JP2008514620A - 小児行動障害の治療用メマンチン - Google Patents

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Abstract

本発明は、有効量のメマンチンを投与することによって、小児行動障害、たとえば自閉症スペクトル障害又は混合型注意欠陥/多動性 障害 (ADHD) と診断された個人を治療する方法を提供する。

Description

本願は、2004年9月23日付け申請された米国仮出願番号第60/ 612,600号の便益を主張し、そのすべての内容はここに参照により取り入れられる。
発明の分野
本発明は、有効量のメマンチンの投与によって、小児行動障害、たとえば自閉症スペクトル障害又は混合型注意欠陥/多動性障害 (ADHD)の患者を治療する方法を提供する。
発明の背景
小児期障害
小児行動障害のスペクトルは、メンタルヘルスの問題、たとえば不安障害, アスペルガー症候群, ADHD, 自閉症スペクトル障害, 自閉症, 双極性 障害, 小児期崩壊性障害, うつ病, 破壊的行動 障害, 失読症, 脆弱性 X 症候群, 学習能力障害, 強迫性障害 (OCD), 反抗的行為障害, 広汎性発達障害, 反応性アタッチメント 障害, レット症候群, 分離不安障害及びトゥレット症候群を包含する。これらの小児期障害は、小児正常発達及び生活機能を妨げる。米国において, 10人の小児のうち1人及び青年期の人は、ある程度の機能障害を引き起こすほど重症な精神疾患を患う。しかしある年、これらの小児の 5人のうち1人未満しか必要とされる治療を受けていないと推定される。
自閉症スペクトル障害及びADHDは、最も一般に診断される、小児の神経行動学上障害のうちの2つである。自閉症スペクトル障害は、コミュニケーションする個人の能力, 他人との関係を形成する個人の能力及び環境に適切に応答する個人の能力に影響を及ぼす脳障害とみなされる。これらは症状の3つの基本症状群: 社会的相互作用, コミュニケーション, 及び行動及びプレー (これはしばしば制限的, 反復的, 及び(又は)定型的な種類のものである。)における質的機能障害によって特徴づけられる (Tidmarch等, Can. J. Psychiatry 2003; 48: 517-525)。ADHDは 不注意, 及び(又は)多動性-衝動性の度合を変化させることによって特徴づけられる臨床上異種障害である。時には、ADHDは家族性構成要素を有する。神経撹乱の治療と統計の手引き、第4版(DSM-IV-TRTM 米国精神医学協会 (2000), 神経撹乱の治療と統計の手引き、第4版. ワシントン, DC: American 精神 Association)に定義された通り3つの重要な臨床タイプ は、i) 主に不注意型; ii) 主に多動性-衝動的型;及び iii) (不注意及び多動性-衝動性の双方の顕著な症状との) 混合型である。混合型は、最も一般的なサブグループ (50%〜75%), ついで不注意型(20% 〜30%)及び多動性-衝動性型 (15%より少ない)である (Wilens 等, Annu. Rev. Med. 2002; 53: 113-131)。症状は知的学習, 家庭生活又は社会生活機能を妨げる。約30-50%の小児期 ADHDが成人期になっても続くと報告された (Barberesi 等, Arch. Pediatr. Adolesc. Med. 2002; 156: 217-224; Kordon等, Psychother. Psychosom. Med. Psychol. 2004 Mar;54(3-4):124-36)。
自閉症スペクトル障害
自閉症スペクトル障害は、自閉症, アスペルガー症候群, 広汎性発達障害及び小児期崩壊性障害を包含する。最近の研究は、自閉症(自閉性障害の最も一般的なもの)の有病率が、10/10,000であるメジアン推定値を有する約2.5/10,000〜 30.8/10,000 の範囲内に生じると推定している。その理由は不明瞭であるが, 自閉症の有病率は長期間にわたって増加するという証拠がある。すなわち30年前よりも3〜4 倍高い(Fombonne, JAMA 2003; 289: 87-89)。自閉症の幾人かのヒトは、話す能力及び知能の損なわれずに比較的に高く生活機能する。その他の人は知的障害のあるか, 言葉が不自由であるか, 又は重い言語遅れを有する。一部の人にとって、自閉症は、かれらを閉鎖的させ、そして活動を停止させるように思わせる。他の人々は反復行動及び融通のきかない思考パターンにはまっているように思われる。
自閉症スペクトル障害は、社会的発達, 語学及び感覚症状に関連する正常な小児発達の典型的なパターン及び行動を発達させることができない場合、最初の3歳までの幼児から明らかになる。自閉症スペクトル障害と診断された小児は、乏しい又は限られた社会的関係, 発育の遅れたコミュニケーション能力を明らかに示し, 反復行動, 興味及び活動を示し, そしてその環境への一貫性を要求する。幾人かは、音をきくこと, 触ること, 見ること又は臭いをかぐことにひどく過敏である。自閉症スペクトル障害は、自傷行動, たとえば 頭部打撲, 髪の毛をかきむしること及び噛み付くことを伴うこともある。
自閉症スペクトル障害は、妊娠及び早期小児期発達の間、異常な脳の発達によって引き起こされると一般的に思われている。その証拠は、自閉症の社会的認知 及びコミュニケーションの欠損がへんとう体, 海馬, 及び関連する辺縁系及び皮質構造 (Tuchman, Neurol. Clin. 2003; 21(4):915-32, viii), ならびに小脳及び脳幹 (Keller等, Mol. Neurobiol. 2003; 28(1):1-22) の 機能障害に関与することを示唆させる。
自閉症スペクトル障害は、遺伝性であるようにおもわれるが, すべての遺伝性表現型の詳細及び範囲は依然として不明である。最近のデータは自閉症感受性遺伝子があることを示唆させるが, どれも直接因果関係に結びつかなかった(Buxbaum等, Mol. Psychiatry. Mol. Psychiatry. 2004; 9(2):144-50; Bacchelli 等, Mol. Psychiatry. 2003; 8(11):916-24)。
神経伝達物質系, 特にセロトニン作動性, しかもまたコリン作動性及びGABA作動性系の欠陥は, また自閉症スペクトル障害に影響するものとして調べられている。過去何年のうちで, Horvath 等による臨床観察は、セクレチン及びその受容体の欠陥が自閉症に影響するという仮説をたてた (J. Assoc. Acad. Minor. Physicians 1998; 9: 9)。しかし,自閉症の有力な治療に関してRepliGenによって開発された天然ヒトホルモンセクレチンの合成型は、プラシーボに比べて自閉的行動の著しい改善を証明しなかった (Sponheim, Acta. Paediatr. 2002;91(5):540-5)。
自閉症の主要症状, すなわち深刻な社会的障害 及びコミュニケーションの欠如を治療するのに成功した現行の薬物治療はない。現在, 自閉症又は自閉症の主要症状の治療に関して具体的に示された、食物及び薬物投与-承認薬はない。現行の薬物治療はドーパミン作動性系, セロトニン作動性系, 及びアヘン剤系で有効である薬物治療に注目している (Baghdadli 等, Encephale. 2002; 28: 248-540)。多くの薬物クラス (抗精神病薬, 抗うつ薬,及び抗てんかん薬を含む)は 、変動する作用で自閉症患者に使用されてきた。比較的新しい抗精神病薬, 精神刺激薬, シナップス前ノルアドレナリン遮断剤 (クロニジン 及びグアンファシン) 及び選択的セロトニン再取り込み阻害剤 (SSRIs) は、情動不安定, 興奮性, 多動性及び不注意, 攻撃, 自傷 及び固定観念の悪化させ、複雑にする症状を軽減させることを示した。たとえば, 興奮薬、たとえば メチルフェニダート (Ritalin(登録商標)) 及び アンフェタミンは、しばしば 幼児に処方され, 一方定型及び非定型抗精神病薬は成人に使用される。
破壊的/イライラした及び自傷行動に対して, リチウム, フェンフルラミン, ナルトレキソン 及びその他のアヘン系(オピアート)遮断剤, セロトニン 再取り込み阻害剤, ベータ-遮断剤, ハロペリドール 及びリスペリドンが使用された。反復性 運動活動及び常同動作に対して, 強迫性障害を治療するために通常使用される薬物が処方される。これらは、SSRIs及びクロミプラミン, 典型的な抗精神病薬, 及びリスペリドンを包含する。自閉症を伴う不安に対して, SSRIs、たとえば フルボキサミン及びブスピロンを、併存(concomitant)知的障害の患者に潜在的に有用であるベンゾジアゼピン系薬と一緒に通常処方される。(簡潔な概要に関して、Lindsay等, Pediatr. Ann. 2003; 32(10): 671-6 and Stigler等, Exp. Rev. Neurotherapeutics 2002; 2(4): 499-510参照)。
標的行動 たとえば 固執行動に対して、SSRIs たとえば フルボキサミン, フルオキセチン, 及びセルトラリンを用いる自閉症スペクトル障害の治療に関するプログレスレポートにもかかわらず, 現在処方される医薬(たとえば, SSRIs及び上記薬物)は初期症状に有利に働かず、著しい有害作用を有することがある。随伴する有害作用は、情動不安, 多動性, 動揺, 不眠及び食欲低下を含む。同様に, これらの薬物治療は通常、副作用の故に耐え難くなる可能性がある、一日あたり約20-80 mgからの高い投薬量で有効である。たとえば, リスペリドン治療は、体重増加, 食欲増加, 疲労, 眠気, 震え及びよだれを伴う。
自閉症スペクトル障害に関連する社会障害及びコミュニケーション障害の薬物治療-難治性現状は、自閉症スペクトル障害の、今のところ未確認神経化学的基準に、そして社会及びコミュニケーション 行動の病態生理学における神経伝達物質系 (ドーパミン, ノルアドレナリン及びセロトニン)の関与の欠如が原因であるらしい(Buitelaar, Novartis Found. Symp. 2003; 251:235-44)。
前記事項があるかかわらず、自閉症者中のコリン作動性受容体で、起こりうる不完全前頭葉欠陥を明示する最近のリサーチは、自閉症にコリンエステラーゼ阻害剤、たとえば ドネペジルを使用する試みを導いた (Perry等, Am. J. Psychiatry. 2001; 158(7):1058-66l; and Hardan等, J. Child. Adolesc. Psychopharmacol. 2002; 12(3): 237-4)。その他のコリンエステラーゼ阻害剤は、ガランタミン及びリバスチグミンを含む。コリン作動性ニューロンの破壊は、グルタミン酸受容体, 特にNMDA サブタイプの過剰な活性化によっても生じた (Li 等, J. Neuropathol. Exp. Neurol. 1997; 56(8):901-11)。
自閉症において, グルタミン酸量は増加され、そしてグルタミン酸受容体は、神経ネットワークを損なう興奮毒性プロセスの一環として、次に自閉症のコア症状のいくつかの一因となる損傷を増加させる。前頭, 頭頂, 及び小脳皮質 中のBcl-2 及びP-53 (アポトーシスの標識である蛋白質) の量の変化 (Araghi-Niknam 等, Cell. Mol. Neurolol. 2003; 23: 945-52) ならびに自閉症者の脳中で小脳蛋白質Reelinの減少, 細胞層化の原因である糖蛋白は、アポトーシス機序が疾患過程に関与することを示唆させる。更に, 興奮性アミノ酸が自閉症の患者で増加する証拠がある。グルタミン酸量 は自閉症者の血液及び血小板中で増加する (Aldred 等, J. 自閉症Dev. Disord. 2003; 33: 93-97; Moreno-Fuenmayor等, Invest. Clin. 1996; 37: 113-128)。グルタミン酸デカルボキシラーゼ(グルタミン酸のガンマアミノ酪酸 (GABA)への変換に関与する酵素)は, 自閉症の頭頂及び小脳皮質に欠如し、これらの脳領域で過剰のグルタミン酸を生じさせる可能性がある。グルタミン酸の増加は、レット障害(自閉症スペクトルの一部として分類された障害)の患者の脳脊髄液中でも確認された (Riikonen, J. 小児. Neurol. 2003; 18: 693-697)。
注意-欠陥/多動性 障害
カテコールアミン神経伝達物質の不均衡は、注意-欠陥/多動性障害 (ADHD)の病態生理学へのかかわりを暗示した。ドーパミンは, 特に, ADHDに大いに関与すると考えられている。複数の知見は、カテコールアミン-豊富な前頭-皮質下系の自発運動の抑制, 線状体ドーパミントランスポーター (DAT) 量の上昇(Dougherty 等, Lancet 1999; 354: 2132-2133; Cheon 等, Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging 2003; 30: 306-311), ADHD と DAT 遺伝子の間の関連性 (Cook 等., Am. J. Med. Gen. 1995; 56: 993-998), 及びADHD と D4 受容体遺伝子の間の関連性 (DRD4) (Faraone 等., Am. J. Psychiatry 1999; 156: 768-770; Benjamin 等., Nat. Genet. 1996; 12: 81-84) を包む。
ADHD に使用すると表示された、すべての現行の米国の薬物は、CNS カテコールアミン量を調節するのを目的とする。一つたけ例外として、(アトモキセチン HCl, 商標名: Straterra(登録商標)) は興奮薬(すなわちメチルフェニダート, ペモリン, 及びデキストロアンフェタミン)に属する。興奮薬は、ニューロンでのシナップス前モノアミン再取り込みを遮断することによって、ドーパミン (及びノルエピネフリンならびにセロトニン)のシナップスレベルを増加させる。ADHD患者のうちの約30% は、すべての投与された興奮薬に応答せず、そして種々の興奮薬への異なった応答に対する明らかな証拠はない (Wilens 等., J. Am. Acad. 小児. Adolesc. Psychiatry 1996; 35: 409-432)。興奮薬での治療が ADHD 患者において将来の薬物乱用のリスクを減少させることができることを示唆する最近の研究にもかかわらず(Biederman 等., J. Clin. Psychiatry. 2003; 64 Suppl 11:3-8), 興奮薬は乱用の可能性のある薬物とみなされ、そしてそれ自体は規制薬物として分類され、そして連邦法下のDEAによって割り振られている(たとえばメチルフェニダート, デキストロアンフェタミン-スケジュール II [高い乱用の可能性]; ペモリン - スケジュールIV [低い乱用の可能性])。したがって, 更に安全かつ有効な, 非-興奮性病態生理学的選択肢の開発が、ADHD 集団に多大な臨床メリットになるであろう。
リサーチのいくつかの方針は、グルタミン酸及びNMDA受容体活性がADHDの病態生理学に関与することを示唆する。ADHDの小児患者の前頭前皮質及び線条体中のグルタミン酸量を高め, そして通常の、次の薬物治療に戻る(Carey 等, Clin. Neuropharmacol. 2003; 26: 218-221)。ADHDの遺伝的ラットモデル(自然発生高血圧ラット(SHR))で, 前頭前皮質はグルタミン酸受容体のAMPAサブタイプの増加した機能活性を示した(Russell 等, Metab. Brain Dis. 2001; 16: 143-149)。NMDA 受容体活性はこれらのラットで調べられなかったが, 増強されたAMPA 受容体作用はNMDA受容体活性を増加させるという証拠がある。海馬 CA1 領域で, ドーパミン D4 受容体の活性化は、血小板由来の成長因子 β (PDGF-β) 受容体の活性化を経てNMDA 受容体作用を選択的に低下させることができる。辺縁系及び皮質脳領域中で NMDA 受容体 及びドーパミン D4 受容体の地域的分布が似ているので, 二方向性, 相互交換の信号伝達(signaling)関係があることもかなりあり得る。すなわち, NMDA 受容体拮抗作用はドーパミン D4 受容体-介在信号伝達の増加を調節する可能性が高い。
米国特許第 4,994,467号明細書に、ケタミン及び デキストロメトルファンより成る群から選ばれたN-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニストの有効量の投与によって小児の自閉症を治療する方法が記載されている。米国特許第 6,362,226号明細書に、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニストを投与することを含む、自閉症患者を治療する方法が記載されている。更に詳しくは, 上記‘226号特許では、N-メチル-D-アスパラギン酸受容体アンタゴニストがデキストロメトルファンを含む治療法が特定化される。
上記‘226号特許にも、上記‘467号特許にも、自閉症治療用の1-アミノ-アルキルシクロヘキサン類 (すなわちメマンチン)の使用が記載されていない。米国特許第5,614,560号明細書に、アミノアダマンタン類(メマンチンを含む)を用いて非-虚血性NMDA受容体-介在神経変性を減少させる方法が記載されている。上記‘560 号特許に、自閉症スペクトル障害又はADHDの治療方法は記載されていない。最後に, 国際公開(WO)第03/061656 号パンフレットに、GABA 同族体及び非-毒性NMDA 受容体 アンタゴニスト(メマンチンを含む)の併用療法を用いるCNS 障害の治療方法が記載されている。上記‘656号パンフレットに、単剤療法としてメマンチンの使用は記載されていない。
メマンチン
1-アミノアダマンタン (アマンタジン)が、自閉症小児の小規模な二重盲検, プラシーボ-対照研究において多動性及び興奮性の度合いで統計学的に顕著な改善を生じたことが分かった(King 等. J. Am. Acad. 小児. Adolesc. Psychiatry 2001; 40; 658-65)。上述した、自閉症をコリン作動性経路の欠陥に結び付ける最近の研究に関して, 本発明者は、アルツハイマー病 (並びにパーキンソン病及びその他の神経系疾患)の治療に有効であるNMDA グルタミン酸 受容体 アンタゴニストであるメマンチンが自閉症, ADHD 及びその他の自閉症スペクトル障害の治療におそらく有効であるとの仮説をたてた。
たとえば米国特許第. 4,122,193号、第 4,273,774号及び第5,061,703号に記載されているメマンチン (1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン)は、受容体に中等度の親和性、そして強い電圧依存性特性及び速い遮断/非遮断動力学を有する、全身的に(systemically)活性な非競合 NMDA 受容体アンタゴニストである。メマンチン塩酸塩は、米国及び42カ国以上に及ぶ世界じゅうで現在入手可能である。米国では、一日あたり 20 mgまでの投薬量 (5-10 mg 一日2回)での中程度〜重度アルツハイマー病 (AD)の治療が許可されている。メマンチン (商品名: Namenda(登録商標))の許可は、米国で行われた2 つの無作為二重盲検プラシーボ-対照臨床試験の結果に基づいている。アルツハイマー型の中程度〜重度痴呆 (それぞれMMSE 5-14 及び3-14)の通院患者 (年齢 50-93歳)によって行われた、これらの試験によって,認知, 機能, 及び全体的評価で顕著な改善が証明された (Tariot 等, JAMA 2004; 291: 317-324; Reisberg 等, N. Engl. J. Med. 2003; 348: 1333-1341)。
第三の無作為二重盲検プラシーボ-対照研究 (9403)によって、中程度に重度〜重度アルツハイマー病 又は血管性痴呆 (MMSE <10)のLatvian養護施設患者で行われ, そしてプラシーボに対するメマンチンの介護依存及び全体変化に顕著な改善が証明された(Winblad 等, Int. J. Geriatr. Psychiatry 1999; 14: 135-46) 。
成人における薬物動態学的研究によって、メマンチンが経口投与後に100%体内に吸収され利用され,最小の代謝を受け, そして60 〜80時間の終末排出半減期(terminal elimination half-life)が示された (投薬量の57%-82%以上が尿中にそのまま排泄される)。
これは0.52のCSF/血清比率で血液脳関門を急速に横切る。メマンチンはシトクロム P-450 (CYP 450) イソ酵素を試験管内で阻害しない。それ故に、これらの酵素によって代謝される薬物との薬物動態学相互作用はまったく期待されない。その薬物動態学的プロフィールは、食物, 性別又は年齢によって影響を受けない。腎クリアランスは、pH 依存尿細管再吸収によって加減された活性な尿細管分泌を伴う。
メマンチンは、種々の神経変性障害 (たとえば痴呆, 神経因性疼痛, 痙縮及びパーキンソン病 )にかかわる27の臨床試験で、2297人の患者において許容できる安全性及び耐薬性プロフィールを示した。臨床試験で観察される最も通常の有害事象はめまい, 頭痛, 便秘及び混乱状態であったが, 実にこれらは比較的にまれである。
自閉症又はADHD集団における、公表された臨床試験はメマンチンを用いて行われなかった。しかし, 非競合NMDA受容体アンタゴニスト アマンタジンは、別の行動障害の小児で活性を証明した。自閉症小児における小規模の二重盲検, プラシーボ-対照研究で、アマンタジンは、多動性及び興奮性の度合いで統計学的に顕著な改善を生じた。多動児において (Mattes, Psychopharmacol. Bull. 1980; 16: 67-69), 及び注意-欠陥障害 (ADD)の小児において(Masters 等, J Am. Acad. 小児. Adolesc. Psychiatry 1997; 36: 301) 好ましくい効果があるとの更なる報告がある。
したがって, 臨床経験及び実験上の証拠に基づき, NMDA 受容体アンタゴニスト メマンチンは自閉症スペクトル障害及び混合型 ADHDの双方に有効な治療薬になると仮定される。メマンチンによるNMDA 受容体活性の低下によって、D4 受容体シグナル伝達/活性は変化され、そしてADHDに有益な効果を導くことが可能である。しかし DSM-IV-TRによれば, 混合型ADHDは、注意散漫症状優勢又は多動性-衝動性症状優勢にしたがって多動性 (主に多動な) 及び ADD (主に注意散漫な)の双方と異なる。更に, 慣用の抗精神薬薬物治療及び自閉症スペクトル障害の小児患者に通常処方される SSRIs は成人に処方されるそれらに類似する投薬量を必要とし、これは過酷な有害反応の高い発生を招くという事実をかんがみ, より低い投薬量で投与されうるか又はより少ない有害作用を示す薬物治療に対する方法に要求がある。
図面の簡単な説明
図 1。図 1はベースライン, 4週目及び8週目で、コホート 1に対するITT 集団の LOCF 分析におけるスコアの分布を明示する。
図 2。図 2は ベースライン, 4週目及び8週目で、コホート2に対するITT 集団の LOCF 分析におけるスコアの分布を明示する。
図 3。図 3 はベースライン, 4週目及び8週目で、コホート 1に対するITT 集団の OC 分析におけるスコアの分布を明示する。
図 4。図 4 はベースライン, 4週目及び8週目で、コホート 2に対するITT 集団の OC 分析におけるスコアの分布を明示する。
発明の要旨
本発明は、自閉症スペクトル障害又は混合型ADHDの治療方法において、この治療を必要とする対象者に有効量のメマンチンを投与する、上記方法を提供する。
ある実施態様において, 対象者は約 5 〜 約 17の年齢の小児である。
別の実施態様において, メマンチンを一日あたり 約 1.25-100 mgの範囲で投与する。
ある具体的な実施態様において, メマンチンを一日あたり約 5-20 mgで投与する。
別の具体的な実施態様において,メマンチン を一日あたり約10-20 mgで投与する。
別の具体的な実施態様において,メマンチンを一日あたり約20 mgで投与する。
別の実施態様において, メマンチンをフレーバーな, 経口液状製剤の形で投与する。
別の実施態様において, メマンチンを放出調節製剤の形で投与する。
別の実施態様において, この治療を必要とする対象者は成人である。この実施態様において, メマンチンを 一日あたり約 5-100 mgの範囲の投薬量で投与する。具体的な実施態様において, メマンチンを一日あたり 約 20-40 mgの範囲の投薬量で投与する。
詳細な説明
本発明は、DSM-IV-TR ( R)の上記基準にしたがって小児患者 (すなわち 約 17歳まで)の自閉症スペクトル障害又は混合型 ADHDを、有効量のメマンチンを投与することによって治療する方法を提供する。
自閉症スペクトル障害も、ADHDも 、いくつかのこの障害の臨床症状の一因となることがあるグルタミン酸作動性脳活性の乱れが関係することがあると仮定する。グルタミン酸作動性活性を変化させることによって, 非競合NMDA受容体アンタゴニストメマンチンが自閉症スペクトル障害又は混合型ADHDの人々に臨床的有益性をもたらす可能性があると更に仮定する。したがって安全性及び有効性に関する臨床上の及び実験上の証拠は、さらに以下に示すように非盲検試験によってもたらされる。治療期間は、必要に応じて短いか又は長くでよく, そして成人期に及ぶことができる。
定義
“メマンチン” は1-アミノ-3,5-ジメチルアダマンタン塩酸塩を意味する。米国で, メマンチン の商品名はNamenda(登録商標), ドイツでAkatinol(登録商標) 及びAuxura(登録商標), そして欧州連合の残りの国で Ebixa(登録商標) である。メマンチン は、米国特許第4,122,193号, 第4,273,774号及び第 5,061,703号明細書の対象である。
メマンチンの種々の塩を使用することができる。用語“塩”は、遊離塩基の酸付加塩又は付加塩を含むことができる。薬学的に許容し得る酸付加塩 を形成するために使用することができる酸の例は、非毒性 無機酸、たとえば 硝酸, リン酸, 硫酸又は臭化水素酸, ヨウ化水素酸, フッ化水素酸、亜リン酸に由来する塩を含むがこれらに限定されず, ならびに非毒性有機酸、たとえば 脂肪族モノ及びジカルボン酸, フェニル置換された アルカン酸, ヒドロキルアルカン酸, アルカン二酸, 芳香族酸, 脂肪族及び 芳香族 スルホン酸, 及び酢酸, マレイン酸, コハク酸, 又はクエン酸に由来する塩を含むがこれらに限定されない。このような塩の限定されない例は、ナパジシレート(napadisyalte),ベシレート(besylate), 硫酸塩, ピロ硫酸塩, 二硫酸塩, 亜硫酸塩, 亜硫酸水素塩, 硝酸塩, リン酸塩, リン酸一水素塩, リン酸二水素塩, メタリン酸塩, ピロリン酸塩, 塩化物, 臭化物, ヨウ化物, 酢酸塩, トリフルオロ酢酸塩, プロピオン酸塩, カプロン酸塩, イソ酪酸塩, シュウ酸塩, マロン酸塩, コハク酸塩, スベリン酸塩, セバシン酸塩、フマル酸塩, マレイン酸塩, マンデル酸塩, 安息香酸塩, クロロ安息香酸塩, メチル安息香酸塩, ジニトロ安息香酸塩, フタル酸塩, ベンゼンスルホン酸塩, トルエンスルホン酸塩, フェニル酢酸塩, クエン酸塩, 乳酸塩, マレイン酸塩, 酒石酸塩, メタンスルホン酸塩等々を包含する。アミノ酸の塩、たとえば アルギン酸塩等々及びグルコン酸塩, ガラクトウロネートも考慮される (, たとえば, Berge S. M. 等. "Pharmaceutical Salts," J. of Pharma. Sci., 1977; 66:1参照)。
上記塩基化合物の酸付加塩は、常法でその遊離塩基形を十分な量の所望の酸と接触させて塩を生じさせることによって製造される。この遊離塩基形は、塩形を塩基と接触させ、ついでこの遊離塩基を常法で単離することによって生じさせることができる。この遊離塩基形は、その塩形それぞれと特定の物理的性質、たとえば極性溶剤中の溶解度の点でいくらか異なるが, その他の点でその塩は本発明の目的のためのそのそれぞれの遊離塩基と同等である。
薬学的に許容し得る塩基付加塩を、金属又はアミン類, たとえば アルカリ及びアルカリ土類金属又は有機アミン類を用いて生じさせる。カチオンとして使用される金属の例は、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等々である。適するアミン類の例は、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン, クロロプロカイン, コリン, ジエタノールアミン,ジシクロヘキシルアミン, エチレンジアミン, N-メチルグルカミン及びプロカインである。
上記酸性化合物の塩基付加塩は、常法でその遊離酸形を十分な量の所望の塩基と接触させて塩を生じさせることによって製造される。この遊離酸形は、塩形を酸と接触させ、ついでこの遊離酸を常法で単離することによって生じさせることができる。
本発明の調合物に関連して使用される、語句“薬学的に許容し得る” は、生理学的に耐性であり、そして哺乳類 (たとえばヒト)に投与した場合、典型的に不利な反応を生じないこのような調合物の医療用物質(molecular entities) 及び他の成分を意味する。好ましくは, 本明細書では, 用語“薬学的に許容し得る” は米国連邦政府又は州政府の管理機関によって承認されているか、又は米国薬局方又は哺乳類に使用される, 及び 更に具体的にはヒトに使用される、その他の一般に容認された薬物類中に列挙されていることを意味する。
本発明の医薬調合物に適用される用語 “キャリヤー” は、希釈剤, 賦形剤又は媒体(賦形剤)を意味し、これと共に有効化合物を投与する。このような医薬用キャリヤーは滅菌液体, たとえば水, 食塩水, デキストロース水溶液, グルセロール水溶液及び油状物(石油-, 動物-, 植物-又は合成-由来のもの, たとえばピーナッツ油, 大豆油, 鉱油, ごま油等々を含む。)であることができる。適する医薬用キャリヤーは、"Remington's Pharmaceutical Sciences" by E.W. Martin, 18th Edition中に記載されている。本発明にとって特に好ましいのは、即効型に適するキャリヤー, すなわち有効成分のほとんど又はすべてを短時間, たとえば 60分以下で放出させ, そして急速な薬物吸収を可能にするキャリヤーである。
本明細書において、用語“治療を必要とする対象者” は哺乳類を意味する。特に, この用語は、自閉症スペクトル障害又は混合型 ADHDと診断されるヒトを意味する。
用語“自閉症スペクトル障害” は、自閉症, アスペルガー症候群, 広汎性発達障害 (PDD), レット 障害及び小児期崩壊性障害を含む自閉症-関連障害を意味する。このような障害を、DSM-IV 又は ICD-10 基準又はその他の診断ツール、たとえば 幼児を対象とした自閉症のチェックリスト (CHAT), 小児自閉症 評定尺度 (CARS), 自閉症に関して両親の面接(Parent Interviews forAutisum) (PIA), Gilliam 自閉症評定尺度(GARS), 自閉症及びその他の非定型小児に対する行動評定機器(行動 ランク Instrument for Autisum and other Atypical Children (BRIAC)), 自閉症診断面接-改定(Autisum Diagnostic Interview-Revised (ADI-R)), 自閉症診断観測スケジュールー包括(Autisum Diagnostic Observation スケジュール-Generic (ADOS-G)), 及び社会及びコミュニケーション障害に関する診断面接(Diagnostic Interview for Social and Communication Disorders (DISCO))を用いて診断することができる。
DSV-IV-TRTM にしたがって, 自閉症の診断は、患者が(1), (2)及び (3)から全部で 6 (又はその以上) 項目((1)から少なくとも2個, 及び(2) 及び (3)からそれぞれ1個)を示すときになされる:
・ 以下の項目のうち少なくとも2個によって示される社会的相互作用における質的機能障:
(a) 複合非言語行動、たとえば目と目の凝視, 表情, 体位及び社会的相互作用を調節するしぐさの行使での著しい機能障害;
(b) 発達レベルに合った仲間関係の構築不能;
(c) 他人と喜び, 興味又は業績の自発的共有の欠如 (たとえば,興味の対象の提示、持参又は指摘の欠如によって);
(d) 社会又は情緒的相互依存の欠如;
・ 以下の項目のうち少なくとも2個によって示される、コミュニケーションでの質的機能障害:
(a) 話し言葉の発達の遅れ、又は発全体的欠如(コミュニケーション、たとえば しぐさ又はパントマイムに代わる表し方によって補う試みを伴わない);
(b) 適した話す能力を有する個人において, 他人との会話の開始又は持続能力に著しい機能障害;
(c) 言語又は固有言語(idiosyncratic language)の定型的及び反復使用;
(d) 発達レベルに合った多様な, 自然発生のごっこ遊び又はお付き合いのまねごっこの欠如;
・ 以下の項目のうち少なくとも1個によって示される、行動, 興味及び活動の制限された反復及び定型的パターン:
(a) 熱心さ又は関心のどちらかが異常である興味の1種以上の定型的及び制限されたパターンへの包括的没頭(encompassing preoccupation);
(b) 特異的, 非機能的日課又は しきたりに明らかに曲げられない固執;
(c) 定型的及び反復運動癖(たとえば手又は指をたたく又はねじる, 又は複合的全身動作);
(d) 物体の各部に持続的な没頭。
更に, 以下の分野のうち少なくとも1種で、3歳前に発症する、遅れ又は異常機能: (1) 社会的相互作用, (2)社会コミュニケーションで使用される言葉, 又は (3) 意味のある(symbolic) 又は 想像による遊び。最後に, この障害がレット障害又は小児期崩壊性障害の原因をより十分に説明していないことを裏付けることに注意しなければないらい。
本発明によれば, 下記の手段を診断のために及び(又は)自閉症スペクトル障害の治療に対するメマンチンの効力を評価するために使用することができる。
自閉症診断観測スケジュール(ADOS-G)。ADOS-G は、20-40 分わたり小児に直ちに起こる社会及びコミュニケーション行動の標準化された観測である(Lord 等., J. Autisum Dev. Disord. 1989; 19(2):185-212)。これは、対象者の表現言語レベルにしたがって4つの重複モジュールに体系化される。
非言語知能テスト。第3版(TONI-3)。TONI-3 は、言語能力(verbal ability)又は英語に堪能であることに依存することなく、知能, 理解力, 理論的な推理力, 及び問題解決能力の信頼できる、そして立証された尺度である (Brown等, Test of Non-Verbal Intelligence (3rd. ed.). Austin, TX: PRO-ED)。これは、容易から困難な順に体系化された50項目を有する。実際のスコアをパーセンタイル順位に、そして100 の平均及び15 ポイントの標準偏差を有する偏差指数に変える。非言語フォーマットを維持するために, 指示は身振りで行われ、そして応答をいくつかのその他の意味のあるしぐさを示すか又はそれを行って伝える。実施するのに約15 分かかり、そして5から85歳のヒトに適する。
臨床全般印象-改善度(Clinical Global Impression-Improvement (CGI-I))。これは7-ポイント Likert 尺度であり、これは “極めて改善された” のランクに相当するスコア 1、及び“より一層悪い” のランクに相当するスコア7と共にスコア4 (不変化)で支持される。外来(Visits)3 〜10回目で, 又は早期の調査中止時に評価される。
臨床全般印象- ADHD-重症度(重症度 Clinical Global Impression-ADHD-重症度 (CGI- S))。これは、スクリーニング, ベースライン, 及び外来3 〜10回目での検査によって, 又は早期の調査中止時に評価される7-ポイントスケール (1 [病気でない]〜7 [非常に悪い])である。
調査単位精神薬理学自閉症ネットワーク標的症状の評価(Research Unit Psychopharmacology Autisum Network Target Symptoms Assessment (RUPP-TAS))。この評価において, 介護者にとって心配となる行動 (通常1又は 2)は、盲検にかかわる医師 (CGI 評価をすることができる医師)によって数値化され、そして集められるが、別の盲検(第三者) 臨床判定者によってベースラインからの変化の9-ポイント尺度で結果にランクを付けする。情報は、介護者パネル(caregiver bar)の 半-構築された5〜10分の面接によって導き出される。試験は終えるのに約14分かかる。これはベースライン (0週目の最後), 外来 6 回目(4週目の最後), 及び外来10回目 (8週目の最後)で 又は早期の調査中止時に行われる (Arnold 等., Psychiatry 2003; 42: 1143-1450)。
異常行動チエックリスト-コミュニティバージョン(Aberrant 行動 Checklist- Community Version (ABC-CV))。ABC-CV は、知的障害の小児及び成人の問題行動を評価するための症状 チェックリストである(Aman 等., Am J Mental Deficiency 1985; 89: 485-491)。58 項目があり、5つのサブスケールに分けられる: (1) 興奮性, 動揺, (2) 無気力, 社会的離脱症状, (3) 定型的行動, (4) 多動性, 不服従, 及び (5) 不適切な話す能力。チェックリストは、ベースライン (0週目の最後), 外来 6 回目(4週目の最後) 及び外来10 回目(8週目の最後)で、又は早期の調査中止時に介護者によって完了する。
ピーボディーピクチャー語彙試験III(Peabody Picture Vocabulary Test III (PPVT III))。PPVT III は、標準英語に対する受容語彙の信頼のある、かつ有効な尺度であり、そして2- 1/2歳以上の言語能力のスクリーニングである(Dunn 等., Peabody Picture Vocabulary Test--Third Edition (PPVT-III). 1997, Circle Pines, Minnesota : AGS Publishing)。各形態は4つのトレイニング項目を含む。ついで204個の試験項目は 各12項目からなる17セットに分けられる。各項目は、ピクチャープレート上に4つの簡単な, 白黒のイラストがあるか又は多肢選択ホーマットで配置された頁がある。受験者は、試験官によって口頭で示された刺激語の意味を最もよく描写すると思われる絵を選ぶ。この試験を行うのに 11〜12分かかる。これはベースライン(0週目の最後), 外来 6 回目(4週目の最後), 及び外来10回目 (8週目の最後)で 又は早期の調査中止時に行われる。
サンプルタスクに適合(Matching to Sample (MTS) task)。これは、小児に色を見せる、コンピュータによるカラー記憶試験である (Aman 等., CNS Spectrums 2004; 9: 36-47)。刺激が現れるスクリーンを小児が押す。3つの色が遅れて現れる。遅れの期間は、受験者精度及びすべての能力に依存して調整される。これはベースライン (0週目の最後), 外来 6 回目(4週目の最後), 及び外来10回目 (8週目の最後)で又は早期の調査中止時に行われる。
用語“混合型 ADHD” は、少なくとも6ヶ月しつこく繰り返される 6つ以上の不注意症状及び6つ以上の多動性-衝動性 (DSM-IV-TRTMに従う)の診断を参照する。
情動障害及び統合失調症の子供スケジュール-現在及び一生(The Kiddie schedule for Affective disorders and Schizophrenia - Present and Lifetime (K-SADS-PL))は 半-構築された診断面接であり、この面接は小児患者及び青年期の人の精神障害(ADHD)に関連する主な診断基準を判定する (Kaufman 等., Version 1.0 of October 1996 ed. Pittsburgh, PA: Dept. of Psychiatry, Pittsburgh Schoolof Medicine)。これは過去及び現在双方のエピソードを評価し、患者がADHD-混合型に対するDSM-IV-TRTM 基準を満たすことを証明し、そしてその他の精神診断を除外する ためにこの試験で使用される。K-SADS-PLは、6つのセクションからなる: 1) 構築されていない入門面接(the unstructured introductory interview); 2) 診断スクリーニング面接; 3) 補充完全チエックリスト(the Supplement Completion Checklist); 4) 適切な診断補充; 5) 要約生涯診断チエックリスト(the Summary Lifetime Diagnoses Checklist); 及び6) 小児全般評価尺度(the Children’s Global Assessment Scale (C-GAS))評定。構築されていない入門面接は、終えるのに約10-15分かかる。面接の残りの期間は、各患者によって変化する。
ピーボディーピクチャー語彙試験III(Peabody Picture Vocabulary Test III (PPVT III))は、患者を非-知的障害のある範囲にあるとみなされる≧70の標準化されたスコアで識別することができる, (ADHD診断の基準)。
注意-欠陥/多動性障害評価尺度, 第4版- 親用(Parent Version) (ADHD -IV-RS)は、重症度指数 (0 = ない, 3 = 過酷; 総合的最小スコア = 0, 最大スコア = 54)で DSM-IV-TRTM におけるADHD の18 の個々の基準症状のそれぞれを評価する (DuPaul 等., ADHD ランク Scale-IV: Checklists, Norms, and Clinical Interpretations 1998. New York: The Guilford Press)。不注意症状は奇数番項目からなり , そして多動性-衝動性症状を偶数番項目によって表わす。測定は終えるのに約10〜15分かかる。これは小児及び成人グループで薬物作用に敏感であることを示した確かな、そして信頼できる尺度である。これを、患者の親又は法廷後見人によってスクリーニング (part 1.1), ベースライン及び外来 3〜10回目の間2〜8回で, 又は調査中止時に完了しなければならない。
臨床全般印象- ADHD-重症度(重症度 Clinical Global Impression-ADHD-重症度 (CGI- S))は、スクリーニング (part 1.1), ベースライン,スクリーニング, ベースライン, 及び外来 3〜10回目の間2〜8回で, 又は調査中止時に調査官によって評価されるべき 7-ポイントスケール (1 [病気でない]〜7 [非常に悪い])である。
Conner’s Continuous Performance Test II は、持続的注意、及び注意散漫のないことを判定する、コンピュータによるテストである。単一文字がコンピュータスクリーンの中央にある (Connors, Connors’ Continuous Performance Test II Computer Program for Windows. North Tonawanda, NY: Multi-Health Systems)。その文字が Xである場合, 患者はスペースバーを押さないように支持される。X以外の文字である場合、患者はスペースバーを押すように求められる。テストは終えるのに約14分かかる。これは、ベースライン 及び外来10回目で、又は調査中止時に行われる。
Woodcock Johnson III (WJ III) - math fluency testは、Woodcock Johnson III Tests of Achievementからの総合テストの1つである。これは3分以内に簡単な計算を行う速度を評価し、そしてベースライン及び 外来10回目で又は調査中止時に行われる。
Woodcock Johnson III (WJ III) -reading fluency test は、Woodcock Johnson III Tests of Achievementからの総合テストの1つである。これは終えるのに約3 分かかる。これは読解速度を評価し、ベースライン及び外来10回目で又は調査中止時に行われる(Woodcock 等., Woodcock Johnson III Tests of Achievement 2000; Riverside Publishing)。
Stroop Test は、色の名前と単語の読みとの関係を調べる選択的注意の試験である。これは終えるのに約5 分かかる。これはベースライン及び外来10回目で又は調査中止時に行われる(Golden 等., STROOP Color and Word Test Children’s Version for Ages 5-14 2003: Illinois, Stoeting Co.)。
用語“治療する”は、対象者の疾患の症状の少なくとも1種を軽減又は緩和するという意味で本明細書で使用される。たとえば自閉症に関連して, これは語学力の発達, アイコンタクトの改善, 社会的に機能する及び(又は)日課の軽度な変化に耐える改善された能力、言葉による指示に対する改善された応答, 改善された環境意識, 減少した攻撃、自傷行動、多動性, 反復行動, 及び知覚の改善を含む。たとえば, 混合型 ADHDに関連して, これは、不注意及び多動性-衝動性の双方の症状, 細部への注意力の改善,ケアレスミスの減少, 仕事及び遊び活動への改善した注意力, 直接話しかけれたときの改善した傾聴, 指示及び学業の遂行の改善,仕事及び活動の計画の改善, 持続的精神的努力を要求する仕事への改善された関与, 日常活動に必要な対象の喪失の軽減,外部からの刺激による注意散漫の減少, 日常活動での物忘れの減少, そわそわした又は一時的にじっとしていないことの減少, 要求されるか又は望まれて席に残ることの改善, 不適切な状況での過剰な走り又は登りの減少, 情動不安又は“エンジンで動かされる”として描写される行動の減少, 静かに遊んだり余暇活動への参加の改善, 過剰な会話又はおしゃべりの減少, 他の人の会話の答えを不適切にうっかりしゃべる又は他の人の行動をさえぎることの減少, 及び(又は)社会的, 学究的又は職業的生活機能の改善を含む。
本発明の意味の範囲内で, 用語“治療する” は、病気の進行を抑えること、開始を遅延すること(すなわち,疾患の臨床症状以前の期間) 及び(又は) 疾患、たとえば自閉症又はADHDなどの小児行動障害、の進行又は悪化の危険を低下させることも意味する。たとえば, ADHDの家族パターンがあって, それによって、ADHD の小児の一等親血縁者が一般集団中の人よりも共通することは知られている。
用語“治療上有効な量”とは、自閉症スペクトル障害又は混合型ADHDに関連する前記症状, 行動又は事象のいずれかを改善するか、遅延させるか又は予防するのに有効であるメマンチンの量又は投薬量を意味して、ここで使用される。
用語“約”又は“おおよそ”は、測定の種類又精度を与える測定された量に対する誤差又は変動の許容し得る度合いを、通常意味する。一般に、誤差又は変動の模範的な度合いは、所定の値又は値の範囲の20パーセント(%)以内, 好ましくは10%以内, 及びより好ましくは5% 以内である。生物学的系に関して、用語“約”は誤差の許容し得る標準偏差を意味し, 好ましくは所定の値よりも 2-倍より多くならないことを意味する。本明細書に記載される数量は, その他に明記しない限りおおよそであり、これは用語“約”又は“おおよそ”が明らかに述べられていないときに推測することができることを意味する。
製剤化, 投薬量, 及び投与
本発明の方法と同時に, 治療上有効な量のメマンチンを含む薬学的調合物を提供することでもある。更に、本発明の調合物は、キャリヤー又は賦形剤 (すべて薬学的に許容し得る)を含むことができる。調合物を一日1回 投与又は 一日2回 投与のために剤形化することができる。
メマンチン (NAMENDATM) は、5 又は10 mg のフィルムコーティング錠剤の形で塩酸塩として市場で入手することができる。しかし, 本発明によれば, メマンチンの投薬形は、下記の事項にしたがって 固形, 半固形又は液状製剤であることができる。
メマンチンを、経口で, 局所に, 腸管外に又は粘膜に(たとえば口腔に, 吸入によって又は直腸に) に、通常の非毒性薬学的に許容し得るキャリヤーを有する単位投薬剤形で投与することができる。通常、経口経路を使用するのが望まれる。小児対象者に投与するための好ましい実施態様において, メマンチンを、フレーバー 液体, たとえばペパーミントフレバーとして剤形化する。メマンチンを、経口でカプセル, 錠剤等々の形で 又は半固形又は液状製剤として投与することができる (Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack 5 Publishing Co., Easton, PA参照)。経口投与された薬剤は、拡散調節系に限定されないが, 浸透圧デバイス, 溶解調節マトリックス, 及び侵食可能な/分解可能なマトリックスを含む時間調節放出手段の形で投与することもできる。
錠剤又はカプセルの形での経口投与のために, メマンチンを、非毒性薬学的に許容し得る賦形剤、たとえばたとえば結合剤 (たとえば前糊化されたトウモロコシデンプン, ポリビニルピロリドン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース); 増量剤 (たとえば乳糖, ショ糖, グルコース, マンニトール, ソルビトール及び その他の還元糖及び非還元糖, 微結晶セルロース, 硫酸カルシウム又はリン酸水素カルシウム); 滑沢剤 (たとえばステアリン酸マグネシウム, タルク又はシリカ, ステアリン酸, ステアリルフマル酸ナトリウム, ベヘン酸グリセリル, ステアリン酸カルシウム等); 砕解剤 (たとえばジャガイモデンプン又はデンプングリコール酸ナトリウム); 又は湿潤剤 (たとえば ラウリル硫酸ナトリウム), 着色剤及び矯味矯臭薬, ゼラチン, 甘味料, 天然及び合成ゴム (たとえばアカシア, トラガント又はアルギナート類), 緩衝塩, カルボキシメチルセルロース, ポリエチレングリコール, ロウ等々と共に配合することができる。
錠剤を従来公知の方法によってコーティングすることができる。上述のように製造されたコアを、たとえばアラビアゴム, ゼラチン, タルク、二酸化チタン等々を含有することができる濃縮された砂糖溶液でコーティングしてもよい。あるいは, 錠剤を当業者に周知のポリマーでコーティングすることができる。この際このポリマーを、容易に揮発する有機溶剤又は有機溶剤の混合物に溶解させる。好ましい実施態様において, メマンチンを、即効型 (IR)又は放出調節型 (MR) 錠剤の形に剤形化する。即効型固形投薬形は、有効成分のほとんど又はすべての放出を短時間, たとえば 60 分以下で可能にし, そして医薬の急速な吸収を可能にする。放出調節型固形経口投薬形は、同様に延長された時間間隔にわたって治療上有効な血漿レベルを維持するために、及び(又は)有効成分の別の薬物動態学的性質を変えるために、長期間にわたって有効成分の持続的放出を可能にする。
軟ゼラチンカプセルの剤形化に関して, 有効物質を、たとえば 植物油又はポリエチレングリコールと混合することができる。硬ゼラチンカプセルは、錠剤用の上記賦形剤、たとえばラクトース, ショ糖, ソルビトール、マンニトール, デンプン (たとえばじゃガイモデンプン, コーンスターチ又はアミロペクチン), セルロース誘導体又はゼラチンいずれかを用いて顆粒の有効物質を含有することができる。また薬物の液体又は半固体を硬ゼラチンカプセルに充填することができる。
本発明の調合物は、微小カプセル(microspheres) 又は マイクロカプセル(たとえばポリグリコール酸/乳酸 (PGLA)から製造される)に加えることもできる (たとえば米国特許第5,814,344号; 第5,100,669号 及び第 4,849,222号明細書; PCT 公表第 95/11010号 及び 第93/07861号パンフレット参照)。医薬の調節放出を達成させるために有用である生体適合性ポリマーは、たとえばポリ乳酸, ポリグリコール酸, ポリ乳酸とポリグリコール酸とのコポリマー, ポリエプシロン カプロラクトン, ポリヒドロキシ酪酸, ポリオルトエステル, ポリアクリレート, ポリヒドロピラン, ポリシアノアクリオレート, 及びヒドロゲルの架橋された又は両親媒性ブロックコポリマーを含む。
1つの実施態様において, 本発明の調合物を経口投薬形で即効型又は放出調節型ビーズ(beads)に剤形化する。ビーズは 慣用の固形経口放出調節型投薬形, 錠剤に比べて利点を提供する。ビーズは薬用量に比例している, すなわち種々のタイプのビーズの同一割合を、長期間放出される薬物度合を著しく変化させることなく、種々の薬用量に対して使用することができる。種々の薬用量はビーズの異なる量によって得られる。ビーズはまた、1種以上のタイプのビーズを混合することによって、又は当業者によく知られているように、ポリマー層を介して更なる薬物の層を形成し、ついで引き続きコーティングそて単位ビーズ(unitary beads)を調製するように、多層コーティングを用いて種々の崩壊プロフィールを可能にする。このような崩壊プロフィールは、放出調節型錠剤形を用いて可能であるかどうかわからない。ビーズはまた薬物装填(drug loading)の広い範囲を可能にする。たとえば, メマンチンビーズを、500 mg/gまでビーズに装填することができる。メマンチンビーズ形成は、その全部を参考としてここに組み込まれる, 本出願人の特許出願番号第 60/691,512号(出願日:2005年6月16日)明細書に詳述されている。
半固形又は液状形でのメマンチンの剤形化は、従来技術の範囲内である。というのは 有効成分が水性媒体に非常に可溶性あるからである。通常、有効物質, すなわちメマンチンは,剤形に対して0.1 〜99重量%, より具体的には注射用製剤に対して0.5〜20重量%、そして経口投与にてきする製剤に対して0.2〜50重量%となる。
本発明の具体的実施態様において, メマンチンを放出調節製剤の形で投与する。放出調節型投薬形は、患者の薬剤服用順守を改善し、そして有害な薬物反応の発生の減少によって有効かつ安全な治療を保証する手段をもたらす。即効型投薬形に比べて, 放出調節型投薬形を、投与の薬理作用を延長させ, そして投与間隔にわたって薬物の血漿濃度の変動を減少させることに使用することができる。それによって著しいピークを避けるか又は低減させる。放出調節型投薬形の利点を踏まえて, このような投薬形を開発することが多くの当業者の目的であった。
放出調節型投薬形の大部分は、薬物でコーティングされたコアか、又は薬物を含有するコアを含む。ついでそのコアは、薬物が分散された、放出を変化させるポリマーでコーティングされる。放出を変化させるポリマーは徐々に崩壊し薬物を長期間放出する。したがって, 調合物の最外部層は、調合物が水性環境、すなわち胃腸管にさらされたとき、効果的に減速し、それによってコーティング層を通過する薬物の拡散を調節する。薬物拡散のネット速度(net rate)は、コーティング層又はマトリックスを貫通する胃液の能力及び薬物それ自体の溶解性に主に依存する。
本発明の具体的な実施態様において、メマンチンを経口投与用液体製剤に剤形化する。経口投与用液体調製物は、たとえば溶液、シロップ、エマルション又は懸濁液の形をとることができるか又はこれらは使用前に水又はその他の適当な媒体を用いて再構成させるために乾燥製品として存在させることができる。経口投与用調製物を、調節された又は遅延された有効物質の遊離を生じるように適当に剤形化することができる。経口の時間調節放出薬剤の具体例は、米国特許第 5,366,738号明細書に記載されている。
液体形での経口投与に関して、メマンチンを非毒性薬学的に許容し得る不活性キャリヤー (たとえばエタノール, グリセロール, 水), 懸濁化剤 (たとえばソルビトールシロップ, セルロース誘導体又は水素添加された食用脂), 乳化剤 (たとえばレシチン又はアカシア), 非水性賦形剤(たとえばアーモンド油, 油状エステル類, エチルアルコール 又は 分留植物油), 保存剤(たとえばメチル 又は プロピル-p-ヒドロキシベンゾエート又はソルビン酸)等々と一緒に配合することができる。安定化剤、たとえば酸化防止剤 (BHA, BHT, 没食子酸プロピル, アスコルビン酸ナトリウム, クエン酸)を投薬形を安定化するために添加することができる。たとえば, 溶液は約 0.2% 〜約 20重量%のメマンチンを、砂糖、及びエタノール, 水, グリセロール及びプロピレングリコールの混合物である平衡剤と共に含有することができる。場合によりこのような液状製剤は、着色剤, 矯味矯臭剤, サッカリン及び増粘剤としてのカルボキシメチル-セルロース又は当業者に周知の賦形剤を含有することができる。
具体的な実施態様において, 治療上有効な量のメマンチンを、保存剤, 甘味料, 溶解剤及び溶剤を含有する経口溶液の形で投与する。本発明の経口溶液は、1種以上の緩衝剤, 矯味矯臭剤又は別の賦形剤を含むことができる。別の好ましい実施態様において, ペパーミント又はその他の矯味矯臭剤を、経口液体メマンチン製剤に添加する。
吸入投与のために、メマンチンを、適する噴射剤, たとえばジクロロフルオロメタン, トリクロロフルオロメタン, ジクロロテトラフルオロエタン, 二酸化炭素, 又はその他の適当なガスの使用と共に、加圧パック又は噴霧器からのエアゾルスプレープレゼンテーションの形で通常供給することができる。加圧エアゾルの場合、単位投薬量は計量された量を供給するためにバルブを備えることによって決定することができる。たとえば吸入器又は通気器(insufflator)中に使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジを調製することができ、これは化合物と適する粉末ベース、たとえばラクトース又はデンプンの粉末混合物を含有する。
腸管外投与用注射溶液を、好ましくは約0.5重量%〜約10重量%の濃度で有効物質の水溶性薬学的に許容し得る塩を有する水溶液として調製することができる。これらの溶液は、安定剤及び(又は)緩衝剤を含有することもでき、そして種々の投薬単位アンプルに充填されるのも好都合である。
直腸投与用投薬量単位は溶液又は懸濁液であることができか又はメマンチンを中性脂肪ベースとの混合物として含む座薬又は停留浣腸(retention enemas)の形で、又は有効物質を植物油又はパラフィン油と混合して含むゼラチン直腸カプセルの形で調製することができる。
本発明の製剤を、腸管外に、すなわち静脈内 (i.v.), 脳室内 (i.c.v.), 皮下(s.c.), 腹腔内 (i.p.), 筋肉内 (i.m.), 皮下 (s.d.), 又は 皮内 (i.d.) 投与によって, 直接注射、たとえばボラス注射又は連続吸入によって供給することができる。注射用製剤は、添加された保存剤と共に単位投薬形、たとえばアンプル又は多薬用量容器 (multi-dose containers)中にあることができる。あるいは, 有効成分は、使用前に適当な媒体, たとえば 滅菌発熱物質不含水を用いて再構成される粉末形にあることができる。腸管外投与に, 注入速度は血流中のメマンチンの比較的長い半減期にしたがって慎重に調節されなければならない。
本発明はまたメマンチン及び場合により, いっそう多くの製剤成分を含有する、1個以上容器を含む医薬パック又はキットを提供する。具体的実施態様において, メマンチンは、ティースプーン2杯容量のシリンジ(syringe)(dosage KORC(登録商標)) を用いる投与に経口溶液(2 mg/ml)として供給される。それぞれの経口シリンジは、単位を表わすシリンジの右側上のライン(tip down), 及びml 単位を表わす左側のラインのある測定用ブルーハッチマーク(blue hatch marks)を有する。
投薬量。好ましくは, 最適な治療上有効な量は、投与の正確な方法を考慮して、その方法で薬物が投与されること, 投与が対象とする適応症, 対象者 (たとえば体重, 健康、年齢、性別等々), 及び担当の医師又は獣医の好み及び経験から、経験的に投与されねばならない。
本発明の調合物の毒性及び治療有効性は、動物実験で標準医薬操作によって、たとえばLD50 (集団の50%が死に至る量) 及びED50 (集団の50% に治療上有効な薬用量)を測定することによって決定することができる。治療効果と毒性作用の間の薬用量比率は治療指標であり、そしてこれを比率 ED50/LD50.として表わすことができる。大きな治療指標を示す調合物が好ましい。
ヒトの治療上の処置で本発明の有効物質の適する一日用量は、経口投与1回につき、約 0.01-10 mg及び非経口投与において体重kgあたり0.001-10 mgである。
成人に対して, メマンチンの適する一日用量は、一日あたり約 5 mg〜約 100 mg, 好ましくは一日あたり約 20〜約 40 mgの範囲内である。
4-14歳の小児対象者に対して,メマンチンを経口液体投薬形として,一日あたり約 0.5 mg/kgで, 最大用量一日あたり約 20 mgまで投与するのが好ましい。より低い開始用量から約 4 週間かけて最大用量に漸増することが、非常に好ましい。液体経口投与に対して, メマンチンをその用量に対して約半分の液体同等物に溶解させる。たとえば, 12.5 mgのメマンチンを、10 mlの投与用液状製剤に溶解させる。
治療期間は短期的, たとえば数週間(たとえば 8-14週間), 又は 主治医が更なる投与をもはや必要としないと考えるまでの長期的であることができる。
メマンチンを、単剤療法として, 又は自閉症スペクトル障害又は混合型ADHDの治療に処方される別の薬剤(自閉症スペクトル障害がアスペルガー症候群である場合、GABA 同族体である薬剤を除く)と併用して投与することができる。.
本発明をさらに具体的な例を用いて説明する。しかし, このような例の使用は単に説明するだけあって、本発明又はすべての提示される用語の範囲及び意味を決して限定するものではない。同様に, 本発明はここに記載されたすべての具体的な好ましい実施態様に限定されない。実際に, 本発明の多くの改変及び変更が、本明細書を読むにあたり当業者に明らかであろう、そしてその思想及び範囲から離れることなく行うことができる。それゆえに、本発明は、請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共に 添付請求の範囲の用語によってのみ限定されるべきである。
例 1: 自閉症の治療用メマンチンの非盲検評価
この臨床実験は、自閉性障害 (DSM-IV-TR 基準)と診断された小児患者においてメマンチンを判定する非盲検, マルチ-センター, 用量設定する 通院患者試験として行われる。自閉性障害は、社会的相互作用で, コミュニケーション能力における機能障害によって, 及び定型的/反復行動によって特徴付けられる。
患者集団及び診断。調査集団は、自閉的行動と診断され, そして他の薬物治療で改善されなかった5 〜17才 (好ましくは6 〜12才)の小児20人からなる。診断を確認するか, 又は投薬を受けていない患者(naive patient)の場合, 臨床評価 に基づく DSM-IV-TRTM 基準 (上述した)及び 医療従事者による準スケジュールに基づいた面接, 自閉症診断観測スケジュール(ADOS-G)を用いて行った。スクリーニングで, 患者は非言語知能テスト (TONI-3)によって測定される、≧40の非言語 IQ スコアを有しなければならない。
更に, スケール、たとえばCHAT, CARS, PIA, (GARS), 行動 BRIAC, ADI-R, ADOS-G, 及びDISCO (上述した) を、自閉症又は症状の判断基準の程度を診断するために使用することができる。別の測定基準は、Communication and Symbolic Behavior Scale (CSBS) 及び Ritvo Real-life Rating Scaleを含む。MRIs もまた脳全体, 頭頂前頭葉(parieto-temporal lobe), 及び小脳半球ボリューム(cerebellar hemisphere volumes)で, 又は自閉症のへんとう体, 海馬, 及び脳梁(Brambilla 等., Brain Res Bull. 2003;61(6):557-69), 又はアスペルガー症候群の菱脳 (Nieminen-von Wendt, Int. J. Circumpolar Health. 2002; 61 Suppl 2:22-35)のサイズの大きさで観察差異を判定するために行うことができる。
スクリーニングで統合失調症又は双極性障害の最初の精神診断を示し, 過去 6ヶ月以内に大うつ病性障害の病歴, 発作/癲癇に限定されないがこれらを含む他の神経系疾患の病歴のある、患者は除かれる。患者がスクリーニングの前の2ヶ月以内に精神療法, 行動治療, 及び(又は)認知治療を開始していた場合, 患者が、スクリーニングの前の最小の許容間隔に先立って、あらゆる除かれる併用薬物治療を受けているか又は受けた場合, そして患者が調査参加前30 日又は5 半減期 (いずれか長いほう)以内にあらゆる被検薬で治療を受けた場合、その患者も除かれる。その他の除外基準も適用される。
調査中、許可されない併用薬は、食欲抑制薬, 抗コリン作動性薬, 抗凝血剤, 抗けいれん剤, 抗うつ薬, 抗高血圧薬, 肥満抑制薬, 抗精神病薬, 抗不安薬, 抗ウイルス薬, コリンエステラーゼ阻害剤, ホルモン及びホルモン抑制薬, 脂質低下薬, 筋肉弛緩薬, 向精神薬, 鎮静剤又は睡眠薬, システミックステロイド(systemic steroids), 全身抗真菌薬, 慢性抗下痢薬, 及び興奮薬並びにそん他のADHD治療薬を含む。
“検査される集団”は、付与された検査番号のあるスクリーニング外来の患者すべてからなる。
“安全集団”は、調査薬物の少なくとも1つの投薬を受けた患者のすべてからなる。
“包括解析(Itent-to-Treat (ITT)) 集団”は、CGI-Iの少なくとも1つのポスト-ベースライン有効性判定のある安全集団におけるすべての患者からなる。
調査計画及び治療。スクリーニング (2週目)で被試験基準にあった患者に、8 週間の、メマンチンを用いる非盲検治療を始める。この調査は用量設定調査として行われる。この研究ですべての患者は, 用量-制限する有害事象を除外して, 1週目の開始時に 1日あたり2.4 mgの開始投薬量 から 2週目の開始時に 1日あたり4.8 mgに、3週目の開始時に1日あたり7.2 mgに、4週目の開始時に 1日あたり 最大用量の10 mgに増量される。患者は、5週目の開始から 8週目の最後まで最大許容1日用量(1日あたり10 mgまで)にとどまる。用量-制限する有害事象を経験する患者のために、後に再増量するということで、次の最低許容量への用量減少を許可する。1日あたり 2.4 mgの用量に耐えられない患者は調査から脱落し、交代させる。
この調査は、全部で11 回の外来を有する: スクリーニング(外来 1), ベースライン (外来 2; 0週目), 及び外来3 〜10 (1 週目〜 8週目で毎週外来), 及び外来 11 (調査薬物の最後の投与後1〜5日) ( 評価のスケジュール, セクション3.0参照)。スクリーニングを、2-週間スクリーニング期間内で2個の別々の評価, パート 1.1及びパート1.2 として終了することができる。必要ならば, 調査外来2 〜 10を、調査週の最後日前又はその後の3日までに行う。スクリーニング後のすべての外来を、ベースライン外来が 0 タイムポイントであるとみなされるようにスケジュールをたてる。
2回連続の外来をしなかった患者を調査からはずし、そして交代させた。
薬物用量(Drug dosing)及び投与。メマンチン HClはForest Laboratoriesによって提供される。投薬は、毎日1回の服用として朝に行わなければならない。
外来及び週による、施行された調査薬物の量, 増量, 及び維持管理スケジュールを下記に示す。
Figure 2008514620
増量及び維持管理スケジュール (すなわち一日あたり 2.4 mg, 4.8 mg, 7.2 mg及び10 mg) で特定化された薬用量のみを認める。一日あたり2.4 mgの最大薬用量に耐えることができる患者をこの調査からはずす。
薬用量調整は、検査官の裁量で薬用量-制限有害事象を経験する患者に対して許可される。調査医師は、あらゆる投与変更について説明を受けなければならない。薬用量調整は、常に非耐性薬用量から次の最低又は次の最大許容薬用量へ進められる。
2週目 (外来4)の最後から5週目 (外来 7)の最後に, 制限有害事象を経験する患者は、メマンチンのその一日薬用量を非耐性薬用量に極めて近い薬用量に減少させることができる。すなわち, 一日あたりメマンチン 4.8 mgに耐えることができない患者は、その薬用量を一日あたり2.4 mgに減少させることができる; 一日あたりメマンチン 7.2 mg に耐えることができない患者は、その薬用量を一日あたり4.8 mg に減少させることができる; そして一日あたりメマンチン 10 mg に耐えることができない患者は、その薬用量を一日あたり7.2 mg に減少させることができる。薬用量減少が生じるならば, 次の調査週に、メマンチンの薬用量を再増量して、より高い (以前は非耐性) 薬用量に戻す試みが行われても良い。この再増量に耐えることができない患者は、より低い許容された一日薬用量での調査を続けることが許可される。再増量に耐えることができる患者は、メマンチンのその薬用量を5週目 (外来 7)の最後まで週1回のベースにもとづいて増加させ続けることができる。5週目 (外来 7)の最後まで許容される最大薬用量は、治療(外来 8, 9, 10)の残りの3週間維持される薬用量である。
6 〜8週目中に, 薬用量-制限有害事象を経験する患者は、その一日薬用量を非耐性薬用量に極めて近い薬用量に更に減少させることができる。高い増量は、この期間中で許可されない。この調査に関して, 最小一日薬用量は一日あたり 2.4 mgであり、そして最大一日薬用量は一日あたり10 mgである。
許容される薬用量調整のスケジュール表を下記に示す。
Figure 2008514620
評価。第一の目的は、自閉性障害の小児患者でメマンチンの予備的安全性及び耐薬性評価を提供することにある。
第二の目的は、メマンチンの薬物動態学を評価することにあり、そしてメマンチンの8-週間投与に基づき有効性の予備的評価を提供することにある。有効性は、CGI-I, CGI-S, RUPP-TSA, ABC-RCV, PPVT III, 及びMTS タースクで ベースライン (外来 2)から 8週目 (外来10回目) の最後への変化にもとづいて評価される。これらの尺度の表示に関して上記参照。EEGs を前頭葉 電気的活動の差異を検出するために使用することもできる。
総スコア及びベースライン (外来 2)それぞれのポスト-ベースライン外来でベースライン (外来 2)からの変化に関する記述統計学 (n, 平均, 標準偏差, メジアン, 最小、及び最大) を、有効性評価基準に対して示す。
第一分析は、観察データに基づく。欠測値は、プレゼンテーションの目的のために 補完されない(not be imputed)。時系列データの欠測に最直前のデータを補完する(a last observation carried forward (LOCF) )分析も、それぞれの有効性判定のために行われる。この方法を用いて, ポストベースライン外来での欠測値前の最直前観測値を、補完して欠測値を帰属させる。但し少なくとも1つのポスト-ベースライン判定は有効である。
薬物動態学。自閉性障害の小児患者におけるメマンチンの血漿濃度-時間プロフィールを、混合作用(mixed effects)集団薬物動態学的モデルを用いて説明する。薬物動態学的分析を、メマンチンの薬物動態学的パラメータを見積もるために、NONMEM(登録商標)を用いて実施する。
有害事象。有害事象 (AE)モニタリングを、期限前契約解除を含めてスクリーニング以外のすべての調査外来で行った。AE は、医薬品を投与された患者又は臨床検査対象者に起こる あらゆる不利な医療出来事である。AE が医薬品による治療との因果関係を有する必要はない。
したがって、AEは あらゆる不利な及び予想外の徴候 (たとえば, 臨床上顕著な異常な研究室所見)症状であるか、又は一時的に調査薬物療法の適用に係わる疾患であって, 調査薬物療法に関連するとみなされるかどうかである。有害事象は、治療時発生有害事象, 深刻な有害事象, 時期尚早な調査中止を生じる有害事象及び死を含む。非盲検治療期間中に生じるAEを、治療時発生AE (TEAE)として数える 。それは、調査薬物療法の最初の投薬の前に存在しない場合又は調査薬物療法の最初の投薬の前に存在するが、調査薬物療法の最初の投薬後に重症度を増加させる場合である。
TEAEsのある患者の数(パーセント)を、身体システム( body system)及び好ましい項目によって表にする。具体的カテゴリー (すなわち 特定の身体システム又は好ましい項目)のうちに, 患者が報告された事象の1個より多くを有する場合、その患者を1回だけ数えた。リストは、深刻な有害事象 (SAEs) 及び 時期尚早な調査中止を生じる有害事象(ADOs)のあるすべての患者をもたらした。死のリストは該当するならば提供しなければならない。
結果
メマンチン治療は、第二エンドポイントの著しい改善, すなわちプラシーボ-治療された個人(individuals)に比べて行動及び症徴学の改善を証明すると思われる。このような改善はおそらくつぎの項目1種以上になる: 1種以上のアイコンタクト, 環境意識, 言葉によるコミュニケーション能力, 言葉による指示に対する応答, 日課の軽度に変化に対する寛容,及び知覚の改善、及び多動性, 攻撃, 自傷行動及び反復行動の減少。
たとえば,社会及びコミュニケーション行動, 及び非言語知能それぞれを測定する診断尺度, ADOS-G 及びTONI-3の改善が予想される。同様に, 有効性尺度、たとえばCGI-I, CGI-S, RUPP-TAS, ABC-CV, PPVT III, 及びMTS 尺度の改善が、プラシーボに比べてメマンチンによって見込まれる。.
例 2: 自閉症スペクトル障害の治療用メマンチンに関する、無作為二重盲検プラシーボ-コントロールされた試験
この調査の第一目的は、自閉症の小児患者におけるメマンチンの有効性及び安全性を評価することにある。
計画。この臨床調査を、マルチセンタ無作為二重盲検プラシーボ-コントロールされた, パラレル-グループ, 自由に変えられる薬用量調査として行う。これは自閉症と診断された小児通院患者を、DSM-IV, 自閉症診断観測スケジュール (ADOS) 及び 自閉症診断面接-改定 (ADI-R) 基準を用いて、メマンチンとプラシーボを対比して行われる。この調査は、2 週間の単純盲検, プラシーボ リードイン(lead-in) 治療、ついで12 週間の 二重盲検の変化しうる -薬用量治療からなる。単純盲検期間の最後に、この調査に対する参加基準に合う患者を、2つの二重盲検治療グループのうちの1つ (メマンチン又はプラシーボ)に無作為に選ぶ(1:1)。
患者集団及び診断。この調査は、自閉症に対する診断基準に合った、そして知的発達の遅れていないか又はほんの軽度の精神遅滞である、約 5歳〜約 12歳の患者からなる。
併用向精神薬物治療又は向精神成分による薬物治療は、まったく許可されない。
薬用量。メマンチンを、一日1回 薬用量:4個のカプセルとして経口投与する。提案される用法は次の通りである (変わるかもしれないが): 12 週の二重盲検の変化しうる薬用量治療に関して、開始薬用量は、二重盲検治療の最初の2週間一日あたり3 mgである。薬用量-制限有害事象の不在下に, メマンチン薬用量は、3週目で一日あたり6 mgに, ついで4週目で一日あたり9 mgまで、ついで5週目で一日あたり12 mgまで, ついで6〜12週目の間一日あたり18 mgまで増量される。すべての患者は、この調査に残ることができるために、6週目の最後までに一日あたり6 mgの最小薬用量に達していなければならない。変化しうる薬用量の減少は、8週目の前に許可され, そしてすべての治療は 8 〜 12週目の間、最大許容薬用量で確定されたままである。12-週の, 二重盲検段階を終了する患者は、非盲検エクステンション(extension)に参加することができる。
評価。患者を評価するために使用される第一の有効性評価基準は、CGI-S (臨床全般印象-重症度) 及び CGI-I (臨床全般印象-改善)である。重症度のCGI サブスケール(CGI-S) をベースラインで判定する。一方、CGI-改善(CGI-I)尺度は、各外来で又は 調査の間特定の指定された外来で及びエンドポイントでベースライン 重症度ランクからの測定変化に敏感である。CGI-Sに対するランクは、“1” (病気でない)から “7” (極めて悪い)に及ぶ; CGI-Iに対するランクは, “1” (とても改善された) から “7” (とても悪化した)に及ぶ。CGI-Sはスクリーニング(外来 1)で実施され、CGI-S スコア ≧4 (中程度に悪い)の包括基準の患者の満足感を決定する。
患者を評価するために使用される第二有効性評価基準は、自閉症診断観測スケジュール-ジェネリック (ADOS)である。
第二有効性評価基準は、言語及びコミュニケーション (9 項目)ならびに相互交換社会的相互作用 (10項目)を含む項目の総実際のスコア中、12週目でベースラインからの平均的変化である。
統計学的分析。第一有効性評価基準は、時系列データの欠測に最直前のデータを補完する(a last observation carried forward (LOCF) )法を用いて、12週目にCGI-I ランク尺度で応答者(スコア1又は2として定義) の百分率である。第一分析は、調査センタで調整されるCochran-Mantel-Haenszel (CMH)に基づく。これは2つの治療グループの間のCGI-I 肯定応答率に違いがないゼロ仮説を調べるためのものである。安全尺度は, 安全集団に基づき、すべての無作為に選ばれた患者(二重盲検被検薬の少なくとも1つの薬用量を受けた患者)として定義される。有効性尺度は、包括解析 (ITT) 集団に基づき, CGI-Iの少なくとも1つのポスト-ベースライン判定を用いて、安全集団中のすべての患者として定義される。
結果
メマンチンは耐容性良好であって、一日あたり約 6-18 mgの投薬範囲内でプラシーボと比べて自閉症治療に有効であることを示すと見込まれる。
例 3: ADHDの治療用メマンチンの非盲検評価
この調査の第一目的は、ADHD患者混合型の小児患者で メマンチンの予備的安全及び耐薬性評価を提供することにある。この調査の第二目的は、この患者集団でメマンチンの薬物動態学を評価することにあり、そしてメマンチンの8-週投与に基づく効果の効率の予備的評価を提供することにある。
計画。この臨床実験は、ADHD 混合型 (DSM-IV-TRTM基準)と診断された小児患者でメマンチンを判定する、非盲検, シングルセンタ, 用量設定された通院患者調査として行われる。ADHD 混合型は、顕著な不注意 及び多動性/衝動症候学の存在によって特徴付けられる。
この調査は全部で10個の臨床外来を含む: スクリーニング, ベースライン, 1 〜8週目の最後に週1回の外来, 及び調査被検薬の最後の投与後1 〜5日に最後の外来。スクリーニングの終了 とベースライン 外来の間の最大持続期間は2週間である。患者/親の責任を軽減させるために、スクリーニング 外来を、2-週間以内に2 つの別個の評価, パート 1.1及びパート 1.2で完了するのが可能である。.
患者集団。DSM-IV-TRTM 基準 によってADHD 混合型と診断された、6 〜12歳, 平均 8歳の16人の男性又は女性通院患者が参加する調査は、臨床評価及び半-構築された面接,学童年齢の小児患者の情動障害及び統合失調症に関するスケジュール -現在及び一生 (K-SADS-PL)に基づく。ベースラインで, 患者は注意-欠陥/多動性障害ランク尺度-IV (ADHD-IV-RS)-親用での総スコア24以上, 臨床全般印象-ADHD-重症度 (CGI-ADHD-S) スコア ≧ 4, 及びピーボディーピクチャー語彙試験, 第3版 (PPVT III)で≧70の標準化されたスコアによって測定されるような知的障害のない範囲での言語知能を有していなければならない。
ウオッシュアウト期間は、3週又は 5半減期(いずれか短いほう)までのスクリーニング期間中、精神活性薬物治療 (持続性デポー神経安定薬及び麻薬以外)で候補者を準備する。精神活性薬物治療の患者に関して,不満足な治療応答の患者のみが調査に可能である。
スクリーニングで ADHD 混合型 (反抗的行為障害が認められる)以外のあらゆる第一精神診断のある患者, 又は発作/癲癇(単純型熱性けいれんを除く)、運動障害及びトゥレット疾患に限定されないがこれらを含む他の神経系疾患の病歴のある、患者は除かれる。前記段落での記述を除いて、スクリーニング外来の1-2 週以内に、あらゆる興奮薬 [メチルフェニダート (Ritalin(登録商標), Concerta(登録商標)), アトモキセチン (Strattera(登録商標)), アンフェタミン混合塩 (Adderall(登録商標)), 又は ペモリン (Cylert(登録商標)を含む], 抗うつ薬又は抗不安薬投薬, 神経安定薬投薬又は癲癇薬投薬によって治療された患者も除かれる。
食欲抑制薬, 抗コリン作動性薬, 抗けいれん剤, 抗うつ薬, 抗精神病薬, 肥満抑制薬, 慢性制吐薬, コリンエステラーゼ阻害剤, ホルモン及びホルモン抑制薬, 鎮静剤又は睡眠薬, 又は興奮薬に制限されないがこれらを含む併用 CNS-作動薬物治療は、この調査に包括されない。除外されるその他の併用薬物治療は、麻酔薬, 抗凝血剤, 慢性抗下痢薬, 全身抗真菌薬, 抗高血圧薬, 慢性抗炎症剤, 抗新生物薬, 抗ウイルス薬, 低脂血症, 筋肉弛緩薬, システミックステロイド, 及び慢性ワクチンを含む。
薬用量。ADHD 混合型の診断を受けた16人の通院患者は、全部で8週間メマンチンによる治療を受ける。患者を、8人の患者それぞれ コホート 1及びコホート 2の2つグループに参加させる。薬用量調整は、用量-制限する有害事象を経験した患者に許可される。コホート 1 患者に関して, 治療は4週の増量期間からなり、それは0週目の開始で開始薬用量一日あたり2.4 mgから, 1週目の開始で一日あたり4.8 mgに、2週目の開始で一日あたり7.2 mgに、3週目の開始で一日あたり最大薬用量の10 mgに増量され、維持管理薬用量一日あたり10 mgを8週目の最後まで続ける。コホート 2 患者に関して, 治療は4週の増量期間からなり、それは0週目の開始で開始薬用量一日あたり4.8 mgから, 1週目の開始で一日あたり10 mgに、2週目の開始で一日あたり14.8 mgに、3週目の開始で一日あたり最大薬用量の20 mgに増量され、維持管理薬用量一日あたり20 mgを8週目の最後まで続ける。
コホート 1 及びコホート 2に対する外来及び週にしたがって、施行された調査薬物の量, 漸増, 及び維持管理スケジュールを、下記表 1に示す。
Figure 2008514620
許可される薬用量調整のスケジュールの表を、下記表 2に示す。
Figure 2008514620
評価及び判定。調査は合計10回の外来を有する: スクリーニング (外来 1), ベースライン (外来 2; 0週目), 及び外来3 〜9 (1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 及び 8週目の最後に週1回外来)。スクリーニング外来を、2 個の別々の評価, 2-週間のスクリーニング期間内にパート 1.1 及びパート 1.2として終了することができる。必要ならば, 調査外来2 〜 10を、調査週の最後日前又はその後の3日までに行う。スクリーニング外来後のすべての外来を、ベースライン外来が 0 タイムポイントであるとみなされるようにスケジュールをたてる。
2回連続の外来をしなかった患者を調査からはずした。“選別される集団” は、付与された選別番号のあるスクリーニング 外来を有する患者すべてからなる。“安全集団” は、調査薬物療法の少なくとも1つの用量を摂取した患者すべてからなる。“包括解析 (ITT) 集団” は、ADHD-IV-RS又はCGI-ADHD-Sの少なくとも1つのポスト-ベースライン有効性判定のある安全集団中の患者すべてからなる。ADHD-IV-RS又はCGI-ADHD-S を、患者1人あたり4回、スクリーニングで1回, ベースラインで1回, 4週目の最後に1回及び 8週目の最後に1回行った。投薬の0 週目の間に必要な1日用量に耐えない患者を、調査からはずし、交代させた。投薬の1 週目後最小1日用量を耐えることができない、これらの患者を調査からはずし、交代させた。
評価のために使用される有効性評価基準は、上述したADHD-IV-RS, CGI-ADHD-S, CCPT-II, Woodcock Johnson III reading and math fluency tests及びStroop testである。
それぞれ有効性評価基準に関する第一分析は、観測症例に基づく。評価を終了
する患者のみが OC 分析に含まれ, 欠測値は補完されない。時系列データの欠測に最直前のデータを補完する(a last observation carried forward (LOCF) )分析も、それぞれの有効性判定のために行われる。この方法を用いて, ポストベースライン外来での欠測値前の最直前観測値を、補完して欠測値を帰属させる。但し少なくとも1つのポスト-ベースライン判定は有効である。コホート 1 及びコホート 2 のすべての患者は、少なくとも1つのポスト-ベースライン 外来を有し、そしてLOCF 分析に含まれる。
薬物動態学的評価。血漿サンプルは、1 週目 (外来 3), 2週目(外来 4), 3週目(外来 5), 4週目(外来 6), 及び 5週目(外来 7) で又は期限前契約解除時に無作為な投薬後に取得されねばならない。1, 2, 3, 及び4週目に, PK サンプリングを次の時間窓の間に採取しなければならない: トラフ(trough) (0 時間), >0 ― 2 h, >2 ― 4 h 及び4 ― 8 h; 5週目で, PK サンプリング を>0 - 8 時間の間のいつでもおこなうことができた。トラフ採血を得る前に, 患者は、午前の外来でリサーチ現場に到着した後にトラフサンプルを採取するまで調査薬物療法の朝の用量を摂取してはならない。
薬物動態学的分析を、メマンチンの薬物動態学的パラメータを評価するために、NONMEM(登録商標)を用いて行った。
有害事象。有害事象(AE)モニタリングを、期限前契約解除を含めてスクリーニング以外のすべての調査外来で行った。AE は、医薬品を投与された患者又は臨床検査対象者に起こる あらゆる不利な医療出来事である。AE が医薬品による治療との因果関係を有する必要はない。
したがって、AEは あらゆる不利な及び予想外の徴候 (たとえば, 臨床上顕著な異常な研究室所見)症状であるか、又は一時的に調査薬物療法の適用に係わる疾患であって, 調査薬物療法に関連するとみなされるかどうかである。有害事象は、治療時発生有害事象, 深刻な有害事象, 時期尚早な調査中止を生じる有害事象及び死を含む。非盲検治療期間中に生じるAEを、治療時発生AE (TEAE)として数える 。それは、調査薬物療法の最初の投薬の前に存在しない場合又は調査薬物療法の最初の投薬の前に存在するが、調査薬物療法の最初の投薬後に重症度を増加させる場合である。
TEAEsのある患者の数(パーセント)を、身体システム( body system)及び好ましい項目によって表にする。具体的カテゴリー (すなわち 特定の身体システム又は好ましい項目)のうちに, 患者が報告された事象の1個より多くを有する場合、その患者を1回だけ数えた。リストは、深刻な有害事象 (SAEs) 及び 時期尚早な調査中止を生じる有害事象(ADOs)のあるすべての患者をもたらした。死のリストは該当するならば提供しなければならない。
結果
メマンチンは、コホート 2で患者に対する混合型 ADHD の行動及び症徴学において改善を実証した。それによってメマンチンは混合型 ADHDに対する有効な治療薬である。メマンチンは興奮薬でなく, 指定され、規制された物質である慣用のADHD 薬物治療であるので、薬物乱用の恐れはない。
患者の傾向。コホート 1 において8人の患者すべては、8週目前に中止する; 7 人は不十分な治療有効性のため, そのうちの5人は1-4週目以内に中止し, そして1人は契約を取り下げた。コホート 2において, 4人の患者は調査を終了し, 3人は不十分な治療有効性のため中止し, そのうちの1人は 1-4週目以内に中止し, そして1人は 追跡できなかった。
16人の患者すべては、少なくとも1つのポスト-ベースライン有効性評価を終了し、ITT 集団に含まれる。
治療の平均持続期間は、平均1日用量:1日あたり 5.6 mgを使用してコホート 1で29 日である。治療の平均持続期間は、平均1日用量:1日あたり 13.5 mg を使用してコホート 2で42.25 日である。コホート 2 の2人の患者以外(薬物療法ボトルは返却しない), すべての患者は75%以上準拠した。
有効性評価基準
ADHD-IV-RS。有効性を、ADHD-IV-RSを用いて評価する。外来スコア及びOC及び LOCF分析に基づくコホート 1及び2に関して8週目でベースラインからの変化を、下記表 3及び表 4それぞれに提示する。8 週間の最後に、コホート 2のメマンチン を摂取した患者は、OC 分析でADHD-IV-RSに改善を示した。
Figure 2008514620
Figure 2008514620
CGI-ADHD-S。コホート2のOC 分析(評価の終了した患者に対する)において, 患者のうちの75% は、ベースライン で適度に又は際立って悪いとみなされる100%に比べて五分五分か又は際立って悪いとみなされた(図 3 及び4の縦軸で4-5のベースラインスコアによって示されるように)。
8 週間の最後に、ベースラインでのコホート 1 及び コホート 2、4週目及び8週目、に対するOC 分析におけるスコアの分布を,図 1及び 2に示す。上述したように, 患者のすべてが、コホート 1で有効性の欠如に対する調査を完了する前に脱落した。しかし, すべての患者が少なくとも1つのポスト-ベースライン 評価を終了したので, かれらはLOCF分析に含まれる。
同様に, コホート 2 に対するLOCF 分析は、調査を終了しなかった4 人の患者を含む。というのは患者それぞれが、少なくとも1つのポスト-ベースライン評価をもっているからである。コホート 2で調査を終了した4人の 患者に加えて, 2人の別の患者が一日あたり20 mg の最大1日用量に達した。
結論
メマンチンはADHDの患者で安全かつ耐容性良好である。更に, 治療8 週間後, 2つの有効性評価基準の改善が観察され, メマンチンが、試験を終了する患者の25%でADHD の治療に有効であることを示した。
* * *
本発明はここに記載した具体的な実施態様によって範囲を限定するものではない。確かに, ここの記載した変更に加えて、本発明の種々の変更は、前述の記載から当業者に明かになる。このような変更は付加された請求項の範囲内にあることを意図している。
更にすべての値はおおよそであり、そのように記載されていると理解されねばならない。
特許、特許明細書, 出願明細書, 文献、製品仕様書及びプロトコルは本明細書中に引用され、その記載はすべての目的に全体を参考としてここに援用する。
図1はベースライン, 4週目及び8週目で、コホート1に対するITT 集団のLOCF 分析におけるスコアの分布を明示する。 図2はベースライン, 4週目及び8週目で、コホート2に対するITT 集団の LOCF分析におけるスコアの分布を明示する。 図3はベースライン, 4週目及び8週目で、コホート1に対するITT 集団のOC 分析におけるスコアの分布を明示する。 図4はベースライン, 4週目及び8週目で、コホート2に対するITT 集団のOC分析におけるスコアの分布を明示する。

Claims (18)

  1. 障害がレット症候群でない小児行動障害と診断された個人(individual)を治療する方法において、この治療を必要とする対象者(subject)に治療上有効な量のメマンチンを投与することを含む、上記治療方法。
  2. 障害が自閉症スペクトル障害である、請求項1記載の方法。
  3. 自閉症スペクトル障害が自閉症, アスペルガー症候群, 広汎性発達障害及び小児期崩壊性障害より成る群から選ばれる、請求項2記載の方法。
  4. 自閉症スペクトル障害が自閉症である、請求項3記載の方法。
  5. 障害が混合型注意欠陥/多動性障害である、請求項1記載の方法。
  6. 対象者が5 〜17歳である、請求項1記載の方法。
  7. 対象者が6〜12歳である、請求項1記載の方法。
  8. 対象者が成人である、請求項2記載の方法。
  9. 対象者が成人である、請求項5記載の方法。
  10. メマンチンを、一日あたり約 1.25 mg〜約 100 mgの薬用量範囲で投与する、請求項1記載の方法。
  11. メマンチンを、一日あたり約 5 〜約 40 mgの薬用量範囲で投与する、請求項10記載の方法。
  12. メマンチンを、一日あたり約 10-20 mgの薬用量範囲で投与する、請求項10記載の方法。
  13. メマンチンを一日1回又は一日2回(b.i.d.)投与する、請求項 1記載の方法。
  14. メマンチンを放出調節製剤の形で一日1回 投与する、請求項1記載の方法。
  15. メマンチンをフレーバーな, 経口液状製剤の形で投与する、請求項1記載の方法。
  16. 治療が1種以上のアイコンタクト, 環境意識, 言葉によるコミュニケーション能力, 言葉による指示に対する応答, 不注意, 多動性, 衝動性, 攻撃, 自傷行動, 日課の軽度に変化に対する寛容, 反復行動, 又は知覚の改善を含む、請求項1記載の方法。
  17. 障害が不安障害, 双極性障害, うつ病, 破壊的行動障害, 失読症, 脆弱性 X 症候群, 学習能力障害, 強迫性障害 (OCD), 反抗的行為障害, 反応性アタッチメント障害, 分離不安障害及びトゥレット症候群より成る群から選ばれる、請求項1記載の方法。
  18. メマンチンを、自閉症スペクトル障害又は混合型ADHDの治療のために処方される別の剤(自閉症スペクトル障害がアスペルガー症候群である場合、GABA 同族体である剤を除く)と組み合わせて投与する、請求項1記載の方法。
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