JP2008312308A - 振動型アクチュエータ - Google Patents

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Abstract

【課題】 ねじ部を介して嵌合している駆動子と移動子のうちの、駆動子を振動させることで、移動子を大きな力で前進させることができる振動型アクチュエータを提供することを目的としている。
【解決手段】 振動軸2には複数の圧電素子6,7,8,9が設けられ、圧電素子の電歪効果により駆動軸2が撓み振動し、圧電素子に与える駆動信号の位相を変えることにより、振動軸2に固定されている駆動子3が周回動作を行う。駆動子3には雄嵌合部13が形成されており、移動子4の中心穴4aの内周面には、雄嵌合部13と螺合する雌ねじ部14が形成されている。よって、駆動子3の周回動作によって移動子4が回転させられ、ねじの軌跡に応じて移動子4が軸方向へ移動させられる。
【選択図】図1

Description

本発明は、圧電素子などの駆動素子によって駆動子を加振させることで、ねじ部を介して駆動子と嵌合している移動子を移動させることができる振動型アクチュエータに関する。
以下の特許文献1と特許文献2には、ねじ部を介して互いに嵌合している駆動子と移動子および前記駆動子を加振する圧電素子を有する振動型アクチュエータが開示されている。
前記圧電素子で駆動子が振動させられると、駆動子の振動が移動子に伝達されて、移動子が回転させられる。移動子は駆動子とねじ部を介して嵌合しているため、移動子は自らの回転力で、ねじの軸方向へ移動させられる。この種の振動型アクチュエータは、移動子が比較的低速で回転しながら前記中心軸に沿う方向へ進退移動でき、且つ大きな駆動トルクを得て大きな進退移動力を発揮できる利点がある。
特許文献1に記載されている振動型アクチュエータは、固定体が雌ねじ部を有する筒状体で、移動体が前記筒状体の雌ねじ部に螺合する雄ねじを有する軸体である。筒状の固定体の端面に圧電素子が取り付けられており、この圧電素子で、筒状の固定体に進行波を発生させることで移動体に回転力を与え、回転する移動体をねじ部の軸方向へ移動させるというものである。
特許文献2に記載されている振動型アクチュエータは、筒状の駆動子の軸穴の両端部に雌ねじ部材が設けられ、筒状の駆動子の内部には、それぞれの雌ねじ部材に嵌合する雄ねじ部を有する軸状の移動子が設けられている。筒状の駆動子の外面には圧電素子が設けられ、この圧電素子によって、筒状の駆動子が撓むように変形させられて、雌ねじ部材に周回運動が与えられる。これにより、雌ねじ部材に嵌合している軸状の移動子が回転させられて、移動子が軸方向へ進行するというものである。
特公平7−40791号公報 米国特許明細書書第6,940,209号
特許文献1に記載された振動型アクチュエータは、筒状の固定体に対して、直径が変化する歪みを与えて回転方向の進行波を発生させるというものであるが、筒状体そのものに直径を変化させる歪みを与えるには圧電素子から固定体に過大な変形力を与えることが必要であり、エネルギーの利用効率がきわめて悪くなる。また、固定体に小さな歪みしか与えることができないため、固定体の雌ねじ部の形状と寸法および移動体の雄ねじ部の形状と寸法を、高精度に設定しないと、移動体が回転して進行するための微妙な嵌合状態を実現できない。
また、特許文献1には、雄ねじ部を有する移動体に撓み振動を与えて、振動している移動体自らが固定体の雌ねじ部に沿って進行することが記載されているが、どのようにして移動体自らが回転できて軸方向へ移動できるのかが不明であり、実現性があるとは考えられない。
次に、特許文献2に記載の振動型アクチュエータは、内部にねじ部材が設けられた筒状の駆動子に撓み変形を発生させて、軸状の移動子を進行させている。しかし、内部に穴を有する筒体は直径が大きいため、これに撓み変形を与えるには大きな力が必要であり、エネルギーの利用効率が大幅に低下する。また、筒状の駆動子の両端部に雌ねじ部材が設けられ、2つの雌ねじ部材が軸状の移動子の雄ねじ部に噛み合って、移動子に回転力および軸方向への進行力を与えている。よって、2つの雌ねじ部材の回転の位相がうまく合うように駆動子を撓み変形させることが必要であり、駆動子の寸法や形状を高精度に作ることが必要である。また、駆動子とこれに取り付けられる圧電素子との相対位置もきわめて高精度に設定することが必要になる。よって、よほど高精度に製造できない限り、エネルギーの利用効率は低くならざるを得ない。
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、エネルギーの利用効率が高く、難しい組み立て調整作業を不要にでき、しかも移動子を高精度に進行させることができる振動型アクチュエータを提供することを目的としている。
本発明の振動型アクチュエータは、固定部に支持されている振動軸と、この振動軸に固定された駆動子と、前記駆動子の外側に挿通された筒形状の移動子とを有し、
前記移動子に形成された穴の内周面に雌ねじ部が形成され、前記駆動子の外側に前記雌ねじ部に嵌合する雄嵌合部が設けられており、
前記振動軸を変形させて前記駆動子に周回運動を発生させる加振手段が設けられており、前記駆動子の周回運動によって前記移動子が回転させられ、前記移動子が雌ねじ部の軸方向へ移動させられることを特徴とするものである。
本発明の振動型アクチュエータは、振動軸を撓み変形させて駆動子に周回運動を与えているため、振動軸は比較的小さな加振力で大きな振幅で撓み変形でき、移動子に大きな力で回転力を与えて進行させることができる。よって、駆動素子から振動軸に与えるエネルギーの利用効率が高い。
なお、前記駆動子は、振動軸と別体に形成されて、振動軸が駆動子の中心穴内に挿入されて固定されていてもよいし、駆動子が振動軸の一部の外周に一体に形成されていてもよい。
すなわち、本発明は、前記加振手段には、振動軸に対して異なる方向へ撓み振動を生じさせる複数の圧電素子が設けられており、異なる方向への撓み振動の位相が相違するようにそれぞれの圧電素子が駆動されて、前記駆動子が周回運動させられるものである。
また、本発明は、前記加振手段から前記振動軸に対して、振動軸を含む振動系の固有振動数に相当する周波数の加振力が与えられるものである。
振動軸および駆動子を含む駆動系の固有振動数で、振動軸を振動させることにより、小さな加振力で駆動子に大きな振動を発生させることができ、エネルギーの利用効率を高くできる。
また、本発明は、前記振動軸は、一端が支持され、他端が自由端である構造とすることができる。
振動軸を片持ち支持状態で使用すると、構造を簡単にでき、しかも振動軸の自由端側を比較的大きな撓み量で周回運動させる動作モードも設定でき、この場合に、自由端側に駆動子を固定することで、移動子に対して大きな移動力を与えることができる。
また、本発明は、前記駆動子は、前記振動軸の撓み振動の節と節との中間に固定されているものである。振動軸の振動モードに応じて駆動子の固定位置を設定することで、移動子を効率よく回転させて軸方向へ進行させることができる。
本発明では、比較的小さい駆動力で、駆動子に効率よく周回運動を発生させて、移動子に移動力を与えることができる。また、駆動子を大きな半径で周回させることが可能であり、移動子に与える回転力およびこれに伴なう軸方向への移動力を大きく設定することが可能である。
図1は本発明の実施の形態の振動型アクチュエータを、移動子を取り外した状態で示す斜視図、図2は、振動型アクチュエータを軸中心と垂直な面で切断した横断面図、図3は振動型アクチュエータを軸中心を含む面で切断した縦断面図である。図4(A)(B)および図5(A)(B)は、振動型アクチュエータに設けられた加振手段を構成する各圧電素子へ結線構造を実施の形態別に示す説明図、図6は駆動回路の模式図、図7は圧電素子に与える駆動信号の位相を示す波形図である。図8(A)(B)と図9(A)(B)および図10は、振動軸の振動モードの説明図である。
図1に示す振動型アクチュエータ1は、振動軸2と、この振動軸2に固定された駆動子3と、駆動子3の外側に挿通される筒状の移動子4とを有している。図1では、駆動子3が振動軸2の全長寸法の半分の位置に固定されている。振動軸2は、図8ないし図10などに示す種々の共振モードによって撓み振動するため、前記駆動子3は、それぞれの共振モードにおいて、振動の節と節との間の中点において振幅が最も大きい場所を選んで固定されることが好ましい。
振動軸2は、金属または合成樹脂材料などの弾性材料で形成されており、外力が作用していないときに軸中心O1が直線となる中実軸である。この振動軸2は軸中心O1が湾曲するように撓み、その結果、振動軸2に固定されている駆動子3が周回運動をするものである。よって、図2に示す軸中心O1と直交するX−Y座標内のどの方向に対しても曲げ剛性がほぼ等しいことが好ましい。そのために、振動軸2は、その断面係数がどの方向に対しても一律であることが好ましく、振動軸2の断面形状は、中実円形または中空円形であることが好ましい。
図2に示す実施の形態の振動型アクチュエータ1では、振動軸2の断面形状が中実円形であり、その表面に、X軸に平行で且つ軸方向に延びる取付け平面2a,2bと、Y軸に平行で且つ軸方向に延びる取付け平面2c,2dとが形成されている。図1に示すように、振動軸2は図示下端部が固定台5に保持されており、振動軸2の図示上端部が自由端である。
振動軸2の取付け平面2aには圧電素子6が取り付けられ、取付け平面2bには圧電素子7が取り付けられている。また取付け平面2cには圧電素子8が、取付け平面2dには圧電素子9が取り付けられている。それぞれの圧電素子6,7,8,9は、幅寸法が一定であり、軸中心O1に沿って直線的に延びている。
それぞれの圧電素子6,7,8,9は電歪効果を発揮する圧電セラミックで形成されている。それぞれの圧電素子6,7,8,9の誘電分極の向きは厚み方向である。
図2と図3に示すように、前記駆動子3は金属で中空に形成されており、その内周面と、振動軸2の外面との間には絶縁部材11が設けられている。絶縁部材11は、合成樹脂で形成されたスペーサである。または絶縁部材11は、駆動子3の内周面と振動軸2の外面とを接着固定するための接着剤層であってもよい。前記絶縁部材11によって、それぞれの圧電素子6,7,8,9の表面に設けられた電極と、金属製の駆動子3との間の電気的な絶縁を確保することができる。駆動子3の外周面には雄嵌合部13が一体に形成されている。この雄嵌合部13は、軸中心O1を中心とする螺旋形状の雄ねじ部である。
円筒状の移動子4は金属製であり、その中心穴4aの内周面に雌ねじ部14が軸方向へ連続的に形成されている。雌ねじ部14は移動子4の軸方向の全長にわたって形成されている。または雌ねじ部14は移動子4の軸方向の一部に形成されている。移動子4は慣性力が大きいことが好ましく、そのためには質量が大きいことが好ましい。移動子4は、その質量が、振動軸2の質量と絶縁部材11および駆動子3の質量の総計、すなわち可動部分の質量の総計よりも大きいことが好ましい。
移動子4の中心穴4aの内周面に形成された雌ねじ部14は、前記駆動子3の外周面に形成された雄嵌合部13の雄ねじ部と同じピッチを有するが、雌ねじ部14の有効径は、雄嵌合部13である雄ねじ部の有効径よりもやや大きい。そのため、図2および図3に模式的に示すように、移動子4の雌ねじ部14が、駆動子3の雄嵌合部13に嵌合したときに、移動子4は軸中心O1と直交する方向へ若干のがたつきを有している。ただし、移動子4を軸中心O1に沿う方向へ移動させようとしても、雌ねじ部14のねじ山が、雄嵌合部13のねじ山を越えることはない。よって、移動子4は駆動子3に対して軸方向へのがたつきを生じるように嵌合されているが、移動子4が駆動子3に対して軸方向へ抜き出ることはない。
図6は、駆動回路20の一部を示している。駆動回路20にはA相の駆動信号生成部(交流電圧発生部)21とB相の駆動信号生成部(交流電圧発生部)22が設けられている。この実施の形態の振動型アクチュエータ1では、それぞれの圧電素子6,7,8,9と前記駆動回路20とで加振手段が構成されている。図7に示すように、A相の駆動信号(電圧)とB相の駆動信号(電圧)の変化は三角関数に近似しており、B相はA相よりも位相が90度進んでいる。なお、前記A相の駆動信号とB相の駆動信号とが、位相が相違する矩形波であってもよい。
図4(A)は、振動軸2が金属製であって振動軸2が接地電位とされる結線構造を示している。
圧電素子6の誘電分極方向は、厚み方向であり、−Y方向である。圧電素子6の厚み方向の一方の面に電極6aが、他方の面に電極6bが設けられている。電極6aは振動軸2とは逆側である外側に向けられている。電極6bは振動軸2に形成された取付け平面2aに向けられており、電極6bと振動軸2とが電気的に接続されて電極6bが接地電位となっている。
圧電素子7の誘電分極方向は厚み方向であり、−Y方向である。圧電素子7の一方の面に設けられた電極7aは外側に向けられ、他方の面に設けられた電極7bは取付け平面2bに向けられて、振動軸2と電気的に接続されて接地電位となっている。
圧電素子8の誘電分極方向は、厚み方向であり、+X方向である。外側に向く面には電極8aが設けられ、振動軸2の取付け面2cに向く面には電極8bが形成されている。電極8bと振動軸2は電気的に接続されており接地電位となっている。圧電素子9の誘電分極方向は厚み方向であり、+X方向である。外側に向けられる面に電極9aが設けられ、振動軸2の取付け平面2dに向けられる面に電極9bが形成されている。電極9bと振動軸2とは電気的に接続されて電極9bが接地電位となっている。
図4(A)に示す結線構造では、図6に示すA相の駆動信号生成部21からA+相の駆動信号(電圧)が圧電素子6の外側の電極6a、および圧電素子7の外側の電極7aに与えられている。また、B相の駆動信号生成部22からB+相の駆動信号(電圧)が、圧電素子8の外側の電極8aと圧電素子9の外側の電極9aに与えられている。また、A相の駆動信号生成部21のA−相と、B相の駆動信号生成部22のB−相が接地されている。
振動軸2が接地電位であり、且つA相の駆動信号生成部21のA+相と、B相の駆動信号生成部22のB+相が、全て圧電素子6,7,8,9の外側の電極6a,7a,8a,9aに直接に接続された構造であるため、結線構造が非常に簡単である。
次に、図4(A)に示す結線構造とした上記振動型アクチュエータ1の動作について説明する。
図4(A)に示す結線構造において、駆動信号生成部21と駆動信号生成部22から与えられる駆動信号によって、圧電素子6,7,8,9が、軸中心O1に沿う向きの伸び歪みと収縮歪みを交互に発生する。それぞれの圧電素子の伸び歪みと収縮歪みのタイミングは、駆動信号生成部21と駆動信号生成部22のそれぞれの周波数などに応じて種々のモードが有りえる。ただし、駆動信号生成部21と駆動信号生成部22のそれぞれの駆動信号は、圧電素子6と圧電素子7とで伸びと収縮の位相が互いに180度相違し、圧電素子8と圧電素子9とで伸びと収縮の位相が互いに180度相違し、さらに圧電素子6,7と圧電素子7,8とで歪みの位相が互いに90度相違するように設定される。
例えば図7の時刻(a)では、圧電素子6が軸中心O1に沿う方向へ伸び歪みを発生し、圧電素子7が軸中心O1に沿う方向へ収縮歪みを発生する。よって、振動軸2は+Y方向に凸側が向くように撓み変形する。前記時刻(a)から位相が90度進んだ時刻(b)では、圧電素子9が軸中心O1に沿う方向へ伸び歪みを発生し、圧電素子8が軸中心O1に沿う方向へ収縮歪みを発生する。よって、振動軸2は−X方向に凸側が向くように撓み変形する。
このようにしてA相とB相の駆動信号(電圧)が進んでいくと、振動軸2は撓み変形の凸側が反時計方向へ周回し、この撓み変形の移動に伴なって駆動子3が軸中心O1の回りを反時計方向へ周回運動する。このとき、駆動子3の雄嵌合部13から移動子4の雌ねじ部14に対して反時計方向への回転力が与えられる。よって、移動子4は上方から見て反時計方向へ回転させられながら、雌ねじ部14の螺旋軌跡にしたがって図1の図示上方へ進行していく。
また、図4(A)において、圧電素子6,7の電極6a,7aにB+相の駆動信号(電圧)が与えられ、圧電素子8,9の電極8a,9aにA+相の駆動信号(電圧)が与えられるように結線が切換えられると、振動軸2は撓み変形の凸側が時計方向へ周回し、駆動子3が軸中心O1の回りを時計方向へ周回運動する。このとき、駆動子3の雄嵌合部13から移動子4の雌ねじ部14に対して時計方向への回転力が与えられる。よって、移動子4は上方から見て時計方向へ回転させられながら、雌ねじ部14の螺旋軌跡にしたがって図1の図示下方へ向けて進行していく。
図4(B)に示す結線構造は、図4(A)と同様に振動軸2が接地電位とされている。圧電素子6,7,8,9のそれぞれの誘電分極方向は厚み方向であり、且つ振動軸2に向けられている。全ての圧電素子6,7,8,9を、その誘電分極方向が振動軸2の側に向くように取り付ければよいため、圧電素子6,7,8,9に対する結線の間違いが生じにくい。
A+相の駆動信号(電圧)は、圧電素子7の外側に向く電極7aに与えられるとともに、位相反転回路23で位相が反転させられて圧電素子6の外側の電極6aに与えられる。B+相の駆動信号(電圧)は、圧電素子9の外側の電極9aに与えられるとともに、位相反転回路24で位相が反転させられて圧電素子8の外側の電極8aに与えられる。A−相とB−相は接地されている。
図4(B)に示す結線構造では、例えば、図7に示すA相の駆動信号とB相の駆動信号が進行していくと、振動軸2の撓みの凸側が上方から見て時計回りに周回する。よって、駆動子3によって移動子4が上から見て時計方向へ回動させられて、図1の下方向へ移動させられる。
図4(B)において、A+相とB+相の結線を入れ替えるように切換えると、振動軸2の撓みの凸側が上方から見て反時計回りに周回する。駆動子3によって移動子4が上から見て反時計方向へ回動させられて、図1の上方向へ移動させられる。
図5(A)に示す結線構造は、圧電素子6,7,8,9の誘電分極の向きが図4(A)と同じである。圧電素子6と圧電素子7の外側の電極6a,7aにはA+相の駆動信号(電圧)が与えられ、圧電素子8と圧電素子9の外側の電極8a,9aには、B+相の駆動信号(電圧)が与えられている。そして、圧電素子6と圧電素子7の振動軸2に向けられた電極6b,7bには、A+相の駆動信号が位相反転回路25によって位相が反転されて与えられている。また、圧電素子8と圧電素子9の振動軸2に向けられた電極8a,9aには、B+相の駆動信号が位相反転回路26によって位相が反転させられて与えられている。
図5(A)に示す結線構造では、振動軸2の撓みの凸側が上から見て反時計方向へ周回運動し、A+相とB+相を入れ替えるように切換えると、上から見て時計方向へ周回運動する。
図5(A)に示す結線構造では、圧電素子6,7の電極6a,7aにA+相の駆動信号が与えられ、電極6b,7bにA+相と位相が180度ずれて反転した駆動信号が与えられる。そのため、圧電素子6の電極6aと電極6bとの間、および圧電素子7の電極7aと電極7bとの間には、図4(A)の結線構造での電極6aと電極6bとの間に作用する電圧の2倍の電圧が与えられる。よって、振動軸2に大きな撓み変形を与えることができる。
図5(B)に示す結線構造は、圧電素子6,7,8,9の誘電分極方向が図4(B)の結線構造と同じである。よって、全ての圧電素子6,7,8,9を、その誘電分極方向が振動軸2に向けられて取り付ければよいため、圧電素子6,7,8,9の取付け方向を誤ることがなく、また結線を誤ることが生じにくくなり、組み立てミスが生じにくい。
図5(B)では、圧電素子6,7の電極6a,7bに、A+相の駆動信号が位相反転回路27によって位相が反転されて与えられ、電極6b,7aに、A+相の駆動信号が与えられる。また、圧電素子8,9の電極8a,9bに、B+相の駆動信号が位相反転回路28によって位相が反転されて与えられ、電極8b,9aにB+相の駆動信号が与えられる。そのため、それぞれの圧電素子6,7,8,9の2つの電極間に与えられる電圧が、図4(B)の結線構造の2倍になり、振動軸2の撓み変形量を大きくできる。
図5(A)(B)に示す結線構造は、振動軸2が合成樹脂などの絶縁性の材料で形成されている場合にも実施可能である。
前記A相の駆動信号生成部21およびB相の駆動信号生成部22に設けられた発振回路により、A+相とB+相は所定の周波数の電圧変化を伴なう駆動信号となる。このA+相の駆動信号とB+相の駆動信号の周波数は、振動軸2を固有振動数で撓み振動させることができるように設定される。固有振動数で振動させることにより、振動軸2を効率よく振動させることができる。
振動軸2の撓みの振動周波数は、振動軸2の質量および各圧電素子6,7,8,9の質量と駆動子3の質量および絶縁部材11の質量などの可動部の質量の総和と、駆動軸2が撓み変形する際の弾性係数に応じて決まる。振動軸2は、筒状の移動子4に比べて直径が十分に小さい。よって断面係数が小さくなり、小さい駆動力で共振させることが可能である。
移動子4は、振動軸2と駆動子3および絶縁部材11の質量の総和よりも大きな質量を有している。振動軸2が振動を開始したときには、移動子4は慣性力で停止しており、振動軸2が振動を開始し、周回動作する駆動子3から回転力が与えられると、移動子4は慣性モーメントにより安定した回転を発生して軸方向へ進行できるようになる。よって、実際に振動軸2に与えるべき共振周波数は、振動軸2と圧電素子6,7,8,9および駆動子3と絶縁部材11の質量の総和に、さらに移動子4の質量および慣性モーメントを加味して決定される。
図10は、振動軸2の中心軸O1の延長線をWで示しており、振動軸2が所定の周波数で共振しているときの前記延長線Wの変形状態を曲線で示している。前記振動型アクチュエータ1では、振動軸2が固有振動数で撓み振動するのみならず、振動軸2が位相の相違するA+相の駆動信号とB+相の駆動信号とで共振させられる。そのため、所定の周波数で共振する振動軸2は、図10に示す延長線Wの変形曲線に沿うようにして中心線Oの回りを周回運動する。
図8(A)(B)および図9(A)(B)に示すそれぞれの共振モード(i)(ii)(iii)(iv)では、図10に示すように、いずれも駆動子3が、振動の節と節との中間点に設けられ、振動子3が最も振幅の大きい場所で周回運動できるようになっている。
図8(A)(B)は、振動軸2が片持ち保持されているときの共振モード(i)(ii)を示している。図8(A)に示す共振モード(i)では、駆動子3が振動軸2の自由端に固定されている。また振動軸2の長さが共振波長の1/4に相当している。図8(B)に示す共振モード(ii)では、駆動子3が、振動軸2の長さの1/3の位置に設けられており、振動軸2の長さが共振波長の3/4に相当している。なお、図1に示すように、駆動子3が振動軸2の長さの中点に設けられている場合に、振動軸2を共振波長の1/2の長さに設定することが可能である。
図9(A)(B)に示す共振モード(iii)(iv)は、いずれも振動軸2が両端で単純支持されている。この単純支持は、振動軸2の両端部を、ボールやくさび状の突起で保持することで実現できる。
図9(A)に示す共振モード(iii)では、振動軸2の長さが共振波長の1波長に相当し、図9(B)に示す共振モード(iv)では、振動軸2の長さが共振波長の1/2に相当する。
本発明の実施の形態の振動型アクチュエータを、移動子を外した状態で示す斜視図、 振動型アクチュエータの横断面図、 振動型アクチュエータの縦断面図、 (A)(B)は、圧電素子の分極方向と、駆動回路と圧電素子との結線構造を示す説明図、 (A)(B)は、圧電素子の分極方向と、駆動回路と圧電素子との結線構造を示す説明図、 A相とB相の駆動信号を生成する駆動回路の説明図、 A相の駆動信号とB相の駆動信号の波形図、 (A)(B)は、振動型アクチュエータの共振モードの説明図、 (A)(B)は、振動型アクチュエータの共振モードの説明図、 振動型アクチュエータの共振モードの説明図、
符号の説明
1 振動型アクチュエータ
2 振動軸
2a,2b,2c,2d 取付け平面
3 駆動子
4 移動子
4a 中心穴
5 固定台
6,7,8,9 圧電素子
6a,6b,7a,7b,8a,8b,9a,9b 電極
11 絶縁部材
13 雄嵌合部(雄ねじ部)
14 雌ねじ部
20 駆動回路

Claims (5)

  1. 固定部に支持されている振動軸と、この振動軸に固定された駆動子と、前記駆動子の外側に挿通された筒形状の移動子とを有し、
    前記移動子に形成された穴の内周面に雌ねじ部が形成され、前記駆動子の外側に前記雌ねじ部に嵌合する雄嵌合部が設けられており、
    前記振動軸を変形させて前記駆動子に周回運動を発生させる加振手段が設けられており、前記駆動子の周回運動によって前記移動子が回転させられ、前記移動子が雌ねじ部の軸方向へ移動させられることを特徴とする振動型アクチュエータ。
  2. 前記加振手段には、振動軸に対して異なる方向へ撓み振動を生じさせる複数の圧電素子が設けられており、異なる方向への撓み振動の位相が相違するようにそれぞれの圧電素子が駆動されて、前記駆動子が周回運動させられる請求項1記載の振動型アクチュエータ。
  3. 前記加振手段から前記振動軸に対して、振動軸を含む振動系の固有振動数に相当する周波数の加振力が与えられる請求項1または2記載の振動型アクチュエータ。
  4. 前記振動軸は、一端が支持され、他端が自由端である請求項1ないし3のいずれかに記載の振動型アクチュエータ。
  5. 前記駆動子は、前記振動軸の撓み振動の節と節との中間に固定されている請求項1ないし4のいずれかに記載の振動型アクチュエータ。
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