージ(以下、「BUメッセージ」という)のオプションフィールドを拡張したものを使用してもよい。
アクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21との間のPMIPトンネルは追加ベアラの活性化や更新、削除やそれに付随するQoS情報の設定・変更等の制御メッセージを送受信するための制御プレーンCP(Control Plane)用とサービスを受けるためのデータを送受信するユーザプレーンUP(User Plane)用に別々に準備する必要がある。本実施形態では制御プレーンCP用とユーザプレーンUP用に一本ずつPMIPトンネルを準備し、それぞれのPMIPトンネルに対して異なる気付けアドレスCoAを割り当てて送信する。PMIPトンネルで規定されているBUを使用する場合、すなわちアクセスゲートウェイ装置22aからゲートウェイ装置21へベアラ作成のための制御メッセージを送信する場合は、制御プレーンCPで使用する気付けアドレスCoAをソースアドレスに、ゲートウェイ装置21のアドレスをディスティネーションアドレスに設定し、BUメッセージのオプションフィールドに制御プレーンCPとユーザプレーンUPに対応する気付けアドレスCoAと、制御プレーンCP、ユーザプレーンUPそれぞれに割当てた下り方向のトンネルのTEIDを含めて送信する。なお、本実施形態ではベアラ作成要求で設定するユーザプレーンUP用のPMIPトンネルは一つとしたが、アタッチ時に二つ以上のユーザプレーンUP用のPMIPトンネルを設定してもよい。
ベアラ作成要求を受信したゲートウェイ装置21は、アクセスゲートウェイ装置22aから受信した情報をもとにEPSベアラテーブルの情報を作成し(S108)、加入者管理サーバ24へゲートウェイ装置21の認証を行う(S109)。ゲートウェイ装置21はここで、加入者管理サーバ24から移動端末装置30に割当てるIPアドレスを取得しても構わない。さらに、ユーザプレーンUPで使用するEPSベアラに対して、QoS情報や課金情報を設定することが要求されている場合には、ゲートウェイ装置21のベアラ情報記憶部621で管理しているEPSベアラテーブルの該当する項目を設定するとともに、QoS情報をもとにベアラ情報記憶部621で管理しているトラフィック・フロー・テンプレートを設定する(S110)。
ここで、設定するEPSベアラのユーザプレーンUPで使用するベアラ識別子が「EPS1」であり、このEPSベアラに対応するゲートウェイ装置21とアクセスゲートウェイ装置22a間のネットワークベアラの制御プレーンCP及び、ユーザプレーンUPの上り方向及び下り方向のネットワークベアラTEIDを「NB1(CP−UL)」、「NB1(CP−DL)」、「NB2(UP−UL)」、「NB2(UP−DL)」であるとする。また、このEPSベアラに対応するユーザプレーンUPと制御プレーンCPのトンネリングを設定するためのアクセスゲートウェイ装置22aの気付けアドレスCoAが「SGW−ADDR1」、「SGW−ADDR2」であるとする。さらに、移動端末装置30のUE識別子及び移動端末装置30に割当てられたパケットデータネットワーク40へ接続するためのIPアドレスがそれぞれ「UE−ID1」、「UE−ADDR1」であり、ユーザプレーンUPのQoS情報及び課金情報がそれぞれ「QoS情報2」、「課金情報2」であるとすると、ゲートウェイ装置21は、これらの値を対応付けて、ベアラ情報記憶部621のEPSベアラテーブルに図11のように格納する。
EPSベアラテーブルを作成後、ゲートウェイ装置21は上り方向のトンネルのTEIDを含めたベアラ作成応答をアクセスゲートウェイ装置22aに送信する(S111)。ここで使用するメッセージはPMIPプロトコルで規定されているBinding Acknowledgementメッセージ(以下、「BAメッセージ」という)を使用してもよい。また、ゲートウェイ装置21から移動端末装置30にIPアドレスを割当てる場合には、このBAメッセージに割り当てるIPアドレスを含めてアクセスゲートウェイ装置22aに送信する。
シーケンスS111にてゲートウェイ装置21が送信したベアラ作成応答メッセージを受信したアクセスゲートウェイ装置22aは、このメッセージに含まれる下り方向のトンネルのTEIDといった情報をもとに、アクセスゲートウェイ装置22aのベアラ情報管理部523で管理しているEPSベアラテーブルの情報を作成する(S112)。このベアラ作成応答メッセージに、アクセスゲートウェイ装置22aで管理している複数の移動端末装置30に該当するEPSベアラテーブルを識別するためにUE識別子を含めて送ってもよい。
アクセスゲートウェイ装置22aは、このベアラ作成応答メッセージを受信すると、このメッセージ中に含まれたTEIDと、ベアラ作成要求メッセージとしてゲートウェイ装置21に送信した情報とをもとにベアラ情報記憶部523のEPSベアラテーブルを作成する(S112)。ここで、本実施形態で使用するEPSベアラのユーザプレーンUPで使用するベアラ識別子が「EPS1」であるとする。また、このEPSベアラに対応するゲートウェイ装置21とアクセスゲートウェイ装置22a間のネットワークベアラの制御プレーンCP及び、ユーザプレーンUPの上り方向及び、下り方向のネットワークベアラTEIDを「NB1(CP−UL)」、「NB1(CP−DL)」、「NB2(UP−UL)」、「NB2(UP−DL)」であるとする。さらに、このEPSベアラに対応するPMIPトンネリングを設定するためのアクセスゲートウェイ装置22aの気付けアドレスCoAが「SGW−ADDR1」、「SGW−ADDR2」であり、移動端末装置30のUE識別子及び移動端末装置30に割当てられたパケットデータネットワーク40へ接続するためのIPアドレスがそれぞれ「UE−ID1」、「UE−ADDR1」であるとする。さらに、ゲートウェイ装置21のアドレスが「PGW−ADDR1」であり、ユーザプレーンUPのQoS情報及び課金情報がそれぞれ「QoS情報2」、「課金情報2」とすると、アクセスゲートウェイ装置22aは、これらの値を対応付けて、ベアラ情報記憶部523のEPSベアラテーブルに、図12のように格納する。この段階では、無線アクセスネットワーク10側のトンネルが設定されていないので、無線アクセスベアラTEIDの欄は空白となっている。
アクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21間のPMIPトンネルが確立されると、アクセスゲートウェイ装置22aは、アクセス制御装置23aに対して上り方向のユーザプレーンUPのPMIPトンネルのTEIDといったような前記処理により確立されたトンネルに対応する基地局装置15aとアクセスゲートウェイ装置22a間の無線アクセスベアラを確立するための情報含んだベアラ作成応答をアクセス制御装置23aに送信する(S113)。アクセス制御装置23aは、前記ベアラ作成応答に含まれたTEIDや移動端末装置30と基地局装置15a間の無線ベアラを確立するために必要な情報を含めたアタッチ応答を基地局装置15aに対して送信し(S114)、基地局装置15aはこのアタッチ応答に含まれた情報をもとに無線アクセスベアラの情報のセットアップ及び、移動端末装置30との無線ベアラの確立を行う(S115)。移動端末装置30と基地局装置15a間の無線ベアラが確立されると、基地局装置15aは無線ベアラのセットアップ完了や無線アクセスベアラの下り方向のユーザプレーンUPの無線アクセスベアラTEIDを含めたアタッチ完了メッセージをアクセス制御装置23aに送信する(S116)。
アタッチ完了メッセージを受信したアクセス制御装置23aは、このメッセージに含まれた無線アクセスベアラの下り方向のユーザプレーンUPのTEIDを含めたベアラ更新要求メッセージをアクセスゲートウェイ装置22aに送信し(S117)、アクセスゲートウェイ装置22aは前記メッセージに含まれたTEIDをもとに基地局装置15aとアクセスゲートウェイ装置22a間、アクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21間のトンネルのマッピングを更新する(S118)。ここで、前記EPSベアラに対応するアクセスゲートウェイ装置22aと基地局装置15a間の無線アクセスベアラの制御プレーンCP及び、ユーザプレーンUPの上り方向及び、下り方向のTEIDをRAB1(CP−UL)、RAB1(CP−DL)、RAB2(UP−UL)、RAB2(UP−DL)とすると更新されたアクセスゲートウェイ装置22aのEPSベアラテーブルは図13のようになる。次に、アクセスゲートウェイ装置22aはベアラ更新応答をアクセス制御装置23aに対して送信し(S119)、一方で移動端末装置30へアドレスコンフィグレーションの処理を行う(S120)。
本実施形態では、移動端末装置30へのIPアドレスの設定方法としてRouter Advertisementによるステートレスアドレスコンフィグレーションによるものとするが、Dynamic Host Control Protocol(DHCP)やIPv6向けのDHCPv6等のプロトコルを使用して、ステートフルアドレスコンフィグレーションによって、移動端末装置30のアドレスコンフィグレーションを実行してもよい。以上の処理によりゲートウェイ装置21と移動端末装置30間でEPSベアラが確立する(S121)。
ここで、以上のシーケンスによって確立されたユーザプレーンUPのEPSベアラ構成を図14に示す。このように、ベアラ識別子「EPS1」で識別されるEPSベアラとして、ゲートウェイ装置21とアクセスゲートウェイ装置22aの間には、ネットワークベアラTEIDがNB2(UP−DL)とNB2(UP−UL)のネットワークベアラが設定され、アクセスゲートウェイ装置22aと基地局装置15aの間には、無線アクセスベアラTEIDがRAB2(UP−DL)とRAB2(UP−UL)の無線アクセスベアラが設定されている。なお、本実施形態ではネットワークベアラにおいて、上り方向と下り方向に対して一つの気付けアドレスCoAを割当てる例を挙げたが、上り方向及び下り方向に対してそれぞれ異なる気付けアドレスCoAを割当ててもよい。また、割当てた気付けアドレスCoAをネットワークベアラのTEIDとして用いてもよい。
次に、図9を用いてユーザプレーンUPのEPSベアラを追加する設定を行う際の各部の動作を説明する。本実施形態では、パケットデータネットワーク40からゲートウェイ装置21に対してユーザプレーンUPのEPSベアラの追加を要求するUPベアラ設定要求が送られてきた場合を説明する。UPベアラ設定要求にサービス品質QoSや課金に関する情報が含まれている場合には、その情報に従ってゲートウェイ装置21が、EPSベアラテーブルにユーザプレーンUPのEPSベアラを追加し、該EPSベアラに対してQoS情報を設定し、ゲートウェイ装置21に対して上り方向のトンネルのTEIDやQoS情報といったベアラコンテキスト情報を含めた追加EPSベアラ設定要求を送信する(S201)。なお、UPベアラ設定要求にQoS情報等が含まれていない場合は、ゲートウェイ装置21にあらかじめ設定されているQoS等のベアラコンテキストを含めて送信しても構わない。さらに、追加EPSベアラ設定要求に既に確立されているEPSベアラと関連させるためのベアラ識別子等の情報を付加しても構わない。また、本実施形態では、パケットデータネットワーク40から追加のUPベアラ設定要求があったとしたが、ユーザの通信要求から移動通信網内の装置が追加のUPベアラの設定要求をゲートウェイ装置21に送信してもよいし、UPベアラ設定要求の送信元については問わない。
アクセスゲートウェイ装置22aは、追加EPSベアラ設定要求を受信すると、アクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21間に追加のPMIPトンネルを確立するためのアクセスゲートウェイ装置22aの気付けアドレスCoAを取得し、該気付けアドレスCoA及び気付けアドレスCoAにより設定されるPMIPトンネルに対応するネットワークベアラTEID及び移動端末装置30の識別子を含めたネットワークベアラ設定要求をゲートウェイ装置21へ送信する(S202)。なお、このネットワークベアラ設定要求を送るメッセージは、PMIPプロトコルで規定されている前述のBUメッセージのオプションフィールドを拡張したものを使用してもよい。さらに、アクセスゲートウェイ装置22aの気付けアドレスCoAの取得方法については、DHCPやDHCPv6等のプロトコルを使用してもよいし、ゲートウェイ装置21から指定したアドレスを使用してもよいし、その取得方法を限定するものではない。
ゲートウェイ装置21は、受信したネットワークベアラ設定要求に含まれたアクセスゲートウェイ装置22aの気付けアドレスCoA、TEID及び移動端末装置30の識別子をもとにゲートウェイ装置21のEPSベアラテーブルを更新し、追加ベアラ設定要求に含まれたQoS情報、もしくはゲートウェイ装置21に予め設定されているQoS情報をもとにトラフィック・フロー・テンプレートを設定する(S203)。ここで、追加のEPSベアラのベアラ識別子をEPS2、このEPSベアラに対応するゲートウェイ装置21とアクセスゲートウェイ装置22a間のネットワークベアラの上り方向及び下り方向のTEIDをNB3(UP−UL)、NB3(UP−DL)、追加のEPSベアラのために割当てられたアクセスゲートウェイ装置22aの気付けアドレスCoAをSGW−ADDR3、EPS2のQoS情報及び課金情報をQoS情報3、課金情報3とすると、ゲートウェイ装置21のベアラテーブルは図11にベアラ識別子がEPS2のEPSベアラが追加されて、図15のようになる。
EPSベアラテーブルを更新後、ゲートウェイ装置21は上り方向のトンネルのTEIDを含めたベアラ作成応答をアクセスゲートウェイ装置22aに送信する(S204)。ここで使用するメッセージはPMIPプロトコルで規定されている前述のBAメッセージを使用してもよい。アクセスゲートウェイ装置22aはネットワークベアラ設定応答を受信すると、メッセージ中に含まれたTEID及びネットワークベアラ設定要求でゲートウェイ装置21に送信した情報をもとにアクセスゲートウェイ装置22aのEPSベアラテーブルを作成する(S205)。ここで追加のEPSベアラのベアラ識別子をEPS2、前記EPSベアラに対応するネットワークベアラの上り方向及び下り方向のトンネルのTEIDをNB3(UP−UL)、NB3(UP−DL)、トンネルで使用するアクセスゲートウェイ装置22aの気付けアドレスCoAをSGW−ADDR3、QoS情報及び課金情報をそれぞれQoS情報1、課金情報2とすると、更新されたアクセスゲートウェイ装置22aのEPSベアラテーブルは、図13にベアラ識別子がEPS2のEPSベアラが追加されて、図16のようになる。
シーケンスS202〜S205の処理と平行して、シーケンスS201追加EPSベアラ設定要求に含まれたQoS情報を元に、アクセスゲートウェイ装置22aに対して上り方向のトンネルのTEIDやQos情報といったベアラコンテキスト情報を含めた追加EPSベアラ設定要求を、アクセスゲートウェイ装置22aは、アクセス制御装置23aに対して送信する(S206)。アクセス制御装置23aは、この追加EPSベアラ設定要求で受信した情報をもとにセッション管理設定情報を作成し、この追加EPSベアラ設定要求に含まれたQoS情報及びTEIDを含めた無線ベアラ設定要求を基地局装置15aに対して送信する(S207)。
基地局装置15aは、この無線ベアラ設定要求を受信して、EPSベアラと無線ベアラのQoS情報のマッピングを行い、マッピングされた無線ベアラのQoS情報をもとに移動端末装置30と基地局装置15aの間の無線ベアラを確立する(S208)。移動端末装置30と基地局装置15a間の無線ベアラが確立されると基地局装置15aは、基地局装置15aとアクセスゲートウェイ装置22a間の上り方向の無線アクセスベアラのTEIDや、セッション管理設定結果情報を含んだ無線ベアラ設定応答をアクセス制御装置23aに対して送信する(S209)。さらに、アクセス制御装置23aは、この無線ベアラ設定応答を受信すると、この無線ベアラ設定応答に含まれていたTEIDを含めた追加無線アクセスベアラ設定応答をアクセスゲートウェイ装置22aに対して送信する(S210)。
この追加無線アクセスベアラ設定応答を受信したアクセスゲートウェイ装置22aは、この追加無線アクセスベアラ設定応答に含まれた無線アクセスベアラのTEIDとネットワークベアラのTEIDの情報をもとにEPSベアラテーブルを更新し(S211)、ゲートウェイ装置21に対して追加EPSベアラ設定応答を送信する(S212)。ここで、前記追加EPSベアラに対応する無線アクセスベアラの上り方向及び下り方向のトンネルのTEIDをRAB3(UP−UL)、RAB3(UP−DL)とすると更新されたアクセスゲートウェイ装置22aのEPSベアラテーブルは、図16にこれらの情報が追加されて図17のようになる。
なお、本実施形態ではユーザプレーンのEPSベアラを一つ追加設定する例について説明したが、複数の追加設定の要求があった場合でも、ネットワークベアラ設定要求でアクセスゲートウェイ装置22aとゲートウェイ装置21間のPMIPトンネルを複数設定するためのアクセスゲートウェイ装置22aのアドレスを複数送信することで実現することが可能である。
また、本実施形態ではゲートウェイ装置21を一つの装置として説明したが、ゲートウェイ装置21とパケットデータネットワーク40の間にパケットデータネットワーク40の接続機能のみを別装置として配置するようなシステム構成であってもよい。
以下、本発明の骨子を詳細に説明する。図18は、アクセスゲートウェイ装置22aのデータ転送機能部513の構成を示す概略ブロック図である。データ転送機能部513は、コアネットワーク受信部181、無線アクセスネットワーク送信部182、無線アクセスネットワーク受信部183、コアネットワーク送信部184を具備する。コアネットワーク受信部181は、コアネットワーク20からIPパケットを受信する。無線アクセスネットワーク送信部182は、コアネットワーク受信部181が受信したIPパケットに格納されているIPパケットを、受信したIPパケットの送信先アドレスと対応付けてベアラ情報記憶部523のEPSベアラテーブルが記憶する下り方向の無線アクセスベアラTEID(ベアラ識別情報)と基地局装置15aアドレスとをそれぞれTEIDと送付先アドレスとするGTPトンネルのIPパケットに格納して、無線アクセスネットワーク10に送信する。無線アクセスネットワーク受信部183は、無線アクセスネットワークからTEIDとともにIPパケットを格納したGTPトンネルのIPパケットを受信する。コアネットワーク送信部184は、受信したGTPトンネルのIPパケットのTEIDと対応付けてベアラ情報記憶部523のEPSベアラテーブルが記憶する気付けアドレスCoAを送信元アドレスとするIPパケットに、受信したGTPトンネルのIPパケットに格納されていたIPパケットを格納してコアネットワーク20に送信する。
図19は、ゲートウェイ装置21のデータ転送機能部633の構成を示す概略ブロック図である。データ転送機能部633は、外部ネットワーク受信部191、コアネットワーク送信部192、コアネットワーク受信部193、外部ネットワーク送信部194を具備する。外部ネットワーク受信部191は、パケットデータネットワーク40からIPパケットを受信する。コアネットワーク送信部192は、ベアラ情報記憶部621のトラフィック・フロー・テンプレートから、外部ネットワーク受信部191が受信したIPパケットが条件を満たしているフィルター条件を探し出し、該フィルター条件のEPSベアラの気付けアドレスCoAを送信先アドレスとするPMIPトンネルのIPパケットに、外部ネットワーク受信部191が受信したIPパケットを格納して、コアネットワーク20に送信する。コアネットワーク受信部193は、コアネットワーク20からPMIPトンネルのIPパケットを受信する。外部ネットワーク送信部194は、コアネットワーク受信部193が受信したPMIPトンネルのIPパケットに格納されているIPパケットを、外部ネットワーク40に送信する。
次に、移動端末装置30が移動通信網を経由して外部のパケットデータネットワーク40と接続してデータ通信を行なう際の各部の動作を説明する。本実施形態では、移動端末装置30が移動通信網にアタッチした状態で、移動端末装置30からの通信要求によって追加のEPSベアラを設定しており、この設定されているユーザプレーンUPのEPSベアラを使用してデータ通信を行なうこととする。すなわち、移動端末装置30からの通信要求や外部パケットデータネットワーク40からの通信要求により、ゲートウェイ装置21は追加ベアラ設定要求を受信し、図9のシーケンスに従って追加のEPSベアラが確立される。このとき、EPSベアラに設定されるQoSクラスを図20に示すように、QoSクラス識別子が「QoS1」を「会話型クラス」、「QoS2」を「ストリーミング・クラス」、「QoS3」を「インタラクティブ・クラス」、「QoS4」を「バックグラウンド・クラス」と定義し、ベアラ識別子がEPS1、EPS2のEPSベアラに設定されたQoS情報をQoS4、QoS1とすると、ゲートウェイ装置21及びアクセスゲートウェイ装置22aのEPSベアラテーブルは図21、図22のようになる。また、ゲートウェイ装置21のトラフィック・フロー・テンプレートは、図23のようになる。なお、ここでは、ゲートウェイ装置21が受信した追加UPベアラ要求にQoS情報として「QoS1」が設定されていたとする。
パケットデータネットワーク40から移動端末装置30宛のパケットを外部ネットワーク受信部191が受信すると、ゲートウェイ装置21のコアネットワーク送信部192は、受信したパケットを移動端末装置30に転送するために、ベアラ情報記憶部523が記憶している図23に例示するトラフィック・フロー・テンプレートを参照して、パケットを配送するEPSベアラを選択する。トラフィック・フロー・テンプレートには各EPSベアラのパケットフィルタ(ベアラ判定条件)及びQoSクラスが設定されており、パケットデータネットワーク40から受信したIPヘッダに含まれる移動端末装置30のアドレスや宛先のポート番号、送信元のポート番号、サービスタイプ/トラフィッククラス、フローラベル等によって該パケットが、当該EPSベアラのパケットであるか否かが判定される。ここでは、移動端末装置30のアドレスとトラフィッククラスとの値を、パケットフィルタとして使用することとし、トラフィック・フロー・テンプレートには、ベアラ識別子がEPS1のEPSベアラのパケットフィルタとして、UEアドレスが「UE−ADDR1」であり、トラフィッククラスが「4」であることが設定されており、ベアラ識別子がEPS2のEPSベアラのパケットフィルタとして、UEアドレスが「UE−ADDR1」であり、トラフィッククラスが「1」であることが設定されている。
ゲートウェイ装置21のコアネットワーク送信部192は、トラフィック・フロー・テンプレート及び受信したIPパケットのIPヘッダを参照して、トラフィック・フロー・テンプレートのいずれかのパケットフィルタに該当するパケットであるかを判定する。ここでは、EPS識別子がEPS2のパケットフィルタに該当したとすると、送信元アドレスをゲートウェイ装置21のアドレス「PGW−ADDR1」に設定し、EPSベアラテーブルのEPS識別子「EPS2」に対応付けられた情報を参照して、宛先アドレスを気付けアドレスCoAである「SGW−ADDR3」に設定したIPヘッダで、受信したIPパケットをカプセル化してアクセスゲートウェイ装置22aに転送する。カプセル化したIPパケットの一例を図24に示す。このようにカプセル化したPMIPトンネルのIPパケットは、コアネットワーク送信部192が設定したIPヘッダに続いて、外部ネットワーク受信部191が受信した移動端末装置30宛のIPパケットが格納されている。
アクセスゲートウェイ装置22aのコアネットワーク受信部181が、前記カプセル化されたIPパケットを受信すると、無線アクセスネットワーク送信部182は、受信したパケットをデカプセル化して、アクセスゲートウェイ装置22aのEPSベアラテーブルのカプセル化されたIPパケットの送信先アドレスが気付けアドレスCoAと一致しているEPSベアラの情報を参照し、GTPトンネルで使用するアクセスゲートウェイ装置22aのアドレスをSGW−GTP−ADDRとすると、送信元をSGW−GTP−ADDRに、宛先を基地局装置15aのアドレスに、TEIDをRAB3(UP−DL)に設定したGTPトンネルのIPヘッダでカプセル化して基地局装置15aに転送する。カプセル化したIPパケットの一例を図25に示す。このようにカプセル化したGTPトンネルのIPパケットは、無線アクセスネットワーク送信部182が設定したIPヘッダとUDPヘッダと無線アクセスベアラのTEIDを含むGTPヘッダに続いて、移動端末装置30宛のIPパケットが格納されている。基地局装置15aは、このカプセル化されたIPパケットを受信し、受信したIPパケットをデカプセル化して、無線ベアラで転送可能なフォーマットに変換して移動端末装置30に送信する。
移動端末装置30からパケットデータネットワーク40へパケットを送信する場合にも、移動端末装置30のベアラ管理機能部で管理しているポリシーに従って送信するパケットに対してQoSを設定する。ここでは、送信するパケットに対して受信したパケットと同じQoSクラスの設定を行うこととするが、移動端末装置30で管理しているポリシーによっては上り下りの通信に対して異なるQoSクラスの設定を行ない、異なるEPSベアラを使用してもよい。移動端末装置30は前記設定したQoSクラスに従って無線ベアラで転送可能なフォーマットに送信パケットを変換して基地局装置15aに送信する。基地局装置15aは送信元を基地局装置15aのアドレスに、宛先をSGW−GTP−ADDRに、TEIDをRAB3(UP−UL)に設定したGTPトンネルのIPヘッダでカプセル化してアクセスゲートウェイ装置22aに転送する。カプセル化したIPパケットの一例を図26に示す。
アクセスゲートウェイ装置22aの無線アクセスネットワーク受信部183が、このGTPトンネルのIPヘッダでカプセル化されたIPパケットを受信し、受信したIPパケットをデカプセル化すると、アクセスゲートウェイ装置22aのコアネットワーク送信部184は、ベアラ情報記憶部523のEPSベアラテーブルを参照して、GTPトンネルのIPヘッダで指定されていたTEIDと対応付けて記憶されている気付けアドレスCoA「SGW−ADDR3」、PGWアドレス「PGW−ADDR1」を、それぞれ送信元アドレスと宛先アドレスとに設定したPMIPトンネルのIPヘッダで、デカプセル化されたIPパケットを再度カプセル化してゲートウェイ装置21に転送する。カプセル化したIPパケットの一例を図27に示す。このようにカプセル化したPMIPトンネルのIPパケットは、コアネットワーク送信部184が設定したIPヘッダに続いて、無線アクセスネットワーク受信部183が受信したパケットデータネットワーク40宛のIPパケットが格納されている。
ゲートウェイ装置21は、図27に例示したPMIPトンネルのIPパケットを受信し、受信したIPパケットをデカプセル化してパケットデータネットワーク40宛のIPパケットを取出し、パケットデータネットワーク40へ転送する。
このように、コアネットワーク20においては、アクセスゲートウェイ装置22a、22bは、複数のIPアドレスを所持している、もしくは追加で割当て可能であり、これらのIPアドレスの中からEPSベアラ毎に1つのIPアドレスを割当ててPMIPトンネルを設定しているので、EPSベアラ毎にトンネルを設定してベアラ毎に帯域制御などを行うことを可能とし、さらに、コアネットワーク20を、汎用のIPネットワーク用の機器(ルータなど)で構築することができる。
本実施形態では、上り下りのパケットに対して同じQoSを設定して同じEPSベアラを使用する例を説明したが、上りと下りのパケットに対して異なるQoS設定を行い、異なるEPSベアラを使用してパケットを配送してもよい。
また、本実施形態では追加のユーザプレーンUP用のEPSベアラを設定後に、移動端末装置30宛のパケットがゲートウェイ装置21に到着して前記パケットを追加で確立されたEPSベアラを使用して移動端末装置30に配送する例について説明したが、ゲートウェイ装置21に予め設定されたトラフィック・フロー・テンプレート及びゲートウェイ装置21に到着したパケットに応じて、既に確立されているEPSベアラを使用しても、到着したパケット及び前記ゲートウェイ装置21に予め設定されたトラフィック・フロー・テンプレートから決定されQoSクラスに従って追加のEPSベアラを確立し、前記確立したEPSベアラを使用して移動端末装置30にパケットを配送しても構わない。
なお、本実施形態では移動端末装置30が移動通信網を経由して外部のパケットデータネットワーク40と接続してデータ通信を行なう際の各部の動作について説明したが、同じ移動通信網にアタッチしている移動端末装置30同士で通信を行なう場合についてもトラフィック・フロー・テンプレートを使用しないという点を除いて、上述した内容で動作を説明することが出来る。
また、図2における無線制御部220、通信制御部230、および図3における無線制御部310、無線ネットワーク制御部320、および図4におけるネットワークアクセス制御部420、移動管理部410、および図5における通信制御部510、ベアラ管理部520、および図6の通信制御部630、ベアラ管理部620の機能、もしくはその一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。