JP2008303295A - クリンチ用ゴム組成物およびこれを用いた空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】石油資源由来の原料の使用量が低減され、かつ体積固有抵抗が低減されたクリンチ用ゴム組成物およびこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ゴム成分の100質量部に対して、シリカの40〜90質量部と、シランカップリング剤の1〜15質量部と、ケッチェンブラックの5〜35質量部とが少なくとも配合されてなり、ゴム成分は、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかからなり、シリカのBET比表面積が70〜250m2/gの範囲内であり、ケッチェンブラックのBET比表面積が600m2/g以上である、クリンチ用ゴム組成物、およびこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、クリンチ用ゴム組成物および該クリンチ用ゴム組成物からなるクリンチゴムを備える空気入りタイヤに関する。
従来、空気入りタイヤのリムとのチェーフィング部分にはクリンチゴムが設けられている。クリンチゴムは、走行時にリムからタイヤに駆動力を伝達する機能、およびタイヤの荷重を保持する機能を有する。よって、クリンチゴムは高硬度でかつ耐熱老化特性に優れることが必要である。また、走行時におけるタイヤの繰返し変形に伴うリムとのこすれによって生じる摩滅を軽減するため、クリンチゴムには所定の耐摩耗性も要求される。また、クリンチゴムの剛性、硬度および機械強度等の物理的特性は、走行時の操縦安定性能に大きな影響を及ぼすため、これらの性能を適切な範囲内に設定することも要求される。さらに、タイヤの体積固有抵抗が大きいと走行時に静電気が発生し易くなるため、安全性を向上させるためには、クリンチ用ゴム組成物に対しても体積固有抵抗の低減が要求される。
一方、近年、環境問題への関心の高まりから、石油資源由来の原料の使用量を低減するための方法が種々の技術分野で検討されている。現在一般的に市販されているタイヤは、全重量の半分以上が石油資源である原料から構成されている。たとえば、一般的な乗用車用タイヤは、合成ゴム約20質量%、カーボンブラック約20質量%、軟化剤、合成繊維などを含んでいるため、タイヤ全体の約50質量%以上が石油資源の原料から構成されている。そこで、石油資源由来の原料を用いる場合と同様ないしそれ以上の要求特性を満足する、天然資源由来の原料を用いたタイヤ用ゴムの開発が望まれている。
特許文献1には、キャップゴムを構成する絶縁性ゴム材が、ジエン系ゴム、および共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル化合物との共重合体の内の一種又は二種以上を用いたゴム基材の100重量部に対して、30〜100重量部のシリカと3〜20重量部のカーボンブラックとを含み、ベースゴムを構成する導電性ゴム材が、ジエン系ゴム、および共役ジエン系モノマーと芳香族ビニル化合物との共重合体の内の一種又は二種以上を用いたゴム基材の100重量部に対して、0〜50重量部のシリカと25重量部以上のカーボンブラックとを含み、25℃における絶縁性ゴム材のゴム硬度Hs1を導電性ゴム材のゴム硬度Hs2以下とした空気入りタイヤが提案されている。
特許文献2には、シリカにより補強された絶縁性ゴム材からなるキャップゴム体と、導電性ゴム材からなるベースゴム体とを備え、25℃におけるベースゴム体のゴム硬度Hs2がキャップゴム体のゴム硬度Hs1よりも小である空気入りタイヤが提案されている。
特許文献3には、ジエン系ゴム100重量部に対し、補強短繊維を導電材料で被覆してなる導電短繊維を2〜30重量部配合したトレッド用ゴム組成物が提案されている。
特許文献4には、内端面が、カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内方に配されたベルト構造体と接続されかつベースゴム層およびキャップゴム層をともに貫通してのびしかも外端面がトレッド接地面の一部をなす、導電性ゴム材からなる貫通部を有する空気入りタイヤが提案されている。
特許文献5には、トレッド部、サイドウォール部、ブレーカー部またはプライ部において固有抵抗値が109Ω・cm以上で、補強用充填剤中のシリカの含有量が70質量%以上であり、該タイヤ部材とともに、さらに、固有抵抗値が108Ω・cm以下で厚み0.1〜5mmの導電性ゴム層を有するタイヤが提案されている。
しかし従来の技術では、石油資源由来の原料の使用量が低減され、かつ体積固有抵抗が低減されたクリンチ用ゴム組成物、およびこれを用いた空気入りタイヤは得られていないのが現状である。
特開平10−175403号公報 特開2000−16010号公報 特開平10−309905号公報 特開2000−118212号公報 特開2007−8269号公報
本発明は上記の課題を解決し、石油資源由来の原料の使用量が低減され、かつ体積固有抵抗が低減されたクリンチ用ゴム組成物およびこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、ゴム成分の100質量部に対して、シリカの40〜90質量部と、シランカップリング剤の1〜15質量部と、ケッチェンブラックの5〜35質量部とが少なくとも配合されてなり、ゴム成分は、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかからなり、シリカのBET比表面積が70〜250m2/gの範囲内であり、ケッチェンブラックのBET比表面積が600m2/g以上である、クリンチ用ゴム組成物を提供する。
本発明のクリンチ用ゴム組成物においては、シランカップリング剤が、下記の一般式(I)、
(RO)3−Si−(CH2x−(S)n−(CH2x−Si−(OR)3 (I)
(式中、Rは炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を、xは1〜8の整数を、nは1以上の整数を、それぞれ表す)で表され、該一般式(I)においてn=2である分子の割合がシランカップリング剤全体の60質量%以上であり、該シランカップリング剤における上記nの平均値が2〜3の範囲内であることが好ましい。
本発明のクリンチ用ゴム組成物においては、上記変性天然ゴムがエポキシ化天然ゴムであることが好ましい。
本発明はまた、上述のいずれかのクリンチ用ゴム組成物からなるクリンチゴムを備える空気入りタイヤを提供する。
本発明によれば、石油資源由来の原料の使用量を低減しつつ、体積固有抵抗が低減されたクリンチ用ゴム組成物およびこれを用いた空気入りタイヤが提供される。
本発明のクリンチ用ゴム組成物においては、シリカとケッチェンブラックとを組合せて充填剤として用いる。ケッチェンブラックは一般的に石油資源由来であるが、少量の添加で物理特性を所望の程度満足するクリンチ用ゴム組成物が得られ、空気入りタイヤの製造における石油資源由来の原料の使用量を低減できる。また、ケッチェンブラックは導電性が高いため、ケッチェンブラックとシリカとを組合せて用いることにより、石油資源由来の原料の使用量を低減しつつシリカ配合による体積固有抵抗の増大を抑制できる。さらにシランカップリング剤を配合することによってクリンチ用ゴム組成物に良好な機械強度が付与される。
<ゴム成分>
本発明において、ゴム成分は、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかからなる。これにより、石油資源由来の原料の使用量の低減効果を得ることができる。天然ゴムとしては、ゴム工業において従来用いられているものを1種または2種以上組合せて使用することができ、たとえば、RSS#3、TSRなどのグレードの天然ゴムを挙げることができる。
変性天然ゴムとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴムなどの1種または2種以上の組合せを例示できる。ゴム成分は、石油資源由来の原料の使用量をより低減できる点で、天然ゴムおよびエポキシ化天然ゴムの少なくともいずれかからなることが特に好ましい。
なお、天然ゴムの一部または全部が脱蛋白天然ゴム(DPNR)であってもよく、変性天然ゴムの一部または全部が該脱蛋白天然ゴム(DPNR)の変性ゴムであってもよい。
エポキシ化天然ゴムは、天然ゴムの不飽和二重結合がエポキシ化された変性天然ゴムの一種であり、極性基であるエポキシ基により分子凝集力が増大する。そのため、天然ゴムよりもガラス転移温度(Tg)が高く、かつ機械的強度や耐摩耗性に優れる。このようなエポキシ化天然ゴムとしては、たとえばENR25(クランプーランスガリー社製)(エポキシ化率:25%)、ENR50(クランプーランスガリー社製)(エポキシ化率:50%)などの市販のものを用いてもよいし、天然ゴムをエポキシ化したものを用いてもよい。天然ゴムをエポキシ化する方法としては、特に限定されるものではなく、たとえばクロルヒドリン法、直接酸化法、過酸化水素法、アルキルヒドロペルオキシド法、過酸法などを挙げることができる。過酸法としては、たとえば天然ゴムのエマルジョンに過酢酸や過蟻酸などの有機過酸をエポキシ化剤として反応させる方法を挙げることができる。
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率は、5モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。ここで、エポキシ化率とは、エポキシ化前の天然ゴム中の二重結合の全数のうちエポキシ化された数の割合(すなわち(エポキシ化された二重結合の数)/(エポキシ化前の二重結合の数))を意味し、たとえば滴定分析、核磁気共鳴(NMR)分析などにより求められる。
エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が5モル%未満の場合、エポキシ化天然ゴムのガラス転移温度が低いために、クリンチゴムの機械強度が低くなって空気入りタイヤの耐久性が低くなる傾向にあり、また、天然ゴムとエポキシ化天然ゴムとを組合せて用いる場合においては該天然ゴムと該エポキシ化天然ゴムとの相溶性が大きいためにエポキシ化の効果が少なくなったりする傾向にある。また、エポキシ化天然ゴム(ENR)のエポキシ化率は、65モル%以下であることがより好ましく、60モル%以下であることがさらに好ましい。エポキシ化天然ゴムのエポキシ化率が65モル%を超える場合、クリンチゴムの硬度が過度に増大し、空気入りタイヤにおいて強度などの所望の特性が得られ難い傾向にある。
エポキシ化天然ゴムとして、より典型的には、エポキシ化率25モル%のエポキシ化天然ゴム、エポキシ化率50モル%のエポキシ化天然ゴムなどを例示できる。
<シリカ>
ゴム成分100質量部に対するシリカの配合量は、40〜90質量部の範囲内とされる。シリカの該配合量が40質量部未満であると、シリカを配合することによる補強効果が十分得られず、90質量部を超えるとクリンチ用ゴム組成物が硬過ぎて機械強度が十分得られなくなるとともに、クリンチ用ゴム組成物の調製時に粘度上昇が生じるため加工性が悪化する。シリカの該配合量は、43質量部以上、さらに45質量部以上であることがより好ましく、また87質量部以下、さらに85質量部以下であることがより好ましい。
シリカの、ASTM−D−4820−93に準拠して測定されるBET法による窒素吸着比表面積(以下、BET比表面積ともいう)は、70〜250m2/gの範囲内とされる。シリカのBET比表面積が70m2/g未満であると、補強効果およびヒステリシスの低減効果が十分得られず、250m2/gを超えると、クリンチ用ゴム組成物の製造時にムーニー粘度が増大して加工性が悪くなる。シリカのBET比表面積は、75m2/g以上、さらに80m2/g以上であることがより好ましく、また、245m2/g以下、さらに240m2/g以下であることがより好ましい。
シリカは、湿式法により調製されたものであってもよく、乾式法により調製されたものであってもよい。また、好ましい市販品としては、たとえば、デグッサ製の「ウルトラジルVN2」(BET比表面積:125m2/g)、「ウルトラジルVN3」(BET比表面積:175m2/g)などを例示できる。
<ケッチェンブラック>
ゴム成分100質量部に対するケッチェンブラックの配合量は、5〜35質量部の範囲内とされる。ケッチェンブラックの該配合量が5質量部未満であると、ケッチェンブラックの配合による体積固有抵抗の低減効果が十分得られず、35質量部を超えると、空気入りタイヤが発熱し易くなるとともに、石油資源由来の原料の使用量の低減効果が十分得られない。ケッチェンブラックの該配合量は、6質量部以上、さらに7質量部以上であることがより好ましく、また、33質量部以下、さらに30質量部以下であることがより好ましい。
ケッチェンブラックのBET比表面積は、600m2/g以上とされる。ケッチェンブラックのBET比表面積が600m2/g未満であると、クリンチ用ゴム組成物の硬度が低過ぎて十分な機械強度が得られない。ケッチェンブラックのBET比表面積が過度に大きいと加工性が低下する場合があるため、ケッチェンブラックのBET比表面積は、1200m2/g以下であることが好ましい。特に、ケッチェンブラックのBET比表面積は、625m2/g以上、さらに650m2/g以上であることがより好ましく、また、1150m2/g以下、さらに1100m2/g以下であることがより好ましい。
<シランカップリング剤>
ゴム成分100質量部に対するシランカップリング剤の配合量は、1〜15質量部の範囲内とされる。シランカップリング剤の該配合量が1質量部未満であると、シランカップリング剤を配合することによる機械強度の向上効果を十分得られず、15質量部を超えると、量を増やしても機械強度の顕著な改善は期待できない一方コストが上昇してしまい経済的でない。シランカップリング剤の該配合量は、2質量部以上、さらに3質量部以上であることがより好ましく、また13質量部以下、さらに10質量部以下であることがより好ましい。
本発明で配合されるシランカップリング剤は、下記の一般式(I)、
(RO)3−Si−(CH2x−(S)n−(CH2x−Si−(OR)3 (I)
(式中、Rは炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を、xは1〜8の整数を、nは1以上の整数を、それぞれ表す)で表されるものであることが好ましい。
一般式(I)において、Rの炭素数が1以上であれば、アルコキシ基の存在によりシランカップリング剤とシリカとの結合性が良好となる。また、Rの炭素数が8以下であればシランカップリング剤とシリカとの親和性が損なわれにくい。
一般式(I)において、xが1以上であればシランカップリング剤は化学的に安定であり、クリンチ用ゴム組成物中におけるシランカップリング剤の分解、劣化が抑制される。また、xが8以下であれば、所望の補強効果を得るために必要なシランカップリング剤の配合量が多量になり過ぎることがなく、製造コストの点で有利である。
また、上記一般式(I)においてn=2である分子の割合がシランカップリング剤全体の60質量%以上でかつnの平均値が2〜3の範囲内であることが好ましい。この場合、シランカップリング剤とゴム成分との親和性を十分確保しつつ、ゴム組成物の補強効果を長期間良好に持続させることが可能である。
上記一般式(I)を満たすシランカップリング剤のより具体的な例としては、デグッサ製の「Si75」等を例示できる。
<その他の配合剤>
本発明のクリンチ用ゴム組成物には、上記した成分以外にも、従来ゴム工業で使用される他の配合剤、たとえば加硫剤、ステアリン酸、加硫促進剤、加硫促進助剤、オイル、硬化レジン、ワックス、老化防止剤などを配合してもよい。またシリカ、ケッチェンブラック以外の充填剤をさらに含有してもよい。
加硫剤としては、有機過酸化物もしくは硫黄系加硫剤を使用することが可能であり、有機過酸化物としては、たとえば、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3あるいは1,3−ビス(t−ブチルパーオキシプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシベンゼン、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシロキサン、n−ブチル−4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレレートなどを使用することができる。これらの中で、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゼンおよびジ−t−ブチルパーオキシ−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。また、硫黄系加硫剤としては、たとえば、硫黄、モルホリンジスルフィドなどを使用することができる。これらの中では硫黄が好ましい。これらの加硫剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫促進剤としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、もしくは、キサンテート系加硫促進剤のうち少なくとも一つを含有するものを使用することが可能である。スルフェンアミド系としては、たとえばCBS(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系化合物などを使用することができる。チアゾール系としては、たとえばMBT(2−メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ジベンゾチアジルジスルフィド)、2−メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩、亜鉛塩、銅塩、シクロヘキシルアミン塩、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾールなどのチアゾール系化合物などを使用することができる。チウラム系としては、たとえばTMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムモノスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系化合物を使用することができる。チオウレア系としては、たとえばチアカルバミド、ジエチルチオ尿素、ジブチルチオ尿素、トリメチルチオ尿素、ジオルトトリルチオ尿素などのチオ尿素化合物などを使用することができる。グアニジン系としては、たとえばジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、トリフェニルグアニジン、オルトトリルビグアニド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系化合物を使用することができる。ジチオカルバミン酸系としては、たとえばエチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアミルジチオカルバミン酸亜鉛、ジプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛とピペリジンの錯塩、ヘキサデシル(またはオクタデシル)イソプロピルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル、ジアミルジチオカルバミン酸カドミウムなどのジチオカルバミン酸系化合物などを使用することができる。アルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系としては、たとえばアセトアルデヒド−アニリン反応物、ブチルアルデヒド−アニリン縮合物、ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒド−アンモニア反応物などのアルデヒド−アミン系またはアルデヒド−アンモニア系化合物などを使用することができる。イミダゾリン系としては、たとえば2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系化合物などを使用することができる。キサンテート系としては、たとえばジブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサンテート系化合物などを使用することができる。これらの加硫促進剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫促進助剤としては、たとえば酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどを使用できる。
老化防止剤としては、アミン系、フェノール系、イミダゾール系、カルバミン酸金属塩などを適宜選択して使用することができる。
オイルとしては、プロセスオイル、植物油脂、またはこれらの混合物、などを例示できる。プロセスオイルとしては、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどを例示できる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、サフラワー油、桐油、などを例示できる。
シリカ、ケッチェンブラック以外の充填剤としては、酸化チタン、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、クレー、タルクなどを例示できる。
本発明のクリンチ用ゴム組成物の、JIS K6253に準じた方法で測定されるゴム硬度(すなわち、タイプAデュロメータ硬度)は、50〜90の範囲内であることが好ましい。該ゴム硬度が50未満である場合、クリンチ用ゴム組成物の剛性が低く空気入りタイヤの耐久性および操縦安定性が低下する傾向がある。また該ゴム硬度が90を超える場合、クリンチ用ゴム組成物が硬くなり機械強度が低下する傾向がある。該ゴム硬度は、53以上、さらに55以上であることがより好ましく、また、88以下、さらに85以下であることがより好ましい。
本発明はまた、以上で説明したような本発明のクリンチ用ゴム組成物からなるクリンチゴムを備える空気入りタイヤをも提供する。以下、図1を参照して本発明の空気入りタイヤを説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの一例を示す概略断面図である。空気入りタイヤ1は、トレッド部2と、該トレッド部2の両端からタイヤ半径方向内方に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内方端に位置するビード部4とを備える。またビード部4,4間にはカーカス6が架け渡されるとともに、このカーカス6の外側かつトレッド部2内にはタガ効果を有してトレッド部2を補強するベルト層7が配される。
上記カーカス6は、カーカスコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば70〜90°の角度で配列する1枚以上のカーカスプライから形成され、このカーカスプライは、上記トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5の廻りをタイヤ軸方向の内側から外側に折返されて係止される。
上記ベルト層7は、ベルトコードをタイヤ赤道COに対して、たとえば40°以下の角度で配列した2枚以上のベルトプライからなり、各ベルトコードがプライ間で交差するよう向きを違えて重置している。なお、必要に応じてベルト層7の両端部のリフティングを防止するためのバンド層(図示しない)を、ベルト層7の少なくとも外側に設けてもよく、このときバンド層は、低モジュラスの有機繊維コードを、タイヤ赤道COとほぼ平行に螺旋巻きした連続プライで形成する。
またビード部4には、上記ビードコア5から半径方向外方に延びるビードエイペックスゴム8が配されるとともに、カーカス6の内側には、タイヤ内腔面をなすインナーライナゴム9が隣設され、カーカス6の外側は、クリンチゴム4Gおよびサイドウォールゴム3Gで保護される。本発明のクリンチ用ゴム組成物は、上記クリンチゴム4Gに使用されるものである。
なお図1では乗用車用の空気入りタイヤについて例示しているが、本発明はこれに限定されず、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用等、各種車両の用途に対して用いられる空気入りタイヤを提供する。
本発明の空気入りタイヤは、上記本発明のクリンチ用ゴム組成物を用いて、従来公知の方法により製造される。すなわち、上記した必須成分、および必要に応じて配合されるその他の配合剤を含有するクリンチ用ゴム組成物を混練りし、未加硫の段階でタイヤのクリンチの形状に合わせて押出し加工し、タイヤの他の部材とともに、タイヤ成形機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明のタイヤを得ることができる。
かかる本発明の空気入りタイヤは、クリンチゴムにおける石油資源由来の成分の含有比率がより低減され、省資源および環境保護への配慮が十分なされているとともに、体積固有抵抗が低減されたクリンチ用ゴム組成物が使用されているため、地球環境に優しい「エコタイヤ」であるとともに、より優れた安全性を有する。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1,2および比較例1〜6>
表1に示す配合処方に従い、硫黄および加硫促進剤を除く配合成分を密閉型混合機に供給し、混練した。得られた混練り物に、硫黄および加硫促進剤を表1に示す配合量で加えた後、二軸ローラーを用いて練り込んで未加硫ゴム組成物を調製し、これを未加硫ゴムシートとして押出した。この未加硫ゴムシートを175℃で10分間加硫して、130mm×130mm×2mmの試験用ゴムシートを得た。
(体積固有抵抗)
上記の方法で得た試験用ゴムシートにつき、アドバンテストコーポレーション社製のデジタル超高抵抗微小電流計「R−8340A」を用いて、温度23℃、湿度55%の条件下で体積固有抵抗を測定した。なお印加電圧は1000Vとし、測定値は常用対数値log10R(Ω・cm)で表した。なお一般に、クリンチ用ゴム組成物のlog10Rが11Ω・cm以下、空気入りタイヤのlog10Rが8Ω・cm以下であると導電性が良好である。
(ムーニー粘度指数)
上記の未加硫ゴム組成物につき、JIS K6300に準じて、130℃におけるムーニー粘度を測定し、下記の計算式、
ムーニー粘度指数=(比較例1のムーニー粘度)÷(各実施例または各比較例のムーニー粘度)×100
により、比較例1を100としてムーニー粘度指数を算出した。ムーニー粘度指数が大きい程、加工時のムーニー粘度が小さく加工性に優れることを示す。
(石油外資源由来の原料の比率)
表1に示す配合処方から、石油外資源由来の原料の比率を、下記の計算式、
石油外資源由来の原料の比率(質量%)=(石油外資源由来の配合成分の質量合計)÷(全配合成分の質量合計)×100
により算出した。
Figure 2008303295
注1:天然ゴムは、TSR20グレードである。
注2:カーボンブラックは、三菱化学製の「N220」(BET比表面積:115m2/g)である。
注3:シリカは、デグッサ製の「ウルトラジルVN3」(BET比表面積:175m2/g)である。
注4:ケッチェンブラックは、デグッサ製の「Printex XE2B」(BET比表面積:880m2/g)である。
注5:ワックスは、大内新興化学製の「サンノックワックス」である。
注6:老化防止剤は、フレキシス製の「サントフレックス13」である。
注7:ステアリン酸は、日本油脂製の「桐」である。
注8:亜鉛華は、三井金属鉱業製の「亜鉛華1号」である。
注9:シランカップリング剤は、デグッサ製の「Si75」(ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファン)である。
注10:硫黄は、フレキシス製の「クリステックスHSOT20」である。
注11:加硫促進剤は、大内新興化学製の「ノクセラーNS」である。
表1に示す配合成分のうち、石油外資源由来の配合成分は、天然ゴム、シリカ、ステアリン酸、亜鉛華、シランカップリング剤、硫黄であり、石油資源由来の配合成分は、カーボンブラック、ケッチェンブラック、ワックス、老化防止剤、加硫促進剤である。
表1に示す結果から、BET比表面積が本発明の範囲内であるシリカおよびケッチェンブラックを含まない比較例1では、体積固有抵抗は低いものの、カーボンブラックの配合量が多いために石油外資源由来成分の比率が小さくなっており、BET比表面積が本発明の範囲内であるシリカを含むがBET比表面積が本発明の範囲内であるケッチェンブラックを含まない比較例2では、石油外資源由来成分の比率は大きいものの体積固有抵抗も大きかった。
ケッチェンブラックの配合量が少ない比較例3においては、体積固有抵抗が大きく、ケッチェンブラックの配合量が多い比較例4では、石油外資源由来成分の比率が低かった。また、シリカの配合量が少ない比較例5では石油資源由来成分の比率が低く、シリカの配合量が多い比較例6では、ムーニー粘度が顕著に上昇し、加工性に劣っていた。
一方、BET比表面積が本発明の範囲内であるシリカおよびケッチェンブラックを本発明の範囲内の配合量で配合した実施例1,2においては、石油外資源由来成分の比率を高くすると同時に、体積固有抵抗も低くすることができ、ムーニー粘度の顕著な上昇もなく良好な加工性も得られた。
よって本発明によれば、石油資源由来の原料の使用量を低減し、かつ体積固有抵抗を低減したクリンチ用ゴム組成物が得られることが分かる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のクリンチ用ゴム組成物は、乗用車用、トラック用、バス用、重車両用等の各種用途の空気入りタイヤのクリンチゴムに好適に適用され、本発明の空気入りタイヤは、上記各種用途に好適に適用され得る。
本発明の空気入りタイヤの一例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 タイヤ、2 トレッド部、3 サイドウォール部、4 ビード部、5 ビードコア、6 カーカス、7 ベルト層、8 ビードエイペックスゴム、9 インナーライナゴム、3G サイドウォールゴム、4G クリンチゴム。

Claims (4)

  1. ゴム成分の100質量部に対して、シリカの40〜90質量部と、シランカップリング剤の1〜15質量部と、ケッチェンブラックの5〜35質量部とが少なくとも配合されてなり、
    前記ゴム成分は、天然ゴムおよび変性天然ゴムの少なくともいずれかからなり、
    前記シリカのBET比表面積は、70〜250m2/gの範囲内であり、
    前記ケッチェンブラックのBET比表面積は、600m2/g以上である、クリンチ用ゴム組成物。
  2. 前記シランカップリング剤が、下記の一般式(I)、
    (RO)3−Si−(CH2x−(S)n−(CH2x−Si−(OR)3 (I)
    (式中、Rは炭素数1〜8の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を、xは1〜8の整数を、nは1以上の整数を、それぞれ表す)
    で表され、
    前記一般式(I)においてn=2である分子の割合がシランカップリング剤全体の60質量%以上であり、
    前記シランカップリング剤における前記nの平均値が2〜3の範囲内である、請求項1に記載のクリンチ用ゴム組成物。
  3. 前記変性天然ゴムがエポキシ化天然ゴムである、請求項1または2に記載のクリンチ用ゴム組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のクリンチ用ゴム組成物からなるクリンチゴムを備える空気入りタイヤ。
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