JP2008303473A - 静電気除去部材 - Google Patents
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Abstract
【課題】
可撓性に富み、且つ摩擦、屈曲、捩れ等に対する性能の変化の小さい静電気除去部材を提供する。
【解決手段】
平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または、平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いることを特徴とする静電気除去部材。
【選択図】なし
可撓性に富み、且つ摩擦、屈曲、捩れ等に対する性能の変化の小さい静電気除去部材を提供する。
【解決手段】
平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または、平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いることを特徴とする静電気除去部材。
【選択図】なし
Description
本発明は、摩擦、屈曲、捩れ等に対して高い耐久性を持つ導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いることによって得られる、可撓性に富み、且つ摩擦、屈曲、捩れ等に対する性能の変化の小さい静電気除去部材に関する。
従来、カーボン繊維、金属メッキ繊維、あるいはカーボンブラック等の導電性フィラーを含有した導電性繊維が広く産業分野で使用されているが、近年、特に急速に普及発展した電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、プリンター等での用途が拡大している。複写機の原理は、まず第1ステップでは、静電画像保持部である感光体と呼ばれている薄い半導体層の全面に金属線の先端からの非接触でコロナ放電にて帯電させるか、ないしは印加ローラーや印加ブラシによる接触帯電方式により均一に帯電させる。次に第2ステップでは、原稿に光を照射し、レンズを通して原稿からの反射光を感光体の上に結像させる、この操作により光の当たった感光体部分は電流を流すようになって電化は消失し、原稿に対応した電荷による静電潜像が形成する。次に第3ステップでは、静電潜像にトナーを近づけトナーが感光体に移動して静電潜像が可視化される。さらに第4ステップでは、感光体上のトナーによりできた像を紙に転写するとともに加熱してトナーを紙の繊維の間に浸透定着させる。そして、第5ステップでは、感光体上に残存している電荷およびトナーをクリーニングブラシで除去して次のコピーに備えるといった一連の操作を繰り返している。前記した導電性繊維はこの第5ステップにあるクリーニングブラシに用いられている。
しかしながら、導電性繊維として、カーボン繊維を使用した場合、摩耗、屈曲、捩れ等の外力に対して非常に弱く、使用を重ねていくにしたがって耐久性の点で問題が生じる。この現象は金属メッキを施した導電性繊維にも同じことが言え、金属メッキの剥がれによって性能劣化が生じるといった問題がある。一方、カーボンブラック等の導電性フィラーを含有した導電性繊維の使用が種々検討されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
これら特許文献1〜3の場合は、摩耗、屈曲、捩れ等の外力に対しては問題ないものの、導電性が低い(抵抗が高い)ことから、除電性能が充分満足されていない状況にある。
これら特許文献1〜3の場合は、摩耗、屈曲、捩れ等の外力に対しては問題ないものの、導電性が低い(抵抗が高い)ことから、除電性能が充分満足されていない状況にある。
本発明の目的は、可撓性に富み、且つ摩擦、屈曲、捩れ等に対する性能の変化の小さい静電気除去部材を提供することにある。
本願発明者等は上記した静電気除去部材を得るべく鋭意検討を重ねた結果、平均粒子径が500nm以下の硫化銅微粒子を繊維の表層、及び/または内部に含有されてなる導電性ポリビニルアルコール(以下、PVAと称す)系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いることよって、可撓性に富み、且つ摩擦、屈曲、捩れ等に対する性能の変化の小さい静電気除去部材が得られることを見出した。さらには、導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の体積固有抵抗値を1×108〜1×10−2Ω・cmの範囲とすることによって静電気除去部材として好適に使用できることを見出した。
すなわち本発明は、平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性PVA系繊維、及び/または、平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いることを特徴とする静電気除去部材であり、好ましくは導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の体積固有抵抗値が1×108〜1×10−2Ω・cmであることを特徴とする上記の静電気除去部材である。
また本発明は、好ましくは上記の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維をブラシ毛に用い、該ブラシ毛と、これに接触する導電体とを備えた静電気除去部材であって、ブラシ毛が所定の長さに揃えた単糸状体、あるいは束状体で並列に配列し、その間隔が5〜40本/インチであることを特徴とする静電気除去部材である。
さらに本発明は、好ましくは上記の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を、織物、あるいは編物とした帯状物とするか、もしくは1800dtexを超える繊維束とし、静電気除去物と接触、または近接させることを特徴とする静電気除去部材である。
さらに本発明は、好ましくはブラシ毛部分の50〜100重量%が上記の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維であり、該ブラシ毛がパイル織物をテープ状に裁断して、円筒状のシャフトの表面に螺旋状に巻きつけたことを特徴とする静電気除去部材である。
そして本発明は、好ましくは0.5〜15mmにカットした上記の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を50〜100重量%、その他の非導電性繊維、及び/またはその他の導電性繊維の0.5〜15mmにカットした繊維を0〜50重量%とし、これらのカット糸をフロッキー加工により金属シャフトに植毛したことを特徴とする静電気除去部材である。
本発明によれば、可撓性に富み、且つ摩擦、屈曲、捩れ等に対する性能の変化の小さい静電気除去部材を提供することができ、例えば、電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、プリンター等に使用される除電ブラシや、樹脂成形品の乾燥工程出口での静電気除去、あるいはフィルム製造や製紙時の乾燥工程後の静電気除去等に有用な静電気除去部材が提供できる。
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の静電気除去部材は、図1に示すように平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性PVA系繊維、及び/または、平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を含む必要がある。このように導電性を発現する硫化銅が微粒子であること、そして該微粒子が繊維の表層、及び/または内部に微分散して含有されていることにより、高い導電性に加えて、摩擦、屈曲、捩れを伴う使用において粒子の脱落や劣化がないので、この導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を含む静電気除去部材は、耐久性に優れるものとすることができる。なお、ここで言う表層とは繊維表面から1μm程度の深さの範囲のことを示し、繊維の内部とは繊維の表面から繊維の中心までの全体、または一部の範囲のことを示す。繊維の表面にのみ硫化銅粒子が付着している繊維は本発明の静電気除去部材に使用できる導電性PVA系繊維の範囲外であり、このような繊維からなる静電気除去部材は本発明の静電気除去部材の特徴である摩擦、屈曲、捩れによる耐久性に不足するものになってしまうため好ましくない。
本発明の静電気除去部材に用いる導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の体積固有抵抗値は1×108〜1×10−2Ω・cmの範囲であることが好ましい。体積固有抵抗値が1×108Ω・cmより高い場合は、抵抗が高いために静電気除去性能が劣るため好ましくない。逆に体積固有抵抗値が1×10−2Ω・cmより低い場合は、問題なく使用可能であるが、静電気除去性能としては過剰であり、さらに500nm以下の硫化銅微粒子の含有量を増やす必要があるために高コストとなることから好ましくない。より好ましくは1×105〜1×10−1Ω・cmである。なお、ここで言う体積固有抵抗値は後述の方法により測定される。
前記繊維の体積固有抵抗値を制御する方法としては、前記繊維の表層、及び/または内部に含有させる500nm以下の硫化銅微粒子の量をコントロールしてやればよい。その硫化銅微粒子の含有量は、1〜40質量%であることが好ましく、さらには5〜20質量%であることが好ましい。また、別の方法としては、前記繊維の表層、及び/または内部に500nm以下の硫化銅微粒子を含有させた後、延伸することで体積固有抵抗値を制御することも可能である。
前記繊維の体積固有抵抗値を制御する方法としては、前記繊維の表層、及び/または内部に含有させる500nm以下の硫化銅微粒子の量をコントロールしてやればよい。その硫化銅微粒子の含有量は、1〜40質量%であることが好ましく、さらには5〜20質量%であることが好ましい。また、別の方法としては、前記繊維の表層、及び/または内部に500nm以下の硫化銅微粒子を含有させた後、延伸することで体積固有抵抗値を制御することも可能である。
次に本発明の静電気除去部材に使用する導電性PVA系繊維のPVAポリマーについて説明する。該導電性PVA系繊維のPVAポリマーの重合度については特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的特性や寸法安定性等を考慮すると30℃水溶液の粘度から求めた平均重合度が1200〜20000のものが望ましい。高重合度のものを用いると、強度、耐湿熱性等の点で優れるので好ましいが、ポリマー製造コストや繊維化コストなどの観点から、より好ましくは、平均重合度が1500〜5000である。
また、該導電性PVA系繊維のPVA系ポリマーのケン化度も特に限定されるものではないが、得られる繊維の力学物性の点から、88モル%以上であることが好ましい。PVA系ポリマーのケン化度が88モル%よりも低いものを使用した場合、得られる繊維の機械的特性や工程通過性、製造コストなどの面で好ましくない。
本発明の静電気除去部材に用いる導電性PVA系繊維を形成するPVA系ポリマーは、ビニルアルコールユニットを主成分とするものであれば特に限定されず、本発明の効果を損なわない限り、所望により他の構成単位を有していてもかまわない。このような構造単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類、アクリル酸及びその塩とアクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、ポリアルキレンオキシドを側鎖に有するアリルエーテル類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル、マレイン酸およびその塩またはその無水物やそのエステル等の不飽和ジカルボン酸等がある。このような変性ユニットの導入法は共重合による方法でも、後反応による方法でもよい。しかしながら、本発明の目的とする繊維を得るためにはビニルアルコール単位が88モル%以上のポリマーがより好適に使用される。但し、前記ビニルアルコール単位の範囲は、繊維化方法として湿式紡糸、乾湿式紡糸、もしくは乾式紡糸を前提としたものであり、後述する導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維については、溶融紡糸にて繊維化するため、好適な範囲は異なる。
次に、本発明の静電気除去部材に使用するPVA系繊維は、前記したPVA系ポリマーの種類により、湿式紡糸、乾湿式紡糸、乾式紡糸等の公知の方法によって繊維化することができる。ここでは、より安価に製造が可能なPVA系ポリマーを水あるいは有機溶剤に溶解した紡糸原液を用いて湿式紡糸によって製造する方法を例示する。紡糸原液を構成する溶媒としては、例えば水、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒やグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、およびこれらとロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、さらにはこれら溶媒同士、あるいはこれら溶媒と水との混合物などが挙げられるが、これらの中でも、とりわけ水やDMSOがコスト、回収性等の工程通過性の点で最も好適である。
紡糸原液中のポリマー濃度は組成、重合度、溶媒によって異なるが、8〜60質量%の範囲であることが好ましい。紡糸原液の吐出時の液温は、紡糸原液が分解、着色しない範囲であることが好ましく、具体的には50〜200℃とすることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはPVA系ポリマー以外にも、目的に応じて、難燃剤、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤、特殊機能剤などの添加剤などが含まれていてもよい。更にこれらは、一種類または二種類以上のものを併用して使用してもかまわない。
かかる紡糸原液をノズルから吐出して湿式紡糸、乾湿式紡糸あるいは乾式紡糸を行えばよく、PVA系ポリマーに対して固化能を有する固化液あるいは、気体中に吐出すればよい。なお、湿式紡糸とは、紡糸ノズルから直接固化浴に紡糸原液を吐出する方法のことであり、乾湿式紡糸とは、紡糸ノズルから一旦任意の距離の空気中あるいは不活性ガス中に紡糸原液を吐出し、その後に固化浴に導入する方法のことである。また、乾式紡糸とは、空気中あるいは不活性ガス中に紡糸原液を吐出する方法のことである。
本発明において、湿式紡糸または乾湿式紡糸の際に用いる固化浴は、原液溶媒が有機溶媒の場合と水の場合では異なる。有機溶媒を用いた原液の場合には、得られる繊維強度等の点から固化浴溶媒と原液溶媒からなる混合液であることが好ましく、固化溶媒としては特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノ−ル、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類等のPVA系ポリマーに対して固化能を有する有機溶媒を用いることができる。これらの中でも低腐食性及び溶剤回収の点でメタノールとDMSOとの組合せが好ましい。一方、紡糸原液が水溶液の場合、固化浴を構成する固化溶媒としては、芒硝、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等のPVA系ポリマーに対して固化能を有する無機塩類や苛性ソーダの水溶液を用いることができる。また、PVA系ポリマーと共に、ホウ酸などを加えた水溶液をアルカリ性固化浴中にゲル化紡糸することもできる。
次に固化された原糸から紡糸原液の溶媒を抽出除去するために、抽出浴を通過させるが、抽出時に同時に原糸を湿延伸することが、乾燥時の繊維間膠着抑制及び得られる繊維の機械的特性を向上させるうえで好ましい。その際の湿延伸倍率としては2〜10倍であることが工程性、生産性の点で好ましい。抽出溶媒としては固化溶媒単独あるいは原液溶媒と固化溶媒の混合液を用いることができる。
湿延伸後、乾燥し、更に場合によっては乾熱延伸、熱処理を施す。このための延伸条件は、一般的には100℃以上の温度、好ましくは150℃〜260℃の温度で行うのがよく、3倍以上の全延伸倍率、好ましくは5〜25倍の全延伸倍率で延伸すると、繊維の結晶化度と配向度があがり、繊維の機械特性が著しく向上するので好ましい。温度が100℃未満の場合、繊維の白化が生じ、そのため機械的物性の低下をもたらす。また260℃を越えると繊維の部分的な融解が生じ、この場合においても機械的物性の低下をもたらすので好ましくない。なお、ここでいう延伸倍率とは、先述した乾燥前の固化浴中での湿延伸と乾燥後の延伸倍率の積である。例えば、湿延伸を3倍とし、その後の乾熱延伸を2倍とした場合の全延伸倍率は6倍となる。
また本発明においては、得られる繊維の繊度は特に限定されず、例えば0.1〜100000dtex、好ましくは0.3〜50000dtex、より好ましくは、1〜10000dtexである。
また本発明においては、得られる繊維の繊度は特に限定されず、例えば0.1〜100000dtex、好ましくは0.3〜50000dtex、より好ましくは、1〜10000dtexである。
次に本発明の静電気除去部材に用いる導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維について説明する。該繊維は溶融紡糸により繊維化される。形成するエチレンビニルアルコール共重合体としては、エチレン含有量20〜70モル%、好ましくは25〜55モル%、特に好ましくは30〜50モル%以下の共重合体を用いる。エチレン含有量が低い場合には曳糸性、耐久性等に問題が生じ、エチレン含有量が高すぎる場合には後述する硫化銅微粒子を生成する工程で、本発明の効果を発揮するに十分な硫化銅微粒子を含有させるのが困難となることから好ましくない。よって、ビニルアルコールユニット含有量は30〜80モル%、特に45〜75モル%、さらに50〜70モル%であるのが好ましい。また、エチレン含有量と融点の関係については、概ね下記式で表され、融点としては120〜205℃が好ましい。
融点(℃)=237.1−<エチレン含有量(モル%)×1.654>
融点(℃)=237.1−<エチレン含有量(モル%)×1.654>
本発明に使用されるエチレンビニルアルコール共重合体の製造方法は特に限定されないが、エチレン酢酸ビニル系共重合体をケン化することにより効率的に製造できる。親水性点からはビニルアルコールユニットのケン化度は95モル%以上、特に98モル%以上であるのが好ましい。また該共重合体の平均分子量は、紡糸性、耐熱水性等の点から500〜5000、特に800〜3500程度とするのが好ましい。
本発明の効果を損わない範囲であればビニルアルコール成分(又は酢酸ビニル成分)及びエチレン成分以外の成分が含まれていても構わないが、本発明の効果を効率的に得る点からは、エチレンユニット及びビニルアルコールユニット以外の共重合成分が30モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。該繊維は単一のポリマーからなる単独繊維でも良いし、複数のポリマーからなる芯鞘型、サイドバイサイド型、層状分割型、放射状分割型等の複合繊維や海島繊維(混合紡糸繊維)でも良い。複合繊維や海島繊維の場合には、繊維表面の一部または全部にエチレンビニルアルコール共重合体が露出している必要がある。また、繊維を構成する他の成分には汎用の溶融系ポリマー(例えばポリエステル、ポリオレフィンなど)が好適に使用でき、特に鞘成分にエチレンビニルアルコール共重合体、芯成分にポリエステルを用いた組み合わせが好ましい。
本発明の効果を損わない範囲であればビニルアルコール成分(又は酢酸ビニル成分)及びエチレン成分以外の成分が含まれていても構わないが、本発明の効果を効率的に得る点からは、エチレンユニット及びビニルアルコールユニット以外の共重合成分が30モル%以下、特に10モル%以下であるのが好ましい。該繊維は単一のポリマーからなる単独繊維でも良いし、複数のポリマーからなる芯鞘型、サイドバイサイド型、層状分割型、放射状分割型等の複合繊維や海島繊維(混合紡糸繊維)でも良い。複合繊維や海島繊維の場合には、繊維表面の一部または全部にエチレンビニルアルコール共重合体が露出している必要がある。また、繊維を構成する他の成分には汎用の溶融系ポリマー(例えばポリエステル、ポリオレフィンなど)が好適に使用でき、特に鞘成分にエチレンビニルアルコール共重合体、芯成分にポリエステルを用いた組み合わせが好ましい。
本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の繊維横断面は単独繊維、複合繊維、海島繊維によらず、丸型、扁平型、中空型,T型、三角型、繭型、複数の凹凸を有する多葉型などの形状で、繊維化工程のトラブルに問題がなければ特に限定されるものではない。もちろん本発明の効果を損なわない範囲であれば、目的に応じてポリマー中に酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤、特殊機能剤などの添加剤が含まれていてもよい。
本発明の静電気除去部材に用いる導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維は、前記PVA系ポリマー、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体以外の構成成分として、硫化銅微粒子を含有することが必須である。かかる硫化銅微粒子は一価の硫化銅でも二価の硫化銅でもよいが、その平均粒子径は500nm以下であることが必要であり、300nm以下であるような微粒子であることが好ましく、100nm以下であるようなナノ微粒子であると更に好ましい。このような微粒子であることにより、繊維中での粒子間距離の著しい減少が可能となり、少ない含有量にて高い導電性を発現することができる。例えば、同じ質量%の含有量において、粒子径が百分の一になると、粒子間距離は一万分の一にまで小さくなることが知られている。このような場合、粒子間相互作用が非常に強く働き、その間に挟まれたポリマー分子は、あたかも粒子と同じような機能を示すことも知られている[例えば、ナノコンポジットの世界、p22(工業調査会)参照]。従って、このサイズ効果により、繊維内部にて電流が流れやすくなり、少ない量でも、優れた導電性を付与することができ、それ故、このような繊維を用いた静電気除去部材は優れた静電気除去性能を発現する。一方で、繊維中の硫化銅微粒子の平均粒子径が500nmより大きい場合、所望の導電性を発現させるためには多量の粒子を含有させる必要があり、その場合、繊維自体の力学物性が低下し、耐屈曲性や布帛にする際の工程通過性が悪化するので好ましくない。なお本発明の静電気除去部材を構成する導電性PVA系繊維中、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維中の硫化銅微粒子は、透過型顕微鏡(TEM)にて初めてその存在形態を確認することができる。
こうして得られたPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維をそのまま長繊維の状態で、以下に示す方法により、繊維表層、及び/または内部に硫化銅微粒子を生成しても構わないし、短繊維とした後に以下に示す方法により上記の方法により、繊維表層、及び/または内部に硫化銅微粒子を生成しても構わない。あるいは、紡績糸の状態で繊維表層、及び/または内部に硫化銅微粒子を生成することも可能である。一方、得られたPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を織布または不織布の形態にしてから以下に示す方法によって繊維表層、及び/または内部に硫化銅微粒子を生成しても何ら問題はない。
本発明の静電気除去部材に用いるPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の表層、及び/または内部に硫化銅微粒子を生成する方法は以下の通りである。
湿延伸後の膨潤状態のPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の糸篠、若しくは乾燥または延伸後のPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の糸篠を、銅イオンを含む化合物を溶解した浴を通過させて該化合物を繊維中に含有させる。この場合、繊維内部への銅イオンを含む化合物の均一浸透させ、銅イオンをPVA系ポリマーの水酸基と配位結合を形成せしめるためには、繊維は浴溶媒により膨潤していることが必須であり、そのためには浴に用いる溶媒はメタノール等のアルコール類や水、塩類あるいはこれらの混合物であることが好ましい。その時の浴溶媒による繊維の膨潤率は20質量%以上であることが好ましい。なお、膨潤率調整のため、糸篠を先ず所定の浴に浸漬し、その後、銅イオンを放出する化合物が溶解された浴に浸漬する事が望ましい場合もある。膨潤率が20質量%未満の場合、銅イオンがPVA系ポリマーの水酸基と十分な配位結合を形成できず、従って繊維内部まで硫化銅ナノ微粒子を生成させることができない。一方で、膨潤率が大きくなりすぎた場合、浴へのPVA系ポリマーの溶出などが起こり、工程通過性の面で好ましくない。以上のことから、銅イオンを含む化合物が溶解された浴での膨潤率は30質量%以上300質量%以下であることが好ましく、50質量%以上250質量%以下であることがより好ましい。
湿延伸後の膨潤状態のPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の糸篠、若しくは乾燥または延伸後のPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の糸篠を、銅イオンを含む化合物を溶解した浴を通過させて該化合物を繊維中に含有させる。この場合、繊維内部への銅イオンを含む化合物の均一浸透させ、銅イオンをPVA系ポリマーの水酸基と配位結合を形成せしめるためには、繊維は浴溶媒により膨潤していることが必須であり、そのためには浴に用いる溶媒はメタノール等のアルコール類や水、塩類あるいはこれらの混合物であることが好ましい。その時の浴溶媒による繊維の膨潤率は20質量%以上であることが好ましい。なお、膨潤率調整のため、糸篠を先ず所定の浴に浸漬し、その後、銅イオンを放出する化合物が溶解された浴に浸漬する事が望ましい場合もある。膨潤率が20質量%未満の場合、銅イオンがPVA系ポリマーの水酸基と十分な配位結合を形成できず、従って繊維内部まで硫化銅ナノ微粒子を生成させることができない。一方で、膨潤率が大きくなりすぎた場合、浴へのPVA系ポリマーの溶出などが起こり、工程通過性の面で好ましくない。以上のことから、銅イオンを含む化合物が溶解された浴での膨潤率は30質量%以上300質量%以下であることが好ましく、50質量%以上250質量%以下であることがより好ましい。
次にPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の内部と表面で配位結合している銅イオンを硫化還元処理する目的で、硫化物イオンを含む化合物を溶解した浴を通過させる必要がある。その場合、硫化物イオンを含む化合物の浴への添加量は銅イオンの導入量によって必要に応じて適宜設定すればよいが、1〜100g/Lの範囲であることが好ましい。添加量が1g/L未満の場合、繊維内部の銅イオンまで還元処理が進まない可能性があるので好ましくない。また100g/Lを超える場合は、PVA系繊維内、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維内に含まれる銅イオンを還元処理するに十分な量ではあるが、回収系や臭気問題など工程性の面であまり好ましくない。
繊維に含浸された銅イオンを硫化する反応は、特に硫化還元能の大きい化合物を用いた場合は瞬時に起こることから、この場合の滞留時間には特に制限はないが、繊維内部にまで十分硫化還元処理を施すことを目的に、滞留時間は0.1秒以上であることが望ましい。また、また、先述した銅イオンを含浸させる工程、ここでいう銅イオンを繊維中で硫化析出させる工程にて、特定の周波数の超音波を照射することが、得られる導電性や品質確保において、有利になることもある。
一方で、硫化銅粒子を予め原液から仕込んだ場合には、繊維中にナノ微粒子を分散させることはできず、所望の物性を発現させるには、多量の硫化銅粒子の添加が必要となる。この場合、原液中での分散不良や、凝集、沈降などが起こり、繊維化工程、その後の延伸性が低下し、結果として結晶化度が低く、ある程度の導電性は付与できても、機械的特性の低い繊維しか得られない。また、あらかじめ銅イオンを配位させたPVA系ポリマー、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体を原料として使用した場合は、銅の配位による溶液粘度の上昇や、固化性が悪化するなど、工程性が悪化することに加えて、得られる繊維の力学物性は低いものとなる。
このようにして得られた、繊維中に硫化銅微粒子を導入された原糸若しくは延伸糸に、熱処理を施し繊維物性を向上させることで、本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を製造することができる。このための熱処理条件は、一般的には100℃以上の温度、好ましくは150℃〜260℃の温度で行うのがよい。温度が100℃未満の場合、繊維物性の向上効果が不十分である。また260℃を越えると繊維の部分的な融解が生じ、この場合においても機械的物性の低下をもたらすので好ましくない。
得られた導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維は各々を100%静電気除去部材として使用しても良いし、それぞれを混合して静電気除去部材として使用しても構わない。さらには、本発明の性能を損なわない範囲で他繊維と混紡して使用することも可能である。また、従来公知の方法により、織布あるいは不織布とすることで静電気除去部材として使用することも可能でなる。なお、ここで言う織布あるいは不織布についても該導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の他に、本発明の性能を損なわない範囲であれば他の繊維が混合されていても何ら差し支えない。一方で、前記したPVA系繊維、及び/またはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を、織布あるいは不織布とした後に、繊維表層、及び/または内部に硫化銅微粒子を生成させる方法も、上述した方法に従えば、本発明の静電気除去部材として使用が可能となる。このような方法によるとメルトブローン法やエレクトロスピニング法などの方法で得られた不織布にも対応が可能となるため、より緻密且つ薄厚のシートを要望される場合に好適に使用できる製造方法と言える。
こうして得られた静電気除去部材は、そのまま使用しても構わないが、用途によって、水との接触を避ける場合にはその表面に撥水加工を施したり、さらには、必要に応じて難燃加工や抗菌加工を施しても何等差し支えない。
次に静電気除去部材の構造について説明する。本発明の静電気除去部材は、本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維をブラシ毛に用い、このブラシ毛とこれに接触する導電体とを備えたものが一般的に使用できる。ブラシ毛は所定の長さに揃えた単糸状体、あるいは束状体で並列に配列し、その間隔は5〜40本/インチであるのが好ましく、10〜30本/インチであるのがより好ましい。これは、5本/インチ未満では静電気除去性能が不十分となり、逆に40本/インチを超えてもそれ以上の静電気除去性能は発現しないことによる。単糸状体、あるいは束状体として使用する場合には、繊度は40〜1800dtexであることが好ましく、さらには150〜900dtexがより望ましい。
このブラシ毛に接触するように導電体を備えることが好ましいわけであるが、この導電体については、金属板や導電性合成樹脂板によって把持したもの、あるいは金属製テープや導電性付与テープ(導電性フィラーなどを練り込んだ合成樹脂テープ)により保持したもの、さらには導電性繊維からなる繊維状体を織りあるいは編みによって双方を接触させ、これを金属製の支持体に導電性テープなどで固定するなどの方法によって製造することが可能である。特に導電体として繊維状体を用いた場合には、ブラシ部の可撓性を確保しつつ、また、ブラシ毛の先端側の動きの自由度を確保した状態で導電性を付与することができる。さらには、非導電性の固定部材やテープを用いたとしても前記ブラシ毛の一部、あるいは導電体の一部からアースを取ることにより、各ブラシの静電気除去性能を確保できる。
このブラシ毛に接触するように導電体を備えることが好ましいわけであるが、この導電体については、金属板や導電性合成樹脂板によって把持したもの、あるいは金属製テープや導電性付与テープ(導電性フィラーなどを練り込んだ合成樹脂テープ)により保持したもの、さらには導電性繊維からなる繊維状体を織りあるいは編みによって双方を接触させ、これを金属製の支持体に導電性テープなどで固定するなどの方法によって製造することが可能である。特に導電体として繊維状体を用いた場合には、ブラシ部の可撓性を確保しつつ、また、ブラシ毛の先端側の動きの自由度を確保した状態で導電性を付与することができる。さらには、非導電性の固定部材やテープを用いたとしても前記ブラシ毛の一部、あるいは導電体の一部からアースを取ることにより、各ブラシの静電気除去性能を確保できる。
また、織物や編物で帯状として使用することもできる。その際には静電気除去物と接触、または近接する帯状物の糸条(経糸、及び/または緯糸)に、本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いた織物や編物を使用すればよく、これを前記同様に固定部材やテープを用いて固定し、アースを取ることで静電気除去部材として使用可能となる。さらには、本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いて好ましくは1800dtex、より好ましくは2000dtxを超える繊維束とし、その一端を固定部材やテープ等で固定して、アースを取り静電気除去部材と使用することもできる。なお、ここでいう近接とは、静電気除去物と静電気除去部材の距離を示し、その距離が0mmを超え50mm以内の距離をいう。50mmを超えると静電気除去性能は極端に不十分となる。
あるいは、本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維をパイル織物とし、これをテープ状に裁断して円筒状のシャフトの表面に螺旋状に巻き付けることで静電気除去部材として使用可能である。特にブラシ毛部分の50〜100質量%が本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維であることが望ましく、さらには70〜100質量%配合したものが静電気除去性能の点において好適である。このとき、パイル糸の繊度は300〜1000dtexが望ましく、単糸繊度で1〜20dtexであることが望ましい。これは、静電気除去性能、パイル糸のコシ強さといった性能面の他、織物とする際の工程性を勘案した好適範囲である。
あるいは、好ましくは0.5〜15mm、より好ましくは1〜12mmにカットした本発明の導電性PVA系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を50〜100質量%、その他の非導電性繊維、及び/またはその他の導電性繊維の0.5〜15mmにカットした繊維を0〜50質量%とし、これらのカット糸を、発泡エマルジョン樹脂等をコートした金属シャフトに植毛するフロッキー加工により静電気除去部材とすることもできる。この場合、繊維長が0.5mm未満では繊維の立毛が不十分となり、ブラッシングや静電気除去の点で不十分となる。繊維長が15mmを超えると長期使用により立毛繊維が絡み易くなり静電気除去性能が満足されなくなることから好ましくない。
以下実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明は実施例により何等制限されるものではない。なお、実施例において、繊維の体積固有抵抗値、耐屈曲性試験前後の体積固有抵抗値の変動率は、以下の方法により測定した。
[繊維の体積固有抵抗値 Ωcm]
PVA繊維を温度105℃で1時間かけて乾燥させ、その後、温度20℃、湿度30%の条件下で24時間以上放置させて調湿した。この繊維に対して、長さ2cmの単繊維試験片を採取し、該試験片の両端間に、横河ヒューレットパッカード社製の抵抗値測定機「MULTIMETER」を使用して、10Vの電圧をかけてその抵抗値(Ω)を測定した。そして、体積固有抵抗値(ρ)(Ω・cm)=R×(S/L)により、各試験片の体積固有抵抗値を求め、これを25試料片について行い、その平均値を試料の体積固有抵抗値とした。なお、Rは試験片の抵抗値(Ω)、Sは断面積(cm2)、及びLは長さ(2cm)を示す。ここで、試験片の断面積は、繊維を顕微鏡下で観察することにより算出した。
PVA繊維を温度105℃で1時間かけて乾燥させ、その後、温度20℃、湿度30%の条件下で24時間以上放置させて調湿した。この繊維に対して、長さ2cmの単繊維試験片を採取し、該試験片の両端間に、横河ヒューレットパッカード社製の抵抗値測定機「MULTIMETER」を使用して、10Vの電圧をかけてその抵抗値(Ω)を測定した。そして、体積固有抵抗値(ρ)(Ω・cm)=R×(S/L)により、各試験片の体積固有抵抗値を求め、これを25試料片について行い、その平均値を試料の体積固有抵抗値とした。なお、Rは試験片の抵抗値(Ω)、Sは断面積(cm2)、及びLは長さ(2cm)を示す。ここで、試験片の断面積は、繊維を顕微鏡下で観察することにより算出した。
[耐屈曲性試験前後の体積固有抵抗値の変動率 %]
耐屈曲性試験は、JIS P 8115に準拠して行った。耐屈曲性試験前後の体積固有抵抗値の変動率は、試験前の体積固有抵抗値をρ(i)、試験後の体積固有抵抗値をρ(a)とし、以下の式に従い算出した。
変動率(%)=[(ρ(a)−ρ(i))/ρ(i)]×100
耐屈曲性試験は、JIS P 8115に準拠して行った。耐屈曲性試験前後の体積固有抵抗値の変動率は、試験前の体積固有抵抗値をρ(i)、試験後の体積固有抵抗値をρ(a)とし、以下の式に従い算出した。
変動率(%)=[(ρ(a)−ρ(i))/ρ(i)]×100
[参考例1]
粘度平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAをPVA濃度50重量%となるように水を含水させ、押出し機を通して165℃に加熱し、孔径0.1mm、ホール数200のノズルを通して空気中に乾式紡糸した。巻取り機により160m/分の速度で巻き取った繊維を、200℃の熱風延伸炉中で1.6倍になるように延伸して、単繊維繊度=50dtexのPVA系繊維を得た。
粘度平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAをPVA濃度50重量%となるように水を含水させ、押出し機を通して165℃に加熱し、孔径0.1mm、ホール数200のノズルを通して空気中に乾式紡糸した。巻取り機により160m/分の速度で巻き取った繊維を、200℃の熱風延伸炉中で1.6倍になるように延伸して、単繊維繊度=50dtexのPVA系繊維を得た。
[参考例2]
エチレン含有量44モル%、ケン化度99%のエチレンビニルアルコール共重合体を50重量%、ポリエチレンテレフタレートを50重量%とし、前者が鞘成分、後者が芯成分となるように孔径0.2mm、ホール数2017のノズルを通して溶融紡糸して、鞘芯型複合繊維の未延伸糸(単繊維繊度=5.0dtex)を得た。
エチレン含有量44モル%、ケン化度99%のエチレンビニルアルコール共重合体を50重量%、ポリエチレンテレフタレートを50重量%とし、前者が鞘成分、後者が芯成分となるように孔径0.2mm、ホール数2017のノズルを通して溶融紡糸して、鞘芯型複合繊維の未延伸糸(単繊維繊度=5.0dtex)を得た。
[参考例3]
粘度平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAをPVA濃度16重量%となるように水に投入し、90℃にて窒素雰囲気下で加熱溶解した。得られた紡糸原液中に平均粒径が1μmの硫化銅を30重量%混合し、孔径0.16mm、ホール数1000のノズルを通して飽和芒硝水溶液からなる凝固浴中に湿式紡糸した。さらに、水中で4倍に湿延伸したのち、230℃で3.5倍に乾熱延伸して単繊維繊度=2dtexのPVA系繊維を得た。
粘度平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAをPVA濃度16重量%となるように水に投入し、90℃にて窒素雰囲気下で加熱溶解した。得られた紡糸原液中に平均粒径が1μmの硫化銅を30重量%混合し、孔径0.16mm、ホール数1000のノズルを通して飽和芒硝水溶液からなる凝固浴中に湿式紡糸した。さらに、水中で4倍に湿延伸したのち、230℃で3.5倍に乾熱延伸して単繊維繊度=2dtexのPVA系繊維を得た。
[実施例1]
(1)参考例1で得られたPVA系繊維を、和光純薬(株)製の硝酸銅を200g/L溶解した50℃の温浴に、滞留時間が240秒になるように導糸し、引き続き、和光純薬(株)製の硫化ナトリウムを50g/L溶解した50℃の温水浴に滞留時間が120秒間になるように導糸した。この工程を2回繰り返した後、洗浄するために25℃の水浴を通し、120℃の熱風乾燥することで導電性PVA系繊維を得た。得られた導電性PVA系繊維は、平均粒子径が20nmの硫化銅粒子が繊維の表層部分に多く配置されており、その体積固有抵抗値は4.2×10−1Ωcmであった。
(2)得られた導電性PVA系繊維をブラシ毛に用い、ブラシ毛となる方向に5本/インチ間隔で導電性PVA系繊維を配列して導電性付与テープを用いて金属製支持体に保持して除電ブラシを作製した。
(3)ポリプロピレン製の樹脂板をポリエステル製布帛で3回擦り、その後に上記(2)で作製した除電ブラシでそのポリプロピレン製樹脂板の上を1回なぞったところ、静電気は除去されており、静電気除去効果が確認できた。
(1)参考例1で得られたPVA系繊維を、和光純薬(株)製の硝酸銅を200g/L溶解した50℃の温浴に、滞留時間が240秒になるように導糸し、引き続き、和光純薬(株)製の硫化ナトリウムを50g/L溶解した50℃の温水浴に滞留時間が120秒間になるように導糸した。この工程を2回繰り返した後、洗浄するために25℃の水浴を通し、120℃の熱風乾燥することで導電性PVA系繊維を得た。得られた導電性PVA系繊維は、平均粒子径が20nmの硫化銅粒子が繊維の表層部分に多く配置されており、その体積固有抵抗値は4.2×10−1Ωcmであった。
(2)得られた導電性PVA系繊維をブラシ毛に用い、ブラシ毛となる方向に5本/インチ間隔で導電性PVA系繊維を配列して導電性付与テープを用いて金属製支持体に保持して除電ブラシを作製した。
(3)ポリプロピレン製の樹脂板をポリエステル製布帛で3回擦り、その後に上記(2)で作製した除電ブラシでそのポリプロピレン製樹脂板の上を1回なぞったところ、静電気は除去されており、静電気除去効果が確認できた。
[実施例2]
実施例1で得た導電性PVA系繊維を用いて耐屈曲試験を実施し、その後の導電性能を確認したところ、体積固有抵抗値は5.8×10−1Ωcmであり、変動率は38.1%であった。屈曲試験後の導電性能に変化が少ないことから、充分な耐久性を有しているといえる。
実施例1で得た導電性PVA系繊維を用いて耐屈曲試験を実施し、その後の導電性能を確認したところ、体積固有抵抗値は5.8×10−1Ωcmであり、変動率は38.1%であった。屈曲試験後の導電性能に変化が少ないことから、充分な耐久性を有しているといえる。
[実施例3]
(1)参考例2で得られたエチレンビニルアルコール共重合体/ポリエステル鞘芯型複合繊維を、和光純薬(株)製の硝酸銅を500g/L溶解した70℃の温浴に、滞留時間が240秒になるように導糸し、引き続き、和光純薬(株)製の硫化ナトリウムを50g/L溶解した50℃の温水浴に滞留時間が120秒間になるように導糸した。この工程を2回繰り返した後、洗浄するために25℃の水浴を通し、120℃の熱風乾燥することで導電性PVA系繊維を得た。得られた導電性PVA繊維は、平均粒子径が15nmの硫化銅粒子が繊維鞘部に配置されており、その体積固有抵抗値は3.6×103Ωcmであった。
(2)上記(1)で得られた導電性繊維をブラシ毛に用い、ブラシ毛となる方向に5本/インチ間隔で前記導電性繊維を配列して導電性付与テープを用いて金属製支持体に保持して除電ブラシを作製した。
(3)ポリプロピレン製の樹脂板をポリエステル製布帛で3回擦り、その後に上記(2)で作製した除電ブラシでそのポリプロピレン製樹脂板の上を1回なぞったところ、静電気は除去されており、静電気除去効果が確認できた。
(1)参考例2で得られたエチレンビニルアルコール共重合体/ポリエステル鞘芯型複合繊維を、和光純薬(株)製の硝酸銅を500g/L溶解した70℃の温浴に、滞留時間が240秒になるように導糸し、引き続き、和光純薬(株)製の硫化ナトリウムを50g/L溶解した50℃の温水浴に滞留時間が120秒間になるように導糸した。この工程を2回繰り返した後、洗浄するために25℃の水浴を通し、120℃の熱風乾燥することで導電性PVA系繊維を得た。得られた導電性PVA繊維は、平均粒子径が15nmの硫化銅粒子が繊維鞘部に配置されており、その体積固有抵抗値は3.6×103Ωcmであった。
(2)上記(1)で得られた導電性繊維をブラシ毛に用い、ブラシ毛となる方向に5本/インチ間隔で前記導電性繊維を配列して導電性付与テープを用いて金属製支持体に保持して除電ブラシを作製した。
(3)ポリプロピレン製の樹脂板をポリエステル製布帛で3回擦り、その後に上記(2)で作製した除電ブラシでそのポリプロピレン製樹脂板の上を1回なぞったところ、静電気は除去されており、静電気除去効果が確認できた。
[比較例1]
(1)参考例3で得られたPVA系繊維をブラシ毛に用い、ブラシ毛となる方向に5本/インチ間隔でこのPVA系繊維を配列して導電性付与テープを用いて金属製支持体に保持して除電ブラシを作製した。
(2)ポリプロピレン製の樹脂板をポリエステル製布帛で3回擦り、その後に作製した除電ブラシでそのポリプロピレン製樹脂板の上を1回なぞったところ、静電気は除去されておらず、静電気除去効果が不十分であった。
(1)参考例3で得られたPVA系繊維をブラシ毛に用い、ブラシ毛となる方向に5本/インチ間隔でこのPVA系繊維を配列して導電性付与テープを用いて金属製支持体に保持して除電ブラシを作製した。
(2)ポリプロピレン製の樹脂板をポリエステル製布帛で3回擦り、その後に作製した除電ブラシでそのポリプロピレン製樹脂板の上を1回なぞったところ、静電気は除去されておらず、静電気除去効果が不十分であった。
以上の結果から明らかなように、平均粒子径が500nm以下の硫化銅微粒子を繊維の表層、及び/または内部に含有されてなる導電性PVA系繊維あるいはエチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いた静電気除去部材は、摩擦、屈曲、捩れ等に対して優れた耐久性を示す。一方で、平均粒子径が500nmを超える、1μmの硫化銅粒子を繊維中に含有されてなるPVA系繊維を用いた比較例1の静電気除去部材は、静電気除去性能が不十分であった。
本発明によれば、可撓性に富み、且つ摩擦、屈曲、捩れ等に対する性能の変化の小さい静電気除去部材を提供することができ、例えば電子写真記録方式の乾式複写機、ファクシミリ、プリンター等において、用紙に帯電された静電気を除去するために用紙排紙口に設置される除電ブラシや、樹脂成形品の乾燥工程出口での静電気除去、あるいはフィルム製造や製紙時の乾燥工程後の静電気除去を目的とした静電気除去部材として使用することができる。
Claims (6)
- 平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または、平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子が繊維の表層及び/または内部に含有されてなる導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を用いることを特徴とする静電気除去部材。
- 導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維の体積固有抵抗値が1×108〜1×10−2Ω・cmであることを特徴とする請求項1に記載の静電気除去部材。
- 請求項1または2記載の導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維をブラシ毛に用い、該ブラシ毛と、これに接触する導電体とを備えた静電気除去部材であって、ブラシ毛が所定の長さに揃えた単糸状体、あるいは束状体で並列に配列し、その間隔が5〜40本/インチであることを特徴とする静電気除去部材。
- 請求項1または2記載の導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を、織物、あるいは編物とした帯状物とするか、もしくは1800dtexを超える繊維束とし、静電気除去物と接触、または近接させることを特徴とする静電気除去部材。
- ブラシ毛部分の50〜100質量%が請求項1または2記載の導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維であり、該ブラシ毛がパイル織物をテープ状に裁断して、円筒状のシャフトの表面に螺旋状に巻きつけたことを特徴とする静電気除去部材。
- 0.5〜15mmにカットした請求項1または2記載の導電性ポリビニルアルコール系繊維、及び/または導電性エチレンビニルアルコール共重合体からなる繊維を50〜100質量%、その他の非導電性繊維、及び/またはその他の導電性繊維の0.5〜15mmにカットした繊維を0〜50質量%とし、これらのカット糸をフロッキー加工により金属シャフトに植毛したことを特徴とする静電気除去部材。
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JP2007148802A JP2008303473A (ja) | 2007-06-05 | 2007-06-05 | 静電気除去部材 |
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JP (1) | JP2008303473A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN107700024A (zh) * | 2017-10-10 | 2018-02-16 | 达利丝绸(浙江)有限公司 | 兼具有植绒和绣花效果的提花织物的生产工艺 |
-
2007
- 2007-06-05 JP JP2007148802A patent/JP2008303473A/ja active Pending
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