JP2008514956A - ホスト−ゲストエネルギー吸収性錯体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ホスト分子とエネルギー吸収性分子(EAM)であるゲストとの間で形成されたホスト−ゲスト錯体であるエネルギー吸収性EAMを提供する。本発明において有用なEAMの例は、光照射源からのエネルギーを吸収し、それによってそれと操作的に接触した被分析物分子の脱離及びイオン化に寄与する種である。錯体及び被分析物が表面の構成要素である場合、エネルギー伝達が、被分析物のイオン化及び表面からのその脱離の両方を促進する。さらに、本発明の錯体の使用方法及び表面の調製方法及び本発明の錯体を取込んだデバイスが提供される。

Description

発明の背景
レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析は、ポリペプチド及び核酸などの生体分子を分析するため、普及した方法である。この方法では、分析すべき試料は、プローブ又は標的と呼ばれる固体基質上に被着されている。レーザエネルギーパルスが、基板に結合された試料に向けられている。レーザーエネルギーは、試料分子をプローブ表面から脱離させ、イオン化された状態となるようにする。飛行時間型計器のイオン光学は、イオン化された分子を自由飛行管内へと加速させ、ここでそれらは質量に応じて分離し、粒子検出器で検出される。
約2500ダルトンを上回る質量を有する被分析物は、レーザーによる衝撃を直接受けた時点で断片化する傾向を有する。大型生体分子の分析に該技術を使用するためにはこの問題を克服する必要があった。大型生体分子を揮発させるものの断片化はしないようなより柔軟なイオン化方法が研究の対象となった。1980年代には、最高数十万ダルトンの質量対電荷比で無傷の被分析物の検出を可能にするMALDI(マトリクス支援レーザー脱離/イオン化)法と呼ばれる方法が開発された。MALDI法は、その初期にカラス(Karas)ら、(Int.J.Mass Spectrom Ion Processes78(1987年)、53頁;Anal.Chem60(1988年)2299頁)及びタナカ(Tanaka)ら、(Rapid Commun.Mass Spectrom.2(1988年)151〜153頁)及びビービス(Beavis)ら、(Rapid Commun Mass Spectrom4(1989年)233頁及び432〜440頁)により記載された。MALDI法においては、試料は、レーザー光を吸収しかつ実質的に無傷の大型生体分子の脱離/イオン化を促進する分子と、プローブ表面上で会合させられる。典型的なレーザーエネルギー吸収性分子には、シナピン酸、α−シアノ−ヒドロキシ桂皮酸、2,5−ジヒドロ安息香酸及びフェルラ酸が含まれる。従来のMALDI法では、試料及びレーザーエネルギー吸収性分子は密に混合され、プローブ表面上に設置されて乾燥し、それゆえ2つが共結晶化するようになっている。このような場合、エネルギー吸収性分子は「マトリクス」と呼ばれる。
上述の通りに形成されるマトリクスには数多くの問題及び制限が存在する。例えば、エネルギー吸収性分子は、疎水性種となる傾向があるが、それにもかかわらず分析対象の数多くの被分析物は例えばペプチド、核酸、単糖類といったように水溶性分子である。エネルギー吸収性分子、被分析物及びこれらの両要素のために用いられる溶媒の極性の差は、エネルギー吸収性分子がマトリクス内の不規則なサイズの結晶である「アイランド」に分布するマトリクスを結果としてもたらし得る。その上、マトリクスは単にチップ上に「置かれている」だけにすぎないことから、マトリクスを混乱又は洗い流すことなく被分析物又はマトリクス内の汚染物質を洗浄することは、手腕の問われる作業である。その他の問題点としては、被分析物−塩イオン付加物の形成、マトリクス中の被分析物の最適値を下回る溶解度、固体マトリクス内部での被分析物分子の場所及び濃度が未知であること、信号(分子イオン)抑制、多数の構成要素の同時存在に起因する「毒作用」及び選択的な被分析物脱離/イオン化が含まれる。
1993年にハッチェンズ(Hutchens)及びイップ(Yip)は、被分析物分子をエネルギー吸収性分子と共結晶させないLDI方法を記載した(国際公開第94/02814号パンフレット)。彼らは、この方法をSEND法と呼んだ。SEND法の一部の形態では、そこで「EAMs」と呼ばれているエネルギー吸収性分子はプローブの表面に共有結合によりカップリングされており、被分析物分子はそれらの上に被着された。
具体的な前進の一歩ではあるが、小型分子EAMでのチップ基板の直接的誘導体化は、マトリクスの成分の選択において幾分かの制限を有している。例えば、基板にEAMを付着させるには、相補的反応基を有する基板材料とEAMの使用が必要であり、それゆえ、チップ及び基板の両方に用いることのできる種が制限される。その上、EAMとチップ基板の間の不完全な反応は、チップが目的としている検定と干渉し得る。例えば、未反応のEAMが偶発的にチップ上にとどまる可能性もあり、又はチップ表面上の反応基が、EAMと未官能化状態にとどまる可能性もある。未反応EAMはそれ自体質量分析法による分析中にイオン化されて、被分析物からの高レベルの背景的又は不鮮明化データを結果としてもたらす可能性がある。チップ上の未官能化基は、親和性部分として作用して、被分析物を結合しチップからのその脱離を妨害する可能性がある。
SEND法は、それ自体プローブ表面上に被着したポリマーの中にエネルギー吸収性分子を組込むことを提案したキタガワ(Kitagawa)によって、さらに洗練された。例えば、米国特許公開第03/0207460号明細書「Monomers And Polymers Having Energy Absorbing Moieties Of Use In Desorption/Ionization Of Analytes」を参照のこと。キタガワの方法の1つの利点は、MALDI法で低い質量範囲内のノイズを生成する脱離されたエネルギー吸収性分子由来の信号の低減にあった。
現在使用されているEAMの1つの問題点は、それらが疎水性分子となる傾向を有し、従って水溶液中で混合され得ないという事実にある。この問題に対する解決法があれば、当該技術分野において有用であると思われる。
発明の簡単な概要
特定の分析のパラメータに従ってEAMの同一性及び量の両方を改変するための柔軟性と表面会合されたマトリクスの利点を組み合わせた表面があれば、それは当該技術分野における有意な進歩となるであろう。かかる表面の例は、EAMと非共有結合的に相互作用する部分を組込むことになると思われる。このようなマトリクスは、表面内へのその取込みを可能にするのに誘導化を必要としない、昨今認識されたものを含めて、EAMに基づくものであり得る。従って、EAMのための入れ物を提供する表面が、EAM含有表面及びこれらの表面を利用する分析デバイスの製造を著しく単純化することになるだろう。その上、ドライダウン期間を必要とせずそれゆえ高処理量分析において有用であるマトリクスは、レーザー脱離質量分析からのデータ収集を大幅に加速させることになると思われる。
現在、ホスト分子とEAMの間で形成されたホスト−ゲスト錯体が被分析物にエネルギーを伝達して、錯体を含む表面から該被分析物を脱離し被分析物をイオン化することが発見されてきている。この発見により、レーザー脱離/イオン化質量分析法の中で使用するために先行技術の表面及びデバイスが有する欠点の多くを軽減する表面及びこれらの表面を組込むデバイスを入手することが可能となっている。その上、本発明の表面及びデバイスは、以前は利用不可能であった分析フォーマットを提供する。
大規模なモル余剰のEAMが無制御かつ再現不能な形で無作為に分布させられているレーザー脱離/イオン化質量分析用の表面とは対照的に、本発明は、容易に再現可能であると同時に調整可能であるマトリクスを内含する表面を提供する。マトリクスは、ホスト分子と錯化されるEAMの構造及び量を変動させることによって調整され、選択された利用分野のためのマトリクスの設計における無比の柔軟性を提供する。
マトリクスの調整可能性及び再現可能性に加えて、本発明の錯体、表面及びデバイスは数多くのその他の利点を提供する。例えば、ホスト−ゲストEAM錯体を含む表面は、改良された洗浄可能性を提供する。EAMは、ホストのキャビティ内部で捕捉され、従って表面は、表面からEAMを失うことなく塩及び不純物を除去するために緩衝溶液での集中的洗浄を受けることができるようになっている。その上、溶解度及び安定性などのEAMマトリクスの物理化学的特性を、ホストとの包接錯体の形成を通して改変させることができる。同様に、ホスト−ゲストEAM錯体を含む表面は、疎水性EAMの存在下で水の使用を必要とする分析に充分適したものであり、EAMの分布はホスト分子の一機能であることから、表面上に水が存在することがEAMの分布に不利な影響をもたらすことはない。さらに、ホスト−ゲスト錯体の使用は、表面上のEAMの制御された分布を促進し、基本的に被分析物と相溶性がない溶媒中での余剰のEAMの応用の場合に一般的な問題であるEAMの不均等な分布が補正されることになる。本発明は同様に、EAMとしてはかつて不適であった揮発性マトリクスを入手する方法も提供する。SELDI法及びMALDI法の利用分野については、マトリクスは、昇華されてしまうことなく長時間にわたり真空下で安定であることが必要である。しかしながら、錯化されたEAMマトリクスの揮発性は、それをホスト構造と錯化することによって非常に低いレベルにまで低減させることができる。
高処理量の検定は、例えばプロテオミクス及び創薬といった数多くの分野において特に価値及び妥当性を示すものである。高処理量分析において使用するための手段は、その構造及び機能が均質で再現可能であることによって特徴づけられるのが好ましい。本発明の錯体、表面及びデバイスは、高処理量のスクリーニングにおいて特に有用である。試料をマトリクスと混合し表面上のマトリクスを乾燥させる必要性を無くする表面を提供することによって、本発明は、迅速かつ再現可能な形で調製される表面及び該表面を組込んだデバイスを提供している。
本発明は同様に、ホスト分子がEAMと錯化されていない表面及びこれらの表面を組込んだデバイスをも提供する。それゆえ、錯化されていないホストは、選択されたEAMと接触させられて、錯体を形成することができる。
それゆえ、第1の態様では、本発明は、光照射源からのエネルギーを吸収し、それと操作的に接触する被分析物分子の脱離及びイオン化に寄与する、エネルギー吸収性分子と錯化されたホスト分子を含むホスト−ゲスト錯体を提供する。例示的実施形態においては、錯体は、質量分析計のためのプローブの1構成要素である基板、例えば、質量分析計のプローブインタフェースと係合するための手段を含む基板の上に固定化されている。
例示的実施形態では、EAM−ホスト錯体は基本的に水溶性であるか又は少なくともEAM単独の場合よりもさらに水溶性が高い。それゆえ、本発明は、レーザー脱離/イオン化質量分析で使用するための第1の基本的に水溶性のマトリクスを提供する。実際には、水溶性マトリクスの水溶液を、現在有機溶媒中のEAM溶液について使用されているものと類似の方式で被分析物上に置くことができる。
一部の実施形態においては、ホスト−ゲスト錯体は基板に付着されて、基板上に1つの表面を形成する。複数のアドレス指定可能な場所で基板に錯体を付着させることができる。
本発明の1表面例は、吸着性表面であり、ここでは「吸着性フィルム」とも呼ばれている。本発明の吸着性フィルムは一般に、結合官能基を含む重合性モノマーとホストの重合性類似体の間で形成されるポリマーである。
その他の実施形態では、ホスト分子は結合官能基を含んでおり、結合官能基を通じてホスト分子の集団が被分析物と結合する。官能化されたホストは同様にEAMを錯化でき、代替的には、EAMは非官能化ホスト分子の集団により錯化される。
ホスト又は重合性モノマーに付加された結合官能基の例としては、疎水基、親水基、反応基例えばアルデヒド、エポキシ、カルボナート、チオールなど;イオン交換部分例えばカルボキシル、スルホナート、サルフェート、アミノ、置換アミノ、ホスファート;金属キレート化基;チオエーテル、ビオチン、ボロナート及びその他の構造例えば染料、核酸及びペプチドが含まれる。
ホスト分子の例としては、クラウンエーテル、カリキサレン、スフェランド、カビタンド及びシクロデキストリンなどの大環状種が含まれる。本発明において有用なホストの例として、シクロデキストリンが言及される。シクロデキストリン又はそのEAM錯体は、単に本発明のデバイス上に被着されてもよいし、又そうでなければ、アンカー部分などの種を通して基板に付着させることもできる。シクロデキストリン上の相補的反応性を有する反応性官能基とアンカー試薬上の反応性官能基の反応によって、代表的アンカー部分が形成される。シクロデキストリンは、モノマー、ホモポリマー又は、例えば結合官能基の存在といった有用な特性を有する1つ以上のモノマーとのコポリマーとして利用される。シクロデキストリン含有ポリマーは任意に架橋されている。
シクロデキストリン−EAM錯体は、新規の表面及びデバイス、及び1つ以上のレーザー脱離/イオン化質量分析による分析技術において有用なエネルギー吸収マトリクスであるチップなどのデバイス内に組込むべき手段の入手を可能にする。シクロデキストリンのキャビティは、当該技術分野で認められている大部分のマトリクス分子の基礎である基本的に疎水性の種との相互作用に充分適した特性を有している。ホスト−ゲスト錯体内でシクロデキストリンキャビティ内にマトリクス分子を包接させることにより、チップ上に吸着された試料上の疎水性マトリクスを結晶化させる必要がなくなる。その上、シクロデキストリンキャビティの幾何学的規則性は、基本的に同一のサイズのマトリクス構成要素を結果としてもたらす。これとは対照的に、吸着された試料上にマトリクス種を結晶化させる典型的方法は、その後の質量分析による分析に対し有害な影響を及ぼしうる結晶サイズの範囲を結果としてもたらす。
シクロデキストリン−EAM錯体は、本発明の水溶性マトリクスの例である。
その上、該表面が基板に定着させられる場合、シクロデキストリン−EAM錯体は、該表面の特異的で予測可能かつ再現可能な形でアクセスされた領域すなわちシクロデキストリンキャビティに多数のEAMが閉じ込められ、表面上にEAMの再現可能な分布を提供する。EAM分布の再現性は、不水溶性マトリクスが試料上で結晶化される方法とは全く対照的であり、表面上の反復不能な「アイランド」形成における結晶の凝集又は分離といった現象が回避される。
さらに、シクロデキストリンによるEAM錯化の可逆性は、ホスト内へのEAMのロード/アンロードを、例えば錯体と接触した溶媒の極性の制御といったさまざまな方法により操作できるようにしている。例えば、ホストがシクロデキストリンで、ホストが疎水性EAMである場合、マトリクスを水と接触させることはEAMをシクロデキストリンキャビティ内に駆動する傾向を有する。逆にいえば、マトリクスを有機溶媒で処理することは、錯化されたEAMをシクロデキストリンキャビティから抽出する傾向を有する。
本発明のシクロデキストリン含有表面の例は、被分析物を固定化する能力を有する「吸着性フィルム」である。一部の実施形態においては、フィルム、ひいてはデバイスは、1つの試料から1つ以上の被分析物を選択的に結合させる能力を有する。一例示的実施形態においては、フィルムがシクロデキストリンモノマー、又はシクロデキストリン含有ポリマーを含み、該フィルムは、基板の表面に付着される。フィルムの1構成要素は、1つ以上の結合官能基を内含し得る。フィルム構成要素を基板表面に付着させるためには、一連の手順を利用することができる。一例示的実施形態においては、付着は、吸着性フィルム上及びアンカー試薬上の相補的反応性を有する部分間に形成される共通結合を用いたものである。従って、本発明は、共通結合を形成する化学反応を通して基板表面にグラフトされるシクロデキストリン含有吸着性フィルムを提供する。フィルムはヒドロゲルであり得る。
本発明の錯体、表面及びデバイスに加えて、本発明のこれらの態様を作製し使用するための方法も同様に提供されている。
本発明のその他の目的、態様及び実施形態が、以下の詳細な説明の中で記されている。
発明の詳細な説明
1. 定義
別段の定義のないかぎり、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を一般に有する。一般に、以下で記載される細胞培養、分子遺伝学、有機化学及び核酸化学及びハイブリダイゼーションにおける本明細書で使用されている用語及び実験室手順は、当該技術分野において周知でかつ一般的に利用されているものである。核酸及びペプチド合成のためには典型的技術が用いられる。技術及び手順は、一般に当該技術分野における従来の方法及び本明細書を通して提供されているさまざまな一般的参考文献に従って実施される。以下で記載する分析化学及び有機合成における本明細書で使用する用語及び実験室手順は、当該技術分野において周知でかつ一般的に利用されているものである。典型的技術又はその修正版は、化学合成及び化学分析のために使用される。
「ホスト」及び「ホスト分子」という用語は、基本的に互換的に、「ゲスト」分子をとり囲むか又は部分的にとり囲みそして「ゲスト」分子と引きつけ合って相互作用する分子を意味する。「ホスト」と「ゲスト」が相互作用する場合、結果として得られる種は、本明細書では「錯体」と呼ばれている。
置換基が左から右へと書かれるその従来の化学式によって特定される場合、これらは同様に、右から左へと構造を書いた結果としてもたらされると思われる化学的に同一の置換基をも包含する。例えば−CHO−は、−OCH−を表わすようにも意図され、−NHS(O)−は同様に−S(O)HN−を表わすようにも意図されている、といった具合である。
単独又はもう1つの置換基の一部としての「アルキル」という語は、別段の記載のないかぎり、直鎖又は分枝鎖又は環状炭化水素基又はそれらの組合せを意味し、完全飽和、単不飽和又は多価不飽和であり得、2価及び多価の基を含むことができ、指定された数の炭素原子を有する(すなわちC−C10は1〜10個の炭素を意味する)。飽和炭化水素基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル、例えばn−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどの同族体及び異性体などが含まれるが、これらに限定されるわけではない。不飽和アルキル基は、1つ以上の2重結合又は3重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例としては、ビニル、2−プロペニル、クロチル、2−イソペンテニル、2−(ブタジエニル)、2,4−ペンタジエニル、3−(1,4−ペンタジエニル)、エチニル、1−及び3−プロピニル、3−ブチニル及びその高位の同族体及び異性体が含まれるがこれらに限定されるわけではない。「アルキル」という語は、別段の指摘のないかぎり、「ヘテロアルキル」などの、以下でさらに詳細に定義づけされるアルキルの誘導体を含むものとしても意図されている。炭化水素基に制限されているアルキル基は「ホモアルキル」と呼ばれる。
単独又はもう1つの語と組み合わせた形での「ヘテロアルキル」という語は、別段の記載のないかぎり、記載された数の炭素原子及びO、N、Si及びSからなる群から選択された少なくとも1つのヘテロ原子で構成され、窒素及び硫黄原子が任意には酸化され得、窒素ヘテロ原子が任意には四級化され得る、安定直鎖又は分枝鎖又は環状炭化水素基又はその組合せを意味する。ヘテロ原子O、N及びS及びSiは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置又はアルキル基が分子の残査部分に付着している位置に置かれ得る。例としては−CH−CH−O−CH、−CH−CH−NH−CH、−CH−CH−N(CH)−CH、−CH−S−CH−CH、−CH−CH、−S(O)−CH、−CH−CH−S(O)−CH、−CH=CH−O−CH、−Si(CH、−CH−CH=N−OCH、及び−CH=CH−N(CH)−CHが含まれるがこれらに限定されるわけではない。最高2つのヘテロ原子、例えば−CH−NH−OCH及び−CH−O−Si(CHが連続的であり得る。同様にして、単独又はもう1つの置換基の1部としての「ヘテロアルキレン」という語は、−CH−CH−S−CH−CH−及び−CH−S−CH−CH−NH−CH−により例示されるような(ただしこれらに限定されるわけではない)ヘテロアルキルから誘導された2価の基を意味する。ヘテロアルキレン基については、ヘテロ原子は同様に、鎖末端(例えばアルキレンオキシ、アルキレンジオキシ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノなど)のいずれか又は両方を占有することができる。さらに又、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基については、連結基のいかなる配向も、その連結基の式が書かれている方向により暗示されるわけではない。例えば、式−C(O)R’−は−C(O)R’−及び−R’C(O)−の両方を表わす。
(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルと呼ばれることの多い基を含めた)アルキル及びヘテロアルキル基のための置換基は、かかる基内の炭素原子合計数をm’としてゼロから(2m’+1)の範囲の数で、−OR’、=O、=NR’、=N−OR’、−NR’R’’、−SR’、−ハロゲン、−SiR’R’’R’’’、−OC(O)R’、−C(O)R’、−COR’、−CONR’R’’、−OC(O)NR’R’’、−NR’’C(O)R’、−NR’−C(O)NR’’R’’’、−NR’’C(O)R’、−NR−C(NR’R’’R’’’)=NR’’’’、−NR−C(NR’R’’)=NR’’’、−S(O)R’、−S(O)R’、−S(O)NR’R’’、−NRSOR’、−CN及び−NOから選択された(ただしこれらに限定されるわけではない)さまざまな基のうちの1つ以上のものであり得る。R’、R’’、R’’’及びR’’’’は各々、好ましくは独立して水素、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換アリール例えば1−3個のハロゲンで置換されたアリール、置換又は非置換アルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基又はアリールアルキル基を意味する。本発明の化合物が2個以上のR基を含む場合、例えばR基の各々は、R’、R’’、R’’’及びR’’’’基のうちの2つ以上のものが存在する場合にその各々の基がそうであるように、独立して選択される。R’及びR’’が同じ窒素原子に結合されている場合、これらは、窒素原子と組み合わされて5−、6−又は7−員の環を形成する。例えば−NR’R’’は1−ピロリジニル及び4−モルホリニル(ただしこれらに限定されるわけではない)を含むものとして意図されている。置換基についての以上の説明から、当業者は、「アルキル」という語が、ハロアルキル(例えば−CF及び−CHCF)及びアシル(例えば−C(O)CH、−C(O)CF、−C(O)CHOCHなど)などの水素基以外の基に結合された炭素原子を含む基を内含するものとして意図されている、ということを理解するであろう。
上述の語の各々は、指示された基の置換及び非置換形態を両方共含むものとして意図されている。
以下で使用する「ヘテロ原子」という語は、酸素(O)、窒素(N)、硫黄(S)及びケイ素(Si)を含むものとして意図されている。
本明細書で使用される「結合官能基」というのは、「検定されるべき物質」などの一定の物質に対する親和性を有する部分すなわち特定の物質と相互作用してそれを本発明の吸着性材料上に固定化する能力を有する部分を意味する。結合官能基は、クロマトグラフィ的又は生体特異的なものであり得る。クロマトグラフ的結合官能基は、電荷−電荷、親水性−親水性、疎水性−疎水性、ファンデルワールス相互作用及びそれらの組合せを介して、物質を結合する。生体特異的結合官能基には一般に、以上の相互作用のうちの1つ以上のものを含む相補的3次元構造を含む。生体特異的相互作用の組合せの例としては、抗原と対応する抗体分子、核酸配列とその相補的配列、エフェクタ分子とレセプタ分子、酵素と阻害物質、糖鎖含有化合物とレクチン、抗体分子と前抗体に特異的なもう1つの抗体分子、レセプタ分子と対応する抗体分子及び類似の組合せが含まれるがこれらに限定されるわけではない。特異的結合物質のその他の例には、化学的にビオチン修飾された抗体分子又はポリヌクレオチドとアビジン、アビジン結合抗体分子とビオチン及び類似の組合せが含まれる。
「分子結合パートナ」及び「特異的結合パートナ」は、分子対、特異的結合を示す典型的な生体分子対を意味する。分子結合パートナには、限定的な意味なく、レセプタとリガンド、抗体と抗原、ビオチンとアビジン及びビオチンとストレプトアビジンが含まれる。
本明細書で使用されている「吸着性フィルム」は、検定すべき物質が固定化され特異的結合反応が発生する部域を意味する。反応は任意に実験試料のフロー方向に沿った分布を有する。
本明細書で使用されている「ポリマー」という語は「コポリマー」を含み、「オリゴマー」という語と互換的に使用される。
本明細書で使用されている「付着された」という語は、共有結合、イオン結合、化学吸着、物理吸着及びそれらの組合せを含めた(ただしこれらに限定されるわけではない)相互作用を包含している。
「独立して選択された」という語は、ここでは、そのように描写された基が同一でも異なるものでもあり得ることを示すために用いられる。
「被分析物」という語は、検出が望まれる試料のあらゆる構成要素を意味する。この語は、試料中の単一の構成要素又は複数の構成要素を意味し得る。被分析物には例えば生体分子が含まれる。生体分子はあらゆる生物材料から調達可能である。
「生体分子」又は「生体有機分子」は、典型的に生物が作る有機分子を意味する。これには例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、ステロイド、核酸、ポリペプチド、ペプチド、ペプチドフラグメント、炭水化物、脂質及びこれらの組合せ(例えば糖タンパク質、リボ核タンパク質、リポタンパク質など)を含む分子が含まれる。
「生物材料」というのは、生体、臓器、組織、細胞又はウイルスに由来するあらゆる材料を意味する。これには、唾液、血液、尿、リンパ液、前立腺液又は精液、乳汁などの生体液、ならびにこれらのいずれかの抽出物例えば細胞抽出物又は溶解物(例えば、一次組織又は細胞、培養組織又は細胞、正常組織又は細胞、病変組織又は細胞、良性組織又は細胞、癌組織又は細胞、唾液腺組織又は細胞、腸組織又は細胞、神経組織又は細胞、腎組織又は細胞、リンパ組織又は細胞、膀胱組織又は細胞、前立腺組織又は細胞、泌尿生殖器組織又は細胞、腫瘍組織又は細胞、腫瘍性新生脈管組織又は細胞などからのもの)、細胞培地、分画試料(例えば血清又は血漿)などが含まれる。例えば細胞溶解物試料が任意に誘導される。
「気相イオン分光計」というのは、気相イオンを検出する器具を意味する。気相イオン分光計には、気相イオンを供給するイオン源が含まれている。気相イオン分光計には、例えば、質量分析計、イオン移動度分光分析及び全イオン電流測定デバイスが含まれる。「気相イオン分光法」というのは、気相イオンを検出するための気相イオン分光計の使用を意味する。
「質量分析計」は、気相イオンの質量対電荷比へと言い換えることのできるパラメータを測定する気相イオン分光計を意味する。質量分析計は一般にイオン源及び質量分析器を含んでいる。質量分析計の例としては、飛行時間型、磁場型、四重極フィルタ、イオントラップ、イオンサイクロトロン共鳴、静電場分析器及びこれらのハイブリッドがある。「質量分析法」は、気相イオンを検出するための質量分析計の使用を意味する。
「レーザー脱離質量分析計」というのは、被分析物を脱離し、揮発させイオン化させる手段としてレーザーエネルギーを使用する質量分析計を意味する。
「質量分析器」というのは、気相イオンの質量対電荷比に言い換えることのできるパラメータを測定するための手段を含む質量分析計のサブアセンブリを意味する。飛行時間型質量分析計においては、質量分析器はイオン光学アセンブリ、飛行管及びイオン検出器を含む。
「イオン源」は、気相イオンを提供する気相イオン分光計のサブアセンブリを意味する。一実施形態においては、イオン源は、脱離/イオン化プロセスを通してイオンを提供する。かかる実施形態は一般に、イオン化エネルギー源(例えばレーザー脱離/イオン化源)と問合せ可能な関係で、かつ気相イオン分光計の検出器と大気圧又は減圧にて同時通信状態でプローブを位置的に係合するプローブインタフェースを含んでいる。
固相から被分析物を脱離/イオン化させるためのイオン化エネルギー形態には、例えば(1)レーザーエネルギー;(2)高速原子(高速原子衝撃で使用される);(3)放射性核種のベータ崩壊を介して生成される高エネルギー粒子(プラズマ脱離で使用される);及び(4)二次イオンを生成する一次イオン(二次イオン質量分析法で使用される)が含まれる。固相被分析物のためのイオン化エネルギーの好ましい形態は、(レーザー脱離/イオン化で用いられる)レーザー、特に窒素レーザー、Nd−Yagレーザー及びその他のパルスレーザー源である。「フルエンス」というのは、問合せされた画像の単位面積あたりの送達エネルギーを意味する。レーザーなどの高フルエンス源は、約1mJ/mmから約50mJ/mmを送達することになる。典型的には、プローブの表面上に試料が置かれ、該プローブはプローブインタフェースと係合させられ、プローブ表面はイオン化エネルギーに曝露される。エネルギーは表面から気相内に被分析物分子を脱離させ、それらをイオン化する。
被分析物のためのイオン化エネルギーのその他の形態としては、例えば(1)気相中性物質をイオン化する電子;(2)気相、固相又は液相中性物質からのイオン化を誘発するための強電場;及び(3)固相、気相及び液相中性物質の化学的イオン化を誘発するためイオン化粒子又は電場と中性化学物質の組合せを適用する供給源が含まれる。
「表面増強レーザー脱離/イオン化」又は「SELDI」は、被分析物が気相イオン分光計のプローブインタフェースと係合するSELDIプローブの表面上に捕捉される、脱離/イオン化気相イオン分光法(例えば質量分析法)の一方法を意味する。「SELDIMS」においては、気相イオン分光計は、質量分析計である。SELDI技術は、米国特許第5,719,060号明細書(ハッチェンズ及びイップ)及び米国特許第6,225,047号明細書(ハッチェンズ及びイップ)の中で記載されている。
「表面増強親和性捕捉」(「SEAC」)又は「親和性気相イオン分光法」(例えば「親和性質量分析法」)は、吸収性表面を含むプローブ(「SEAC」プローブ)を用いるSELDI方法の一形態である。「吸着性表面」というのは、吸着剤(「捕捉試薬」又は「親和性試薬」とも呼ばれる)が付着されているプローブの試料提示表面を意味する。吸着剤は、被分析物(例えば標的ポリペプチド又は核酸)を結合させる能力を有するあらゆる材料である。「クロマトグラフィ吸着剤」は、クロマトグラフィにおいて典型的に用いられる材料を意味する。「生体特異性吸着剤」は、生体分子、例えば核酸分子(例えばアプタマー)、ポリペプチド、多糖類、脂質、ステロイド又はこれらの接合体(例えば糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、核酸(例えばDNA)−タンパク質接合体)を含む吸着剤を意味する。SELDI法で使用するための吸着剤のさらなる例は、米国特許第6,225,047号明細書(ハッチェンズ及びイップ「Use of retentate chromatography to generate differnce maps」、2001年5月1日)。
一部の実施形態においては、選択された吸着剤を提供するように修飾され得る予め活性化された表面としてSEACプローブが提供される。例えば、或る種のプローブには、共有結合を通して生体分子を結合させる能力を有する反応性部分が備わっている。エポキシド及びカルボジイミダゾールが、抗体又は細胞レセプタなどの生体特異性吸着剤を共有結合させるための有用な反応性部分である。
好ましい実施形態においては、親和性質量分析法は、被分析物を含む液体試料をSELDIプローブの吸着性表面に適用するステップを含む。吸着剤に対する親和性を有するポリペプチドなどの被分析物がプローブ表面に結合する。典型的には、表面は次に、未結合分子を除去して保持分子を残すように洗浄される。被分析物保持の程度は、使用される洗浄液のストリンジェンシーの関数である。次に吸着性表面に対しエネルギー吸収性材料(例えばマトリクス)が適用される。次に、レーザー脱離/イオン化質量分析法により、保持分子が検出される。
SELDI法は、試料中のタンパク質が1つ又は数種の異なるSELDI表面を用いて検出されるタンパク質プロファイリングのために有用である。一方、タンパク質プロファイリングは、異なる試料のタンパク質プロファイルを比較して試料間のタンパク質発現の差異を検出する、差異マッピングのために有用である。
「表面増強ニート脱離」又は「SEND」は、プローブ表面に付着したエネルギー吸収性分子の層を含むプローブ(「SENDプローブ」)の使用を含むSELDI法の一形態である。付着は例えば、共有又は非共有化学結合であり得る。従来のMALDI法とは異なり、SEND法での被分析物は脱離/イオン化のためエネルギー吸収性分子の結晶性マトリクス内部に捕捉される必要はない。
「操作的に接触」という語句は、被分析物及びEAMが互いに充分近接しているため励起されたEAMがエネルギーを被分析物に伝達できるような状態を意味する。
SEAC/SEND法は、捕捉試薬とエネルギー吸収性分子の両方が試料提示表面に付着されているSELDI法の一形態である。従って、SEAC/SENDプローブは、外部マトリクスを適用する必要なく親和性捕捉及び脱離を通して被分析物の捕捉を可能にする。C18 SENDチップは、捕捉試薬として機能するC18部分及びエネルギー吸収性分子として機能するCHCA部分を含むSEAC/SEND法の一形態である。
「表面増強光解離性付着及び放出」又は「SEPAR」というのは、被分析物を共有結合させ次に例えばレーザー光といった光に対する曝露の後該部分中の光解離性結合を破壊することを通して被分析物を放出することのできる、表面に付着した部分を有するプローブの使用を含むSELDI法の一形態である。SEPAR法は米国特許第5,719,060号明細書中でさらに詳細に記載されている。
「溶離剤」又は「洗浄溶液」は、吸着性表面に対する被分析物の吸着に影響を及ぼすか又はそれを修飾しかつ/又は該表面から未結合材料を除去するのに使用される作用物質、典型的には溶液を意味する。溶離剤の溶出特性は、例えばpH、イオン強度、疎水性、カオトロピズム度、洗浄剤強度及び温度に依存し得る。
「監視」というのは、連続的に変動するパラメータの変化を記録することを意味する。
質量分析でのデータ生成は、イオン検出器によるイオン検出で始まる。典型的レーザー脱離質量分析計は、窒素レーザーを337.1nmで利用することができる。有用なパルス幅は約4ナノセカンドである。一般に、約1〜25μJの出力が使用される。検出器に衝撃を与えるイオンは、アナログ信号をデジタル処理で捕捉する高速タイムアレイ記録デバイスによりデジタル化される電位を生成する。サイファージェン(Ciphergen)のプロテインチップ(ProteinChip)(登録商標)システムは、これを達成するためにアナログ−デジタル変換器(ADC)を利用する。ADCは、規則的に間隔をとった時間的間隔での検出器出力を時間依存ビン内に積分する。時間的間隔は、典型的には1〜4ナノセカンドの長さである。さらに、究極的に分析された飛行時間スペクトルは、典型的に試料に対するイオン化エネルギーの単一パルスからの信号を表わすのではなく、むしろ、パルス数からの信号の和を表わす。こうしてノイズは低減され、ダイナミックレンジは増大する。この飛行時間データは次にデータ処理の対象となる。サイファージェンのプロテインチップ(登録商標)ソフトウェアにおいては、データ処理は典型的に、TOF−M/Z変換、ベースライン減算、高周波ノイズろ過を含む。
TOF−M/Z変換は、飛行時間を質量対電荷比(M/Z)に変換するアルゴリズムの適用を含む。このステップにおいては、信号は、時間ドメインから質量ドメインへと転換される。すなわち、各々の飛行時間は、質量対電荷比すなわちM/Zに転換される。較正は内部的に又は外部的に行なうことができる。内部較正においては、分析される試料は、既知のM/Zの1つ以上の被分析物を含有する。これらの集合された被分析物を表わす飛行時間における信号ピークに、既知のM/Zが割当てられる。これらの割当てられたM/Z比に基づいて、パラメータは、飛行時間をM/Zに転換する数学関数についてパラメータが計算される。外部較正においては、先行する内部較正により新規作成されるもののような飛行時間をM/Zに転換する関数が、内部較正体の使用無く飛行時間スペクトルに適用される。
ベースライン減算は、スペクトルを混乱させる人工的で再現可能な計器オフセットを除去することにより、データ定量化を改善させる。これは、ピーク幅などのパラメータを組込むアルゴリズムを用いてスペクトルベースラインを計算するステップそして次に質量スペクトルからベースラインを減算させるステップを含む。
高周波ノイズ信号は、平滑化関数の適用により除去される。典型的平滑化関数が、各々の時間依存ビンに対し、移動平均関数を適用する。改善された形態では、移動平均フィルタは、例えばピーク帯域幅の一関数としてフィルタの帯域幅が変動し、一般に飛行時間の増加に伴って広くなる可変幅デジタルフィルターである。例えば国際公開第00/70648号パンフレット、2000年11月23日((ギャヴィン(Gavin)ら、「Variable Width Digital Filter for Time−of−flight Mass Spectrometry」))を参照。
コンピュータが、結果としてのスペクトルを表示用のさまざまなフォーマットに変換し得る。「スペクトルビュー又はリテンテートマップ」と呼ばれる1つのフォーマットでは、各々の特定の分子量で検出器に到達する被分析物の数量を該ビューが描写している標準スペクトルビューを表示することができる。「ピークマップ」と呼ばれるもう1つのフォーマットでは、スペクトルビューからピーク高さと質量情報のみが保持され、よりきれいな画像を生み出し、ほぼ同一の分子量を有する被分析物をより容易に見えるようにする。「ゲルビュー」と呼ばれるさらにもう1つのフォーマットでは、ピークビューからの各質量は、各ピークの高さに基づいてグレースケール画像に転換され得、その結果、電気泳動ゲル上のバンドに類似した外観がもたらされることになる。さらにもう1つの「3Dオーバーレイ」と呼ばれるフォーマットでは、相対的ピーク高さでの微妙な変化を研究するために、複数のスペクトルをオーバーレイすることができる。「差異マップビュー」と呼ばれるさらにもう1つのフォーマットでは、2つ以上のスペクトルを比較して、一意的な被分析物及び試料間でアップレギュレート又はダウンレギュレートされた被分析物を適切に強調させることができる。
分析は一般に、1つの被分析物からの信号を表わすスペクトル内のピークの同定を含む。ピーク選択は当然のことながら、目視で行なうことができる。しかしながら、ピークの検出を自動化できるサイファージェンのプロテインチップ(登録商標)ソウトウェアの一部としてのソウトウェアも利用可能である。一般にこのソフトウェアは、選択された閾値より高い信号対雑音比を有する信号を識別し、ピーク信号の質量中心でピークの質量をラベリングすることにより機能する。1つの有用な利用分野においては、質量スペクトルの幾分かの選択された百分率の中に存在する同一のピークを識別するために、数多くのスペクトルが比較される。このソウトウェアの一形態は、定義された質量範囲内のさまざまなスペクトル内に現われる全てのピークをクラスタし、質量(M/Z)クラスタの中央点に近い全てのピークに対して質量(M/Z)を割当てる。
2. シクロデキストリンとエネルギー吸収性分子の錯体
2.1 序
第1の態様では、本発明は、表面からの被分析物の脱離/イオン化を促進するためエネルギー源からの光照射を吸収するエネルギー吸収性分子と錯化されたホスト分子を含むホスト−ゲスト錯体を提供する。理論により限定されることは望まないが、エネルギー吸収性分子がレーザーエネルギーなどの光照射を吸収し、熱エネルギーを生成するものと考えられている。熱エネルギーは、エネルギー吸収性分子と操作的に接触した被分析物まで伝達されるものと考えられている。伝達されたエネルギーは、表面からの脱離及び被分析物のイオン化を促進すると考えられる。このようにして、大型生体分子をプローブの表面から基本的に無傷の状態で脱離させることができる。例示的実施形態では、該錯体は、質量分析計用プローブの1構成要素である基板、例えば質量分析計のプローブインタフェースと係合するための手段を含む基板上で固定化される。
2.2 ホスト分子
ホストの例としては、キレート化剤、クラウンエーテル、クリプタンド、カリキサレン、スフェランド及びポリマー環式構造、例えばシクロデキストリンが含まれる。マトリクスを調製するためのホスト−ゲスト化学の使用により、本発明のマトリクス、表面及びデバイスの中に前例のないレベルの柔軟性を巧みに組み入れることが可能となる。ゲスト化合物を結合させるためのホスト分子の使用(「包接」)は、当業者にとっては周知である。例えばピット(Pitt)ら、「The Design of Chelating Agents for the Treatment of Iron Overload」、出典「INORGANIC CHEMISTRY IN BIOLOGY AND MEDICINE」、マーテル(Martell)A.E.編;American Chemical Society、ワシントンD.C.、1980年、279〜312頁;リンドイ(Lindoy)L.F.、「THE CHEMISTRY OF MACROCYCLIC LiGAND COMPLEXES」、Cambridge University Press、Cambridge、1989年;ダガス(Dugas)H.、「BIOORGANIC CHEMISTRY」、Springer−Verlag、ニューヨーク、1989年、及び本明細書中に内含されている参考文献を参照のこと。
さらに、その他の分子に対するキレート化剤、クラウンエーテル及びシクロデキストリンの付着を可能にする数多くの経路が、当業者にとって利用可能である。例えばミーレス(Meares)ら、「Properties of In vivo Chelate−Tagged Proteins and Polypeptides」、出典「MODIFICATION OF PROTEINS: FOOD、NUTRITIONAL、AND PHARMACOLOGICAL ASPECTS」、フィーニー(Feeney)R.E.、ウィテカー(Whitaker)、J.R.編、American Chemical Society、ワシントンD.C.、1982年、370〜387頁;カシナ(Kasina)ら、Bioconjugate Chem.第9号、108〜117頁(1998年);ソング(Song)ら、Bioconjugate Chem.第8号、249〜255頁(1997年)を参照のこと。
一例示的実施形態においては、ホストはシクロデキストリン又は修飾済みシクロデキストリンである(図1)。シクロデキストリンは数多くの微生物により産生される環式オリゴ糖の1群である。シクロデキストリンは、かご様形状を有する環構造を有する。この形状によりシクロデキストリンは、数多くの種類の分子をその内部キャビティ内に含むことができるようになっている。例えばスゼジトリ(Szejtli)、J.「CYCLODEXTRINS AND THEIR INCLUSION COMPLEXES」、Akademiai Klado、Budapest、1982年;及びベンデル(Bender)ら、「CYCLODEXTRIN CHEMISTRY」、Springer−Verlag、ベルリン、1978年を参照のこと。シクロデキストリンは、例えば薬物、殺虫剤、除草剤及び生物化学兵器(agents of war)を含めた数多くの有機分子と包接錯体を形成することができる。テンジャルラ(Tenjarla)ら、J.Pharm.Sci.第87号、425〜429頁(1998年);ザグール(Zughul)、Pharm.Dev.Technol.第3号:43−53頁(1998年);及びアルバース(Albers)ら、Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.第12号、311〜337頁(1995年)参照。シクロデキストリンは同様に、その包接錯体内の化合物の光学異性体を弁別することもできる。コッペンホーフェル(Koppenhoefer)ら、J.Chromatogr.A793号、153〜164頁(1998年)参照。シクロデキストリン結合官能基をスペーサーアームに、又は直接基板に付着させることができる。例えばヤマモト(Yamamoto)ら、J.Phys.Chem.B101号:6855〜6860頁(1997年)を参照のこと。シクロデキストリンをその他の分子に付着させる方法は、クロマトグラフィ及び製薬技術における当業者にとって周知のものである。スリニーバサン(Sreenivasan)K.J.、Appl.Polym.Sci.第60号、2245〜2249頁(1996年)を参照のこと。その錯化化学は充分に研究され、多様かつ堅調なものであることから、シクロデキストリンは、一般に疎水性であるEAMの溶液を試料に適用することによって調製されるマトリクスよりも一般に優れかつ唯一の特性を有するEAMを提供する。
一般に、レーザー脱離/イオン化質量分析法において使用されるEAMは、基本的に不水溶性である。しかしながら、溶解度及び安定性などのEAMの物理化学特性は、そのシクロデキストリンとの包接錯体形成を通して改変可能である。例えば、EAMが例えばシクロデキストリンといった水溶性ホストにより錯化される場合、EAMを含む水溶液を調製することが可能である。それゆえ本発明は同様に、未錯化EAMよりも高い水溶性を有するEAMホスト錯体を含む水溶性EAMをも提供している。本発明のこの実施形態に従ったEAMの例が本明細書で記されている。
上述の通りの水溶性EAMが利用される実施形態においては、未錯化EAMについて使用される方法と一般に類似している方式で被分析物に対しEAMを適用することができる。本発明のこの実施形態には、先行技術の方法に比べ著しい差異が含まれている。EAMは、基本的に有機の溶媒又は有機/水共溶媒中の溶質としてではなくむしろ水溶液として適用される。被分析物及びEAMのための溶媒は共に水性であることから、これらは基本的に自由に混和可能である。それゆえ、例えばEAMの凝集、不規則な結晶サイズなどの被分析物の溶媒とEAMの溶媒の不混和性に付随する問題点は最小限におさえられるか又は完全に回避される。
ホストとEAMの間に形成された錯体に加えて、本発明は同様に、例えば質量分析計の試料チャンバ内に位置決めできるように構成されているチップといった質量分析プローブをも提供している。チップは、その表面上にホスト−ゲスト(EAM)錯体を含んでいる。代替的には、チップは、表面上にホストを含んでおり、使用前に作業者がその上でEAMを形成し得るデバイスを提供している。
本発明の錯体、表面及びデバイスは、レーザー支援脱離/イオン化質量分析モダリティにおける被分析物に関するデータの収集において使用可能である。例えば、本発明のEAMを組込んだチップは、単一のペプチド(図4及び図5)及びペプチド混合物(図6)を分析するのに使用することができる。容易に制御され再現される構造を有することから、本発明のEAMは、質量分析において再現可能な結果を提供する。
以下の説明においては、本発明のホスト−ゲスト(EAM)の概念を組込んだデバイスの材料が、ホストとしてのシクロデキストリンの使用を参照することで例示されている。シクロデキストリンに焦点をあてているのは例示を明確にするためであり、限定的な意味を有するものではなく、例示されているホストが組込まれる単分子及びポリマーモチーフもまた限定的な意味を有するものではない。同様に、本発明は、質量分析法による検出を用いる代表的実施形態を参照することで以下の各項でさらに詳述され例示されている。質量分析法による検出に焦点をあてているのは、例示を明確かつ単純化することのみを目的としたものであり、本発明の範囲を限定したり又は本発明が応用される方法のタイプを束縛するものとしてみなされるべきではない。当業者であれば、本明細書に記した方法が、広範囲の標的部分の検出のためにこれらのチップを用いた数多くのチップフォーマット及び検定に広く応用可能なものであることを認識することだろう。
2.3 エネルギー吸収性分子
エネルギー吸収性分子は、光照射を吸収し、それと操作的に接触している被分析物分子の脱離/イオン化を促進する能力を有するような分子を含む。例えば、紫外線レーザーを利用するレーザー脱離/イオン化プロセスにおいては、EAMは紫外線光を吸収することができる。赤外線レーザーを用いるLDIプロセスにおいては、EAMは赤外線光を吸収することができる。一例示的実施形態においては、EAMは、次の式で表わされ;
Figure 2008514956
式中、Arはアリール(例えば置換又は非置換フェニル)及びヘテロアリール(例えば置換又は非置換インドリル及び置換又は非置換ピリジル)から選択されたメンバーである。記号Rは、結合、置換又は非置換アルキル及び置換又は非置換ヘテロアルキルを表わす。R1aはH、OH又は置換又は非置換アルキルである。
Ar基として有用なアリール及びヘテロアリールの例としては、
Figure 2008514956
が含まれ、式中、記号R、R及びRは独立してH又は置換又は非置換アルキル例えばC−C非置換アルキルを表わしている。
もう1つの実施形態においては、Rは、以下の式:
Figure 2008514956
で表わされ、式中、R及びRは、独立してH、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル又はCNを表わす。R及びR基の例としては
Figure 2008514956
が含まれる。
EAMの例としてはα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸;シナピン酸、2−(4−ヒドロキシフェニルアゾ)安息香酸;2−メルカプト−ベンゾチアゾール;コハク酸;2,6−ジヒドロキシアセトフェノン;フェルラ酸;コーヒー酸;4−ニトロアニリン;2,4,6−トリヒドロキシアセトフェノン;3−ヒドロキシピコリン酸;アントラニル酸;ニコチン酸;サリチルアミド;トランス−3−インドールアクリル酸;ジトラノール;2,5−ジヒドロキシ安息香酸;コハク酸;2,5−ジヒドロキシ安息香酸;イソバニリン;2,5−ジヒドロキシ安息香酸;3−アミノキノリン;2,4,6−;ジトラノール;T−2−(3−(4−t−ブチル−フェニル)−2−メチル−2−プロペニリジエン)マロノニトリル;及び1−イソキノリノン及びMALDI法でマトリクス用に典型的に使用される任意のその他の分子が含まれる。
2.4. ポリマーシクロデキストリン
一例示的実施形態においては、本発明の錯体はシクロデキストリンがポリマーの構成要素である1つのポリマーの中に含まれている。該ポリマーはシクロデキストリンホモポリマー及びシクロデキストリンコポリマーから選択され、そのいずれかが、任意には1つ以上の架橋部分により架橋されている。選択されたシクロデキストリンポリマーは市販されている(例えばCarboMer,Inc.カタログ番号4−00236)。シクロデキストリンはポリマー主鎖内か又はポリマー鎖に沿って置換基として、ポリマーに共有結合されている。当該技術分野は、シクロデキストリンポリマーを調製するための開発済み方法で一杯である。当業者であれば、EAMとの錯体を形成する能力を有する基本的にあらゆるシクロデキストリンポリマーが本発明のデバイス及び方法において有用であることを容易に理解することだろう。
シクロデキストリン自体が主鎖を構成しているシクロデキストリンポリマーを合成するための方法は既知である。かかる方法は往々にして、エピクロルヒドリン、ジアルデヒド、二塩基酸、ジエステル、二塩基酸ジクロリド、ジエポキシド、ジイソシアナート又はジハロゲン化誘導体、ポリイソシアナート、エチレングリコールビス(エポキシプロピル)エーテル、有機溶媒中の二塩基カルボン酸二ハロゲン化物、又はフィチン酸などの異なる二官能性作用物質の使用に基づくものである。例えば、「Comprehensive Supramolecular Chemistry」、第3巻、J.L.アトウッド(Atwood)ら、Pergamon Press編(1996年);セルハティ(Cserhati)ら、Anal.Chim.Acta第279号、107〜113頁(1993年);米国特許第5,608,015号明細書;及び米国特許第5,276,088を参照のこと。
一実施形態においては、本発明は、エピクロルヒドリンを使用して形成されるシクロデキストリンコポリマーを利用する。例えばネッスル(Nestle)(NETH 6505361)及びソルムス(Solms)とエグリ(Egli)による(HeIv.Chim.Acta第48号、1225頁(1965年);米国特許第3,420,788号明細書);英国特許第1,244,990号明細書;ヴィデンホフ(Wiedenhof)ら、Die Starke第21号(5)、119〜123頁(1969年);ホフマン(Hoffman)、J.Macromol.Sci−Chem.第A7号(5)、1147〜1157頁(1973年);及び日本特許JP−A−58171404号公報及びJP61283601号公報を参照のこと。
ジアルデヒド、二塩基酸、ジエステル、二塩基酸ジクロリド、ジエポキシド、ジイソシアナート又はジハロゲン化誘導体を用いる、米国特許第3,472,835号明細書中に記載されているプロセスを使用して、その他の有用なシクロデキストリンポリマーが調製される。
同様に有用であるのは、有機非プロトン性溶媒中のポリイソシアナートを用いるプロセスにより調製されたシクロデキストリンポリマーである(米国特許第4,917,956号明細書;浅沼ら、Chem.Commun.、1971号(1997年)及び国際公開第98/22197号パンフレット)。
付加的な有用なシクロデキストリンポリマーは、その構造的枠組内にエチレングリコール部分を含むものである。かかるポリマーを調製するためのプロセス例は、エチレングリコールビス(エポキシプロピル)エーテル(フェニベシ(Fenyvesi)ら、(Ann.Univ.Sci.Budapest、Rolando Eotvos Nominatae、Sect.Chim.第15号、13〜22頁(1979年))を使用する。その他のジエポキシ化合物を用いるプロセスも又、スギウラ(Sugiura)ら、(Bull.Chem.Soc.Jpn.、第62号、1643〜1651頁(1989年))により記載されてきた。
シクロデキストリンがポリマー鎖からのペンダント基である第2のタイプのポリマーが本発明において有用である。このモチーフを有するポリマー例が、予め存在するポリマー鎖に対しシクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体をグラフトすることによって産生される。一例示的実施形態においては、反応性デキストラン中間体例えばシクロデキストリンのハロトリアジン及びハロピリミジン誘導体が、主鎖に対しシクロデキストリン部分を付着させるために用いられる。DE19520989号明細書を参照のこと。
シクロデキストリンは、同様にアルデヒド基でも官能化され、次にアミン含有ポリマー上にグラフトされ得、例えば還元的アミノ化反応によるキトサンが有用である。例えば、トモヤ(Tomoya)ら、J Polym.Sci、Part A:Polym.Chem.第36号(11)、1965〜1968頁(1998年)を参照のこと。
ポリマーの調製及びシクロデキストリンポリマー及びモノマーの両方の基板付着のために、数多くの汎用シクロデキストリン中間体が同様に有用である。例えば、アクリロイル又はメタクリロイル基などの重合性官能基が官能化されたシクロデキストリンを用いて、表面上の相補的反応性を有する基又は表面に付着されたアンカー部分と重合可能基の相互作用を通して表面に対しシクロデキストリン含有種を付着させるか又はポリマーを調製することが可能である。例えばDE−A−4009825号明細書;ウィンメル(Wimmer)ら、Minutes Int.Symp.Cyclodextrins、第6回、106〜109頁(1992年)、Hedges A.L.Sante Paris編;EP−A−0780401号明細書;及びハラダ(Harada)ら、Macromolecules、第9号(5)、701〜704頁、(1976年)を参照のこと。
一例示的実施形態においては、メタクリロイル化シクロデキストリンが単独重合又は共重合される。一部の実施形態では、共重合は、架橋ポリマーを形成するべくポリ(エチレングリコール)ジメタクリラートなどの架橋剤を用いて進められる。重合は、過酸化ラウロイルなどの過酸化物の添加により開始され得る。ポリマーは、当該技術分野において既知の方法、例えば未反応モノマーの抽出、沈殿、結晶化、分別結晶、サイズ排除クロマトグラフィ、透析などにより精製される。ポリマーは同様に、NMR、IR、サイズ排除クロマトグラフィ、元素分析などの当該技術分野で認められた方法によっても特徴づけされる。
もう1つの実施形態においては、シクロデキストリンは、以下で詳述する通り、結合部分を用いて官能化される。この実施形態においては、シクロデキストリンのヒドロキシル部分の少なくとも1つが誘導体化されて、以下の式:
Figure 2008514956
の基を提供する(式中、Rは結合官能基を含む部分である)。
2.4.1.1. 架橋
一部の実施形態では、一定の百分率のポリマーが架橋されている。ポリマーの構成要素を架橋するのに有用なあらゆる架橋剤を使用して、本発明のホストポリマーを調製することができる。一例示的実施形態においては、架橋剤は、ポリオール又はポリイソシアナートを有するものである。代替的には、架橋剤は重合性モノマーである。このクラスのメンバーは、かかる連結のうちの少なくとも1つ及び好ましくは大部分が、窒素、酸素及び硫黄などのヘテロ原子及び炭素に対し2重結合された炭素を含む2重結合された炭素と接合されているメンバーである。同じく含まれるのは、エチレン不飽和基特にビニリデン基がエステル又はアミド構造などと接合されているような材料である。
一部の実施形態においては、この基は、例えばアンカー試薬及びシクロデキストリン含有種上の相補的反応性官能基の反応を介してアンカー部分を通して基板の表面に錯体又はポリマーを結合させるために使用することができる。例えば、アンカー試薬上の反応性官能基は、基板に対してシクロデキストリン含有種をつなぐために用いられる。本発明のポリマーを固定化する上で有用なアンカー部分例が図7に示され、ガラス表面に対するその付着が図8に示されている。例えば、ポリマー内に遊離ビニル基又はベンゾフェノン基を提供することによって、例えばメタクリル基といった遊離ビニル基に提供されている表面に対しそれをカップリングすることが可能である。
本発明の架橋ポリマーの一例は、ヒドロゲルである。
2.5. 官能化された錯体及びポリマー
一部の実施形態では、ホスト−ゲスト錯体又はホスト−ゲスト錯体ポリマーはさらに、1つの標的を結合させるための官能基を含んでいる。一部の実施形態においては、官能基は、標的を共有結合させる反応性官能基である。その他の実施形態においては、官能基は、標的を非共有結合的に結合する結合官能基である。本発明で有用な官能基及び官能化化学の例は、図9に記されている。
2.5.1.1. 反応性官能基
反応性官能基の例としては以下のものが含まれる:
(a)N−ヒドロキシスクシニミドエステル、N−ヒドロキシベンズトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p−ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニル及び芳香族エステルを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)、カルボキシル基とそのさまざまな誘導体;
(b)エステル、エーテル、アルデヒドなどに転換可能であるヒドロキシ基;
(c)ハロゲン化物を後に求核基例えばアミン、カルボキシラートアニオン、チオールアニオン、カルバニオン又はアルコキシドイオンで変位させそれゆえハロゲン原子の部位に新しい基の共有結合を結果としてもたらすことのできる、ハロアルキル基;
(d)例えばマレイミド基などのディールスアルダー反応に参与する能力を有するジエン親和基;
(e)例えばイミン、ヒドラゾン、セミカルバゾン又はオキシムなどのカルボニル誘導体の形成を介して、又はグリニャール付加又はアルキルリチウム付加のような機序を介してその後の誘導体化が可能であるようなアルデヒド又はケトン基;
(f)例えばスルホンアミドを形成するべく後にアミンと反応させるためのスルホニルハロゲン化物基;
(g)ジスルフィドに転換するか又はアシルハロゲン化物と反応させることのできるチオール基;
(h)例えばアシル化又はアルキル化され得るアミン又はスルフヒドリル基;
(i)例えば環化付加、アシル化、マイケル付加などを受けるアルケン;及び
(j)例えばアミン及びヒドロキシ化合物といった求核試薬と反応し得るエポキシド。
反応性官能基は、関与しないような形で又はそれらが関与するように意図されていない反応に干渉することがないような形で選択可能である。代替的には、保護基の存在によって、反応性官能基を反応に参与しないよう保護することもできる。当業者であれば、特定の官能基を選択された一組の反応条件と干渉しないように保護する方法を理解するであろう。有用な保護基の例については、グリーン(Greene)ら、「PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS」、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1991年を参照のこと。
当業者であれば、これらの連結の多くがさまざまな方式でかつさまざまな条件を用いて産生可能であることを容易に理解するであろう。エステルの調製については、マーチ、上掲書、1157頁;チオエステルについては、マーチ、上掲書、362〜363頁、491頁、720〜722頁、829頁、941頁及び1172頁を参照のこと;カルボナートについては、マーチ、上掲書、346〜347頁を参照のこと;カルバマートについてはマーチ、上掲書、1156〜57頁を参照のこと;アミドについては、マーチ、上掲書、1152頁を参照のこと;尿素及びチオ尿素についてはマーチ、上掲書、1174頁を参照のこと;アセタール及びケタールについては、グリーンら、上掲書、178〜210頁及びマーチ、上掲書、1146頁を参照のこと;アシルオキシアルキル誘導体については、「PRODRUGS:TOPICAL AND OCULAR DRUG DELIVERY」、K.B.スローン(Sloan)、Marcel Dekker、Inc.、編、ニューヨーク、1992年を参照のこと;エノールエステルについては、マーチ、上掲書、1160頁を参照のこと;N−スルホニルイミダートについては、ブンドガルド(Bundgaard)ら、J.Med.Chem.、第31号、2066頁(1988年)を参照のこと;無水物については、マーチ、上掲書、355〜56、636〜37、990〜91及び1154頁を参照のこと;N−アシルアミドについては、マーチ、上掲書、379頁を参照のこと;N−マンニッヒ塩基については、マーチ、上掲書、800〜02頁及び828頁を参照のこと;ヒドロキシメチルケトンエステルについては、ペトラセック(Petracek)ら、Annals NY Acad.Sci、第507号、353〜54頁(1987年)頁を参照のこと;ジスルフィドについては、マーチ、上掲書、1160頁を参照のこと;並びにホスホナートエステル及びホスホンアミダートについては、例えば参照により本明細書中に明示的に内含されている同時係属中の出願第07/943,805号明細書を参照のこと。
当業者であれば、本明細書で説明する反応性官能基が、本発明のチップを組立てる上で有用である官能基のサブセットしか表わしていないということがわかる。その上、当業者には、反応性官能基が同様に、リンカーアーム及び吸着性フィルムの結合官能基構成要素として有用であることがわかる。
2.5.1.2. 結合官能基
本発明の錯体又はポリマーの例には、結合官能基が含まれ得る。結合官能基(同様に反応性官能基を通しても付着され得る)は、さらなる分析のため試料から被分析物を捕捉するために有用である。結合官能基は、2つのクラスすなわちクロマトグラフィ的結合基及び生体特異的結合基に分類することができる。
クロマトグラフィ的結合官能基には、典型的にクロマトグラフィにおいて使用されるものが含まれ、これらは、電荷−電荷、親水性−親水性、疎水性−疎水性、ファンデルワールス相互作用及びその組合せを介して物質を結合する傾向を有する。これらには、例えばイオン交換官能基(アニオン及びカチオン)、疎水性官能基、親水性官能基、金属キレート官能基及び染料官能基が含まれる。
一例示的実施形態では、結合官能基は、正電荷を有する部分、負電荷を有する部分、アニオン交換部分、カチオン交換部分、金属イオン錯化部分、金属錯体、極性部分及び疎水性部分からなる群から選択される。
本発明のポリマー内で結合官能基として有用であるイオン交換部分は、例えばジエチルアミノエチル、トリエチルアミン、スルホナート、テトラアルキルアンモニウム塩及びカルボキシラートである。
一例示的実施形態では、結合官能基は、市販の二無水物((アルドリッチケミカル(Aldrich Chemical)Co.、Milwaukee、ウィスコンシン州))を利用することにより、スペーサーアーム又は基板上のアミンに付着されているエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)などのポリアミノカルボキシラートキレート化剤である。金属イオンと錯化された時点で、金属キレートは、標的種を認識し結合させるのに使用可能なポリヒスチジルでタグ付けされたタンパク質などのタグ付けされた種に結合する。代替的には、金属イオン自体又は金属イオンを錯化する種が標的であり得る。
金属イオン錯化部分には、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミノエ(diaminoe)−三酢酸(NTA)、N,N−ビス(カルボキシメチル)−L−リジン、イミノ二酢酸、アミノヒドロキサム酸、サリチルアルデヒド、8−ヒドロキシ−キノリン、N,N,N’−トリス(カルボキシトリメチル)エタノールアミン及びN−(2−ピリジルメチル)アミノアセタートが含まれるが、これらに限定されるわけではない。金属イオン錯化剤は、例えば銅、鉄、ニッケル、コバルト、ガリウム及び亜鉛などのあらゆる有用な金属イオンを錯化し得る。
もう1つの例示的実施形態においては、結合官能基は、生体分子例えば天然又は合成ペプチド、抗体(Fab’又はF(ab’)といったその結合フラグメントを含む)、核酸、サッカリド、レクチン、レセプタ/リガンド結合対のメンバー、抗原、細胞又はそれらの組合せである。それゆえ、一例示的実施形態においては、結合官能基は、標的に対して又は構造的に標的に類似している種に対してもたらされた抗体である。もう1つの例示的実施形態では、結合官能基は、標的のビオチニル化類似体に結合するアビジン又はその誘導体である。さらにもう1つの例示的実施形態においては、結合官能基は、その配列と相補的な配列を有する1本鎖又は2本鎖核酸標的に結合する核酸である。もう1つの実施形態においては、結合官能基は、特異的標的を認識するアプタマー及びアプタザイムなどの核酸種の中から選択される。
もう1つの例示的実施形態においては、結合官能基は薬物部分又は薬物部分から誘導されたファーマコフォアである。薬物部分は、臨床的用途としてすでに受入れられた作用物質であり得、そうでなければその使用が実験向けであるか又はその活性又は作用機序が調査中である薬物でもあり得る。薬物部分は、既定の疾病状態で証明済みの作用を有することができ、そうでなければ既定の疾病状態で望ましい作用を示すという仮定がなされているにすぎないものであり得る。好ましい実施形態においては、薬物部分は、選択された標的と相互作用するその能力についてスクリーニングされつつある化合物である。従って、本発明を実施するのに有用である薬物部分は、さまざまな薬理学的活性を有する広範囲の薬物クラスからの薬物を含む。
3. デバイス
3.1. 序
本発明は、基板の表面が本発明のモノマー又はポリマー錯体でコーティングされているデバイスを考慮している。錯体は、共有又は非共有化学結合又はそれが粘着する基板表面に錯体を適用することによる単純な物理的付着を含むあらゆる手段により、表面に結合され得る。基板の性質に応じて、本発明のデバイスは、チップ、樹脂(例えばビーズ)、マイクロタイタープレート又は膜の形をとり得る。
3.2 基板
本発明の選択されたデバイス(例えばチップ、クロマトグラフィ支持体、マイクロタイタープレート、膜)の中で、錯体は、基板と吸着性フィルムの間に介在させられるリンカーアームを通してか又は直接的に、基板の上に固定化される。デバイスの性質及び意図された用途は、基板の構成に影響を及ぼす。例えば、本発明のチップは典型的に平面基板フォーマットに基づいている。これとは対照的に、本発明のクロマトグラフィ支持体は一般的に、球状又はほぼ球状の基板を使用しており、一方本発明の膜は多孔性基板を用いて形成されている。マイクロタイタープレートは一般に、内部で反応を実施させることのできるウェルを含む製造のプラスチック製品である。
3.2.1.1 チップ
本発明のチップの例は、平面基板を用いて形成される。錯体は基板に直接適用されるか又は、基板表面に結合されたアンカー部分、又は基板表面上の特徴、例えば隆起した(例えばアイランド)又は陥凹した(例えばウェル、トラフなど)領域に対して結合させられる。
ポリマー又はモノマー形態のいずれかの錯体は一般にチップ基板上に固定化される。ポリマーと基板の間の相互作用は、共有、静電、イオン、水素結合、疎水性−疎水性、親水性−親水性相互作用又は物理吸着又は物理接着であり得る。
本発明を実施するのに有用である基板は、あらゆる安定した材料又は材料の組合せで作ることができる。その上、有用な基板は、適切なあらゆる幾何形状又は構造的特徴の組合せを有するように構成され得る。基板は、剛性又は可撓性のいずれでもあり得、光学的に透明又は光学的に不透明であり得る。基板は同様に、電気絶縁体、導体又は半導体であり得る。チップに適用すべき試料が水性である場合、好ましい基板は不水溶性である。
好ましい実施形態においては、基板材料は、基本的に被分析物と非反応性であり、それゆえ基板と被分析物又は検定混合物のその他の構成要素の間の非特異的結合を妨げている。非特異的結合を妨げるための材料で基板をコーティングする方法は、当該技術分野において一般的に知られている。コーティング剤の例としてはセルロース、ウシ血清アルブミン及びポリ(エチレングリコール)が含まれているがこれらに限定されるわけではない。特定の利用分野のための適切なコーティング剤は、当業者には明白であろう。
一例示的実施形態においては、基板は、二酸化ケイ素の層でコーティングされているアルミニウム支持体を含んでいる。さらにもう1つの好ましい実施形態においては、二酸化ケイ素は厚みが約1000〜3000Åである。その他の実施形態においては、基板は、セルロース又はプラスチックなどのポリマー材料を含む。
3.2.1.2. 水溶性EAM
例示的実施形態においては、EAM−ホスト錯体は表面に定着されておらず、それは基本的に水溶性であるか又は少なくともEAM単独の場合よりも水溶性が高い。それゆえ、本発明は、レーザー脱離/イオン化質量分析法で使用するための最初の基本的に水溶性のEAMを提供する。実際には、水溶性EAMの水溶液を、有機溶媒中のEAM溶液で現在使用されているものと類似の方式で使用することが可能である。例えば、モノマー又はポリマー形態のいずれかの錯体を、プローブ表面に対する適用の前に被分析物と混合することができる。代替的には、錯体又は被分析物のいずれかをプローブ表面に適用し、もう一方をひき続き適用することができる。
3.2.1.3 アンカー試薬(部分)
ホスト−ゲストEAM−錯体が表面に共有結合される場合、基板表面上で相補的反応性を有する基とアンカー試薬上の基を反応させ、かつホスト上の相補的反応性を有する基と遊離の又は表面につながれたアンカー試薬上の基とを反応させることによって形成されるアンカー部分を用いて、表面に対してつながれ得、これらの反応は有用なあらゆる配列で実施される。アンカー部分の例は、図7に記されている。図8は、ガラス表面に結合したアンカー部分の推定上の構造を提供している。モノマー及びポリマー錯体の両方を表面につなぐことができる。
反応性Si−OH結合を伴う表面を提示するガラス様の材料でコーティングされた代表的基板の場合、アンカー部分は一般に、ガラスの表面にある結合に相補的な反応性を有する第1の官能基及びホスト上の相補的な反応性を有する反応性官能基と共有結合を形成する第2の反応性官能基を含むことになる。上述の通り、一例示的実施形態においては、錯体はシクロデキストリン部分であるホストを含む。
第1の官能基に関しては、数多くのシロキサン官能化試薬が、基板に対する結合を形成できる。試薬の例としては、次のものが含まれるが、これらに限定されるわけではない;
1.ヒドロキシアルキルシロキサン(シリラート表面、ジボランで官能化、アルコールを酸化するためのH
a.アリル トリクロロシラン →→ 3−ヒドロキシプロピル、
b.7−オクト−l−エニルトリクロルクロロシラン →→ 8−ヒドロキシオクチル;
2.ジオール(ジヒドロキシアルキル)シロキサン(シリラート表面、ジオールに加水分解)。
a.(グリシジルトリメトキシシラン →→ (2,3−ジヒドロキシプロピルオキシ)プロピル;
3.アミノアルキルシロキサン(中間官能化ステップを必要としないアミン)
a.3−アミノプロピルトリメトキシシラン → アミノプロピル;
4.2量体二次アミノアルキルシロキサン
a.ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)アミン → ビス(シリルオキシルプロピル)アミン;及び
4.不飽和種(例えばアクリロイル、メタクリロイル、スチリルなど)。
上述のモチーフ4に従ったアンカー試薬例としては、スチリルエチルトリメトキシシラン、スチリルエチルメチルジメトキシシラン、スチリルエチルジメチルメトキシシラン、スチリルエチルトリクロロシラン、スチリルエチルメチルジメトキシシラン、スチリルエチルジメチルメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−アクリルオキシプロピル)トリクロロシラン、(3−アクリルオキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3−アクリルオキシプロピル)ジメチルクロロシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)ジメチルメトキシシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)トリクロロシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)メチルジクロロシラン、(3−メタクリルオキシプロピル)ジメチルクロロシラン及びそれらの組合せが含まれる。
一例示的実施形態においては、上述の重合性部分を有するアンカー試薬が、相補的反応性を有する重合性部分と誘導体化されるホストにカップリングされている。
3.2.1.4 パターン化
本発明を実施するにあたり有用な基板の表面は、平滑面、粗面及び/又はパターン化面であり得る。表面は、機械的及び/又は化学的技術を用いることで工学処理され得る。例えば、該表面を、ラビング、エッチング、溝切り、伸縮及び金属フィルムの傾斜蒸着により粗化又はパターン化することが可能である。フォトリソグラフィ(クラインフィールド(Kleinfield)ら、J.Neurosci.第8号、4098〜120頁(1998年)、フォトエッチング、ケミカルエッチング及びミクロ接触プリンティング((クマール(Kumar)ら、Langmuir第10号、1498〜511頁(1994年)))などの技術を用いて基板をパターン化することが可能である。基板上にパターンを形成するためのその他の技術が、当業者には容易に明らかになることだろう。
基板上のパターンのサイズ及び複雑度は、利用された技術の分解能及びそのパターンが意図されている用途によって制御される。例えば、ミクロ接触プリンティングを用いて、200nmといった小さな特徴が基板上に積層されてきた。シア(Xia)Y.;ホワイトサイズ(Whitesides)G.、J Am.Chem.Soc.第117号、3274〜75頁(1995年)を参照。類似の方式で、フォトリソグラフィを用いて、1μmといった小さな特徴を有するパターンが生成されてきた。ヒックマン(Hickman)ら、J.Vac.Sci Technol.第12号、607〜16頁(1994)参照。本発明において有用であるパターンには、ウェル、エンクロージャ、区間、リセス、入口、出口、チャネル、トラフ、回折格子などの特徴を含むものが含まれる。
一例示的実施形態においては、検出手段により各々の特徴が別々に識別され得る、複数の隣接するアドレス指定可能な特徴を有する基板を生成するために、パターン化が用いられる。もう1つの例示的実施形態では、アドレス指定可能な特徴は、その他の隣接する特徴と流体連通していない。それゆえ、特定の特徴内に置かれた被分析物又はその他の物質は、基本的にその特徴に閉じ込められた状態にとどまる。もう1つの好ましい実施形態においては、パターン化はデバイスを通してチャネルを作り出すことを可能にし、それゆえ流体はデバイスに出入りできる。
認知された技術を用いて、異なる化学的特性を有する領域を有するパターンを伴う基板を生成することができる。それゆえ、例えば、パターンの成分の疎水性/親水性、電荷又はその他の化学的特性を変更することにより、一連の隣接する隔離された特徴が作り出される。例えば、疎水性材料を用いて隣接する特徴間の「壁」をパターン化することにより、個々の親水性特徴に親水性化合物を閉じ込めることができる。類似の方式で、閉じ込められた化合物のものと類似の電荷を有する化合物で作られた「壁」を有する特徴に、正又は負に帯電した化合物を閉じ込めることができる。類似の基板構成は同様に、基板上に直接所望の特性を有する層をマイクロプリンティングすることを通してもアクセス可能である。ムルキッシュ(Mrkish)M.;ホワイトサイズ、G.M.、Ann.Rev.Biophys.Biomol.Struct.第25号、55〜78頁(1996年)を参照のこと。
本発明のチップの特異性及び多重化能力は、チップ基板内に空間符号化(例えばスポットマイクロアレイ)を組込むことによって改善される。空間符号化は、本発明のチップの各々の中に導入できる。一例示的実施形態においては、チップ表面を横断して、異なる被分析物のための結合官能基をアレイ化して、各々の場所で特異的データコード(例えば標的結合官能基特異性)を再利用できるようにすることができる。この場合、アレイの場所は、事実上無限数の異なる被分析物の検出を可能にする付加的な符号化パラメータである。
空間符号化が利用される本発明の実施形態においては、これらは好ましくは、基板のm個の領域全体にわたり分布したm個の結合官能基を含む空間符号化されたアレイを利用する。m個の結合官能基の各々は、異なる官能基又は同じ官能基であり得、そうでなければ、表面上でパターンの形に異なる官能基を配置することができる。例えば、アドレス指定可能な場所のマトリクスアレイの場合、単一の行又は列内の全ての場所は同じ結合官能基を有することができる。m個の結合官能基は好ましくは、m個の場所の各々の同一性を確定できるような形で、基板上にパターン化される。もう1つの実施形態においては、m個の結合官能基は、(p×q)の離散的場所のp×qマトリクスの形に順序付けされ、ここで(p×q)の場所の各々はm個の結合官能基のうちの少なくとも1つに結合されている。マイクロアレイは、基本的に任意のタイプの結合官能基からパターン化可能である。
3.2.1.5. 質量分析法プローブ
好ましい実施形態においては、本発明のチップは、質量分析法プローブなどの気相イオン分光計のためのプローブの形で設計される。それを質量分析の試料チャンバ内に容易に位置決めできるようにするため、チップの基板は、一般にインタフェース内部の相補的構造と係合する手段を含むように構成される。「位置決めされた」という語は一般に、そのチップを、それが特定の脱離/イオン化サイクルの持続時間中エネルギー源と適切に心合せされた状態にとどまっている試料チャンバ内の位置まで移動させることができる、という意味であると理解される。市販のレーザー脱離/イオン化質量分析計が数多く存在している。サプライヤーとしては、サイファージェン・バイオシステムズ(Ciphergen Biosystems)、Inc.、ウォーターズ(Waters)、マイクロマス(Micromass)、MDS、島津、アプライド・バイオシテムズ(Applied Biosystems)及びブラッカー・バイオサイエンシーズ(Bruker Biosciences)が含まれる。
本明細書に従った1つの構造例は、サイファージェンプローブの中で使用されているものなどの、インタフェース中の溝と滑動可能な形で係合するための手段を含むチップである(図10)。この図では、試料チャンバの中でプローブを位置決めするための手段は、プローブ内に相補的な収容構造を係合させるリップ102を含む基板101と一体化されたものである。
もう1つの実施例では、プローブは丸形で、典型的に、磁気カップラを用いてホルダー/アクチュエータに付着されている。このとき、標的は、リペラー内に押し込まれ、密に接触して位置的かつ電気的確実性を保証する。
その他のプローブは矩形であり、磁気カップリングを用いてキャリヤと直接一緒になるか又は、ピン又はラッチを用いて二次キャリヤに物理的に付着する。二次キャリヤは次に、試料アクチュエータに磁気的にカップリングする。このアプローチは一般に、オートローダー能力を有するシステムにより使用され、アクチュエータは一般に古典的なx、y、2−d段である。
さらにもう1つの例示的実施形態では、プローブはバレルである。バレルは、ゲルピース又はブロットを支持するのに用いられた。垂直平面内で回転、移動させることにより、2−d段が作り出される。
さらなる例示的実施形態では、プローブはディスクである。ディスクは垂直又は水平のいずれかの位置で回転、移動させられて、r−シータ段を作り出す。かかるディスクは、典型的には、磁気又は圧縮カップラのいずれかを使用して係合される。
3.2.1.6. 樹脂
本発明の1態様に従うと、固体基板は有機材料である。好ましくは、有機材料は、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリラート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー又はそれらの混合物である。代替的には、固体支持体は無機材料、好ましくはヒドロゲル含有シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、セラミックス、及びそれらの混合物から選択されたものである。
4. デバイスの作製方法
もう1つの例示的実施形態では、本発明は、本発明の錯体及びデバイスの作製方法を提供する。マトリクスを形成するために本明細書に記された方法の利点は、本明細書で「ホスト含有種」と呼ばれる、その構造の1構成要素としてのホスト部分又はこの種のEAM錯体を含む化合物を工業的に適切な量だけ調製するのが容易であるという点にある。本発明の錯体、表面及びチップを形成するのに必要な構成要素のバッチに対するアクセスは、基本的に同一の物性を有する多数のチップの形成を可能にする。その上、上述の通り、本発明の方法は自由に調節可能なEAMローディングを伴うマトリクスを提供する。さらに、混合物は、試料上に混合物の溶液を積層する当該方法の結果としてのマトリクス結晶分布の不規則性によって妨害されない。それゆえ、チップは、再現可能な高処理量の分析に適している。
本発明の錯体は、錯体の形成を促進する条件の下でホスト及びゲストを接触させることによって調製される。かかる錯体を形成するための一般的条件は、当該技術分野において認知されたものであり、選択された利用分野のために適当な条件を開発することは、当業者の能力範囲に充分入るものである。ホスト−ゲスト錯体の例としては、上述したもののようなEAMと錯化されたシクロデキストリン又はシクロデキストリンホモポリマー又はコポリマーである。シクロデキストリン錯体の形成に関する当該技術分野における莫大な知識に加えて、本出願は、錯体の形成実施例を含んでいる。
もう1つの実施形態においては、本発明は、ホスト又はホスト−ゲストEAM錯体を含む複数の吸着デバイスを作製する方法を提供している。複数のデバイスの各メンバーは、(a)表面を有する固体支持体及び(b)表面上のホスト又はホスト−ゲスト錯体を含む吸着性フィルムを含んでいる。好ましい方法においては、各々の固体支持体は、本明細書で「ホスト含有種」と呼ばれている、その構造の1構成要素としてホスト部分を含んでいる化合物の単一の調製物すなわちバッチのアリコートと接触させられる。アリコートは、ホスト含有種又はホスト含有種のEAM錯体の単一バッチから試料採取される。
本発明の種を形成するのに用いられる構成要素の単一バッチの使用は、チップ間及びロット間のばらつきを最小限におさえる。ホスト含有種の単一バッチについての好ましいサイズは、約0.5リットルから5リットルである。単一バッチは、好ましくは、少なくとも約500,000mm、好ましくは約500,000mm〜約50,000,000mm、より好ましくは約100,000〜約5,000,000のアドレス指定可能な場所の合計面積を調製するのに充分な体積のものである。
基板上にひとたび置かれたならば、該表面は、当業者にとって既知のさまざまな化学反応による官能化に適している。例えば、アニオン交換ホスト含有種を生成するために、反応性ホスト含有種が適切なアミン(例えばジメチルエタノールアミン又はトリメチルアミン)と反応させられて、第4級イオン交換部位を生成する。反応性官能基及び結合官能基に関する以上の説明は全体としてここでも該当する。
5. 錯体の使用方法及びデバイス
本発明のホスト−ゲストEAM錯体は、特に質量分析法に関連してのみならずその他の表面検出方法に関連して被分析物を検出するために有用である。一実施形態においては、例えば水溶液の中の被分析物は、モノマー又はポリマーのいずれかの形態で本発明の錯体と混合される。混合物は、質量分析計のインタフェースと係合したプローブの表面に適用され、その後レーザー脱離/イオン化質量分析法によって検出される。もう1つの実施形態においては、本発明のモノマー又はポリマー錯体でコーティングされたチップが提供されている。被分析物を含む試料がチップ表面に適用される。その後、被分析物は質量分析法により検出される。その他の実施形態においては、チップは、被分析物を非共有結合的に結合させることのできる結合部分をも含んでいる。被分析物の捕捉後、非結合分子は洗い流される。このとき被分析物を質量分析法により検出することができる。その他の実施形態においては、被分析物はその他の表面検出方法によっても検出可能である。一般に、これらは、例えばレセプタとリガンドの間の生体特異性相互作用を検査するために適している。
チップ上での捕捉時点で、被分析物を、例えば気相イオン分光法、光学的方法、電気化学的方法、原子間力顕微鏡法及び無線周波方法から選択されたさまざまな検出方法によって検出することができる。本明細書では気相イオン分光法が記載される。特に有利であるのは、質量分析法特にSELDI法を使用することである。光学方法には例えば、螢光、発光、化学発光、吸光度、反射率、透過率、複屈折性又は屈折率(例えば表面プラズモン共鳴、偏光解析法、共振ミラー方法、格子結合器導波管方法(例えば波長問合せ型光センサー)又は干渉分光法)が含まれる。光学的方法には、顕微鏡法(共焦点及び非共焦点の両方)、画像検査法及び非画像検査法が含まれる。さまざまなフォーマットでの免疫検定法(例えばELISA法)が、固相上に捕捉された被分析物の検出ためのよく知られた方法である。電気化学的方法には、ボルタメトリー及びアンペロメトリー法が含まれる。無線周波方法には、多極共鳴分光法が含まれる。
実施例1;α−シアノ−4−ヒドロキシル桂皮酸/β−シクロデキストリンの錯体形成
1.26gのβ−シクロデキストリン(アルドリッチ)を60℃で30gのDIHO/DMF混合物(w/w、7.5:1)の中に溶解させた。この透明な溶液に対し0.21gのα−シアノ−4−ヒドロキシル桂皮酸(CHCA、アルドリッチ)を添加した。懸濁液を60℃で12時間振盪させた。その後、光学的に透明な溶液を得た。溶媒混合物を凍結させ、凍結乾燥機で除去し、黄色がかった固体生成物を得た。
対照実験:
30gのDIHO/DMF混合物(w/w、7.5:1)の溶液に対し、0.21gのCHCAを添加した。懸濁液を60℃で12時間攪拌した。懸濁液中のCHCAは未溶解状態にとどまった。
上述の実験は、CHCAゲストがシクロデキストリンとの錯体の中に含み入れられていることを確認した。β−シクロデキストリンホストの存在下の水溶液中でゲストが消滅するという事実は、錯体の形成を確証している。これとは対照的にCHCAは、対照実験においてβ−シクロデキストリンの不在下で溶解不能の状態にとどまっていた。
実施例2;シナピン酸/β−シクロデキストリンの錯体形成
1.3gのβ−シクロデキストリン(アルドリッチ)を60℃で30gのDIHO/DMF混合物(w/w、7.5:1)の中に溶解させた。この透明な溶液に対し0.257gのシナピン酸(SPA、アルドリッチ)を添加した。懸濁液を60℃で12時間振盪させた。その後、光学的に透明な溶液を得た。溶媒混合物を凍結させ、凍結乾燥機で除去し、固体生成物を得た。
対照実験:
30gのDIHO/DMF混合物(w/w、7.5:1)の溶液に対し、0.257gのSPAを添加した。懸濁液を60℃で12時間攪拌した。懸濁液中のSPAは未溶解状態にとどまった。
上述の実験は、SPAゲストがシクロデキストリンとの錯体の中に含み入れられていることを確認した。β−シクロデキストリンホストの存在下の水溶液中でゲストが消滅するという事実は、錯体形成を確証している。これとは対照的にβ−シクロデキストリンの不在下でSPAは、対照実験において溶解不能の状態にとどまっていた。
実施例3;α−シアノ−4−ヒドロキシル桂皮酸/β−シクロデキストリンポリマーの錯体形成
1.5gのβ−シクロデキストリンポリマー(Carbomer Inc.、カタログ番号4−00236)を60℃で25gのDIHO/DMF混合物(w/w、85:15)の中で溶解させた。この透明な溶液に対し0.21gのCHCAを添加した。懸濁液を60℃で12時間振盪させた。その後、光学的に透明な溶液を得た。溶媒混合物を凍結させ、凍結乾燥機で除去し、黄色がかった固体生成物を得た。
対照実験:
25gのDIHO/DMF混合物(w/w、85:15)の溶液に対し、0.21gのCHCAを添加した。懸濁液を60℃で12時間攪拌した。懸濁液中のCHCAは未溶解状態にとどまった。
上述の実験は、CHCAゲストがシクロデキストリンとの錯体の中に含み入れられていることを確認した。β−シクロデキストリンポリマーホストの存在下の水溶液中でゲストが消滅するという事実は、錯体形成を確証している。これとは対照的にβ−シクロデキストリンポリマーの不存在下での対照実験において、CHCAは溶解不能の状態にとどまっていた。
実施例4;シナピン酸/β−シクロデキストリンポリマーの錯体形成
1.5gのβ−シクロデキストリンポリマー(Carbomer Inc.、カタログ番号4−00236)を60℃で25gのDIHO/DMF混合物(w/w、85:15)の中で溶解させた。この透明な溶液に対し0.257gのSPAを添加した。懸濁液を60℃で12時間振盪させた。その後、光学的に透明な溶液を得た。溶媒混合物を凍結させ、凍結乾燥機で除去し、固体生成物を得た。
対照実験:
25gのDIHO/DMF混合物(w/w、85:15)の溶液に対し、0.257gのSPAを添加した。懸濁液を60℃で12時間攪拌した。SPA懸濁液は未溶解状態にとどまった。
上述の実験は、SPAゲストがシクロデキストリンとの錯体の中に含み入れられていることを確認した。β−シクロデキストリンポリマーホストの存在下の水溶液中でゲストが消滅するという事実は、錯体形成を確証している。これとは対照的にβ−シクロデキストリンポリマーの不存在下で、SPAは対照実験において溶解不能の状態にとどまっていた。
実施例5;SPA/β−シクロデキストリンを用いたシトクロムCのSELDI法
典型的レーザー条件下でシトクロムCの脱離及びイオン化を補助するべく、SELDI分析においてEAMとしてSPA/β−シクロデキストリン錯体を使用した。SELDI法及びプロテインチップの使用説明については、例えば国際公開第00/66265号パンフレット(リッチ(Rich)ら、「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」、2000年11月9日)を参照のこと。本発明のEAM錯体を、非錯化マトリクスと同じ方式で被分析物に適用した。
以下に記すのは、EAM錯体の一例を使用するためのプロトコルの一実施例である。
(1)2mgのSPA/β−シクロデキストリン錯体に対してDIHO(200μL)を添加して、清澄なEAM溶液を作った;
(2)NP20プロテインチップに対し、さまざまな量のEAM溶液を各スポットに付加した;
(3)EAM溶液を乾燥させた後、スポット上に、0.1重量%のトリフルオロ酢酸(TFA)中に溶解させた最高10pmolのシトクロムCを添加した。
(4)スポットを乾燥させた後、2μLのエタノールを各スポットに添加してSPAをβ−シクロデキストリンのキャビティから抽出した。
(5)アレイを乾燥させ、PBSIIC計器内で読み取った。
図4及び図5は、典型的分析パラメータの下で脱離及びイオン化を補助するためにSPA/β−シクロデキストリンEAM錯体を用いたシトクロムCの質量スペクトルを示している。結果は、SPA/β−シクロデキストリンEAM錯体がシトクロムCの脱離及びイオン化を促進するためのEAMとして作用することを示している。試料をエタノールで処理して、脱離及びイオン化実験の前にキャビティからSPAを抽出した。
実施例6;SPA/β−シクロデキストリンを用いたタンパク質混合物のSELDI法
もう1つのSELDI分析においては、典型的レーザー条件下で一体型タンパク質標準の脱離及びイオン化を促進するためにEAMとして、実施例4に従って調製されたSPA/β−シクロデキストリンポリマー錯体を使用した。SELDI法及びプロテインチップの説明については、例えば国際公開第00/66265号パンフレット(リッチら、「Probes for a Gas Phase Ion Spectrometer」、2000年11月9日)を参照のこと。一体型タンパク質標準はサイファージェン・バイオシステムズInc.から入手可能な製品である。一体型タンパク質の構成要素は、ヒルジンBHVK(MW(分子量)7,034ダルトン)、シトクロムC(MW12,230ダルトン)、ミオグロビン(MW16,951ダルトン)、炭酸脱水酵素(MW29,023ダルトン)、エノラーゼ(MW46,671ダルトン)、アルブミン(MW66,433ダルトン)、IgG(MW147,300ダルトン)。
以下に記すのは、ホスト−ゲストEAM錯体を用いたプロトコルの一実施例である。
(1)200μLの0.1重量%のTFA水溶液に対して、2mgのSPA/β−シクロデキストリンポリマー錯体を加えて、清澄なEAM溶液を作った;
(2)25μLの20モノマー酢酸アンモニウムの中に、一体型タンパク質を1バイアル分溶解させた;
(3)NP20プロテインチップに対して、1μLの一体型タンパク質溶液とそれに続く1μLのDI(脱イオン)水を各スポットに付加した。
(4)溶液を乾燥させた後、2.5μLのEAM溶液を各スポットに2回付加した。
(5)スポットが乾燥した後、2μLのエタノールを各スポットに添加してSPAをβ−シクロデキストリンポリマーのキャビティから抽出した。
(6)アレイを乾燥させ、PBSIIC計器内で読み取った。
図6は、典型的レーザー条件下で脱離及びイオン化プロセスを促進するためSPA/β−シクロデキストリンポリマーEAM錯体を用いた質量範囲5,000〜70,000ダルトン内の一体型タンパク質プロファイルの質量スペクトルを示している。スペクトルは、予想されたタンパク質ピークを含んでいた。結果は、SPA/β−シクロデキストリンポリマーが、一体型タンパク質の構成要素の脱離及びイオン化を促進するためのEAMとして作用することを示している。脱離及びイオン化実験の前にキャビティからSPAを抽出するべく、エタノールで試料を処理した。
当然のことながら本明細書で記載された実施例及び実施形態は単に例示を目的としたものであること、そしてそれに照らしたさまざまな変更又は変形が当業者に対し示唆されることになり、それらは本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に包含されるべきものである。本明細書に引用されている全ての刊行物、特許及び特許出願は、あらゆる目的のためその全てが本明細書に参照により援用されている。
シクロデキストリンによる代表的EAM化合物の錯化を示す。 シアナート部分を用いたチップ表面上の架橋CD含有ポリマーの構築を例示する。 エポキシド部分を用いたチップ表面上の架橋CD含有ポリマーの構築を例示する。 典型的レーザー条件下での脱離及びイオン化プロセスを補助するため1.2μLのSPA/β−シクロデキストリンマトリクス錯体溶液を用いて獲得したシトクロムCの質量スペクトルである。 典型的レーザー条件下での脱離及びイオン化プロセスを補助するため4μlのSPA/β−シクロデキストリンマトリクス錯体を用いて獲得したシトクロムCの質量スペクトルである。 典型的レーザー条件下での脱離及びイオン化プロセスを補助するためSPA/β−シクロデキストリンポリマーマトリクス錯体を用いて獲得した5,000〜70,000ダルトンの質量範囲内の一体型タンパク質プロファイルの質量スペクトルである。 アンカー試薬の例を示す。 ガラス表面にカップリングされたアンカー試薬例を示す。 結合官能基をシクロデキストリン又はシクロデキストリン含有ポリマー内に組込むための官能化化学反応例のアレイを表示する。 本発明を実施する上で有用である代表的プローブフォーマットである。

Claims (44)

  1. 光照射源からのエネルギーを吸収し、それによって操作的に接触する被分析物分子の脱離及びイオン化に寄与する、エネルギー吸収性分子と錯化されたホスト分子を含む錯体。
  2. ホストが大員環である、請求項1に記載の錯体。
  3. 前記大員環が、クラウン、クリプタンド及びシクロデキストリンから選択されたメンバーである、請求項2に記載の錯体。
  4. 前記エネルギー吸収分子が、以下の構造:
    Figure 2008514956
    を含み、式中、
    Arがアリール及びヘテロアリールから選択されたメンバーであり、
    が、単結合、置換又は非置換アルキル及び置換又は非置換ヘテロアルキルから選択されたメンバーであり、かつ
    1aがH、OH及び置換又は非置換アルキルから選択されたメンバーである、
    請求項1に記載の錯体。
  5. Arが置換又は非置換フェニル、置換又は非置換インドリル及び置換又は非置換ピリジルから選択されたメンバーである、請求項4に記載の錯体。
  6. Arが、
    Figure 2008514956
    から選択されたメンバーであり、
    式中、R、R及びRが、H及び置換又は非置換アルキルから独立して選択されたメンバーである、
    請求項5に記載の錯体。
  7. 、R及びRが、H及びC−C非置換アルキルから独立して選択されたメンバーである、請求項6に記載の錯体。
  8. が、以下の式:
    Figure 2008514956
    で表わされ、
    式中、R及びRが、H、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル及びCNから独立して選択されたメンバーである、
    請求項4に記載の錯体。
  9. が、
    Figure 2008514956
    から選択されたメンバーである式によって表わされる、請求項8に記載の錯体。
  10. 前記エネルギー吸収性分子が、フェルラ酸、コーヒー酸、桂皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、シナピン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−アミノ安息香酸、アセトアミド、サリチルアミド、イソバニリン及びトランス−3−インドールアクリル酸から選択されたメンバーである、請求項6に記載の錯体。
  11. 前記錯体がポリマーの構成要素である、請求項1に記載の錯体。
  12. 前記ポリマーが、結合官能基及び反応性官能基から選択されたメンバーを含む、請求項11に記載の錯体。
  13. 前記結合官能基及び前記反応性官能基が、静電官能基、疎水性官能基、水素結合官能基、配位共有結合官能基、共有結合官能基、エポキシド官能基、カルボジイミジゾール官能基、生体特異的結合官能基及びそれらの組合せから独立して選択されたメンバーである、請求項12に記載の錯体。
  14. 前記ポリマーが、前記錯体と結合官能基を含むモノマー又はポリマーとを含むブレンドである、請求項11に記載の錯体。
  15. 前記ポリマーが架橋ポリマーである、請求項11に記載の錯体。
  16. 前記架橋ポリマーが結合官能基を含む、請求項15に記載の錯体。
  17. 前記ポリマーがシクロデキストリン部分を含む、請求項11に記載の錯体。
  18. 前記錯体が固体支持体上に固定化されている、請求項1に記載の錯体。
  19. 前記ホスト分子がシクロデキストリン部分を含み、
    前記シクロデキストリン部分の少なくとも1つのヒドロキシル基が
    Figure 2008514956
    として官能化され、
    式中、Rは、結合官能基を含む、
    請求項1に記載の錯体。
  20. 被分析物が前記結合官能基上に固定化されている、請求項19に記載の錯体。
  21. (a)請求項1に記載の錯体と、
    (b)質量分析計の試料チャンバ内に位置決めされるように構成された基板と、
    を含むキット。
  22. 錯体を含む表面を有する基板であって、
    前記錯体が、光照射源からエネルギーを吸収し、それによって操作的に接触する被分析物分子の脱離及びイオン化に寄与するエネルギー吸収性分子と錯化されたホスト分子を含む基板を備える、デバイス。
  23. 前記エネルギー吸収性分子が、置換基を有するアリール核を含む部分を含み、前記置換基が前記アリール核のπ系に共役するカルボニル又はカルボキシル基を含む、請求項22に記載のデバイス。
  24. 前記ホスト分子が前記基板に付着されている、請求項23に記載のデバイス。
  25. 前記ホスト分子が物理的接着により表面に付着されている、請求項24に記載のデバイス。
  26. 前記ホスト分子が共有結合により表面に付着されている、請求項24に記載のデバイス。
  27. 前記共有結合が、前記基板表面上の重合性部分と前記ホスト分子の重合性部分との間の重合反応の結果としてもたらされる、請求項26に記載のデバイス。
  28. 前記ホスト分子上に吸着された被分析物をさらに含む、請求項22に記載のデバイス。
  29. 前記被分析物が、前記ホスト分子上の結合官能基と前記被分析物との間の相互作用を通して前記ホスト分子上に吸着されている、請求項28に記載のデバイス。
  30. 前記錯体がポリマーの構成要素である、請求項22に記載のデバイス。
  31. 前記ポリマーが、結合官能基及び反応性官能基から選択されたメンバーを含む、請求項30に記載のデバイス。
  32. 前記結合官能基及び前記反応性官能基が、静電官能基、疎水性官能基、水素結合官能基、配位共有結合官能基、共有結合官能基、エポキシド官能基、カルボジミミジゾール官能基、生体特異的結合官能基及びそれらの組合せから独立して選択されたメンバーである、請求項31に記載のデバイス。
  33. 前記ポリマーが、前記錯体と結合官能基を含むモノマー又はポリマーとを含むブレンドである、請求項30に記載のデバイス。
  34. 前記ポリマーが架橋ポリマーである、請求項30に記載のデバイス。
  35. 前記架橋ポリマーが結合官能基を含む、請求項34に記載のデバイス。
  36. 前記ポリマーがシクロデキストリン部分を含む、請求項30に記載のデバイス。
  37. 前記基板が導電性材料を含む、請求項22に記載のデバイス。
  38. 前記基板が、質量分析計のプローブインタフェースと係合するための手段を含む、請求項22に記載のデバイス。
  39. 前記ポリマーが、複数のアドレス指定可能な場所で前記基板上に分配されている、請求項30に記載のデバイス。
  40. 被分析物を検出する方法において、
    (a)前記被分析物が吸着される表面から前記被分析物を脱離させ、前記被分析物をイオン化させるステップであって、前記表面は、ホスト−ゲスト錯体を含み、前記錯体は、光照射源からのエネルギーを吸収し、それによって操作的に接触する被分析物分子の脱離及びイオン化に寄与するエネルギー吸収性分子と錯化されたホスト分子を含む、ステップと、
    (c)前記脱離されイオン化された被分析物を検出するステップと、を含む方法。
  41. レーザー脱離/イオン化質量分析法により前記被分析物を検出するステップを含む、請求項40に記載の方法。
  42. 水溶性ホスト分子に錯化されたエネルギー吸収性分子を含むレーザー脱離/イオン化質量分析用の水溶性エネルギー吸収性EAM。
  43. 前記水溶性ホスト分子がシクロデキストリンである、請求項42に記載のEAM。
  44. 前記エネルギー吸収性分子が、フェルラ酸、コーヒー酸、桂皮酸、α−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、シナピン酸、ピコリン酸、ニコチン酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2−アミノ安息香酸、アセトアミド、サリチルアミド、イソバニリン及びトランス−3−インドールアクリル酸から選択されたメンバーである、請求項43に記載のEAM。
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