JP2008505326A - 高分子分析用細胞の採集方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
指紋の着いた表面などの表面から、引き続く高分子分析のために、細胞を迅速に採集する方法であって、既定量の水溶液を該表面に配分し、該水溶液に超音波を当てて該表面からの細胞の脱離を促進することからなる。該細胞からDNAなどの高分子を抽出するには、採集した細胞を含む該水溶液中で直接実施し、さらに所定の時間、該溶液に超音波を当てて細胞を溶解させ、次いでDNAを抽出する。
Description
本発明は表面から細胞を採集し、指紋からのデオキシリボ核酸(DNA)などの分子分析のための高分子を抽出する方法に関する。
遺伝子情報は、例えば、生物体系の生命過程、酵素の産生と機能、ホルモンおよび神経伝達物質の分泌、および細胞機能の制御を理解することなど、多くの理由で非常に重要である。さらに、デオキシリボ核酸(DNA)および他の高分子は、個々に同定することを通して、病気の診断と予防、法医学的な分析と安全性についての豊富な情報を提供することが可能である。DNAはまた疾患処置の標的としても役立ち得る。
しかしながら、DNAを取得し、抽出する方法は、侵襲的であり、コスト、労力および時間を浪費する。一般的に、血液サンプルは入手後、分析のために検査機関に送られる。血液を採取するには、または組織サンプルなど他の侵襲源から材料を得るには、許可された医師または看護師、または訓練を積んだ技師を必要とする。さらに、血液採取および他の侵襲的採集手段にはそれに伴う不快感ならびに病気伝染のリスクがある。さらに、法医学的分析のための血液サンプルおよび組織サンプルは、犯罪現場からは多くの場合入手し得ない。
DNA採集および抽出のための最新方法は多くの工程を必要とする。費用のかさむことと、時間浪費であることを別としても、各工程が重なるにつれ、汚染のリスクが増大し、それがサンプルの破壊に寄与し、結果として情報の喪失に至らしめる。
DNAの回収は血液細胞に限られるものではなく、より侵襲性の少ない起源、例えば、皮膚細胞などからも入手し得る。例えば、指紋の皮膚細胞は法医学的分析にとって貴重な材料を構成する。しかし、表面上に残された皮膚細胞からDNA分析を実施する既存の方法では、上記のように、時間浪費であり、多くの場合、常法どおりの信頼性のあるDNA抽出を可能とする十分な量の材料を提供しない。
従って、DNAなどの高分子を採集し、抽出する改良方法が必要とされる。
従って、本発明の目的は、表面および/または他の起源から高分子分析用の細胞を採集する改良方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、表面からDNAを採集する方法であって、指紋などから細胞を採集し、その細胞からDNAを単離することからなる方法を提供することにある。
一態様において、本発明は最少の工程数で、表面から高分子分析用の細胞を迅速に効率的に採集する方法を提供する。本方法では該表面からの細胞の脱離を促進するために、超音波エネルギーを使用する。本方法はさらに該表面から直接的に細胞を、DNA分析などの高分子分析に容易に適合させうる水溶液中に迅速に採集することを可能とする。細胞は異なるタイプの表面、例えば、限定されるものではないが、ガラス、プラスチック、毛髪および切り取った爪などから効率的に採集し得る。
本方法の一側面において、DNA抽出などの高分子抽出は採集した細胞を含む水溶液中で直接実施しうる;それによってサンプルを処理加工する際に関わる工程数と汚染のリスクを実質的に低下させることができる。
本方法のさらにもう一つの側面において、該水溶液はDNA抽出を促進し、および/または細胞表面タンパク質により表面に付着している細胞の採集を容易にするために、プロティナーゼを含有させることもできる。
本発明のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明と添付の図面とを組合わせて明らかとなろう。
添付の図面は全体を通して、同じ特徴のものは同じ参照番号により同一のものとする。
本発明は高分子分析を可能とするために表面から細胞を採集する方法、および採集した細胞から高分子を単離する方法を提供する。有利な面としては、DNAなどの高分子の単離が迅速に現場で実施し得ることである。
一個人を同定するための特定の配列の分析に要するDNAの量は非常にわずか(0.1〜10ナノグラム)であることは以前から知られているが、例えば、DNAを抽出するために、個人の指紋、掌紋、足蹠紋、または他の皮膚接触痕跡、および他の非侵襲性痕跡を使用することは今日まで実用化されていない。
図1は表面12上の指紋10を概略図的に説明するものである。凡そ4倍に拡大すると、細長い溝15の生物測定学的パターン14(主として、アーチ型、ループ型、および渦巻き型で特徴づけられる)がはっきりと認められる。このようなパターンは何年もの間、法医学的同定手段として広範に使用されてきている。凡そ20倍に拡大すると、一塊の垢、および異なる種類の砕片16が明らかとなる。この残りの物体は一般に、以下に詳細に記載する方法により、DNAその他の高分子の同定を可能とする十分な密度の脱落した皮膚細胞20を含んでいる。
表面12は実質的に固定した物体であるか、または指紋10が別の表面から転写されたテープその他の輸送可能な媒体であってもよい、ということは留意すべきである。例えば、法医科学ではよく知られたことであるが、指紋は一つの面から、それをその目的で設計されたプラスチックテープの断片と接触させることにより持ち上がる。本発明は指紋が転写されているテープまたは同様の媒体の断片を用いて採集したサンプルで実施することが可能であり、またさらに実験的証拠により以下に証明するように、少なくとも1年以上前に別の媒体に転写した指紋に適用することもできる。
図2aは本発明の態様に従って、表面12上の指紋10から細胞を採集する方法における主要な工程を概略的に説明する。第一工程は、既定容量の水溶液22、例えば、調製したプロティナーゼ溶液を、指紋10に及ぶ表面12に塗布することを含む。もしDNAを採集した細胞から抽出するのであれば、抽出工程を容易にするために、プロティナーゼが該溶液に含まれていてもよい。表面12に対する細胞20の接着がタンパク質付着により促進されるような場合(表面12がプラスチックまたはガラスである場合に特に強くなり得る)には、該プロティナーゼが表面からの細胞の脱離を促進するために有用ともなり得る。例えば、ハンクス平衡塩類溶液(BSS)(Cambrex Bioproductsから市販品として入手可能)などの水性バッファー中の、例えばトリプシン希釈液(Invitrogen(Carlsbad、California)から市販品として入手可能)が使用し得る。トリプシン含有平衡塩類溶液は実験室細胞培養分析の技術分野では周知であり、本明細書にさらに記載することはないであろう。
図面により具体的に説明すると、ピペット24は既定容量の水溶液22を配分するために使用する。該水溶液は既定容量の水溶液22の配分調整を可能とするEppendorf(商標)チューブなどの単一用途のサシェ(袋)またはその他の容器に供給し得ることが考えられる。工程2において、水溶液22はピペット24に取り込み、また工程1においてはそれを指紋10に塗布し、水溶液22の液滴26を指紋12上に置く。
高分子(以下、DNAであるものとする)の抽出と単離を容易にするために、また十分な濃度のDNAが取り込まれることを確かなものとするために、表面12に配分する水溶液22の容量を調整することが好ましい。例えば、0.1〜0.15 ミリリットルの水溶液22がこの目的に適った容量である。
工程3では、超音波ソニケーター28を用いて液滴26を攪拌し、細胞20を表面12から離脱させる。ソニケーター28のソノトロード30を液滴26の上に置く。ソノトロード30の先端が表面に接触しないように注意する;例えば、DNAseなどの汚染物質が液滴26内のサンプルに加わる可能性があるからである。
ソニケーター28は予め定めた計画に従って、液滴26に超音波を当てるように作動させる。例えば、周波数30キロヘルツの超音波を1〜2分間当て得る。約0.1〜0.15ミリリットルの液滴を表面上に沈積させる態様においては、直径0.5ミリメートル(mm)の先端を備えるソノトロードを使用し、125ワット/cm2の出力密度とすれば、実質的にすべての細胞20を代表的な指紋保持表面から放出させるために十分であることが判明している。ソノトロード先端の直径は、先端が液滴内での超音波の伝播を確かなものとするために液滴内に挿入し得るように、より小さな直径を必要とするより小さな容量の液滴容量の関数として選択し得る。もし機械的な保持体を使用しないのであれば、当初の超音波処理の期間中、液滴と接触させるソノトロード30を支えるために、使用者の手先の器用さが要求される。勿論、超音波処理の時間は、タンパク質の表面に対する親和性、および使用するプロティナーゼの量などにより、延長することも、短縮することもできる。
表面からの細胞の脱離を促進するためには、超音波だけで十分であることは評価に値する。結果として、表面から細胞を脱離させるために、水溶液22中にプロティナーゼを加えることは必ずしも必要ではない。
ソニケーター28の適用の後、砕片16と細胞20を含むサンプル保持液滴26は、工程4で採集する。図に示すように、ピペット24を用いてサンプル保持溶液を採集する。当然に、ピペット24を汚染させないように注意が必要である。水溶液22のサンプル保持液滴26は、次いで工程5において、粗製サンプルチューブ32に容れる。幾つかの態様において、サンプル保持液滴26を採集する手段は、粗製サンプルチューブ32に結合した吸引管など、異なるものでもよい。好ましくは、この粗製サンプルチューブ32は、Eppendorf(登録商標)チューブなどの扱いやすく、シールし易いものである。
図2bは表面12上の毛髪11から細胞を採集する方法の主要な工程を概略的に説明する。当業者は、毛髪と切り取った爪、眼がねと宝石、手に持つ道具、その他の身体の一部に接触するものの表面を含め、様々な皮膚細胞を見つけ出すことの期待される幾つもの表面の存在することを認識していよう。留意すべきことは、もし本発明による方法を用いて細胞が採集できるなら、実体のない指紋を提供する表面であっても、DNA分析に適切な細胞サンプルを提供し得ることである。
図2bの工程1〜5は本質的に図2aと同一である。唯一方法の異なるところは、指紋の代わりに毛髪の表面から細胞を回収することである。
図3a、bは、図2aまたは2bに示した方法に従い採集したサンプルからDNAを抽出する際の主要な工程を概略的に説明するものである。図3aの工程6に示すDNA抽出方法に従い、粗製サンプルチューブ32中のサンプルを、Chelex−100(Bio Rad Laboratoriesから市販品として入手可能)などのキレート試薬に接触させる。約0.15ml容量のChelex溶液を、きれいなピペット25によりサンプルに加え、工程7において、そのサンプルを長時間超音波処理し、細胞を溶解させる。
工程8において、溶解した内容物の粗製サンプルチューブ32をミクロ遠心機36に装着する。サンプルを遠心分離して濾過し、サンプルの残りからDNAを分離する。例えば、粗製サンプルチューブ32の内容物を12,000 rpmに3分間付せば十分である。
工程9および10において、粗製サンプルチューブ32の内容物の上清を取り出し、ピペット25によりきれいなサンプルチューブ33に移す。上清は精製DNAであり、これを分析用に回収する。
図3bに示した方法によるDNA抽出は、図3aを参照して上に記載した方法ごとに、同じ工程6および7に従う。しかし、粗製サンプルチューブ32の溶解した内容物は、工程8において(遠心分離する代わりに)クロマトグラフィー・カラム38(の投入口)に注ぐ。市販品として入手し得るクロマトグラフィー・カラムは、商品名Sephadex(商標)(Amersham Bioscience)およびSephacryl(商標)(Mobitec)として販売されているものである。工程9において、クロマトグラフィー・カラム38による濾過を手早く行うため、サンプルに陽圧を掛ける(例えば、1平方インチあたり5ポンドのオーダー)か、または3〜5分間遠心分離に付す。いずれの場合にも精製したDNAはクロマトグラフィー・カラム38(の排出口)から採集し、きれいなサンプルチューブ35に移す。
異なる容量のプロティナーゼ溶液22を、例えば、採集面の多孔度に応じて表面に塗布し得ることは認識し得よう。さらに、該溶液の内容物は、採集面に対する細胞20の表面タンパク質の親和性、皮膚接触痕跡の表面積、または非侵襲的に回収することのできる細胞の他のタイプに依存し得る。
この細胞採集技法が正確であることを証明するために、また同定されたDNA抽出法と矛盾のないことを確認するために、4種類の実験を実施した。
実験1:細胞除去の効率
この実験の目的は本発明による採集法を用いて、表面上に残る指紋サンプルを集めることであった。
実験1:細胞除去の効率
この実験の目的は本発明による採集法を用いて、表面上に残る指紋サンプルを集めることであった。
法医科学において、指紋は一般に拭き取り法(Van Oorchot RA, Jones MK. DNA fingerprinting from fingerprints. Nature 1997; 378 (6635): 767)を用いるか、または粘着テープ法(Zamir A, Springer E, Glattsten B. Fingerprints and DNA: STR typing of DNA extracted from adhesive tape after processing for fingerprints. Journal of Forensic Sciences 2000, 45(3): 687-68; US 6355439)を用いて採集する。
上記のように、本発明による試料採取技法に従い、液滴を維持することの可能な表面上に残された指紋から、指紋の領域に塗布した液滴に直接超音波エネルギーを当てることにより、砕片を採集する。超音波エネルギー伝達の媒体は、水、バッファー、または酵素溶液でよいが、しかし、次工程のDNA単離を促進するために、プロティナーゼを含むバッファーを使用することができる。
図1は倍率20倍の光学顕微鏡を通したプラスチック表面上に残された(指紋の)皮膚砕片16の像を示す。皮膚砕片の量は人によって、また指紋ごとに異なる。表面上に残された皮膚砕片の量は、皮膚のタイプおよび表面に加えられた指圧、また多くの他の因子によって変わる。超音波処理前後の皮膚砕片16および細胞20の画像は、トリプシン含有平衡塩類溶液を用いたとき、実質的にすべての細胞20がプラスチックから除去されることを示している。
実験2:2種類の異なる表面に残された指紋からのDNA試料採取と抽出
これらの実験の目的は、2種類の異なる共通の指紋保持面(ガラスおよびプラスチック)に残された指紋から抽出されたDNAの収量を比較することであった。
実験2:2種類の異なる表面に残された指紋からのDNA試料採取と抽出
これらの実験の目的は、2種類の異なる共通の指紋保持面(ガラスおよびプラスチック)に残された指紋から抽出されたDNAの収量を比較することであった。
表1で説明されるように、この手法により、異なる表面上で採集した指紋サンプルからDNAを抽出することができた。これらの実験では、2種類の異なる表面、ポリスチレンおよびガラスを使用した。これらの実験には12名のボランティアが参加した。4つの指紋を各ボランティアから採集した。各ボランティアからの2つの指紋はガラス表面上で採取し、また2つの指紋サンプルはプラスチック表面で採集した。48の指紋サンプルはすべてボランティアから採集した。
DNAはすべての指紋サンプルから、本発明試料採取法および抽出法により、採集、抽出した。DNAの定量(DNAの収量)はApplied Biosystemsから購入した標準的QuantiBlot Human Quantification Kitを用いて実施した。
このプロトコールは以下の理由で選択した:0.1 ngまでのDNAの収量を検出すること(指紋から抽出されるDNAは非常に低濃度のDNAしか含んでいない);また、このプロトコールはヒトのDNAのみを検出するように設計された(ヒトの表皮細胞から抽出されるDNAは潜在的に細菌および酵母からのDNA成分を含み得る)。指紋からのDNA試料採取と抽出の結果を表1に示す。
A欄はC欄、D欄およびE欄の各サンプルに対する行の番号を示す。
B欄は対照サンプル−標準ヒトDNA−のDNA量(ナノグラム)を表す。
C欄は対照(標準ヒトDNA)サンプルを表す。C欄の標準DNAサンプルの量は、D欄およびE欄の実験データとの比較のために含めてある。標準ヒトDNAはApplied Biosystemsから購入し、B欄に示す量に希釈した。
D欄はプラスチック表面上で採集した指紋サンプルからのヒトDNAの収量を表す。
E欄はガラス表面上で採集した指紋サンプルからのヒトDNAの収量を表す。
結論:ガラスまたはプラスチック表面に残されたすべての指紋サンプルから、本方法に従って採集し、抽出したDNA間に収量の有意な差は認められない。
実験3:長期間保存した指紋からのDNA試料採取および抽出
これらの実験の目的は、指紋の加齢(1年まで)の関数的性質として、細胞を採集し、細胞からのDNAを抽出する本方法の能力を判定することであった。
実験3:長期間保存した指紋からのDNA試料採取および抽出
これらの実験の目的は、指紋の加齢(1年まで)の関数的性質として、細胞を採集し、細胞からのDNAを抽出する本方法の能力を判定することであった。
これらの実験には22名のボランティアが参加した。4つの指紋サンプルを各ボランティアから採集した。総計88の指紋サンプルが採集された。各ボランティアからの第一の指紋サンプルは定量分析の日に採集した。各ボランティアからの第二の指紋サンプルを採集し、室温で1ヶ月間、密閉容器中で保存した。第三の指紋サンプルをボランティアから採集し、室温で3ヶ月間、密閉容器中で保存した。第四の指紋サンプルを各ボランティアから採集し、室温で12ヶ月間、密閉容器中で保存した。指紋サンプルはすべてプラスチック表面(ポリスチレン)上で採集した。
再度、Applied Biosystemsから購入した標準的QuantiBlot Human Quantification Kitを用いて、DNAの定量(DNAの収量)を実施した。
これら実験の結果を表2に示す。
表2は、同日、保存1ヵ月後、保存3ヵ月後、および保存12ヶ月後に採集した指紋サンプルから、本発明手法により抽出した場合のDNA収量の例を示す。
A欄はB〜G欄の行に番号を付す。
B欄は対照サンプル−標準ヒトDNA−の希釈レベル(ナノグラム)を表す。
C欄は対照(標準ヒトDNA)サンプルを表す。C欄の標準DNAサンプルの収量は、D〜G欄の実験データとの比較のために含めてある。標準ヒトDNAはApplied Biosystemsから購入し、B欄に示す量に希釈した。
D欄は同日に採取した指紋サンプルからのDNAの収量を示す。
E欄は室温に1ヶ月間保存した指紋サンプルからのDNAの収量を示す。
F欄は室温に3ヶ月間保存した指紋サンプルからのDNAの収量を示す。
G欄は室温に12ヶ月間保存した指紋サンプルからのDNAの収量を示す。
結論:プラスチック表面に残されたすべての指紋サンプルから採集、抽出したDNAの収量に有意な差は認められなかった。
実験4:切り取った爪からのDNAの抽出
これらの実験の目的は新しい採集抽出法を用いて、切り取った爪から抽出したDNAの収量を決定することであった。
実験4:切り取った爪からのDNAの抽出
これらの実験の目的は新しい採集抽出法を用いて、切り取った爪から抽出したDNAの収量を決定することであった。
ヒトの爪の組織それ自体はDNAを含まないことはよく知られているが、爪の表面および皮膚接触の痕跡を提供する同様の表面には、しばしば皮膚細胞などの細胞が見出されることがある。
これらの実験には19名のボランティアが参加した。2つの爪のサンプルを各ボランティアから採集した。総計38の爪サンプルが採集された。爪のサンプルは無菌のハサミを用いて、ボランティアから爪の小片を切り取ることにより採集した。爪の小片の重量は0.05〜0.2 mgで変動する。DNAは本発明の抽出法によりすべての爪サンプルから抽出された。
DNA収量の定量は、上記の理由でApplied Biosystemsから購入した標準的QuantiBlot Human Quantification Kitを用いて実施した。
これらの実験の結果を表3に示す。
A欄はB〜E欄の行に番号を付す。
B欄は対照サンプル−標準ヒトDNA−の希釈レベル(ナノグラム)を表す。
C欄は対照(標準ヒトDNA)サンプルを表す。C欄の標準DNAサンプルの量は、D〜E欄の実験データとの比較のために含めてある。標準ヒトDNAはApplied Biosystemsから購入し、B欄で確立した量に希釈した。
D欄およびE欄は爪サンプルからのDNAの収量を示す。
結論:本新規抽出法を用いて、指爪の小切片から十分なDNAを一般的に抽出し得る。
従って、本発明による方法は、有用な量のヒトDNAを、非侵襲的付随的起源、例えば、指紋、ヒト毛髪および切り取った爪などから高い信頼性で、迅速に採集することを可能とする。このことは先行技術の採集法および/または分析法を用いては決定し得ない付随的証拠について、法医科学者がより高い信頼性をもって研究することを可能とする。
上に記載した本発明の具体例は例示としてのみのものである。従って、本発明の範囲は添付の請求項の範囲によってのみ限定されるものである。
10 指紋
12 表面
20 細胞
22 水溶液
26 液滴
28 超音波ソニケーター
30 ソノトロード
12 表面
20 細胞
22 水溶液
26 液滴
28 超音波ソニケーター
30 ソノトロード
Claims (22)
- 高分子分析用表面に付着した細胞の採集方法であって、該方法は、
細胞が付着している表面に既定量の水溶液を塗布すること;
該細胞を該表面から脱離させるために十分な振動数、出力分布および持続時間の超音波を該溶液に施し、それによって細胞を懸濁状態で溶液中に採り入れること;そして
その溶液を採集すること;
を含む。 - 該水溶液が、該表面に細胞を結合させている細胞外表面上のタンパク質を破壊するためのバッファーおよび作用因子を含有している請求項1に記載の方法。
- 該作用因子がトリプシンである請求項2に記載の方法。
- 該溶液が0.05%(w/v)のトリプシンを含有している請求項3に記載の方法。
- 該溶液の約0.1ないし0.2mlを該表面に塗布する請求項4に記載の方法。
- 該水溶液を塗布することが、既定容量の水溶液を指紋の一部に塗布することを含む請求項1に記載の方法。
- 既定容量を塗布することが、指紋が転写されている表面に既定容量を塗布することを含む請求項6に記載の方法。
- 該水溶液を塗布することが、毛髪の少なくとも一部に既定容量の該水溶液を塗布することを含む請求項1に記載の方法。
- 該水溶液を塗布することが、切り取った爪の少なくとも一部に既定容量の該水溶液を塗布することを含む請求項1に記載の方法。
- 該水溶液を塗布することが、表面上に残された指紋、または指紋が転写されて長期間を経た表面に残された指紋に該水溶液を塗布することを含む請求項1に記載の方法。
- 当該期間が少なくとも1年間までである請求項10に記載の方法。
- 超音波を付すことが、超音波プローブのソニケーターを該水溶液に接触挿入し、超音波プローブを作動させて超音波を発生させることを含む請求項1に記載の方法。
- 該周波数が約20から50キロヘルツの間であり、出力密度が約100から150ワット/平方センチメートルの間であり、またその持続時間が約1から2分の間である請求項1に記載の方法。
- 採集した溶液中の細胞を溶解させ、高分子を回収する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
- 該溶解が超音波を用いて実施するものである請求項14に記載の方法。
- 該高分子がDNA分子である請求項15に記載の方法。
- 該水溶液がバッファーとタンパク質を分解し得る作用因子を含有している請求項16に記載の方法。
- 該作用因子がトリプシンである請求項17に記載の方法。
- 該溶液が0.05%(w/v)のトリプシンを含有している請求項18に記載の方法。
- 表面からDNAを採集する方法であって、
既定容量の水溶液を表面に塗布し、該表面に付着する細胞を採集すること;
該水溶液に超音波処理を施し、該表面から細胞を脱離すること;
該表面から該水溶液を採集すること;
採集した水溶液中の細胞を溶解させること;および
水溶液中の砕片からDNAを単離すること;
を特徴とする方法。 - 既定容量の水溶液を塗布することが、皮膚接触痕跡を保持する表面の一部に該水溶液を塗布することを含む請求項20に記載の方法。
- 既定容量の水溶液を塗布することが、指紋に該水溶液を塗布することを含む請求項21に記載の方法。
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