JP2009004229A - 燃料電池用膜電極接合体および燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】活物質が対極側にリークすることを抑制でき、薄肉化を図り得、発電電圧を高くするのに有利な燃料電池用膜電極接合体および燃料電池を提供する。
【解決手段】膜電極接合体1は、プロトン伝導性を有する電解質膜2と燃料電極4と酸化剤電極5とを備える。電解質膜2は、その内部に、内部電極層21とプロトン電子伝導性バリヤ膜23とを備える。内部電極層21は、電子伝導性、プロトン伝導性、触媒を有する。プロトン電子伝導性バリヤ膜23は、プロトン伝導性、電子伝導性、バリヤ性を有しており、酸化剤電極5および燃料電極4のうちの一方と内部電極層21との間に配置されている。
【選択図】図1
【解決手段】膜電極接合体1は、プロトン伝導性を有する電解質膜2と燃料電極4と酸化剤電極5とを備える。電解質膜2は、その内部に、内部電極層21とプロトン電子伝導性バリヤ膜23とを備える。内部電極層21は、電子伝導性、プロトン伝導性、触媒を有する。プロトン電子伝導性バリヤ膜23は、プロトン伝導性、電子伝導性、バリヤ性を有しており、酸化剤電極5および燃料電極4のうちの一方と内部電極層21との間に配置されている。
【選択図】図1
Description
本発明は、プロトン伝導体を電解質膜とする燃料電池用膜電極接合体および燃料電池に関する。
燃料電池は、自動車や家庭用の電源として、広範な普及が期待されている。電解質膜の種類に応じて各種の燃料電池が研究されている。プロトン伝導体を電解質膜とする燃料電池では、燃料電極に供給された燃料流体に含まれている燃料活物質(水素)が燃料電極(アノード)で酸化され、プロトン(H+)と電子とが生成される。プロトンは、電解質膜であるプロトン伝導体を伝導して対極の酸化剤電極(カソード)に到達して、酸化剤電極に供給された酸化剤活物質である酸素と燃料電極から外部負荷を通って供給される電子と反応して水を生成する。この際、燃料電極と酸化剤電極の間には、使用する燃料と酸素の反応で水が生成する際の自由エネルギ変化に相当する電圧が発生し、これが、電気エネルギとして外部に取り出される。
プロトン伝導体で形成されている電解質膜では、理想的にはプロトン(H+)のみを透過して、燃料活物質(水素)や酸化剤活物質(酸素)を対極側に透過させない方が好ましい。このような対極側への活物質の透過を防止できれば、ガス燃焼、発熱、過酸化水素やラジカル等の化学的活性種の発生が抑制される。ひいては電解質膜2の劣化が抑制され、電解質膜をもつ膜電極接合体の耐久性の更なる長寿命化を図ることができる。
そこで、本出願人は、燃料電池の膜電極接合体を構成する電解質膜の内部に内部電極層を設け、電解質膜内の燃料活物質の移動、酸化剤活物質の移動を制御し、ひいては燃料活物質の透過、酸化剤活物質の透過を抑制できる燃料電池を開発した(特許文献1,2)。この内部電極層には、反応を促進させる触媒活性の他に、燃料電池としての機能を阻害しないようプロトン伝導性と、電位を印加して電流を流すための電子伝導性とが要請される。このため、触媒を担持した触媒担持カーボンと高分子電解質膜溶液とを混練してなる触媒ペーストで形成した内部電極層を2枚の電解質膜で挟持し、これにより内部電極層を電解質膜の内部に配置することにしている。
特開2005−216629号公報
特開2006−331681号公報
産業界では、膜電極接合体の耐久性を高めることが更に要請されている。
本発明は上記した燃料電池を更に技術的に進めたものであり、活物質が対極側にリークすることを抑制するのに有利であり、更に、薄肉化を図りつつ、燃料電池の発電電圧を高めるのに有利な燃料電池用膜電極接合体および燃料電池を提供することにある。
本発明に係る燃料電池用膜電極接合体は、プロトン伝導性を有する電解質膜と、電解質膜の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極と、電解質膜の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する燃料電池用膜電極接合体において、
電解質膜は、その内部に、
(i)電子伝導性をもつ電子伝導体とプロトン伝導性をもつプロトン伝導体と触媒活性をもつ触媒とを有する内部電極層と、
(ii)酸化剤電極および燃料電極のうちの一方と内部電極層との間に配置され、電子伝導性をもつ電子伝導体と、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、電極反応の活物質に対するバリヤ性をもつ樹脂とを有するプロトン電子伝導性バリヤ膜を備えていることを特徴とする。
電解質膜は、その内部に、
(i)電子伝導性をもつ電子伝導体とプロトン伝導性をもつプロトン伝導体と触媒活性をもつ触媒とを有する内部電極層と、
(ii)酸化剤電極および燃料電極のうちの一方と内部電極層との間に配置され、電子伝導性をもつ電子伝導体と、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、電極反応の活物質に対するバリヤ性をもつ樹脂とを有するプロトン電子伝導性バリヤ膜を備えていることを特徴とする。
本発明に係る燃料電池は、(i)プロトン伝導性を有する電解質膜と、電解質膜の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極と、電解質膜の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する燃料電池用膜電極接合体と、(ii)燃料電池用膜電極接合体の酸化剤電極に対面する酸化剤活物質配流板と、(iii)燃料電池用膜電極接合体の燃料電極に対面する燃料活物質配流板とを具備する燃料電池において、燃料電池用膜電極接合体は、上記した様相に係る燃料電池用膜電極接合体で形成されていることを特徴とする。
本発明によれば、燃料電極で発生したプロトンは、電解質膜を透過し、酸化剤電極に至る。このような電解質膜の内部には、プロトン伝導性、電子伝導性および触媒活性をもつ内部電極層が設けられている。この内部電極層の電極電位を調整すれば、電解質膜内の燃料活物質または酸化剤活物質が対極に透過することを制御することができる。換言すると、電解質膜の内部に内部電極層とプロトン電子伝導性バリヤ膜とを設け、プロトン電子伝導性バリヤ膜はそのバリヤ性(水素等の活物質に対する遮蔽性)により、内部電極層側への燃料活物質(水素)または酸化剤活物質(酸素)の透過を制限する。これにより内部電極層の電極電位を、燃料活物質を酸化できる電位、あるいは、酸化剤活物質を還元できる電位に調整する。これにより電解質膜を透過する燃料活物質を酸化により分解したり、酸化剤活物質を還元したりする。その結果、燃料活物質および酸化剤活物質が対極側へ透過することが抑制される。
上記したようにプロトン電子伝導性バリヤ膜は、電極反応の活物質に対して高いバリヤ性(活物質遮蔽性)をもつバリヤ樹脂を備えている。このため、プロトン電子伝導性バリヤ膜の厚みを過剰に厚くせずとも、バリヤ性(水素等の活物質に対する遮蔽性)が良好に確保される。故に、膜電極接合体の薄肉化が図られ、ひいては燃料電池の薄膜化が図られる。ここで、バリヤ性(活物質遮蔽性)をもつとは、バリヤ性をもつ樹脂が含まれていないプロトン伝導膜よりも、バリヤ性をもつ樹脂を有するプロトン電子伝導性バリヤ膜は、活物質透過係数(活物質透過性)が小さいことを意味する。
更に、電解質膜を構成するプロトン電子伝導性バリヤ膜の厚みを過剰に厚くせずとも良い。このため、電解質膜の厚み方向におけるプロトン伝導率が高めに維持される。従って燃料電池の発電電圧を高めるのに有利となる。従って、プロトン電子伝導性バリヤ膜の厚みとしては、プロトン伝導率を高めに維持するためには、バリヤ性を確保しつつできるだけ薄くすることが好ましい。よって、例えば26マイクロメートル以下、15マイクロメートル以下、12マイクロメートル以下に設定することができる。
上記したバリヤ性をもつ樹脂としては、プロトン伝導体に対する相溶性、バリヤ性、接合性等を考慮すると、エチレン・ビニルアルコール共重合体が挙げられる。更に、プロピレン、ブチレン、1−ヘキセン等のα−オレフィン系の構造が挙げられる。具体的には、プロピレン−ビニルアルコール共重合体、ブチレン−ビニルアルコール共重合体、1−ヘキセン−ビニルアルコール共重合体等のα−オレフィン系ビニルアルコール共重合体の少なくとも1種が挙げられる。
上記した内部電極層は、電解質膜の内部に形成されており、電解質膜の1種を構成するため、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体を有しており、その他に、電子伝導性をもつ電子伝導体と、触媒活性をもつ触媒とを有する。触媒は、内部電極層における酸化反応または還元反応を促進させる。ここで内部電極層の組成割合については、プロトン伝導性、電子伝導性および触媒活性等を考慮して適宜選択できる。質量比で、内部電極層を100%とするとき、プロトン伝導体は例えば3〜50%、5〜40%にでき、電子伝導体は例えば15〜40%、10〜35%にでき、触媒は例えば10〜30%、15〜15%にできる。
プロトン電子伝導性バリヤ膜は、電解質膜の1種であるため、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体を有しており、その他に、電子伝導性をもつ電子伝導体と、高いバリヤ性をもつバリヤ樹脂とを有する。ここで、質量比で、プロトン電子伝導性バリヤ膜を100%とするとき、プロトン伝導体は例えば50〜70%、55〜65%にでき、電子伝導体は例えば5〜20%、7〜15%にでき、バリヤ樹脂は例えば5〜25%、8〜20%にできる。
燃料活物質(水素)のリークを効率よく抑制するためには、プロトン電子伝導性バリヤ膜は、内部電極層と酸化剤電極との間に配置されており、燃料活物質(例えば水素)が内部電極層に到達することを許容するものの、酸化剤活物質(例えば酸素)が内部電極層に透過することを抑えることが好ましい。また、プロトン電子伝導性バリヤ膜としては、内部電極層と燃料電極との間に配置されており、酸化剤活物質が内部電極層に到達することを許容するものの、燃料活物質が内部電極層に透過することを抑えることにしても良い。
上記したプロトン伝導体としては、プロトン交換基を有するポリマー、またはこれらの共重合体が挙げられる。ポリマーとしては、パーフルオロスルホン酸系が挙げられる。プロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基等が挙げられる。
上記した電子伝導体としては、繊維状伝導体、粒子状伝導体が好ましい。粒子状伝導体としては、耐食性、コストなどを考慮すると、カーボンブラック等のカーボン系伝導体が例示される。カーボンブラックとしてはアセチレンブラック、ファーネスブラック等が例示される。繊維状伝導体の場合、繊維状伝導体の絡みにより集電体ネットワークが形成され易く、電子伝導性を高めることができる。従って、繊維状伝導体の割合を低下させつつ、バリヤ性をもつ樹脂の割合を増加させることができる。
繊維状伝導体としては、長さが径よりも長いものであればよく、長さ/径が2以上,または3以上,または4以上のものが好ましい。電子伝導体の長さとしては、集電体ネットワークを形成できるものが好ましく、特に限定されるものではないが、繊維状伝導体の長さが過剰に短いと、集電体ネットワークを形成しにくい。従って、繊維状伝導体の長さとしては、例えば、100nm〜100μm、または、1μm〜50μm、または2μm〜30μmとすることができるが、これらに限定されるものではなく、燃料電池の種類等に応じて適宜変更できる。繊維状伝導体の材質としては、耐食性を有するものが好ましい。故に、繊維状伝導体としては、カーボン繊維及び金属繊維のうちの少なくとも1種である構成を採用することができる。
カーボン繊維としては、気相成長系、ピッチ系、PAN系、メソフェーズピッチ系を例示することができ、炭素質でも、黒鉛質でも良い。カーボン繊維としては、カーボン長繊維、カーボン短繊維、カーボンナノファイバ、カーボンナノチューブ(カーボンナノホーンを含む)等を例示でき、これらの少なくとも1種を用いることができる。金属繊維の材質としては、白金、金、パラジウム、ロジウム、これらの合金等を例示することができ、これらの少なくとも1種を用いることができる。
上記したように本発明によれば、前述したように、電解質膜の内部に内部電極層とプロトン電子伝導性バリヤ膜とを設け、プロトン電子伝導性バリヤ膜のバリヤ性を利用して内部電極層側への燃料活物質(例えば水素)または酸化剤活物質(例えば酸素)の透過を制限する。これにより内部電極層の電極電位を、燃料活物質を酸化できる電位、あるいは、酸化剤活物質を還元できる電位に調整することができ、電解質膜を透過する燃料活物質等を酸化により分解したり、酸化剤活物質を還元したりする。その結果、燃料活物質および酸化剤活物質が対極側へ透過することが抑制される。この結果、対極において燃料活物質と酸化剤活物質とが混合するおそれが低減される。
更に本発明によれば、プロトン電子伝導性バリヤ膜は、バリヤ性をもつ樹脂を備えているため、プロトン電子伝導性バリヤ膜の厚みを過剰に厚くせずとも、バリヤ性が確保される。即ち、プロトン電子伝導性バリヤ膜の薄肉化が図られる。従って、膜電極接合体の薄肉化が図られる。ひいては燃料電池の薄肉化が図られる。更に、プロトン電子伝導性バリヤ膜の厚みを過剰に厚くせずとも良いため、電解質膜の厚み方向のプロトン伝導率を高めに維持でき、燃料電池の発電電圧を高めに維持するのに有利である。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る燃料電池用膜電極接合体1の概念を示す。本実施形態では、図1に示すように、高いガスバリヤ性をもつプロトン電子伝導性バリヤ膜23が、酸化剤電極5と内部電極層21との間に配置されている形態である。
図1は、実施形態1に係る燃料電池用膜電極接合体1の概念を示す。本実施形態では、図1に示すように、高いガスバリヤ性をもつプロトン電子伝導性バリヤ膜23が、酸化剤電極5と内部電極層21との間に配置されている形態である。
燃料電池用膜電極接合体1は、プロトン伝導体で形成された電解質膜2と、電解質膜2の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極4と、電解質膜2の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極5とを備えている。酸化剤電極5は電子伝導性およびガス透過性をもち、触媒(例えばPt等)および電子導電体(例えばカーボンブラック等)を有する触媒層50と、カーボン繊維の集積体で形成されたガス拡散層51とで形成されている。燃料電極4は電子伝導性およびガス透過性をもち、触媒(例えばPt等)および電子導電体(例えばカーボンブラック等)を有する触媒層40と、カーボン繊維の集積体で形成されたガス拡散層41とで形成されている。
図1に示すように、電解質膜2は内部電極層21を電解質膜2の内部にもつ。内部電極層21は、電子伝導性をもつ電子伝導体(例えばカーボンブラック、カーボン繊維)と、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、触媒活性をもつ触媒(例えばPt等)と、当該プロトン伝導体よりも高いバリヤ性をもつバリヤ樹脂とを備えている。
具体的には、図1に示すように、電解質膜2は、内部電極層21と、プロトン電子伝導性バリヤ膜(以下、バリヤ膜ともいう)23と、プロトン伝導膜25とを備えている。ここで、図1に示すように、内部電極層21は、バリヤ膜23とプロトン伝導膜25との間に配置されている。バリヤ膜23は、酸化剤電極5の触媒層50と内部電極層21との間に配置されている。上記したバリヤ膜23は、内部電極層21のうち酸化剤電極5側に積層されており、酸化剤電極5の酸化剤活物質が内部電極層21に透過することを抑制する。バリヤ膜23は、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、高いバリヤ性をもつバリヤ樹脂とを基材として有する他に、電子伝導性をもつ電子伝導体としてのカーボンファイバを基材として有する。プロトン伝導体としては、プロトン交換基としてスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸樹脂系が挙げられる。ここで、バリヤ膜23のバリヤ性とは、バリヤ樹脂を含まない点を除いて同種の基材で形成された膜よりも、活物質(特に水素)に対する活物質遮断性が高いという意味である。バリヤ樹脂が配合されたバリヤ膜23の水素ガス透過係数等の活物質透過係数としては、水素等の活物質を遮断する活物質遮断性を考慮すると、10×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さく設定できる。なかでも、6×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さく設定できる。特に3×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さく設定できる。
プロトン伝導膜25は、燃料電極4の触媒層40と内部電極層21との間に配置されており、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体を基材として形成されており、基本的には、触媒および電子伝導体を有していない。プロトン伝導膜25は内部電極層21のうち燃料電極4側に積層されており、燃料電極4で生成されたプロトンを内部電極層21に透過させる。ここで、内部電極層21の厚みは例えば0.1〜500μm程度、0.5〜500μm程度、または50〜100μm程度とすることができるが、これらに限定されるものではない。バリヤ膜23の厚みは例えば0.1〜500μm程度、0.5〜500μm程度、または50〜100μm程度とすることができるが、これらに限定されるものではない。プロトン伝導膜25の厚みは例えば0.1〜500μm程度、0.5〜500μm程度、または50〜100μm程度とすることができるが、これらに限定されるものではない。
発電時には、水素を活物質として含む所定圧力の燃料流体(水素ガス、水素含有ガス等)が燃料電極4に供給され、酸素を活物質として含む所定圧力の酸化剤流体(酸素ガス、酸素含有ガス、空気)が酸化剤電極5に供給される。これにより燃料電極4に供給された活物質である水素は、触媒層40においてその触媒作用により、プロトン(H+)および電子を生成する。プロトン(H+)は電解質膜2を酸化剤電極5側に透過する。電子は外部導線経路(図略)を通って酸化剤電極5に到達する。酸化剤電極5に透過したプロトンは、酸化剤電極5に存在する触媒作用により、酸化剤電極5の酸化剤と結合して、水を生成する。これが発電反応である。なお、発電運転時には、燃料電極4に供給される燃料流体の圧力をP1とし、酸化剤電極5に供給される酸化剤流体の圧力をP2とするとき、Pa表示で、P1/P2=0.5〜3.0、特に1.0〜2.0が例示される。
ところで、燃料電極4は水素が豊富であり、燃料電極4の電極電位は酸化剤電極5よりも低くなる。酸化剤電極5は酸化剤活物質(酸素)が豊富であり、酸化剤電極5の電極電位は燃料電極4の電極電位よりも高くなる。ちなみに、文献によれば、水素の平衡電極電位(SHE)は0ボルトであり、酸素の平衡電極電位(O2,H2O|Pt)は約1.2ボルト(vs.SHE)である。ここで、内部電極層21の電極電位は、本来的には、内部電極層21に透過してくる燃料活物質または酸化剤活物質に依存する。即ち、内部電極層21に透過してくる燃料活物質が多いときには、内部電極層21の電極電位は燃料活物質に依存し、本来的には燃料電極4の電位に近づく。内部電極層21に透過してくる酸化剤活物質が多いときには、内部電極層21の電極電位は、酸化剤活物質に依存し、本来的には酸化剤電極5の電極電位に近づく。
バリヤ膜23は活物質に対してバリヤ性を有するものであり、図1に示すように、酸化剤電極5と内部電極層21との間に配置されている。このため、酸化剤電極5の酸化剤活物質は、内部電極層21に到達しにくい。これに対して燃料電極4と内部電極層21との間にはバリヤ膜23は配置されていない。このため、燃料電極4の燃料活物質(水素)は矢印A1方向に透過し、内部電極層21に到達し易い。故に、内部電極層21は酸化剤活物質リッチとならず、水素リッチとなる。従って、内部電極層21の電極電位は本来的には、燃料電極4の電極電位に近いものとなるはずである。
しかし、バリヤ膜23は、プロトン伝導性およびバリヤ性の他に、電子伝導性を有している。この結果、酸化剤電極5と内部電極層21とを電気的に導通させている。このため、内部電極層21の電極電位は、酸化剤電極5の電極電位に近くなり、燃料電極4の電極電位よりも高くなり、燃料活物質(水素)を酸化させる能力が高くなる。ここで、電極電位がその平衡電極電位よりも高いと、その電極反応は酸化方向に進行するものである。従って、内部電極層21に透過した燃料活物質(水素)は、酸化方向に進行する。従って、燃料電極4から内部電極層21に透過した燃料活物質(水素)は、内部電極層21における酸化反応によりプロトン(H+)となり、電子を放出する。この場合、内部電極層21における酸化反応は、内部電極層21に含まれている触媒(Pt等)の触媒活性により促進される。上記した酸化反応により生成されたプロトン(H+)は、バリヤ膜23におけるプロトン伝導体において、酸化剤電極5に向けて矢印A2方向(図1参照)に透過し、酸化剤電極5の触媒層50に至り、触媒層50の触媒作用により、酸化剤電極5の酸化剤活物質(酸素)と反応し、発電反応に使用される。
上記したように燃料電極4から電解質膜2側に透過する燃料活物質(水素)は、内部電極層21における酸化反応により酸化されてプロトン(H+)となる。結果として、燃料活物質そのもの(水素)が燃料電極4から内部電極層21を介して酸化剤電極5に透過することは、抑制される。換言すると、燃料電極4から電解質膜2を透過する水素は、水素のままではなく、プロトン(H+)として酸化剤電極5側に移動する。この結果、燃料電極4から電解質膜2を介して酸化剤電極5側に透過する水素が、酸化剤電極5において、酸化剤電極5の酸化剤活物質(酸素)と混合することが抑えられる。故に、ガス燃焼、発熱、過酸化水素やラジカル等の化学的活性種の発生が抑制される。ひいては電解質膜2の劣化が抑制され、電解質膜2の長寿命化、膜電極接合体1の長寿命化が図られる。
上記したように本実施形態は、バリヤ膜23が有するバリヤ性を利用して、内部電極層21の状態を、酸化剤活物質リッチ状態よりも燃料活物質リッチ状態とする。これにより内部電極層21の電極電位を、燃料活物質(水素)を酸化させてプロトン(H+)とする方向に調整する。ここで、バリヤ膜23におけるバリヤ性は、燃料活物質が内部電極層21側に透過することを許容するものの、酸化剤活物質が内部電極層21側に透過することを遮蔽し、これにより内部電極層21の電極電位を燃料活物質の酸化反応に適するように維持するという重要な意義を有する。
ここで、バリヤ膜23に相当する膜の厚みを過剰に厚くし、厚み方向のバリヤ性を高め、活物質の透過を抑えることも考えられる。しかしながらこの場合には、電解質膜2が過剰に厚肉化され、電極接合体1の厚みが過剰に厚肉化される不具合が発生する。ひいては多数の膜電極接合体1を積層させる構造をもつ燃料電池の厚みが厚肉化されて、大型化されてしまう不具合が発生する。更に、バリヤ膜23に相当する膜の厚みを過剰に厚くすると、バリヤ膜23の厚み方向におけるプロトン伝導率が低下し、発電電圧が低下するおそれがある。特に、高電流領域における発電電圧が低下するおそれがある。
この点本実施形態によれば、バリヤ膜23は、プロトン伝導体よりも高いガスバリヤ性をもつバリヤ樹脂を基材として含む。このため、バリヤ樹脂が含まれていない場合に比較して、バリヤ膜23の厚みtc(図1参照)をできるだけ薄くすることができる。従って、透過する燃料活物質(水素)を酸化させてプロトン(H+)とする機能を実現させつつ、膜電極接合体1の薄膜化が図られる。故に、多数の膜電極接合体1が積層される燃料電池の薄肉化に有利である。このようにバリヤ膜23の厚みtc(図1参照)をできるだけ薄くすることができるため、バリヤ膜23の厚み方向におけるプロトン伝導率が高く維持できる。故に、燃料電池の発電電圧が高くなる。特に、高電流領域における発電電圧が高くなる。
(実施形態2)
図2は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態では、図2に示すように、高いガスバリヤ性をもつプロトン電子伝導性バリヤ膜23が、燃料電極4と内部電極層21との間に配置されている形態である。図2は、本実施形態に係る膜電極接合体1の概念を示す。膜電極接合体1は、プロトン伝導体で形成された電解質膜2と、電解質膜2の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極4と、電解質膜2の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極5とを備えている。ここで、電解質膜2は、電子伝導性をもつ電子伝導体とプロトン伝導性をもつプロトン伝導体と触媒とを有する内部電極層21を電解質膜2の内部に有する。
図2は実施形態2を示す。本実施形態は実施形態1と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有する。以下、相違する部分を中心として説明する。本実施形態では、図2に示すように、高いガスバリヤ性をもつプロトン電子伝導性バリヤ膜23が、燃料電極4と内部電極層21との間に配置されている形態である。図2は、本実施形態に係る膜電極接合体1の概念を示す。膜電極接合体1は、プロトン伝導体で形成された電解質膜2と、電解質膜2の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極4と、電解質膜2の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極5とを備えている。ここで、電解質膜2は、電子伝導性をもつ電子伝導体とプロトン伝導性をもつプロトン伝導体と触媒とを有する内部電極層21を電解質膜2の内部に有する。
具体的には、電解質膜2は、内部電極層21と、バリヤ膜23と、プロトン伝導膜25とを備えている、ここで、内部電極層21は、電子伝導性をもつ電子伝導体と、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、内部電極層21における反応活性を高めるための触媒とを有する。バリヤ膜23は、実施形態1とは異なり、燃料電極4の触媒層40に対面するように積層されている。プロトン伝導膜25は酸化剤電極5の触媒層50に対面するように積層されている。
発電時には、実施形態1と同様に、燃料電極4に燃料流体(水素ガス、水素含有ガス)が供給され、酸化剤電極5に酸化剤流体(酸素ガス、酸素含有ガス、空気)が供給される。これにより燃料電極4に供給された燃料活物質である水素は、触媒層40においてその触媒作用により、プロトン(H+)を生成し、電子を放出する。生成されたプロトン(H+)は、電解質膜2を酸化剤電極5側に透過する。電子は外部導線経路(図略)を通って酸化剤電極5に到達する。酸化剤電極5に透過したプロトンは、酸化剤電極5に存在する触媒作用により、酸化剤電極5の酸化剤活物質と結合して、水を生成する。これが発電反応である。上記したバリヤ膜23は活物質(水素)に対して高いバリヤ性を有しており、図2に示すように、燃料電極4と内部電極層21との間に配置されている。このため、燃料電極4に供給された燃料活物質(水素)が内部電極層21に透過することは抑えられる。これに対してバリヤ膜23は酸化剤電極5と内部電極層21との間には配置されていない。このため酸化剤電極5に供給された酸化剤活物質(酸素)が矢印B1方向に内部電極層21に透過し、内部電極層21は酸化剤活物質リッチとなる。このため、内部電極層21の電極電位は、本来的には、酸化剤電極5の電極電位に近くなり、高いものとなるはずである。ここで、バリヤ膜23はプロトン伝導性の他に電子伝導性を有しており、燃料電極4および内部電極層21を電気的に導通させている。このため、内部電極層21の電極電位は燃料電極4の電極電位に近くなり、酸化剤電極5の電極電位よりも低くなり、酸化剤活物質(酸素)を還元させる能力が高くなる。この結果、ガス燃焼、発熱、過酸化水素やラジカル等の化学的活性種の発生が抑制される。ひいては電解質膜2の劣化が抑制される。
本実施形態においても、バリヤ膜23は、プロトン伝導体および電子伝導体の他に、高いバリヤ性をもつバリヤ樹脂を基材としている。このためバリヤ樹脂が含まれていない場合に比較して、バリヤ膜23の厚みを薄くすることができる。よって膜電極接合体1の薄膜化が図られる。故に、多数の膜電極接合体1が積層される燃料電池の小型化に有利である。更に、バリヤ膜23の厚みを薄くすることができるため、バリヤ膜23の厚み方向におけるプロトン伝導率を高めに維持できる。ひいては電解質膜2の厚み方向におけるプロトン伝導率を高めに維持でき、発電電圧を高めるのに有利である。
まず、水素に対してバリヤ性が高いバリヤ樹脂として、エチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(商品名ソアノール、日本合成化学、A4412)を6.18g用いた。溶媒として、N−メチル−2−ピロリドン(和光純薬、1級試薬)21.53gを用いた。そして、上記バリヤ樹脂に上記溶媒を混合し、所定温度(50℃)で所定時間(6時間)攪拌させることにより、バリヤ性樹脂溶液を形成した。
また、フッ素系電解質を主要成分として含むフッ素系電解質原液(旭化成、Aciplex,電解質濃度:5質量%)を室温で所定時間(16時間)乾燥し、粉末(3.06g)とした。これを、溶媒(バリヤ性樹脂溶液の溶媒と共通)としてのN−メチル−2−ピロリドン(33.52g)に溶解し、フッ素系電解質膜液(電解質濃度:8.37質量%)とした。上記したフッ素系電解質はプロトン伝導体であり、パーフルオロスルホン酸系であり、プロトン交換基としてスルホン酸基を有する。
そして、上記したように調整したバリヤ性樹脂溶液とフッ素系電解質膜液とを混合攪拌し、均一な混合溶液とした。この混合溶液に、高い電子伝導性をもつカーボンファイバ(昭和電工,VGCF)を添加し、均一に分散させたペーストを調整した。この場合、混合溶液のフッ素系電解質を100と相対表示するとき、フッ素系電解質に対して当該カーボンファイバを約10質量%外付けで添加した。この場合、外付けとは、添加により相対表示で110質量%となる意味である。そして、クリアランス300マイクロメートルのアプリケータを用い、このペーストをフッ素樹脂フィルム(PTFE)上に塗布し、乾燥し、バリヤ膜23を形成した。その後、フッ素樹脂フィルムを剥離した。
この場合、上記バリヤ性樹脂溶液と上記フッ素電解質膜液との配合割合を変えることにより、バリヤ性樹脂の割合を質量比で50%、10%、5%にそれぞれ設定した。これにより試験例1〜3に係るバリヤ膜23を形成した。ここで、10%とは、バリヤ膜23を構成するバリヤ性樹脂とフッ素電解質膜ポリマー(プロトン伝導体)との合計量を100%としたとき、質量比で、バリヤ性樹脂が10%を占め、フッ素電解質膜ポリマー(プロトン伝導体)が90%を占めることを意味する。更に、試験例4として、プロトン伝導性および電子伝導性を有するものの、バリヤ性樹脂が配合されていない膜(従来品)についても試験した。なお、試験例4の膜の組成は、フッ素系電解質原液(Aciplex5質量%)に、カーボン繊維を約10質量%添加して調整したものである。
そして、上記した試験例1〜3に係るフィルム状のバリヤ膜23自体について、水素ガス透過係数、プロトン伝導度および比抵抗をそれぞれ測定した。ここで、試験例1のバリヤ膜23の厚みは25マイクロメートル、試験例2のバリヤ膜23の厚みは13マイクロメートル、試験例3のバリヤ膜23の厚みは11マイクロメートル、試験例4のバリヤ膜23の厚みは9マイクロメートルとした。
プロトン伝導度については、バリヤ膜23を飽和含水状態(燃料電池の実際の運転に対応する条件)とした状態において、インピーダンスアナライザを採用し、白金電極を用いた4端子法により、室温において、バリヤ膜23の厚み方向におけるプロトン伝導度を測定した。
水素ガス透過係数については、バリヤ膜23の厚み方向の一方の片側に水素ガスを流し、厚み方向の他方の片側に窒素ガスを流し、80℃においてフル加湿状態とした。そして、窒素ガス側へリークする水素ガスのリーク量をガスクロマトグラフィーを用いて水素ガス透過係数を測定した。比抵抗については、バリヤ膜23をカーボン電極で挟んだ状態で、5アンペアの電流を印加したときにおける電圧値に基づいて比抵抗を算出した。測定結果を表2に示す。
表2に示すように、バリヤ膜23においてバリヤ樹脂が占める割合が50質量%の試験例1では、水素ガス透過係数が2.29E−08(2.29×10−8)と低めであり、バリヤ性はかなり良好であるものの、プロント伝導率が8.48E−04(8.48×10−4)と低めであり、比抵抗は19800Ωcmと少し高めである。このため試験例1に係るバリヤ膜23は、バリヤ性が特に要請される場合に適する。
これに対して、バリヤ膜23においてバリヤ樹脂が占める割合が10質量%を占める試験例2では、水素ガス透過係数が9.80E−08(9.80×10−8)でありバリヤ性は良好であり、プロント伝導率が3.25E−02(3.25×10−2)と良好であり、比抵抗も465Ωcmと良好であった。このため試験例2に係るバリヤ膜23は、プロトン伝導性、電子伝導性およびバリヤ性のバランスが良好である。
更に、バリヤ膜23においてバリヤ樹脂が占める割合が5質量%を占める試験例3では、水素ガス透過係数が5.89E−08(5.89×10−8)でありバリヤ性は良好であり、プロント伝導率が3.16E−02(3.16×10−2)と良好であり、比抵抗も601Ωcmと良好であった。このため試験例3に係るバリヤ膜23は、プロトン伝導性、電子伝導性およびバリヤ性のバランスが良好である。
更に、試験例4によれば、プロトン伝導性および電子伝導性が良好であるものの、水素ガス透過係数が1.50E−07(15.0×10−8)であり、バリヤ性は良好ではなかった。このため試験例4に係る膜を採用する場合には、バリヤ性を高めるべく、膜の厚みを過剰に設定する必要が有り、膜電極接合体1の薄肉化を図りにくい不具合がある。上記した点を考慮すると、バリヤ樹脂が配合されたバリヤ膜23の水素ガス透過係数としては、水素ガスを遮断するバリヤ性を考慮すると、10×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さい方が好ましい。なかでも、6×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さい方が好ましい。特に3×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さい方が好ましい。
上記した試験例2に相当する材質で形成されたバリヤ膜23を用い、図1に示す実施例1に係る膜電極接合体1を備える単セルの燃料電池を形成した。ここで、内部電極層21の厚みは1マイクロメートルとし、バリヤ膜23の厚みは6マイクロメートルとし、プロトン伝導膜25(ジャパンゴアテックス,Gore Select)の厚みは15マイクロメートルとした。
比較例1として、図3に示す膜電極接合体1Wをもつ単セルの燃料電池を形成した。比較例1に係る燃料電池は、プロトン伝導体で形成された電解質膜2(ジャパンゴアテックス,Gore Select,厚み;30マイクロメートル)と、電解質膜2の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極4と、電解質膜2の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極5とを備えている。
比較例2として、図4に示す膜電極接合体1Xをもつ単セルの燃料電池を形成した。比較例2に係る燃料電池は、基本的には実施例1と同様であり、プロトン伝導体を基材とする電解質膜2と、電解質膜2の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極4と、電解質膜2の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極5とを備えている。電解質膜2は、基本的には実施例1と同様であり、内部電極層21(厚み;1マイクロメートル)と、プロトン電子伝導性膜29(厚み;24マイクロメートル)と、プロトン伝導体で形成されたプロトン伝導膜25(厚み;30マイクロメートル,ジャパンゴアテックス,Gore Select)とを備えている。プロトン電子伝導性膜29は、実施例1に係るバリヤ膜23に対応するものであり、バリヤ性をもつ樹脂(商品名:ソアノール)を含んでいない点を除いてバリヤ膜23に相当する組成物で形成されているため、厚みtaを厚く設定して、厚み方向のバリヤ性を高めている。なお、比較例1,比較例2に係る燃料電極4および酸化剤電極5の製造条件は、基本的には、実施例1の場合と同様である。
上記した実施例1に係る膜電極接合体1の燃料電極4側に常圧の水素ガスを供給すると共に、酸化剤電極5側に常圧の空気を供給することにより発電運転し、I−V特性を測定した。この場合、ガス利用率についてはH2/Air=80%/40%、バブラー温度についてはH2/Air=75℃/75℃、セル温度を75℃とした。発電運転の結果を図5に示す。図5の特性線として示すように、比較例1に係る通常タイプの膜電極接合体1に比較して、比較例2に係る膜電極接合体1では、高電流領域における性能が低下していることがわかる。これに対して、実施例1に係る膜電極接合体1によれば、高電流領域における性能が改善されており、比較例1に係る膜電極接合体1、比較例2に係る膜電極接合体1よりも、高電流領域における性能が改善されていた。
更に、膜電極接合体1の燃料電極4側に常圧の水素ガスを供給すると共に、酸化剤電極5側に常圧の空気を供給することにより、上記した運転条件で発電運転が実行されているとき、対極側に透過した水素ガスのクロスリーク量、対極側に透過した酸素ガスのクロスリーク量をそれぞれ測定した。この場合、リークする酸素の検出を行い易くするため、燃料電極4を取り外して測定した。測定結果を表3に示す。表3に示すように、実施例1では、水素ガスリーク量および酸素ガスリーク量共に0ppmであり、良好であった。これに対して比較例1では、水素ガスリーク量および酸素ガスリーク量共に多かった。比較例2では、プロトン電子伝導性膜29はバリヤ性をもつ樹脂(商品名:ソアノール)を含んでいないものの、厚みtaを24マイクロメートル(実施例1に係るバリヤ膜23の厚みの6マイクロメートルに対して4倍)厚く設定して、厚み方向のバリヤ性を確保している。このため、厚みtaをもつ厚肉のプロトン電子伝導性膜29のバリヤ性により内部電極層21の電位が制御され、水素ガスリーク量および酸素ガスリーク量共に0ppmであった。
(製造方法)
本発明に係る実施例1に係る膜電極接合体1の製造方法について、説明を更に加える。
本発明に係る実施例1に係る膜電極接合体1の製造方法について、説明を更に加える。
(i)まず、触媒である白金をカーボンブラックに担持した白金担持カーボン触媒(白金担持量40質量%)と、高分子電解質膜液(旭化成(株)製, Aciplex5質量%溶液)と、イソプロピルアルコールと、水とを混合した混合物を形成した。その混合物を超音波ホモジナイザーで攪拌し、白金触媒ペースト溶液を調製した。
さらに、電子伝導性をもつカーボン繊維(電子伝導体)として気相成長カーボン繊維(以下VGCFともいう,Vapar Grouth Carbon Filter,昭和電工(株)製,平均繊維長さ10〜20μm,平均繊維径150ナノメートル)を、その白金触媒ペースト溶液に加え、機械式ホモジナイザでさらによく攪拌した。これによりカーボン繊維(VGCF)を含む触媒含有ペーストを調製した。ここで、カーボン繊維(VGCF)の配合割合としては、触媒含有ペーストの重量に対して約20質量%とした(白金触媒ペースト約80質量%,カーボン繊維約20質量%)。
更に、図6に示すように、乾操したフッ素樹脂系シート200(PTFE,約200ミリメートル×190ミリメートル)の片面201に、上記触媒含有ペーストの所定量を塗布し、風乾し、内部電極層素材21mを形成した。その後、この膜を80℃でさらに真空乾燥し、シート部材210を形成した。このシート部材210を2枚用意した。図6に示すように、このシート部材210では、シート200上に内部電極層素材21mが積層されている。
(ii)次に、図7に示すように、上記したプロトン伝導膜25とシート部材210とを重ねた状態で、所定の条件(温度:150℃、圧力:10MPa、加圧時間:60sec)ホットプレスした。その後、シート200を剥離し、第1積層体250を形成した。同様に、図8に示すように、バリヤ膜23とシート部材210とを重ねた状態で、所定の条件で(温度:150℃、圧力:10MPa、加圧時間:50sec)ホットプレスした。その後、シート200を剥離し、第2積層体230を形成した。
(iii)図9に示すように、第1積層体250の内部電極層素材21mと、第2積層体230の内部電極層素材21mとを対面させる。この状態で、所定の条件(温度:150℃、圧力:10MPa、加圧時間:60sec)ホットプレスし、電解質膜2(図1参照)を形成した。2つの内部電極層素材21mは、接合されて内部電極層21を形成する。
(iv)フッ素樹脂(PTFE)で撥水化処理されたカーボン粒子(カーボンブラック)を均一に分散させた溶液中に、カーボンペーパ(厚み180μm、220cm2)を浸漬させ、風乾した。その後、そのカーボンペーパを390℃以上の湿度で焼成し、撥水化処理したカーボンペーパを作製した。更に、カーボン繊維(VGCF)のみを除いて、先の方法と同様な方法で調製した触媒含有ペーストを調製した。そして、撥水化処理したカーボンペーパ上にアプリケータ(クリアランス:300μm)を用いて触媒含有ペースト(カーボン繊維(VGCF)を含まず)を塗布し、80℃で真空乾燥して電極(燃料電極4,酸化剤電極5に相当)を作製した。燃料電極4は、触媒層40と、カーボンペーパで形成されたガス拡散層41とを有する。酸化剤電極5は、触媒層50と、カーボンペーパで形成されたガス拡散層51とを有する。
そして、図11に示すように、燃料電極4の触媒層40が電解質膜2の一面2fに対面し、酸化剤電極5の触媒層50が電解質膜2の他面2sに対面させるように積層して積層体を形成した。この積層体を所定の条件(温度:140℃、圧力:8MPa、加圧時間:180sec)ホットプレスし、膜電極接合体1を形成した。膜電極接合体1は、電解質膜2を燃料電極4と酸化剤電極5とで厚み方向に挟持している。更に、図12に示すように、燃料活物質が流れる流路401を有する燃料活物質配流板400を燃料電極4に対面させ、且つ、酸化剤活物質が流れる流路501を有する酸化剤活物質配流板500を酸化剤電極5に対面させた。これにより単セルの燃料電池を形成した。
(その他)
上記した実施例では、燃料活物質として水素ガスを用いているが、これに限らず、水素含有ガスでもよく、あるいはメタノールとすることもできる。その他、本明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。上記した記載から次の技術的思想が把握される。
(付記項1)プロトン伝導性を有する電解質膜と、前記電解質膜の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極と、前記電解質膜の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する燃料電池用膜電極接合体において、前記電解質膜は、その内部に、(i)電子伝導性をもつ電子伝導体とプロトン伝導性をもつプロトン伝導体と触媒活性をもつ触媒とを有する内部電極層と、(ii)前記酸化剤電極および前記燃料電極のうちの一方と前記内部電極層との間に配置され、電子伝導性をもつ電子伝導体と、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、電極反応の活物質に対するバリヤ性をもつ樹脂とを有するプロトン電子伝導性バリヤ膜を備えており、(iii)バリヤ樹脂が配合されたプロトン電子伝導性バリヤ膜の水素ガス透過係数は、10×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さく設定されていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。バリヤ膜の厚みは5〜50マイクロメートル、8〜30マイクロメートルが例示される。
上記した実施例では、燃料活物質として水素ガスを用いているが、これに限らず、水素含有ガスでもよく、あるいはメタノールとすることもできる。その他、本明は上記し且つ図面に示した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。上記した記載から次の技術的思想が把握される。
(付記項1)プロトン伝導性を有する電解質膜と、前記電解質膜の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極と、前記電解質膜の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する燃料電池用膜電極接合体において、前記電解質膜は、その内部に、(i)電子伝導性をもつ電子伝導体とプロトン伝導性をもつプロトン伝導体と触媒活性をもつ触媒とを有する内部電極層と、(ii)前記酸化剤電極および前記燃料電極のうちの一方と前記内部電極層との間に配置され、電子伝導性をもつ電子伝導体と、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、電極反応の活物質に対するバリヤ性をもつ樹脂とを有するプロトン電子伝導性バリヤ膜を備えており、(iii)バリヤ樹脂が配合されたプロトン電子伝導性バリヤ膜の水素ガス透過係数は、10×10−8mLmm/(seccm2cmHg)よりも小さく設定されていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。バリヤ膜の厚みは5〜50マイクロメートル、8〜30マイクロメートルが例示される。
図中、1は燃料電池用膜電極接合体、2は電解質膜、4は燃料電極、40は触媒層、41はガス拡散層、5は酸化剤電極、50は触媒層、51はガス拡散層、20は内部電極層、21は内部電極層、23はバリヤ膜を示す。
Claims (5)
- プロトン伝導性を有する電解質膜と、前記電解質膜の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極と、前記電解質膜の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する燃料電池用膜電極接合体において、
前記電解質膜は、その内部に、
(i)電子伝導性をもつ電子伝導体とプロトン伝導性をもつプロトン伝導体と触媒活性をもつ触媒とを有する内部電極層と、
(ii)前記酸化剤電極および前記燃料電極のうちの一方と前記内部電極層との間に配置され、電子伝導性をもつ電子伝導体と、プロトン伝導性をもつプロトン伝導体と、電極反応の活物質に対するバリヤ性をもつ樹脂とを有するプロトン電子伝導性バリヤ膜を備えていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。 - 請求項1において、前記プロトン電子伝導性バリヤ膜は、前記酸化剤電極と前記内部電極層との間に配置されていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。
- 請求項1において、前記プロトン電子伝導性バリヤ膜は、前記燃料電極と前記内部電極層との間に配置されていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。
- 請求項1〜3において、前記プロトン電子伝導性バリヤ膜の厚みは15マイクロメートル以下に設定されていることを特徴とする燃料電池用膜電極接合体。
- (i)プロトン伝導性を有する電解質膜と、前記電解質膜の厚み方向の一方の側に設けられた燃料電極と、前記電解質膜の厚み方向の他方の側に設けられた酸化剤電極とを具備する燃料電池用膜電極接合体と、
(ii)前記燃料電池用膜電極接合体の前記酸化剤電極に対面する酸化剤活物質配流板と、
(iii)前記燃料電池用膜電極接合体の前記燃料電極に対面する燃料活物質配流板とを具備する燃料電池において、
前記燃料電池用膜電極接合体は、請求項1〜4のうちの一項に係る燃料電池用膜電極接合体で形成されていることを特徴とする燃料電池。
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JP2010182627A (ja) * | 2009-02-09 | 2010-08-19 | Aisin Seiki Co Ltd | 燃料電池用膜電極接合体 |
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