JP2008307458A - 硫化水素処理装置及び硫化水素処理方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】十分に省スペース化を実現できる硫化水素処理装置及び硫化水素処理方法。
【解決手段】本発明の硫化水素処理装置10Aは、被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するためのものであって、被処理ガスと、硫化水素の分解能を有するキレート剤を含有する吸収液とを接触させると共に、吸収液を酸化処理する酸素含有ガスと、吸収液とを接触させる気液接触手段1Aと、上記酸素含有ガスを気液接触手段1Aに供給する酸素含有ガス供給ラインL5と、を備える。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の硫化水素処理装置10Aは、被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するためのものであって、被処理ガスと、硫化水素の分解能を有するキレート剤を含有する吸収液とを接触させると共に、吸収液を酸化処理する酸素含有ガスと、吸収液とを接触させる気液接触手段1Aと、上記酸素含有ガスを気液接触手段1Aに供給する酸素含有ガス供給ラインL5と、を備える。
【選択図】図1
Description
本発明は、被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するための硫化水素処理装置及び硫化水素処理方法に関する。
生ごみなどの有機性廃棄物が発酵することにより、バイオガスと呼ばれる可燃性ガスが発生する。このバイオガスは、主成分として、メタン、二酸化炭素などを含む他、一般に少量の硫化水素を含んでいる。バイオガスに含まれる硫化水素は、酸性雨などの環境問題や燃焼装置の腐食問題の原因となるため、バイオガスを燃料ガスとして使用する場合等には、硫化水素を事前に除去する必要がある。
硫化水素を含有するガスから硫化水素を除去する方法についてこれまで種々検討がなされている。例えば、特許文献1には、第2鉄キレートを含有する吸収液と硫化水素含有ガスとを気液接触させて硫化水素を除去する湿式酸化法が記載されている。
特開昭59−112824号公報
ところで、上記のような湿式酸化法にあっては、吸収液による硫化水素の吸収反応と、吸収液の再生反応とが生じる。それぞれの反応は、下記式のように表される。下記式中、Xはキレートを示す。
吸収液による硫化水素の吸収反応:
2[FeX2]+ + 3H2S → Fe2S3 + 4X− + 6H+ …(1)
吸収液の再生反応:
Fe2S3 + 4X− + 6H+ + 3/2O2 → 2[FeX2]+ + 3S + 3H2O …(2)
吸収液による硫化水素の吸収反応:
2[FeX2]+ + 3H2S → Fe2S3 + 4X− + 6H+ …(1)
吸収液の再生反応:
Fe2S3 + 4X− + 6H+ + 3/2O2 → 2[FeX2]+ + 3S + 3H2O …(2)
従来の湿式酸化法に使用する処理装置は、上記式(1)の吸収反応を生じさせる吸収塔と、上記(2)式の再生反応を生じさせる再生槽とを別々に備えるものであり、当該処理装置の省スペース化の点において改善の余地があった。
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、十分に省スペース化を実現できる硫化水素処理装置及び硫化水素処理方法を提供することを目的とする。
本発明の硫化水素処理装置は、被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するためのものであって、被処理ガスと、硫化水素の分解能を有するキレート剤を含有する吸収液とを接触させると共に、吸収液を酸化処理する酸素含有ガスと、吸収液とを接触させる気液接触手段と、上記酸素含有ガスを気液接触手段に供給する酸素含有ガス供給ラインと、を備える。
本発明の硫化水素処理装置にあっては、気液接触手段において、被処理ガスと吸収液とを気液接触させることにより上記式(1)の吸収反応を生じさせると共に、酸素含有ガスと吸収液とを気液接触させることにより上記式(2)の再生反応を生じさせることができる。本発明の硫化水素処理装置によれば、これらの反応を生じさせるための反応塔や反応槽を別々に設ける必要がないため、処理装置全体の十分な省スペース化を実現できる。
本発明の硫化水素処理装置においては、吸収液の酸化処理を行う酸素含有ガスの酸素濃度は、空気の酸素濃度よりも高いことが好ましい。従来、吸収液を再生させるための酸化剤として、空気が用いられることが一般的であるところ、酸素濃度が空気のそれよりも高い酸素含有ガスを使用することで、吸収液の再生反応速度が高まり、気液接触手段として一層小型のものを使用しても当該再生反応を十分に進行させることができる。吸収液の再生反応速度は、吸収液への酸素の溶解速度に支配され、この溶解速度は、酸素含有ガスの酸素分圧に関係する。したがって、酸素含有ガスとして酸素濃度が高いものを使用するに従い、酸素の溶解速度が高まり、吸収液の再生反応速度も高くなる。
更に、本発明の硫化水素処理装置は、気液接触手段における処理を経た酸素含有処理ガスから酸素を分離する酸素分離手段を更に備え、酸素含有ガス供給ラインは、酸素分離手段と、気液接触手段とを連結し、酸素分離手段で分離された酸素を含有する分離ガスを、酸素含有ガスの少なくとも一部として気液接触手段に供給するものであることが好ましい。かかる構成を採用することにより、酸素含有処理ガス中に含まれる酸素を有効利用することができる。
本発明の硫化水素処理方法は、被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するためのものであって、被処理ガスと、硫化水素の分解能を有するキレート剤を含有する吸収液とを接触させると共に、吸収液を酸化処理する酸素含有ガスと、吸収液とを接触させる気液接触工程と、上記酸素含有ガスを気液接触工程に供する酸素含有ガス供給工程と、を備える。
本発明の硫化水素処理方法にあっては、気液接触工程において、被処理ガスと吸収液とを気液接触させることにより上記式(1)の吸収反応を生じさせると共に、酸素含有ガスと吸収液とを気液接触させることにより上記式(2)の再生反応を生じさせることができる。本発明の硫化水素処理方法によれば、これらの反応を生じさせるための反応塔や反応槽を別々に設ける必要がないため、処理装置全体の十分な省スペース化を実現できる。
本発明によれば、十分に省スペース化を実現できる硫化水素処理装置及び硫化水素処理方法が提供される。
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、各図において、同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る硫化水素処理装置を示す概略構成図である。同図に示す硫化水素処理装置10Aは、例えば、有機性廃棄物処理施設のバイオガスに含まれる硫化水素の除去処理に採用されるものである。なお、ここでいうバイオガスとは、有機性廃棄物のメタン発酵により生じるガスを意味する。バイオガスは、一般に、硫化水素を数百〜数千体積ppm含有し、主成分はメタン(50〜65体積%)及び炭酸ガス(35〜50体積%)である。
図1は、本発明の第1実施形態に係る硫化水素処理装置を示す概略構成図である。同図に示す硫化水素処理装置10Aは、例えば、有機性廃棄物処理施設のバイオガスに含まれる硫化水素の除去処理に採用されるものである。なお、ここでいうバイオガスとは、有機性廃棄物のメタン発酵により生じるガスを意味する。バイオガスは、一般に、硫化水素を数百〜数千体積ppm含有し、主成分はメタン(50〜65体積%)及び炭酸ガス(35〜50体積%)である。
硫化水素処理装置10Aは、気液接触槽(気液接触手段)1Aと、酸素分離器2とを備えると共に、酸素分離器2と気液接触槽1Aと連結する酸素循環ライン(酸素含有ガス供給ライン)L5など気体や液体を移送する複数のラインを備える。
気液接触槽1Aは、ラインL1を通じて導入される被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するための槽であり、硫化水素の分解能を有するキレート剤を含有する吸収液が収容されている。この気液接触槽1Aには、被処理ガスを導入するラインL1、槽内の吸収液のpH等を調整するためのpH調整剤等を導入するラインL2及び酸素ガスを導入する酸素循環ラインL5が接続されていると共に、気液接触処理を経た酸素含有処理ガスを排出するラインL3及び気液接触処理により生じた硫黄を含有する硫黄スラッジSを底部から排出するラインL4が接続されている。
気液接触槽1Aは、ラインL1を通じて導入される被処理ガスを散気するための散気板1aと、酸素循環ラインL5を通じて導入される酸素ガスを散気するための散気板1bとを槽内に備えている。散気板1aは、気液接触槽1A内の高さ方向の略中央の位置に配置されており、散気板1bは、散気板1aよりも上方に配置されている。かかる構成により、被処理ガスと吸収液とがまず接触し、吸収反応後の吸収液と散気板1bからの酸素ガスとが効率的に接触するようになっている。
また、気液接触槽1Aの下方部分には、吸収液の再生反応によって生成した硫黄単体を沈降させる硫黄沈降部1cが設けられている。硫黄沈降部1cの底部に沈殿した硫黄スラッジSは、ラインL4を通じて系外に排出される。
酸素分離器2は、ラインL3を通じて導入される酸素含有処理ガスに含まれる酸素を分離するための装置である。酸素分離器2は、酸素のみを透過する酸素分離膜2aを有しており、分離された酸素ガスは酸素循環ラインL5を通じて気液接触槽1Aへと返送される。なお、気液接触槽1A内においては、吸収液の再生反応によって酸素が消費され、酸素分離器2で分離される酸素量は徐々に減少するので、気液接触槽1A内における処理に必要な酸素が不足するような場合は、酸素循環ラインL5に接続されたラインL6を通じて酸素ガスを補給できるようになっている。一方、酸素が分離された精製ガスは、ラインL7を通じて排出される。
次に、本実施形態に係る硫化水素処理装置10Aによって被処理ガスから硫化水素を除去する方法について説明する。
まず、吸収液が収容された気液接触槽1A内において、散気板1aからの被処理ガスと吸収液とを接触させると共に、散気板1bからの酸素ガスと吸収液とを接触させる(気液接触工程)。
気液接触槽工程で使用する吸収液としては、第2鉄キレート水溶液が好ましい。この第2鉄キレート水溶液は、以下のようにして調製することができる。即ち、まず、第1鉄塩にヒドロキシ酢酸とクエン酸及び/又はギ酸とを混合したキレート剤が添加されてなる第1鉄キレート水溶液を調製する。この第1鉄キレート水溶液に安定剤としてのアスコルビン酸を添加した後、pHを7〜8に調整し、これを酸素ガスで酸化することによって第2鉄キレート水溶液を得る。気液接触槽1A内においては、第2鉄キレート水溶液のpHは、5.5〜8となるように調整される。なお、第2鉄キレート水溶液は、褐色透明な液体である。
第2鉄キレート水溶液の第2鉄濃度は、硫化水素の吸収反応を効率的に進行させる観点から、0.001〜0.2モル/Lであることが好ましく、0.05〜0.1モル/Lであることがより好ましい。第2鉄キレート水溶液に含まれる第2鉄のモル数MAとキレート剤のモル数MBとの比(MA/MB)は、0.4〜2であることが好ましい。ここで、キレート剤のモル数MBは、ヒドロキシ酢酸、クエン酸及びギ酸の合計モル数を意味する。
また、第2キレート水溶液に含まれるヒドロキシ酢酸のモル数MCと、クエン酸及び/又はギ酸のモル数MDとの比(MC/MD)は、0.25〜4であることが好ましい。また、第2キレート水溶液に含まれる安定化剤のアスコルビン酸のモル数MEと第2鉄のモル数MAとの比(ME/MA)は、2〜5であることが好ましい。
第2鉄キレート水溶液にアスコルビン酸を安定化剤として添加することにより、これを吸収液として使用した場合、オキシ水酸化鉄(FeOOH)の析出を防止できる。このことにより、高純度の硫黄単体を生成させることができると共に、吸収液に含まれるFe(鉄)の消費量を削減できる。
気液接触槽1Aにおいて、被処理ガスと吸収液とを接触させることにより下記式(1)の吸収反応を生じさせると共に、酸素ガスと吸収液とを接触させることにより下記式(2)の再生反応を生じさせることができる。下記式中、Xはキレートを示す。
吸収液による硫化水素の吸収反応:
2[FeX2]+ + 3H2S → Fe2S3 + 4X− + 6H+ …(1)
吸収液の再生反応:
Fe2S3 + 4X− + 6H+ + 3/2O2 → 2[FeX2]+ + 3S + 3H2O …(2)
吸収液による硫化水素の吸収反応:
2[FeX2]+ + 3H2S → Fe2S3 + 4X− + 6H+ …(1)
吸収液の再生反応:
Fe2S3 + 4X− + 6H+ + 3/2O2 → 2[FeX2]+ + 3S + 3H2O …(2)
気液接触槽1AからラインL3を介して酸素含有処理ガスを酸素分離器2に導入し、酸素含有処理ガスから酸素を分離することにより、分離酸素ガスを得ると共に、酸素含有処理ガスから酸素が分離除去された精製ガスを得る(酸素分離工程)。分離酸素ガスの酸素濃度は、20体積%以上であることが好ましく、90体積%であることがより好ましい。分離酸素ガスの酸素濃度が20体積%未満であると、20体積%以上である場合と比較し、気液接触槽1Aにおける吸収液の再生反応速度が不十分となりやすい。
酸素分離器2によって分離した分離酸素ガスを酸素循環ラインL5を通じて気液接触槽1Aに供給する(酸素含有ガス供給工程)。このとき、酸素循環ラインL5に接続されたラインL6から必要に応じて酸素ガスを補給してもよい。補給用の酸素ガスとしては、従来公知の酸素製造法(例えば、PSA法、深冷法、分離膜法)によって得られたものを使用できる。
一方、ラインL7を通じて排出される精製ガスは、燃料ガスなど種々の用途に利用される。なお、精製ガスに対してはその用途に応じて更なる処理を施してもよい。
本実施形態に係る硫化水素処理装置10Aによれば、硫化水素の吸収反応及び吸収液の再生反応を気液接触槽1A内で生じさせることができ、吸収塔や再生槽を別々に設ける必要がない。また、硫黄沈降部1cにおいて硫黄スラッジSの分離除去も行うことができるため、硫黄分離槽を別途設ける必要がない。このように本実施形態の硫化水素処理装置によれば、処理装置全体の十分な省スペース化を実現できる。
また、本実施形態に係る硫化水素処理装置10Aでは、吸収液を再生させるための酸化剤として、一般に使用される空気の代わりに酸素分圧が空気の約5倍の酸素ガスを使用することで、吸収液の再生反応速度が高まるため、気液接触槽1Aの内容積を過度に大きなものとしなくても当該再生反応を十分に進行させることができる。
また、本実施形態に係る硫化水素処理装置10Aによれば、酸素分離器2で酸素含有処理ガスから酸素ガスを分離し、これを酸素循環ラインL5を通じて気液接触槽1Aに供給することができるため、吸収液の再生反応によって消費された酸素ガスの補給用に製造又は購入する酸素量を削減できる。
更に、吸収液の再生に酸素ガスを使用することで、再生反応によって生成する硫黄スラッジSが沈降しやすくなるという効果が奏される。これは、酸素ガスによって硫黄単体がフロックを作りやすくなるためと考えられる。かかる効果によって、気液接触槽1A内に設ける硫黄沈降部1cの内容積が小さいものであっても、十分に硫黄スラッジSを分離除去することができる。
(第2実施形態)
図2は、本発明の第2実施形態に係る硫化水素処理装置を示す概略構成図である。同図に示す硫化水素処理装置10Bは、第2実施形態に係る硫化水素処理装置10Aの気液接触槽1Aの代わりに、気液接触手段として向流型の気液接触塔1B、吸収液の再生反応によって生じる硫黄単体を分離するための硫黄分離槽3及び吸収液を循環させるためのラインL8,L9及びポンプPを備える点において硫化水素処理装置10Aと相違する。
図2は、本発明の第2実施形態に係る硫化水素処理装置を示す概略構成図である。同図に示す硫化水素処理装置10Bは、第2実施形態に係る硫化水素処理装置10Aの気液接触槽1Aの代わりに、気液接触手段として向流型の気液接触塔1B、吸収液の再生反応によって生じる硫黄単体を分離するための硫黄分離槽3及び吸収液を循環させるためのラインL8,L9及びポンプPを備える点において硫化水素処理装置10Aと相違する。
硫化水素処理装置10Bが備える気液接触塔1B内には、上方からの液体と下方からの気体とを効率よく接触させるための多孔板等が配置された気液接触部1dが設けられている。気液接触塔1Bにあっては、その頭頂部に接続されたラインL9を通じて吸収液が導入される。吸収液は、気液接触部1dを被処理ガス及び酸素ガスと接触しながら流下し、気液接触塔1Bの底部に接続されたラインL8を通じて排出される。一方、被処理ガスは、ラインL1を通じて気液接触塔1B内に導入され、酸素分離器2からの分離酸素ガスは、酸素循環ラインL5を通じて気液接触塔1B内に導入される。これらの気体は、気液接触部1d内を吸収液と接触しながら上方に移動し、気液接触塔1Bの上部に接続されたラインL3から酸素含有処理ガスとして排出される。
なお、気液接触塔1B内に被処理ガスを導入するラインL1は、気液接触塔1Bの高さ方向の略中央の位置に接続されているのに対し、分離酸素ガスを導入する酸素循環ラインL5は、ラインL1の接続位置よりも低い位置、即ち、図2に示すように気液接触塔1Bの下部に接続されている。かかる構成により、導入された被処理ガスと再生処理が施された吸収液とがまず接触し、次に、吸収反応後の吸収液と酸素循環ラインL5からの酸素ガスとが気液接触部1d内において効率的に接触するようになっている。
硫黄分離槽3は、ラインL8を介して導入される吸収液に含まれる硫黄を分離除去するための槽である。当該槽内で硫黄スラッジSが沈降し、硫黄スラッジSが除去された吸収液は、ラインL9によって気液接触塔1Bに返送される。なお、ラインL9の途中には、吸収液を循環させるためのポンプPが配設されている。
本実施形態に係る硫化水素処理装置10Bにおいては、硫化水素の吸収反応及び吸収液の再生反応を気液接触塔1B内で生じさせることができ、吸収塔や再生槽を別々に設ける必要がない。このように本実施形態の硫化水素処理装置によれば、処理装置全体の十分な省スペース化を実現できる。
また、本実施形態に係る硫化水素処理装置10Bでは、吸収液を再生させるための酸化剤として、一般に使用される空気の代わりに酸素分圧が空気の約5倍の酸素ガスを使用することで、吸収液の再生反応速度が高まるため、気液接触塔1Bの内容積を過度に大きなものとしなくても当該再生反応を十分に進行させることができる。
また、本実施形態に係る硫化水素処理装置10Bによれば、酸素分離器2で酸素含有処理ガスから酸素ガスを分離し、これを酸素循環ラインL5を通じて気液接触塔1Bに供給することができるため、吸収液の再生反応によって消費された分の酸素ガスのみを供給すればよいので、製造又は購入する酸素量を削減できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、気液接触手段として、気液接触槽1A及び気液接触塔1Bを例示したが、気液接触処理を行うことができる装置であれば、これらの装置に限定されない。
また、吸収液から硫黄を分離除去する手段として、気液接触槽1A内に設けられた硫黄沈降部1c及び硫黄分離槽3を例示したが、液体中に含まれる固形分を分離除去できるものであれば、これらの装置に限定されず、例えば、膜分離槽(膜分離装置)等の固液分離装置を用いてもよい。また、酸素含有処理ガスから酸素を分離する手段として、酸素分離膜2aを具備する酸素分離器2を例示したが、ガス中に含まれる酸素を分離できるものであれば、特に限定されず、例えば、PSA法や深冷法を採用した酸素分離装置を用いてもよい。
(硫化水素処理装置の他の形態)
図3は、硫化水素処理装置の他の一例を示す概略構成図である。同図に示す硫化水素処理装置50は、吸収液による硫化水素の吸収反応を生じさせる吸収塔51、吸収液の再生反応を生じさせる再生槽52及び硫黄単体の分離処理を行う硫黄分離槽53がそれぞれ別々に設けられ、吸収塔51に酸素ガスを導入しない代わりに再生槽52における吸収液の再生処理(酸化処理)に酸素ガスを使用する点において上記第1及び第2実施形態に係る硫化水素処理装置10A,10Bと相違する。
図3は、硫化水素処理装置の他の一例を示す概略構成図である。同図に示す硫化水素処理装置50は、吸収液による硫化水素の吸収反応を生じさせる吸収塔51、吸収液の再生反応を生じさせる再生槽52及び硫黄単体の分離処理を行う硫黄分離槽53がそれぞれ別々に設けられ、吸収塔51に酸素ガスを導入しない代わりに再生槽52における吸収液の再生処理(酸化処理)に酸素ガスを使用する点において上記第1及び第2実施形態に係る硫化水素処理装置10A,10Bと相違する。
また、硫化水素処理装置50の吸収塔51内に酸素ガスが導入されないことから、精製ガスを得るための酸素分離器2を必要としない点においても上記第1及び第2実施形態に係る硫化水素処理装置10A,10Bと相違する。
図3に示す硫化水素処理装置50にあっては、硫化水素を含有する被処理ガスは、ラインL51を通じて吸収塔51に導入され、ラインL59によって供給される吸収液と気液接触する。吸収塔51内においては、上記(1)式の吸収反応によって、極めて微細なFe2S3粒子が析出し、被処理ガスから硫化水素が除去される。このとき、褐色透明の吸収液は黒色のFe2S3懸濁液に変化する。硫化水素が除去された精製ガスはラインL54より排出される。なお、気液接触処理を行うことができる装置であれば、気液接触塔に限定されず、例えば、液体を収容する槽と、槽内に設置される散気板とを備える気液接触槽を用いてもよい。
再生槽52は、ラインL57を通じて導入されるFe2S3懸濁液に対して酸素ガスを散気することによって、主として上記(2)式の再生反応によって第2鉄キレートを再生させると共に、硫黄を生成させる。再生槽52は、槽内に収容するFe2S3懸濁液に酸素ガスを散気するための散気板52aと、再生槽52の頭頂部から排出される酸素ガスを再び散気板52aに供給するための酸素循環ラインL55及びその途中に設けられたブロワB1とを備える。
ここで、吸収塔51内で吸収液中に溶解した硫化水素は、吸収塔51内において直ちに第2鉄キレートと反応し、Fe2S3を生成する。したがって、酸素循環ラインL55によって循環するガス(酸素ガス)中には、硫化水素はほとんど含まれていない。なお、酸素循環ラインL55には、ラインL6が接続されており、このラインL6を通じて再生槽52内で消費された分の酸素ガスを補給できるようになっている。
再生槽52における処理を経た吸収液は、その液中に硫黄が浮遊している。この吸収液は、ラインL58を通じて硫黄分離槽53に導入される。硫黄分離槽53は、槽内において硫黄を沈降させて分離するための槽である。硫黄分離槽53の底部に沈殿した硫黄スラッジSは、ラインL4を通じて系外に排出される。なお、吸収液に含まれる硫黄を分離できる装置であれば、このような分離槽に限定されず、例えば、膜分離槽(膜分離装置)等の固液分離装置を用いてもよい。
硫黄分離槽53においては、槽内の吸収液のpHが5.5〜8となるように、ラインL2からpH調整剤を添加する。pHが調整された吸収液をラインL59を通じて吸収塔51に導入する。
なお、ラインL57から排出される吸収反応後の吸収液の全量を再生槽52に必ずしも導入しなくてもよく、図3に示すように、一部の吸収液についてはバイパスラインL57aを通じて再生槽52及び硫黄分離槽53における処理を経ることなくポンプP2側に移送してもよい。
硫化水素処理装置50によれば、吸収液を再生させるための酸化剤として一般に使用される空気の代わりに酸素分圧が空気の約5倍の酸素ガスを使用することで、吸収液の再生反応速度が高まり、空気を使用する場合と比較し、内容積の小さい再生槽52を使用しても当該再生反応を十分に進行させることができる。したがって、吸収液の再生に酸素ガスを曝気することにより、空気を曝気した場合に使用する再生槽と比較し、内容積が約半分の再生槽52を使用することができる。このように硫化水素処理装置50によれば、再生槽52の省スペース化を実現できる。
更に、吸収液の再生に酸素ガスを使用することで、再生反応によって生成する硫黄スラッジSが沈降しやすくなるという効果が奏される。これは、酸素ガスによって硫黄単体がフロックを作りやすくなるためと考えられる。かかる効果によって、硫黄分離槽53の内容積が小さいものであっても、十分に硫黄を沈殿除去させることができる。したがって、吸収液の再生に酸素ガスを曝気することにより、空気を曝気した場合に使用する硫黄分離槽と比較し、内容積が約半分の硫黄分離槽53を使用することができる。このように硫化水素処理装置50によれば、硫黄分離槽53の省スペース化を実現できる。
なお、硫化水素処理装置50は、吸収塔51、再生槽52及び硫黄分離槽53が別々に設けられたものであるが、装置全体の省スペースの観点から、再生槽52と硫黄分離槽53と一体的に設けてもよい。この場合、一つの槽内において吸収液の再生処理を行う再生処理部を上方に、硫黄単体を沈降させる硫黄沈降部を下方に設ければよい。
1A…気液接触槽(気液接触手段)、1B…気液接触塔(気液接触手段)、2…酸素分離器(酸素分離手段)、10A,10B…硫化水素処理装置、L5…酸素循環ライン(酸素含有ガス供給ライン)。
Claims (4)
- 被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するための硫化水素処理装置において、
前記被処理ガスと、硫化水素の分解能を有するキレート剤を含有する吸収液とを接触させると共に、前記吸収液を酸化処理する酸素含有ガスと、前記吸収液とを接触させる気液接触手段と、
前記酸素含有ガスを前記気液接触手段に供給する酸素含有ガス供給ラインと、
を備えることを特徴とする硫化水素処理装置。 - 前記酸素含有ガスの酸素濃度は、空気の酸素濃度よりも高いことを特徴とする、請求項1に記載の硫化水素処理装置。
- 前記気液接触手段における処理を経た酸素含有処理ガスから酸素を分離する酸素分離手段を更に備え、
前記酸素含有ガス供給ラインは、前記酸素分離手段と、前記気液接触手段とを連結し、前記酸素分離手段で分離された酸素を含有する分離ガスを、前記酸素含有ガスの少なくとも一部として前記気液接触手段に供給するものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硫化水素処理装置。 - 被処理ガスに含まれる硫化水素を除去するための硫化水素処理方法において、
前記被処理ガスと、硫化水素の分解能を有するキレート剤を含有する吸収液とを接触させると共に、前記吸収液を酸化処理する酸素含有ガスと、前記吸収液とを接触させる気液接触工程と、
前記酸素含有ガスを前記気液接触工程に供する酸素含有ガス供給工程と、
を備えることを特徴とする硫化水素処理方法。
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2007
- 2007-06-13 JP JP2007156756A patent/JP2008307458A/ja active Pending
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