JP2008547034A5 - - Google Patents

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csPCNA異性体修飾およびその使用
本開示は、癌特異的タンパク質に対する修飾体を用いることを含む、悪性細胞の検出に関する。
もっとも理解が不十分で、もっとも複雑な疾病過程のひとつは、細胞が悪性となるときに起こる変質である。この過程は、遺伝子突然変異と、タンパク質変質の両方を含み、その結果のために、その細胞は不適切な細胞分裂を抑制するという正常なコントロールを失う。癌細胞は、いくつかの共通の性質を持つ。多くの癌細胞は、正常な細胞周期を逸脱して増殖し、形態的変化を示し、細胞の諸過程の様々な生化学的混乱を示す。
癌は通常、細胞変化の最初期からかなり経過した後、腫瘍が目に見えるほどになったときに診断される。多くの癌は、生体組織検査のサンプルを用いて、形態的異常、細胞増殖の兆候、および遺伝的変異の有無について組織学検査した後に診断される。多くの場合、悪性腫瘍の効果的な治療には、病気の初期段階における悪性腫瘍の存在を高信頼度で検出することが重要である。そうすることによって、その病気が、治療に対して比較的感受性を持つ段階で効果的な治療を始めることが可能となるからである。したがって、悪性と認められる組織学的段階までは進行していないが、悪性状態に進行する可能性のある、潜在的に悪性を持つ細胞を高い信頼度で検出可能とする能力が求められている。さらにまた、悪性細胞、または悪性となる可能性のある細胞を、高い信頼度で検出または治療することが可能な、速やかで、侵襲度が最小な技術が求められている。
増殖細胞核抗原(PCNA)は、29kDaの核タンパク質で、細胞サイクルのSおよびG2期に細胞において発現するため、細胞増殖の良好なマーカーとなる。さらにこのタンパク質は、細胞の生死に関わる分子伝達経路の多くに関わっていることが示されている。同タンパク質が、S相の核に周期的に出現することから、同タンパク質のDNA複製への関与が示唆された。その後、PCNAは、哺乳類細胞におけるDNAポリメラーゼの補助因子であり、インビトロでのSV40 DNA複製における必須因子と特定された。哺乳類細胞においてDNA滑走停止タンパク質およびDNAポリメラーゼ補助因子として機能するのに加えて、PCNAは、転写、細胞周期チェックポイント、クロマチン再編成、組み換え、アポトーシス、および他のDNA修復に関与するタンパク質の多くと相互作用を持つ。作用は多様であるが、PCNAの多くの結合パートナーは、各新規世代の細胞による細胞機能の精確な継承に関与している。PCNAは、染色体プロセシングの指揮を取るマスター分子として作用することが考えられる。
PCNAはまた、FEN-1、DNAリガーゼ、およびDNAメチルトランスフェラーゼのような他の因子とも相互作用を持つことが知られている。さらに、PCNAは、複数のDNA修復経路において必須の介在因子であることが示されている。ミスマッチ認識タンパク質Msh2、ヌクレオチド摘出修復エンドヌクレアーゼXPGのようなタンパク質との相互作用は、DNA合成とは異なる過程に対するPCNAの関与を示すものである。複数のパートナーとの相互作用は、一般的には、PCNAが、整然とした、エネルギー的にも有利なやり方で選択的相互作用を持つことを可能とする機構に依存する。
PCNA機能の機序に関する手がかりは、当初、哺乳類細胞に存在する複数タンパク質DNA複製複合体であるDNAシンテソームの研究を通じて明らかにされた。DNAシンテソームの合成活性を調べた研究によって、非悪性細胞に比べ、悪性細胞では誤り率が高いことが特定された。この結果は、悪性細胞では、DNAシンテソームの一つ以上の成分に構造的変化が起こっていることを示唆する。DNAシンテソームの必須成分である、PCNAについて2D-PAGEイムノブロット分析を行ったところ、大きく異なる等電点(pI)を持つ、二つの異性体のあることが明らかにされた。一つめのPCNA異性体は、著しく塩基性の等電点を示し、悪性細胞にも、非悪性細胞にも存在した。二つめの異性体は酸性の等電点を有し、悪性細胞のみに認められた。二つめの異性体は悪性細胞のみに存在するために、癌特異的異性体、すなわちcsPCNAと名づけられたが、PCNAの2D-PAGE移動パターンの変化を引き起こす原因となる翻訳後変化の正体は依然として不明なままである。
PCNAに関するいくつかの標識実験から、PCNAの移動は、リン酸化、アセチル化、グリコシル化、またはシアル化などの修飾による可能性は低いことが示唆された。PCNAに対する翻訳後修飾を特定する試みでは相矛盾する実験が報告されている。例えば、PCNAのリン酸化は、DNA合成部位に対する結合に影響を及ぼすと報告された。別の実験では、PCNAは、結局のところ、リン酸化はされず、アセチル化されると主張された。これらの実験の外に、酵母PCNAの分析から、PCNAはDNA損傷に応じてユビキチン化の標的となること、かつ、損傷の無い場合にはSUMO付加の標的となることが示された。PCNAに関しては、様々な相矛盾する構造的証拠が存在するために、修飾体があったとしても、どの修飾体がcsPCNA異性体の出現および機能に関与しているのかを特定するのは困難である。
したがって、csPCNAの、そのパートナーとの相互作用に基づく診断法を開発し、さらに治療法を開発するためには、csPCNAの正確な翻訳後修飾体の同定が望ましい。悪性癌細胞は、癌特異的PCNA(csPCNA)と呼ばれるPCNAの異性体を発現し、非悪性細胞は、非悪性PCNA(nmPCNA)と呼ばれる異性体を発現する。癌の診断および治療のためには、この二つの異性体を区別する効果的な組成物および方法が求められる。
csPCNAの新規翻訳後修飾体が特定される。csPCNAのメチルエステル化が特定される。csPCNA異性体の分析とcsPCNAのメチルエステル化の検出には、2D-PAGE/液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)法が用いられた。その結果、メチルエステル化修飾体は、特定のグルタミン酸およびアスパラギン酸残基に局在していた。
本明細書には、二次元電気泳動(2D-PAGE)および液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)による、乳癌細胞から単離された、単一の酸性PCNA異性体(csPCNA)の構造分析が開示される。メチルエステル化はcsPCNAの特異的な16残基のグルタミン酸とアスパラギン酸で生じていた。csPCNAのメチルエステル化は、PCNAの多様な機能のいくつかを取り扱うのに関わりのある、哺乳類細胞の新型翻訳後修飾体を表す。
生物サンプルの癌特異的増殖細胞核抗原(csPCNA)異性体を検出する方法は、以下の工程を含む。
csPCNA異性体を含むことが疑われる前記サンプルにおいて、csPCNA異性体の一つ以上のアミノ酸残基においてメチルエステルを含む翻訳後修飾を検出する工程;および、
前記csPCNA異性体におけるメチルエステルのレベルを、非悪性PCNA異性体と比較することによって、csPCNA異性体の存在を検出する工程。
生物サンプルのあるものは、体液、例えば、血液、血漿、リンパ液、血清、胸水、脊髄液、唾液、痰、尿、胃液、膵液、腹水、滑液、母乳、および精液を含む。
生物サンプルとしてはさらに、組織サンプル、例えば、乳房、前立腺、肺、結腸、表皮、結合組織、子宮頸部、食道、脳、胸腺、甲状腺、膵臓、睾丸、卵巣、腸、膀胱、胃、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病、リンパ腫、上皮癌、腺癌、胎盤、線維組織、胚細胞組織、およびそれらの抽出物が挙げられる。csPCNAを含む可能性のある生物サンプルであればいずれものものであっても分析できる。
ある態様では、メチルエステルは、csPCNAのアスパラギン酸またはグルタミン酸、またはその両方に存在する。メチルエステルは、csPCNA異性体の、16個のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基の内の1個以上に存在する。この16個のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基の1個以上に存在するメチルエステルは、csPCNA異性体のアミノ酸位置の、3、85、93、94、104、109、115、120、132、143、174、189、201、238、255、および259に対応する。この16個のアルパラギン酸またはグルタミン酸修飾残基を含む、csPCNA-由来ペプチドは下記の通りである。
MFEmAR (配列番号1);
IEmDEEGS (配列番号2);
IEDEEmGS (配列番号3);
VSDYEmMK (配列番号4);
MPSGEmFAR (配列番号5);
LSQTSNVDmK (配列番号6);
CAGNEmDIITLR (配列番号7);
FSASGEmLGNGNIK (配列番号8);
AEDNADTLALVFEAPNQEmK (配列番号9);
AEmDNADTLALVFEAPNQEK (配列番号10);
AEDmNADTLALVFEAPNQEK (配列番号11);
AEDNADTLALVFEmAPNQEK (配列番号12);
LMDmLDVEQLGIPEQEYSCVVK (配列番号13);
ATPLSSTVTLSMSADVPLVVEmYK (配列番号14);および、
LSQTSNVDKEEEAVTIEMNEmPVQLTFALR (配列番号15)。前記配列において、Emは、メチルエステル化グルタミン酸残基を、Dmは、メチルエステル化アスパラギン酸残基を表す。
ある態様では、csPCNA異性体の検出は、質量分析、例えば、液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)によって行う。メチルエステル、またはメチルエステル化アミノ酸残基の検出に好適な方法であればどのようなものでも適用が可能である。
csPCNA由来ペプチドの質量分析は、対応する未修飾ペプチドに比べ、14Daの質量シフトをもたらす。
悪性腫瘍の診断または予後判定を行う方法で、以下の工程を含む方法。
非悪性PCNA(nmPCNA)異性体からcsPCNA異性体を区別するcsPCNA異性体の翻訳後修飾状態を特定することによって、生物サンプルの癌特異的増殖細胞核抗原(csPCNA)異性体を検出する工程;および、
前記生物サンプルにおけるcsPCNAの検出に基づいて悪性腫瘍を診断する工程。
翻訳後修飾、例えば、メチルエステル化がcsPCNAにおいて検出され、悪性腫瘍の判定にはcsPCNAのメチルエステル化レベルに対するnmPCNAのメチルエステル化レベルが用いられる。
修飾された増殖細胞核抗原(PCNA)ペプチドは、下記:
MFEmAR;
IEmDEEGS;
IEDEEmGS;
VSDYEmMK;
MPSGEmFAR;
LSQTSNVDmK;
CAGNEmDIITLR;
FSASGEmLGNGNIK;
AEDNADTLALVFEAPNQEmK;
AEmDNADTLALVFEAPNQEK;
AEDmNADTLALVFEAPNQEK;
AEDNADTLALVFEmAPNQEK;
LMDmLDVEQLGIPEQEYSCVVK;
ATPLSSTVTLSMSADVPLVVEmYK;および、
LSQTSNVDKEEEAVTIEMNEmPVQLTFALRから選ばれるアミノ酸配列を含む。前記配列において、Emは、メチルエステル化グルタミン酸残基を、Dmは、メチルエステル化アスパラギン酸残基を表す。
ある態様では、csPCNA、またはPCNAの修飾ペプチドは、翻訳後に修飾される。別の態様では、csPCNAまたはPCNAの修飾ペプチドは、プロテアーゼ消化工程に曝される。また別の態様では、csPCNAまたはnmPCNAの修飾ペプチドは合成による。
ある態様では、生物サンプルにおける癌特異的増殖核抗原(csPCNA)異性体の検出法は、csPCNAおよびnmPCNAのメチルエステル化の全体レベルを定量すること、および、そのメチルエステル化レベルに基づいてその生物サンプルがcsPCNAを持つかどうかを決定することを含む。
本開示のさらに別の特徴は、本開示の主題を実行するための最良の方式を例示する実施態様に関する下記の詳細な説明を考慮することによって、やがて感得されるように当業者には自ずと明白となろう。
〈関連出願に対する相互参照〉
本出願は、2005年6月27日出願米国特許出願第60/694,159号に対する優先権を主張する。
増殖細胞核抗原(PCNA)タンパク質は、癌細胞では変性する。PCNAは、36kDaタンパク質のものと等価な電気泳動移動度を持つ28kDタンパク質である。PCNAは、DNAポリメラーゼδの高効率DNA複製活性に必要とされる補助因子である。悪性細胞から精製したDNAシンテソームは、少なくとも2種のPCNAを含む。この2種のPCNAは、その全体電荷において著明に異なる。したがって、酸性の、悪性、すなわち癌特異的形状のPCNAであるcsPCNAと、塩基性の、非悪性、すなわち正常形のPCNAであるnmPCNAとは、二次元ポリアクリルアミドゲルにおいて識別することが可能である。
この酸性csPCNAは、HeLa(ヒト子宮頸癌)、Hs578T(乳癌)、HL-60(ヒト前骨髄性白血病)、FM3A(マウス乳腺癌)、PC10(前立腺癌)、LNCaP(前立腺癌)、LN99(前立腺癌)、MD-MB468(ヒト乳癌)、MCF-7(乳癌)、KGE90(食道-結腸癌)、KYE350(食道-結腸癌)、SW48(食道-結腸癌)、およびT98(悪性神経膠腫)などの悪性細胞系統で発現する。酸性csPCNAは、ヒトの乳癌、前立腺癌、脳腫瘍、ヒトの消化器または食道-結腸腫瘍、マウス乳癌、およびヒトの慢性骨髄性白血病から得られる悪性細胞においても発現している。酸性csPCNAは、非悪性細胞系統、例えば、乳房細胞系統であるHs578BstおよびMCF-10A、または、非悪性の血清や乳房などの組織サンプルでは検出されない。
悪性細胞に認められるcsPCNA異性体の配列決定には、LC-MS/MSペプチド特徴解明法が用いられた。csPCNAの多くの残基に存在する、新型の翻訳後修飾が特定された。この修飾は、メチルエステル化であるが、csPCNAにおける16個の異なるアスパラギン酸およびグルタミン酸残基に存在していた。PCNAの未修飾のアミノ酸配列を図5に示す。これらのメチルエステルは、先ず、ペプチド質量における14Daシフトとして特定され、タンデム質量分析によりグルタミン酸か、アルパラギン酸残基のいずれかにその局在が確認された。メチルエステル化ペプチドの相対的定量によって、悪性細胞におけるcsPCNAタンパク質が、タンパク質全体に渡る複数の残基において一つ以上のメチルエステルを含むいくつかの分子を含むことが示された。特定残基のメチルエステル化は、該タンパク質においてそれぞれ異なる立体構造変化をもたらすようであり、これらの変化が、タンパク質間相互作用を促進および/または分断するものと考えられる。
哺乳類タンパク質の機能におよぼすメチルエステル化の作用に関する理解は全く不十分である。哺乳類タンパク質のメチルエステル化に関する過去の研究の多くは、タンパク質の加齢および、酵素タンパク質であるイソアスパルテートメチルトランスフェラーゼ(PIMT)によるイソアスパルチル残基の修復を主眼としたものであった。一方、csPCNAに存在する多くのメチルエステルは、グルタミン酸残基には認められるが、アスパラギン酸残基には見られない。これは、修飾が別の経路を通じて行われることを示唆する。
PCNAのメチルエステル化は、その立体構造を変え、その結果、特定のタンパク質結合部位を隠蔽および/または暴露して、その機能を決定する可能性がある。組み換えPCNAのLC-MS/MS配列分析も行われ、メチルエステル化の証拠が見出された。以上から、PCNA上に認められるメチルエステル化は、もしそれがなければ無秩序になってしまうタンパク質の、特定の立体構造を安定化しているのかもしれない。さらに、PCNAの静電気的ポテンシャルの計算によって、PCNA三量体の外面は、高い陰性ポテンシャル、および多量のグルタミン酸およびアスパラギン酸残基を有することが示されている。したがって、これらの残基のメチル化は、このポテンシャルを変え、最終的に、タンパク質の表面トポロジーを変えると考えられる。
2D-PAGEにより得られた、特異的異性体csPCNAのLC-MS/MSによるペプチドの特徴解明が開示される。いくつかのタンパク質分解法の組み合わせを用い、csPCNAの、搖動ペプチド配列マップを作成し、LC-MS/MSによってcsPCNAのタンパク質配列の100%を特定した。csPCNA上に存在する新規翻訳後修飾を特定した。メチルエステルが、csPCNA異性体の、16個の特定のアスパラギン酸および/またはグルタミン酸残基の内の少なくとも1個に出現した。これらの修飾は、PCMA三量体の構造を変え、そうすることによって、秩序だったタンパク質間相互作用に関わる立体構造変化を促進するのかもしれない。
生物サンプルは、体液サンプルであってもよい。体液は、血液、血漿、リンパ液、血清、胸水、脊髄液、唾液、痰、尿、精液、涙液、滑液を含んでもよく、または、csPCNA異性体の有無に関して試験することが可能な任意の体液であってもよい。それとは別に、生物サンプルは、細胞が悪性であることが疑われる組織サンプルであってもよい。例えば、組織切片、または細胞培養を、ガラスまたはプラスチックスライドに載せ、標準的免疫細胞化学的プロトコルに従って抗体と接触させてもよい。組織抽出物、または細胞の濃縮物または細胞抽出物も好適である。
別の実施態様では、悪性腫瘍を診断する方法が提供される。この方法は、ヒト、特に、悪性病態を有することが疑われる患者から得られた生物サンプルにおいてcsPCNAを検出する工程を含み、そのcsPCNA検出工程は、本明細書に開示するメチルエステルを含む翻訳後修飾のレベルを検出することを含む。
別の実施態様では、悪性腫瘍の診断を助ける方法が提供される。この方法は、正常細胞におけるPCNAと比べて、悪性が疑われる組織サンプルの悪性細胞におけるcsPCNA上の翻訳後修飾を検出する工程を含み、csPCNAの検出工程が、csPCNAの上にメチルエステルを検出することを含む。悪性細胞は、例えば、乳房、前立腺、血液、脳、膵臓、平滑筋または横紋筋、肝臓、脾臓、胸腺、肺、卵巣、皮膚、心臓、結合組織、腎臓、膀胱、腸、胃、副腎、リンパ節、または子宮頸部などの組織の悪性細胞、あるいは、Hs578T、MCF-7、MDA-MB468、HeLa、HL60、FM3A、BT-474、MDA-MB-453、T98、LNCaP、LN 99、PC 10、SK-OV-3、MKN-7、KGE90、KYE350、またはSW48などの細胞系統の悪性細胞のみに限定されないことを理解しなければならない。
別の実施態様では、悪性腫瘍の発生の予後判定を助ける方法が提供される。この方法は、本発明に開示される翻訳後修飾を検出することによって、その細胞が悪性であることが疑われる組織サンプルにおけるcsPCNAを検出すること、および、csPCNAのレベルを、特定の悪性疾患の進行と相関させることを含む。さらに、csPCNA上における翻訳後修飾の検出および分析を用いて、悪性腫瘍を発症した患者の、可能な生存予測に関する予後判定を行う。
抗体を用いて診断または予後判定される疾患としては、悪性腫瘍、例えば、各種形態のグリア芽細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、髄膜腫、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫、メラノーマ、結腸癌、肺癌、腺癌、子宮頸癌、卵巣癌、膀胱癌、リンパ芽細胞腫、白血病、骨肉腫、乳癌、肝癌、腎腫、副腎癌または前立腺癌、食道癌が挙げられるが、ただしこれらに限定されないことを理解しなければならない。ある悪性細胞がcsPCNAを発現するなら、本発明に開示される技術は、そのcsPCNAを検出することが可能である。
本明細書に開示される翻訳後修飾の検出を含む検出技術は、乳房組織における、侵襲的および非侵襲的腫瘍タイプの内のいくつかの悪性腫瘍を検出することが可能と考えられる。そのような腫瘍タイプとして、腺管嚢腫、アポクリン化生、硬化性腺疾患、腺管上皮肥大、非異型腺管内乳頭腫症、円柱細胞変化、放射状硬化性病巣(放射状瘢痕)、乳首腺腫、管内乳頭腫、線維腺腫、母乳分泌乳頭腫、異型腺管上皮肥大、異型腺葉肥大、原発性腺管癌−さらに核等級1、2、および3に分類される、原発性腺葉癌、原発性多型腺葉癌、乳腺内脂肪腫、乳腺過誤腫、顆粒細胞腫瘍、乳腺内脂肪壊死、擬似血管腫支質肥大(PASH)、乳房の悪性メラノーマ、乳房の悪性リンパ腫、葉状腫瘍−良性、境界域、および悪性のサブクラスに分類される、および乳房肉腫が挙げられる。
別の実施態様では、本明細書に開示される方法は、悪性疾患の進度を理解するために、腫瘍におけるcsPCNAの経時レベルまたは治療に対する患者の反応を比較することによって、腫瘍の悪性段階の判定に使用される。方法はまた、腫瘍から放出されて患者の血流に入った悪性細胞を、血液サンプルにおけるcsPCNAの異性体の存在を定量する方法によって検出するためにも使用することが可能である。生物サンプルは、ヒトの患者、または動物患者から入手することが可能である。
「抗体」という用語は、モノクロナール抗体(全長モノクロナール抗体を含む)、ポリクロナール抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および、抗体断片であって、それらが、所望の生物学的活性または特異性を発揮する限り、そのような抗体断片を含む。
翻訳後に修飾されるnmPCNAまたはcsPCNAを特異的に認識する抗体を作製することは可能である。
「修飾されたタンパク質またはペプチド」という用語は、csPCNAまたはnmPCNA、またはこれらのタンパク質から得られたペプチド上に見られる、一つ以上の翻訳後修飾の存在を指す。この用語はまた、csPCNAおよびnmPCNAの、一つ以上の翻訳後修飾を含む、合成、単離、および精製ペプチドも指す。この用語はまた、csPCNAとPCNAのプロテアーゼ消化ペプチド、および、既知の任意の方法によって断片化されたcsPCNAおよびPCNAのペプチドも指し、これらは一つ以上の翻訳後修飾を含む。
本発明において使用された化学薬品は全て、別様に明言しない限り、Sigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)、またはFisher Scientific(Hampton、ニューハンプシャー州)から入手した。質量分析級水およびアセトニトリルは、Honeywell Burdick and Jackson (Morristown, ニュージャージー州)から入手した。
個々人から得たサンプル中に存在するcsPCNAおよびnmPCNAは、任意の標準技術を用いて翻訳後修飾の有無について分析される。例えば、質量分析は好適な技術である。質量分析は、他の技術と合わせて実行してもよい。
MDA MBA 468およびMCF7乳癌細胞をATCCから入手し、10% FCS (BioWhittaker, Walkersville, メリーランド州)、および、抗生−抗真菌物質(Invitrogen, Carlsbad、カリフォルニア州)を含むDMEM(MediaTech, Herndon、バージニア州)にて維持した。細胞は100 mm細胞培養皿で60-70%の密度になるまで培養し、洗浄し、ペレット調製の前に、氷冷PBS中にゴム製へらにて掻き落とした。細胞は、Malkas et al., Biochemistry 1990, 29, 6362-6374の記載に従って、分画して核抽出物とした。簡単に言うと、細胞を、Dounce(商標)ホモジェナイザーを用いてホモジェナイズし、核をペレットとした。次いで、核タンパク質を、150 mM KClに4℃で2時間置いて抽出した。膜は、超遠心によってペレットとした。核抽出物は、使用時まで-80℃で凍結した。
等電点電気泳動は、IEF細胞、および17 cm pH4-7簡易IPGストリップ(Bio-Rad, Hercules、カリフォルニア州)を用いて実行した。タンパク質サンプルは、タンパク質脱塩スピンカラム(Pierce, Rockford、イリノイ州)を用いて脱塩し、Speed-Vac(ATR Biotech, Laurel、メリーランド州)で凍結乾燥した。凍結乾燥サンプルを、再水和バッファー(9 M尿素、4% CHAPS, 0.2% Bio-Lytes (Bio-Rad, Hercules、カリフォルニア州)、2 mMのトリブチルフォスフィン、0.001%のブロモフェノールブルー)で再縣濁し、20℃で2時間IPGストリップに受動的に再水和させた。等電点電気泳動は、メーカー(Bio-Rad, Hercules,カリフォルニア州)の指示に従って行った。SDS-PAGEの前に、IPGストリップを、20 mg/ml DTTを含むバッファー(6 M尿素、0.375 M トリス, 2% SDS, 20%グリセロール、pH 8.8)にインキュベーションして還元し、DTTの代わりにイオドアセタミドを含む同じバッファーでアルキル化した。SDS-PAGEは、Protean XL装置(Bio-Rad, Hercules、カリフォルニア州)を用い12%ポリアクリルアミドゲル(20 cm x 20 cm)上にて定電流を約5時間通電して行った。ゲルは、水に溶解した10%酢酸/50%メタノールで固定し、一晩Gel Code Blue(Pierce, Rockford、イリノイ州)で染色した。画像は、GS710走査型画像デンシトメータ(Bio-Rad, Hercules、カリフォルニア州)を用いて記録し、ゲル分析は、Phoretix Evolution 2Dソフトウェア(NonLinear Dynamics, Inc., Durharm、ノースカロライナ州)によって行った。スポット抽出は、1mmのゲル抜取りツール(The Gel Company、サンフランシスコ、カリフォルニア州)を用いて手動で行った。
タンパク質の切断は、若干の修正を加えて既報の通りに(Rosenfeld et al., Anal Biochem 1992, 203, 173-179; van Montford et al., Biochim. Biophys Acta 2002, 1555, 111-115)、トリプシン(Promega、マジソン、ウィスコンシン州)、臭化シアノゲン(CNBr)(Sigma-Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)、GluCまたはAspN (Roche、インディアナポリス、インディアナ州)を用いて行った。簡単に言うと、ゲルスポットを、25 mMの重炭酸アンモニウム(ABC)/50%アセトニトリルにおいて脱色し、次いで100%アセトニトリルで脱水し、Speed-Vac(ATR Biotech, Laurel、メリーランド州)で乾燥した。次に、スポットを、25 mM のABCに溶解したプロテアーゼ液(20 μg/mlのトリプシン、GluC、またはAspN)に再水和した。4℃で10分置いた後、過剰なプロテアーゼ液を除去し、新鮮な25 mM ABCと交換し、37℃で一晩インキュベートした。25 mM ABC/50%アセトニトリル(1回)の存在下、および5%ギ酸/50%アセトニトリル(2回)の存在下に超音波処理することによってゲルからペプチドを抽出した。このペプチド抽出物をプールし、Speed-Vacにて乾燥した。続いてトリプシン消化物のCNBr切断(選ばれたサンプルにおいて)は、乾燥ペプチド抽出物を70%ギ酸に再縣濁した後、CNBrをペプチドに対し約200 M過剰となるように加えて行った。CNBr切断は、室温で4時間行い、Speed-Vacにて乾燥した。サンプルは全て、分析直前に1%ギ酸に再縣濁した。
ナノフローHPLCは、Magic C18Aq 5μ, 200オンク゛ストローム(Michrom, Inc., Auburn、カリフォルニア州)を用い実験室で充填した、IntegraFrit(New Objective, Inc., Woburn、マサチューセッツ州)捕捉カラム、および、Magic C18Aq 5μ, 200オンク゛ストロームを自ら充填した0.05 mm x 100 mmの牽引石英ガラスカラムで、特注ナノスプレイステージ(Gatlin et al., Anal. Biochem 1998, 263, 93-101)によって所定の場所に保持された微細十字に取り付けられたカラムを用いて実行した。ペプチドは、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルの2-50%直線勾配を用いて分離した。装置の構成は、Surveyor HPLCとLCQ Advantageイオントラップ質量分析計(ThermoElectron, Waltham、マサチューセッツ州)、またはUltimate HPLC(LC Packings)とLCQ DECA XP(ThermoElectron, Waltham、マサチューセッツ州)のいずれかであった。BioWorks 3.1(ThermoElectron, Waltham、マサチューセッツ州)を用いて生のデータからピークリストを作成した。Mascot (Matrix Science, Inc., ボストン、マサチューセッツ州)を用いてSwissprotデータベースの探索を行った(さらに、Creasy & Cottrell, Proteomics 2002, 2, 1426-1434を参照)。それぞれ、3および0.8 Daの、親イオンおよび断片質量許容量、および最大2個の切断部位の見落としを考慮した。カルバミドメチルシステインおよび酸化メチオニンを、哺乳類データベースの最初のパス探索における変動性修飾として選んだ。次いで、誤差許容探索を実行した。その際、酵素としてトリプシンを選び、さらに、グルタミン酸およびアスパラギン酸メチルエステルを、変動性修飾として考慮した。
csPCNA異性体に関して翻訳後修飾を検出する方法、およびその使用は、詳細な説明、および、下記の実施例において、その特異的実施態様を参照しながら、詳細に記載されているが、当業者であれば、それらの実施例および実施態様の精神および範囲を逸脱することなく、それらの実施例および実施態様において様々の変更および修正を実行することが可能であることは明白であろう。ここに引用されている全ての参考文献はそれらをそのまま引用することにより組入れる。
下記の実施例は、単に例示のためにのみ提供されるものであって、広義の用語で上述された開示を限定することを意図するものではない。
〈実施例1〉二次元(2D)PAGEおよび、csPCNA異性体のペプチド配列
MDA MB 468乳癌細胞から単離された核抽出物を、2D-PAGEによって解析した(図1A)。36kDa近くに見かけの分子量、および4.5付近に等電点を持つ(PCNAの見かけのSDS-PAGE 分子量および等電点計算値)複数のスポットをゲルから切り出し、トリプシンによるゲル内消化を行った。得られたペプチドを、ナノフロー液体クロマトグラフィー(LC)および、四重極型イオントラップ質量分析計使用のエレクトロスプレイタンデム質量分析(LC-MS/MS)によって分析した。各スポットを構成するタンパク質を、Mascot探索エンジンによってタンデムMSデータを探索することによって特定した。この方法を用い、2D-PAGEゲルにおけるcsPCNAの位置が特定された。この方法により、限られたサンプル処理の下で、csPCNAに関するルーチン化した同定および分析が可能となり、そのため、翻訳後修飾分析のために失われる可能性のある手間と時間が最小となった。図1Bは、2D-PAGEゲルから切り出したcsPCNAをトリプシンでゲル内消化して得られた、ペプチドの、基準ピークLC/MSクロマトグラムを示す。この実験において、PCNAの全長配列の97%をカバーする25個のペプチドが特定された。この実験で特定された代表的csPCNAペプチドを図1Cに示す。このペプチドは、43.3分で溶出し、m/z 1038.7 (2+)を示した(図1C)。このペプチドの衝突誘発解離(CID)(Roepstorff, P. and Fohlman, J., Biomed Mass Spectrom 1984, 11, 601)から、これが、ヒトPCNAのアミノ酸92-110位にあたる配列AEDNADTLALVFEAPNQEK(配列番号17)を持つことが明らかになった。
〈実施例2〉csPCNAのメチルエステル化
本実施例は、csPCNA異性体が、一箇所以上のアミノ酸位置においてメチルエステル化を示すことを実証する。LC-MS/MSデータから、親ペプチド質量において14Daシフトを示す複数のペプチドが特定された。興味深いことに、この特定された質量シフトから、翻訳後修飾−メチルエステル化の存在が示唆された。哺乳類細胞におけるメチル化は、一般に、不可逆性の翻訳後修飾と考えられている。主に、タンパク質のリシン残基のアミン基およびN-末端に起こるので、メチル化は、p53、およびヒストンH3およびH4などのタンパク質上に特定されていた。しかしながら、+14Daシフトを示すペプチドのCIDスペクトラムを調べることによって、メチル基の位置がアスパラギン酸およびグルタミン酸残基の上に特定され、これは、メチルのエステル化に一致した。図1Eは、この実験で、43.8分に生じるメチルエステル化ペプチド(1045.4 m/z [2+])の溶出を示す。このペプチドは、MSスペクトラムでも依然として観察することができる未修飾の1038.7 m/z (2+)ペプチド(図1C)のすぐ近くで溶出した。この1045.4 m/zイオンを分解したところ(図1F)、1038.7 m/zペプチド(図1D)のものと極めて近似したパターンが明らかになった。これらの断片化スペクトラムの主な違いは、1038.7 m/zペプチドのy-シリーズイオンに比べ、1045.4 m/zペプチドのy-シリーズイオンのほとんど全てにおいて+14の質量シフトがあることである。1045.4 CIDスペクトラム(図1F)の高分子量領域を精査することによって、そのm/z値が、1943.3および1800.2である二つのb-イオンが特定された。この1943.3イオンは、b18-イオンに一致し、C-末端における未修飾リシンの欠失を示す。このイオンはまた、1038.7 m/zペプチドの断片化スペクトラムに観察されるb18-イオン(1928.4)と、14Daだけ異なる(図1D)。このこともさらに、リシンが未修飾であり、14-Da質量シフトが、そのペプチドの別の残基によることを示唆する。一方、図1Fのb17-イオン(1800.2)は、図1Dのb17-イオン(1799.4)とほぼ一致する。これは、1045.4 m/zペプチドにおいて、b17-イオンおよびb18-イオンの間に、グルタミン酸(129Da)とメチル基(14Da)、すなわち143Daの欠失のあることを示す。図1Dおよび図1Fにおけるb18-イオンのすぐ左側の小ピークは、それぞれ、1911.1および1925.4のm/z値を持つ。これは、b18-イオンからのH2OまたはNH3の中性的欠失に一致する。これらの所見を、y-イオン質量シフトを組み合わせることによって、メチルエステルの位置が、全長csPCNAタンパク質の位置109におけるグルタミン酸残基に特定される。
csPCNAの外に、ゲル内の他のタンパク質についても、メチルエステル化の有無について分析した。五つの代表的タンパク質スポットを図1Aに示し、これらのスポットの化学名およびメチルエステル化状態を表1に示す。興味あることに、分析した、これら五つのタンパク質の内の一つ(スタスミン)は、メチルエステル化のみならず、N-末端アセチル化されていることが認められた。csPCNAのメチルエステル化は、サンプル処理の結果(例えば、酢酸およびメタノールによるゲル固定)ではない。なぜなら、メチルエステル化は、ゲル中に存在する全てのタンパク質に見られるのではなく、タンパク質の一小部分のみに、しかも、一貫してある特定のcsPCNA残基のみに観察されるからである。
〈実施例3〉csPCNAのメチルエステル化の特定
図1に特定されたAEDNADTLALVFEAPNQEKペプチドの外に、他の、複数のcsPCNAが一貫して14Daの質量シフトを示した。全てのメチルエステル化部位を正確に特定し、かつ、このcsPCNA異性体の上に、他に何か翻訳後修飾があればそれを特定するために、csPCNA異性体の配列マップに示すように、異なる試薬を用いて搖動ペプチドを生成した。図2Aは、トリプシン単独、トリプシンに次いで臭化シアノゲン(CNBr)による切断、AspN単独、または、GluC単独によって、csPCNAを別々に消化することによって得られる、LC-MS/MS実験の、代表的基準ピーククロマトグラムを示す。これらの基礎ピークトレースは、これらの技術によって生成されるペプチドの溶出プロフィールの違いを示す。トリプシン単独、および、トリプシンとCNBrによる消化は、配列の全体範囲を提供し、AspNおよびGluC実験は、付加的な確認データを提供する。CNBr切断は、メチオニン残基に対してC-末端を切断するが、比較的大きなトリプシン処理ペプチドのサイズを下げ、これらの配列の、イオントラップ法によるLC-MS/MS分析による特徴解析を可能とする。この組み合わせ消化は、33残基から成るトリプシン処理ペプチドDLINEACWDISSSGVNLQSMDSSHVSLVQLTLR (配列番号18)(PCNA残基21-53)の特徴解明に有用である。AspNおよびGluCによる消化により、取り扱う配列範囲は十分ではないが、確認データを得られる。これには多くの要因が関わっているようである。例えば、GluCおよびAspNは、トリプシンに比較して、PCNAにおいて少数の切断部位しか持っていない。そのため、比較的大型のペプチドを生成するため、分析がより難しくなる。さらに、これらのプロテアーゼは、タンパク質におけるアスパラギン酸およびグルタミン酸を認識するが、本実験においてこれらの残基は、メチルエステル化されることが見出された。したがって、メチルエステル化は、プロテアーゼ切断に影響を及ぼす可能性があり、このために、より大きなペプチドが生成されることになり、最終的に、処理配列範囲の低減を招く。このプロテアーゼ切断の欠如を、メチルエステル化を検出するための診断ツールとして使用することが可能である。トリプシン処理ペプチドのような、陽子化C-末端残基有して生成されるペプチドは、一般に、良好なCIDスペクトラムを生成する。これらの様々な方法による複数の配列決定実験から得られるデータを組み合わせることによって、MDA MB 468およびMCF7乳癌細胞から得られたcsPCNAでは、一貫して16個のメチルエステル化されたグルタミン酸およびアスパラギン酸残基が特定された(表III参照)。得られたcsPCNAの配列マップを、LC-MS/MSによって特定された任意の修飾と共に図2Bに示す。メチルエステル化の外に、他の、いくつかの修飾も観察された。酸化メチオニンおよびカルバミドメチルシステインも、本実験の全てにおいて、csPCNAおよび他のタンパク質上に一貫して観察された。さらに、複数の「フォルミル化」セリン、トレオニン、およびチロシンが、トリプシン/CNBr消化物の中に観察された。しかしながら、これらの修飾は、サンプル処理に起因する化学的修飾のようであり、「細胞本来」の翻訳後修飾ではない。
〈実施例3A〉PCNAおよびcsPCNAにおける、他の翻訳後修飾の特定
csPCNAにおいてメチルエステルを特定するのに加えて、csPCNAの全体分子について、他の既知の翻訳後修飾の有無について分析した。他の型のPCNAに関する従来の報告とは異なり、csPCNAではユビキチン化、SUMO化、リン酸化、またはアセチル化は特定されなかった。ユビキチン化およびSUMO化がある場合、2D-PAGEゲルにおけるPCNAにおいて顕著な質量シフトをもたらすことが考えられる。しかし、そのようなシフトは、このcsPCNA異性体では観察されなかった。さらに、csPCNAのLC-MS/MS実験のいずれにおいても、ユビキチン化またはSUMO化しているペプチドは特定されず、かつ、どのcsPCNAペプチドも、ユビキチンまたはSUMO結合と一致する質量シフトを示さなかった。これは、本実験で分析したゲルスポット中のcsPCNAは、ユビキチン化も、SUMO化もされていないことを強く示唆する。さらに、従来、PCNAは、リン酸化されることが報告されていたけれども、csPCNAのどの残基についても、そのリン酸化を支持するデータは、上記の分析では見いだされなかった。上記分析において観察されたcsPCNA残基のいずれにおいても、H3PO4(98Da)が付加されたならば見られたであろう+80Daの質量シフトおよび/または中性欠如は明らかにされなかった。これは、PCNAは、アセチル化はされるが、リン酸化はされないことを示す報告と一致する。さらに、ゲルを、フォスフォセリン、フォスフォトレオニン、フォスフォチロシン、アセチル化リシンの外、ポリ(ADP)リボースについても、その有無についてイムノブロッティングで調べたが、PCNAにおいてこれらの翻訳後修飾を検出することはできなかった。
乳癌細胞におけるcsPCNA異性体は、リン酸化、アセチル化、ユビキチン化、またはSUMO化はされないが、その代わりにメチルエステル化される。アセチル化およびリン酸化同様、メチルエステル化も、2D-PAGEにおけるPCNAの移動度を変える。しかしながら、分子をより酸性側の等電点にシフトさせる、アセチル化およびリン酸化とは異なり、メチルエステル化によって、タンパク質はより塩基側の等電点を示す。従って、図1Aに見られる低量の酸性異性体(白矢印)は、csPCNA異性体に比べて、より小数のメチルエステルしか含まない、または全く含まない異性体であると考えることが可能である。
csPCNA異性体は、PCNAの正常形、すなわち非悪性形(nmPCNA、または単にPCNA)に比べて、低量のメチルエステル化を含む。この非悪性、すなわち塩基性のPCNA異性体は、比較的高レベルのメチルエステル化を含む可能性が高い。この結論は、一部は、メチルエステル化は、酸性残基を修飾するため、タンパク質をより塩基側の等電点にシフトする(酸性電荷の消失によって)こと、および、csPCNA異性体では、4.5というその等電点計算値に極めて近い(酸性電荷の付加によって)という事実に基づく。一方、アセチル化、リン酸化、およびADP-リボシル化では、仮にあったとしても、それによってタンパク質が、4.5以下のより酸性側の等電点にシフトされる(酸性電荷の付加によって)ことはないと考えられる。したがって、これらの修飾は等電点シフトの原因とは考えられない。PCNAおよびcsPCNAにおけるメチルエステル化の程度を測定することによって、非悪性(nmPCNA)から悪性(csPCNA)を区別することが可能である。本明細書に開示される方法を用いて、csPCNAおよびnmPCNAのメチエステル化レベルが定量され、悪性腫瘍診断のために比較される。例えば、表IIに、各種csPCNA-由来ペプチドのメチルエステル化状態、および異種集団における修飾出現度%を示す。表IIは、悪性腫瘍の診断において様々なメチルエステル化レベルを定量する際比較チャートとして使用することが可能である。
〈実施例4〉メチルエステル化されたcsPCNAペプチドの半定量
異性体の等電点を考慮した、csPCNAにおけるメチルエステルの特定についてさらに調べた。PCNAは、その等電点計算値が約4.5であり、csPCNAの等電点は、周辺タンパク質の等電点を用いて2D-PAGEゲルを較正した後に定量した場合にはやや高く、約4.6であった。一方、もしも、図2に示した16個の酸性残基全てがメチルエステル化したとすると、タンパク質の等電点は、0.1pH単位を上回る急激な塩基側シフト(例えば、5.66)を起こすと考えられる。その他にも修飾されると塩基性になる、すなわちnmPCNA異性体を生成する残基があるかもしれない。さらに、csPCNAで修飾される残基とは別の、および/または、csPCNAで修飾される残基に加えて、nmPCAがメチルエステル化される可能性もある。本明細書において開示される本法は、当業者が、csPCNAおよびnmPCNAのメチルエステル化レベルを定量することを可能とする。メチルエステル化ペプチドの相対量を定量し、未修飾ペプチドと比較する。これは、各未修飾ペプチド、およびそのメチルエステル化ペプチドのピーク面積を測定し、比較することによって実施される。これらのピーク面積を比較することによって、表IIに示したこのLC-MS/MS実験で特定された各メチルエステルの相対的量が明らかにされる。ピーク面積を比較すると、各ペプチドは、部分的なメチルエステル化(<25%)を示すにすぎない。したがって、csPCNA異性体は、同じ等電点を持つ複数の異種PCNA分子集団から構成されると考えられる。言い換えると、単一csPCNA分子は、1個または数個のメチルエステル持つことを示すが、16個は示さないようである。しかし、この1個または数個のメチルエステルは、このタンパク質全体に渡って16個の異なる残基上に生じる可能性がある。このcsPCNAの不均一性は、csPCNAのC-末端ペプチドの上にメチルエステル化が存在することによって示される。未修飾ペプチドIEDEEGS (配列番号16)(778 m/z)は28.9分で溶出し(図3A)、このペプチドのCIDスペクトラムは、未修飾の酸性残基を含むペプチドと一致する(図3B)。興味深いことに、このペプチドのメチルエステル化分子(792 m/z)のクロマトグラムでは、2-3分遅い溶出時間を持つ二つのピークが特定された。これは、恐らく、疎水性の増加、および、メチルエステル化によってもたらされる電荷の消失によるものと思われる。したがって、これら二つのピークの分離は、これらのペプチド構造における相違を示す。CIDスペクトラムを精査することによって、両ペプチドはメチルエステル化されるが、異なる残基においてであることが特定された(図3CおよびD)。両残基においてメチルエステルを持つペプチドは観察されなかったので、これらのペプチドは、の異種csPCNA集団の分析によって生じたものであることが確かと思われる。
修飾された分子において観察される不均一性および低い出現率は、メチルエステル修飾自身が、簡単に変化しやすい性質を持つためである可能性がある。タンパク質のメチルエステル化修飾は、中性および塩基性溶液では短命であることを示す報告もある。したがって、タンパク質のメチルエステルは、csPCNAにおいて見られるものと同様、自発的に加水分解した後に、未修飾残基およびメタノールを残す可能性がある。さらに、SDS-PAGEの塩基性で、酸化的条件も、PCNAからのメチルエステルの消失を招く原因となっている可能性があり、塩基性PCNA異性体、すなわち、高度にメチルエステル化したPCNAを、その塩基性等電点に向かって展開しようとする試みは、比較的酸性側の等電点に向かう自発性回帰を示すようである(図4)。
高度のメチルエステルは、図4のイムノブロットに示すように、PCNAを塩基性等電点(約pH 8.8-9.0)に集中させるようである。しかしながら、この異性体の集束は、均一ではなく(縞状)、比較的弱く留まっているようである。この異性体が展開する塩基性pHは、このタンパク質おけるメチルエステル化の全てを維持するには十分ではないのかもしれない。このゲル(図4)において観察されるように、ある特定の等電点に集束できないのは、恐らく、塩基性pHへの集束のために一つ以上のメチルエステルのが同時に失われたためと考えられる。メチルエステルの自発性加水分解が起こると、メタノールと未修飾アミノ酸の側鎖が遊離する。この「塩基性加水分解」による酸性側鎖の再生は、PCNAが、ゲルのより酸性側に向かって(pH 7)蓄積することからも検証されるように、恐らく、等電点を、塩基性側からより酸性側にシフトさせると考えられる。
メチルエステル化の同定および分析は、メチルエステルの喪失を最小にする条件下で実行可能である。例えば、タンパク質のメチルエステルの保存が可能な条件を用いる酸性2D-PAGEの実行法が報告されている(O’Connor et al., Anal. Biochem. 1985, 148, 79-86)。しかしながら、PCNAを認識する市販のプロテアーゼの多くは、中性から塩基性pHにおいて活性を持つので、相当量のメチルエステル化が、消化処理の際に失われる可能性がある。
細胞そのもの、または抽出物中で、メチルエステル化に与る酵素(単数または複数)が活性を持ち、メチルエステルを失った残基を修飾して自発的加水分解に導く可能性がある。メチルエステル化に与る酵素(単複)からPCNAを分離し、加水分解を助ける条件(例えば、7.0よりも高いpH)でインキュベーションすることによって、一つ以上のメチルエステルが失われる可能性がある。例えば、メチルエステルの上述のような喪失は、サンプル処理および分析の際にやや酸性の条件を維持することによって最小限に抑えることが可能である。
[表I]
Figure 2008547034
a:このタンパク質スポットの位置は、図1Aに示す。
b:アスパラギン酸またはグルタミン酸残基において明らかに+14質量シフトを示すペプチド。
c:特定配列の範囲は、同定されたアミノ酸残基の数を、そのタンパク質の残基の合計数で割って計算する。
[表II]
Figure 2008547034
a:示したペプチド修飾は、酸化メチオニン(Mo)、カルバミドメチルシステイン(Cca)、メチルエステル化グルタミン酸(Em)、およびメチルエステル化アスパラギン酸(Dm)である。
b:メチルエステル率は、メチルエステル化ペプチドのピーク面積を、メチルエステル化および未修飾ペプチドのピーク面積の合計で割って計算した。
c:Mascotスコアは、-10log(P)として記録される。ただし、Pは、一致が無作為に生じる確率である。
d:LCQ AdvantageとみなしてLCQ DECA XPを用いた場合に生成されるデータ。
[表III]
Figure 2008547034
図1は、LC-MS/MSペプチド特徴解明による、2D-PAGEにおけるcsPCNAの同定を示す。(A)は、クーマシーブルー染色したMDA MB 468細胞核抽出物(2 mg)の2D-PAGEゲルの代表的記録画像を示す。複数のスポットを選択し、それらについてトリプシンによるタンパク質分解、およびLC-MS/MSによる同定を行った。csPCNAは、ゲルの酸性側(黒矢印)の等電点4.6付近に検出された。2D-PAGEを三次元的に表示することによって、csPCNAに対応する二つのスポットが検出された。すなわち、2次元分析ソフトウェアによって、小さなスポット(黒矢印)、および低量の、より酸性のスポット(白矢印)が検出された。この分析において同定された、PCNA以外のタンパク質スポット(i-v)を表Iに示す。(B)は、csPCNAのトリプシン消化物で得られたペプチドの、基準ピーククロマトグラムを示す。(C)は、43.3分で溶出したcsPCNAの質量分析スペクトラムを示す。1038.7m/zイオンのタンデム質量分析スペクトラムの分析(D)によって、これが、ヒトPCNAの残基92-110に対応する、二価ペプチドと特定された。(E)は、43.74分溶出する1045.4m/zイオンを示す質量分析スペクトラムである。この一価イオンの質量差は、二価イオンの差の2倍であり、従って、1045.4 m/zイオンは、+14Daの質量シフトを示す。(F)は、1045.4m/zイオンのタンデム質量分析スペクトラムが、y-イオンの全てが14Daだけシフトしていることを除けば、D部分に示したものとほとんど同じであることを示す。b18-イオンのみに質量シフトが見られることによって、追加の14Daは、csPCNAの109位のグルタミン酸上に位置することがわかる。 図2は、csPCNAの搖動ペプチド配列マップの作製を示す。(A)トリプシン(青)、トリプシン/CNBr(緑)、GluC(赤)、およびAspN(黒)によるcsPCNA切断によって得られるペプチドの溶出を示す、代表的基準ピーククロマトグラムである。(B)LC-MS/MSによって特定された配列のcsPCNAマップ。メチルエステルの位置は、(Xm)として表される。 図3は、PCNAのC-末端が、複数部位においてメチルエステル化されることを示す。(A)csPCNAのC-末端から得られる三つの異なるペプチドの溶出を示す。トリプシンによって消化されたcsPCNAの基準ピーククロマトグラムが、ペプチドIEDEEGS(778.5 m/z)、およびメチルエステル化IEDEEGS(792.5)の選ばれたイオンクロマトグラムと比較されている。メチルエステル化ペプチドは、疎水性が増し、逆相勾配ではより遅く溶出する。(B)未修飾ペプチドのタンデム質量分析スペクトラムの解釈から、配列IEDEEGSを持つ一価ペプチドの断片化が示される。水(-18Da)の中性的消失は一般的に、断片イオンの多くに観察される。さらに、y4-イオンからの、水およびCO基の中性的消失を表す断片イオンが373.9 m/zに観察される。(C)上のクロマトグラムにおいて最初に溶出するペプチドから得られる792.3 m/zイオンのタンデム質量分析スペクトラムを示す。スペクトラムにおいてb3-6-イオンが特定され、全て14Daだけシフトするが、y3およびy5-イオンはシフトしない。これは、修飾が、N-末端のロイシンか、グルタミン酸のいずれかに存在することを示唆する。(D)2番目に溶出するペプチドから得られる792.3 m/zイオンのタンデム質量分析スペクトラム。b5およびb6-イオンは、前述のように14Daシフトを示すが、b3およびb4-イオンは示さない。これは、メチルエステルが、このペプチドの位置5におけるグルタミン酸の上にある場合に一致する。 図4は、PCNAのイムノブロットを示す。 図5は、PCNAのアミノ酸配列(配列番号30)を示す(アミノ酸1-261)。

Claims (22)

  1. 生物サンプルにおける、癌特異的増殖細胞核抗原(csPCNA)異性体(isoform)を検出する方法であって、
    csPCNA異性体を含むことが疑われる前記サンプルにおいて、csPCNA異性体の一つ以上のアミノ酸残基においてメチルエステルを含む翻訳後修飾を検出すること;および、
    前記csPCNA異性体におけるメチルエステルのレベルを、PCNAの非悪性異性体と比較することによって、csPCNA異性体の存在を検出することを含む方法。
  2. 前記生物サンプルが体液であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  3. 前記体液が、血液、血漿、リンパ液、血清、胸水、脊髄液、唾液、痰、尿、胃液、膵液、腹水、滑液、母乳、および精液から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 前記生物サンプルが組織サンプルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  5. 前記組織が、乳房、前立腺、肺、結腸、表皮、結合組織、子宮頸部、食道、脳、胸腺、甲状腺、膵臓、睾丸、卵巣、腸、膀胱、胃、軟部組織肉腫、骨肉腫、白血病、リンパ腫、上皮癌、腺癌、胎盤、線維組織、胚細胞組織、およびそれらの抽出物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  6. 前記メチルエステルがアスパラギン酸に存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  7. 前記メチルエステルがグルタミン酸に存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  8. メチルエステルが、csPCNA異性体の、16個のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基の内の1個以上に存在することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  9. 前記16個のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基の1個以上に存在するメチルエステルが、csPCNA異性体のアミノ酸位置3、85、93、94、104、109、115、120、132、143、174、189、201、238、255、259に対応することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  10. 前記16個のアルパラギン酸またはグルタミン酸残基の1個以上に存在するメチルエステルは、
    MFEmAR (配列番号1);
    IEmDEEGS (配列番号2);
    IEDEEmGS (配列番号3);
    VSDYEmMK (配列番号4);
    MPSGEmFAR (配列番号5);
    LSQTSNVDmK (配列番号6);
    CAGNEmDIITLR (配列番号7);
    FSASGEmLGNGNIK (配列番号8);
    AEDNADTLALVFEAPNQEmK (配列番号9);
    AEmDNADTLALVFEAPNQEK (配列番号10);
    AEDmNADTLALVFEAPNQEK (配列番号11);
    AEDNADTLALVFEmAPNQEK (配列番号12);
    LMDmLDVEQLGIPEQEYSCVVK (配列番号13);
    ATPLSSTVTLSMSADVPLVVEmYK (配列番号14);および、
    LSQTSNVDKEEEAVTIEMNEmPVQLTFALR (配列番号15)
    から選択される、修飾アミノ酸残基を有するペプチドに対応し、
    前記配列において、Emはメチルエステル化グルタミン酸残基を、Dmはメチルエステル化アスパラギン酸残基を表すことを特徴とする、請求項8に記載の方法。
  11. csPCNA異性体の検出が、質量分析によって実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  12. 前記質量分析が、液体クロマトグラフィー(LC)質量分析(MS)であることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  13. csPCNA由来ペプチドの前記質量分析が、対応する未修飾ペプチドに比較して14Daの質量シフトをもたらすことを特徴とする、請求項11に記載の方法。
  14. 悪性腫瘍の診断または予後判定のためのマーカーであって、
    前記マーカーは、生物サンプル中の癌特異的増殖細胞核抗原(csPCNA)異性体におけるアミノ酸残基の翻訳後修飾であり、
    前記癌特異的増殖細胞核抗原(csPCNA)異性体における前記翻訳後修飾のレベルが非悪性PCNA(nmPCNA)異性体における前記翻訳後修飾のレベルと比較して低いことを特徴とする、マーカー。
  15. 前記翻訳後修飾がメチルエステル化であることを特徴とする、請求項14に記載のマーカー
  16. 前記メチルエステル化が、csPCNA異性体の16個のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基の一つ以上に存在することを特徴とする、請求項15に記載のマーカー
  17. 前記16個のアスパラギン酸またはグルタミン酸残基の1個以上に存在するメチルエステルが、csPCNA異性体のアミノ酸位置3、85、93、94、104、109、115、120、132、143、174、189、201、238、255、259に対応することを特徴とする、請求項16に記載のマーカー
  18. 請求項14〜17に記載のいずれかのマーカーを特異的に検出する抗体あるいは抗体断片を含むことを特徴とする、悪性腫瘍の診断または予備判定のためのキット。
  19. 修飾された増殖細胞核抗原(PCNA)ペプチドであって、
    MFEmAR;
    IEmDEEGS;
    IEDEEmGS;
    VSDYEmMK;
    MPSGEmFAR;
    LSQTSNVDmK;
    CAGNEmDIITLR;
    FSASGEmLGNGNIK;
    AEDNADTLALVFEAPNQEmK;
    AEmDNADTLALVFEAPNQEK;
    AEDmNADTLALVFEAPNQEK;
    AEDNADTLALVFEmAPNQEK;
    LMDmLDVEQLGIPEQEYSCVVK;
    ATPLSSTVTLSMSADVPLVVEmYK;および、
    LSQTSNVDKEEEAVTIEMNEmPVQLTFALR
    から成るグループから選択されるアミノ酸配列を含み、
    前記配列において、Emはメチルエステル化グルタミン酸残基を、Dmはメチルエステル化アスパラギン酸残基を表すことを特徴とする、修飾ペプチド。
  20. 前記ペプチドが翻訳後に修飾されることを特徴とする、請求項19に記載の修飾ペプチド。
  21. 前記ペプチドがプロテアーゼ消化工程に暴露されることを特徴とする、請求項19に記載の修飾ペプチド。
  22. 前記ペプチドが合成ペプチドであることを特徴とする、請求項19に記載の修飾ペプチド。
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