JP2008304768A - 電子写真用部材の現像剤除去方法、電子写真用部材、電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置 - Google Patents

電子写真用部材の現像剤除去方法、電子写真用部材、電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置 Download PDF

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Abstract

【課題】電子写真用部材表面に形成された現像剤の固着層を効率良く除去し、容易に再利用に供することを可能とする電子写真用部材の現像剤除去方法を提供する。
【解決手段】円柱状或いは円筒状の軸芯体と軸芯体の周囲に少なくとも一層の被覆層を有し、さらに最表面に現像剤の固着層を有する電子写真用部材の現像剤除去方法において、現像剤をHeプラズマ処理により除去する電子写真用部材の現像剤除去方法。この方法により再生された電子写真用部材。この電子写真用部材を具備する電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真用画像形成装置。
【選択図】図1

Description

本発明は、電子写真用画像形成装置において用いられる電子写真用部材の現像剤除去方法に関する。さらに本発明は、この現像剤除去方法によって再生された電子写真用部材、並びに再生された電子写真用部材を具備して成る電子写真用プロセスカートリッジ及び電子写真用画像形成装置に関する。
複写機、レーザビームプリンタ、ファクシミリ、印刷機の電子写真用画像形成装置には、現像スリーブ、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラといった電子写真用部材が備えられる。これらの電子写真用部材において、近年環境保護の観点から使用後の再生・再利用が広く求められてきている。
これらの電子写真用部材においては、現像剤を介して他の部材と圧接使用されたり、現像剤との摺擦を受けたりして使用される。そのため、結着樹脂、着色樹脂、ワックス、導電性微粒子といった現像剤に含まれる物質が、電子写真用部材外周表面に強固に付着して現像剤の固着層を形成する場合がある。このような電子写真用部材をそのまま再利用すると、表面形状や抵抗が変化しているため、本来の機能を充分に果たせない場合があり、再生処理を施す必要があった。
そこで、電子写真用部材の再生方法として、酸素プラズマアッシングやプラズマエッチングにより円筒状基材から被膜を剥離除去した後、再び被膜を形成する再生方法が提案されている(特許文献1参照。)。
一方、プラズマを用いた基材のクリーニング方法として、ポリイミドを主成分としたベルト基体表面をアルゴンプラズマ処理にてイオンクリーニングした後に、金属層を形成するベルトの製造方法が提案されている(特許文献2参照。)。
特開平09−042273号公報 特開2002−127265号公報
最表面に現像剤の固着層が形成された電子写真用部材を再利用するためには、少なくともこれを除去し、電気抵抗、硬度、表面粗さ、真直度、真円度、形状、摩擦係数といった特性を回復させる必要がある。ここで現像剤の固着層とは、少なくとも現像剤の原料である結着樹脂が押し潰されて固着し、エアブローでは簡単に除去できなくなった付着物のことを言う。
そこで前述したように、プラズマを利用した再生方法が提案されている。しかしながら、酸素プラズマアッシングやプラズマエッチングによる方法では、電子写真用部材表面に形成されている被膜ごと除去するものであり、再度被膜形成が必要となるため、処理コストがかかるという課題があった。
また、アルゴンプラズマ処理を利用して再生処理を行うことも考えられるが、アルゴンプラズマ処理では現像剤の固着層を効率良く除去できない。
そこで、本発明の目的は、電子写真用部材表面に形成された現像剤の固着層を効率良く除去し、容易に再利用に供することを可能とする電子写真用部材の現像剤除去方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、より低コストで再生された電子写真用部材、電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真用画像形成装置を提供することである。
上記目的を達成するため、本発明は、円柱状或いは円筒状の導電性の軸芯体と該軸芯体の周囲に少なくとも一層の被覆層を有する電子写真用部材の表面に固着した現像剤の除去方法に関する。そして本発明の方法は、該電子写真用部材の表面をHeプラズマ処理することにより該現像剤を除去する工程を有することを特徴とする電子写真用部材の現像剤除去方法である。
さらに、本発明は、この現像剤除去方法により再生されたことを特徴とする電子写真用部材に関する。
さらに、本発明は、少なくとも静電潜像を形成するための感光体と、該感光体に当接配置される帯電部材及び現像部材とを具備する、電子写真用画像形成装置に着脱可能に構成された電子写真用プロセスカートリッジにおいて、上記電子写真用部材を具備する電子写真用プロセスカートリッジに関する。
さらに、本発明は、少なくとも静電潜像を形成するための感光体と、該感光体に当接配置される帯電部材及び現像部材とを具備する電子写真用画像形成装置において、上記電子写真用部材を具備する電子写真用画像形成装置に関する。
本発明によれば、電子写真用部材の表面に形成された現像剤の固着層を効率良く除去し、容易に再利用に供することを可能とする電子写真用部材の現像剤除去方法を提供することができる。
また本発明によれば、より低コストで再生された電子写真用部材、電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真用画像形成装置が提供される。
本発明者らは、Heプラズマを用いることにより、使用済みの電子写真用部材表面に形成された現像剤の固着層のみを効率良く除去し、容易に再利用に供することが可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明者らは、Heプラズマ処理により現像剤の固着層のみを効率良く除去できた理由を以下のように推察している。
プラズマ中で発生する高エネルギーの荷電粒子が衝突することにより、現像剤の固着層がスパッタリングにより除去されたり、熱エネルギーにより昇華したりする。その結果、現像剤の固着層が除去されたものと考える。
一方、電子写真用部材の被覆層は架橋密度が高く、非反応のHeプラズマ処理では損傷を受けない。さらに、現像剤の固着層を効率良く除去するためには、高エネルギーのプラズマを形成して処理することが好ましいが、Heプラズマにおいては、パワーを高めてもプラズマが不安定化しにくい。
本発明者らは、Heプラズマを使用することで、被覆層を破壊することなく、スパークの発生やプラズマの偏りを発生させずに、プラズマに投入する実効パワーを高く設定することができ、現像剤固着層を効率良く除去できたものと考えている。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
<本発明に係わるプラズマ処理装置>
本発明に係わるプラズマ処理装置について、その概要を図1により説明する。
図1は本発明の現像剤除去方法を実施することのできるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。
図1において、プラズマ処理装置10は、チャンバー11、プラズマ電極12、高周波電源13、ガス導入口14、ガス排気口15を有する。被処理物である電子写真用部材20は、チャンバー内に設置された支持部16により芯金(金属製の軸芯体)の両端が支持され、電極と平行に所望の間隔を隔てて配置される。さらに、電子写真用部材20の軸芯体は支持部16を介して接地されるとともに、回転駆動部17に接続される。プラズマ電極12と電子写真用部材20の間に電圧を印加してプラズマを発生させるため、プラズマ電極12には所望の周波数の高周波電力を出力する高周波電源13が接続される。チャンバー11内を所望のガス雰囲気にするため、ガス導入口14が不図示のガスボンベにレギュレーターを介して接続され、さらにガス排気口15は不図示の真空ポンプに接続される。また、チャンバー11内をパージするためのパージ口18が設置される。
次に、プラズマ処理装置の動作の例について説明する。
まず、プラズマ処理を行う電子写真用部材20を所望の位置に設置する。次に、真空ポンプを動作させてガス排気口15からチャンバー11内を真空排気する。所望の真空度になったところで排気を停止し、ガス導入口14からHeガスを供給する。チャンバー11内が所望の圧力になったところでガス供給を停止する。
次に、電子写真用部材20を回転駆動させた後、プラズマ電極12に高周波電源13より電力を供給し、電子写真用部材20とプラズマ電極12の間にプラズマを発生させて処理を開始する。所望の時間の処理が完了したら、電力の供給及び回転駆動を停止し、パージ口18よりチャンバー11内をパージして電子写真用部材20を取り出して処理を完了する。
プラズマの発生条件は、以下に詳述するように、処理中にプラズマが不安定にならないように適宜選択することができる。安定なプラズマを利用することにより、スパークの発生や電子写真用部材の過昇温を防止し、現像剤固着層を効率良く除去でき、また電子写真用部材の損傷を防止することができる。
プラズマを発生させる際のチャンバー11内の圧力はとくに制限を受けないが、プラズマ中の荷電粒子密度を高めて現像剤固着層を効率良く除去するためには、プラズマを安定して形成できる範囲で圧力を高くすることが好ましい。具体的には、1330Pa以上、さらに好ましくは92000Pa以上の圧力が、現像剤固着層の除去に寄与する荷電粒子密度を高めることができ好ましい。また、電子写真用部材の損傷を防止し、均一に処理するためには、大気圧よりもあまり高くない圧力が好ましい。具体的には、122000Pa以下、さらに好ましくは111000Pa以下の圧力が、電子写真用部材の損傷を防止でき、均一に処理することができ好ましい。
プラズマ電極12に供給する高周波電力は、圧力に応じて周波数及び投入電力を適宜選択することが好ましい。具体的には、1kHz〜3GHzの周波数が好ましい。とくに、大気圧近傍下でプラズマを発生させる場合には、プラズマを安定して形成できることから、1kHz〜15MHzが好ましく、さらには5〜100kHzが好ましい。
投入電力は、装置構成及びプラズマ発生領域に依存するためとくに限定はされないが、スパークの発生や電子写真用部材の過昇温が起きない範囲で高くしたほうが、現像剤固着層を効率良く除去でき好ましい。また、プラズマを安定化させる目的で、高周波電力に適宜パルス変調をかけることも有効である。
プラズマ電極12と電子写真用部材20の間隔は、ローラ等の電子写真用部材の長手方向でほぼ均一であればとくに制限はされず、プラズマを安定して形成できるように、使用する電源周波数に応じて適正な範囲を選べばよい。一般的には、スパークの発生を防止しプラズマを均一に形成する観点から1mm以上の間隔が好ましい。また処理効果の低下を防止する観点から100mm以下の間隔が好ましい。このような範囲の間隔にすることにより、現像剤固着層を効率良く除去でき好ましい。
さらに、本発明においては、Heプラズマを発生させるためにプラズマ部の雰囲気をHeガスにする。そのためには、チャンバー11内を一度真空排気した後、Heガスを供給することで、チャンバー内をHe雰囲気にすることができる。プラズマ処理中は、Heガスの供給と排気を行いながら、圧力を調整して処理を行っても良い。あるいは、Heガスの供給と排気を継続的には行わずに、チャンバー内にHeガスを貯め込んでプラズマ処理を行っても良い。後者の場合、雰囲気中の不純物の増加に応じて、定期的に排気とHeガスの供給を適宜行うことが好ましい。また、とくに真空排気は実施せずに、プラズマ部に一定以上の流速でHeガスを供給することで、Heプラズマを形成することも可能である。プラズマ処理後のHeガスは、適宜フィルターを通して不純物を除去することで、再利用が可能である。
プラズマの軸方向の発生領域は装置構成により異なり、図2(a)に示すように電子写真用部材20の軸方向全域に渡って、プラズマ30を形成して処理することができる。図2(a)に示すようなプラズマを発生させるプラズマ処理装置としては、大気圧近傍でプラズマ形成が可能なコロナ放電表面処理装置(商品名。春日電機株式会社製)が挙げられる。この場合、プラズマ電極の形状は、電子写真用部材20よりも長いことが好ましいが、形状は円柱、角柱等が利用可能であるが、とくに制限はされない。プラズマ電極の材質は、プラズマ部に電力を供給するための導電部を備えていれば良い。大気圧近傍でプラズマを形成する際には、スパークの発生を抑制するために、円筒形状の誘電体の内部に電力を供給する導電部を形成したものが好ましく用いられる。誘電体の材料としては、アルミナ、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェライト、ジルコン−コージェライト、酸化珪素及び酸化ベリリウムマイカ系セラミックス等が挙げられる。
また、図2(b)に示すように局所的に形成したプラズマ30を矢印の方向(電子写真用部材の長手方向)に走査することで、電子写真用部材20の軸方向全域に渡って処理しても良い。図2(b)に示すようなプラズマを発生させるプラズマ処理装置の一例として、プラズマ照射表面改質装置PS−601C(商品名。春日電機株式会社製)が挙げられる。
電子写真用部材の周方向に対するプラズマの発生領域は、電子写真用部材にプラズマから荷電粒子が供給されていれば、とくに制限はされない。しかしながら、プラズマ部で発生する熱により電子写真用部材が昇温することを抑制するために、図3に示すようにプラズマ30を電子写真用部材の周方向の一部に発生させて、電子写真用部材を回転駆動して処理することが有効である。とくに大気圧近傍の高圧力下で処理する場合に、電子写真用部材が昇温するのを抑えることができる。電子写真用部材の昇温を抑制することは、被覆層の物性が変化して抵抗や硬度に変化を生じることを抑えるために有効である場合がある。
そこで、プラズマの電子写真用部材の周方向に対する発生領域の幅は、現像剤固着層を効率良く除去するために、電子写真用部材の外周長の1/25以上、さらに好ましくは1/20以上の範囲の幅とすることが好ましい。また、電子写真用部材の昇温を抑制するためには、電子写真用部材の外周長の1/2以下、さらに好ましくは1/3以下の範囲の幅とすることが好ましい。
なお、プラズマ30の発生領域の幅(周方向)は、電子写真用部材を回転駆動させずに処理した際に、現像剤固着層を除去できた領域の外周長で規定する。
プラズマ30の発生領域の幅は、図3(a)および(b)に示すようにプラズマ電極12の幅により制御可能である。さらに、プラズマ30の広がりを抑えるために、図3(c)に示すように誘電体の壁面31を配することも有効である。誘電体の材料としては、アルミナ、二酸化チタン、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ジルコン、コージェライト、ジルコン−コージェライト、酸化珪素及び酸化ベリリウムマイカ系セラミックス等が挙げられる。また、チャンバー内の圧力を増加させることによっても、プラズマ30の発生領域を狭めることが可能である。
本発明においては、円柱状或いは円筒状の電子写真用部材を回転させながらプラズマ処理を行うことが好ましい。これによって周方向により均一に処理を行うことが可能となる。電子写真用部材の回転数はとくに制限されることはないが、1〜300rpmの回転数が現像剤固着層を効率良く除去でき好ましい。
また、電子写真用部材の表面を予め加熱した後にプラズマ処理を開始することが有効である。現像剤固着層を形成する現像剤の溶融開始温度に近い温度に予め加熱することで、現像剤固着層をより効率良く除去できるためと考える。
具体的には、現像剤固着層を効率良く除去するために、電子写真用部材の表面温度を60℃以上、さらに好ましくは70℃以上に加熱して処理を開始することが好ましい。また、電子写真用部材の物性変化の防止を容易にするためには、電子写真用部材の表面温度を110℃以下、さらに好ましくは100℃以下に加熱して処理を開始することが好ましい。
なお、本発明では、電子写真用部材の表面温度は、赤外放射温度計(例えば、キーエンス製IT2−50)により測定した電子写真用部材の最表面の温度で規定した。また、必ずしも電子写真用部材全体を加熱する必要はなく、少なくともプラズマ処理に供する最表面のみを予め所望の温度に加熱すれば良い。
この加熱を行うための加熱手段は、発熱体であれば特に制限されることはない。具体例としては、シース状ヒーターの巻き付けヒーター、板状ヒーター、セラミックヒーターの電気抵抗発熱体、ハロゲンランプ、赤外線ランプの熱放射ランプ発熱体、液体もしくは気体を温度媒体とした熱交換手段による発熱体が挙げられる。
以上のようなプラズマ処理装置を用いれば、電子写真用部材表面に形成された現像剤の固着層を容易に除去し、再度被膜形成をすることなく使用済みの電子写真用部材を再利用に供することが可能となる。
<本発明に係わる電子写真用部材>
本発明の電子写真用部材の現像剤除去方法は、電子写真用画像形成装置に備えられている各種電子写真用部材に適用できる。具体的には、現像剤固着層が表面に形成された現像スリーブ、現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラ、給紙ローラ、加圧ローラ、クリーニングローラといった電子写真用部材の再生に適用可能である。
ここでは、電子写真用部材の一例として、現像スリーブと現像ローラを挙げて詳細に説明するが、同様の構成の電子写真用部材であればいずれも本発明を適用可能である。
なお、現像スリーブは、静電潜像を形成するための感光体に非接触で配置され、感光体上に静電潜像を現像し、現像剤像を形成するために用いられるものである。また、現像ローラは、静電潜像を形成するための感光体に当接配置され、感光体上に静電潜像を現像し、現像剤像を形成するために用いられるものである。
(現像スリーブ)
本発明を適用しうる現像スリーブの一例を図4に示す。なお、図4(a)はこの現像スリーブの長手方向に平行な断面を表したものであり、図4(b)は長手方向に垂直な断面を表したものである。現像スリーブ40は図4のように、円筒状の軸芯体41の周囲に被覆層42が少なくとも1層形成されて成る。
現像スリーブ40の軸芯体41の材料としては、導電性材料から適宜選んで用いることができる。例えば、炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄、ならびに導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。強度の観点から、金属製のものが好ましい。合金鋼の例としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。さらに防錆対策として軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。
被覆層42は少なくとも結着樹脂により形成され、必要に応じて導電性物質、充填剤及び固体潤滑剤を含有する。
結着樹脂としては、例えば、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂またはアクリル系樹脂が用いられる。特に熱硬化性もしくは光硬化性の樹脂が好ましい。
導電性物質の例としては、アルミニウム、銅、ニッケル及び銀等の金属粉体、酸化アンチモン、酸化インジウム及び酸化スズ等の金属酸化物、カーボンファイバー、カーボンブラック及びグラファイト等の炭素同素体が挙げられる。このうちカーボンブラックは特に電気伝導性に優れ、添加量のコントロールにより任意の導電度を得ることができるために好適に用いられる。
導電性物質の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部であり、より好ましくは5〜100質量部である。
充填剤としては、現像剤用ネガ帯電性荷電制御剤、あるいはポジ帯電性荷電制御剤を添加しても良い。この他の物質としては、以下の材料が挙げられる。アルミナ、アスベスト、ガラス繊維、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、シリカ及びケイ酸カルシウム等の無機化合物、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、PMMA、メタクリレートのターポリマー(ポリスチレン/n−ブチルメタクリレート/シランターポリマー)、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクタム、ポリビニルピリジン、ポリアミド等の含窒素化合物、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラクロロフルオロエチレン、ペルフルオロアルコキシル化エチレン、ポリテトラフルオロアルコキシエチレン、フッ素化エチレンプロピレン−ポリテトラフルオロエチレン共重合体、トリフルオロクロロエチレン−塩化ビニル共重合体等の高度にハロゲン化された重合体、ポリカーボネート、ポリエステル。このうちシリカ及びアルミナが、それ自身の硬さ及び現像剤に対する帯電制御性を有するので好ましく用いられる。
充填剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜500質量部、より好ましくは3〜200質量部である。
固体潤滑剤の例としては、二硫化モリブデン、窒化硼素、グラファイト、フッ化グラファイト、銀−セレン化ニオブ、塩化カルシウム−グラファイト及び滑石が挙げられる。このうちグラファイトは潤滑性と共に導電性を有し、現像剤の過剰な帯電を抑制し、現像に好適な帯電量を持たせる働きがあることから好適に用いられる。
固体潤滑剤の使用量としては、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは3〜150質量部である。
被覆層42の体積抵抗は、好ましくは1×106Ω・cm以下、より好ましくは1×103Ω・cm以下である。被覆層42の体積抵抗が1×106 Ω・cm以下である場合には、現像剤のチャージアップの発生を抑え、現像剤の過剰帯電に起因するブロッチの発生や現像特性の劣化を抑えることが容易である。
被覆層42が多層形成される場合は、被覆層全体の体積抵抗が上記範囲にあることが好ましい。
被覆層42の表面粗さは、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが0.2〜3.5μmの範囲にあることが好ましい。Raが0.2μm以上であると、スリーブ近傍での現像剤の過剰帯電を防止することが容易である。その結果、鏡映力により現像剤がスリーブ上に引きつけられて新たな現像剤がスリーブから帯電付与を受けられず、現像性が不充分となるゴーストを防止することが容易である。Raが3.5μm以下であると、スリーブ上の現像剤コート量の増加を抑え、現像剤が十分な帯電量を得られるようにすることが容易で、かつより均一な帯電が可能で、画像濃度の低下や濃度ムラを防止することが容易である。
表面粗さを制御する手段としては、軸芯体41の表面、或いは被覆層42を形成後の表面に、適宜研磨処理やブラスト処理を施すことにより所望の表面粗さに形成することが可能である。
本発明を適用しうる現像スリーブ40は、以下に述べる製造方法により作製されるが、これに限定されるものではない。
まず結着樹脂中に、必要に応じて導電性物質、充填剤及び固体潤滑剤を適当な含有量になる様に分散させた分散液を作製する。結着樹脂中に導電性物質等を分散させる方法としては、結着樹脂に適当な含有量の導電性物質等を加え、更に粘度を調整する為に結着樹脂を溶解する溶剤を適宜に加えた混合物を、サンドミル等を使用して十分に分散させる。
次に、以上の様にして作製した分散液を、アルミニウム等の金属円筒管(軸芯体)上にスプレーガン等を用いて塗布し、乾燥する。このようにして形成した被覆層の膜厚は通常20.0μm以下にすることが均一な膜厚を得る為に好ましいが、特に限定されるものではない。
(現像ローラ)
本発明を適用しうる現像ローラの一例を図5に示す。なお、図5(a)はこの現像ローラの長手方向に平行な断面を表したものであり、図5(b)は長手方向に垂直な断面を表したものである。
現像ローラ50は、図5のように、軸芯体51の周囲に弾性層52と表面層53が被覆層として形成されている。軸芯体51の周囲に弾性層52が少なくとも1層形成され、さらに、ローラ表面の耐磨耗性を高めるため、弾性層52の周りに表面層53が形成されていることが好ましい。弾性層52は1層である必要はなく、多層になっていても構わない。また、表面層53も1層である必要はなく、多層になっていても良い。
現像ローラ50の軸芯体51の材料としては、導電性材料から適宜選んで用いることができる。例えば、炭素鋼、合金鋼及び鋳鉄、ならびに導電性樹脂の中から、適宜選択して用いることが出来る。強度の観点から、金属製のものが好ましい。ここで、合金鋼としては、ステンレス鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブテン鋼、クロム鋼、クロムモリブテン鋼、Al、Cr、Mo及びVを添加した窒化用鋼が挙げられる。さらに防錆対策として軸芯体材料にめっき、酸化処理を施すことができる。めっきの種類としては電気めっき、無電解めっきのいずれも使用することが出来るが、寸法安定性の観点から無電解めっきが好ましい。ここで使用される無電解めっきの種類としては、ニッケルめっき、銅めっき、金めっき、カニゼンめっき、その他各種合金めっきがある。ニッケルめっきの種類としては、Ni−P、Ni−B、Ni−W−P、Ni−P−PTFE複合めっきがある。めっきの膜厚は何れのめっきにおいても0.05μm以上であれば好ましいが、より好ましくは0.10μm〜30.00μmである。
現像ローラ50は感光ドラム、現像ブレード、現像剤等と常に圧接している。このため、これらの部材に与えるダメージを小さくするために硬度が小さく、圧縮永久歪みが小さい材料で構成されることが、良好な画像を得るために望まれる。また、現像ローラ50は表面が耐磨耗性を有し、耐久性が高いことが好ましい。このため、現像ローラ50は軸芯体51の周囲に弾性層52を有した構成となっている。
現像ローラ50の弾性層52と表面層53を合わせた被覆層の厚さは、現像ローラ50に良好な弾性を与えるために0.5mm〜10.0mmであることが好ましい。
さらに、本発明の現像剤除去方法により現像剤固着層をより効率良く除去するためには、被覆層の厚さが1.0mm以上、5.0mm以下であることがより好ましい。被覆層の厚さを1.0mm以上にすることで、投入する電力を増加させた場合にも導電性軸体と電極との間でのスパークの発生を有効に抑制できる。その結果、安定したプラズマを形成可能であり、現像剤固着層を効率良く除去し得る。また、被覆層の厚さを5.0mm以下にすることで、弾性層を介しても軸芯体が充分にアースとして機能することで、プラズマ中の荷電粒子密度を高め、現像剤固着層を効率良く除去し得る。
弾性層52に用いられる材料の例としては、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムが挙げられる。これらの材料は単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。さらに、これらの材料の発泡体を弾性層52に用いても良い。
弾性層52の硬度はAsker−C硬度10〜80度であることが好ましい。弾性層52の硬度が10度以上であると、弾性層52を構成するゴム材料からのオイル成分の染み出し、およびこれによる感光ドラムへの汚染を防止することが容易である。また、弾性層52の硬度が80度以下であると、現像剤と接触する際に現像剤にダメージを与えることを防止し、出力画像の画質が悪くなることを防止することが容易である。
現像ローラ50は半導体領域の電気抵抗値を有することが望まれる。そのため、弾性層52が導電剤を含有し、体積抵抗率1×104〜1×1010Ω・cmのゴム材料から形成されていることが好ましい。ここで、弾性層材料の体積抵抗率が1×104〜1×1010Ω・cmであれば、現像剤に対して均一な帯電制御性を得ることが可能である。体積抵抗率は、より好ましくは1×104〜1×109Ω・cmである。
上記のように用途に合わせて、弾性層52の材料を導電化する手法としては、イオン導電機構、または電子導電機構による導電付与剤を上記材料に添加することにより導電化する手法が広く知られている。
イオン導電機構による導電付与剤の例としては、以下のものが挙げられる。LiCF3SO3、NaClO4、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN、NaCl等の周期律表第1族金属の塩、NH4Cl、(NH42SO4、NH4NO3等のアンモニウム塩、Ca(ClO42、Ba(ClO42等の周期律表第2族金属の塩、これらの塩と1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールの多価アルコールやそれらの誘導体との錯体、これらの塩とエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルのモノオールとの錯体、第4級アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤、脂肪族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩の陰イオン性界面活性剤、ベタインの両性界面活性剤。
また、電子導電機構による導電付与剤の例としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック、グラファイトの炭素系物質、アルミニウム、銀、金、錫−鉛合金、銅−ニッケル合金等の金属或いは合金、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化銀等の金属酸化物、各種フィラーに銅、ニッケル、銀の導電性金属めっきを施した物質。
これらイオン導電機構、電子導電機構による導電付与剤は粉末状や繊維状の形態で、単独または2種類以上を混合して使用することが出来る。この中でも、カーボンブラックは導電性の制御が容易であり、また経済的であるといった観点から好適に用いられる。
表面層53として用いられる材料の例としては、以下のものが挙げられる。エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、ポリプロピレン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、珪素樹脂、ポリエステル樹脂、スチロール系樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリルウレタン樹脂、水系樹脂。また、これらを2種類以上組み合わせて使用することも可能である。この中でも特に含窒素化合物であるウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂を用いることが現像剤を安定して帯電させられることから好ましい。
本発明では、表面層53のバインダー樹脂として、イソシアネート化合物とポリオールを反応させて得られるウレタン樹脂からなることがより好ましい。
イソシアネート化合物の例としては、以下のものが挙げられる。ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアネート、4,4’−ジシクロへキシルメタンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、カルボジイミド変性MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート。また、これらの混合物を用いることもでき、その混合割合はいかなる割合でもよい。
また、ここで用いるポリオールの例としては、以下のものが挙げられる。2価のポリオール(ジオール)として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、トリエチレングリコール、3価以上のポリオールとして、1,1,1−トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール。さらに、ジオール、トリオールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドを付加した高分子量のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイドブロックグリコールといったポリオールも使用可能である。また、これらの混合物を用いることもでき、その混合割合はいかなる割合でもよい。
さらに、これらの表面層53に導電性を付与して使用することが出来る。導電性を付与する手法としては上記弾性層52の導電化と同様の手法を用いることが可能である。
表面層53の厚みとしては、1.0μm〜500.0μmが好ましい。また、より好ましくは表面層53の厚みは1.0μm〜50.0μmであることが望まれる。1.0μm以上であれば、耐久性の低下を防止することが容易である。500.0μm以下、さらには50.0μm以下であれば、現像ローラ50表面が硬くなって現像剤融着の原因となることを防止することが容易である。表面層を複数層形成する場合には、複数層全体の厚さを上記範囲にすることが望まれる。
現像ローラ50の表面粗さは、現像剤の搬送力に大きく影響し、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが0.05μm〜3.00μmであることが好ましい。0.05μm以上であると、現像剤の搬送力が良好となり、画像濃度が良好となって、ゴーストや濃度ムラを抑制して良好な画像品質を得ることが容易である。3.00μm以下であると、ガサツキ等を抑え、良好な画像品質を得ることが容易である。
表面粗さを制御する手段としては、表面層53に適宜の粒径の粒子を含有させることが有効である。また、適宜研磨処理を施すことにより所望の表面粗さに形成することも可能である。その場合、弾性層のみを形成する場合には、弾性層を形成後に研磨処理を施せば良い。弾性層を複数層形成する場合には、複数層を形成後に研磨処理を施せば良い。また、弾性層と表面層を形成する場合には、弾性層を形成後に研磨処理を施した後に表面層を形成しても、表面層を形成後に研磨処理を施しても良い。
表面層53に含有させる粒子には、粒径0.1μm〜30.0μmの金属粒子もしくは樹脂粒子を用いることができる。中でも、柔軟性に富み、比較的比重が小さく塗料安定性を得易い樹脂粒子がより好ましい。樹脂粒子の例としては、ウレタン粒子、ナイロン粒子、アクリル粒子、シリコーン粒子を挙げることができる。これらの樹脂粒子は単独で、又は複数種を混合して使用することができる。表面層を複数層形成する場合には、複数層全てに粒子を含有させても良いし、複数層のうちの少なくとも一層に粒子を含有させても良い。
本発明においては、電子写真用部材の表面層53の架橋密度が3.0×10-4mol/cm3以上〜8.0×10-4mol/cm3以下の範囲である場合に、現像剤固着層を効率良く除去でき好ましい。3.0×10-4mol/cm3以上であると、プラズマ密度を高めて処理効率を高めようとした場合に表面層が破壊されることを防止することが容易である。8.0×10-4mol/cm3以下であると、現像ローラ50が硬くなって現像剤融着の原因となることを防止することが容易である。従って、電子写真用部材の表面層の架橋密度は上記の範囲が好ましい。表面層を複数層形成する場合には、最表面に位置する表面層を上記の範囲とすることが好ましい。
また、好ましい架橋密度を実現するために、表面層が、次のバインダー樹脂を含有することが好ましい。すなわち、ポリオールとして重量平均分子量が5000以上12000以下であるポリウレタンプレポリマーと、イソシアネートとを、NCO当量が1.1以上1.5以下の比率で混合し反応させたバインダー樹脂である。ポリウレタンプレポリマーとして末端に水酸基を有するポリウレタンプレポリマー用いることができ、イソシアネートとしてブロックイソシアネートを用いることができる。
なお、NCO当量は、イソシアネート化合物中のイソシアネート基のモル数とポリオール成分中の水酸基のモル数との比([NCO]/[OH])を示すものである。
表面層を複数層形成する場合には、最表面に位置する表面層に上記のバインダー樹脂を含有させることが好ましい。
<本発明に係わる現像剤>
本発明に係わる現像剤は、少なくとも着色剤と結着樹脂を含んで作製することができる。
本発明に係わる現像剤が含有する結着樹脂としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、及び、これらの共重合体からなる樹脂が好ましい。
結着樹脂を形成する重合性単量体の例としては、以下のものが挙げられる。スチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、m−(p−)エチレンスチレンといったスチレン系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルといった(メタ)アクリル酸エステル系単量体;ブタジエン、イソプレン、シクロヘキサン、(メタ)アクリロニトリル、アクリル酸アミドといった単量体。
本発明に係わる現像剤が含有する着色剤の例としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック、ランプブラック、鉄黒、群青、ニグロシン染料、アニリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ハンザイエローG、ローダミン6G、カルコオイルブルー、クロムイエロー、キナクリドン、ベンジジンイエロー、ローズベンガル、トリアリールメタン系染料、モノアゾ系、ジスアゾ系染顔料。これらの着色剤を、単独或いは混合して使用することができる。
さらに、本発明に係わる現像剤には、定着オフセット防止のために、離型剤としてワックスを添加することが可能である。使用されるワックスの例としては、以下のものが挙げられる。パラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、アミドワックス、高級脂肪酸、エステルワックス及びこれらの誘導体、またはこれらのグラフト/ブロック化合物。これらのワックスは、定着時の離型性の向上を達成するために、現像剤粒子中に一般的に、結着樹脂成分100質量部に対して1〜30質量部、より好ましくは5〜20質量部が使用される。
また、本発明に係わる現像剤は、電子写真用画像形成装置の現像構成に応じて、必要に応じて導電性微粒子を添加して用いることができる。導電性微粒子の例としては、以下のものが挙げられる。カーボンブラック、グラファイトといった炭素微粒子、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル等の金属微粒子、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化バリウム、酸化モリブデン、酸化鉄、酸化タングステン等の金属酸化物、硫化モリブデン、硫化カドミウム、チタン酸カリといった金属化合物、あるいはこれらの複合酸化物。これらの導電性微粒子を、必要に応じて粒度及び粒度分布を調整して使用することができる。
本発明においては、現像剤固着層をより効率良く除去するためには、現像剤の溶融開始温度が70℃以上100℃以下であることが好ましい。溶融開始温度は、結着樹脂の種類及び共重合体を形成するモノマーの混合比率、ワックスの含有量を適宜選択することで所望の値に制御することが可能である。
<本発明に係わる電子写真用画像形成装置>
次に、本発明に係わる電子写真用部材を搭載する電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真用画像形成装置の一例について、その概要を、図6を用いて説明する。
電子写真用画像形成装置は、少なくとも静電潜像を形成するための感光体と、該感光体に当接配置される帯電部材及び現像部材とを具備する。電子写真用プロセスカートリッジは、少なくとも静電潜像を形成するための感光体と、感光体に当接配置される帯電部材及び現像部材とを具備し、電子写真用画像形成装置に着脱可能に構成される。
本発明に係わる電子写真用画像形成装置600は、図6のように電子写真用部材が配置されて構成される。感光ドラム601は、当接配置される帯電ローラ602により、所定の極性で電位が一様になるように帯電処理される。その後、目的画像情報の露光603を受け、感光ドラム601の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像は、現像ローラ604により供給される現像剤605により現像剤画像として可視化される。現像剤像は、給紙ローラ606により搬送された記録材607の裏面から転写ローラ608によって電圧を印加され、記録材607に転写される。
この後、記録材は、定着ローラ609と加圧ローラ610によって構成された定着部へ搬送され、像定着を受け、画像形成物として出力される。感光ドラム601はその上に残存する現像剤を取り除くためにクリーニング部611によりクリーニングされた後、除電部材(図示していない)にて除電され、再び帯電過程に進む。なお、クリーニング部611によって取り除かれた現像剤は廃現像剤容器612へ集められる。また、クリーニング部611の部材としてクリーニングローラを用いることも可能である。
一方、現像ローラ604の表面では、静電潜像を現像する際に使用されなかった現像剤が、当接配置される現像剤供給ローラ613で一旦現像ローラ604から掻き落とされると同時に、現像剤供給ローラ613により現像剤が現像剤貯槽614から供給される。さらに、供給された現像剤は、現像ローラ604に当接配置される現像ブレード615により、厚みがほぼ均一になるように調整されて、再度、現像剤画像の形成に供される。
図において矢印Aは感光ドラムの回転方向、矢印Bは現像ローラの回転方向を示す。
また、帯電ローラ602、現像ローラ604および転写ローラ608には、必要に応じてバイアス印加電源により必要電圧が印加されている。
さらに、ブラック、マゼンダ、シアン、イエローの4色の電子写真用プロセスカートリッジを並べ、記録材にそれぞれの現像剤を転写し、像定着を行うことにより、カラーの画像形成物を出力することが可能となる。
また、現像ローラ604の代わりに、現像スリーブを用いることも可能である。
現像スリーブを用いる電子写真用画像形成装置においては、現像スリーブは、感光体に対して、100μm以上300μm以下の所望の間隔を隔てて対向配置され、磁性体を含有する現像剤を用いた非接触現像により現像剤画像が形成される。
<パラメータの測定方法>
(架橋密度の測定)
電子写真用部材の表面層の架橋密度は、以下に記載した膨潤法を用い、以下の計算方法で求めることができる。
表面層のみを硬化させた任意の大きさの試験片を、溶媒であるトルエンに72時間浸漬して飽和膨潤させた後、室温で48時間以上乾燥させる。そして、初期、飽和膨潤時、乾燥後のそれぞれで、試験片の質量W[g]と密度ρ[g/cm3]を測定する。質量及び密度の測定は、乾式自動密度計アキュピック1330(商品名。島津製作所製)を用いて行った。
これらから架橋密度ν[mol/cm3]を以下の式によって算出する。
Figure 2008304768
1:初期質量、ρ1:初期密度
2:膨潤状態質量
3:乾燥後質量、ρ3:乾燥後密度
ρs:溶媒(トルエン)の密度[g/cm3](0.866)
1=W1/ρ1
2=V3+(W2−W3)/ρs
3=W3/ρ3
0:膨潤前ポリマー中の網目鎖ポリマー体積分率
0=(V3−V1P)/(V1−V1P)
r:膨潤状態中の網目鎖ポリマー体積分率
r=(V3−V1P)/(V2−V1P)
P:試料中の無機充填材体積分率(ρ:無機充填材=2.2で計算)
s:溶媒(トルエン)のモル容積[cm3](106.8)
μ:ポリマーの溶媒相互作用係数(0.413+0.364Vr)
ν:架橋密度[mol/cm3]。
(重量平均分子量)
ポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量の測定は、高速液体クロマトグラフHLC−8120GPC(商品名。東ソー社製)を用いて測定することができる。カラムとしてTSKgel SuperHM−M(東ソー社製)×2本、溶媒としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。温度40℃、THF流速0.6ml/minにて、測定サンプルを0.1質量%のTHF溶液とし、検出器にはRI(屈折率)検出器を用いて測定を行った。また、検量線の作成には標準試料(EasiCal PS−2:商品名。Polymer Laboratories社製)を用いた。
(溶融開始温度の測定)
本発明における溶融開始点の測定は、フローテスターCFT−500型(商品名。島津製作所製)を用いて行った。測定する試料を約1.0〜1.5g秤量し、これを成形器を使用して9806.65kPa(100kgf/cm2)の加重で1分間加圧し、加圧サンプルを作成する。この加圧サンプルを昇温速度5.0℃/minでプランジャーにより10kgf(98N)の荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルにより押し出すようにし、これによりフローテスターのプランジャー降下量(流出速度)を2.5℃間隔で測定する。
こうして測定したプランジャー降下量と温度の関係より、グラフの傾きが負または0から正へ変わる温度を溶融開始点と定義する。なお、測定は常温常湿下(温度25℃、湿度50%RH)で行う。RHは相対湿度を表す。
以下、本発明を実施例及び比較例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
(実施例1)
<現像ローラの作製>
以下の手順により、円柱状の軸芯体の周囲に、被覆層として弾性層と表面層をそれぞれ1層設けた現像ローラを作製した。
軸芯体として、直径6mm、長さ279mmのSUS(ステンレス鋼)製の芯金表面にニッケルめっきを施したものを用いた。
弾性層の材料として、以下の要領で液状シリコーンゴムを準備した。まず、次の材料を混合し液状シリコーンゴムのベース材料とした。
両末端にビニル基を有する粘度100Pa・s(温度25℃)のジメチルポリシロキサン:100質量部。
充填剤として石英粉末(Pennsylvania Glass Sand社製、商品名:Min−USil):7質量部。
カーボンブラック(電気化学工業製、商品名:デンカブラック、粉状品)8質量部。
このベース材料に、硬化触媒として白金化合物を微量配合したものと、オルガノハイドロジェンポリシロキサン3質量部を配合したものを質量比1:1で混合し、液状シリコーンゴムとした。
内径12mmの円筒型金型内の中心部に軸芯体を配置し、円筒型金型内に注入口からこの液状シリコーンゴムを注入し、温度120℃で5分間加熱硬化させ、冷却後脱型した。さらに温度200℃で4時間加熱して硬化反応を完了させ、厚さ3mmのシリコーンゴムを主成分とする弾性層を軸芯体の外周面上に設けた。
表面層の材料として、次のものを用いた。
ポリテトラメチレングリコール(商品名:PTG1000SN、数平均分子量Mn=1000、f=2(fは官能基数を表す。以下同じ。);保土谷化学株式会社製):100.0質量部。
イソシアネート(商品名:ミリオネートMT、MDI、f=2、日本ポリウレタン工業株式会社製):21.2質量部。
これら材料をMEK溶媒中で段階的に混合して、窒素雰囲気下80度にて6時間反応させ、重量平均分子量Mw=11000、水酸基価5.6、分子量分散度Mw/Mn=2.9、Mz/Mw=2.5の2官能のポリウレタンプレポリマーを得た。MEKはメチルエチルケトンである。
このポリウレタンプレポリマー100.0質量部にイソシアネート(商品名:タケネートB830、TMP変性TDI、f(平均官能基数)=3相当、三井武田ケミカル株式会社製)7.2質量部を加えて、NCO当量を1.2となるようにした。さらに、カーボンブラック(商品名:#1000、pH3.0、三菱化学社製)を20.0質量部添加した。この原料混合液に有機溶剤を加え、15.0μm〜20.0μmの膜厚が得られるように固形分20〜30質量%の範囲で適宜調整した。さらに、ウレタン樹脂粒子(商品名:C400透明、直径14μm、根上工業株式会社製)を20.0質量部加え、均一分散、混合したものを表面層の原料液とした。
この表面層の原料液中に、上記の弾性層を形成した軸芯体を浸漬した後、引上げて自然乾燥させた。次いで、温度140℃にて60分間の加熱処理を行い、表面層の原料液を硬化させて、平均膜厚18.0μmの表面層を形成した。表面層の架橋密度は、4.5×10-4mol/cm3であった。
こうして、被覆層が厚さ3.0mmの弾性層と膜厚18μmの表面層から成る、外径12mm、被覆層の長さ235mm、JIS B 0601:1994表面粗さの規格における中心線平均粗さRaが1.5μmの現像ローラを作製した。
<現像剤固着層の形成>
前記手順によって得られた現像ローラを用いて以下の条件で画像形成を行い、現像剤固着層を形成した。
電子写真用画像形成装置はHewlett−Packard社製のColor Laser Jet3600(商品名)を使用した。作製した現像ローラを、シアン用のプロセスカートリッジに設置した。このとき使用したシアン用現像剤は、結着樹脂と着色剤を含み、現像剤の溶融開始温度が85℃であった。
電子写真用画像形成装置本体とともに、現像ローラを組み込んだプロセスカートリッジを温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した。その後、同環境において印字率が1%の画像を白抜けして画像が形成されなくなるまで出力し、現像ローラ表面に現像剤固着層を形成した。
現像剤固着層を形成した現像ローラを取り出して、エアブローにより付着している現像剤を飛ばした後、顕微鏡で現像ローラ表面を観察したところ、ローラ表面には現像剤の固着層が固着しているのが確認された。
<プラズマ処理>
前記手順によって現像剤固着層を形成した現像ローラについて、図1に示した構成を有するプラズマ処理装置により、Heプラズマ処理を行った。プラズマ電極には、アルミナ製の誘電体の内部にアルミニウム製の導電部を備えたものを使用した。Heガスは、チャンバー内を一度真空排気した後に導入して貯め込み、チャンバー内の圧力を大気圧近傍の101000Paとして処理を行った。Heガスは処理毎に新しいガスに入替えて処理を行った。
現像ローラの表面を赤外線ランプにより加熱し、現像ローラの表面温度を長手方向全体に渡って予め75℃に加熱した後に、現像ローラを60rpmで回転駆動させて処理を開始した。プラズマ電極と現像ローラの間隔は3mmとし、周波数40kHzの高周波電力を、安定なプラズマが形成できる最大の電力であった400Wを供給してプラズマを発生させた。このとき、プラズマの発生領域の周方向の幅は8mmであった。処理時間は60秒とし、現像ローラ長手全域に形成したプラズマにより現像ローラ全域を処理した。
<評価方法>
Heプラズマ処理を行った現像ローラについて以下の評価を行った。
(かぶり評価)
Heプラズマ処理を行った現像ローラを新しいプロセスカートリッジに組み込み、温度15℃、湿度10%RHの環境に24時間放置した後、現像剤固着層の形成に使用したのと同じ電子写真用画像形成装置本体に搭載した。同環境においてベタ白画像を出力し、かぶりの程度(かぶり値)を以下の方法で測定し、現像ローラの表面汚れの指標とした。
かぶり値は、反射濃度計を用いて、電子写真用画像形成装置による画像形成前の転写材である転写紙の反射濃度と、ベタ白画像の画像形成を行った後の転写紙の反射濃度を測定し、その差分を現像ローラのかぶり値とした。反射濃度計としてはTC−6DS/A(商品名。東京電色技術センター社製)を用いた。反射濃度の測定は、転写紙の画像印刷領域の全域をスキャンして反射濃度を測定し、最小値をその転写紙の反射濃度とした。かぶり値は小さいほど良好であり、1.0より小さければ「A」、1.0以上かつ3.0より小さければ「B」、3.0以上かつ5.0より小さければ「C」、5.0以上であれば「D」として、評価を行った。
通常、ベタ白画像を形成した転写紙上においては、現像剤はほとんど転写されておらず、かぶり値は3.0より小さい。しかしながら、表面に現像剤固着層が多く残る現像ローラでは、現像ローラ上の現像剤の帯電量が不足しており、この現像剤が感光体上に移動し、さらに転写紙上へ転写されることによってかぶりを生じる。従って、かぶり値を再生処理による表面汚れの解消度合いの指標として用いることが出来る。
(外観評価)
Heプラズマ処理を行った現像ローラの外観上の弊害の有無を、顕微鏡及び画像形成により評価した。まず、Heプラズマ処理を行った現像ローラの外観を顕微鏡で評価した。その後、かぶり評価の際と同様に、新しいプロセスカートリッジに設置して、温度15℃、湿度10%RHの環境で、ベタ黒画像及びハーフトーン画像を出力し評価した。
外観評価としては、外観でプラズマ処理に起因するキズや斑点模様の有無を評価した後、画像を形成して外観のキズや斑点模様に対応する画像弊害の有無を評価した。これらの結果について、外観でキズや斑点模様が確認されず画像弊害が存在しない場合を「A」、外観でキズや斑点模様が確認できたが画像弊害が存在しない場合を「B」、外観のキズや斑点模様に対応する画像弊害が確認できた場合を「C」として、評価を行った。
(トナー融着評価)
Heプラズマ処理を行った現像ローラを、かぶり評価の際と同様に、新しいプロセスカートリッジに設置した。温度15℃、湿度10%RHの環境で、印字率が1%の画像を出力し、トナー融着評価を行った。
トナー融着の発生は、5000枚の画像形成毎にハーフトーン画像を印字し、トナー融着に起因する縦スジ状の画像濃度ムラの有無により評価した。トナー融着が25000枚の通紙で発生しなかった場合を「A」、トナー融着が20000枚以上25000枚以下の通紙で発生した場合を「B」、トナー融着が20000枚未満の通紙で発生した場合を「C」として、評価を行った。
以上のように、Heプラズマ処理を行った現像ローラの評価結果を表1に示す。
(比較例1)
比較例1−1〜1−3では、実施例1と同じ現像ローラを用い、チャンバー内の雰囲気を形成するプラズマガス種を表1に示すようにそれぞれCF4、Air(空気)、Arに変更した以外は実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行い、評価した。ただし、高周波電力としてはそれぞれスパークを発生させずにプラズマが形成できる最大の電力を供給した。その評価結果を表1に合わせて示す。
Figure 2008304768
表1の結果より、Heプラズマ処理を行った実施例1において、投入電力を高くして現像剤固着層を効率良く除去できるとともに、プラズマ処理に起因するキズや斑点模様を発生させることがなかった。
(実施例2)
弾性層の厚さを表2に示すように変化させた以外は、実施例1と同じ条件で、Raが1.5μm、表面層の架橋密度が4.5×10-4mol/cm3の現像ローラを作製した。さらに、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した後、実施例1と同じ条件でHeプラズマ処理を実施し、同じく評価を行った。
なお、現像ローラは、弾性層の厚さに応じて径を変化させた芯金を用い、いずれも外径が12mmになるようにした。また、現像ローラの表面粗さは、同じくRaが1.5μmであり、表面層の架橋密度は、4.5×10-4mol/cm3であった。
評価結果を表2に示す。
Figure 2008304768
表2の結果より、実施例2−1〜2−5において、いずれも現像ローラ表面の現像剤固着層を除去し、再利用可能なレベルに画像品質を良化することができた。
さらに、被覆層の厚さを1.0〜5.0mmとした実施例2−2〜2−4において、現像剤固着層を効率良く除去して画像品質をさらに良化することができた。
(実施例3)
実施例1と同じ条件で、Raが1.5μm、表面層の架橋密度が4.5×10-4mol/cm3の現像ローラを作製した。さらに、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した後、Heプラズマを発生させるチャンバー内の圧力を表3に示すように変化させ、投入電力を300Wにした以外は、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行い、同じく評価を行った。
評価結果を表3に示す。
Figure 2008304768
表3の結果より、実施例3−1〜3−6において、いずれも現像ローラ表面の現像剤固着層を除去し、再利用可能なレベルに画像品質を良化することができた。
さらに、チャンバー内の圧力を92000〜111000Paの大気圧近傍とした実施例3−3〜3−5において、高密度のプラズマを均一に形成でき、現像剤固着層を効率良く除去して画像品質をさらに良化することができた。
(実施例4)
実施例4−1〜4−5
実施例1と同じ条件で、Raが1.5μm、表面層の架橋密度が4.5×10-4mol/cm3の現像ローラを作製した。さらに、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した後、現像ローラの外周長に対するHeプラズマの発生幅(周方向)の割合を変化させてプラズマ処理を行い、実施例1と同じ評価を行った。
Heプラズマの発生幅は、プラズマ電極に図3(c)に示すようなアルミナ製の誘電体壁面31を設置し、誘電体壁面31の開口部の幅(周方向)を変化させて制御した。表4に示すように開口部の幅を変化させ、さらにチャンバー内の圧力を92000Paに変化させた以外は、実施例1と同じ条件でプラズマ処理を行い、同じく評価を行った。
その評価結果を表4に示す。
実施例4−6〜4−10
さらに、外径16mmの現像ローラを作製して、評価を行った。
軸芯体を直径8mm、長さ282mmに変更し、内径16mmの円筒型金型を使用した以外は、実施例1と同様にして厚さ4mmの弾性層を設けた。さらに、実施例1と同様にして、平均膜厚18.0μmの表面層を形成した。表面層の架橋密度は4.3×10-4mol/cm3、Raは1.6μmであった。
実施例4−1〜4−5と同様にして、現像ローラの外周長に対するHeプラズマの発生幅(周方向)の割合を変化させてプラズマ処理を行った。その後、電子写真用画像形成装置に、Hewlett−Packard社製のColor Laser Jet4700dn(商品名)を使用して、実施例1と同様に評価を行った結果を表4に合わせて示す。
Figure 2008304768
表4の結果より、実施例4−1〜4−10において、いずれも現像ローラ表面の現像剤固着層を除去し、再利用可能なレベルに画像品質を良化することができた。
さらに、プラズマの発生領域の幅を現像ローラの外周長の1/3〜1/20とした実施例4−2〜4−4と実施例4−7〜4−9において、ローラ損傷を生じることなく、現像剤固着層を効率良く除去して画像品質をさらに良化することができた。
(実施例5)
実施例1と同じ条件で、Raが1.5μm、表面層の架橋密度が4.5×10-4mol/cm3の現像ローラを作製した。以下に示す手順で作製した溶融開始温度の異なる現像剤を作製し、プロセスカートリッジ内の現像剤と入替えて通紙耐久に用いた以外は、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した。その後、実施例1と同じ条件でHeプラズマ処理を行い、同じく評価を実施した。このとき、プラズマの発生領域の幅は8.0mmであった。その評価結果を表5に示す。
<現像剤の作製>
本実施例の溶融開始温度の異なる現像剤は以下の工程により作製した。
まず現像剤の原料となるシアントナー粒子を下記の手順によって重合法により作製した。温度60℃に加温したイオン交換水900質量部に、リン酸三カルシウム3質量部を添加し、TK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)を用いて、10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を作製した。
また、下記処方をTK式ホモミキサー(商品名、特殊機化工業製)に投入し、温度60℃に加温した後、9,000rpmにて攪拌し、溶解、分散して水系分散媒体を得た。
・スチレン 80質量部。
・n−ブチルアクリレート 20質量部。
・銅フタロシアニン 5.5質量部。
・サリチル酸アルミニウム化合物 0.7質量部
(商品名:ボントロンE−88、オリエント化学社製)。
・ポリエステル樹脂 5質量部
(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg=65℃、Mw=10000、Mn=6000)。
・フィッシャートロプシュワックス 7質量部
(融点85℃、Mw=2000、Mn=1500)。
なお、Tgはガラス転移点を表す。
この水系分散媒体に重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート7質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前述の水系媒体中にこの重合性単量体組成物を投入し、温度60℃、窒素雰囲気下において、前記TK式ホモミキサーを用いて8,000rpmで攪拌し、造粒した。その後、プロペラ式攪拌装置に移して攪拌しつつ、温度70℃に昇温し、更に5時間後、温度80℃で5時間反応を行い、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、重合体粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍の水量で洗浄し、ろ過、乾燥の後、分級によって粒子径を調整してシアントナー粒子を得た。
さらに、このシアントナー粒子100質量部に対して、シリカ(アエロジル社製、商品名:R972)1.5質量部と酸化チタン(商品名:P25、日本アエロジル製)0.3質量部をヘンシェルミキサー(三井三池社製)で混合してシアン現像剤を得た。
このシアン現像剤の溶融開始温度を調べたところ83℃であった。
さらに、上記と同じ方法でスチレンとn−ブチルアクリレートの質量部数のみを変化させてシアン現像剤を作製し、表5に示すように溶融開始温度の異なるシアン現像剤を作製した。
Figure 2008304768
表5の結果より、実施例5−1〜5−5において、いずれも現像ローラ表面の現像剤固着層を除去し、再利用可能なレベルに画像品質を良化することができた。さらに、現像剤の溶融開始温度を70〜100℃の範囲とした実施例5−2〜5−4において、画像品質をさらに良化することができた。
(実施例6)
表面層の原料液を硬化させる加熱処理条件を変化させた以外は実施例1と同じ条件で、表面層の架橋密度の異なる現像ローラを作製した。具体的には、温度140℃にて加熱処理時間のみを30分、45分、70分、120分、180分に変更することで、表面層の架橋密度を表6に示すように変化させた。このとき、Raはいずれも1.5μmであった。
さらに、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した後、実施例1と同じ条件で再生処理を行い、同じく評価を実施した。このとき、プラズマの発生領域の幅は、いずれも8.0mmであった。評価結果を表6に示す。
なお、表中の「×10−4」は、「×10-4」を意味する。
Figure 2008304768
表6の結果より、実施例6−1〜6−5において、いずれも現像ローラ表面の現像剤固着層を除去し、再利用可能なレベルに画像品質を良化することができた。
さらに、現像ローラの表面層の架橋密度を3.0×10-4〜8.0×10-4mol/cm3の範囲とした実施例6−2〜6−4において、現像剤固着層を効率良く除去して画像品質をさらに良化することができた。
(実施例7)
実施例7−1〜7−5
現像ローラの表面層の材料である、ポリウレタンプレポリマーを得る際の反応時間を2.5時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間と変化させた。こうして、重量平均分子量Mwが4500、5000、8000、12000、13000の異なるポリウレタンプレポリマーを得た。これらのポリウレタンプレポリマーを使用する以外は、実施例1と同じ条件で、現像ローラを作製した。ただし、NCO当量の比率は1.3となっている。このとき、表7に示すように表面層の架橋密度が変化し、Raはいずれも1.5μmであった。これらの現像ローラに対して、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した後、実施例1と同じ条件で再生処理を行い、同じく評価を実施した。このとき、プラズマの発生領域の幅は、いずれも8.0mmであった。評価結果を表7に示す。
実施例7−6〜7−10
さらに、ポリウレタンプレポリマーとイソシアネートとを混合する際のNCO当量の比率を、表7に示すように変化させた以外は実施例1と同じ条件で、現像ローラを作製した。このとき、表7に示すように表面層の架橋密度が変化し、Raはいずれも1.5μmであった。同じく、これらの現像ローラに対して、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した後、実施例1と同じ条件で再生処理を行い、同じく評価を実施した。このとき、プラズマの発生領域の幅は、いずれも8.0mmであった。評価結果を表7に合わせて示す。
Figure 2008304768
表7の結果より、実施例7−1〜7−10において、いずれも現像ローラ表面の現像剤固着層を除去し、再利用可能なレベルに画像品質を良化することができた。
さらに、ポリウレタンプレポリマーの重量平均分子量を5000〜12000とし、ポリウレタンプレポリマーとイソシアネートとを混合する際のNCO当量の比率を1.1〜1.5とした例が、実施例7−2〜7−4と実施例7−7〜7−9である。これらの例においては、現像剤固着層を効率良く除去して画像品質をさらに良化することができた。
(実施例8)
実施例1と同じ条件で、Raが1.5μm、表面層の架橋密度が4.5×10-4mol/cm3の現像ローラを作製し、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した。
その後、赤外線ランプの出力を調整して、Heプラズマ処理開始前の現像ローラの表面温度を表8に示すように変化させた以外は、実施例1と同じ条件で再生処理を行い、同じく評価を実施した。その評価結果を表8に示す。プラズマの発生領域の幅は、いずれも8.0mmであった。
Figure 2008304768
表8の結果より、実施例8−1〜8−6において、いずれも現像ローラ表面の現像剤固着層を除去し、再利用可能なレベルに画像品質を良化することができた。さらに、表面温度を予め70℃〜100℃に加熱した後に、Heプラズマ処理を行った実施例8−3〜8−5において、現像剤固着層を効率良く除去して画像品質をさらに良化することができた。
(実施例9)
実施例9−1〜9−3では、Hewlett−Packard社製 Color Laser Jet3600(商品名)の電子写真用画像形成装置に搭載されている帯電ローラ、転写ローラ、定着ローラについて評価を実施した。
実施例1と同様に画像形成を行い、白抜けして画像が形成されなくなった後に、さらにプロセスカートリッジを交換して繰り返し画像形成を行うことで、それぞれの電子写真用部材に現像剤固着層を形成した。現像剤固着層の形成は、帯電ローラにおいては現像剤固着層に起因する縦黒スジの発生により判断した。転写ローラにおいては現像剤固着層に起因する印刷画像裏面の現像剤汚れの発生により判断した。定着ローラにおいては現像剤固着層に起因する印刷画像表面の未定着現像剤の発生により判断した。
これらの電子写真用部材を電子写真用画像形成装置から取り外して、実施例1と同じ条件で再生処理を行い、同じく評価を実施した。このとき、プラズマの発生領域の幅は、いずれも8.0mmであった。
その後、外観評価として外観でプラズマ処理に起因するキズや斑点模様の有無を顕微鏡及び画像形成により評価した後、再度電子写真用画像形成装置に設置し、温度15℃、湿度10%RHの環境で、現像剤固着層に起因する画像不良が解消されているかを調べた。
これらの結果について、外観上の弊害も現像剤固着層に起因する画像不良も存在しなかった場合を「A」とした。また、外観でキズや斑点模様が確認できたが画像弊害が存在しなかった場合を「B」とした。そして、外観のキズや斑点模様に対応する画像弊害が確認できたか、現像剤固着層に起因する画像不良が解消されていなかった場合を「C」として、評価を行った。
さらに、耐久評価として、同じく温度15℃、湿度10%RHの環境で、25000枚の通紙耐久を行い、現像剤固着層に起因する画像不良の発生の有無を調べた。この結果について、現像剤固着層に起因する画像不良が発生しなかった場合を「A」、現像剤固着層に起因する画像不良が発生した場合を「B」として、評価を行った。これらの評価結果を表9に示す。
実施例9−4では、Hewlett−Packard社製 LaserJet 4240(商品名)の電子写真用画像形成装置に搭載されている現像スリーブについて評価を実施した。
電子写真用画像形成装置を変更した以外は、実施例1と同様に現像剤固着層を形成した後、実施例1と同じ条件でHeプラズマ処理を実施した。その後、実施例9−1〜9−3と同じ評価を行った。その評価結果を表9に示す。
Figure 2008304768
表9の結果より、実施例9−1〜9−4において、いずれの電子写真用部材においても、現像剤固着層を効率良く除去して画像品質を良化することができ、再利用が可能であった。
本発明を実施するために用いることのできるプラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。 (a)および(b)はそれぞれ本発明に係わるプラズマ処理における、電子写真用部材の長手方向に対するプラズマの発生領域の例を説明するための模式図である。 (a)〜(c)はそれぞれ本発明に係わるプラズマ処理における、処理部材の周方向に対するプラズマの発生領域を説明するための模式図である。 本発明に係わる電子写真用部材の一例である現像スリーブの模式図であり、(a)は長手方向に平行な断面を、(b)は長手方向に垂直な断面を示す図である。 本発明に係わる電子写真用部材の一例である現像ローラの模式図であり、(a)は長手方向に平行な断面を、(b)は長手方向に垂直な断面を示す図である。 本発明に係わる電子写真用プロセスカートリッジおよび電子写真用画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
符号の説明
10 プラズマ処理装置
11 チャンバー
12 プラズマ電極
13 高周波電源
14 ガス導入口
15 ガス排気口
16 支持部
17 回転駆動部
18 パージ口
20 電子写真用部材
30 プラズマ
31 誘電体壁面
40 現像スリーブ
41 円筒状の軸芯体
42 被覆層
50 現像ローラ
51 軸芯体
52 弾性層
53 表面層
600 電子写真用画像形成装置
601 感光ドラム
602 帯電ローラ
603 露光
604 現像ローラ
605 現像剤
606 給紙ローラ
607 記録材
608 転写ローラ
609 定着ローラ
610 加圧ローラ
611 クリーニング部
612 廃現像剤容器
613 現像剤供給ローラ
614 現像剤貯槽
615 現像ブレード

Claims (12)

  1. 円柱状或いは円筒状の導電性の軸芯体と該軸芯体の周囲に少なくとも一層の被覆層を有する電子写真用部材の表面に固着した現像剤の除去方法であって、
    該電子写真用部材の表面をHeプラズマ処理することにより該現像剤を除去する工程を有することを特徴とする電子写真用部材の現像剤除去方法。
  2. 前記被覆層の厚さが1.0mm以上、5.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  3. 前記Heプラズマを92000Pa以上、111000Pa以下の圧力下で発生させることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  4. 前記Heプラズマを前記電子写真用部材の周方向の一部に発生させて、該電子写真用部材を回転駆動しながらHeプラズマ処理し、かつ、
    該Heプラズマの発生領域の周方向の幅が、該電子写真用部材の外周長の1/20以上、1/3以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  5. 前記現像剤が少なくとも結着樹脂と着色剤を含み、該現像剤の溶融開始温度が70℃以上、100℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  6. 前記電子写真用部材が、前記被覆層として、少なくとも一層の弾性層と、該弾性層の外周に配された少なくとも1層の表面層を有し、
    該表面層の架橋密度が3.0×10-4mol/cm3以上、8.0×10-4mol/cm3以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  7. 前記表面層が、重量平均分子量が5000以上12000以下であるポリウレタンプレポリマーと、イソシアネートとを、NCO当量が1.1以上1.5以下の比率で混合し反応させたバインダー樹脂を含有することを特徴とする請求項6に記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  8. 前記電子写真用部材の表面温度を予め70℃以上100℃以下に加熱した後に、前記プラズマ処理を行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  9. 前記電子写真用部材が、静電潜像を形成するための感光体に当接配置され、該感光体上に静電潜像を現像し、現像剤像を形成するために用いられる現像ローラであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子写真用部材の現像剤除去方法。
  10. 請求項1乃至9のいずれかに記載の現像剤除去方法により再生されたことを特徴とする電子写真用部材。
  11. 少なくとも静電潜像を形成するための感光体と、該感光体に当接配置される帯電部材及び現像部材とを具備する、電子写真用画像形成装置に着脱可能に構成された電子写真用プロセスカートリッジにおいて、
    請求項10に記載の電子写真用部材を具備することを特徴とする電子写真用プロセスカートリッジ。
  12. 少なくとも静電潜像を形成するための感光体と、該感光体に当接配置される帯電部材及び現像部材とを具備する電子写真用画像形成装置において、
    請求項10に記載の電子写真用部材を具備することを特徴とする電子写真用画像形成装置。
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