JP2008539204A - 血圧降下タンパク質加水分解物 - Google Patents

血圧降下タンパク質加水分解物 Download PDF

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Abstract

本発明は、トリペプチドMAPおよび/またはトリペプチドITPならびに/またはその塩を説明する。
【選択図】なし

Description

発明の詳細な説明
[技術分野]
本発明は、新規ペプチドの生成に関する。
[背景技術]
高血圧症は、ヒトにおける比較的一般的な病状であり、心臓血管疾患、腎不全および脳卒中の、流行性の危険因子を引き起こす。カルシウム遮断薬、β遮断薬、利尿薬、α遮断薬、中心的なαアンタゴニスト、アンジオテンシンIIアンタゴニストおよびACE阻害薬等の多くの医薬品の利用可能性は、高血圧症の基礎にある生理学的機序が多面的であることを示す。
高血圧症の生理学的機序のうち、特にレニン−アンジオテンシン機序は、多くの科学的注目を受けている。この機序において、アンジオテンシンは肝臓によって分泌され、ペプチダーゼであるレニンによって切断されて、生物学的に不活性なデカペプチドであるアンジオテンシンIを生じる。アンジオテンシンIが肺毛細血管を通過すると、アンジオテンシン変換酵素(以下ACEと呼ぶ)と呼ばれる別のペプチダーゼが、アンジオテンシンIの最後の2つの残基(His−Leu)を除去することによって、アンジオテンシンIに作用して、オクタペプチドであるアンジオテンシンIIを形成する。アンジオテンシンIIオクタペプチドは、強力な血管収縮活性を示し、したがって、血圧を上昇させる。より低いレベルのアンジオテンシンIIにつながるACE阻害は、血管収縮を防ぎ、そのため高血圧を防ぐ。
アンジオテンシンIを切断する他に、ACEはまた、同様に血圧調節に関与するノナペプチドであるブラジキニンを加水分解することもできる。後者の機序において、ACE阻害は、血管拡張を促進し、同様に血圧を降下させる、ブラジキニンレベルの増大につながる。ACEを阻害することは、このようにして、少なくとも2つの別々の機序によって、血圧降下効果につながる。
オクタペプチドであるアンジオテンシンIIが副腎皮質によるアルドステロンの放出を刺激することもまた、公知である。アルドステロンの標的器官は腎臓であり、ここでアルドステロンは、腎細尿管からのナトリウムの再吸収の増大を促進する。この第三の機序によっても、ACE阻害は血圧を減少させるが、この場合はナトリウム再吸収を減少させることによって減少させる。
その多重的な生理学的効果のために、ACEのタンパク質分解活性を阻害することは、血圧を抑制する有効な方法である。この観察から、カプトプリルおよびエナラプリル等のいくつかの有効な血圧降下医薬品が生じた(オンデッティ(Ondetti),M.A.ら、1977年、サイエンス(Science)、ワシントンDC(Washington DC)、196、441〜444頁)。
高血圧症は比較的一般的な病状なので、現代の生活様式の、この望ましくない結果を、穏やかに活性のある天然成分で相殺することは、有利である。特に、穏やかに活性のある天然成分は、かかる製品は定期的に消費されるので、食品または飲料に組み込むことができる。あるいは、かかる穏やかに活性のある天然成分は、栄養補助食品に組み込むことができるであろう。過去数十年の間に、発酵乳中に存在する特異的ペプチドがACE阻害能力を有し、高血圧症被験者において血圧低下を引き起こすことができることが発見されている。最近では、多くのインビトロおよび少数の動物試験から、種々のタンパク質源から得られた種々のペプチドのACE阻害効果が示されている。インビトロACE阻害アッセイからは多くの種々のペプチド配列が明らかになっているが、ACE阻害ペプチドは、血液中を循環させてインビボ効果を発揮させる必要があることを、強調しなければならない。効果的なACE阻害ペプチドは、胃腸内タンパク質分解性消化系による分解に抵抗するべきであり、それに続く腸壁を越える輸送の間にインタクトなままであるべきであるようである。
種々のACE阻害ペプチドの構造機能研究から、それらがしばしばそれらのC末端配列にPro−Pro、Ala−ProまたはAla−Hypを有することが示唆されている(マルヤマ(Maruyama),S.およびスズキ(Suzuki),H.、1982年、Agric Biol Chem.、46(5):1393〜1394頁)。この発見は、ACEが、プロリンを伴うペプチド結合を切断することができないペプチジルジペプチダーゼ(EC3.4.15.1)であることによって、部分的に説明される。したがって、Xaa−Pro結合は切断することができないので、構造Xaa−Pro−Proを有するトリペプチドから、ジペプチドPro−Proを除去することはできない。したがって、比較的高濃度で存在する場合、Xaa−Pro−Pro構造を有するトリペプチドは、ACE活性を阻害するであろうと考えることができる。ACEのみでなく、ほぼ全てのタンパク質分解酵素はXaa−ProまたはPro−Pro結合を切断するのが難しいので、ペプチドのカルボキシ末端での(複数の)プロリン残基の存在によって、比較的プロテアーゼ耐性の分子が生じるという考えは、ほとんど自明である。同様に、プロリンの代わりにヒドロキシプロリン(Hyp)を含むペプチドは、比較的プロテアーゼ耐性である。このことから、そのカルボキシ末端に1つ以上の(ヒドロキシ)プロリン残基を保有するペプチドは、胃腸管におけるタンパク質分解を免れるようであると推論することができる。これらの結論は、特異的ACE阻害ペプチドの顕著なインビボ血圧降下効果を理解する助けとなるであろう。これらはACE阻害の構造上の要件を満たすだけでなく、胃腸内のタンパク質分解性消化系による分解に抵抗し、それに続く腸壁を越える輸送の間、インタクトなままである。
トリペプチドLeu−Pro−Pro(JP0236127)、Val−Pro−Pro(EP0583074)およびIle−Pro−Pro(J.Dairy Sci.、78:777〜783頁1995年))について、強力なACE阻害活性が報告されている。最初に、全てのACE阻害ペプチドは、ACE活性に対するそれらのインビトロ効果に基づいて特徴付けられ、トリペプチドIle−Pro−Pro(以下IPPと呼ぶ)Val−Pro−Pro(以下VPPと呼ぶ)およびLeu−Pro−Pro(以下LPPと呼ぶ)が、比較的低いIC50値を生じる、それらの強力なACE阻害効果のために、抜きん出ていた。後に、トリペプチドVPPならびにIPPの、推定される降圧効果を、自然発症高血圧ラットにおいて確かめることができた(ナカムラ(Nakamura)ら、J.Dairy Sci.、78:12531257(1995年))。これらの実験において、阻害トリペプチドは、乳酸菌発酵乳に由来した。乳発酵の間、望ましいペプチドは、増殖する乳酸菌によって産生されるプロテイナーゼによって生成される。ACE阻害ペプチドは、電気透析法、中空線維膜透析またはクロマトグラフィー法の後に発酵乳製品から濃縮されて、錠剤またはロゼンジ等の、濃縮された栄養補助食品の形態での、それらの市場売買を可能にしている。
[発明の概要]
本発明は、新規トリペプチドMAPおよび/もしくはITPまたはMAPの塩および/もしくはITPの塩に関する。
本発明はまた、MAPおよび/もしくはITPまたはMAPおよび/もしくはITPの塩を含むタンパク質加水分解物に関する。好ましくは、タンパク質加水分解物は、5〜50%、より好ましくは10〜40%のDH、および最も好ましくは20〜35%のDHを有する。さらに、本発明は、MAPおよび/もしくはITPまたはMAPおよび/もしくはITPの塩を含むペプチド混合物に関する。好ましくは、このペプチド混合物は、少なくとも1mgのMAP/gタンパク質、より好ましくは少なくとも2mg/gおよび最も好ましくは少なくとも4mg/gタンパク質を含む。好ましくは、ペプチド混合物はまた、LPPおよび/またはIPPを含む。したがって、ペプチド混合物はまた、好ましくは、少なくとも1mgのIPP/gタンパク質、より好ましくは少なくとも2mg/gおよび最も好ましくは少なくとも4mg/gタンパク質を含み、ならびに/またはペプチド混合物はまた、好ましくは少なくとも1mgのLPP/gタンパク質、より好ましくは少なくとも2mg/gおよび最も好ましくは少なくとも4mg/gタンパク質を含む。
このペプチド混合物は、好ましくは、500Da未満の分子量を有する少なくとも30重量%(乾燥物質)のペプチドを含み、より好ましくは、ペプチド混合物の35〜70重量%(乾燥物質)は、500Da未満の分子量を有するペプチドである。
さらに、本発明は、MAPおよび/またはITPを生成するための、好ましくはタンパク質源の酵素加水分解による、酵素によるプロセスに関する。
[発明の詳細な説明]
本願に記載されているように、トリペプチドMAPおよびITPは、ACEの阻害において非常に有効である。これらの阻害効果は、本明細書中の実験部分で判定すると、それぞれMAPで0.4およびITPで10(μMで)の、驚くほど低いIC50値に対応する。さらに、MAPおよびITPの両方のトリペプチドは、胃腸内タンパク質分解に抵抗し、したがって、ヒト腸管において安定であると期待されることがわかる。したがって、トリペプチドMAPおよび/もしくはトリペプチドITPならびにそれらの塩は、有効なACE阻害に非常に適しており、例えば、栄養補助食品または薬剤として、機能性食品中で使用することができる。用語、栄養補助食品は、本明細書中で使用される場合、栄養および薬学的適用分野の両方における有用性を意味する。したがって、MAPおよび/またはITPを含む新規の栄養補助食品組成物は、食物および飲料への栄養補給物として、ならびにカプセル剤もしくは錠剤等の固体製剤、または溶液もしくは懸濁液等の液体製剤であってもよい経腸または非経口適用のための薬学的製剤または薬剤としての、使用を提供することができる。
トリペプチドMAP(Met−Ala−Pro)およびITP(Ile−Thr−Pro)は、化学的合成、酵素加水分解およびタンパク質含有溶液の発酵を含む種々の方法によって、作製することができる。
タンパク質加水分解物または発酵に起因する液体等の複雑な混合物中の生物活性ペプチドの同定は、難しい課題である。基本的な疑問、正しいタンパク質基質を使用しているかどうか、正しい酵素を使用しているかどうか、正しい微生物培養物を使用しているかどうか、の他に、いくつかの生物活性ペプチドが、数千ものペプチドを含む複雑な試料中に存在すると期待することができる。高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分画の反復サイクルおよび生化学的評価を使用する伝統的な同定アプローチは、一般に、時間がかかり、存在する生物活性ペプチドを失って関連性のある対生物作用の検出を非常に難しくしがちである。本研究において、非常に洗練された装置を使用し、多くの異なるタンパク質加水分解物および発酵ブロスをスクリーニングし、最終的には、ACE阻害特性を有する2つの新規のペプチドMAPおよびITPの同定につながった。本発明者らのアプローチにおいて、連続フロー生化学アッセイをオンラインでHPLC分画システムに結合させた。HPLCカラム流出を連続フローACEバイオアッセイと化学的分析技術(質量分析)との間で分割した。粗加水分解物および発酵ブロスをHPLCによって分離し、その後、生物活性化合物の存在を、オンラインの生化学アッセイによって検出した。生化学アッセイでペプチドが陽性のシグナルを示した場合に構造的情報が直ちに利用可能であるように、質量スペクトルを連続的に記録した。
上述のアプローチによって同定されるトリペプチドMAPおよびITPを、経済的に実現性のある生成経路を含む種々の方法によって生成することができる。化学的合成による生成は、例えばN.シューワルト(Sewald)およびH.D.ヤクブケ(Jakubke)編、Wiley−VCH Verlag GmbHによる「Peptides:Chemistry and Biology」、2002年、第4章に記載されているような従来の技術を用いて可能である。大規模生産に適した化学的ペプチド合成の、具体的な費用効果の高い方法は、C末端保護のためのメチルエステルおよびN−保護のためのベンジルオキシカルボニル(Z)またはtert−ブチルオキシカルボニル基の使用と組み合わされた、カルボキシル基の活性化のためのアルキルクロロホルメートまたは塩化ピバロイルの使用に基づく。例えば、MAPの場合、L−プロリンメチルエステルを、イソブチルクロロホルメート活性化Z−Alaと結合させることができる。得られたジペプチドは、C上で水素およびPdを用いた水素化分解によってZ−脱保護することができ、イソブチルクロロホルメート活性化Z−Metと再度結合させることができる。得られたトリペプチドのうち、NaOHを用いてメチルエステルを加水分解し、水素化分解によるZ−脱保護の後、トリペプチドMet−Ala−Proが得られる。同様に、Ile−Thr−Proを合成することができるが、カップリング反応の間、Thrのヒドロキシ官能基はベンジル保護を必要とする。最終的な工程において、次いで、Z−脱保護の間にこの基は同時に除去される。
MAPおよび/またはITPはまた、アミノ酸配列MAPおよび/またはITPを含む任意のタンパク質基質を用いて、酵素加水分解によって、または発酵アプローチによって作製することができる。有利には、タンパク質基質は、MAPおよびITPの両方の断片を含む。かかる酵素または発酵のアプローチのための好ましいタンパク質基質は、乳、または牛乳のカゼイン画分である。発酵または加水分解条件の最適化によって、生物活性分子MAPおよび/またはITPの生成を最大化することができる。生成を最大化しようとする当業者は、加水分解/発酵時間、加水分解/発酵温度、酵素/微生物種類および濃度等のプロセスパラメータを調節のし方を知るであろう。
MAPおよび/もしくはITPまたはMAPおよび/もしくはITPを含む組成物は、有利には、加水分解物であり、好ましくは、以下の工程を伴うプロセスに従って作製される。
(a)トリペプチドMAPおよび/またはITPを含む加水分解されたタンパク質生成物を生じる、そのアミノ酸配列中にMAPまたはITPを含む適したタンパク質基質の酵素加水分解
(b)トリペプチドMAPおよび/またはトリペプチドITPに富んだ画分の、加水分解されたタンパク質生成物からの分離、ならびに、場合により、
(c)工程b)の画分を濃縮および/または乾燥して、トリペプチドMAPおよび/またはトリペプチドITPに富んだ、濃縮された液体または固体を得ること。
酵素加水分解工程(a)は、MAPおよび/またはITPトリペプチドの遊離を生じるタンパク質の加水分解につながる、適したタンパク質基質の任意の酵素処理であってもよい。いくつかの酵素の組み合わせを用いて、タンパク質基質から所望のトリペプチドを遊離させることができ、本プロセスにおいて使用される好ましい酵素は、プロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリン特異的オリゴペプチダーゼである。適したタンパク質基質は、アミノ酸配列MAPおよび/またはITPを包含する任意の基質であってもよい。MAPを包含することが公知であるタンパク質基質は、例えば、カゼイン、小麦グルテン、ヒマワリタンパク質単離物、米タンパク質、卵タンパク質である。適したタンパク質基質は、好ましくは、ウシβ−カゼイン、小麦グルテンのα−グリアジン画分およびヒマワリタンパク質単離物の2S画分に存在するようなアミノ酸配列AMAPまたはPMAPを包含する。
カゼイン基質は、相当な量のβ−カゼインおよびα−s2−カゼインを含む任意の物質であってもよい。適した基質の例は、乳ならびにカゼイン、カゼイン粉末、カゼイン粉末濃縮物、カゼイン粉末単離物、またはβ−カゼイン、もしくはα−s2−カゼインである。好ましくは、カゼインタンパク質単離物(CPI)等の、高含有量のカゼインを有する基質。
酵素は、β−カゼインおよび/またはα−s2−カゼインなどのタンパク質を加水分解して1つ以上のMAPおよび/またはITPのトリペプチドの遊離を生じることができる、任意の酵素または酵素の組み合わせであってもよい。
分離工程(b)は、当業者に公知の任意の方法によって、例えば沈殿、ろ過、遠心分離、抽出またはクロマトグラフィーおよびそれらの組み合わせによって、実行してもよい。好ましくは、分離工程(b)は、精密ろ過または限外ろ過技術を用いて実行される。ろ過工程において使用される膜孔サイズ、ならびに膜の電荷を用いて、トリペプチドMAPおよび/またはトリペプチドITPの分離を制御してもよい。荷電UF/NF膜を用いたカゼインタンパク質加水分解物の分画が、Y.ポワロ(Poilot)ら、Journal of Membrane Science 158(1999年)105〜114頁に記載されている。
濃縮工程(c)は、工程(b)によって生じた画分をナノろ過または蒸発して、高度に濃縮された液体を生じることを伴ってもよい。例えば低い水分活性(Aw)、低pHおよび好ましくはベンゾエートまたはソルベート等の保存剤で適当に製剤化される場合、かかる濃縮液体組成物は、魅力的な、本発明によるトリペプチドの保存の方法を形成する。場合により、蒸発工程の後に、例えば噴霧乾燥または凍結乾燥による、乾燥工程が続き、高濃度のMAPおよび/またはITPを含む固体を生じる。
酵素プロセスは、好ましくは、単一の酵素インキュベーション工程を含む。本発明による酵素プロセスはさらに、好ましくは混入している酵素活性がないプロリン特異的プロテアーゼの使用に関する。プロリン特異的プロテアーゼは、プロリンのカルボキシ末端側のペプチド結合を加水分解するプロテアーゼとして定義される。好ましいプロリン特異的プロテアーゼは、プロリンおよびアラニン残基のカルボキシ末端側でペプチド結合を加水分解するプロテアーゼである。プロリン特異的プロテアーゼは、好ましくは、ポリペプチドまたはタンパク質自体等の、大きいタンパク質分子を加水分解することができる。本発明によるプロセスは、一般に、24時間未満のインキュベーション時間を有し、好ましくはインキュベーション時間は10時間未満、より好ましくは4時間未満である。インキュベーション温度は、一般に、30℃より高く、好ましくは40℃より高く、より好ましくは50℃より高い。
本発明の別の態様は、加水分解されたタンパク質からのトリペプチドMAPおよびITPの精製および/または分離である。本発明による、加水分解されたタンパク質のほとんどは、好ましくは、選択されたpH条件下で、沈殿することができる。この精製プロセスは、pHを、加水分解された、および加水分解されていないタンパク質のほとんどが沈殿するpHに変化させること、ならびに溶液中に残った(対生物作用)トリペプチドから沈殿したタンパク質を分離させることを含む。
プロリン残基をそのカルボキシ末端側に有する本トリペプチドを得るために、プロリン残基のカルボキシ末端側で切断することができるプロテアーゼの使用によって、好ましい選択肢が提供される。いわゆるプロリルオリゴペプチダーゼ(EC3.4.21.26)は、プロリン残基のカルボキシ側でペプチドを選択的に切断する、独特の可能性を有する。プロリルオリゴペプチダーゼはまた、アラニン残基のカルボキシ末端でペプチドを切断する可能性を有するが、後者の反応は、プロリン残基を伴うペプチド結合を切断することよりも効率が低い。哺乳動物ならびに微生物供給源から単離された、全ての十分特徴付けられたプロリン特異的プロテアーゼにおいて、酵素の活性部位から大きいペプチドを排除する、独特のペプチダーゼドメインが同定されている。実際は、これらの酵素は、約30より多いアミノ酸残基を含むペプチドを分解することができないので、これらの酵素は、現在、「プロリルオリゴペプチダーゼ」と呼ばれている(ファロップ(Fulop)ら、セルCell、第94巻、161〜170頁、1998年7月24日)。結果として、これらのプロリルオリゴペプチダーゼは、それらがそれらの加水分解作用を示すことができる前に、他のエンドプロテアーゼでの前加水分解を必要とする。しかしながら、国際公開第02/45523号パンフレットに記載されているように、プロリルオリゴペプチダーゼとかかる別のエンドプロテアーゼとの組み合わせであっても、カルボキシ末端プロリン残基を有する有意に増強された割合のペプチドによって特徴付けられる加水分解物を生じる。このために、かかる加水分解物は、インビトロACE阻害効果ならびに胃腸内タンパク質分解に対する改善された抵抗性を有するトリペプチドの単離のための、優れた出発点を形成する。
「ペプチド」または「オリゴペプチド」は、本明細書中で、ペプチド結合によって連結された少なくとも2つのアミノ酸の鎖として定義される。用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、同義(一般に認識されるように)と考えられ、各用語は、文脈によって必要な場合、互換可能に使用することができる。「ポリペプチド」は、本明細書中で、30個より多いアミノ酸残基を含む、鎖として定義される。本明細書中の全ての(オリゴ)ペプチドおよびポリペプチドの式または配列は、一般的な慣習に従って、左から右に、アミノ末端からカルボキシ末端の方向で記される。本明細書中で使用されるアミノ酸の一文字表記は、当該分野で一般に公知であり、サンブルック(Sambrook)ら(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版、コールドスプリングハーバーラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989年)に見ることができる。ペプチド混合物は、3500Da未満の分子量を有するペプチドの測定と組み合わせてケルダール窒素に基づいて測定すると、少なくとも30重量%(乾燥物質)のペプチドを含む組成物である。
エンドプロテアーゼは、本明細書中で、エンド型でポリペプチド中のペプチド結合を加水分解し、グループEC3.4に属する酵素として定義される。エンドプロテアーゼは、触媒機序に基づいて、サブサブクラスに分けられる。セリンエンドプロテアーゼ(EC3.4.21)、システインエンドプロテアーゼ(EC3.4.22)、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC3.4.23)、メタロエンドプロテアーゼ(EC3.4.24)およびスレオニンエンドプロテアーゼ(EC3.4.25)のサブサブクラスがある。エキソプロテアーゼは、本明細書中で、末端のα−アミノ基に隣接するペプチド結合(「アミノペプチダーゼ」)または末端のカルボキシ基と末端から2番目のアミノ酸との間のペプチド結合(「カルボキシペプチダーゼ」)を加水分解する酵素として定義される。
国際公開第02/45524号パンフレットは、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)から得ることができる、プロリン特異的プロテアーゼを記載している。黒色アスペルギルス由来酵素は、プロリンのカルボキシ末端で選択的に切断するが、ヒドロキシプロリンのカルボキシ末端でも切断することができ、より低い効率ではあっても、アラニンのカルボキシ末端でも切断することができる。国際公開第02/45524号パンフレットはまた、この黒色アスペルギルス由来酵素と他の微生物または哺乳動物供給源由来の公知のプロリルオリゴペプチダーゼとの間に明らかな相同性がないことを教示している。公知のプロリルオリゴペプチダーゼと対照的に、黒色アスペルギルス酵素は、酸性の最適pHを有する。公知のプロリルオリゴペプチダーゼならびに黒色アスペルギルス由来酵素は、いわゆるセリンプロテアーゼであるが、本発明者らは、本明細書中(実施例1)で、黒色アスペルギルス酵素が、完全に異なるサブファミリーに属することを示す。分泌された黒色アスペルギルス酵素は、ほとんどの細胞質プロリルオリゴペプチダーゼがグループ分けされるS9ファミリーよりむしろ、セリンペプチダーゼのファミリーS28のメンバーであるようである(ローリング(Rawling),N.D.およびバレ(Barret),A.J.、Biochim.Biophys.Acta 1298(1996年)1〜3頁)。実施例2において、本発明者らは、黒色アスペルギルス由来プロリン特異的プロテアーゼの最適pHおよび温度を示す。実施例3において、本発明者らは、プロリンおよびアラニン残基のカルボキシ末端の切断に対する黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの高い選択性を示す。さらに、本発明者らは、実施例において、本発明の方法において使用される黒色アスペルギルス由来酵素調製物が、好ましくは本質的に純粋であることを示し、これは純粋なプロリン特異的エンドプロテアーゼに固有のエンド型タンパク質分解活性以外の有意なエンド型タンパク質分解活性が存在しないことを意味する。本発明者らはまた、好ましくは本発明に従って使用される黒色アスペルギルス由来酵素調製物が、いかなるエキソ型タンパク質分解、より具体的にはアミノペプチド分解副活性も含まないことを示す。好ましくは、エキソ型タンパク質分解活性は、本発明のプロセスにおいて使用される黒色アスペルギルス由来酵素調製物中に存在しない。プロリン特異的エンド型タンパク質分解活性が非組み換えアスペルギルス株中に本質的に存在しないという考えの実験的証明は、国際公開第02/45524号パンフレットに見ることができ、本願の実施例3にも示されている。本発明のプロセスは、カゼイン基質をプロリン特異的エンドプロテアーゼのみとともにインキュベートすることによって可能なので、温度、pH等の最適インキュベーション条件は、容易に選択することができ、2つ以上の酵素が適用される場合のように、最適状態に及ばない条件下で固定する必要がない。さらに、例えばさらなる非対生物作用ペプチドまたは肉臭い味につながる遊離アミノ酸等の望ましくない副産物の形成は予防される。反応条件の選択においてより高い自由度を有することによって、他の基準についてのより容易な選択が可能になる。例えば、ここで、微生物感染に対する感受性がより低い条件を選択すること、およびpH条件をその後のタンパク質沈殿工程に関して最適化することが、より容易である。実施例4において、本発明者らは、アスペルギルス酵素がオリゴペプチダーゼでないが、補助的なエンドプロテアーゼを必要とせずにインタクトなタンパク質、大きいペプチドならびにより小さいペプチド分子を加水分解することができる真のエンドペプチダーゼであることを示す。この新しい、驚くべき発見は、補助的なエンドプロテアーゼを必要としないためにカルボキシ末端プロリン残基を有する先例のない高含有量のペプチドを有する加水分解物を調製するために黒色アスペルギルスを使用する可能性を開く。かかる新しい加水分解物は、植物由来であれ動物起源由来であれ、異なるタンパク質性出発物質から調製することができる。かかる出発物質の例は、カゼイン、ゼラチン、魚または卵タンパク質、小麦グルテン、大豆およびエンドウタンパク質ならびに米タンパク質およびヒマワリタンパク質である。ナトリウムは高血圧症において重要な役割を有することが公知であるので、ACE阻害ペプチドの生成のための好ましい基質は、これらのタンパク質のナトリウム塩よりむしろ、カルシウムおよびカリウムである。
黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼの最適pHは約4.3である(図1参照)。この低い最適pHのために、牛乳カゼインを黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼとともにインキュベートすることは自明ではない。牛乳カゼインはpHが6.0未満に低下すると沈殿するが、pH6.0では、黒色アスペルギルス酵素は、限られた活性しか有さない。しかしながら、本発明者らは、実施例5において、このやや好ましくない条件下でも、黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼとのインキュベーションによってIPPおよびLPP等のいくつかの公知のACE阻害ペプチドを生じることができることを示す。非常に驚くべきことに、これらの条件下で生成されるVPPはない。牛乳カゼインは、β−カゼインおよびκ−カゼインを含むいくつかの異なるタンパク質を組み込む。公知のアミノ酸配列によると、β−カゼインは、ACE阻害トリペプチドIPP、VPPおよびLPPを包含する。κ−カゼインは、IPPのみを包含する。黒色アスペルギルス由来酵素がいかなる測定可能なアミノペプチダーゼ活性も含まないことから、形成されたIPPが、κ−カゼイン中に存在する−A107−I108−P109−P110−配列から放出されることが、強力に示唆される。おそらく、IPPのカルボキシ末端のペプチド結合は、黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼの主な活性によって切断されるが、先行するAla−Ile結合の切断は、そのAla特異的副活性によって達成される。同様に、VPPがないことは、アミノペプチダーゼ副活性がないことに基づいて説明することができる。VPPは、配列−P81−V82−V83−V84−P85−P86−中で、β−カゼイン中に含まれる。したがって、プロリン特異的エンドプロテアーゼは、VVVPP配列を切除するが、VPPを放出させることはできない。
これらの結果は、単純な一工程酵素プロセスにおいてカゼイン塩を黒色アスペルギルス由来エンドプロテアーゼとともにインキュベートすると得られる。タンパク質を含む水溶液は、特に何時間も5.0より高いpH値で、50℃以下の温度で維持された場合、微生物感染に対して高度に感受性がある。特に、かかる長期のインキュベーション工程の間に生成されることがあり、その後の加熱工程の後も残存して食品グレードのプロセスに対する潜在的な脅威を形成する可能性がある微生物毒素。本発明は、好ましくは、50℃より高いインキュベーション温度を使用する。24時間未満、好ましくは8時間未満、より好ましくは4時間未満の期間にわたって酵素インキュベーションが行われる一工程酵素プロセスと組み合わせて、本発明によるプロセスによって、向上した微生物学的安定性の利点が提供される。高温条件と組み合わせて本酵素−基質比を使用して、IPPおよびLPPの切除が3時間のインキュベーション期間以内に完了する。
単一の本質的に純粋なエンドプロテアーゼを用いて、ACE阻害ペプチドIPPおよびLPPをカゼインから切除することができるので、本発明は、従来技術のプロセスより少ない数の水溶性ペプチドを生じる。これらの水溶性ペプチドのうち、IPPおよびLPPは、多量に存在する。これは、多くの他の、しばしば活性の低い化合物なしで、高濃度のACE阻害トリペプチドが必要である場合、特に重要である。
本プロセスによると、タンパク質中に存在する−I−P−P−または−L−P−P−配列の、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%が、それぞれトリペプチドIPPまたはLPPに転換される。
実施例6において、本発明者らは、新しい、驚くべき精製工程による、対生物作用ペプチドの5倍精製効果を説明する。この精製プロセスの基礎は、黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの独特の特性によって形成される。この酵素とのインキュベーションによって、水溶性トリペプチドの形態で、基質分子の最も対生物作用のある部分が放出される。基質分子の、対生物作用のない、または対生物作用の低い部分は、大部分、切断されないままであり、したがって、基質分子のより大きいペプチドまたはポリペプチド部分のままである。選択されたpH条件での、これらの、より大きいペプチドまたはポリペプチド部分の限定された水溶性のために、これらの、基質分子の、対生物作用のない、または対生物作用の低い部分は、より可溶性の高い対生物作用トリペプチドから容易に分離する。このプロセスにおいて、最初の加水分解物は、55℃、pH6.0での短い酵素インキュベーション期間の間に形成され、次いで、場合により、80℃より高い温度まで加熱され、全ての混入している微生物を死滅させ、黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼが不活化される。その後、加水分解物が酸性化されて4.5または少なくとも5.0未満までのpH低下が実現される。酵素の最適条件を表すために黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼ不活化に使用することができない、このpH値において、より小さいペプチドのみが溶液中に残るように、カゼイン塩由来の全ての大きいペプチドが沈殿する。沈殿したカゼイン塩は傾瀉またはろ過工程または低速(すなわち、5000rpm未満)遠心分離によって容易に除去することができるので、水性相は、存在するタンパク質の量に関して、高い割合の対生物作用ペプチドを含む。ケルダールデータによると、80〜70%のカゼイン塩タンパク質が、低速遠心分離工程によって除去され、これはACE阻害ペプチドの4〜5倍精製を含意する。本発明者らは、この精製原理を有利に適用して、カゼイン以外のタンパク質性物質から得られる生物活性ペプチドも得ることができることを見出した。また、酵素によって生成される加水分解物だけでなく、適した微生物によって発酵されるタンパク質もまた、本プロセスに従って分離および精製することができる。酵素および基質を、基質は沈殿して酵素は依然として活性のあるpHに近いpH値でインキュベートすることによって、この精製工程が可能になる。黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼの低い最適pHのために、pH1.5〜6.0の範囲での基質沈殿が考慮される。それらの特定の沈殿性質の観点から、グルテンはpH3.5より上で沈殿し、ヒマワリタンパク質はpH4.0より高くpH6.0未満で沈殿し、卵白はpH3.5より高くpH5.0未満で沈殿し、加水分解されたタンパク質が沈殿し、沈殿したタンパク質を加水分解されたタンパク質またはペプチドから分離することができる条件の例を形成する。
傾瀉、ろ過または低速遠心分離の後、生物活性ペプチドを含む上清を、精製された状態で回収することができる。その後の蒸発および噴霧乾燥工程によって、高い対生物作用を有する食品グレードのペーストまたは粉末を得るための、経済的な経路を生じる。記載されるようなプロセスに従ってカゼイン塩を摂取すると、高濃度のACE阻害ペプチドを有する白色で無臭の粉末が得られる。あるいは、蒸発またはナノろ過を用いて、対生物作用ペプチドをさらに濃縮することができる。pH調節およびベンゾエートまたはソルベート等の食品グレードの保存剤の添加と組み合わせた、水分活性(Aw)を増大させることによる、かかる濃縮物の適した製剤化によって、血圧降下ペプチドの、微生物学的に安定化された食品グレードの液体濃縮物が生じる。正しいトリペプチド濃度に適当に希釈された場合、全ての種類の食品および飲料にACE阻害特性を与えるのに適した、用途の広い出発物質が得られる。必要な場合、傾瀉、ろ過または低速遠心分離の後に得られる上清をさらに処理して、最終産物の嗜好性を向上させることができる。例えば、上清を粉末状活性炭と接触させ、その後ろ過工程で炭を除去することができる。最終産物の苦味を最小限にするために、傾瀉、ろ過または低速遠心分離の後に得られた上清を、サブチリシン、トリプシン、中性プロテアーゼまたはグルタミン酸特異的エンドプロテアーゼ等の別のプロテアーゼとのインキュベーションに供することもできる。必要な場合、トリペプチドMAPおよびITPの特異的親水性/疎水性特性を利用するその後の精製工程によって対生物作用成分MAPおよび/またはITPの濃度をさらに増大させることができる。好ましい精製方法としては、ナノろ過(サイズに基づく分離)、蒸発/沈殿が後に続く、例えばヘキサンもしくはブタノールでの抽出、または得られる酸性化加水分解物をアンバーライト(Amberlite)XAD範囲(ローム(Roehm))からのクロマトグラフィー樹脂と接触させることが挙げられる。また、ファルマシア(Pharmacia)によって供給されるようなブチル−セファロース樹脂を用いてもよい。
実施例7において、本発明者らは、新しいペプチド精製プロセスと組み合わせて黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼを用いて調製されたカゼイン加水分解物中の新しいACE阻害ペプチドMAPおよびITPの同定を説明する。高い割合の非対生物作用ペプチドの除去ならびに高度に洗練された分離および同定装置と組み合わせた、この単一および(本質的に純粋な)エンドプロテアーゼの使用によってのみ、これらの新しいACE阻害トリペプチドを追跡および同定することができた。実施例7(沈殿後)に従って調製されたカゼイン由来対生物作用ペプチド(CDBAP)において、2.9mg MAP/g CDBAP(CDBAP中4.8mg MAP/gタンパク質)および0.9mg ITP/g CDBAP(CDBAP中1.4mg ITP/gタンパク質)に対応する量で、トリペプチドMAPおよびITPが同定された。CDBAPのさらなる特徴は、その、モル基準で24%の、非常に高いプロリン含有量である。実施例7に記載される試験は、改変マツイ(Matsui)試験での2つの新しいトリペプチドの非常に低いIC50値、すなわちMAPで0.5μmol/lおよびITPで10μmol/lを示す。この発見は、公知の最も有効な天然のACE阻害ペプチドの1つであるIPPがこの改変マツイ(Matsui)試験において2.0μmol/lのIC50値を有することに気づくと、さらにより驚くべきことである。
本プロセスによると、タンパク質中に存在する−M−A−P−または−I−T−P−配列の、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%が、それぞれトリペプチドMAPまたはITPに転換される。
新規に同定されたACE阻害ペプチドMAPおよびITPの有用性は、実施例8にさらに説明される。後者の実施例において、本発明者らは、両方のペプチドが、胃腸管内で典型的に見られる消化条件をシミュレートするインキュベーション条件で残存することを示す。これらのデータに基づいて、本発明者らは、新規のトリペプチドが哺乳動物(例えばヒト)胃腸管で残存するようであり、高血圧症の治療に使用された場合、相当な経済的潜在性を含意すると結論付ける。
実施例9において、本発明者らは、優れたACE阻害ペプチドMAPは、酵素加水分解実験において生成することができるだけでなく、適当な食品グレード微生物で発酵させた乳調製物中でも検出可能であることを示す。しかしながら、本発明者らは、かかる発酵製品中でペプチドITPの存在を示すことができなかった。
さらなる(例えばクロマトグラフィー精製工程の前または後のいずれかに得られるペプチドMAPおよび/またはITPを、定期的に広く消費される食品への組み込みのために使用してもよい。かかる製品の例は、マーガリン、スプレッド、バターもしくはヨーグルト等の種々の乳製品または乳もしくはホエー含有飲料である。かかる組成物は、典型的にはヒトに投与されるが、これらはまた、高血圧症を軽減するために、動物、好ましくは哺乳動物に投与されてもよい。さらに、得られる製品中の高濃度のACE阻害ペプチドによって、これらの製品は、丸剤、錠剤または高度に濃縮された溶液もしくはペーストまたは散剤の形態の栄養補助食品への組み込みに非常に有用になる。ACE阻害ペプチドの継続的放出を確実にする持続放出性栄養補助食品が、特に重要である。本発明によるMAPおよび/またはITPペプチドは、例えば丸剤、錠剤、顆粒剤、小袋またはカプセル剤中の乾燥粉末として製剤化されてもよい。あるいは、本発明による酵素は、例えばシロップ剤またはカプセル剤中の液体として製剤化されてもよい。種々の製剤中で使用され、本発明による酵素を含む組成物はまた、生理学的に許容され得る担体、佐剤、賦形剤、安定剤、バッファーおよび希釈剤からなる群の少なくとも1つの化合物を組み込んでもよく、これらの用語は、それらの元来の意味で使用されて、包装、送達、吸収、安定化を補助するか、または佐剤の場合、酵素の生理学的効果を増強する、物質を示す。粉末形態の本発明による酵素と組み合わせて使用することができる種々の化合物に関する関連のあるバックグラウンドは、「Pharmaceutical Dosage Forms」、第2版、第1、2および3巻、ISBN0−8247−8044−2マルセルデッカー社(Marcel Dekker,Inc.)に見ることができる。乾燥粉末として製剤化された、本発明によるACE阻害ペプチドは、やや長期間保存することができるが、例えばアルミニウムブリスター等の適した包装を選択することによって、湿気または湿った空気への接触は避けるべきである。比較的新しい経口適用形態は、種々の型のゼラチンカプセル剤またはゼラチンベースの錠剤の使用である。
高血圧症に対抗するための天然のACE阻害ペプチドの関連性の観点から、本発明の、新しく費用効果の高い経路は、穏やかな降圧性の食事またはさらには動物用製品のための、魅力的な出発点を提供する。本経路はまた、驚くほど単純な精製工程も含むので、血圧降下濃縮栄養補助食品の可能性もまた、拡大される。
本発明による、または本発明に従って使用される、プロリン特異的エンドプロテアーゼによって、国際公開第02/45524号パンフレットの請求項1〜5、11および13で言及されているポリペプチドを意味する。したがって、このプロリン特異的エンドプロテアーゼは、
(a)配列番号2のアミノ酸1〜526またはその断片と、少なくとも40%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、
(b)(i)60ヌクレオチドにわたって、好ましくは100ヌクレオチドにわたって、少なくとも80%または90%同一な、より好ましくは200ヌクレオチドにわたって少なくとも90%同一な、配列番号1の核酸配列もしくはその断片、または(ii)配列番号1の核酸配列に相補的な核酸配列と低ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド
からなる群より選択される、プロリン特異的エンド型タンパク質分解活性を有するポリペプチドである。配列番号1および配列番号2は、国際公開第02/45524号パンフレットに示されている通りである。好ましくは、ポリペプチドは、単離された形態である。
本発明に従って使用される、好ましいポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1〜526と、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、さらに最も好ましくは少なくとも約97%の同一性を有する、または配列番号2のアミノ酸配列を含む、アミノ酸配列を有する。
好ましくは、ポリペプチドは、(i)配列番号1の核酸配列もしくはその断片、または(ii)配列番号1の核酸配列に相補的な核酸配列と低ストリンジェンシー条件下、より好ましくは中ストリンジェンシー条件下、最も好ましくは高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする、ポリヌクレオチドによってコードされる。
用語「ハイブリダイズすることができる」は、本発明の標的ポリヌクレオチドが、プローブとして使用される核酸(例えば、配列番号1に示されるヌクレオチド配列、もしくはその断片、または配列番号1の相補物)に、バックグラウンドよりも有意に高いレベルでハイブリダイズできることを意味する。本発明はまた、本発明のプロリン特異的エンドプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド、ならびにそれに相補的なヌクレオチド配列を含む。ヌクレオチド配列は、RNAでもDNAでもよく、ゲノムDNA、合成DNAまたはcDNAを含む。好ましくは、ヌクレオチド配列はDNAであり、最も好ましくはゲノムDNA配列である。典型的には、本発明のポリヌクレオチドは、選択的条件下で配列番号1のコード配列またはコード配列の相補物にハイブリダイズすることができる、連続したヌクレオチドの配列を含む。かかるヌクレオチドは、当該分野で周知の方法に従って合成することができる。
本発明のポリヌクレオチドは、配列番号1のコード配列またはコード配列の相補物に、バックグラウンドよりも有意に高いレベルでハイブリダイズすることができる。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、例えば、cDNAライブラリー中に存在する他のcDNAのために、起こる場合がある。本発明のポリヌクレオチドと配列番号1のコード配列またはコード配列の相補物との間の相互作用によって発生するシグナルレベルは、典型的には、他のポリヌクレオチドと配列番号1のコード配列との間の相互作用よりも、少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍強い。相互作用の強度は、例えば、プローブを、例えば32Pで放射性同位元素標識することによって、測定してもよい。選択的ハイブリダイゼーションは、典型的には、低ストリンジェンシー(約40℃で、0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)、中ストリンジェンシー(例えば、約50℃で、0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)または高ストリンジェンシー(例えば、約60℃で、0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)の条件を用いて達成してもよい。
UWGCGパッケージは、同一性の計算に使用することができるBESTFITプログラムを提供する(例えば、そのデフォルト設定に基づいて使用される)。
PILEUPおよびBLAST Nアルゴリズムもまた、配列同一性を計算するのに、または(例えばそれらのデフォルト設定に基づいて、同等または対応する配列を同定すること等の)配列を並べるのに使用することができる。
BLAST解析を行うためのソフトウエアは、全米バイオテクノロジー情報センター(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)によって、公的に入手可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列中の同じ長さの文字列と整列させた場合にいくつかの正の値の閾値スコアTに適合するか、または満たすかのいずれかの、クエリー配列中の長さWの短い文字列を同定することによって、高スコア配列対(HSP)を同定することを伴う。Tは、近縁ワードスコア閾値と呼ばれる。これらの最初の近縁ワードヒットは、それらを含むHSPを見つけるための検索を開始するためのシードとして作用する。ワードヒットは、累積アラインメントスコアが増大できる限りは、各配列に沿って両方向に延長される。各方向へのワードヒットの延長は、累積アラインメントスコアが、その最大の得られた値から量Xだけ低下した場合、1つ以上の負のスコアの残基アラインメントの累積によって累積スコアがゼロ以下になった場合、または配列のいずれかの末端に達した場合に中止される。BLASTアルゴリズムパラメータであるW、TおよびXは、アラインメントの感度および速度を判定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11の文字列長(W)、50のBLOSUM62スコア行列アラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両方の鎖の比較を使用する。
BLASTアルゴリズムは、2つの配列の間の類似性の統計的解析を行う。BLASTアルゴリズムによって提供される、ある類似性の測定は、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の適合が偶然生じる確率の指標を提供する、最小の合計の確率(P(N))である。例えば、配列は、第一の配列と第二の配列との比較における最小の合計の確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満である場合に、別の配列と類似していると見なされる。
アスペルギルス属の株は、食品グレードの状態を有し、これらの微生物由来の酵素は、疑われていない食品グレードの供給源に由来する。別の好ましい実施形態によると、酵素は、分泌されない、いわゆる細胞質酵素よりむしろ、その産生細胞によって分泌される。このようにして、酵素を、高価な精製工程なしに、本質的に純粋な状態で、細胞ブロスから回収することができる。好ましくは、酵素は、一般のpHおよび温度条件下で、その基質に対して、高い親和性を有する。
[材料および方法]
[材料]
食用カゼイン酸カリウムスプレー(88%)を、オランダのDMVインターナショナル(DMV International,The Netherlands)から入手した。合成色素形成ペプチドを、オランダのペップスキャンシステムズ社(Pepscan Systems B.V.,The Netherlands)またはスイスのバッヘム(Bachem,Switzerland)から入手した。
黒色アスペルギルス由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼ
黒色アスペルギルス由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼの過剰産生を、国際公開第02/45524号パンフレットに記載されているように達成した。クエン酸塩/二リン酸ナトリウムバッファーpH4.6中、37℃で、合成ペプチドZ−Gly−Pro−pNAに関して、酵素の活性を試験した。反応生成物を、405nMで、分光光度計によってモニタリングした。単位を、これらの試験条件下で1分あたり1μmolのp−ニトロアニリドを遊離させる酵素の量として定義する。
[黒色アスペルギルス由来エンドプロテアーゼの、クロマトグラフィーによる精製]
過剰産生している黒色アスペルギルス株から得られた培養ブロスを、混入している任意のエンド型およびエキソ型タンパク質分解活性を除去するための、プロテアーゼのクロマトグラフィーによる精製に使用した。そのため、発酵ブロスをまず遠心分離して、真菌の塊の大部分を除去し、次いで上清を、減少していく孔サイズを有するいくつかのフィルターに通過させて、全ての細胞断片を除去した。最後に、得られた限外ろ過液を20mmol/lの酢酸ナトリウムpH5.1中で10倍希釈し、Q−セファロース(Q−Sepharose)FFカラムにアプライした。20mmol/lの酢酸ナトリウムpH5.1中、0〜0.4mol/lのNaClのグラジエントでタンパク質を溶出させた。World Journal of Microbiology & Biotechnology 11、209〜212頁(1995年)に記載されているプロトコールに従うがわずかに改変したアッセイ条件下で、Z−Gly−Pro−pNAの切断に対する活性を示していたピーク画分を収集し、貯蔵した。黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの酸性の最適pHを考慮して、酵素アッセイを、37℃で、クエン酸塩/二リン酸ナトリウムバッファー中、pH4.6で行った。活性画分の貯蔵と、それに続く濃縮によって、最終的に、SDS−PAGEの単一のバンドおよびHP−SECでの1つのピークのみを示す調製物を生じた。疎水性相互作用クロマトグラフィーによるさらなる分析によって、得られた酵素調製物の純度を確認した。
[IPP、LPPおよびVPPの検出において使用されるLC/MS/MS分析]
本発明の酵素混合物によって生成された、酵素によるタンパク質加水分解物中の、目的のペプチド、中でもトリペプチドIPP、LPPおよびVPPの定量において、P4000ポンプ(サーモクエスト(Thermoquest)(登録商標)、オランダ、ブレダ(Breda,the Netherlands))に結合させたイオントラップ質量分析計(サーモクエスト(Thermoquest)(登録商標)、オランダ、ブレダ(Breda,the Netherlands))を用いたHPLCを使用した。形成されたペプチドを、溶出のためのミリQ(Milli Q)水(ミリポア、米国マサチューセッツ州ベッドフォード(Millipore,Bedford,MA,USA))中の0.1%ギ酸(溶液A)およびアセトニトリル中の0.1%ギ酸(溶液B)のグラジエントと組み合わせたイナートシル(Inertsil)3ODS3、3μm、1502.1mm(バリアン・ベルジウム、ベルギー(Varian Belgium,Belgium))カラムを用いて分離した。グラジエントは溶液Aの100%で開始し、それを5分間維持し、10分で5%Bに線形に増大させ、続いて30分で溶液Bの45%に線形に増大させ、直ちに開始時の条件にし、それを15分間安定化のために維持した。使用した注射体積は50μlであり、流速は200μl/分であり、カラム温度は55℃で維持した。注射した試料のタンパク質濃度は、およそ50μg/mlであった。
個々のペプチドに関する詳細な情報は、約30%の最適衝突エネルギーを用いて、目的のペプチドの専用のMS/MSを用いることによって得た。個々のペプチドの定量は、MS/MSモードで観察される最も豊富な断片イオンを用いることによって、外部較正を用いて行った。
トリペプチドLPP(M=325.2)を用いて、MSモードでの最適感度およびMS/MSモードでの最適断片化を調整し、5μg/mlの一定の注入を行い、MSモードでプロトン化分子を生じ、MS/MSモードで約30%の最適衝突エネルギーを生じ、B−およびY−イオン系列を生じた。
LC/MS/MSの前に、酵素によるタンパク質加水分解物を周囲温度および13000rpmで10分間遠心分離し、0.22μmフィルターを通してろ過し、上清をミリQ(Milli Q)水で1:100に希釈した。
[ケルダール窒素]
フローインジェクション分析によって、全体的なケルダール窒素を測定した。TKN法カセット5000−040を備えたテカター(Tecator)FIASTAR5000フローインジェクションシステム、SOFIAソフトウエアを有するペンティアム(Pentium)4コンピュータ、およびテカター(Tecator)5027オートサンプラーを使用して、タンパク質含有溶液から放出されたアンモニアを590nmで定量した。方法のダイナミックレンジ(0.5〜20mgのN/l)に対応する試料の量を、95〜97%硫酸およびケルダールとともに消化チューブに入れ、200℃で30分間と、それに続く360℃で90分間の消化プログラムに供する。FIASTAR5000システムへの注入の後、測定されたタンパク質の量を推定することができる窒素ピークを測定する。
[アミノ酸分析]
正確に計量したタンパク質性物質の試料を希酸中で溶解させ、エッペンドルフ(Eppendorf)遠心分離機による遠心分離によって沈殿を除去した。ウォーターズ(Waters)(米国マサチューセッツ州ミルフォード(Milford MA,USA))のアミノ酸分析システムの操作手引きで特定されているようなピコタグ(PicoTag)法に従って、透明な上清でアミノ酸分析を行った。そのため、適した試料を液体から得、次いで、乾燥させ、気相酸加水分解に供し、フェニルイソチオシアネートを用いて誘導体化した。存在する、種々の誘導体化されたアミノ酸を、HPLC法を用いて定量し、合計して、計量された試料中の遊離アミノ酸の総レベルを計算した。アミノ酸CysおよびTrpは、この分析で得られるデータに含まれない。
タンパク質加水分解物の加水分解度(DH)を、迅速なOPA試験を用いて測定し、記載されているように計算した(ニールセン(Nielsen)ら、JFS、第66巻、5号、642〜646頁、2001年)。
[加水分解物中に存在するペプチドおよびタンパク質の分子量分布]
高圧ポンプ、10〜100μlの試料を注入することができる注入装置および214nmでカラム流出をモニタリングすることができるUV検出器を備えた自動化HPLCシステムで、プロテアーゼ処理タンパク質試料のペプチドサイズ分布の分析を行った。
この分析に使用したカラムは、20mMリン酸ナトリウム/250mM塩化ナトリウムpH7.0バッファーで平衡化したスーパーデックスペプチド(Superdex Peptide)HR 10/300 GL(アマシャム(Amersham))であった。試料(典型的には50μl)を注入した後、バッファーで90分間、0.5ml/分の流速でカラムから種々の成分を溶出させた。シトクロムC(分子量13500Da)、アプロチニン(分子量6510Da)およびテトラグリシン(分子量246Da)の混合物を分子量マーカーとして用いて、システムを較正した。
[実施例]
[実施例1]
黒色アスペルギルスから得られた酵素は、新しいクラスのプロリン特異的酵素を表す。
国際公開第02/45524号パンフレットに提供されている黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼのコード配列全体から、526アミノ酸のタンパク質配列を決定することができる。酵素の新規性は、スイスプロット(SwissProt)、PIRおよびtrEMBL等のデータベースのBLASTサーチによって確認した。本発明者らが驚いたことに、黒色アスペルギルス酵素と公知のプロリルオリゴペプチダーゼとの間に、明らかな相同性は検出できなかった。しかしながら、アミノ酸配列の、より密接な観察から、Pro−Xカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16.2)、ジペプチジルアミノペプチダーゼI(EC3.4.14.2)、および胸腺特異的セリンプロテアーゼに対する、低いが有意な相同性が明らかになった。これらの酵素の全ては、セリンペプチダーゼのファミリーS28に割り振られている。また、活性部位セリンの周りのGxSYxG配置は、これらの酵素と黒色アスペルギルス由来エンドプロテアーゼとの間で保存されている。また、ファミリーS28のメンバーは、酸性の最適pHを有し、プロリン残基のカルボキシ末端側で切断する特異性を有し、シグナル配列、およびちょうど黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼ等のプロペプチドとともに、合成される。また、黒色アスペルギルス酵素のサイズは、ファミリーS28のメンバーのものと類似している。したがって、黒色アスペルギルスプロリン特異的エンドプロテアーゼは、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(Flavobacterium meningosepticum)から得られる酵素を含むほとんどの細胞性プロリルオリゴペプチダーゼがグループ分けされているS9ファミリーよりむしろ、セリンプロテアーゼのファミリーS28のメンバーであるようである。これらの構造的および生理学的特性に基づいて、本発明者らは、黒色アスペルギルス酵素が、セリンプロテアーゼのS9ファミリーよりむしろ、S28に属すると結論付けた。黒色アスペルギルス由来酵素を、S9ファミリーに属するプロリルオリゴペプチダーゼから識別するさらなる特性は、前者のファミリーに属する細胞質プロリルエンドプロテアーゼとは異なり、新しく同定された黒色アスペルギルス酵素は、増殖培地中に分泌されることである。これは、低級真核生物由来の、ファミリーS28のメンバーの単離および特徴付けに関する、最初の報告である。
[実施例2]
[黒色アスペルギルスから得られたプロリン特異的エンドプロテアーゼの最適pHおよび温度]
黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの最適pHを確立するために、異なるpH値を有するバッファーを調製した。0.05mol/lの酢酸Naおよび0.02MのCaCl2を用いてpH4.0−4.5−4.8−5.0−5.5および6.0のバッファーを作製し、0.02MのCaCl2を含む0.05MのTris/HClバッファーを用いてpH7.0および8.0のバッファーを作製した。それぞれ酢酸およびHClを用いてpH値を調節した。色素形成合成ペプチドZ−Gly−Pro−pNAを基質として使用した。バッファー溶液、基質溶液およびプロリルエンドプロテアーゼプレ希釈(0.1U/mLの活性で)を、水浴中で正確に37.0℃まで加熱した。混合した後、反応を分光光度計によって405nm、37℃で3.5分間追跡し、0.5分ごとに測定した。図1に示される結果から、黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼが約4の最適pHを有することが明らかである。
また、プロリルエンドプロテアーゼの最適温度を確立した。そのため、精製された酵素調製物を、0.02mol/l CaCl2を含有する0.1mol/l酢酸Na中、pH5.0で2時間、カゼインレゾルフィン(ロシュ(Roche)バーション3)を基質として用いて異なる温度でインキュベートし、574nmで測定することによって酵素活性を定量した。得られた結果によると、黒色アスペルギルス由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼは、およそ50℃の最適温度を有する。
[実施例3]
黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼの特異性および純度
複数コピーの発現カセットを含む、黒色アスペルギルス株から得られた、そのまま、ならびにクロマトグラフィーによって精製された酵素試料(国際公開第02/45524号パンフレット参照)を、色素形成ペプチド基質の組に対して試験して、コードされるエンドプロテアーゼの特異性を確立した。異なる組の色素形成ペプチドを使用して、可能性のある混入している酵素活性の存在を確立した。コードされるエンドプロテアーゼのエンド型タンパク質分解特異性を、異なるAla−Ala−XpNA(AAXpNA)基質で試験した。この文脈において、「X」は、異なる天然アミノ酸残基をいい、「pNA」はp−ニトロアニリドをいう。分子の「X」残基とpNA部分との間のペプチド結合の切断は、λ=405または410nmでの吸光度の増大によってモニタリングすることができる色の変化を引き起こす。AAXpNA基質。そのため、AXX−pNA基質のストック溶液(150mmol/l)を、20 CaCl2を含有する0.1M酢酸塩バッファーpH4.0中で100倍希釈した。TECAN ゲニオス(Genios)MTPリーダー(ウィーン、ザルツブルグ(Salzburg,Vienna))において、405nmで10分間の運動測定によって、エクセルでのデータ処理によって図2に示される画像を生じる、光学密度の増大が記録された。結果から、黒色アスペルギルス由来エンドプロテアーゼが、アラニル結合に対する副活性ありで、プロリルペプチド結合に対して高度に特異的であることが明らかである。そのまま、およびクロマトグラフィーによって精製された調製物は、同様の活性プロフィールを示した。
黒色アスペルギルス由来エンドプロテアーゼの、外来性酵素活性での可能性のある混入は、いくつかの望ましくない副反応につながる。例えば、カルボキシペプチダーゼまたはアミノペプチダーゼ等の等のエキソプロテアーゼの存在は、増大したレベルの遊離アミノ酸を有するペプチド調製物を生じる。これらの余分の遊離アミノ酸は、存在する対生物作用ペプチドの相対的濃度を希釈し、さらに、メイラード反応の増大の結果として肉臭い味を与える。過剰発現されたプロリン特異的エンドプロテアーゼの調製物中に、深刻なレベルの、混入しているエンドプロテアーゼが存在する場合、プロリンまたはアラニン残基のカルボキシ末端以外の切断部位が導入される。かかる余分の切断部位は、余分のペプチドを生じ、また、カルボキシ末端プロリン残基を有する対生物作用ペプチドの濃度を希釈する。これら全ての望ましくない副反応を最小限にするために、本質的に純粋なとは、プロリン特異的エンドプロテアーゼの使用が好ましい。本質的に純粋な、使用されるインキュベーション条件下での、混入しているエンドプロテアーゼならびに混入しているエキソペプチダーゼの活性が最小限であるか、または好ましくはないことを意味する。以下の試験手順を考案して、かかる混入しているエンドおよびエキソペプチダーゼ活性を定量した。
試験手順のための基礎を、種々の選択的色素形成ペプチドの収集によって形成する。プロリン特異的オリゴおよびエンドプロテアーゼのみが、ペプチドZ−AAAP−pNAからpNAを放出させることができるので、この特定のペプチドを用いて、所望のプロリン特異的エンド型タンパク質分解活性を定量した。多くのエンドプロテアーゼがペプチドZ−AAAF−pNAおよびZ−AAAR−pNAからpNAを放出させることができるので、これらの2つのペプチドを用いて、混入している、非プロリン特異的エンド型タンパク質分解活性を定量した。
多くのアミノペプチダーゼが、ペプチド基質からPheおよびGlnを効率的に放出させることができるので、色素形成ペプチドQ−pNAおよびV−pNAを用いて、混入しているアミノペプチダーゼ活性を定量した。
多くのカルボキシペプチダーゼが、ペプチド基質からPheおよびArg残基を放出させることができるので、これらの残基を含むペプチドを選択して、混入しているカルボキシペプチダーゼ活性を定量した。しかしながら、カルボキシペプチダーゼ活性を測定するための、適した色素形成基は入手できないので、合成ペプチドZ−AFおよびZ−ARを用いた代替的方法を開発しなければならなかった。この代替的方法を、下記に提供する。使用した全ての合成ペプチドにおいて、「Z」はベンジルオキシカルボニルを表し、「pNA」は発色団パラ−ニトロアニリドを表す。全ての色素形成ペプチドは、ペップスキャン(Pepscan)(オランダ、レリスタット(Lelystad,The Netherlands))から入手した。ペプチドZ−AFおよびZ−ARは、バッヘム(Bachem)(スイス(Switzerland))から購入した。全てのインキュベーションは、40℃で行った。希釈した酵素調製物を、商業的製品の濃度に再計算した。
産業上利用可能な酵素調製物中に規則的に存在する種々の酵素活性のレベルを説明するために、この実施例において、本発明者らは、3つの商業的酵素調製物、すなわち、フレーバーザイム(Flavourzyme)1000LバッチHPN00218(ノボザイム(Novozyme))、スミザイム(Sumizyme)FP(新日本、日本(Shin Nihon,Japan))およびコロラーゼ(Corolase)LAP Ch.:4123(ABエンザイムス、英国(AB Enzymes,UK))の、それらの種々のタンパク質分解活性についての試験を説明する。フレーバーザイムおよびスミザイムFPの両方とも、非特異的エンド型タンパク質分解およびカルボキシペプチド分解活性の他に、いくつかのアミノペプチド分解酵素活性を含む、複雑な酵素調製物として公知である。コロラーゼLAPは、アスペルギルス由来の、比較的純粋な、クローニングおよび過剰発現された、ロイシンアミノペプチダーゼ活性を表す。
[アミノペプチダーゼ活性の測定]
100%DMSO中の150mmol/lのF−pNAおよびQ−pNAのストック溶液を、0.1M BisTrisバッファーpH6中で80倍希釈して、F−pNAおよびQ−pNAを1:1の比で含有する3.75mmol/l F−pNA+Q−pNA基質溶液を作製した。このアミノペプチダーゼ基質溶液の200μlのアリコートを、マイクロタイタープレート(MTP)の別々のウェルにピペットで入れた。MTPを、マゼラン(Magellan)4ソフトウエアで稼動しているテカン・ゲニオス(Tecan Genios)MTP(ウィーン、ザルツブルグ(Salzburg,Vienna))中、40℃でプレインキュベートした。3mMの基質濃度でインキュベーションが起こるように、50μlの適当な酵素溶液を加えることによって反応を開始させた。典型的には、液体酵素試料、フレーバーザイム、コロラーゼLAPおよびプロリン特異的エンドプロテアーゼの1:50希釈を使用した。乾燥スミザイムFP製品のうち、1%溶液を使用した。
アミノ酸−pNA結合の切断の結果として発生する、テカン・ゲニオスMTPによって405nmで測定した黄色を、少なくとも20運動サイクルの間(約10分間)追跡した。ソフトウエアから、OD405/分として得られるデータを生じた。
[プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性の測定]
測定を、アミノペプチダーゼアッセイと本質的に同じように行ったが、この場合は、Z−AAAP−pNAを唯一の基質として、3mmol/lの終濃度で使用した。懸濁液をpH6バッファー中50〜55℃で加熱することによって、この基質を可溶化させ、室温で透明な溶液を生じた。測定を40℃で行った。
典型的には、液体酵素試料フレーバーザイムおよびコロラーゼLAPの1:50希釈を使用した。スミザイムFPは1%溶液で使用した。プロリン特異的エンドプロテアーゼは、典型的には、1:5000希釈で使用した。
ソフトウエアから、OD405/分としてデータを生じた。
[混入している非プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性の測定]
この測定も、アミノペプチダーゼアッセイについて記載されているのと本質的に同じように行ったが、この試験においては、Z−AAAF−pNAおよびZ−AAAR−pNAを1:1の比および3mmol/lの終濃度で基質として使用した。基質Z−AAAF−pNAは、使用したpH6.0試験条件下で可溶性が乏しいことがわかったが、サブチリシンとの試験インキュベーションは、pNA放出と同時の、基質の迅速な可溶化を生じた。測定は、40℃で行った。しかしながら、この乏しい可溶性を補償するために、MTPリーダーをプログラムして、運動サイクルの間で振とうさせた。
ここでも、ソフトウエアから、OD405/分としてデータを生じた。
[混入しているカルボキシペプチダーゼ活性の測定]
カルボキシペプチダーゼ活性を測定するための感度の高い色素形成ペプチドが入手できないので、カルボキシペプチダーゼCの定量のためのベーリンガープロトコールに基づき、方法を使用した。
2つの、エタノール中のZ−A−FおよびZ−A−Rの150mmol/lストック溶液を、0.1mol/l BisTrisバッファーpH6中で80倍希釈して、Z−A−FおよびZ−A−Rを1:1の比で含有する3.75mmol/l Z−A−F+Z−A−R基質溶液を作製した。次いで、200μlの基質溶液を、ピペットでエッペンドルフバイアルに入れ、40℃でプレインキュベートした。50μlの適当な酵素希釈を加えることによって、反応を開始させた。典型的には、フレーバーザイムおよびコロラーゼLAPおよびプロリン特異的エンドプロテアーゼの1:50希釈を使用した。スミザイムFPについては、1%溶液を使用した。5分後、250μlのニンヒドリン試薬を加えることによって、反応を停止させた。ニンヒドリン試薬は、15mlのDMSOに溶解させた400mgのニンヒドリン(メルク(Merck))および60mgのヒドリンダンチンでできており、そこに5mlの4.0mol/l酢酸リチウムバッファーpH5.2を加えた。4.0mol/l酢酸リチウムバッファーは、LiOH(シグマ(Sigma))を溶解させ、その後氷酢酸(メルク)を用いて溶液のpHをpH5.2に調節することによって、作製した。
反応を停止させた後、各試料を95℃で15分間加熱して、色形成を促進し、続いて、純粋なエタノールで10倍希釈した。形成された色を、ユビコン(Uvikon)分光光度計において、578nmで測定した。活性試料と同様にブランクを作製したが、ニンヒドリン試薬および酵素添加は逆転させた。カルボキシペプチダーゼ活性によって生じた遊離アミノ酸の量を定量するために、アミノ酸L−フェニルアラニンを用いて、較正曲線を作成した。0.1875、0.375、0.75、1.5および3.0mmol/lのL−フェニルアラニン(シグマ)を含有するバッファーpH6中の溶液を、試料と同様に、すなわち250μlバイアル中で処理した。得られたOD578値から、エクセルで曲線を構築した。Z−A−FおよびZ−A−R基質を含む試料中に存在する遊離アミノ酸の濃度を、この曲線を用いて計算した。得られた値から、試験した酵素の量あたりのμmol/分でカルボキシペプチダーゼ活性を計算した。
[活性比の計算]
本発明による方法のための種々の酵素調製物の適合性を確立するために、関連性のある酵素活性の比率を計算した。MTPリーダーベースのアッセイにおいて、酵素活性は、経時的なpNA放出によって、すなわちΔOD405/分として、特徴付けられる。MTPリーダーによって得られた酵素活性の比率を、単純に同一の量の酵素で得られたΔOD/分値で割ることによって計算した。
しかしながら、カルボキシペプチダーゼアッセイの場合、MTP−pNAベースのアッセイによって生じるΔOD/分と直接比較できないODが生じる。ここで、測定されたODを、まず、1分間あたりに放出されたμmolアミノ酸(μmol/分)に変換した。次いで、放出されたpNAのΔOD/分をμmol/分に変換した。そのため、純粋なpNA(シグマ)の希釈0.25、0.125、0.0625、0.0312および0.015mmol/lおよびMTPリーダーで較正曲線を生じ、ウェルあたり250μlを測定した。得られたデータから、エクセルで較正曲線を構築した。pNAベースの測定値をニンヒドリンベースの測定値と比較できるように、この較正曲線から、ΔOD/分をμmol/分に変換した。
上述の試験で生じたデータに基づいて、使用した種々の酵素調製物を、望ましいプロリン(およびアラニン)特異的活性ならびに混入しているエンドプロテアーゼ、アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼ活性に関して特徴付けた。各酵素調製物中に存在するプロリン特異的オリゴまたはエンド型タンパク質分解活性に関するデータを、表1中、「プロリン特異的活性」欄に示す。混入しているアミノペプチダーゼ活性(AP/プロリン特異的活性)、混入しているカルボキシペプチダーゼ(CPD/プロリン特異的活性)および混入しているエンド型タンパク質分解活性(エンド/プロリン特異的活性)に関するデータを、存在するプロリン特異的活性に関して示す。各調製物中に存在する、混入しているカルボキシペプチダーゼ活性に関する、混入しているアミノペプチダーゼ活性のレベルを、(AP/CPD)として示す。
試験した商業的酵素調製物のうち、任意のプロリン特異的オリゴまたはエンド型タンパク質分解活性を含むものがないことが明らかである。さらに、試験した全ての商業的酵素調製物は、相当な混入しているエンド型またはエキソ型タンパク質分解活性を含む。
Figure 2008539204
[実施例4]
黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼは、大きいタンパク質ならびに小さいペプチドを加水分解することができ、したがって真のエンドプロテアーゼである。
特異的な構造上の特性のために、S9ファミリーに属するプロリルオリゴペプチダーゼは、30アミノ酸より大きいペプチドを消化することができない。この制限は、種々のタンパク質を可能な限り迅速かつ効率的に加水分解しなければならない酵素にとって明らかな不利益である。黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼが、基質分子の大きさに関して同じ制限を示すかどうかを調べるために、本発明者らは、黒色アスペルギルス由来の、クロマトグラフィーによって精製したプロリルエンドペプチダーゼを、小さい合成ペプチドとともに、および大きいオボアルブミン分子とともにインキュベートし、形成された加水分解産物をSDS−PAGEによって分析した。
使用した合成ペプチドは、配列NH2−FRASDNDRVIDPGKVETLTIRRLHIPR−COOHの27マーであり、ペップスキャン(Pepscan)社(オランダ、レリスタット(Lelystad,The Netherlands))から贈られた。そのアミノ酸配列によって示されるように、このペプチドは、2つのプロリン残基を、一方を中央に、一方をペプチドの最末端に含む。
インタクトなオボアルブミン分子(ピアス・イムジェクト(Pierce Imject)、20mgの凍結乾燥物質を含むバイアル)は、分子量が42750Daの、385アミノ酸からなる。この分子は、14個のプロリン残基を含み、その一つは分子の最C末端に位置し、プロリン特異的エンドプロテアーゼによって切断することができない。
オボアルブミンおよびオリゴペプチドを、精製された黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼとともに、50℃で別々にインキュベートした。いくらかの時間間隔で、試料を採取し、次いでそれをSDS−PAGEを用いて分析した。
4.5単位/mlの活性を有する、クロマトグラフィーによって精製された黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼを、20mM CaCl2を含有する0.1M酢酸塩バッファーpH4で100倍希釈した。オボアルブミンを、酢酸塩バッファーpH4中に、1mg/ml(22μM)の濃度まで溶解させた。27マーを、0.48mg/ml(152μM)の濃度に達するまで、同じバッファー中に溶解させた。オボアルブミンおよび27マー溶液のモル濃度を、両方の溶液が切断可能なプロリン残基の同じモル濃度を含むように選択した。オボアルブミンは、13個の潜在的なプロリン切断部位を含むが、27マーペプチドは、2つしか有さない。両方の基質溶液のうち、0.5mlを、エッペンドルフ(Eppendorf)サーモミキサー中、50℃で、10μl(0.45ミリU)の酵素溶液とともにインキュベートした。いくらかの時間間隔で、10μlの試料をインキュベーション混合物から採取し、SDS−PAGEまで20℃で維持した。SDS−PAGEおよび染色に使用した全ての物質を、インビトロジェン(Invitrogen)から購入した。製造業者の使用説明書に従ってLDSバッファーを使用して試料を調製し、製造業者の使用説明書に従ってMES−SDSバッファー系を使用して、12%Bis−Trisゲルで分離した。染色は、シンプリー・ブルー・セイフ・ステイン(Simply Blue Safe Stain)(コロイド状クマシーG250)を使用して行った。
図3に見られるように、オボアルブミンは、アスペルギルス由来酵素によって、インキュベーションの最初の4.75時間で約35〜36kDの別個のバンドに切断される(レーン3)。長期のインキュベーション期間によって、種々の分子量の、より小さい生成物への、さらなる分解が生じる(レーン7)。
レーン2と比較して、レーン4、6および8の、よりかすかなバンドによって判断されるように、27マーペプチドもまた分解する。生成物の、非常に小さい分子量変化(レーン9および8を比較)は、ペプチドのカルボキシ末端でのアルギニン残基の切断による可能性が最も高い。差は約200D(アルファイメージャー(AlphaImager)2000システムでアルファイメージャー3.3dソフトウエアを使用して測定)であり、アルギニンは、174の分子量を有する。この小さい分子量変化は、おそらくは、ペプチドの分解における最初の段階である。
生成物のさらなる崩壊はまた、SDSゲルでのバンドの強度の減少によってのみ見られる。ゲルにおいて、約1000の分子量を有する成分の染色はクマシーブリリアントブルーでは可能でないので、さらなる崩壊の生成物は目に見えない。
この実験から、S9ファミリーに属する公知のプロリルオリゴペプチダーゼとは異なり、黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼは、より大きいタンパク質と比べて、小型のペプチドの切断に対して特異的選択性を有さないと結論付けることができる。このように、黒色アスペルギルス由来酵素は真のエンドプロテアーゼを表し、種々の型のタンパク質を加水分解するための好ましい酵素である。この発見は、以下の実施例に示されるような、酵素の驚くべき使用につながる。
[実施例5]
[カゼイン酸カリウムを黒色アスペルギルス由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼとともにインキュベートすることによってIPPおよびLPPが迅速に生じるが、VPPは生じない]
この実験において、黒色アスペルギルス由来の、過剰産生された、本質的に純粋なプロリン特異的エンドプロテアーゼを、カゼイン酸カリウムとともにインキュベートして、ACE阻害ペプチドIPP、VPPならびにLPPの遊離を試験した。使用したエンドプロテアーゼは、本質的に純粋であり、純粋なプロリン特異的エンドプロテアーゼに固有のエンド型タンパク質分解活性(すなわち、プロリンおよびアラニン残基のカルボキシ末端の切断)以外の有意なエンド型タンパク質分解活性が存在しないことを意味する。さらに、酵素調製物は、実施例3に記載されるように、有意なエキソ型タンパク質分解活性が全くない。
ACE阻害ペプチドの摂取の結果としてのナトリウム取り込みを可能な限り限定するために、カゼイン酸カリウムを、このインキュベーションにおいて基質として使用した。
カゼイン塩を、10%(w/w)タンパク質の濃度で65℃の水に懸濁し、その後、リン酸を用いてpHを6.0に調節した。次いで、懸濁液を55℃まで冷却し、黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼを、4単位/gのタンパク質の濃度で加えた(単位定義については、材料および方法の項参照)。継続的な撹拌下で、この混合物を24時間インキュベートした。この期間に、さらなるpH調節は行わなかった。1、2、3、4、8および24時間のインキュベーション後に試料を採取した。各試料について、試料を90℃まで5分間迅速に加熱することによって、酵素活性を終了させた。冷却後、リン酸を用いて各試料のpHを4.5まで迅速に低下させ、その後、ヘレウス(Hereaus)卓上遠心分離機中で懸濁液を5分間3000rpmで遠心分離した。完全に透明な上清を、LC/MS/MC分析に使用して、上清中のペプチドVPP、IPP、LPP、VVVPPおよびVVVPPFを定量した(材料および方法の項参照)。
牛乳カゼインは、β−カゼインおよびκ−カゼインを含むいくつかの異なるタンパク質を組み込む。公知のアミノ酸配列によると、β−カゼインは、ACE阻害トリペプチドIPP、VPPおよびLPPを包含する。β−カゼインにおいて、IPPは配列−P71−Q72−N73−I74−P75−P76−中に含まれ、VPPは配列−P81−V82−V83−V84−P85−P86−中に含まれ、LPPは配列−P150−L151−P152−P153−中に含まれる。κ−カゼインは、酸沈殿カゼイン塩調製物中にほとんど50%のβ−カゼイン濃度のモル濃度で存在し、IPPのみを包含する。κ−カゼインにおいて、IPPは、配列−A107−I108−P109−P110−中に含まれる。カゼインの他のタンパク質成分は、IPP、VPPまたはLPPのいずれも含まない。
表2および3は、インキュベーション混合物に添加したカゼイン酸カリウム1グラムあたりで計算した、酸性化および遠心分離された上清中に存在するペプチドの濃度を示す。表2に示されるように、IPPは、1時間のインキュベーション後にその最大濃度に達する。その上、IPP濃度はさらに増大はしない。ペンタペプチドVVVPPの形成は、IPPの生成と同じ速度論を示す。理論的に期待されるように、VVVPPのモル収率は、LPPペプチドのモル収率と同様である。LPPおよびVVVPPの両方の収率は、理論的に実行可能なもののほとんど60%に達する。3時間のインキュベーションの後にのみLPPの最大濃度に達するということから、β−カゼイン分子のその特定の部分の切断が、おそらくは、いくらか、より難しいことが示唆される。VVVPPと対照的に、ヘキサペプチドVVVPPFは、全く形成されない。この観察から、プロリン特異的エンドプロテアーゼが、−P−F−結合を効率的に切断し、それによってVVVPPを生じることが示唆される。トリペプチドIPPは、迅速に形成されるが、そのモル収率は、VVVPPまたはLPPのいずれの最大モル収率の約3分の1も超えない。IPPトリペプチドは、κ−カゼインのように両方のβ−カゼイン中に含まれるので、この結果は予想外である。この観察についての可能性のある説明は、プロリン特異的プロテアーゼがIPPを生じることができるが、カゼイン塩のκ−カゼイン部分からのみであるということである。κ−カゼインの関連性のあるアミノ酸配列に関して、このことから、−A107−I108−ペプチド結合が、酵素のアラニン特異的活性によって切断されることが示唆される。これが正しければ、遊離するIPPの量は、κ−カゼイン中に存在する量のおよそ40%に達するが、β+κカゼイン中に理論的に存在するIPPの約10%を超えない。IPPの切断のためのこの切断機序はまた、なぜVPPがその前駆体分子VVVPPから形成されることができないかを説明する。必要なエンド型タンパク質分解活性が、単純に、使用される黒色アスペルギルス由来酵素調製物中に存在しない。
Figure 2008539204
Figure 2008539204
[実施例6]
5倍濃度のACE阻害ペプチドにおける酸カゼイン沈殿工程結果の組み込み
実施例5に記載されているように、10%(w/w)タンパク質の濃度のカゼイン酸カリウムを、pH6.0での黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼとのインキュベーションに供した。種々のインキュベーション期間の後、試料を加熱してさらなる酵素活性を停止させ、その後、pHを4.5まで低下させて、カゼイン可溶性を最小限にした。低速遠心分離によって不溶性カゼイン分子を除去した。表2および3において、本発明者らは、10%タンパク質の初期濃度に基づいて計算したACE阻害ペプチドの濃度を提供している。しかしながら、酸性化およびその後の遠心分離工程の結果として、加えたタンパク質の大部分が除去されている。これらの減少した酸性化上清のタンパク質含有量を考慮して、窒素(ケルダール)分析を行った。後者のデータによると、種々の上清が、表4に示されるタンパク質レベルを含むことが見出された。
Figure 2008539204
これらのデータを考慮して、本発明者らは、各上清中に存在するACE阻害ペプチドの濃度を再計算したが、このとき、それらの実際のタンパク質含有量を使用した。これらの再計算したデータを表5に示す。
Figure 2008539204
表3および5に示されるデータの比較は、単純な酸性化工程、それに続く産業上実行可能な傾瀉、ろ過または低速遠心分離工程によって、特定のACE阻害ペプチドの濃度の5倍の増大が生じることを明らかに示す。
[実施例7]
[濃縮カゼイン加水分解物中の新規および潜在的ACE阻害トリペプチドMAPおよびITPの同定]
存在する対生物作用ペプチドのより徹底的な分析を容易にするために、純粋な黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼでの消化によって得られ、酸沈殿によって精製されたカゼイン加水分解物を、調製用規模で調製した。そのため、3000gのカゼイン酸カリウムを25リットルの75℃の水に懸濁した。徹底的な均質化の後、稀リン酸を用いてpHをゆっくり6.0に調節した。55℃まで冷却した後、黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼを、4酵素単位/gカゼイン塩の濃度で加えた(単位定義については、材料および方法の項参照)。3時間、55℃でのインキュベーション(撹拌しながら)の後、濃リン酸をゆっくり加えることによって、pHを4.5まで低下させた。このより大規模な調製において、プロセスのこの部分で、プロリン特異的エンドプロテアーゼを不活化するための熱処理工程を省いた。次いで、懸濁液を迅速に4℃まで冷却し、一晩(撹拌せずに)この温度で維持した。翌朝、透明な上層を傾瀉し、40%乾燥物質のレベルに達するまで蒸発させた。後者の濃縮液を4秒間140℃でのUHT処理に供し、次いで、50℃で限外ろ過した。微生物ろ過の後、液体を噴霧乾燥した。この物質を、以下、カゼイン由来対生物作用ペプチド(CDBAP)と呼ぶ。材料および方法の項で概説したLC/MS手順を用いて、粉末状生成物のIPP、LPPおよびVPP含有量を測定した。窒素含有量によると、粉末状生成物は、約60%のタンパク質含有量を有する(6.38の換算係数を使用する)。粉末のIPP、LPPおよびVPP含有量を表6に示す。CDBAP生成物のアミノ酸組成を表7に示す。酸沈殿の後得られた噴霧乾燥物質のモルプロリン含有量の増大が極めて顕著である:最初の12%からおよそ24%まで。
Figure 2008539204
Figure 2008539204
同定のために、アットラインACE阻害アッセイおよび質量分析と組み合わせた2次元クロマトグラフィー分離を用いることによって、CDBAP中の新規のACE阻害ペプチドの存在を調査した。第一の分析において、ペプチド混合物をODS3液体クロマトグラフィー(LC)カラムで分離し、得られた種々の画分からACE阻害プロフィールを生成した。第二の分析において、高いACE阻害を示す第一のカラムからの画分を、異なるグラジエントプロフィールを用いてバイオスイート(Biosuite)LCカラムでさらに分離した。この第二のカラムから収集した画分を2つの部分に分けた。一方の部分をアットラインACE阻害測定に使用し、他方の部分をMSおよびMS−MS分析に供して、存在するペプチドを同定した。
全ての分析は、二重追跡UV検出器を備えたアライアンス(Alliance)2795HPLCシステム(ウォーターズ、オランダ、エテン・ルール(Waters,Etten−Leur,the Netherlands))を用いて行った。ペプチドの同定のために、HPLCシステムを、同じ供給業者からのQ−TOF質量分析計に結合させた。試験において、ミリQ水中のCDBAPの20μlの10%(w/v)溶液を、5μmの粒子径の150×2.1イナートシル(Inertsil)5 ODS3カラム(バリアン、オランダ、ミデルビュルフ(Varian,Middelburg,the Netherlands))上で注入した。移動相Aは、ミリQ水中の0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)溶液からなった。移動相Bは、アセトニトリル中の0.1%のTFA溶液からなった。最初の溶離剤組成は100%Aであった。溶離剤は、5分間100%Aであり続けた。次いで、10分で5%Bへの線状のグラジエント、続いて10分間で30%Bへの線状のグラジエントが開始した。Bの濃度を5分間で70%に上げることによってカラムを洗い流し、さらに5分間70%Bで維持した。この後、溶離剤を1分間で100%Aに変化させ、9分間平衡化させた。総実行時間は50分であった。溶離剤流出は0.2ml分−1であり、カラム温度は60℃に設定した。UVクロマトグラムを215nmで記録した。1分の間隔を用いて溶出液画分を96ウェルプレートに収集し、200μlの画分体積を生じた。ウェル中の溶離剤を、80μlの、水酸化アンモニウムの0.05%水溶液(25%)を加えることによって中和した。乾燥するまで溶媒を窒素下50℃で蒸発させた。この後、残渣を40μlのミリQ水中で再構成させ、1分間混合した。
アットラインACE阻害アッセイのために、27μlの、260mMの塩素濃度のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7.4中の33.4mU ml−1ACE(シグマケミカル(Sigma Chemicals)から得られた酵素)を加え、混合物を96ウェルプレートミキサーで5分間、700RPMでインキュベートした。インキュベーション期間の後、13μlの、PBSバッファー中の0.35mM馬尿酸−ヒスチジン−ロイシン(HHL)溶液を加え、700RPMで1分間混合した。混合物を、GCオーブン中50℃で60分間反応させた。反応の後、融解する氷中でプレートを冷却した。
次いで、96ウェルプレートをフラッシュHPLCカラムで分析した。各ウェルの反応混合物のうち、30μlを、同じ供給業者からの10×4.6mm RP18eガードカラムを備えたクロムリスフラッシュ(Chromlith Flash)RP18e 25×4.6mm HPLCカラム(メルク、ドイツ、ダルムシュタット(Darmstadt,Germany))上で注入した。アイソクラチック移動相は、水/アセトニトリル79/21中のTFAの0.1%溶液からなった。溶離剤流出は2ml 分−1であり、カラム温度は25℃であった。1分の間隔で注入を行った。馬尿酸(H)およびHHLを、280nmでモニタリングした。HおよびHHLのピークの高さを測定し、各画分のACE阻害(ACEI)を、等式:
Figure 2008539204

に従って計算した。
被分析物のACEIαパーセンテージ阻害
Dc 水中の、ACEによる、HHLのHおよびHLへの切断の程度
Dc 被分析物についてのHHLのHおよびHLへの切断の程度
Hのピークの高さをHおよびHHLのピークの高さの合計の分数として表すことによって、切断の程度を計算した。
18〜26分の間に溶出している画分中で最も高いACE阻害を測定した。この領域を収集し、3μmの粒子径の150×2.1mmバイオスイートカラム(ウォーターズ、オランダ、エテン・ルール(Etten−Leur,the Netherlands))上で再注入した。移動相Aは、ここでは、ミリQ水中の0.1%ギ酸(FA)溶液からなった。移動相Bは、メタノール中の0.1%FA溶液からなった。最初の溶離剤組成は100%Aであった。溶離剤は5分間100%Aであり続けた。この後、15分間で5%Bへの線状グラジエントが、続いて30分間で60%Bへの線形グラジエントが開始した。溶離剤は、さらに5分間60%Bであり続けた。最終的に、溶離剤は1分間で移動相Aの100%に減少し、10分間平衡化させた。総実行時間は65分であった。溶離剤流出は0.2ml 分−1であり、カラム温度は60℃に設定した。
UV追跡を215nmで記録した。バイオスイートカラムから10秒の間隔で画分を収集した。画分を再び2つの部分に分け、一方の部分を用いて、先に記載したアットラインACE阻害方法を用いて活性を測定し、他方の部分を用いて、MSおよびMS−MSを用いて活性ペプチドを同定した。
326.2080Daの分子イオンのクロマトグラフィーピークならびに330.2029Daおよび318.1488Daの分子イオンの2つの他のピークは、18〜26分の間の面積で測定した、増大したACE阻害に対応した。MS−MSを用いて、これらのペプチドを、それぞれ構造異性体IPPおよびLPP(−0.6ppm)、ITP(−4.8ppm)ならびにMAP(+2.8ppm)として同定した。ペプチドのタンパク質源は、κ−カゼインf108−110(IPP)、β−カゼインf151−153(LPP)、α−s2−カゼインf119−121(ITP)およびβ−カゼインf102−104(MAP)である。IPPおよびLPPは、以前に、それぞれ5および9.6μMのIC50値を有するACE阻害ペプチドとして報告されている(Y.ナカムラ(Nakamura)、M.ヤマモト(Yamamoto)、K.サカイ(Sakai)、A.オオクボ(Okubo)、S.ヤマザキ(Yamazaki)、T.タカノ(Takano)、J.Dairy Sci.78(1995年)777〜783頁、Y.アリョシ(Aryoshi)、Trends in Food Science and Technol.4(1993年)139〜144頁)。しかしながら、トリペプチドITPおよびMAPは、本発明者らの知る限りでは、能力のあるACE阻害ペプチドとして、これまでに報告されていない。
MAP、ITPおよびIPPを、化学的に合成し、各ペプチドの活性を、本明細書中で後述する改変マツイアッセイを用いて測定した。
正イオンエレクトロスプレー、多重反応モニタリングモードで稼働するマイクロマスクアトロ(Micromass Quattro)II MS装置で、種々の試料中のMAPおよびITPの定量を行った。使用したHPLC方法は、上述したものと同様であった。MS設定(ESI+)は以下の通りであった。コーン電圧37V、キャピラリー電圧4kV、300l/時間の乾燥気体窒素。供給源および噴霧器温度:それぞれ100℃および250℃。合成ペプチドを使用し、MAPについては前駆体イオン318.1ならびに合計生成物イオン227.2および347.2を用いて、ITPについては前駆体イオン320.2ならびに合計生成物イオン282.2および501.2を使用して、較正線を準備した。これらの分析によると、新規のACE阻害トリペプチドMAPおよびITPは、CDBAP生成物中に、2.9mg MAP/g CDBAPまたは4.8mg MAP/g CDBAP中のタンパク質および0.9mg ITP/g CDBAP、1.4mg ITP/g CDBAP中のタンパク質で存在する。
MAPおよびITPのACE阻害活性を測定するために、化学的に合成したトリペプチドを、いくらかの小さな改変とともに、マツイら(マツイ(Matsui),T.ら(1992年)Biosci.Biotech.Biochem.56:517〜518頁)の方法に従ってアッセイした。種々のインキュベーションを表8に示す。
Figure 2008539204
4つの試料のそれぞれは、200mM NaClを含む250mMのホウ酸塩溶液、pH8.3に溶解した75μlの3mM馬尿酸ヒスチジンロイシン(Hip−His−Leu、シグマケミカル)を含んだ。ACEをシグマケミカルから得た。混合物を37℃でインキュベートし、30分後に、125μlの0.5M HClを加えることによって停止させた。続いて、225μlのビシン/NaOH溶液(1M NaOH:0.25Mビシン(4:6))を加え、その後25μlの0.1M TNBS(2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸、フルカ、スイス(Fluka,Switzerland)、0.1MのNaHPO中)を加えた。37℃で20分間のインキュベーション後、0.2MのNaHPO中の4mlの4mM NaSOを加え、UV/Vis分光光度計(CPSコントローラを有する、シマヅ(Shimadzu)UV−1601、オランダ(Netherlands))で416nmでの吸光度を測定した。
ACE阻害(ACEI)活性の量を、以下の式に従って、阻害薬なしでのACEの転換速度と比較した阻害のパーセンテージとして計算した。
ACEI(%)=((対照1−対照2)−(試料1−試料2))/(対照1−対照2))100
式中、
対照1=ACE阻害成分なしでの吸光度(=最高ACE活性)[AU]
対照2=ACE阻害成分なしおよびACEなしでの吸光度(バックグラウンド)[AU]
試料1=ACEおよびACE阻害成分ありでの吸光度[AU]
試料2=ACE阻害成分ありだがACEなしの吸光度[AU]
得られた、化学的に合成されたMAPおよびITPトリペプチドのIC50を、実験のスクリーニング期に使用されるアットライン測定において得られたIC50値とともに表9に示す。種々の測定のための内部標準として、化学的に合成されたIPPの測定が含まれた。
Figure 2008539204
[実施例8]
新規のACE阻害ペプチドMAPおよびITPは、ヒト胃腸管内で残存するようである。
消費後、食物タンパク質およびペプチドは、胃腸管内で種々の消化酵素処理に曝露される。ヒト胃腸管内での、新しく同定された対生物作用ペプチドの安定性を評価するために、CDBAP調製物(実施例7に記載されているように調製した)を、人体で典型的に見られる消化条件をシミュレートする胃腸処理(GIT)に供した。GITモデルシステムにおいて種々のインキュベーション時間の後に得られた試料を、オンラインHPLC−バイオアッセイ−MSまたはHRS−MSシステムを用いて分析して、任意の残ったMAPおよびITPペプチドを定量した。100mlフラスコを組み込んだ標準化された混合装置(バンケル、米国(Vankel,US)によって供給されるような)においてGIT手順を行った。水浴の温度を37.5℃に設定し、撹拌棒速度を、試料が懸濁液で維持されるように選択した(100rpm)。
約3.4gのCDBAP(およそ60%のタンパク質レベル)を、100mlのミリQ水に溶解/懸濁した。胃のシミュレーションの間、5M HClを用いてpHを低下させた。胃のシミュレーションの終わりおよび十二指腸期の間に、5M NaOHを用いてpHを上昇させた。
CDBAP懸濁液を37.5℃まで予熱し、5mlの懸濁液を除去して、0.31gのペプシン(フルカ 注文番号77161)を溶解させた。t=0分で、ここで溶解されたペプシンを含む5mlを懸濁液に戻し加えた。次いで、以下の概要に従って、別々のpHメーターを用いて、手作業でCDBAP懸濁液のpHをゆっくり調節した。
t=20分 pHを3.5まで低下させる
t=40分 pHを3.0に
t=50分 pHを2.3に
t=60分 pHを1.8に
t=65分 pHを2.7に上昇させる
t=75分 pHを3.7に
t=80分 pHを5.3に
t=90分で、別の5mlのCDBAP懸濁液中で0.139gの8倍USPパンクレアチン(シグマ 注文番号P7545)を注意深く混合し、直ちに戻し加えた。インキュベーションを、以下の概要に従って継続した。
t=93分 pHを5.5に
t=95分 pHを6.3に
t=100分 pHを7.1に
t=125分で実験を停止し、pHを調べた(依然としてpH7であった)。
次いで、試料をビーカーに移し、沸騰するまでマイクロ波中に置いた。続いて、試料をガラスチューブに移し、95℃で60分間インキュベートして、全てのプロテアーゼ活性を不活化した。冷却後、試料をファルコンチューブに移し、3000xgで10分間遠心分離した。上清を凍結乾燥した。得られた粉末の総N濃度を測定し、カゼインのケルダール係数(6.38)を用いてタンパク質レベルに変換した。これらのデータによると、GIT手順の後のCDBAP調製物のタンパク質レベルは48.4%であった。GIT手順によるタンパク質分解処理にもかかわらず残存するMAPおよびITPのレベルを、実施例7に記載されているように測定し、得られたデータを表10に示す。
実験の結果によると、MAPおよびITPの両方が、GIT消化に対して高い抵抗性を示す。これらのトリペプチドの低いIC50値と組み合わせて(実施例7においても測定されるように)、データから、2つの新規のACE阻害ペプチドの、血圧降下ペプチドとしての相当な可能性が示唆される。
Figure 2008539204
黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼの最適pHのグラフ表示。 黒色アスペルギルス由来プロリルエンドプロテアーゼの特異性プロフィール。 クロマトグラフィーによって精製した黒色アスペルギルス由来プロリン特異的エンドプロテアーゼとのインキュベーションの後の、インタクトなオボアルブミンおよび合成27マーペプチドのSDS−PAGE。

Claims (10)

  1. トリペプチドMAPおよび/もしくはトリペプチドITPならびに/またはMAPの塩および/もしくはITPの塩。
  2. MAPおよび/もしくはITPまたはMAPの塩および/もしくはITPの塩を含むタンパク質加水分解物。
  3. 5〜50%、好ましくは10〜40%のDH、より好ましくは20〜35%のDHを有する、請求項2に記載のタンパク質加水分解物。
  4. MAPおよび/もしくはITPまたはMAPの塩および/もしくはITPの塩を含むペプチド混合物。
  5. 少なくとも1mgのMAP/gタンパク質、好ましくは
    少なくとも2mgのMAP/gタンパク質、より好ましくは
    少なくとも4mgのMAP/gタンパク質
    を含む、請求項4に記載のペプチド混合物。
  6. 500Da未満の分子量を有するペプチドの量がペプチド混合物の少なくとも30重量%(乾燥物質)、好ましくはペプチド混合物の35〜70重量%(乾燥物質)の間である、請求項4または5に記載のペプチド混合物。
  7. IPPまたはLPPをさらに含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載のペプチド混合物または請求項2もしくは3に記載のタンパク質加水分解物。
  8. 1〜90%の水、好ましくは1〜30%の水、より好ましくは1〜15%の水を含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載のペプチド混合物または請求項2もしくは3に記載のタンパク質加水分解物。
  9. タンパク質の酵素加水分解、ならびに場合によりMAPおよび/またはITPをその塩に転換することを含む、トリペプチドMAPおよび/もしくはITPならびに/またはその塩を生成する方法。
  10. プロテアーゼ、好ましくはプロリン特異的プロテアーゼを使用して、適したタンパク質を加水分解することを含む、請求項9に記載の方法。
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