JP2008538754A - 薬剤を含んだ所定のレイヤパターンを有する複層構造体 - Google Patents
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Abstract
【課題】制御された治療を改善する、微細加工された所定の空間的パターンを有するポリマからなる複層構造体を提供する。
【解決手段】微細加工された概ね予め定められた幾何学的構成をなす空間的パターン(貯蔵室及びチャネルなど)を有するポリマからなる複層構造体を提供する。本発明によって提供される幾何学的なパターンは、パターンの制御を向上させたものであり、制御された治療の改善を可能にする。好適な実施態様では、本発明のポリマ複層構造体は、生分解可能であり、その生体内での寿命は、供給する薬の持続時間よりも長い。したがって、ポリマ構造体の幾何学的なパターンは、治療中にその形状が著しく変化することなく治療薬の送達を制御し、その構造体は、治療薬がなくなった後に分解する。この方法では、治療薬の分解副産物による干渉が最小限になり、治療薬の送達は、分解の進行具合に依存しない。
【選択図】図4a
【解決手段】微細加工された概ね予め定められた幾何学的構成をなす空間的パターン(貯蔵室及びチャネルなど)を有するポリマからなる複層構造体を提供する。本発明によって提供される幾何学的なパターンは、パターンの制御を向上させたものであり、制御された治療の改善を可能にする。好適な実施態様では、本発明のポリマ複層構造体は、生分解可能であり、その生体内での寿命は、供給する薬の持続時間よりも長い。したがって、ポリマ構造体の幾何学的なパターンは、治療中にその形状が著しく変化することなく治療薬の送達を制御し、その構造体は、治療薬がなくなった後に分解する。この方法では、治療薬の分解副産物による干渉が最小限になり、治療薬の送達は、分解の進行具合に依存しない。
【選択図】図4a
Description
本発明は、治療などの用途に使用する薬剤の制御された送達に関するものである。
医学分野において、治療薬の制御された送達は、長年にわたって大きな関心がもたれてきた。特に、治療薬を頻繁に投与することが望ましくない場合又は治療薬の投与が事実上不可能な場合において、大きな関心がよせられている。例えば、様々な種類の持続放出型の錠剤又はカプセルが、投与頻度を減少させるため、消化器官の特定部位に摂取された薬物を放出するため、及びその他の変化をさせるために開発されている。代表的なものには、米国特許第6,207,197号、同第6,620,439号、同第5,672,359号、同第4,218,433号、及び同第3,317,394号がある。それらは、錠剤の材料の生分解に依存するものであり、別の方法による薬剤の放出よりも、より制御された薬剤の放出を行えるようにする。
制御された治療を提供するための別の方法には、送達する薬剤用の複数の貯蔵室を備えたデバイスがある。例えば、米国特許出願第2004/0248320号は、そのようなデバイスに関するものであり、各貯蔵室が独立して電気的に制御可能で、貯蔵室の蓋を選択的に分解又は透過させることができるようにして、薬剤を放出するものである。米国特許第6,010,492号及び米国特許出願第2006/0057737号も貯蔵室を備えるデバイスに関するものであり、薬剤の放出を制御するように、その貯蔵室を独立して作動させることができるものである。米国特許出願第2005/0118229号は、薬剤用の貯蔵室を備える受動デバイスに関するものであり、薬剤の放出が、貯蔵室を覆うナノ多孔性膜/マイクロ多孔性膜の合成膜によって制御されるものである。
薬剤を充填した層を含む複層のポリマによる制御された治療法は、米国特許第6,322,815号、同第5,603,961号、及び同第6,316,018号などで開示されている。そのような複層のポリマは、ほとんどの場合1つ又は複数の多孔性の層を含む。多孔性の層は、その孔に1つ又は複数の薬剤を充填することができる及び/又は薬物送達速度を制御するように用いることができる。代表的な例として、米国特許第5,605,696号、同第4,666,702号、同第5,656,296号、同第4,895,724号、同第4,525,340号、同第5,156,623号、及び同第5,969,020号がある。
薬物を放出する複層構造体は、様々な用途で用いられており、例えば次のものがある。代用血管及びステントカバー(米国特許第6,702,849号)、粘膜組織に取り付けられたパッチを介した薬物送達(米国特許出願第2003/0219479号)、及び経皮的な薬物送達(米国特許第5,237,756号及び同第3,797,494号)。
制御された薬物送達が、広く研究されていることはよく知られているが、すべての問題が完全に解決されているわけではない。例えば、薬物の送達を制御するために、薬物が分解可能な構造体に組み込まれた場合、その構造体の分解産物が、送達する薬物と干渉しないようにする必要がある。また、分解プロセスの制御によって、薬物の放出速度を制御することが難しいこともある。多孔性のポリマ層が、薬物を保持するために用いられる及び/又は送達速度を制御するために用いられる場合、送達速度は、特に多孔性の層のパラメータ(例えば、間隙率、孔の平均サイズ、分解速度)に依存する。多孔性の層は、製造の際に完全に制御されるものではない。例えば、異なる方法(又は異なる製造者)によって作られた2つの膜は、それらが名目上同じ孔の大きさ及び間隙率であったとしても、異なる薬物送達特性を有することがある。
したがって、そのような望ましくない問題を発生させない制御された治療を提供することは、当該技術分野において進歩的なことであろう。
本発明は、微細加工された空間的なパターン(例えば、貯蔵室及びチャネル)を有するポリマ複層構造体を用いて、制御された治療を改善するものである。ポリマに微細加工された空間的なパターンは、所定のパターンであることが好ましい。より詳しくは、空間的パターンは、概ね予め定められた幾何学的構成をなすものであり、その形状は、従来の多孔質のポリマ層の形状とは大いに異なっている。従来の多孔質のポリマ層では、孔の大きさは、製造の際に制御することができたが、各孔の精密な位置は、予め定められてはいない。本発明によって提供される幾何学的なパターンは、その制御をより一層向上させたものであり、制御された治療の改善を可能にする。好ましい実施形態では、本発明のポリマからなる複層構造体は、生分解可能であり、供給する治療薬の持続時間よりも長い生体内での寿命(インビボ寿命)を有している。治療薬の送達を制御するポリマ構造体の幾何学的パターンは、治療中に著しく変化することなく存在し、またその構造体が、治療薬がなくなった後に分解するようにすることが好ましい。この方法では、治療薬の分解副産物が干渉する可能性を最小限にし、治療薬の送達は、分解がどのように進むのかという分解の進行具合には依存しない。
本発明の実施形態は、様々な利点をもたらすことができる。薬物の溶剤への露出を避けることができるため、溶剤感受性の薬物を使用することができる。治療薬は、マトリクス層の空隙内に充填されるため、充填する容量は、ポリマ内に充填される薬剤の可解性に依存しない。薬剤のポリママトリクス層への充填は、ポリマに対する薬剤の混和性、分割挙動及び/又は凝集挙動による影響を受けない。したがって、多くの量を、均一に充填することが、より簡単に達成される。薬剤の充填は、ポリマからなる複層構造体の製造後に(例えば、エンドユーザが使用する直前に)実施される。そのような充填は、中毒性、放射性及び/又は安定を欠く治療薬に特に有用である。充填はカスタマイズすることができ、特に、薬剤が液状の場合、充填は毛管現象を介して行われる。複数の薬剤を放出するために、複数のマトリクス層をモジュラー様式で用いることもできる。そのような場合において、薬剤は別個の層に充填されるため、製造時に薬剤間の相互作用の影響を受けない。これらポリマからなる複層構造体の概ね平面な形状は、広範囲にわたる様々な用途及び製造方法(例えば、包装、折りたたみ、回転、結合、ラミネート加工包装、及び縫製)をもたらす。特に、薬剤を充填した複層のポリマを大きなシートで作ることができると、製造コストが削減される。デバイスの形状は、エンドユーザの必要に応じてカスタマイズすることができる。
十分に生分解可能な微細加工された薬物送達システムを作ることができる。上述の説明のように、封入層及びマトリクス層は、治療薬がなくなった後に分解することが好ましく、インプラントが用いられる場合、再手術する必要をなくす。放出は、賦形剤に依存することなく制御され、設計によって意図的にカスタマイズすることができる(例えば、ゼロ次放出及び/又はパルス放出をもたらす)。バースト効果の発生は、封入層及び/又はバリヤ層を適切に設計することによって防止することができる。複数の薬物の連続的な送達を提供することができる。複層のデバイスでは、マトリクス層の下側の層は、マトリクス層の上側の層よりも後に薬物を送達する。単層のデバイスでは、封入層の孔から離れたマトリクス層の範囲が、その孔に近い範囲よりも後に薬物を送達する。送達のメカニズムは、異なる薬物が同じデバイス内にあったとしても、薬物によって異なるようにすることができる。例えば、ある薬剤は拡散律速されるようにし、他の薬剤の送達は浸透駆動させるようにする。シート状のデバイスは、宿主組織(例えば、微小球又はペレット)内の移動に依存するのとは対照的に、広い範囲にわたって治療薬を直接供給することができる。このことは、治療薬が放射性治療薬のときに特に関係のあるものであり、極めて均一な放射を広範囲にわたってもたらすことができる。賦形剤ポリマの使用を最小限にすることができることによって、分解副産物による炎症又は刺激を最小限にする。ポリマの分解は、浸透駆動するデバイスにおいて、放出を促進させるのに利用することができる。具体的には、分解副産物の滞留を、浸透圧を増加させるために使用することができ、それによって、デバイス内の薬物濃度が下がり始めたとしても、一定の薬物送達速度を維持するようにする。
併用療法を提供することもできる。例えば、単層のポリマ構造体は、化学物質の放射線増感剤を放出でき、また(例えば、ブラキ療法用に)密封された空隙内の放射性医薬品により放射線治療を行うこともできる。本発明のポリマ構造体は、インプラントの1つ又は複数の表面に取り付けることもでき、インプラント表面及び体内組織の間の局所的な薬剤送達をもたらすようにする。
本発明は様々な治療方法に適用可能である。治療方法としては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。歯周炎用の抗生物質の送達、緑内障治療用の治療薬の送達、皮膚治療用の薬剤の送達、薬物又は治療薬の経皮的送達、創傷治療、皮膚組織修復、末梢神経系又は中枢神経系の修復、骨格組織又は筋肉組織の修復、血管組織再生、及び/又は幹細胞の制御分化用の成長因子、ペプチド、又はDNAの送達、術後治療用の鎮痛剤及び/又は抗生物質の送達、一時的な又は恒久的な移植、及び癌治療用の抗癌剤、放射線増感剤及び/又は放射線の局所的な送達。
本発明の第1の態様によれば、少なくとも二つのポリマ層(マトリクス層及び封入層)を含む構造体によって、制御された治療が行われる。マトリクス層は、空隙を有するようにパターン化されるものであり、その空隙内には、1つ又は複数の治療薬が配置される。好ましい実施態様では、マトリクス層の空間的パターンは、実質的に予め定められた幾何学的構成をなしている。具体的には、パターンのパラメータ(例えば、空隙の大きさ、空隙の形状など)が予め定められている。その予め定められたパターンを提供するために、微細加工技術が用いられ、マトリクスポリマからなるマトリクス層に所定のパターンを形成する。その微細加工に適した技術は、米国特許出願第2005/0206048号に記載されており、それに言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。パターンを作るためのその他の適切な技術には、エンボシング、レーザー加工、ステレオリソグラフィーなどの光架橋法、及びキャスティングを含む。上述の説明のように、本発明の十分に予め定められたパターンは、薬物が充填される十分に予め定められていない従来の多孔質層のパターンとはかなり異なるものである。例えば、多孔質層は、特定の平均孔サイズ及び特定の平均孔密度を有し得るが、孔の配置及び形状は予め定められてはいない。マトリクス層の所定の幾何学的パターン(及び、それに加えて任意で、封入層の所定の幾何学的パターン)は、送達する治療薬の制御を改善するべく使用することができる。本発明のある態様では、送達デバイスは、幾何学的パターンを有するマトリクス層を含む。ただし、「幾何学的」という用語は、マトリクス層内の空隙又はチャネルの空間的配置がランダムではないことを意味する。「ランダムではない」という用語は、孔、空隙、チャネル又は貯蔵室に加えて、その孔、空隙、チャネル又は貯蔵室の配置又は形状が、特定(すなわち、100%)の発生可能性を有することを意味する。別の態様では、「ランダムではない」という特徴は、マトリクス層に代わって又はマトリクス層とともに封入層内、及び/又はバリヤ層内に存在するようにすることもできる。したがって、ランダムではないというデバイスの特徴は、1つ又は複数の治療に有効な薬剤の制御を改善するため、結果として治療の制御を改善する。
封入層は、マトリクス層の空間的パターンを覆うように配置される。本発明の一部の実施態様では、封入層はマトリクス層と接触している。別の実施態様では、バリヤ層が、封入層及びマトリクス層の間に、各々と接触するようにして配置される。一般にマトリクス層及び封入層の厚さは、約50μm乃至約150μmである。一般にバリヤ層の厚さは、約50μm乃至約200μmである。
マトリクス層、封入層及びバリヤ層(存在している場合)は、生体吸収性ポリマ、非吸収性ポリマ、水溶性ポリマ、及び不水溶性ポリマなどのカテゴリから選択される。
適切な生体吸収性ポリマとしては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。脂肪族ポリエステル、ポリ(アミノ酸)、コポリ(エーテル−エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、ポリ(イミノカーボネイト)、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリアミドエステル、アミン基を含有するポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリホスファゼン、アミン基及び/又はアミド基を含有するポリオキサアミド及びポリオキサエステル、並びにそれらの混合体。HOOC−C6H4−O−(CH2)m−O−C6H4−COOH(ただし、mは2〜8の範囲の整数)の形態の二塩基酸からのポリ無水物、及びそのポリ無水物と炭素数が最大12のα,ω−脂肪族二塩基酸との共重合体も適している。
脂肪族ポリエステルとしては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。ラクチドのホモポリマ及びコポリマ(乳酸、d−ラクチド、l−ラクチド、及びメソラクチドを含む)、グリコリド(グリコール酸を含む)、ε−カプロラクトン、p−ジオキサン(1,4−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネイト(1,3−ジオキサン−2−オン)、トリメチレンカーボネイトのアルキル誘導体、δ−バレロラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、ε−デカラクトン、ヒドロキシ酪酸塩(繰り返し単位)、ヒドロキシ吉草酸(繰り返し単位)、1,4−ジオキセパン−2−オン(その二量体の1,5,8,12−テトラオキサシクロテトラデカン−7,14−ジオンを含む)、1,5−ジオキセパン−2−オン、6,6−ジメチルー1,4−ジオキサン−2−オン、2,5−ジケトモルフォリン、ピバロラクトン、α,α−ジエチルプロピオラクトン、エチレンカーボネイト、シュウ酸エチレン、3−メチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、3,3−ジエチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン、6,8−ジオキサビシクロタン−7−オン、及びそれらのポリマブレンド。
適切な非吸収性ポリマとしては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。ポリ(ジメチルシロキサン)、シリコンエラストマ、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリ(メクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリ(ビニルピロリジン)を含む。適切な水溶性ポリマは、以下に限定されるものではないが、サッカリド(例えば、セルロース)、キチン、デキストラン、タンパク質(例えば、コラーゲン及びアルブミン)、アクリレート及びアクリルアミド(例えば、ポリ(アクリル酸))、ポリアクリルアミド、並びにポリ(メタクリル酸1−ヒドロキシエチル)、並びにポリ(エチレングリコール)。
適切な不溶性ポリマ(及びその他の層の材料)としては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。黄ろう、ワセリンコレステロール、ステアリルアルコール、白ろう、白色ワセリン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ラウリル硫酸ナトリウム、プロピレングリコール、グリセロゼラチン、ゲル化剤(例えば、カルボマー934)、セルロース誘導体、天然ゴム、浸透促進剤(例えば、ジメチルスルホキシド)、エタノールプロピレングリコール、グリセリン、尿素、グリセロゼラチン、着色剤、ラクトース、ステアリン酸、澱粉グリコール酸、糖、ゼラチン、ベジタブルオイル及び油脂、グリセリン、プロピレングリコール、アルコール、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルアセトアミド、並びにそれらの混合体又は水分散体或いは油分散体。
本発明のある実施態様は、治療の制御をモジュラ方式で提供するものであり、各層は特定の機能を果たす。封入層は、周囲から吸収する水の量を制御し、また、マトリクス層からの治療薬の放出も制御する。治療薬が化学物質のとき、そのような放出制御は、一般に封入層の貫通孔によってもたらされる。封入層の透過性及び開孔の大きさを制御することによって、放出メカニズムは、拡散律速放出、浸透圧駆動放出、又はこれらメカニズムを組み合わせた様々な放出となるようにすることができる。封入層の空間的パターンは、マトリクス層について上述したように、微細構造の所定のパターンであることが好ましい。マトリクス層のパターンに関連して説明した上述のパターン製造技術は、封入層のパターンを作ることにも適している。治療薬が放射性医薬品である場合、一般に封入層は貫通孔を備えていない。
封入層のパターンの実施例を、図1のa)〜e)に示す。図1のa)に示す封入層12Aは貫通孔がなく、治療薬が放射性医薬品である場合に適しており、放射性医薬品がアクティブなときに放出されないようにする。図1のb)〜d)は、様々な大きさ及び密度の貫通孔を有する封入層12B、12C及び12Dを示す。図1のe)は、分解不可能な材料又は低速で分解可能な材料14で作られた封入層12Eを示し、材料14の間の貫通孔には、比較的迅速に分解可能な材料16が満たされている。
バリヤ層は(存在する場合)、治療中に一部又は全部が分解される。拡散駆動の薬物放出では、薬物はバリヤ層を介して拡散し、封入層に到達することができる。バリヤ層の特性(例えば、分解速度、拡散速度)は、封入層によってもたらされる薬物送達の制御に加えて、更なる薬物送達の制御を行うように選択される。浸透圧駆動の薬物放出では、バリヤ層は治療中に全体が分解され、液体を含む薬物が、浸透圧駆動をするのに十分に高い濃度をもって、マトリクス層及び封入層の間に形成されるようにする。
バリヤ層の実施例を、図2のa)〜d)に示す。図2のa)〜b)は、異なる厚さを有するバリヤ層22A及び22Bを示す。図2のc)は、比較的低速で分解可能な材料26によって分離された比較的迅速に分解可能な材料又は比較的迅速に溶解可能な材料24の領域を有している。図2のd)のバリヤ層22Dは、バリヤ層の厚さが増していることを除いて、バリヤ層22Cと同様である。
1つ又は複数のマトリクス層は、1つ又は複数の治療薬(例えば、薬物及び/又は放射性物質)のキャリヤとして機能する。治療薬は、マトリクス層の所定のパターンの一部としてマトリクス層に形成された空隙に充填される。薬剤のマトリクス層への充填は、様々な方法(例えば、微量投与、微量注入、粉末圧縮、スクリーン印刷、インクジェット印刷、又はふるい分け)で実施することができる。液状の薬剤の場合、充填は毛管現象を利用することができる。その場合には、マトリクス層の微細構造のパターンは、別個の貯蔵室の形式ではなく、連続したマイクロチャネルシステムの形式であることが好ましい。薬剤の構造体への充填は、複層構造体の作成前又は作成後に実施される。
マトリクス層の実施例を、図3のa)〜h)に示す。図3のa)のマトリクス層32Aは、比較的迅速に分解可能な材料又は比較的迅速に溶解可能な材料36で作られ、材料36内の空隙には、治療薬34が充填される。空隙の大きさ及び/又は間隔を変化させる(例えば、マトリクス層32B)、及び/又はパターン内に貫通孔を備える(例えば、マトリクス層32C及び32D)などを含む変形実施態様がある。より一般に、マトリクス層は、比較的低速で分解可能な材料38で作られる。この材料を変更したマトリクス層32E、32F、32G及び32Hは、レイヤ32A、32B、32C及び32Dに対応するものである。
図4a〜図4gは、本発明の実施態様の一部を示すものである。図4a〜図4gの実施例は、本発明の実施態様のモジュールを図示している。各レイヤの個々の変化は、様々な制御された治療を提供するように使用することができる。そのような構造体は、疎水性薬物及び親水性薬物の両方の放出制御をすることができ、低分子量薬物及び高分子量薬物の放出制御をすることもできる。これら構造体の材料及び/又は幾何学的なパラメータは、拡散律速の薬物放出、浸透圧駆動の薬物放出、又はこれらメカニズムを組み合わせた様々な放出を提供するように選択することができる。
図4aの構造体は、マトリクス層32E、バリヤ層22B及び封入層12B又は12Cを備えており、一定速度で薬物を放出するのに適している。放出速度は、封入層の透水性、封入層の貫通孔の大きさ(例えば、レイヤ12Cでは大きく、レイヤ12Bでは小さい)、及びバリヤ層22Bの分解挙動によって制御され得る。
対照的に、図4bの構造体は、バリヤ層を備えていない。その代わり、ネットワーク化されたマイクロチャネルが、マトリクス層及び/又は封入層によって形成され、それによって、封入層及び薬物が充填されたマトリクス層の間に空間的な分離をもたらす。このネットワーク化されたマイクロチャネルは、液体によって満たされ、マトリクス層内に充填された物質のキャリヤとして機能する。その液体は、その他の治療薬(例えば、液体中の薬物)のキャリヤとして機能することもできる。使用する直前に、エンドユーザが薬物の混合をカスタマイズすることができる。
図4cの構造体は、バリヤ層が、比較的低速で分解可能な材料(網掛けのない部分)によって分離された比較的迅速に分解可能な材料(薄い網掛けの部分)の領域を形成するように水平に構成されていることを除いて、図4aの構造体と同様である。このような構造体は、(例えば、比較的迅速に分解可能な材料のある領域から次の領域に移行するように、迅速に分解可能なポリマの分解にかかる時間を変更することによって、)薬物をパルス放出させることができる。この方法では、一つのポリマ構造体によって、薬物送達を所定の順序に従って行うことができる。
図4dの構造体は、各々が別個の空隙を備える2つのマトリクス層が、互いに上下に重ねられるようにして配置されている。上側のマトリクス層(例えば、レイヤ32B又はレイヤ42A)は、比較的迅速に分解可能であり、そのパターン内に充填された薬物のバースト放出(レイヤ32B)又は遅延バースト放出(レイヤ42A)を提供する。下側のマトリクス層32Eからの物質は、パルス放出で放出することができる。各々が同じ又は異なる物質を含む複数のマトリクス層を用いることができ、複数の治療薬の放出制御を提供する。
図4eは、空隙が物理的に接続した2つのマトリクス層を有する実施態様を示す。両方の薬物は、同時に放出される。放出は、封入層(例えば、レイヤ12E)、又は第2マトリクス層(例えば、32B)によって遅延させることができる。上述した説明のように、追加のマトリクス層を加えることができる。
図4fは、ポリマ複層構造体の上下両側をともに利用して、薬物を放出する実施態様を示す。放出する材料は、両側で同じ材料とすることができ(例えば、マトリクス層44A)、又は両側で異なる材料とすることもできる(例えば、マトリクス層44B)。同様に、バリヤ層及び封入層は、両側で同じになるようにすることができ、又は両側で異なるようにすることもできる。
図4gは、放射線治療を提供するのに適した本発明の実施態様である。この場合、貫通孔を有していない封入層12Aが使用されており、放射性物質がアクティブである間は、放射性物質の放出を防止する。1つの構造体で、化学治療方法及び放射線治療方法を組み合わせることができる。ただし、放射線治療方法用の治療薬は、(例えば、図4gに示すような)密封された空隙内に充填され、化学治療方法用の治療薬は、(例えば、図4a〜図4fに示すような)密封されていない空隙に充填される。
図5の(A)〜(C)は、本発明の実施態様が、実際にはどのように動作するのかを実施例を用いて示している。この実施例では、封入層52は、バリヤ層54の上面の上側に配置され、バリヤ層54は、マトリクス層56の上面の上側に配置されている。この実施例では、すべてのレイヤが、生分解性ポリマで作られている。一般に、その態様の寸法は、封入層52内の貫通孔の直径が100μm、マトリクス層56内の空隙の直径が20μmである。封入層52及びマトリクス層56は、治療薬の持続時間よりも長い生体内での寿命を有し、それらの幾何学的な特徴は、治療中に、実質的に分解の影響を受けない。対照的に、バリヤ層54は、治療薬の持続時間よりも短い生体内での寿命を有する。従って、バリヤ層54の分解(図5(B))が、治療薬の放出を可能にする(図5(C))。治療薬がなくなるとすぐに、レイヤ52及び56は分解する。上述の説明のように、薬物放出は、拡散、浸透圧、又はこれらメカニズムの組み合わせによって行うようにすることができる。
拡散律速の放出は、濃度勾配によって、高濃度(マトリクス層)から低濃度(封入層)に、一部又は全部が分解したバリヤ層を横断するように駆動される。図6の上面図は、この場合の送達速度を検討するのに有用である。ここで、マトリクス層の空隙62は点線で示し、封入層の孔64A、64Bは実線で示す。バリヤ層の分解を単純化したモデルとして、バリヤ層の分解は、各封入層の貫通孔から、バリヤ層内に水平方向に延在する円形の境界が拡大することによって進行すると推測される。したがって、境界66は、孔64Aに対応する。境界66は、半径がxであり、その半径はバリヤ層の分解に連れて増大する(即ち、半径xの大きさは、時間に依存する)。
薬物の濃度勾配は、凡そρ/xによって与えられる。ただし、ρは、境界66における薬物濃度である。ここで、各薬物の貯蔵室(即ち、境界66と交差する複数の空隙62)は、孔64Aと比較して小さく、薬物濃度は、孔64Aの中心において無視できるものであると推測される。フィックの法則から、拡散束は、Dρ/xである。ただし、Dは、拡散定数である。境界66を横断する(及び孔64Aから出て行く)放出速度Qは、Q=(Dρ/x)2πxh=2πhDρで与えられる。ただし、hはバリヤ層の厚さである。N個の同一の孔がある場合、全放出速度は、Qtot=2πNhDρである。このモデルは、ゼロ次(即ち、定速)放出を示す。なぜなら、拡散束に依存するxが、境界領域に依存するxによって打ち消されるからである。N=l2/d2とすると、Qtot=2πhDρl2/d2である。ただし、l2はレイヤの面積であり、dは(正方格子で配置されていると推測される)孔の間の距離である。従って、孔の間の距離dが増大すると、送達速度は遅くなる。バリヤ層の厚さhも、送達速度を制御するために用いられることもできる。なぜなら、hが増大すると、送達速度が速くなるからである。
封入層のパラメータは、拡散律速の放出、浸透圧駆動の放出、又はこれらを組み合わせた放出の中から放出手段を選択するために用いることもできる。封入層52内の全貫通孔の総面積Aを規定することは有用である。パラメータAmax及びAminは、次の数式(1)及び数式(2)によって規定される。
ただし、lは開口部の全長(即ち、封入層52の厚さ)、dV/dtは、開口部を通過する体積フラックス、ηは、供給された溶液の粘度、ΔPmaxは、ポリマ構造体の内側及び外側の間の最大の圧力許容差、(dm/dt)zは、ゼロ次の浸透圧駆動の送達速度、Sは、薬物の溶解度、及びFは、浸透圧速度対拡散送達速度の最小速度比である。A<Amaxの場合、浸透圧は、送達メカニズム支配的であり、拡散は無視することができる(拡散を確実に無視することができるようにするため、実験に基づいた因子Fが、F≧40となることが推奨される)。A<Aminの場合、静水圧が、圧力の限界ΔPmaxを越えることがあるため、Amin<A<Amaxであることが好ましい。浸透圧駆動の送達速度は、数式(3)によって与えられる。
ただし、πsは、飽和状態での浸透圧、kは、機械的な透過性及び反射率の積である。Amin<A<Amaxの状態が維持されるとき、放出速度は数式(3)によって与えられる。浸透圧駆動の放出は、バリヤ層の有無に関わらず実施することができる。バリヤ層が存在しない場合、浸透圧駆動の放出は、ポリマ構造体が水分を含んだ環境(例えば、埋め込み後の環境)に配置されるとすぐに開始する。バリヤ層が存在する場合、放出は、バリヤ層が分解するのに従って拡散律束させ、次に、バリヤ層の分解が終了した後に浸透圧駆動となるようにすることができる。
本発明のさらなる実施態様及び変形を、以下の実施例を用いて説明する。
《実施例1》
この実施例は、疎水性物質(具体的には、テトラサイクリン系抗生物質)の放出を高速に行うことに関するものである。図5の(A)〜(C)にポリマ複層構造体を示す。ただし、バリヤ層は低分子の50/50比のポリ(ラクテイック−co−グリコール)酸(PLGA)であり、封入層及びマトリクス層は、85/15比のPLGAである。バリヤ層の厚さは50μmであり、封入層の厚さは、25μmである。封入層の貫通孔は、直径が100μmであり、熱エンボス加工により加工する。マトリクス層の空隙は、一片が20μmの正方形で、約10μmの深さを有するものであり、熱エンボス加工によって形成される。テトラサイクリンは、スクリーン印刷によってマトリクス層の空隙に充填される。レイヤは、レイヤのガラス転移温度よりも高い温度、かつレイヤの融解温度よりも低い温度で、熱融解処理によって積層される。
この実施例では、レイヤのパラメータが、浸透圧駆動の薬物放出をするように設計されている。バリヤ層は、水分を含んだ環境において、略1日が経過した後に、分解が始まる。このポリマの分解メカニズムは、バルク分解であり、ポリマのフラグメントは、分解中に形成される。これらフラグメントの濃度の増加は、周辺の環境から水分を追加して摂取することになり、浸透圧を増加させる。
この構造体の、リン酸緩衝液中での放出挙動を実験的に観察した。試料を1日に2回取り出し、放出されたテトラサイクリンの濃度を、蛍光プレートリーダを用いて、蛍光により測定した。この実験では、封入層を省いた対照構造体を比較用に使用した。図7a〜図7bは、これら2つの態様の時間を関数にしたテトラサイクリンの放出を示す。ここで、「対照」と表示したものは、対照デバイス(即ち、封入層がないデバイス)であり、「デザイン」と表示したものは、封入層を備える実施例のサンプルデバイスである。バリヤ層の分解に時間がかかるため、当初、薬物のバースト放出は見られなかった。サンプルデバイスは、有意な期間にわたって(約1.5日〜約3日)、高速、かつ略一定の放出速度であった。3日後に、全薬物投与量の約50%を送達した。この期間以降、送達速度は減速した。(分解しているバリヤ層からのポリマのフラグメントの濃度が減少することに起因して、)浸透圧が減少し始めるとき、この速度の減速率は、予想される挙動1/(1+t)2と整合的である。サンプルデバイスとは対照的に、対照デバイスは、水中でのテトラサイクリンの可溶性が低いため、低速の放出速度を示している。また、送達速度は有意に一定ではなく、その代わり、バリヤ層の分解に大きく影響を受けたことが明らかである。
《実施例2》
図8a〜図8bは、薬物を収容する貯蔵室が、チャネルを介して送達デバイスの外面と接続されている、本発明の実施態様を示す。貯蔵室86及びチャネル87のシステムは、マトリクス層32F及び封入層84に形成されたパターンによって形成される。これら2つのレイヤを結合すると、貯蔵室及びチャネルが形成される。封入層84は、貫通孔88を含んでいる。図8aは、実施態様の側面図であり、図8bは、図8aの線82に沿った断面図である。チャネルは、開放しておくことができ、又は迅速に分解可能なポリマ(即ち、治療薬の持続時間よりも短い寿命を有するポリマ)を充填することができる。一般に寸法は、貯蔵室の直径が約1mm、貯蔵室の高さが約100μm、チャネルの長さが約1cm、チャネルの直径が約25μm乃至約50μm、及び封入層の貫通孔の直径が約200μm〜約1mmである。上述したように、送達メカニズムは、拡散及び/又は浸透圧である。送達速度は、パターンの幾何学的なパラメータ、特に、チャネルのパラメータを変更することによって制御することができる。例えば、送達速度は、チャネルの全長を長くする及び/又はチャネルの直径を小さくすることによって遅くなる。
図8cは、図8a〜図8bの実施態様が、異なるチャネル長さを有する場合の算出薬物送達速度を示す。このグラフでは、三角形がチャネル長さ1mmに対応し、四角形がチャネル長さ2mmに対応し、円形がチャネル長さ3mmに対応する。チャネル長さを長くすると、送達速度が遅くなる。
貯蔵室−チャネルの構造の好適なある実施態様は、ポリ(ε−カプロラクトン−co−グリコリド)の封入層、ポリ(ε−カプロラクトン−co−グリコリド)のマトリクス層、及びレボブピバカイン、ブピバカイン、リドケイン、及び/又は抗炎症薬と結合した或いは非結合のロピバカインを含む薬剤を有する。貯蔵室−チャネルの構造の別の好適な実施態様は、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)の封入層、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)のマトリクス層、及びレボブピバカイン、ブピバカイン、リドケイン、及び/又は抗炎症薬と結合した或いは非結合のロピバカインを含む薬剤を有する。
チャネル−貯蔵室の実施態様は、様々な変形が可能である。例えば、図9aは、同じ貯蔵室に通じる複数のチャネル(91)、蛇行したチャネル(92)、及びらせん状のチャネル(93)などの複数のチャネルの変形を示している。図9bは、放射対称性の多区画の貯蔵室構造(94)、長方形の貯蔵室(95)、及び別の多区画の貯蔵室構造(96)などの複数の貯蔵室の構造を示している。一般に、貯蔵室及びチャネルは、かなりのフレキシビリティがあり、様々な形状にすることができる。また、貯蔵室及びチャネルは、互いに独立して作ることができるため、送達デバイス内での薬剤の相互作用を考慮する必要なく、複数の薬剤のカスタマイズした送達をすることができる。チャネル−貯蔵室の実施態様の別の変形実施例には、デバイスの両側に放出用の開口を備えるものを含む(図4の実施態様に類似したもの)。例えば、薬物の貯蔵室は、ポリマ構造体の厚さ方向に上から下まで延在する孔と接続しているチャネルを備えることができる。この方法では、ポリマ構造体の両側から薬物を放出することができる。この実施例では、ポリマ構造体のレイヤを結合した後に、貫通孔を形成することができる(即ち、マトリクス層内の貯蔵室は予め定められているが、貫通孔は予め定められていない)。
チャネル−貯蔵室の実施態様は、実施例1に関して、より具体的には、数式(1)及び数式(2)に関して検討すると、浸透圧放出及び/又は拡散放出をもたらすように設計することもできる。これに関連して、数式(1)及び数式(2)のl及びAは、各々、チャネル長さ及びチャネル断面積とすることができる。
《実施例3》
上述したように、本発明の実施態様は、放射線治療方法に利用することができる。図10a〜図10bは、治療薬が放射線性のもので、封入層12Aが貫通孔を有していない固体層である、本発明の実施態様を示す。マトリクス層32Fは、その内部の空隙に放射線治療方法用の治療薬を含んでいる。図10bは、図10aの線1002に沿った断面図である。これらレイヤは、治療薬の持続時間よりも実質的に長い生体内での寿命(即ち、マトリクス層内に含まれた放射性医薬品のいずれかの、最も長い半減期よりも10倍長い寿命)を有する生分解可能なものであることが好ましい。この方法では、薬剤がアクティブな間、薬剤の放出を防止する。使用済みの放射性医薬品の最終的なインビボ放出は、有意な化学毒性がなければ、問題のあるものではない。多くの放射性医薬品は、無害の物質となる(例えば、アイソトープP32がアイソトープSになる)。治療薬は、約400時間より短い半減期を有するベータ放射体であることが好ましい。適切な治療薬には、Y−90(半減期64.1時間)、Au−198(半減期64.704時間)、P−32(半減期342.96時間)、及びI−131(半減期193.2時間)を含む。
空隙は、様々な形状を有することができる。空隙は、薬剤が液状で充填される場合は、一般にチャネル形状であることが好ましく、固体の薬剤が使用される場合は、別個の空隙が好ましい。チャネル形状の空隙は、長さが約10mm乃至約60mm、幅が約20μm乃至約300μm、及び高さが約25μm乃至約100μmであることが好ましい。本発明のこの用途に使用されるポリマは、放射能によって有害な影響を受けることがないものであることが重要である。実験は、PLGAが放射能によって十分に影響を受けないことを示すべく実施した。
図10cは、図10a〜図10bの実施態様の投与量対距離の関係を示す。4つのアイソトープを検討した。いずれの場合も、想定充填密度は1mC/cm2である。これらアイソトープを比較する別の方法は、次の表1のように、一般的な治療量の10Gy(1000rad)を与えるために必要な充填密度、及び10Gyの投与量が得られる距離を検討することである。
上述したように、本発明の重要な利用法は、体内に埋め込まれる構造体が、体内の他のインプラント(例えば、ステント、カテーテル、及び関節置換物)と、別個に又はその外面上に埋め込まれるようにすることである。そのような他のインプラントは、一時的なものであっても良いし、恒久的なものであっても良い。本発明のポリマ構造体自身が埋め込まれる場合、又は別の恒久的なインプラントに取り付けられる場合、マトリクス層及び封入層は、治療薬がなくなった後に分解することが好ましい。また、本発明のポリマ構造体は、(例えば、経皮的薬物送達方法のために)治療する人間の皮膚表面に取り付けることもできる。その場合、マトリクス層及び封入層が、生分解可能である必要はない。同様に、本発明のポリマ構造体を、一時的なインプラントに取り付ける場合、マトリクス層及び封入層が、生分解可能である必要はない。
本発明のデバイスは、侵襲的な方法、外科的な方法、低侵襲的な方法、及び非外科的な方法などの、当該技術分野において公知の方法を用いて埋め込むことができることを理解されたい。送達する対象、標的部位、及び薬剤に応じて、本明細書に開示された微細加工技術を用いることができ、適切な大きさ及び形状の本発明の送達デバイスを作ることができる。
上述の説明は、治療用途に関連したものであるが、本発明は、細胞培養及び組織工学などの治療用途以外にも適用される。したがって、本発明の実施態様によって制御可能に放出することができる薬剤は、治療用薬剤、細胞培養用薬剤及び組織工学用薬剤を含む。
本発明は、様々な薬剤の制御送達に適している。適切な薬剤の一例としては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。核酸、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、化学療法剤、血栓溶解剤、血管拡張剤、増殖因子抑制物質、フリーラジカル補足剤、生物学的作用物質、放射線不透過性物質、放射性薬剤、抗凝固剤、抗血管新生剤、血管形成剤、PDGF−B抑制剤及び/又はEGF抑制剤、リボフラビン、チアゾフリン、ザフリン、ADP抑制剤、ホスフォジエステラーゼIII、リコプロテインII/IIIa薬剤、アデノシン再摂取阻害剤、治療剤及び/又は促進剤、制吐剤、制嘔吐剤、免疫抑制剤、抗炎症薬、抗増殖剤、抗移動剤、抗線維剤、プロアポトーシス、カルシウムチャンネル遮断薬、抗新生薬、抗体、抗血栓剤、抗血小板薬、IIbIIIIa薬剤、抗ウイルス物質、鎮痛剤(例えば、ブピバカイン、レボブピバカイン、リドカイン、ガバペンチン、ケタミン、クロニジン、デクスタトミド(dextatomide)、ロピバカイン、並びにそれらいずれかの誘導体、或いはそれらの組み合わせ)、抗生物質(例えば、テトラサイクリン、アドリアマイシン、ペニシリン、ミノサイクリン、並びにそれらいずれかの誘導体、或いはそれらの組み合わせ)、抗癌剤及び放射線増感剤(例えば、ブラノデオキシウリジン(branodeoxyuridine)、マイフェルマイシン(myfermycine)、シスプラチン、ゲムシタビン、アドリアマイシン、塩酸トポテカン、パクリタキセル、シスプラチン、5−フルオロウラシル、カルムスチン、インターフェロンα、タモキシフェン、チラパザミン、サイトキサン、並びにそれらのいずれかの誘導体、或いはそれらの組み合わせ)、短半減期放射性治療剤(例えば、Y−90、P−32、I−131、Au−198)、ホルモン及び抗ホルモン剤(例えば、エストロゲン、ステロイド、アンドロゲン、プロゲスチン、デキサメタゾン、並びに甲状腺剤及び抗甲状腺剤)、成長因子(例えば、フィブロブラスト成長因子、神経成長因子、骨形態形成タンパク質、血小板由来増殖因子、上皮細胞増殖因子、血管内皮増殖因子、形質転換成長因子β、並びにそれらいずれかの誘導体、或いはそれらの組み合わせ)、遺伝子(例えば、DNA誘導体)、皮膚用薬物、並びに眼科用薬物。
「装置」及び「デバイス」という用語は、本発明の埋め込み型構造体及び埋め込みが不可能な構造体について言及する場合に、全体を通じてほぼ同じ意味で用いられている。
[治療用途]
本発明の装置は、薬物、タンパク質、ペプチド、核酸ベクタを含有する核酸、ヌクレオチド、自己細胞或いは異種細胞、又は様々な治療に有効な薬剤を送達するために使用することができる。本発明の装置及び方法は、インビボ、エクスビボ、又は細胞培養などのインビトロで使用することができる。
本明細書に記載のデバイスは、疾患治療に適したものである。治療する疾患は、デバイス内に含まれた薬物に関連していることを理解されたい。本明細書に記載のデバイスによって治療することができる疾患、病気又は障害には、自己免疫疾患、炎症性疾患、心疾患、疼痛症状のある病気、神経性の疾患、代謝障害、癌性貧血バクテリア、ウィルス又は寄生生物などの病原菌、心理的障害又は精神疾患(例えば、注意力欠如障害、不安神経症、うつ病)又は、栄養障害(例えば、肥満、栄養失調又は貧血)、血液疾患又は血液病(例えば、高血圧、凝固)、骨疾患、並びに潰瘍を含む。
そのデバイスは、治療効果を得るために治療的に薬剤を投与することもでき、また、予防効果を得るために予防的に薬剤を投与することもできる。治療効果とは、治療する基礎疾患の根絶又は改善を意味する。予防効果では、疾患が発現する恐れのある患者、又は診断はまだだが、そのような疾患の1つ又は複数の生理的症状を訴える患者に、薬剤が投与されるようにすることができる。また、予防的投与は、基礎疾患の生理的症状の発現を避けるために、特に、その症状が繰り返し現れる場合に投与されるようにすることができる。この後者の実施態様では、治療は、基礎的な徴候に対してではなく、関連する生理的症状に対して予防的である。
本明細書に記載のデバイスは、本発明の方法に用いるのに適しており、薬物が治療的に又は予防的に有効な量(即ち、上述したような治療効果又は予防効果を得るために有効な量)が含まれることを特徴とするデバイスを含む。当然のことながら、特定の用途に有効な実際の量は、とりわけ、治療する病気及び投与経路に依存する。有効な量の決定は、当業者が十分に対応できる範囲内のことである。
本発明のある態様では、治療に有効な薬剤は、免疫抑制剤、抗炎症薬、抗増殖剤、抗移動剤、抗線維剤、プロアポトーシス、カルシウムチャンネル遮断薬、抗新生物薬、抗体、抗血栓剤、抗血小板薬、IIbIIIIa薬剤、抗ウイルス物質、並びにそれらの組み合わせからなるグループから選択され得る。治療に有効な薬剤の具体的な例は、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、ミゾリビン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、サーティカン(登録商標)、ラパマイシン、トリプトライド(登録商標)、メトレキサート(登録商標)、ベニジピン(登録商標)、アスコマイシン(登録商標)、ワルトマニン(登録商標)、LY294002、カンプトセシン(登録商標)、トポテカン(登録商標)、ヒドロキシウレア、タクロリムス(登録商標)(FK506)、シクロホスファミド、シクロスポリン、ダクリズマブ、アザチオプリン、プレドニゾン、ゲムシタビン(登録商標)、並びにそれらの誘導体、それらの治療用塩、及びそれらの組み合わせを含む。
治療に有効な追加的な薬剤は、抗癌剤、化学療法剤、血栓溶解剤、血管拡張剤、抗菌剤又は抗生物質、抗有糸分裂薬、増殖因子抑制物質、フリーラジカル補足剤、生物学的作用物質、放射線治療薬、放射線不透過性物質、放射性薬剤、抗凝固剤(例えば、ヘパリン及びその誘導体)、抗血管新生剤(例えば、サリドマイド(登録商標))、血管形成剤、PDGF−B及び/又はEGF抑制剤、乾癬用薬を含む抗炎症薬、リボフラビン、チアゾフリン、ザフリン、抗血小板薬(シクロオキシゲナーゼ阻害薬(例えば、アセチルサリチル酸)、ADP阻害剤(例えば、クロピドグレル(例えば、プラビクス(登録商標))及びチクロジピン(例えば、チクリッド(登録商標))、ホスフォジエステラーゼIII阻害剤(例えば、シロスタゾール(例えば、プレタール(登録商標))g、糖タンパク質II/IIIa薬剤(例えば、アブシキシマブ(例えば、レオプロ(登録商標))を含む)、エプチフィバチド(例えば、インテグリリン(登録商標))、及びアデノシン再摂取阻害剤(例えば、ジピリダモール)、抗酸化物質、窒素酸化物ドナーを含む治療剤及び/又は促進剤、制吐剤、制嘔吐剤、トリプディオライド、ジテルペン、トリテルペン、ジテルペンエポキシド、ジテルペノイドエポキシド、トリエポキシド、又はトリプテジウム・ウィルフォルディ・フックF(TWHF)、SDZ−RAD、RAD、RAD666、又は40−0−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン、並びにそれらの誘導体、それらの治療用塩、及びそれらの組み合わせからなるグループから選択される少なくとも一つの化合物を含んで良い。
[抗癌剤]
本発明の一部の態様では、本発明の装置は、抗癌作用のある治療薬を送達するために利用される。抗癌作用のある治療薬は、腫瘍を縮小させる、又は腫瘍の更なる成長を防止する分子であり、以下のような抗癌剤を含む。アシビシン、アクラルビシン、塩酸アコダゾール、アクロニン、アドリアマイシン、アドゼレシン、アルデスロイキン、アルトレタミン、アンボマイシン、塩酸アメタントロン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アントラマイシン、アスパラギナーゼ、アスペルリン、アザシチジン、アゼテパ、アゾトマイシン、バチマスタット、ベンゾデパ、ビカルタミド、塩酸ビサントレン、ジメシル酸ビスナフィド、ビゼレシン、硫酸ブレオマイシン、ブレキナールナトリウム、ブロピリミン、ブスルファン、カクチノマイシン、カルステロン、カラセミド、カルベチマー、カルボプラチン、カルムスチン、塩酸カルビシン、カルゼレシン、セデフィンゴール、クロラムブシル、シロレマイシン、シスプラチン、クラドリビン、メシル酸クリスナトール、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、塩酸ダウノルビシン、デシタビン、デキソルマプラチン、デザグアニン、メシル酸デザグアニン、ジアジクオン、ドセタキセル、ドキソルビシン、塩酸ドキソルビシン、ドロロキシフェン、クエン酸ドロロキシフェン、プロピオン酸ドロモスタノロン、デュアゾマイシン、エダトレキセート、塩酸エフロルニチン、エルサミトルシン、エンロプラチン、エンプロメート、エピプロピジン、塩酸エピルビシン、エルブロゾール、塩酸エソルビシン、エストラムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、エタニダゾール、エトポシド、リン酸エトポシド、エトプリン、塩酸ファドロゾール、ファザラビン、フェンレチニド、フロクスウリジン、リン酸フルダラビン、フルオロウラシル、フルロシタビン、フォスキドン、フォストリエシンナトリウム、ゲムシタビン、塩酸ゲムシタビン、ヒドロキシウレア、塩酸イダルビシン、イホスファミド、イルモフォシン、インターフェロンα−2a、インターフェロンα−2b、インターフェロンα−n1、インターフェロンα−n3、インターフェロンβ−Ia、インターフェロンγ−Ib、イプロプラチン、塩酸イリノテカン、酢酸ランレオチド、レトロゾール、酢酸ロイプロリド、塩酸リアロゾール、ロメトレキソールナトリウム、ロムスチン、塩酸塩、マソプロコール、マイタンシン、塩酸メクロレタミン、酢酸メゲストロール、酢酸メレンゲストロール、メルファラン、メノガリル、メルカプトプリン、メトトレキサート、メトトレキサートナトリウム、メトプリン、メツレデパ、ミチンドミド、マイトカルシン、マイトクロミン、マイトギリン、マイトマルシン、マイトマイシン、マイトスパー、ミトタン、塩酸ミトザントロン、ミコフェノール酸、ノコダゾール、ノガラマイシン、オルマプラチン、オキシスラン、パクリタキセル、ペガスパルガーゼ、ペリオマイシン、ペンタムスチン、硫酸ペプロマイシン、ペルフォスファミド、ピポブロマン、ピポスルファン、塩酸ピロキサントロン、プリカマイシン、プロメスタン、ポルフィマーナトリウム、ポルフィロマイシン、プレドニムスチン、塩酸プロカルバジン、プロマイシン、塩酸プロマイシン、ピラゾフリン、リボプリン、ログレチミド、サフィンゴール、塩酸サフィンゴール、セムスチン、シムトラゼン、スパルフォセートナトリウム、スパルソマイシン、塩酸スピロゲルマニウム、スピロムスチン、スピロプラチン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、スロフェヌル、タリソマイシン、テコガランナトリウム、テガフール、塩酸テロキサントロン、テモポルフィン、テニポシド、テロキシロン、テストラクトン、チアミプリン、チオグアニン、チオテパ、チアゾフリン、チラパザミン、塩酸トポテカン、クエン酸トレミフェン、酢酸トレストロン、リン酸トリシリビン、トリメトレキセート、グルクロン酸トリメトレキセート、トリプトレリン、塩酸ツブロゾール、ウラシルマスタード、ウレデパ、バプレオチド、ベルテポルフィン、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、ビンデシン、硫酸ビンデシン、硫酸ビネピジン、硫酸ビングリシネート、硫酸ビンロイロシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンロシジン、硫酸ビンゾリジン、ボロゾール、ゼニプラチン、ジノスタチン、塩酸ゾルビシン、並びにタキソール。
抗癌剤の別の実例には、トポイソメラーゼI阻害薬を含む。これは、中国産のカンプトテカという葉の先端が尖った植物から得られる、天然カンプトセシン化合物に、構造的に関連がある。トポイソメラーゼI阻害薬は、エトポシドなどのトポイソメラーゼII阻害薬とは、トポイソメラーゼ−DNA複合体に結合する点で異なり、DNAヘリックスが伸びた後に再生できなくなると、結果として細胞死が起きる。この種類で最も有望な2つの化合物は、イリノテカン及びトポテカンである。その抗癌剤は、結腸直腸癌、小細胞肺癌、卵巣癌、胃癌、子宮頸癌、皮膚癌、肝臓癌、腎臓癌、膵臓癌、精巣癌、前立腺癌、鼻咽腔癌、又は口腔癌などの様々な癌の治療に用いることができる。
[ポリペプチド]
本発明の別の態様では、治療に有効な薬剤は、生理活性タンパク質又は生理活性ペプチドである。その生理活性タンパク質又は生理活性ペプチドの実例は、細胞改変ペプチド、走化性ペプチド、抗凝固ペプチド、抗血栓症ペプチド、抗腫瘍ペプチド、抗伝染性ペプチド、増殖促進ペプチド、並びに抗炎症性ペプチドを含む。タンパク質の実例は、抗体、酵素、ステロイド、成長ホルモン及び成長ホルモン放出ホルモン、ゴナドトロピン放出ホルモン並びにそのアゴニスト及びアンタゴニスト類似体、ソマトスタチン及びその類似体、黄体形成ホルモン及び卵胞刺激ホルモンなどのゴナドトロピン、ペプチドT、サイロカルシトニン、上皮小体ホルモン、グルカゴン、バソプレシン、オキシトシン、アンジオテンシンI及びII、ブラジキニン、カリジン、副腎皮質刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、インスリン、グルカゴン、並びに上記の分子の様々な類似体及び同族体を含む。治療薬は、インスリン、MMR(おたふく風邪、はしか及び風疹)ワクチンからなるグループから選択される抗原、腸チフスワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、単純疱疹ウイルス、細菌性トキソイド、コレラ毒素Bサブユニット、インフルエンザウイルスワクチン、百日咳菌ウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、カナリア痘、ポリオワクチンウイルス、熱帯熱マラリア原虫、カルメット・ゲラン菌(BCG)、肺炎桿菌、HIVエンベロープ糖タンパク質及びサイトカイン、並びにウシ成長ホルモン(BSTと呼ばれることもある)、エストロゲン、アンドロゲン、インスリン成長因子(IGFと呼ばれることもある)、インターロイキンI、インターロイキンII及びサイトカインからなるグループから選択される薬剤から選択され得る。そのサイトカインのうちの3つは、インターフェロンα、インターフェロンβ及びタフトシンである。
ある実施態様では、細胞改変ペプチドは、抗インテグリン抗体のフラグメント、カドヘリン結合ペプチド、骨形態形成タンパク質のフラグメント、並びにインテグリン結合ペプチドからなるグループから選択される。細胞改変ペプチドは、RGDC、RGEC、RGDT、DGEA、DGEAGC、EPRGDNYR、RGDS、EILDV、REDV、YIGSR、SIKVAV、RGD、RGDV、HRNRKGV、KKGHV、XPQPNPSPASPVVVGGGASLPEFXY、並びにASPVVVGGGASLPEFXからなるグループから選択されるインテグリン結合ペプチドであることが好ましい。本発明によれば、ペプチドは、有用な生理活性分子であるとして本明細書に記載のタンパク質の、様々な機能的に活性なフラグメントでもあり得る。別の実施態様では、走化性ペプチドが、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、並びにプロテオグリカンの機能的に活性なフラグメントからなるグループから選択される。また別の実施態様では、抗癌ペプチドが、抗癌タンパク質の機能的に活性なフラグメントからなるグループから選択される。別の実施態様では、抗感染ペプチドが、抗感染タンパク質の機能的に活性なフラグメントからなるグループから選択される。別の実施態様では、成長促進ペプチドが、PDGF、EGF、FGF、TGF、NGF、CNTF、GDNF、並びにI型コラーゲン関連ペプチドの機能的に活性なフラグメントからなるグループから選択される。別の実施態様によれば、抗炎症ペプチドは、抗炎症薬の機能的に活性なフラグメントからなるグループから選択される。
本発明によれば、その他の有用な生理活性ペプチドが、合成ペプチドの組み合わせライブラリの使用によって確認され得る。そのようなものは、Houghtonらによる「Biotechniques, 13(3):412-421 (1992)」、Houghtonらによる「Nature, 354:84-86 (1991)」などに開示されており、また、Hartらによる「J. Biol. Chem. 269:12468 (1994)」などに開示されているファージ提示法を用いて確認され得る。Hartらは、哺乳類の細胞受容体に新規のペプチドリガンドを確認するためにフィラメント状のファージ提示ライブラリを公表している。一般に、例えば、M13又はfdファージを用いるファージ提示ライブラリは、上述の参照文献に開示されたような従来の方法を用いて作成される。そのライブラリは、4〜80のアミノ酸残基を含むインサートを提示する。インサートは、ペプチドの完全な変質組織又はペプチドのバイアスアレイを随意的に表す。細胞の表面にある受容体などの特定の分子に選択的に結合するリガンドは、特定の分子に結合するリガンドが、その表面に発現するそれらのファージを選択することによって得られる。所望の生理活性を有するリガンドは、公知の生理活性アッセイでスクリーニングすることができ、そのスクリーニングに基づいて選択される。次に、これらファージは、複数の再選択サイクルを実行され、最も有用な特性を有するペプチド発現ファージを同定する。一般に、結合特性を示すファージ(例えば、最も高い結合親和性又は細胞刺激活性)は、核酸分析によって更に特徴付けられ、ファージ表面に発現したペプチドの特定のアミノ酸配列及び最適な生理活性を得るための発現したペプチドの最適な長さを同定する。また、そのようなペプチドは、1つ又は複数のアミノ酸を含むペプチドの組み合わせライブラリから選択することができる。そのライブラリは、更に合成することができ、そのようなものには、天然由来の対象物と比較して酵素分解がより少ない、非ペプチドの合成部分を含む。米国特許第5,591,646号は、生理活性ペプチドをスクリーニングし、同定するのに有用な生体分子ライブラリ用の方法及び装置を開示している。ペプチドライブラリをスクリーニングする方法は、米国特許第5,565,325号にも開示されている。
組み合わせライブラリ又はその他の供給源から得られるペプチドは、当該技術分野において公知の方法によって機能活性を調べることができる。例えば、ペプチドが細胞改変ペプチド、具体的には、インテグリン結合ペプチドであるとき、当業者であれば、骨芽細胞分化を測定するために上述の実施例2のインビトロの実験を実施することによって、ペプチドが骨細胞活性を改変するかどうか容易に判断することができる。同様に、細胞固有の分化又は成長のマーカを用いて、別の種類の細胞に同様の実験を行うこともできる。当然のことながら、特定のペプチドに用いられるアッセイの種類は、ペプチドの供給源に依存する。例えば、ペプチドが抗癌分子のフラグメントである場合、ペプチドは、抗癌アッセイで機能活性を分析しなければならない。当業者であれば、特定のペプチドの機能性を分析するために適切なアッセイを容易に選択することができる。
本発明によれば、有用な生理活性分子は、様々な供給元から市販されているものであり、これら分子を作成するための方法も当該技術分野において良く知られている。生理活性ペプチド及び生理活性タンパク質は、組換え手段によって容易に合成又は生成し得る。そのような方法は、当業者には良く知られている。ペプチド及びタンパク質は、例えば、市販の自動ペプチド合成器を用いて合成することができる。また、ペプチド及びタンパク質は、組み換え技術によって生成することができ、ペプチドを発現するDNAを発現ベクタに組み込み、ペプチドを生成するためにその発現ベクタとともに細胞を形質転換させる。そのような実施例では、DNA発現ベクタは、本発明の装置を使用して送達される治療に有効な薬剤となる。また、本発明の埋め込み型デバイスに収容されるDNA発現ベクタは、それ自体が真核細胞内に存在することができる。その細胞は、様々な免疫毒性を排除するように自己移植することができる。また、異種細胞が使用されるようにすることもでき、その細胞は、受容する動物の体内で免疫毒性を減少させるように、最小限にするように、又は排除するように操作される。
当然のことながら、操作された分泌細胞が、貯蔵室のある層に配置されたとき、免疫毒性を排除するために、本発明のデバイスが、一連の治療中に従来の免疫抑制剤を使用し得ることは当業者には明らかである。そのような免疫抑制剤の例としては、これらに限定されるものではないが、シクロホスファミド、シクロスポリン、タクロリムス(FK506)、アザチオプリン、プレドニゾン、メチルプロドニゾロン、プロスタグランジン、並びにステロイドを含む。これらは、組織拒絶反応を抑制し、免疫トレランスを促進するようにインプラントとともに投与されることが、当該技術分野において知られている。本発明のある態様では、本発明の埋め込み型デバイスは、治療のための導入遺伝子産物を生成する細胞に加えて、追加的な免疫抑制薬を供給し得る。
また、デバイスは、貯蔵室部分に含まれた細胞から生成される治療用タンパク質を退出させるふるいとして機能し、動物の免疫システムへの細胞の暴露を防止する。そのような実施例では、治療薬を生成する細胞を含む埋め込み型デバイスの設計が当該技術分野において知られており、例えば、米国特許第6,743,626号に開示されており、それに言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。
本発明のデバイス及び方法で使用される有効な薬剤となり得る追加的な生理活性分子がある。例えば、様々な形態であり得るIL−I(例えば、IL−1−α及びIL−1−β)を、対象物の標的細胞又は標的組織、或いは細胞培養アッセイのインビトロの標的細胞又は標的組織に送達することができる。本発明の方法及び構造体に用いるのに好適なサイトカインは、リンフォカインである。即ち、それらサイトカインは、細胞分化の誘発、並びに骨髄及びおそらくその他の造血細胞の成熟に主に関連する。好適なリンフォカインは、IL−Iである。その他に、そのようなリンフォカインには、これらに限定されるものではないが、G−CSF、M−CSF、GM−CSF、マルチCSF(IL−3)、並びにIL−2(T細胞成長因子、TCGF)を含む。IL−Iは、その効果が主に骨髄細胞に作用し、IL−2は、主にT細胞に作用し、IL−3は、複数のリンパ球前駆細胞に作用し、G−CSFは、主に顆粒球及び骨髄細胞に作用し、M−CSFは、主にマクロファージ細胞に作用し、GM−CSFは、顆粒球及びマクロファージの両方に作用する。その他の成長因子は、未分化の小板(血小板)細胞、赤血球系細胞などに作用する。
本発明の別の態様では、サイトカインは、単独又は組み合わせで用いることができ、細胞毒性薬に関連する骨髄毒性又は造血毒性を抑制、軽減、及び/又は好転させるようにする。可能と思われる組み合わせの例には、IL−1+GC−CSF、IL−1+IL−3、G−CSF+IL−3、IL−1+血小板成長因子などを含む。好適な特定の組み合わせは、作用する標的細胞又は標的組織の成熟状態、及び保護剤の投与が必要な細胞毒性作用の経過時間に依存する。例えば、複数の造血細胞型(例えば、骨髄、リンパ及び血小板)が減少した患者には、IL−1+IL−3及び/又は血小板成長因子の組み合わせが好ましい。骨髄系細胞の減少がよりひどい患者では、IL−1+G−CSFのような組み合わせを必要とされる。特定の細胞毒性薬は、薬剤の種類又は治療効果を得るのに必要な投与量により、特定の造血要素にかなり犠牲的な影響を与える。そして、適切なサイトカインの選択、適切な投与量及び適切な投与モードは、その影響に応じて決定される。本発明のデバイスは、所望の治療及び基礎症状に基づいて、特定のサイトカイン又は成長因子を送達するようにカスタマイズして設計することができる。
本発明の別の態様では、埋め込み型デバイスは、抗体などのタンパク質を送達するように設計される。抗体は、例えば、微生物の侵襲又はがん細胞の繁殖に直接作用(例えば、補体媒介)することによって、或いは、例えば、T細胞(例えば、キラー細胞)の移動を介した間接モードによって、抗体自体を細胞毒性薬として使用することができる。T細胞の移動は、抗体依存性細胞障害(ADCC)として知られている作用である。本明細書では非抱合型の細胞傷害抗体の治療として示される、その抗体の細胞障害は、造血系の要素の犠牲も生じさせる。その副作用は、サイトカイン療法の補助療法で、防止、軽減及び/又は好転させることができる。言い換えれば、埋め込み型デバイスは、サイトカイン治療薬を同時に放出し、上述の副作用のいずれかを軽減させることができるようにする。
また別の態様では、デバイスは、血管形成を促進するタンパク質因子を送達する。近年、組織内に新しい血管を成長させる血管形成は、研究の数が増加している研究対象である。組織のある領域に酸素を豊富に含む血液を新たに供給するためのそのような血管の成長は、様々な組織及び筋肉の病気、特に、虚血を改善する可能性がある。研究は、主に、遺伝子工学技術によって生成されるヒト成長因子などの血管新生因子を完成させることに焦点があてられてきた。そのような成長因子の心筋組織への注入は、その部位において血管形成を開始することが報告されており、それは、組織内の新たな密度の高い毛細血管網によって示されている。Schumacherらの「Induction of Neo-angiogenesis in Ischemic Myocardium by Human Growth Factors, Circulation, 1998; 97:645-650」。血管新生因子としては、これらに限定されるものではないが、VEGF、低酸素誘導因子(HIF)、線維芽細胞成長因子(FGF)、HO−1、SOD、NOSII、NOSIII、胎盤成長因子(PLGF)、TGF−β、アンジオポイエチン−1、bFGF、並びにマクロファージ走化性タンパク質−1(MCP−1)に加えて、それらの機能誘導体、又はそれらの組み合わせを含む。
[核酸]
核酸は、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、並びに当該技術分野で認知され、生物学的な機能をもつそれらの類似体及び誘導体(例えば、ホスホロチオエート結合を有するオリゴヌクレオチド類似体を含む)を含む。追加的な実例としては、アンチセンスRNA、siRNA、ミクロRNA、DNA−RNAハイブリッド、並びに核酸を含有するベクタを含む。ベクタの例には、アデノウイルスベクタ、アデノ随伴ウイルスベクタ、レトロウイルスベクタ、及び/又はプラスミドベクタを含む。本発明のデバイスは、当該技術分野において公知の組み換えDNA技術を利用することができる。また、本発明の方法に有用な組み換え遺伝子は、タンパク質のインタレストを符号化する公知の核酸分子を含み、そのタンパク質は、対象の治療において有用なものである。
また、核酸は、タンパク質を符号化する核酸分子、1つ又は複数の遺伝子を含む核酸(例えば、イントロン及びエクソンを含む)、融合タンパク質を符号化する核酸、選択可能なマーカを符号化する核酸を含む、或いは上記のいずれか1つ又は組み合わせを備えるベクタを含有する核酸が含まれる。
本発明の態様の一部では、核酸ベクタは、本発明の装置内部に配置され、標的細胞又は標的組織に送達される。別の態様では、そのベクタは、治療用タンパク質又はアンチセンスmRNAを符号化することができる。本発明のまた別の態様では、1つ又は複数のベクタが、本発明のデバイスを介して細胞又は組織に送達される様々な治療に有効な薬剤を各々符号化する。
したがって、本発明のデバイスは、制御可能にベクタを放出し、遺伝子治療などにおいて遺伝子の送達を生じさせる。遺伝子の送達は、内生的に又は外生的に制御され得る。内生的な制御の実例は、低酸素症又は血糖値上昇などの生理学的信号に反応しやすいプロモータを含む。外生的な制御システムは、小分子薬物を投与することによって制御される遺伝子発現に関連する。実施例には、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、エクジソン及びその類似体、RU486、ラパマイシンなどの化学的二量体及びその類似体などを含む。
本発明の別の態様では、デバイスは、上述したような小分子薬物を送達することができる。ただし、デバイスは、ベクタ及び誘導薬剤(例えば、小分子薬物)、ベクタ単独又はそのいくつかの組み合わせを送達するために使用される。
ベクタは、SV−40、アデノウイルス、機能性の哺乳類ベクタ及び機能性のプラスミドの組み合わせから得られるレトロウイルス由来DNA配列及びシャトルベクタ、並びにファージDNAを含む。真核生物発現ベクタは、よく知られており、例えば、P J Southern及びP Bergによる「J Mol Appl Genet 1:327-341 (1982)」、Subraminiらによる「Mol Cell. Biol. 1:854-864 (1981)」、Kaufinann及びSharpによる「J Mol. Biol. 159:601-621 (1982)」、Scahillらによる「PNAS USA 80:4654-4659 (1983)」、並びにUrlaub及びChasinによる「PNAS USA 77:4216-4220 (1980)」などに記載されており、それらに言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。本発明の方法で用いられるベクタは、ウイルスベクタであって良く、レトロウイルスベクタであることが好ましい。複製欠損性アデノウイルスが好ましい。例えば、長い末端反復配列に含まれるウイルス調節配列の制御の下で、レトロウイルスの構造遺伝子にある「単一遺伝子ベクタ」は、単一遺伝子のインタレストによって置換される。単一遺伝子ベクタには、例えば、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMulV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV)及びマウス骨髄増殖性肉腫ウイルス(MuMPSV)、並びに細網内皮症ウイルス(Rev)及びラウス肉腫ウイルス(RSV)などの鳥レトロウイルスを使用することができることが、Eglitis及びAndersenによる「BioTechniques 6(7):608-614 (1988)」に記載されており、それに言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。
本発明の方法によれば、複数の遺伝子が導入され得る組み換えレトロウイルスベクタも使用されるようにすることができる。上述のEglitis及びAndersenによる文献に記載されているように、単独のプロモータ、例えば、選択可能なマーカ(noe.sup.R)をもったN2ベクタから得られるSAXベクタの調節の下で、cDNAを含む内部プロモータL5を備えるベクタに、ヒトアデノシンデアミナーゼ(hADA)のためのcDNAが、それ自体の調節配列をもって導入される。SV40ウイルスからの初期プロモータ(SV40)は、当該技術分野において公知の方法によって、本発明の方法に整合するように設計され、使用されるようにすることもできる。
本発明の一部の態様では、組み換え核酸分子を含むベクタは、最初に、本発明の装置内に配置された細胞に導入(例えば、トランスフェクト)される。例えば、組み換え核酸分子を含むベクタは、ベクタ生成細胞上に最大〜5e5のBM−MNCを18〜24時間メッキすることによって、BM−MNCに導入される、即ち、感染されるようにすることが、Eglitis及びAndersenによる「BioTechniques 6(7):608-614 (1988)」に記載されており、それに言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。次に、前記細胞は、デバイスの貯蔵室部分に配置される。
本発明の態様の一部では、核酸分子は、成長因子などのタンパク質を符号化する。成長因子としては、これらに限定されるものではないが、VEGF−A、VEGF−C、PIGF、KDR、EGF、HGF、FGF、アンジオポイエチン−1、並びにサイトカインを含む。更なる好適な実施態様では、核酸分子は、内皮一酸化窒素合成酵素eNOS及びiNOS、G−CSF、GM−CSF、VEGF、aFGF、SCF(c−キット配位子)、bFGF、TNF、ヘムオキシゲナーゼ、AKT(セリントレオニンキナーゼ)、HIF−α(低酸素誘導因子)、Del−1(発生的胚遺伝子座1)、NOS(酸化窒素シンターゼ)、BMP(骨形態形成タンパク質)、SERCA2a(筋小胞体カルシウムATPアーゼ)、βサブ2−アドレナリン作動性受容体、SDF−1、MCP−1、その他のケモカイン、インターロイキン、並びにそれらの組み合わせを符号化する。本発明の更なる態様では、本発明の装置/デバイスは、本発明の方法を用いて自己移植BM−MNCに送達され得る遺伝子を含む。そのような遺伝子としては、これらに限定されるものではないが、核酸分子符号化因子VIII/フォンヴィレブランド、因子IX及びインスリン、eNOS及びiNOSなどの遺伝子を生成するNO、抗血小板遺伝子、血栓抑制遺伝子などを含む。したがって、そのような実施例では、本発明の装置は、その装置の貯蔵室のある層に治療薬を分泌する細胞を含み、治療薬は、装置のその場所から、周囲の細胞(例えば、インビトロ又はインビボ)に退出する。上述の成長因子は、合成タンパク質又は組み換えタンパク質の形態で送達することもできることを理解されたい。
哺乳類の宿主細胞では、複数のウイルスに基づいた発現系を利用することができる。アデノウイルスが発現ベクタとして用いられる場合、ヌクレオチド配列のインタレスト(例えば、治療に有効な薬剤の符号化)は、アデノウイルス転写又は翻訳調節複合体(例えば、後期プロモータ及び三分割リーダ配列)に結合することができる。次に、このキメラ遺伝子は、インビトロ又はインビボ組み換えによって、アデノウイルスゲノムに挿入することができる。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、E1又はE3領域)への挿入は、感染した宿主組織内でAQP1遺伝子産物を発現させることができる組み換えウイルスを生じさせる(Logan及びShenkによる「Proc. Natl. Acad. Sci. USA 8 1:3655-3659 (1984)」などを参照されたい)。特定の開始信号も、挿入した治療用ヌクレオチド配列の効果的な翻訳のために必要とされる。これら信号は、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。治療用遺伝子又はcDNAの全体(それ自体の開始コドン及び隣接配列を含む)が、適切な発現ベクタに挿入された場合、追加の翻訳制御信号は必要とされない。しかしながら、治療用コード配列の一部だけが挿入された場合、おそらく、ATG開始コドンを含む外部からの翻訳制御信号が供給されなければならない。また、開始コドンは、インサート全体の翻訳をさせるために、所望のコード配列のリーディングフレームと一致していなければならない。これら外部からの翻訳制御信号及び開始コドンは、様々な自然発生源及び人為発生源から発生し得る。発現の効果は、適切な転写エンハンサ要素、転写ターミネータなどを含むことによって高めることができる(Bittnerらによる「Methods in Enzymol, 153:516-544 (1987)」などを参照されたい)。
[組織工学]
本発明のいくつかの態様では、本発明の外層は、組織接触面を規定する基板表面を含み、前記基板は、細胞/組織の成長を促進するポリペプチド又はペプチドと共に配置される。そのようなポリペプチド/ペプチドの例としては、ペプチドPDGF、EGF、FGF、TGF、NGF、CNTF、GDNF、VEGF及びI型コラーゲンペプチド、又は機能的に活性なフラグメント、及び/又はそれらの組み合せがある。
本発明のある態様では、本発明のペプチドコーティングされた埋め込み型装置は、組織の成長を促進及び/又加速する。例えば、前記装置は、損傷した骨の領域又は骨置換手術における骨成長の促進に使用することができる。骨及び関節の置換手術は、変形性関節症、関節リウマチ、外傷後変性症、虚血壊死、及び他の老化に関連した病状を持つ患者に対して、痛みの軽減、機能の改善、及び生活の質の向上を図るために一般的に行われる。
骨成長を促進する生物活性ペプチドでコーティングされた本発明の前記装置は、インプラントの骨表面に付着して残る能力を大きく向上させる。この機能を果たす好ましいインテグリン結合ペプチドは、RGDC、RGEC、RGDT、DGEA、DGEAGC、EPRGDNYR、RGDS、EILDV、REDV、YIGSR、SIKVAV、RGD、RGDV、及びHRNRKGVである。同時に、本発明の装置は、骨細胞増殖及び分化を増進及び促進する治療用物質を、治療達成に必要な期間に渡って放出又は送達させることができる。
本発明の他の態様では、前記装置は、共有結合的に架橋した短ペプチド及び生理活性因子を含有しているフィブリン基質を備える。そのような因子は、装置52の外面に付着させることができる(図5)。前記フィブリン基質は、さらに、フィブリンゲルと定義され得る。組織成長に適切な三次元構造を提供し、組織の治癒のための天然マトリックスであるので、前記選択されたマトリクスはフィブリンである。前記架橋結合は、外生要因を前記ゲルに付着させるための天然因子XIIIを使用して、酵素的に達成される。このことを行うために、酵素がそれを認識してマトリック内に架橋結合するように、架橋結合部位を模倣した配列を前記ペプチド内に組み込むことができる。
本発明の装置から投与されたペプチド配列又は他の生理活性因子を加えることにより、これらのフィブリンゲルに新規の活性が与えられる。これらの物質は、治療及び組織再生の促進、細胞移植のための神経血管床の形成、及び、数多くの組織工学の他の態様に有用である。したがって、本発明の別の態様では、これらの特殊な目的のために形成及び構成された組織を提供する。
[細胞培養]
本発明の他の態様では、本発明の装置又は方法は、細胞培養又は組織培養分析に使用することができる。例えば、前記装置は細胞培養に使用され、特定の物質の細胞又は組織培養における効果をモニタするために前記物質を制御的に放出する。例えば、本発明の装置は、そのような化合物が細胞分化を誘導する構造を調べるために様々な物質をスクリーニングするの使用することができる(例えば、幹細胞の作用を研究するのに)。細胞及び組織培養を使用した方法は、当該技術分野では公知であり、例えば次のものがある。米国特許第7,008,634号(繋がれた細胞成長エフェクタ分子と共に細胞成長基板を使用する)、第6,972,195号(潜在的再生細胞の機能的組織器官をインビトロで培養する)、第6,982,168号若しくは第6,962,980号(ガン治療用の化合物を分析するために細胞培養を使用する)、第6,902,881号(細胞分化を仲介する物質を同定するための培養技術)、第6,855,504号(毒性スクリーニングのための培養技術)、又は第6,846,625(細胞培養技術を使用して、確認された標的薬物の成果を識別する)。上記のそれぞれの開示は、それに言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。当業者には明らかなように、本発明の装置は、そのような細胞培養技術に容易に適用することができる。
[鎮痛剤]
本発明のある態様では、本発明の装置は、鎮痛剤を送達するのに使用される。鎮痛剤としては、これらに限定されるものではないが、例えば次のものがある。ブピバカイン及びその誘導体(例えば、ハイドロクロライド)、レボブピバカイン、リドカイン及びその誘導体、ガバペンチン及びその誘導体、ケタミン及びその誘導体、クロニジン及びその誘導体、デクスタトミド及びその誘導体、ロピバカイン及びその誘導体、又はそれらの組み合せなど。
[抗生物質]
本発明のいくつかの態様では、本発明の装置は、抗生物質又は抗感染薬を送達するのに使用される。抗感染薬は、微生物の活動を抑制する又は微生物を殺滅させる。抗感染薬としては、例えば次のものがある。アズトレオナム、グルコン酸クロルヘキシジン、イミド尿素、リセタミン、ニブロキサン、ピラズモナムナトリウム、 プロピオン酸、ピリチオンナトリウム、塩化サングイナリウム、チゲモナムジコリン、アセダプソン、アセトスルホンナトリウム、アラメシン、アレキシジン、アムジノシリン、アムジノシリンピボキシル、アミサイクリン、アミフロキサシン、アミフロキサシンメシラート、アミカシン、硫酸アミカシン、アミノサリチル酸、アミノサリチル酸ナトリウム、アモキシシリン、アンホマイシン、アンピシリン、アンピシリンナトリウム、アパルシンナトリウム、アプラマイシン、硫酸アストロマイシン、アビラマイシン、アボパルシン、アジスロマイシン、アズロシリン、アズロシリン・ナトリウム、塩酸バカンピシリン、バシトラシン、バシトラシンメチレン、バシトラシン亜鉛、バンバーマイシン、ベンゾイルパスカルシウム、ベリスロマイシン、硫酸ベタマイシン、硫酸ベタマイシン、ビアペネム、ビニラマイシン、塩酸ビフェナミン、ビスピリチオンマグスルフェクス、ブチカシン、硫酸ブチロシン、硫酸カプレオマイシン、カルバドックス、カルベニシリン2ナトリウム、カルベニシリンインダニルナトリウム、カルベニシリンフェニルナトリウム、カルベニシリンカリウム、カルモナムナトリウム、セファクロール、セファドロキシル、セファマンドール、セファマンドールナファート、セファマンドールナトリウム、セファパロール、セファトリジン、セファザフルールナトリウム、セファゾリン、セファゾリンナトリウム、セフブペラゾン、セフジニル、セフェピメ、塩酸セフェピメ、セフェテコール、セフィキシム、塩酸セフメノキシム、セフメタゾール、セフメタゾールナトリウム、セフォニシドモノナトリウム、セフォニシド2ナトリウム、セフォペラゾンナトリウム、セフォラニド、セフォタシキムナトリウム、セフォテタン、セフォテタン2ナトリウム、塩酸セフォチアム、セフォキシチン、セフォキシチンナトリウム、セフピミゾール、セフピミゾールナトリウム、セフピラミド、セフピラミドナトリウム、硫酸セフピローム、セフポドキシムプロキセチル、セフプロジル、セフロキサジン、セフスロジンナトリウム、セフタジジム、セフチブテン、セフチゾキシムナトリウム、セフトリアキソンナトリウム、セフロキシム、セフロキシムアクセチル、セフロキシムピボキセチル、セフロキシムナトリウム、セファセトリルナトリウム、セファレキシン、塩酸セファレキシン、セファログリシン、セファロリジン、セファロチンナトリウム、セファピリンナトリウム、セフラジン、塩酸セトサイクリン、セトフェニコール、クロラムフェニコール、パルミチン酸クロラムフェニコール、クロラムフェニコールパントテン酸錯体、コハク酸クロラムフェニコールナトリウム、クロルヘキシジン、クロロキシレノール、硫酸クロルテトラサイクリン、塩酸クロルテトラサイクリン、シノキサシン、シプロフロキサシン、塩酸シプロフロキサシン、シロレマイシン、クラリスロマイシン、塩酸クリナフロキサシン、クリンダマイシン、塩酸クリンダマイシン、パルミチン酸塩クリンダマイシン、リン酸クリンダマイシン、クロファジミン、クロキサシリンベンザチン、クロキサシリンナトリウム、クロキシキン、コリスチメサートナトリウム、硫酸コリスチン、クメルマイシン、クメルマイシンナトリウム、シクラシリン、シクロセリン、ダルフォプリスチン、ダプソン、ダプトマイシン、デメクロサイクリン、塩酸デメクロサイクリン、デメサイクリン、デノフンギン、ジアベリジン、ジクロキサシリン、ジクロキサシリンナトリウム、硫酸ジヒドロストレプトマイシン、ジピリチオン、ジリスロマイシン、ドキシサイクリン、ドキシサイクリンカルシウム、ドキシサイクリンホスファテックス、ドキシサイクリンヒクラート、ドロキサシンナトリウム、エノキサシン、エピシリン、塩酸エピテトラサイクリン、エリスロマイシン、エリスロマイシンアシストレート、エリスロマシンエストレート、エチルコハク酸エリスロマイシン、エリスロマイシングルセプテート、ラクトビオン酸エリスロマイシン、プロピオン酸エリスロマイシン、ステアリン酸エリスロマイシン、塩酸エタンブトール、エチオナミド、フレロキサシン、フロキサシリン、フルダラニン、フルメキン、ホスホマイシン、ホスホマイシントロメタミン、フモキシシリン、塩化フラゾリウム、酒石酸フラゾリウム、フシジン酸ナトリウム、フシジン酸、硫酸ゲンタマイシン、グロキシモナム、グラミシジン、ハロプロジン、ヘタシリン、ヘタシリンカリウム、ヘキセジン、イバフロキサシン、イミペネム、イソコナゾール、イセパマイシン、イソニアジド、ジョサマイシン、硫酸カナマイシン、キタサマイシン、レボフラルタドン、レボプロピルシリンカリウム、レキシスロマイシン、リンコマイシン、塩酸リンコマイシン、ロメフロキサシン、塩酸ロメフロキサシン、メシル酸ロメフロキサシン、ロラカルベフ、マフェナイド、メクロサイクリン、スルホサリチル酸メクロサイクリン、リン酸メガロミシンカリウム、メキドクス、メロペネム、メタサイクリン、塩酸メタサイクリン、メテナミン、馬尿酸メテナミン、マンデル酸メテナミン、メチシリンナトリウム、メチオプリム、塩酸メトロニダゾール、リン酸メトロニダゾール、メズロシリン、メズロシリンナトリウム、ミノサイクリン、塩酸ミノサイクリン、塩酸ミリンカマイシン、モネンシン、モネンシンナトリウム、ナフシリンナトリウム、ナリジクス酸ナトリウム、ナリジクス酸、ナタマイシン、ネブラマイシン、パルミチン酸ネオマイシン、硫酸ネオマイシン、ウンデシレン酸ネオマイシン、硫酸ネチルマイシン、ニュートラマイシン、ニフラデン、ニフラルデゾン、ニフラテル、ニフラトロン、ニフルダジル、ニフリミド、ニフルピリノール、ニフルキナゾール、ニフルチアゾール、ニトロサイクリン、ニトロフラントイン、ニトロミド、ノルフロキサシン、ノボビオシンナトリウム、オフロキサシン、オルメトプリム、オキサシリンナトリウム、オキシモナム、オキシモナムナトリウム、オキソリン酸、オキシテトラサイクリン、オキシテトラサイクリンカルシウム、塩酸オキシテトラサイクリン、パルジマイシン、パラクロロフェノール、パウロマイシン、ペフロキサシン、ペフロキサシンメシラート、ペナメシリン、ベンザチンペニシリンG、ペニシリンGカリウム、ペニシリンGプロカイン、ペニシリンGナトリウム、ペニシリンV、ベンザチンペニシリンV、ヒドラバミンペニシリンV、ペニシリンVカリウム、ペンチジドンナトリウム、アミノサリチル酸フェニル、ピペラシリンナトリウム、ピルベニシリンナトリウム、ピリジシリンナトリウム、塩酸ピルリマイシン、塩酸ピバンピシリン、ピバンピシリンパモエート、ピバンピシリンプロベネート、硫酸ポリミキシンB、ポルフィロマイシン、プロピカシン、ピラジンアミド、亜鉛ピリチオン、酢酸キンデカミン、キヌプリスチン、ラセフェニコール、ラモプラニン、ラニマイシン、レロマイシン、レプロマイシン、リファブチン、リファメタン、リファメキシル、リファミド、リファンピン、リファペンチン、リファキシミン、ロリテトラサイクリン、硝酸ロリテトラサイクリン、ロサラマイシン、酪酸ロサラマイシン、プロピオン酸、リン酸ナトリウム、ステアリン酸ロサラマイシン、ロソキサシン、ロキサルソン、ロキシスロマイシン、サンサイクリン、サンフェトリネンナトリウム、サルモキシシリン、サルピシリン、スコパフンギン、シソマイシン、硫酸シソマイシン、スパルフロキサシン、塩酸スペクチノマイシン、スピラマイシン、塩酸スタリマイシン、ステフィマイシン、硫酸ストレプトマイシン、ストレプトニコジド、スルファベンズ、スルファベンザミド、スルファセトアミド、スルファセタミドナトリウム、スルファシチン、スルファジアジン、スルファジアジンナトリウム、スルファドキシン、スルファレン、スルファメラジン、スルファメータ、スルファメサジン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファモノメトキシン、スルファモキソール、スルファニル酸亜鉛、スルファニトラン、スルファサラジン、スルファソミゾール、スルファチアゾール、スルファザメト、スルフィソキサゾール、スルフィソキサゾールアセチル、スルフィソキサゾールジオラミン、スルホミキシン、スロペネム、スルタミシリン、サンシリンナトリウム、塩酸タランピシリン、テイコプラニン、塩酸タランピシリン、テイコプラニン、テトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、リン酸テトラサイクリン錯体、テトロキソプリム、チアンフェニコール、チフェンシリンカリウム、チカルシリンクレシルナトリウム、チカルシリン2ナトリウム、チカルシリンモノナトリウム、チクラトン、塩化チドニウム、トブラマイシン、硫酸トブラマイシン、トスフロキサシン、トリメトプリム、硫酸トリメトプリム、硫酸トブラマイシン、トロレアンドマイシン、硫酸、チロトリシン、バンコマイシン、塩酸バンコマイシン、バージニアマイシン、ゾルバマイシン、塩酸ジフロキサシン、ラウリルイソキノリニウムブロミド、モキサラクタム2ナトリウム、オルニダゾール、ペンチソマイシン、塩酸サラフロキサシン、及びそれらの誘導体、並びに、それらの組み合せ。
[抗炎症薬]
本発明のある態様では、本発明の装置は、抗炎症薬を送達するのに使用される。抗炎症薬は、炎症反応を減少させる。抗炎症薬としては、次のようなステロイド性系及び非ステロイド系化合物がある。アルクロフェナック、ジプロピオン酸アルクロメタゾン、アルゲストンアセトニド、αアミラーゼ、アンシナファル、アンシナフィド、アンフェナクナトリウム、塩酸アミプリロース、アナキンラ、アニロラク、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド2ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン、ブロペラモル、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラク、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸コルメタゾン、コルトドキソン、デフラザコート、デソニド、デスオキシメタゾン、ジプロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナクカリウム、ジクロフェナクナトリウム、2酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサル、ジフルプレドネート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラク、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモル、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フェンクロラク、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザク、フラザロン、フルアザコート、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルカゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナク、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコノール、イロニダプ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパク、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロルノキシカム、ロテプレドノールエタボネート、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、メクロリソンジブチラート、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニゾロン、モルニフルメート、ナブメトン、ナプロキセン。ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ペントサンポリ硫酸ナトリウム、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム、ピルフェニドン、ピロキシカム、ケイ皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナザート、プリフェロン、プロドール酸、プロカゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリト、サルコレクス、サルナセジン、サルサラート、塩化サンギナリウム、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサラート、テブフェロン、テニダプ、テニダプナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトル、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシ、ゾメピラックナトリウム。
さらなる非ステロイド系の抗炎症薬としては、これらに限定されるものではないが、アスピリン、ジクロフェナク、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトロラク、ナプロキセン、及びスプロフェンがある。さらなる変形例では、抗炎症薬は、ステロイド系の抗炎症薬である。
[抗凝血剤]
本発明のある態様では、本発明の装置は、抗凝血剤を送達するのに使用される。抗凝血剤の分子は、血液凝固を防止する。抗凝血剤としては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。アンクロド、抗凝血クエン酸デキストロース液、抗凝血リン酸クエン酸デキストロースアデニン液、抗凝血リン酸クエン酸デキストロース液、抗凝血ヘパリン液、抗凝血クエン酸ナトリウム液、アルデパリンナトリウム、ビバリルジン、ブロミンジオン、ダルテパリンナトリウム、デシルジン、ジクマロール、ヘパリンカルシウム、ヘパリンナトリウム、リアポレートナトリウム、メシル酸ナファモスタット、フェンプロクモン、チンザパリン、ワルファリンナトリウム。
[抗血栓薬]
本発明のある態様では、本発明の装置は、抗血栓薬を送達するのに使用される。抗血栓薬の分子は、血栓の形成を防止する。抗血栓薬としては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。塩酸アナグレリド、ビバリルジン、ダルテパリンナトリウム、ダナパロイドナトリウム、塩酸ダゾキシベン、エフェガトランスルファターゼ、エノキサパリンナトリウム、イフェトロバン、イフェトロバンナトリウム、チンザパリンナトリウム、トリフェナグレル。
[放射線治療]
本発明のいくつかの態様では、本発明の埋め込み型装置を経由して放射性同位元素を送達することができる。例えば、ガン及び他の病的状態の治療に様々な放射線治療方法を使用できることが当該技術分野では周知であり、例えば、Harbertによる「"Nuclear Medicine Therapy", New York, Thieme Medical Publishers, 1987, pp. 1-340」に開示されている。放射線治療の経験が豊富な臨床医は、放射線治療を行う病気の苦痛軽減又は治療をするために、前記埋め込み型装置を放射線治療に容易に適用することができる。
放射線治療のいくつかの態様では、これらに限定されるものではないが、半減期が短いアイソトープ及びアイソトープ塩を含む(例えば、Y−90、P−32、1−131、Au198)。そのため、本発明のある態様では、前記埋め込み型装置を、放射性同位元素の送達に使用することができる。
また、放射性同位元素、薬剤及び毒素は、ガン細胞から作成された又は関連するマーカーと特異的に結合する抗体又は抗体フラグメントと結合でき、前記抗体複合体を使用して、治療効果を強化し、副作用を最小限に抑えるために、放射性同位元素、薬剤及び毒素が腫瘍部位を標的できることがよく知られている。これらの物質及び方法の例は、「Immunoconjugates」の「Wawrzynczak及びThorpe (in Introduction to the Cellular and Molecular Biology of Cancer, L. M. Franks and N. M. Teich, eds, Chapter 18, pp. 378-410, Oxford University Press, Oxford, 1986)」に掲載されている。また、「Antibody Conjugates in Radioimaging and Therapy of Cancer(C-W. Vogel, ed., 3-300, Oxford University Press, New York, 1987)」に、「Dillman, R. O. (CRC Critical Reviews in Oncology/Hematology 1:357, CRC Press, Inc., 1984)」に、「Pastan et al. (Cell 47:641, 1986)」に、「Vitetta et al . (Science 238:1098-1104, 1987)」に、及び、「Brady et al. (Int. J. Rad. Oncol. Biol. Phys . 13:1535-1544, 1987)」に掲載されている。免疫抱合体をガン及び他の治療方法へ使用するの他の例は、とりわけ、Goldenbergによる米国特許第4,331,647号、第4,348,376号、第4,361,544号、第4,468,457号、第4,444,744号、第4,460,459,号、第4,460,561号、及び第4,624,846号、Rowlandによる米国特許第4,046,722号、Rowlandらによる米国特許第4,671,958号、Shihらによる米国特許第4,699,784号に開示されている(これらの開示の内容は、参考として本明細書中に援用される)。
本発明の他の態様では、前記埋め込み型装置は、放射性同位元素に抱合された抗体を送達する治療に使用される。
放射性同位元素治療の多くは、ベータ放射体、アルファ放射体、及び/又は、インサイチュー(in situ)でボロン10原子の中性子放射化によって生成された放射性同位元素によって効果が得られる。P−32オルトリン酸塩は、本発明の装置によって投与することができる。例えば、前記装置は、治療期間中に、約3〜10mCiの用量、0.1〜1.5mCiの用量、又は臨床的に必要とされる7〜10mCiの用量の制御放出を行うよう設計することができる。
本発明の他の態様では、これらの当量は、放射性同位元素治療後の数日間に、約5〜20μg(好ましく5〜10μg)のIL−1の連続的投与又は断続的投与(すなわち制御放出)を同時に行うことにより、約10%から約35%(好ましくは約15%から約25%)に増加させることができる。同様に、IL−1(5〜10μg)と同時又は治療後に、Re−186を単独で又はIL−3(2〜10μg)と組み合わせて投与することが、1〜2週間の治療期間中に数回繰り返される。
さらに、本発明の他の態様では、1つ又はそれ以上の埋め込み型装置を埋め込み、それぞれの装置が異なる治療物質(例えば、放射性同位元素)を制御放出するようにすることもできる。当然のことながら、本明細書を通じて述べたように、各装置は、異なる治療物質(例えば、放射性同位元素とサイトカイン)を組み合わせて放出することが可能である。
[皮膚に関して]
本発明のある態様では、装置は、皮膚的疾患の治療において、治療薬を経皮的に送達するのに使用することができる。例えば、低分子量の化合物(単一の鎮痛薬、又は、複数の鎮痛薬の混合物)は、本発明の経皮的送達システムの実施形態を使用して、身体の細胞に経皮的に送達される。このような治療薬の例としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)がある。NSAIDは、高頻度で全身投与される。NSAIDは、としては、これらに限定されるものではないが、次のものがある。イブプロフェン(2−イソブチルフェニル)−プロピオン酸)、メトトレキサート(N−[4−(2,4ジアミノβ−プテリジニル−メチル)メチルアミノ]ベンゾイル)−L−グルタミン酸)、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、ジフェンヒドラミン(2−ジフェニルメトキシ)−NN−塩酸ジメチルエチルアミン)、ナプロキセン(2−ナフタリン酢酸、6−メトキシ−9−メチル−、ナトリウム塩、(−))、フェニルブタゾン(4−ブチル−1、2−ジフェニル−3、5−ピラゾリジンジオン)、スリンダク−(2)−5−フオロ−2−メチル−1−[[p−(メチルフルフィニル)フェニル]メチレン−]−1H−インデン−3−酢酸、ジフルニサル(2´、4´−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−3−ベフェニルカルボン酸)、ピロキシカム(4ヒドロキシ−2メチル−N−ピリジニル‐2H−l、2−ベンゾサイアジン−2−カルボキサミド、1,1‐ジオキシド、オキシカム、インドメタシン(1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−H−インドール−3−酢酸)、メクロフェナメイトナトリウム(N−(2,[ベータ]−ジクロロ−m−トリル)アントラニル酸、ナトリウム塩、一水和物、ケトプロフェン(2−(3−ベンゾイルフェニル)−プロピオン酸、トルメチンナトリウム(ナトリウム1−メチル−5−(4−メチルベンゾイル−1H−ピロール−2−酢酸二水和物、ジクロフェナクナトリウム(2−[(2,β−ジクロフェニル)アミノ]ベンゼニアティック酸、モノナトリウム塩)、硫酸ヒドロキシクロロキン(2−{[4[(7−クロロ−4−キノリル)アミノ]ペンチル]硫酸エチルアミノエタノール(1:1)、ペニシラミン(3−メルカプト−D−バリン)、フルルビプロフェン([1,1−ビフェニル]−4−酢酸、2−フルオロ−アルファメチル−、(+−.)、セトドラク(l−8−ジエチル−13,4,9,テトラヒドロピラノ−[3−4−13]インドール−1−酢酸、メフェナム酸(N−(2,3−キシリル)アントラニル酸、塩酸ジフェンヒドラミン(2−ジフェニルメトキシ−N、N−塩酸ジメチチミン)。
本発明のさらなる態様では、湿疹、アトピー性皮膚炎、乾癬、掻痒、魚鱗癬、にきび、炎症、紅斑、及び皮膚保護層の機能障害に伴う細菌感染の治療に、ステロイドホルモン剤、レチノイド剤、免疫抑制薬、及び抗生物質を使用することができる。
別な態様では、抗炎症薬を、本発明の前記装置によって送達することができる。一般に、抗炎症薬は、タンパク質キナーゼC(Protein Kinase C:PKC)を抑制する。そして、多くのPKC活性抑制物質が、抗炎症薬として開発され使用されている。炎症誘発の生化学的経路では、外部刺激に起因してPKC活性が増加し、その後にホスホリパーゼD(phospholipase D:PLD)活性が増加することによって炎症が生じる。
他の態様では、スフィンゴリピド長鎖基及びリゾホスファチジン酸を有する皮膚疾患治療用の治療薬が提供される。
いくつかの実施態様では、前記スフィンゴリピド長鎖基は、約0.01〜5.0%の重量パーセントで存在する。いくつかの実施態様では、前記リゾホスファチジン酸は、約0.001〜1.0%の重量パーセントで存在する。前記スフィンゴリピド長鎖基は、例えば、フィトスフィンゴシン、アセチルフィトスフィンゴシン、テトラアセチルフィトスフィンゴシン、ヘキサノイルフィトスフィンゴシン、又はアセチルフィトスフィンゴシンフォスフェイトであり得る。
本発明の他の態様では、上述した及び他の目的は、30〜90重量%の従来の薬剤又は局所投与用担体、0.01〜5重量%のスフィンゴリピド長鎖基、0.001〜1重量%のスフィンゴリピド長鎖基、及び1〜40重量%の有機又は無機添加剤を含有する、広範囲な皮膚疾患の治療用化合物の提供により達成することができる。
好ましくは、前記スフィンゴリピド長鎖基は、フィトスフィンゴシン、アセチルフィトスフィンゴシン、テトラアセチルフィトスフィンゴシン、ヘキサノイルフィトスフィンゴシン、及びアセチルフィトスフィンゴシンフォスフェイトから成る群より選択される1つ又はそれ以上のものである。前記有機添加剤は、セラミド、コレステロール及び脂肪酸を、普通肌の構成に従って、重量比で、40〜60%、20〜30%、20〜30%で含むことが好ましい。ある実施形態では、セラミドは、セラミド3、セラミド6、及びそれらの混合物であり、その立体化学的な構成は、皮膚脂質の構成と同様である。
ある実施形態では、前記は、ここで使用されるリゾホスファチジン酸は、リゾステアロイルホスファチジン酸(18:0)、リゾオレオイルホスファチジン酸(18:1)、リゾパルミトイルホスファチジン酸(16:0)、及び卵黄又は豆に由来する天然リゾホススファチジン酸から成る群より選択される。本発明の他の実施形態では、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、過角化症、皮膚炎、掻痒、細菌感染、にきび、及び創傷などの広範囲の皮膚疾患の治療用組成物が提供される。
本発明の前記組成物の活性成分としては、抗炎症作用を有するステロイドホルモン製剤又はレチノイド製剤、皮膚炎を軽減する作用を有する免疫抑制物質、及び、抗生物質の代わりに、スフィンゴリピド長鎖基を使用することができる。本発明の前記装置を使用して行われる制御送達により、長期治療を提供することができる。そしてその結果、いくつかの掻痒症に起因する重度の掻創、及び治療すべき皮膚における亀裂を防止することができる。また、本発明の装置は、例えばガーゼ付きばんそうこう又はパッチと組み合わせて使用するように、局所送達用の大きさに設計することもできる。さらに、ここで使用される「局所」は、本発明の装置を、患者の皮膚下、胃腸管内及び脈管構造内に埋め込む使用を含む。
[眼に関して]
本発明の別の態様では、デバイスは、眼球領域に埋め込むことができる。所定の治療量の有効薬剤を眼内に送達することは難しく、不可能ではないにしても、眼内組織への薬物の暴露は制限されるため、特に血漿半減期の短い薬物にとって難しいものである。眼疾患を治療するためにより効率的に薬物を送達する方法は、その薬物を眼内に直接配置することである。本発明のある態様では、薬物送達デバイスは、眼内(例えば、眼の前室及び眼の後室の一つの中)に配置するのに適した大きさにされ、適応されるようにする。
言い換えれば、本発明のデバイスは、所定の動物、好ましくは人間の体内の様々な細胞/組織の標的部位に埋め込むのに適した大きさに微細加工することができる。眼内にデバイスを埋め込む技術は、当該技術分野において公知である。患者の眼に眼内インプラントを送達する方法が、Weberらによる米国特許出願番号第101246,884号、米国特許公開第200410054374A1号に開示されている。眼の脈絡膜上腔又は無血管領域に導入するためのインプラント、及びデキサメタゾンを含むメチルセルロース(即ち、非生分解性)のインプラントが、Wongによる米国特許番号第5,824,072号に開示されている。Weberらの文献及びWongの文献は、それに言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。
眼疾患/眼障害などの治療用に、本発明のシステム及び方法において使用し得る有効な治療薬としては、これらに限定されるものではないが、次のものがある(それら自体又は他の有効薬剤との組み合わせのどちらか)。ACE阻害剤、内因性サイトカイン、基底膜に作用する薬剤、内皮細胞の成長に作用する薬剤、アドレナリン作動薬又はアドレナリン遮断薬、コリン作動薬又はコリン作動性効果遮断薬、アルドース還元酵素阻害薬、鎮痛剤、麻酔薬、抗アレルギー性物質、抗炎症薬、降圧剤、昇圧剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗真菌剤、抗原虫薬、抗感染薬、抗癌剤、代謝拮抗物質、血管新生阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質(ゲンタマイシン、カナマイシン、ネオマイシン、並びにバンコマイシンなどのアミノグリコシド抗生物質)、アムクロラムフェニコールなどのフェニコール、セファゾリンHC1などのセファロスポリン、ペニシリン(例えば、アンピシリン、ペニシリン、カルベニシリン、メチシリン)、リンコマイシンなどのリンコマイシン系抗生剤、ポリミキシン及びバシトラシンなどのポリペプチド系抗生物質、テトラサイクリンなどの複数のテトラサイクリン、シプロフラキシン(ciproflaxin)などのキノロン、クロラミンTなどのサルファ剤、並びに親水性物質としてのスルファニル酸などのスルホン、抗ウイルス薬(例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン、デキサメタゾン、シプロフラキシン、水溶性抗生物質(例えば、アシクロビル、ガンシクロビル、ビダラビン、アジドチミジン、ジデオキシイノシン、ジデオキシシトシン))、エピネフリン、イソフルロフェイト(isoflurphate)、アドリアマイシン、ブレオマイシン、マイトマイシン、シタラビン(ara-C)、アクチノマイシンD、スコポラミン、など、鎮痛剤(例えば、コデイン、モルヒネ、ケテロラック、ナプロキセン)、麻酔薬(例えば、リドカイン)、βアドレナリン遮断薬又はβアドレナリン作動薬(例えば、エピヒドリン及びエピネフリン)、アルドースレダクターゼ阻害剤(例えば、エパレスタット、ポナルレスタット、ソルビニル、トルレスタット)、抗アレルギー物質(例えば、クロモリン、ベクロメタゾン、デキサメタゾン、及びフルニソリド)、コルヒチン、駆虫薬(例えば、イベルメクチン及びスラミンナトリウム)、抗アメーバ薬(例えば、クロロキン及びクロルテトラサイクリン)、並びに抗真菌薬(例えば、アンホテリシンなど)、抗血管新生化合物(例えば、加齢黄斑変性症治療薬(anecortave acetate))、レチノイド(例えば、タザロテン)、抗緑内障薬(例えば、ブリモニジン(アルファガン及びアルファガンP))、アセトゾラミド、ビマトプロスト(ルミガン)、チモロール、マレイン酸チモロール、メベフノロール(mebefunolol)、メマンチン、α―2アドレナリン受容体作動薬、2ME2、抗組織形成物質(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、インターフェロン−α、β及びγ)、代謝拮抗物質(例えば、葉酸類似体、プリン類似体、及びピリミジン類似体)、免疫抑制剤(例えば、アザチプリン、シクロスポリン及びミゾリビン)、縮瞳薬(例えば、カルバコール)、散瞳薬(例えば、アトロピン)、プロテアーゼ阻害剤(例えば、アプロチニン、カモスタット、ガベキセート)、血管拡張剤(例えば、ブラジキニンなど)、並びに様々な成長因子(例えば、上皮成長因子、塩基性線維芽細胞成長因子、神経成長因子)など。
本発明のある態様では、ステロイド性抗炎症薬として、コルチゾン、デキサメタゾン、フルオシノロン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾロン、プレドニゾン、及びトリアムシノロン、並びにそれらの誘導体が好ましい。本発明の別の態様では、ステロイド性抗炎症薬は、デキサメタゾンである。本発明の別の態様では、生分解可能なインプラントは、2つ以上のステロイド性抗炎症薬を組み合わせたものを含む。様々な目的のために、他の薬剤が製剤に用いられるようにすることもできる。例えば、緩衝剤及び防腐剤が使用され得る。使用し得る防腐剤には、これらに限定されるものではないが、次のものを含む。重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、並びにフェニルエチルアルコール。使用し得る緩衝材の実例は、これらに限定されるものではないが、所望の投与経路用にFDAによって承認されている、炭酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどを含む。塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの電解液も製剤に含まれ得る。
本発明の埋め込み型デバイスを使用して治療することができる、前眼疾患を含む眼疾患は、水晶体嚢又は毛様筋の後壁に対して前方に位置する、眼周囲の筋肉、瞼、又は眼球組織或いは眼球液などの前眼(即ち、眼の前部)領域又は部位を侵す又は影響を及ぼす疾患、障害又は病気である。したがって、前眼疾患は、主に、結膜、角膜、結膜、前室、虹彩、後室(網膜の後ろ、かつ水晶体嚢の後壁の前方)、水晶体又は水晶体嚢、並びに前眼領域又は部位の血管を新生する或いは刺激する血管及び神経を侵す又は影響を及ぼすものである。前眼疾患は、例えば、無水晶体、偽水晶体、乱視、眼瞼けいれん、白内障、結膜疾患、結膜炎、角膜疾患、角膜潰瘍、乾性眼症候群、眼瞼疾患、涙器疾患、涙管閉塞、近視、老眼、瞳孔障害、屈折障害及び斜視などの疾患、障害又は病気を含む。緑内障は、前眼疾患とも見なされる。なぜなら、緑内障治療の臨床的な目標は、眼の前室の房水の過度の圧力を抑制することだからである。
本発明のまた別の態様では、治療可能な眼疾患には、後眼疾患を含む。後眼疾患は、主に、(水晶体嚢の後壁を通る平面に対して前方の位置の)脈絡膜又は強膜、ガラス体、ガラス体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、並びに後壁領域又は部位の血管を新生する又は刺激する血管及び神経などの後眼領域又は部位を侵す又は影響を及ぼす疾患、障害又は病気である。したがって、後眼疾患は、例えば、黄斑編成症(非滲出性の加齢性黄斑編成症及び滲出性の加齢性黄斑編成症)、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経網膜症、黄斑浮腫(例えば、類嚢胞黄斑浮腫及び糖尿病性黄斑浮腫)、ベーチェット病、網膜疾患、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病網膜症を含む)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、網膜ぶどう膜炎、網膜剥離、眼球後部の部位又は場所に影響を及ぼす眼外傷、眼球のレーザー治療によって生じる又は影響を受ける眼球後部の疾患、光線力学療法によって生じる又は影響を受ける眼球後部の疾患、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜上膜疾患、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経症、非網膜症の糖尿病患者の網膜機能不全、網膜色素変性症、並びに緑内障を含む。緑内障は、後眼疾患とも見なされる。なぜなら、治療の目標は、網膜細胞又は視神経の損傷又は損失による視覚の喪失を防ぐこと又は視覚の喪失の発生を抑制することだからである(即ち、神経防護作用)。
[埋め込みに関して]
本発明の装置は、当該技術分野で周知の、侵襲的処置、外科的処置、低侵襲的処置及び非外科的処置などを用いて埋め込むことができることを理解されたい。送達する対象、標的部位、及び薬剤に応じて、本明細書に記載の微細加工技術を使用することができ、適切な大きさ及び形状の本発明の送達デバイスを作ることができる。本明細書に記載のデバイスは、体内の様々な部位で使用するのに適したものである。例えば、デバイスは、皮膚表面、皮下、又は体内の組織或いは内臓の内部或いは近傍に埋め込むすることができる。実施態様の一部において、デバイスは、消化管、気道組織又は器官、心臓血管組織又は器官、或いは神経組織又は器官の内部又は近傍に配置される。埋め込まれる標的部位のその他の実施例としては、これらに限定されるものではないが、眼、膵臓、腎臓、肝臓、胃、筋肉、心臓、肺、リンパ系、甲状腺、下垂体、卵巣、、前立腺、皮膚、内分泌腺、耳、胸、尿路、脳又は動物の体内のその他様々な部位を含む。
例えば、眼内への埋め込みに関して、眼内に埋め込む際の適切な部位は、前室、後室、ガラス体腔、脈絡膜上腔、結膜下の上強膜、角膜、角膜上皮及び強膜を含む。ガラス体に対する外部の適切な部位は、脈絡膜上腔、扁平部などを含む。脈絡膜上腔は、強膜壁内側及び並置している脈絡膜の間にある潜在空隙である。本発明に基づいて、脈絡膜上腔に導入される要素は、インプラントからの薬物の拡散、インプラントに含まれた薬物の濃度などに応じて、薬物を、脈絡膜及び解剖学的に並置された網膜に送達し得る。
本発明のデバイスを埋め込むするための追加的な方法及び処置は、当該技術分野において周知であり、例えば、米国特許番号第7,013,177号、同第7,008,667号、同第7,006,870号、同第6,965,798号、同第6,963,771号、同第6,585,763号、同第6,572,605号又は同第6,419,709号などに開示されており、これらの各開示を言及することをもって、あらゆる意味で、その内容の全体を本出願の一部とするものとする。
Claims (35)
- 治療をするための装置であって、
空隙を含む微細構造の概ね予め定められた幾何学的構成をなす空間的パターンを有する、マトリクスポリマからなるマトリクス層と、
前記空隙に配置される1つ又は複数の薬剤と、
前記マトリクス層の前記空間的パターンをカバーするように配置される、封入ポリマからなる封入層とを含むことを特徴とする装置。 - 前記マトリクスポリマが、脂肪族ポリエステル、コポリ(エーテルエステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリ(ジメチルシロキサン)、シリコンエラストマ、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリ(ビニルピロリジン)、サッカリド、セルロース、キチン、デキストラン、タンパク質、コラーゲン、アルブミン、アクリレート、アクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸1−ヒドロキシエチル)、ポリ(エチレングリコール)、黄ろう、ワセリンコレステロール、ステアリルアルコール、白ろう、白色ワセリン、メチルパラベン、プロピルパラベン、ラウリル硫酸ナトリウム、並びにそれらの混合体、分散体又は共重合体からなるグループから選択されるポリマを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記封入ポリマが、脂肪族ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、ポリオルトエステル、ポリオキサエステル、ポリ(無水物)、ポリ(ジメチルシロキサン)、シリコンエラストマ、ポリウレタン、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリサルフォン、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリ(メタクリル酸2−ヒドロキシエチル)、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、ポリスチレン、ポリ(ビニルピロリジン)、並びにそれらの混合体又は共重合体からなるグループから選択されるポリマを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記マトリクス層及び前記封入層が、ともに生分解可能であり、前記装置が、所定の生体内での寿命を有するようにすることを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記所定の生体内での寿命が、治療薬の持続時間より長く、前記治療薬の送達が、前記マトリクス層及び前記封入層の分解には実質的に依存しないようにすることを特徴とする請求項4に記載の装置。
- 1つ又は複数の追加マトリクス層を更に含み、
前記各追加マトリクス層は、空隙を含む予め定められた空間的パターンを有し、
前記各マトリクス層の前記空隙が、各々異なる治療薬を含み、複数の治療薬の制御送達が行われるようにすることを特徴とする請求項1に記載の装置。 - 前記1つ又は複数の治療薬が、1つ又は複数の化学物質を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記マトリクス層及び前記封入層が、厚さは略50μm乃至略150μmであることを特徴とする請求項7に記載の装置。
- 前記封入層及び前記マトリクス層の間に、その両者と接触するように配置されるバリヤ層を更に含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
- 前記バリヤ層が、組織液中で、生分解可能又は溶解可能であり、バリヤ層の寿命は、前記治療薬の持続時間より短いことを特徴とする請求項7に記載の装置。
- 前記バリヤ層が、脂肪族ポリエステル、コポリ(エーテル−エステル)、シュウ酸ポリアルキレン、ポリアミド、ポリオルトエステル、ポリオキソエステル、ポリ(無水物)、サッカリド、セルロース、キチン、デキストラン、タンパク質、コラーゲン、アルブミン、アクリレート、アクリルアミド、ポリ(アクリル酸)、ポリアクリルアミド、ポリ(メタクリル酸1−ヒドロキシエチル)、及びポリ(エチレングリコール)、並びにそれらの混合体、分散体又は共重合体からなるグループから選択される材料を含むことを特徴とする請求項7に記載の装置。
- 前記封入層が、貫通孔を含む封入層空間的パターンを有し、前記封入層空間的パターンが、概ね予め定められた幾何学的構成をなしていることを特徴とする請求項7に記載の装置。
- 前記1つ又は複数の化学物質の送達速度は、時間の関数として、前記封入層空間的パターンによって一部予め定められることを特徴とする請求項12に記載の装置。
- 前記送達速度が、主として拡散律速であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
- 前記送達速度が、主として浸透圧駆動であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
- 前記マトリクス層空間的パターン及び前記封入層空間的パターンが結合して、前記治療薬を含む貯蔵室及び前記治療薬の送達を調節するためのチャネルを形成し、前記チャネルが、前記貯蔵室から前記貫通孔まで延在することを特徴とする請求項12に記載の装置。
- 前記チャネルが、前記治療薬の持続時間よりも短い寿命を有する、生分解性材料又は可溶性材料からなることを含むことを特徴とする請求項16に記載の装置。
- 少なくとも一つの前記貯蔵室が、2つ以上の小室を含むことを特徴とする請求項16に記載の装置。
- 前記貯蔵室が、直径は略1mm、高さは略100μmであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
- 前記チャネルが、長さは略3cmより短く、直径は略25μm乃至略50μmであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
- 前記貫通孔が、直径は略200μm乃至略1mmであることを特徴とする請求項16に記載の装置。
- 前記封入層が、貫通孔を含まず、前記1つ又は複数の治療薬が、1つ又は複数の放射性医薬品を含み、前記1つ又は複数の放射性医薬品が、各々半減期を有し、前記治療が、放射線治療を含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 前記マトリクス層及び前記封入層が、ともに生分解可能であり、前記マトリクス層及び前記封入層が、各々、前記半減期の中で最も長い半減期の略10倍長い生体内での寿命を有していることを特徴とする請求項22に記載の装置。
- 前記空隙が、一般にチャネル形状をしており、長さは略10mm乃至略60mm、幅は略20μm乃至略300μm、高さは略25μm乃至略100μmであることを特徴とする請求項22に記載の装置。
- 前記1つ又は複数の治療薬が、略400時間より短い半減期を有するベータ放射体を含むことを特徴とする請求項22に記載の装置。
- 前記1つ又は複数の治療薬が、治療用薬物、細胞培養用薬物、組織工学用薬物、又はその組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の装置。
- 治療をするための方法であって、
該方法が、
ポリマ構造体を供給するステップであって、
前記ポリマ構造体が、
空隙を含む微細構造の概ね予め定められた幾何学的構成をなす空間的パターンを有する、マトリクスポリマからなるマトリクス層と、
前記マトリクス層の前記空間的パターンをカバーするように配置される、封入ポリマからなる封入層とを含むことを特徴とする、該ステップと、
前記空隙内に配置される1つ又は複数の治療薬を供給するステップと、
治療する生物に、前記ポリマ構造体を送達するステップとを含むことを特徴とする方法。 - 前記ポリマ構造体を送達する前記ステップが、前記ポリマ構造体を前記生物の表面に付けるステップを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
- 前記ポリマ構造体を送達する前記ステップが、前記ポリマ構造体を前記生物に埋め込むステップを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
- 前記ポリマ構造体が、インプラントの外面に配置されることを特徴とする請求項29に記載の方法。
- 前記インプラントが、ステント、カテーテル、及び関節置換物からなるグループから選択されることを特徴とする請求項30に記載の方法。
- 前記空隙内に配置される1つ又は複数の治療薬を供給する前記ステップが、前記ポリマ構造体を送達する前記ステップの直前に実施されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
- 前記1つ又は複数の治療薬が、液状で供給され、前記空隙内に配置される1つ又は複数の治療薬を供給する前記ステップが、前記液状で供給される前記1つ又は複数の治療薬を、毛管現象を介して前記空隙に充填するステップを含むことを特徴とする請求項27に記載の方法。
- 前記治療が、歯周炎用の抗生物質の送達、緑内障治療用の薬物の送達、皮膚治療用の薬剤の送達、薬物或いは薬剤の経皮的な送達、創傷治療、皮膚組織修復、末梢神経系或いは中枢神経系の修復、骨格組織或いは筋肉組織の修復、血管組織再生、及び/又は幹細胞の制御分化用の成長因子、ペプチド、又はDNAの送達、術後治療用の鎮痛剤及び/又は抗生物質の送達、一時的又は恒久的な移植、及び癌治療用の抗癌剤、放射線増感剤及び/又は放射線の局所送達からなるグループから選択されることを特徴とする請求項27に記載の方法。
- 薬剤の放出制御をするための方法であって、
該方法が、
ポリマ構造体を供給するステップであって、
前記ポリマ構造体が、
空隙を含む微細構造の概ね予め定められた幾何学的構成をなす空間的パターンを有する、マトリクスポリマからなるマトリクス層と、
前記マトリクス層の前記空間的パターンをカバーするように配置される、封入ポリマからなる封入層とを含むことを特徴とする、該ステップと、
前記空隙内に配置される1つ又は複数の薬剤を供給するステップとを含むことを特徴とする方法。
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